説明

光情報記録媒体用の透明層の製造装置

【課題】品質の安定した透明層を製造することが可能な光情報記録媒体用の透明層の製造装置を提供する。
【解決手段】基材フィルムとなるベースBの原反1からベースBを搬送させつつベースBにハードコート層を形成して、光情報記録媒体用の透明層を製造する光情報記録媒体用の透明層の製造装置10であって、ベースBにハードコート層を形成するための塗布液を塗布する塗布部2と、ベースBに塗布された塗布液を乾燥する乾燥部4と、乾燥部4で乾燥後の塗布液を硬化させるための紫外線を、ベースBの塗布液が塗布された面に照射する紫外線照射部5とを備え、紫外線照射部5は、ベースBの搬送速度の基準となる駆動ローラ15を含み、駆動ローラ15によってベースBを搬送させながら光源16により紫外線を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルムとなるベースの原反から前記ベースを搬送させつつ前記ベースにハードコート層を形成して、光情報記録媒体用の透明層を製造する光情報記録媒体用の透明層の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、デジタル・ハイ・ビジョンTV放送の録画に対応するため、高密度光情報記録媒体(DVD)よりも更に高密度記録を可能とする光情報記録媒体の研究が進められており、青紫色レーザと高NA(開口数(Numerical Aperture))ピックアップとを使用した光ディスクシステムが開発されている。
【0003】
このような光ディスクシステムとしては、例えば、ブルー・レイ・ディスク(Blue-ray Disk)と称される次世代光ディスク規格がある。ブルー・レイ・ディスクは、基板上に記録層と、該記録層のレーザ入射側に透明層とを備えた光情報記録媒体である。透明層は、例えば下記特許文献1に示すように、ポリカーボネートからなる光透過層の表面に、傷付き防止のためのハードコート層が塗布されてなる。
【0004】
上記透明層を製造する製造装置は、例えば、透明層の基材フィルムとして用いられるポリカーボネート製ベースを巻芯に巻回して得られるベース原反と、ベース原反からベースを送り出して搬送するための駆動ローラと、駆動ローラによって搬送されるベースにハードコート層を形成するための紫外線硬化性組成物を塗布部材によって塗布する塗布部と、塗布部により塗布された紫外線硬化性組成物を乾燥する乾燥部と、乾燥部により乾燥された紫外線硬化性組成物を紫外線照射により硬化させる紫外線照射部と、紫外線照射部を通過したベースを巻芯に巻き取る巻取部とを備える。
【0005】
上記製造装置は、ベースの送り出し、紫外線硬化性組成物の塗布、紫外線硬化性組成物の乾燥、紫外線硬化性組成物への紫外線照射、及びベースの巻き取り等において、それぞれの処理が一定のハンドリング状態でなされるように、駆動ローラによりベースの搬送速度が制御されている。従来は、塗布部と乾燥部との間に設けられた駆動ローラであるプルロールがベースBの搬送速度の基準となるロールとなっており、このプルロールが制御されることで、所定の速度でベースBを搬送させている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−67468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記透明層は、紫外線照射部による紫外線照射処理の条件によって、その品質が大きく左右される。ところが、従来では、紫外線照射部から離れた位置にあるプルロールによってベースBの搬送速度が決定されているため、紫外線照射部による紫外線照射処理の条件を一定にすることが難しく、透明層の品質を安定させるのが困難であった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、品質の安定した透明層を製造することが可能な光情報記録媒体用の透明層の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光情報記録媒体用の透明層の製造装置は、基材フィルムとなるベースの原反から前記ベースを搬送させつつ前記ベースにハードコート層を形成して、光情報記録媒体用の透明層を製造する光情報記録媒体用の透明層の製造装置であって、前記ベースに前記ハードコート層を形成するための塗布液を塗布する塗布部と、前記ベースに塗布された塗布液を乾燥する乾燥部と、前記乾燥部で乾燥後の塗布液を硬化させるための光を、前記ベースの前記塗布液が塗布された面に照射する光照射部とを備え、前記光照射部は、前記ベースの搬送速度の基準となる駆動ローラを含み、前記駆動ローラによって前記ベースを搬送させながら前記光を照射する。
【0010】
この構成により、ベースの搬送速度の基準となる駆動ローラによってベースを搬送させながら光を照射するため、塗布液が硬化されるときの条件を一定にすることができ、品質の安定した透明層を製造することができる。
【0011】
