説明

光導波路基板及びその製造方法

【課題】複数の光導波路と光ファイバのような複数の光学素子とをそれぞれ接続する際の位置合わせのトレランスが確保できる光導波路基板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】光素子のような光ファイバ5が接続される光導波路基板10は、基板20の上面22aの上方に形成された、光ファイバ5に光学的に接続する光導波路であるコア層32と、基板20の上面22aの上方に形成されたガイド部40と、を備える。ガイド部40の壁部44及び下部ガイド層としての第2下部クラッド層42は、光ファイバ5の端部6の位置がコア層32の端部35の位置に合うように各光ファイバ5の端部6を案内するためのガイド溝部45を形成する。ガイド溝部45の底面41は、光ファイバ5が挿入方向Xに進むに従って光ファイバ5の端部6がコア層32の端部35に光学的に接続できるように、一対の側面43の間に形成された傾斜面46を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報容量の増大に伴い、幹線やアクセス系といった通信分野のみならず、ルータやサーバ内の情報処理にも光信号を用いる光インターコネクション技術の開発が進められている。具体的には、ルータやサーバ装置内のボード間又はボード内の短距離信号伝送に光を用いるために、光伝送路として、光ファイバに比べ、配線の自由度が高く、かつ、高密度化が可能な光導波路が用いられている。
また、光導波路は、光学製品のデバイスとして用いられる際、他の光学素子、例えば光ファイバと接続して用いられることがある(例えば、特許文献1)。
そして、光学製品間は、複数の光ファイバで接続される。このため、基板に形成された複数の光導波路と光ファイバのような複数の光学素子とをそれぞれ接続する際の位置合わせのトレランスが確保できることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−42149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、複数の光導波路と光ファイバのような複数の光学素子とをそれぞれ接続する際の位置合わせのトレランスが確保できる光導波路基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る光導波路基板は、ケーブル状の複数の光素子が接続される光導波路基板である。光導波路基板は、板状の基板と、前記基板の上面の上方に形成された複数の光導波路であってそれぞれの端部と各光素子の端部とが光学的に接続する複数の光導波路と、複数の一対の側面を形成する複数の壁部と複数の底面を有する下部ガイド層とを有し、前記基板の上面の上方に形成されたガイド部と、を備える。前記複数の壁部及び前記下部ガイド層は、それぞれが各光素子の端部の位置が各光導波路の端部の位置に合うように各光素子の端部を案内するための複数のガイド溝部であってそれぞれが各一対の側面及び各底面により形成される複数のガイド溝部を形成する。各一対の側面は、各光素子を間において互いに対向する位置に形成される。前記複数の底面は、それぞれ、各光素子が各一対の側面及び各底面に沿って各ガイド溝部に挿入される挿入方向に進むに従って各光素子の端部が各光導波路の端部に光学的に接続できるように、各一対の側面の間に形成された複数の傾斜面を含む。
前記傾斜面と前記基板の上面との間の距離は、前記挿入方向に進むに従って大きくなっていることが好ましい。
前記ガイド部は、前記複数の壁部の上面に前記複数のガイド溝部の開口を覆う蓋材を有し、前記蓋材の下側は、それぞれが、各光素子を間において各底面に対向するように位置し、各一対の側面の間に形成された複数の押さえ面を有し、各一対の側面、各底面及び各押さえ面は、それぞれが各光素子の端部を挿入する複数の挿通穴を形成していることが好ましい。
本発明に係る光導波路基板は、さらに、前記下部ガイド層と前記基板の上面との間に前記複数の傾斜面を形成するための板状の段部を有することが好ましい。
【0006】
本発明に係る光導波路基板の製造方法は、前記基板の上面に前記段部を形成する第1工程と、前記下部ガイド層の上面が各底面を形成するように、かつ、前記段部の段差によって前記下部ガイド層の上面が各傾斜面を形成するように、前記基板の上面及び前記段部の上面に前記下部ガイド層を形成する第2工程と、前記下部ガイド層の上面に、各底面が形成できるような間隔をおいて前記複数の一対の側面が形成できるように、前記複数の壁部を形成する第3工程と、を備えた、光導波路基板の製造方法に関する。
