説明

光検出装置および方法

【課題】光検出の装置および方法を提供する。
【解決手段】特に顕微鏡、分光計またはカメラ用の光検出装置は、複数の単一光子アバランシェダイオード(SPAD)のアレイで構成される少なくとも1つのシリコン光電子増倍管(SiPM)を含み、このアレイは面積が入射光より大きく、特定の最低強度の光が当たるSPADだけがアクティブ化され、および/または分析される。この装置を利用する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に顕微鏡、分光計またはカメラ用の光検出装置に関する。本発明はまた、好ましくはこの装置を用いて実行される、そのような方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の焦点は概して、たとえば顕微鏡、分光計またはカメラに利用される光検出に当てられている。特許請求される装置は、特定の用途に限定されない。これは、より広い意味において、光の検出器と理解されるものとする。
【0003】
光電子増倍管(PMT)は当業界では古くから知られており、これは電気信号を発生させ、増幅することによって微弱な光信号を単一光子まで検出することを目的とした特殊な電子管である。光電子増倍管は一般に、光電陰極と下流の二次的な電子増倍管からなり、これらは真空ガラスバルブの中に構成される。光電子増倍管は真空管であるため、サイズが比較的大きく、したがって小型化に向かない。
【0004】
アバランシェフォトダイオード(APD)もまた当業界で知られている高感度で高速の光ダイオードである。これらは、電荷キャリアを発生させる内部光電効果と、内部増幅のためのアバランシェ降伏(アバランシェ効果)を利用する。APDは、光電子増倍管に相当する半導体素子とみなされ、なかんずく、非常に低レベルの光出力の検出に使用され、そのカットオフ周波数はギガヘルツの範囲に及ぶ。
【0005】
光子計数に関しては、APDはガイガーモードで動作し、この意味において一般に単一光子アバランシェダイオード(SPAD)と呼ばれる。より最近ではシリコン光電子増倍管(SiPM)が開発されており、これは複数のSPADがアナログまたはデジタル式に複合されてより大きな検出領域を形成する。この点で、単に例として、特許文献1を参照する。
【0006】
検出システムを選択する際に考慮すべき重要な要素は一般に、できるだけ高い光子検出効率(PDE)、できるだけ低いダークノイズレベル(個々の受光素子の暗電流と一般に呼ばれるものに起因する)、そして検出器のできるだけ高い、あるいは最大の光子レート、すなわち高い動的応答である。
【0007】
光電子増倍管の設計は、Si技術を用いて作製される検出器よりコスト高である。さらに、光電子増倍管は一般に、たとえばアバランシェフォトダイオードより光子検出効率が低い。いずれのタイプの検出器においても、ダークノイズは、検出総面積、光電陰極材料の品質のほか、検出器の動作温度に大きく依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US 2010/0214654 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、所与の照明/光強度で高い画像品質、あるいはできるだけ高い信号対雑音比を実現しうる光検出装置およびそのような方法を提供することである。この装置は、できるだけ小さく、製造コストが安価なものとすることが意図される。また、相応に装備した顕微鏡、分光計およびカメラを提供することも意図される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による装置に関して、上記の目的は、特許請求の範囲の独立項1と4の特徴によって達成される。本発明による方法に関して、その目的は独立項16の特徴によって達成される。他の独立項13、14および15は、相応に装備した顕微鏡、分光計およびカメラを請求する。
【0011】
本発明によれば、特に顕微鏡、分光計またはカメラにおける光検出装置が、少なくとも1つのシリコン光電子増倍管(SiPM)を備える。シリコン光電子増倍管は、複数の単一光子アバランシェダイオード(SPAD)のアレイで構成される。この点に関して本発明にとって基本的に重要な点は、アレイが面積において入射光より大きいことであり、特定の、すなわち高い、最低強度の光が実際に当たるかまたはぶつかるSPADだけがアクティブ化され(作動/起動され)、および/または分析される。
【0012】
本発明によれば、装置は特別に適応させたSiPMを含み、このSiPMの設計は、高い光子検出効率(PDE)、すなわち単一光子アバランシェダイオード(SPAD)の場合と同様の効率を特徴としている。1つの単独のピクセルの応答は、ピクセルごとにまとめられたSPADの数からのほか、1つの単独のSPADの不感時間から導き出される。不感時間は、「アクティブクエンチ方式」によってごく短く、すなわち1ピクセルあたり>100SPADで不感時間<50nsの範囲内に保つことができる。
