説明

光学等方性セルロースアシレートフィルムならびに位相差フィルムの製造方法

【課題】 面内の複屈折のみならず、厚み方向の複屈折も小さく、かつ量産性に優れたセルロースアシレートフィルムおよびそれを用いた位相差フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 下記のA〜Cの全てを満たす光学等方性セルロースアシレートフィルムの製造方法。
A:ソルベントキャスト法によって製膜されていること
B:ソルベントキャスト法に用いる支持体が濡れ張力が25mN以上、50mN以下のプラスチックフィルムであること
C:セルロースアシレートのアシル化度の合計が2.4以上、3.0以下であること

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学等方性を有するセルロースアシレートフィルムの製造方法に関する。より詳細には、液晶ディスプレイ等の光学用途に用いることができる光学等方性セルロースアシレートフィルム、ならびに、位相差フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースアセテート等に代表されるセルロースアシレートは透明性が高いことから写真用のベースフィルム等に広く用いられている。さらに、光学異方性が小さいことから、液晶表示装置における偏光板の偏光子保護膜としても広く用いられている。しかし、光学的異方性が小さいセルロースアシレートであっても、溶液流延法による乾燥過程でフィルム面内での配向が生じやすく、この寄与により厚み方向に光学異方性を生じるという問題があった。この厚み方向の光学異方性により、フィルムを斜めから見た際に複屈折を生じ、光漏れが生じるため、特に高コントラストを実現した液晶表示装置の視野角特性においてはその影響を無視できなくなっている。このため、斜め方向から見た際にも液晶セルのコントラストを実質的に損なうことなく適用できる偏光子保護フィルムを得るためには、面内だけでなく、フィルム厚み方向における光学異方性も制御されたフィルムが求められている。このような問題を解決するために、アセチル基以外の置換基を含有するセルロースアシレートフィルムが提案されている(例えば特許文献1、特許文献2を参照のこと)。また、可塑剤や添加剤の種類または添加量によって、複屈折の発現を抑制する方法が提案されている(例えば特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6を参照のこと)。また、乾燥工程において、フィルムをガラス転移温度以上に加熱する方法が提案されている(例えば特許文献7を参照のこと)。
【特許文献1】特開平9−90101号公報
【特許文献2】特開2005−68314号公報
【特許文献3】特開2002−14230号公報
【特許文献4】特開平11−246704号公報
【特許文献5】特開平11−92574号公報
【特許文献6】特開2000−63560号公報
【特許文献7】特開2005−138375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のようにセルロースアシレートの置換基を他に置き換える方法のみでは十分な光学等方性は得られないという問題があった。また、特許文献2から特許文献6のように可塑剤や添加剤の種類や量を変化させた場合は、フィルムの透明性が低下したり、耐熱性が不十分になったりするといった別の問題があった。さらに、特許文献7のように乾燥条件を制御する方法は、光学異方性を小さくできるものの、高温加熱時にフィルムの膨張や収縮が生じ、フィルムの搬送が困難となったり、フィルムが弛んだりしやすく、その量産性に問題があった。
【0004】
本発明は、かかる観点に鑑みて、フィルム面内のみならず厚み方向の複屈折も小さく、かつ量産性に優れた光学等方性セルロースアシレートフィルムの製造方法を提供することを目的とする。さらに、これらの光学等方性セルロースアシレートフィルムを延伸することによって、視野角特性に優れたセルロースアシレート位相差フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討した結果、セルロースアシレートフィルム製膜時の支持体の種類を選択することによって、厚み方向の複屈折を制御しうることを見出し本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記のA〜Cの全てを満たすことに特徴を有する面内の複屈折(ΔNh)が3.0×10-5以下、厚み方向の複屈折(ΔNv)が1.1×10-3以下の光学等方性セルロースアシレートフィルムの製造方法に関する。
A:ソルベントキャスト法によって製膜されていること
B:ソルベントキャスト法に用いる支持体が濡れ張力が25mN以上、50mN以下のプラスチックフィルムであること
C:セルロースアシレートのアシル化度の合計が2.4以上、3.0以下であること
【0007】
さらに、本発明の光学等方性セルロースアシレートフィルムの製造方法においては、前記支持体が二軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましい。