本発明に係る光導波路基板の製造方法は、さらに、前記下部ガイド層の上面に前記複数のガイド溝部の開口を覆うように前記蓋材を形成する第4工程を備えてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の光導波路と光ファイバのような複数の光学素子とをそれぞれ接続する際の位置合わせのトレランスが確保できる光導波路基板及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の光導波路基板の一部を省略した斜視図である。
【図2】図1に示す光導波路基板の断面図である。
【図3】図1に示す光導波路基板の側面図である。
【図4】図1に示す光導波路基板の製造方法を説明する断面図である。
【図5】図4に続く光導波路基板の製造方法を説明する断面図である。
【図6】図5に続く光導波路基板の製造方法を説明する断面図である。
【図7】図6に続く光導波路基板の製造方法を説明する断面図である。
【図8】図7に続く光導波路基板の製造方法を説明する断面図である。
【図9】図8に続く光導波路基板の製造方法を説明する断面図である。(a)は、光導波路のある側の断面図である。(b)は、光素子のガイド部側の断面図である。
【図10】図9に続く光導波路基板の製造方法を説明する断面図である。(a)は、光導波路のある側の断面図である。(b)は、光素子のガイド部側の断面図である。
【図11】図10に続く光導波路基板の製造方法を説明する断面図である。(a)は、光導波路のある側の断面図である。(b)は、光素子のガイド部側の断面図である。
【図12】図11に続く光導波路基板の製造方法を説明する断面図である。
【図13】図12に続く光導波路基板の製造方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る光導波路基板10について、図1から図3を参照して説明する。
図1から図3を参照するに、光導波路基板10は、ケーブル状の複数の光素子である光ファイバ5が接続されるように構成されている。
図1に示すように、光導波路基板10は、板状の基板20と、基板20に相対的に移動不能に形成された複数の光導波路(コア層32)である光導波路群30と、複数のコア層32に対してガイドするガイド部40と、基板20の上面22aに形成された板状の段部60と、を備える。
【0010】
図2に示すように、基板20は、例えば、上面22a及び下面22bが平らの矩形状の板部材22と、基板20の下面22bに形成された電気配線25とを有する。板部材22の材質としては、特に制限はなく、例えば、ガラスエポキシ樹脂基板、セラミック基板、ガラス基板、シリコン基板、プラスチック基板、金属基板、樹脂層付き基板、金属層付き基板、プラスチックフィルム、樹脂層付きプラスチックフィルム、金属層付きプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0011】
複数の光導波路(コア層32)からなる光導波路群30は、各光導波路(コア層32)の端部35と各光ファイバ5の端部6とが光学的に接続するように、基板20の上面22aの上方に形成されたガイド部40の第2下部クラッド層42に形成されている。なお、各光導波路(コア層32)の端部35と各光ファイバ5の端部6との間には、スリット溝36が形成する空間の一部がある。この空間の一部の大きさは、光導波路(コア層32)の端部35と各光ファイバ5の端部6との光学的な接続が可能であれば、特に限定されない。
複数のコア層32は、第2下部クラッド層42に積層された第1下部クラッド層31に積層されている。複数のコア層32は、第1下部クラッド層31と、コア層32を覆う上部クラッド層33とにより包み込まれている。
本実施形態では、複数の光導波路(コア層32)は、複数の端部35が同一平面上に位置するように、かつ、複数の光導波路(コア層32)が基板20の上面22aの広がる方向に並ぶように、第2下部クラッド層42に形成されている。したがって、複数の光導波路(コア層32)の端部35は、基板20の上面22aから等距離の位置に配置されている。また、複数の光導波路(コア層32)のうち隣接する2つの光導波路(コア層32)は、各光導波路(コア層32)の端部35が各光ファイバ5の端部6に光学的に接続されるように、所定の間隔をおいて、第2下部クラッド層42に形成されている。
【0012】
