説明

光学素子と光学装置

【課題】 光ビームの進行方向を切換えることができる光学素子において、基板と可動部が面と面で接触して貼り付いてしまうことを防止する。
【解決手段】 光学素子は、基板と、支持部と、可動部と、ミラーと、固定電極と、可動電極と、剥離用電極とを備えている。基板は、接触用基準面を備えている。支持部は、基板に固定されている。可動部は、支持部によって支持されており、外力が作用しない状態では基板の接触用基準面から離間するとともに外力が作用すると接触用基準面に接触する弾性を持っている接触部とを備えている。ミラーは、可動部に固定されている。固定電極は、基板の接触用基準面の輪郭内の範囲に設置されている。可動電極は、接触部に設置されている。剥離用電極は、基板に設置されており、可動部を吸引して基板の接触用基準面と可動部の接触部との接触面の面積を減少させる。接触面の面積が減少することを端緒として、可動部と基板とを離間させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームの進行方向を切換えることができる光学素子に関する。本発明は、その光学素子の複数個をアレイ化した光学装置をも提供する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、光ビームの進行方向を切換える光学素子が開示されている。この光学素子は、基板と、片持ち梁と、アクチュエータを備えている。片持ち梁は、可動部と、可動部と基板とを接続する接続部とを備えている。基板は、可動部が接触することができる接触用基準面を有している。可動部は弾性を備えており、可動部に外力が作用しないと可動部が接触用基準面から離間する形状をとる。可動部に外力が作用すると可動部が変形して接触用基準面に接触する。アクチュエータは、可動部を接触用基準面に接触させる外力を可動部に加える状態と加えない状態の間で切換え可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-258511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された光学素子では、片持ち梁の可動部と基板の接触用基準面が接触した際に、面と面とが貼り付いてしまう可能性がある。すなわち、アクチュエータをオフして外力を加えるのを中止しても、片持ち梁の可動部が基板の接触用基準面から離間した状態に戻らない可能性がある。
【0005】
本発明では、可動部に外力を加えるのを中止しても可動部が接触用基準面から離間しないという事態の発生を防止できる光学素子と光学装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、光ビームの進行方向を切換える光学素子を提供する。この光学素子は、基板と、支持部と、可動部と、ミラーと、固定電極と、可動電極と、剥離用電極を備えている。基板は、接触用基準面を備えている。支持部は、基板に固定されている。可動部は、支持部によって支持されており、外力が作用しない状態では接触用基準面から離間するとともに外力が作用すると接触用基準面に接触する弾性を備えている接触部を有している。ミラーは、可動部に固定されている。固定電極は、基板のうちの接触用基準面の輪郭内の範囲に設置されている。可動電極は、接触部に設置されている。剥離用電極は、基板に設置されており、可動部を吸引し、接触用基準面と接触部との接触面の面積を減少させる。
【0007】
上記の光学素子では、剥離用電極によって可動部を吸引することによって接触部を変形させ、接触部が接触用基準面に接触している面の面積を減少させる。接触部は、外力が作用しない状態では接触用基準面から離間する性質を備えているため、剥離用電極によって接触面積を減少させれば、これを端緒にして、接触部が接触用基準面から離間する。上記の光学素子によると、固定電極と可動電極を同電位として接触部に外力が作用しない状態に切換えても可動部が接触用基準面から離間しないという事態の発生を防止することができる。
【0008】
上記の光学素子では、剥離用電極が可動部を接触用基準面に垂直な方向に吸引するものであってよいし、接触用基準面に平行な方向に吸引するものであってもよい。
【0009】
可動部が、接触部から突出して設けられており、剥離用電極によって吸引される引込部を備えていてもよい。
【0010】
本発明に係る光学素子では、剥離用電極が、可動部自体ではなく、剥離用部材を吸引するものであってもよい。この剥離用部材は、接触用基準面と可動部の接触面に沿って移動可能な部材である。剥離用電極は、基板に設置されており、剥離用部材を吸引し、接触用基準面と接触部の接触面の面積を減少させる。
【0011】
上記の光学素子においては、可動電極と剥離用電極との間の静電容量が検出可能であることが好ましい。
【0012】
あるいは、可動電極と固定電極との間の静電容量を検出可能としてもよい。
【0013】
上記の場合、使用していない(吸引力を発揮していない)電極(剥離用電極または固定電極)を、基板に対する可動部の位置を検知するための静電容量センサとして利用することができる。
【0014】
上記の光学素子は、複数個を用いて光学装置を構成するのに利用できる。上記の光学素子では、剥離用電極による外力によって接触部を接触用基準面から離間させる端緒を与えるために、光学装置を構成する複数個の光学素子の複数個の接触部が基板から離間するタイミングを一致させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、可動部に外力を加えるのを中止しても可動部が接触用基準面から離間しないという事態の発生を防止できる光学素子と光学装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の光学素子の平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】実施例1の光学素子の断面図であって、可動部と基板が離間した状態を示す図である。
【図4】実施例1の光学素子の断面図であって、剥離用電極によって可動部が吸引される状態を説明する図である。
【図5】実施例1の光学素子における電極電位のタイムチャートを説明する図である。
【図6】変形例の光学素子の断面図である。
【図7】変形例の光学素子の断面図である。
【図8】変形例の光学素子の断面図である。
【図9】変形例の光学素子における電極電位タイムチャートを説明する図である。
【図10】実施例2の光学素子の平面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】図10のXII−XII線断面図である。
