説明

光情報記録媒体用反射膜および光情報記録媒体反射膜形成用スパッタリングターゲット

【課題】反射膜表面が基板に形成されたグルーブやピット等を精度よく再現して光情報記録媒体のノイズの低減を図れると共に、高い反射率を有するAl基合金反射膜、およびこうした反射膜を形成するために有用なスパッタリングターゲットを提供する。
【解決手段】本発明の光情報記録媒体用反射膜は、光情報記録媒体に用いられる反射膜であって、この反射膜は、希土類元素を2.0〜15.0%含むAl基合金からなり、反射膜の厚み方向における結晶子サイズが30nm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM、BD(ブルーレイディスク)−R、BD−RE、BD−ROM等の光情報記録媒体に用いられる反射膜、およびこうした反射膜を形成するためのスパッタリングターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光情報記録媒体(光ディスク)は、記録再生方式により、読取り専用型(例えば、DVD−ROM、BD−ROM)、追記型(例えば、DVD−R、DVD+R、BD−R、)、および書換え型(例えば、DVD−RW、DVD+RW、BD−RE、DVD−RAM)の3種類に大別される。
【0003】
このうち、例えば読取り専用型の光情報記録媒体では、透明プラスチック等の基板上に、Ag,Al等を主成分とする反射膜と、光透過層を順次積層された構成を有している。また反射膜と光透過層は基本的に夫々一層ずつ形成されるが、二層ずつ形成されるものも知られている。
【0004】
光情報記録媒体は、記録再生方式に応じた層構造が構成されるが、いずれの記録再生方式を採用する場合であっても、上記のような反射膜を基本的に含んで層構造が構成されることになる。こうした反射膜の素材としては、Au,Cu,Ag,Alおよびこれらを主成分とする合金が汎用されてきた。
【0005】
このうち、Auを主成分とするAu基合金の反射膜は化学的安定性(耐久性)に優れ、記録特性の経時変化が少ないという利点を有するが、極めて高価である。また、BDやHD DVDの記録再生に使用される青色レーザー(波長405nm)に対し、十分高い反射率が得られないという問題がある。Cuを主成分とするCu基合金は安価であるが、従来の反射膜材料のなかで最も耐久性に劣っている。また、Auと同様、青色レーザに対する反射率が低いという欠点があり、用途が制限されている。これに対し、Agを主成分とするAg基合金の反射膜は、実用波長領域である400〜800nmの範囲で十分高い反射率を示しており、且つ、耐久性にも優れているため、青色レーザを使用する光ディスクに広く利用されている。
【0006】
一方、Alを主成分とするAl基合金の反射膜は、安価で、且つ、波長405nmにおいて充分高い反射率を有していることが知られていることから、Ag基合金と同様に広く利用されている。
【0007】
ところで、光情報記録媒体の反射膜には、反射率が高いという特性を備えている必要がある他、記録媒体のノイズを低くすることも特性として要求される。こうした要求特性を満足する反射膜を形成するものとして、これまでにも様々なAl基合金が提案されている。例えば、特許文献1には、Cr、Fe、Tiを夫々1〜4%含有するAl基合金反射膜が開示されており、このような合金組成とすることにより、反射率が高く、表面が平滑で(Raは約5〜10nm)、温度変化に伴う結晶粒の成長が小さく反射率の変化が小さい反射膜が得られることが提案されている。
【0008】
上記技術で示されている化学成分組成では、反射膜の反射率は高くなるものの、結晶子サイズ(結晶粒径)が小さくなるとは限らず、反射膜表面が基板に形成されたグルーブやピットを精度よく再現しないという問題がある。こうした状況であると、その反射膜を用いた光情報記録媒体はノイズが大きくなり、良好な信号品質が得られないことになる。
【特許文献1】特開2007−092153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、反射膜表面が基板に形成されたグルーブやピット等を精度よく再現して光情報記録媒体のノイズの低減を図れると共に、高い反射率を有するAl基合金反射膜、およびこうした反射膜を形成するために有用なスパッタリングターゲットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできた本発明に係る光情報記録用反射膜は、希土類元素を2.0〜15.0%(「原子%」の意味、化学成分については以下同じ)含むAl基合金からなり、反射膜の厚み方向における結晶子サイズが30nm以下である点に要旨を有するものである。
