説明

光接続部品及び光接続方法

【課題】光ファイバへの応力を緩和し挿入損失や断線、偏波消光比を改善するとともに、アレイ化が容易な光接続部品を提供する。
【解決手段】光接続部品は、筐体(10)、蓋(12)及び筐体に設けられた透過窓(600)により内部空間を外部と隔てる。透過窓は、内部空間側に光ファイバ(200)または平面光波回路(300)が接続され、外部側に第2の光ファイバ(202)または第2の平面光波回路が接続され、光ファイバまたは平面光波回路を伝搬する光が透過窓を介して第2の光ファイバまたは第2の平面光波回路に結合され、または第2の光ファイバまたは第2の平面光波回路を伝搬する光が透過窓を介して光ファイバまたは平面光波回路に結合されるように構成されている。透過窓の厚みは、光の結合損失が0.5dB以内となる厚さであり、透過窓の熱膨張収縮率は、筐体の熱膨張収縮率よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光接続部品及び光接続方法に関し、より詳細には、筐体と蓋と透過窓で囲まれる内部空間に設置された光素子を外部の光ファイバまたは平面光波回路に接続する部品及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデータ通信量の増大に伴い、光ファイバ通信に用いられる光素子には、多チャネル化への対応が求められている。それに伴い、光素子パッケージの小型集積化がより重要となっている。また、レーザダイオードやフォトダイオード、光変調器等の半導体材料を用いた光素子は、水分による特性劣化が懸念される。そのため光素子をパッケージ化する場合、光素子を水分から隔離するために、その光素子は、筐体と蓋で封止された内部空間に搭載される。内部空間に設置された光素子からの入出力光を外部の光ファイバに接続する場合、従来は以下のような光接続部品が利用されていた。
【0003】
(従来技術1)
筐体の開口部に、光ファイバ保持部の内径部に予め封止されたメタライズファイバを貫通させ、筐体と光ファイバ保持部を封止することにより、内部の光素子からの入出力光を外部の光ファイバに接続する光接続部品が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図1に、従来の光接続部品の構成を示す。この光接続部品は、筐体10及び蓋12で囲まれた内部空間を有するパッケージにおいて、内部と外部の光接続にメタライズファイバ20が用いられている。メタライズファイバ20は光ファイバ保持部22の内径部に保持されている。筐体10及び蓋12は鉄ニッケル系の合金が用いられる。メタライズファイバ20は、石英ガラスのシングルモードファイバの素線部の周囲に、ニッケル及び金をメッキ形成することにより作製される。ここで素線の直径は125μm、メッキの厚さは約5μmである。
【0005】
パッケージ内部空間の封止は、メタライズファイバ20と光ファイバ保持部22の内径部を予め封止し、光ファイバ保持部22を筐体10の開口部に貫通させ、筐体10と光ファイバ保持部22を封止することにより行われる。封止にはロウ材、例えば金-錫合金半田が用いられる。封止時のリフロー温度は280度以上である。
【0006】
(従来技術2)
また図2に示す様な、筐体10及び蓋12で囲まれた内部空間を有するパッケージにおいて、内部と外部の光接続に透過窓60及びレンズ40が用いる構成の光接続部品が知られている(例えば、特許文献2参照)。図2に示す光接続部品のレンズ40は内部空間に設置された光素子30と外部の光ファイバ20との間に少なくとも1枚設置される。図2に示す構成例は、光素子30と光ファイバ20それぞれの近傍に1枚ずつレンズ40−1,40−2を設置したコリメート光学系である。レンズ40はレンズ保持部42,43を用いて筐体10に固定されている。光素子30は素子マウント32を介して筐体10に固定される。光ファイバ20は光ファイバ保持部22であるフェルールに予め固定されている。さらにフェルールは金属スリーブ24に固定される。
【0007】
パッケージ内部空間の封止は、透過窓60と筐体10を予め封止し、蓋12を取り付けることにより行う。従来技術1と異なり、光ファイバや光ファイバ保持部を筐体内外に貫通されるということはない。また筐体10とレンズ保持部42,43の固定、レンズ保持部42,43と金属スリーブ24の固定、及び金属スリーブ24と光ファイバ保持部22の固定にはYAG光による溶接が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−055475号公報(第0019段落、第1図)