図2及び図3に示すように、ガイド部40は、基板20の上面22aの上方に形成され、複数の一対の側面43を形成する複数の壁部44と、複数の底面41を有する第2下部クラッド層42と、上部ガイド部47と、蓋材50と、を有する。したがって、第2下部クラッド層42は、下部ガイド層として作用する。
【0013】
複数の壁部44は、複数の光導波路(コア層32)の端部35が並んでいる方向に並ぶように、第2下部クラッド層42の上面42aに形成されている。複数の壁部44のうち互いに隣接する2つの壁部44の間の間隔は、互いに隣接する2つの光導波路(コア層32)の間の間隔と等しい。
複数の壁部44のうち互いに隣接する2つの壁部44及び第2下部クラッド層42は、各ガイド溝部45を形成する。各ガイド溝部45は、各光ファイバ5の端部6の位置が各光導波路(コア層32)の端部35の位置に合うように、つまり、各光ファイバ5の端部6を案内するように、各一対の側面43及び各底面41によって形成される。
互いに隣接する2つの壁部44の側面43のうち互いに対向する2つの側面43の間の間隔は、光ファイバ5が対向する2つの側面43の間にスムーズに挿入できるように、光ファイバ5の外径と等しいか若干広いことが好ましい。換言すると、各一対の側面43は、各光ファイバ5を間において互いに対向する位置に形成されていることが好ましい。
【0014】
図2に示すように、複数の傾斜面46は、それぞれ、複数の底面41の一部である。したがって、複数の底面41は、それぞれ、各一対の側面43の間に形成された複数の傾斜面46を含む。傾斜面46は、底面41のうち、段部60によって第2下部クラッド層42に段差が生じた部分である。傾斜面46の形状は、コア層32側に凸の曲面状、又は、一つの変曲点を有するコア層32側に凸の曲面状である。
各傾斜面46は、各光ファイバ5が各一対の側面43及び各底面41に沿って各ガイド溝部45に挿入される挿入方向Xに進むに従って各光ファイバ5の端部6が各光導波路(コア層32)の端部35に光学的に接続できるように形成されたテーパー面である。換言すると、傾斜面46と基板20の上面22aとの間の距離は、挿入方向Xに進むに従って大きくなる。各傾斜面46は、挿入方向Xに進むに従って、基板20の上面22aの上方に向かって緩やかに上がっていく面であることが好ましい。
【0015】
図2に示すように、段部60は、複数の傾斜面46を形成するために、第2下部クラッド層42と基板20の上面22aとの間に形成されている。図1に示すように、基板20の上方からみた段部60は、基板20の上面22aの周囲(基板20の上面22aの縁部)が露出する形状である。段部60の形状としては、例えば、基板20の上面22aの形状を縮小したような形状である。段部60の材料は、例えば、第2下部クラッド層42と同一であってもよい。
【0016】
図3に示すように、上部ガイド部47は、複数の壁部44のうち最も外側に位置する2つの壁部44の上面44aに形成されている。したがって、上部ガイド部47は、複数の壁部44のうち最も外側に位置する2つの壁部44の間の距離と同じ幅寸法を有する。蓋材50は、複数の壁部44の上面44aに複数のガイド溝部45の開口を覆うように、例えば板状に形成され、複数の壁部44に支持されている。
蓋材50の下側は各一対の側面43の間に形成された複数の押さえ面48を有する。複数の押さえ面48は、各光ファイバ5を間において各底面41に対向するように位置している。各一対の側面43、各底面41及び各押さえ面48は、それぞれが各光ファイバ5の端部6を挿入する複数の挿通穴49を形成している。したがって、各挿通穴49には、各光ファイバ5の端部6が挿入されるので、各底面41と各押さえ面48との間は、各光ファイバ5が各底面41と各押さえ面48との間に挿入できるように、各光ファイバ5の外径と同じか各光ファイバ5の外径よりも若干広いことが好ましい。
【0017】
図2に示すように、各挿通穴49は、傾斜面46を有するので、挿入方向Xに進むに従って各光ファイバ5の端部6が各光導波路(コア層32)の端部35に光学的に接続できるように形成されたラッパ形状を構成する。傾斜面46は挿通穴49の下側に位置するので、挿通穴49は、挿入方向Xに進むに従って挿通穴49の下側が挿通穴49の上側(挿通穴49の中心側)に上がるように、挿通穴49の大きさが小さくなっている。したがって、挿通穴49に挿入しようとした光ファイバ5の端部6が自重により垂れ下がっても、挿通穴49の挿入側の開口は広く、また、挿通穴49の光導波路(コア層32)側の開口は光導波路(コア層32)の端部35に向いているので、垂れ下がった光ファイバ5の端部6をスムーズに光導波路(コア層32)の端部35に案内することができる。換言すると、複数の光導波路(コア層32)と複数の光ファイバ5とをそれぞれ接続する際の位置合わせのトレランスが複数の挿通穴49によって確保できる。