【図13】実施例2の光学素子の断面図であって、剥離用電極によって可動部が吸引される状態を説明する図である。
【図14】実施例2の光学素子の断面図であって、可動部と基板が離間した状態を示す図である。
【図15】変形例の光学素子の平面図である。
【図16】図15のXVI−XVI線断面図である。
【図17】変形例の光学素子の平面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線断面図である。
【図19】変形例の光学素子の断面図であって、剥離用電極によって可動部が吸引される状態を説明する図である。
【図20】変形例の光学素子の断面図であって、剥離用電極によって可動部が吸引される状態を説明する図である。
【図21】変形例の光学素子の平面図であって、剥離用電極の設置位置を示す図である。
【図22】変形例の光学素子の断面図であって、剥離用電極によって可動部が吸引される状態を説明する図である。
【図23】変形例の光学素子の断面図であって、剥離用電極によって可動部が吸引される状態を説明する図である。
【図24】実施例3の光学素子の平面図である。
【図25】図24のXXV−XXV線断面図である。
【図26】変形例の可動部の平面図である。
【図27】変形例の可動部の平面図である。
【図28】変形例の可動部の平面図である。
【図29】変形例の可動部の平面図である。
【図30】変形例の可動部の平面図である。
【図31】変形例の可動部の平面図である。
【図32】実施例4の可動部の一部の平面図である。
【図33】実施例4の可動部のミラー設置部およびミラーを示す平面図である。
【図34】図32のXXXIV−XXXIV線断面図である。
【図35】変形例の可動部の一部の平面図である。
【図36】変形例の可動部のミラー設置部およびミラーを示す平面図である。
【図37】変形例の可動部の一部の平面図である。
【図38】図37のXXXVIII−XXXVIII線断面図である。
【図39】変形例の可動部の一部の平面図である。
【図40】図39のXL−XL線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に説明する実施例の主要な特徴を整理しておく。
(特徴1)可動電極はポリシリコン等を材料とする導電層であって、シリコン酸化膜等を材料とする絶縁層によって被覆されている。可動電極と絶縁層によって、可動部の接触部が形成されている。
(特徴2)固定電極、剥離用電極は、ポリシリコン等を材料とする導電層であって、シリコン酸化膜等を材料とする絶縁層によって被覆されている。基板の固定電極部の上面は固定電極を被覆する絶縁層であり、基板の剥離用電極部の上面は剥離用電極を被覆する絶縁層となっている。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1の光学素子1の平面図であり、図2は、図1のII−II線断面図である。
【0019】
図1および図2に示すように、光学素子1は、基板100と、可動部120と、ミラー130と、固定電極140と、可動電極150と、剥離用電極160とを備えている。固定電極140と剥離用電極160は、基板100の上面側の内部に設置されている。固定電極140と剥離用電極160は、ポリシリコン等を材料とする導電層であり、それぞれシリコン酸化膜等を材料とする絶縁層181、183によって被覆されている。基板100の上面側は、固定電極140が設置されている固定電極部104、剥離用電極160が設置されている剥離用電極部106のいずれかとなっており、剥離用電極部106は固定電極部104よりも低くなっている。図2に示すように、基板100の固定電極部104の上面は固定電極140を被覆する絶縁層181であり、基板100の剥離用電極部106の上面は剥離用電極160を被覆する絶縁層183となっている。可動部120の内部には、可動電極150が設置されている。可動電極150は、ポリシリコン等を材料とする導電層であり、シリコン酸化膜等を材料とする絶縁層182によって被覆されている。
【0020】
可動部120は、基板100に固定されている支持部112a、112bと、基板100に対して接離可能な接触部123とを備えている。支持部112a、112bと接触部123との間には、可撓梁110a,110bが設けられている。可撓梁110a,110bは、接触部123と比べて細長く形成されており、接触部123よりもz方向に撓み易い。支持部112a,112b、可撓梁110a,110b、接続部123を含む可動部120は、一体に形成されている。可動電極150と絶縁層182によって可動部120の接触部123が形成されている。尚、図1等においては、可撓梁110a,110bの長手方向は、x軸方向に一致しており、光学素子1の高さ方向にz軸の方向が設定されている。
【0021】
可動部120は、外力が作用しない状態では、基板100から離間している。図3は、可動部120が基板100から離間している状態を示している。可動部120に外力が作用すると、可撓梁110a,110bが撓んで、可動部120の接触部123が基板100の接触用基準面103に接触する。接触用基準面103は、接触部123の下方となる位置の基板100の上面であって、接触用基準面103の輪郭内の範囲には固定電極140が存在している。尚、図2等に示すように固定電極140は接触用基準面103の輪郭の外部にまで延在していてもよいし、接触用基準面103の輪郭内にのみ設置されているものであってもよい。図1および図2は、接触部123と接触用基準面103が接触している状態を示している。剥離用電極部106は、固定電極部104よりも低くなっているため、接触部123が接触用基準面103に接触している場合に、可動部120と剥離用電極部106とは離間した状態となる。また、剥離用電極160は、基板100の端部に設置されている。
【0022】
実施例1では、可動部120に作用させる外力として、固定電極140と可動電極150との間の静電引力を利用する。固定電極140と可動電極150との間に電位差を発生させると、固定電極140と可動電極150との間に静電引力が発生し、可動部120を基板100側に吸引する。接触用基準面103の輪郭内の範囲には固定電極140が存在しているため、可動部120の接触部123が基板100の接触用基準面103に向かって吸引される。可動部120の弾性と、固定電極140と可動電極150との間の静電引力が釣り合う位置まで、可動部120が基板100に向かって近づく。固定電極140と可動電極150との間の電位差を制御してこの静電引力を制御することによって、可動部120の接触部123と、基板100の接触基準面103との位置関係を制御することができる。
【0023】