【0008】
さらに、本発明の光学等方性セルロースアシレートフィルムの製造方法においては、セルロースアシレートフィルムが実質的に微粒子を含有しないことが好ましい。
【0009】
さらに、本発明は、前記いずれかの方法によって製造された光学等方性セルロースアシレートフィルムを少なくとも一軸方向に延伸する位相差フィルムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、光学等方性を有するセルロースアシレートフィルムを量産できる。このようなセルロースアシレートフィルムを液晶表示装置の偏光子保護膜に用いると、高コントラストを実現した液晶表示装置においてもフィルムを斜め方向から見た際の複屈折が小さく、良好な視野角特性を得ることができる。さらに、光学等方性を有するセルロースアシレートフィルムを延伸することにより厚み方向の光学異方性の小さい位相差フィルムとすることができ、同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、本明細書における、面内の複屈折および、厚み方向の複屈折について以下に定義する。フィルム面内において、最も屈折率が大きい方向(以下、遅相軸方向とする)の屈折率をnx、フィルム面内において、遅相軸方向と直行する方向(以下、進相軸方向とする)の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、面内の複屈折ΔNh、厚み方向の複屈折ΔNvはそれぞれ下記式で表される。
ΔNh=nx−ny
ΔNv=(nx+ny)/2−nz
【0012】
本発明は、上記ΔNhおよびΔNvが小さい、すなわち光学的に等方性を有するセルロースアシレートフィルムを製造する方法に関するものである。
【0013】
一般に、フィルムの製造方法としては、ポリマーを溶媒に溶解した後、支持体上に流延し、溶剤を乾燥させるソルベントキャスト法と、ポリマーをその融点以上に加熱して溶融し、ダイ等のスリットを介して製膜する溶融法に大別される。本発明の光学等方性セルロースアシレートフィルムの製造方法においては、ソルベントキャスト法により製膜されることが好ましい。ソルベントキャスト法は溶融法と比較して等方性の高いフィルムを得ることができる上、厚みパターンを容易に制御でき、厚みの均一なフィルムを得ることができるため、液晶ディスプレイ等の光学用途に用いる上で好ましい製造方法である。
【0014】
ソルベントキャスト法においては、ポリマーおよび添加剤等を溶媒に溶解した溶液(以下、ドープという)を平坦な支持体上に流延するが、本発明においては、プラスチックからなる支持体を用いる。プラスチックからなる支持体を用いることの効果に関して以下に説明する。
【0015】
一般に支持体としては、ステンレス鋼等の金属からなるエンドレスベルトまたはドラムロールが用いられることが多い。このような支持体に流延し、一定の温度下で溶剤を蒸発させた後、支持体から剥離してウェブが得られるが、金属製の支持体はセルロースアシレートとの密着性が強いため、支持体とウェブの剥離が重い傾向がある。そのため、大きな張力をかけて、ウェブを支持体から剥離する必要があるが、その際の張力によってウェブの流延方向に分子が配向し、フィルム面内の複屈折ΔNhが大きくなるという問題がある。このような面内の複屈折の発生を抑制するためには、支持体からの剥離前にウェブをさらに乾燥させ、剥離を軽くするといった方法が用いられる。ウェブの残存溶剤量を小さくし支持体からの剥離を軽くすることで、面内の複屈折の発生は抑制される。
【0016】
しかし、支持体上での乾燥が進行するにつれて、今度はウェブの厚み方向に比して、フィルム面内に分子が配向した状態となり、面内屈折率nxおよびnyと厚み方向の屈折率nzの差が大きくなる、すなわち、厚み方向の複屈折が大きくなるという問題がある。つまり、金属製の支持体を用いてセルロースアシレートフィルムを製造するにあたっては、ウェブと支持体の剥離性に起因して、面内の複屈折を小さくしようとすれば、乾燥を進行させる必要があるが、それに伴って厚み方向の複屈折が増大するために、光学等方性の高いものを得ることが困難である。
【0017】
それに対して、驚くべきことに支持体にプラスチックのフィルムを用いると、セルロースアシレートとの剥離性が金属支持体と比して軽くなり、ウェブの残存溶剤量が多い状態でも、支持体とウェブを適宜に剥離することができ、面内、厚み方向の複屈折ともに低くすることができることが判明した。
【0018】
さらに、エンドレスベルトやドラムロール等の連続体はキズ等の欠陥が生じた際に、一旦工程を停止させなければ交換できず、交換には多大な時間と費用を要するが、不連続体であるプラスチックフィルムの支持体を用いる場合は、キズ等の欠陥が生じたものを再使用しなければ足りるため、支持体交換等のメンテナンス作業のために工程を停止する必要がなく、量産性の面においても優れている。
【0019】