本発明の光情報記録媒体用の透明層の製造装置は、前記塗布部が後計量型の塗布方式によって塗布を行うものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、品質の安定した透明層を製造することが可能な光情報記録媒体用の透明層の製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明でいう、光情報記録媒体とは、光学的手段によって情報信号を再生可能な情報記録媒体である。本発明の光情報記録媒体は、基本的に、基板と、記録層と、透明層とから構成される。また、光情報記録媒体において、これらの構成要素は発明内容を阻害しない範囲で相互に入れ替え又は組み合せもよい。光情報記録媒体において、これらの構成要素は、少なくとも1つずつ存在することが必要であるが、各々は複数層存在してもよく、1つの層が組成や特性の異なる複数の層から構成されてもよい。さらに、光情報記録媒体には、上記の層以外にも、静電気防止層、潤滑層、保護層、反射層などを設けてもよい。また、基板の記録層とは反対側にレーベル印刷が施されていてもよい。
【0014】
光情報記録媒体は、例えば、ディスク形状を有し、直径など寸法は制限されない。光情報記録媒体は、カートリッジ筐体に収容保持された構成としてもよい。
【0015】
透明層は、記録再生のために照射された光を記録層に導く機能を有するとともに、記録層を化学的且つ機械的に保護する機能を有している。本発明において「透明」とは、記録再生に用いる光学的手段の光の波長(例えば、600nmから800nmや350nmから450nm)に対して光透過率70%以上、望ましくは85%以上であることを意味する。尚、カバー層の透過率は90%〜92%である。
【0016】
透明層は、基材フィルム(透光性フィルム)を有し、その表面に傷付き防止のためのハードコート層が設けられたものであり、また、適宜に、粘着層や防汚層を含むことができる。基材フィルムとしては、例えば、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド等を用いることができる。
【0017】
ハードコート層は、活性エネルギー光線、好ましくは紫外線照射により硬化する紫外線硬化性組成物を基材フィルム上に塗布、乾燥した後、紫外線の照射により該組成物を硬化させることで形成される。紫外線硬化性組成物には、紫外線照射により重合又は架橋して硬化する同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物が、好ましく使用される。
【0018】
ハードコート層は、その厚さが1.0μmから10.0μmが好ましく、2.0μmから6.0μmがより好ましく、2.5μmから5.0μmであることが特に好ましい。
【0019】
ハードコート層の鉛筆硬度としては、B以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましい。ここでいう鉛筆硬度とは、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K−5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、9.8Nの荷重において傷が認められない鉛筆の硬度として求めることができる。
【0020】
以下、本発明に係る透明層の製造システムの実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明に係る光情報記録媒体用の透明層の製造装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、透明層の製造装置10は、ポリカーボネートからなるベースBを巻芯に巻回させてなるベース原反(バルク)1と、該ベースBを巻芯に巻き取って保持する巻取ロール6との間で、ベース原反1から巻取ロール6へ送り出すことによってベースBを搬送させる構成である。ベースBの厚さは、80μmから100μmとする。
【0021】
製造装置10は、ベースBの搬送方向に沿って、順に、塗布部2と、パスローラ3と、乾燥部4と、紫外線照射部5(特許請求の範囲の光照射部に該当)とを備えている。
【0022】
塗布部2は、図示しない塗布液供給部に接続された塗布部材13と塗布ロッド14とを備える。塗布部2は、塗布液供給部から過剰な塗布液をベースBに転移させた後、静止もしくは、ベースBと順方向および逆方向に任意の周速で回転している塗布ロッド14により過剰な塗布液を掻き落として、所望の塗布量をベースBに塗布する、いわゆる後計量型の塗布方式によって塗布を行うものである。塗布部2としては、例えばブレードコーター、ロッドバーコーター、ワイヤーバーコーター等を用いることができる。後計量型の塗布方式では、塗布液を高速で塗布することができる。
【0023】
塗布部材13は、ベースBに塗布ロッド14を押圧する位置(ラップする位置)と、ベースBから塗布ロッド14を離間させた位置とに任意に設定できるように移動可能な部材である。本実施形態の製造装置10において、塗布時に塗布部材13を移動させることで塗布ロッド14がベースBに押圧する位置とし、塗布時以外には、塗布ロッド14がベースBに対して離間する位置とする構成である。
【0024】
本実施形態において、塗布液としては、一例として、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルエチルブチルケトン(MIBK)等の溶剤と、Si粒子と、紫外線硬化性樹脂と、重合開始剤とからなる組成物を用いた。
【0025】
パスローラ3は、搬送されるベースBに従って回転自在な構成である。本実施形態において、パスローラ3は、駆動軸や駆動モータ等の駆動系に接続されていないフリーローラである。
【0026】
乾燥部4は、ベースBを搬送させつつ、該ベースBに塗布された塗布液を乾燥させるものである。
【0027】
