光記録媒体及び光情報記録方法
【課題】 シフト多重記録においては、照射領域の組成に合わせて行うレーザービームの強度の調節は、複雑で多数回の制御が要求される。また、干渉縞パターンが定着する前に情報光及び記録用参照光を照射すると、充分な強度を持ったホログラムが記録できない。
【解決手段】 光記録媒体1は、情報光と参照光との干渉パターンを情報として記録するホログラム記録層を備えたシフト多重記録方式の媒体である。コントロール領域9、テスト領域10及びユーザー領域11には、ホログラム記録層とトラッキング反射層とが積層されており、トラッキング反射層には情報光と参照光との照射位置を正確に定めるアドレス信号が予め記録されている。コントロール領域9のトラッキング反射層には、記録条件が、媒体製造者により予めエンボスピット情報として記録されている。テスト領域10は、テスト信号をホログラム層に多重記録した後、再生出力値を確認する領域である。
【解決手段】 光記録媒体1は、情報光と参照光との干渉パターンを情報として記録するホログラム記録層を備えたシフト多重記録方式の媒体である。コントロール領域9、テスト領域10及びユーザー領域11には、ホログラム記録層とトラッキング反射層とが積層されており、トラッキング反射層には情報光と参照光との照射位置を正確に定めるアドレス信号が予め記録されている。コントロール領域9のトラッキング反射層には、記録条件が、媒体製造者により予めエンボスピット情報として記録されている。テスト領域10は、テスト信号をホログラム層に多重記録した後、再生出力値を確認する領域である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光記録媒体及び光情報記録方法に係り、特に2次元的にディジタル変調された情報光と、記録用参照光とを光記録媒体に照射して、光記録媒体の情報記録層において干渉させ、当該干渉縞パターンによって情報を記録する光記録媒体及び光情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィを利用して光記録媒体に情報を記録するホログラフィック記録は、情報を持った情報光と参照光とを光記録媒体の内部で重ね合わせ、そのときにできる干渉縞パターンを情報として光記録媒体に書き込むことによって行われる。記録された情報の再生時には、その光記録媒体に参照光を照射することにより、干渉縞パターンによる回折により情報が再生される。
【0003】
このホログラフィック記録において、超高密度のデータ密度とするために、ボリュームホログラフィ、特にディジタルボリュームホログラフィが開発されている。ボリュームホログラフィとは、光記録媒体の厚み方向も活用して、3次元的に干渉縞を書き込む方式であり、ディジタルボリュームホログラフィとは、ボリュームホログラフィと同様の光記録媒体と記録方式を用いつつも、記録するイメージ情報は2値化したディジタルパターンに限定した記録方式である。再生時は、このディジタルパターン情報を読み出してデコードすることで、元の情報に戻して表示する。
【0004】
ボリュームホログラフィによる光記録媒体への記録の一例は、記録すべき情報を担持する情報光と記録用参照光とが、光記録媒体のホログラム記録層内において厚み方向の干渉縞を生じるように、当該光記録媒体の透明基板側から同時に所定時間照射し、ホログラム記録層内に干渉縞パターンを立体的に定着させることによって、情報を立体的なホログラムとして記録している(例えば、特許文献1、2、3及び非特許文献1参照)。
【0005】
ホログラフィック記録においても、一般的な光学的記録装置と同様に、光記録媒体を回転させながら、光記録媒体に対して情報光と記録用参照光とをトラックに沿って照射して、光記録媒体における複数の情報記録領域の所定の情報記録位置に順次情報をホログラムとして記録するようになっている。このようなホログラフィを利用した記録に際しても、一般的な光学的記録装置におけると同様に、情報光及び記録用参照光用の光源としては、実用的な半導体レーザの使用が望ましい。
【0006】
こうしたボリュームホログラフィにおいては、光記録媒体のホログラム記録層の厚みを増やすことで回折効率を高め、多重記録を用いて記録容量を飛躍的に増大させることができるという特徴がある。多重記録とは、既に情報光及び記録用参照光を照射して情報を記録した領域に重ねて別の情報を記録するための情報光および記録用参照光を照射する方法である。多重記録によれば、複数の情報を同じ照射領域中に重ねて記録することができ、データ密度が著しく大きくなる。
【0007】
なお、光記録媒体を回転させながら記録する場合、多重記録の方式として、光記録媒体上の照射位置の一部を重ねながらずらして記録するシフト多重記録方式が有効であることが知られている。このシフト多重記録方式について説明するに、まず、図13(A)に点線で示す光記録媒体上のトラックのうち、任意のトラック上の照射領域a1に最初の情報を記録するための情報光と記録用参照光とを照射してそれらの干渉縞パターンを記録する。
【0008】
次に、図13(B)に示すように、照射位置をトラック接線方向に移動して照射領域a1と一部が重なる照射領域a2に、次の情報を記録するための情報光と記録用参照光とを照射してそれらの干渉縞パターンを記録する。以下、同様にして照射位置の一部を重ねながらトラック接線方向にずらして記録し、照射領域a1から記録し始めたトラックへの記録が一杯になると、次に光記録媒体の半径方向に移動して、隣接トラックに上記と同様にして記録することを繰り返すことにより、図13(C)に示すように、照射領域a1で始まる記録トラック、照射領域b1で始まる記録トラック、照射領域c1で始まる記録トラック、照射領域d1で始まる記録トラックが順次に形成されて情報がホログラフィック記録される。
【0009】
このホログラフィック記録は、レーザービームの強度に応じて屈折率、誘電率、反射率等の光学特性が変化するホログラム記録材料によって形成されたホログラム記録層に、情報光及び記録用参照光を照射し、その干渉縞パターンを定着させることで行われる。つまり、光記録媒体内のホログラム記録層において、情報光及び記録用参照光による光化学反応が生じているのである。このため、ホログラム記録層は、情報光及び記録用参照光が照射され情報を記録すると、光化学反応によって反応物が消費され、かつ、生成物が生成されるので、照射領域におけるホログラム記録層の組成は記録する前と後では変化してしまう。ホログラム記録層の組成が変わると、最適なレーザービームの強度も変わってくる。
【0010】
このため、多重記録は、図13に示したように、既に情報光及び記録用参照光を照射した領域に、再び情報光及び記録用参照光を照射して情報を記録するので、同じ強度のレーザービームを使用していると、照射領域の多重度(その照射領域に重ねて情報を書き込んだ回数)によって情報の記録状態が不均一になる。従って、多重記録においては、照射領域の組成に合わせて照射時間や照射エネルギーを調節してレーザービームの強度も変化させることが好ましい。このレーザービームの照射による組成の変化と、その組成における最適なレーザービームの強度の関係は、実験によって得ることができるが、レーザービームの強度の調節は、複雑で煩雑な制御が要求されるものであった。
【0011】
更に、ホログラム記録層の材料によっては、光化学反応の反応速度が遅いため、情報光及び記録用参照光を照射しても、直ぐには干渉縞パターンが定着せず、定着するために時間が必要な場合がある。このような定着するために時間が必要なホログラム記録層においては、定着する前に再び情報光及び記録用参照光を照射すると、進行中の干渉縞パターンの定着に影響し、充分な強度を持ったホログラムが記録できない原因となっている。
【0012】
また、一般のシフト多重記録方式では、例えば記録を行うディスク状の光記録媒体の周方向(トラック接線方向)への多重度がmで、半径方向の列の数(図13においては4列)がnの場合、周方向への多重記録においては、最初のm回は照射領域の重なり具合が異なるが、その後の照射領域では重なり具合は同程度であるから、最初のm回だけレーザービームの強度を調整すればよかった。しかし、半径方向に次の列に移動すると、再び最初のm回はレーザービームの強度を調整する必要があるので、結局、m×n回のレーザービームの強度の調整が必要である。また、従来のシフト多重記録方式では、定着するために時間が必要なホログラム記録層に対しては、連続的に情報を書き込むことができず、書き込み時間が長くなる。
【0013】
そこで、上記課題に対応すべく、特許文献1において、ホログラフィック記録におけるシフト多重記録方式に適用するレーザービームの調節をまとめて行うことで調節回数を減らす光情報記録方法が開示されている。すなわち、この特許文献1記載の従来の光情報記録方法では、同じ状態の複数の第1の照射領域に第1の条件で情報光及び記録用参照光を照射して第1の情報群を記録し、次に第1の照射領域と重畳するように複数の第2の照射領域に第2の条件で情報光及び記録用参照光を照射して第2の情報群を記録し、以下同様の動作を繰り返す、所謂面多重記録方式であり、これにより、多重度がmの多重記録するために照射条件をm回調節するだけでよく、また、第1の情報群を書き終わるまでの時間を個々の第1の照射領域における光化学反応のための時間とすることができるので、連続して多重記録ができる。
【0014】
また、特許文献2には周方向に所定の間隔でトラッキングサーボ及びクロック生成のためのサーボ領域が同心円状に離散的に形成され、ミラー領域にホログラム記録領域が形成されている光記録媒体が開示されている。更に、特許文献3には、ホログラム記録領域の1つのトラック上に記録されるホログラム記録スポットと、これに隣接するトラック上に記録されるホログラム記録スポットとを、周方向の異なる位置に記録し、また、ホログラム記録スポットの直径をDとし、ホログラム記録スポットの多重数をmとした場合、隣接するホログラム記録スポット間のピッチPがD/mとなるように記録するようにした光情報記録方法が開示されている。
【0015】
【特許文献1】特開2005−32308号公報
【特許文献2】特開平11−311938号公報
【特許文献3】特開2003−178456号公報
【非特許文献1】堀米等,”離陸間近のホログラフィック媒体 2006年に200Gバイトを実現”,日経エレクトロニクス,日経BP社,2005年1月17日号,p.105
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1、2並びに3に記載の従来の光情報記録方法や光記録媒体においては、サーボ情報が離散的で正確な照射領域毎の位置情報やアドレス情報を得ることができないため、記録されるホログラム情報の位置を正確に読取ることが困難で、また、サーボ情報が無い部分にのみホログラム情報を記録するため、記録密度を上げることが困難である。更に、上記の各特許文献記載の従来の光情報記録方法では、多重記録される照射領域毎の最適な記録条件をどのように指定するか明確にされておらず、複数の記録再生装置間でのばらつきや互換性も考慮されていない。
【0017】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、ホログラム情報を正確に所定の位置に記録し得る光記録媒体及び光情報記録方法を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明の他の目的は、ホログラム記録領域に制約を与えることなく、ホログラム記録情報の記録密度を向上し得る光記録媒体及び光情報記録方法を提供することにある。
【0019】
更に、本発明の他の目的は、記録順序にとらわれず、多重度毎に再生光量のばらつきを低減し、均一にホログラム記録し得る光記録媒体及び光情報記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するため、第1の発明は、第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域が、トラックに沿って一部を重複しながらずらして順次に照射され、その情報光と記録用参照光の照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンを情報として記録するホログラム記録層を備えたシフト多重記録方式の光記録媒体であって、照射領域毎にアドレスを付与し、記録場所を正確に指定するための位置決め信号とアドレス信号とがホログラム記録層とは深さ方向に異なるトラッキング用反射層に予め記録されており、第1の波長とは異なる第2の波長の光により、トラッキング用反射層の位置決め信号とアドレス信号とが再生される構造であることを特徴とする。
【0021】
この発明では、シフト多重記録方式の光記録媒体に対する情報光と記録用参照光の照射領域(すなわち、ホログラム記録照射スポット)を、上記の位置決め信号に基づいて、正確に位置決めすることができ、また、位置決め信号及びアドレス信号が記録されているトラッキング用反射層とホログラム記録層とは光記録媒体の深さ方向において分離されているため、位置決め信号とアドレス信号の記録位置に制約されることなく、情報のホログラム記録を行うことができる。
【0022】
また、上記の目的を達成するため、第2の発明は、情報光と記録用参照光の照射領域が、トラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトされ、トラック一周に亘って照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトされることを、同じトラックに対して照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンが情報としてホログラム記録層に多重記録される光記録媒体であって、トラック一周毎の照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が予め媒体製造情報としてトラッキング用反射層にエンボスピット情報として記録されていることを特徴とする。
【0023】
一般に、シフト多重記録方式の光記録媒体に対する情報光と記録用参照光の照射領域の重畳回数が増える度に、再生光量の指標である回折効率は徐々に低下していく傾向にあるが、この発明では、トラック一周毎の照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が予め媒体製造情報としてトラッキング用反射層にエンボスピット情報として記録されているため、記録再生装置では、上記の光の記録条件を再生することで、最適な記録照射条件を簡単に得ることができる。
【0024】
また、上記の目的を達成するため、第3の発明は、第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域が、トラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトされ、トラック一周に亘って照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトされることを、同じトラックに対して照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンを情報として多重記録するホログラム記録層を記録領域全面に備えたシフト多重記録方式の光記録媒体であって、
記録領域は、トラック一周毎の照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が媒体製造情報としてホログラム記録層よりも深さの異なるトラッキング用反射層に予め記録され、かつ、記録再生装置により記録時の最終アドレス及びディフェクトマネジメント情報がホログラム記録層に自動的に記録される第1の領域と、使用する記録再生装置において第1の領域から再生された記録条件に基づいて記録したテスト信号をホログラム記録層に多重記録し、その記録テスト信号を再生した出力値により最適な記録条件を求めるための第2の領域と、ホログラム記録層にユーザーデータを多重記録するための第3の領域とを有することを特徴とする。
【0025】
この発明では、第1の領域から再生された記録条件に基づいて、記録したテスト信号をホログラム記録層に多重記録し、その記録テスト信号を再生した出力値により最適な記録条件を求めるための第2の領域が、上記の第1の領域及びユーザーデータを多重記録するための第3の領域とは別に専用に設けられている。
【0026】