【特許文献2】特開2005−338434号公報(第0018段落、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の光接続部品及び光接続方法には次のような問題があった。まず、図1に示されるメタライズファイバを光ファイバとして用いた光接続部品においては、細径の光ファイバ素線に対してメタライズを行うため、光ファイバに応力やクラックが発生しやすい。そのため、光ファイバの挿入損失増加や断線を起こし易いという問題があった。また光ファイバとして偏波保持ファイバを使用する場合、メッキの厚みムラに起因する光ファイバへの応力に不均一性により、偏波消光比が劣化するという問題があった。さらにメタライズファイバを光ファイバ保持部にロウ付けする際においても、ロウ材により発生する応力による損失増加、断線、偏波消光比の劣化が懸念される。さらには、ロウ付けする際に発生する熱により、光素子が劣化する場合があった。それを回避するため、封止部と光素子を充分な距離を開けて設置しなければならず、パッケージが大型化するという問題があった。
【0010】
また、図2に示されるレンズ結合を用いた光接続部品においては、パッケージの熱膨張や収縮により、光素子とレンズ間や、光ファイバとレンズ間に位置ずれが発生し、結合損失が増加するという問題があった。また、光素子をアレイ化して多チャネルの光接続を行う際には、レンズの球面収差が発生するため、チャネルにより結合損失がばらつくという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、光ファイバへの応力を緩和し挿入損失や断線、偏波消光比を改善するとともに、アレイ化が容易な光接続部品及び光接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による光接続部品においては、筐体内部空間の光ファイバまたは平面光波回路等の光素子の光信号入出力端が筐体に設けられた透過窓に直接接続される。
【0013】
本発明の第1の側面である光接続部品は、筐体と蓋と前記筐体に設けられた透過窓とにより外部と隔てられた内部空間を有し、前記透過窓は、当該透過窓の前記内部空間側に光ファイバまたは平面光波回路が接続され、前記透過窓の前記外部側に第2の光ファイバまたは第2の平面光波回路が接続され、前記光ファイバまたは平面光波回路を伝搬する光が前記透過窓を介して前記第2の光ファイバまたは第2の平面光波回路に結合され、または前記第2の光ファイバまたは第2の平面光波回路を伝搬する光が前記透過窓を介して前記光ファイバまたは平面光波回路に結合されるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
一実施形態では、前記光ファイバ及び前記第2の光ファイバは、各々光ファイバ保持部に搭載され、前記透過窓に接続された状態が維持される。また、前記光ファイバは、前記内部空間において座屈部を有するように、前記透過窓に接続される。
【0015】
また一実施形態では、透過窓は、レンズ機能を有する。透過窓の一部を、レンズで構成することができる。
【0016】
また一実施形態では、前記内部空間は、気密封止されている。
【0017】
本発明の第2の側面である光接続部品の光接続方法は、筐体と蓋と前記筐体に設けられた透過窓とにより外部と隔てられる内部空間を有する光接続部品において、(1)前記外部の光ファイバまたは平面光波回路を前記透過窓の前記外部側に接続した後に、前記内部空間の光ファイバまたは平面光波回路を前記透過窓の前記内部空間側に接続する、または(2)前記内部空間の光ファイバまたは平面光波回路を前記透過窓の前記内部空間側に接続した後に、前記外部の光ファイバまたは平面光波回路を前記透過窓の前記外部側に接続する、ことを特徴とする。
【0018】
一実施形態では、中空を有する光ファイバ保持部を前記透過窓の前記内部空間側に接着し、前記内部空間の光ファイバを前記中空に通すことで前記透過窓の前記内部空間側に接続した後に、前記外部の光ファイバまたは平面光波回路を前記透過窓の前記外部側に接続する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば筐体の熱膨張及び熱収縮時に生じる光素子の位置ずれによっても光損失の増加や偏波消光比の劣化が抑制される。また、小型な筐体を用いて多アレイ化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の光接続部品の構成図である。
【図2】従来の光接続部品の他の構成図である。
【図3】第1の実施形態における光接続部品を示す図である。
【図4】第1の実施形態における光接続部品を用いたパッケージの全体図であり、(a)は断面図、(b)は上面図である。
