説明

光方向変換物品

【課題】光方向変換物品およびその形成方法を提供する。
【解決手段】光方向変換物品を形成する方法が提供され、基体の表面が埋め込み物質の層を適用することによりコンディショニングされる。マイクロ球体の最密充填層が、乾燥支援自己組織化を用いて組織化され、コンディショニングされた表面に適用される。マイクロ球体は、次いで、埋め込み物質の層の表面に中間的に埋め込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、光方向変換物品(light−redirection article)に関し、より具体的には、半球状マイクロレンズのアレイ(array)として形成される光方向変換膜に関する。
【背景技術】
【0002】
透過型液晶ディスプレイ(LCD)パネルは、他の種類のディスプレイに代わるコンパクトで軽量の代替物を提供するが、調光のための光を提供するある種のバックライト照明を必要とする。図1におけるディスプレイ装置10のブロック略図を参照すると、LCDパネル12および類似のディスプレイ装置のためのバックライト照明は典型的には、観察者に対してLCDパネル12の背後に配置されており、LCDパネル12を通るように1以上の光源14からの光を方向変換する、1以上の光方向変換物品20によって提供される。
【0003】
LCD技術の本来的な制限が、できるだけ多くの光をLCDパネルを通るように向ける効率的なバックライト装置を得ることを望ましくする。従来の実施においては、効率的に光を得て方向変換するために、1以上の拡散膜およびプリズム膜が光方向変換物品20として光源とLCDパネルとの間に配置される。より低いコストで、より薄く、軽量のディスプレイを目指すことは、性能における漸進的な改善でさえも特定の価値があると認められるように、これら光方向変換膜においてさらなる要求を認識する。
【0004】
光方向変換膜の効率を増大させる1つの戦略は、その形が入射光の向上した取り扱いをもたらす表面構造を形成するその形状を最適化することである。様々な種類の光方向変換膜は、一方または両方の表面上に形成された光成形マイクロ構造のアレイを使用する。好適なサイズおよび形状の最密充填されたマイクロレンズを有する小型レンズ(lenslet)アレイは、特に興味深い解決策である。小型レンズアレイは、単一の薄いシートに形成されることができ、比較的安価に製造されることができ、面内の任意の配向に容易に適合可能であり、かつ照明に高度の均一性をもたらすことができる。
【0005】
図2Aの斜視図は、小型レンズ32のアレイを使用する光方向変換膜30の一部分を示し、かつ性能および製造に関連するいくつかの寸法アスペクトを示す。図2Bは従来の行および列方式で配置された小型レンズ32の平面図を示し;小型レンズ32は直交配向方向(orthogonal orientation directions)を有する。図2Cは、後に記載されるような充填率を向上させる別の充填配列である、2次元(2−D)六方最密充填を示す。下記のものをはじめとする、小型レンズアレイを使用する光方向変換膜から良好な性能を達成するための特に興味のある多くの設計指針がある:
(i)小型レンズ寸法および輪郭。アレイにおけるそれぞれの小型レンズ32のサイズおよび形状は、光方向変換膜30の性能を制御する因子である。LCD背面照明を拡散させるために、小型レンズ32の直径dは、概して、サブミクロン値から約20ミクロン以上までの範囲で選択される。半球形状は光を充分に平行にするので、完全な半球にできるだけ近い形状が光の取り扱いに特に有利である。
(ii)充填率(fill factor)。光方向変換膜30を通って得られ、向けられうる光の量はその充填率に対応する。周知の幾何学的原理に従って、面内に充填された等しい円形直径の物体についての理論的に最大の充填率は、図2Bに示されるような規則的な行および列(row−and−column)配列ではなく、図2C(隣接する小型レンズ32の中心に頂点を有するように表される六角形HXを伴う)に示されるような六方最密充填(HCP)配置を用いて得られる。理論的な最大充填率は:
【数1】

として計算されうる。
すなわち、完全な六方充填が達成される場合でさえ、隣接する小型レンズ間の領域にはある最小量の隙間が依然として存在する。
(iii)物質。光方向変換膜30は、許容可能な範囲内にある屈折率を有する何らかの好適な透明物質から製造されうる。しかし、より柔軟なディスプレイへの興味が増大しているので、ガラスまたは他の堅い物質よりもポリマーが概して有利である。界面での反射または屈折に起因する望まれない迷光を最小化するために、モノリシック製造が特別な利点を有する。
(iv)厚み。できるだけ薄い厚み「t」を有することが、特にポータブルおよび携帯型ディスプレイでの使用のためには、特に有利であろう。
【0006】
形成される小型レンズ構造のスケールおよびこのような小型レンズの最密充填アレイの製造に関連する困難性のために、理想的な光方向変換膜30の意図された設計とその実際の製造との間には顕著な違いがあり得る。例示の目的で、図3Aは、最密充填された半球状の小型レンズ24を有する光方向変換物品20aの小さなサンプルの断面図を示す。光線R1、R2およびR3は様々な角度での入射光についての典型的な経路を示す。うまく形成され、最密充填された半球状小型レンズ24を用いて、比較的良好な平行化が達成される。比較の目的で、図3Bは、うまく形成されていない光方向変換物品20bの小さなサンプルの断面図を示す。ここで、複数の小型レンズ24の断面はとうてい半円どころではないか、または球形というよりも楕円体に似た、高い離心率を示す輪郭を有しうるように、複数の小型レンズ24は半球状ではない。典型的な光線R1、R2およびR3が示すように、これらの欠陥が拡がっているところでは良好な平行化は達成されない。
【0007】
図3Bの実施形態の欠陥は、説明のために幾分誇張されうるが、図3Bに示される課題は、密に位置する小型レンズのアレイを使用する、今まで製造された光方向変換物品の代表例である。図3Aおよび3Bの例で代表されるような設計と実際の実行との間の格差は、従来の製造手法およびその結果の調査において明らかに認められうる。
【0008】
例えば、最密充填された小型レンズアレイの製造のための多くの手法は、成形型(mold shape)または鋳型を形成するための基体に適用される微小球状ビーズを使用してきた。この鋳型は次いでポリマー基体上に小型レンズアレイを形成する成形プロセスのネガとして使用されうる。「二次元配向ポリマー系マイクロ球体からの最密充填された半球状マイクロレンズアレイ(Close−Packed Hemispherical Microlens Array from Two−Dimensional Ordered Polymeric Microspheres)」のタイトルの論文(Langmuir 2006第22巻7358−7363ページ)において、研究者Namらは、マイクロ球体を最密充填分布で配列させるために、プラズマ処理されたガラス基体上へのポリスチレンマイクロ球体のコロイド溶液のスピンコーティングを使用する製造シークエンスを記載する。得られるビーズのアレイは、次いで、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を使用して型を形成するための鋳型として使用される。次いで、PDMS型は、ガラス基体に結合される紫外線硬化性フォトポリマーを成形するために使用される。著者のNamらは、六方最密充填(HCP)での均一なマイクロレンズアレイを得ることを主張する。
【0009】
Namらによって使用されるようなスピンコーティングは、ビーズを基体に適用するのに比較的コストのかかる方法であり、かつこの方法を使用する場合にHCP配列の結果を制御するのが困難な場合がある。マイクロ球体を基体表面上に堆積させる他の方法には、いくつかの困難も存在する。例えば、ディップコーティングは非常に時間のかかる場合があり、最密充填密度を達成する傾向にない。再帰性反射(retroreflective)物品の製造に使用される、ガラスビーズ堆積に使用される以前の方法は、表面上の密な分布を得るために、幾分粘着性の基体をガラスビーズのプール上を通過させることにより、ディップコーティングシークエンスを実行する。このような方法は、比較的非効率的であり、かつ六方最密充填が提供するような最密充填配列を得るという課題に充分に適していない。
【0010】