【0013】
ここで使用されるSiPMでは、1つのピクセルの中の個々のSPADを選択的にアクティブ化させ、あるいは非アクティブ化(無効化)することができる。特に、デジタル評価用電子機器を有するSiPMがこれに特に適している。それゆえ、直接チップ上で個々のSPADを、特に選択的に、アクティブ化させるために、アドレス指定可能なスタティックメモリを使用してもよい。
【0014】
さらに、SiPMが従来のCMOS工程により製造可能であることは特に有利である。このことにより、このようなシリコン光電子増倍管は、特に光出力レベルが高い、または過剰に高い条件下において極めて堅牢である。
【0015】
本発明による装置は、有利な態様として、複数のシリコン光電子増倍管を含み、その各々が複数の単一光子アバランシェダイオード(SPAD)のアレイで構成される。複数のSiPMは、たとえばカメラ用ではマトリクス状に、または、たとえば分光計用では横並びの直線状に配置されてもよい。本発明の教示によれば、SiPMのアレイの面積は全体で入射光より大きく、それぞれSiPMのうち、特定の、すなわち高い、最低強度の光が当たり、あるいはそれによって照明されるアレイ内にあるSPADだけがアクティブ化され、および/または分析される。
【0016】
本発明の教示にとっては、装置に、SPADのアレイ、または各々がSPADのアレイを持つ複数のSiPMのアレイを有する単一のシリコン光電子増倍管を含めることができる点が非常に重要である。
【0017】
光の最低強度は、1つまたは複数の試験測定から、あるいは校正から、夫々所定のシステム設定で確認してもよい。
【0018】
本発明の教示によれば、これは基本的に、高い信号対雑音比に寄与するSPADだけをアクティブ化させるという点で、装置の、あるいは相応に設計された検出器のダークノイズを最小限に抑える問題である。したがって、検出光が実際に当たると予想されるSPAD、あるいはピクセルだけがアクティブ化される。そのため、ダークノイズの一因となるのは、これらの、すなわちアクティブ化された、SPADだけである。
【0019】
さらに、特に上記の問題の複雑さとは別に、本発明によれば、ダークノイズの大きな原因がSPADの受光層の欠陥であることがさらにわかった。それゆえ、たとえば、ダイオードの受光領域に光が入射しなくても、欠陥のあるSPADが電子信号を発生するという状況が起こりうる。このような誤検出の確率は、ダークカウントレートと呼ばれ、できるだけ低く抑えるべきである。
【0020】
前述の、すなわち、より大きな検出器の面積を完全に欠陥のない状態で生産することは不可能であるため、SiPMの場合、適正に機能しないSPADが少数(通常は5%未満)存在し、これが、特に数は少ないにもかかわらす、ダークカウントレートが低い状況においては、ダークノイズの原因として最も大きな部分を占める。この点において、本発明による教示はまた、特に顕微鏡、分光計またはカメラ用の光検出装置に関し、これは、複数の単一光子アバランシェダイオード(SPAD)のアレイで構成される少なくとも1つのシリコン光電子増倍管(SiPM)を有し、各SiPMに関して、不十分な動作または誤動作をし、したがって完全な状態で「機能」しないSPADが非アクティブ化される。それゆえ、本発明の他の態様において、アレイ全体の信号対雑音比は、ダークノイズレベルが高い個々のSPADを非アクティブ化することによって、さらには、誤動作し、したがって本発明により非アクティブ化されたSPADのそれぞれの検出信号を無視することによって、実質的に改善できることがわかった。
【0021】
個々のSPADの不十分な動作または誤動作は、有効な信号対ダークノイズの比率の下側閾値によって定義されてもよく、それはこの場合、決まった閾値のことではない。
【0022】
試験/校正測定を使って、照明が不十分、または不十分に動作または誤動作をするSPADを確認してもよく、それによって、欠陥のあるSPADをSiPMの寿命終了まで非アクティブ化しておくことが可能である。この点に関して、チップのある種の照明強度カード、あるいはダークノイズカードを作ることもできる。これはたとえば、一度に1ピクセルにつきSPADの一部分のみ、そして好ましくは1ピクセルにつき1つのSPADのみを逐次的にアクティブ化させることによって行われ、それによって、ダークカウントレートを、そのピクセルのカウントレートに基づいて個々のSPADに割り当ててもよい。非アクティブ化されるピクセルの面積の割合をできるだけ小さく保つために、1ピクセルにつき、大きなSPADをより少なく使用する代わりに、小さなSPADをできるだけ多く使用することが有利でありうる。
【0023】
非アクティブ化するべきSPADを単純に「切断」して、これらがSiPMのアレイ全体の中でいかなる機能も持たないようにすることも十分に考えられる。