【図5】第1の実施形態におけるパッケージの光接続部についての接続方法を説明するための図であり、(a)及び(b)は各工程を説明するための図である。
【図6】第1の実施形態におけるパッケージの光接続部についての接続方法を説明するための図であり、(a)及び(b)は各工程を説明するための図である。
【図7】透過窓の厚みと結合損失に関する関係を説明するための図である。
【図8】第2の実施形態における光接続部品及びパッケージの全体図であり、(a)は断面図、(b)は上面図である。
【図9】第2の実施形態におけるパッケージの、透過窓に平面光波回路を接続した光接続部についての接続方法を説明するための図であり、(a)及び(b)は各工程を説明するための図である。
【図10】第2の実施形態におけるパッケージの、透過窓における光接続部についての接続方法を接続するための図であり、(a)、(b)及び(c)は各工程を説明するための図である。
【図11】第3の実施形態における光接続部品を示す図である。
【図12】第4の実施形態における光接続部品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る光接続部品は、筐体と蓋と前記筐体に設けられた透過窓とにより外部と隔てられた内部空間を有する。透過窓は、光ファイバや平面光波回路等の光素子の光入出力端が筐体に設けられた透過窓に対向して接続され、光ファイバまたは平面光波回路を伝搬する光信号が透過窓を介して、別の光ファイバまたは平面光波回路に結合されるように構成される。以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。同一または類似する要素には同一または類似する参照符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0022】
(第1の実施形態)
図3に、本発明の第1の実施形態に係る光接続部品を示す。この光接続部品は、筐体10及び蓋12で囲まれた内部空間に光素子(図示しない)をパッケージ化する。筐体10には透過窓600が設けられている。筐体10、透過窓600及び蓋12により光接続部品の内部と外部とが隔てられ内部空間が形成されている。図3において、光接続部品の内部の光ファイバ200の光入出力端が透過窓600に対向して、接着剤(光透過性の樹脂)500を用いた接着により、接続されている。同様に光接続部品の外部の光ファイバ202の光入出力端が透過窓600に対向して接続されている。これにより光ファイバ200及び光ファイバ202は透過窓600に対向し、これらを伝搬する光は透過窓600を介して接続(結合)される。
【0023】
より詳細には、光ファイバ200及び202はそれぞれ光ファイバ保持部220及び222に保持された状態で透過窓600に接続されている。光ファイバ保持部220及び222は多芯の中空を有するフェルールであり、その中空部に光ファイバ素線が樹脂により接着固定されている。接着は、樹脂を紫外線照射により仮固定した後、60度前後のアニールを行い本固定している。
【0024】
筐体10及び蓋12は鉄ニッケル系の合金が用いられる。光ファイバ200及び202は、石英ガラスのシングルモードファイバが用いられている。
【0025】
図4(a)及び(b)に、光接続部品を用いたパッケージの全体図を示す。図4(a)は、側面方向から見たパッケージの断面図を、(b)は蓋12が無い状態のパッケージの上面図である。本パッケージには、筐体、透過窓及び蓋で囲まれた内部空間に、光素子として平面光波回路(PLC)300がPLCマウント320を介して筐体10に固定されている。平面光波回路300は、シリコン基板上に石英を堆積して作製する。屈折率を変えて堆積を行うことにより、コアとクラッドを有する光導波路を基板上に作製する。平面光波回路300の厚さは1mm程度である。
【0026】
図4において、回路図の描画は省略する。平面光波回路300の光導波路の2つの光入出力端には光ファイバ保持部224−1及び224−2にそれぞれ保持された光ファイバ200−1及び200−2の光入出力端が接続されている。ここで補強のために、平面光波回路300上に接続部補強板322−1及び322−2が設置されている。本実施形態では、光ファイバ200−1及び200−2として4本のアレイ光ファイバを用いる。図示しないが、平面光波回路上の光導波路もアレイ状に設置されている。
【0027】
平面光波回路300に接続された光ファイバ200−1の他の光入出力端は光ファイバ保持部220−1に保持され、透過窓600−1の筐体内部側に接続されている。同様に、光ファイバ200−2の他の端部は光ファイバ保持部220−2に保持され、透過窓600−2の筐体内部側に接続されている。
【0028】
