説明

光検出装置および光検出方法、並びに、顕微鏡および内視鏡

【課題】所望の被検出光を高感度かつ高SN比でヘテロダイン検出できる光検出装置および光検出方法、並びに、顕微鏡および内視鏡を提供する。
【解決手段】被検出光と時間的に干渉状態が安定しない局発光を発生する局発光発生手段10と、光電変換して前記局発光と前記被検出光とのビート信号を生成する光電変換手段20とを有し、光電変換手段20の出力に基づいて被検出光をヘテロダイン検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置および光検出方法、並びに、顕微鏡および内視鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体観察、センサ、セキュリティ、レーザレーダ等の光を利用する様々なシステムにおいて、所望の信号光(被検出光)を検出する技術はその性能を大きく左右する基本的かつ重要な要素になっている。特に、高速かつ高感度な検出技術に対するニーズは高い。
【0003】
例えば、生体観察をみると、生体の状態や形状は時々刻々と変化するため、正確な観察を行うためには、高速に光検出を行う必要がある。また、光照射によって生体は損傷を受け易いため、生体試料に照射できる照明光や励起光の光量には上限がある。そのため、生体から得られる光信号は通常微弱になってしまう。これらの理由により、光を用いた生体観察においては、高速かつ高感度な光検出技術が強く求められている。
【0004】
現在用いられている代表的な光検出素子には、PMT(Photo Multiplier Tube)、APD(Avalanche Photo Diode)、PD(Photo Diode)がある。PMTおよびAPDは、検出素子内にて電子増倍を行うので、高感度な光検出を実現できる。一方、PDは、非常に高速な応答速度を実現できるものの、検出素子内に電子増倍機能を持たないため、通常は、電気増幅器を用いて信号の増幅を行っている。つまり、PMT,APD,PDは、いずれの素子も電気的に信号増幅を行い、感度の向上を図っている。
【0005】
また、代表的な二次元光検出器として、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、EM−CCD(Electron Multiplying-CCD)、EB−CCD(Electron Bombardment-CCD)、I−CCD(Intensified-CCD)がある。CCDもしくはCMOSを用いて微弱光を検出する場合は、感度向上のために、PDの場合と同様に、後段に電気増幅器を配置する必要がある。EM−CCDおよびEB−CCDは、APDの場合と同様に、検出素子内に電子増倍機能を持ち、高感度化を実現している。I−CCDは、CCDの前にI.I.(Image Intensifier)を配置した構成をとる。I.I.は、入射光信号を一旦電気信号に変換し、I.I.に内蔵されているMCP(Micro Channel Plate)内にて電子増倍を行った後、増倍された電子を蛍光板に衝突させることで、増倍電子信号を再度光に変換するものである。I.I.からの出力光は、CCDにて電気信号に変換される。つまり、I−CCDも、電気段にて信号増幅を行うことで高感度な光検出を実現している。
【0006】
上記のような光検出器を用い、光強度を電流に変換する光検出法が広く用いられている。この光検出法は直接検出法と呼ばれる。この直接検出法においては、熱雑音、電子増倍雑音もしくは過剰雑音が支配的な雑音要因になる。これらの雑音は、光の量子性に起因するショット雑音よりも大きいため、直接検出法では究極的な高感度光検出が非常に困難な状況にある。
【0007】
高速高感度な光検出を可能にする技術の一つとして、光ヘテロダイン検出技術も広く用いられている。従来の光ヘテロダイン検出技術は、被検出光と、被検出光の光周波数よりも若干光周波数が異なる局発光(local oscillation)との干渉効果を利用する光検出方法で、局発光強度を十分高くすることで被検出光を高感度に検出するというものである。局発光が十分高強度である場合、高速な電子回路を用いてもショット雑音限界の理想的な光検出が可能であるため、光検出の高速性と高感度性との両立が実現される。ただし、この際、信号光と局発光には、時間的にも空間的にもお互いの干渉状態が安定するような光が通常用いられる。
【0008】
時間的に干渉状態を安定化する方法として、次に述べる二つの方法が主に用いられる。一つ目の方法は、同一光源からの出力を分波してそれぞれを信号光および局発光として用いる方法である。この際、同一光源出力を分波しているので、信号光および局発光を合波するまでの相対遅延時間が、光源のコヒーレンス時間より短くなるように用いられる。こうすることで、信号光と局発光との干渉状態が時間的に安定する。なお、信号光と局発光との光周波数は、光周波数シフタなどを利用して若干異なるように設定される。この方法は、比較的簡便に安定な干渉状態を実現できるので、古くから用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
二つ目の方法は、光スペクトル線幅が非常に狭く(光スペクトル純度が非常に高く)、かつ、発振光周波数が高精度に安定化された、互いに独立した二つの光源を用いる方法である。ここで光スペクトル線幅は、光電変換部分を含む電気回路部分の動作帯域よりも狭いものとする。この二つの独立した光源をそれぞれ信号光もしくは局発光として用いる。この際、信号光と局発光との発振光周波数は若干異なるように設定される。この方法は、技術的制約により従来は実現が非常に困難だった。しかしながら、近年の技術進展により、光スペクトル線幅がkHz程度と非常に光スペクトル純度が高く、かつ、発振光周波数が高精度に安定化されたレーザが入手可能になったため、最近では二つ目の方法を用いても比較的安定した干渉状態が得られるようになってきている。
【0010】
一方、空間的に干渉状態を安定化するためには、信号光と局発光にはそれぞれ空間コヒーレンスの高い光を用い、かつそれぞれの空間モード分布を一致させる必要がある。そのために、信号光側に共焦点光学系や光ファイバなどの空間モードフィルタが用いられる。こうすることで、局発光と空間的な干渉状態を安定に保つ信号光成分だけを抽出することができる。その結果、空間的に干渉状態を安定化することができる。
