説明

光機能材料

【課題】光電変換用増感色素の提供。
【解決手段】下記式で示される光機能材料。


[式中、R1及びR2は、無置換もしくは置換基を有するアルキル基、無置換もしくは置換基を有するアリール基を表す。また、R1及びR2は互いに結合して環を形成してもよい。R3乃至R12は、水素原子、無置換もしくは置換基を有するアルキル基を表す。R13及びR14は電子吸引基を表す。X1、X2は、無置換もしくは置換基を有する二価のチオフェン残基、あるいは、無置換もしくは置換基を有する二価の縮合チオフェン残基を表す。また、m、nは整数を表し、mとnの和は2乃至6である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光機能材料に関する。当該光機能材料は、光電変換材料、光発光材料または光吸収材料などに使用できる。また、本発明は、この光機能材料を用いた光電変換材料、光電変換電極、およびこれを用いた光電変換セルに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池及びテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅などの化合物太陽電池が実用化もしくは研究開発の対象となっている。これらの太陽電池を更に普及させる為には、製造コスト、原材料、エネルギーペイバックタイム等に関する問題点を克服する必要がある。一方、大面積化や低価格を指向した有機材料を用いた太陽電池もこれまでに多く提案されているが、これらは変換効率が低く、耐久性も悪いという問題があった。
【0003】
こうした状況の中で、色素によって増感された半導体微多孔質体を用いた光電変換電極及び光電変換セル、ならびにこれを作製する為の材料および製造技術が開示されている。(非特許文献1および特許文献1参照)開示されている電池は、ルテニウム錯体色素によって分光増感された酸化チタン多孔質薄層を作用電極とし、ヨウ素を主体とする電解質層および対電極から成る色素増感型の光電変換セルである。この方式の第一の利点は、酸化チタン等の安価な酸化物半導体を用いることから安価な光電変換素子の提供が可能であることである。また、第二の利点は、使用されるルテニウム錯体色素が可視光域に幅広く吸収を有していることから比較的高い変換効率が得られることである。
【0004】
このような色素増感型光電変換セルの問題点の一つとして、色素の原料にルテニウムを用いていることが挙げられる。ルテニウムはクラーク数が0.01ppmと比較的低く、白金やパラジウムに匹敵する程度の少量が地球に現存している。従って、大量に使用された場合には、枯渇する虞がある。更に、ルテニウム錯体色素は高価であることから、光電変換セルの大量普及に対しての妨げとなるものである。
【0005】
最近、色素増感型太陽電池における増感色素として、ルテニウム錯体以外の色素の研究が盛んに行なわれている。その例としてはフェニルキサンテン系色素、フタロシアニン系色素、クマリン系色素、シアニン形色素、ポルフィリン系色素、アゾ系色素等が挙げられる。これらの有機色素はルテニウム錯体に比較して吸光係数が大きく、分子設計の自由度も大きいため、高い光電変換効率が期待されている。しかしながら、色素の光吸収領域が狭いこと、酸化チタンへの電荷の注入が非効率的である等の理由から未だ良好な性能の有機増感色素は見出されていない。
【0006】
これらの問題を解決するため、酸化チタンとの吸着末端に特徴をもたせた増感色素として、置換アクリル酸部位を持つ増感色素が比較的高い変換効率を有することが開示されている(特許文献2、3参照)。これらの増感色素に特徴的な点はアクリル酸末端のカルボン酸基が結合する炭素原子がシアノ基等の電子吸引性置換基を有することにより、アクリル酸末端の電子吸引効果を増大させている点にある。増感色素は末端のカルボキシ基で酸化チタン等の無機酸化物半導体表面に結着し、増感色素が光吸収することによって生じた励起電子をカルボキシ基を通して無機酸化物側へ注入している。従って、この部位の電子吸引効果が強くなることにより電子注入効果が促進され、その結果として高い変換効率を実現している。代表的な例としては、クマリン骨格とシアノ基を有するアクリル酸末端とを組み合わせた増感色素では5%以上の高い変換効率を実現している。(非特許文献2参照)また、ポリエン構造とアミノ基を組み合わせた発色団に同様のアクリル酸末端を導入した増感色素においても同様に5%以上の高い変換効率が達成されている。(非特許文献3参照)
【0007】
しかしクマリン骨格等の吸収波長領域は可視光領域の中で比較的短波長側に偏っているため、この骨格を基に吸収の長波長化を図る為には、長鎖の二重結合部位(ポリエン構造)などの導入が必要となる。長鎖の二重結合部位は活性酸素等に酸化されやすいことや熱安定性が低い等、耐久性の低い性質を有している。同様の理由から、非特許文献3に記載のポリエン構造を有する増感色素も耐久性に問題のあることが予想される。また、増感色素として機能するシアニン系色素等も長鎖二重結合部位を有している為、耐久性の低い色素の一例である。
【0008】
以上の理由から、長鎖二重結合部位等のように耐久性の低い部位の導入によらず、耐久性の高い骨格構造を有し、更に、枯渇の虞のない原料を使用し、安価で高い変換効率を有する光電変換セルの提供を可能にする増感色素が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許4927721号明細書
【特許文献2】特開2002‐164089号公報
【特許文献3】WO 02/11213号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Nature(第353巻、第737−740頁、1991年)
【非特許文献2】Chem. Commun.(第569−570頁、2001年)
【非特許文献3】Chem. Commun.(第252−253頁、2003年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的はルテニウム等の様に枯渇の虞のある原料を使用せず、耐久性の高い骨格構造を有し、安価で高い変換効率を有する色素増感型光電変換セル用の増感色素を提供することにある。さらにはこの増感色素を無機半導体多孔質体表面に連結させた光電変換材料、及び、光電変換材料を、導電性表面を有する透明基材の電導面に積層して成る光電変換電極、及び、光電変換電極を、電解質層を介して導電性対極を組み合わせて成る光電変換セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、透明導電性基板上に積層させた無機酸化物半導体表面に特定の増感色素を連結させることにより、良好な特性を示す光電変換セルの作製が可能であることを見出し、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は下記の一般式(1)で表される光機能材料に関する。
【0014】
一般式(1)
【化1】