【0011】
本発明の光情報記録媒体用反射膜の他の構成として、希土類元素を1.0%以上含有すると共に、Ti,V,Cr,Nb,Mo,Hf,TaおよびWよりなる群から選ばれる1種以上を前記希土類元素との合計で2.0〜15.0%含むAl基合金からなり、反射膜の厚み方向における結晶子サイズが30nm以下であるものも挙げられ、こうした構成の反射膜であっても上記目的が達成される。
【0012】
一方、上記目的を達成することのできた本発明のスパッタリングターゲット(光情報記録媒体反射膜形成用スパッタリングターゲット)とは、光情報記録媒体に用いられる反射膜を形成するためのスパッタリングターゲットであって、希土類元素を2.0〜15.0%含むAl基合金からなる点に要旨を有するものである。
【0013】
本発明のスパッタリングターゲットの他の構成として、希土類元素を1.0%以上含有すると共に、Ti,V,Cr,Nb,Mo,Hf,TaおよびWよりなる群から選ばれる1種以上を前記希土類元素との合計で2.0〜15.0%含むAl基合金からなるものも挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光情報記録媒体のノイズを小さくできると共に、高い反射率を有する反射膜が実現でき、こうした反射膜を備えた光情報記録媒体は記録特性が更に改善する上で極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するべく、特に反射率を十分高く維持でき、且つ記録媒体のノイズを極力小さくできる反射膜の素材となり得るAl基合金について様々な角度から検討した。その結果、希土類元素を適正量含有させたAl基合金、または希土類元素と共に、Ti,V,Cr,Nb,Mo,Hf,Ta,W等の合金元素(以下、これらの元素を「高融点金属元素」と呼ぶことがある)を適正量含有させたAl基合金で反射膜を構成した場合には、反射率を十分高い状態に維持しつつ、結晶子サイズ(反射膜厚み方向の結晶粒径)を極力小さくでき、これによって光情報記録媒体のノイズが極力低減できることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明が完成された経緯に沿って本発明の作用効果について説明する。
【0016】
反射膜として、TiやCrを含有させたAl基合金を用いたものは既に提案されているが(前記特許文献1)、本発明者らはこれらの元素の他、Nb,V,Mo,Hf,Ta,W等の高融点金属元素を含有させたAl基合金について、その反射膜としての特性について検討した。
【0017】
その結果、高融点金属元素を含有させたAl基合金では、高融点金属元素の含有量を増大させるほど反射膜の結晶子サイズは小さくなるが、それに伴い反射率が低下することが判明した。即ち、結晶子サイズを十分小さくするために必要な量の高融点金属元素を添加すると、反射率が大きく低下してしまうことになる。換言すれば、Ti,V,Cr,Nb,Mo,Hf,Ta,W等の高融点金属元素は、結晶子サイズを小さくする効果を発揮させるのであるが、反射率を維持できる程度の含有量では、結晶子サイズを十分小さくする効果が発揮されないことになる。
【0018】
本発明者らが検討したところによれば、純Alからなる反射膜においては、膜の深さ方向(厚み方向)および横方向に大きな結晶粒が形成されることになる。また、高融点金属元素だけを含有させたAl基合金を反射膜とした場合には、結晶粒径は基板面に平行な方向には小さくなるが、基板面に垂直な方向には小さくなりにくく、柱状の結晶粒が形成されることになることが判明した。この場合には、反射膜表面が基板のグルーブやピット等を精度良く再現せず、再生信号中のノイズが大きくなる。こうした状況は、反射膜の表面粗さを小さくするだけでは改善されず、結晶粒径についての根本的な改良が必要である。
【0019】
本発明者らはこうした知見に基づいて、反射膜として最適なAl基合金について更に検討を重ねた。その結果、適正量の希土類元素を含有させたAl基合金を反射膜として用いた場合には、結晶子サイズは基板面に平行方向にも垂直方向(厚み方向)にも小さくすることができ、反射膜表面が基板形状を再現する精度が高められ、その結果としてノイズを極めて小さくできること、およびこの適正量範囲では反射率の低下も招くことがない(即ち、小さい結晶子サイズおよび高い反射率を両立させる)ことが判明したのである。
【0020】