マイクロレンズアレイを形成するための以前の手法についてのさらなる課題はレンズ構造の形状または輪郭を維持することに関する。たとえ、最密充填様式でマイクロビーズを堆積させるのに好適でかつ安価な最密充填方法が見いだされたとしても、Namらが記載するような球状ビーズの鋳型を用いて形成されるマイクロレンズアレイ中の構造物の形状を制御するのは困難な場合がある。このようなプロセスで成形されて得られる構造物は、真に球状の表面輪郭を保持できず、その代わりに、高度の離心率を示し、その結果、その小型レンズ形状は楕円体または他の非球状体としてより正確に記載されるであろう。例えば、Namらの方法を用いて、様々な曲率の形状が形成されるであろう。さらに、形成された小型レンズ構造体が球状体と見なされるのに充分低いレベルの離心率を示す場合でさえ、平坦な表面上に露出したその輪郭は、概して、半球状ではなく、その結果断面は実質的に半円状ではない。真の半球形状からのこの逸脱の結果として、およびある小型レンズ構造から次の構造への形状の変動の結果として、異なる個々の小型レンズに向けられる光は充分に等しく取り扱われることができず、潜在的な性能の低減を導きうるか、または大スケールの光方向変換物品に使用される場合には、暗いスポットまたは他の望まれない局在効果すら導きうる。
【0011】
充填率は従来の方法を用いて適切に取り組まれていない課題を留めている。従来のディップコーティング技術は、典型的には期待はずれの約70パーセント未満の充填率を生じさせる最密充填六方配置をもたらす傾向がある。
【0012】
他の手法は、光方向変換膜の表面に沿って異なる直径の小型レンズ構造のパターンを配列させることによる六方最密充填の充填率抑制の向上を試みる。この手法には、例えば、六方最密充填小型レンズパターンを提供し、次いで、大きな六方最密充填レンズ構造体のそれぞれのクラスター間にある隙間に微小な小型レンズを配置することが挙げられる。このような方法は、それらが理論的には増分の充填率向上を提供するかもしれないが、実際には著しい製造上の困難が存在する。さらに、たとえ、同じ面上での異なるサイズの微小小型レンズの使用が実行可能であったとしても、このような手法により達成されたであろう増分の向上は、製造コストを正当化することにはなりそうにない。
【0013】
いくつかの研究結果が、基体表面の少なくとも一部分上に球体の最密充填配列を達成する成功の尺度を示してきた。しかし、小さな領域を超えて最密充填を維持することには困難がある。しかしながら、たとえ達成可能であったとしても、完全に秩序のある最密充填は望ましくない態様を有しうる。空間周波数に依存して、幾何学的パターン形成における完全な規則性および一貫した方向付けは、複数のパターン形成されたアレイ構成物の積層のために、望まれない周波数「ビート(beat)」効果を導きうる。このようなビート周波数の存在のために、デジタル画像形成技術分野の当業者に周知なように、モアレパターンが、表示画像における望まれない視覚効果を生じさせうる。よって、最密充填配列におけるいくつかの不完全さまたは不規則性、および最密充填セクションの充填方向付けにおけるいくつかの大スケールの無秩序化が、充填率の幾分かの少ないパーセンテージの損失のときでさえ、有利であろうと思われる。この不規則性は、非常に小さなパーセンテージだけの光効率の損失を伴って、画像モアレの可能性を効果的に最小化するであろう。
【0014】
従来の光方向変換膜は多くの場合、形成されたマイクロレンズ構造を有する層を基体シートに結合させることにより製造される。これは、例えば、上記Namらの文献に示された配列である。Namらの手法は適切な表面形状の達成における本来的な困難性のいくつかを克服し、いくつかの用途については許容可能な場合がある一方で、モノリシック製造に有利であり得る。光方向変換膜を単一の物質として形成することは、例えば、より小型で、より柔軟なディスプレイに特に有用でありうる。しかし、半球状小型レンズのモノリシック製造は従来の方法を用いて得るのが困難である場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「二次元配向ポリマー系マイクロ球体からの最密充填された半球状マイクロレンズアレイ(Close−Packed Hemispherical Microlens Array from Two−Dimensional Ordered Polymeric Microspheres)」、Langmuir 2006第22巻7358−7363ページ、Namら
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
LCDパネルを使用し、並びに向上した効率、より小型のパッケージング、少ない部品数、および低コストを必要とするディスプレイ装置の数が増大するにつれて、これらディスプレイ装置をサポートする向上された光方向変換膜の必要性が存在することが認められうる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、a)埋め込み物質の層を適用することにより、基体の表面をコンディショニングし;b)乾燥支援自己組織化を用いてマイクロ球体の最密充填層組織化し、当該マイクロ球体の最密充填層をコンディショニングされた表面に適用し;およびc)埋め込み物質の層の表面にマイクロ球体を中間的に埋め込むこと;を含む、光方向変換物品を形成する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、六方最密充填された半球状小型レンズの2次元ドメインを複数含む特徴表面を含む光方向変換物品であって、半球状小型レンズ直径の変動係数が約0.35未満であり、少なくとも2つの隣接するドメインが異なる最密充填配向方向を有し、隣接するドメイン間の界面を粒界が描き;特徴表面に対して垂直な角度で断面をとると、どのドメインにおいても小型レンズ断面の半分超の形状が実質的に半円状である、光方向変換物品を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、a)領域にわたって照明を提供するためのエネルギー付与可能な(energizable)光源;b)調整された照明を提供するための照明の経路内の光方向変換膜であって、六方最密充填された半球状小型レンズの2次元ドメインを複数含む特徴表面を含み、半球状小型レンズ直径の変動係数が約0.35未満であり、少なくとも2つの隣接するドメインが異なる最密充填配向方向を有し、隣接するドメイン間の界面を粒界が描き;特徴表面に対して垂直な角度で断面をとると、どのドメインにおいても小型レンズ断面の半分超の形状が実質的に半円状である光方向変換膜;およびc)光方向変換膜からの入射する調整された照明を調光し、画像を形成するために配置されるディスプレイパネル;を含むディスプレイ装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の光方向変換膜を使用するディスプレイ装置の構成物を示す側面図である。
【図2A】図2Aは、光方向変換膜の一部分を示し、並びに製造および性能に影響する複数の寸法パラメータを強調している斜視図である。
【図2B】図2Bは、従来の行および列方式で配列された小型レンズの平面図である。
【図2C】図2Cは、別の充填配列における二次元(2D)六方最密充填を示す。
【図3A】図3Aは、完全に半球状の小型レンズを有する光方向変換物品の光取り扱い挙動を示す断面概略図である。
【図3B】図3Bは、半球状ではないいくつかの小型レンズを有する光方向変換物品の光取り扱い挙動を示す断面概略図である。
【図4A】図4Aは、ある実施形態において光方向変換膜を形成するための製造シークエンスを示す。
【図4B】図4Bは、ある実施形態において光方向変換膜を形成するための製造シークエンスを示す。
【図5】図5は、自己組織化中の隣接するマイクロ球体間の毛細管誘引を示す概略図である。
【図6A】図6Aは、本発明の実施形態におけるマイクロ球体のために使用される進展する自己組織化プロセスにおける初期段階の平面図を示す。
【図6B】図6Bは、本発明の実施形態におけるマイクロ球体のために使用される進展する自己組織化プロセスにおける中間段階の平面図を示す。
【図6C】図6Cは、本発明の実施形態におけるマイクロ球体のために使用される進展する自己組織化プロセスにおける後期段階の平面図を示す。
【図7】図7は、ある実施形態におけるマイクロ球体最密充填の結果の上面図を示す。
【図8A】図8Aは、代表的な製造シークエンスにおける、埋め込まれたマイクロ球体を有する鋳型、および小型レンズを形成するためのくぼみを有する対応する型の斜視図を示す。
【図8B】図8Bは、光方向変換膜の半球状小型レンズを示し、およびその膜面に対して垂直にとった断面を示す斜視図である。
【図8C】図8Cは、半球状小型レンズの半円状断面を構成すると見なされる角度の範囲を示す平面図である。
【図9】図9は、基体上に提供される光方向変換膜を示す断面図である。
【図10】図10は、担体を使用する光方向変換膜製造の概略図である。
【図11】図11は、担体を使用しない光方向変換膜製造の概略図である。
【図12A】図12Aは、パターン化ベルトを使用する光方向変換膜製造の概略図である。
【図12B】図12Bは、ドナー物質を使用する光方向変換膜製造の概略図である。
