説明

光検出装置

【課題】消費電力の増加および熱雑音の発生を抑制することが可能な光検出装置を提供する。
【解決手段】光検出装置1は、フォトダイオードPDm,n,フォトダイオード用スイッチSWm,n,積分回路12及びノイズ除去回路13を備える。積分回路12は、フォトダイオードPDm,nからフォトダイオード用スイッチSWm,nを経て入力した電荷を容量素子Cfkに蓄積して、当該蓄積電荷量に応じた電圧値を出力する。ノイズ除去回路13は、アンプA、5つのスイッチSW31〜SW35、4つの容量素子C31〜C34および電源Vを備える。スイッチSW31が最初に閉状態から開状態に転じた時刻に積分回路12から出力される電圧値を取り込み、この時刻以降、積分回路12から出力される電圧値と先に取り込んだ電圧値との差に応じた電圧値を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光強度に応じた電圧値を出力する光検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光検出装置の一種として、入射光強度に応じた量の電荷を発生するフォトダイオードと、このフォトダイオードで発生した電荷を蓄積して当該蓄積電荷量に応じた電圧値を出力する積分回路と、積分回路の電圧値からオフセット誤差およびスイッチングノイズ(以下では両者を併せて「オフセット誤差等」という。)を除去するためのCDS(Correlated Double Sampling、相関二重サンプリング)回路と、を備えるものがある。
【0003】
CDS回路を備えた一般的な光検出装置の構成を図9に示す。この図に示される光検出装置3は、フォトダイオードPD、フォトダイオード用スイッチSW、積分回路32、およびCDS回路33を備える。CDS回路33は、第1電圧保持回路34、第2電圧保持回路34、および差動変換回路35を含む。差動変換回路35は、アンプおよび4個の抵抗器からなっている。なお、差動変換回路としては、例えば非特許文献1記載のものを用いることもできる。
【0004】
図9に示される光検出装置3の動作について説明する。以下に説明する動作は、図示しない制御部による制御の下に行われる。図10は、光検出装置3の動作を説明するタイミングチャートである。この図には、(a) 積分回路32に含まれるリセット用スイッチSWの開閉、(b) フォトダイオードPDとともに設けられているフォトダイオード用スイッチSWの開閉、(c)第1保持回路34に含まれるスイッチSW81の開閉、(d) 第2保持回路34に含まれるスイッチSW82の開閉、(e)積分回路32からの出力電圧値、(f) 第1保持回路34からの出力電圧値、および、(g) 第2保持回路34からの出力電圧値、が示されている。
【0005】
図10に示される各時刻の前後関係については「t31<t32<t33<t34<t35<t36<t37」である。時刻t32から時刻t35までの期間、積分回路32は、リセット用スイッチSWが開いているので電荷蓄積可能状態となっているものの、フォトダイオード用スイッチSWが開いているのでフォトダイオードPDから電荷が入力することはなく、積分回路32の容量素子Cには電荷が蓄積されない。しかし、積分回路32からの出力電圧値は、リセット用スイッチSWが閉状態から開状態に転じた時刻t32後に単調に変化していき、やがて時刻t33前の或る時刻にオフセット誤差等により略一定電圧値(すなわちオフセット電圧値)に達する。
【0006】
第2保持回路34において、時刻t33に閉じたスイッチSW82が時刻t34に開くと、時刻t34における積分回路32の出力電圧値に応じた電圧値が第2保持回路34により保持され、時刻t34以降、その保持された電圧値が第2保持回路34から出力される。この出力される電圧値は、積分回路32から出力されるオフセット電圧値を表す。
【0007】
時刻t35から一定期間フォトダイオード用スイッチSWが閉じると、フォトダイオードPDで発生し該フォトダイオードPDの接合容量部に蓄積されていた電荷は、フォトダイオード用スイッチSWを経て積分回路32へ入力して、積分回路32の容量素子Cに蓄積される。そのため、積分回路32から出力される電圧値は、容量素子Cに蓄積された電荷の量に応じた信号電圧値とオフセット電圧値とが重畳されたものとなる。
【0008】
第1保持回路34において、時刻t36に閉じたスイッチSW81が時刻t37に開くと、時刻t37における積分回路32の出力電圧値に応じた電圧値が第1保持回路34により保持され、時刻t37以降、その保持された電圧値が第1保持回路34から出力される。この電圧値は、積分回路32から出力されるオフセット電圧値が重畳された信号電圧値を表す。
【0009】
第1保持回路34および第2保持回路34から出力された電圧値は差動変換回路35に入力される。差動変換回路35では、これら2つの電圧値の差に応じた電圧値が差動信号として出力される。出力される電圧値は、オフセット誤差等が除去された信号電圧値を表すこととなる。
【非特許文献1】TEXAS INSTRUMENTS社、ADS8482データシート、図8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の光検出装置3では、差動変換回路35が4個の抵抗器を含むため、熱雑音が大きくなるという問題が生じる。熱雑音が大きくなると、信号電圧値のS/N比が低下してしまう。抵抗器の抵抗値を小さくすれば熱雑音は抑制されるが、その場合には差動変換回路35に含まれるアンプの駆動能力を大きくする必要がある。アンプの駆動能力を大きくするとアンプの消費電力が増加し、その結果、光検出装置3としての消費電力が増加してしまうという問題が生じる。