【0011】
【特許文献1】特許第2890309号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、生体観察、センサ、セキュリティ、レーザレーダ等で検出される信号光は、レーザ光のような時間的コヒーレンスの高いものではなく、ランプ光や蛍光などの時間的コヒーレンスが低い、つまり光スペクトル線幅が広いものである場合が非常に多い。また、分光計測などでレーザ光が用いられる場合でも、特に散乱媒質を計測する場合は、スペックルの影響を避けるために、意図的に光スペクトル線幅を広げる工夫がなされる。つまり、分光計測などでは、光周波数の確度をある程度確保すると同時に、スペックルの影響を避けることができる光スペクトル線幅のレーザ光が用いられる。
【0013】
このため、上述のような従来の方法に則ると、このような時間的コヒーレンスの低い信号光をヘテロダイン検出するためには、信号光と局発光の発生源を同一とし、かつ信号光と局発光の相対遅延時間が、それらのコヒーレンス時間よりも短い状況で検出を行う必要がある。
【0014】
例えば、中心光周波数が600THz(波長500nm)で、光スペクトル線幅が120 THz(波長幅約100nm)の光の場合、コヒーレンス時間は、約1.0×10-14秒(真空中の空間距離で約3.0×10-6mに対応)となり、信号光と局発光との間の許容される遅延時間は非常に短い。
【0015】
また、例えば、中心光周波数600THz、光スペクトル線幅120GHz(波長幅約100pm)の意図的に線幅が広げられたレーザ光の場合を考えても、コヒーレンス時間は約1.0×10-11秒(真空中の空間距離で約3.0×10-3mに対応)となり、やはり許容される相対遅延時間は短い。
【0016】
このように、許容される相対遅延時間が短い状況では、時間的および距離的許容度が小さいため、ヘテロダイン検出の用途が非常に厳しく限定されてしまう。
【0017】
また、信号光(被検出光)が蛍光などのように試料中で新たに発生した時間的に低コヒーレンス光である場合は、高感度光ヘテロダイン検出に適した局発光を準備することができない。
【0018】
上述の理由から、時間的に低コヒーレントな光信号をヘテロダイン検出した場合、安定的な干渉状態を保つことができず、高速かつ高感度な光検出の実現が困難な状況にある。
【0019】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、所望の被検出光を高感度かつ高SN(Signal to Noise)比でヘテロダイン検出できる光検出装置および光検出方法、並びに、顕微鏡および内視鏡を提供することにある。
【0020】
また、本発明の他の目的は、広い波長帯域を有する被検出光であっても、高感度かつ高SN(Signal to Noise)比でヘテロダイン検出できる光検出装置および光検出方法、並びに、顕微鏡および内視鏡を提供することにある。
【0021】
さらに、本発明の他の目的は、信号光と局発光とが時間的ないし空間的に互いの干渉状態が安定しないような光であっても、高感度かつ高SN(Signal to Noise)比でヘテロダイン検出できる光検出装置および光検出方法、並びに、顕微鏡および内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成する第1の観点に係る光検出装置の発明は、被検出光と時間的に干渉状態が安定しない局発光を発生する局発光発生手段と、光電変換して前記局発光と前記被検出光とのビート信号を生成する光電変換手段とを有し、前記光電変換手段の出力に基づいて前記被検出光をヘテロダイン検出することを特徴とするものである。
【0023】
ここで、上述の「被検出光と時間的に干渉状態が安定しない局発光」の意味を説明する。ここでは、局発光が被検出光と同一光源から生成されている場合と、局発光と被検出光がそれぞれ独立した光源から生成されている場合の二つの場合に分けて説明を行う。
【0024】
まず、局発光が被検出光と同一光源から生成されている場合を説明する。この場合は、同一光源からの出力を分波してそれぞれの光を試料などに照射される光および局発光として用いる。試料などで反射、透過、散乱、屈折、回折などによって生成された光を被検出信号光とし、この被検出光と局発光を再合波してヘテロダイン検出する。この際に、光源から光が分波されて再合波されるまでの相対遅延時間が、光源のコヒーレンス時間τcよりも長い状況下の局発光を、「被検出光と時間的に干渉状態が安定しない」局発光としている。ここでコヒーレンス時間τcとは(1)式で定義される時間とする。
【数1】

ここでcは光の速度、λ0は光源にて生成される光の中心波長、Δλは光源にて生成される光の光スペクトルの波長線幅を表す。
【0025】
次に、局発光と被検出光がそれぞれ独立した光源から生成されている場合を説明する。この場合は、ヘテロダイン検出の際に、その光スペクトル線幅が、光電変換部分を含む電気回路部分の動作帯域よりも広い局発光を「被検出光と時間的に干渉状態が安定しない」局発光としている。ここでは波長ドリフトなども光スペクトル線幅に含まれるものとする。
【0026】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る光検出装置において、前記光電変換手段が、バランスド検出を行うことを特徴とするものである。
【0027】
第3の観点に係る発明は、第1もしくは2の観点に係る光検出装置において、前記局発光発生手段が、複数台の光発生源からなる、ことを特徴とするものである。
【0028】
第4の観点に係る発明は、第1もしくは2の観点に係る光検出装置において、前記局発光発生手段が、所定の光周波数成分を選択する光フィルタ手段を有する、ことを特徴とするものである。
【0029】
第5の観点に係る発明は、第1もしくは2の観点に係る光検出装置において、前記局発光発生手段が、光スペクトルを所望の形状に整形する光スペクトル整形手段を有する、ことを特徴とするものである。
【0030】
第6の観点に係る発明は、第1もしくは2の観点に係る光検出装置において、前記局発光発生手段が、蛍光発生手段を有する、ことを特徴とするものである。
【0031】
第7の観点に係る発明は、第1もしくは2の観点に係る光検出装置において、前記光電変換手段の前段に、所望の空間分布の光のみを選択する空間光フィルタ手段を有する、ことを特徴とするものである。