また、上記の目的を達成するため、第4の発明は、第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域を、光記録媒体上のトラックに沿って一部を重複しながらずらして順次に照射し、その情報光と記録用参照光の照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンを情報として光記録媒体のホログラム記録層に記録するシフト多重記録方式の光情報記録方法において、
照射領域毎にアドレスを付与し、記録場所を正確に指定するための位置決め信号とアドレス信号とを、ホログラム記録層とは深さ方向に異なるトラッキング用反射層に、エンボスピット情報として記録する第1のステップと、第1の波長とは異なる第2の波長の光によりトラッキング用反射層から再生して得られた位置決め信号に基づいて、情報光と記録用参照光の照射領域を位置決めしながら、光記録媒体上のトラックに沿って一部を重複しながらずらして順次に、第1の波長の情報光と記録用参照光を照射し、その情報光と記録用参照光の照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンを情報として光記録媒体のホログラム記録層に記録する第2のステップとを含むことを特徴とする。
【0027】
この発明では、シフト多重記録方式の光記録媒体に対する情報光と記録用参照光の照射領域(すなわち、ホログラム記録照射スポット)を、上記の位置決め信号に基づいて、正確に位置決めすることができる。
【0028】
また、上記の目的を達成するため、第5の発明は、情報光と記録用参照光の照射領域は、トラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトされ、トラック一周に亘って照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトされることを、同じトラックに対して照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンを情報としてホログラム記録層に多重記録する光情報記録方法であって、トラック一周毎の照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が媒体製造情報としてトラッキング用反射層にエンボスピット情報として、第2のステップの記録以前に予め記録する第3のステップを含むことを特徴とする。
【0029】
また、上記の目的を達成するため、第6の発明は、第5の発明の第3のステップによりトラッキング用反射層にエンボスピット情報として記録する複数の多重度のそれぞれの最適な光の記録条件は、所定回数の多重度のうちの予め定めた複数の代表的な多重度のそれぞれの最適な光の記録条件のみであり、記録されていない多重度の最適な光の記録条件については、記録再生装置においてトラッキング用反射層から再生される複数の代表的な多重度のそれぞれの最適な光の記録条件から計算で求めさせることを特徴とする。この発明では、全ての多重度について、多重度毎の最適な光の記録条件を記録するのではなく、代表的な多重度毎の最適な光の記録条件だけを記録し、他の多重度の最適な光の記録条件は記録再生装置にて計算により求めるようにしたため、光記録媒体のユーザーデータ記録領域を比較的広く確保できる。
【0030】
また、上記の目的を達成するため、第7の発明は、第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域を、光記録媒体のトラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトし、トラック一周に亘って照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトすることを、同じトラックに対して照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンを情報として光記録媒体のホログラム記録層に記録するシフト多重記録方式の光情報記録方法であって、
光記録媒体には、トラック一周毎の照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が媒体製造情報として、第1の記録領域のホログラム記録層よりも深さの異なるトラッキング用反射層に予め記録されており、光記録媒体の第1の記録領域のトラッキング用反射層から再生された記録条件に基づいて、第1の記録領域とは異なる第2の記録領域のホログラム記録層にテスト信号を多重記録する第1のステップと、第2の記録領域のホログラム記録層に記録されたテスト信号の再生出力値に基づいて、最適な記録条件のデータを求める第2のステップと、第2のステップで求めた最適な記録条件のデータを第1の記録領域のホログラム記録層に記録する第3のステップとを含むことを特徴とする。
【0031】
この発明では、記録再生装置において、第1の記録領域のトラッキング用反射層から再生された記録条件に基づいて、テスト信号を多重記録した後再生し、そのテスト信号の再生出力値に基づいて、最適な記録条件のデータを求めて第1の記録領域のホログラム記録層に記録するようにしたため、第1の記録領域のホログラム記録層には、記録再生装置個々に適合した最適な記録条件のデータを記録でき、その後は、この第1の記録領域のホログラム記録層から、テスト記録及び再生を行うことなく、その記録再生装置に適合した最適な記録条件のデータを直ちに得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、2次元的に変調された情報光と記録用参照光との干渉パターンをホログラム記録層に情報として記録するホログラフィック記録において、照射領域毎に予め光記録媒体に記録されている位置決め信号を再生することで照射領域の正確な位置を検出することができるため、複数の記録再生装置と光記録媒体の互換性を確保することができ、また、位置決め信号とアドレス信号が記録されているトラッキング用反射層とホログラム記録層とは光記録媒体の深さ方向において分離されており、位置決め信号とアドレス信号の記録位置に制約されることなく、ホログラム記録を行うことができるため、従来よりも情報を高密度にホログラム記録することができる。
【0033】
また、本発明によれば、光記録媒体製造者が、重畳される記録情報の最適記録エネルギーの情報(記録条件)を多重度毎に予め光記録媒体に記録することで、多重度毎の推奨記録エネルギーの情報を記録再生装置に与えることができるため、記録順序にとらわれず、多重度ごとに再生光量(回折効率)のばらつきを低減し均一にすることができる。
【0034】
更に、本発明によれば、光記録媒体製造者が、重畳される記録情報の最適記録エネルギーの情報を多重度毎に予め光記録媒体に記録された情報をもとに、記録再生装置ごとに最適記録エネルギーをテストすることで記録再生装置間のレーザー出力のばらつきが吸収されより正確にかく均一にホログラム記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。図1は本発明になる光記録媒体の一実施の形態の平面図、図2は図1の光記録媒体の一例の概略断面図を示す。図1に示すように、本実施の形態の光記録媒体1は平面形状が円形であり、また、図2に示すように、光記録媒体1は、表面側から基板側に向かって、カバー層2、ホログラム記録層3、接着層4、波長選択反射層5、平滑層6、トラッキング用反射層7の順で円盤状の基板8上に積層された構造である。
【0036】
トラッキング用反射層7は、平面から見た場合、螺旋状又は同心円状に形成されているサーボ用のエンボスピット列に、アルミニウムなどの金属反射膜をスパッタ等で成膜した構造である。平滑層6は、サーボ用のレーザービームの波長が少なくとも60%以上望ましくは90%以上透過させる層であり、紫外線硬化樹脂等をスピンコートしてトラッキング用反射層7上に作られる。
【0037】
波長選択反射層5は、ホログラフィック記録と再生に用いるレーザービームの波長(例えば、400nm)を選択的に80%以上反射し、サーボ用のレーザービーム(例えば、波長650nm)を選択的に少なくとも60%以上望ましくは80%以上透過する、例えば異なる屈折率をもつ2種類の誘電体を積層して作られたダイクロイックミラーを代表とする波長選択特性を持つ反射層で、平滑層6上にスパッタリング等で成膜される。接着層4はホログラム記録層3を波長選択反射層5に接着する、透明な感圧粘着シートからなる層である。
【0038】
ホログラム記録層3は、レーザービームで所定時間照射された時に、そのレーザービームの強度に応じて屈折率、誘電率、反射率等の光学特性が変化するホログラム記録材料によって形成されており、例えば、デュポン(Dupont)社製のフォトポリマ(Photopolymers)HRF−600(製品名)等が使用される。ホログラム記録層3上に設けられたカバー層2は円形透明な層であり、例えば、0.6mm以下の適宜の厚みを有する。また、ホログラム記録層3は、例えば5μm以上の適宜の厚みを有している。
【0039】
また、光記録媒体1は、図1に示すように、その内周から外周へ螺旋状(渦巻状)トラック12が形成されており、コントロール領域9とテスト領域10を有する点に本実施の形態の特徴がある(なお、トラック12は同心円状に形成されていてもよい。)。すなわち、この光記録媒体1の最内周には、予め設定された数の螺旋状(渦巻状)のトラック12からなるコントロール領域9が配置されている。このコントロール領域9のトラッキング用反射層(図2の7)には、光記録媒体1の物理情報や記録多重度毎の最適な推奨記録パワーなどの記録条件が、媒体製造者(媒体製造メーカ)により予めエンボスピット情報として、図10に示すようにアドレス情報と交互に記録されていることで連続したアドレス情報は保たれるようにした。また、コントロール領域9のホログラム記録層(図2の3)には、ユーザーが使用する度に記録された最終アドレスや、欠陥に対するディフェクトマネジメント情報が記録再生装置によって自動的に記録される。
【0040】
また、光記録媒体1は、コントロール領域9の外周側に隣接して、予め設定された数の螺旋状(渦巻状)のトラック12からなるテスト領域10が設けられている。このテスト領域10は、記録再生装置毎のレーザーパワーなどのばらつきを考慮し、各記録再生装置においてコントロール領域9から再生された記録条件に基づいて、テスト信号をホログラム層に多重記録した後、再生出力値を確認する領域である。なお、テスト信号自体は特別な信号ではなく、信号レベルが既知の信号であればよい。
【0041】
多重記録されるホログラム情報は、図3(A)に示されるように、照射領域の重畳回数が増える度に再生光量の指標である回折効率は徐々に低下していく傾向が顕著であるため、図3(B)に示すように重畳回数毎に最適な記録エネルギーが異なる。そのため、上記したように、コントロール領域9のトラッキング用反射層(図2の7)には、光記録媒体1の物理情報や記録多重度毎の最適な推奨記録パワーなどの記録条件が、媒体製造者(媒体製造メーカ)により予めエンボスピット情報として記録されているが、この記録条件はあくまでも媒体製造者が所定の記録再生装置で測定して得られた代表的な記録条件である。
【0042】
そのため、記録再生装置個々に適合した記録条件を求めるために、上記のコントロール領域9のトラッキング用反射層から再生した記録条件に基づいて、このテスト領域10でのテスト信号のホログラム記録層への記録を行った後、そのテスト信号の再生、及びその再生出力値の測定が行われて、最適な記録条件が求められる。このテスト領域10のトラッキング用反射層(図2の7)には、後述するユーザー領域11と同等の螺旋状にホログラム記録時の照射ピッチWp毎にエンボスピットにてアドレスなどが付与されている。
【0043】
また、光記録媒体1には、テスト領域10の外周側に隣接して、予め設定された数の螺旋状(渦巻状)のトラック12からなるユーザー領域11が設けられている。このユーザー領域11のトラッキング用反射層(図2の7)には、螺旋状にホログラム記録時の照射ピッチWp毎にエンボスピットにてアドレスなどが付与されている。また、ユーザー領域11のホログラム記録層(図2の7)には、ユーザーの情報が1回の照射で複数ビットのページデータとして記録され、必要に応じて傷などの欠陥データの代替データに対応したスペア領域を作成することも可能である。
【0044】
次に、本発明になる光情報記録方法が適用される光情報記録再生装置について説明する。図4は本発明になる光情報記録方法が適用される光情報記録再生装置の一例の概略構成図を示す。同図において、図1及び図2で説明した構造の光記録媒体1は、その中心がスピンドル15に取り付けられ、スピンドルモータ16によりアクチュエータドライバ24からのモータ駆動信号に基づいて回転制御される。
【0045】
光学ピックアップユニット17は、光記録媒体1に2次元的にディジタル変調された情報光と、記録用参照光とを照射する光学装置で、フィードモータ18により光記録媒体1の半径方向に移動可能な構成とされている。また、後述するように、サーボ回路23の出力信号に基づいてアクチュエータドライバ24が制御され、その結果、光学ピックアップユニット17内の対物レンズの位置が制御されることにより、トラッキング制御やフォーカス制御が可能な構成とされている。
【0046】
まず、記録準備について説明する。例えば、装置に光記録媒体1が装填されると、光学ピッアップユニット17は、先ずアクチュエータドライバ24から駆動信号を得て、フィードモータ18で光記録媒体1の最内周の領域に移動させられた後、アクチュエータドライバ24にて光記録媒体1のトラッキング用反射層7にて一般的な非点収差法などの方法でフォーカス動作を行い、フォーカスを合わせ、引き続きエンボスピットにて一般的なプッシュプル方式などの方法でトラッキング動作を行う。
【0047】
これにより、光学ピックアップユニット17から光記録媒体1のコントロール領域9のトラッキング用反射層7にレーザービームを照射して、照射されたレーザービームの反射光を光学ピックアップユニット17が受光して光電変換することで、トラッキング用反射層7にあるエンボスピットにて媒体製造者が記録した媒体特性等の物理データ、推奨記録パワーなどの最適記録エネルギーデータを読み出し、続いて、同じくコントロール領域9のホログラム記録層3にレーザービームを照射して、照射されたレーザービームの反射光を光学ピックアップユニット17が受光して光電変換することで、コントロール領域9のホログラム記録層3に記録再生装置により記録された記録管理情報(ディフェクトマネジメント情報)を読み出して光記録媒体1の情報を収集する。
【0048】
装着された光記録媒体1が記録再生装置にとって初めて装着された光記録媒体であった場合、次に光記録媒体1のコントロール領域9に記録されていた情報を基に何種類かの多重度毎の記録が数回繰り返され、最適な記録エネルギーを確認する。その後、その情報に基づいた記録エネルギーにて求められたその記録再生装置における最適記録条件をコントロール領域9のホログラム層3に記録して記録準備は完了する。
【0049】
図5は光学ピックアップユニット17の一例の構成図を示す。同図に示すように、光学ピックアップユニット17は、情報記録及び再生用のレーザービームを生成するための光源31と、サーボ用光源40とを有している。情報記録用のレーザービームを生成する光源31及びサーボ用光源40は、円盤状の光記録媒体に情報を記録する一般的な記録装置における光源と同様に、半導体レーザーが用いられる。光記録媒体1のホログラム記録層3に情報を記録するときは、図4の信号処理回路21から出力された記録されるべき情報信号が、レーザードライバ22を介して図5の光源31を駆動する。
【0050】
光源31から出射されたホログラフィック記録用レーザービームは、コリメータレンズ32により平行光とされた後、空間光変調素子(SLM:Spatial Light Modulator)33に照射される。SLM33には記録すべく、例えばQRコードのような2次元情報と、その外周に参照光用パターンが配置されている。SLM33は透過型でもよいが、ここでは反射型を用いている。代表的な反射型SLMとしては、例えば、反射型液晶素子である日本ビクター株式会社製のD−ILA(登録商標)があげられる。SLM33で空間光変調により2次元ディジタル変調された同一波長の情報光と参照光は、偏光ビームスプリッタ(PBS)34を透過して、ダイクロイックビームスプリッタ37に入射する。
【0051】