【0024】
また、非アクティブ化するべきSPADを、制御手段を通じて、好ましくはソフトウェアによって非アクティブ化し、アレイへの機械的な介入を一切不要にすることも考えられる。
【0025】
最後に、考慮しないようにするSPADの電気出力信号を、信号分析において無視することも考えられる。ここで、上記のような非アクティブ化する、あるいは考慮に入れない方式は、確認された最低強度の光と欠陥のあるSPADの両方に関して実装してもよいことに留意する。
【0026】
SiPMの形成に使用される個々のSPADのアレイに関して、生産に関する技術上の制約によって、必然的に個々のSPAD間および、最も特記すべき点として、個々のピクセル間に光を感知しない領域、すなわちSPADの縁辺領域とSPAD間の中間空間ができることが問題である。したがって、照明領域全体の中の受光部分を示す有効受光面積率と呼ばれるものは、100%よりかなり小さく、一般には50%から70%の間である。その結果、すなわち光を感知しない領域によって、光子検出効率が低くなる。それらに伴う、個々の単一光子アバランシェダイオードと比較して低い光子検出効率を補うために、SiPMのSPADには、非常に有利な態様として、マイクロレンズ、あるいはSPADのアレイに適応されたマイクロレンズアレイを割り当ててもよい。マイクロレンズは、アレイ全体に入射する光を、SPADのそれぞれの受光領域に集束させるもので、この方法よって有効受光面積率を増大させることができる。入射光の形状に応じて、所与のSiPMの形状で、実際に、マイクロレンズを設置したにもかかわらず、集束された光がもはやぶつからない個々のSPADを非アクティブ化することも好都合でありうる。
【0027】
特に、SiPMを製造しやすくし、小型化するために、SPADを、好ましくはシリコン基板のチップ上に配置してもよい。ダークカウントレートを低減させるために、SiPMチップは、たとえばサーモセレクティブ冷却法を用いて冷却してもよい。−40℃未満への冷却が可能であり、有利である。
【0028】
本発明による装置を共焦点顕微鏡に使用すれば特に有利であり、その中では、これはたとえば試料から発せられる蛍光をスペクトル的に選択して検出するものである。その場合、本発明による装置を検出アレイの線に沿うように設計することが有益である。
【0029】
本発明による装置はまた、分光計にも使用でき、このような用途に関しては、どのダイオードがそれぞれの所望のスペクトル領域に属するかがわかる。したがって、検出光が特定のスペクトル領域内にあると実際に予想されるピクセルだけをアクティブ化させてもよい。
【0030】
本発明による装置をカメラに使用することまた可能であり、これは、すなわち、それぞれが個々のSPADのアレイで構成されるSiPMのアレイを有する上記のような特性による。
【0031】
本発明による方法の特徴に関して、繰り返しを避けるために、本発明による装置に関する説明を参照するものとし、そこからこの方法に関する特徴がわかる。また、ここで重要なのは、特定の最低強度の光が実際に当たるSPADだけがアクティブ化され、および/または分析されることである。各SiPMに関して、特に上記の代わりに、または上記に加えて、不十分な動作または誤動作をする、すなわち、いずれの場合においても適正な性能を提供しないSPADだけが非アクティブ化されるかまたは分析されない。
【0032】
有利な方法で本発明の教示を実施し、さらに改良するためのさまざまな方法がある。この点については、一方で、主請求項に従属する請求項を参照し、他方で、図面に言及する本発明の好ましい例示的実施形態に関する以下の説明を参照されたい。図面に言及する本発明の好ましい例示的実施形態の説明により、教示の一般に好ましい実施形態と改良もまた明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】基本的な構成要素を含む共焦点顕微鏡の基本的構成の概略図を示し、本発明による装置が検出器アレイとして設計されている。
【図2】SPADを含む本発明によるアレイの基本的構成と、それに関して選択可能なアナログまたはデジタル回路/評価の概略図を示す。
【図3】本発明による装置を検出器アレイとして含む分光計の基本的構成の概略図を示す。
【図4】マルチピクセルSiPMとしての複数のSiPMのアレイの、たとえばカメラ用(図4a)または分光計用(図4b)の概略図を示す。
【図5】従来の光電子増倍管の代わりにSPADアレイを使用した場合の概略図を示す。
【図6】光分布(図6a)と個々のSPADのアクティブ化/非アクティブ化(図6b)の概略図を示す。
【図7】図6の図と比較して、より小さな光スポットを含む、光分布(図7a)と個々のSPADのアクティブ化/非アクティブ化(図7b)の概略図を示す。
【図8】可変開口を有するSP検出器として知られるものとともに動作する、従来の光電子増倍管の代わりにSPADアレイを使用した場合の概略図を示す。