【図13】図13は、光方向変換膜の製造のために紫外線硬化を使用する製造装置を概略図で示す。
【図14】図14は、本発明の光方向変換膜によってレーザービームに対してもたらされる回折パターンを示す平面図である。
【図15A】図15Aは、輪郭を描いた複数の最密充填されたドメインを有する本発明の光方向変換膜の平面図である。
【図15B】図15Bは、さらなる表面特徴を示す図15Aの光方向変換膜の一部分の拡大平面図である。
【図16】図16は、その特徴表面に沿った半球状小型レンズを示す光方向変換膜の切断部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において記載される本発明の光方向変換物品の実施形態は主として光方向変換膜の製造に関する。上述の背景技術のセクションに示されるように、好適な膜物質により提供されるであろうような低減された厚みおよび軽量の特性は、ポータブルおよび携帯型ディスプレイ並びに他の薄型ディスプレイ装置で使用される光方向変換物品について特に有利である。しかし、その物品が単一物質またはモノリシック(monolithic)膜もしくはプレートの形態で提供されるか、または特徴表面を提供する膜物質を基体が支持する複合体膜もしくは他の複合体物品の形態で提供されるかにかかわらず、本発明の実施形態は光方向変換物品の特徴表面の製造および構造に関することが留意されるべきである。
【0020】
本開示の文章中の、用語「マイクロ球体(microsphere)」は実質的に球状の物体をいう。マイクロ球体は、例えば、光方向変換膜に使用されるマイクロレンズのアレイにおける小型レンズ(lenslet)に好適な範囲にある直径を有するガラス、ポリマーまたは他の好適な物質の好適な小さな球体であることができる。
【0021】
本開示の文章中の、用語「球状」とは、概して、その断面が約0.2未満、好ましくは0.1未満の離心率(eccentricity)を有する形状を有することを意味する。実際には、離心率「e」は、円錐曲線が真円(離心率e=0を有する)からどのくらい異なっているかの相対的な尺度を与える。楕円の離心率「e」は
【数2】

(式中、aは長半径の長さであり、bは短半径の長さである)として定義される。
【0022】
本開示においてその用語が使用される場合に、2−D形状が約0.2未満の離心率を有する場合であって、かつその形状が実質的に、160度超でかつ約200度未満の角度の範囲に入る円弧の場合には、2−D形状は実質的に半円状である。
【0023】
本開示の文章に使用される場合、変動係数(cv)は、分布における分散物の正規化された尺度としてその標準的な意味を有する。値の分布について、そのcvは、その分布についての(ゼロでない)算術平均で割った分布の標準偏差として定義される。
【0024】
六方最密充填(hexagonal close−packing)は結晶構造の研究における当業者によく知られた用語である。本開示の文章において、用語「二次元六方最密充填」は、2−D HCPとも称され、図2Cを参照して上述されたような、平面上での同じ半径の球体の単層について達成されうる最大の充填密度をいう。
【0025】
本発明の実施形態は、実質的に半球状の六方最密充填(HCP)小型レンズのアレイを有する表面を提供する光方向変換物品の製造に関する。小型レンズの直径はサブミクロンサイズ、例えば、0.5ミクロン以下から、10〜20ミクロン以上の範囲の大きなサイズまでの範囲であることができる。上述の背景技術セクションに示されるように、最密充填されかつ半球状形状の双方である小型レンズ構造の製造は、従来の製造技術を用いて達成するのが困難であることをすでに証明してきた。
【0026】
HCPアレイに配列された半球状小型レンズの製造は、本発明の実施形態を使用する多くの方法で行われうる。本発明の方法は、モアレまたは他の周波数効果の問題を回避しつつ、その高充填率およびその好ましい光取り扱い特性に特に有利であるHCP配列で一緒になったマイクロ半球状体のアレイを形成するための技術の組み合わせを使用する。本発明の様々な実施形態を使用して形成される光方向変換物品、例えば、膜は、後述されるような基体または担体に結合されうる層の形態だけでなく、モノリシック形態で提供されることができる。
【0027】
図4Aおよび4Bのブロック図は、ある実施形態における光方向変換膜30を形成するための製造シークエンスを示す。これらの図は、マイクロ球体44を使用する構造化鋳型表面46を最初に形成し、構造化鋳型表面46を使用して型48を形成し、次いで、その型を用いて構造化鋳型表面46を複製し、光方向変換膜30の特徴(featured)表面を形成する連続した工程を示す。次いで、後述の実施例は、具体的な場合において適用される物質、濃度および処理について、より詳細な情報を与える。
【0028】
まず、図4Aを参照すると、基体40は、その上に鋳型を形成するために提供される。基体40は、その後の処理条件および使用される物質を取り扱うために好適に選択される、ガラスまたはブラスチック物質であることができる。基体40の表面は、接着剤のような埋め込み物質42の層をその上に適用することによりコンディショニングされる。ある実施形態においては、感熱接着剤(TSA)の薄い被膜が埋め込み物質42として適用される。次いで、乾燥支援自己組織化(Drying Assisted Self−Assembly;DASA)と呼ばれる技術(これはより詳細に後述される)を用いて、マイクロ球体44が埋め込み物質42の表面上に配列される。
【0029】
次に図4Bに移ると、埋め込みプロセスが行われ、コンディショニングされた基体の表面上方に出ているそれぞれのマイクロ球体44の露出部分が半球状であるような好適な深さにマイクロ球体44を埋め込む。ある実施形態においては、比較的粘稠な埋め込み物質42の層に埋め込みをもたらすように熱が使用される。他の実施形態は、適切な深さへの埋め込みを提供するためにマイクロ球体44の露出部分に圧力を適用する。構造化鋳型表面46はこの埋め込みプロセスによって形成される。
【0030】
このようにして形成された構造化鋳型表面46を用いて、次いで、型48が製造されうる。型48のための未硬化物質が鋳型表面46に適用され、次いで、熱、放射線、化学物質または他の硬化方法を用いて硬化される。型48は次いで、基体物質もしくは担体に結合するための層としての、または半球状小型レンズ60のモノリシックアレイとしての光方向変換膜30を形成するための従来の成形プロセスで使用される。
【0031】
膜製造の当業者は、図4Aおよび4Bにおける工程のシークエンスには、それぞれの工程が後述されるものをはじめとする様々な技術を用いて、様々な条件下でおよび様々な物質を用いて行われうる、多くの代替的な実施形態の余地があることを容易に気づくことができる。ある代替的な実施形態においては、マイクロ球体44を六方最密充填層に組織化させる工程のために、中間ドナー物質が使用される。一旦組織化されたら、マイクロ球体のHCP層は、次いで、ドナー表面から基体40のコンディショニングされた表面に移される。この代替的な実施形態については、いくらかの圧力または熱と圧力との組み合わせが使用され、マイクロ球体44を埋め込み物質42の表面に中間的に埋め込む。マイクロ球体の中間的(halfway)(埋め込み)は、本明細書において、マイクロ球体の露出した頂点高さから埋め込み層の表面までがマイクロ球体の直径の40〜60パーセントであるような埋め込みとして定義される。言い換えれば、マイクロ球体の直径の40〜60パーセントのみが埋め込み層の表面の上方に露出する範囲でマイクロ球体が埋め込まれる。好ましくは、中間的埋め込みはマイクロ球体の直径の45〜55パーセントである。
【0032】
乾燥支援自己組織化
図4Aを参照して説明されたように、本発明の実施形態においては、球体の最密充填を獲得するために、乾燥支援自己組織化(DASA)が使用される。このプロセスにおいては、好適にコンディショニングされた表面上に適用される非常に均一な(単分散)マイクロ球体の液体懸濁物が、乾燥中に液体の蒸発により最密充填単一層に自己組織化する。図5に図式的に示されるように、乾燥支援自己組織化は、液体層36中に部分的に浸漬されたマイクロ球体44間に発現する誘引毛細管力を利用する。毛細管誘引は、乾燥中に膜における液体層36の高さが低くなるにつれて、液体表面の変形および誘導されるマイクロ球体44の表面での接線の非対称により引き起こされる。毛細管誘引の力Fは、液体−空気またはより一般的には液体−気体界面での表面張力に直接比例する。液体中のマイクロ球体の乾燥支援自己組織化についてのさらなる詳細はAizenbergらのPhysical Review Letters,第84巻、2997ページ、2000年3月に認められうる。
【0033】