図2〜図4を用いて、可動部120の動作についてさらに説明する。固定電極140と可動電極150との間に静電引力が発生していない状態では、図3に示すように、可動部120の接触部123は、基板100の接触用基準面103から離間している。固定電極140と可動電極150との間に電位差を発生させ、固定電極140と可動電極150との間に静電引力を発生させることによって、図2に示すように、可動部120の接触部123と、基板100の接触用基準面103とを接触させることができる。その後、再び固定電極140と可動電極150との間に静電引力が発生していない状態に切り替え、可動部120に外力が作用しない状態になると、可動部120の弾性によって、図3に示す元の形態に復元する。すなわち、可動部120の接触部123は、基板100の接触用基準面103から離間する。
【0024】
ところが、可動部120の接触部123と基板100の接触用基準面103とが面と面で接触することによって貼り付いてしまう場合がある。この場合、外力が作用しない状態になっても、図2に示すように可動部120の接触部123と基板100の接触用基準面103とが接触する状態が維持されたり、可動部120の接触部123と基板100の接触用基準面103とが接触する状態から図3に示す可動部120の接触部123と基板100の接触用基準面103とが離間する状態に移行する時間が長くなったりする。光学素子1を複数個アレイ化した光学装置においては、各々の光学素子1ごとに図2に示す状態から図3に示す状態に移行するタイミングや速度がばらつくことがある。この状態を解消するために、剥離用電極160を利用することができる。
【0025】
固定電極140と可動電極150との間の静電引力が発生していない状態で、剥離用電極160と可動電極150との間にz方向の静電引力を発生させると、図4に示すように、剥離用電極160に向かって可動電極150、ひいては可動部120が吸引され、可動部120が撓む。これによって、可動部120の接触部123の一部が基板100の接触基準面103から浮き上がるように剥離して、接触用基準面103と接触部123との接触面の面積が減少する。図4に示すように、貼り付いた接触用基準面103と接触部123との接触面の面積を僅かに減少させれば、これを契機として、接触部123が接触用基準面103から剥がれ、図3に示すように、可動部120の接触部123が基板100の接触用基準面103と離間した状態とすることができる。
【0026】
実施例1では、剥離用電極160は、基板100において、可動部120の支持部112a,112bと逆側の先端部(図1等に示すx軸の正方向の先端部)の下方となる位置に設置されている。可動部120の先端部を剥離用電極160に向けて吸引することができるため、少ない静電引力で可動部120を効果的に変形させて、より速やかに接触部123を接触用基準面103から剥がすことができる。
【0027】
次に、図5を用いて、光学素子1のオンオフ制御の一例を説明する。図2に示すように、可動部120の接触部123と基板100の接触用基準面103とが接触する状態を光学素子1のオン状態とし、図3に示すように、可動部120の接触部123と基板100の接触用基準面103が離間する状態を光学素子1のオフ状態とする。図5は、光学素子1をオン状態からオフ状態へと切り替える場合の電極電位のタイムチャートを示している。図5では上から順に、可動電極150、固定電極140、剥離用電極160について図示しており、縦軸は時間tであり、縦軸は各電極の電位を示している。図5に示すように、光学素子1をオン状態時からオフ状態時へと切り替えるに際して切替期間Tsを設けている。
【0028】
可動電極150の電極電位は、常にゼロに設定されている。固定電極140の電極電位は、光学素子1のオン状態時には、電位V1に制御され、切替期間Tsおよびオフ状態時には、ゼロに制御される。これによって、オン状態時には固定電極140と可動電極150との間に静電引力が発生し、切替期間Tsおよびオフ状態時には、固定電極140と可動電極150との間に静電引力が発生しないように制御できる。剥離用電極160の電極電位は、切替期間Tsの間は電位V2に制御され、光学素子1のオン状態時およびオフ状態時には、ゼロに制御される。これによって、オン状態時およびオフ状態時には剥離用電極160と可動電極150との間に静電引力が発生せず、切替期間Ts時には、剥離用電極160と可動電極150との間に静電引力が発生するように制御できる。
【0029】
切替時間Tsにおいては、固定電極140と可動電極150との間に静電引力は発生していない一方で、可動電極150には、剥離用電極160に吸引される方向(z方向)の静電引力が発生する。これによって、図4に示すように可動部120が撓んで、可動部120が基板100から剥がれ、図3に示すように可動部120と基板100が離間した状態とすることができる。
【0030】
上記のとおり、実施例1によれば、基板の接触用基準面と可動部の接触部との接触面が貼り付いた状態になってしまった場合に、剥離用電極が可動部を吸引することによって可動部の接触部を変形させ、この接触面の面積を減少させる。可動部の接触部は、外力が作用しない状態では基板の接触用基準面から離間する性質を備えているため、剥離用電極によって接触面の面積を減少させれば、これを契機として、可動部の接触部を基板の接触用基準面から離間させることができる。
【0031】
これによって、基板と可動部が面と面で接触して貼り付いたままの状態になることを防止できる。また、可動部が基板から剥がれるための契機を与えることによって、可動部が基板から剥がれるタイミングや速度を調整することができる。光学素子を複数個アレイ化した光学装置に適用すれば、光学装置を構成する各光学素子において、可動部が基板から剥がれるタイミングや速度のばらつきを抑制することが可能となり、制御性に優れた光学装置を得ることができる。
尚、上記の実施例1においては、剥離用電極が可動部をその接触面に垂直な方向に吸引する場合を例示して説明したが、剥離用電極が可動部をその接触面に平行な方向に吸引するものであってもよい。また、可動部をその接触面に垂直な方向に吸引する剥離用電極と、平行な方向に吸引する剥離用電極とを両方とも備えていてもよい。
【0032】
(変形例1)