【実施例】
【0018】
以上の光導波路基板10は、以下のようにして製造することができる。
まず、光導波路基板10を構成するフィルム等の素材の製造方法を説明する。
[クラッド層形成用樹脂フィルムの作製]
[(A)ベースポリマー;(メタ)アクリルポリマー(A−1)の作製]
撹拌機、冷却管、ガス導入管、滴下ろうと、及び温度計を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート46質量部及び乳酸メチル23質量部を秤量し、窒素ガスを導入しながら撹拌を行った。液温を65℃に上昇させ、メチルメタクリレート47質量部、ブチルアクリレート33質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート16質量部、メタクリル酸14質量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート46質量部、及び乳酸メチル23質量部の混合物を3時間かけて滴下後、65℃で3時間撹拌し、さらに95℃で1時間撹拌を続けて、(メタ)アクリルポリマー(A−1)溶液(固形分45質量%)を得た。
【0019】
[重量平均分子量の測定]
(A−1)の重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)を、GPC(商品名「SD−8022」、「DP−8020」及び「RI−8020」、東ソー株式会社製)を用いて、測定した結果、3.9×104であった。なお、カラムは商品名「Gelpack GL−A150−S」及び「Gelpack GL−A160−S」(日立化成工業株式会社製)を使用した。
【0020】
[酸価の測定]
(A−1)の酸価を測定した結果、79mgKOH/gであった。なお、酸価は(A−1)溶液を中和するのに要した0.1mol/L水酸化カリウム水溶液量から算出した。このとき、指示薬として添加したフェノールフタレインが無色からピンク色に変色した点を中和点とした。
【0021】
[クラッド層形成用樹脂ワニスの調合]
(A)ベースポリマーとして、前記(A−1)溶液(固形分45質量%)84質量部(固形分38質量部)、(B)光硬化成分として、ポリエステル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(商品名「U−200AX」、新中村化学工業株式会社製)33質量部、及びポリプロピレングリコール骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(商品名「UA−4200」、新中村化学工業株式会社製)15質量部、(C)熱硬化成分として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型三量体をメチルエチルケトンオキシムで保護した多官能ブロックイソシアネート溶液(固形分75質量%)(商品名「スミジュールBL3175」、住化バイエルウレタン株式会社製)20質量部(固形分15質量部)、(D)光重合開始剤として、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名「イルガキュア2959」、チバ・ジャパン株式会社製)1質量部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(商品名「イルガキュア819」、チバ・ジャパン株式会社製)1質量部、及び希釈用有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート23質量部を撹拌しながら混合した。孔径2μmのポリフロンフィルタ(商品名「PF020」、アドバンテック東洋株式会社製)を用いて、加圧濾過後、減圧脱泡し、クラッド層形成用樹脂ワニスを得た。
