説明

光計測システムおよび光計測方法

【課題】吸光成分濃度の推定の確からしさを高める。
【解決手段】光計測システムの一例として示す電子内視鏡システム15では、被観察部位に励起光を照射して血管に注入されたインドシアニングリーンを励起発光させ、これを撮像して得た撮像信号に基づき、被観察部位表面からの血管の深さを推定する。また、被観察部位に波長帯域の異なる少なくとも二種の狭帯域光を照射して得た撮像信号に基づき、血管中のヘモグロビンの酸素飽和度を推定する。酸素飽和度を推定する際には、血管深さ推定の結果に適合した観察条件となるよう酸素飽和度の推定アルゴリズムを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の被観察部位内に存在する物体の被観察部位表面からの深さ、および物体に含まれる物質の吸光成分濃度を計測する光計測システムおよび光計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療、工業分野において様々な光計測が行われている。その代表例として内視鏡を利用した検査が挙げられる。周知の如く、内視鏡は被検体内に挿入する挿入部の先端部から被検体の被観察部位に照明光を照射し、被観察部位の像を撮像する。
【0003】
従来、照明光の光源にはキセノンランプやメタルハライドランプ等の白色光源が用いられていたが、病変の発見を容易にするために狭い波長帯域の光(狭帯域光)を被観察部位に照射し、その反射光を画像化して観察する手法が脚光を浴びている。また、狭帯域光を照射して得られた撮像信号に基づき、血管中のヘモグロビンの酸素飽和度といった吸光成分濃度や被観察部位表面からの血管の深さの情報を取得する方法も鋭意研究されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1では、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光度の等吸収波長805nmの両側の波長780nm(第一の波長)、830nm(第二の波長)の光を被観察部位に照射し、それぞれの場合の被観察部位からの反射光の光量の差分演算を行っている。酸化ヘモグロビンのときは差分演算の結果は+、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとの中間状態のときはゼロ、還元ヘモグロビンのときは−となる。この差分演算結果を元に、赤血球が毛細血管内を移動しているときの過渡的な酸素結合率に対応する値を測定している。
【0005】
特許文献2では、連続的に異なる方向から生体内組織に光を照射し、生体内組織中の蛍光物質からの蛍光を異なる角度から撮像して、得られた画像を元に生体内組織中の腫瘍等の表面からの深さを推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−326153号公報
【特許文献2】WO2006/062895
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
血管中の酸化ヘモグロビンまたは還元ヘモグロビン等の吸光成分濃度を推定する際には、使用する狭帯域光の波長セットや推定アルゴリズムは大体固定されている。しかし、光には波長に応じて深達度が変わる特性があるため、観察対象の深さに適合しない波長セットや推定アルゴリズムを用いた場合は、推定の妥当性、信頼性が揺らぐおそれがある。
【0008】
特許文献1では、吸光成分濃度の推定の妥当性、信頼性を担保する手立ては講じられていない。特許文献2は深さを推定するものであり、吸光成分濃度を推定するものではない。このため、特許文献1、2の技術を組み合わせたとしても、吸光成分濃度の推定の妥当性、信頼性を確保するという課題を解決することはできない。
【0009】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸光成分濃度の推定の確からしさを高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の光計測システムは、被観察部位からの発光または反射波を撮像して第一撮像信号を出力する第一撮像部と、第一撮像信号を用いた第一推定アルゴリズムに基づき、被観察部位内に存在する物体の被観察部位表面からの深さを推定する第一推定部と、被観察部位に光を照射する第一照射部と、前記第一照射部から発せられた光の被観察部位からの反射光を撮像して第二撮像信号を出力する第二撮像部と、第二撮像信号を用いた第二推定アルゴリズムに基づき、物体に含まれる物質の吸光成分濃度を推定する第二推定部と、第二推定アルゴリズムを前記第一推定部の推定結果に適合したものに変更する設定部とを備えることを特徴とする。
【0011】
前記第二推定部は、前記第一照射部から被観察部位に波長帯域の異なる少なくとも二種の光を照射して前記第二撮像部で得た第二撮像信号に基づき推定を行う。
【0012】
前記第一照射部または前記第二撮像部は、透過光の波長帯域が可変する波長可変素子を有する。波長可変素子は例えばエタロンや液晶チューナブルフィルタである。
【0013】
前記第二推定部は、前記第一照射部から被観察部位にブロードな波長帯域の白色光を照射して前記第二撮像部で得た第二撮像信号に基づき推定を行う。前記第二推定部は、特定の波長帯域の成分を第二撮像信号から抽出する。
【0014】
被観察部位に電磁波または音波を照射する第二照射部を備えることが好ましい。
【0015】