こうした効果を発揮させるための希土類元素の適正量は、2.0〜15.0%である。即ち、Al基合金中の希土類元素の含有量が2.0%未満では、結晶子サイズを十分小さくすることができず、含有量が15.0%を超えると反射率が低くなり過ぎる。尚、希土類元素の好ましい含有量の下限は3.0%(より好ましくは4.0%)であり、好ましい上限は14.0%(より好ましくは13.0%)である。
【0021】
本発明のAl基合金反射膜で用いられる希土類元素としては、La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Tm,Yb等のランタノイド系列希土類元素の他、Y(イットリウム)を含む元素群を意味する。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても構わない。
【0022】
ところで、Ti,V,Cr,Nb,Mo,Hf,Ta,W等の高融点金属元素だけを含有させたAl基合金では、高反射率と結晶子サイズの微細化の両立を図ることは困難であるが、希土類元素の一部を置換させる状態で高融点金属元素を含有させたAl基合金では、本発明の効果が確保できることも判明した。即ち、希土類元素(希土類元素類の1種以上)を合計で1.0%以上を含有させると共に、希土類元素と高融点金属元素から選ばれる元素1種以上の含有量を合計で2.0〜15.0%としたものでは、高融点金属元素だけを含有させた場合の不都合が回避され、本発明の上記目的を達成できる反射膜となり得たのである。
【0023】
希土類元素と高融点金属元素を併用するときの合計含有量は、2.0〜15.0%とする必要があるが(好ましくは3.0〜14.0%。より好ましくは4.0〜13.0%)、希土類元素の含有量は1.0%以上を確保する必要がある。尚、希土類元素の含有量は、好ましくは1.25%以上とするのがよく、より好ましくは1.5%以上とするのが良い。尚、本発明の反射膜を構成するAl基合金においては、上記の合金元素(希土類元素、または希土類元素と高融点金属元素)以外(残部)は、Alおよび不可避的不純物(例えば、Fe,Si,C,O等)である。
【0024】
上記のようなAl基合金からなる反射膜は、良好な反射率が実現できる共に、この様な反射膜を光情報記録媒体に備えることによって、光情報記録媒体のノイズの低減を図ることができるのである。こうした反射膜を備えた光情報記録媒体におけるそれ以外の構成(例ば、基板、光透過層等)は特に限定されず、光情報記録媒体の分野に公知の構成を採用することができる。
【0025】
反射膜の厚さについては、適用する光情報記録媒体の種類に応じて適宜設定すればよい。例えば、単層DVD−ROMの反射層や2層DVD−ROMの全反射層として使用する場合には、膜厚は50〜250nm程度とすることが好ましい。また2層DVD−ROMの半透過反射層として使用する場合には、膜厚は5〜15nm程度とすることが好ましい。この場合、全反射層としてはAl、Agまたはそれらの合金を使用することが好ましい。
【0026】
単層DVD−R、単層DVD+Rの反射膜や2層DVD−R、DVD+Rの全反射層として使用する場合には、膜厚は50〜250nm程度とするのが好ましく、2層DVD−Rや2層DVD+Rの半透過反射層として使用する場合には、膜厚は10〜30nm程度とすることが好ましい。このとき用いる記録層としては、色素層(有機色素材料層)を使用するのが好ましい。本発明の反射膜(反射層)は色素層に隣接して積層するのが好ましく、再生レーザ入射面から見て色素の奥側に設置することが好ましい。
【0027】
単層BD−ROMの反射層や2層BD−ROMの全反射層として使用する場合には、膜厚は15〜100nm程度の範囲で使用するのが好ましく、2層BD−ROMの半透過反射層として使用できる。再生レーザ入射側に形成される0.1μmの透明保護層としては紫外線硬化樹脂またはポリカーボネートを使用するのが好ましい。
【0028】
単層BD−Rの反射層や2層BD−Rの全反射層として使用する場合には、膜厚は50〜200nm程度とするのが好ましく、2層BD−Rの半透過反射層として使用できる。このとき用いる記録層としては、金属酸化物、金属窒化物、色素等が挙げられる。記録層の上下に挿入される保護層としては、ZnS、SiO、これらの混合物、またはAl等が好ましい。
【0029】