支持体として用いられるプラスチックの種類は、ソルベントキャスト法に用いられる溶剤に対して溶解しないものであれば特に制限はないが、乾燥工程での変形を防ぐ目的から、耐熱性に優れたものを用いることが好ましい。さらに、セルロースアシレートのウェブを適宜に剥離できるものが好ましい。セルロースアシレートのウェブとの剥離性を良好とするためには、支持体の濡れ張力は25mN/m以上、50mN/m以下であることが好ましく、30mN/m以上、45mN/m以下であることがより好ましく、33mN以上、43mN以下であることがさらに好ましい。濡れ張力が上記範囲を下回ると、支持体上にポリマー溶液を均一に流延できなかったり、ウェブと支持体の剥離が軽すぎて乾燥途中に剥離してしまう場合がある。また、濡れ張力が上記範囲を上回ると、ウェブと支持体の剥離が重くなり、等方性のフィルムを得られない場合がある。濡れ張力は市販の濡れ性試験試薬を用い、JISK−6768に記載の方法で測定することができる。
【0020】
また、支持体として用いられるプラスチックフィルムの厚みは特に制限されないが、50μm以上、300μm以下であることが好ましく、80μm以上、250μm以下であることがより好ましく、100μm以上、200μm以下であることがさらに好ましい。支持体が上記範囲より薄いと、自己支持性が低くなくなるため、溶液を流延した際に弛みが生じ、得られるセルロースアシレートフィルムにも弛みが生じやすくなる。また、支持体が上記範囲より厚いと、支持体の柔軟性が失われ、ハンドリング性に劣る他、支持体のコストが増大するといった問題がある。また、支持体として用いられるフィルムは、その強度を保つために、二軸延伸されたものであることが好ましい。
【0021】
上記の要件を満たす支持体として、具体的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルからなるフィルムや、ポリイミドかなるフィルムおよびこれらの二軸延伸品等が挙げられる。就中、ソルベントキャスト法に適した広幅のものを安価に入手でき、かつセルロースアシレートと適宜な剥離性を有することから二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。また、ウェブと支持体の密着性を適宜とするために、表面処理を施したものを用いることもできる。ここで、表面処理とは、コロナ放電やプラズマ放電等の放電処理や、親水性あるいは疎水性の化学物質等を表面にコーティングする方法等が挙げられる。
【0022】
さらに、本発明の光学等方性セルロースアシレートフィルムの製造方法において用いられる支持体においては、ポリマー溶液を流延する面の算術平均粗さ(Ra)が1nm以上、30nm以下であることが好ましく、2nm以上、20nm以下であることがさらに好ましい。支持体表面の粗さは、その上に形成されるウェブに転写するため、支持体の中心線表面平均粗さが小さいと表面の平滑なフィルムが得られ、支持体の中心線表面平均粗さが大きいと、表面の粗いフィルムが得られる。フィルムの表面が過度に平滑であると、滑り性が低下し、支持体から剥離した後の工程において搬送ロールでキズが発生しやすいという問題がある。また、逆に表面が過度に粗いと、フィルム表面に凹凸が形成され、ヘイズが上昇したり、その凹凸がレンズのような効果を果たしたりするため、液晶表示装置において均一な表示を得られない場合がある。そのため、支持体の中心線平均表面粗さは前記した範囲であることが好ましい。また、同様の理由から、支持体のポリマー溶液を流延する面の十点平均粗さ(Rz)は10nm以上、1000nm以下が好ましく、20nm以上、500nm以下がさらに好ましい。RaおよびRzはJIS−B0601(1994年版)に記載の方法で測定することができる。
【0023】
次に本発明の光学等方性セルロースアシレートフィルムの製造方法に用いられるセルロースアシレートについて説明する。セルロースアシレートは、セルロースの水酸基がアシル基によって置換されているものであれば、特に制限されないが、就中、セルロースの水酸基が炭素数4以下のアシル基によって置換されたセルロースアシレートであることが好ましい。このようなセルロースアシレートとしては、具体的にはセルロースの水酸基がアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基のいずれかによって置換されたものが好ましい。このようなセルロースアシレート具体例としては、セルロースアセテート、セルロールプロピオネート、セルロースブチレートや、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートのような複数種のアシル基を有するものが挙げられる。これらは透明性が高く、かつ、複屈折が小さいため、本発明の用途として好ましい。中でも、セルロースアセテートまたはセルロースアセテートプロピオネートは一般的に安価に製造または入手できるため、特に好適に用いることができる。
【0024】
さらに、本発明において、前記セルロースアシレートは、特定のアシル化度を有することが好ましい。具体的には、アセチル置換度、プロピオニル置換度、ブチリル置換度の合計が2.4以上、2.9以下であることが好ましく、2.5以上、2.8以下であることがさらに好ましい。