【0032】
第8の観点に係る発明は、第1もしくは2の観点に係る光検出装置において、前記光電変換手段の前段に、空間的光強度分布を均一化する空間光ホモジナイザ手段を有する、ことを特徴とするものである。
【0033】
第9の観点に係る発明は、第1〜8のいずれかの観点に係る光検出装置において、前記光電変換手段の出力の包絡線を検出する包絡線検波手段を、さらに有する、ことを特徴とするものである。
【0034】
第10の観点に係る発明は、第1の観点に係る光検出装置において、前記被検出光と前記局発光が同一光源の出力を分岐して用いられ、かつ前記光電変換手段入射時における前記被検出光と前記局発光の相対遅延時間がコヒーレンス時間以内ではないことを特徴とするものである。
【0035】
第11の観点に係る発明は、第1の観点に係る光検出装置において、前記局発光の光スペクトル線幅が、前記光電変換手段以降の信号処理帯域よりも広いことを特徴とするものである。
【0036】
さらに、上記目的を達成する第12の観点に係る光検出方法の発明は、検出系の動作周波数帯域よりも広い光スペクトル線幅を有し、かつ被検出光と時間的に干渉状態が安定しない局発光を発生する局発光発生ステップと、光電変換して前記局発光と前記被検出光とのビート信号を生成する光電変換ステップとを含み、前記光電変換ステップの出力に基づいて前記被検出光をヘテロダイン検出することを特徴とするものである。
【0037】
さらに、上記目的を達成する第13の観点に係る光検出方法の発明は、前記光電変換ステップにて、バランスド検出を行うことを特徴とするものである。
【0038】
さらに、上記目的を達成する第14の観点に係る顕微鏡の発明は、観察試料からの被検出光を検出する顕微鏡であって、第1〜11のいずれか一つの観点に係る光検出装置を有し、前記観察試料からの前記被検出光を前記光検出装置によりヘテロダイン検出するように構成したことを特徴とするものである。
【0039】
さらに、上記目的を達成する第15の観点に係る内視鏡の発明は、体腔内からの被検出光を検出して、前記体腔内を観察する内視鏡であって、第1〜11のいずれか一つの観点に係る光検出装置を有し、前記体腔内からの前記被検出光を前記光検出装置によりヘテロダイン検出するように構成したことを特徴とするものである。
【0040】
さらに、上記目的を達成する第16の観点に係る内視鏡の発明は、体腔内からの被検出光を検出して、前記体腔内を観察する内視鏡であって、照射光を生成する光生成手段と、前期照射光を試料上で走査させる走査手段と、前記試料から透過、反射、散乱、屈折もしくは回折された光を伝送する光伝送光学系と、第1〜11のいずれか一つの観点に係る光検出装置を備え、前記体腔内からの前記被検出光を前記光検出装置によりヘテロダイン検出するように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る光検出装置や光検出方法によれば、被検出光と時間的に干渉状態が安定しない局発光と被検出光とから複数のビート信号を生成し、それらを加算して、被検出光をヘテロダイン検出するので、例えば、生体等の散乱体で被検出光が散乱されてしまう、もしくは吸収などの影響で被検出光が著しく減少してしまうような被検体であっても、所望の被検出光を高感度かつ高SN比で検出することが可能となる。また、散乱体に限らず、検出対象の深部ないし遠方に存在する被検物質や、他の光吸収物質が介在するような環境下に存在する被検物質からの被検出光に対しても、高感度かつ高SN比で検出することが可能となる。
【0042】
また、本発明に係る光検出装置や光検出方法によれば、試料に照射される光と局発光が同一光源から生成される場合においては、従来とは異なり、被検出信号光と局発光の間の相対遅延時間が光源のコヒーレンス時間τcより短い必要が無いため、光検出の相対遅延時間の調整から開放される。また、被検出光と局発光が別光源から生成される場合においては、局発光の光スペクトルが広くても問題にならないため、従来のヘテロダイン検出法と比較して、局発光に求められる条件は大幅に緩和される。つまり、局発光用光源にLED(Light Emitting Diode)やSLD(Super Luminescent Diode)などの安価な光源を用いることができる。これらの効果は、産業上の意義が極めて高い。
【0043】
また、本発明に係る顕微鏡によれば、上記の光検出装置により、観察試料からの被検出光と、被検出光と時間的に干渉状態が安定しない局発光とのビート信号を検出するので、観察試料を高感度かつ高SN比で観察することが可能となる。
【0044】
また、本発明に係る内視鏡によれば、体腔内からの被検出光を、上記の光検出装置により、被検出光と時間的に干渉状態が安定しない局発光とのビート信号を検出するので、体腔内を高感度かつ高SN比で観察することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る光検出装置の基本的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2実施の形態に係る光検出装置の基本的構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した光検出装置の動作を説明する模式図である。
【図4】図2に示した光検出装置の動作を説明する模式図である。
【図5】本発明の第3実施の形態に係る光検出装置の要部の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第4実施の形態に係る光検出装置の要部の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第5実施の形態に係る光検出装置の要部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第6実施の形態に係る光検出装置の要部の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第7実施の形態に係る内視鏡の要部の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第8実施の形態に係る光検出装置の要部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0046】
10 局発光発生手段