さらに透過窓600−1の筐体外部側には光ファイバ保持部222−1に保持された光ファイバ202−1が接続されている。同様に、透過窓600−2の筐体外部側には光ファイバ保持部222−2に保持された光ファイバ202−2が接続されている。光ファイバ200−1及び200−2にはパッケージの高さ方向に対して緩やかな座屈部を設けてあり、その半径は15mmである。
【0029】
パッケージ内部空間の封止は、透過窓600と筐体10を予め封止し、蓋12を取り付けることにより行う。
【0030】
次に図5と図6を用いて光接続方法について説明する。図5は、図4に示したパッケージの光接続部についての1つの接続方法を示している。接続の手順は、(1)図5(a)に示すように、先ず筐体外の光ファイバ202を透過窓600に接着により接続する。その際の接着位置は例えば±1mm以内など、緩い精度で接着してよい。(2)次に、図5(b)に示すように、筐体内の光ファイバ200を透過窓600に接着する。その際、2つ光ファイバ200及び202のコアの位置が合うよう、光ファイバに光入力を行い調整する。ファイバ200の接着位置は光ファイバ202の接着位置に対して±1μm以内など、厳しい精度で接着する必要がある。
【0031】
また図6は図4に示したパッケージの光接続部についての他の接続方法を示している。接続の手順は、(1)図6(a)に示すように、先ず筐体内の光ファイバ200を透過窓600に接着により接続する。その際の接着位置は例えば±1mm以内など、緩い精度で接着してよい。(2)次に、図6(b)に示すように、筐体外の光ファイバ202を透過窓600に接着により接続する。その際、2つの光ファイバ200及び202のコアの位置が合うよう、光ファイバに光入力を行い調整する。光ファイバ202の接着位置は光ファイバ200の接着位置に対して±1μm以内など、厳しい精度で接着する必要がある。
【0032】
ここで、図7を参照して透過窓600の厚みについて説明する。図7は透過窓600の厚みと結合損失に関する関係を示す図である。透過窓600には通常サファイアや石英ガラスが使用され、それらの場合について厚みと結合損失の関係を計算により求めた。なお比較のため、空気層の計算値も図7には加えている。この結果から、サファイア窓や石英ガラスを用いて透過窓600を構成する場合、透過窓600の厚みを50μm以下とすることにより、結合損失を0.5dB以内に抑えることが出来る。
【0033】
このように本実施形態の光接続部品を用いて内部空間の光素子をパッケージ化すると、熱により筐体10が膨張または収縮しても光ファイバの接続位置のずれによる損失増加が発生しにくい。すなわち、図3に示すように、筐体10の内部と外部の光接続は、透過窓600の内部空間側及び外部側の双方に直接接続された光ファイバ200及び202により行うため、筐体10の熱膨張収縮に比べ透過窓の熱膨張収縮は小さく、光接続の位置ずれ量が少なくなるという効果を有する。また図4において平面光波回路300と光ファイバ200−1及び200−2との接続は、空間を設けず平面光波回路300の光導波路と光ファイバ200−1及び200−2のコアを接着材等により直接接続しているため、こちらも筐体の熱膨張収縮とは関係なく、位置ずれは無視できる。また、光ファイバにメタライズ処理を行うことが無いため、光ファイバへの応力やクラックを低減できる。そのため、光ファイバの挿入損失増加や断線、及び偏波消光比の劣化が起こりにくいという効果を有する。さらに透過窓600への光ファイバ200及び202の接着は樹脂を用い60度程度の低温環境下で可能である。そのためパッケージ内部の光素子300へのダメージが少なくなると共に、パッケージの寸法を小型化することが可能となる。またレンズを用いないため、例えば40チャネル程度の多チャネル接続も損失ばらつきが少なく実装可能である。
【0034】
ここでは透過窓600を等方的な媒質としたが、透過窓600−1及び600−2の少なくとも1つをフレネルレンズなど、レンズ形状に加工することにより、結合損失を改善することも可能である。また、筐体内部の光ファイバ200には座屈が設けられているため、熱による筐体10の膨張及び収縮によるファイバ200への応力を回避できる。さらには平面光波回路300の光導波路に直接ファイバ200のコアが接続されているため、光素子300の搭載向きを変えても光ファイバ200を取り回せば良いため、パッケージ内のレイアウトの自由度が向上する。また光ファイバ保持部220及び222は多芯の中空を有するフェルールとしたが、他にも、V溝加工を行ったガラス板に素線ファイバを搭載した部材を用いても良い。フェルールを用いる場合もV溝加工部品を用いる場合においても、光ファイバ200及び202のみを透過窓に接続する場合にくらべ、振動や衝撃に対する接続部の耐性が向上する。また光ファイバ保持部220及び222への光ファイバの搭載方法において樹脂製の接着材を用いることにより、光ファイバへの応力が少ない固定が可能となり、光ファイバの特性劣化を防止することが可能である。