【0025】
ここで、セルロースアシレートのアシル化度の好ましい範囲に関して説明する。セルロース分子は、基本単位であるD−グルコースがβ−1,4結合して直鎖状につながった多糖である。セルロースアシレートのアシル化度とは、このD−グルコース分子中の2,3,6位に存在する3個の水酸基が、セルロース分子において平均してどれだけアシル化されているかを表し、「アシル化度=3」は、セルロース分子中の全ての水酸基がアシル化されていることを示す。それぞれの位置の置換度は均等でもよいし、いずれかの位置に偏っていてもよい。また、アシル化度は、ASTM−D817−96記載の方法にて定量することができる。アシル基が前記範囲を下回ると、複屈折が発現しやすくなり、剥離が適切となるような支持体を用いたとしても光学等方性のフィルムを得ることが困難となる場合がある。また、置換度が大きいと、溶剤に対する溶解性が低下し、ソルベントキャスト法によってフィルムを得ることが困難となる場合がある。そのため、本発明に用いられるセルロースアシレートはその置換度を適宜に調整したものを用いることが好ましい。
【0026】
実際のフィルムの製造においては、上記の樹脂と添加剤を溶剤に溶解し、溶液とした後に支持体に流延する。添加剤としては、可塑剤、劣化防止剤等が挙げられる。
【0027】
可塑剤は延伸等の加工特性や、靱性を改善する目的で用いられる。可塑剤としては、例えば、リン酸エステルまたはカルボン酸エステル等を用いることができる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェートおよびトリクレジルホスフェート等が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジフェニルフタレートおよびジエチルヘキシルフタレート等が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチルおよびO−アセチルクエン酸トリブチルが含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステル等が含まれる。
【0028】
劣化防止剤は酸化による劣化を抑制する酸化防止剤や、高温下での安定性を付与する熱安定剤、さらに紫外線による劣化を防止する紫外線吸収剤が用いられる。また、塩素化した樹脂類や可塑剤に対して、分解により発生する遊離酸を吸収させる酸吸収剤を用いることもできる。劣化防止剤としては、前記のりん酸エステル化合物や、フェノール誘導体、エポキシ系化合物、アミン誘導体等が用いられる。フェノール誘導体としてはオクチルフェノール、ペンタフェノン、ジアミルフェノール等が含まれる、アミン誘導体の例としてはジフェニルアミン等が含まれる。
【0029】
添加剤の添加量は、セルロースアシレート100重量部に対して、0.01から5.0重量部であることが好ましく、0.05から2.0重量部であることがさらに好ましい。添加量が5.0重量部以上でもその効果はほとんど上がらず、逆にフィルム表面への滲み出しが認められたり、透明性が低下する傾向がある。また、添加量が0.01重量部未満であると、劣化防止剤の効果はほとんど認められない。
【0030】
さらに、滑剤として微粒子を添加し、フィルム表面に凹凸を形成することで滑り性を向上させ、製造工程における搬送時のフィルム表面へのキズの発生を防止することもできる。しかし、本発明の製造方法においては、前記したように支持体であるプラスチックフィルムの表面形状をセルロースアシレートのウェブに転写させることで、その滑り性を向上できるため、実質的に滑剤としての微粒子を含まない構成とすることもできる。滑剤は、その凝集物が異物として欠陥となる場合があるため、光学フィルムとしての用途においては、微粒子を含まないことが好ましい。本発明においては、支持体として用いるプラスチックフィルムの表面形状が適宜なものを選択することによって、滑剤を含まずともキズの発生が少ないフィルムを得られる点でも有用である。
【0031】
また、本発明においては、上記以外の成分を添加することに関して特に制限はないが、セルロースアシレートフィルムとしての特性を失わないために、フィルム全重量を100重量部に対して、セルロースアシレートを80重量部以上含有することが好ましく、90重量部以上含有することがさらに好ましい。
【0032】