実施例1では、剥離用電極160が可動部120の先端部(支持部112a、112bと逆側の先端部)の下方となる位置の基板100上に1つ設置されている場合を例示して説明したが、これに限定されない。可動部の接触部が基板の接触用基準面に接触している場合に、可動部と剥離用電極の上面が離間した状態となっていればよい。また、複数個の剥離用電極が設置されていてもよい。例えば、図6に示すように、剥離用電極161が固定電極141aと固定電極141bとの間に設置されていてもよい。また、図7に示すように、固定電極142aと固定電極142bとの間に剥離用電極162aが設置されており、基板100の端部に剥離用電極162bが設置されていてもよい。また、図8に示すように、固定電極143aと固定電極143bとの間に剥離用電極163aが設置されており、固定電極143bと固定電極143cとの間に剥離用電極163bが設置されていてもよい。
【0033】
また、図6に示すように、基板上の可動部と接する位置に、突起部195が設置されていてもよい。突起部195が設置されていることによって、可動部と基板が強固に貼り付いてしまうことを抑制できる。これによって、剥離用電極が可動部を吸引して、接触部と接触用基準面とを離間させるために必要な静電引力を大きくすることができる。
【0034】
(変形例2)
実施例1では、図5を例示して、剥離用電極等の電極電位の制御方法を説明したが、これに限定されない。可動部の接触部と基板の接触用基準面とを接触させる光学素子のオン状態時には、可動部と固定電極との間に作用する静電引力が可動部と剥離用電極との間に作用する静電引力よりも大きくなっており、オン/オフ切替を行う切替期間Tsの間には、可動部と固定電極との間に作用する静電引力が可動部と剥離用電極との間に作用する静電引力よりも小さくなっていればよい。例えば、図9に示すような電極電位制御を光学装置1に対して行ってもよい。図9では、光学素子のオン状態時にも剥離用電極の電位が電位V2となるように制御される。光学素子のオン状態時に可動部と基板とを接触させるための外力として、可動電極と固定電極との間に作用する静電引力に加えて、可動電極と剥離用電極との間に作用する静電引力を利用することができる。このため、可動部と基板とを接触させるために必要な外力を得るための駆動電圧を小さくすることができる。
【0035】
図2等に示すように、可動電極と固定電極との電極間距離が、可動電極と剥離用電極との電極間距離よりも小さい場合には、図9に示す固定電極の電位V1と剥離用電極の電位V2について、V1≧V2とすれば、可動部と固定電極との間に作用する静電引力を、可動部と剥離用電極との間に作用する静電引力よりも大きくすることができる。
【0036】
(変形例3)
また、例えば、図5に示すような電極電位の制御を行う場合には、可動電極との間に静電引力が作用しない状態となっている電極を利用して静電容量を測定し、可動部の位置を検知するようにしてもよい。図5では、光学素子のオン状態時には、可動電極と剥離用電極との間に静電引力が作用しない状態となっているため、可動電極と剥離用電極との間の静電容量を測定して可動部と基板との位置関係を検知することができる。また、光学素子の切替期間Tsにおいては、可動電極と固定電極との間に静電引力が作用しない状態となっているため、可動電極と固定電極との間の静電容量を測定して可動部と基板との位置関係を検知することができる。
【実施例2】
【0037】
図10は、実施例2の光学素子2の平面図であり、図11は、図10のXI−XI線断面図であり、図12は、図10のXII−XII線断面図である。図12中の二重鎖線は、図11に示す可動部220の支持部212bおよび可撓梁210bの位置および形状を補助的に記載するものである。
【0038】
図10〜図12に示すように、光学素子2では、可動部220は、引込部222を備えている。引込部222は、接触部223から突出して、可撓梁210aと可撓梁210bとの間を支持部212a、212bの方向(x軸の負方向)に延びている。基板200の上面側は、固定電極240が設置されている固定電極部204、剥離用電極260が設置されている剥離用電極部206のいずれかとなっている。引込部222の下方となる位置の基板200上には剥離用電極部206が設けられている。図12に示すように剥離用電極部206は、固定電極部204よりも低くなっており、剥離用電極260は、固定電極240よりも低い位置に設置されている。その他の構成については、実施例1において説明した光学素子1と同様であるため、光学素子1の各構成の100番台を200番台に読み替えて、重複説明を省略する。
【0039】
図11および図12は、可動部220の接触部223と基板200の接触用基準面203とが接触している状態の断面図を示している。光学素子2のオン状態時には、固定電極240と可動電極250との間に静電引力を発生させて、図11および図12のように、接触用基準面203と接触部223とを接触させる。
【0040】
実施例1に係る光学素子1と同様に、光学素子2においても、固定電極240と可動電極250との間の静電引力が発生していない状態になっても、図11および図12に示す状態が維持される場合がある。この場合には、図13に示すように剥離用電極260と可動電極250との間にz方向の静電引力を発生させると、剥離用電極260に向かって可動電極250、ひいては可動部220が吸引され、可動部220が撓む。可動部220が撓んで可動部220の接触部223が基板200の接触基準面203から一部浮き上がるように剥離して、接触用基準面203と接触部223との接触面の面積が減少する。図13に示すように、貼り付いた接触用基準面203と接触部223との接触面の面積を僅かに減少させれば、これを契機として、接触部223が接触用基準面203から剥がれ、図14に示すように、可動部220の接触部223が基板200の接触用基準面203と離間した状態とすることができる。剥離用電極260は引込部222の先端部(x軸の負方向の端部)の下方となる位置の基板200上に設置されているため、引込部222の先端部を剥離用電極260に向けて吸引することができる。少ない静電引力で可動部220を効果的に変形させて、より速やかに接触部223を接触用基準面203から剥がすことができる。
【0041】
光学素子2のオン状態からオフ状態へと切り替える場合の電極電位の制御は、実施例1で説明した制御方法と同様の方法によって行うことができる。例えば図5や図9に示すような制御方法を利用できる。図11等に示すように、光学素子2では、可動電極250と固定電極240との電極間距離が、可動電極250と剥離用電極260との電極間距離よりも小さいため、図9に示す固定電極の電位V1と剥離用電極の電位V2についてV1≧V2とすれば、可動部220と固定電極240との間に作用する静電引力を、可動部220と剥離用電極260との間に作用する静電引力よりも大きくすることができる。
【0042】
(変形例4)
