光学素子、マルチビーム光源ユニット、光走査装置及び画像形成装置
【課題】大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを出射することができるマルチビーム光源ユニットを提供する。
【解決手段】シングルビーム光源LD1と偏光光学素子2との間の光路上に、コリメートレンズの1つの曲面状の光学面上に入射光に対して構造複屈折を発現し入射光の偏光方向を90°変化させる格子が設けられているレンズ1を配置する。これにより、シングルビーム光源LD1から出射されたTM偏光の光ビームは、レンズ1で整形されるとともに、TE偏光とされて、偏光光学素子2に入射する。一方、シングルビーム光源LD2から出射されたTM偏光の光ビームは、レンズ4で整形されて、偏光光学素子2に入射する。偏光光学素子2に入射した各光ビームは、互いに同一方向に出射される。
【解決手段】シングルビーム光源LD1と偏光光学素子2との間の光路上に、コリメートレンズの1つの曲面状の光学面上に入射光に対して構造複屈折を発現し入射光の偏光方向を90°変化させる格子が設けられているレンズ1を配置する。これにより、シングルビーム光源LD1から出射されたTM偏光の光ビームは、レンズ1で整形されるとともに、TE偏光とされて、偏光光学素子2に入射する。一方、シングルビーム光源LD2から出射されたTM偏光の光ビームは、レンズ4で整形されて、偏光光学素子2に入射する。偏光光学素子2に入射した各光ビームは、互いに同一方向に出射される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、マルチビーム光源ユニット、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、凹凸の周期構造が光学面に形成された光学素子、複数のビームを出射できるマルチビーム光源ユニット、該マルチビーム光源ユニットからの光を用いて被走査面上を走査する光走査装置及び該光走査装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタやデジタル複写機などの画像形成装置では、画像情報に応じて変調された光源からの光を光偏向器及び走査レンズなどを介して感光体上に集光させるとともに、感光体上を所定の方向(主走査方向)に走査させ、感光体上に潜像(静電潜像)を形成している。そして、その潜像にトナーを付着させることにより、画像情報を顕像化させている。
【0003】
近年、画像形成装置の印字速度の向上、及び書込密度の向上が望まれている。それらの要求を達成する1つの方法として、画像形成装置の一部を構成する光走査装置の光偏向器における偏向速度の高速化がある。しかしながら、この方法には、高速回転に伴う騒音や熱等の問題があり、偏向速度の高速化には限界がある。そこで、1度に複数の光ビームを出射できるマルチビーム光源ユニットを利用して、1度に複数の光ビームを走査させる方法が考案された。
【0004】
上記マルチビーム光源ユニットは、複数の光ビームを発生するレーザアレイ光源(1つのパッケージ内に複数の発光点を持つレーザアレイを用いた光源)を用いることで実現できる。しかしながら、レーザアレイ光源は、製造プロセス上、発光点数を4,8,・・・と増やしていくにつれて技術的難易度が高くなり、非常に高価となる。
【0005】
一方、従来のシングルビーム光源(1つのパッケージ内に1つの発光点を持つレーザを用いた光源)を複数個用いて、マルチビーム光源ユニットとすることが多数提案されている。シングルビーム光源は低コストで大量生産されており、例えば4個のシングルビーム光源と、4つの発光点を持つレーザアレイ光源とでは、前者の方がコスト的に優位である。
【0006】
ところで、マルチビーム光源ユニットを複数のシングルビーム光源を用いて構成するために、各光源からの光ビームを同一方向の光軸に合わせることが必要となり、そのための光学素子(ビーム合成素子)が種々提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1には、ビーム合成素子として偏光ビームスプリッタを用いたマルチ光ビーム走査光学装置が開示されている。特許文献2には、ビーム合成素子として偏光ビーム合成プリズムを用いた複数ビーム走査装置が開示されている。
【0007】
特許文献1及び特許文献2に開示されている装置では、入射する光ビームの偏光方向の違いを利用して光ビームを合成している。そこで、入射する2つの光ビームの偏光方向が90°異なっている必要がある。
【0008】
ところで、半導体レーザの活性層から放出される光ビームは、ファーフィールドパターンにおいて楕円状の分布を示しており、偏光方向は活性層に平行である。そこで、2つの光ビームの偏光方向を90°異ならせるためには、(1)直線偏光を持つ半導体レーザを、その偏光方向が90°異なるように物理的に配置する、(2)偏光方向が90°異なるように偏光方向を変化させる素子(例えばλ/2板)を用いる、といった方法がある。ここでλ/2板は、ある偏光方向を持つ光ビームが透過すると、その偏光方向が90°回転するような、一般的には複屈折性結晶を用いた素子である。すなわち、偏光方向が同じ方向を持つように配置された半導体レーザの一方をλ/2板を透過させることによって、その偏光方向を90°異ならせることができる。
【0009】
しかしながら、上記(1)の方法では、半導体レーザの配置方向が互いに異なるため、光ビームのファーフィールドパターンが互いに異なる。この異なるファーフィールドパターンを持つ光ビームをビーム合成素子で合成し、所望の光学系を透過させた場合、ファーフィールドパターンの違いに起因して,光学系を透過させた後の光ビームプロファイルが互いに異なってしまうという不都合が発生する。一方、上記(2)の方法では、偏光方向を変化させる光学素子を追加しなくてはならないため、構成によっては、光学系のサイズが大きくなったり、光学素子のレイアウト自由度が減少したり、光学素子の追加による調整精度の向上が必要になったり、コストアップを生じたりする、という不都合が生じる。
【0010】
ところで、屈折率の異なる2つの媒質(例えば、一方が空気で、他方が等方性媒質)が、SWS(Subwavelength Structure;サブ波長構造)とも呼ばれる、入射光の波長よりも小さい周期構造をなしているときには、構造複屈折と呼ばれる光学的異方性が発現する(例えば、非特許文献1参照)。なお、微細な凹凸の周期構造の形成は、平板状のSiO2や樹脂に対して行われるのが一般的であった。最近では、曲面状の光学面に微細構造を設けることが特許文献3や特許文献4に開示されているが、いずれも反射防止を目的とする微細構造である。
【0011】
【特許文献1】特開平9−230260号公報
【特許文献2】特開2001−13433号公報
【特許文献3】特開2004−155083号公報
【特許文献4】特開2004−361906号公報
【非特許文献1】菊田久男、岩田耕一、「波長より細かな格子構造による光制御」、光学、27巻、第1号、p.12−17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、入射光の偏光状態を変化させる機能が付加された光学素子を提供することにある。
【0013】
また、本発明の第2の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを出射することができるマルチビーム光源ユニットを提供することにある。
【0014】
また、本発明の第3の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、精度良く、複数の光を用いて被走査面上を走査することができる光走査装置を提供することにある。
【0015】
また、本発明の第4の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、第1の観点からすると、入射光に対して構造複屈折を発現し、前記入射光の偏光状態を変化させる格子が、少なくとも1つの曲面状の光学面上に形成されている光学素子である。
【0017】
これによれば、少なくとも1つの曲面状の光学面上に、入射光に対して構造複屈折を発現し、入射光の偏光状態を変化させる格子が設けられているため、入射光の偏光状態を変化させる機能を付加することが可能となる。
【0018】
本発明は、第2の観点からすると、偏光方向が互いに同一の光ビームを出射する第1の光源及び第2の光源、を含む複数の光源と;前記第1の光源から出射された光ビームの光路上に配置され、その少なくとも1つの曲面状の光学面上に、前記第1の光源から出射された光ビームに対して構造複屈折を発現し、該光ビームの偏光方向を変化させる格子が設けられた少なくとも1つの光学素子を含み、前記第1の光源から出射された光ビームを整形するとともに、前記第1の光源から出射された光ビームの偏光方向を90°変化させる第1の整形光学系と;前記第2の光源から出射された光ビームを整形する第2の整形光学系と;前記第1及び第2の整形光学系を介した各光ビームの少なくとも一部を互いに同一方向に出射する偏光回折素子と;を備えるマルチビーム光源ユニットである。
【0019】
これによれば、第1の整形光学系が、第1の光源から出射された光ビームを整形する機能と第1の光源から出射された光ビームの偏光方向を90°変化させる機能とを有することとなる。従って、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを出射することが可能となる。
【0020】
本発明は、第3の観点からすると、光ビームによって被走査面上を走査する光走査装置であって、少なくとも1つの本発明のマルチビーム光源ユニットと;前記マルチビーム光源ユニットから出射された複数の光ビームを偏向する偏向手段と;前記マルチビーム光源ユニットと前記偏向手段との間に配置され、前記マルチビーム光源ユニットから出射された複数の光ビームを前記偏向手段に導く導光光学系と;前記偏向手段にて偏向された複数の光ビームを前記被走査面上に集光する集光光学系と;を備える光走査装置である。
【0021】
これによれば、少なくとも1つの本発明のマルチビーム光源ユニットを備えているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、精度良く、複数の光を用いて被走査面上を走査することが可能となる。
【0022】
本発明は、第4の観点からすると、少なくとも1つの走査対象物と;前記少なくとも1つの走査対象物に対して画像情報が含まれる複数の光ビームを走査する少なくとも1つの本発明の光走査装置と;前記少なくとも1つの走査対象物に形成された像を転写対象物に転写する転写装置と;を備える画像形成装置である。
【0023】
これによれば、少なくとも1つの本発明の光走査装置を備えているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ100の概略構成が示されている。
【0025】
図1に示されるレーザプリンタ100は、光走査装置900、走査対象物としての感光体ドラム901、帯電チャージャ902、現像ローラ903、トナーカートリッジ904、クリーニングブレード905、給紙トレイ906、給紙コロ907、レジストローラ対908、転写チャージャ911、定着ローラ909、排紙ローラ912、及び排紙トレイ910などを備えている。
【0026】
帯電チャージャ902、現像ローラ903、転写チャージャ911及びクリーニングブレード905は、それぞれ感光体ドラム901の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム901の回転方向に関して、帯電チャージャ902→現像ローラ903→転写チャージャ911→クリーニングブレード905の順に配置されている。