図6A、6Bおよび6Cに示される上面図のシークエンスは、それぞれ、DASAプロセスが起こるにつれて、進展するDASAプロセスの初期段階、中間段階、および後期段階を示す。液体層36(図5)が乾燥するにつれて、マイクロ球体44が互いに対して最密充填配置に自己組織化する。このプロセスは顕微鏡スケールで観察されうる。乾燥が進行すると、最密充填が活発に起こっている面に沿って成長面38が進展しつつ二次元結晶領域の配列が形成される。
【0034】
有利なことには、DASAプロセスは、広範な領域にわたって均一で秩序のある最密充填配向方向(close−packing orientation direction)を有する六方最密充填を達成しないが、最密充填された球体の、より小さな隣接している複数の領域またはドメインを生じさせ、当該複数の領域またはドメインのそれぞれについては、面に沿った最密充填配向方向が典型的には、隣接するものの最密充填配向方向と少なくともわずかに異なり、モアレ問題を最小化するのに好適な程度の無秩序化または方位差(disorientation)を有する二次元結晶様構造を生じさせる。同時に、局在する最密充填のために、充填率が向上される。
【0035】
図7の平面図は、本発明のある実施形態に従った、実際の、マイクロ球体の六方最密充填を示す。図7は、不規則な形状で、複数の球体の、局在した2−D結晶様ドメイン50での、マイクロ球体44のクラスター化を示し、ここで、複数の最密充填されたドメイン50はそれぞれランダム配向方向を有するか、または結晶様構造の研究の分野の当業者によく知られた用語法を使用して、互いに「無秩序(disordered)」であるか、または「無秩序な配向(disordered orientation)」であると見なされる。図7は、この拡大図において見ることができる結晶様ドメイン50の1つを強調する。図7の例から、以下をはじめとする多くの観察がなされうる:
【0036】
(i)ドメイン50内ではマイクロ球体44は実質的に2−D HCP秩序化を有する。ドメイン内では、完全な2−D HCP秩序化からは幾分かのずれがありうる。
(ii)隣接する二次元結晶様ドメイン50の相対的な方位差および他の不規則さのために、最密充填が不完全である隣接する2−D結晶様ドメイン50の界面に沿って粒界52が存在する。
(iii)主として不完全なマイクロ球体製造または壊れたビーズ構造体のせいであるビーズサイズ不純物54、および欠損56も、図7に認められるように起こりうる。
(iv)任意のドメイン50の結晶様配向はその隣接するドメイン50の配向とは異なることができる。すなわち、任意の二つの異なるドメインは、互いに独立した最密充填配向方向を有する。このことは、二つのドメイン50間で異なる方向に並ぶマイクロ球体44の列を意味しうる。1つのドメイン50におけるマイクロ球体44が、隣接するドメイン50におけるマイクロ球体44の列に対して平行な列に配列される場合であってさえ、何らかのオフセット(offset)が存在する場合があり、その結果その二つの平行な列は、例えば、互いにわずかにずれている。
【0037】
図7に示される最密充填された配列は、1つの面内にそれぞれのドメイン50にわたって局在したコロイド結晶充填構造のタイプを提供する。このため、DASAプロセスは従来のディップコーティング法よりも充填率を向上させる。
【0038】
埋め込み
図8Aは、ある実施形態において、乾燥支援自己組織化を用いて配列されたポリマーマイクロ球体44の埋め込みの結果を示す。図4Bに示される工程のシークエンスに戻って参照すると、埋め込み物質42の層の表面へのマイクロ球体44の適切な深さでの埋め込みは、構造化鋳型表面46を形成するために必要とされる半球状構造のアレイを提供する。
【0039】
適切な深さまでのマイクロ球体44の埋め込みを提供するために制御されうる多くの要因がある。1つの方法は、マイクロ球体44がより容易に中間的に表面に沈むように、埋め込み物質42の粘度または弾性率を適切に低くするために充分な時間にわたって熱を適用する。上述のように、外部圧力もこの目的のために適用されてよい。例えば、熱、圧力および溶媒の任意の組み合わせと同様に、溶媒が使用されてもよい。
【0040】
鋳型46からの型48の注型
図8Aに示されているように、構造化鋳型表面46から型48を形成するための工程は、膜製造技術分野において周知であり、くぼみ62を形成するための様々な物質および技術を使用することができる。ある実施形態においては、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)の層が、型48を形成するための鋳型46上に適用される。マイクロ球体44は適切な深さに埋め込まれて半球状構造体を形成するので、型物質は、鋳型表面46からの形を刻印する前に最初に基体に適用されるのではなく、構造化鋳型表面46の表面上に直接適用されうる。しかし、別の実施形態においては、型物質を支持するために基体が使用される。
【0041】
複製
図4Bに戻って参照すると、PDMSまたは他の好適なポリマーから形成された型48は、次いで、光方向変換膜30のベース物質を受け入れ、小型レンズを形成し、図8Bの例に示されるような特徴表面を形成する。
【0042】
断面が半円状の小型レンズ60
本発明の製造方法の有利な結果は、小型レンズ60の最終的な形状が達成されることに関する。図8Cを参照すると、光方向変換膜30の表面に対して垂直に断面がとられる場合、どの小型レンズ60についても断面形状Hが示される。上述および図8Cに表されるように、実質的に半円の形状は、少なくとも160度より大きく、かつ約200度未満の角度、好ましくは約170度より大きく、かつ約190度未満の角度、最も好ましくはできるだけ180度に近い角度によって範囲を定められた弧である。
【0043】
本発明に従って製造された光方向変換膜30または他の光方向変換物品において、その方法および物質の特質のために、および形成される小型レンズ60のスケールのために、特徴表面のいくらかの不完全さが予想される。しかし、実際には、小型レンズ60断面の半分超が、半円状断面についてのこれらの要件を満たし、よって小型レンズ60の過半が半球状であることを意味する。この構造を有する光方向変換膜30について、表面の面内にあるどんな角度でとられても、特徴表面に対して垂直な断面は、いくつかの数の小型レンズ60の半円状断面を得ることを指摘することも有益である。すなわち、その基底に対して垂直にとられるどの半球断面も何らかのサイズの半円形状を生じさせる。
【0044】
製造実施形態
図4Aおよび4Bを参照して上述され、図8Aから8Cの例において示されるシークエンスは、多くの様々な方法において光方向変換膜30を製造するために使用されうる。図4Bはモノリシック物品としての光方向変換膜30を示した。他の実施形態においては、図9における光方向変換物品70の断面に示されるように、追加の支持体が提供され、すでに形成されたその特徴表面を有する光方向変換膜30は基体68、例えば、後述されるウェブ担体として場合によって提供されるガラスもしくはポリマーシートに結合される。光方向変換膜30と基体68との間の結合は任意の多くの方法で行われることができ、例えば、接着剤結合もしくは紫外線活性化結合を含むことができる。さらに他の実施形態においては、成形される物質が基体に適用されることができ、後の除去を必要としてもよくまたは必要としなくてもよい裏打ち支持体としてその基体を用いて、成形操作が適用される。
【0045】
図10の概略図は、光方向変換膜30を製造するのに使用されうる押出ロール成形装置100を示す。この実施形態においては、型48(図8A)が形成され、ドラム148上に巻き付けられ、パターン化ローラー142を形成する。その膜を製造するために、押し出し機130はポリマーのような未硬化の熱可塑性物質132を、サプライ136から供給されるベース134上に供給する。ベース134は、熱可塑性物質132に使用されるのと同じ物質から形成されうるか、または例えば、紙、膜もしくは布のような他のシート物質から形成されうる。融解した熱可塑性物質132およびベース134は、加圧ローラーのような支持体140とパターン化ローラー142との間のニップ領域138に入る。熱可塑性物質132はニップ領域138を通過するとき、支持体140およびパターン化ローラー142は熱可塑性物質132をベース134上に押しつけ、結果的に得られる膜30にローラー上のパターンが刻印される。刻印されたパターンはパターン化ローラー142の表面のネガである。次いで、熱可塑性物質132はその融解温度未満に冷却されるか、あるいはさもなければ硬化させられ、次いで光方向変換膜30は、さらなる処理のために基体巻き取りロール146上に巻き取られる。例えば、ベース134は除去されうる。
【0046】