11 SLD
12 BPF
13 蛍光板
14 スペクトル整形フィルタ
15 LEDユニット
16 局発用LED
17 ホモジナイザ
18 LED(A)
19 LED(B)
20 光電変換手段
21 光電変換手段(A)
22 光電変換手段(B)
23 DBD
24 CCD(A)
25 CCD(B)
26 DBD
30 光合分波手段
31 光ファイバカプラ
32 ハーフミラー
33 ミラー
34 ミラー
40 減算手段
51 LD
52 光ファイバ
53 レンズ
54 レンズ
55 可動台
56 SMF
57 ADC
58 コンピュータ
59 モニタ
60 制御部
61 照明用光源
62 レンズ
63 LGF
64 内視鏡ハウジング
65 レンズ光学系
66 ビームスプリッタ
67 レンズ光学系
68 レンズ光学系
69 増幅器
70 増幅器
71 制御部
72 蛍光励起用光源
73 制御部
74 信号光源ユニット
75 光ファイバ
76 光ファイバ型分波器
77 多芯光ファイバ
77A 照明用コア
77B 受光用コア
77C クラッド
78 駆動機構
79 レンズ光学系
80 多モード光ファイバ
81 制御部
82 カプセル型筐体
83 照明用LED
84 集光レンズ光学系
85 信号処理部
86 信号送信部
87 レーザ走査型蛍光顕微鏡
88 Arレーザ
89 光強度調整器
90 X−Yガルバノミラー
91 瞳投影レンズ
92 結像レンズ
93 ダイクロイックミラー
94 対物レンズ
95 レンズ
96 ピンホール
97 レンズ
98 ダイクロイックミラー
100 生体組織
101 生細胞試料
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0048】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る光検出装置の基本的構成を示すブロック図である。この光検出装置は、被検出光と時間的に干渉状態が安定しない局発光を発生する局発光発生手段10を用い、この局発光発生手段10からの局発光と被検出光を光電変換手段20にて電気信号に変換する。光電変換手段20からは、局発光と被検出光による複数のビート信号が加算された信号が得られ、入力信号光をヘテロダイン検出するものである。
【0049】
局発光発生手段10は、例えば、LED、SLD、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)などの自然放出光や蛍光などを発するものを用いて構成する。この局発光発生手段10は、被検出光と別光源で構成可能である。また局発光発生手段10は、以下に述べるように照明光の一部を用いることでも構成可能である。照明光が対象にて透過、反射及び散乱されてきた光を被検出光として用いる場合、局発光として用いられる照明光の一部と被検出光との間に照明光のコヒーレンス時間よりも長い相対遅延を挿入して検出することが可能である。光電変換手段20は、例えば、PMT、APD、PD、CCD、CMOS、EM−CCDやEB−CCDなどを用いて構成する。光電変換手段20に被検出光と局発光を入射する際には、光電変換手段20の直前にビームスプリッタや光ファイバカップラなどの光学素子を配置して被検出光と局発光を合波した後に光電変換手段20に入射してビート信号を得ても良いし、光電変換手段20の受光面に被検出光と局発光が共に入射するように構成することもできる。
【0050】
被検出光である信号光は、光電変換手段20から出力される電気信号のうち、特に、振幅情報や強度情報を用いて検出する。これらの情報は、包絡線検波や二乗検波などにより取得する。光電変換手段20の後段に直流成分を除去するフィルタ手段を付加しても良い。また、局発光の強度を調整することでビート信号の強度を調整することができる。
【0051】
(第2実施の形態)
図2は、バランスド検出構成を示す。信号光は光合分波手段30にて二分岐され、分岐された一方の光は光電変換手段(A)21、他方の光は光電変換手段(B)22に入射される。光合分波手段には例えば、ビームスプリッタや光ファイバカプラなどを用いることができる。また、局発光発生手段10より発せられた局発光も光合分波手段30にて二分岐され、一方の光は光電変換手段(A)21、他方の光は光電変換手段(B)22に入射される。光電変換手段(A)21及び光電変換手段(B)22より出力される電気信号は、減算手段40に入力される。この減算手段40には例えばアナログ差動増幅回路、ディジタル差動増幅回路、ソフトウェアによる信号処理などを用いることができる。光電変換手段(A)21及び光電変換手段(B)22では、信号光同士のビート信号(以下、信号光―信号光ビート信号)、局発光同士のビート信号(以下、局発光―局発光ビート信号)、そして信号光と局発光のビート信号(以下、信号光―局発光ビート信号)がそれぞれ検出される。信号光−信号光ビート信号と局発光−局発光ビート信号については、光電変換手段(A)21及び光電変換手段(B)22にて同相なビート信号が検出されるため、減算手段40にて相殺される。一方、信号光―局発光ビート信号は、光電変換手段(A)21にて出力されるものと、光電変換手段(B)22にて出力されるものとは、逆相になっているため、減算手段40にて足しあわされる。つまり、図2のようなバランスド検出構成を用いることで、光検出時の背景信号となる信号光−信号光ビート信号及び局発光―局発光ビート信号を除去することができ、高いSN比を持った光検出が可能になる。さらに、図2のバランスド検出構成を用いることで局発光自身が持つ相対強度雑音(Relative Intensity Noise:RIN)を低減することも可能になる。
【0052】
図3は図2に示した光検出装置の動作を周波数軸上にて説明する模式図である。図3(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれ信号光の光スペクトル、信号光と局発光が重なった際の光スペクトル、局発光の光スペクトル、光電変換後の電気スペクトルを示す。ここで局発光の光スペクトル線幅をΔfLO、光電変換手段20以降の電気回路の動作帯域をBとする。図3ではΔfLOが信号光の光スペクトル幅よりも広く、ΔfLOがBよりも広い例を示している。また、局発光の光スペクトルは信号光の光スペクトルと光周波数軸上に重なりを持ち、信号光よりも局発光の方が十分高強度であるものとしている。