図15は、実施例2の変形例に係る光学素子2aの平面図であり、図16は図15のXVI−XVI線断面図である。図15および図16に示すように、光学素子2aでは、剥離用電極部206aは、引込部222の下方となる位置から平面方向(より具体的にはx軸の負方向)に離れており、剥離用電極260aは、固定電極240と同じ高さに設置されている。光学素子2aのその他の構成は光学素子2と同様であるため、重複説明を省略する。
【0043】
光学素子2aにおいては、引込部222は、剥離用電極260aによってx軸の負方向に吸引される。剥離用電極260aによって可動部220が水平方向に吸引されて、接触用基準面203と接触部223とをずらすことによって、接触用基準面203と接触部223との接触面の面積を減少させることができる。
【0044】
(変形例5)
また、引込部を設ける位置は、実施例2において説明した位置に限られない。例えば、図17に示すように、可動部の接触部からy軸方向に延びる引込部が設けられていてもよい。図17のように、可動部320が板状であり、可撓梁を備えていない場合には、引込部をこの位置に設置することが有効である。
【0045】
図18は、図17のXVIII−XVIII線断面図である。図17および図18に示すように、可動部320は支持部312において基板300に固定されている。引込部322aは、可動部320の接触部323からy軸の正方向に延びており、引込部322bは、可動部320の接触部323からy軸の負方向に延びている。引込部322aの下方となる位置の基板300上には剥離用電極360aが設置されており、引込部322bの下方となる位置の基板300上には剥離用電極360bが設置されている。図18に示すように、剥離用電極部306a、306bは、固定電極部304よりも低くなっており、剥離用電極360a、360bは、固定電極340よりも低い位置に設置されている。
【0046】
剥離用電極360aと剥離用電極360bの電極電位は、相違するようにしてもよい。例えば、剥離用電極360aと剥離用電極bとを絶縁して、可動電極350および剥離用電極360aの電位をゼロとし、剥離用電極360bの電位をV2とする制御を行ってもよい。この場合、図19に示すように、剥離用電極360bと引込部322bとの間に静電引力が発生して、剥離用電極360bが可動部320の引込部322bを吸引する。これによって可動部320が撓んで、剥離用電極360a側において、可動部320の接触部323が基板300の接触用基準面303から剥がれて、基板300と可動部320とを離間させることができる。
【0047】
剥離用電極360aと剥離用電極360bの電極電位は、同電位に制御されてもよい。また、互いに電気的に接続されていてもよい。例えば、可動電極350の電位をゼロとし、剥離用電極360a、360bの電位をV2とする制御を行う場合、図20に示すように、可動部320の引込部322aは剥離用電極360aに吸引され、引込部322bは剥離用電極360bに吸引される。可動部320が撓んで、接触部323のy軸方向の中央部分が基板300の接触用基準面303から剥がれて、基板300と可動部320とを離間させることができる。
【0048】
(変形例6)
可動部の接触部からy軸方向に設けられている引込部を水平方向に吸引する位置に剥離用電極が設置されていてもよい。図21は、引込部を水平方向に吸引する場合の剥離用電極の位置を例示する図である。図21に示すように、剥離用電極は、引込部322aの下方となる位置からy軸方向に離れた位置の剥離用電極部306cに設置されていてもよく、x軸方向に離れた位置の剥離用電極部306dに設置されていてもよい。また、引込部322bの下方となる位置からx軸の負方向に離れた位置の剥離用電極部306eと、x軸の正方向に離れた位置の剥離用電極部306fにそれぞれ1つずつ剥離用電極が設置されていてもよい。剥離用電極は、1つの引込部に対して1つのみ設置されていてもよいし、複数設置されていてもよい。また、可動部をその接触面に垂直な方向に吸引する剥離用電極と、平行な方向に吸引する剥離用電極とを両方とも備えていてもよい。
【0049】
引込部は、可動部に対して1つのみ設置されていてもよいし、複数設けられていてもよい。複数の引込部が設けられている場合には、図17等に示すように、可動部のy軸の正方向と負方向の両側に引込部が突出していてもよいし、片側のみに複数の引込部が備えられていてもよい。
【0050】
(変形例7)
また、引込部は、可動部の接触部と同一平面上に設置されていなくてもよい。例えば、図22、図23に示すように、接触部の上面から上方に延びる柱状部によって、接触部の上面側に固定されていてもよい。
【0051】
図22に示す光学素子4aでは、基板400aの上面側には固定電極440aと剥離用電極460aが同じ高さに設置されている。可動部420aは、支持部412aによって基板400aに固定されている。可動部420aの内部に可動電極450aが設置されており、可動電極450aと固定電極440aとの間に静電引力が作用すると、図22に示すように、可動部420aの接触部423aが基板400aの接触用基準面403aに接触した状態となる。
【0052】
可動部420aは、接触部423aの上面から上方に延びる柱状部428aを介して接触部423aの上面に固定されている引込部422aを備えている。引込部422aの上面にミラー430aが固定されている。引込部422aをミラー設置部として利用できる。引込部422aは、接触部423aおよび柱状部428aと電気的に接続している。引込部422aは、接触部423aの先端部(x軸の正方向の先端部)からx軸の正方向に突出しており、その突出する部分の下方となる位置の基板400a上に剥離用電極460aが設置されている。剥離用電極460aは固定電極440aと同じ高さに位置しており、基板400aと接触部423aとが接触する状態で、引込部422aと剥離用電極460aは離間している。
【0053】
例えば、実施例1で説明した図5に示す制御方法を用いて、可動電極450a、固定電極440a、剥離用電極460aの電極電位を制御すると、切替時間Tsにおいて、図22に矢印で示すように、剥離用電極460aが引込部422aをz軸方向に吸引する。これによって可動部420aの接触部423aが撓んで、接触部423aが接触用基準面403aから剥がれ、可動部420aが基板400aから離間した状態とすることができる。
【0054】
図23に示す光学素子4bでは、引込部422bは、接触部423bの支持部412b側(x軸の負方向)に突出しており、その突出する部分の下方となる位置の基板400b上に剥離用電極460bが設置されている。光学素子4bのその他の構成については、図22に示す光学素子4aと同様であるため、図22における添え字の「a」を「b」に置き換えることによって、重複説明を省略する。
【0055】