セルロースアシレートおよび添加剤を溶解するために用いる溶剤は、上記セルロースアシレートを溶解するものであれば特に制限されず、ケトン類、エステル類、ハロゲン化炭化水素等、公知の溶剤から選択される。ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が使用可能である。エステル類としては、酢酸エチルや酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチルやプロピオン酸メチル等が使用可能である。また、ハロゲン化炭素としては塩化メチレンやクロロホルム等が使用できる。中でも塩化メチレンはセルロースアシレートを溶解しやすく、沸点が低い為に生産性が高くなるという利点を有する。さらに、乾燥中の火災等に対する安全性も高いので、本発明の位相差フィルムを製造する際に最も好適に用いられる。さらに、支持体からのウェブの剥離を軽くする目的で、上記の溶剤に、セルロースアシレートに対する貧溶媒を加えることもできる。貧溶媒としては、炭素数10以下のアルコールが好ましく、中でも炭素数4以下のアルコール、すなわち、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコールがより好ましく用いられる。貧溶媒の量は全溶剤量を100重量部としたときに、1重量部以上、20重量部以下であることが好ましく、2重量部以上、15重量部以下であることがより好ましく、3重量部以上、10重量部以下であることがさらに好ましい。貧溶媒の量が少ないとゲル化による剥離を軽くする効果が十分でない場合がある。また、貧溶媒の量が多過ぎると溶解性が減少し、溶液の粘度が高くなり、ソルベントキャスト法における生産性に劣ったり、ゲル成分がフィルム中に混入し輝点となったりする場合がある。
【0033】
溶液の調整に関して、その方法は特に制限されないが、樹脂および添加剤を溶剤に溶解する方法や、樹脂および添加剤をそれぞれ個別に溶解しておき、スタティックミキサー等を用いて混合する方法等を好適に用いることもできる。さらには、置換度の異なるセルロースアシレートをそれぞれ個別に溶解しておき、これらを混合する方法も好適に用いることができる。
【0034】
溶液の好ましい粘度は、支持体に流延される際の液温において、好ましくは1.0Pa・s以上、10.0Pa・s以下、さらに好ましくは1.5Pa・s以上、8.0Pa・s以下である。粘度が上記範囲より小さいと、溶剤を飛散させるのに多大のエネルギーを要し、生産性に劣る場合がある。また、上記範囲より大きいと、均一なフィルムを得ることが困難となる場合がある。
【0035】
プラスチックフィルムの支持体を一定の速度で搬送させながら、上記で得られた溶液をダイ方式やコンマ方式等の公知のコーターにより支持体上に流延した後、乾燥炉へ搬送することで、セルロースアシレートのウェブを得ることができる。溶液を流延する前の支持体に異物が付着している場合、その異物がセルロースアシレートのウェブに埋め込まれて欠陥となるため、支持体の搬送過程に粘着ロールや除塵機を設け、支持体上の異物を除去した後に溶液を流延することが好ましい。また、このような除塵を別の工程で実施した後に流延工程へ供することもできる。
【0036】
ウェブを均一な厚みとするためには、乾燥の初期において、急激な溶剤の飛散を防止することが重要であり、支持体へ流延した直後の雰囲気温度は、溶剤の沸点以下とすることが好ましい。また、コーティング直後の雰囲気温度を低くした場合、溶剤の蒸発によりさらに雰囲気温度が低下するために、乾燥炉内の水分が結露し、フィルムが白化する場合がある。このような結露による白化を防止する目的で、乾燥初期の炉内に乾燥空気や、窒素ガス等の水分含有量が少ない気体を供給し、炉内の湿度を20%以下に保つことが好ましい。このような状態から、乾燥が進むにつれて、雰囲気温度が上昇するように条件を設定し、フィルム表面が乾燥した状態となるまでは、雰囲気温度を(溶剤の沸点+50)℃以下とすることが好ましい乾燥条件である。得られたウェブを支持体から剥離した後、さらに乾燥して、光学等方性セルロースアシレートフィルムを得ることができる。ここで、本発明の製造方法において、支持体からウェブを剥離する際の残存溶剤量は5%以上、30%以下が好ましく、8%以上、25%以下がより好ましく、10%以上、20%以下がさらに好ましい。残存溶剤量が上記範囲を上回ると、剥離時にウェブ表面に剥離の痕が形成されたり、フィルムの平面性が失われる場合がある。また、残存溶剤量が上記範囲を下回ると、乾燥途中でウェブと支持体が自然に剥離してしまい、搬送できなくなったり、厚み方向の複屈折が大きくなるため、光学等方性に劣る場合がある。ここで本明細書において、残存溶剤量とはウェブを150℃で60分加熱し、その加熱前後の重量に対して、下記式で表される。
残存溶剤量(%)=100×[(加熱前の重量)−(加熱後の重量)]/(加熱前の重量)
【0037】
ウェブと支持体の剥離に際しては、一旦ウェブと支持体を一体としてロール状に巻き取った後、別の工程にて剥離を実施してもよいし、支持体とウェブを剥離後にそれぞれ個別に巻き取ってもよい。また、剥離後に支持体のみを巻取り、ウェブは連続して次の乾燥工程に供してもよい。巻き取られた支持体は、再度支持体として使用することもできる。このようなプラスチックフィルムの支持体はキズ等の欠陥が発生しない限り何度でもリサイクルして用いることができる。
【0038】