前記第一推定部は、前記第二照射部から物体に含まれる蛍光物質を励起発光させるための励起光を照射して前記第一撮像部で得た画像のボケ量、または輝度値に基づき推定を行う。この場合、物体内に蛍光物質を注入する注入部を備えることが好ましい。蛍光物質は例えばインドシアニングリーンである。
【0016】
前記第一推定部は、前記第二照射部から被観察部位に超音波を照射して前記第一撮像部で得た超音波断層画像に基づき推定を行う。
【0017】
前記第一推定部は、前記第二照射部から被観察部位に低コヒーレンス光を照射して前記第一撮像部で得た光断層画像に基づき推定を行う。
【0018】
前記第一推定部および前記第二推定部の推定結果を表示する表示部を備えることが好ましい。この場合、前記表示部は、各推定部の推定結果を単独表示、並列表示、または重畳表示する。これらの表示形態を自動または手動で切り替えてもよい。
【0019】
前記第一照射部および前記第二照射部、または前記第一撮像部および前記第二撮像部は構成部品が一部共有化されている。また、各部の機能は一本の内視鏡で賄われる。
【0020】
前記第一推定部は血管の深さを推定し、前記第二推定部は血管中のヘモグロビンの酸素飽和度を推定する。
【0021】
本発明の光計測方法は、被観察部位からの発光または反射波を撮像して第一撮像信号を出力する第一撮像ステップと、第一撮像信号を用いた第一推定アルゴリズに基づき、被観察部位内に存在する物体の被観察部位表面からの深さを推定する第一推定ステップと、被観察部位に光を照射する照射ステップと、光の被観察部位からの反射光を撮像して第二撮像信号を出力する第二撮像ステップと、第二撮像信号を用いた第二推定アルゴリズムに基づき、物体に含まれる物質の吸光成分濃度を推定する第二推定ステップと、第二推定アルゴリズムを前記第一推定ステップの推定結果に適合したものに変更する設定ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被観察部位内に存在する物体の被観察部位表面からの深さを推定した結果に適合した推定アルゴリズムにて、物体に含まれる物質の吸光成分濃度を推定するので、吸光成分濃度の推定の確からしさを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】光計測システムの構成を示すブロック図である。
【図2】電子内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図3】照射部の構成を示す図である。
【図4】撮像部の構成を示す図である。
【図5】CCDの分光感度特性を示すグラフである。
【図6】画像処理部の構成を示す図である。
【図7】酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光特性を示すグラフである。
【図8】推定参照情報の例を示すグラフである。
【図9】血管深さ画像と酸素飽和度画像の表示形態を示す図である。
【図10】制御部の構成を示す図である。
【図11】波長セットテーブルの例を示す図である。
【図12】第一実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】第二実施形態の推定参照情報の例を示すグラフである。
【図14】第二実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】第三実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】血管深さ推定に超音波を利用した光計測システムの構成を示すブロック図である。
【図17】血管深さ推定に低コヒーレンス光を利用した光計測システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1において、光計測システム2は、深さ推定部10と吸光成分濃度推定部11とを備える。深さ推定部10は、被検体の被観察部位内に存在する物体、例えば血管の被観察部位表面からの深さを推定し、その推定結果を吸光成分濃度推定部11に出力する。吸光成分濃度推定部11は、深さ推定部10からの推定結果に応じて、被観察部位に照射する狭い波長帯域の光(狭帯域光)の波長を選択(第一実施形態)、または推定アルゴリズムを変更(第二実施形態)、あるいはその両方を実行(第三実施形態)し、深さ推定結果に適合した観察条件にて前記物体に含まれる物質の吸光成分濃度を推定する。
【0025】
図2に光計測システム2の一例として電子内視鏡システム15を示す。電子内視鏡システム15は、生体内組織の血管の深さを推定し、吸光成分濃度として血管中のヘモグロビンの酸素飽和度を推定する。電子内視鏡システム15は制御部16により全体の動作を統括的に制御される。
【0026】
電子内視鏡システム15には、被検体の被観察部位に白色光を照射して観察する通常観察モードと、被観察部位にICG(インドシアニングリーン;Indocyanine green)を注入してその励起発光から血管深さを推定する血管深さ推定モードと、被観察部位に狭帯域光を照射して酸素飽和度を推定する酸素飽和度推定モードとが用意されている。各モードの切替は操作部17を操作することにより行われる。電子内視鏡システム15の電源投入直後は通常観察モードが自動的に選択される。
【0027】
電子内視鏡システム15は、周知の如く、被検体内に挿入される可撓性の挿入部をもつ電子内視鏡18(図3および図4参照)を備える。電子内視鏡18は被観察部位に照明光を照射する照射部19と被観察部位の像を撮像する撮像部20とを含む。
【0028】