【0015】
[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、無置換もしくは置換基を有するアルキル基、無置換もしくは置換基を有するアリール基を表す。また、R1及びR2は互いに結合して環を形成してもよい。
3乃至R12はそれぞれ独立に、水素原子、無置換もしくは置換基を有するアルキル基を表す。
13及びR14はそれぞれ独立に、あるいは一体となって電子吸引基を表す。
1及びX2はそれぞれ独立に、無置換もしくは置換基を有する二価のチオフェン残基、あるいは、無置換もしくは置換基を有する二価の縮合チオフェン残基を表す。
また、m及びnは整数を表し、mとnの和は2乃至6である。]
【0016】
また、本発明は、R13がシアノ基である請求項1記載の光機能材料に関する。
【0017】
また、本発明は、上記光機能材料を含んでなる光電変換用増感色素に関する。
【0018】
また、本発明は、上記増感色素と、無機半導体多孔質体とを連結させて成る光電変換材料に関する。
【0019】
また、本発明は、上記光電変換材料を透明電極に積層させて成る光電変換電極に関する。
【0020】
また、本発明は、上記光電変換電極、電解質層及び導電性対極を含んで成る光電変換セルに関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、枯渇の虞のない材料で高い光電変換効率を有する光電変換セルを提供することが可能である。また、本発明の増感色素と他の増感色素を組み合わせることにより、太陽光に対して幅広い波長領域で高効率な光電変換機能を発現する光電変換材料、光電変換電極及び光電変換セルの作製が可能である。更に、本発明の光機能材料は主骨格がチオフェン環あるいは縮合チオフェン環の連結した構造であり、ポリエン構造を有しない為、光、熱等による劣化が無く、安定性の高い電池の提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、光電変換セル試験試料を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、詳細に本発明について説明する。
【0024】
本発明において光機能材料とは、光を吸収することにより増感効果、発熱効果、発色効果、退色効果、蓄光効果、相変化効果、光電変換効果、光磁気効果、光触媒効果、光変調効果、光記録効果、ラジカル発生効果等の機能を発現する材料のことである。あるいは、これらの効果を受けて発光機能を有する材料のことである。当該光機能材料は、例えば光電変換材料、発光材料、光記録材料、画像形成材料、フォトクロミック材料、エレクトロルミネッセンス材料、光導電材料、二色性材料、ラジカル発生材料、酸発生材料、塩基発生材料、蓄光材料、非線形光学材料、感光材料、光吸収材料、近赤外吸収材料、フォトケミカルホールバーニング材料、光センシング材料、光マーキング材料、光化学治療用増感材料、光相変化記録材料、光焼結記録材料、光磁気記録材料、光線力学療法用色素、光触媒水分解用増感色素及び光電変換用増感色素等に幅広く用いることができる。
【0025】
本明細書においては一般式(1)で表される光機能材料を主として光電変換用増感色素として用いる為、この材料を主として光電変換用増感色素あるいは増感色素として呼称するが、前記の幅広い応用を否定するものではない。
【0026】
色素増感型太陽電池の動作機構は次に記す過程より成るものである。すなわち、太陽光を吸収した増感色素が光励起された後に励起状態の増感色素から酸化チタン等の無機半導体の伝導帯へ電子が注入される過程、無機半導体に電子を注入して酸化された増感色素に対してヨウ素をはじめとするレドックス系からの電子注入による還元過程のである。
【0027】
従って、光電変換用増感色素に必要な機能としては、色素が広い吸収領域を有して太陽光を効率的に吸収できること、酸化チタン等の無機半導体に効率よく電荷を注入できること等が挙げられる。
【0028】
一般式(1)で表される増感色素は、特定の構造であるため、構造中の部位により増感色素の吸収領域を調節し広域化することが可能である。従来のシアニン系色素やChem.commun.第252−253頁、2003年に記載されている色素では、ポリエン構造を用いることにより色素の吸収領域を広域化している。この手法を用いた場合、ポリエン構造が活性酸素による酸化を受け易い為に、光劣化を起こし易い傾向がある。また、熱安定性が低いという欠点もある。一般式(1)で表される増感色素では主骨格がチオフェン環あるいは縮合チオフェン環の連結した構造であり、ポリエン構造をとることが無いことから、このような問題を避けることが可能である。
【0029】
また、一般式(1)で表される増感色素は、末端に酸性官能基もしくはその誘導体等の電子吸引性の基を有している為、酸化チタン等の無機半導体表面への物理吸着、エステル結合等を介した化学吸着等が可能であることから、酸化チタン等の無機半導体への電子注入が効率的に行われる。
【0030】
また、R13、R14が電子吸引性の基であるシアノ基、酸性基等の構造をとることにより、これらの官能基の結合する炭素原子の電子受容性が著しく高くなり、この性質が二重結合を介して、一般式(1)で表される色素骨格と結合しているため、励起電子が色素骨格のπ共役系を経由して酸化チタン等の無機半導体へきわめて効率的に注入される。
【0031】
また、一般式(1)で表される色素は一方の端に電子供与性のアミノ基を有し、他方の端に電子吸引性の基である酸性基等を有するという化学構造により吸収領域が広域化し、酸化チタン等の無機半導体への電子注入の高効率化を期待できる。
【0032】
さらに、一般式(1)で表される色素の化学構造の特徴としては、電子受容性部位と、電子供与性部位を二重結合が分割し、かつπ共役系でつなぐ構造をとっている。このような特徴的な化学構造は、基底状態で電子が電子供与性部位に局在化し、励起状態では電子が電子受容性部位に局在化するという傾向があり、電子受容性部位から酸化チタン等の無機半導体への電子注入をきわめて効率的に行なうことができる。
【0033】
すなわち、一般式(1)で表される色素の化学構造は、高い光電変換効率と高い安定性を達成し得る構造であると言える。
【0034】
次に、一般式(1)で表される色素中の各置換基について説明をする。
【0035】
一般式(1)で表される色素中のR1及びR2はそれぞれ独立に、無置換もしくは置換基を有するアルキル基、無置換もしくは置換基を有するアリール基を表す。また、両者は互いに結合して環を形成してもよい。
【0036】
本発明において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基等がある。
【0037】
アリール基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クオーターフェニリル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等がある。
【0038】