例えば、実施例1で説明した図5に示す制御方法を用いて、可動電極450b、固定電極440b、剥離用電極460bの電極電位を制御すると、切替時間Tsにおいて、図23に矢印で示すように、剥離用電極460bが引込部422bをz軸方向に吸引する。これによって可動部420bの接触部423bが撓んで、接触部423bが接触用基準面403bから剥がれ、可動部420bが基板400bから離間した状態とすることができる。
【0056】
また、引込部は、可動部と同一の層によって一体に形成されていてもよい。この場合、引込部の内部にも可動電極が設置される。また、引込部の内部に、可動電極と絶縁された引込用電極が設置されていてもよい。この場合、引込部の内部の引込用電極と可動電極とを異なる電位に制御することが可能となる。
【実施例3】
【0057】
図24は、実施例3の光学素子5の平面図であり、図25は、図24のXXV−XXV線断面図である。図25中の二重鎖線は、図25に示す断面と平行な面で可動部520を切断した断面図における、可動部520の支持部512bおよび可撓梁510bの位置および形状を補助的に記載するものである。
【0058】
図24、図25に示すように、光学素子5では、基板500上の接触用基準面503から平面方向に離間した位置に延在する剥離用部材590が設置されている。剥離用部材590は、基板500に固定されている固定端592と、基板500の接触用基準面503と可動部520の接触部523との接触面に向かって移動可能である可動端591とを有している。図25に示すように、剥離用部材590は、基板500の接触用基準面503と可動部520の接触部523が接触している状態において、可動部520と接触しない位置に設置されている。剥離用部材590から可動部520の接触部523側に離間した位置の基板500上に剥離用電極560が設置されている。剥離用電極560は、基板500上に固定電極540と同じ高さになるように設置されている。剥離用電極560は、接触用基準面503の輪郭内にその一部または全部が存在していてもよい。その他の構成については、実施例1において説明した光学素子1と同様であるため、光学素子1の各構成の100番台を500番台に読み替えて、重複説明を省略する。
【0059】
例えば、実施例1で説明した図5に示す制御方法を用いて、可動電極550、固定電極540、剥離用電極560の電極電位を制御すると、切替時間Tsにおいて、図24および図25に矢印で示すように、剥離用電極560が剥離用部材590を水平方向(x軸の正方向)に吸引する。これによって、基板500の接触用基準面503と可動部520の接触部523との接触面に向かって剥離用部材590の可動端591が移動して、接触用基準面503と接触部523との間に剥離用部材590の可動端591が入り込む。その結果、可動部520の接触部523が基板500の接触用基準面503から剥がれて、可動部520が基板500から離間した状態とすることができる。
【0060】
(その他の変形例)
本発明は、上記の実施例1〜3および変形例1〜7において説明した光学素子の可動部等の形態に限定されない。以下、上記の実施例1〜3および変形例1〜7に適用可能な、さらなる変形例について説明する。
【0061】
例えば、可動部としては、図26〜図31に例示するような形態の可動部を採用することができる。
【0062】
図26に示すように、可動部620の接触部623は、1つの可撓梁610を介して1つの支持部612と接続されていてもよい。この場合、可撓梁610は接触部623のy軸方向の中央位置に接続されることが好ましい。
【0063】
図27に示すように、可動部620aの接触部623aは、3つの可撓梁610a、610b、610cを介して3つの支持部612a、612b、612cと接続されていてもよい。また、y軸方向の両端に位置する可撓梁610aと可撓梁610cは、接触部623aのy軸方向の両端に連なるように設けられていてもよい。
【0064】
図28に示すように、可動部620dの接触部623dは、4つの可撓梁610d、610e、610f、610gを介して4つの支持部612d、612e、612f、612gと接続されていてもよい。また、y軸方向の両端に位置する可撓梁610dと可撓梁610gは、接触部623dのy軸方向の両端よりも中央側にオフセットした位置に設けられていてもよい。
【0065】
図29〜図31に示すように、可動部は、その長手方向の軸の周りに捩れる可撓梁を含んでいてもよい。図29に示すように、可動部620hの接触部623hは、y軸に平行な回転軸の周りに捩れる可撓梁613h、613iと、z軸方向に撓む可撓梁614とを介して支持部612h、612iに接続するものであってもよい。図30に示すように、可動部620jの接触部623jは、y軸の周りに捩れる可撓梁とz軸の方向に撓む可撓梁とを複合した可撓梁615を介して、支持部612j、612kに接続するものであってもよい。図31に示すように、可動部620mの接触部623mは、ループ形状の部分を有する可撓梁616を介して、支持部612mに接続するものであってもよい。
【0066】
また、図32〜図40に示すように、可動部の接触部は、y軸に平行な回転軸の周りに捩れる1対の可撓梁によって揺動可能に支持されるものであってもよい。
【0067】
例えば、図32、図33に示す光学素子では、可動部720は、基板700のy軸方向の両端部近傍に固定されている支持部712a、712bと、支持部712a,712bから基板の中央側に延びている可撓梁713a、713bと、可撓梁713a、713bによって揺動可能に支持されている可動板72とを備えている。可撓梁713a、713bは可動板72の中央部分である支持板部721に接続しており、支持板部721の破線で示す位置に柱状部728が固定される。支持板部721からx軸の正方向または負方向に向けて可撓梁714a、714b、714c、714dが設けられており、可動板72のx軸方向の両端に設けられている接触部723a、723bと接続している。引込部722a、722bは、接続部723a、723bから可動板72の中央の支持板部721に向かう方向に突出している。柱状部728を介して、可動板72と、図33に示すミラー設置部729が固定されており、ミラー設置部729の上面にミラー730が固定されている。柱状部728は、図33においてミラー設置部729の破線で示す位置に固定される。尚、柱状部728およびミラー設置部729は、可動部720の一部である。
【0068】