照射部19は例えば図3に示す構成であり、ICG注入部21によって被観察部位に注入されるICGを励起発光させるための励起光、および吸光成分濃度を推定するための狭帯域光を適宜切り替えて照射することが可能である。なお、ICG注入部21は、静脈注射によって血管中にICGを注入する。ICG注入部21は、制御部16の制御の下、被検体内のICG濃度が略一定に維持されるようICG注入量を調節する。
【0029】
図3において、照射部19は励起光源25と白色光源26、27を有する。各光源25〜27は電子内視鏡18と別体の光源装置内に設けられている。励起光源25は、励起光として750nmの赤外光を発する半導体レーザ、またはLED等である。白色光源26、27は、青色〜赤色までのブロードな波長の光、例えば400nm以上1000nm以下の波長帯の白色光を発するキセノンランプやハロゲンランプ、白色LED等である。各光源25〜27は、制御部16の制御の下、光源切替部28により点灯、消灯が切り替えられる。
【0030】
各光源25〜27の光出射側にはライトガイド29、30、31が配され、これらはカプラー32を介して一本のライトガイド33に連結されている。ライトガイド33は、各光源25〜27から発せられた光を電子内視鏡18の挿入部先端に導光する。ライトガイド33で導光された光は、電子内視鏡18の挿入部先端に設けられた照明窓34から被観察部位に向けて照射される。
【0031】
白色光源27とライトガイド31の間には、波長可変素子35が配されている。波長可変素子35は、入射光のうちの特定の波長帯域の光を選択的に透過させ、且つ透過させる光の波長帯域を変更可能な素子である。波長可変素子35は、制御部16により駆動制御される。
【0032】
波長可変素子35には、圧電素子等のアクチュエータを駆動することにより、二枚の高反射光フィルタからなる基板の面間隔を変更し、以て透過光の波長帯域を制御するエタロン、偏光フィルタ間に複屈折フィルタとネマティック液晶セルを挟んで構成され、液晶セルへの印加電圧を変更することで透過光の波長帯域を制御する液晶チューナブルフィルタ、あるいは複数の干渉フィルタ(バンドパスフィルタ)を組み合わせたロータリーフィルタが用いられる。
【0033】
通常観察モードが選択された場合は白色光源26のみが点灯する。被観察部位に照射される照明光は白色光のみとなる。血管深さ推定モードが選択された場合は励起光源25のみ、または励起光源25と白色光源26が点灯する。被観察部位に照射される照明光は励起光のみ、または励起光と白色光となる。酸素飽和度推定モードが選択された場合は白色光源27のみ、または白色光源26、27が点灯し、被観察部位に照射される光は波長可変素子35により透過された狭帯域光のみ、または狭帯域光と白色光となる。
【0034】
照射部19には、上記の他にも、各光源25〜27から発せられた光を集光して、ライトガイド29〜31に導光する集光レンズや、ライトガイド29〜31に入射させる光の光量を調節するための可動絞りが設けられている。
【0035】
撮像部20は、通常観察時の白色光の反射光に加えて、励起光の照射によるICGの励起発光、および狭帯域光の反射光を撮像することが可能である。図4において、撮像部20は、電子内視鏡18の挿入部先端に設けられた観察窓40からの被観察部位の像を取り込む対物光学系41と、対物光学系41で取り込まれた被観察部位の像を撮像するCCD42とを有する。CCD42は対物光学系41を経由した被観察部位の像が撮像面43に入射するように配置されている。
【0036】
CCD42の撮像面43には、複数の色セグメントからなるカラーフィルタ、例えばベイヤー配列の原色(RGB)カラーフィルタ44と、励起光カットフィルタ45が配されている。これら各フィルタ44、45の分光透過率、および画素自体の分光感度によって、CCD42のRGB各画素の分光感度特性は図5に示すようになる。R画素は650nm近傍、G画素は550nm近傍、B画素は450nm近傍の波長の光にそれぞれ感度を有する。R画素は810nm付近の赤外領域の波長の光にも感度を有し、中心波長810nmのICGの蛍光も撮像可能である。一方ICGの励起光(波長750nm)は励起光カットフィルタ45によってカットされ、各画素に入射することはない。なお、励起光カットフィルタ45をG画素とB画素上にだけ設けてもよい。この場合は励起光と併せて蛍光をカットしてもよい。
【0037】
アナログ信号処理回路(以下、AFEと略す)46は、相関二重サンプリング回路(以下、CDSと略す)、自動ゲイン制御回路(以下、AGCと略す)、およびアナログ/デジタル変換器(以下、A/Dと略す)から構成されている。CDSは、CCD42から出力される撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、CCD42で生じるリセット雑音およびアンプ雑音の除去を行う。AGCは、CDSによりノイズ除去が行われた撮像信号を、制御部16から指定されるゲイン(増幅率)で増幅する。A/Dは、AGCにより増幅された撮像信号を所定のビット数のデジタル信号に変換する。A/Dでデジタル化された撮像信号は画像処理部22に入力される。
【0038】
駆動回路47は、制御部16の制御の下、CCD42の駆動パルス(垂直/水平走査パルス、電子シャッタパルス、読み出しパルス、リセットパルス等)とAFE46用の同期パルスとを発生する。CCD42は、駆動回路47からの駆動パルスに応じて撮像動作を行い、撮像信号を出力する。AFE46の各部は、駆動回路47からの同期パルスに基づいて動作する。
【0039】
画像処理部22は、AFE46から入力された撮像信号に対して、色補間、ホワイトバランス調整、ガンマ補正、画像強調、画像用ノイズリダクション、色変換等の周知の各種画像処理を施す他、血管深さ推定と酸素飽和度推定を行う。