置換基を有するアルキル基としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ベンジル基、4−ビフェニリルメチル基、4−(p−ターフェニリル)メチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、9−フェナントリルメチル基、9−アントリルメチル基、2−フェネチル基、2−(4−ビフェニリル)エチル基、2−{4−(p−ターフェニリル)}エチル基、2−(1−ナフチル)エチル基、2−(2−ナフチル)エチル基、2−(9−フェナントリル)エチル基、2−(9−アントリル)エチル基、3−フェニルプロピル基、3−(4−ビフェニリル)プロピル基、3−{4−(p−ターフェニリル)}プロピル基、3−(1−ナフチル)プロピル基、3−(2−ナフチル)プロピル基、3−(9−フェナントリル)プロピル基、3−(9−アントリル)プロピル基、2−チエニルメチル基、2−ベンゾ[b]チエニルメチル基、2−ナフト[2,3−b]チエニルメチル基、2−フリルメチル基、(2H−ピラン−3−イル)メチル基、1−イソベンゾフラニルメチル基、1−メチル−2−ピロリルメチル基、1−メチル−2−イミダゾリルメチル基、2−ピラジニルメチル基、2−ピリジルメチル基、2−ピリミジニルメチル基、3−ピリダジニルメチル基、1−インドリルメチル、3−イソキノリルメチル、2−キノリルメチル、1−フタラジニルメチル、2−ナフチリジニルメチル、2−キノキサリニルメチル、2−キナゾリニルメチル、3−シンノリニルメチル、2−プテリジニルメチル、1−フェナジニルメチル、3−イソチアゾリルメチル、3−イソキサゾリルメチル、3−フラザニルメチル、8−イソクロマニルメチル、7−クロマニルメチル、2−ピロリジニルメチル、2−イミダゾリジニルメチル、2−ピラゾリジニルメチル、1−ピペリジルメチル、1−インドリニルメチル、4−モルホリノメチル、2−フルオロエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−(2−チエニル)エチル基、2−(2−ベンゾ[b]チエニル)エチル基、2−(2−ナフト[2,3−b]チエニル)エチル基、2−(2−フリル)エチル基、2−(2H−ピラン−3−イル)エチル基、2−(1−イソベンゾフラニル)エチル基、2−(1−メチル−2−ピロリル)エチル基、2−(1−メチル−2−イミダゾリル)エチル基、2−(2−ピラジニル)エチル基、2−(2−ピリジル)エチル基、2−(2−ピリミジニル)エチル基、2−(3−ピリダジニル)エチル基、2−(1−インドリル)エチル、2−(3−イソキノリル)エチル、2−(2−キノリル)エチル、2−(1−フタラジニル)エチル、2−(2−ナフチリジニル)メチル、2−(2−キノキサリニル)エチル、2−(2−キナゾリニル)エチル、2−(3−シンノリニル)エチル、2−(2−プテリジニル)エチル、2−(1−フェナジニル)エチル、2−(3−イソチアゾリル)エチル、2−(3−イソキサゾリル)エチル、2−(3−フラザニル)エチル、2−(8−イソクロマニル)エチル、2−(7−クロマニル)エチル、2−(2−ピロリジニル)エチル、2−(2−イミダゾリジニル)エチル、2−(2−ピラゾリジニル)エチル、2−(1−ピペリジル)エチル、2−(1−インドリニル)エチル、2−(4−モルホリノ)エチル、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ペンチルオキシメチル基、ヘキシルオキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−プロポキシエチル基、2−ブトキシエチル基、2−ペンチルオキシエチル基、2−ヘキシルオキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−プロポキシプロピル基、3−ブトキシプロピル基、3−ペンチルオキシプロピル基、3−ヘキシルオキシプロピル基、4−メトキシブチル基、4−エトキシブチル基、4−プロポキシブチル基、4−ブトキシブチル基、4−ペンチルオキシブチル基、4−ヘキシルオキシブチル基、フェノキシメチル基、4−ビフェニルオキシメチル基、4−(p−ターフェニリル)オキシメチル基、1−ナフチルオキシメチル基、2−ナフチルオキシメチル基、9−フェナントリルオキシメチル基、9−アントリルオキシメチル基、フェノキシエチル基、2−(4−ビフェニル)オキシエチル基、2−{4−(p−ターフェニリル)}オキシエチル基、2−(1−ナフチル)オキシエチル基、2−(2−ナフチル)オキシエチル基、2−(9−フェナントリル)オキシエチル基、2−(9−アントリル)オキシエチル基、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、プロピルチオメチル基、ブチルチオメチル基、ペンチルチオメチル基、ヘキシルチオメチル基、2−(メチルチオ)エチル基、2−(エチルチオ)エチル基、2−(プロピルチオ)エチル基、2−(ブチルチオ)エチル基、2−(ペンチルチオ)エチル基、2−(ヘキシルチオ)エチル基、アセトニル基、エチルカルボニルメチル基、プロピルカルボニルメチル基、ブチルカルボニルメチル基、2−(アセチル)エチル基、2−(エチルカルボニル)エチル基、2−(プロピルカルボニル)エチル基、2−(ブチルカルボニル)エチル基、シアノメチル基、2−シアノエチル基、ジメチルアミノメチル基、2−ジメチルアミノエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基、4−ジメチルアミノブチル基、5−ジメチルアミノペンチル基、ジエチルアミノメチル基、2−ジエチルアミノエチル基、3−ジエチルアミノプロピル基、4−ジエチルアミノブチル基、5−ジエチルアミノペンチル基、ジプロピルアミノメチル基、2−ジプロピルアミノエチル基、3−ジプロピルアミノプロピル基、4−ジプロピルアミノブチル基、5−ジプロピルアミノペンチル基、ジブチルアミノメチル基、2−ジブチルアミノエチル基、3−ジブチルアミノプロピル基、4−ジブチルアミノブチル基、5−ジブチルアミノペンチル基、フタルイミドメチル基、(4−メチルフタルイミド)メチル基、(4,5−ジメチルフタルイミド)メチル基、(3,4,5,6−テトラメチルフタルイミド)メチル基、(4−エチルフタルイミド)メチル基、(4,5−ジエチルフタルイミド)メチル基、[4−{(3−ジエチルアミノ)プロピル}スルファモイルフタルイミド]メチル基、[4−{(2−ジエチルアミノ)エチル}スルファモイルフタルイミド]メチル基、[4−{(3−ジブチルアミノ)プロピル}スルファモイルフタルイミド]メチル基等が挙げられる。
【0039】
置換基を有するアリール基としては、o−、m−及びp−フルオロフェニル基、o−、m−及びp−クロロフェニル基、o−、m−及びp−ブロモフェニル基、o−、m−及びp−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−、m−及びp−エチルフェニル基、o−、m−及びp−クメニル基、4−(4’−フルオロ)ビフェニリル基、4−(4’−クロロ)ビフェニリル基、4−(4’−ブロモ)ビフェニリル基、4−(4’−メチル)ビフェニリル基、4−(4’−エチル)ビフェニリル基、1−(5−メチル)ナフチル基、1−(5−エチル)ナフチル基、2−(5−メチル)ナフチル基、2−(5−エチル)ナフチル基、9−(3−メチル)フェナントリル基、9−(3−エチル)フェナントリル基、9−(10−メチル)アントリル基、9−(10−エチル)アントリル基、4−(2−チエニル)フェニル基、4−(2−フリル)フェニル基、4−(2−ピリジル)フェニル基、4−(2−ピラジニル)フェニル基、4−(2−ピリミジニル)フェニル基、4−(3−ピリダジニル)フェニル基、4−(3−イソキノリル)フェニル基、4−(2−キノリル)フェニル基、4−(1−フタラジニル)フェニル基、4−(2−キノキサリニル)フェニル基、4−(2−キナゾリニル)フェニル基、4−(3−シンノリニル)フェニル基、o−、m−及びp−メトキシフェニル基、o−、m−及びp−エトキシフェニル基、o−、m−及びp−プロポキシフェニル基、o−、m−及びp−ブトキシフェニル基、o−、m−及びp−ペンチルオキシフェニル基、o−、m−及びp−ヘキシルオキシフェニル基、o−、m−及びp−ヘプチルオキシフェニル基、o−、m−及びp−オクチルオキシフェニル基、o−、m−及びp−ノニルオキシフェニル基、o−、m−及びp−デシルオキシフェニル基、o−、m−及びp−ウンデシルオキシフェニル基、o−、m−及びp−ドデシルオキシフェニル基、2−フェノキシフェニル基、2−(4−ビフェニリル)オキシフェニル基、2−(1−ナフチル)オキシフェニル基、2−(2−ナフチル)オキシフェニル基、2−(9−フェナントリル)オキシフェニル基、2−(9−アントリル)オキシフェニル基、2−メチルチオフェニル基、2−エチルチオフェニル基、2−プロピルチオフェニル基、2−ブチルチオフェニル基、2−アセチルフェニル基、2−エチルカルボニルフェニル基、2−プロピルカルボニルフェニル基、2−ブチルカルボニルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、4−(4−ビフェニリル)オキシフェニル基、4−(1−ナフチル)オキシフェニル基、4−(2−ナフチル)オキシフェニル基、4−(9−フェナントリル)オキシフェニル基、4−(9−アントリル)オキシフェニル基、4−メチルチオフェニル基、4−エチルチオフェニル基、4−プロピルチオフェニル基、4−ブチルチオフェニル基、4−アセチルフェニル基、4−エチルカルボニルフェニル基、4−プロピルカルボニルフェニル基、4−ブチルカルボニルフェニル基等が挙げられる。
【0040】
1及びR2として、好ましくはアルキル基で置換されたアリール基が挙げられ、特に好ましくは、1,1,3,3−テトラメチルブチル基で置換されたフェニル基が挙げられる。このアルキル基は、溶解性と安定性を有し、また、嵩高い置換基であるがゆえ、分子同士のスタッキングを防止する効果が高く、増感色素として、高い性能を達成できる。
【0041】
1及びR2が互いに結合して環を形成した例としては、カルバゾール、β−カルボリン、ピロリジン、ピペリジン、インドリン、イソインドリン等が挙げられる。
【0042】
13およびR14は、それぞれ独立に、あるいは、一体となって電子吸引基を表す。好ましくは、R13がシアノ基などの電子吸引基であり、R14が酸性官能基もしくはその誘導体である電子吸引基であることが好ましい。
【0043】
酸性官能基としては、特に制限はないが、好ましくはカルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、ホスフィン酸基、ヒドロキシ基、ヒドロキサム酸基、ボロン酸基、スクアリン酸基等があげられる。これらの酸性官能基は、その誘導体であってもよい。誘導体としては特に制限はないが、例えば、エステル体やアミド体、陽イオンを対イオンとする塩が挙げられる。
【0044】
酸性官能基とエステル体を形成する官能基としては、上記の酸性基とエステルを形成するものであれば特に制限はないが、例としては、アルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基、アシル基、アルキルシリル基、アリールシリル基等があげられる。
【0045】
酸性官能基とエステル体を形成する官能基のうち、好ましいものとしては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t‐ブチル基といった炭素数1乃至20のアルキル基や、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェナシル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、トリメチルシリル基、t‐ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0046】
酸性官能基とアミド体を形成する官能基としては、上記の酸性官能基とアミドを形成するものであれば特に制限はないが、例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、7−ニトロインドリル基、8−ニトロテトラヒドロキノリル基等があげられる。
【0047】
酸性官能基と塩を形成する場合の陽イオンとしては、上記の酸性基と塩を形成する
陽イオンであれば特に制限はないが、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属イオンやテトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム等の四級アンモニウムイオンがあげられる。
【0048】
本発明の化合物を酸化チタン等の無機半導体に吸着させて使用する場合、この酸性官能基は、四級アンモニウム塩やフリーの酸性官能基であることが好ましいが、エステル体の場合には、無機半導体に吸着させる際に、適当な触媒等を用いて系中で加水分解をしながら吸着させることもできる。
【0049】
本発明における電子吸引基とは、ハメットの置換基定数σの値が正である官能基を表す。これらの官能基としては、特に制限はないが、前述の酸性官能基のほか、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルキルチオ基、ペルフルオロアルキルカルボニル基、置換基を有してもよいスルホンアミド基、4−シアノフェニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0050】
上記の電子吸引性基のうち、アシル基としては、アセチル基、チオアセチル基、ベンゼンスルホニル基、ホスホノニトリドイル基等が挙げられる。
【0051】
また、アルキルオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0052】
また、アリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0053】
また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0054】
また、アルキルスルホニル基としては、メシル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基等が挙げられる。
【0055】
また、アリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等が挙げられる。
【0056】
また、ペルフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
【0057】
また、ペルフルオロアルキルチオ基としては、トリフルオロメチルチオ基、ペンタフルオロエチルチオ基等が挙げられる。
【0058】
また、ペルフルオロアルキルカルボニル基としては、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロエチルカルボニル基等が挙げられる。
【0059】
また、置換基を有しても良いスルホンアミド基としては、スルホンアミド基、ジメチルアミノスルホニル基、ジエチルアミノスルホニル基、ジフェニルアミノスルホニル基等が挙げられる。
【0060】
以上に挙げた電子吸引性基のうち好ましいものとしては、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ペルフルオロアルキルカルボニル基が挙げられる。
【0061】
1およびX2はそれぞれ独立に、無置換もしくは置換基を有する二価のチオフェン残基、あるいは、無置換もしくは置換基を有する二価の縮合チオフェン残基を表す。本発明における縮合チオフェン残基とはチオフェン環が2乃至7個縮合した構造の残基であり、下記の構造式(1)乃至構造式(6)に示す。
【0062】
構造式(1)
【化2】