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決する為になされたものであり、消費電力の増加および熱雑音の発生を抑制することが可能な光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る光検出装置は、(1) 入射光強度に応じた量の電荷を発生するフォトダイオードと、(2) フォトダイオードに一端が接続されたフォトダイオード用スイッチと、(3) フォトダイオード用スイッチの他端と接続され、フォトダイオードで発生しフォトダイオード用スイッチを経て入力した電荷を蓄積し、蓄積されている電荷の量に応じた電圧値を出力する積分回路と、(4) 第1および第2の入力端子ならびに第1および第2の出力端子を有するアンプと、第1、第2、第3および第4のスイッチと、第1、第2、第3および第4の容量素子とを含み、第1および第2のスイッチの一端が積分回路の出力端子に接続され、第1のスイッチの他端が第1の容量素子の一端に接続され、第2のスイッチの他端が第2の容量素子の一端に接続され、第1の容量素子の他端がアンプの第1の入力端子に接続され、第2の容量素子の他端がアンプの第2の入力端子に接続され、アンプの第1の入力端子とアンプの第1の出力端子との間に第3のスイッチおよび第3の容量素子が並列的に設けられ、アンプの第2の入力端子とアンプの第2の出力端子との間に第4のスイッチおよび第4の容量素子が並列的に設けられ、第1〜第4のスイッチの開閉状態を切り替えることによって、所定の時刻に積分回路から出力される電圧値と、所定の時刻以降に積分回路から出力される電圧値との差分に応じた信号値を出力するノイズ除去回路と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この光検出装置では、フォトダイオードとともに設けられているフォトダイオード用スイッチが閉じると、該フォトダイオードで発生した電荷は、フォトダイオード用スイッチを経て積分回路に入力して蓄積され、当該蓄積されている電荷の量に応じた電圧値が積分回路から出力される。フォトダイオードとともに設けられているフォトダイオード用スイッチが閉じる前には、オフセット誤差等によるオフセット電圧値が積分回路から出力される。所定の時刻にオフセット電圧値がノイズ除去回路に入力され、所定の時刻以降に、信号電圧値とオフセット電圧値とが重畳されたものがノイズ除去回路に入力される。すると、ノイズ除去回路は、CDS回路として機能し、信号電圧値とオフセット電圧値とが重畳されたものからオフセット電圧値を除去して、この除去で得られた信号電圧値を差動信号としてアンプの第1および第2の出力端子から出力する。したがって、この光検出装置の出力はS/N比が優れたものとなる。ノイズ除去回路は、抵抗器を要しない。そのため、熱雑音の発生を確実に抑制することができる。また、抵抗器を要しないので、アンプの駆動能力を大きくする必要がない。よって、消費電力の増加を抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る光検出装置では、ノイズ除去回路は、電圧源と、一端が電圧源に接続されるとともに他端が第2のスイッチの他端に接続された電圧印加用スイッチとを更に含むのが好適である。この場合、ノイズ除去回路に含まれるアンプの出力レンジを広げることができる。
【0015】
また、本発明に係る光検出装置は、ノイズ除去回路に含まれるアンプの第1および第2の出力端子から出力された差動電圧値をAD変換するAD変換回路を更に備えるのが好適である。この場合、ノイズ除去回路に含まれるアンプの第1および第2の出力端子から出力された差動電圧値をデジタル値に変換し、そのデジタル値を出力することができる。
【0016】
また、本発明に係る光検出装置は、フォトダイオード用スイッチ、積分回路、ノイズ除去回路およびAD変換回路それぞれの動作を制御する制御部を更に備えるのが好適である。例えば、複数組のフォトダイオードおよびフォトダイオード用スイッチに対して1組の積分回路およびノイズ除去回路を設けた場合、制御部が制御することで、複数のフォトダイオードを順次に積分回路に接続させ、オフセット誤差等が除去された信号値をノイズ除去回路から順次に出力させることができる。その結果、複数のフォトダイオードを1次元状または2次元状に配列させて、1次元画像または2次元画像を撮像することが可能となり、また、全体の回路規模を小さくすることも可能となる。
【0017】
本発明に係る光検出装置は、入射光強度に応じた量の電荷を発生するフォトダイオードと、フォトダイオードに一端が接続されたフォトダイオード用スイッチと、フォトダイオード用スイッチの他端と接続され、フォトダイオードで発生しフォトダイオード用スイッチを経て入力した電荷を蓄積し、蓄積されている電荷の量に応じた電圧値を出力する積分回路と、所定の時刻に積分回路から出力される電圧値と、所定の時刻以降に積分回路から出力される電圧値との差分に応じた信号値を出力する第1のノイズ除去回路と、第1および第2の入力端子ならびに第1および第2の出力端子を有するアンプと、第1、第2、第3および第4のスイッチと、第1、第2、第3および第4の容量素子とを含み、第1および第2のスイッチの一端が第1のノイズ除去回路の出力端子に接続され、第1のスイッチの他端が第1の容量素子の一端に接続され、第2のスイッチの他端が第2の容量素子の一端に接続され、第1の容量素子の他端がアンプの第1の入力端子に接続され、第2の容量素子の他端がアンプの第2の入力端子に接続され、アンプの第1の入力端子とアンプの第1の出力端子との間に第3のスイッチおよび第3の容量素子が並列的に設けられ、アンプの第2の入力端子とアンプの第2の出力端子との間に第4のスイッチおよび第4の容量素子が並列的に設けられ、第1〜第4のスイッチの開閉状態を切り替えることによって、所定の時刻に第1のノイズ除去回路から出力される電圧値と、所定の時刻以降に第1のノイズ除去回路から出力される電圧値との差分に応じた信号値を出力する第2のノイズ除去回路と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この光検出装置では、フォトダイオードとともに設けられているフォトダイオード用スイッチが閉じると、該フォトダイオードで発生した電荷は、フォトダイオード用スイッチを経て積分回路に入力して蓄積され、当該蓄積されている電荷の量に応じた電圧値が積分回路から出力される。フォトダイオードとともに設けられているフォトダイオード用スイッチが閉じる前には、オフセット誤差等によるオフセット電圧値が積分回路から出力される。所定の時刻にオフセット電圧値が第1のノイズ除去回路に入力され、所定の時刻以降に、信号電圧値とオフセット電圧値とが重畳されたものが第1のノイズ除去回路に入力される。すると、第1のノイズ除去回路は、CDS回路として機能し、信号電圧値とオフセット電圧値とが重畳されたものからオフセット電圧値を除去して、除去後の電圧値を出力する。第1のノイズ除去回路に接続された第2のノイズ除去回路もまた、CDS回路として機能し、第1のノイズ除去回路の出力電圧値にオフセット電圧値が残存している場合には、この出力電圧値から残存したオフセット電圧値を除去し、除去後の信号電圧値を差動信号としてアンプの第1および第2の出力端子から出力する。したがって、この光検出装置の出力はS/N比が優れたものとなる。第1および第2のノイズ除去回路は、抵抗器を要しない。そのため、熱雑音の発生を確実に抑制することができる。また、抵抗器を要しないので、アンプの駆動能力を大きくする必要がない。よって、消費電力の増加を抑制することができる。