支持体と剥離した後のウェブはフロート法、テンター法またはロール搬送法等によって搬送しながら、乾燥することができる。搬送方法に限定はないが、フロート法の場合、フィルム自体が複雑な応力を受け、光学的特性の不均一が生じやすい。また、テンター法の場合、フィルム両端を支えているピンまたはクリップの距離により、溶剤乾燥に伴うフィルムの幅収縮と自重を支えるための張力を均衡させる必要があるが、張力が過大であると厚み方向の複屈折が生じやすく、張力が過小であると、フィルムの自重を支えられずにフィルムに弛みが生じる場合がある。一方、ロール搬送法の場合、安定なフィルム搬送のための張力は原則的にフィルムの流れ方向(MD方向)にかかるため、応力の方向を一定にしやすく、面内、厚み方向ともに複屈折も生じにくい。従って、フィルムの乾燥には、ロール搬送法を用いることが最も好ましい。
【0039】
乾燥後のセルロースアシレートフィルムは面内の複屈折(ΔNh)が3.0×10-5以下であることが好ましく、2.0×10-5以下であることがより好ましく、1.0×10-5以下であることがさらに好ましい。また、厚み方向の複屈折(ΔNv)は1.1×10-3以下であることが好ましく、1.0×10-3以下であることがより好ましく、7.0×10-4以下であることがさらに好ましい。また、残存溶剤量は2重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
本発明に係るポリマーフィルムの厚みに制限はないが、10μm〜500μmが好ましく、20μm〜300μmがより好ましく、30μm〜150μmがさらに好ましい。フィルムの厚みが上記範囲を上回ると、ソルベントキャスト法による生産性が劣る傾向にある。また、フィルムの厚みが上記範囲を下回ると、フィルムのハンドリング性に劣り、量産に適さない場合がある。
【0041】
このようにして得られたセルロースアシレートフィルムは、片面又は両面に粘着層を設けたものや、粘着層を介して偏光子と積層し、偏光板として用いることもできる。特に本発明の製造方法によって得られた光学等方性セルロースアシレートフィルムを偏光子と積層した偏光板は、斜め方向から見た際にも液晶セルのコントラストを実質的に損なうことなく適用できるため、好ましい実施形態のひとつである。また、前記偏光板と、その他の光学補償層との組み合わせにより光学補償偏光板とすることもできる。光学補償層は特に限定されないが、例えばポリマーフィルムの一軸や二軸等による延伸処理物、ディスコティック系やネマチック系等の液晶配向層、さらには、特開2003−344856号公報等に記載の非液晶性ポリマーからなる複屈折層等を好適に用いることができる。
【0042】
さらに前記の光学等方性セルロースアシレートフィルムを少なくとも一軸方向に延伸または収縮させることで位相差板とすることもできる。このような位相差フィルムの製造方法も、本発明の範囲に属する。
【0043】
例えば特開2000−137116号公報等に記載されているように、置換度が所定の範囲に調整されたセルロースアシレートからなるフィルムを延伸すると、可視光領域において長波長ほど高い位相差を有する位相差フィルムを得ることができ、液晶表示装置の光学補償において優れた性能を有する。しかし、一方ではこのようなセルロースアシレートはフィルム化の際に厚み方向の異方性を生じ易く、位相差フィルムとした場合にもその厚み方向の異方性が残存するため、斜め方向から見た際の位相差が制御困難であるという問題があった。すなわち、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、進相軸方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、下記式で表されるNZが大きくなるという問題があった。
NZ=(nx−nz)/(nx−ny)
【0044】
NZが大きいと、フィルムを正面から見た際の位相差と斜め方向から見た際の位相差の変化量が大きくなり、液晶表示装置を斜め方向から見た際のコントラストが低下したり、色変化が大きくなったりするという問題があるが、前記した特開2000−137116号公報の実施例に記載されているように、置換度が所定の範囲に調整されたセルロースアシレートからなるフィルムを自由端一軸延伸した場合、NZの値は1.1を超える場合が多い。本発明者が検討した結果、このようにNZが大きくなる原因は、延伸前のセルロースアシレートフィルムの厚み方向の複屈折が大きいためであると推定される。このような観点に鑑み、鋭意検討した結果、前記した製造方法によって得られた光学等方性セルロースアシレートフィルムを延伸すると、NZが1.1以下である位相差フィルムを得られることがわかった。
【0045】
本発明の位相差フィルムの製造方法において、その延伸方法は特に限定されないが、前記のNZを小さくするという目的においては、2対のニップロール間の周速差によりフィルム搬送方向に延伸する自由端一軸延伸法を用いることが好ましい。自由端延伸法は、テンター等を用いる固定端延伸法と比較して、NZ係数を小さくすることができる。
【0046】
このようにして得られた位相差フィルムは片面又は両面に粘着層を設けたものとして用いることができる。また、粘着層を介して偏光板と積層し、光学補償偏光板とすることもできる。さらには、本発明によって得られる位相差フィルムは位相差フィルムとしての機能と偏光子保護膜としての機能を兼ね備えたものとして、他のフィルムを介さずに偏光子と積層して、光学補償偏光板とすることもできる。さらには、光学等方性セルロースアシレートフィルムの用途について述べたのと同様に、他の光学補償層と併せて用いることもできる。