【0040】
図6において、画像処理部22には、血管深さ推定部50と酸素飽和度推定部51が設けられている。各推定部50、51の前段には血管領域特定部52が接続されている。血管領域特定部52はAFE46から入力される画像を解析し、例えば血管部分とそれ以外の部分の輝度値の差を参照することで血管が映し出された領域を特定する。血管領域特定部52は、特定した血管領域の情報を画像とともに各推定部50、51に出力する。
【0041】
血管深さ推定部50は、被観察部位に励起光を照射してICGの蛍光を撮像した画像に基づき、血管の被観察部位表面からの深さを推定する。血管深さ推定では、CCD42で撮像される被観察部位の像の光強度(輝度)が物体の深さに依存する性質を利用する。例えば、血管領域のボケ、または輝度値の大きさを元にした方法(特開2009−153969号公報、特開2009−160386号公報参照)を用いる。
【0042】
被観察部位内の物体からの反射光は、深い位置の物体からの反射光ほど散乱の影響を受けて強度が弱くなる。このため、被観察部位に励起光を照射してICGの蛍光を撮像した画像では、表層血管と比較して中深層血管のほうがボケる、あるいは輝度が暗くなる。つまり血管領域のボケ量(コントラスト値)、または輝度値は、血管の深さを間接的に表す指標となる。但し、被観察部位表面と照明窓34および観察窓40がある電子内視鏡18の先端部との距離(照明光と反射光の光路長)によっても反射光の強度は変化するので、この距離による反射光強度の変化の影響を除外する必要がある。
【0043】
そこで、特開2009−153969号公報に記載されているように、血管深さ推定部50は、同一の被観察部位を映し出した同一画像、または同一の被観察部位を映し出した異なる画像の、励起光を照射していない血管領域に対する照射した血管領域のコントラスト比、または輝度比を算出する。そして、算出結果を制御部16および深さ画像生成部53に出力する。深い位置に存在する中深層血管ほど、励起光を照射した場合と照射しない場合のコントラスト値、または輝度値に差がなくなるため、その比は小さくなる。逆に表層血管の場合はコントラスト比、または輝度比は大きくなる。比を求めるのは、励起光を照射していない血管領域をリファレンスとして用い、被観察部位表面と電子内視鏡18の先端部との距離による反射光強度の変化の影響を除外するためである。
【0044】
また、特開2009−160386号公報に記載されているように、浅い位置に存在する血管のICG濃度(ICGの量)と、深い位置に存在する血管の画像のRGBおよび赤外成分の相対強度とから、深い位置に存在する血管の深さを算出してもよい。
【0045】
なお、反射光の強度は血管中のICG濃度によっても変化するので、この影響を除外する仕組みを備えていてもよい。例えば特開2009−160386号公報に記載の血管中の物質量を算出する方法を用いてICGの量を求め、求めたICGの量に基づきコントラスト値、または輝度値を補正する。より具体的には、ICGの量が基準より多い場合はコントラスト値、または輝度値を下げ、少ない場合は嵩上げする。
【0046】
酸素飽和度推定部51は、被観察部位に複数の波長帯域の狭帯域光を照射してその反射光を撮像した複数の画像、および推定参照情報55に基づき、血管中のヘモグロビンの酸素飽和度を推定する。
【0047】
図7に示すように、血管中のヘモグロビンは、照明光の波長によって吸光係数μaが変化する。吸光係数μaは、ヘモグロビンの光の吸収の大きさ(吸光度)を表し、ヘモグロビンに照射された光の減衰状況を表すIexp(−μa×x)の式の係数である。ここで、Iは照明光の強度であり、x(cm)は被観察部位表面から血管までの深さである。
【0048】
また、酸素と結合していない還元ヘモグロビンHbと酸素と結合した酸化ヘモグロビンHbOは異なる吸光特性をもち、同じ吸光係数μaを示す等吸収点(各ヘモグロビンの吸光係数μaの交点)を除いて、吸光係数μaに差が生じる。
【0049】
吸光係数μaに差があると、同じ血管に対して同じ強度且つ同じ波長の光を照射しても反射光の強度が変化する。また、同じ強度で波長が異なる光を照射しても、波長によって吸光係数μaが変わるため同様に強度が変化する。従って、複数の波長帯域の狭帯域光を照射して得た複数の画像を解析すれば、血管中の酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの割合、すなわち酸素飽和度の情報を得ることができる。
【0050】
酸素飽和度推定部51は、複数の波長帯域の狭帯域光を照射して得た複数の画像をそれぞれ一時的に記憶するフレームメモリ(図示せず)を有する。酸素飽和度推定部51は、フレームメモリから各画像を読み出し、各画像の画素値を用いた種々の演算、例えば各画像間の画素値の比や差分をとることにより画像パラメータを算出する。一例として、第一〜第三の狭帯域光を被観察部位に順に照射し、これにより得られた第一〜第三画像G1〜G3を用いて酸素飽和度を推定する場合、酸素飽和度推定部51は、G1/G3、G2/G3を画像パラメータとして算出する。
【0051】
推定参照情報55は、図8に示すような画像パラメータと酸素飽和度の関係を、関数あるいはデータテーブルの形式でもつ。画像パラメータと酸素飽和度の関係は実験等で予め求められる。酸素飽和度推定部51は、算出した画像パラメータを関数に代入して演算したりデータテーブルを検索したりして、当該画像パラメータに対応する酸素飽和度を推定参照情報55から求める。そして、酸素飽和度の算出結果を酸素飽和度画像生成部54に出力する。
【0052】