【0027】
感光体ドラム901の表面には、感光層が形成されている。ここでは、感光体ドラム901は、図1における面内で時計回り(矢印方向)に回転するようになっている。
【0028】
帯電チャージャ902は、感光体ドラム901の表面を均一に帯電させる。
【0029】
光走査装置900は、帯電チャージャ902で帯電された感光体ドラム901の表面に、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光を照射する。これにより、感光体ドラム901の表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム901の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って現像ローラ903の方向に移動する。ところで、感光体ドラム901の長手方向(回転軸に沿った方向)は「主走査方向」と呼ばれ、感光体ドラム901の回転方向は「副走査方向」と呼ばれている。また、感光体ドラム901における走査開始位置から走査終了位置までの主走査方向の走査領域のうち、潜像が形成される領域を「有効画像形成領域」ともいう。この光走査装置900の構成については後述する。
【0030】
トナーカートリッジ904にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ903に供給される。このトナーカートリッジ904内のトナー量は、電源投入時や印刷終了時などにチェックされ、残量が少ないときには不図示の表示部に交換を促すメッセージが表示される。
【0031】
現像ローラ903は、回転に伴ってその表面にトナーカートリッジ904から供給されたトナーが帯電されて薄く均一に付着される。また、この現像ローラ903には、感光体ドラム901における帯電している部分(光が照射されなかった部分)と帯電していない部分(光が照射された部分)とで互いに逆方向の電界が生じるような電圧が印加されている。そして、この電圧によって、現像ローラ903の表面に付着しているトナーは、感光体ドラム901の表面の光が照射された部分にだけ付着する。すなわち、現像ローラ903は、感光体ドラム901の表面に形成された潜像にトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って転写チャージャ911の方向に移動する。
【0032】
給紙トレイ906には転写対象物としての記録紙913が格納されている。この給紙トレイ906の近傍には給紙コロ907が配置されており、該給紙コロ907は、記録紙913を給紙トレイ906から1枚づつ取り出し、レジストローラ対908に搬送する。該レジストローラ対908は、転写ローラ911の近傍に配置され、給紙コロ907によって取り出された記録紙913を一旦保持するとともに、該記録紙913を感光体ドラム901の回転に合わせて感光体ドラム901と転写チャージャ911との間隙に向けて送り出す。
【0033】
転写チャージャ911には、感光体ドラム901の表面上のトナーを電気的に記録紙913に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム901の表面の潜像が記録紙913に転写される。ここで転写された記録紙913は、定着ローラ909に送られる。
【0034】
この定着ローラ909では、熱と圧力とが記録紙913に加えられ、これによってトナーが記録紙913上に定着される。ここで定着された記録紙913は、排紙ローラ912を介して排紙トレイ910に送られ、排紙トレイ910上に順次スタックされる。
【0035】
クリーニングブレード905は、感光体ドラム901の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラム901の表面は、再度帯電チャージャ902の位置に戻る。
【0036】
次に、前記光走査装置900の構成及び作用について図2を用いて説明する。
【0037】
この光走査装置900は、光源ユニットLU、シリンドリカルレンズ14、光偏向器15、2枚の走査結像レンズ17、同期センサ18、反射ミラー19、及び処理装置(図2では図示省略)などを備えている。
【0038】
光源ユニットLUは、一例として図3に示されるように、2つのシングルビーム光源(LD1、LD2)、2つのレンズ(1、4)、及び偏光光学素子2などを有している。
【0039】
シングルビーム光源LD1は、+Y方向にTM偏光の光を出射する。レンズ1は、シングルビーム光源LD1の+Y側に配置されている。そして、偏光光学素子2は、レンズ1の+Y側に配置されている。
【0040】
シングルビーム光源LD2は、シングルビーム光源LD1の−Z側に配置され、偏光光学素子2に向けてTM偏光の光を出射する。そして、レンズ4は、シングルビーム光源LD2と偏光光学素子2との間の光路上に配置されている。
【0041】
なお、一例として各シングルビーム光源は、波長が780nmのレーザ光をそれぞれ出射するものとする。
【0042】
レンズ1は、一例として図4に示されるように、ベースとなるコリメートレンズの1つの曲面状の光学面上に、シングルビーム光源LD1から出射された光ビームに対して構造複屈折を発現させる格子Kが設けられた光学素子である。この格子Kは、その周期がシングルビーム光源LD1から出射された光の波長よりも小さい、いわゆるサブ波長構造の格子(以下、「サブ波長格子」ともいう)であり、TM偏光の光の偏光方向を90°変化させる機能を有している。すなわち、レンズ1は、シングルビーム光源LD1から出射された光LB1を、略平行光に整形するとともに、偏光状態をTE偏光とする。なお、格子Kの素材はベースと同じであるものとする。
【0043】
ここで、サブ波長格子について説明する。ここでは、説明を簡略化するため、平行平板の一側の面にサブ波長格子が形成されているものとする。サブ波長格子では、TE偏光に対する有効屈折率n(TE)は、次の(1)式で示され、TM偏光に対する有効屈折率n(TM)は、次の(2)式で示される。ここで、nはサブ波長格子の素材の屈折率、fはサブ波長格子のフィリングファクタである。
【0044】
n(TE)=√{fn2+(1−f)} ……(1)
n(TM)=√[n2/{f+(1−f)n2}] ……(2)
【0045】
そして、サブ波長格子によって付与される光学的位相差φは、次の(3)式で示される。ここで、dはサブ波長格子の厚さ、λは入射光の波長である。
【0046】
φ=2π{n(TE)−n(TM)}d/λ ……(3)
【0047】
ところで、サブ波長格子に直線偏光を斜め45°から入射して直線偏光の方向を90°回転させるためには、サブ波長格子がπの位相差を持つλ/2板として機能すれば良い。そこで、上記(3)式においてφ=πとすると、次の(4)式が導かれる。
【0048】
λ/d=2{n(TE)−n(TM)} ……(4)
【0049】
例えば、n=1.45、f=0.5であれば、上記(1)式からn(TE)=1.245、上記(2)式からn(TM)=1.164となり、λ=780nmであれば、上記(4)式からd=4815nmとなる。
【0050】
そこで、一例として格子Kは、n=1.45、Λ=400nm、f=0.5、d=4815nmとしている。
【0051】
また、格子Kは、回折光を発生しない0次格子である。これにより、ゴースト光及びフレア光が発生しないため、光量ロスがなくなるとともに、不要光の除去を考慮する必要がなくなる。
【0052】
ここで、0次格子について簡単に説明する。格子に対して入射光が垂直に入射されるとき、次の(5)式の関係が満たされる場合に、その格子は0次格子である。
【0053】
Λ<λ/n ……(5)
【0054】
ここでは、格子Kは、n=1.45、Λ=400nmであり、λ=780nmの入射光に対して、上記(5)式の関係を満たしている。
【0055】
図3に戻り、レンズ4は、シングルビーム光源LD2から出射された光LB2を略平行光に整形する。
【0056】
レンズ1を介した光LB1は、偏光光学素子2に垂直に入射し、界面でのフレネル反射を除いて100%透過する。レンズ4を介した光LB2は、偏光光学素子2に対して角度θをなして入射し、偏光光学素子2による回折作用によって、その一部が+Y方向に曲げられる。すなわち、偏光光学素子2は、レンズ1を介した光LB1及びレンズ4を介した光LB2を互いに同一方向(ここでは、+Y方向)の光軸に合わせる。なお、YZ平面における偏光光学素子2に入射する光LB1に対する光LB2の入射角度θは0°でも良いし、90°でも良いし、もちろん、鋭角でも鈍角でも構わない。
【0057】
すなわち、シングルビーム光源LD1から出射され、レンズ1、及び偏光光学素子2を介した光(以下、便宜上「第1光ビーム」ともいう)と、シングルビーム光源LD2から出射され、レンズ4、及び偏光光学素子2を介した光(以下、便宜上「第2光ビーム」ともいう)とが、光源ユニットLUから出射される。なお、第1光ビーム及び第2光ビームは、感光体ドラム901の表面において副走査方向に所定の間隔で集光されるように、略同一方向に出射される。
【0058】
ところで、一例として図5に示されるように、偏光光学素子2からの反射光や、偏光光学素子2における所望の回折次数以外の回折光は不要な光となるが、これらの不要な光は、光走査装置内及び光走査装置外の少なくとも一方において、アパーチャなどのメカ部品及びその他の光学部品によって、感光体ドラム901上に光スポットを形成しないように遮光されている。
【0059】
また、第1光ビームと第2光ビームの光量差については、各シングルビーム光源の発光パワーを調整することにより、ほぼ0にすることができる。
【0060】
図2に戻り、光源ユニットLUから出射された第1光ビーム及び第2光ビームは、それぞれシリンドリカルレンズ14に入射する。このシリンドリカルレンズ14は、各光ビームに対して、主走査方向に対応する方向に細長い線像を、光偏向器15の偏向反射面(ポリゴンミラー面)近傍にそれぞれ結像する。
【0061】
光偏向器15で偏向された各光ビームは、走査結像レンズ17によってそれぞれ結像され、感光体ドラム901表面上の、副走査方向に互いに所定の間隔だけ離れた位置に、光スポットとして集光される。
【0062】
なお、光偏向器15は、ポリゴンモータ(不図示)によって一定の速度で回転しており、その回転に伴って偏向反射面近傍に結像された各光ビームは等角速度的に偏向され、感光体ドラム901上の各光スポットは、主走査方向に等速移動する。すなわち、感光体ドラム901上を主走査方向に2ライン同時に走査する。
【0063】
また、走査結像レンズ17を透過して有効画像領域外に向かう光の一部は、反射ミラー19を介して同期センサ18で受光される。同期センサ18は、受光量に応じた信号(光電変換信号)を出力する。
【0064】
処理回路は、図6に示されるように、信号調整回路60、変調データ生成回路30、シリアル信号生成回路35、画像データ生成回路40、及びレーザ駆動回路50などを有している。
【0065】
信号調整回路60は、同期センサ18の出力信号を増幅、反転及び2値化し、同期信号を生成する。
【0066】
画像データ生成回路40は、上位装置からの画像情報に基づいて、画像データを生成する。
【0067】
変調データ生成回路30は、信号調整回路60からの同期信号及び画像データ生成回路40からの画像データに基づいて変調データを生成する。
【0068】
シリアル信号生成回路35は、変調データ生成回路30からの変調データをシリアル信号に変換する。
【0069】