一方、サーボ用光源40からは上記の情報光と参照光とは異なる波長のサーボ用レーザービームが出射され、コリメータレンズ41で平行光とされた後、偏光ビームスプリッタ(PBS)42を透過してダイクロイックビームスプリッタ37に入射する。これにより、ダイクロイックビームスプリッタ37では、上記情報光と参照光が上記のサーボ用レーザービームと波長合成された後、1/4波長板38で円偏光に変換され、対物レンズ39で集光されて光記録媒体1に照射される。光記録媒体1に照射された光のうち、上記の情報光と参照光は、図2の波長選択反射層5で反射され、ホログラム記録層3にてそれら情報光と参照光との干渉パターンを発生させてそれが情報として記録される。
【0052】
また、上記のサーボ用レーザービームは、図2のホログラム記録層3及び波長選択反射層5を順次に透過してトラッキング用反射層7に入射して反射され、その反射光は波長選択反射層5及びホログラム記録層3を順次に透過して対物レンズ39に入射する。図5の対物レンズ39に入射した反射光は、対物レンズ39を透過して1/4波長板38で円偏光から直線偏光に変換され、ダイクロイックビームスプリッタ37で反射され、更にPBS42で反射されて光検出器43にて受光されて光電変換される。光検出器43から出力された電気信号は、フォーカスエラー制御部44、トラッキングエラー制御部45及びアドレス信号再生部46にそれぞれ供給されて、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、アドレス信号に変換される。
【0053】
図4のサーボ回路23は、図5のフォーカスエラー制御部44、トラッキングエラー制御部45を含んでおり、それらの出力信号は、アクチュエータドライバ24に供給され、スピンドルモータ16及びフィードモータ18の回転や、光学ピックアップユニット17内の対物レンズ39の位置を可変制御する。なお、図4の検出回路19は、図5の光検出器35及び43を含む。また、アドレス信号再生部46で再生されたアドレス信号は図4の信号処理回路21に供給される。アドレス信号再生部46は、後述する図10(A)のIDで示すアドレス信号だけでなく、同期信号Syncの検出信号や、IDの替わりに光記録媒体製造者が予め記録しておいた媒体製造情報なども再生して、図4のCPU20や信号処理回路21に入力する。
【0054】
次に、再生時の光経路について説明する。図5の光源31から光強度一定のホログラフィック再生用レーザーが出射され、コリメータレンズ32を通り平行光に変換され、参照光情報のみが送られているSLM33に照射される。SLM33で空間光変調された参照光のレーザービームは、PBS34を透過してダイクロイックビームスプリッタ37に入射し、ここでサーボ用レーザービームと波長合成され、更に1/4波長板38を通り円偏光とされた後、対物レンズ39で集光され、光記録媒体1に照射される。上記の参照光は、ホログラム記録層3に入射し、ホログラム記録層3の干渉縞に応じた強度の反射光とされる。
【0055】
この反射光(戻り光)は、ホログラフィック用レーザービームとして対物レンズ39を通り、1/4波長板38で入射光に対して位相が90度異なった直線偏光に変換された後、ダイクロイックビームスプリッタ37で、サーボ用レーザービームの反射光と波長分離され、ホログラフィック用レーザービームはダイクロイックビームスプリッタ37を透過してPBS34に入射し、ここで反射されて、光検出器35により受光されて光電変換される。光検出器35は光検出器43と同様に、CCD(電荷結合素子)やCーMOSなどで構成されており、ホログラフィック用レーザービームを光電変換して得た読み出し信号を、図4の信号処理回路21やCPU20に供給する。
【0056】
また、サーボ用レーザービームは、ダイクロイックビームスプリッタ37で反射してPBS42に入射し、ここで反射されて、光検出器43により受光されて光電変換され、得られた電気信号がフォーカスエラー制御部44、トラッキングエラー制御部45及びアドレス信号再生部46に供給される。図4の信号処理回路21では、図5のアドレス信号再生部46からのアドレス情報を読取り、これに基づき光学ピックアップユニット17の光記録媒体1上の正確な位置を判読し、CPU20へアドレス情報を送る。CPU20は記録又は再生に指定されるアドレスと、信号処理回路21から入力された現在の再生アドレスとを比較し、光学ピックアップユニット17の移動量を算出する。
【0057】
ホログラム記録時は、CPU20から送られてきたアドレス情報をもとに、アクチュエータドライバ24及びサーボ回路23を使用してフィードモータ18などを使い光学ピックアップユニット17を、光記録媒体1の指定されたアドレス位置に移動する。また、このとき、光学ピックアップユニット17の移動後の位置を、CPU20はサーボ用光源40から出射したレーザービームにて光記録媒体1のトラッキング用反射層7のエンボスピットからのアドレス信号で確認し、記録すべき2次元情報をSLM33に表示すると共に、レーザードライバ22を通して光源31から事前に確認した多重度に合わせた最適な記録エネルギーのホログラム記録用レーザービームを出射させ、前記の光学系を通して光記録媒体1のホログラム記録層3に情報を記録する。
【0058】
なお、情報の記録順序は、多重度による最適記録エネルギーの確認用記録から始まり記録再生装置における最適記録エネルギーを確定してから、図1の光記録媒体1のコントロール領域9、ユーザー領域11に記録され、最後にどのアドレスからどのアドレスに記録されどの多重度で記録されたかという記録情報を、CPU20から2次元情報に変換してSLM33に送り出し、コントロール領域9のホログラム記録層3にホログラム情報として記録して記録動作は終了する。
【0059】
次に、ホログラム再生時には、図4のCPU20から送られてきたアドレス情報をもとに、ホログラム記録時と同様に、アクチュエータドライバ24及びサーボ回路23を使用してフィードモータ18などを使い、光学ピックアップユニット17を光記録媒体1の指定されたアドレス位置に移動すると共に、光学ピックアップユニット17の移動後の位置を、CPU20がサーボ用光源40から出射したレーザービームにて光記録媒体1のトラッキング用反射層7のエンボスピットからのアドレス信号で確認する。
【0060】
その後、CPU20は光源31から、ホログラム記録と同じレーザービームを記録時に比較して1/10以下の低い出力で再生用レーザービームとして出射させる。この再生用レーザービームは、ホログラム記録時の記録用レーザービームと同等の光学系を通るが、SLM33上の情報はホログラム記録された参照光のみで情報光はない。前述したように、再生時には光記録媒体1のホログラム記録層3に記録された干渉縞に応じた反射光を、対物レンズ39、1/4波長板38、ダイクロイックビームスプリッタ37を経由してPBS34に入射し、ここで反射された反射光を光検出器35にて2次元情報を電気信号に変換して図4の信号処理回路21へ送る。
【0061】
次に、本発明の光情報記録方法の一実施の形態の光記録媒体の記録情報及び照射パターンについて更に詳細に説明する。本実施の形態では、定着時間が記録時間と比較して短い材料で構成された光記録媒体1のホログラム記録層3に対しては、記録時には情報光と参照光とが図6(A)に51−1で示すように、直径DSPが500μmであるスポットを形成して干渉縞をホログラム記録層3内で発生させて記録を行い、続いて、トラック接線方向(周方向)に500μm移動して同図(A)に51−2で示すように、直径DSPが500μmであるスポットを形成して干渉縞をホログラム記録層3内で発生させて記録を行い、以下、同様に螺旋状のトラックを500μm毎に記録する。従って、隣接するスポットは重畳せずに接するようにして記録が行われる。
【0062】
上記の動作を繰り返して、図7(A)にa1、a2、・・・、amで示す、各照射領域毎にトラックの一周分の記録が行われると、続いて、図6(B)に示すように、同じトラックのトラック接線方向(周方向)にピッチWp(例えば、10μm)だけずらして1トラック前に形成したスポット51−1にほぼ重畳する位置にスポット52−1を形成して、情報光と参照光とによる干渉縞をホログラム記録層3内で発生させて記録を行い、以下同様にして、螺旋状のトラックを500μm毎に記録する。すなわち、1トラック後の情報光と参照光との照射スポットは、1トラック前の照射スポットに対してピッチWpだけずらすようにして重畳回数1回目の記録が行われる。
【0063】
上記の動作を繰り返して、図7(B)にa1’、a2’、・・・、am’で示す各照射領域からなるトラックの一周分の記録が行われると、再び同じトラックのトラック接線方向(周方向)に、1トラック前に形成した図6(B)のスポット52−1に対してピッチWp(例えば、10μm)だけずらして重畳するスポットを形成して、情報光と参照光とによる干渉縞をホログラム記録層3内で発生させてホログラム記録を行い、以下同様にして、螺旋状のトラック上を500μm毎にスポットを形成して重畳回数2回目の記録が行われる。
【0064】
以下、この動作が繰り返されて1トラックに対して所定の多重記録回数(N=DSP/Wp)の記録が終了すると、図8に示すように、スポット51−1に対して光記録媒体の半径方向にWpだけ移動して、スポット51−1に大部分が重畳するスポット61−1を形成して、再び上記と同様の1本のトラックに対する多重記録を開始する。
【0065】
なお、図8の替わりに図9に示すように、スポット51−1に対して光記録媒体の半径方向にスポットの直径DSPだけ移動して、スポット51−1に接するスポット62−1を形成して、再び上記と同様の1本のトラックに対する多重記録を開始するようにしてもよい。
【0066】
ここで、本実施の形態は、上記のスポット51−1、51−2、52−1、61−1、62−1等のホログラム照射スポットのスポット中心位置を定めるための、位置決め信号が、前述した光記録媒体1のコントロール領域9、テスト領域10及びユーザー領域11のトラッキング用反射層7に予めエンボスピット列として記録されている点に特徴がある。
【0067】
図10(A)は上記のトラッキング用反射層7に記録されているコントロール領域のアドレス信号等の信号フォーマットの一実施の形態を示す。図10(A)に示すように、コントロール領域9におけるアドレス信号等は、1セクタが上記のホログラム記録照射スポットの直径DSPと同じ500μmの長さで記録され、1セクタは、それぞれホログラム記録照射スポットピッチWp(=10μm)単位の長さである、マーカM、ID及び同期信号Syncからなる第1の信号部と、コントロールデータC及び同期信号Syncからなる第2の信号部とが交互に配置された構成とされている。
【0068】
ここで、同期信号Syncが、上記のホログラム照射スポットのスポット中心位置を定めるための位置決め信号である。また、上記のIDは、アドレス番号情報を示すアドレス信号である。また、コントロールデータCは、媒体製造者(媒体製造メーカ)により測定して予め記録される、前記した光記録媒体1の物理情報や記録多重度毎の最適な推奨記録パワーなどの記録条件を示すデータである。
【0069】
具体的なトラッキングを行うためのピット列の例としては、図10(B)に示すように、公知のDVD(Digital Versatile Disc)と同等の1T=0.133μmの周期を基本として、3Tから8Tの長さの範囲で規定される(ただし、Tはチャネルクロックの周期)。ピット列の基本構成は、クロック発生の基準となる3T信号から11T信号の組み合わせよりなる、アドレスが記されるID部の直前に配置されたマーカM、クロック信号が維持されるべくD8−16変調された4バイトからなるアドレス信号部(ID)、実際の記録スポット中心を規定する同期信号Sync、コントロールデータCからなる。
【0070】
アドレス信号部IDの4バイトは、信頼性を増すために1バイトのECC(誤りチェックコード)を追加することも可能である。1周中のトラックにおいてアドレスの付け方に例えば連続性をもたせるなどして、仮に読取りエラーが発生しても訂正を可能にしておく。なお、同期信号SyncとマーカMの信号は、IDやコントロールデータCに発生しないパターンとすることが望ましい。
【0071】
図10(C)は図10(B)の反射率の変化とサーボ信号でのアドレス信号の電圧を表している。ピット部はサーボ光が回折して反射量が低下し電圧のレベルが下がる。図10(C)に示すように、最も短いマークの3T信号はMTF(Modulation Transfer Function)の関係で振幅は若干小さくなるが、2値化するには問題ない値に設定され、その再生信号が光記録媒体記録再生装置内の周知の位相同期ループ(PLL)回路でロックされて、クロック信号を生成させる。また、信号のエッジを利用して情報をデコードし、この例では5TのSyncの立下りのエッジ中央部を、前記ホログラム照射スポットのスポット中心位置になるようにしている。
【0072】
図11(A)は同様にトラッキング用反射層7に記録されているユーザー領域11のアドレス信号等の信号フォーマットの一実施の形態を示す。ユーザー領域11のトラッキング用反射層7に記録されているアドレス信号は、1セクタが上記のホログラム記録照射スポットの直径DSPと同じ500μmの長さで記録され、1セクタは、それぞれホログラム記録照射スポットピッチWp(=10μm)単位の長さである点はコントロール領域9に記録されているアドレス信号等と同様であるが、図11(A)に示すように、コントロールデータCは存在せず、マーカM、ID及び同期信号Syncからなる信号部から構成されている。ユーザー領域11のアドレス信号等の信号列は、図11(B)に示され、信号波形は同図(C)に示される。
【0073】
ホログラム記録の実際の位置を規定するために、ID信号の直後に同期信号Syncを配置し、このSyncの立下りもしくは立上り時にホログラム記録のレーザービームが照射されるようにする。ホログラム記録のホログラム照射スポットの直径DSPが500μmであった場合、まず周方向に多重されない長さとして0.5mm毎にセクタを設ける。そして、ホログラム照射スポットピッチWpである10μm毎に多重されるとすると、1セクタにDSP/Wp=50個の情報データがホログラム記録されることになる。
【0074】
このため、本実施の形態は、ホログラム照射スポットピッチWpである10μm毎に同期信号Syncを入れ、トラッキング用反射層7でエンボスピットのジッタをDVD並み程度の8%以下にすることにより、0.01μm以下の精度でホログラム記録照射位置をトラック周方向で制御できることを特徴とする。
【0075】
光記録媒体1の半径方向では、トラッキング用反射層7のエンボスピット列のピッチは、ホログラム記録時の照射ピッチWpの1/10以下のピッチとすることが望ましい。例えば、周方向のホログラム記録時の照射ピッチWpの10μmと同様な半径方向のピッチとすると、トラッキング用反射層7のトラッキングピッチは1μm以下となる。
【0076】
なお、コントロール領域9内のトラッキング用反射層7には、図10(A)に示したフォーマットの第1の信号と、第1の信号のIDの替わりに、光記録媒体の物理情報や、ホログラム記録照射スポット(照射領域)の重畳回数毎の最適なレーザービームの照射条件などの、媒体製造者が予め求めた媒体製造情報が配置された第2の信号とが、例えば所定のセクタ周期で交互にアドレス信号として記録されている。一方、テスト領域10やユーザー領域11内のトラッキング用反射層7には、図10(A)に示したフォーマットの第1の信号のみがアドレス信号として連続して記録されている。
【0077】
このように、本実施の形態では、光記録媒体1のトラッキング用反射層7からサーボ用レーザービームで再生したアドレス信号中の同期信号Syncの再生位置からホログラム記録のためのホログラム記録照射スポットを正確に位置決めすることができるため、これにより複数の記録再生装置と光記録媒体1との互換性を確保できる。
【0078】
また、トラッキング用反射層7の再生用のサーボ用レーザービームと、ホログラム記録層3に対してホログラム記録を行う情報光及び参照光のレーザービームとは波長が異なり、しかもトラッキング用反射層7とホログラム記録層3とは光記録媒体1の深さ方向において分離されているため、アドレス信号の記録位置に制約されることなく、ホログラム記録を行うことができ、従来よりも情報信号を高密度にホログラム記録することができる。
【0079】