【0019】
また、本発明に係る光検出装置では、第2のノイズ除去回路は、電圧源と、一端が電圧源に接続されるとともに他端が第2のスイッチの他端に接続された電圧印加用スイッチとを更に含むのが好適である。この場合、第2のノイズ除去回路に含まれるアンプの出力レンジを広げることができる。
【0020】
また、本発明に係る光検出装置は、第2のノイズ除去回路に含まれるアンプの第1および第2の出力端子から出力された差動電圧値をAD変換して出力するAD変換回路を更に備えるのが好適である。この場合、第2のノイズ除去回路に含まれるアンプの第1および第2の出力端子から出力された差動電圧値をデジタル値に変換し、そのデジタル値を出力することができる。
【0021】
また、本発明に係る光検出装置は、フォトダイオード用スイッチ、積分回路、第1のノイズ除去回路、第2のノイズ除去回路およびAD変換回路それぞれの動作を制御する制御部を更に備えるのが好適である。この場合、複数のフォトダイオードを1次元状または2次元状に配列させて、1次元画像または2次元画像を撮像することが可能となり、また、全体の回路規模を小さくすることも可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、消費電力を増加および熱雑音の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
(第1実施形態)
【0025】
まず、本発明に係る光検出装置の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る光検出装置1の構成図である。この図に示される光検出装置1は、2次元画像を撮像することができるものであって、光検出部11、M個の積分回路12〜12、M個のノイズ除去回路13〜13、M個のAD変換回路14〜14、および制御部19を備える。ここで、Mは2以上の整数である。また、以下に現れるNは2以上の整数であり、mは1以上M以下の任意の整数であり、nは1以上N以下の任意の整数である。M個の積分回路12〜12は共通の構成を有している。M個のノイズ除去回路13〜13は共通の構成を有している。また、M個のAD変換回路14〜14は共通の構成を有している。
【0026】
光検出部11は、M×N個のフォトダイオードPD1,1〜PDM,NおよびM×N個のフォトダイオード用スイッチSW1,1〜SWM,Nを含み、フォトダイオードPDm,nおよびフォトダイオード用スイッチSWm,nを組として、これらがM行N列に2次元配列されている。各フォトダイオードPDm,nは入射光強度に応じた量の電荷を発生するものであって、第m行第n列に位置している。各フォトダイオードPDm,nにはフォトダイオード用スイッチSWm,nの一端が接続されており、このフォトダイオード用スイッチSWm,nの他端は配線Lに接続されている。
【0027】
各積分回路12は、配線Lを介してフォトダイオード用スイッチSWm,nの他端と接続されており、フォトダイオード用スイッチSWm,nおよび配線Lを経て入力した電荷を蓄積して、当該蓄積電荷量に応じた電圧値をノイズ除去回路13へ出力する。各ノイズ除去回路13は、所定の時刻に積分回路12から出力される電圧値と、この所定の時刻以降、積分回路12から出力される電圧値との差に応じた電圧値をAD変換回路14へ出力する。
【0028】
各AD変換回路14は、ノイズ除去回路13に含まれるアンプAの負側の差動出力端子(第1の出力端子)および正側の差動出力端子(第2の出力端子)から出力される差動電圧値を入力し、その差動電圧値(アナログ値)をデジタル値に変換して、そのデジタル値を出力する。制御部19は、光検出部11に含まれるM×N個のフォトダイオード用スイッチSW1,1〜SWM,N、M個の積分回路12〜12、M個のノイズ除去回路13〜13、およびM個のAD変換回路14〜14それぞれの動作を制御する。
【0029】
図2は、第1実施形態に係る光検出装置1に含まれるフォトダイオードPDm,n、フォトダイオード用スイッチSWm,n、積分回路12、ノイズ除去回路13およびAD変換回路14の回路図である。なお、この図には、光検出部11に含まれるM×N個のフォトダイオードPD1,1〜PDM,NおよびM×N個のフォトダイオード用スイッチSW1,1〜SWM,Nのうち、第m行第n列に位置するフォトダイオードPDm,nおよびフォトダイオード用スイッチSWm,nが代表して示されている。
【0030】
各積分回路12は、アンプA、リセット用スイッチSW、K個の容量素子Cf1〜CfKおよびK個のスイッチSWf1〜SWfKを備える。ここで、Kは2以上の整数であり、以下に現れるkは1以上K以下の任意の整数である。容量素子Cfkの一端はアンプAの反転入力端子に接続されており、容量素子Cfkの他端はスイッチSWfkを介してアンプAの出力端子に接続されている。容量素子CfkおよびスイッチSWfkを組として、これらがアンプAの反転入力端子と出力端子との間に並列的に接続されている。リセット用スイッチSWは容量素子CfkおよびスイッチSWfkの各組と並列的に接続されて、アンプAの反転入力端子と出力端子との間に設けられている。アンプAの反転入力端子は配線Lと接続され、アンプAの非反転入力端子には所定電圧値が入力されている。スイッチSWf1〜SWfKのうちいずれのスイッチが閉じているかによって、アンプAの非反転入力端子と出力端子との間の帰還容量部の容量値が決定される。
【0031】
積分回路12は、リセット用スイッチSWが開いているときには、フォトダイオードPDm,nで発生しフォトダイオード用スイッチSWm,nおよび配線Lを経て入力した電荷を、容量素子Cfkに蓄積し、容量素子Cfkに蓄積されている電荷の量に応じた電圧値を出力する。一方、積分回路12は、リセット用スイッチSWが閉じることにより、容量素子Cfkが放電されて、電圧値が初期化される。
【0032】