レーザ駆動回路50は、シリアル信号生成回路35からのシリアル信号に基づいて、シングルビーム光源LD1及びLD2の駆動信号を生成する。ここで生成された各駆動信号は光源ユニットLUに出力される。
【0070】
ここで、曲面状の光学面上に構造複屈折を発現する微細構造の格子(以下、「微細構造格子」ともいう)を形成する方法について説明する。
【0071】
先ず、レーザ干渉露光法について説明する。このレーザ干渉露光法は、通常、青〜紫外領域の波長を持つレーザ光を干渉させて感光性の高分子材料(レジスト)に照射し、その干渉パターンを利用して微細構造格子を形成する方法である。具体的には、(1)曲面状の光学面上にレジストをスピンコートあるいはディッピング等により塗布する(図7(A)参照)。(2)2方向から紫外レーザ光を照射する二光束干渉法により、レジストに微細構造の格子パターンを形成する(図7(B)参照)。なお、二光束干渉法では、微細構造のピッチはレーザ光の波長の1/2まで微細化することが可能である。(3)レジストを現像し、曲面状の光学面上にレジスト材料の微細構造格子を形成する(図7(C)参照)。(4)ドライエッチングを行い、基板に微細構造格子を形成する(図7(D)参照)。レーザ干渉露光法では、基板材料としてガラス、石英、ポリマー、シリコン等多くの材料を用いることができる。
【0072】
次に、電子ビーム露光法について説明する。この電子ビーム露光法は、電子ビームをレジストに集光するとともに、レジスト上を走査して微細構造格子を形成する方法である。
【0073】
前記格子Kは、これらの方法を用いて形成することができる。
【0074】
また、レジストを用いないで、直接光学素子材料に微細構造格子を形成することもできる。例えば、光硬化法やレーザアブレーション法が知られている。
【0075】
図8には、光硬化法を用いた例が示されている。この光硬化法では、レーザ光を光硬化性材料中に集光し、多光子吸収過程によってその集光点近傍においてその材料を硬化させ、レーザ光を3次元的に走査することにより微細構造格子を形成する。Nd:YAGレーザやTi:Sapphireレーザなどのレーザ装置から出射されたレーザ光は、1/2波長板とグラントムソンプリズムによってその光強度が調整された後、空間フィルタによって波形整形される。そして、ガルバノミラーによって光路を変えながら、リレーレンズ、結像レンズ、及び対物レンズを介して基板上の光硬化性材料中に集光される。また、集光点はピエゾステージによって基板垂直方向にも移動可能である。このように、ガルバノミラーとピエゾステージの組み合わせにより、3次元的に構造を作製することが可能である。このとき光硬化性材料としては、光硬化性樹脂や、光硬化性の有機・無機ハイブリッド材料などがあり、この光硬化性材料がそのまま光学素子として機能できる。なお、この加工装置の構成は1つの例であって、この限りではない。
【0076】
レーザアブレーション法としては、レーザ光を干渉させ、その干渉パターンによって微細構造格子を形成する方法や、レーザ光を直接照射して微細構造格子を形成する方法がある。以下、後者について図9を用いて説明する。
【0077】
レーザ装置から出射されたレーザ光は、フォトマスクによってレーザ光の一部が透過され、そのレーザ光パターンはミラーを介して集光レンズによって縮小投影され、光学素子材料に照射される。また、光学素子材料はXYZステージ上に設置され、3次元的に移動可能である。もちろん、ミラーの代わりにガルバノミラー等を設けて、レーザ光を走査してもよい。また、フォトマスクには複数のパターン(図9では2種類)が用意され、加工したいパターンや加工対象である光学素子材料などに応じて選択することができる。これらXYZステージの移動やパターンの選択はPC(パソコン)によって制御されている。なお、この加工素子の構成は1つの例であることは言うまでもない。
【0078】
また、上記いずれの方法においても、レーザ光のパルス幅が10ピコ秒以下である極短パルスレーザを使用することができる。極短パルスレーザの利用により、熱伝播による溶融、ダメージ層の低減、多光子吸収断面積の増加が可能であるといった利点があり、近年用いられるようになってきている。また多光子吸収断面積を増加させることが可能であることから光硬化法において、より効果的、低エネルギーで行うことが可能となる。
【0079】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光走査装置900では、光源ユニットLUによってマルチビーム光源ユニットが実現されている。そして、シングルビーム光源LD1によって第1の光源が実現され、シングルビーム光源LD2によって第2の光源が実現され、レンズ1によって第1の整形光学系が実現され、レンズ4によって第2の整形光学系が実現され、偏光光学素子2によって偏光回折素子が実現されている。また、シリンドリカルレンズ14によって導光光学系が実現され、光偏向器15によって偏向手段が実現され、走査結像レンズ17によって集光光学系が実現されている。
【0080】
また、レンズ1によって本発明に係る光学素子が実現されている。
【0081】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ100では、帯電チャージャ902と現像ローラ903とトナーカートリッジ904と転写チャージャ911とによって転写装置が構成されている。
【0082】
以上説明したように、本実施形態に係るレンズ1によると、コリメートレンズの1つの曲面状の光学面上に、入射光に対して構造複屈折を発現し、入射光の偏光方向を90°変化させる格子が設けられている。これにより、レンズ1は、入射光を整形するとともに、TM偏光の光をTE偏光とすることができる。すなわち、コリメートレンズに、入射光の偏光状態を変化させる機能を付加することが可能となる。
【0083】
なお、構造複屈折は、屈折率の異なる2つの媒質(例えば、一方が空気で、他方が等方性媒質)が、入射光の波長程度からその数倍以下の周期構造、いわゆる共鳴領域の周期構造(共鳴構造)をなしている格子においても発現することが知られている。そこで、格子Kは、共鳴構造格子であっても良い。
【0084】
また、本実施形態に係る光源ユニットLUによると、シングルビーム光源LD1と偏光光学素子2との間の光路上にレンズ1を配置しているため、シングルビーム光源LD1から出射されたTM偏光の光ビームは、レンズ1で整形されるとともに、TE偏光とされて、偏光光学素子2に入射する。一方、シングルビーム光源LD2から出射されたTM偏光の光ビームは、レンズ4で整形されて、偏光光学素子2に入射する。偏光光学素子2に入射した各光ビームは、互いに同一方向に出射される。従って、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを安定して出射することが可能となる。
【0085】
また、本実施形態に係る光走査装置900によると、光源ユニットLUを用いているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、精度良く、複数の光を用いて被走査面上を走査することが可能となる。
【0086】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ100によると、光走査装置900を備えているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
【0087】
なお、上記実施形態において、一例として図10に示されるように、前記偏光光学素子2に代えて、偏光ビームスプリッタPBSを用いても良い。この場合には、偏光ビームスプリッタPBSに入射する光LB1に対する光LB2の入射角度θは90°となる。
【0088】
また、上記実施形態において、一例として図11に示されるように、前記偏光光学素子2に代えて、偏光ビーム合成プリズムPBPを用いても良い。この場合には、偏光ビーム合成プリズムPBPに入射する光LB1に対する光LB2の入射角度θは0°となる。
【0089】
ところで、アスペクト比(d/Λ)の大きなサブ波長格子を作製するには非常に高度な技術を要する。そこで、所望の光学的位相差(ここでは、π)のサブ波長格子を作製するのが難しい場合には、一例として図12に示されるように、2つの光学面のそれぞれに厚さを半分にしたサブ波長格子を設けても良い。また、サブ波長格子の素材として屈折率を高いものを用いることにより、アスペクト比を小さく抑えることができる。また、所望の光学的位相差を得るために、アスペクト比の小さなサブ波長格子を複数組み合わせたり、サブ波長格子を加工しやすい光学面に形成することも可能である。
【0090】
上記実施形態では、前記格子Kの素材がベースと同じ場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、格子Kの素材として、酸化チタン(TiO2)のように屈折率が2を超えるような酸化物を用いると、n(TE)−n(TM)を大きくとることができ、厚さdを小さくすることが可能である。例えば、波長λを780nm、屈折率nを2.23、フィリングファクタfを0.5としたとき、上記(1)式からn(TE)=1.728、上記(2)式からn(TM)=1.290となり、上記(4)式から、光学的位相差をπとするための厚さdは890nmとなり、上記実施形態の約1/5となる。
【0091】
また、高い屈折率の材料と低い屈折率の材料とを組み合わせてサブ波長格子を形成しても良い。具体的には、(1)曲面状の光学面上に、高い屈折率の膜と低い屈折率の膜とを積層して多層膜を形成し(図13(A))、(2)その上にレジストを塗布する(図13(B))。(3)レーザ光あるいは電子ビームを照射してレジストを感光させる(図13(C))。このときレーザ光あるいは電子ビームの集光位置を制御して走査することにより、曲面状のレジストに微細構造格子のパターンを形成することができる。(4)レジストを現像し、多層膜上に微細構造格子を形成できる(図13(D))。(5)ドライエッチング等により多層膜の一部を除去する。(6)残ったレジストを除去する(図13(E))。ここでは、多層膜の各層は曲面状の光学面に沿った構造となっている。
【0092】
また、上記実施形態において、前記レンズ1に代えて、2つのレンズを用いてレンズ1と同等の作用を実現しても良い。この場合に、一例として図14に示されるように、各レンズの一方の光学面にそれぞれ前記格子Kの1/2の厚さのサブ波長格子を設けても良いし、どちらか一方のレンズの両面に前記格子Kの1/2の厚さのサブ波長格子を設けても良い。
【0093】
ところで、前記偏光光学素子2によって合成された2つの光ビームは、その偏光方向が90°異なっているため、光源ユニットLUから放出された光ビームを用いる光学系では、偏光方向による透過率及び反射率の違いから、その光学系を透過した後の2つの光ビームの光量が異なってしまう場合がある。光源ユニットLUの用途によってはこれでも良い場合もあるが、2つの光ビーム間で偏光状態を等しくしたいという用途もある。この場合には、一例として図15に示されるように、前記偏光光学素子2の後方にλ/4板6を挿入すると良い。これにより、直線偏光を円偏光に変化させることができ、偏光状態を等しくすることが可能である。
【0094】
この場合に、上記λ/4板6を挿入するのに代えて、図16に示されるように、前記シリンドリカルレンズ14の少なくとも1つの光学面に、光源ユニットLUからの各光ビームに対して構造複屈折を発現し、直線偏光を円偏光に変化させる格子Kaを設けても良い。この格子Kaは、前記格子Kの厚さを1/2にしたものである。そして、この格子Kaが設けられたシリンドリカルレンズ14は、本発明に係る光学素子である。
【0095】