図34は、図32のXXXIV−XXXIV線断面図である。図32、図34に示すように、接触部723a,723bの下方となる位置の基板700上には、固定電極部704a、704bが設けられており、固定電極740b等が設置されている。引込部722a,722bの下方となる位置の基板700上には、剥離用電極部706a、706bが設けられており、剥離用電極760b等が設置されている。剥離用電極部706a、706bは、固定電極部704a,704bよりもその上面が低くなっている。可動部720の内部には、可動電極750が設置されている。
【0069】
可動電極750と固定電極740bとの間に静電引力を発生させると、基板701の接触用基準面703bと可動部720の接触部723bが接触する。次に、可動電極750と固定電極740bとの間に静電引力が発生していない状態で、剥離用電極760bと可動電極750との間に静電引力を発生させると、可動部720の引込部722bが剥離用電極760bに向かって吸引され、図34に示すように、基板700の接触用基準面703bと可動部720の接触部723bが剥がれ、その接触面の面積が減少する。これによって可動部720と基板700が離間した状態となる。
【0070】
また、例えば、図35、図36に示すように、光学素子では、可動部820は、基板800の中央部に固定されている支持部812と、支持部812から基板のy軸の正方向および負方向に延びている可撓梁813a、813bと、可撓梁813a、813bによって揺動可能に支持されている可動板82とを備えていてもよい。可撓梁813a,813bは可動板82の支持板部821a、821bと接続している。支持板部821a,821bからx軸の正方向または負方向に向けて可撓梁814a、814b、814c、814dが設けられており、可動板82のx軸方向の両端に設けられている接触部823a、823bと接続している。引込部822a、822bは、接続部823a、823bから可動部820の中央の支持部812に向かう方向に突出している。可動板82の支持板部821a,821bの上面には、柱状部828a,828bが固定され、図36に示すミラー設置部829がその上方に固定される。ミラー設置部829の上面には、ミラー830が固定されている。尚、柱状部828a,828bおよびミラー設置部829は、可動部820の一部である。
図32〜図34を用いて説明した光学素子と同様に、接触部823a,823bの下方となる位置の基板800上には、固定電極部804a、804bが設けられており、それぞれ固定電極が設置されている。引込部822a,822bの下方となる位置の基板800上には、剥離用電極部806a、806bが設けられており、それぞれ剥離用電極が設置されている。剥離用電極部806a、806bは、固定電極部804a,804bよりもその上面が低くなっている。可動部820の内部には、可動電極が設置されている。
【0071】
例えば、可動電極と固定電極部804bに設置された固定電極との間に静電引力を発生させると、基板800の接触用基準面803bと可動部820の接触部823bが接触する。次に、可動電極と固定電極部804bに設置された固定電極との間に静電引力が発生していない状態で、剥離用電極部806bに設置された剥離用電極と可動電極との間に静電引力を発生させると、可動部820の引込部822bが剥離用電極部806bに向かって吸引され、基板800の接触用基準面803bと可動部820の接触部823bが剥がれ、その接触面の面積が減少する。
【0072】
また、例えば、図37〜図40に示すように、接触部が可動板の中央側に設けられており、引込部が可動板の端部に設けられていてもよい。
【0073】
図37はその他の変形例に係る光学素子の可動部および基板を示す平面図であり、図38は、図37のXXXVIII−XXXVIII線断面図である。図37、図38に示す光学素子の可動部920iは、基板900iのy軸方向の両端部近傍に固定されている支持部912a,912bと、支持部912a,912bから基板900iの中央部分に向かって延びている可撓梁910a、910bと、可撓梁910a、910bによって揺動可能に支持されている可動板92iとを備えている。可動板92iの中央部は支持板部921iであり、支持板部921iに柱状部928iが固定される。支持板部921iの両側(x軸方向の正方向および負方向)には、接触部923a、923bが設けられており、そのさらに外側に可撓梁914a、914b、914c、914dが設けられ、可動板92iの先端部に設けられている引込部922a、922bと接続している。図32〜図34を用いて説明した光学素子と同様に、可動板92iの支持板部921iの上面には、柱状部928iを介して、図33に示すようなミラー設置部が固定される。尚、柱状部928iおよびミラー設置部は、可動部920iの一部である。
【0074】
接触部923a,923bの下方となる位置の基板900i上には、固定電極部904a、904bが設けられており、固定電極940b等が設置されている。引込部922a,922bの下方となる位置の基板900i上には、剥離用電極部906a、906bが設けられており、剥離用電極960b等が設置されている。剥離用電極部906a、906bは、固定電極部904a,904bよりもその上面が低くなっている。可動部920iの内部には、可動電極950iが設置されている。
【0075】
可動電極950iと固定電極940bとの間に静電引力を作用させると、基板900iの接触用基準面903bと可動部920iの接触部923bが接触する。次に、可動電極950iと固定電極940bとの間に静電引力を作用させない状態で、剥離用電極960bと可動電極950iとの間に静電引力を作用させると、可動部920iの引込部922bが剥離用電極960bに向かって吸引され、図38に示すように、基板900iの接触用基準面903bと可動部920iの接触部923bが剥がれ、その接触面の面積が減少する。
【0076】
図39はさらに別の変形例に係る光学素子の可動部および基板を示す平面図であり、図40は、図39のXL−XL線断面図である。図39、図40に示す光学素子の可動部920jは、基板900jの中央部に固定されている支持部912jと、支持部912jから基板のy軸の正方向および負方向の端部に延びている可撓梁910e、910fと、可撓梁910e、910fによって揺動可能に支持されている可動板92jとを備えていてもよい。可撓梁910e,910fと接続する部分は可動板92jの支持板部921e,921fである。支持板部921e,921fからx軸の正方向および負方向に向けて接触部923e、923fが設けられている。接触部923e、923fからx軸の正方向および負方向に向けて可撓梁914e、914f、914g、914hが設けられており、可動板92jのx軸方向の先端部に設けられている引込部922e、922fと接続している。引込部922e、922fは、接続部923e、923fから可動板92jのx軸方向の先端部に向かう方向に突出している。図35および図36を用いて説明した光学素子と同様に、可動板92jの支持板部921e,921fの上面には、柱状部928e、928fを介して、図36に示すようなミラー設置部が固定される。尚、柱状部928e、928fおよびミラー設置部は、可動部920jの一部である。
