説明

光活性化合物及び化学増幅型フォトレジスト組成物

【課題】化学増幅型フォトレジスト組成物において、ラインエッジラフネス(LWR)の更なる改善を図ること。
【解決手段】環状ポリシロキサンと、該環状ポリシロキサンを構成する珪素原子に結合した1又は2以上の側鎖と、を備え、前記側鎖のうち少なくとも一部が、光の作用により酸を発生する光活性基を含み、該光活性基が同一分子中に複数存在するときそれらは同一でも異なっていてもよい、光活性化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光活性化合物及び化学増幅型フォトレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
露光及び現像によりレジストパターンを形成するためのレジスト材料として、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる樹脂と、酸発生剤とを含有する化学増幅型フォトレジスト組成物が知られている。
【0003】
一方、集積回路の製造のために用いられるレジストパターンの解像度を高めるために、浸漬流体を介して露光を行う、液浸リソグラフィと呼ばれる手法の採用が検討されている。例えば特許文献1では、この液浸リソグラフィにおいて、フォトレジスト層と浸漬流体の間に介在させるトップコート層を構成する材料として、特定の構造を有するポリシロキサンの使用が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−241794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、化学増幅型フォトレジスト組成物を用いて形成されるレジストパターンは、端面が波打って、高さ方向において線幅が厳密には一定にならない場合が多い。このような線幅のがたつきは、ラインエッジラフネス(LWR)と呼ばれる。ラインエッジラフネスが十分に小さいことは、高精細な集積回路を製造する上で重要である。
【0006】
しかし、レジストパターンの解像度が高くなるのにともなって、このLWRに関する要求レベルがより高くなっており、従来の化学増幅型フォトレジスト組成物によれば、LWRの点で十分なレベルを達成することが困難となりつつある状況にある。
【0007】
そこで、本発明は、化学増幅型フォトレジスト組成物において、ラインエッジラフネス(LWR)の更なる改善を図ることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、環状ポリシロキサンと、該環状ポリシロキサンを構成する珪素原子に結合した1又は2以上の側鎖と、を備え、側鎖のうち少なくとも一部が、光の作用により酸を発生する光活性基を含む光活性化合物に関する。光活性基が同一分子中に複数存在するとき、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0009】
上記本発明に係る光活性化合物は、光の作用により酸を発生する光活性基を有していることから、化学増幅型フォトレジスト組成物の酸発生剤として機能する。そして、環状ポリシロキサンの側鎖に光活性基を導入したことにより、化学増幅型フォトレジスト組成物のラインエッジラフネス(LWR)の更なる改善を図ることが可能となった。更には、本発明に係る光活性化合物を用いた化学増幅型フォトレジスト組成物によって形成されるフォトレジスト層は、水との親和性が低いという効果も有する。そのため、水を含む浸漬流体を用いた液浸リソグラフィにおいて、上述の特許文献1のようなトップコート層を用いることなく、良好なレジストパターンを形成することが可能となり得る。
【0010】
本発明に係る光活性化合物は、下記一般式(I)で表されるものであることが好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
式(I)中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、下記一般式(a1)又は(a2)で表される基を示す。
【0013】
【化2】

【0014】
式(a1)及び式(a2)中、Q、Q及びQはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を示し、同一分子中に含まれる複数のQ、Q及びQは同一でも異なっていてもよく、mは1〜10の整数を示し、nは0〜10の整数を示す。
【0015】
、R、R、R、R、R、R及びRから選ばれる少なくとも1つにおいて、Qa、Q及びQから選ばれる少なくとも1つが、光活性基を置換基として有する脂肪族炭化水素基である。光活性基を置換基として有する脂肪族炭化水素基は、好ましくはQである。
【0016】
光活性基を置換基として有する脂肪族炭化水素基は、光活性基を置換基として有する脂環式炭化水素基であることが好ましい。この場合、脂環式炭化水素基の環状構造を構成する炭素原子の一部が酸素原子及び/又はカルボニル基で置換されていてもよい。より具体的には、光活性基を置換基として有する前記脂環式炭化水素基が、下記一般式(I−1)で表される基であることが好ましい。
【0017】
【化3】

【0018】
式(I−1)中、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
【0019】
、R、R、R、R、R、R及びRから選ばれる少なくとも1つにおいて、Qa、Q及びQから選ばれる少なくとも1つが、下記化学式(n−1)で表される基であることが好ましい。光活性基で置換された脂肪族炭化水素基に加えて、式(n−1)の基が導入されることにより、これを含む化学増幅型フォトレジスト組成物を用いて形成された塗膜の疎水性が高められ、その水に対する接触角を上げることができる。
【0020】
【化4】

【0021】
本発明に係る光活性化合物が有する光活性基は、下記一般式(i)、(ii)、(iii)、(iv)又は(v)で表される基であることが好ましい。これにより本発明による上述の効果がより一層顕著に奏される。式(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)中のRaは、上記式(I−1)中のRと同義である。T及びTはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を示す。
【0022】
【化5】