また、上記実施形態において、前記格子Kの周期、厚さ、フィルファクタのうちの少なくとも1つを、前記ベースの曲面状の光学面での位置によって変化させても良い。前記曲面が球面であれば、曲面の傾斜は常に一定であるが、非球面(球面でない、自由曲面も含む)であれば、曲面の傾斜は曲面上の位置によって異なり、構造複屈折特性が不均一となるおそれがある。そこで、前記曲面が非球面のときに、周期、厚さ、フィルファクタのうちの少なくとも1つを変化させることにより、構造複屈折特性を均一化することができる。また、これにより、設計の自由度が高くなる。図17(A)には、中心から周辺に行くに従って周期が大きくなる例が示され、図17(B)には、周辺に行くに従って厚さが大きくなる例(ここでは頂点の高さが揃っている例)が示され、図17(C)には、周辺に行くに従ってフィルファクタが大きくなる例が示されている。もちろん、これらを組み合わせても良い。
【0096】
図17(A)の格子は、前述した微細構造格子を形成する方法において、レーザ光あるいは電子ビームの照射位置を変調することにより実現可能である。図17(C)の格子は、前述した微細構造格子を形成する方法において、レーザ光あるいは電子ビームの照射強度を変調することにより実現可能である。
【0097】
図17(B)の格子を形成する方法の一例を説明する。(1)格子がその上に形成される基板の光学面を光硬化性樹脂に浸液する(図18(A))。(2)紫外線レーザを集光して照射し、光学面から液底面部まで光硬化性樹脂を硬化させる(図18(B))。レーザ光を走査しながら光硬化を順次行うことで、基板上に高さのそろった光硬化樹脂の格子を形成することが可能である。このとき高さは液面の高さで調整することが可能である。(3)その後、未硬化の樹脂を取り除く(図18(C))。
【0098】
また、前記格子Kの凹凸を、複数段のステップ状としても良い。一例として図19に2段の場合が示されている。この図19に示される微細構造格子を複製によって作製する方法の一例を説明する。(1)基板上にレジストを塗布し(図20(A))、(2)電子ビーム露光やレーザ露光等でレジストの格子パターンを作成し(図20(B))、(3)表面に金属等の導電膜を付加する(図20(C))。(4)電鋳により、格子パターンをNi等の金属で被覆し、(図20(D))、(5)その金属を分離して反転型とする(図20(E))。(6)この反転型を金型として、射出成形法等の複製法を用いて、透明樹脂材料等にその形状を転写する(図20(F))。これにより、複数段のステップ状の凹凸を有する微細構造格子を持った光学素子を作製することができる(図20(G))。この場合には、上記(1)の基板は、使用波長に対して透明な光学材料である必要はない。
【0099】
また、上記実施形態において、光源ユニットLUから出射される光ビーム数を増やしても良い。例えば図21(A)〜図21(C)に示されるように、前記シングルビーム光源LD1に代えて、2つのシングルビーム光源(LD1a、LD1b)を用い、前記シングルビーム光源LD2に代えて、2つのシングルビーム光源(LD2a、LD2b)を用いても良い。この場合には、前記レンズ1に代えて、前記レンズ1と同等の2つのレンズ(1a、1b)が用いられ、前記レンズ4に代えて、前記レンズ4と同等の2つのレンズ(4a、4b)が用いられる。
【0100】
また、例えば図22に示されるように、前記シングルビーム光源LD1に代えて、マルチビーム光源LA1を用い、前記シングルビーム光源LD2に代えて、マルチビーム光源LA2を用いても良い。図22では、各マルチビーム光源は2つの発光点を持っている。
【0101】
さらに、高価ではあるが、4つの発光点を持つマルチビーム光源や、さらに多くの発光点を持つマルチビーム光源を用いることも可能である。また、2つの発光点を持つマルチビーム光源4つ用いて8本の光ビームを構成したり、4つの発光点を持つマルチビーム光源を4つ用いて16本の光ビームを構成することも可能である。
【0102】
また、上記実施形態では、前記シングルビーム光源LD1から出射された光の偏光方向をTE偏光に変換する場合について説明したが、これに限らず、前記シングルビーム光源LD4から出射された光の偏光方向をTE偏光に変換しても良い。この場合には、前記レンズ1と前記レンズ4の配置位置が入れ替わることとなる。そして、偏光光学素子2は、TE偏光の光を回折するように設定される。
【0103】
また、上記実施形態では、画像形成装置がレーザプリンタ100の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、光走査装置900を備えた画像形成装置であれば、高品質の画像を高速に形成することが可能となる。
【0104】
また、カラー画像を形成する画像形成装置であっても、カラー画像に対応した光走査装置を用いることにより、安価で高速に画像を形成することが可能となる。
【0105】
また、画像形成装置として、カラー画像に対応し、画像情報毎に感光ドラムを備えるタンデムカラー機であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光走査装置を示す概略図である。
【図3】図2における光源ユニットを説明するための図である。
【図4】図3におけるレンズ1を説明するための図である。
【図5】不要な光ビームを説明するための図である。
【図6】処理回路を説明するための図である。
【図7】図7(A)〜図7(D)は、それぞれ微細構造格子の作製方法1を説明するための図である。
【図8】微細構造格子の作製方法2を説明するための図である。
【図9】微細構造格子の作製方法3を説明するための図である。
【図10】図3の光源ユニットの変形例1を説明するための図である。
【図11】図3の光源ユニットの変形例2を説明するための図である。
【図12】レンズ1の変形例を説明するための図である。
【図13】図13(A)〜図13(E)は、それぞれ微細構造格子の作製方法4を説明するための図である。
【図14】図3の光源ユニットの変形例3を説明するための図である。
【図15】図3の光源ユニットの変形例4を説明するための図である。
【図16】図2におけるシリンドリカルレンズの変形例を説明するための図である。
【図17】図17(A)〜図17(C)は、それぞれ微細構造格子の変形例を説明するための図である。
【図18】図18(A)〜図18(C)は、それぞれ図17(B)の微細構造格子の作製方法を説明するための図である。
【図19】微細構造格子の変形例を説明するための図である。
【図20】図20(A)〜図20(G)は、それぞれ図19の微細構造格子の作製方法を説明するための図である。
【図21】図21(A)〜図21(C)は、それぞれ図3の光源ユニットの変形例5を説明するための図である。
【図22】図3の光源ユニットの変形例6を説明するための図である。
【符号の説明】
【0107】
1…レンズ(第1の整形光学系、光学素子)、2…偏光光学素子(偏光回折素子)、4…レンズ(第2の整形光学系)、14…シリンドリカルレンズ(導光光学系、光学素子)、15…光偏向器(偏向手段)、17…走査結像レンズ(集光光学系)、100…レーザプリンタ(画像形成装置)、900…光走査装置、901…感光体ドラム(走査対象物)、902…帯電チャージャ(転写装置の一部)、903…現像ローラ(転写装置の一部)、904…トナーカートリッジ(転写装置の一部)、909…定着ローラ(転写装置の一部)、911…転写チャージャ(転写装置の一部)、913…記録紙(転写対象物)、LD1…シングルビーム光源(第1の光源)、LD2…シングルビーム光源(第2の光源)、LU…光源ユニット(マルチビーム光源ユニット)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、マルチビーム光源ユニット、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、凹凸の周期構造が光学面に形成された光学素子、複数のビームを出射できるマルチビーム光源ユニット、該マルチビーム光源ユニットからの光を用いて被走査面上を走査する光走査装置及び該光走査装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタやデジタル複写機などの画像形成装置では、画像情報に応じて変調された光源からの光を光偏向器及び走査レンズなどを介して感光体上に集光させるとともに、感光体上を所定の方向(主走査方向)に走査させ、感光体上に潜像(静電潜像)を形成している。そして、その潜像にトナーを付着させることにより、画像情報を顕像化させている。
【0003】
近年、画像形成装置の印字速度の向上、及び書込密度の向上が望まれている。それらの要求を達成する1つの方法として、画像形成装置の一部を構成する光走査装置の光偏向器における偏向速度の高速化がある。しかしながら、この方法には、高速回転に伴う騒音や熱等の問題があり、偏向速度の高速化には限界がある。そこで、1度に複数の光ビームを出射できるマルチビーム光源ユニットを利用して、1度に複数の光ビームを走査させる方法が考案された。
【0004】
上記マルチビーム光源ユニットは、複数の光ビームを発生するレーザアレイ光源(1つのパッケージ内に複数の発光点を持つレーザアレイを用いた光源)を用いることで実現できる。しかしながら、レーザアレイ光源は、製造プロセス上、発光点数を4,8,・・・と増やしていくにつれて技術的難易度が高くなり、非常に高価となる。
【0005】
一方、従来のシングルビーム光源(1つのパッケージ内に1つの発光点を持つレーザを用いた光源)を複数個用いて、マルチビーム光源ユニットとすることが多数提案されている。シングルビーム光源は低コストで大量生産されており、例えば4個のシングルビーム光源と、4つの発光点を持つレーザアレイ光源とでは、前者の方がコスト的に優位である。
【0006】
ところで、マルチビーム光源ユニットを複数のシングルビーム光源を用いて構成するために、各光源からの光ビームを同一方向の光軸に合わせることが必要となり、そのための光学素子(ビーム合成素子)が種々提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1には、ビーム合成素子として偏光ビームスプリッタを用いたマルチ光ビーム走査光学装置が開示されている。特許文献2には、ビーム合成素子として偏光ビーム合成プリズムを用いた複数ビーム走査装置が開示されている。
【0007】
特許文献1及び特許文献2に開示されている装置では、入射する光ビームの偏光方向の違いを利用して光ビームを合成している。そこで、入射する2つの光ビームの偏光方向が90°異なっている必要がある。
【0008】
ところで、半導体レーザの活性層から放出される光ビームは、ファーフィールドパターンにおいて楕円状の分布を示しており、偏光方向は活性層に平行である。そこで、2つの光ビームの偏光方向を90°異ならせるためには、(1)直線偏光を持つ半導体レーザを、その偏光方向が90°異なるように物理的に配置する、(2)偏光方向が90°異なるように偏光方向を変化させる素子(例えばλ/2板)を用いる、といった方法がある。ここでλ/2板は、ある偏光方向を持つ光ビームが透過すると、その偏光方向が90°回転するような、一般的には複屈折性結晶を用いた素子である。すなわち、偏光方向が同じ方向を持つように配置された半導体レーザの一方をλ/2板を透過させることによって、その偏光方向を90°異ならせることができる。
【0009】