【0047】
このような光学補償偏光板は、液晶表示装置を斜め方向から見た際にも液晶セルのコントラストを実質的に損なうことなく適用できるため、液晶表示装置の画質向上に寄与しうるものである。
【0048】
以上、本発明の目的は、プラスチックフィルムの支持体を用いた光学等方性セルロースアシレートフィルムの製造方法、ならびに、光学等方性セルロースアシレートフィルムを用いた位相差フィルムの製造方法を提供することにある。
【0049】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした支持体のプラスチック種や厚み、フィルムの製膜条件、延伸条件等の具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
【0050】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
(測定方法)本明細書中に記載の材料特性値等は、以下の評価法によって得られたものである。
【0053】
(1)位相差および複屈折
フィルムの幅方向中央より35mm角のサンプルを切り出し、アンリツ(株)製の厚み測定機により、厚み(d)を0.1μm単位まで測定した。さらに王子計測機器製自動複屈折計KOBRA−WRにより、測定波長586.7nmにて、フィルム面内の位相差(R0)と、フィルム遅相軸を回転軸として45°傾けた際の位相差(R45)を測定し、装置付属のプログラムにより、厚み方向位相差(Rth)およびNZを算出した。R0およびRthの値をフィルム厚みで割った値を面内の複屈折(ΔNh)および、厚み方向の複屈折(ΔNv)とした。これらは以下の関係式で表される。
ΔNh=R0/d
ΔNv=Rth/d
【0054】
(2)残存溶剤量
フィルムおよびウェブの幅方向中央付近から約10gのサンプルを切り出し、重量を測定後に150℃のオーブンで60分間加熱した後に再度重量を測定し、下記式により計算した。
残存溶剤量(%)=100×[(加熱前の重量)−(加熱後の重量)]/(加熱前の重量)
【0055】
(3)濡れ張力
和光純薬のぬれ張力試験用混合液を用い、JISK−6768に記載の方法により評価した。
【0056】
(4)表面粗さ
算術平均粗さ(Ra)および、十点平均粗さ(Rz)は(株)小坂研究所の接触式表面粗さ計(Surfcorder、SE−30C)を用い、JIS−B0601(1994年版)に記載の方法に基き、触針先端半径:2μm、測定圧力:30mg、カットオフ:0.08mm、測定長:1.0mmの条件で測定した。
【0057】
(5)キズの評価
フィルム幅方向中央部より50cm角のフィルムを切り出し、蛍光灯を反射させ、目視によりキズの有無を確認した。クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に前記のキズ部分を挟み、電通産業社製 フラットイルミネーター( HF−SL−A312LC)を用い、15倍ルーペにて色変化の有無を確認し、色変化の確認されるキズの数をカウントした。
【0058】
(セルロースアシレート溶液の調製)
アセチル基の置換度が0.1、プロピオニル基の置換度が2.6、数平均分子量が75000であるセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製セルロースエステルCAP482−20)を40重量部、アセチル基の置換度が0.1、プロピオニル基の置換度が2.4、数平均分子量が25000であるセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製セルロースエステルCAP482−0.5)を60重量部、ジエチルフタレートを2重量部、塩化メチレンを500重量部含む溶液を調製した。これを溶液1とした。
【0059】
(実施例1〜4および比較例1〜3)
溶液1を23℃、湿度15%の環境下で、流れ方向に1.0×106N/m2の応力を付与した状態の厚み125μm、幅1650mmの支持体上に、コンマコーターにより、支持体とコンマロールのギャップが480μmとなるようにして連続的に流延した。流延された溶液を支持体とともに、遠赤外線ヒーターにより雰囲気温度35℃に調整された乾燥炉内に連続的に搬送し、以降、段階的に雰囲気温度を50℃まで上昇させた炉内を通過させた。また、この乾燥炉は露点−23℃の除湿エアーを連続的に供給することで湿度を15%以下に保ち、水分によるフィルムの白化を防止した(以上、除湿ゾーン)。その後さらに、60℃から最大で100℃まで段階的に温度を上げた熱風炉を通過させることでさらに乾燥させてウェブとし(以上、熱風ゾーン)、支持体と一体で巻取りロール状とした。なお、比較例1においては、乾燥過程において支持体とウェブが剥離したため張力制御ができず、ロール状に巻き取ることができなかった。
【0060】