深さ画像生成部53および酸素飽和度画像生成部54は、制御部16からグラフィックデータを受け取る。グラフィックデータには、観察画像の無効画素領域を隠して有効画素領域のみを表示させる表示用マスク、検査日時、あるいは患者や術者等の文字情報、グラフィカルユーザインターフェース(GUI;Graphical User Interface)等がある。また、各推定部50、51の推定結果を擬似カラー表示するためのカラーマップが含まれる。
【0053】
血管深さ表示用のカラーマップは、例えば血管深さの推定結果が浅い場合(表層)は青、中程度(中層)は緑、深い場合(深層)は赤を割り当てるよう構成されている。酸素飽和度表示用のカラーマップは、例えば酸素飽和度が比較的低い場合はシアン、中程度はマゼンタ、高い場合はイエローを割り当てるよう構成されている。各画像生成部53、54は、得られた画像に対して、表示用マスク、文字情報、GUIの重畳処理、モニタ18の表示画面への描画処理等を行う他、カラーマップに従って各推定部50、51の推定結果を画像上に表現する。こうすることで、各推定部50、51の推定結果を反映させた血管深さ画像および酸素飽和度画像が生成される。酸素飽和度画像には酸素飽和度推定部51が推定参照情報55から求めた酸素飽和度の数値が文字情報として表示される(図9参照)。
【0054】
表示部23は表示制御部とモニタからなる。表示制御部は、各画像生成部53、54からの血管深さ画像および酸素飽和度画像をモニタの表示形式に応じたビデオ信号(コンポーネント信号、コンポジット信号等)に変換する。これによりモニタに各画像が表示される。
【0055】
血管深さ画像および酸素飽和度画像の表示形態としては、各画像をそれぞれ単独でモニタに表示させてもよいし、図9(A)に示すように各画像を並べて表示してもよい。あるいは(B)に示すように、血管深さ画像に酸素飽和度の数値の文字情報を重畳する。さらには(C)に示すように、ある特定の血管の深さと酸素飽和度のみを選択的に表示させる。通常観察モードで取得した画像と血管深さ画像および酸素飽和度画像を並列、重畳表示してもよい。これら単独表示、並列表示、重畳表示、特定の血管の表示を、術者の操作または一定時間毎に自動的に切り替えてもよい。各画像の比較が容易になり、診断をスムーズに進めることができる。
【0056】
図10において、制御部16はCPU60を有する。CPU60は、図示しないデータバスやアドレスバス、制御線を介して各部と接続している。ROM61には、各部の動作を制御するためのプログラム(OS、アプリケーションプログラム等)やデータ(推定参照情報、グラフィックデータ等)が記憶されている。CPU60は、ROM61から必要なプログラムやデータを読み出して、作業用メモリであるRAM62に展開し、読み出したプログラムを逐次処理する。また、CPU60は、ROM61から読み出したデータを各部に提供する。さらにCPU60は、検査日時、患者や術者の情報等の文字情報といった検査毎に変わる情報を操作部17やLAN(Local Area Network)等のネットワークより得て、RAM62に記憶する。
【0057】
操作部17は、操作パネル、あるいはマウスやキーボード等の周知の入力デバイスである。CPU60は、操作部17からの操作信号に応じて、各部を動作させる。
【0058】
操作部17は、画像中のROI(関心領域)を指定する機能を有する。操作部17でROIが指定されると、血管深さ推定モードと酸素飽和度推定モードが自動的に実行される。また、血管領域の特定、血管深さの推定、および酸素飽和度の推定はROIに対してのみ行われる。
【0059】
制御部16には、上記の他にも、画像をCFカード、光磁気ディスク(MO)、CD−R等のリムーバブルメディアに記録するメディアI/F、LAN等のネットワークとの間で各種データの伝送制御を行うネットワークI/F等が設けられている。これらはデータバス等を介してCPU60と接続されている。
【0060】
ROM61のプログラムを実行することにより、CPU60には酸素飽和度推定条件設定部(以下、設定部と略す)63が構築される。設定部63は、血管深さ推定部50の推定結果に応じて、酸素飽和度を推定する際の観察条件を設定する。
【0061】
[第一実施形態]
本実施形態では、設定部63は図11に示す波長セットテーブル70を元に酸素飽和度を推定する際の狭帯域光の波長セットを選択する。波長セットテーブル70はROM61に記憶されている。波長セットテーブル70には、表層、中層、深層の各深さの血管の酸素飽和度を推定するときに最適な波長セットが予め登録されている。
【0062】
各波長セットには、その深さに十分に深達し、酸化、還元ヘモグロビンの吸光係数μaに差がある波長と、差がない等吸収点の波長が一例として選ばれる。表層の場合は比較的波長が短い405(等吸収点の波長)、445、473nmであり、深層の場合は近赤外光を含む680、805(等吸収点の波長)、950nm、中層の場合はこれらの中間の540、550、580nmである。なお、ここでは三つの波長を一セットとしているが、二つ、または三つ以上の波長を登録してもよい。
【0063】
操作部17でROIが指定された際、設定部63は、血管深さ推定部50の推定結果に応じた波長セットを波長セットテーブル70から読み出す。CPU60は、設定部63が読み出した波長セットの狭帯域光がCCD42の蓄積期間単位で順次照射されるよう、波長可変素子35の駆動を制御する。
【0064】
次に、上記のように構成された電子内視鏡システム15の作用について説明する。電子内視鏡18で被検体内を観察する際、術者は、操作部17を操作して、被検体に関する情報等を入力し、検査開始を指示する。検査開始を指示した後、術者は、電子内視鏡18の挿入部を被検体内に挿入し、照射部19からの照明光で被検体内を照明しながら、撮像部20による被検体内の観察画像を表示部23のモニタで観察する。