各ノイズ除去回路13は、アンプA、スイッチSW31(第1のスイッチ)、スイッチSW32(第2のスイッチ)、スイッチSW33(第3のスイッチ)、スイッチSW34(第4のスイッチ)、スイッチSW35(電圧印加用スイッチ)、容量素子C31(第1の容量素子)、容量素子C32(第2の容量素子)、容量素子C33(第3の容量素子)、容量素子C34(第4の容量素子)および電源Vを備える。スイッチSW31およびスイッチSW32の一端は積分回路12の出力端子に接続されている。スイッチSW31の他端は容量素子C31の一端に接続され、スイッチSW32の他端は容量素子C32の一端に接続されている。容量素子C31の他端はアンプAの正側の差動入力端子(第1の入力端子)に接続され、容量素子C32の他端はアンプAの負側の差動入力端子(第2の入力端子)に接続されている。スイッチSW33および容量素子C33は、互いに並列的に接続されて、アンプAの正側の差動入力端子と負側の差動出力端子(第1の出力端子)との間に設けられている。スイッチSW34および容量素子C34は、互いに並列的に接続されて、アンプAの負側の差動入力端子と正側の差動出力端子(第2の出力端子)との間に設けられている。電源VはスイッチSW35の一端と接続されており、このスイッチSW35の他端は容量素子C32の一端と接続されている。
【0033】
ノイズ除去回路13では、所定の時刻に積分回路12から出力される電圧値が取り込まれる。そして、この所定の時刻以降、スイッチSW33が閉状態から開状態に転じ、さらにスイッチSW31が開状態から閉状態に転じることで、積分回路12から出力される電圧値の変動分に応じた量の電荷がアンプAの正側の差動入力端子に入力されることとなる。第1実施形態では、スイッチSW31が最初に閉状態から開状態に転じた時刻を、所定の時刻とする。
【0034】
また、ノイズ除去回路13では、スイッチSW32が閉状態から開状態に転じた時刻にも積分回路12から出力される電圧値が取り込まれる。その後、スイッチSW34が閉状態から開状態に転じ、さらにスイッチSW35が開状態から閉状態に転じることで、電源Vの電圧値と取り込んだ電圧値との差分がアンプAの負側の差動入力端子に入力されることとなる。
【0035】
アンプAは、正側の差動入力端子の入力電圧値と負側の差動入力端子の入力電圧値との差を、中心電圧値に対して対称的にスイングする差動信号として負側の差動出力端子および正側の差動出力端子から出力する。例えば、中心電圧値が2.5VであるアンプAにおいて、負側の差動入力端子の入力電圧値が2.2Vであり、正側の差動入力端子の入力電圧値が3Vであるとすると、負側の差動出力端子からの出力電圧値は2.1Vとなり、正側の差動出力端子からの出力電圧値は2.9Vとなる。
【0036】
次に、第1実施形態に係る光検出装置1の動作について説明する。以下に説明する動作は、制御部19による制御の下に行われる。図3は、第1実施形態に係る光検出装置1の動作を説明するタイミングチャートである。この図には、第1実施形態の動作として、(a) 積分回路12に含まれるリセット用スイッチSWの開閉、(b) フォトダイオードPDm,nに対応して設けられているフォトダイオード用スイッチSWm,nの開閉、(c)ノイズ除去回路13に含まれるスイッチSW31の開閉、(d) ノイズ除去回路13に含まれるスイッチSW32の開閉、(e) ノイズ除去回路13に含まれるスイッチSW33およびスイッチSW34の開閉、(f) ノイズ除去回路13に含まれるスイッチSW35の開閉、(g) 積分回路12からの出力電圧値、(h) ノイズ除去回路13に含まれるアンプAの正側の差動出力端子からの出力電圧値、および、(i) ノイズ除去回路13に含まれるアンプAの負側の差動出力端子からの出力電圧値、が示されている。各時刻の前後関係については「t11<t12<t13<t14<t15<t16<t17」である。
【0037】
第1実施形態では、図3(a)〜(i)に示されるように動作する。すなわち、時刻t11に積分回路12に含まれるリセット用スイッチSWが閉じて、容量素子Cfkが放電され、積分回路12からの出力電圧値が初期化される。時刻t11にノイズ除去回路13に含まれるスイッチSW33およびスイッチSW34が閉じて、容量素子C33および容量素子C34が放電され、ノイズ除去回路13からの出力電圧値が初期化される。時刻t12にノイズ除去回路13に含まれるスイッチSW32が開き、時刻t13に積分回路12に含まれるリセット用スイッチSWが開き、時刻t14にノイズ除去回路13に含まれるスイッチSW31が開く。その後、時刻t15から一定期間、フォトダイオード用スイッチSWm,nが閉じて、フォトダイオードPDm,nで発生し該フォトダイオードPDm,nの接合容量部に蓄積されていた電荷は、フォトダイオード用スイッチSWm,nおよび配線Lを経て積分回路12へ入力される。時刻t16にノイズ除去回路13に含まれるスイッチSW33およびスイッチSW34が開き、時刻t17にノイズ除去回路13に含まれるスイッチSW31およびスイッチSW35が閉じる。
【0038】
積分回路12が電荷蓄積可能状態となる時刻は、リセット用スイッチSWが開く時刻t13である。時刻t13から時刻t15までの期間、積分回路12は、リセット用スイッチSWが開いているので電荷蓄積可能状態となっているものの、フォトダイオード用スイッチSWm,nが開いているのでフォトダイオードPDm,nから電荷が入力することはなく、容量素子Cfkには電荷が蓄積されない。しかし、オフセット誤差等により、積分回路12からの出力電圧値は時刻t13後に単調に変化していき、やがて時刻t14前の或る時刻に略一定電圧値(すなわち、オフセット電圧値)に達する。
【0039】
ノイズ除去回路13において、時刻t12にスイッチSW32が閉状態から開状態に転じる。これにより、時刻t12に積分回路12から出力された電圧値に応じた量の電荷が、容量素子C32に蓄積される。時刻t12において積分回路12は初期化された状態であるから、容量素子C32に蓄積される電荷は初期化された積分回路12の電圧値(以下、「リセット電圧値」という)に応じた量である。このようにして、リセット電圧値がノイズ除去回路13に取り込まれる。
【0040】
ノイズ除去回路13において、時刻t14にスイッチSW31が閉状態から開状態に転じると、その時刻t14(所定の時刻)に積分回路12から出力されている電圧値に応じた量の電荷が、容量素子C31に蓄積される。時刻t14において積分回路12はオフセット電圧値を出力しているから、容量素子C31に蓄積される電荷量は、オフセット電圧値に応じた量である。このようにして、オフセット電圧値がノイズ除去回路13に取り込まれる。
【0041】
時刻t15から一定期間、フォトダイオード用スイッチSWm,nが閉じて、フォトダイオードPDm,nで発生し該フォトダイオードPDm,nの接合容量部に蓄積されていた電荷は、フォトダイオード用スイッチSWm,nおよび配線Lを経て積分回路12へ入力される。積分回路12は、容量素子Cfkに蓄積された電荷の量に応じた信号電圧値とオフセット電圧値とが重畳された電圧値を出力する。
【0042】