【図9】可変開口を有するSP検出器として知られるものとともに動作する、従来の光電子増倍管の代わりにSPADアレイを使用した場合と、関連技術による光電子増倍管をSPADのアレイに置き換えた場合の概略図を示す。
【図10】光分布(図10a)と個々のSPADのアクティブ化/非アクティブ化(図10b)の概略図を示す。
【図11】図10の図と比較して、異なる検出波長に関する光分布(図11a)と個々のSPADのアクティブ化/非アクティブ化(図11b)の概略図を示す。
【図12】SiPMのアレイの基本的構成の概略図を示し、図12aは光分布を示し、図12bは個々のSPADのアクティブ化/非アクティブ化を示す。
【図13】SiPMのアレイの基本的構成の概略図を示し、図13aは光分布を示し、図13bは個々のSPADのアクティブ化/非アクティブ化を示すが、異なる波長に関する。
【図14】光分布(図14a)と個々のSPADのアクティブ化/非アクティブ化(図14b)の概略図を示し、SiPMが直線状に配列されている。
【図15】集積されたSPADを有する複数のSiPMのマトリクス型アレイの概略図を示し、その中のダークノイズレベルが高いSPADが非アクティブ化されている(図15b)。
【図16】光分布を支援するためにマイクロレンズが設置されている、マトリクス状に配置されたSiPMの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
共焦点走査顕微鏡の例に基づき、図1は本発明による装置を試料から戻る光の検出に使用した場合を示している。具体的には、図1は、共焦点走査顕微鏡1の概略的構成を示しており、SPAD26のアレイ19が走査顕微鏡1からの信号を検出するために使用される。光源2からの照明光ビーム3は、ビームスプリッタまたは適当な光路折り曲げ手段5によって走査装置7へと方向付けられる。照明光ビーム3は、光路折り曲げ手段5にぶつかる前に、照明ピンホール6を通過する。
【0035】
この例において、走査装置7は、ジンバルに取り付けられた走査ミラー9を含み、これは照明光ビーム3を、走査光学系12と顕微鏡光学系13を通って物体15の上またはその中へと向かうように方向付ける。不透明な物体15の場合、照明光ビーム3は物体の表面上へと案内される。生体または透明な物体15の場合、照明光ビーム3は物体の内部へと方向付けられてもよい。指示があれば、その目的のために、適当な染料を用いて無発光の調合物が調製される。
【0036】
物体15の中に任意選択的に存在する染料は、照明光ビーム3によって励起され、それ自体の特徴的なスペクトル領域内で発光する。物体15から発せられる光により、検出光ビーム17が画定される。これは顕微鏡光学系15、走査光学系12を通過し、走査モジュール7を経由して光路折り曲げ手段5に入り、そこを通過し、検出ピンホール18を経由して、アレイ19に到達する。物体15から発せられる、または物体15[からの光]によって画定される検出光ビーム17は、図1において、破線で示されている。
【0037】
物体15から発せられる光の強度に依存する電気検出信号は、アレイ19の中で生成される。物体15から発せられる光の波長は1つだけではないため、アレイ19の上流に分散素子20を構成することが好都合でありうる。分散素子20は、検出光ビーム17をスペクトル的に分割し、それによって検出光の個々の波長を空間的およびスペクトル的に分離する。検出光ビーム17を拡張させ、平行化するレンズ21を分散素子20の上流に配置してもよい。さらに、検出光線17のスペクトル的に分離されたビーム24、25をアレイ19上に集束させる検出器光学系22を、分散素子20の下流に配置してもよい。スペクトル的に分離されたビーム24、25は波長が異なり、したがって、アレイ19上の異なる領域にぶつかる。ここに示されている具体的な実施形態において、拡張光学系23は分散素子20の上流に配置されている。拡張光学系23は、検出器光学系22の開口数が検出ピンホール18に入射する検出光ビーム17の開口数とは無関係となるように設計してもよい。
【0038】
概略図として、図2は、本発明による装置のアレイ19の基本的構成を示しており、アレイ19は複数のSPAD26を含む。SPAD26がまとまって、この実施形態においては、1つのピクセルのためのSiPM19を形成する。
【0039】
さらに、図2は、SiPM19の、あるいはSPAD26の、アナログ評価27の場合とデジタル評価28の場合の基本回路を示しており、アナログ評価27では、信号はAD変換器29およびこれに対応する評価手段に供給される。デジタル評価28では、信号はデジタル評価論理回路30に供給される(オンチップ読み出し)。これに関して、SPAD26は個別にアドレス指定することが可能である。
【0040】