実施例1〜3、および比較例1,3で得られたロール状のウェブを、支持体フィルムから剥離し、さらに雰囲気温度100℃のロール懸垂型乾燥機内を15分間搬送して乾燥させた後、フィルム両端部を切り落とし、厚み約80μmの長尺セルロースアシレートフィルムを得た。用いた支持体の種類を表1に、乾燥条件およびウェブの特性を表2に、得られたセルロースアシレートフィルムの特性を表3に示す。なお、比較例2においては、支持体とウェブが剥離せず、ウェブを乾燥することができなかった。
【0061】
(比較例4および比較例5)
支持体として幅1650mmのSUS304製エンドレスベルトを用い、コンマコーターにより、支持体とコンマロールのギャップが480μmとなるようにして連続的に流延した。支持体および流延された溶液を、遠赤外線ヒーターにより雰囲気温度35℃に調整された乾燥炉内に連続的に搬送し、以降、段階的に雰囲気温度を50℃まで上昇させた炉内を通過させた。また、この乾燥炉は露点−23℃の除湿エアーを連続的に供給することで湿度を15%以下に保ち、水分によるフィルムの白化を防止した(以上、除湿ゾーン)。その後さらに、60℃から最大で100℃まで段階的に温度を上げた熱風炉を通過させることでさらに乾燥させてウェブとした(以上、熱風ゾーン)。このウェブを支持体より剥離した後、雰囲気温度80℃のピンテンター方式の乾燥機内を3分間搬送後、さらに雰囲気温度100℃のロール懸垂型乾燥機内を13分間搬送して乾燥させた後、フィルム両端部を切り落とし、厚み約80μmの長尺セルロースアシレートフィルムを得た。乾燥条件およびウェブの特性を表2に、得られたセルロースアシレートフィルムの特性を表3に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
表2および表3に示すように、支持体の種類によって同じ温度条件で乾燥した場合でも支持体とウェブの剥離性が異なり、結果としてセルロースアシレートフィルムの光学等方性が異なることが分かる。さらに、支持体の表面粗さを大きくすると、外観上の欠点となるキズの発生が少ないフィルムを得られることが分かる。
【0066】
また、プラスチックフィルムの支持体を用いた場合、表面処理の種類によって、支持体とウェブの剥離性を制御することができるため、セルロースアシレートの種類や用いる溶剤を変更した場合でも、同一の製造装置で製造することができるという利点を有している。
【0067】
(実施例5)
実施例2で得られたセルロースアシレートフィルムを、炉長4m、炉内の雰囲気温度が144℃のロール延伸機を用いて、入口側のニップロールと出口側のニップロールの周速差によりフィルム搬送方向に67%自由端一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
【0068】
(実施例6)
実施例3で得られたセルロースアシレートフィルムを用い、実施例5と同様にして位相差フィルムを得た。
【0069】
(比較例6)
比較例5で得られたセルロースアシレートフィルムを用い、実施例5と同様にして位相差フィルムを得た。
実施例5,6および比較例6で得られた位相差フィルムの特性を表4に示す。
【0070】
【表4】

【0071】
実施例5および実施例6に示すように、光学等方性セルロースアシレートフィルムを延伸することで、NZが小さく、視野角特性に優れた位相差フィルムが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA〜Cの全てを満たすことに特徴を有する、面内の複屈折(ΔNh)が3.0×10-5以下、厚み方向の複屈折(ΔNv)が1.1×10-3以下の光学等方性セルロースアシレートフィルムの製造方法。
A:ソルベントキャスト法によって製膜されていること
B:ソルベントキャスト法に用いる支持体が濡れ張力が25mN以上、50mN以下のプラスチックフィルムであること
C:セルロースアシレートのアシル化度の合計が2.4以上、3.0以下であること
【請求項2】
前記支持体が二軸延伸ポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の光学等方性セルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項3】
セルロースアシレートフィルムが実質的に微粒子を含有しないことを特徴とする請求項1または2に記載の光学等方性セルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法によって製造された光学等方性セルロースアシレートフィルムを少なくとも一軸方向に延伸することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−237697(P2007−237697A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66807(P2006−66807)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】