【0063】
構造式(2)
【化3】





【0064】
構造式(3)
【化4】





【0065】
構造式(4)
【化5】







【0066】
構造式(5)
【化6】

【0067】
構造式(6)
【化7】





【0068】
さて、本発明の化合物は、二重結合を有するため、シス体、トランス体などの構造異性体を種々とり得る。これらは、何れも光電変換用増感色素として良好に使用することができる。さらに、置換基等に二重結合を有した場合にも同様のことがいえる。
【0069】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、次の式(1)に示すような方法により製造することができる。
【0070】
式(1)
【化8】



【0071】
上記の式(1)で示した反応は溶媒中、触媒存在下で行うことが出来る。触媒としては、ピペリジン、酢酸アンモニウム等を用いることができるが、特にこれらには限定されず、例えば、Organic Reactions Volume15 Chapter2に記載の触媒を使用することができる。また、溶媒としては、エタノール、テトラヒドロフラン等を用いることができるが、特にこれらには限定されず、例えば、Organic Reactions Volume15 Chapter2に記載の溶媒を使用することができる。また、反応が進行しにくい場合には、溶媒を用いず反応させることが有効な場合もある。 さらに、通常、反応温度は室温でかまわないが、必要に応じて加熱して反応させることもできる。
【0072】
次の表1に本発明の光電変換用増感色素として用いることができる化合物の代表例を示すが、本発明はこれらの代表例に限定されるものではない。
【0073】
表1
【表1】