図3は、基本的な分光計の構成を示しており、検出されるべき光は、開口/ピンホール32の下流で光学系33によって平行化され、分散素子、たとえばプリズム、回折格子34またはホログラムによって分光的に分割される。別の光学系35を経由して、スペクトル的に分割された光は、SPADで構成される複数のSiPMを有するマルチピクセルアレイとして設計された検出器アレイ31に到達する。
【0041】
図4は、各々がSPAD26のアレイで構成されるSiPM19の考えられる配置を示す。SiPM19は、たとえばカメラ用としてマトリクス型アレイに構成されてもよい(図4a)。SiPM19は、分光計用として直線状に配置されてもよい(図4b)。これら2つの場合の各々において、16のピクセルが示され、あるいは描かれている。本発明によれば、それ以外のピクセルの数やピクセルのアレイも可能である。
【0042】
図5aは、たとえば共焦点顕微鏡に従来の光電子増倍管36を使用した例を示しており、その中で検出光37は、各種のダイクロイックビームスプリッタ38を経由して、特定の所期の光電子増倍管36に到達し、特定のスペクトル領域の検出を可能にしている。
【0043】
図5bは、従来の光電増倍管の代わりにSPAD26のアレイを使用した例を示しており、マイクロレンズをSPAD26に割り当てることが可能である。ここでも、検出光はダイクロイックビームスプリッタ38を経由して検出器、この場合はSPAD26のアレイ、すなわち、SPADアレイを含む各種のSiPM19に到達する。
【0044】
概略図として、図6はSPAD26のアレイを示しており、これがまとまって1つのSiPM19を形成する。具体的には、光分布が図6aに示されている。SPAD26は50μm×50μmの距離(サブピクセル距離)を特徴としていてもよく、ピクセルの大きさはこれより幾分小さく、すなわちピクセル間の距離による。受光領域には、40×40のサブピクセルが含まれていてもよく、たとえばこれは2mm×2mmの範囲の受光領域の大きさに対応する。
【0045】
図6bは、本発明の教示により、どのSPAD26がアクティブ化され、あるいは非アクティブ化されるかを示している。図示されている円の内側にあるSPAD26と円の円周と交差するSPAD26がアクティブ化される。円の外側にある、あるいは円の内側のそれらとは接触しないSPAD26は非アクティブ化され、これは発明性のある教示により特許請求されているとおりである。
【0046】
図7は、図6と同じアレイを示すが、ピンホールの大きさをより小さくすることによって、より小さい光スポットが用いられている。図7aは基本的な光分布を示し、図7bは、SPAD26のうちアクティブ化されたものと非アクティブ化されたものの比を示す。
【0047】
図5の図にしたがい、図8は一方で、可変開口を有するSP検出器として知られるものの場合の基本的アレイを示しており、図8aは従来のような光電子増倍管36を使用した場合を示し、図8bはSPAD26のアレイ、すなわちSiPM19を使用した場合を示しており、SiPM19にはマイクロレンズを設けても、設けなくてもよい。
【0048】
検出光37は、光学系33とプリズム39を通過し、相応に、可変スリットまたはピンホール開口およびビームスプリッタ40によって分割され、光電子増倍管36に到達する。図8bによれば、光電子増倍管の代わりにSPAD26のアレイ、すなわちSiPM19のアレイが使用される。
【0049】
図9aは、その中で光電子増倍管36が可変スプリットまたはピンホール開口40とともに使用されている点にかぎり、関連する技術を示している。図9bによれば、これらの代わりにSPAD26のアレイ19が使用されている。検出光37はしたがって、光学系33とプリズム39を通過し、個々のSPAD26で構成されるアレイ(SiPM)に到達する。
【0050】
図8bの図に対応するSPADのアレイが図10に詳細に示されており、その中のSPAD26がまとまって単一ピクセルSiPM19を形成する。
【0051】
図10aもまた、光分布を示す。図10bは、図示された円によって個々のSPAD26のアクティブ化と非アクティブ化を概略的に示している。
【0052】
ここで、図10に示されるSPAD26のアレイは、個々の光電子増倍管36の代わりとして、すなわちさまざまな帯域幅の光を検出するためのSP検出器として知られるものとして機能する。図10は、図8による使用における第一の検出波長を検出するためのSPADのアレイを示す。
【0053】
図11は、対応するSPAD26のアレイを示し、すなわち、一方で今度は光分布と、他方で個々のSPAD26のアクティブ化と非アクティブ化を示すが、ここでは図8の図によるSP検出器を使用した場合の第二の検出波長に関している。
【0054】
図12は、SiPM19のアレイの基本的構成を示しており、各SiPM自体は複数のSPAD26を含む。具体的には、図12aは、図9bに示されるような分光器の場合の、対応するスポットの光分布を示す。図12bは、その光分布に応じたSPADの非アクティブ化とアクティブ化を示す。
【0055】