ノイズ除去回路13において、時刻t16にスイッチSW33が開き、時刻t17にスイッチSW31が閉じると、時刻t17に積分回路12から出力されている電圧値が容量素子C31に入力される。すると、この電圧値に応じた電荷量と、既に容量素子C31に蓄積された電荷量との差分が容量素子C33に蓄積される。そして、アンプAの正側の差動入力端子には、容量素子C33に蓄積された電荷量に応じた電圧値が入力される。この電圧値は、信号電圧値およびオフセット電圧値が重畳された電圧値と、オフセット電圧値との差、すなわち信号電圧値となる。このように、ノイズ除去回路13はCDS回路として機能する。
【0043】
ノイズ除去回路13において、時刻t16にスイッチSW34が開き、時刻t17にスイッチSW35が閉じると、電源Vの電圧値が容量素子C32に入力される。すると、電源Vの電圧値に応じた電荷量と、既に容量素子C32に蓄積された電荷量との差分が容量素子C34に蓄積される。そして、アンプAの負側の差動入力端子には、容量素子C34に蓄積された電荷量に応じた電圧値が入力される。この電圧値は、電源Vの電圧値とリセット電圧値との差分に応じたものとなる。
【0044】
ノイズ除去回路13において、時刻t17以降、アンプAの正側の差動入力端子の入力電圧値と負側の差動入力端子の入力電圧値との差分に応じた電圧値の信号が、アンプAの負側の差動出力端子および正側の差動出力端子から出力される。アンプAには中心電圧値が設定されており、正側の差動出力端子および負側の差動出力端子から出力される電圧値は下記(1)式および(2)式で表すことができる。ここで、正側の差動出力端子からの出力電圧値をVo+とし、負側の差動出力端子からの出力電圧値をVo−とし、正側の差動入力端子の入力電圧値をVi+とし、負側の差動入力端子の入力電圧値をVi−とし、アンプAの中心電圧値をVcomとする。

o+=(Vi+−Vi−)÷2+Vcom ・・・(1)
o−=−(Vi+−Vi−)÷2+Vcom ・・・(2)

【0045】
正側の差動入力端子の入力電圧値Vi+は、信号電圧値である。負側の差動入力端子の入力電圧値Vi−は、電源Vの電圧値とリセット電圧値との差分に応じたものである。したがって、上記(1)式および(2)式で表される正側の差動出力端子からの出力電圧値Vo+および負側の差動出力端子からの出力電圧値Vo−は、オフセット誤差等が除去されて、S/N比が優れたものとなる。時刻t17より後の或る時刻にノイズ除去回路13から出力される電圧値は、AD変換回路14へ出力されて、AD変換回路14によりAD変換される。
【0046】
以上のようにして第n列のM個のフォトダイオードPD1,n〜PDM,nについての並列的な処理が終わると、次の列のM個のフォトダイオードPD1,n+1〜PDM,n+1についての並列的な処理が同様に行われる。このようにして、各列のM個のフォトダイオードPD1,n〜PDM,nについての処理が繰り返し行われる。
【0047】
第m行についてみると、N個のフォトダイオード用スイッチSWm,1〜SWm,Nが順次に閉じることで、N個のフォトダイオードPDm,1〜PDm,Nが順次に積分回路12に接続される。各フォトダイオードPDm,nは一定周期で積分回路12に接続される期間を有し、前回の接続期間から今回の接続期間までの間に発生し該フォトダイオードPDm,nの接合容量部に蓄積されていた電荷はフォトダイオード用スイッチSWm,nおよび配線Lを経て積分回路12へ入力される。
【0048】
したがって、この光検出装置1は、オフセット誤差等が除去されてS/N比が優れた1次元画像または2次元画像を撮像することができ、また、全体の回路規模を小さくすることができる。
【0049】
この光検出装置1では、電源VおよびスイッチSW35をノイズ除去回路13に備えることで、ノイズ除去回路13の出力電圧値のレンジを広げている。図4は、第1実施形態に係るノイズ除去回路13の動作を説明するタイミングチャートである。この図には、第1実施形態の動作として、(a) ノイズ除去回路13に含まれるアンプAの正側の差動出力端子からの出力電圧値が示されている。また、ノイズ除去回路13が電源VおよびスイッチSW35を備えない場合の動作として、(b) ノイズ除去回路13に含まれるアンプAの正側の差動出力端子からの出力電圧値が示されている。
【0050】
電源Vの電圧値Vを2.2Vとし、アンプAの中心電圧値Vcomを2.5Vとし、アンプAの正側の差動入力端子の入力電圧値Vi+を0.2V〜4.2Vとした場合、図4(a)に示されるように、正側の差動出力端子からの出力電圧値Vo+は1.5V〜3.5Vとなる。この値は、先に述べた(1)式から算出される。また、(1)式によれば、正側の差動入力端子の入力電圧値Vi+が0Vのとき、正側の差動出力端子からの出力電圧値Vo+は1.4Vである。つまり、アンプAの正側の差動出力端子では1.4V以上の出力が可能である。なお、アンプAの負側の差動出力端子の出力レンジも上記(2)式を用いて算出できる。負側の差動出力端子では3.6V以下の出力が可能である。
【0051】
一方、ノイズ除去回路13に電源VおよびスイッチSW35が含まれない場合、アンプAの負側の差動入力端子にはリセット電圧値が入力されることとなる。リセット電圧値はほぼ0Vであるため、正側の差動出力端子および負側の差動出力端子からの出力電圧値は下記(3)式および(4)式で表すことができる。ここで、上記(1)式および(2)式と同様に、正側の差動出力端子からの出力電圧値をVo+とし、負側の差動出力端子からの出力電圧値をVo−とし、正側の差動入力端子の入力電圧値をVi+とし、負側の差動入力端子の入力電圧値をVi−とし、アンプAの中心電圧値をVcomとする。

o+=Vi+÷2+Vcom ・・・(3)
o−=−Vi+÷2+Vcom ・・・(4)

【0052】
上記(3)式において、アンプAの中心電圧値Vcomを2.5Vとし、アンプAの正側の差動入力端子の入力電圧値Vi+を0.2V〜4.2Vとした場合、図4(b)に示されるように、正側の差動出力端子からの出力電圧値Vo+は2.6V〜4.6Vとなる。また、(3)式によれば、正側の差動入力端子の入力電圧値Vi+が0Vのとき、正側の差動出力端子からの出力電圧値Vo+は2.5Vである。つまり、アンプAの正側の差動出力端子では2.5V未満の出力は不可能である。なお、アンプAの負側の差動出力端子の出力レンジについては上記(4)式を用いて算出できる。負側の差動出力端子では2.5Vを超える出力が不可能である。
【0053】
ノイズ除去回路13に電源VおよびスイッチSW35を備えない場合の動作と対比することで判るように、第1実施形態では、ノイズ除去回路13に電源VおよびスイッチSW35を備えることにより、ノイズ除去回路13に含まれるアンプAの正側の差動出力端子および負側の差動出力端子の出力レンジが拡大されている。