上記で得られたクラッド層形成用樹脂組成物を、PETフィルム(商品名「コスモシャインA4100」、東洋紡績株式会社製、厚さ50μm)の非処理面上に、前記塗工機を用いて、塗布し、100℃で20分乾燥後、保護フィルムとして表面離型処理PETフィルム(商品名「ピューレックスA31」、帝人デュポンフィルム株式会社製、厚さ25μm)を貼付け、クラッド層形成用樹脂フィルムを得た。このとき樹脂層の厚さは、塗工機のギャップを調節することで任意に調整可能であり、本実施例では使用した第1下部クラッド層及び下部ガイド層(接着層)の厚さについては、実施例中に記載する。また、第1下部クラッド層及び下部ガイド層の硬化後の膜厚と塗工後の膜厚は同一であった。本実施例で用いた上部クラッド層形成用樹脂フィルムの膜厚についても実施例中に記載する。実施例中に記載する上部クラッド層形成用樹脂フィルムの膜厚は塗工後の膜厚とする。
【0022】
[コア層形成用樹脂フィルムの作製]
(A)ベースポリマーとして、フェノキシ樹脂(商品名「フェノトートYP−70」、東都化成株式会社製)26質量部、(B)光重合性化合物として、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(商品名「A−BPEF」、新中村化学工業株式会社製)36質量部、及びビスフェノールA型エポキシアクリレート(商品名「EA−1020」、新中村化学工業株式会社製)36質量部、(C)光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名「イルガキュア819」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)1質量部、及び1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名「イルガキュア2959」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)1質量部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を用いたこと以外は上記製造例と同様の方法及び条件でコア層形成用樹脂ワニスBを調合した。その後、上記製造例と同様の方法及び条件で加圧濾過さらに減圧脱泡した。
上記で得られたコア層形成用樹脂ワニスBを、PETフィルム(商品名「コスモシャインA1517」、東洋紡績株式会社製、厚さ16μm)の非処理面上に、上記製造例と同様な方法で塗布乾燥し、次いで、保護フィルムとして離型PETフィルム(商品名「ピューレックスA31」、帝人デュポンフィルム株式会社製、厚さ25μm)を離型面が樹脂側になるように貼り付け、コア層形成用樹脂フィルムを得た。このとき樹脂層の厚さは、塗工機のギャップを調節することで任意に調整可能であり、本実施例では使用したコア層形成用樹脂フィルム厚さについては、以下の各実施例中に記載する。実施例中に記載するコア層形成用樹脂フィルムの膜厚は塗工後の膜厚とする。
【0023】
図4から図13を参照して、光導波路基板10の製造方法を説明する。
(基板20の形成:サブトラクティブ法による電気配線形成:図4及び図5)
図4に示すように、金属層24として片面銅箔付きのポリイミドフィルム23((ポリイミド:商品名「ユーピレックスVT」、宇部日東化成株式会社製、厚さ25μm)、(銅箔:商品名「NA−DFF」、三井金属鉱業株式会社製、厚さ9μm))の銅箔面に感光性ドライフィルムレジスト(商品名「フォテック」、日立化成工業株式会社製、厚さ25μm)を、ロールラミネータ(商品名「HLM−1500」、日立化成テクノプラント株式会社製)を用いて、圧力0.4MPa、温度110℃、ラミネート速度0.4m/minの条件で貼り、次いで、紫外線露光機(商品名「EXM−1172」、株式会社オーク製作所製)にて感光性ドライフィルムレジスト側から幅50μmのネガ型フォトマスクを介し、上記の銅箔面に紫外線(波長365nm)を120mJ/cm2照射し、そして、未露光部分の感光性ドライフィルムレジストを35℃の0.1〜5重量%炭酸ナトリウムの希薄溶液で除去した。その後、塩化第二鉄溶液を用いて、感光性ドライフィルムレジストが除去されむき出しになった部分の銅箔をエッチングにより除去し、次いで、35℃の1〜10重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、露光部分の感光性ドライフィルムレジストを除去し、L(ライン幅)/S(間隙幅)=60/65μmの電気配線25を形成しフレキシブル配線板を得た。
【0024】
(Ni/Auめっきの形成)
その後、フレキシブル配線板を、脱脂、ソフトエッチング、酸洗浄し、無電解Niめっき用増感剤(商品名「SA−100」、日立化成工業株式会社製)に25℃で5分間浸漬後水洗し、83℃の無電解Niめっき液(商品名「ICPニコロンGM−SD溶液」、奥野製薬株式会社製、pH4.6)に8分間浸漬して3μmのNi被膜を形成し、その後、純水にて洗浄を実施した。