図11の別の押出ロール成形の実施形態は、ベースまたは担体物質を使用することなく、未硬化の熱可塑性物質132を押し出すことにより光方向変換膜30を形成する。押し出し機130は熱可塑性物質132を融解させ、それを支持体140とパターン化ローラー142との間のニップ領域138に供給する。それが冷却すると、これは光方向変換膜30を形成し、ローラー表面上のパターンが光方向変換膜30の表面に刻印され、その特徴表面を形成するパターンを当該光方向変換膜30は有する。このパターン形成され、冷却された光方向変換膜30は、次いで、さらなる処理のために、基体巻き取りロール146上に巻き取られる。
【0047】
図12Aは、パターン化ベルト150を使用する別の種類の成形装置100の概略図を示す。パターン化ベルト150はそれ自体、図10および11を参照して記載されるようなパターン化ロール製造を使用して形成される。そのパターン化構造の観点から、ひいては、パターン化ベルト150は、便宜上「雌」型要素と呼ばれるものとして働く、マスターパターン化ローラー142の型を有する。光方向変換膜30を形成するために、未硬化の熱可塑性物質132が、パターン化ベルト150と支持体140との間のニップ領域138に供給される。この配置に関して、光方向変換膜30上に形成される表面パターンは、図10および11の実施形態のパターン化ローラー142表面のと同じパターンである。
【0048】
図12Bは、ドナー物質160を使用する製造装置110の別の実施形態を示す。上述のようなDASAを使用して、マイクロ球体44は六方最密充填配列でドナー物質160上で組織化される。基体40の表面は、コーター164からの埋め込み物質42の適用によりコンディショニングされる。ドナー物質160およびコンディショニングされた基体40は、マイクロ球体44を埋め込み物質42の表面に中間的に埋め込むために圧力を適用するローラー166と168との間のニップに供給され、それにより光方向変換膜30を形成する。次いで、使用済みのドナー162は廃棄される。
【0049】
図13は、LGF20の製造のために紫外線硬化を使用する製造装置110を概略形態で示す。コーター80は未硬化物質の層84を担体82または他の支持体に適用する。次いで、パターン化ローラー142を使用して未硬化物質を刻印することによりパターン形成が行われうる。これに続いて、紫外線90が使用され、適用された層がその刻印されたパターンを伴って硬化するように、適用された層の硬化を促進し、光方向変換膜30を形成し、次いで、ロール146上に巻き取られる。光方向変換膜30は担体82部分を含んでいてもよいし、担体82部分を廃棄していてもよい。他の種類の放射エネルギーが代わりに使用されることができる。
【0050】
物質
本発明の方法は、方法のそれぞれの段階のために、様々な異なる物質の使用を可能にする。例えば、本発明において有用なマイクロ球体ビーズは、所望のビーズ形状およびサイズを得るのに好適な任意の方法で製造された、任意の好適な物質、好ましくはプラスチックまたはガラスから形成されうる。好適な方法には、懸濁重合および乳化重合方法、例えば、マイクロ球体ビーズ製造技術分野の当業者に公知の制限凝集(limited coalescence)技術などを挙げることができる。これは「懸濁重合」および「ポリマー懸濁」技術を含む。
【0051】
本発明において有用なビーズは、所望のビーズ形状を得るのに好適な任意の方法で製造されうる。好適な方法は懸濁重合方法および乳化重合方法であり、例えば、制限凝集技術は、例えばThomas H.Whitesides and David S.Ross in Journal of Colloid Interface Science 169、48−59(1995)に記載されるように、公知である。
【0052】
制限凝集方法は、「懸濁重合」技術および「ポリマー懸濁」技術を含む。本発明に従ってポリマー粒子を製造する好ましい方法は、重付加重合可能な1種以上のモノマーが、粒子懸濁剤を含む水性媒体に添加され、連続(水)相中に不連続(油滴)相を形成する制限凝集技術による。この混合物は撹拌、ホモジナイゼーションなどによる剪断力にかけられ、液滴のサイズを低減させる。剪断が停止した後、液滴の表面を覆う粒子懸濁剤の安定化作用の結果として、液滴のサイズに関して平衡に到達する。次いで、重合が完了し、ポリマー粒子の水性懸濁物を形成する。
【0053】
「ポリマー懸濁」技術において、好適なポリマーは溶媒中に溶解され、この溶液が、微細な水−非混和性液滴として、安定剤としてコロイド状シリカを含む水性溶液中に分散される。平衡に到達し、液滴の表面を覆うコロイド状シリカの作用によって、液滴のサイズが安定化される。蒸発または他の好適な技術によって液滴から溶媒が除去され、結果として、その上にコロイド状シリカの均一な被膜を有するポリマー粒子を生じさせる。この従来法は、例えば、1989年5月23日に発行された米国特許第4,833,060号に記載される。懸濁重合技術を使用する本発明の実施においては、任意の好適な1種以上のモノマー、例えば、スチレン、ビニルトルエン、p−クロロスチレン;ビニルナフタレン;エチレン性不飽和モノオレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンおよびイソブチレン;ハロゲン化ビニル、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、および酪酸ビニル;アルファ−メチレン脂肪族モノカルボン酸のエステル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、メチル−アルファ−クロロアクリラート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、およびメタクリル酸ブチル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、およびビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンおよびメチルイソプロピルケトンなどのビニルケトン;塩化ビニリデン、ビニリデンクロロフルオリドなどのハロゲン化ビニリデン;およびNビニル化合物、例えば、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドールおよび、N−ビニルピロリドン ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリラート、これらの混合物;などが使用されることができる。
【0054】
懸濁重合技術において、所望の結果をもたらすために、開始剤、促進剤などをはじめとする他の追加物(これらは、より具体的に、例えば、米国特許第2,932,629号および第4,148,741号に開示される)がモノマー液滴に、および集合物の水性相に添加される。ポリマー懸濁プロセスに有用な溶媒は、ポリマーを溶解し、水と非混和性で、かつポリマー液滴から容易に除去される溶媒であり、例えば、クロロメタン、ジクロロメタン、酢酸エチル、塩化ビニル、メチルエチルケトン、トリクロロメタン、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、2−ニトロプロパンなどがある。特に有用な溶媒はジクロロメタンである、というのは、それは多くのポリマーの良好な溶媒であると共に、水と非混和性であるからである。さらに、その揮発性は、それが蒸発により不連続相液滴から容易に除去されうるような程度である。
【0055】
ポリマー懸濁プロセスにおける様々な成分の量およびその互いの関係は広範囲にわたって変化しうる。しかし、溶媒に対するポリマーの比率が、ポリマーと溶媒との合計重量の約1〜約80重量%の量で変化するべきであること、並びにポリマーと溶媒との合計重量が、使用される水の量に対して、約25〜約50重量%の量で変化すべきであることが概して見いだされる。コロイド状シリカ安定剤のサイズおよび量はコロイド状シリカの粒子のサイズに依存し、また、望まれるポリマー液滴粒子のサイズに依存する。よって、ポリマー/溶媒液滴のサイズが高剪断撹拌によってより小さくされるにつれて、固体コロイド安定剤の量は、液滴の制御されない凝集を妨げ、結果的に得られるポリマー粒子の均一なサイズおよび狭いサイズ分布を達成するように変化させられる。これらの技術は、0.5マイクロメートル〜約150マイクロメートルの範囲内の、非常に狭いサイズ分布のあらかじめ決められた平均直径を有する粒子を提供する。変動係数(平均直径に対する標準偏差の比率)は通常、約0.35未満である。ビーズを製造するために使用される具体的なポリマーは、着色されてもよい水混和性の合成ポリマーである。好ましいポリマーは任意の非晶質水混和性合成ポリマーである。有用なポリマータイプの例は、ポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)または、ポリ(アクリル酸ブチル)である。スチレンとアクリル酸ブチルとのコポリマーのようなコポリマーも使用されうる。ポリスチレンポリマーが都合よく使用される。