また、本実施の形態では、光記録媒体1のホログラム記録層3にホログラム記録するための情報光及び参照光のレーザービーム照射領域を、一部重複させながらあるいは重複させることなくトラック接線方向(周方向)にシフトしながら記録する円周方向のシフト多重記録方式において、予め光記録媒体製造者により照射領域の多重度(重畳回数)毎に最適記録エネルギーの情報が記録されているコントロール層9から最適記録エネルギーを再生し、多重割合毎の最適記録エネルギーの情報に基づいて、記録順序にとらわれず、多重度毎に再生光量(再生効率)のばらつきを低減し、均一にホログラム記録することができる。
【0080】
更に、予め光記録媒体製造者により照射領域の多重度毎に最適記録エネルギーの情報が記録されているコントロール層9から最適記録エネルギーを再生し、その最適記録エネルギーに基づいて、記録再生装置毎に光記録媒体1のテスト領域10を使用して最適記録エネルギーをテストすることができるため、記録再生装置間の記録用レーザービームのレーザーパワーのばらつきが吸収され、より正確に、かつ、均一にホログラム記録することができる。
【0081】
更に、情報光及び参照光のレーザービーム照射領域を、一部重複させながらあるいは重複させることなくトラック接線方向(周方向)にシフトしながら記録する際に、同じトラックにおける照射領域の重畳回数(多重度)に対応した最適記録エネルギーの情報を光記録媒体1のコントロール領域9に記録するので、ホログラム記録層3として定着時間が記録時間と比較して短縮された材料で構成された光記録媒体において、コントロール領域9から再生した照射領域の重畳回数(多重度)に対応した最適記録エネルギーの情報に基づいて、照射領域が重複した多重記録にも対応することができる。
【0082】
このように、本発明の円周方向のシフト多重記録方式では、コントロール領域9から再生した照射領域の重畳回数(多重度)に対応した最適記録エネルギーの情報に基づいて、ホログラム記録用のレーザーパワーの照射領域(照射スポット)の重畳回数(多重度)に対応した最適なホログラム記録ができるので、照射領域の組成に合わせたレーザービームの強度の調節をまとめて行うことができ、調節回数を減らすことができ、制御も容易になる。
【0083】
例えば、周方向への多重度がmで、半径方向の列の数がnの場合、半径方向への多重度をx(x≦n)とすると、従来m・n回のレーザービームの強度の調節が必要であったが、本発明ではm・x回のレーザービームの強度の調節で済む。また、光記録媒体1のトラック1周で情報信号を書き終わるまでの時間を、図7(A)にa1、a2、・・・、amで示した個々の照射領域における光化学反応のための時間とすることができるので、本実施の形態では連続して多重記録方式を実行することができる。
【0084】
なお、図6(B)に52−1、図7(B)にa1’等で示した同じトラックに対するトラック2周目以降の照射スポット(照射領域)の最適記録パワーは、そのトラック1周前の照射スポット(照射領域)51−1、a1等と重畳する割合(多重度)で決定され、その重畳する割合が大きいほど(重畳面積が大きいほど)、ホログラム記録層3中の反応物の量が少なくなるので強い照射強度が必要となる。すなわち、図3(B)に示すように、トラック1周当りの照射領域の最適記録エネルギーは、同じトラックでの照射領域の重畳回数が多いほど(多重度が大きいほど)大きくする必要があり、よって、上記多重度の組み合わせ数分だけ最適記録エネルギーの事前情報があることが望ましい。
【0085】
しかし、図3(B)に示すように、5多重以上の多重度では、ある程度直線的な傾向となるため、複数の多重度における最適記録エネルギーのテスト記録は、必ずしも多重度の全ての組み合わせについて行う必要はない。そこで、本実施の形態の光記録媒体1のコントロール領域9のトラッキング用反射層7には、例えば、重畳回数(多重度)が0回、1回、2回、3回、4回、5回、10回、20回、・・・、最大回のそれぞれについての最適記録エネルギーを記録すると共に、図3(B)に点線Iで示した重畳回数(多重度)と最適記録エネルギーの傾斜特性の情報を記録しており、上記以外の多重度の最適記録エネルギーは、その傾斜特性の情報から計算により求めることができる。
【0086】
なお、前記特許文献1に記載された従来の光情報記録方法は、光記録媒体を複数のゾーンに分けて、各ゾーン内において各情報群の記録を行うことを特徴としている。円盤状の記録媒体を複数のゾーンに分けて記録を行う方式としては、周知のように、各ゾーンにおいて角速度を一定とするZCAV(Zone Constant Angular Velocity)方式や、各ゾーンにおいて線速度を一定とするZCLV(Zone Constant Linear Velocity)方式が知られており、上記の従来の光情報記録方法では、これらZCAV方式やZCLV方式を適用している。
【0087】
しかしながら、ZCAV方式あるいはゾーンに分けることなく記録媒体を一定の角速度で回転するCAV方式でのホログラフィック記録を行うと、図12に示すように照射領域が決定され、角速度一定のZCAV方式やCAV方式では連続的に光記録媒体の半径によって線速度が変化するため記録エネルギーの最適化が困難である。また、ZCLV方式では、光記録媒体の回転速度の変化を一定の範囲に収めることができ、各ゾーンに分けることで光記録媒体の角速度や線速度を一定とすることは可能となるが、記録の線速度が数種類に増え、最適記録エネルギーのテスト記録の組み合わせが、やはり増えるため、多数のゾーンを設けたZCLV方式は望ましくない。
【0088】
そこで、本発明では光記録媒体の全面に渡りCLV方式を採用することで、記録の線速度を1種類とすることができ、最適記録エネルギーのテスト記録の組み合わせを最小として記録を行う。
【0089】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、本発明は図4に示したCPU20が実行し、また、信号処理回路21の機能を備えたコンピュータプログラムを含むものである。このコンピュータプログラムは、記録媒体に記録されていてその記録媒体からコンピュータに取り込まれてもよく、また、通信ネットワークを介して配信されてコンピュータに取り込まれてもよく、更には専用のハードウェアに格納されてコンピュータ内に組み込まれていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の光記録媒体の一実施の形態の平面図である。
【図2】図1の光記録媒体の一例の概略断面図である。
【図3】重畳回数(多重度)と回折効率の関係の一例を示す特性図と、重畳回数(多重度)と最適な記録エネルギーの関係の一例を示す特性図である。
【図4】本発明方法が適用される光情報記録再生装置の一例の概略構成図である。
【図5】図4中の光学ピックアップユニットの一例の構成図である。
【図6】本発明方法によるホログラム記録のトラック方向の多重記録の一例の説明図である。
【図7】本発明によるホログラム記録の媒体半径方向の多重記録の一例の説明図である。
【図8】本発明方法によるホログラム記録の半径方向の多重記録の一例の説明図である。
【図9】本発明方法によるホログラム記録の半径方向の多重記録の他の例の説明図である。
【図10】本発明方法で記録されるコントロール領域のアドレス信号等の一実施の形態のフォーマット等を説明する図である。
【図11】本発明方法で記録されるユーザー領域のアドレス信号等の一実施の形態のフォーマット等を説明する図である。
【図12】従来の光情報記録方法の半径方向の一例の多重記録の例の説明図である。
【図13】従来の光情報記録方法の多重記録の一例の説明図である。
【符号の説明】
【0091】
1 光記録媒体
2 カバー層
3 ホログラム記録層
4 接着層
5 波長選択反射層
6 平滑層
7 トラッキング用反射層
8 基板
9 コントロール領域
10 テスト領域
11 ユーザー領域
12 トラック
17 光学ピックアップユニット
20 中央処理装置(CPU)
31 記録再生用光源
33 空間光変調素子(SLM)
34、42 偏光ビームスプリッタ(PBS)
35、43 光検出器
37 ダイクロイックビームスプリッタ
38 1/4波長板
39 対物レンズ
40 サーボ用光源
【技術分野】
【0001】
本発明は光記録媒体及び光情報記録方法に係り、特に2次元的にディジタル変調された情報光と、記録用参照光とを光記録媒体に照射して、光記録媒体の情報記録層において干渉させ、当該干渉縞パターンによって情報を記録する光記録媒体及び光情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィを利用して光記録媒体に情報を記録するホログラフィック記録は、情報を持った情報光と参照光とを光記録媒体の内部で重ね合わせ、そのときにできる干渉縞パターンを情報として光記録媒体に書き込むことによって行われる。記録された情報の再生時には、その光記録媒体に参照光を照射することにより、干渉縞パターンによる回折により情報が再生される。
【0003】
このホログラフィック記録において、超高密度のデータ密度とするために、ボリュームホログラフィ、特にディジタルボリュームホログラフィが開発されている。ボリュームホログラフィとは、光記録媒体の厚み方向も活用して、3次元的に干渉縞を書き込む方式であり、ディジタルボリュームホログラフィとは、ボリュームホログラフィと同様の光記録媒体と記録方式を用いつつも、記録するイメージ情報は2値化したディジタルパターンに限定した記録方式である。再生時は、このディジタルパターン情報を読み出してデコードすることで、元の情報に戻して表示する。
【0004】
ボリュームホログラフィによる光記録媒体への記録の一例は、記録すべき情報を担持する情報光と記録用参照光とが、光記録媒体のホログラム記録層内において厚み方向の干渉縞を生じるように、当該光記録媒体の透明基板側から同時に所定時間照射し、ホログラム記録層内に干渉縞パターンを立体的に定着させることによって、情報を立体的なホログラムとして記録している(例えば、特許文献1、2、3及び非特許文献1参照)。
【0005】
ホログラフィック記録においても、一般的な光学的記録装置と同様に、光記録媒体を回転させながら、光記録媒体に対して情報光と記録用参照光とをトラックに沿って照射して、光記録媒体における複数の情報記録領域の所定の情報記録位置に順次情報をホログラムとして記録するようになっている。このようなホログラフィを利用した記録に際しても、一般的な光学的記録装置におけると同様に、情報光及び記録用参照光用の光源としては、実用的な半導体レーザの使用が望ましい。
【0006】
こうしたボリュームホログラフィにおいては、光記録媒体のホログラム記録層の厚みを増やすことで回折効率を高め、多重記録を用いて記録容量を飛躍的に増大させることができるという特徴がある。多重記録とは、既に情報光及び記録用参照光を照射して情報を記録した領域に重ねて別の情報を記録するための情報光および記録用参照光を照射する方法である。多重記録によれば、複数の情報を同じ照射領域中に重ねて記録することができ、データ密度が著しく大きくなる。
【0007】
なお、光記録媒体を回転させながら記録する場合、多重記録の方式として、光記録媒体上の照射位置の一部を重ねながらずらして記録するシフト多重記録方式が有効であることが知られている。このシフト多重記録方式について説明するに、まず、図13(A)に点線で示す光記録媒体上のトラックのうち、任意のトラック上の照射領域a1に最初の情報を記録するための情報光と記録用参照光とを照射してそれらの干渉縞パターンを記録する。
【0008】
次に、図13(B)に示すように、照射位置をトラック接線方向に移動して照射領域a1と一部が重なる照射領域a2に、次の情報を記録するための情報光と記録用参照光とを照射してそれらの干渉縞パターンを記録する。以下、同様にして照射位置の一部を重ねながらトラック接線方向にずらして記録し、照射領域a1から記録し始めたトラックへの記録が一杯になると、次に光記録媒体の半径方向に移動して、隣接トラックに上記と同様にして記録することを繰り返すことにより、図13(C)に示すように、照射領域a1で始まる記録トラック、照射領域b1で始まる記録トラック、照射領域c1で始まる記録トラック、照射領域d1で始まる記録トラックが順次に形成されて情報がホログラフィック記録される。
【0009】
このホログラフィック記録は、レーザービームの強度に応じて屈折率、誘電率、反射率等の光学特性が変化するホログラム記録材料によって形成されたホログラム記録層に、情報光及び記録用参照光を照射し、その干渉縞パターンを定着させることで行われる。つまり、光記録媒体内のホログラム記録層において、情報光及び記録用参照光による光化学反応が生じているのである。このため、ホログラム記録層は、情報光及び記録用参照光が照射され情報を記録すると、光化学反応によって反応物が消費され、かつ、生成物が生成されるので、照射領域におけるホログラム記録層の組成は記録する前と後では変化してしまう。ホログラム記録層の組成が変わると、最適なレーザービームの強度も変わってくる。
【0010】
このため、多重記録は、図13に示したように、既に情報光及び記録用参照光を照射した領域に、再び情報光及び記録用参照光を照射して情報を記録するので、同じ強度のレーザービームを使用していると、照射領域の多重度(その照射領域に重ねて情報を書き込んだ回数)によって情報の記録状態が不均一になる。従って、多重記録においては、照射領域の組成に合わせて照射時間や照射エネルギーを調節してレーザービームの強度も変化させることが好ましい。このレーザービームの照射による組成の変化と、その組成における最適なレーザービームの強度の関係は、実験によって得ることができるが、レーザービームの強度の調節は、複雑で煩雑な制御が要求されるものであった。
【0011】
更に、ホログラム記録層の材料によっては、光化学反応の反応速度が遅いため、情報光及び記録用参照光を照射しても、直ぐには干渉縞パターンが定着せず、定着するために時間が必要な場合がある。このような定着するために時間が必要なホログラム記録層においては、定着する前に再び情報光及び記録用参照光を照射すると、進行中の干渉縞パターンの定着に影響し、充分な強度を持ったホログラムが記録できない原因となっている。
【0012】
また、一般のシフト多重記録方式では、例えば記録を行うディスク状の光記録媒体の周方向(トラック接線方向)への多重度がmで、半径方向の列の数(図13においては4列)がnの場合、周方向への多重記録においては、最初のm回は照射領域の重なり具合が異なるが、その後の照射領域では重なり具合は同程度であるから、最初のm回だけレーザービームの強度を調整すればよかった。しかし、半径方向に次の列に移動すると、再び最初のm回はレーザービームの強度を調整する必要があるので、結局、m×n回のレーザービームの強度の調整が必要である。また、従来のシフト多重記録方式では、定着するために時間が必要なホログラム記録層に対しては、連続的に情報を書き込むことができず、書き込み時間が長くなる。
【0013】
そこで、上記課題に対応すべく、特許文献1において、ホログラフィック記録におけるシフト多重記録方式に適用するレーザービームの調節をまとめて行うことで調節回数を減らす光情報記録方法が開示されている。すなわち、この特許文献1記載の従来の光情報記録方法では、同じ状態の複数の第1の照射領域に第1の条件で情報光及び記録用参照光を照射して第1の情報群を記録し、次に第1の照射領域と重畳するように複数の第2の照射領域に第2の条件で情報光及び記録用参照光を照射して第2の情報群を記録し、以下同様の動作を繰り返す、所謂面多重記録方式であり、これにより、多重度がmの多重記録するために照射条件をm回調節するだけでよく、また、第1の情報群を書き終わるまでの時間を個々の第1の照射領域における光化学反応のための時間とすることができるので、連続して多重記録ができる。
【0014】
また、特許文献2には周方向に所定の間隔でトラッキングサーボ及びクロック生成のためのサーボ領域が同心円状に離散的に形成され、ミラー領域にホログラム記録領域が形成されている光記録媒体が開示されている。更に、特許文献3には、ホログラム記録領域の1つのトラック上に記録されるホログラム記録スポットと、これに隣接するトラック上に記録されるホログラム記録スポットとを、周方向の異なる位置に記録し、また、ホログラム記録スポットの直径をDとし、ホログラム記録スポットの多重数をmとした場合、隣接するホログラム記録スポット間のピッチPがD/mとなるように記録するようにした光情報記録方法が開示されている。