【0074】
【表1】

【0075】
【表1】

【0076】
【表1】

【0077】
【表1】

【0078】
【表1】

【0079】
【表1】

【0080】
【表1】

【0081】
【表1】

【0082】
【表1】

【0083】
【表1】

【0084】
【表1】

【0085】
【表1】

【0086】
【表1】

【0087】
【表1】

【0088】
【表1】

【0089】
【表1】

【0090】
【表1】

【0091】
【表1】

【0092】
【表1】

【0093】
【表1】

【0094】
【表1】

【0095】
【表1】

【0096】
【表1】

【0097】
【表1】

【0098】
【表1】

【0099】
【表1】

【0100】
【表1】

【0101】
【表1】

【0102】
【表1】

【0103】
【表1】

【0104】
【表1】

【0105】
【表1】

【0106】
【表1】

【0107】
【表1】

【0108】
【表1】

【0109】
【表1】

【0110】
【表1】

【0111】
【表1】

【0112】
【表1】

【0113】
【表1】

【0114】
【表1】

【0115】
ところで、本発明において用いられる光電変換用増感色素は、一般式(1)で表される増感色素が吸収し得ない領域の太陽光吸収を補うために他の増感色素と組み合わせて用いることができる。ここにおいて他の増感色素としてはアゾ系色素、キナクリドン系色素、ジケトピロロピロール系色素、スクワリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、クロロフィル系色素、ルテニウム錯体系色素、インジゴ系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素等及びその誘導体等があげられる。これらの増感色素はその化学構造中に無機半導体多孔質体表面に連結し得るような官能基を有していることが望ましい。その理由として、光励起された色素の励起電子を無機半導体多孔質体の伝導帯に迅速に伝達可能であることが挙げられる。ここでいう官能基とは、前述の酸性官能基等が挙げられるが、無機半導体多孔質体表面に増感色素を連結し、色素の励起電子を無機半導体多孔質体の伝導帯に迅速に伝え得る機能を有する置換基であればよい。
【0116】
以下、本発明で使用される光電変換用増感色素以外の材料について説明する。
【0117】
(無機酸化物)
本発明において用いられる光電変換用増感色素は連結基を介して無機半導体多孔質体表面に連結することによって無機半導体多孔質体が増感された光電変換材料を形成する。無機半導体は、一般に、一部の領域の光に対して光電変換機能を有しているが、この表面に増感色素を連結することによって可視光及び/又は近赤外光領域までの光電変換が可能となる。無機半導体多孔質体としては主に無機酸化物が用いられるが、増感色素を連結することによって光電変換機能を有する無機半導体多孔質体であればこれに限らない。無機半導体としては、シリコン、ゲルマニウム、III族‐V族系半導体、金属カルコゲニド等が挙げられる。本発明で用いられる無機酸化物半導体多孔質体としては、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化ランタノイド、酸化イットリウム、酸化バナジウム等の多孔質体を挙げることができるが、これらの表面が増感色素を連結することによって可視光及び/又は近赤外光領域までの光電変換が可能となるものであればこれらに限らない。無機酸化物半導体多孔質体表面が増感色素によって増感されるためには無機酸化物の伝導帯が増感色素の光励起順位から電子を受容し易い準位に存在することが望ましい。この理由から、前記無機酸化物半導体多孔質体の中でも、特に酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ等が用いられる。さらに、価格や環境衛生性等の点から、特に酸化チタンが用いられる。また、本発明においては前記無機酸化物半導体多孔質体から一種類又は複数の種類を選択して組み合わせることができる。
【0118】
(無機酸化物の多孔質化)
無機半導体多孔質体は、多量の増感色素をその表面に連結し、高効率な光電変換能力を発現させる目的から、多孔質化することにより広い表面積を有している。多孔質化の方法としては、粒子径が数乃至数十ナノメートルの酸化チタン等の無機酸化物粒子をペースト化した後に焼結する方法が広く知られているが、多孔質化して広い表面積を得る方法であればこれに限らない。
【0119】
(光電変換電極)
本発明において用いられる光電変換材料は電導性表面を有する透明基材の電導面に積層することによって光電変換電極を形成する。
【0120】
(電導性表面)
本発明において用いられる電導性表面としては、太陽光の可視領域から近赤外領域に対して光吸収が少ない導電材料であれば特に限定されないが、ITO(インジウム−スズ酸化物)や酸化スズ(フッ素等がドープされたものを含む)、酸化亜鉛等の電導性の良好な金属酸化物が好適である。
【0121】
(透明基材)
用いられる透明基材としては太陽光の可視領域から近赤外領域における光吸収の少ない材料であれば特に限定されない。石英、並ガラス、BK7、鉛ガラス等のガラス基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラート、ポリプロピレン、テトラアセチルセルロース、シンジオクタチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ、塩化ビニール等の樹脂基材等を用いることができる。
【0122】
(積層方法)
本発明において用いられる光電変換材料を、電導性表面を有する透明基材の電導面に積層する方法としては、電導面にペースト化した無機酸化物粒子を塗布した後に乾燥又は焼結させることにより無機酸化物半導体多孔質体を形成し、これを透明基材ごと増感色素を溶解させた溶液中に浸すことにより、無機多孔質表面と増感色素の連結基の親和性を利用して増感色素を無機多孔質表面に結合させる方法が一般的であるが、この方法に限定されない。無機酸化物粒子をペースト化させるためには無機酸化物粒子を水又は適当な有機溶剤中に分散させる。均質で表面積が大きい無機多孔質表面として積層させるには分散性の良いペーストにすることが重要であり、必要に応じて、硝酸やアセチルアセトン等の酸やポリエチレングリコール、トリトンX−100等の分散剤をペースト成分に混合し、ペイントシェーカー等を用いてペースト化する。ペーストを透明基材の電導面に塗布する方法としてはスピンコーターによる塗布方法、スクリーン印刷法、スキージーを用いた塗布方法、ディップ法、吹き付け法、ローラー法等が用いられる。塗布された無機酸化物ペーストは乾燥又は焼成後にペースト中の揮発成分が除去され透明基材の電導面上に無機酸化物半導体多孔質体を形成する。乾燥又は焼成の条件としては、例えば400℃から500℃の温度で30分〜1時間程度の熱エネルギーを与える方法が一般的であるが、透明基材の電導面に密着性を有し、太陽光照射時に良好な起電力が得られる乾燥又は焼成方法であればこれに限らない。
【0123】
増感色素を溶解させた溶液を調製する際に用いる溶剤としては、エタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン等の炭酸エステル系溶剤、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3‐ジメチルイミダゾリノン、N−メチルピロリドン、水等を用いることができるがこれらに限らない。
【0124】
透明基材の電導面上に形成される無機酸化物半導体多孔質体の膜厚は0.5μm乃至200μmであることが望ましい。膜厚がこの範囲未満の場合には良好な変換効率が得られない。又膜厚がこの範囲より厚い場合には成膜時に割れや剥がれが生じる等作製が困難になるだけでなく、無機酸化物半導体多孔質体表層と電導面との距離が長くなる為発生した電荷が電導面に有効に伝えられなくなるので、良好な変換効率を得ることが困難になる。
【0125】
(光電変換セル)
本発明において用いられる光電変換電極は、電解質層を介して導電性対極を組み合わせることにより光電変換セルを形成する。