紫外線照射部5は、駆動ローラ15と、紫外線(紫外光)を照射する光源16とを備え、ベースBを駆動ローラ15により搬送させた状態で、ベースBにおける塗布液が塗布された面に光源16から紫外線を照射し、塗布層を硬化させるものである。ここで、紫外線照射部5は、塗布液を硬化させることができれば、紫外線以外の活性エネルギーの光を照射する構成としてもよい。
【0028】
駆動ローラ15は、装置動作中に回転駆動し、その周面においてベースBと接触して該ベースBを搬送するものであり、ベースBの搬送速度の基準となるローラである。駆動ローラ15は、図示しないローラ制御部に制御され、一定の速度でベースBを搬送させる。駆動ローラ15は、ベースBに対する保持力を確保するため、表面に溝が設けられた構成としても良く、又、エアを吸引することでベースBを吸着保持する構成としても良い。
【0029】
次に、塗布部の構成を説明する。図2は、本実施形態における塗布部の構成を説明する図である。
図2に示すように、ベースBの搬送方向における、塗布部材13の上流側にはパスローラ11が設けられ、塗布部材13の下流側にはパスローラ12が設けられている。
【0030】
パスローラ11,12は、搬送されるベースBに従って回転自在な構成である。本実施形態において、これらパスローラ11,12は、駆動軸や駆動モータ等の駆動系に接続されていないフリーローラである。
【0031】
塗布時に、搬送されるベースBに塗布部材13が接触することで該ベースBの搬送経路長が変化しても、搬送されるベースBを支持するパスローラ11,12がフリーローラであるため、搬送されるベースBの速度に追従するように、パスローラ11,12が自由に回転するようになる。このため、ベースBとパスローラ11,12との接触圧が変わることに起因してスティックスリップが発生することがなく、ベースBがパスローラ11,12と接触する部位において座屈してしまうことを防止することができる。
【0032】
以下、図1の製造装置10の動作について説明する。
ベース原反1から送り出されたベースBは、パスローラ11を通過して塗布部2に到達し、ここで塗布液が塗布される。塗布液が塗布されたベースBは、パスローラ12、パスローラ3を通過して乾燥部4に到達し、ここで塗布された塗布液が乾燥される。塗布液が乾燥されたベースBは、紫外線照射部5に到達する。紫外線照射部5では、ベースBが駆動ローラ15の周面に接触して一定の速度で搬送されつつ、ベースBの塗布液が塗布された面に光源16から紫外線が照射されることにより、塗布液が硬化される。紫外線照射部5を通過したベースBは、巻芯に巻き取られ、巻取ロール6が形成される。
【0033】
以上のように、製造装置10によれば、ベースBに紫外線が照射される際、ベースBの搬送速度は、駆動ローラ15によって一定に制御されているため、ベースBの全体に渡って、紫外線照射の処理の条件が一定となる。このため、透明層の品質を安定させることができる。
【0034】
又、塗布部2として、後計量型の塗布装置を用いているため、塗布液の塗布処理時のベースBの搬送速度に影響されることなく、紫外線照射処理時のベースBの搬送速度を一定にすることができる。仮に、塗布部2として前計量型の塗布装置を用いた場合は、紫外線照射処理時のベースBの搬送速度が、塗布液の塗布処理時のベースBの搬送速度の変化に影響されてしまうため、駆動ローラ15の回転速度を一定にすることができないが、本実施形態によればそのようなことはない。
【0035】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良などが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る光情報記録媒体用の透明層を製造する製造装置の構成を説明する図である。
【図2】図1の製造装置における塗布部の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0037】
B ベース
1 ベース原反
2 塗布部
3 パスローラ
4 乾燥部
5 紫外線照射部
6 巻取ロール
10 (光情報記録媒体用の透明層の)製造装置
15 駆動ローラ
16 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムとなるベースの原反から前記ベースを搬送させつつ前記ベースにハードコート層を形成して、光情報記録媒体用の透明層を製造する光情報記録媒体用の透明層の製造装置であって、
前記ベースに前記ハードコート層を形成するための塗布液を塗布する塗布部と、
前記ベースに塗布された塗布液を乾燥する乾燥部と、
前記乾燥部で乾燥後の塗布液を硬化させるための光を、前記ベースの前記塗布液が塗布された面に照射する光照射部とを備え、
前記光照射部は、前記ベースの搬送速度の基準となる駆動ローラを含み、前記駆動ローラによって前記ベースを搬送させながら前記光を照射する光情報記録媒体用の透明層の製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の光情報記録媒体用の透明層の製造装置であって、
前記塗布部は、後計量型の塗布方式によって塗布を行うものである光情報記録媒体用の透明層の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−82050(P2006−82050A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271702(P2004−271702)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】