次に、置換金めっき液(無電解金めっき処理液(商品名「HGS−500」、日立化成工業株式会社製、100mL)及びシアン化金カリウム(1.5g/L)で建浴)に85℃で8分間浸漬し、Ni被膜上に0.06μmの置換金被膜を形成した。これにより、カバーレイフィルムのない電気配線25部分がNi及びAuのめっきに被覆されたフレキシブル配線板である基板20を得た(図5参照)。
【0025】
(段部60の形成:第1工程:図6)
基板20としての25μm厚さのポリイミド(カプトンEN)の上面22aに、板状の段部60を形成する。15μm厚さの下部ガイド層形成用樹脂を、真空加圧式ラミネータ(商品名「MVLP−500」、株式会社名機製作所製)を用いて、500Pa以下に真空引きした後、圧力0.4MPa、温度110℃、加圧時間30秒の条件にて加熱圧着して、基板20の上面22aに、ラミネートした。さらに、ネガ型フォトマスクを使用して紫外線(波長365nm)を150mJ/cm2照射後、現像液(1%炭酸カリウム水溶液)を用いてパターン化し、170℃で1時間加熱乾燥及び硬化することで、段部60を基板20の上面22aに形成した。これにより、基板20と段部60とが一体になった部材の上面は、中央が凸の形状となる。
【0026】
(第2下部クラッド層42の形成:第2工程:図7)
上記で得られた10μm厚のクラッド層形成用樹脂フィルムを接着層として、大きさ100×100mmに裁断し、保護フィルムである離型PETフィルム(商品名「ピューレックスA31」、帝人デュポンフィルム株式会社製)を剥離し、上記で形成したフレキシブル配線板である基板20のポリイミド面に、平板型ラミネータとして真空加圧式ラミネータ(商品名「MVLP−500」、株式会社名機製作所製)を用いて、500Pa以下に真空引きした後、圧力0.4MPa、温度100℃、加圧時間30秒の条件にて加熱圧着して、基板20に第2下部クラッド層42を形成した。紫外線露光機(商品名「EXM−1172」、株式会社オーク製作所製)にてキャリアフィルム側から紫外線(波長365nm)を4J/cm2照射し、次いで、キャリアフィルムを剥離し、170℃で1時間加熱処理することにより、厚さ10μmの第2下部クラッド層42を基板20に形成した。
【0027】
(第1下部クラッド層31の形成:図8)
15μm厚の第1下部クラッド層形成用樹脂フィルムを、大きさ100×100μmに裁断し、保護フィルムを剥離して、上記と同様の条件で、真空ラミネータによって、第2下部クラッド層42に積層した。95μm×3.0mm×4本の非露光部を有したネガ型フォトマスクを介し、紫外線露光機(商品名「EXM−1172」、株式会社オーク製作所製)にてキャリアフィルム側から積層された第1下部クラッド層形成用樹脂フィルムに紫外線(波長365nm)を250mJ/cm2照射した。その後、キャリアフィルムを剥離し、現像液(1%炭酸カリウム水溶液)を用いて、第1下部クラッド層31をエッチングした。続いて、水洗浄し、170℃で1時間加熱乾燥及び硬化し、光ファイバ溝形成部分に95μm×3.0mmの開口部を形成した第1下部クラッド層31を基板20に形成した。これにより、光導波路であるコア層32が形成される部分には第1下部クラッド層31が形成され、光ファイバ5が搭載される部分には第1下部クラッド層31が無い状態となっている。
【0028】
(コア層32及び壁部44の形成:第3工程:図9(a)及び(b))
次に、第1下部クラッド層31の表面に、ロールラミネータ(商品名「HLM−1500」、日立化成テクノプラント株式会社製)を用いて、圧力0.4MPa、温度50℃、ラミネート速度0.2m/minの条件で、保護フィルムを剥離した50μm厚のコア層形成用樹脂フィルムをラミネートし、次いで、上記の真空加圧式ラミネータ(商品名「MVLP−500」、株式会社名機製作所製)を用いて、500Pa以下に真空引きした後、圧力0.4MPa、温度70℃、加圧時間30秒の条件にて加熱圧着した。その後、光信号伝達用コアパターン幅50μm(光ファイバ接続部分のパターンピッチ125μm、光路変換ミラー形成部(光ファイバ接続部分より5mm地点)のパターンピッチ250μm、4本)、ファイバガイド用コアパターン幅40μm(ファイバ溝ピッチ125μm、4本、両端のファイバガイド用コアパターンのみ150μm)のネガ型フォトマスクを介し、ファイバガイド用コアパターンである壁部44によって形成される溝が第2下部クラッド層42の上(図9(a)参照)に、光信号伝達用コアパターンとなるコア層32が第1下部クラッド層31の上(図9(b)参照)に形成されるように位置合わせをし、上記紫外線露光機にて紫外線(波長365nm)を700mJ/cm2照射し、次いで、80℃で5分間露光後加熱を行った。