図13は、図12によるSiPM19のアレイの基本的構成を示しているが、異なる波長による異なる光分布を有する、たとえば蛍光のそれを示す。
【0056】
図14に示される基本的構成は、図12と図13と似ており、蛍光の光分布はやはり異なる。図14aの図においては、評価対象の照明光41と迷光がSiPM19のアレイに当たる。個々のSPAD26は、一方で迷光により、他方で照明されていないことにより、非アクティブ化される。アクティブ化されたSPAD26が評価に使用される。
【0057】
分光計に使用される場合、具体的には、分光器の中で、不要な迷光、たとえば励起レーザ波長の反射光または迷光がぶつかる波長範囲が非アクティブ化される。指示されている場合は、隣接する範囲もまた、すなわちクロストークとして知られるものによって非アクティブ化される。これらの範囲の非アクティブ化は特に重要であり、それは、迷光の強度が一般には有益な光(蛍光)よりはるかに高いからである。有益な光の光分布は使用者によって使用される蛍光色素分子に依存するため、励起光が当たらないすべてのSPAD、あるいはピクセルはアクティブ化され(ただし、これらが前述のように欠陥のある、またはダークノイズピクセルでない場合)、それによって、使用される蛍光色素分子と関係なく検出を行うことが可能となる。励起光による干渉はすべて排除される。同様に、励起は複数のレーザラインを使用して実行されてもよく、その場合、したがって複数の範囲がブロックされる。
【0058】
図14の図に関して、個々のSPAD、あるいはサブピクセルを非アクティブ化する理由は3つあり、すなわち、SPAD、あるいはサブピクセルに当たる照明光の量が不十分である時、個々のSPAD、あいはサブピクセルの動作が不十分であるかまたは弱い(ダークノイズまたはその他)時、または迷光がSPAD、あるいはサブピクセルにぶつかる時のみである。
【0059】
図15は、マトリクス型アレイ19の意味における複数のSiPMの構成を示しており、各SiPM19は複数のSPAD26で構成される。欠陥のある、あるいは満足に動作しないSPAD26は、高いダークノイズレベルの原因となり、非アクティブ化される。
【0060】
最後に、図16は、それぞれが1つのチップ上で複数のSPAD26で構成される複数のSiPM19の構成を示す。使用不能な中間領域43によって、図16の側面図で示されているマイクロレンズ44は、SiPM19のアレイに割り当てられる。マイクロレンズ44を使用すれば、より有利な光分布が得られ、各々の場合でSiPM19の使用可能な領域に集束される。
【0061】
さらに、図16は、検出光が当たらない非アクティブ化されたSPADを示す。
【0062】
図から推測されないその他の特徴に関しては、繰り返しを避けるために、本明細書の総論部分と付属の特許請求の範囲を参照されたい。
【0063】
最後に、特に、本発明による装置の上記のような例示的実施形態は単に、請求されている教示の例を示すものであり、教示をこれらに限定するものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 共焦点走査顕微鏡
2 光源
3 照明光ビーム
5 光路折り曲げ手段
6 照明ピンホール
7 走査装置
9 走査ミラー
12 走査光学系
13 顕微鏡光学系
15 物体
17 検出光ビーム
18 検出ピンホール
19 アレイ、SiPM
20 分散素子
21 レンズ
22 検出器光学系
23 拡張光学系
24 ビーム
25 ビーム
26 SPAD
27 アナログ評価
28 デジタル評価
29 A/D変換器
30 デジタル評価論理回路
31 検出器アレイ
32 開口/ピンホール
33 光学系
34 プリズム/回折格子
35 光学系
36 光電子増倍管
37 検出光
38 ダイクロイックビームスプリッタ
39 プリズム
40 可変ピンホール開口
41 照明光
42 迷光
43 中間領域
44 マイクロレンズ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に顕微鏡、分光計またはカメラ用の光検出装置であって、
複数の単一光子アバランシェダイオード(SPAD)のアレイで構成される少なくとも1つのシリコン光電子増倍管(SiPM)を備え、前記アレイが面積において入射光より大きく、特定の最低強度の光が当たるSPADだけがアクティブ化され、および/または分析される光検出装置。
【請求項2】
複数のシリコン光電子増倍管(SiPM)のアレイが設けられ、各SiPMが単一光子アバランシェダイオード(SPAD)のアレイで構成され、前記アレイが面積において入射光より大きく、前記SiPMのアレイのうち、特定の最低強度の光が当たるSPADだけがアクティブ化され、および/または分析される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記最低強度の光が、1つまたは複数の試験測定から、あるいは校正から、各々所定のシステム設定で得られる、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