【0065】
CCD42から出力された撮像信号は、AFE46の各部で各種処理を施された後、画像処理部22に入力される。画像処理部22では、入力された撮像信号に対して各種画像処理が施され、画像が生成される。画像処理部22で処理された画像は、表示部23に入力される。表示部23では、制御部16からのグラフィックデータに応じて、各種表示制御処理が実行される。これにより、観察画像がモニタに表示される。
【0066】
電子内視鏡システム15で検査を行うときには、観察対象に応じて観察モードが切り替えられる。電子内視鏡18の挿入部を被検体内に挿入する際には通常観察モードを選択して、白色光を照射して得られた画像を観察して広い視野を確保しつつ挿入作業を行う。詳細な観察が必要な病変が発見され、その病変の血管に関する情報を取得する際には、病変をROIとして指定して血管深さ推定モードまたは酸素飽和度推定モードを実行に移し、病変に適当な波長の光(励起光または狭帯域光)を照明して得られた画像を観察する。そして、必要に応じて電子内視鏡18に装備されたレリーズボタンを操作して静止画像を取得したり、病変に処置が必要な場合は電子内視鏡18の鉗子チャンネルに各種処置具を挿通させて、病変の切除や投薬等の処置を施す。
【0067】
通常観察モードの場合は、制御部16の指令の下に光源切替部28により白色光源26が点灯されて、照明窓34から被観察部位に白色光が照射される。
【0068】
一方、図12のステップ10(S10)に示すように、操作部17が操作されて病変等がROIに指定された場合、まず血管深さ推定モードが実行される。血管深さ推定モードでは、ICG注入部21から被検体内にICGが注入され、また励起光源25が点灯されて被観察部位に励起光が照射される。励起光の照射により血管に注入されたICGが励起発光し、その光が観察窓40および対物光学系41を介してCCD42に導かれてCCD42で撮像される(S11)。
【0069】
画像処理部22では、まず血管領域特定部52でROIに指定された箇所の血管領域が特定された後、血管深さ推定部50にてROIに映る血管群の深さ(表層、中層、深層のうちの一種)が推定される(S12)。この推定結果は制御部16に出力され、設定部63にて血管深さ推定結果に応じた波長セットが波長セットテーブル70から選択される(S13)。なお、S12で一種以上の血管深さが推定された場合は、酸素飽和度を推定するほうを操作部17を介して術者に選択させる。
【0070】
血管深さ推定が終了したら、酸素飽和度推定モードに移行する。酸素飽和度推定モードでは、白色光源27が点灯され、設定部63で選択された波長セットの狭帯域光がCCD42の蓄積期間単位で順次照射されるよう、波長可変素子35の駆動が制御される。CCD42では設定部63で選択された波長セットの狭帯域光による反射光が撮像される(S14)。
【0071】
画像処理部22では、血管深さ推定モードと同様に血管領域特定部52で血管領域が特定される。その後、酸素飽和度推定部51でROIに映る血管中の酸素飽和度が推定される(S15)。血管深さ推定結果および酸素飽和度推定結果は、深さ画像生成部53および酸素飽和度画像生成部54でそれぞれ深さ画像および酸素飽和度画像に画像化されて表示部23のモニタに表示される(S16)。
【0072】
なお、狭帯域光を照射するのではなく白色光を照射し、得られた画像に対して主成分分析を用いた次元圧縮による線形近似やウィナー推定などに代表される分光推定処理を施して、狭帯域光を照射した場合と同様の画像を取得してもよい。この場合はバンドパスフィルタや色分解プリズムを用いてCCD42の分光感度特性をRGBの三バンドから増やしてマルチバンド化し、得られた画像の特定の波長帯域における、被観察部位からの反射光の分光反射率を推定する。この際の波長帯域を血管深さ推定の結果に応じて選択する。
【0073】
[第二実施形態]
上記第一実施形態では血管深さ推定結果に応じて酸素飽和度推定に使用する波長セットを選択しているが、本実施形態では波長セットは固定で酸素飽和度の推定アルゴリズムを変更する。具体的には図13(A)〜(C)に示すように、表層、中層、深層の各深さの血管の画像パラメータと酸素飽和度の関係を表す推定参照情報55を用意する。そして、図14のS20に示すように、血管深さ推定結果に応じて、酸素飽和度推定部51で酸素飽和度を推定する際に使用する推定参照情報55を変更する。血管深さ推定結果に応じて波長セットを選択する図12のS13の代わりにS20の処理が加わった他は、第一実施形態と同様であるため説明を省略する。なお、S11、12とS14の処理の順番を逆にし、最初に固定の波長セットで撮像を行った後に血管深さ推定を行い、その後推定参照情報55を変更してもよい。
【0074】
本実施形態では波長セットが固定であるため、酸素飽和度を推定するターゲットをある程度絞ったものとなる。このため、推定アルゴリズムの変更は、固定の波長セットでターゲットとする層のさらに表層、中層、深層といったように、酸素飽和度推定の微調整に利用する。第一実施形態で波長セットを細分化すれば同様の効果が得られるが、波長可変素子35の構成が複雑になり装置が大型化するおそれがあるため、微調整は推定アルゴリズムの変更で行うことが好ましい。
【0075】
[第三実施形態]