しかしながら、上記(1)の方法では、半導体レーザの配置方向が互いに異なるため、光ビームのファーフィールドパターンが互いに異なる。この異なるファーフィールドパターンを持つ光ビームをビーム合成素子で合成し、所望の光学系を透過させた場合、ファーフィールドパターンの違いに起因して,光学系を透過させた後の光ビームプロファイルが互いに異なってしまうという不都合が発生する。一方、上記(2)の方法では、偏光方向を変化させる光学素子を追加しなくてはならないため、構成によっては、光学系のサイズが大きくなったり、光学素子のレイアウト自由度が減少したり、光学素子の追加による調整精度の向上が必要になったり、コストアップを生じたりする、という不都合が生じる。
【0010】
ところで、屈折率の異なる2つの媒質(例えば、一方が空気で、他方が等方性媒質)が、SWS(Subwavelength Structure;サブ波長構造)とも呼ばれる、入射光の波長よりも小さい周期構造をなしているときには、構造複屈折と呼ばれる光学的異方性が発現する(例えば、非特許文献1参照)。なお、微細な凹凸の周期構造の形成は、平板状のSiO2や樹脂に対して行われるのが一般的であった。最近では、曲面状の光学面に微細構造を設けることが特許文献3や特許文献4に開示されているが、いずれも反射防止を目的とする微細構造である。
【0011】
【特許文献1】特開平9−230260号公報
【特許文献2】特開2001−13433号公報
【特許文献3】特開2004−155083号公報
【特許文献4】特開2004−361906号公報
【非特許文献1】菊田久男、岩田耕一、「波長より細かな格子構造による光制御」、光学、27巻、第1号、p.12−17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、入射光の偏光状態を変化させる機能が付加された光学素子を提供することにある。
【0013】
また、本発明の第2の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを出射することができるマルチビーム光源ユニットを提供することにある。
【0014】
また、本発明の第3の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、精度良く、複数の光を用いて被走査面上を走査することができる光走査装置を提供することにある。
【0015】
また、本発明の第4の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、第1の観点からすると、入射光に対して構造複屈折を発現し、前記入射光の偏光状態を変化させる格子が、少なくとも1つの曲面状の光学面上に形成されている光学素子である。
【0017】
これによれば、少なくとも1つの曲面状の光学面上に、入射光に対して構造複屈折を発現し、入射光の偏光状態を変化させる格子が設けられているため、入射光の偏光状態を変化させる機能を付加することが可能となる。
【0018】
本発明は、第2の観点からすると、偏光方向が互いに同一の光ビームを出射する第1の光源及び第2の光源、を含む複数の光源と;前記第1の光源から出射された光ビームの光路上に配置され、その少なくとも1つの曲面状の光学面上に、前記第1の光源から出射された光ビームに対して構造複屈折を発現し、該光ビームの偏光方向を変化させる格子が設けられた少なくとも1つの光学素子を含み、前記第1の光源から出射された光ビームを整形するとともに、前記第1の光源から出射された光ビームの偏光方向を90°変化させる第1の整形光学系と;前記第2の光源から出射された光ビームを整形する第2の整形光学系と;前記第1及び第2の整形光学系を介した各光ビームの少なくとも一部を互いに同一方向に出射する偏光回折素子と;を備えるマルチビーム光源ユニットである。
【0019】
これによれば、第1の整形光学系が、第1の光源から出射された光ビームを整形する機能と第1の光源から出射された光ビームの偏光方向を90°変化させる機能とを有することとなる。従って、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを出射することが可能となる。
【0020】
本発明は、第3の観点からすると、光ビームによって被走査面上を走査する光走査装置であって、少なくとも1つの本発明のマルチビーム光源ユニットと;前記マルチビーム光源ユニットから出射された複数の光ビームを偏向する偏向手段と;前記マルチビーム光源ユニットと前記偏向手段との間に配置され、前記マルチビーム光源ユニットから出射された複数の光ビームを前記偏向手段に導く導光光学系と;前記偏向手段にて偏向された複数の光ビームを前記被走査面上に集光する集光光学系と;を備える光走査装置である。
【0021】
これによれば、少なくとも1つの本発明のマルチビーム光源ユニットを備えているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、精度良く、複数の光を用いて被走査面上を走査することが可能となる。
【0022】
本発明は、第4の観点からすると、少なくとも1つの走査対象物と;前記少なくとも1つの走査対象物に対して画像情報が含まれる複数の光ビームを走査する少なくとも1つの本発明の光走査装置と;前記少なくとも1つの走査対象物に形成された像を転写対象物に転写する転写装置と;を備える画像形成装置である。
【0023】
これによれば、少なくとも1つの本発明の光走査装置を備えているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ100の概略構成が示されている。
【0025】
図1に示されるレーザプリンタ100は、光走査装置900、走査対象物としての感光体ドラム901、帯電チャージャ902、現像ローラ903、トナーカートリッジ904、クリーニングブレード905、給紙トレイ906、給紙コロ907、レジストローラ対908、転写チャージャ911、定着ローラ909、排紙ローラ912、及び排紙トレイ910などを備えている。
【0026】
帯電チャージャ902、現像ローラ903、転写チャージャ911及びクリーニングブレード905は、それぞれ感光体ドラム901の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム901の回転方向に関して、帯電チャージャ902→現像ローラ903→転写チャージャ911→クリーニングブレード905の順に配置されている。
【0027】
感光体ドラム901の表面には、感光層が形成されている。ここでは、感光体ドラム901は、図1における面内で時計回り(矢印方向)に回転するようになっている。
【0028】
帯電チャージャ902は、感光体ドラム901の表面を均一に帯電させる。
【0029】
光走査装置900は、帯電チャージャ902で帯電された感光体ドラム901の表面に、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光を照射する。これにより、感光体ドラム901の表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム901の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って現像ローラ903の方向に移動する。ところで、感光体ドラム901の長手方向(回転軸に沿った方向)は「主走査方向」と呼ばれ、感光体ドラム901の回転方向は「副走査方向」と呼ばれている。また、感光体ドラム901における走査開始位置から走査終了位置までの主走査方向の走査領域のうち、潜像が形成される領域を「有効画像形成領域」ともいう。この光走査装置900の構成については後述する。
【0030】
トナーカートリッジ904にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ903に供給される。このトナーカートリッジ904内のトナー量は、電源投入時や印刷終了時などにチェックされ、残量が少ないときには不図示の表示部に交換を促すメッセージが表示される。
【0031】
現像ローラ903は、回転に伴ってその表面にトナーカートリッジ904から供給されたトナーが帯電されて薄く均一に付着される。また、この現像ローラ903には、感光体ドラム901における帯電している部分(光が照射されなかった部分)と帯電していない部分(光が照射された部分)とで互いに逆方向の電界が生じるような電圧が印加されている。そして、この電圧によって、現像ローラ903の表面に付着しているトナーは、感光体ドラム901の表面の光が照射された部分にだけ付着する。すなわち、現像ローラ903は、感光体ドラム901の表面に形成された潜像にトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って転写チャージャ911の方向に移動する。
【0032】
給紙トレイ906には転写対象物としての記録紙913が格納されている。この給紙トレイ906の近傍には給紙コロ907が配置されており、該給紙コロ907は、記録紙913を給紙トレイ906から1枚づつ取り出し、レジストローラ対908に搬送する。該レジストローラ対908は、転写ローラ911の近傍に配置され、給紙コロ907によって取り出された記録紙913を一旦保持するとともに、該記録紙913を感光体ドラム901の回転に合わせて感光体ドラム901と転写チャージャ911との間隙に向けて送り出す。
【0033】
転写チャージャ911には、感光体ドラム901の表面上のトナーを電気的に記録紙913に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム901の表面の潜像が記録紙913に転写される。ここで転写された記録紙913は、定着ローラ909に送られる。
【0034】
この定着ローラ909では、熱と圧力とが記録紙913に加えられ、これによってトナーが記録紙913上に定着される。ここで定着された記録紙913は、排紙ローラ912を介して排紙トレイ910に送られ、排紙トレイ910上に順次スタックされる。
【0035】
クリーニングブレード905は、感光体ドラム901の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラム901の表面は、再度帯電チャージャ902の位置に戻る。
【0036】
次に、前記光走査装置900の構成及び作用について図2を用いて説明する。
【0037】
この光走査装置900は、光源ユニットLU、シリンドリカルレンズ14、光偏向器15、2枚の走査結像レンズ17、同期センサ18、反射ミラー19、及び処理装置(図2では図示省略)などを備えている。
【0038】
光源ユニットLUは、一例として図3に示されるように、2つのシングルビーム光源(LD1、LD2)、2つのレンズ(1、4)、及び偏光光学素子2などを有している。
【0039】
シングルビーム光源LD1は、+Y方向にTM偏光の光を出射する。レンズ1は、シングルビーム光源LD1の+Y側に配置されている。そして、偏光光学素子2は、レンズ1の+Y側に配置されている。
【0040】
シングルビーム光源LD2は、シングルビーム光源LD1の−Z側に配置され、偏光光学素子2に向けてTM偏光の光を出射する。そして、レンズ4は、シングルビーム光源LD2と偏光光学素子2との間の光路上に配置されている。
【0041】
なお、一例として各シングルビーム光源は、波長が780nmのレーザ光をそれぞれ出射するものとする。
【0042】
レンズ1は、一例として図4に示されるように、ベースとなるコリメートレンズの1つの曲面状の光学面上に、シングルビーム光源LD1から出射された光ビームに対して構造複屈折を発現させる格子Kが設けられた光学素子である。この格子Kは、その周期がシングルビーム光源LD1から出射された光の波長よりも小さい、いわゆるサブ波長構造の格子(以下、「サブ波長格子」ともいう)であり、TM偏光の光の偏光方向を90°変化させる機能を有している。すなわち、レンズ1は、シングルビーム光源LD1から出射された光LB1を、略平行光に整形するとともに、偏光状態をTE偏光とする。なお、格子Kの素材はベースと同じであるものとする。