その後、キャリアフィルムであるPETフィルムを剥離し、現像液(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/N,N−ジメチルアセトアミド=8/2、質量比)を用いて、コアパターンをエッチングした。続いて、洗浄液(イソプロパノール)を用いて洗浄し、100℃で10分間加熱乾燥し、光信号伝達用コアパターンであるコア層32及びファイバガイド用コアパターンである壁部44を形成し、同時に、光ファイバ5を収容可能な85μm幅の溝が形成された。なお、ファイバガイド用コアパターンである壁部44における各パターンの大きさは、光ファイバ5を溝に固定した際に、光ファイバが光信号伝達用コアパターンであるコア層32に光信号を送受可能な位置に接合するように設計されている。
【0029】
(上部クラッド層33の形成:図10(a)及び(b))
次いで、保護フィルムを剥離した85μm厚の上部クラッド層樹脂フィルムをコアパターン形成面側から、コア層32の上面及び壁部44の上面44aに、上記の真空加圧式ラミネータ(商品名「MVLP−500」、株式会社名機製作所製)を用いて、500Pa以下に真空引きした後、圧力0.4MPa、温度110℃、加圧時間30秒の条件にて加熱圧着して、ラミネートした。さらに、第1下部クラッド層31を形成した際に使用したネガ型フォトマスクを使用して紫外線(波長365nm)を150J/cm2照射後、キャリアフィルムを剥離し、現像液(1%炭酸カリウム水溶液)を用いて、隣接する2つの壁部44で形成される溝部分の上部クラッド層形成用樹脂フィルムをエッチングした。続いて、水洗浄し、170℃で1時間加熱乾燥及び硬化し、これにより、第1下部クラッド層31、光導波路であるコア層32及び上部クラッド層33が基板20に形成された。
以上のようにして、125μmピッチ、ファイバ径80μm、4チャンネル用の光導波路基板10を作製した。
得られた光導波路基板10において、隣接する2つの壁部44で形成される溝の横幅は85μm、壁部44の高さ(段部60の上側において、第2下部クラッド層42の表面から壁部44の上面44aまでの高さ)は64μm、基板20の上面22aから上部クラッド層33の上面までの高さは85.5μm、光信号伝達用コアパターンであるコア層32の厚さは50μmであった。
【0030】
(スリット溝36の形成:図11(a)及び(b))
得られた光導波路基板10の光ファイバ接続端面を平滑化するために、ダイシングソー(商品名「DAC552」、株式会社ディスコ社製)を用いて、40μm幅のスリット溝36を形成した(図11(a)及び(b)参照)。併せて、ファイバガイド用コアパターンに対して平行に基板を切断し(光導波路端面から3mm地点)、基板端面に光ファイバ5を搭載するための溝(隣接する2つの壁部44によって形成される溝)が現れるように外形加工を行った。なお、スリット溝36によって上部クラッド層33が分断されると、上部クラッド層33のうち、壁部44の上側に位置している上部クラッド層は、上部ガイド部47とされる。
【0031】
(光路変換ミラー37の形成:第4工程:図11(a)及び(b)、図12)
得られた光導波路基板10の上部クラッド層33側から、ダイシングソー(商品名「DAC552」、株式会社ディスコ社製)を用いて、45°の光路変換ミラー37を光導波路であるコア層32に形成した(図11(a)及び(b)参照)。次いで、光路変換ミラー37の部分を開口させたメタルマスクを光路変換ミラー37に設置し、蒸着装置(商品名「RE−0025」、株式会社ファースト技研製)を用いて、Auを0.5μm蒸着させて、光路変換ミラー37に蒸着金属層37aを形成した(図12参照)。
【0032】
(蓋材50の形成:第4工程:図13)
その後、ポリイミドフィルム(商品名「ユーピレックスRN」、宇部日東化成株式会社製、厚さ25μm)50a上に蓋材50の接着層50bとして上記で得られた10μm厚のクラッド層形成用樹脂フィルムの保護フィルムを剥離して、上記と同様の条件で、真空ラミネータによって積層し、接着層50bを有する蓋材50を形成した。次に、蓋材50に積層したクラッド層形成用樹脂フィルムのキャリアフィルムを剥離し、剥離された蓋材50を上記の光導波路基板10の上部クラッド層33に載置し、上部クラッド層33が形成されている側から、上記と同様の条件で、真空ラミネータによって加熱圧着した。次いで、180℃1h加熱硬化し、蓋材50を備えた光導波路基板10を形成した。光ファイバ搭載用の溝の光導波路基板10(第1下部クラッド層31)表面から蓋材50の底面(蓋材50の接着層50bの底面)までの高さは、82μmであった。