【0023】
本発明はまた、上記本発明に係る光活性化合物と、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる樹脂と、を含有する化学増幅型フォトレジスト組成物に関する。本発明に係る化学増幅型フォトレジストによれば、優れたラインエッジラフネス(LWR)を達成することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、化学増幅型フォトレジスト組成物において、ラインエッジラフネス(LWR)の更なる改善を図ることが可能である。さらに、本発明によれば、水との親和性の低いフォトレジスト膜を形成可能であり、水又は親水性溶媒を用いた液浸フォトリソグラフィの用途においても非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の記載において、含有量又は使用量を表す「%」及び「部」は、特記がないかぎり質量基準である。「重量平均分子量」は、GPC測定に基づいて算出される標準ポリスチレン換算値を意味する。
【0026】
本実施形態に係る光活性化合物は、環状ポリシロキサンと、該環状ポリシロキサンを構成する珪素原子に結合した1又は2以上の側鎖とを有する。本実施形態に係る光活性化合物は、典型的には、一般式(RSiO3/2で表される、側鎖Rを有するシルセスキオキサンである。側鎖Rのうち少なくとも一部が、光の作用により酸を発生する光活性基を含む。同一分子中に複数存在する側鎖Rは同一でも異なっていてもよい。
【0027】
光活性基は、上記一般式(i)、(ii)、(iii)、(iv)又は(v)で表される基であることが好ましく、これらの中でも式(i)、(iii)又は(iv)で表される基が好ましい。これら式中のT及びTは置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を示す。
【0028】
これら式中のRは、置換基を有していてもよい炭化水素基である。該炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜10である。Rは、例えば、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は下記一般式(b)で表される基であり得る。
【0029】
【化6】

【0030】
式(b)中、Q及びQはそれぞれ独立にフッ素原子又はペルフルオロアルキル基を示し、Rは単結合又はアルキレン基を示し、Rは置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基を示し、該脂環式炭化水素基の環状構造を構成する炭素原子の一部が酸素原子及び/又はカルボニル基で置換されていてもよい。Rは、例えば、下記化学式で示される基であってよい。
【0031】
【化7】

【0032】
本実施形態に係る光活性化合物は、好ましくは、上述の一般式(I)で表される化合物である。式(I)中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、上述の一般式(a1)又は(a2)で表される基である。
【0033】
式(a1)及び式(a2)中、Q、Q及びQはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基を示す。同一分子中に含まれる複数のQ、Q及びQは同一でも異なっていてもよい。mは1〜10の整数を示し、nは0〜10の整数を示す。
【0034】
〜Rから選ばれる少なくとも1つにおいて、Qa、Q及びQから選ばれる少なくとも1つが、上述の光活性基を置換基として有する脂肪族炭化水素基である。好ましくはQが、光活性基を置換基として有する脂肪族炭化水素基である。光活性基が式(i)又は(v)で表される基であるとき、当該光活性基は脂肪族炭化水素基中の水素原子2個を置換する。
【0035】
光活性基を置換基として有する脂肪族炭化水素基は、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基であることが好ましい。この場合、脂環式炭化水素基の環状構造を構成する炭素原子の一部が酸素原子及び/又はカルボニル基で置換されていてもよい。より具体的には、光活性基を置換基として有する脂環式炭化水素基が、上述の一般式(I−1)で表される基であることが好ましい。
【0036】
〜Rのうち光活性基を含まない置換基において、Q、Q及びQから選ばれる少なくとも1つ(典型的にはQ)が、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基であることが好ましい。係る脂環式炭化水素基も、その環状構造を構成する炭素原子の一部が酸素原子及び/又はカルボニル基で置換されていてもよい。係る脂環式炭化水素基は、例えば、下記化学式(n−1)、(n−3)、(n−4)又は(n−11)で表される基であってよい。
【0037】
【化8】

【0038】
本実施形態に係る光活性化合物は、当業者には理解されるように、通常の合成反応を適宜組み合わせて合成することができる。式(I)の光活性化合物の合成方法の詳細な例に関しては、後述の実施例において詳細に説明される。
【0039】
本実施形態に係る化学増幅型フォトレジスト組成物は、以上説明したような環状ポリシロキサン及び光活性基を有する光活性化合物と、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる樹脂(以下「樹脂(B)」という。)とを少なくとも含有する。
【0040】
上記光活性化合物の含有量は、樹脂(B)100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましく、1〜10質量部であることがさらに好ましい。
【0041】
樹脂(B)は、特に制限はないが、好ましくは、下記モノマー(b1)、モノマー(b2)及びモノマー(b3)から選ばれる少なくとも1種から導かれる構造単位を含む重合体である。
モノマー(b1):酸の作用により分解してカルボキシル基を生成する、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するアクリル系モノマー
モノマー(b2):水酸基(ただし、カルボキシル基中の−OH基は除く)で置換されたアダマンチル基を有するアクリル系モノマー
モノマー(b3):ラクトン環を有するアクリル系モノマー
【0042】
モノマー(b1)は、好ましくは下記式(11)、(12)又は(13)で表される化合物から選ばれる。
【0043】
【化9】

【0044】
これら式中、R10は水素原子又はメチル基を示し、R11は水素原子、メチル基又はエチル基を示し、Zは下記式(H1)又は式(H2)で表される基を示し、pは1〜4の整数である。
【0045】
【化10】