【0054】
また、この光検出装置1では、ノイズ除去回路13をCDS回路として機能させないようにすることができる。図5は、ノイズ除去回路13をCDS回路として機能させない場合における、光検出装置1の動作を説明するタイミングチャートである。この図に示される時刻t11〜t13,t15〜t17は、図3に示される時刻t11〜t13,t15〜t17と同一である。図5(a)〜(f)は図3(a)〜(f)とほぼ同一であるが、図5(c)に示されるスイッチSW31が時刻t12で開く点において、図3と異なっている。スイッチSW31が時刻t12に開くと、容量素子C32にはリセット電圧値に応じた量の電荷が蓄積される。時刻t16にスイッチSW33が開き、時刻t17にスイッチSW31が閉じると、オフセット電圧値が重畳された信号電圧値とリセット電圧値との差分がアンプAの正側の差動入力端子に入力される。この場合、アンプAの負側の差動出力端子および正側の差動出力端子は、図5(h)及び(i)に示されるように、オフセット電圧値が重畳された信号電圧値に応じた差動信号を出力することとなる。このように、スイッチSW31を閉じるタイミングを変えることによって、ノイズ除去回路13をCDS回路として機能させないようにすることができる。よって、オフセット電圧値の除去を要しない場合にも対応することができる。
【0055】
(第2実施形態)
【0056】
次に、本発明に係る光検出装置の第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態に係る光検出装置2の回路図である。この図に示される光検出装置2は、フォトダイオードPD、フォトダイオード用スイッチSW、積分回路22、第1のノイズ除去回路25、第2のノイズ除去回路23、AD変換回路24、および制御部29を備える。フォトダイオード用スイッチSWと積分回路22の入力端とは配線Lにより接続されている。フォトダイオードPD、フォトダイオード用スイッチSWおよび積分回路22それぞれの構成は、第1実施形態の場合と同様である。
【0057】
第1のノイズ除去回路25は、アンプA、容量素子C、スイッチSWおよび電源Vを備える。容量素子Cの一端は積分回路22の出力端子に接続され、容量素子Cの他端はアンプAの非反転入力端子に接続されている。アンプAの反転入力端子はアンプAの出力端子に接続されている。電源VはスイッチSWの一端と接続されており、このスイッチSWの他端はアンプAの非反転入力端子に接続されている。
【0058】
第1のノイズ除去回路25では、所定の時刻に積分回路22から出力される電圧値が取り込まれる。そして、この所定の時刻以降、積分回路22から出力される電圧値の変動分に応じた量の電荷がアンプAの非反転入力端子に入力される。第2実施形態では、スイッチSWが最初に閉状態から開状態に転じた時刻を、所定の時刻とする。
【0059】
第2のノイズ除去回路23の構成は、第1実施形態におけるノイズ除去回路13とほぼ同様である。ただし、ノイズ除去回路13ではスイッチSW31およびスイッチSW32の一端が積分回路12の出力端子に接続されているのに対して、第2のノイズ除去回路23ではスイッチSW31およびスイッチSW32の一端が第1のノイズ除去回路25の出力端子に接続されている点で異なる。
【0060】
制御部29は、フォトダイオードPDとともに設けられるフォトダイオード用スイッチSW、積分回路22、第1のノイズ除去回路25、第2のノイズ除去回路23、およびAD変換回路24それぞれの動作を制御する。
【0061】
第2実施形態においては、第1のノイズ除去回路25は、積分回路22から出力されるオフセット電圧値が重畳された信号電圧値から、オフセット電圧値を除去したものを出力する。第2のノイズ除去回路23では、第1のノイズ除去回路25から出力される電圧値からオフセット電圧値の残存分を除去したものをアンプAの正側の差動入力端子に入力し、電源Vの電圧値から初期化された積分回路22の電圧値を差し引いたものをアンプAの負側の差動入力端子に入力する。アンプAの正側の差動出力端子および負側の差動出力端子は、負側の差動入力端子の入力電圧値と正側の差動入力端子の入力電圧値との差に応じた差動信号を出力する。また、AD変換回路24は、この第2のノイズ除去回路23から出力される差動信号の電圧値をデジタル値に変換して、そのデジタル値を出力する。
【0062】
なお、1組のフォトダイオードPDおよびフォトダイオード用スイッチSWに対して1組の積分回路22、第1のノイズ除去回路25、第2のノイズ除去回路23およびAD変換回路24が設けられていてもよいが、第1実施形態の場合と同様に複数組のフォトダイオードPDおよびフォトダイオード用スイッチSWに対して1組の積分回路22、第1のノイズ除去回路25、第2のノイズ除去回路23、およびAD変換回路24が設けられているほうが好ましい。
【0063】
次に、第2実施形態に係る光検出装置2の動作について説明する。以下に説明する動作は、制御部29による制御の下に行われる。図7は、第2実施形態に係る光検出装置2の動作を説明するタイミングチャートである。なお、フォトダイオードPD、フォトダイオード用スイッチSW、積分回路22、第1のノイズ除去回路25、第2のノイズ除去回路23およびAD変換回路24それぞれが1つずつ設けられているものとして、光検出装置2の動作について説明する。
【0064】
この図には、(a)積分回路22に含まれるリセット用スイッチSWの開閉、(b) フォトダイオードPDに対応して設けられているフォトダイオード用スイッチSWの開閉、(c) 第1のノイズ除去回路25に含まれるスイッチSWの開閉、(d)第2のノイズ除去回路23に含まれるスイッチSW31の開閉、(e)第2のノイズ除去回路23に含まれるスイッチSW32の開閉、(f)第2のノイズ除去回路23に含まれるスイッチSW33およびスイッチSW34の開閉、(g) 第2のノイズ除去回路23に含まれるスイッチSW35の開閉、(h)積分回路22からの出力電圧値、(i) 第2のノイズ除去回路23に含まれるアンプAの正側の差動出力端子からの出力電圧値、および、(j) 第2のノイズ除去回路23に含まれるアンプAの負側の差動出力端子からの出力電圧値、が示されている。各時刻の前後関係については「t21<t22<t23<t24<t25<t26<t27」である。
【0065】