【0053】
図3の例では、信号光も局発光も複数の光周波数成分を有しているため、あらゆる光周波数の組み合わせによる信号光―局発光ビート信号が電気回路の動作帯域B内にて検出される。異なる光周波数の組み合わせによる同一の信号光―局発光ビート信号も多数検出されるが、それらの信号光−局発光ビート信号はお互いに無相関であるため、インコヒーレントに加算される。
【0054】
一方、図4は図2に示した光検出装置の動作を時間軸上にて説明する模式図である。図4(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれ信号光電界の時間波形、信号光電界と局発光電界が重なった際の時間波形、局発光電界の時間波形、光電変換後の時間波形を示す。図3の例と同様に、ΔfLOはBよりも広く、局発光の光スペクトルは信号光の光スペクトルと光周波数軸上に重なりを持ち、局発光は信号光よりも十分高強度であるものとしている。信号光電界と局発光電界が時間的及び空間的に重なった場合に、図4(D)のような信号が得られる。信号光と局発光がお互いに無相関であるため、図4(D)に例示するように検出される信号の時間波形は雑音状になる。この雑音状の信号の検出に、包絡線検波や二乗検波を用いても良い。
【0055】
(第3実施の形態)
図5は、本発明の第3実施の形態に係る生体内部観察装置の要部の構成を示すブロック図である。この生体内部観察装置には、照明用光源として中心波長940nmで発光する半導体レーザ(Laser diode:LD)51を有するものを用いた。LD51から出射された光を光ファイバ52に結合し、レンズ53を経由して生体組織100へ照射した。そして、生体組織100を透過した光を被検出信号光とした。生体組織100を透過した光をレンズ54によって集光し、単一モード光ファイバ(Single Mode Fiber:SMF)56に入力した。レンズ54は可動台55上に保持されているものを用いた。ここで可動台55は、生体組織100表面に平行な面上を移動できるよう設定されているものを用いた。SMF56からの出力光を、2入力2出力のポートを有する光ファイバカプラ31の入力ポートの一つに接続した。光ファイバカプラ31のもう一方の入力ポートに、局発光を入力した。局発光の発生源として波長940nm帯のSLD11を用いた。SLD11の後段には、中心波長940nm、透過帯域幅2nmのバンドパスフィルタ(Band−pass filter:BPF)12を配置し、BPF12から出力された光を局発光として用いた。この際、局発光波長帯域内に被検出信号光波長が含まれるようにBPF12の透過中心波長を調整した。光ファイバカプラ31の2つの出力ポートをデュアルバランスドディテクタ(Dual balanced detector:DBD)23に接続した。ここでDBD23は、光電変換手段(A)21、光電変換手段(B)22としてのInGaAsフォトダイオード2つと演算手段40としてのアナログ差動増幅電子回路にて構成され、動作帯域が200MHzのものを用いた。DBD23の出力を16ビットのアナログ−ディジタル変換器(Analog−to−digital converter:ADC)57に入力し、アナログの入力信号をディジタル信号に変換した。そしてADC57からのディジタル信号出力をコンピュータ58に入力した。コンピュータ58では、ADC57からの入力信号の包絡線が計算され、さらにその包絡線波形に対するある一定時間の積算値が計算される。コンピュータ58からの信号に応じて制御部60は、SLD11の強度と可動台55の位置を制御する。可動台55は一定時間Tの間、同じ位置に留まるものとし、コンピュータ58では、可動台55の位置に対する、包絡線波形の積算値を記憶し、二次元画像としてモニタ59上に表示された。
【0056】
こうすることで光を強く散乱する生体の内部を高速かつ高SN比で観察することができた。
【0057】
(第4実施の形態)
図6は、本発明の第4実施の形態に係る内視鏡の要部の構成を示すブロック図である。この内視鏡は、体腔内を観察するもので、被検出光の検出系として図2に示した光検出装置の構成を有するものである。図6において、照明用光源61はXeランプを含み、コンピュータ58に制御された制御部71によって駆動した。照明用光源61から発せられた光を、レンズ62を経由してライトガイドファイバ(Light guide fiber:LGF)63に入力した。
【0058】
LGF63は内視鏡ハウジング64内を通るように配置される。LGF63中を伝搬した光を内視鏡ハウジング64内に設置されたレンズ光学系65を経由して空間に射出した。この射出された光は同じく内視鏡ハウジング64内に設置されるビームスプリッタ66にて2分岐され、一方はレンズ光学系67を経由して生体組織100へ照射され、他方はハーフミラー32へ入力される。ハーフミラー32へ入力される光を、光検出時の局発光として使用した。生体組織100からの反射光もしくは散乱光をレンズ光学系68によって集光し、被検出信号光として用いた。この時、光路(ビームスプリッタ66−レンズ光学系67−生体組織100−レンズ光学系68−ハーフミラー32)と光路(ビームスプリッタ66−ハーフミラー32)との光路長差は、照明用光源61のコヒーレンス長よりも長くなるように設定した。
【0059】
ハーフミラー32は図5中の光ファイバカプラ31と同様の働き、つまり2入力2出力の光合分波器の役割を果たす。ハーフミラー32には、局発光としてのビームスプリッタ66からの光入力と、被検出信号光としてのレンズ光学系68からの光入力があり、ハーフミラー32からの2つの出力はそれぞれ光電変換手段(A)21としてのCCD(A)24及び光電変換手段(B)22としてのCCD(B)25に入力され、アナログ電気信号に変換される。CCD(A)24及びCCD(B)25からの出力信号はそれぞれ増幅器69及び増幅器70にて増幅され、2入力のADC57にてそれぞれディジタル信号に変換される。
【0060】
ADC57からの出力信号をコンピュータ58に入力し、コンピュータ58では、CCD(A)24とCCD(B)25からの出力を減算する信号処理と、減算後に包絡線を計算し、ある一定時間積算を行う信号処理が施される。この減算信号処理、包絡線計算、積算処理が図2中の減算手段40に対応する。
【0061】