本実施形態では、図15に示すように、血管深さ推定結果に応じて波長セットを選択する第一実施形態(S13)と、血管深さ推定結果に応じて酸素飽和度の推定アルゴリズムを変更する第二実施形態(S20)を両方実施する。この場合、前段のS13で表層、中層、深層と比較的大雑把な場合分けをして波長セットを選択し、後段のS20で各層のさらに表層、中層、深層と細かく場合分けをして推定参照情報55を変更することが好ましい。もちろん各層のさらに表層、中層、深層用の推定参照情報55は予め用意しておく。こうすれば、血管深さにより適合した酸素飽和度の推定を行うことができる。
【0076】
言うまでもないが、波長セットの選択で血管深さ推定結果に適合した観察条件となる場合は、推定アルゴリズムを変更する必要はない。なお、第一〜第三実施形態のいずれを適用するかを、操作部17を介して術者に選択させてもよい。
【0077】
以上説明したように、本発明は、血管深さを推定し、その推定結果に応じて酸素飽和度を推定する際の観察条件(波長セットまたは推定アルゴリズム、もしくはその両方)を変え、最適な観察条件で酸素飽和度を推定するので、酸素飽和度推定の確からしさが増し、酸素飽和度の推定結果から導かれる診断の信憑性を高めることができる。
【0078】
血管深さ推定と酸素飽和度推定に係わる照射部19および撮像部20の構成部品が一部共有化され、これらの機能を一本の電子内視鏡18で賄うので、低コスト化および省スペース化に寄与することができる。
【0079】
上記各実施形態では、深さ推定にICGの励起発光を用いる例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えばICG以外の蛍光物質を用いてもよいし、熱励起等の光励起以外の発光現象を血管中の物質に起こさせてもよい。この場合は励起光を照射する構成(第二照射部)は不要となる。あるいは、図16および図17に示すような他の構成を用いて深さ推定を行ってもよい。
【0080】
図16において、光計測システム80は、電子内視鏡システム15の血管深さ推定に係わるICG注入部21や照射部19の励起光源25等を廃し、電子内視鏡18の先端にCCD42とともに超音波照射・撮像部81を設けた構成である。超音波照射・撮像部81は、被観察部位に超音波を発し、被観察部位で反射したエコー信号を受信する超音波トランスデューサを有する。また、超音波照射・撮像部81は、被観察部位に超音波を走査するため、超音波トランスデューサを機械的に回転あるいは揺動、もしくはスライドさせる機構、あるいはアレイ状に並んだ複数の超音波トランスデューサを順次駆動させる電子スイッチを有する。前者はメカニカルスキャン走査方式、後者は電子スキャン走査方式と呼ばれる。
【0081】
この場合、画像処理部22は、超音波トランスデューサで受信したエコー信号を元に超音波断層画像(Bモード画像)を生成する。血管深さ推定部50は、超音波断層画像に基づいて血管深さを推定する。ICGの励起光は約1cmの深達度であるが、超音波断層画像は被観察部位の表面から数10mmの深さまでの比較的広い範囲の情報を得ることができるので、特に深層の血管の推定に向いている。なお、超音波照射・撮像部81を電子内視鏡18と一体化するのではなく、電子内視鏡18の鉗子口に挿入するタイプとしてもよい。
【0082】
図17に示す光計測システム85は、超音波照射・撮像部81の代わりにOCT(光コヒーレンストモグラフィ;Optical Coherence Tomography)照射・撮像部86を備えている。OCT照射・撮像部86は、低コヒーレンス光を測定光として被観察部位に照射するSLD(Super Luminescent Diode)等の光源や、測定光を分離して光検出器に参照光として入射させるビームスプリッタ等を有する。
【0083】
光検出器は、被観察部位で反射された測定光の反射光と参照光との合波光に含まれる干渉光の強度を測定する。画像処理部22は、光検出器の測定結果に基づいて光断層画像を生成し、血管深さ推定部50は、光断層画像に基づいて血管深さを推定する。光断層画像の場合は、被観察部位の表面から数mm程度の深さの情報しか得られないが、数μm程度の高い分解能を有するため、各層のさらに表層、中層、深層を見分ける場合に有用である。なお、図16の超音波照射・撮像部81の場合と同様に、OCT照射・撮像部86は電子内視鏡18に一体化してもよいし、電子内視鏡18の鉗子口に挿入するタイプとしてもよい。
【0084】
超音波断層画像、光断層画像のいずれを血管深さ推定に用いる場合も、血管領域特定部52は、輪郭抽出やパターン認識といった周知の画像認識技術を利用して、画像内の血管領域を特定する。
【0085】
なお、本発明に係る光計測システムは、上記各実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、撮像素子としてCCD42の代わりにCMOSイメージセンサを用いてもよい。また、血管深さ推定には電子内視鏡18のCCD42を用い、酸素飽和度推定には電子内視鏡18の鉗子口に挿入するシースの先端に配されたCCDを用いる等、血管深さ推定用と酸素飽和度推定用に別々に撮像素子を設けてもよい。
【0086】
白色光源27の出射端側に波長可変素子35を設けているが、ライトガイド34を励起光用、狭帯域光用と複数本用意し、その出射端側に設けてもよい。また、照明光学系ではなく、被観察部位の像を取り込む対物光学系、例えば観察窓30の背後やCCD42の撮像面上に波長可変素子を配置してもよい。さらには、波長可変素子を設ける代わりに、複数種の波長帯域の狭帯域光を発する複数の光源を設けてもよい。
【0087】
なお、図8、図13の画像パラメータと酸素飽和度の関係は一例であり、必ずしも実際の数値を表すものではない。
【0088】