【0046】
式(H1)中、G、G及びGは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、又はG、G及びGのうちの2つが結合して形成される炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を示す。式(H2)中、G及びGはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基を、Gは置換基を有していてもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基若しくは水素原子を示すか、又は、GとGとが結合して炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を形成するか若しくはGとG又はGとが結合して炭素数3〜20の複素環を形成してもよい。
【0047】
前記の脂環式炭化水素基は、好ましくは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、イソボルニル基、又は下記化学式で表される基である。これらは置換基を有していてもよい。
【0048】
【化11】

【0049】
モノマー(b2)は、好ましくは、下記一般式(21)、(22)、(23)又は(24)で表される化合物から選ばれる。
【0050】
【化12】

【0051】
これら式中、R20は水素原子又はメチル基を示し、R21は水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R22及びR23はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又は水酸基を示し、pは1〜4の整数を示し、rは0〜10の整数を示す。
【0052】
モノマー(b3)は、好ましくは、下記一般式(31)、(32)又は(33)で表される化合物から選ばれる。
【0053】
【化13】

【0054】
これら式中、R30は水素原子又はメチル基を示し、R31は水素原子、メチル基又はエチル基を示し、sは1又は2を示し、pは1〜4の整数を示し、Zは下記化学式:
【化14】


で表される基を示し、R32及びR33はそれぞれ独立に、カルボキシル基、シアノ基又は炭素数1〜4の炭化水素基を示す。tは0〜5の整数を示し、t’及びt’’はそれぞれ独立に0〜3の整数を示す。同一分子中の複数のR32及びR33は、互いに同一でも異なってもよい。
【0055】
樹脂(B)は、モノマー(b1)〜(b3)を任意のモル比で共重合させて得られる共重合体であってよい。樹脂(B)は、同じモル比で共重合された、異なる重量平均分子量を有する2種の共重合体の混合物であることが好ましい。これにより解像度、ラインエッジラフネス及び露光マージンの点でより優れた効果が得られる。これら2種の共重合体の重量平均分子量の差は好ましくは1000以上である。
【0056】
本実施形態に係る化学増幅型フォトレジスト組成物は、環状ポリシロキサン及び光活性基を有する上述の光活性化合物とは異なる酸発生剤(以下、場合により「酸発生剤(A)」という。)を更に含有することが好ましい。酸発生剤(A)は、好ましくは、下記一般式(II)で表される1種又は2種以上の化合物である。
【0057】
【化15】

【0058】
式(II)中、Q及びQはそれぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を示す。Xは、単結合又は−[CH−を示し、該−[CH−に含まれるメチレン基は酸素原子及び/又はカルボニル基で置換されていてもよく、該−[CH−に含まれる水素原子は直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。kは、1〜17の整数を示す。Yは、置換基を有してもよい炭素数4〜36の脂環式炭化水素基を示す。Zは、有機カチオンを示す。
【0059】
ペルフルオロアルキル基としては、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基、ペルフルオロ−tert−ブチル基、ペルフルオロ−n−ペンチル基及びペルフルオロ−n−ヘキシル基などが挙げられる。
【0060】
−[CH−としては、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、sec−ブチレン基及びtert−ブチレン基などが挙げられる。
【0061】
−[CH−に含まれる水素原子を置換する脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状(単環、縮合環、環集合を含む)の炭化水素基及びこれらを組合せた基であってよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基及びドデシル基等のアルキル基が挙げられる。
【0062】
で示される脂環式炭化水素基としては、上述したものと同様のものが挙げられる。なお、脂環式炭化水素基を構成する炭素原子は、酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。脂環式炭化水素基に結合する置換基としては、ハロゲン原子、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6の炭化水素基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、グリシドキシ基及び炭素数2〜4のアシル基が挙げられる。
【0063】
は、好ましくは下記式(Y1)で表される基である。
【0064】
【化16】

【0065】
式(Y1)中、環Wは、炭素数3〜36の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。
【0066】
41は、水素原子あるいは直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6の炭化水素基を表す。R42は、互いに独立に、ハロゲン原子、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、グリシドキシ基あるいは炭素数2〜4のアシル基を表す。xは、0〜8の整数を表す。xが2以上の場合、複数のR42は、同一でも異なってもよい。
【0067】
前記の環Wとしては、例えば、式(W1)〜式(W25)で表される基が挙げられる。
【0068】
【化17】

【0069】
中でも、式(W12)、式(W15)、式(W16)及び式(W20)等が好ましい。言い換えると、Yとして、アダマンタン基又はオキソ−アダマンタン基を有するものが好ましい。
【0070】
としては、さらに、環Wに含まれる水素原子が置換されていないか又は炭化水素基のみで置換された基(ただし、該環Wに含まれるメチレン基は、酸素原子で置換されていてもよい。)及び水酸基又は水酸基を含む基で置換された基(ただし、ラクトン構造を有するものを除く)並びに環Wに含まれる隣接する2つのメチレン基が酸素原子とカルボニル基とで置換されたラクトン構造を有する基及び環Wに含まれる1つのメチレン基がカルボニル基で置換されたケトン構造を有する基、環Wに含まれる水素原子が芳香族炭化水素基で置換された基などが挙げられる。
【0071】
環Wに含まれる水素原子が置換されていないか又は脂肪族炭化水素基のみで置換された(該炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子で置換されていてもよい。)Yとしては、例えば、以下の基が挙げられる。なお、結合手は以下に示した位置以外の任意の位置とすることができる(以下同じ)。
【0072】
【化18】