【0043】
ここで、サブ波長格子について説明する。ここでは、説明を簡略化するため、平行平板の一側の面にサブ波長格子が形成されているものとする。サブ波長格子では、TE偏光に対する有効屈折率n(TE)は、次の(1)式で示され、TM偏光に対する有効屈折率n(TM)は、次の(2)式で示される。ここで、nはサブ波長格子の素材の屈折率、fはサブ波長格子のフィリングファクタである。
【0044】
n(TE)=√{fn2+(1−f)} ……(1)
n(TM)=√[n2/{f+(1−f)n2}] ……(2)
【0045】
そして、サブ波長格子によって付与される光学的位相差φは、次の(3)式で示される。ここで、dはサブ波長格子の厚さ、λは入射光の波長である。
【0046】
φ=2π{n(TE)−n(TM)}d/λ ……(3)
【0047】
ところで、サブ波長格子に直線偏光を斜め45°から入射して直線偏光の方向を90°回転させるためには、サブ波長格子がπの位相差を持つλ/2板として機能すれば良い。そこで、上記(3)式においてφ=πとすると、次の(4)式が導かれる。
【0048】
λ/d=2{n(TE)−n(TM)} ……(4)
【0049】
例えば、n=1.45、f=0.5であれば、上記(1)式からn(TE)=1.245、上記(2)式からn(TM)=1.164となり、λ=780nmであれば、上記(4)式からd=4815nmとなる。
【0050】
そこで、一例として格子Kは、n=1.45、Λ=400nm、f=0.5、d=4815nmとしている。
【0051】
また、格子Kは、回折光を発生しない0次格子である。これにより、ゴースト光及びフレア光が発生しないため、光量ロスがなくなるとともに、不要光の除去を考慮する必要がなくなる。
【0052】
ここで、0次格子について簡単に説明する。格子に対して入射光が垂直に入射されるとき、次の(5)式の関係が満たされる場合に、その格子は0次格子である。
【0053】
Λ<λ/n ……(5)
【0054】
ここでは、格子Kは、n=1.45、Λ=400nmであり、λ=780nmの入射光に対して、上記(5)式の関係を満たしている。
【0055】
図3に戻り、レンズ4は、シングルビーム光源LD2から出射された光LB2を略平行光に整形する。
【0056】
レンズ1を介した光LB1は、偏光光学素子2に垂直に入射し、界面でのフレネル反射を除いて100%透過する。レンズ4を介した光LB2は、偏光光学素子2に対して角度θをなして入射し、偏光光学素子2による回折作用によって、その一部が+Y方向に曲げられる。すなわち、偏光光学素子2は、レンズ1を介した光LB1及びレンズ4を介した光LB2を互いに同一方向(ここでは、+Y方向)の光軸に合わせる。なお、YZ平面における偏光光学素子2に入射する光LB1に対する光LB2の入射角度θは0°でも良いし、90°でも良いし、もちろん、鋭角でも鈍角でも構わない。
【0057】
すなわち、シングルビーム光源LD1から出射され、レンズ1、及び偏光光学素子2を介した光(以下、便宜上「第1光ビーム」ともいう)と、シングルビーム光源LD2から出射され、レンズ4、及び偏光光学素子2を介した光(以下、便宜上「第2光ビーム」ともいう)とが、光源ユニットLUから出射される。なお、第1光ビーム及び第2光ビームは、感光体ドラム901の表面において副走査方向に所定の間隔で集光されるように、略同一方向に出射される。
【0058】
ところで、一例として図5に示されるように、偏光光学素子2からの反射光や、偏光光学素子2における所望の回折次数以外の回折光は不要な光となるが、これらの不要な光は、光走査装置内及び光走査装置外の少なくとも一方において、アパーチャなどのメカ部品及びその他の光学部品によって、感光体ドラム901上に光スポットを形成しないように遮光されている。
【0059】
また、第1光ビームと第2光ビームの光量差については、各シングルビーム光源の発光パワーを調整することにより、ほぼ0にすることができる。
【0060】
図2に戻り、光源ユニットLUから出射された第1光ビーム及び第2光ビームは、それぞれシリンドリカルレンズ14に入射する。このシリンドリカルレンズ14は、各光ビームに対して、主走査方向に対応する方向に細長い線像を、光偏向器15の偏向反射面(ポリゴンミラー面)近傍にそれぞれ結像する。
【0061】
光偏向器15で偏向された各光ビームは、走査結像レンズ17によってそれぞれ結像され、感光体ドラム901表面上の、副走査方向に互いに所定の間隔だけ離れた位置に、光スポットとして集光される。
【0062】
なお、光偏向器15は、ポリゴンモータ(不図示)によって一定の速度で回転しており、その回転に伴って偏向反射面近傍に結像された各光ビームは等角速度的に偏向され、感光体ドラム901上の各光スポットは、主走査方向に等速移動する。すなわち、感光体ドラム901上を主走査方向に2ライン同時に走査する。
【0063】
また、走査結像レンズ17を透過して有効画像領域外に向かう光の一部は、反射ミラー19を介して同期センサ18で受光される。同期センサ18は、受光量に応じた信号(光電変換信号)を出力する。
【0064】
処理回路は、図6に示されるように、信号調整回路60、変調データ生成回路30、シリアル信号生成回路35、画像データ生成回路40、及びレーザ駆動回路50などを有している。
【0065】
信号調整回路60は、同期センサ18の出力信号を増幅、反転及び2値化し、同期信号を生成する。
【0066】
画像データ生成回路40は、上位装置からの画像情報に基づいて、画像データを生成する。
【0067】
変調データ生成回路30は、信号調整回路60からの同期信号及び画像データ生成回路40からの画像データに基づいて変調データを生成する。
【0068】
シリアル信号生成回路35は、変調データ生成回路30からの変調データをシリアル信号に変換する。
【0069】
レーザ駆動回路50は、シリアル信号生成回路35からのシリアル信号に基づいて、シングルビーム光源LD1及びLD2の駆動信号を生成する。ここで生成された各駆動信号は光源ユニットLUに出力される。
【0070】
ここで、曲面状の光学面上に構造複屈折を発現する微細構造の格子(以下、「微細構造格子」ともいう)を形成する方法について説明する。
【0071】
先ず、レーザ干渉露光法について説明する。このレーザ干渉露光法は、通常、青〜紫外領域の波長を持つレーザ光を干渉させて感光性の高分子材料(レジスト)に照射し、その干渉パターンを利用して微細構造格子を形成する方法である。具体的には、(1)曲面状の光学面上にレジストをスピンコートあるいはディッピング等により塗布する(図7(A)参照)。(2)2方向から紫外レーザ光を照射する二光束干渉法により、レジストに微細構造の格子パターンを形成する(図7(B)参照)。なお、二光束干渉法では、微細構造のピッチはレーザ光の波長の1/2まで微細化することが可能である。(3)レジストを現像し、曲面状の光学面上にレジスト材料の微細構造格子を形成する(図7(C)参照)。(4)ドライエッチングを行い、基板に微細構造格子を形成する(図7(D)参照)。レーザ干渉露光法では、基板材料としてガラス、石英、ポリマー、シリコン等多くの材料を用いることができる。
【0072】
次に、電子ビーム露光法について説明する。この電子ビーム露光法は、電子ビームをレジストに集光するとともに、レジスト上を走査して微細構造格子を形成する方法である。
【0073】
前記格子Kは、これらの方法を用いて形成することができる。
【0074】
また、レジストを用いないで、直接光学素子材料に微細構造格子を形成することもできる。例えば、光硬化法やレーザアブレーション法が知られている。
【0075】
図8には、光硬化法を用いた例が示されている。この光硬化法では、レーザ光を光硬化性材料中に集光し、多光子吸収過程によってその集光点近傍においてその材料を硬化させ、レーザ光を3次元的に走査することにより微細構造格子を形成する。Nd:YAGレーザやTi:Sapphireレーザなどのレーザ装置から出射されたレーザ光は、1/2波長板とグラントムソンプリズムによってその光強度が調整された後、空間フィルタによって波形整形される。そして、ガルバノミラーによって光路を変えながら、リレーレンズ、結像レンズ、及び対物レンズを介して基板上の光硬化性材料中に集光される。また、集光点はピエゾステージによって基板垂直方向にも移動可能である。このように、ガルバノミラーとピエゾステージの組み合わせにより、3次元的に構造を作製することが可能である。このとき光硬化性材料としては、光硬化性樹脂や、光硬化性の有機・無機ハイブリッド材料などがあり、この光硬化性材料がそのまま光学素子として機能できる。なお、この加工装置の構成は1つの例であって、この限りではない。
【0076】
レーザアブレーション法としては、レーザ光を干渉させ、その干渉パターンによって微細構造格子を形成する方法や、レーザ光を直接照射して微細構造格子を形成する方法がある。以下、後者について図9を用いて説明する。
【0077】
レーザ装置から出射されたレーザ光は、フォトマスクによってレーザ光の一部が透過され、そのレーザ光パターンはミラーを介して集光レンズによって縮小投影され、光学素子材料に照射される。また、光学素子材料はXYZステージ上に設置され、3次元的に移動可能である。もちろん、ミラーの代わりにガルバノミラー等を設けて、レーザ光を走査してもよい。また、フォトマスクには複数のパターン(図9では2種類)が用意され、加工したいパターンや加工対象である光学素子材料などに応じて選択することができる。これらXYZステージの移動やパターンの選択はPC(パソコン)によって制御されている。なお、この加工素子の構成は1つの例であることは言うまでもない。
【0078】
また、上記いずれの方法においても、レーザ光のパルス幅が10ピコ秒以下である極短パルスレーザを使用することができる。極短パルスレーザの利用により、熱伝播による溶融、ダメージ層の低減、多光子吸収断面積の増加が可能であるといった利点があり、近年用いられるようになってきている。また多光子吸収断面積を増加させることが可能であることから光硬化法において、より効果的、低エネルギーで行うことが可能となる。
【0079】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光走査装置900では、光源ユニットLUによってマルチビーム光源ユニットが実現されている。そして、シングルビーム光源LD1によって第1の光源が実現され、シングルビーム光源LD2によって第2の光源が実現され、レンズ1によって第1の整形光学系が実現され、レンズ4によって第2の整形光学系が実現され、偏光光学素子2によって偏光回折素子が実現されている。また、シリンドリカルレンズ14によって導光光学系が実現され、光偏向器15によって偏向手段が実現され、走査結像レンズ17によって集光光学系が実現されている。
【0080】
また、レンズ1によって本発明に係る光学素子が実現されている。
【0081】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ100では、帯電チャージャ902と現像ローラ903とトナーカートリッジ904と転写チャージャ911とによって転写装置が構成されている。
【0082】
以上説明したように、本実施形態に係るレンズ1によると、コリメートレンズの1つの曲面状の光学面上に、入射光に対して構造複屈折を発現し、入射光の偏光方向を90°変化させる格子が設けられている。これにより、レンズ1は、入射光を整形するとともに、TM偏光の光をTE偏光とすることができる。すなわち、コリメートレンズに、入射光の偏光状態を変化させる機能を付加することが可能となる。