【0056】
マイクロ球体サイズの分布は、分布の標準偏差を算術平均で割ったものとして定義される変動係数(cv)が0.35未満、好ましくは0.2未満、最も好ましくは0.15未満であるようなものである。
【0057】
光方向変換膜30は、例えば屈折率、ガラス転移温度、剛性および他の因子の様な因子並びに特性を考慮して、任意の好適な透明物質から形成されることができる。典型的な光方向変換膜は、マイクロ半球体の最密充填単層を有する特徴表面を有するシートを含む。このシートは基体を含むことができる。構造化鋳型表面46を形成するために、ガラスおよびポリマーをはじめとする様々な範囲の基体が使用されることができる。基体は、ポリエステルプラスチックから形成され、20〜200ミクロンの厚みを有するKodak Estarフィルムベースのようなポリマー系物質であることができる。例えば、基体は透明ポリエステルの80ミクロン厚シートであることができる。他のポリマー、例えば、透明ポリカーボネートが使用されてもよい。
【0058】
柔軟なプラスチック基体は、任意の柔軟な、自己支持性プラスチック膜であることができる。柔軟なプラスチック基体は、自己支持性であるような充分な厚みおよび機械的一体性を有しなければならないが、剛性であるほど厚いべきではない。典型的には、柔軟なプラスチック基体は厚さで複合体膜の最も厚い層である。その結果、その基体は、完全な構造化複合体膜の機械的および熱的安定性をかなりの程度まで決定する。
【0059】
柔軟なプラスチック基体物質の他の顕著な特性はそのガラス転移温度(Tg)である。Tgはプラスチック物質がガラス状態からゴム状態に変化する温度として定義される。有効Tgは、物質が実際に流れることができる前の範囲を含みうる。柔軟なプラスチック基体に適する物質は、相対的に低いガラス転移温度、例えば、150℃までの熱可塑性物質、並びにより高いガラス転移温度、例えば、150℃超の物質を含む。
【0060】
柔軟なプラスチック基体のための物質の選択は、例えば、堆積温度およびアニーリング温度をはじめとする製造プロセス条件の様な要因に、並びにディスプレイ製造業者の製造ラインにおけるような製造後の条件に依存するであろう。ここに記載されるあるプラスチック基体は、損傷することなく、少なくとも約200℃まで、300−350℃までの高い処理温度に耐えうる。典型的には、柔軟なプラスチック基体は、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、セルロースアセタート、脂肪族ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリ(メチル(x−メタクリラート))、脂肪族もしくは環状ポリオレフィン、ポリアリーラート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、テフロン(登録商標)ポリ(ペルフルオロ−アルボキシ)フルオロポリマー(PFA)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(エーテルケトン)(PEK)、ポリ(エチレンテトラフルオロエチレン)フルオロポリマー(PETFE)、およびポリ(メタクリル酸メチル)、および様々なアクリラート/メタクリラートコポリマー(PMMA)が挙げられる。脂肪族ポリオレフィンには、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、およびポリプロピレン、例えば、配向ポリプロピレン(OPP)が挙げられうる。環状ポリオレフィンにはポリ(ビス(シクロペンタジエン))が挙げられうる。好ましい柔軟なプラスチック基体は環状ポリオレフィンまたはポリエステルである。様々な環状ポリオレフィンは柔軟なプラスチック基体に適する。例としては、日本国、東京の日本合成ゴム株式会社により製造されたArton(登録商標)、日本国、東京の日本ゼオン株式会社により製造されたZeanorT、およびドイツ、KronbergのCelanese A.G.により製造されたTopas(登録商標)が挙げられる。Artonはポリマーの膜であるポリ(ビス(シクロペンタジエン))縮合物である。あるいは、柔軟なプラスチック基体はポリエステルであることができる。好ましいポリエステルはAryliteのような芳香族ポリエステルである。
【0061】
埋め込み物質42は、狭義の「接着剤」として分類されない物質をはじめとする多くの様々な物質から形成されうる。例えば、感圧接着剤または不完全に重合されたもしくは架橋されたモノマーもしくはオリゴマーのような充分に柔らかい物質、または熱可塑性物質のような熱の適用により柔らかくなることができ、層の表面へのマイクロ球体の中間的埋め込みを可能にする物質が使用されうる。埋め込みは、マイクロ球体を埋め込み物質に押しつけもしくは加圧することにより、またはマイクロ球体を所望の深さまで埋め込み物質に引き込ませる表面力の作用により引き起こされうる。好適な埋め込み物質には、(メタ)アクリラートホモポリマーおよびコポリマー、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリエステル、紫外線硬化性アクリル系物質、およびエポキシ、ポリカーボネート、並びに他の関連する物質が挙げられる。ポリオレフィンには、高密度もしくは低密度ポリエチレン、(メタ)アクリラートを含むエチレンコポリマー、(メタ)アクリル酸もしくはその塩を含むエチレンコポリマー、酢酸ビニルを含むエチレンコポリマー、ポリプロピレンおよび環状ポリオレフィンが挙げられうる。特に好適な埋め込み物質は低密度ポリエチレンおよびポリビニルブチラールを含む。
【0062】
多くの湿潤剤がDASA処理を容易にするために使用されうる。湿潤剤またはコーティング助剤は、マイクロ球体コーティング溶液中に相溶性であるような任意の界面活性剤であることができる。使用される界面活性剤は、コーティング溶液が基体もしくは埋め込み物質表面上に均一に拡がるように、溶液の表面張力を約30ダイン/cm以下まで低減させるのが好ましい。界面活性剤は、それがコーティング溶液中の他の成分と相溶性である限りは、本質的に、非イオン性、アニオン性、またはカチオン性であってよい。有用な非イオン性界面活性剤の例としては、ポリアルキレンオキシド修飾ポリジメチルシロキサン(Momentive Performance Materialsから入手可能な商品名「Silwet L−7607」、Dow Corning Corp.から入手可能な商品名Q2−5211)、ペルフルオロアルキルポリ(エチレンオキシド)アルコール(Dupont Co.から入手可能な商品名「Zonyl FSN」)、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)およびポリ(エチレンオキシド)ジオール化合物(BASF Corp.から入手可能な商品名「Pluronic L−44」)およびノニルフェノキシポリ(ヒドロキシプロピレンオキシド(8−10))アルコール(Olin Corporationから入手可能な商品名「Surfactant 10G」)が挙げられる。
【0063】
特に有用なのは非イオン性ポリエトキシ化界面活性剤、特に炭化水素ポリエトキシ化界面活性剤およびポリエトキシ化シリコン界面活性剤である。好ましいのは、
一般式:R−B−E−D
(式中、Rは8〜20の炭素を有するアルキル基であり、Bはフェニル基であり、xは0もしくは1であり、Eは(OCHCH)であり、mは6〜20であり、DはOHもしくはOCHである)を有する非イオン性炭化水素ポリエトキシ化界面活性剤である。この一般式によって記載される有用な非イオン性界面活性剤の例には、オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシド)(9)エタノール(Dow Chemical Co.から入手可能な商品名「Triton X−100」)、オクチルフェノキシポリエチレンオキシド(12)エタノール(Dow Chemical Co.から入手可能な商品名「Triton X−102」)、オクチルフェノキシポリエチレンオキシド(30−40)エタノール(Dow Chemical Co.から入手可能な商品名「Triton X−405」)、アルキル(C12−C15混合物)ポリエチレンオキシド(7)アルコール(Shell Chemical Co.から入手可能な商品名「Neodol 25−7」)、およびトリデシルポリエチレンオキシド(12)アルコール(ICIから入手可能な商品名「Renex30」)が挙げられる。特に価値の高い非イオン性界面活性剤は、ポリアルキレンオキシド修飾ポリ(ジメチルシロキサン)である。
【0064】
ある実施形態においては、アニオン性界面活性剤は、
一般式:R−(A)−C