積分回路22において、時刻t21から時刻t23までの期間、積分回路22に含まれるリセット用スイッチSWが閉じていて、容量素子Cfkが放電され、積分回路22からの出力電圧値が初期化される。第1のノイズ除去回路25において、スイッチSWが時刻t21に閉じ、時刻t24に開き、時刻t27に閉じる。第2のノイズ除去回路23において、時刻t21にスイッチSW31〜SW34が閉じ、時刻t22にスイッチSW32が開き、時刻t24にスイッチSW31が開き、時刻t26にスイッチSW33およびスイッチSW34が開き、時刻t27にスイッチSW31およびスイッチSW35が閉じる。また、時刻t25から一定期間、フォトダイオード用スイッチSWが閉じて、フォトダイオードPDで発生し該フォトダイオードPDの接合容量部に蓄積されていた電荷が、フォトダイオード用スイッチSWおよび配線Lを経て積分回路22へ入力される。
【0066】
積分回路22が電荷蓄積可能状態となる時刻は、リセット用スイッチSWが開く時刻t23である。第1のノイズ除去回路25が積分回路12から出力された電圧値を取り込む時刻は、スイッチSWが最初に閉状態から開状態に転じた時刻t24である。また、第2のノイズ除去回路23が第1のノイズ除去回路25から出力された電圧値を取り込む時刻は、スイッチSW31が最初に閉状態から開状態に転じた時刻t24である。
【0067】
時刻t23から時刻t25までの期間、積分回路22は、リセット用スイッチSWが開いているので電荷蓄積可能状態となっているものの、フォトダイオード用スイッチSWが開いているのでフォトダイオードPDから電荷が入力することはなく、容量素子Cfkには電荷が蓄積されていない。しかし、オフセット誤差等により、積分回路22からの出力電圧値は時刻t23後に単調に変化していき、やがて時刻t24前の或る時刻に略一定電圧値(すなわち、オフセット電圧値)に達する。時刻t24にスイッチSWおよびスイッチSW31が開いて、第1のノイズ除去回路25および第2のノイズ除去回路23がオフセット電圧値を取り込む。
【0068】
第2のノイズ除去回路23において、時刻t22にスイッチSW32が開くと、時刻t22における積分回路22の出力電圧値に応じた電圧値が第2のノイズ除去回路23に取り込まれる。この取り込まれる電圧値は、初期化された積分回路22の電圧値(以下、「リセット電圧値」という)を表す。時刻t26にスイッチSW34が開いて、時刻t27にスイッチSW35が閉じると、電源Vの電圧値とリセット電圧値との差に応じた電圧値がノイズ除去回路13のアンプAの負側の差動入力端子に入力される。
【0069】
時刻t25から一定期間、フォトダイオード用スイッチSWが閉じて、フォトダイオードPDで発生し該フォトダイオードPDの接合容量部に蓄積されていた電荷は、フォトダイオード用スイッチSWおよび配線Lを経て積分回路22へ入力して、積分回路22の容量素子Cfkに蓄積される。そして、積分回路22から出力される電圧値は、容量素子Cfkに蓄積された電荷の量に応じた信号電圧値とオフセット電圧値とが重畳されたものとなる。
【0070】
第1のノイズ除去回路25において、時刻t27にスイッチSWが閉じると、積分回路12から出力される電圧値と、先に取り込んだオフセット電圧値との差に応じた電圧値がアンプAから出力される。このように、第1のノイズ除去回路25はCDS回路として機能する。第2のノイズ除去回路23において、時刻t26にスイッチSW33が開き、時刻t27にスイッチSW31が閉じると、第1のノイズ除去回路25から出力される電圧値と、先に取り込んだオフセット電圧値との差に応じた電圧値がアンプAの正側の差動入力端子に入力される。アンプAの正側の差動入力端子に入力される電圧値は、信号電圧値とオフセット電圧値とが重畳されたものからオフセット電圧値を充分に除去したものであり、すなわち信号電圧値である。このように、第2のノイズ除去回路23はCDS回路として機能する。
【0071】
時刻t27以降、アンプAの正側の差動入力端子の入力電圧値と負側の差動入力端子の入力電圧値との差分に応じた差動信号が、アンプAの負側の差動出力端子および正側の差動出力端子から出力される。アンプAには中心電圧値が設定されており、負側の差動出力端子および正側の差動出力端子から出力される電圧値は、第1実施形態と同様に、上記(1)式および(2)式で表すことができる。正側の差動入力端子の入力電圧値Vi+は、信号電圧値である。負側の差動入力端子の入力電圧値Vi−は、電源Vの電圧値とリセット電圧値との差分に応じたものである。したがって、上記(1)式および(2)式で表されるアンプAの正側の差動出力端子からの出力電圧値Vo+および負側の差動出力端子からの出力電圧値Vo−は、オフセット誤差等が除去されて、S/N比が優れたものとなる。
【0072】
なお、この光検出装置2では、第1のノイズ除去回路25および第2のノイズ除去回路23をCDS回路として機能させないようにすることができる。図8は、第1のノイズ除去回路25および第2のノイズ除去回路23をCDS回路として機能させない場合における、光検出装置2の動作を説明するタイミングチャートである。この図に示される時刻t21〜t22,t25〜t27は図7に示される時刻t21〜t22,t25〜t27と同一である。図8(a)〜(g)は図7(a)〜(g)とほぼ同一であるが、図8(c)および図8(d)に示される第1のノイズ除去回路25のスイッチSWおよび第2のノイズ除去回路23のスイッチSW31がt22で開く点において、図7と異なっている。スイッチSWおよびスイッチSW31が時刻t22に開き、時刻t26にスイッチSW33が開き、時刻t27にスイッチSWおよびスイッチSW31が閉じると、オフセット電圧値が重畳された信号電圧値とリセット電圧値との差分がアンプAの正側の差動入力端子に入力される。この場合、アンプAの負側の差動出力端子および正側の差動出力端子は、図8(i)及び(j)に示されるように、オフセット電圧値が重畳された信号電圧値に応じた差動信号を出力することとなる。このように、スイッチSWおよびスイッチSW31を閉じるタイミングを変えることによって、第1のノイズ除去回路25および第2のノイズ除去回路23をCDS回路として機能させないようにすることができる。よって、オフセット電圧値の除去を要しない場合にも対応することができる。
【0073】
(変形例)
【0074】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、第2実施形態における第1のノイズ除去回路の具体的な構成は、上記実施形態で説明したものに限られず、様々なものが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1実施形態に係る光検出装置1の構成図である。
【図2】第1実施形態に係る光検出装置1に含まれるフォトダイオードPDm,n、フォトダイオード用スイッチSWm,n、積分回路12およびノイズ除去回路13の回路図である。