【0126】
(電解質層)
本発明で用いられる電解質層は電解質、媒体、および添加物から構成されることが好ましい。本発明の電解質はヨウ素とヨウ化物(例としてヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化第一銅、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等)の混合物、臭素と臭化物(例として臭化リチウム等)の混合物、Inorganic Chemistry,35巻,1168−1178頁(1996年)に記載の溶融塩等を用いることができるがこの限りではない。この中でもヨウ素とヨウ化物の組み合わせとしてヨウ化リチウム、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等を混合した電解質が本発明では好ましいが、この組み合わせに限らない。好ましい電解質濃度は、媒体中のヨウ素が0.01M乃至0.5Mでありヨウ化物の混合物が0.1M乃至15Mである。
【0127】
本発明で電解質層に用いられる媒体は、良好なイオン電導性を発現できる化合物であることが望ましい。溶液状の媒体としては、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどの鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物、ジメチルスルホキシド、スルホランなど非プロトン極性物質、水などを用いることができる。
【0128】
また、固体状(ゲル状を含む)の媒体を用いる目的で、ポリマーを含ませることもできる。この場合、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーを前記溶液状媒体中に添加したり、エチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーを前記溶液状媒体中で重合させることにより媒体を固体状にする。
【0129】
電解質層としては、この他にCuI、CuSCN媒体を必要としない電解質及びNature,395巻,583−585頁(1998年)記載の2,2',7,7'−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9'−スピロビフルオレンのような正孔輸送材料を用いることができる。
【0130】
本発明に用いられる電解質層には、光電変換セルの電気的出力を向上させたり、耐久性を向上させる働きをする添加物を添加することができる。電気的出力を向上させる添加物として4−t−ブチルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジン等があげられる。耐久性を向上させる添加物としてはヨウ化マグネシウム等があげられる。
【0131】
(導電性対極)
本発明で用いられる電導性対極は光電変換セルの正極として機能するものである。具体的に対極に用いる導電性の材料としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、金属酸化物(ITO(インジウム‐スズ酸化物)や酸化スズ(フッ素等がドープされたものを含む)、酸化亜鉛)、または炭素等があげられる。対極の膜厚は、特に制限はないが、5nm乃至10μmであることが好ましい。
【0132】
(組み立て方)
前記の光電変換電極と導電性対極を、電解質層を介して組み合わせることにより光電変換セルを形成する。必要に応じて電解質層の漏れや揮発を防ぐために、光電変換セルの周囲に封止を施す。封止には熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、ガラスフリット等を封止材料として用いることができる。光電変換セルは必要に応じて小面積の光電変換セルを連結させて作る。光電変換セルを直列に組み合わせることにより起電圧を高くすることができる。
【実施例】
【0133】
以下に実施例を具体的に示すが本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、数字は重量基準を表す。
【0134】
変換用増感色素の評価法として、増感色素を用いて組み立てた光電変換セルの変換効率を測定する方法について、光電変換セルの試験試料を表した図1を用いて説明する。
【0135】
透明電極
フッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付ガラス基板3(旭ガラス社製、タイプU−TCO)を使用した。
【0136】
導電性対極
フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板3(旭ガラス社製、タイプU−TCO)の導電層上に、スパッタリング法により白金層(白金電極層)(厚み150nm)を積層した導電性対極4を用いた。
【0137】
酸化チタンペーストの調製
下記の処方で酸化チタンとジルコニアビーズを混合し、ペイントシェーカーを用いて分散することにより酸化チタンペーストを得た。
酸化チタン(日本アエロジル社製 P25 粒子径 21nm) 6 部
水(硝酸添加でpH2に調整) 14 部
アセチルアセトン 0.6 部
界面活性剤(ICN社製 Triton X−100) 0.04 部
PEG‐#500,000 0.3 部
【0138】
酸化チタン多孔質層の作成
透明電極の導電面(透明電極層3)に厚さ60μmのメンディングテープを張り、1cm角のテープを除去することでマスクを作り、空いた部分に上記酸化チタンペーストを数滴たらした後に、スキージで余分なペーストを除去した。風乾後、全てのマスクを除去し、450℃のオーブンで1時間焼成して、有効面積1cm2の酸化チタン多孔質層を有する酸化チタン電極を得た。
【0139】
増感色素の吸着
光電変換用増感色素をテトラヒドロフラン:アセトニトリル=1:1(体積比)に溶解(濃度0.6mmol/L)し、メンブランフィルターで不溶分を除去した後に、この色素溶液に上記酸化チタン電極を浸漬し、室温で24時間放置した。浸漬時間は、実際にセルを作成して変換効率を求め、その変換効率が最大となるように設定した。
着色した電極表面を、溶解に使用した溶剤およびアルコールで洗浄した後、4‐t‐ブチルピリジンの2mol%アルコール溶液に30分浸した後、乾燥させて、増感色素の吸着した酸化チタン多孔質層1を有する光電変換電極を得た。
【0140】
電解質溶液の調製
下記処方の電解質溶液を調製した。溶媒にはメトキシアセトニトリルを用いた。
ヨウ化リチウム 0.1M
ヨウ素 0.05M
4‐t‐ブチルピリジン 0.5M
1‐プロピル‐2,3‐ジメチルイミダゾリウムヨージド 0.6M
【0141】
光電変換セルの組み立て
図1に示すように、光電変換セルの試験サンプルを組み立てた。すなわち、上記の手順により光電変換用増感色素を吸着させた酸化チタン多孔質層1が形成された透明電極(フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板3)と、フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板の導電層上に白金層が積層された導電性対極4とを、樹脂フィルム製スペーサー6(三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミラン」フィルム(25μm厚))を挟んで固定し、その空隙に上記の電解質溶液を注入して電解質溶液層2を形成した。ガラス基板3及び白金対極層には、それぞれ変換効率測定用の導線7を固定した。
【0142】
変換効率の測定方法
ORIEL社製ソーラーシミュレーター(#8116)とエアマスフィルターを組み合わせ、光量計で100mW/cm2 の光量に調整して測定用光源とした。光電変換セルの試験サンプルに光照射をしながら、KEITHLEY MODEL2400ソースメーターを使用してI−Vカーブ特性を測定した。変換効率ηは、I−Vカーブ特性測定から得られたVoc(開放電圧値)、Isc(短絡電流値)及びff(フィルファクター値)を用いて下記の式により算出した。
【0143】
【化9】