こうすることで、照明光強度を低く抑えつつ、明るい内視鏡画像を得ることができるようになった。照明光強度が高くなることに起因する内視鏡先端部の発熱を抑えつつ、明るい画像を得ることができるため、患者に対してより安全性の高い内視鏡画像を提供することができるようになる。さらに本実施の形態においては、局発光用の光源が不要であるため、構成が簡素になるという利点も併せ持っている。
【0062】
また、図6照明用光源61中のXeランプの後段に青色、緑色そして赤色を透過する波長帯域フィルタを配置することで、狭帯域光観察(Narrow band imaging:NBI)を行うことも可能である。従来のNBIでは、波長帯域フィルタの利用による画像明るさの低下が避けられないが、図6に示す第4実施の形態によれば、画像明るさを犠牲にすることなくNBIを行うことが可能になる。
【0063】
なお、この第4の実施形態では、二次元光検出器として、CCDを用いた例を説明したが、CMOS、EM−CCD、EB−CCD、I−CCDのような他の二次元光検出器を撮像用として使用してもよい。
【0064】
(第5実施の形態)
図7は、本発明の第5実施の形態に係る蛍光内視鏡の要部の構成を示すブロック図である。この蛍光内視鏡は、体腔内を観察するもので、被検出光の検出系として図2に示した光検出装置の構成を有するものである。図7は図6の構成と類似しているが、図7では、蛍光励起用光源72はXeランプと波長450nm帯の光のみを透過させる波長帯域フィルタを含み、コンピュータ58に制御された制御部73によって駆動する。また、ビームスプリッタ66とハーフミラー32との間に蛍光板13と光スペクトル整形フィルタ14を配置し、レンズ光学系68とハーフミラー32との間に励起光除去フィルタ26を配置した点が図6とは異なる。その他の構成は、図6と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0065】
蛍光板13には、蛍光励起用光源72を励起光とした場合に、生体組織からの蛍光と同じ波長帯、例えば波長530nm帯の蛍光を発するものを用いた。そして、光スペクトル整形フィルタ14には、蛍光励起用光源72からの励起光を除去すると同時に、蛍光板から発せられる光スペクトルの形状を整形するものを用いた。
【0066】
励起光除去フィルタ26には、蛍光励起用光源72から発せられた光を除去すると同時に、生体組織100から発せられる興味ある波長の光のみ、例えば波長530nm帯の光を透過させるものを用いた。
【0067】
このような構成を用いることで、生体から発せられる微弱な蛍光も明るく検出することが可能になる。本実施の形態においては、光スペクトル整形フィルタ14が用いられているが、このように局発光の光スペクトル形状を調整することで、光検出における波長依存性を調整することが可能になる。また、蛍光板13を変更することで、局発光の中心波長や波長帯域を調整することが可能である。例えば、蛍光励起用光源72から発せられる光の波長帯域が狭帯域であっても、広い発光波長帯域を有する蛍光板13を用いることで、広い波長帯域に対応した局発光を生成することが可能になる。また、特定の波長帯の光のみを検出したい場合には、狭い発光波長帯域を有する蛍光板13を用いることが有効である。
【0068】
(第6実施の形態)
図8(A)は、本発明の第6実施の形態に係る光ファイバスキャン型内視鏡の要部の構成を示すブロック図である。この内視鏡は、体腔内を観察するもので、被検出光の検出系として図2に示した光検出装置の構成を有するものである。
【0069】
信号光源ユニット74は、発振波長480nmのLD、発振波長532nmのDiode pumped solid state(DPSS)レーザ、633nmのLDが含まれているものを用い、各レーザからの出力をダイクロイックミラーにて合波し、信号光源ユニット74から出力される。信号光源ユニット74から出力される光の波長や強度は制御器81にて制御される。
【0070】
信号光源ユニット74からの出力光を光ファイバ75に入力した。光ファイバ75は、光ファイバ型分波器76を経由して多芯光ファイバ77に接続した。多芯光ファイバ77の断面形状を図8(B)に示す。多芯光ファイバ77は、1つの照明用コア77A、複数の受光用コア77B、クラッド77Cにて構成されている。光ファイバ型分波器76は、光ファイバ75を伝搬する光を多芯光ファイバ77の照明用コア77Aへ結合し、多芯光ファイバ77中の複数の受光用コア77Bを伝搬する光を多モード光ファイバ80へ結合する。
【0071】
信号光源ユニット74から出力される光を光ファイバ75中を伝搬させ、光ファイバ型分波器76によって多芯光ファイバ77の照明用コア77Aに結合される。多芯光ファイバ77の先端部は駆動機構78に保持されているものを用いた。駆動機構78はピエゾ素子などで構成され、制御部81からの信号に応じて多芯光ファイバ77の先端部から射出される光の方向を制御するように駆動される。多芯光ファイバ77の照明用コア77Aから射出された光を、Gradient refractive index(GRIN)レンズなどのレンズ光学系79を経由して、生体組織100へ照射した。
【0072】
生体組織100にて反射や散乱された光を、レンズ光学系79を経由して複数の多芯光ファイバ77の受光用コア77Bに結合した。多芯光ファイバ77の受光用ファイバのコア77Bを伝搬する生体組織100からの反射・散乱光を被検出信号光として用いた。多芯光ファイバ77の受光用コア77Bを伝搬する被検出信号光は、光ファイバ型分波器76によって多モード光ファイバ80に結合される。
【0073】
LEDユニット15から出力される光を局発光として用いた。LEDユニット15には波長480nm帯、532nm帯、633nm帯のLEDが含まれており、それぞれのLEDからの出力光はダイクロイックミラーで合波した。LEDユニット15から出力される光の波長や強度は制御器81にて制御される。
【0074】
多モード光ファイバ80から出力される被検出光とLEDユニット15から出力される局発光を、ハーフミラー32にて第4の実施形態と同様に合分波した。ハーフミラー32にて合分波された光をそれぞれミラー33もしくはミラー34を経由してDBD26に入力した。DBD26は、光電変換手段(A)21、光電変換手段(B)22としてのSiフォトダイオード2つと演算手段40としてのアナログ差動増幅電子回路にて構成され、動作帯域200MHzのものを用いた。ADC57、コンピュータ58、モニタ59の動作は図5と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0075】