単層DVD−RW、単層DVD+RW、単層DVD−RAM、単層BD−RE等の反射層、または2層BD−REの全反射層として使用する場合、膜厚は50〜200nm程度とすることが好ましく、2層BD−REの半透過反射層として使用できる。このとき用いる記録層としては、相変化材料である、カルコゲナイト化合物系の材料が好ましく、Ge−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te等が挙げられる。
【0030】
本発明のAl基合金反射膜は、ポリカーボネート(PC)などの基板表面に、Al基合金からなるスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリングまたは蒸着して成膜される。このとき用いる、スパッタリングターゲットは、前記した本発明のAl基合金反射膜と同じ組成のAl基合金からなるものとすれば、本発明組成のAl基合金反射膜が得られやすいものとなる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは本発明の技術的範囲に包含される。
【0032】
ガラス基板上またはポリカーボネート製BD−R基板上に、合金ターゲット、或は純Alターゲットに添加元素チップを置いた複合ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により各種Al基合金薄膜(後記表1、2)を成膜した。このときのスパッタリング条件は下記の通りである。
【0033】
(スパッタリング条件)
スパッタ装置:アルバック社製「SIH−S100」
ターゲットサイズ:φ6inch
到達真空度:3.0×10-6Torr(4.0×10-4Pa)以下
Arガス圧:3mTorr(0.4Pa)
スパッタ電力:400W
【0034】
形成されたAl基合金反射膜の組成は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)質量分析法により求めた。
【0035】
形成されたAl基合金反射膜について、下記の各方法によって、結晶子サイズ、ノイズ(記録媒体のノイズ)および反射率の夫々を測定すると共に、その一部のものについて断面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行なった。
【0036】
(結晶子サイズ測定)
ガラス基板に膜厚:150nmのAl合金反射膜を成膜し、X線回折測定(θ/2θ走査)を行い、主ピークであるAl(111)ピークの半価幅から結晶子サイズ(厚み方向での結晶粒径)を算出した。このときの分析条件は下記の通りである。
【0037】
[分析条件]
分析装置:リガク社製 X線回折装置「RINT−1500」
ターゲット:Cu
単色化:モノクロメータを使用(CuKα)
ターゲット出力:40kV−200mA
スリット:発散 1°,散乱 1°,受光 0.15°
モノクロメータ受光スリット:0.6mm
走査速度:2°/min
サンプリング幅:0.02°
【0038】
(ノイズの測定)
ポリカーボネート製BD−R基板(厚み1.1mm、トラックピッチ0.32μm、グルーブ幅:0.16μm、溝深さ:25nm)にAl基合金反射膜(膜厚:100nm)を成膜し、カバー層として日本化薬株式会社製BRD−130を塗布し、紫外線照射により硬化させた。こうして作製したディスクのノイズ(単位dB)を光ディスク評価装置(パルステック工業株式会社製「ODU−1000」、レーザ波長:405nm、NA(開口数):0.85)およびスペクトラムアナライザー(株式会社アドバンテスト製R3131A)を用いて周波数:4.12MHzで測定した。このときディスク回転速度は線速4.9m/秒、再生レーザパワーは0.3mWとした。ノイズについては、−51dB以下の場合を「○」、−51dBを超える場合を「×」とした。
【0039】
(反射率の測定)
ガラス基板に膜厚:150nmのAl基合金反射膜を成膜し、日本分光(株)製V−570可視・紫外分光光度計を用いて波長:405nmおよび650nmにおける絶対反射率を求めた。
【0040】
(断面TEM観察)
ポリカーボネート製BD−R基板(厚み1.1mm、トラックピッチ0.32μm、グルーブ幅0.16μm、溝深さ25nm)にAl基合金反射膜(膜厚:100nm)を成膜し、断面TEM観察を行った。このとき、装置として、日立製作所製電界放射型透過電子顕微鏡「HF−2200」用い、加速電圧:200kVの条件で観察を行なった。
【0041】