【0015】
【特許文献1】特開2005−32308号公報
【特許文献2】特開平11−311938号公報
【特許文献3】特開2003−178456号公報
【非特許文献1】堀米等,”離陸間近のホログラフィック媒体 2006年に200Gバイトを実現”,日経エレクトロニクス,日経BP社,2005年1月17日号,p.105
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1、2並びに3に記載の従来の光情報記録方法や光記録媒体においては、サーボ情報が離散的で正確な照射領域毎の位置情報やアドレス情報を得ることができないため、記録されるホログラム情報の位置を正確に読取ることが困難で、また、サーボ情報が無い部分にのみホログラム情報を記録するため、記録密度を上げることが困難である。更に、上記の各特許文献記載の従来の光情報記録方法では、多重記録される照射領域毎の最適な記録条件をどのように指定するか明確にされておらず、複数の記録再生装置間でのばらつきや互換性も考慮されていない。
【0017】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、ホログラム情報を正確に所定の位置に記録し得る光記録媒体及び光情報記録方法を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明の他の目的は、ホログラム記録領域に制約を与えることなく、ホログラム記録情報の記録密度を向上し得る光記録媒体及び光情報記録方法を提供することにある。
【0019】
更に、本発明の他の目的は、記録順序にとらわれず、多重度毎に再生光量のばらつきを低減し、均一にホログラム記録し得る光記録媒体及び光情報記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するため、第1の発明は、第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域が、トラックに沿って一部を重複しながらずらして順次に照射され、その情報光と記録用参照光の照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンを情報として記録するホログラム記録層を備えたシフト多重記録方式の光記録媒体であって、照射領域毎にアドレスを付与し、記録場所を正確に指定するための位置決め信号とアドレス信号とがホログラム記録層とは深さ方向に異なるトラッキング用反射層に予め記録されており、第1の波長とは異なる第2の波長の光により、トラッキング用反射層の位置決め信号とアドレス信号とが再生される構造であることを特徴とする。
【0021】
この発明では、シフト多重記録方式の光記録媒体に対する情報光と記録用参照光の照射領域(すなわち、ホログラム記録照射スポット)を、上記の位置決め信号に基づいて、正確に位置決めすることができ、また、位置決め信号及びアドレス信号が記録されているトラッキング用反射層とホログラム記録層とは光記録媒体の深さ方向において分離されているため、位置決め信号とアドレス信号の記録位置に制約されることなく、情報のホログラム記録を行うことができる。
【0022】
また、上記の目的を達成するため、第2の発明は、情報光と記録用参照光の照射領域が、トラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトされ、トラック一周に亘って照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトされることを、同じトラックに対して照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンが情報としてホログラム記録層に多重記録される光記録媒体であって、トラック一周毎の照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が予め媒体製造情報としてトラッキング用反射層にエンボスピット情報として記録されていることを特徴とする。
【0023】
一般に、シフト多重記録方式の光記録媒体に対する情報光と記録用参照光の照射領域の重畳回数が増える度に、再生光量の指標である回折効率は徐々に低下していく傾向にあるが、この発明では、トラック一周毎の照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が予め媒体製造情報としてトラッキング用反射層にエンボスピット情報として記録されているため、記録再生装置では、上記の光の記録条件を再生することで、最適な記録照射条件を簡単に得ることができる。
【0024】
また、上記の目的を達成するため、第3の発明は、第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域が、トラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトされ、トラック一周に亘って照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトされることを、同じトラックに対して照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンを情報として多重記録するホログラム記録層を記録領域全面に備えたシフト多重記録方式の光記録媒体であって、
記録領域は、トラック一周毎の照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が媒体製造情報としてホログラム記録層よりも深さの異なるトラッキング用反射層に予め記録され、かつ、記録再生装置により記録時の最終アドレス及びディフェクトマネジメント情報がホログラム記録層に自動的に記録される第1の領域と、使用する記録再生装置において第1の領域から再生された記録条件に基づいて記録したテスト信号をホログラム記録層に多重記録し、その記録テスト信号を再生した出力値により最適な記録条件を求めるための第2の領域と、ホログラム記録層にユーザーデータを多重記録するための第3の領域とを有することを特徴とする。
【0025】
この発明では、第1の領域から再生された記録条件に基づいて、記録したテスト信号をホログラム記録層に多重記録し、その記録テスト信号を再生した出力値により最適な記録条件を求めるための第2の領域が、上記の第1の領域及びユーザーデータを多重記録するための第3の領域とは別に専用に設けられている。
【0026】
また、上記の目的を達成するため、第4の発明は、第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域を、光記録媒体上のトラックに沿って一部を重複しながらずらして順次に照射し、その情報光と記録用参照光の照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンを情報として光記録媒体のホログラム記録層に記録するシフト多重記録方式の光情報記録方法において、
照射領域毎にアドレスを付与し、記録場所を正確に指定するための位置決め信号とアドレス信号とを、ホログラム記録層とは深さ方向に異なるトラッキング用反射層に、エンボスピット情報として記録する第1のステップと、第1の波長とは異なる第2の波長の光によりトラッキング用反射層から再生して得られた位置決め信号に基づいて、情報光と記録用参照光の照射領域を位置決めしながら、光記録媒体上のトラックに沿って一部を重複しながらずらして順次に、第1の波長の情報光と記録用参照光を照射し、その情報光と記録用参照光の照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンを情報として光記録媒体のホログラム記録層に記録する第2のステップとを含むことを特徴とする。
【0027】
この発明では、シフト多重記録方式の光記録媒体に対する情報光と記録用参照光の照射領域(すなわち、ホログラム記録照射スポット)を、上記の位置決め信号に基づいて、正確に位置決めすることができる。
【0028】
また、上記の目的を達成するため、第5の発明は、情報光と記録用参照光の照射領域は、トラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトされ、トラック一周に亘って照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトされることを、同じトラックに対して照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンを情報としてホログラム記録層に多重記録する光情報記録方法であって、トラック一周毎の照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が媒体製造情報としてトラッキング用反射層にエンボスピット情報として、第2のステップの記録以前に予め記録する第3のステップを含むことを特徴とする。
【0029】
また、上記の目的を達成するため、第6の発明は、第5の発明の第3のステップによりトラッキング用反射層にエンボスピット情報として記録する複数の多重度のそれぞれの最適な光の記録条件は、所定回数の多重度のうちの予め定めた複数の代表的な多重度のそれぞれの最適な光の記録条件のみであり、記録されていない多重度の最適な光の記録条件については、記録再生装置においてトラッキング用反射層から再生される複数の代表的な多重度のそれぞれの最適な光の記録条件から計算で求めさせることを特徴とする。この発明では、全ての多重度について、多重度毎の最適な光の記録条件を記録するのではなく、代表的な多重度毎の最適な光の記録条件だけを記録し、他の多重度の最適な光の記録条件は記録再生装置にて計算により求めるようにしたため、光記録媒体のユーザーデータ記録領域を比較的広く確保できる。
【0030】
また、上記の目的を達成するため、第7の発明は、第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域を、光記録媒体のトラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトし、トラック一周に亘って照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトすることを、同じトラックに対して照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、照射領域における情報光と記録用参照光との干渉パターンを情報として光記録媒体のホログラム記録層に記録するシフト多重記録方式の光情報記録方法であって、
光記録媒体には、トラック一周毎の照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が媒体製造情報として、第1の記録領域のホログラム記録層よりも深さの異なるトラッキング用反射層に予め記録されており、光記録媒体の第1の記録領域のトラッキング用反射層から再生された記録条件に基づいて、第1の記録領域とは異なる第2の記録領域のホログラム記録層にテスト信号を多重記録する第1のステップと、第2の記録領域のホログラム記録層に記録されたテスト信号の再生出力値に基づいて、最適な記録条件のデータを求める第2のステップと、第2のステップで求めた最適な記録条件のデータを第1の記録領域のホログラム記録層に記録する第3のステップとを含むことを特徴とする。
【0031】
この発明では、記録再生装置において、第1の記録領域のトラッキング用反射層から再生された記録条件に基づいて、テスト信号を多重記録した後再生し、そのテスト信号の再生出力値に基づいて、最適な記録条件のデータを求めて第1の記録領域のホログラム記録層に記録するようにしたため、第1の記録領域のホログラム記録層には、記録再生装置個々に適合した最適な記録条件のデータを記録でき、その後は、この第1の記録領域のホログラム記録層から、テスト記録及び再生を行うことなく、その記録再生装置に適合した最適な記録条件のデータを直ちに得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、2次元的に変調された情報光と記録用参照光との干渉パターンをホログラム記録層に情報として記録するホログラフィック記録において、照射領域毎に予め光記録媒体に記録されている位置決め信号を再生することで照射領域の正確な位置を検出することができるため、複数の記録再生装置と光記録媒体の互換性を確保することができ、また、位置決め信号とアドレス信号が記録されているトラッキング用反射層とホログラム記録層とは光記録媒体の深さ方向において分離されており、位置決め信号とアドレス信号の記録位置に制約されることなく、ホログラム記録を行うことができるため、従来よりも情報を高密度にホログラム記録することができる。
【0033】
また、本発明によれば、光記録媒体製造者が、重畳される記録情報の最適記録エネルギーの情報(記録条件)を多重度毎に予め光記録媒体に記録することで、多重度毎の推奨記録エネルギーの情報を記録再生装置に与えることができるため、記録順序にとらわれず、多重度ごとに再生光量(回折効率)のばらつきを低減し均一にすることができる。
【0034】
更に、本発明によれば、光記録媒体製造者が、重畳される記録情報の最適記録エネルギーの情報を多重度毎に予め光記録媒体に記録された情報をもとに、記録再生装置ごとに最適記録エネルギーをテストすることで記録再生装置間のレーザー出力のばらつきが吸収されより正確にかく均一にホログラム記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。図1は本発明になる光記録媒体の一実施の形態の平面図、図2は図1の光記録媒体の一例の概略断面図を示す。図1に示すように、本実施の形態の光記録媒体1は平面形状が円形であり、また、図2に示すように、光記録媒体1は、表面側から基板側に向かって、カバー層2、ホログラム記録層3、接着層4、波長選択反射層5、平滑層6、トラッキング用反射層7の順で円盤状の基板8上に積層された構造である。
【0036】
トラッキング用反射層7は、平面から見た場合、螺旋状又は同心円状に形成されているサーボ用のエンボスピット列に、アルミニウムなどの金属反射膜をスパッタ等で成膜した構造である。平滑層6は、サーボ用のレーザービームの波長が少なくとも60%以上望ましくは90%以上透過させる層であり、紫外線硬化樹脂等をスピンコートしてトラッキング用反射層7上に作られる。
【0037】
波長選択反射層5は、ホログラフィック記録と再生に用いるレーザービームの波長(例えば、400nm)を選択的に80%以上反射し、サーボ用のレーザービーム(例えば、波長650nm)を選択的に少なくとも60%以上望ましくは80%以上透過する、例えば異なる屈折率をもつ2種類の誘電体を積層して作られたダイクロイックミラーを代表とする波長選択特性を持つ反射層で、平滑層6上にスパッタリング等で成膜される。接着層4はホログラム記録層3を波長選択反射層5に接着する、透明な感圧粘着シートからなる層である。
【0038】
ホログラム記録層3は、レーザービームで所定時間照射された時に、そのレーザービームの強度に応じて屈折率、誘電率、反射率等の光学特性が変化するホログラム記録材料によって形成されており、例えば、デュポン(Dupont)社製のフォトポリマ(Photopolymers)HRF−600(製品名)等が使用される。ホログラム記録層3上に設けられたカバー層2は円形透明な層であり、例えば、0.6mm以下の適宜の厚みを有する。また、ホログラム記録層3は、例えば5μm以上の適宜の厚みを有している。
【0039】
また、光記録媒体1は、図1に示すように、その内周から外周へ螺旋状(渦巻状)トラック12が形成されており、コントロール領域9とテスト領域10を有する点に本実施の形態の特徴がある(なお、トラック12は同心円状に形成されていてもよい。)。すなわち、この光記録媒体1の最内周には、予め設定された数の螺旋状(渦巻状)のトラック12からなるコントロール領域9が配置されている。このコントロール領域9のトラッキング用反射層(図2の7)には、光記録媒体1の物理情報や記録多重度毎の最適な推奨記録パワーなどの記録条件が、媒体製造者(媒体製造メーカ)により予めエンボスピット情報として、図10に示すようにアドレス情報と交互に記録されていることで連続したアドレス情報は保たれるようにした。また、コントロール領域9のホログラム記録層(図2の3)には、ユーザーが使用する度に記録された最終アドレスや、欠陥に対するディフェクトマネジメント情報が記録再生装置によって自動的に記録される。