本実施形態は、波長の異なる複数台の局発光用光源を用いているため、様々な波長帯の光を検出するのに有利な構成になっている。また、本実施形態のように波長の異なる複数台の局発光用光源を用いることで、被検出光の波長帯域が広い場合にも高感度な検出が可能になる。
【0076】
(第7実施の形態)
図9は、本発明の第7実施の形態に係るカプセル型内視鏡の要部の構成を示すブロック図である。この内視鏡は、体腔内を観察するもので、被検出光の検出系として図2に示した光検出装置の構成を有するものである。
【0077】
照明用LED83、集光レンズ光学系84、ハーフミラー32、CCD(A)24、CCD(B)25、局発用LED16、ホモジナイザ17、信号処理部85そして信号送信部86がカプセル型筐体82中に納まった構成になっている。
【0078】
照明用LED83は白色の光を発するものを用いる。照明用LED83からの出力光はカプセル型筐体82外の生体組織100へ照射される。生体組織100にて反射もしくは散乱された照明光を、カプセル型筐体82中の集光レンズ光学系84を用いて集光し、これを被検出信号光とした。
【0079】
局発光光源としては、白色の光を発する局発用LED16を用いた。局発用LED16から射出された光をホモジナイザ17に入力した。ホモジナイザ17からは局発用LED16の空間パターンが均一化されて出力される。ホモジナイザ17から出力された光を局発光として用いる。
【0080】
集光レンズ光学系84にて集光された被検出信号光とホモジナイザ17から出力された局発光は、ハーフミラー32に入力される。ハーフミラー32、CCD(A)24、CCD(B)25の動作は図6に示す第4の実施形態の場合と同様であるため、説明を省略する。
【0081】
CCD(A)24及びCCD(B)25からのアナログ出力信号を信号処理部85に入力し、ディジタル信号に変換する。その後の信号処理部85内にて包絡線検波演算を施し、信号処理部85からディジタル信号が出力される。次に信号処理部85の出力は、信号送信部86に入力される。信号送信部86は、入力されたディジタル信号を無線伝送にてカプセル型筐体82外に情報を送信する。
【0082】
本実施形態では、局発用LED16の後段にホモジナイザ17を用いている。通常LEDの空間出力パターンは非常に不均一なため、ヘテロダイン検出感度の空間位置依存性が生じてしまう。つまり、画像ムラが生じてしまう。そのため局発用LED16の後段に配置されたホモジナイザ17によって局発光の空間出力パターンを均一化することで、ヘテロダイン検出感度の空間位置依存性を均一化している。
【0083】
なお、この第7の実施形態では、二次元光検出器として、CCDを用いた例を説明したが、CMOS、EM−CCD、EB−CCD、I−CCDのような他の二次元光検出器を撮像用として使用してもよい。
【0084】
(第8実施の形態)
図10は、本発明の第8実施の形態に係るレーザ走査型蛍光顕微鏡の要部の構成を示すブロック図である。このレーザ走査型蛍光顕微鏡87は、励起光源として波長488nmで連続発振するArレーザ88を有する。図10において、Arレーザ88から出射されたレーザ光を、例えば音響光学変調器(Acousto―optic modulator:AOM)等の光強度調整器89により光強度を調整して、X−Yガルバノミラー90、瞳投影レンズ91、結像レンズ92、ダイクロイックミラー93および対物レンズ94を経て、検査対象である生細胞試料101に集光して照射した。したがって、このレーザ走査型蛍光顕微鏡では、光強度調整器89、X−Yガルバノミラー90、瞳投影レンズ91、結像レンズ92、ダイクロイックミラー93および対物レンズ94は、励起光源からの励起光を試料に照射する光照射手段を構成している。また、X−Yガルバノミラー90は、光走査手段を構成する。
【0085】
なお、生細胞試料101としては、蛍光色素で染色された検査対象物や、蛍光タンパクが発現している検査対象物を用いた。ここでは、蛍光タンパクEnhanced green fluorescence protein(eGFP)が発現している検査対象物質を用いるものとする。したがって、Arレーザ88からのレーザ光を、生細胞試料101に照射すると、eGFPが励起されて波長約500nm〜600nmの蛍光が発生した。
【0086】
生細胞試料101から発生した蛍光は、対物レンズ94を経てダイクロイックミラー93に導かれる。ダイクロイックミラー93は、波長488nmの光は透過させ、波長500nmより長波長の光は反射させるように構成した。これにより、生細胞試料101で発生した波長約500nm〜600nmの蛍光を、ダイクロイックミラー93で反射させた。
【0087】
ダイクロイックミラー93で反射された蛍光を、レンズ95で集光し、その集光点位置にピンホール96を配置した。ピンホール96を透過した蛍光はレンズ97で平行光となる。これを被検出信号光とし、ハーフミラー32へ入力した。
【0088】
局発光の光源としては、波長530nm帯で発光するLED(A)18と波長630nm帯で発光するLED(B)19からの出力光をダイクロイックミラー98で合波したものを用いた。ダイクロイックミラー98で合波された光はホモジナイザ17を経由してハーフミラー32へ入力されるよう構成した。
【0089】
ハーフミラー32、ミラー33、ミラー34、DBD26、ADC57、コンピュータ58は、図8に示す第6の実施形態と同様な役割を果たすため、同じ記号を付して説明を省略する。ただし、コンピュータ58は、レーザ走査型蛍光顕微鏡87の全体を制御することも加えて行うものとする。これにより、Arレーザ88からのレーザ光を、X−Yガルバノミラー90により偏向して、生細胞試料101を対物レンズ94の光軸と直交する平面内で2次元走査し、その各走査点においてADC57から得られる出力を処理して、モニタ59に蛍光画像を表示する。
【0090】
このように、本実施の形態に係るレーザ走査型蛍光顕微鏡は、Arレーザ88からのレーザ光の照射によって、生細胞試料101から発生する蛍光を、ヘテロダイン検出する。したがって、生細胞試料101から得られる信号光である蛍光が微弱でも、生細胞試料101に照射するレーザ光の強度を高めたり、受光積算時間を長くしたりすることなく、生細胞試料101を高感度かつ高SN比で蛍光観察することができるようになった。なお、局発光発生手段を構成するLEDは、2台に限らず、検出する入力信号光の波長帯域に応じて、3台以上とすることもできる。