【0083】
なお、構造複屈折は、屈折率の異なる2つの媒質(例えば、一方が空気で、他方が等方性媒質)が、入射光の波長程度からその数倍以下の周期構造、いわゆる共鳴領域の周期構造(共鳴構造)をなしている格子においても発現することが知られている。そこで、格子Kは、共鳴構造格子であっても良い。
【0084】
また、本実施形態に係る光源ユニットLUによると、シングルビーム光源LD1と偏光光学素子2との間の光路上にレンズ1を配置しているため、シングルビーム光源LD1から出射されたTM偏光の光ビームは、レンズ1で整形されるとともに、TE偏光とされて、偏光光学素子2に入射する。一方、シングルビーム光源LD2から出射されたTM偏光の光ビームは、レンズ4で整形されて、偏光光学素子2に入射する。偏光光学素子2に入射した各光ビームは、互いに同一方向に出射される。従って、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを安定して出射することが可能となる。
【0085】
また、本実施形態に係る光走査装置900によると、光源ユニットLUを用いているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、精度良く、複数の光を用いて被走査面上を走査することが可能となる。
【0086】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ100によると、光走査装置900を備えているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
【0087】
なお、上記実施形態において、一例として図10に示されるように、前記偏光光学素子2に代えて、偏光ビームスプリッタPBSを用いても良い。この場合には、偏光ビームスプリッタPBSに入射する光LB1に対する光LB2の入射角度θは90°となる。
【0088】
また、上記実施形態において、一例として図11に示されるように、前記偏光光学素子2に代えて、偏光ビーム合成プリズムPBPを用いても良い。この場合には、偏光ビーム合成プリズムPBPに入射する光LB1に対する光LB2の入射角度θは0°となる。
【0089】
ところで、アスペクト比(d/Λ)の大きなサブ波長格子を作製するには非常に高度な技術を要する。そこで、所望の光学的位相差(ここでは、π)のサブ波長格子を作製するのが難しい場合には、一例として図12に示されるように、2つの光学面のそれぞれに厚さを半分にしたサブ波長格子を設けても良い。また、サブ波長格子の素材として屈折率を高いものを用いることにより、アスペクト比を小さく抑えることができる。また、所望の光学的位相差を得るために、アスペクト比の小さなサブ波長格子を複数組み合わせたり、サブ波長格子を加工しやすい光学面に形成することも可能である。
【0090】
上記実施形態では、前記格子Kの素材がベースと同じ場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、格子Kの素材として、酸化チタン(TiO2)のように屈折率が2を超えるような酸化物を用いると、n(TE)−n(TM)を大きくとることができ、厚さdを小さくすることが可能である。例えば、波長λを780nm、屈折率nを2.23、フィリングファクタfを0.5としたとき、上記(1)式からn(TE)=1.728、上記(2)式からn(TM)=1.290となり、上記(4)式から、光学的位相差をπとするための厚さdは890nmとなり、上記実施形態の約1/5となる。
【0091】
また、高い屈折率の材料と低い屈折率の材料とを組み合わせてサブ波長格子を形成しても良い。具体的には、(1)曲面状の光学面上に、高い屈折率の膜と低い屈折率の膜とを積層して多層膜を形成し(図13(A))、(2)その上にレジストを塗布する(図13(B))。(3)レーザ光あるいは電子ビームを照射してレジストを感光させる(図13(C))。このときレーザ光あるいは電子ビームの集光位置を制御して走査することにより、曲面状のレジストに微細構造格子のパターンを形成することができる。(4)レジストを現像し、多層膜上に微細構造格子を形成できる(図13(D))。(5)ドライエッチング等により多層膜の一部を除去する。(6)残ったレジストを除去する(図13(E))。ここでは、多層膜の各層は曲面状の光学面に沿った構造となっている。
【0092】
また、上記実施形態において、前記レンズ1に代えて、2つのレンズを用いてレンズ1と同等の作用を実現しても良い。この場合に、一例として図14に示されるように、各レンズの一方の光学面にそれぞれ前記格子Kの1/2の厚さのサブ波長格子を設けても良いし、どちらか一方のレンズの両面に前記格子Kの1/2の厚さのサブ波長格子を設けても良い。
【0093】
ところで、前記偏光光学素子2によって合成された2つの光ビームは、その偏光方向が90°異なっているため、光源ユニットLUから放出された光ビームを用いる光学系では、偏光方向による透過率及び反射率の違いから、その光学系を透過した後の2つの光ビームの光量が異なってしまう場合がある。光源ユニットLUの用途によってはこれでも良い場合もあるが、2つの光ビーム間で偏光状態を等しくしたいという用途もある。この場合には、一例として図15に示されるように、前記偏光光学素子2の後方にλ/4板6を挿入すると良い。これにより、直線偏光を円偏光に変化させることができ、偏光状態を等しくすることが可能である。
【0094】
この場合に、上記λ/4板6を挿入するのに代えて、図16に示されるように、前記シリンドリカルレンズ14の少なくとも1つの光学面に、光源ユニットLUからの各光ビームに対して構造複屈折を発現し、直線偏光を円偏光に変化させる格子Kaを設けても良い。この格子Kaは、前記格子Kの厚さを1/2にしたものである。そして、この格子Kaが設けられたシリンドリカルレンズ14は、本発明に係る光学素子である。
【0095】
また、上記実施形態において、前記格子Kの周期、厚さ、フィルファクタのうちの少なくとも1つを、前記ベースの曲面状の光学面での位置によって変化させても良い。前記曲面が球面であれば、曲面の傾斜は常に一定であるが、非球面(球面でない、自由曲面も含む)であれば、曲面の傾斜は曲面上の位置によって異なり、構造複屈折特性が不均一となるおそれがある。そこで、前記曲面が非球面のときに、周期、厚さ、フィルファクタのうちの少なくとも1つを変化させることにより、構造複屈折特性を均一化することができる。また、これにより、設計の自由度が高くなる。図17(A)には、中心から周辺に行くに従って周期が大きくなる例が示され、図17(B)には、周辺に行くに従って厚さが大きくなる例(ここでは頂点の高さが揃っている例)が示され、図17(C)には、周辺に行くに従ってフィルファクタが大きくなる例が示されている。もちろん、これらを組み合わせても良い。
【0096】
図17(A)の格子は、前述した微細構造格子を形成する方法において、レーザ光あるいは電子ビームの照射位置を変調することにより実現可能である。図17(C)の格子は、前述した微細構造格子を形成する方法において、レーザ光あるいは電子ビームの照射強度を変調することにより実現可能である。
【0097】
図17(B)の格子を形成する方法の一例を説明する。(1)格子がその上に形成される基板の光学面を光硬化性樹脂に浸液する(図18(A))。(2)紫外線レーザを集光して照射し、光学面から液底面部まで光硬化性樹脂を硬化させる(図18(B))。レーザ光を走査しながら光硬化を順次行うことで、基板上に高さのそろった光硬化樹脂の格子を形成することが可能である。このとき高さは液面の高さで調整することが可能である。(3)その後、未硬化の樹脂を取り除く(図18(C))。
【0098】
また、前記格子Kの凹凸を、複数段のステップ状としても良い。一例として図19に2段の場合が示されている。この図19に示される微細構造格子を複製によって作製する方法の一例を説明する。(1)基板上にレジストを塗布し(図20(A))、(2)電子ビーム露光やレーザ露光等でレジストの格子パターンを作成し(図20(B))、(3)表面に金属等の導電膜を付加する(図20(C))。(4)電鋳により、格子パターンをNi等の金属で被覆し、(図20(D))、(5)その金属を分離して反転型とする(図20(E))。(6)この反転型を金型として、射出成形法等の複製法を用いて、透明樹脂材料等にその形状を転写する(図20(F))。これにより、複数段のステップ状の凹凸を有する微細構造格子を持った光学素子を作製することができる(図20(G))。この場合には、上記(1)の基板は、使用波長に対して透明な光学材料である必要はない。
【0099】
また、上記実施形態において、光源ユニットLUから出射される光ビーム数を増やしても良い。例えば図21(A)〜図21(C)に示されるように、前記シングルビーム光源LD1に代えて、2つのシングルビーム光源(LD1a、LD1b)を用い、前記シングルビーム光源LD2に代えて、2つのシングルビーム光源(LD2a、LD2b)を用いても良い。この場合には、前記レンズ1に代えて、前記レンズ1と同等の2つのレンズ(1a、1b)が用いられ、前記レンズ4に代えて、前記レンズ4と同等の2つのレンズ(4a、4b)が用いられる。
【0100】
また、例えば図22に示されるように、前記シングルビーム光源LD1に代えて、マルチビーム光源LA1を用い、前記シングルビーム光源LD2に代えて、マルチビーム光源LA2を用いても良い。図22では、各マルチビーム光源は2つの発光点を持っている。
【0101】
さらに、高価ではあるが、4つの発光点を持つマルチビーム光源や、さらに多くの発光点を持つマルチビーム光源を用いることも可能である。また、2つの発光点を持つマルチビーム光源4つ用いて8本の光ビームを構成したり、4つの発光点を持つマルチビーム光源を4つ用いて16本の光ビームを構成することも可能である。
【0102】
また、上記実施形態では、前記シングルビーム光源LD1から出射された光の偏光方向をTE偏光に変換する場合について説明したが、これに限らず、前記シングルビーム光源LD4から出射された光の偏光方向をTE偏光に変換しても良い。この場合には、前記レンズ1と前記レンズ4の配置位置が入れ替わることとなる。そして、偏光光学素子2は、TE偏光の光を回折するように設定される。
【0103】
また、上記実施形態では、画像形成装置がレーザプリンタ100の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、光走査装置900を備えた画像形成装置であれば、高品質の画像を高速に形成することが可能となる。
【0104】
また、カラー画像を形成する画像形成装置であっても、カラー画像に対応した光走査装置を用いることにより、安価で高速に画像を形成することが可能となる。
【0105】
また、画像形成装置として、カラー画像に対応し、画像情報毎に感光ドラムを備えるタンデムカラー機であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光走査装置を示す概略図である。
【図3】図2における光源ユニットを説明するための図である。
【図4】図3におけるレンズ1を説明するための図である。
【図5】不要な光ビームを説明するための図である。
【図6】処理回路を説明するための図である。
【図7】図7(A)〜図7(D)は、それぞれ微細構造格子の作製方法1を説明するための図である。
【図8】微細構造格子の作製方法2を説明するための図である。
【図9】微細構造格子の作製方法3を説明するための図である。
【図10】図3の光源ユニットの変形例1を説明するための図である。