【0073】
環Wに含まれる水素原子が芳香族炭化水素基で置換されたYとしては、例えば、以下の基が挙げられる。
【0074】
【化19】

【0075】
環Wに含まれる水素原子が水酸基又は水酸基を含む基で置換されたY(ただし、ラクトン構造を有さない。)としては、例えば、以下の基が挙げられる。
【0076】
【化20】

【0077】
環Wに含まれる1つのメチレン基が酸素原子で置換されたエーテル構造を有するYとしては、例えば、以下の基が挙げられる。
【0078】
【化21】

【0079】
環Wに含まれる隣接する2つのメチレン基がカルボニル基と酸素原子とで置換されたラクトン構造を有するYとしては、例えば、以下の基が挙げられる。
【0080】
【化22】

【0081】
環Wに含まれる1つのメチレン基がカルボニル基で置換されたケトン構造を有するYとしては、例えば、以下の基が挙げられる。
【0082】
【化23】

【0083】
式(II)で表される酸発生剤(A)のアニオン部としては、例えば、以下の式(IA)〜式(ID)で表されるアニオン等が挙げられる。
【0084】
【化24】

【0085】
式(IA)〜(ID)中、Q、Q及びYは、式(I)におけるにおけるものと同じものを表す。X10は、単結合あるいは直鎖状又は分岐状の炭素数1〜15のアルキレン基を表す。X11及びX12は、互いに独立に、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜15のアルキレン基を表す。
【0086】
アルキレン基としては、メチレン、エチレン、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基などが挙げられる。X10は好ましくは単結合である。
【0087】
式(II)におけるZで表される有機カチオンとしては、例えば、式(IXz)、式(IXb)、式(IXc)又は式(IXd)などで表されるカチオンが挙げられる。
【0088】
【化25】

【0089】
式(IXa)中、P、P及びPは、互いに独立に、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。P、P及びPのいずれかがアルキル基である場合、該アルキル基は、水酸基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルコキシ基あるいは炭素数3〜12の脂環式炭化水素基で置換されていてもよく、P、P及びPのいずれかが脂環式炭化水素基である場合には、水酸基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基あるいは炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、o−,m−若しくはp−トルイル基、o−,m−若しくはp−tert−ブチル基などが挙げられる。
【0090】
式(IXb)中、P及びPは、互いに独立に、水素原子、水酸基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基あるいは炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
【0091】
式(IXc)中、P及びPは、互いに独立に、直鎖状又は分岐状炭素数1〜12のアルキル基あるいは炭素数3〜12のシクロアルキル基を表すか、PとPとが一緒になって、炭素数3〜12の環を形成してもよい。
【0092】
は、水素原子を表し、Pは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表すか、PとPとが一緒になって、炭素数3〜12の環を形成してもよい。
【0093】
式(IXd)中、P10〜P21は、互いに独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。Eは、硫黄原子又は酸素原子を表す。mは、0又は1を表す。
【0094】
アルコキシ基としては、メチトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブチトキシ基、tert−ブチトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキトキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等のアルキル基が挙げられる。
【0095】
シクロアルキルとしては、上述した脂環式炭化水素基と同様のものが例示される。
【0096】
とPとが一緒になって形成する環としては、テトラヒドロチオフェニウム基などが挙げられる。Pにおける芳香族炭化水素基の置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基等が挙げられる。PとPとが一緒になって形成する環としては、上述した式(W13)〜式(W15)の基などが挙げられる。
【0097】
前記の式(IXa)で表されるカチオンの中でも、例えば、式(IXaa)で表されるカチオン等が好ましく挙げられる。
【0098】
【化26】

【0099】
式(IXaa)中、P〜Pは、互いに独立に、水素原子、水酸基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルコキシ基あるいは炭素数4〜36の脂環式炭化水素を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシドキシ基あるいは炭素数2〜4のアシル基で置換されていてもよい。
【0100】
特に、脂環式炭化水素基としては、アダマンチル骨格、イソボルニル骨格を含むものなどが挙げられ、好ましくは2−アルキル−2−アダマンチル基、1−(1−アダマンチル)−1−アルキル基及びイソボルニル基が好ましい。
【0101】
以上例示したアニオン及びカチオンは、任意に組合せることができる。
【0102】
例えば、式(II)で表される化合物として、式(Xa)〜式(Xi)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物は、優れた解像性能及びパターン形状を示すレジスト組成物を与える酸を発生するため好ましい。
【0103】
【化27】

【0104】
式(Xa)〜(Xi)中、P25、P26及びP27は、互いに独立に、水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基あるいは炭素数4〜36の脂環式炭化水素基を表す。P28及びP29は、互いに独立に、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基あるいは炭素数4〜36の脂環式炭化水素基を表すか、あるいはP28とP29とが一緒になってSを含んで炭素数2〜6の環を形成してもよい。P30は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜36の脂環式炭化水素基あるいは置換されていてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表すか、あるいはP30とP31とが一緒になって炭素数3〜12の環を形成してもよい。ここで、該環に含まれるメチレン基は、任意に、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。
【0105】
及びQは、上記と同義である。X13は、単結合またはメチレン基を表す。
【0106】
28とP29とが一緒になって形成する環としては、テトラヒドロチオフェニウム基などが挙げられる。P30とP31とが一緒になって形成する環としては、上述した式(W13)〜式(W15)の基などが挙げられる。
【0107】
式(II)の酸発生剤としては下記化学式で表される化合物から選ばれることが好ましい。
【0108】
【化28】