測定結果を、Al基合金反射膜の化学成分組成と共に、下記表1、2に示す。尚、表1、2において、結晶子サイズが非常に小さいためにピークが現れず、結晶子サイズが算出できない場合には、「微結晶」と記載した。また結晶子サイズが30nm以下であるものを「○」、30nmより大きいものを「×」とした。反射率については、波長:405nmおよび650nmにおける反射率が65%以上の場合を「○」、65%未満の場合「×」とした。また、表1、2には、総合評価の欄を設け、前述した各特性がすべて合格のものに「○」を、各特性のいずれかが不合格のものに「×」を付している。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
この結果から明らかなように、本発明で規定する要件を満足するもの(表2の試料No.18〜46)では、結晶子サイズの微細化が達成されてノイズの低減が図れると共に、高い反射率が維持できていることが分かる。これに対して、本発明で規定する要件を外れるもの(表1の試料No.1〜17)では、ノイズおよび反射率の少なくともどちらかの特性が劣化していることが分かる。
【0045】
図1に、(a)純Al(表1の試料No.1)、(b)Al−8.2%Ti(表1の試料No.6)、(c)Al−5.9%Nd−1.4%Ta(表2の試料No.38)、(d)Al−8.7%Nd(表2の試料No.20)の断面TEM像(図面代用透過型電子顕微鏡写真)を示す(図中、「%」は「原子%」を意味する)。
【0046】
この結果から、次のように考察できる。ます純Al[図1(a)]では、大きな結晶粒が形成されているため、反射膜表面の構造が乱れていることが分かる。またAl−8.2%Ti[図1(b)]では、純Alにくらべて結晶子サイズは小さくなるものの、依然、深さ方向に長い形状をもったものとなっている。そのため反射膜表面は凹凸を持ち、基板形状を正確に再現しているとはいえない。一方、Al−5.9%Nd−1.4%TaとAl−8.7%Ndでは、面内方向および深さ方向に結晶子サイズが微細化されており、反射膜表面は基板形状を忠実に再現したものとなっている。
【0047】
図1に示した各種Al合金反射膜を用いて作製したBD−Rディスクについて、周波数を4.12〜16.5MHzの範囲(4.12MHz、8.0MHz、12.0MHz、16.5MHz)で変える以外は、上記と同様にしてノイズを測定した。その結果を、下記表3および図2に示すが、各組成の結晶子サイズに応じて、結晶子サイズが小さいものはノイズが低くなる傾向が見られることが分かる。
【0048】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】各種Al基合金反射膜の断面構造を示す図面代用透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】各種Al合金反射膜を用いて作製したBD−Rディスクにおける周波数とノイズの関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光情報記録媒体に用いられる反射膜であって、この反射膜は、希土類元素を2.0〜15.0%(「原子%」の意味、化学成分については以下同じ)含むAl基合金からなり、反射膜の厚み方向における結晶子サイズが30nm以下であることを特徴とする光情報記録媒体用反射膜。
【請求項2】
光情報記録媒体に用いられる反射膜であって、この反射膜は、希土類元素を1.0%以上含有すると共に、Ti,V,Cr,Nb,Mo,Hf,TaおよびWよりなる群から選ばれる1種以上を、前記希土類元素との合計で2.0〜15.0%含むAl基合金からなり、反射膜の厚み方向における結晶子サイズが30nm以下であることを特徴とする光情報記録媒体用反射膜。
【請求項3】
光情報記録媒体に用いられる反射膜を形成するためのスパッタリングターゲットであって、希土類元素を2.0〜15.0%含むAl基合金からなることを特徴とする光情報記録媒体反射膜形成用スパッタリングターゲット。
【請求項4】
光情報記録媒体に用いられる反射膜を形成するためのスパッタリングターゲットであって、希土類元素を1.0%以上含有すると共に、Ti,V,Cr,Nb,Mo,Hf,TaおよびWよりなる群から選ばれる1種以上を、前記希土類元素との合計で2.0〜15.0%含むAl基合金からなることを特徴とする光情報記録媒体反射膜形成用スパッタリングターゲット。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−61770(P2010−61770A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228902(P2008−228902)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】