【図11】図3の光源ユニットの変形例2を説明するための図である。
【図12】レンズ1の変形例を説明するための図である。
【図13】図13(A)〜図13(E)は、それぞれ微細構造格子の作製方法4を説明するための図である。
【図14】図3の光源ユニットの変形例3を説明するための図である。
【図15】図3の光源ユニットの変形例4を説明するための図である。
【図16】図2におけるシリンドリカルレンズの変形例を説明するための図である。
【図17】図17(A)〜図17(C)は、それぞれ微細構造格子の変形例を説明するための図である。
【図18】図18(A)〜図18(C)は、それぞれ図17(B)の微細構造格子の作製方法を説明するための図である。
【図19】微細構造格子の変形例を説明するための図である。
【図20】図20(A)〜図20(G)は、それぞれ図19の微細構造格子の作製方法を説明するための図である。
【図21】図21(A)〜図21(C)は、それぞれ図3の光源ユニットの変形例5を説明するための図である。
【図22】図3の光源ユニットの変形例6を説明するための図である。
【符号の説明】
【0107】
1…レンズ(第1の整形光学系、光学素子)、2…偏光光学素子(偏光回折素子)、4…レンズ(第2の整形光学系)、14…シリンドリカルレンズ(導光光学系、光学素子)、15…光偏向器(偏向手段)、17…走査結像レンズ(集光光学系)、100…レーザプリンタ(画像形成装置)、900…光走査装置、901…感光体ドラム(走査対象物)、902…帯電チャージャ(転写装置の一部)、903…現像ローラ(転写装置の一部)、904…トナーカートリッジ(転写装置の一部)、909…定着ローラ(転写装置の一部)、911…転写チャージャ(転写装置の一部)、913…記録紙(転写対象物)、LD1…シングルビーム光源(第1の光源)、LD2…シングルビーム光源(第2の光源)、LU…光源ユニット(マルチビーム光源ユニット)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光に対して構造複屈折を発現し、前記入射光の偏光状態を変化させる格子が、少なくとも1つの曲面状の光学面上に設けられている光学素子。
【請求項2】
前記格子は、サブ波長構造又は共鳴構造を有する格子であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記格子は、0次格子であることを特徴とする請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記格子の少なくとも一部は、前記格子の周期、厚さ、及びフィルファクタのうちの少なくとも1つが、前記光学面上における位置によって異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記格子は、レーザ光の多光子吸収工程を含む光硬化法により作製されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記格子は、レーザ光を用いたレーザアブレーション法により作製されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記レーザ光は、パルス幅が10ピコ秒以下である極短パルスレーザ光であることを特徴とする請求項5又は6に記載の光学素子。
【請求項8】
前記格子は、直線偏光の偏光方向を変化させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記格子は、直線偏光を円偏光に、又は円偏光を直線偏光に変化させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項10】
偏光方向が互いに同一の光ビームを出射する第1の光源及び第2の光源、を含む複数の光源と;
前記第1の光源から出射された光ビームの光路上に配置され、その少なくとも1つの曲面状の光学面上に、前記第1の光源から出射された光ビームに対して構造複屈折を発現し、該光ビームの偏光方向を変化させる格子が設けられた少なくとも1つの光学素子を含み、前記第1の光源から出射された光ビームを整形するとともに、前記第1の光源から出射された光ビームの偏光方向を90°変化させる第1の整形光学系と;
前記第2の光源から出射された光ビームを整形する第2の整形光学系と;
前記第1及び第2の整形光学系を介した各光ビームの少なくとも一部を互いに同一方向に出射する偏光回折素子と;を備えるマルチビーム光源ユニット。
【請求項11】
前記少なくとも1つの光学素子は、請求項8に記載の光学素子であることを特徴とする請求項10に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項12】
前記格子は複数の光学面上に設けられていることを特徴とする請求項10に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項13】
光ビームによって被走査面上を走査する光走査装置であって、
少なくとも1つの請求項10〜12のいずれか一項に記載のマルチビーム光源ユニットと;
前記マルチビーム光源ユニットから出射された複数の光ビームを偏向する偏向手段と;
前記マルチビーム光源ユニットと前記偏向手段との間に配置され、前記マルチビーム光源ユニットから出射された複数の光ビームを前記偏向手段に導く導光光学系と;
前記偏向手段にて偏向された複数の光ビームを前記被走査面上に集光する集光光学系と;を備える光走査装置。
【請求項14】
前記導光光学系の少なくとも1つの光学素子の少なくとも1つの光学面に、前記マルチビーム光源ユニットから出射された複数の光ビームに対して構造複屈折を発現し、該複数の光ビームの偏光状態を直線偏光から円偏光に変化させる格子が、設けられていることを特徴とする請求項13に記載の光走査装置。
【請求項15】
前記導光光学系の少なくとも1つの光学素子は、請求項9に記載の光学素子であることを特徴とする請求項14に記載の光走査装置。
【請求項16】
少なくとも1つの走査対象物と;
前記少なくとも1つの走査対象物に対して画像情報が含まれる複数の光ビームを走査する少なくとも1つの請求項13〜15のいずれか一項に記載の光走査装置と;
前記少なくとも1つの走査対象物に形成された像を転写対象物に転写する転写装置と;を備える画像形成装置。
【請求項17】
前記画像情報は、カラー画像情報であることを特徴とする請求項16に記載の画像形成装置。
【請求項1】
入射光に対して構造複屈折を発現し、前記入射光の偏光状態を変化させる格子が、少なくとも1つの曲面状の光学面上に設けられている光学素子。
【請求項2】
前記格子は、サブ波長構造又は共鳴構造を有する格子であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記格子は、0次格子であることを特徴とする請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記格子の少なくとも一部は、前記格子の周期、厚さ、及びフィルファクタのうちの少なくとも1つが、前記光学面上における位置によって異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記格子は、レーザ光の多光子吸収工程を含む光硬化法により作製されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記格子は、レーザ光を用いたレーザアブレーション法により作製されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記レーザ光は、パルス幅が10ピコ秒以下である極短パルスレーザ光であることを特徴とする請求項5又は6に記載の光学素子。
【請求項8】
前記格子は、直線偏光の偏光方向を変化させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記格子は、直線偏光を円偏光に、又は円偏光を直線偏光に変化させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項10】
偏光方向が互いに同一の光ビームを出射する第1の光源及び第2の光源、を含む複数の光源と;
前記第1の光源から出射された光ビームの光路上に配置され、その少なくとも1つの曲面状の光学面上に、前記第1の光源から出射された光ビームに対して構造複屈折を発現し、該光ビームの偏光方向を変化させる格子が設けられた少なくとも1つの光学素子を含み、前記第1の光源から出射された光ビームを整形するとともに、前記第1の光源から出射された光ビームの偏光方向を90°変化させる第1の整形光学系と;
前記第2の光源から出射された光ビームを整形する第2の整形光学系と;
前記第1及び第2の整形光学系を介した各光ビームの少なくとも一部を互いに同一方向に出射する偏光回折素子と;を備えるマルチビーム光源ユニット。
【請求項11】
前記少なくとも1つの光学素子は、請求項8に記載の光学素子であることを特徴とする請求項10に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項12】
前記格子は複数の光学面上に設けられていることを特徴とする請求項10に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項13】
光ビームによって被走査面上を走査する光走査装置であって、
少なくとも1つの請求項10〜12のいずれか一項に記載のマルチビーム光源ユニットと;
前記マルチビーム光源ユニットから出射された複数の光ビームを偏向する偏向手段と;
前記マルチビーム光源ユニットと前記偏向手段との間に配置され、前記マルチビーム光源ユニットから出射された複数の光ビームを前記偏向手段に導く導光光学系と;
前記偏向手段にて偏向された複数の光ビームを前記被走査面上に集光する集光光学系と;を備える光走査装置。
【請求項14】
前記導光光学系の少なくとも1つの光学素子の少なくとも1つの光学面に、前記マルチビーム光源ユニットから出射された複数の光ビームに対して構造複屈折を発現し、該複数の光ビームの偏光状態を直線偏光から円偏光に変化させる格子が、設けられていることを特徴とする請求項13に記載の光走査装置。
【請求項15】
前記導光光学系の少なくとも1つの光学素子は、請求項9に記載の光学素子であることを特徴とする請求項14に記載の光走査装置。
【請求項16】
少なくとも1つの走査対象物と;
前記少なくとも1つの走査対象物に対して画像情報が含まれる複数の光ビームを走査する少なくとも1つの請求項13〜15のいずれか一項に記載の光走査装置と;
前記少なくとも1つの走査対象物に形成された像を転写対象物に転写する転写装置と;を備える画像形成装置。
【請求項17】
前記画像情報は、カラー画像情報であることを特徴とする請求項16に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図21】
【図22】
【図7】
【図13】
【図18】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図21】
【図22】
【図7】
【図13】
【図18】
【図20】
【公開番号】特開2007−212485(P2007−212485A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29096(P2006−29096)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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