【0109】
中でも、カチオンとして式(IXe)で表されるカチオンにおいて、P22、P23及びP24がいずれも水素原子であるトリフェニルスルホニウムカチオンと、式(IB)で表されるアニオンの具体的例示に挙げられたものとを組合せた酸発生剤が好ましい。
【0110】
酸発生剤(A)の含有量は、樹脂(B)100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましく、1〜15質量部であることがより好ましい。
【0111】
本実施形態に係るフォトレジスト組成物は、塩基性化合物、好ましくは塩基性含窒素有機化合物、より好ましくはアミン又はアンモニウム塩を含有してもよい。塩基性化合物を、例えば、クエンチャーとして添加することにより、露光後の引き置きに伴う酸の失活による性能劣化を防止することができる。
【0112】
クエンチャーとしての塩基性化合物の含有量は、樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部であり、より好ましくは0.05〜3質量部である。
【0113】
本実施形態に係るフォトレジスト組成物は、通常、溶剤に前記の各成分を溶解した状態で提供される。
【0114】
溶剤としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類、γ−ブチロラクトンのような環状エステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0115】
本実施形態に係るフォトレジスト組成物は、さらに、必要に応じて、増感剤、溶解抑止剤、他の樹脂、界面活性剤、安定剤、染料など、各種の添加剤を含有していてもよい。
【0116】
本実施形態に係るフォトレジスト組成物を用いたレジストパターンの製造方法は、例えば、以下の工程:
(1)溶剤を含有する化学増幅型フォトレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布された化学増幅型フォトレジスト組成物から溶剤を除去してフォトレジスト層を形成する工程、
(3)フォトレジスト層上に水を含む浸漬流体の層を直接形成する工程、
(3)浸漬流体を解してフォトレジスト層に露光する工程、
(4)露光されたフォトレジスト層を加熱する工程、及び
(5)加熱されたフォトレジスト層をアルカリ現像する工程、
をこの順に備える。
【0117】
フォトレジスト組成物の基体上への塗布は、スピンコーターなど、通常、用いられる装置を用いて行うことができる。
【0118】
溶剤の除去は、例えば、ホットプレート等の加熱装置を用いて溶剤を蒸発させることにより行われるか、あるいは減圧装置を用いて行われ、溶剤が除去されたフォトレジスト層が形成される。この場合の温度は、例えば、50〜200℃程度が例示される。また、圧力は、1〜1.0×10Pa程度が例示される。
【0119】
得られたフォトレジスト層に対して、液浸露光機を用いて露光する。この際、通常、求められるパターンに相当するマスクを介して露光が行われる。露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2レーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを用いることができる。
【0120】
露光後のフォトレジスト層は、脱保護基反応を促進することを主な目的として加熱される。加熱温度は、通常50〜200℃程度、好ましくは70〜150℃程度である。
【0121】
加熱後のフォトレジスト層は、現像装置を用いて、通常、アルカリ現像液を利用して現像される。ここで用いられるアルカリ現像液は、この分野で用いられる各種のアルカリ性水溶液であればよい。例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液等が挙げられる。現像後、超純水でリンスし、基板及びパターン上に残った水を除去することが好ましい。
【実施例】
【0122】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0123】
1.光活性化合物合成用中間体の合成
Applied Organometallic Chemistry 2003 (17) 287−290頁に従って、下記の手順で化合物(α)を合成した。
【0124】
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素置換した。そこに25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液162.6gとメタノール65gとを仕込み、これを撹拌しながら、テトラエトキシシラン92.9gとメタノール37.2gとを混合した溶液をフラスコ内に1時間かけて滴下した。滴下完了後、室温で12時間撹拌を行い、下記化学式で表される化合物(β)を含む溶液を得た。
【0125】
【化29】

【0126】
窒素置換されたフラスコに、ジメチルクロロシラン126.6gとn−ヘプタン253.2gとを仕込み、これを攪拌しながら、先に調製した化合物(β)を含む溶液を、3時間かけて滴下した。滴下完了後12時間撹拌を行い、2相に分離した溶液を得た。
【0127】
得られた溶液から分液により有機相を取り出した。取り出した有機相を水洗した後、濃縮して、白色固体を得た。この白色固体をアセトニトリルで洗浄して、下記化学式で示される化合物(α)を得た。化合物(α)のH−NMR分析の結果は、以下の通りである。
H−NMR(270MHz、CDCl)δ=0.2ppm(48H)、4.7pp(8H)
【0128】
【化30】

【0129】
2.光活性化合物の合成
上記で得た合成中間体としての化合物(α)と、下記各化学式で示される化合物とを以下の手順で反応させて、光活性基が導入された光活性化合物を合成した。
【0130】
【化31】