上記各実施形態では医療分野への利用に限定して説明しているが、工業分野への利用も可能である。従って物体は血管に限らず、推定する吸光成分濃度もヘモグロビンの酸素飽和度に限らない。また、光計測を行う領域の大きさは、上記実施形態のCCDの撮像範囲に限らず、微小なスポットであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
2、80、85 光計測システム
10 深さ推定部
11 吸光成分濃度推定部
15 電子内視鏡システム
16 制御部
17 操作部
18 電子内視鏡
19 照射部
20 撮像部
21 ICG注入部
22 画像処理部
23 表示部
25 励起光源
26、27 白色光源
35 波長可変素子
42 CCD
50 血管深さ推定部
51 酸素飽和度推定部
55 推定参照情報
60 CPU
63 酸素飽和度推定条件設定部(設定部)
70 波長セットテーブル
81 超音波照射・撮像部
86 OCT照射・撮像部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被観察部位からの発光または反射波を撮像して第一撮像信号を出力する第一撮像部と、
第一撮像信号を用いた第一推定アルゴリズムに基づき、被観察部位内に存在する物体の被観察部位表面からの深さを推定する第一推定部と、
被観察部位に光を照射する第一照射部と、
前記第一照射部から発せられた光の被観察部位からの反射光を撮像して第二撮像信号を出力する第二撮像部と、
第二撮像信号を用いた第二推定アルゴリズムに基づき、物体に含まれる物質の吸光成分濃度を推定する第二推定部と、
第二推定アルゴリズムを前記第一推定部の推定結果に適合したものに変更する設定部とを備えることを特徴とする光計測システム。
【請求項2】
前記第二推定部は、前記第一照射部から被観察部位に波長帯域の異なる少なくとも二種の光を照射して前記第二撮像部で得た第二撮像信号に基づき推定を行うことを特徴とする請求項1に記載の光計測システム。
【請求項3】
前記第一照射部または前記第二撮像部は、透過光の波長帯域が可変する波長可変素子を有することを特徴とする請求項2に記載の光計測システム。
【請求項4】
前記第二推定部は、前記第一照射部から被観察部位にブロードな波長帯域の白色光を照射して前記第二撮像部で得た第二撮像信号に基づき推定を行い、
特定の波長帯域の成分を第二撮像信号から抽出することを特徴とする請求項1に記載の光計測システム。
【請求項5】
被観察部位に電磁波または音波を照射する第二照射部を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の光計測システム。
【請求項6】
前記第一推定部は、前記第二照射部から物体に含まれる蛍光物質を励起発光させるための励起光を照射して前記第一撮像部で得た画像のボケ量、または輝度値に基づき推定を行うことを特徴とする請求項5に記載の光計測システム。
【請求項7】
物体内に蛍光物質を注入する注入部を備えることを特徴とする請求項6に記載の光計測システム。
【請求項8】
前記第一推定部は、前記第二照射部から被観察部位に超音波を照射して前記第一撮像部で得た超音波断層画像に基づき推定を行うことを特徴とする請求項5に記載の光計測システム。
【請求項9】
前記第一推定部は、前記第二照射部から被観察部位に低コヒーレンス光を照射して前記第一撮像部で得た光断層画像に基づき推定を行うことを特徴とする請求項5に記載の光計測システム。
【請求項10】
前記第一推定部および前記第二推定部の推定結果を表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の光計測システム。
【請求項11】
前記表示部は、各推定部の推定結果を単独表示、並列表示、または重畳表示することを特徴とする請求項10に記載の光計測システム。
【請求項12】
前記第一照射部および前記第二照射部、または前記第一撮像部および前記第二撮像部は構成部品が一部共有化されていることを特徴とする請求項5ないし11のいずれかに記載の光計測システム。
【請求項13】
前記第一照射部および前記第二照射部と、前記第一撮像部および前記第二撮像部の機能が一本の内視鏡で賄われていることを特徴とする請求項5ないし12のいずれかに記載の光計測システム。
【請求項14】
前記第一推定部は血管の深さを推定し、前記第二推定部は血管中のヘモグロビンの酸素飽和度を推定することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の光計測システム。
【請求項15】
被観察部位からの発光または反射波を撮像して第一撮像信号を出力する第一撮像ステップと、
第一撮像信号を用いた第一推定アルゴリズに基づき、被観察部位内に存在する物体の被観察部位表面からの深さを推定する第一推定ステップと、
被観察部位に光を照射する照射ステップと、
光の被観察部位からの反射光を撮像して第二撮像信号を出力する第二撮像ステップと、
第二撮像信号を用いた第二推定アルゴリズムに基づき、物体に含まれる物質の吸光成分濃度を推定する第二推定ステップと、
第二推定アルゴリズムを前記第一推定ステップの推定結果に適合したものに変更する設定ステップとを備えることを特徴とする光計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−130506(P2012−130506A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284598(P2010−284598)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】