【0035】
光接続方法として図5と図6を参照して説明した2つの異なる方法を用いたが、いずれか一つの方法で、パッケージにおける2つの透過窓600に対する光ファイバ200及び202の接続を行っても良く、それぞれ異なる方法で接続を行っても良い。両者の違いは透過窓600に取り付ける光ファイバ200及び202の順番である。両者を比較すると、図6の方法がより効果的といえる。その理由は、筐体内側の透過窓への接続精度が緩くて良いためである。接続精度が厳しい図5の接続方法の場合、取り付けに要する装置や冶具に高い剛性や精度が要求される。そのため、筐体内部にそのような装置や冶具を挿入する必要があることから筐体の寸法が大きくなる可能性が高い。一方図6の場合は装置や冶具が簡便でよく、筐体を小型化出来る。
【0036】
(第2の実施形態)
図8(a)及び(b)に、本発明の第2の実施形態に係る光接続部品及びパッケージの全体図を示す。図8(a)は、側面方向から見たパッケージの断面図を、(b)は蓋が無い状態のパッケージの上面図である。この光接続部品は、筐体10及び蓋12で囲まれた内部空間に、光素子として平面光波回路(PLC)300をパッケージ化する。筐体10には透過窓600が設けられている。筐体10、透過窓600及び蓋12により光接続部品の内部と外部とが隔てられ内部空間が形成されている。上記実施形態と同様に、筐体10の内部と外部の光接続に透過窓600−1及び600−2を用いる。一方の透過窓600−1には光ファイバ200−1及び202−1が対向して接続され、他方の透過窓600−2には光ファイバ202−2及び平面光波回路300が接続されている。光ファイバ200及び202及び平面光波回路300は透過窓に対して、光透過性の樹脂を用いた接着により接続されている。光ファイバ200及び202は光ファイバ保持部220及び222に保持されている。光ファイバ保持部222は多芯の中空を有するフェルールであり、その中空部に光ファイバ素線が樹脂により接着固定されている。接着は、樹脂を紫外線照射により仮固定した後、60度前後のアニールを行い本固定する。筐体10及び蓋12は鉄ニッケル系の合金が用いられる。光ファイバ200及び202は、石英ガラスのシングルモードファイバが用いられている。
【0037】
本パッケージには、筐体10及び蓋12で囲まれた内部空間に、光素子として平面光波回路300を搭載するが、PLCマウントを介して筐体10にするのではなく、その主な固定部は透過窓600−2との接着部である。平面光波回路300は、シリコン基板上に石英を堆積して作製する。屈折率を変えて堆積を行うことにより、コアとクラッドを有する光導波路を基板上に作製する。平面光波回路300の厚さは1mm程度である。図8には、回路図の描画は省略する。平面光波回路300の光導波路の一端は透過窓600−2の内部空間側に接続され、他端は光ファイバ保持部224−1に保持された光ファイバ20−1の一端に接続される。図8では4本のアレイ光ファイバを用いる。図示しないが、平面光波回路300上の光導波路もアレイ状に設置されている。平面光波回路300の光導波路の補強のために、平面光波回路300上に接続部補強板322−1及び322−2が設置されている。平面光波回路300に接続された光ファイバ200−1の他端は、それぞれ透過窓600−1の筐体内部空間側に接続される。さらに透過窓600−1の筐体外部側にはそれぞれ光ファイバ保持部222−1に保持された光ファイバ202−1が接続される。なお平面光波回路300と透過窓600−1間の光ファイバ200−1にはパッケージ幅方向に緩やかな座屈部を設けてあり、その半径は15mmである。
【0038】
パッケージ内部空間の封止は、透過窓600と筐体10を予め封止し、蓋12を取り付けることにより行う。
【0039】
次に図9と図10を用いて光接続方法について説明する。図9は、図8に示したパッケージにおける、透過窓600−2に平面光波回路300を接続した光接続部についての接続方法を示している。接続の手順は、(1)図9(a)に示すように、先ず筐体内の平面光波回路300を透過窓600−2に接着により接続する。その際の接着位置は例えば±1mm以内など、緩い精度で接着してよい。(2)次に、図9(b)に示すように、筐体外の光ファイバ202−2を透過窓600−2に接着する。その際、筐体外部側の光ファイバ202−2のコアの位置が、平面光波回路300の光導波路の位置に合うよう、光ファイバに光入力を行い調整する。光ファイバ202−2の接着位置は筐体内の平面光波回路300の光導波路の位置に対して±1μm以内など、厳しい精度で接着する必要がある。