【0131】
実施例1:光活性化合物(XX−1)の合成
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素置換した。そこに化合物(α)2.4g、化合物(N−1)1.0g、化合物(N−2)4.9g及びトルエン23.8gを仕込み、これを撹拌した。そこへPt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液(Pt含有量2%)0.05mLを仕込み、12時間撹拌を行った。得られた反応液に活性炭0.6gを加えて、1時間撹拌した。その後、濾過により濾液を回収した。回収された濾液を濃縮し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを加えて、更に濃縮を行い、光活性化合物(XX−1)を得た。GPC測定による光活性化合物(XX−1)の重量平均分子量は2870であり、その分散度は1.18であった。
【0132】
実施例2:光活性化合物(XX−2)の合成
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素置換した。そこに化合物(α)1.9g、(N−1)0.6g、(N−2)2.0g、(N−3)1.3g及びトルエン19.3gを仕込み、これを撹拌した。そこへPt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液(Pt含有量2%)0.04mLを仕込み、12時間撹拌を行った。得られた反応液に活性炭0.5gを加えて、1時間撹拌した。その後、濾過により濾液を回収した。回収された濾液を濃縮し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを加えて、更に濃縮を行い、光活性化合物(XX−2)を得た。GPC測定による光活性化合物(XX−2)の重量平均分子量は2560であり、その分散度は1.18であった。
【0133】
実施例3:光活性化合物(XX−3)の合成
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素置換とした。そこに化合物(α)2.0g、化合物(N−1)0.6g、化合物(N−2)2.1g、化合物(N−4)0.9g及びトルエン20.4gを仕込み、これを撹拌した。そこへPt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液(Pt含有量2%)0.05mLを仕込み、12時間撹拌を行った。得られた反応液に活性炭0.5gを加えて、1時間撹拌した。その後、濾過により濾液を回収した。回収された濾液を濃縮し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを加えて、更に濃縮を行い、光活性化合物(XX−3)を得た。GPC測定による光活性化合物(XX−3)の重量平均分子量は2070であり、その分散度は1.15であった。
【0134】
実施例4:光活性化合物(XX−4)の合成
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素置換した。そこに化合物(α)2.0g、化合物(N−1)0.6g、化合物(N−5)0.7g、化合物(N−4)1.2g及びトルエン20.4gを仕込み、これを撹拌した。そこへPt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液(Pt含有量2%)0.05mLを仕込み、12時間撹拌を行った。得られた反応液に活性炭0.5gを加えて、1時間撹拌した。その後、濾過により濾液を回収した。回収された濾液を濃縮し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを加えて、更に濃縮を行い、光活性化合物(XX−4)を得た。GPC測定による光活性化合物(XX−4)の重量平均分子量は1790であり、その分散度は1.07であった。
【0135】
実施例5:光活性化合物(XX−5)の合成
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素置換した。そこに化合物(α)2.0g、化合物(N−1)0.6g、化合物(N−5)1.4g、化合物(N−4)0.9g及びトルエン20.4gを仕込み、これを撹拌した。そこへPt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液(Pt含有量2%)0.05mLを仕込み、12時間撹拌を行った。得られた反応液に活性炭0.5gを加えて、1時間撹拌した。その後、濾過により濾液を回収した。回収された濾液を濃縮し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを加えて、更に濃縮を行い、光活性化合物(XX−5)を得た。GPC測定による光活性化合物(XX−5)の重量平均分子量は2020であり、その分散度は1.10であった。
【0136】
実施例6:光活性化合物(XX−6)の合成
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素置換した。そこに化合物(α)2.0g、化合物(N−1)0.6g、化合物(N−6)0.7g、化合物(N−4)1.2g及びトルエン20.4gを仕込み、これを撹拌した。そこへPt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液(Pt含有量2%)0.05mLを仕込み、12時間撹拌を行った。得られた反応液に活性炭0.5gを加えて、1時間撹拌した。その後、濾過により濾液を回収した。回収された濾液を濃縮し、そこにプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを加えて、更に濃縮を行い、光活性化合物(XX−6)を得た。GPC測定による光活性化合物(XX−6)の重量平均分子量は1700であり、その分散度は1.05であった。
【0137】
実施例7:光活性化合物(XX−7)の合成
冷却管、温度計および攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素置換した。そこに化合物(α)2.0g、化合物(N−1)0.6g、化合物(N−6)1.4g、化合物(N−4)0.9g及びトルエン40.7gを仕込み、これを撹拌した。そこへPt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液(Pt含有量2%)0.09mLを仕込み、12時間撹拌を行った。得られた反応液に活性炭0.5gを加えて、1時間撹拌した。その後、濾過により濾液を回収した。回収された濾液を濃縮し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを加えて、更に濃縮を行い、光活性化合物(XX−7)を得た。GPC測定による光活性化合物(XX−7)の重量平均分子量は1740であり、その分散度は1.09であった。