(式中、Rは8〜20の炭素、より好ましくは10〜16の炭素を有するアルキル基であり、Aはアリールもしくはヒドロキシエチレン基であり、CはSOもしくはSOであり、MはアンモニウムもしくはK、Na、Liのようなアルカリ金属である)を有する硫酸塩またはスルホン酸塩界面活性剤である。最も好ましくは、アニオン性界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである(Rhone−Poulencから入手可能な商品名「Siponate DS−10」)。
【0065】
別の実施形態においては、アニオン性硫酸塩またはスルホン酸塩界面活性剤は、
一般式:(R−(B)−(E)−C
(式中、Rは4〜20の炭素、より好ましくは4〜16の炭素を有するアルキル基、xが0である場合にはnは1であり、xが1である場合にはnは1、2または3であり、Bはフェニル基であり、xは0または1であり、Eは−(OCHCH)−であり、yは1〜8の整数であり、CはSOもしくはSOであり、MはアンモニウムもしくはK、NaおよびLiのようなアルカリ金属である)。最も好ましくは、アニオン性硫酸塩またはスルホン酸塩界面活性剤は、トリブチルフェノキシポリエトキシ硫酸ナトリウム(Hoechst Celaneseから入手可能な商品名Hostapal BV)またはアルキル(C12−C15)ポリエトキシ(5)硫酸ナトリウム(Witcoから入手可能な商品名Witcolate SE−5)である。好ましい実施形態においては、界面活性剤は、約0.1mg/m〜100.0mg/mの範囲、より好ましくは約1mg/m〜10mg/mの範囲の作動濃度を有する。
【0066】
DASA処理を容易にするために多くのバインダーが使用されうる。好適な親水性バインダーには、天然に存在する物質、例えば、タンパク質、タンパク質誘導体、セルロース誘導体(例えばセルロースエステル)、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリサッカライド、カゼイン、および合成水浸透性コロイド、例えば、ポリ(ビニルラクタム)、アクリルアミドポリマー、ラテックス、ポリ(ビニルアルコール)およびその誘導体、加水分解されたポリ酢酸ビニル、アルキルおよびスルホアルキルアクリラート並びにメタクリラートのポリマー、ポリアミド、ポリビニルピリジン、アクリル酸ポリマー、無水マレイン酸コポリマー、ビニルアミンコポリマー、メタクリル酸コポリマー、アクリロイルオキシアルキルアクリラートおよびメタクリラート、ビニルイミダゾールコポリマー、ビニルスルフィドコポリマー、およびスチレンスルホン酸を含むホモポリマーもしくはコポリマー、水分散可能なポリエステルイオノマー、特に芳香族ジカルボン酸部分、脂肪族または環式脂肪族グリコール残基およびヒドロキシ末端基を含む水分散可能なポリエステルイオノマーが挙げられる。特に有利なのは、80℃未満のガラス転移温度を有するポリマーである。特に好適なのは、乾燥形態で80℃未満、好ましくは50℃未満、最も好ましくは30℃未満のガラス転移温度を有する水分散可能なポリエステルイオノマーバインダーである。
【実施例】
【0067】
実施例1
次の実施例は、ある実施形態において、図4Aおよび4Bで与えられる工程のそれぞれがどのように行われるかを示す。
1.基体コンディショニング。感熱接着剤(TSA)物質(Estane5703;軟化点85℃)がポリエチレンテレフタラート(PET)の基体上にコーティングされ、乾燥厚さ7μmを提供する。これは、テトラヒドロフラン(THF)中の、1重量%(Estaneの重量基準)のフルオロカーボン界面活性剤FC431(3Mより)を含むEstane5703の8.3重量%溶液を製造し、それを101.6cm/mのウェットカバレッジで、ポリエチレンテレフタラート(PET)の0.1mm厚みのシートに適用することにより達成される。
2.マイクロ球体堆積およびDASA自己充填。9.8重量%のポリスチレンマイクロ球体(3.4μm平均直径および0.3の変動係数(cv))、フィッシュスキンゼラチンおよびOlin 10G界面活性剤を含む水性懸濁物が、21.5cm/mのウェットカバレッジでTSA層上に適用される。次いで、その被膜を30℃で乾燥させ、2g/mのマイクロ球体、41mg/mのゼラチンおよび20mg/mの界面活性剤を含む乾燥層を提供する。被膜中でのマイクロ球体の乾燥カバレッジは、個々のマイクロ球体のサイズに基づいて均一な単層を提供するように計算される。
光学顕微鏡を使用した被膜の検査は、TSA層の表面上での乾燥支援自己組織化のプロセスにより造られたポリマーマイクロ球体の最密充填単層を示す。被膜がレーザービームの前に配置される場合には、図14に示されるように、同心円の回折パターンがサンプルの後ろのスクリーン上に観察される。
3.埋め込み。ある実施形態において、コーティングは85℃付近の温度に維持され、20psiのニップ圧力を提供するように設定された一組のスチールローラーに4回通される。このプロセスはマイクロ球体をその直径の半分付近の深さまでTSA層に埋め込む。
4.型成形および硬化。埋め込まれたマイクロ球体を備えた被膜は22℃に冷却され、その上に、10重量部のSylgard 184エラストマーおよび1重量部の硬化剤を含む組成物が3.8mmの厚さで適用される。そのサンプルは100℃に設定されたオーブン中に1時間入れられ、エラストマーを硬化させる。埋め込まれたマイクロ球体被膜のネガレプリカを含む硬化したエラストマー膜が、次いで、剥離して取り外される。
5.光方向変換膜30の成形。硬化したエラストマー膜はガラスシート上に配置され、紫外線硬化性光学接着剤NOA−68(Norland Productsより)の0.2mm厚の層がマイクロくぼみ表面上に被覆される。その複合物は、次いで、1.0ジュールのH−バルブ紫外線に曝露され、光学接着剤を硬化させる。硬化した光学接着剤は剥離して取り外され、工程2の元の最密充填単層埋め込みマイクロ球体被膜のモノリシックレプリカを形成する。
【0068】
本発明の光方向変換膜30は、直径20ミクロン以下の小型レンズを提供する従来の小型レンズアレイと比較して向上した充填率をもたらす。この方法を用いて、80%よりもよい充填率が達成可能である。これは、現在、約70%よりもよい充填率を達成しない小型レンズアレイを用いる存在する光方向変換物品に対して有利に対比される。
【0069】
実施例2
次のものは、本発明の別の実施形態における工程の例である。
1.基体コンディショニング。低密度ポリエチレン(LDPE)を含む20μm厚のTSA層が100μm厚のPET基体上に押出被覆される。
2.マイクロ球体堆積およびDASA自己充填。Dow Corningからのポリアルキレンオキシド修飾ポリジメチルシロキサン界面活性剤3重量%を含む10μmに近い平均サイズおよびcv<0.1のポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)マイクロ球体(30重量%)の水性懸濁物がTSA層上に適用され、6.4g/mに近いマイクロ球体の乾燥カバレッジを与える。光学顕微鏡を使用する被膜の検査は2D HCPドメインのモザイクを含む単層を示す。
3.埋め込み。最密充填されたマイクロ半球状アレイを形成するマイクロ球体の最密充填アレイの埋め込みは、単にそのものを125℃に設定されたオーブン中で2分間加熱することにより達成される。
4.型成形および硬化。埋め込まれたマイクロ球体を備えたコーティングは22℃に冷却され、その上に、10重量部のSylgard 184エラストマーおよび1重量部の硬化剤を含む組成物が3.8mmの厚さで適用される。そのサンプルは100℃に設定されたオーブン中に1時間入れられ、エラストマーを硬化させる。埋め込まれたマイクロ球体被膜のネガレプリカを含む硬化したエラストマー膜が、次いで、剥離して取り外される。
5.光方向変換膜30の成形。元のマイクロ半球状アレイのネガレプリカを含む硬化したエラストマー膜はPETのシート上に配置される。15重量%のテトラヒドロフルフリルアクリラート、35重量%の1,6−ヘキサンジオールジアクリラートおよび50重量%のポリウレタンアクリラートオリゴマーの混合物の0.2mm厚の層がその膜上に被覆される。この複合体は、次いで、0.3ジュールのD−バルブ紫外線に曝露される。硬化したアクリラート層は、次いで、ネガレプリカから取り外され、元のマイクロ半球状アレイのモノリシックポジレプリカを形成する。
【0070】