【0040】
また、光記録媒体1は、コントロール領域9の外周側に隣接して、予め設定された数の螺旋状(渦巻状)のトラック12からなるテスト領域10が設けられている。このテスト領域10は、記録再生装置毎のレーザーパワーなどのばらつきを考慮し、各記録再生装置においてコントロール領域9から再生された記録条件に基づいて、テスト信号をホログラム層に多重記録した後、再生出力値を確認する領域である。なお、テスト信号自体は特別な信号ではなく、信号レベルが既知の信号であればよい。
【0041】
多重記録されるホログラム情報は、図3(A)に示されるように、照射領域の重畳回数が増える度に再生光量の指標である回折効率は徐々に低下していく傾向が顕著であるため、図3(B)に示すように重畳回数毎に最適な記録エネルギーが異なる。そのため、上記したように、コントロール領域9のトラッキング用反射層(図2の7)には、光記録媒体1の物理情報や記録多重度毎の最適な推奨記録パワーなどの記録条件が、媒体製造者(媒体製造メーカ)により予めエンボスピット情報として記録されているが、この記録条件はあくまでも媒体製造者が所定の記録再生装置で測定して得られた代表的な記録条件である。
【0042】
そのため、記録再生装置個々に適合した記録条件を求めるために、上記のコントロール領域9のトラッキング用反射層から再生した記録条件に基づいて、このテスト領域10でのテスト信号のホログラム記録層への記録を行った後、そのテスト信号の再生、及びその再生出力値の測定が行われて、最適な記録条件が求められる。このテスト領域10のトラッキング用反射層(図2の7)には、後述するユーザー領域11と同等の螺旋状にホログラム記録時の照射ピッチWp毎にエンボスピットにてアドレスなどが付与されている。
【0043】
また、光記録媒体1には、テスト領域10の外周側に隣接して、予め設定された数の螺旋状(渦巻状)のトラック12からなるユーザー領域11が設けられている。このユーザー領域11のトラッキング用反射層(図2の7)には、螺旋状にホログラム記録時の照射ピッチWp毎にエンボスピットにてアドレスなどが付与されている。また、ユーザー領域11のホログラム記録層(図2の7)には、ユーザーの情報が1回の照射で複数ビットのページデータとして記録され、必要に応じて傷などの欠陥データの代替データに対応したスペア領域を作成することも可能である。
【0044】
次に、本発明になる光情報記録方法が適用される光情報記録再生装置について説明する。図4は本発明になる光情報記録方法が適用される光情報記録再生装置の一例の概略構成図を示す。同図において、図1及び図2で説明した構造の光記録媒体1は、その中心がスピンドル15に取り付けられ、スピンドルモータ16によりアクチュエータドライバ24からのモータ駆動信号に基づいて回転制御される。
【0045】
光学ピックアップユニット17は、光記録媒体1に2次元的にディジタル変調された情報光と、記録用参照光とを照射する光学装置で、フィードモータ18により光記録媒体1の半径方向に移動可能な構成とされている。また、後述するように、サーボ回路23の出力信号に基づいてアクチュエータドライバ24が制御され、その結果、光学ピックアップユニット17内の対物レンズの位置が制御されることにより、トラッキング制御やフォーカス制御が可能な構成とされている。
【0046】
まず、記録準備について説明する。例えば、装置に光記録媒体1が装填されると、光学ピッアップユニット17は、先ずアクチュエータドライバ24から駆動信号を得て、フィードモータ18で光記録媒体1の最内周の領域に移動させられた後、アクチュエータドライバ24にて光記録媒体1のトラッキング用反射層7にて一般的な非点収差法などの方法でフォーカス動作を行い、フォーカスを合わせ、引き続きエンボスピットにて一般的なプッシュプル方式などの方法でトラッキング動作を行う。
【0047】
これにより、光学ピックアップユニット17から光記録媒体1のコントロール領域9のトラッキング用反射層7にレーザービームを照射して、照射されたレーザービームの反射光を光学ピックアップユニット17が受光して光電変換することで、トラッキング用反射層7にあるエンボスピットにて媒体製造者が記録した媒体特性等の物理データ、推奨記録パワーなどの最適記録エネルギーデータを読み出し、続いて、同じくコントロール領域9のホログラム記録層3にレーザービームを照射して、照射されたレーザービームの反射光を光学ピックアップユニット17が受光して光電変換することで、コントロール領域9のホログラム記録層3に記録再生装置により記録された記録管理情報(ディフェクトマネジメント情報)を読み出して光記録媒体1の情報を収集する。
【0048】
装着された光記録媒体1が記録再生装置にとって初めて装着された光記録媒体であった場合、次に光記録媒体1のコントロール領域9に記録されていた情報を基に何種類かの多重度毎の記録が数回繰り返され、最適な記録エネルギーを確認する。その後、その情報に基づいた記録エネルギーにて求められたその記録再生装置における最適記録条件をコントロール領域9のホログラム層3に記録して記録準備は完了する。
【0049】
図5は光学ピックアップユニット17の一例の構成図を示す。同図に示すように、光学ピックアップユニット17は、情報記録及び再生用のレーザービームを生成するための光源31と、サーボ用光源40とを有している。情報記録用のレーザービームを生成する光源31及びサーボ用光源40は、円盤状の光記録媒体に情報を記録する一般的な記録装置における光源と同様に、半導体レーザーが用いられる。光記録媒体1のホログラム記録層3に情報を記録するときは、図4の信号処理回路21から出力された記録されるべき情報信号が、レーザードライバ22を介して図5の光源31を駆動する。
【0050】
光源31から出射されたホログラフィック記録用レーザービームは、コリメータレンズ32により平行光とされた後、空間光変調素子(SLM:Spatial Light Modulator)33に照射される。SLM33には記録すべく、例えばQRコードのような2次元情報と、その外周に参照光用パターンが配置されている。SLM33は透過型でもよいが、ここでは反射型を用いている。代表的な反射型SLMとしては、例えば、反射型液晶素子である日本ビクター株式会社製のD−ILA(登録商標)があげられる。SLM33で空間光変調により2次元ディジタル変調された同一波長の情報光と参照光は、偏光ビームスプリッタ(PBS)34を透過して、ダイクロイックビームスプリッタ37に入射する。
【0051】
一方、サーボ用光源40からは上記の情報光と参照光とは異なる波長のサーボ用レーザービームが出射され、コリメータレンズ41で平行光とされた後、偏光ビームスプリッタ(PBS)42を透過してダイクロイックビームスプリッタ37に入射する。これにより、ダイクロイックビームスプリッタ37では、上記情報光と参照光が上記のサーボ用レーザービームと波長合成された後、1/4波長板38で円偏光に変換され、対物レンズ39で集光されて光記録媒体1に照射される。光記録媒体1に照射された光のうち、上記の情報光と参照光は、図2の波長選択反射層5で反射され、ホログラム記録層3にてそれら情報光と参照光との干渉パターンを発生させてそれが情報として記録される。
【0052】
また、上記のサーボ用レーザービームは、図2のホログラム記録層3及び波長選択反射層5を順次に透過してトラッキング用反射層7に入射して反射され、その反射光は波長選択反射層5及びホログラム記録層3を順次に透過して対物レンズ39に入射する。図5の対物レンズ39に入射した反射光は、対物レンズ39を透過して1/4波長板38で円偏光から直線偏光に変換され、ダイクロイックビームスプリッタ37で反射され、更にPBS42で反射されて光検出器43にて受光されて光電変換される。光検出器43から出力された電気信号は、フォーカスエラー制御部44、トラッキングエラー制御部45及びアドレス信号再生部46にそれぞれ供給されて、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、アドレス信号に変換される。
【0053】
図4のサーボ回路23は、図5のフォーカスエラー制御部44、トラッキングエラー制御部45を含んでおり、それらの出力信号は、アクチュエータドライバ24に供給され、スピンドルモータ16及びフィードモータ18の回転や、光学ピックアップユニット17内の対物レンズ39の位置を可変制御する。なお、図4の検出回路19は、図5の光検出器35及び43を含む。また、アドレス信号再生部46で再生されたアドレス信号は図4の信号処理回路21に供給される。アドレス信号再生部46は、後述する図10(A)のIDで示すアドレス信号だけでなく、同期信号Syncの検出信号や、IDの替わりに光記録媒体製造者が予め記録しておいた媒体製造情報なども再生して、図4のCPU20や信号処理回路21に入力する。
【0054】
次に、再生時の光経路について説明する。図5の光源31から光強度一定のホログラフィック再生用レーザーが出射され、コリメータレンズ32を通り平行光に変換され、参照光情報のみが送られているSLM33に照射される。SLM33で空間光変調された参照光のレーザービームは、PBS34を透過してダイクロイックビームスプリッタ37に入射し、ここでサーボ用レーザービームと波長合成され、更に1/4波長板38を通り円偏光とされた後、対物レンズ39で集光され、光記録媒体1に照射される。上記の参照光は、ホログラム記録層3に入射し、ホログラム記録層3の干渉縞に応じた強度の反射光とされる。
【0055】
この反射光(戻り光)は、ホログラフィック用レーザービームとして対物レンズ39を通り、1/4波長板38で入射光に対して位相が90度異なった直線偏光に変換された後、ダイクロイックビームスプリッタ37で、サーボ用レーザービームの反射光と波長分離され、ホログラフィック用レーザービームはダイクロイックビームスプリッタ37を透過してPBS34に入射し、ここで反射されて、光検出器35により受光されて光電変換される。光検出器35は光検出器43と同様に、CCD(電荷結合素子)やCーMOSなどで構成されており、ホログラフィック用レーザービームを光電変換して得た読み出し信号を、図4の信号処理回路21やCPU20に供給する。
【0056】
また、サーボ用レーザービームは、ダイクロイックビームスプリッタ37で反射してPBS42に入射し、ここで反射されて、光検出器43により受光されて光電変換され、得られた電気信号がフォーカスエラー制御部44、トラッキングエラー制御部45及びアドレス信号再生部46に供給される。図4の信号処理回路21では、図5のアドレス信号再生部46からのアドレス情報を読取り、これに基づき光学ピックアップユニット17の光記録媒体1上の正確な位置を判読し、CPU20へアドレス情報を送る。CPU20は記録又は再生に指定されるアドレスと、信号処理回路21から入力された現在の再生アドレスとを比較し、光学ピックアップユニット17の移動量を算出する。
【0057】
ホログラム記録時は、CPU20から送られてきたアドレス情報をもとに、アクチュエータドライバ24及びサーボ回路23を使用してフィードモータ18などを使い光学ピックアップユニット17を、光記録媒体1の指定されたアドレス位置に移動する。また、このとき、光学ピックアップユニット17の移動後の位置を、CPU20はサーボ用光源40から出射したレーザービームにて光記録媒体1のトラッキング用反射層7のエンボスピットからのアドレス信号で確認し、記録すべき2次元情報をSLM33に表示すると共に、レーザードライバ22を通して光源31から事前に確認した多重度に合わせた最適な記録エネルギーのホログラム記録用レーザービームを出射させ、前記の光学系を通して光記録媒体1のホログラム記録層3に情報を記録する。
【0058】
なお、情報の記録順序は、多重度による最適記録エネルギーの確認用記録から始まり記録再生装置における最適記録エネルギーを確定してから、図1の光記録媒体1のコントロール領域9、ユーザー領域11に記録され、最後にどのアドレスからどのアドレスに記録されどの多重度で記録されたかという記録情報を、CPU20から2次元情報に変換してSLM33に送り出し、コントロール領域9のホログラム記録層3にホログラム情報として記録して記録動作は終了する。
【0059】
次に、ホログラム再生時には、図4のCPU20から送られてきたアドレス情報をもとに、ホログラム記録時と同様に、アクチュエータドライバ24及びサーボ回路23を使用してフィードモータ18などを使い、光学ピックアップユニット17を光記録媒体1の指定されたアドレス位置に移動すると共に、光学ピックアップユニット17の移動後の位置を、CPU20がサーボ用光源40から出射したレーザービームにて光記録媒体1のトラッキング用反射層7のエンボスピットからのアドレス信号で確認する。
【0060】
その後、CPU20は光源31から、ホログラム記録と同じレーザービームを記録時に比較して1/10以下の低い出力で再生用レーザービームとして出射させる。この再生用レーザービームは、ホログラム記録時の記録用レーザービームと同等の光学系を通るが、SLM33上の情報はホログラム記録された参照光のみで情報光はない。前述したように、再生時には光記録媒体1のホログラム記録層3に記録された干渉縞に応じた反射光を、対物レンズ39、1/4波長板38、ダイクロイックビームスプリッタ37を経由してPBS34に入射し、ここで反射された反射光を光検出器35にて2次元情報を電気信号に変換して図4の信号処理回路21へ送る。
【0061】
次に、本発明の光情報記録方法の一実施の形態の光記録媒体の記録情報及び照射パターンについて更に詳細に説明する。本実施の形態では、定着時間が記録時間と比較して短い材料で構成された光記録媒体1のホログラム記録層3に対しては、記録時には情報光と参照光とが図6(A)に51−1で示すように、直径DSPが500μmであるスポットを形成して干渉縞をホログラム記録層3内で発生させて記録を行い、続いて、トラック接線方向(周方向)に500μm移動して同図(A)に51−2で示すように、直径DSPが500μmであるスポットを形成して干渉縞をホログラム記録層3内で発生させて記録を行い、以下、同様に螺旋状のトラックを500μm毎に記録する。従って、隣接するスポットは重畳せずに接するようにして記録が行われる。
【0062】
上記の動作を繰り返して、図7(A)にa1、a2、・・・、amで示す、各照射領域毎にトラックの一周分の記録が行われると、続いて、図6(B)に示すように、同じトラックのトラック接線方向(周方向)にピッチWp(例えば、10μm)だけずらして1トラック前に形成したスポット51−1にほぼ重畳する位置にスポット52−1を形成して、情報光と参照光とによる干渉縞をホログラム記録層3内で発生させて記録を行い、以下同様にして、螺旋状のトラックを500μm毎に記録する。すなわち、1トラック後の情報光と参照光との照射スポットは、1トラック前の照射スポットに対してピッチWpだけずらすようにして重畳回数1回目の記録が行われる。
【0063】
上記の動作を繰り返して、図7(B)にa1’、a2’、・・・、am’で示す各照射領域からなるトラックの一周分の記録が行われると、再び同じトラックのトラック接線方向(周方向)に、1トラック前に形成した図6(B)のスポット52−1に対してピッチWp(例えば、10μm)だけずらして重畳するスポットを形成して、情報光と参照光とによる干渉縞をホログラム記録層3内で発生させてホログラム記録を行い、以下同様にして、螺旋状のトラック上を500μm毎にスポットを形成して重畳回数2回目の記録が行われる。
【0064】
以下、この動作が繰り返されて1トラックに対して所定の多重記録回数(N=DSP/Wp)の記録が終了すると、図8に示すように、スポット51−1に対して光記録媒体の半径方向にWpだけ移動して、スポット51−1に大部分が重畳するスポット61−1を形成して、再び上記と同様の1本のトラックに対する多重記録を開始する。
【0065】
なお、図8の替わりに図9に示すように、スポット51−1に対して光記録媒体の半径方向にスポットの直径DSPだけ移動して、スポット51−1に接するスポット62−1を形成して、再び上記と同様の1本のトラックに対する多重記録を開始するようにしてもよい。
【0066】
ここで、本実施の形態は、上記のスポット51−1、51−2、52−1、61−1、62−1等のホログラム照射スポットのスポット中心位置を定めるための、位置決め信号が、前述した光記録媒体1のコントロール領域9、テスト領域10及びユーザー領域11のトラッキング用反射層7に予めエンボスピット列として記録されている点に特徴がある。