【0040】
また図10は、図8に示したパッケージの透過窓600−1における光接続部についての接続方法を示している。接続の手順は、(1)図10(a)に示すように、先ず透過窓600−2に中空を有する光ファイバ保持部220−1を接着する。その際の接着位置は例えば±1mm以内など、緩い精度で接着してよい。(2)次に、図10(b)に示すように、筐体内の光ファイバ保持部220−1の中空部に、光ファイバ200−1を通す。(3)さらに、図10(c)に示すように、筐体外の光ファイバ202−1を透過窓600−1に接着する。その際、光ファイバ200−1及び202−1のコアの位置が合うよう、光ファイバに光入力を行い調整する。光ファイバ202−1の接着位置は筐体内の光ファイバ光ファイバ200−1の接着位置に対して±1μm以内など、厳しい精度で接着する必要がある。
【0041】
このように本実施形態の光接続部品を用いて内部空間の光素子をパッケージ化すると、上記第1の実施形態と同様、熱により筐体に膨張収縮が生じても光接続部の位置ずれによる損失増加が発生しにくい。すなわち、筐体内部と外部の光接続は透過窓600の内部空間側及び外部側の双方に直接接続された光ファイバ200及び202並びに平面光波回路300により行うため、筐体10の熱膨張収縮に比べ透過窓の熱膨脹収縮は小さく、光接続の位置ずれ量が少なくなるという効果を有する。また図8において平面光波回路300と光ファイバ200−1との接続は、空間を設けず平面光波回路300の光導波路と光ファイバ200−1のコアを接着材等により直接接続しているため、こちらも筐体の熱膨張収縮とは関係なく、位置ずれは無視できる。また、光ファイバにメタライズ処理を行うことが無いため、光ファイバへの応力やクラックを低減できる。そのため、光ファイバの挿入損失増加や断線、及び偏波消光比の劣化が起こりにくいという効果を有する。さらに透過窓600への光ファイバ200及び202の接着は樹脂を用い60度程度の低温環境下で可能である。そのためパッケージ内部の光素子300へのダメージが少なくなると共に、パッケージの寸法を小型化することが可能となる。またレンズを用いないため、例えば40チャネル程度の多チャネル接続も損失ばらつきが少なく実装可能である。
【0042】
さらに本実施形態においては、平面光波回路300を透過窓600−2に直接接着しているため、上記第1の実施形態に比べ光ファイバ及び光ファイバ保持部の部品点数を削減することができる。また平面光波回路を筐体10に固定するためのマウントを使用しないため、マウントへの搭載工程を削除することができ、より簡便な実装が可能となる。またここでは筐体外部の光接続方法に光ファイバ202を用いたが、平面光波回路を透過窓600の筐体外部側に直接接続しても良い。すなわち、透過窓に対向して平面光波回路を接続してもよい。それにより、光導波路のアレイ間ピッチを10μmにするなど、光ファイバによるアレイ化では不可能な狭ピッチでの光接続が可能であるため、パッケージのさらなる小型化が可能となる。
【0043】
(第3の実施形態)
図11に、本発明の第3の実施形態に係る光接続部品を示す。この光接続部品は、筐体10及び蓋12で囲まれた内部空間に光素子300をパッケージ化する。筐体10には透過窓600が設けられている。筐体10、透過窓600及び蓋12により光接続部品の内部と外部とが隔てられ内部空間が形成されている。図11において、光接続部品の内部の光ファイバ204の光入出力端が透過窓600に対向して、接着剤(光透過性の樹脂)500を用いた接着により、接続されている。透過窓600の筐体外部側にはレンズ400が接続され、光接続部品の外部の光ファイバ202の光入出力端が透過窓600に接着剤(光透過性の樹脂)500を用いた接着により接続されている。これにより光ファイバ200及び光ファイバ202は透過窓600及びレンズ400に対向し、光ファイバ200及び光ファイバ202を伝搬する光は透過窓600及びレンズ400を介して接続(結合)される。光ファイバ204及び202はそれぞれ光ファイバ保持部220及び222に保持されている。光ファイバ保持部は多芯の中空を有するフェルールであり、その中空部に光ファイバ素線が樹脂により接着固定されている。接着は、樹脂を紫外線照射により仮固定した後、60度前後のアニールを行い本固定している。筐体10及び蓋12は鉄ニッケル系の合金が用いられる。光ファイバ200及び202は、石英ガラスのシングルモードファイバが用いられている。
【0044】