図15A、15Bおよび16は、実施例2として与えられるプロセスに従って製造されたモノリシックマイクロ半球状アレイの顕微鏡写真である。図15Aは、互いに相対的に秩序づけられていない複数のドメイン50’内で最密充填された小型レンズ60の複数のドメイン50’を有する光方向変換膜のセクションを示す。典型的な数のドメイン50’は図15AのセクションE内で印を付けられ;ドメイン50’内の完全な構造は、上述した画像周波数パターン形成考慮のために、有利であるとは考えられず、またドメイン間の最密充填配向方向の整合でもない。図15BにおけるセクションEの拡大図は、より詳細に表面特徴の構造、粒界52’、欠損56’およびサイズ不純物54’を示す。球体の最密充填アレイを使用した光方向変換膜30の表面と元の鋳型との間の類似性は、図7を参照して上述されたように、図15Aおよび15Bにおける半球状小型レンズ60、ドメイン50’、粒界52’、サイズ不純物54’、および欠損56’と、対応する図7におけるマイクロ球体44、ドメイン50、粒界52、サイズ不純物54および欠損56との構造的比較によって認められうる。結晶様構造の当業者に配向方向が理解されるように、任意の2つの隣接するドメイン50’の最密充填配向方向は多くの場合異なる。
【0071】
実施例1および2に記載される成形技術を使用することは、光方向変換膜30上の半球状小型レンズサイズの分布が0.35未満、好ましくは0.2未満、最も好ましくは0.15未満の変動係数(cv)を有するような、型表面の非常に正確な複製を可能にする。
【0072】
図16は、その特徴表面に沿った半球状小型レンズ60を示す光方向変換膜30の切断部分の斜視図である。本発明の製造方法を使用して、表面の面内の任意の方向に沿ってとった、光方向変換膜30の表面に対して垂直にとった断面は半円形状を有する。
【0073】
図4Aおよび4Bを参照して上述された並びに実施例1および2で与えられた実施形態においては、光方向変換膜30を製造するために、構造化鋳型表面46を複製するある種の成形方法が行われる。別の実施形態は、構造化鋳型表面46自体を光方向変換物品として使用することに留意すべきである。すなわち、図4Bを参照して記載されるように、マイクロ球体44を埋め込み物質42に埋め込むことにより形成される構造体はそれ自体様々な用途で光を方向変換させるために使用されうる。よって、ある実施形態においては、例えば、マイクロ球体44は透明であり、埋め込み物質42と屈折率が適合する。構造化鋳型46は基体40に結合されることができ、もしくは埋め込み物質42を硬化させることによるように、別々に使用可能であり得る。
【0074】
図1に戻って参照すると、本発明の光方向変換膜30はディスプレイ装置10のための光方向変換物品20として使用されうる。本発明の方法は、向上された充填率を有し、従来の光方向変換膜を超える向上された輝度を達成することができる光方向変換物品を提供するので、従来のディスプレイに典型的に必要とされ、図1のブロック図に表される2以上の光方向変換物品の代わりに、光方向変換膜の単一シートのみが光源14とLCDパネル12との間に必要とされるディスプレイ用途がありうる。本発明の光方向変換物品は、バックライトディスプレイにおいて光を方向変換するためのその使用に加えて、拡散表面を提供するような多くの異なる用途にも使用されうる。例えば、反射コーティングまたは反射防止コーティングのような追加のコーティングが提供されることができ、並びに光方向変換膜または他の種類の物品が反射表面または他の構成物と組み合わせて使用されうる。このことは、光方向変換物品が、例えば、再帰反射器用途に使用されるのを可能にする。
【0075】
本発明は、その特定の好ましい実施形態を特に参照して詳細に説明されたが、上述のようなおよび特許請求の範囲に特定されるような変化および修飾が当業者によって本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の範囲内でもたらされうることが理解されるであろう。例えば、マイクロ球体44の埋め込み物質42の表面への中間的埋め込みは、化学溶媒またはその物質を軟化させる他の手段を用いることができる。マイクロ球体のDASA充填は別のドナーシート上でまたは他のドナー表面上で行われることができ、それは次いで埋め込み層42への埋め込みのための(図4B)HCPパターンを提供するための中間体として使用され、その後そのドナーシートが除去されうる。よって、提供されるのは、半球状マイクロレンズのアレイとして形成される光方向変換物品である。
【符号の説明】
【0076】
10 ディスプレイ装置
12 LCDパネル
14 光源
20、20a、20b 光方向変換物品
24 小型レンズ
R1、R2、R3 光線
30 光方向変換膜
32 小型レンズ
36 液体層
38 成長面
40 基体
42 埋め込み物質
44 マイクロ球体
46 構造化鋳型表面
48 型
50 局在した2−D結晶様ドメイン
50’最密充填小型レンズの複数のドメイン
52、52’ 粒界
54、54’ ビーズサイズ不純物
56、56’ 欠損
60 半球状小型レンズ
62 くぼみ
68 基体
70 光方向変換物品
80 コーター
82 担体
84 未硬化物質の層
100 押出ロール成形装置
130 押し出し機
132 未硬化の熱可塑性物質
134 ベース
136 サプライ
138 ニップ領域
140 支持体
142 パターン化ローラー
146 基体巻き取りロール
148 ドラム
150 パターン化ベルト
160 ドナー物質
162 使用済みのドナー
164 コーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)埋め込み物質の層を適用することにより、基体の表面をコンディショニングし;
b)乾燥支援自己組織化を用いてマイクロ球体の最密充填層を組織化し、当該マイクロ球体の最密充填層をコンディショニングされた表面に適用し;および
c)埋め込み物質の層の表面にマイクロ球体を中間的に埋め込むこと;
を含む、光方向変換物品を形成する方法。
【請求項2】
d)前記c)において埋め込み物質の層の表面にマイクロ球体を中間的に埋め込むことにより形成される特徴表面のネガとして型を形成し;および
e)型を用いて透明媒体上に特徴表面を複製して、光方向変換膜の特徴表面を形成すること;
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マイクロ球体がガラスまたはポリマーから形成される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
マイクロ球体を埋め込むことが、基体のコンディショニングされた表面に熱、圧力または溶媒の1以上を適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記b)におけるマイクロ球体の最密充填層を組織化することが、ドナー表面上にマイクロ球体の最密充填層を組織化することを含み;および、前記b)においてコンディショニングされた表面にマイクロ球体の最密充填層を適用することが、マイクロ球体の最密充填層をドナー表面からコンディショニングされた表面に移すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
六方最密充填された半球状小型レンズの2次元ドメインを複数含む特徴表面を含む光方向変換物品であって、半球状小型レンズ直径の変動係数が約0.35未満であり、少なくとも2つの隣接するドメインが異なる最密充填配向方向を有し、隣接するドメイン間の境界を粒界が描き;
特徴表面に対して垂直な角度で断面をとると、どのドメインにおいても小型レンズ断面の半分超の形状が実質的に半円状である、光方向変換物品。
【請求項7】
半球状小型レンズ直径の変動係数が約0.2未満である、請求項6に記載の光方向変換物品。
【請求項8】
特徴表面を支持する基体をさらに含む、請求項6に記載の光方向変換物品。
【請求項9】
a)領域にわたって照明を提供するためのエネルギー付与可能な光源;
b)調整された照明を提供するための、照明の経路内の光方向変換膜であって、
六方最密充填された半球状小型レンズの2次元ドメインを複数含む特徴表面を含み、半球状小型レンズ直径の変動係数が約0.35未満であり、少なくとも2つの隣接するドメインが異なる最密充填配向方向を有し、隣接するドメイン間の境界を粒界が描き;
特徴表面に対して垂直な角度で断面をとると、どのドメインにおいても小型レンズ断面の半分超の形状が実質的に半円状である光方向変換膜;および
c)光方向変換膜からの入射する調整された照明を調光し、画像を形成するために配置されるディスプレイパネル;
を含むディスプレイ装置。
【請求項10】
ディスプレイパネルが液晶ディスプレイパネルである、請求項9に記載のディスプレイ装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−44368(P2010−44368A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−144890(P2009−144890)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(508330870)エスケーシー・ハース・ディスプレイ・フィルムズ・カンパニー,リミテッド (31)
【Fターム(参考)】