【0091】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、被検出信号光は、試料からの反射光、散乱光、蛍光に限らず、透過光、燐光の場合も、本発明に係る光検出装置を有効に適用することができる。また、上述した実施形態では、生体組織や生細胞等の生物学的試料が散乱体である場合について説明したが、生物学的試料以外の散乱体中に存在する種々の被検物質に適用できる。また、散乱体中の被検物質以外であっても、検出対象の深部ないし遠方に存在する被検物質(レーダー探知対象、天体物質、海底、深海生物等)や、他の光吸収物質が介在するような環境下に存在する被検物質からの被検出光に対しても、高感度かつ高SN比で検出することが可能となる。
【0092】
また、本発明は、波長が180nm程度の紫外線から波長が50μm程度の赤外線までの光検出に適用でき、上記実施の形態で説明した可視光の検出に限らない。例えば、紫外線を検出する場合、局発光発生手段は、例えば、紫外線ランプ光を紫外線検出用の局発光として用いることができる。また、光合波手段は、例えば、多層膜型ミラーを用いて構成することができ、光電変換手段は、例えば、PMTを用いて構成することができる。
【0093】
また、赤外線を検出する場合、局発光発生手段は、例えば、赤外線ランプを用いることができる。また、光合波手段は、例えば、CsI基板型ビームスプリッタを用いて構成することができ、光電変換手段は、例えば、Ge:Znを用いた光導電素子を利用して構成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出光と時間的に干渉状態が安定しない局発光を発生する局発光発生手段と、
光電変換して前記局発光と前記被検出光とのビート信号を生成する光電変換手段とを有し、
前記光電変換手段の出力に基づいて前記被検出光をヘテロダイン検出することを特徴とする光検出装置。
【請求項2】
前記光電変換手段が、バランスド検出を行うことを特徴とする請求項1記載の光検出装置。
【請求項3】
前記局発光発生手段が、複数台の光発生源からなる、ことを特徴とする請求項1もしくは2に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記局発光発生手段が、所定の光周波数成分を選択する光フィルタ手段を有する、ことを特徴とする請求項1もしくは2に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記局発光発生手段が、光スペクトルを所望の形状に整形する光スペクトル整形手段を有する、ことを特徴とする請求項1もしくは2に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記局発光発生手段が、蛍光発生手段を有する、ことを特徴とする請求項1もしくは2に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記光電変換手段の前段に、所望の空間分布の光のみを選択する空間光フィルタ手段を有する、ことを特徴とする請求項1もしくは2に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記光電変換手段の前段に、空間的光強度分布を均一化する空間光ホモジナイザ手段を有する、ことを特徴とする請求項1もしくは2に記載の光検出装置。
【請求項9】
前記光電変換手段の出力の包絡線を検出する包絡線検波手段を、さらに有する、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項10】
前記被検出光と前記局発光が同一光源の出力を分岐して用いられ、かつ前記光電変換手段入射時における前記被検出光と前記局発光の相対遅延時間がコヒーレンス時間以内ではないことを特徴とする請求項1記載の光検出装置。
【請求項11】
前記局発光の光スペクトル線幅が、前記光電変換手段以降の信号処理帯域よりも広いことを特徴とする請求項1記載の光検出装置。
【請求項12】
検出系の動作周波数帯域よりも広い光スペクトル線幅を有し、かつ被検出光と時間的に干渉状態が安定しない局発光を発生する局発光発生ステップと、
光電変換して前記局発光と前記被検出光とのビート信号を生成する光電変換ステップとを含み、
前記光電変換ステップの出力に基づいて前記被検出光をヘテロダイン検出することを特徴とする光検出方法。
【請求項13】
前記光電変換ステップにて、バランスド検出を行うことを特徴とする請求項12記載の光検出方法。
【請求項14】
観察試料からの被検出光を検出する顕微鏡であって、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光検出装置を有し、
前記観察試料からの前記被検出光を前記光検出装置によりヘテロダイン検出するように構成したことを特徴とする顕微鏡。
【請求項15】
体腔内からの被検出光を検出して、前記体腔内を観察する内視鏡であって、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光検出装置を有し、
前記体腔内からの前記被検出光を前記光検出装置によりヘテロダイン検出するように構成したことを特徴とする内視鏡。
【請求項16】
体腔内からの被検出光を検出して、前記体腔内を観察する内視鏡であって、
照射光を生成する光生成手段と、
前期照射光を試料上で走査させる走査手段と、
前記試料から透過、反射、散乱、屈折もしくは回折された光を伝送する光伝送光学系と、
請求項1乃至11に記載の光検出装置を備え、
前記体腔内からの前記被検出光を前記光検出装置によりヘテロダイン検出するように構成したことを特徴とする内視鏡。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−117791(P2011−117791A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274358(P2009−274358)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】