【0077】
接触部923e,923fの下方となる位置の基板900j上には、固定電極部904e、904fが設けられており、固定電極940f等が備えられている。引込部922e,922fの下方となる位置の基板900j上には、剥離用電極部906e、906fが設置されており、剥離用電極960f等が備えられている。剥離用電極部906e、906fは、固定電極部904e,904fよりもその上面が低くなっている。可動部920jの内部には、可動電極950jが設置されている。
【0078】
可動電極950jと固定電極940fとの間に静電引力を作用させると、基板900jの接触用基準面903fと可動部920jの接触部923fが接触する。次に、可動電極950jと固定電極940fとの間に静電引力を作用させない状態で、剥離用電極960fと可動電極950jとの間に静電引力を作用させると、可動部920jの引込部922fが剥離用電極960fに向かって吸引され、図40に示すように、基板900jの接触用基準面903fと可動部920jの接触部923fが剥がれ、その接触面の面積が減少する。
【0079】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0080】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0081】
1,2,3,4a,4b,5 光学素子
100,200,300,400a,400b,500,700,800,900i,900j 基板
103,203,303,403a,403b,503,703b、903b,903f 接触用基準面
104,204,304,404a,404b,504,704a,704b,804a,804b,904a,904b,904e,904f 固定電極部
106,206,306,406a,406b,506,706a,706b,806a,806b,906a,906b,906e,906f 剥離用電極部
112a,112b,212a,212b,312,312a,312b,412a,412b,512a,512b,612,612a〜612m,712a,712b、812,912a,912b,912j 支持部
120,220,320,420a,420b,520,620,620a,620d,620h,620j,620m,720,820,920i,920j 可動部
123,223,323,423a,423b,523,623,623a,623d,623h,623j,623m,723a,723b,823a,823b,923a,923b,923e,923f 接触部
130,230,330,430a,430b,530,730,830 ミラー
140,240,340,440a,440b,540,740b,940b,940f 固定電極
150,250,350,450a,450b,550,750,950i,950j 可動電極
160,260,360,460a,460b,560,760b,960b,960f 剥離用電極
222,322a,322b,422a,422b,722a,722b,822a,822b、922a,922b,922e,922f 引込部
590 剥離用部材
591 可動端
592 固定端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームの進行方向を切換える光学素子であり、
接触用基準面を備えている基板と、
前記基板に固定されている支持部と、
前記支持部によって支持されており、外力が作用しない状態では前記接触用基準面から離間するとともに外力が作用すると前記接触用基準面に接触する弾性を持っている接触部を備えている可動部と、
前記可動部に固定されているミラーと、
前記基板の前記接触用基準面の輪郭内の範囲に設置されている固定電極と、
前記接触部に設置されている可動電極と、
前記基板に設置されており、前記可動部を吸引し、前記接触用基準面と前記接触部との接触面の面積を減少させる剥離用電極と、を備えている光学素子。
【請求項2】
前記可動部が、前記剥離用電極によって、前記接触用基準面に垂直な方向に吸引される請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記可動部が、前記剥離用電極によって、前記接触用基準面に平行な方向に吸引される請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記可動部は、前記接触部から突出して設けられるとともに前記剥離用電極によって吸引される引込部を備えている請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項5】
光ビームの進行方向を切換える光学素子であり、
接触用基準面を備えている基板と、
前記基板に固定されている支持部と、
前記支持部によって支持されており、外力が作用しない状態では前記接触用基準面から離間するとともに外力が作用すると前記接触用基準面に接触する弾性を持っている接触部とを備えている可動部と、
前記可動部に固定されているミラーと、
前記基板の前記接触用基準面の輪郭内の範囲に設置されている固定電極と、
前記接触部に設置されている可動電極と、
前記接触用基準面と前記可動部の接触面に沿って移動可能な剥離用部材と、
前記基板に設置されており、前記剥離用部材を吸引し、前記接触用基準面と前記接触部との接触面の面積を減少させる剥離用電極と、を備えている光学素子。
【請求項6】
前記可動電極と前記剥離用電極との間の静電容量が検出可能である請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記可動電極と前記固定電極との間の静電容量が検出可能である請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載された光学素子の複数個を備えている光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2011−145579(P2011−145579A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7856(P2010−7856)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】