【0138】
実施例8:光活性化合物(XX−8)の合成
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素置換した。そこに化合物(α)2.0g、化合物(N−1)0.6g、化合物(N−7)1.4g、化合物(N−4)0.9g及びトルエン20.4gを仕込み、これを撹拌した。そこへPt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液(Pt含有量2%)0.05mLを仕込み、12時間撹拌を行った。得られた反応液に活性炭0.5gを加えて、1時間撹拌した。その後、濾過により濾液を回収した。回収された濾液を濃縮し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを加えて、更に濃縮を行い、光活性化合物(XX−8)を得た。GPC測定による光活性化合物(XX−8)の重量平均分子量は1800であり、その分散度は1.07であった。
【0139】
実施例9:光活性化合物(XX−9)の合成
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素置換した。そこに化合物(α)1.0g、化合物(N−1)0.3g、化合物(N−8)0.6g、化合物(N−4)0.6g及びトルエン10.2gを仕込み、これを撹拌した。そこへPt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液(Pt含有量2%)0.02mLを仕込み、12時間撹拌を行った。得られた反応液に活性炭0.3gを加えて、1時間撹拌した。その後、濾過により濾液を回収した。回収された濾液を濃縮し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを加えて、更に濃縮を行い、光活性化合物(XX−9)を得た。GPC測定による光活性化合物(XX−9)の重量平均分子量は1920であり、その分散度は1.11であった。
【0140】
実施例10:光活性化合物(XX−10)の合成
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素置換した。そこに化合物(α)1.5g、化合物(N−1)0.5g、化合物(N−9)0.9g、化合物(N−4)0.7g及びトルエン15.3gを仕込み、これを撹拌した。そこへPt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液(Pt含有量2%)0.03mLを仕込み、12時間撹拌を行った。得られた反応液に活性炭0.4gを加えて、1時間撹拌した。その後、濾過により濾液を回収した。回収された濾液を濃縮し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを加えて、更に濃縮を行い、光活性化合物(XX−10)を得た。GPC測定による光活性化合物(XX−10)の重量平均分子量は1740であり、その分散度は1.09であった。
【0141】
実施例11:光活性化合物(XX−11)の合成
冷却管、温度計および攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素置換した。そこに化合物(α)1.5g、化合物(N−1)0.5g、化合物(N−10)1.0g、化合物(N−4)0.7g及びトルエン15.3gを仕込み、これを撹拌した。そこへPt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液(Pt含有量2%)0.03mLを仕込み、12時間撹拌を行った。得られた反応液に活性炭0.4gを加えて、1時間撹拌した。その後、濾過により濾液を回収した。回収された濾液を濃縮し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを加えて、更に濃縮を行い、光活性化合物(XX−11)を得た。GPC測定による光活性化合物(XX−11)の重量平均分子量は1960であり、その分散度1.08であった。
【0142】
3.比較用化合物の合成
化合物(Y1)の合成
冷却管、温度計および攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素置換した。そこに化合物(α)4.0g、化合物(N−1)3.7g及びトルエン15.3gを仕込み、これを撹拌した。そこへPt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液(Pt含有量2%)0.09mLを仕込み、12時間撹拌を行った。得られた反応液に活性炭0.4gを加えて、1時間撹拌した。その後、濾過により濾液を回収した。回収された濾液を濃縮し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを加えて、更に濃縮を行い、化合物(Y1)を得た。GPC測定による光活性化合物(Y1)の重量平均分子量は1450であり、その分散度1.01であった。
【0143】
化合物(Y2)の合成
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えた四つ口フラスコ内を窒素雰囲気とした。そこに化合物(α)4.0g、化合物(N−11)6.5g及びトルエン25.0gを仕込み撹拌した。そこへPt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液(Pt含有量2%)0.09mLを仕込み、12時間撹拌を行った。得られた反応液に活性炭0.7gを加えて1時間撹拌した。その後、濾過により濾液を回収した。回収された濾液を濃縮し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを加えて、更に濃縮を行い、化合物(Y2)を得た。化合物(Y2)のGPC測定による重量平均分子量は3650であり、その分散度は1.46であった。
【0144】
4.樹脂(A1)の合成
酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる樹脂として、下記各化学式で表されるモノマーA、B、C、D及びEから構成される共重合体(樹脂(A1))を合成した。
【0145】
【化32】