特に顕微鏡、分光計またはカメラ用の光検出装置であって、
特に請求項1〜3の特徴を有する、複数の単一光子アバランシェダイオード(SPAD)のアレイで構成される少なくとも1つのシリコン光電子増倍管(SiPM)を備え、各SiPMについて、不十分な動作または誤動作をするSPADが非アクティブ化されるかまたは分析されない光検出装置。
【請求項5】
個々のSPDAの不十分な動作または誤動作が、有益な信号対ダークノイズの比の下側閾値によって定義可能である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
不十分な動作または誤動作をする前記SPADを、試験/校正測定により確認し、前記SiPMの寿命が終了するまで非アクティブ化できる、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
非アクティブ化するべき前記SPADが切断される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
非アクティブ化するべき前記SPADが、制御手段を通じて、好ましくはソフトウェアによって非アクティブ化される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
考慮しない前記SPADの電気出力信号が、前記信号の評価において無視される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記SPADの前記アレイに適応させた、前記SPADの受光領域に光を集束させるマイクロレンズ、あるいはマイクロレンズアレイが、1つのSiPMの個々のSPADに割り当てられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
1つのSiPMの前記SPADが、好ましくはシリコン基板のチップ上に配置される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記チップが好ましくは熱電冷却される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項による、試料から戻る光を検出する装置を特徴とする顕微鏡、特に共焦点顕微鏡。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項による、光のスペクトル領域を検出する装置を特徴とする分光計。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項による、光を捕捉して画像を生成する装置を特徴とするカメラ。
【請求項16】
好ましくは請求項1〜12のいずれか一項による装置を用いる、特に顕微鏡、分光計またはカメラ用の光検出方法であって、前記装置は複数の単一光子アバランシェダイオード(SPAD)のアレイで構成される少なくとも1つのシリコン光電子増倍管(SiPM)を備え、前記アレイが面積において入射光より大きく、特定の最低強度の光が当たるSPADだけがアクティブ化され、および/または分析され、および/または1つのSiPMについて、不十分な動作または誤動作をするSPADが非アクティブ化されるかまたは分析されない、光検出方法。
【請求項17】
入射光の前記最低強度が、1つまたは複数の試験測定から、あるいは校正から、所定のシステム設定で得られる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
不十分な動作または誤動作をする前記SPADが試験/校正測定によって確認され、前記SiPMの寿命が終了するまで非アクティブ化される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
不十分な動作または誤動作をするSPADを判断するために、1つのSiPMについて個々のSPADの各々をアクティブ化させ、ピクセルカウントレートに基づいて、前記個々のSPADにダークカウントレートを割り当てる、請求項18に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図15】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−20972(P2013−20972A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−155433(P2012−155433)
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【出願人】(500178876)ライカ マイクロシステムス ツェーエムエス ゲーエムベーハー (80)
【Fターム(参考)】