【0067】
図10(A)は上記のトラッキング用反射層7に記録されているコントロール領域のアドレス信号等の信号フォーマットの一実施の形態を示す。図10(A)に示すように、コントロール領域9におけるアドレス信号等は、1セクタが上記のホログラム記録照射スポットの直径DSPと同じ500μmの長さで記録され、1セクタは、それぞれホログラム記録照射スポットピッチWp(=10μm)単位の長さである、マーカM、ID及び同期信号Syncからなる第1の信号部と、コントロールデータC及び同期信号Syncからなる第2の信号部とが交互に配置された構成とされている。
【0068】
ここで、同期信号Syncが、上記のホログラム照射スポットのスポット中心位置を定めるための位置決め信号である。また、上記のIDは、アドレス番号情報を示すアドレス信号である。また、コントロールデータCは、媒体製造者(媒体製造メーカ)により測定して予め記録される、前記した光記録媒体1の物理情報や記録多重度毎の最適な推奨記録パワーなどの記録条件を示すデータである。
【0069】
具体的なトラッキングを行うためのピット列の例としては、図10(B)に示すように、公知のDVD(Digital Versatile Disc)と同等の1T=0.133μmの周期を基本として、3Tから8Tの長さの範囲で規定される(ただし、Tはチャネルクロックの周期)。ピット列の基本構成は、クロック発生の基準となる3T信号から11T信号の組み合わせよりなる、アドレスが記されるID部の直前に配置されたマーカM、クロック信号が維持されるべくD8−16変調された4バイトからなるアドレス信号部(ID)、実際の記録スポット中心を規定する同期信号Sync、コントロールデータCからなる。
【0070】
アドレス信号部IDの4バイトは、信頼性を増すために1バイトのECC(誤りチェックコード)を追加することも可能である。1周中のトラックにおいてアドレスの付け方に例えば連続性をもたせるなどして、仮に読取りエラーが発生しても訂正を可能にしておく。なお、同期信号SyncとマーカMの信号は、IDやコントロールデータCに発生しないパターンとすることが望ましい。
【0071】
図10(C)は図10(B)の反射率の変化とサーボ信号でのアドレス信号の電圧を表している。ピット部はサーボ光が回折して反射量が低下し電圧のレベルが下がる。図10(C)に示すように、最も短いマークの3T信号はMTF(Modulation Transfer Function)の関係で振幅は若干小さくなるが、2値化するには問題ない値に設定され、その再生信号が光記録媒体記録再生装置内の周知の位相同期ループ(PLL)回路でロックされて、クロック信号を生成させる。また、信号のエッジを利用して情報をデコードし、この例では5TのSyncの立下りのエッジ中央部を、前記ホログラム照射スポットのスポット中心位置になるようにしている。
【0072】
図11(A)は同様にトラッキング用反射層7に記録されているユーザー領域11のアドレス信号等の信号フォーマットの一実施の形態を示す。ユーザー領域11のトラッキング用反射層7に記録されているアドレス信号は、1セクタが上記のホログラム記録照射スポットの直径DSPと同じ500μmの長さで記録され、1セクタは、それぞれホログラム記録照射スポットピッチWp(=10μm)単位の長さである点はコントロール領域9に記録されているアドレス信号等と同様であるが、図11(A)に示すように、コントロールデータCは存在せず、マーカM、ID及び同期信号Syncからなる信号部から構成されている。ユーザー領域11のアドレス信号等の信号列は、図11(B)に示され、信号波形は同図(C)に示される。
【0073】
ホログラム記録の実際の位置を規定するために、ID信号の直後に同期信号Syncを配置し、このSyncの立下りもしくは立上り時にホログラム記録のレーザービームが照射されるようにする。ホログラム記録のホログラム照射スポットの直径DSPが500μmであった場合、まず周方向に多重されない長さとして0.5mm毎にセクタを設ける。そして、ホログラム照射スポットピッチWpである10μm毎に多重されるとすると、1セクタにDSP/Wp=50個の情報データがホログラム記録されることになる。
【0074】
このため、本実施の形態は、ホログラム照射スポットピッチWpである10μm毎に同期信号Syncを入れ、トラッキング用反射層7でエンボスピットのジッタをDVD並み程度の8%以下にすることにより、0.01μm以下の精度でホログラム記録照射位置をトラック周方向で制御できることを特徴とする。
【0075】
光記録媒体1の半径方向では、トラッキング用反射層7のエンボスピット列のピッチは、ホログラム記録時の照射ピッチWpの1/10以下のピッチとすることが望ましい。例えば、周方向のホログラム記録時の照射ピッチWpの10μmと同様な半径方向のピッチとすると、トラッキング用反射層7のトラッキングピッチは1μm以下となる。
【0076】
なお、コントロール領域9内のトラッキング用反射層7には、図10(A)に示したフォーマットの第1の信号と、第1の信号のIDの替わりに、光記録媒体の物理情報や、ホログラム記録照射スポット(照射領域)の重畳回数毎の最適なレーザービームの照射条件などの、媒体製造者が予め求めた媒体製造情報が配置された第2の信号とが、例えば所定のセクタ周期で交互にアドレス信号として記録されている。一方、テスト領域10やユーザー領域11内のトラッキング用反射層7には、図10(A)に示したフォーマットの第1の信号のみがアドレス信号として連続して記録されている。
【0077】
このように、本実施の形態では、光記録媒体1のトラッキング用反射層7からサーボ用レーザービームで再生したアドレス信号中の同期信号Syncの再生位置からホログラム記録のためのホログラム記録照射スポットを正確に位置決めすることができるため、これにより複数の記録再生装置と光記録媒体1との互換性を確保できる。
【0078】
また、トラッキング用反射層7の再生用のサーボ用レーザービームと、ホログラム記録層3に対してホログラム記録を行う情報光及び参照光のレーザービームとは波長が異なり、しかもトラッキング用反射層7とホログラム記録層3とは光記録媒体1の深さ方向において分離されているため、アドレス信号の記録位置に制約されることなく、ホログラム記録を行うことができ、従来よりも情報信号を高密度にホログラム記録することができる。
【0079】
また、本実施の形態では、光記録媒体1のホログラム記録層3にホログラム記録するための情報光及び参照光のレーザービーム照射領域を、一部重複させながらあるいは重複させることなくトラック接線方向(周方向)にシフトしながら記録する円周方向のシフト多重記録方式において、予め光記録媒体製造者により照射領域の多重度(重畳回数)毎に最適記録エネルギーの情報が記録されているコントロール層9から最適記録エネルギーを再生し、多重割合毎の最適記録エネルギーの情報に基づいて、記録順序にとらわれず、多重度毎に再生光量(再生効率)のばらつきを低減し、均一にホログラム記録することができる。
【0080】
更に、予め光記録媒体製造者により照射領域の多重度毎に最適記録エネルギーの情報が記録されているコントロール層9から最適記録エネルギーを再生し、その最適記録エネルギーに基づいて、記録再生装置毎に光記録媒体1のテスト領域10を使用して最適記録エネルギーをテストすることができるため、記録再生装置間の記録用レーザービームのレーザーパワーのばらつきが吸収され、より正確に、かつ、均一にホログラム記録することができる。
【0081】
更に、情報光及び参照光のレーザービーム照射領域を、一部重複させながらあるいは重複させることなくトラック接線方向(周方向)にシフトしながら記録する際に、同じトラックにおける照射領域の重畳回数(多重度)に対応した最適記録エネルギーの情報を光記録媒体1のコントロール領域9に記録するので、ホログラム記録層3として定着時間が記録時間と比較して短縮された材料で構成された光記録媒体において、コントロール領域9から再生した照射領域の重畳回数(多重度)に対応した最適記録エネルギーの情報に基づいて、照射領域が重複した多重記録にも対応することができる。
【0082】
このように、本発明の円周方向のシフト多重記録方式では、コントロール領域9から再生した照射領域の重畳回数(多重度)に対応した最適記録エネルギーの情報に基づいて、ホログラム記録用のレーザーパワーの照射領域(照射スポット)の重畳回数(多重度)に対応した最適なホログラム記録ができるので、照射領域の組成に合わせたレーザービームの強度の調節をまとめて行うことができ、調節回数を減らすことができ、制御も容易になる。
【0083】
例えば、周方向への多重度がmで、半径方向の列の数がnの場合、半径方向への多重度をx(x≦n)とすると、従来m・n回のレーザービームの強度の調節が必要であったが、本発明ではm・x回のレーザービームの強度の調節で済む。また、光記録媒体1のトラック1周で情報信号を書き終わるまでの時間を、図7(A)にa1、a2、・・・、amで示した個々の照射領域における光化学反応のための時間とすることができるので、本実施の形態では連続して多重記録方式を実行することができる。
【0084】
なお、図6(B)に52−1、図7(B)にa1’等で示した同じトラックに対するトラック2周目以降の照射スポット(照射領域)の最適記録パワーは、そのトラック1周前の照射スポット(照射領域)51−1、a1等と重畳する割合(多重度)で決定され、その重畳する割合が大きいほど(重畳面積が大きいほど)、ホログラム記録層3中の反応物の量が少なくなるので強い照射強度が必要となる。すなわち、図3(B)に示すように、トラック1周当りの照射領域の最適記録エネルギーは、同じトラックでの照射領域の重畳回数が多いほど(多重度が大きいほど)大きくする必要があり、よって、上記多重度の組み合わせ数分だけ最適記録エネルギーの事前情報があることが望ましい。
【0085】
しかし、図3(B)に示すように、5多重以上の多重度では、ある程度直線的な傾向となるため、複数の多重度における最適記録エネルギーのテスト記録は、必ずしも多重度の全ての組み合わせについて行う必要はない。そこで、本実施の形態の光記録媒体1のコントロール領域9のトラッキング用反射層7には、例えば、重畳回数(多重度)が0回、1回、2回、3回、4回、5回、10回、20回、・・・、最大回のそれぞれについての最適記録エネルギーを記録すると共に、図3(B)に点線Iで示した重畳回数(多重度)と最適記録エネルギーの傾斜特性の情報を記録しており、上記以外の多重度の最適記録エネルギーは、その傾斜特性の情報から計算により求めることができる。
【0086】
なお、前記特許文献1に記載された従来の光情報記録方法は、光記録媒体を複数のゾーンに分けて、各ゾーン内において各情報群の記録を行うことを特徴としている。円盤状の記録媒体を複数のゾーンに分けて記録を行う方式としては、周知のように、各ゾーンにおいて角速度を一定とするZCAV(Zone Constant Angular Velocity)方式や、各ゾーンにおいて線速度を一定とするZCLV(Zone Constant Linear Velocity)方式が知られており、上記の従来の光情報記録方法では、これらZCAV方式やZCLV方式を適用している。
【0087】
しかしながら、ZCAV方式あるいはゾーンに分けることなく記録媒体を一定の角速度で回転するCAV方式でのホログラフィック記録を行うと、図12に示すように照射領域が決定され、角速度一定のZCAV方式やCAV方式では連続的に光記録媒体の半径によって線速度が変化するため記録エネルギーの最適化が困難である。また、ZCLV方式では、光記録媒体の回転速度の変化を一定の範囲に収めることができ、各ゾーンに分けることで光記録媒体の角速度や線速度を一定とすることは可能となるが、記録の線速度が数種類に増え、最適記録エネルギーのテスト記録の組み合わせが、やはり増えるため、多数のゾーンを設けたZCLV方式は望ましくない。
【0088】
そこで、本発明では光記録媒体の全面に渡りCLV方式を採用することで、記録の線速度を1種類とすることができ、最適記録エネルギーのテスト記録の組み合わせを最小として記録を行う。
【0089】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、本発明は図4に示したCPU20が実行し、また、信号処理回路21の機能を備えたコンピュータプログラムを含むものである。このコンピュータプログラムは、記録媒体に記録されていてその記録媒体からコンピュータに取り込まれてもよく、また、通信ネットワークを介して配信されてコンピュータに取り込まれてもよく、更には専用のハードウェアに格納されてコンピュータ内に組み込まれていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の光記録媒体の一実施の形態の平面図である。
【図2】図1の光記録媒体の一例の概略断面図である。
【図3】重畳回数(多重度)と回折効率の関係の一例を示す特性図と、重畳回数(多重度)と最適な記録エネルギーの関係の一例を示す特性図である。
【図4】本発明方法が適用される光情報記録再生装置の一例の概略構成図である。
【図5】図4中の光学ピックアップユニットの一例の構成図である。
【図6】本発明方法によるホログラム記録のトラック方向の多重記録の一例の説明図である。
【図7】本発明によるホログラム記録の媒体半径方向の多重記録の一例の説明図である。
【図8】本発明方法によるホログラム記録の半径方向の多重記録の一例の説明図である。
【図9】本発明方法によるホログラム記録の半径方向の多重記録の他の例の説明図である。
【図10】本発明方法で記録されるコントロール領域のアドレス信号等の一実施の形態のフォーマット等を説明する図である。
【図11】本発明方法で記録されるユーザー領域のアドレス信号等の一実施の形態のフォーマット等を説明する図である。
【図12】従来の光情報記録方法の半径方向の一例の多重記録の例の説明図である。
【図13】従来の光情報記録方法の多重記録の一例の説明図である。
【符号の説明】
【0091】
1 光記録媒体
2 カバー層
3 ホログラム記録層
4 接着層
5 波長選択反射層
6 平滑層
7 トラッキング用反射層
8 基板
9 コントロール領域
10 テスト領域
11 ユーザー領域
12 トラック
17 光学ピックアップユニット
20 中央処理装置(CPU)
31 記録再生用光源
33 空間光変調素子(SLM)
34、42 偏光ビームスプリッタ(PBS)
35、43 光検出器
37 ダイクロイックビームスプリッタ
38 1/4波長板
39 対物レンズ
40 サーボ用光源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域が、トラックに沿って一部を重複しながらずらして順次に照射され、その情報光と記録用参照光の照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンを情報として記録するホログラム記録層(3)を備えたシフト多重記録方式の光記録媒体(1)であって、
前記照射領域毎にアドレスを付与し、記録場所を正確に指定するための位置決め信号とアドレス信号が前記ホログラム記録層とは深さ方向に異なるトラッキング用反射層(7)に予め記録されており、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光により、前記トラッキング用反射層の位置決め信号とアドレス信号とが再生される構造であることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
前記情報光と記録用参照光の照射領域は、トラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトされ、前記トラック一周に亘って前記照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の前記照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトされることを、同じトラックに対して前記照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、前記照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンが情報として前記ホログラム記録層に多重記録される光記録媒体であって、