【図3】第1実施形態に係る光検出装置1の動作を説明するタイミングチャートである。
【図4】第1実施形態に係るノイズ除去回路13の動作を説明するタイミングチャートである。
【図5】ノイズ除去回路13をCDS回路として機能させない場合における、光検出装置1の動作を説明するタイミングチャートである。
【図6】第2実施形態に係る光検出装置2の回路図である。
【図7】第2実施形態に係る光検出装置2の動作を説明するタイミングチャートである。
【図8】ノイズ除去回路13をCDS回路として機能させない場合における、光検出装置2の動作を説明するタイミングチャートである。
【図9】ノイズ除去回路を備えた一般的な光検出装置3の構成図である。
【図10】CDS回路を備えた一般的な光検出装置3の動作を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1,2…光検出装置、11…光検出部、12,22…積分回路、13…ノイズ除去回路、14,24…AD変換回路、19,29…制御部、23…第2のノイズ除去回路、25…第1のノイズ除去回路、A,A,A,…アンプ、C31〜C34…容量素子、SW,SW1,1〜SWM,N…フォトダイオード用スイッチ、SW…リセット用スイッチ、SW31〜SW35…スイッチ、V…電源、PD…フォトダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光強度に応じた量の電荷を発生するフォトダイオードと、
前記フォトダイオードに一端が接続されたフォトダイオード用スイッチと、
前記フォトダイオード用スイッチの他端と接続され、前記フォトダイオードで発生し前記フォトダイオード用スイッチを経て入力した電荷を蓄積し、蓄積されている電荷の量に応じた電圧値を出力する積分回路と、
第1および第2の入力端子ならびに第1および第2の出力端子を有するアンプと、第1、第2、第3および第4のスイッチと、第1、第2、第3および第4の容量素子とを含み、前記第1および第2のスイッチの一端が前記積分回路の出力端子に接続され、前記第1のスイッチの他端が前記第1の容量素子の一端に接続され、前記第2のスイッチの他端が前記第2の容量素子の一端に接続され、前記第1の容量素子の他端が前記アンプの第1の入力端子に接続され、第2の容量素子の他端が前記アンプの第2の入力端子に接続され、前記アンプの第1の入力端子と前記アンプの第1の出力端子との間に前記第3のスイッチおよび前記第3の容量素子が並列的に設けられ、前記アンプの第2の入力端子と前記アンプの第2の出力端子との間に前記第4のスイッチおよび前記第4の容量素子が並列的に設けられ、前記第1〜第4のスイッチの開閉状態を切り替えることによって、所定の時刻に前記積分回路から出力される電圧値と、前記所定の時刻以降に前記積分回路から出力される電圧値との差分に応じた信号値を出力するノイズ除去回路と、
を備えることを特徴とする光検出装置。
【請求項2】
前記ノイズ除去回路は、電圧源と、一端が前記電圧源に接続されるとともに他端が前記第2の容量素子の一端に接続された電圧印加用スイッチとを更に含むことを特徴とする請求項1記載の光検出装置。
【請求項3】
前記ノイズ除去回路に含まれる前記アンプの前記第1および第2の出力端子から出力された差動電圧値をAD変換して出力するAD変換回路を更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載の光検出装置。
【請求項4】
前記フォトダイオード用スイッチ、前記積分回路、前記ノイズ除去回路および前記AD変換回路それぞれの動作を制御する制御部を更に備えることを特徴とする請求項3記載の光検出装置。
【請求項5】
入射光強度に応じた量の電荷を発生するフォトダイオードと、
前記フォトダイオードに一端が接続されたフォトダイオード用スイッチと、
前記フォトダイオード用スイッチの他端と接続され、前記フォトダイオードで発生し前記フォトダイオード用スイッチを経て入力した電荷を蓄積し、蓄積されている電荷の量に応じた電圧値を出力する積分回路と、
所定の時刻に前記積分回路から出力される電圧値と、前記所定の時刻以降に前記積分回路から出力される電圧値との差分に応じた信号値を出力する第1のノイズ除去回路と、
第1および第2の入力端子ならびに第1および第2の出力端子を有するアンプと、第1、第2、第3および第4のスイッチと、第1、第2、第3および第4の容量素子とを含み、前記第1および第2のスイッチの一端が前記第1のノイズ除去回路の出力端子に接続され、前記第1のスイッチの他端が前記第1の容量素子の一端に接続され、前記第2のスイッチの他端が前記第2の容量素子の一端に接続され、前記第1の容量素子の他端が前記アンプの第1の入力端子に接続され、第2の容量素子の他端が前記アンプの第2の入力端子に接続され、前記アンプの第1の入力端子と前記アンプの第1の出力端子との間に前記第3のスイッチおよび前記第3の容量素子が並列的に設けられ、前記アンプの第2の入力端子と前記アンプの第2の出力端子との間に前記第4のスイッチおよび前記第4の容量素子が並列的に設けられ、前記第1〜第4のスイッチの開閉状態を切り替えることによって、前記所定の時刻に前記第1のノイズ除去回路から出力される電圧値と、前記所定の時刻以降に前記第1のノイズ除去回路から出力される電圧値との差分に応じた信号値を出力する第2のノイズ除去回路と、
を備えることを特徴とする光検出装置。
【請求項6】
前記第2のノイズ除去回路は、電圧源と、一端が前記電圧源に接続されるとともに他端が前記第2の容量素子の一端に接続された電圧印加用スイッチとを更に含むことを特徴とする請求項5記載の光検出装置。
【請求項7】
前記第2のノイズ除去回路に含まれる前記アンプの前記第1および第2の出力端子から出力された差動電圧値をAD変換して出力するAD変換回路を更に備えることを特徴とする請求項5又は6記載の光検出装置。
【請求項8】
前記フォトダイオード用スイッチ、前記積分回路、前記第1のノイズ除去回路、前記第2のノイズ除去回路および前記AD変換回路それぞれの動作を制御する制御部を更に備えることを特徴とする請求項7記載の光検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−64564(P2008−64564A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241797(P2006−241797)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】