【0146】
モノマーA2.89g、モノマーB9.53g、モノマーC10.77g、モノマーD15.00g及びモノマーE5.61gを、モル比6:21:31:28:14で仕込み、そこに全モノマー合計量の1.5質量倍の1,4−ジオキサンを加えて反応液とした。そこに開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して、それぞれ、1モル%及び3モル%添加し、73℃で約5時間加熱した。その後、大量のメタノールと水との混合溶媒に反応液を注いで共重合体を沈殿させた。沈殿した共重合体を濾過により回収した。回収された共重合体を大量のメタノールで3回洗浄して、共重合体を精製した。精製された共重合体(樹脂(A1))の収率は85%であり、その重量平均分子量は約7800であった。
【0147】
3.化学増幅型フォトレジスト組成物の調整
以下に示す各成分を、表1に記載された比率で混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、化学増幅型フォトレジスト組成物を調製した。
【0148】
酸発生剤
酸発生剤C1:下記化学式で表される化合物
【0149】
【化33】

【0150】
クエンチャー
クエンチャーQ1:2,6−ジイソプロピルアニリン
【0151】
溶剤
下記組成を有する混合溶剤D1:
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 270部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20部
2−ヘプタノン 35部
γ−ブチロラクトン 3部
【0152】

【表1】

【0153】
4.化学増幅型フォトレジスト組成物の評価
(1)ラインエッジラフネス(LWR)
シリコンウェハーに、有機反射防止膜用組成物[ARC−29A−8;日産化学工業(株)製]を塗布し、205℃、60秒の条件でベークすることによって厚さ780Åの有機反射防止膜を形成させた。次いでこの上に、上記の各化学増幅型フォトレジスト組成物を乾燥後の膜厚が0.08μmとなるようにスピンコートした。スピンコートされた化学増幅型フォトレジスト組成物を、プロキシミティホットプレート上にて85℃で60秒間の加熱によりプリベークして、有機反射防止膜上にレジスト膜を形成させた。形成されたレジスト膜に対して、ArFエキシマスキャナー[FPA−5000AS3;キヤノン(株)製;NA=0.75、3/4Annular]を用い、露光量を段階的に変化させながらラインアンドスペースパターンを露光した。
【0154】
露光後、ホットプレート上にて85℃で60秒間の加熱によりポストエキスポジャーベークを行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて15秒間の現像を行い、ラインアンドスペースから構成されるレジストパターンを形成させた。
【0155】
形成されたレジストパターンを走査型電子顕鏡で観察し、ライン部分の線幅を測定することにより、LWRを測定した。LWRはライン線幅の揺らぎ(がたつき)を表す指標であり、この値が小さいほど良好な形状のレジストパターンが形成されたことを意味する。
【0156】
(2)後退角及び接触角
シリコンウェハー上に、上記の各化学増幅型フォトレジスト組成物を、その乾燥後の膜厚が0.08μmとなるようにスピンコートした。スピンコートされた化学増幅型フォトレジスト組成物を、プロキシミティホットプレート上にて85℃で60秒間の加熱によりプリベークして、ウェハー上にレジスト膜を形成させた。形成された未露光のレジスト膜の水に対する後退角及び接触角を、接触角測定装置(Drop Master−700;協和界面科学製)を用いて測定した。接触角は、液滴法により1μLの水をレジスト膜上に滴下し、0.1秒後に測定した。後退角は、傾斜法により、50μLの水を用いて、段階傾斜モードで測定した。
【0157】
【表2】

【0158】
表2に示されるように、光活性基を導入した光活性化合物を用いた実施例によれば、比較例1〜3に比べて小さなLWRが達成された。さらに、実施例の化学増幅型フォトレジスト組成物を用いて形成された未露光のレジスト膜の水に対する後退角及び接触角は、光活性基が導入されない環状ポリシロキサン化合物を用いた比較例1、3と比較しても、大きな値を示した。したがって、本発明のフォトレジスト組成物は、水又は親水性溶媒を浸漬流体として用いた液浸リソグラフィーへの適用の点でも極めて有用であることも明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明に係る光活性化合物は、優れたラインエッジラフネスを与える化学増幅型フォトレジスト組成物用の酸発生剤として好適に用いることができる。特に、液浸リソグラフィーにおいて有用な化学増幅型フォトレジスト組成物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ポリシロキサンと、該環状ポリシロキサンを構成する珪素原子に結合した1又は2以上の側鎖と、を備え、前記側鎖のうち少なくとも一部が、光の作用により酸を発生する光活性基を含み、該光活性基が同一分子中に複数存在するときそれらは同一でも異なっていてもよい、光活性化合物。
【請求項2】
下記一般式(I)で表される、請求項1に記載の光活性化合物。
【化1】


[式(I)中、R、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、下記一般式(a1)又は(a2):
【化2】


で表される基を示し、式(a1)及び式(a2)中、
、Q及びQはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を示し、同一分子中に含まれる複数のQ、Q及びQは同一でも異なっていてもよく、
mは1〜10の整数を示し、nは0〜10の整数を示し、
、R、R、R、R、R、R及びRから選ばれる少なくとも1つにおいて、Qa、Q及びQから選ばれる少なくとも1つが、前記光活性基を置換基として有する脂肪族炭化水素基である。]
【請求項3】
前記光活性基を置換基として有する脂肪族炭化水素基がQである、請求項2に記載の光活性化合物。
【請求項4】
前記光活性基を置換基として有する前記脂肪族炭化水素基が、前記光活性基を置換基として有する脂環式炭化水素基であり、該脂環式炭化水素基の環状構造を構成する炭素原子の一部が酸素原子及び/又はカルボニル基で置換されていてもよい、請求項2又は3に記載の光活性化合物。
【請求項5】
前記光活性基を置換基として有する前記脂環式炭化水素基が、下記一般式(I−1)で表される基である、請求項4に記載の光活性化合物。
【化3】


[式(I−1)中、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。]
【請求項6】
、R、R、R、R、R、R及びRから選ばれる少なくとも1つにおいて、Qa、Q及びQから選ばれる少なくとも1つが、下記化学式(n−1)で表される基である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の光活性化合物。
【化4】

【請求項7】
前記光活性基が、下記一般式(i)、(ii)、(iii)、(iv)又は(v)で表される基である、請求項1〜4及び6のいずれか一項に記載の光活性化合物。
【化5】


[式(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)中、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、T及びTはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を示す。]
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の光活性化合物と、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる樹脂と、を含有する、化学増幅型フォトレジスト組成物。


【公開番号】特開2010−209259(P2010−209259A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58584(P2009−58584)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】