【0144】
実施例1−21
表1に記載した例示化合物を増感色素として用い、上記の方法により組み立てたセルを用いて評価を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0145】
なお、表2には比較例として、既に背景技術の説明において例示した非特許文献3に記載されている下記構造の化合物について、実施例1−21と同様の評価を行った結果を併記した。
【化10】


【0146】
【表2】

【0147】
【表2】

【0148】
表2に示した実施例から明らかなように、本発明の光機能材料を用いて作製した素子は蛍光灯下暴露24時間後及び擬似太陽光照射100時間後において、作製直後とほぼ同等の変換効率を示している。これらの実施例に対して比較例では、前記の何れの条件下においても、変換効率が作製直後の値から著しく低下していることが分かる。
【符号の説明】
【0149】
1.酸化チタン多孔質層(光電変換用増感色素を吸着済み)
2.電解質溶液層
3.透明電極層(フッ素ドープ型酸化スズ)
4.Pt電極層
5.ガラス基盤
6.樹脂フィルム製スペーサー
7.変換効率測定用導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される光機能材料。
一般式(1)
【化1】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、無置換もしくは置換基を有するアルキル基、無置換もしくは置換基を有するアリール基を表す。また、R1及びR2は互いに結合して環を形成してもよい。
3乃至R12はそれぞれ独立に、水素原子、無置換もしくは置換基を有するアルキル基を表す。
13及びR14はそれぞれ独立に、あるいは一体となって電子吸引基を表す。
1及びX2はそれぞれ独立に、無置換もしくは置換基を有する二価のチオフェン残基、あるいは、無置換もしくは置換基を有する二価の縮合チオフェン残基を表す。
また、m及びnは整数を表し、mとnの和は2乃至6である。]
【請求項2】
13が、シアノ基である請求項1記載の光機能材料。
【請求項3】
請求項1または2記載の光機能材料を含んで成る光電変換用増感色素。
【請求項4】
請求項3記載の増感色素と、無機半導体多孔質体とを連結させて成る光電変換材料。
【請求項5】
請求項4記載の光電変換材料を透明電極に積層させて成る光電変換電極。
【請求項6】
請求項5記載の光電変換電極、電解質層及び導電性対極を含んで成る光電変換セル。

【図1】
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【公開番号】特開2011−26389(P2011−26389A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171332(P2009−171332)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】