【0033】
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく種々の形態で実施することができる。例えば、本実施形態において、光導波路基板10において上部ガイド部47を省略した構成としてもよい。また、光導波路基板10の製造方法において、第4工程を省略してもよい。
【符号の説明】
【0034】
5 光ファイバ
6 光ファイバの端部
10 光導波路基板
20 基板
22 基板の上面
30 光導波路群
31 第1下部クラッド層
32 コア層(光導波路)
33 上部クラッド層
35 コア層(光導波路)の端部
36 スリット溝
40 ガイド部
41 底面
42 第2下部クラッド層(下部ガイド層)
42a 第2下部クラッド層の上面
43 壁部の側面
44 壁部
44a 壁部の上面
45 ガイド溝部
46 傾斜面
47 上部ガイド部
48 蓋材の押さえ面
49 挿通穴
50 蓋材
60 段部
60a 段部の上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル状の複数の光素子が接続される光導波路基板であって、
板状の基板と、
前記基板の上面の上方に形成された複数の光導波路であってそれぞれの端部と各光素子の端部とが光学的に接続する複数の光導波路と、
複数の一対の側面を形成する複数の壁部と複数の底面を有する下部ガイド層とを有し、前記基板の上面の上方に形成されたガイド部と、を備え、
前記複数の壁部及び前記下部ガイド層は、それぞれが各光素子の端部の位置が各光導波路の端部の位置に合うように各光素子の端部を案内するための複数のガイド溝部であってそれぞれが各一対の側面及び各底面により形成される複数のガイド溝部を形成し、
各一対の側面は、各光素子を間において互いに対向する位置に形成され、
前記複数の底面は、それぞれ、各光素子が各一対の側面及び各底面に沿って各ガイド溝部に挿入される挿入方向に進むに従って各光素子の端部が各光導波路の端部に光学的に接続できるように、各一対の側面の間に形成された複数の傾斜面を含む、光導波路基板。
【請求項2】
前記傾斜面と前記基板の上面との間の距離は、前記挿入方向に進むに従って大きくなる、請求項1に記載の光導波路基板。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記複数の壁部の上面に前記複数のガイド溝部の開口を覆う蓋材を有し、
前記蓋材の下側は、それぞれが、各光素子を間において各底面に対向するように位置し、各一対の側面の間に形成された複数の押さえ面を有し、
各一対の側面、各底面及び各押さえ面は、それぞれが各光素子の端部を挿入する複数の挿通穴を形成している、請求項1又は2に記載の光導波路基板。
【請求項4】
前記下部ガイド層と前記基板の上面との間に前記複数の傾斜面を形成するための板状の段部を有する、請求項3に記載の光導波路基板。
【請求項5】
請求項4に記載の光導波路基板の製造方法であって、
前記基板の上面に前記段部を形成する第1工程と、
前記下部ガイド層の上面が各底面を形成するように、かつ、前記段部の段差によって前記下部ガイド層の上面が各傾斜面を形成するように、前記基板の上面及び前記段部の上面に前記下部ガイド層を形成する第2工程と、
前記下部ガイド層の前記押さえ面に各底面が形成できるような間隔をおいて、前記複数の一対の側面が形成できるように、前記複数の壁部を形成する第3工程と、を備えた、光導波路基板の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記下部ガイド層の上面に前記複数のガイド溝部の開口を覆うように蓋材を形成する第4工程を備える、請求項5に記載の光導波路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−150241(P2012−150241A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8304(P2011−8304)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】