前記トラック一周毎の前記照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が予め媒体製造情報として前記トラッキング用反射層にエンボスピット情報として記録されていることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域が、トラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトされ、前記トラック一周に亘って前記照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の前記照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトされることを、同じトラックに対して前記照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、前記照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンを情報として多重記録するホログラム記録層を記録領域全面に備えたシフト多重記録方式の光記録媒体(1)であって、
前記記録領域は、
前記トラック一周毎の前記照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が媒体製造情報として前記ホログラム記録層よりも深さの異なるトラッキング用反射層に予め記録され、かつ、記録再生装置により記録時の最終アドレス及びディフェクトマネジメント情報が前記ホログラム記録層に自動的に記録される第1の領域(9)と、
使用する記録再生装置において前記第1の領域から再生された前記記録条件に基づいて記録したテスト信号を前記ホログラム記録層に多重記録し、その記録テスト信号を再生した出力値により最適な記録条件を求めるための第2の領域(10)と、
前記ホログラム記録層にユーザーデータを多重記録するための第3の領域(11)と
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の光記録媒体。
【請求項4】
第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域を、光記録媒体(1)上のトラックに沿って一部を重複しながらずらして順次に照射し、その情報光と記録用参照光の照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンを情報として前記光記録媒体のホログラム記録層(3)に記録するシフト多重記録方式の光情報記録方法において、
前記照射領域毎にアドレスを付与し、記録場所を正確に指定するための位置決め信号とアドレス信号とを、前記ホログラム記録層とは深さ方向に異なるトラッキング用反射層(7)に、エンボスピット情報として記録する第1のステップと、
前記第1の波長とは異なる第2の波長の光により前記トラッキング用反射層から再生して得られた前記アドレス信号に基づいて、前記情報光と記録用参照光の照射領域を位置決めしながら、前記光記録媒体上のトラックに沿って一部を重複しながらずらして順次に、前記第1の波長の前記情報光と記録用参照光を照射し、その情報光と記録用参照光の照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンを情報として前記光記録媒体のホログラム記録層に記録する第2のステップと
を含むことを特徴とする光情報記録方法。
【請求項5】
前記情報光と記録用参照光の照射領域は、トラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトされ、前記トラック一周に亘って前記照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の前記照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトされることを、同じトラックに対して前記照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、前記照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンを情報として前記ホログラム記録層に多重記録する光情報記録方法であって、
前記トラック一周毎の前記照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が媒体製造情報として前記トラッキング用反射層にエンボスピット情報として、前記第2のステップの記録以前に予め記録する第3のステップを含むことを特徴とする請求項4記載の光情報記録方法。
【請求項6】
前記第3のステップにより前記トラッキング用反射層に前記エンボスピット情報として記録する前記複数の多重度のそれぞれの最適な光の記録条件は、前記所定回数の多重度のうちの予め定めた複数の代表的な多重度のそれぞれの最適な光の記録条件のみであり、記録されていない多重度の最適な光の記録条件については、記録再生装置において前記トラッキング用反射層から再生される前記複数の代表的な多重度のそれぞれの最適な光の記録条件から計算で求めさせることを特徴とする請求項5記載の光情報記録方法。
【請求項7】
第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域を、光記録媒体(1)のトラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトし、前記トラック一周に亘って前記照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の前記照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトすることを、同じトラックに対して前記照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、前記照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンを情報として前記光記録媒体のホログラム記録層(3)に記録するシフト多重記録方式の光情報記録方法であって、
前記光記録媒体には、前記トラック一周毎の前記照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が媒体製造情報として、第1の記録領域の前記ホログラム記録層よりも深さの異なるトラッキング用反射層(7)に予め記録されており、
前記光記録媒体の前記第1の記録領域の前記トラッキング用反射層から再生された前記記録条件に基づいて、前記第1の記録領域とは異なる第2の記録領域の前記ホログラム記録層にテスト信号を多重記録する第1のステップと、
前記第2の記録領域の前記ホログラム記録層に記録された前記テスト信号の再生出力値に基づいて、最適な記録条件のデータを求める第2のステップと、
前記第2のステップで求めた前記最適な記録条件のデータを前記第1の記録領域の前記ホログラム記録層に記録する第3のステップと
を含むことを特徴とする光情報記録方法。
【請求項1】
第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域が、トラックに沿って一部を重複しながらずらして順次に照射され、その情報光と記録用参照光の照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンを情報として記録するホログラム記録層(3)を備えたシフト多重記録方式の光記録媒体(1)であって、
前記照射領域毎にアドレスを付与し、記録場所を正確に指定するための位置決め信号とアドレス信号が前記ホログラム記録層とは深さ方向に異なるトラッキング用反射層(7)に予め記録されており、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光により、前記トラッキング用反射層の位置決め信号とアドレス信号とが再生される構造であることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
前記情報光と記録用参照光の照射領域は、トラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトされ、前記トラック一周に亘って前記照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の前記照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトされることを、同じトラックに対して前記照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、前記照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンが情報として前記ホログラム記録層に多重記録される光記録媒体であって、
前記トラック一周毎の前記照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が予め媒体製造情報として前記トラッキング用反射層にエンボスピット情報として記録されていることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域が、トラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトされ、前記トラック一周に亘って前記照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の前記照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトされることを、同じトラックに対して前記照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、前記照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンを情報として多重記録するホログラム記録層を記録領域全面に備えたシフト多重記録方式の光記録媒体(1)であって、
前記記録領域は、
前記トラック一周毎の前記照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が媒体製造情報として前記ホログラム記録層よりも深さの異なるトラッキング用反射層に予め記録され、かつ、記録再生装置により記録時の最終アドレス及びディフェクトマネジメント情報が前記ホログラム記録層に自動的に記録される第1の領域(9)と、
使用する記録再生装置において前記第1の領域から再生された前記記録条件に基づいて記録したテスト信号を前記ホログラム記録層に多重記録し、その記録テスト信号を再生した出力値により最適な記録条件を求めるための第2の領域(10)と、
前記ホログラム記録層にユーザーデータを多重記録するための第3の領域(11)と
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の光記録媒体。
【請求項4】
第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域を、光記録媒体(1)上のトラックに沿って一部を重複しながらずらして順次に照射し、その情報光と記録用参照光の照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンを情報として前記光記録媒体のホログラム記録層(3)に記録するシフト多重記録方式の光情報記録方法において、
前記照射領域毎にアドレスを付与し、記録場所を正確に指定するための位置決め信号とアドレス信号とを、前記ホログラム記録層とは深さ方向に異なるトラッキング用反射層(7)に、エンボスピット情報として記録する第1のステップと、
前記第1の波長とは異なる第2の波長の光により前記トラッキング用反射層から再生して得られた前記アドレス信号に基づいて、前記情報光と記録用参照光の照射領域を位置決めしながら、前記光記録媒体上のトラックに沿って一部を重複しながらずらして順次に、前記第1の波長の前記情報光と記録用参照光を照射し、その情報光と記録用参照光の照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンを情報として前記光記録媒体のホログラム記録層に記録する第2のステップと
を含むことを特徴とする光情報記録方法。
【請求項5】
前記情報光と記録用参照光の照射領域は、トラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトされ、前記トラック一周に亘って前記照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の前記照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトされることを、同じトラックに対して前記照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、前記照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンを情報として前記ホログラム記録層に多重記録する光情報記録方法であって、
前記トラック一周毎の前記照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が媒体製造情報として前記トラッキング用反射層にエンボスピット情報として、前記第2のステップの記録以前に予め記録する第3のステップを含むことを特徴とする請求項4記載の光情報記録方法。
【請求項6】
前記第3のステップにより前記トラッキング用反射層に前記エンボスピット情報として記録する前記複数の多重度のそれぞれの最適な光の記録条件は、前記所定回数の多重度のうちの予め定めた複数の代表的な多重度のそれぞれの最適な光の記録条件のみであり、記録されていない多重度の最適な光の記録条件については、記録再生装置において前記トラッキング用反射層から再生される前記複数の代表的な多重度のそれぞれの最適な光の記録条件から計算で求めさせることを特徴とする請求項5記載の光情報記録方法。
【請求項7】
第1の波長の2次元的にディジタル変調された情報光と記録用参照光の照射領域を、光記録媒体(1)のトラックに沿って隣接する照射領域が接するように順次にシフトし、前記トラック一周に亘って前記照射領域をシフトした後は続いて同じトラックに1周前の前記照射領域に一部が重なり、かつ、隣接する照射領域が接するように順次にシフトすることを、同じトラックに対して前記照射領域をずらしながら所定回数繰り返し、前記照射領域における前記情報光と前記記録用参照光との干渉パターンを情報として前記光記録媒体のホログラム記録層(3)に記録するシフト多重記録方式の光情報記録方法であって、
前記光記録媒体には、前記トラック一周毎の前記照射領域の重畳回数を示す多重度毎に、最適な光の記録条件が媒体製造情報として、第1の記録領域の前記ホログラム記録層よりも深さの異なるトラッキング用反射層(7)に予め記録されており、
前記光記録媒体の前記第1の記録領域の前記トラッキング用反射層から再生された前記記録条件に基づいて、前記第1の記録領域とは異なる第2の記録領域の前記ホログラム記録層にテスト信号を多重記録する第1のステップと、
前記第2の記録領域の前記ホログラム記録層に記録された前記テスト信号の再生出力値に基づいて、最適な記録条件のデータを求める第2のステップと、
前記第2のステップで求めた前記最適な記録条件のデータを前記第1の記録領域の前記ホログラム記録層に記録する第3のステップと
を含むことを特徴とする光情報記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【公開番号】特開2007−35176(P2007−35176A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218367(P2005−218367)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
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