さらに筐体10及び蓋12で囲まれた内部空間に、光素子としてレーザダイオード300が素子マウント320を介して搭載されている。筐体内側の透過窓600に接着された光ファイバ204の他端は先球加工されており、レーザダイオード300との光結合を行う。
【0045】
パッケージ内部空間の封止は、透過窓600と筐体10を予め封止し、蓋12を取り付けることにより行う。
【0046】
このように本実施形態の光接続部品を用いて内部空間の光素子(レーザダイオード)300をパッケージ化すると、上記第1及び第2の実施形態と同様、光ファイバにメタライズ処理を行うことが無いため、光ファイバへの応力やクラックを低減できる。そのため、光ファイバの挿入損失増加や断線、及び偏波消光比の劣化が起こりにくいという効果を有する。また透過窓600の筐体外側に取り付けられたレンズ400により、レンズを使用しない場合に比べ結合損失が低減出来る。また上記第1及び第2の実施形態と同様、熱により筐体10に膨張収縮が生じても光接続部の位置ずれによる損失増加が発生しにくいため、レーザダイオード300との良好な光結合を保持することが出来る。特にレンズ400は透過窓600と光ファイバ202の双方に対して直接接続されているため、従来に比べてより位置ずれが生じにくい。
【0047】
ここでは光素子としてレーザダイオードを用いたが、フォトダイオードや光変調器などの、他の半導体光素子を適用することも同様に可能である。また本実施形態では筐体外側にレンズを取り付けたが、透過窓600内部空間側に直接取り付けても良いし、透過窓600内部空間側及び外部側の双方に直接取り付けても良い。
【0048】
(第4の実施形態)
図12に、本発明の第4の実施形態に係る光接続部品を示す。この光接続部品は、筐体10及び蓋12で囲まれた内部空間に光素子(図示しない)パッケージ化する。筐体10には透過窓600が設けられている。筐体10、透過窓600及び蓋12により光接続部品の内部と外部とが隔てられ内部空間が形成されている。図12において、光接続部品の内部の光ファイバ200の光入出力端が透過窓600に対向して、接着剤(光透過性の樹脂)500を用いた接着により、接続されている。透過窓600の筐体外部側には、筐体10に固定されたレンズ保持部43により保持されたレンズ400が配置され、光接続部品の外部の光ファイバ202の光入出力端が透過窓600にレンズ402を介して接続されている。これにより光ファイバ200及び光ファイバ202は透過窓600及びレンズ402に対向し、光ファイバ200及び光ファイバ202を伝搬する光は透過窓600及びレンズ402を介して接続(結合)される。光素子は素子マウント(図示しない)を介して筐体10に固定される。光ファイバ202は光ファイバ保持部であるフェルール22に予め固定されている。さらにフェルール22は金属スリーブ24に固定される。筐体10とレンズ保持部43の固定、レンズ保持部43と金属スリーブ24の固定、及び金属スリーブ24と光ファイバ保持部22の固定及びにはYAG光による溶接が用いられる。
【0049】
筐体内側の光ファイバ200の光入出力端は透過窓600に対して、接着剤(光透過性の樹脂)500を用いた接着により、接続されている。また光ファイバ200は光ファイバ保持部220に保持されている。接着は、樹脂を紫外線照射により仮固定した後、60度前後のアニールを行い本固定している。筐体10及び蓋12は鉄ニッケル系の合金が用いられる。光ファイバ200及び202は、石英ガラスのシングルモードファイバが用いられている。
【0050】
パッケージ内部空間の封止は、透過窓600と筐体10を予め封止し、蓋12を取り付けることにより行う。
【0051】
このように本実施形態の光接続部品を用いて内部空間の光素子をパッケージ化すると、上記第1乃至第3の実施形態同様、光ファイバや光ファイバ保持部2を筐体内外に貫通するということはない。光ファイバにメタライズ処理を行うことが無いため、光ファイバへの応力やクラックを低減できる。そのため、光ファイバの挿入損失増加や断線、及び偏波消光比の劣化が起こりにくいという効果を有する。また透過窓600の筐体外側に取り付けられたレンズ402により、レンズを使用しない場合に比べ結合損失が低減出来る。また上記第1乃至第3の実施形態と同様、熱により筐体10に膨張収縮が生じても光接続部の位置ずれによる損失増加が発生しにくいため、内部空間の光素子との良好な光結合を保持することが出来る。
【0052】
以上、本発明について、具体的にいくつかの実施形態について説明したが、本発明の原理を適用できる多くの実施可能な形態に鑑みて、ここに記載した実施形態は、単に例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0053】
例えば、斜めに研磨した端面の光ファイバを透過窓に接続してもよい。それにより、接続部における反射戻り光を低減することが可能となる。また、透過窓に接続する光ファイバ及び平面光波回路のコア径を拡大あるいは縮小してスポットサイズを変えることにより、光接続における接続損失をさらに改善することも可能である。また本発明において筐体及び蓋で囲まれた内部空間は気密性を有する。その値はHeガスのリーク量として1×106Pa・m3/s以下が望ましい。
【符号の説明】
【0054】
10 筐体
12 蓋
20 メタライズファイバ
22 光ファイバ保持部
24 金属スリーブ
200,202 光ファイバ
220,222,224 光ファイバ保持部
30 光素子
32 素子マウント
300 平面光回路(PLC)
320 PLCマウント
322 接続部補強板
40 レンズ
42,43 レンズ保持部
400,402 レンズ
50 封止剤
500 接着剤
60 透過窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と蓋と前記筐体に設けられた透過窓とにより外部と隔てられた内部空間を有する光接続部品であって、
前記透過窓は、当該透過窓の前記内部空間側に光ファイバまたは平面光波回路が接続され、前記透過窓の前記外部側に第2の光ファイバまたは第2の平面光波回路が接続され、前記光ファイバまたは平面光波回路を伝搬する光が前記透過窓を介して前記第2の光ファイバまたは第2の平面光波回路に結合され、または前記第2の光ファイバまたは第2の平面光波回路を伝搬する光が前記透過窓を介して前記光ファイバまたは平面光波回路に結合されるように構成されていることを特徴とする光接続部品。
【請求項2】
前記透過窓の厚みは、前記光の結合損失が0.5dB以内となる厚さであることを特徴とする請求項1に記載の光接続部品。
【請求項3】
前記透過窓の熱膨張収縮率は、前記筐体の熱膨張収縮率よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の光接続部品。
【請求項4】
前記光ファイバまたは前記第2の光ファイバを搭載し、前記光ファイバまたは前記第2の光ファイバが前記透過窓に接続された状態を維持するように、前記透過窓に接続されるように構成された光ファイバ保持部を含むことを特徴とする請求項1、2または3に記載の光接続部品。
【請求項5】
前記光ファイバは、前記内部空間において座屈部を有するように、前記透過窓に接続されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光接続部品。
【請求項6】
前記透過窓は、レンズ機能を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光接続部品。
【請求項7】
前記透過窓の一部が、レンズで構成されていることを特徴とする請求項6に記載の光接続部品。
【請求項8】
前記内部空間は、気密封止されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の光接続部品。
【請求項9】
筐体と蓋と前記筐体に設けられた透過窓とにより外部と隔てられる内部空間を有する光接続部品の光接続方法であって、前記外部の光ファイバまたは平面光波回路を前記透過窓の前記外部側に接続した後に、前記内部空間の光ファイバまたは平面光波回路を前記透過窓の前記内部空間側に接続することを特徴とする光接続部品の光接続方法。
【請求項10】
筐体と蓋と前記筐体に設けられた透過窓とにより外部と隔てられる内部空間を有する光接続部品の光接続方法であって、前記内部空間の光ファイバまたは平面光波回路を前記透過窓の前記内部空間側に接続した後に、前記外部の光ファイバまたは平面光波回路を前記透過窓の前記外部側に接続することを特徴とする光接続部品の光接続方法。
【請求項11】
筐体と蓋と前記筐体に設けられた透過窓とにより外部と隔てられる内部空間を有する光接続部品の光接続方法であって、中空を有する光ファイバ保持部を前記透過窓の前記内部空間側に接着し、前記内部空間の光ファイバを前記中空に通すことで前記透過窓の前記内部空間側に接続した後に、前記外部の光ファイバまたは平面光波回路を前記透過窓の前記外部側に接続することを特徴とする光接続部品の光接続方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−69966(P2011−69966A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220601(P2009−220601)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】