説明

光走査装置、画像形成装置、画像形成装置を搭載した車両

【課題】画像の明るさや画質を確保しながら小型化を実現できる光走査装置を提供すること。
【解決手段】本光走査装置は、光源素子と、前記光源素子から出射される光束が入射するカップリングレンズと、を含む入射光学系と、前記入射光学系から出射される光束を2次元的に偏向する光偏向器と、前記光偏向器により偏向された光束が入射する凹面ミラーと、前記凹面ミラーで反射された光束が入射して2次元像が形成される透過性を有する被走査面と、を含む走査光学系と、を有し、前記光偏向器の反射面による偏角の符号と、前記凹面ミラーによる偏角の符号とが互いに反対である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源素子から出射される光束を走査して2次元像を形成する光走査装置、前記光走査装置を用いた画像形成装置、前記画像形成装置を搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2次元走査するミラーに多色の光束を入射させ、カラー2次元像を得る光走査装置が広く提案されている。特に、光源として半導体レーザを用いた光走査装置では、半導体レーザの放出する光束の高い指向性により、高い光利用効率が得られる。又、半導体レーザを用いた光走査装置では、キセノンランプのような巨大な放熱器を設けることなく、機器内で強い光を発することができ、かつ、指向性の高さから小型な光学系においても明るい画像を形成できる。
【0003】
半導体レーザを用いた光走査装置は、例えば乗用車等に組み込まれ、ヘッドアップディスプレイとして用いられる場合がある。光走査装置を乗用車等に組み込むことを考えた場合、小型化が必然的に求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光走査装置の小型化を追求すると、画質や明るさが犠牲になるという問題が発生する。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、画像の明るさや画質を確保しながら小型化を実現できる光走査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本光走査装置は、光源素子と、前記光源素子から出射される光束が入射するカップリングレンズと、を含む入射光学系と、前記入射光学系から出射される光束を2次元的に偏向する光偏向器と、前記光偏向器により偏向された光束が入射する凹面ミラーと、前記凹面ミラーで反射された光束が入射して2次元像が形成される透過性を有する被走査面と、を含む走査光学系と、を有し、前記光偏向器の反射面による偏角の符号と、前記凹面ミラーによる偏角の符号とが互いに反対であることを要件とする。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、画像の明るさや画質を確保しながら小型化を実現できる光走査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態に係る光走査装置の光路を例示する図(その1)である。
【図2】第1の実施の形態に係る光走査装置の光路を例示する図(その2)である。
【図3】レンズ15について説明するための図である。
【図4】光偏向器16及び凹面ミラー17の配置について説明するための図である。
【図5】第1の実施の形態の変形例1に係る光走査装置の光路を例示する図である。
【図6】第1の実施の形態に係る光走査装置を搭載した画像形成装置の例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態に係る光走査装置を搭載した画像形成装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係る光走査装置の光路を例示する図(その1)である。図2は、第1の実施の形態に係る光走査装置の光路を例示する図(その2)である。図1及び図2は、それぞれ光走査装置10を異なる方向から視た図である。但し、図2では図1に示す光偏向器16、凹面ミラー17、及び被走査面18は図示が省略されている。なお、図1及び図2において、光源素子11R及びBの光軸方向をX方向、光源素子11Gの光軸方向をZ方向、X方向及びZ方向と垂直な方向をY方向としている。
【0011】
図1及び図2を参照するに、光走査装置10は、大略すると、光源素子11R、11G、及び11Bと、カップリングレンズ12R、12G、及び12Bと、アパーチャ13R、13G、及び13Bと、合成素子14と、レンズ15と、光偏向器16と、凹面ミラー17と、被走査面18とを有する。
【0012】
なお、光源素子11R、11G、及び11Bと、カップリングレンズ12R、12G、及び12Bと、アパーチャ13R、13G、及び13Bと、合成素子14と、レンズ15とを含めて入射光学系と称する場合がある。又、光偏向器16と、凹面ミラー17と、被走査面18とを含めて走査光学系と称する場合がある。
【0013】
光走査装置10において、光源素子11R、11G、及び11Bは、それぞれ、互いに異なる波長λR、λG、及びλBの光束を出射することができる。波長λR、λG、及びλBは、例えば、それぞれ、640nm、530nm、及び445nmとすることができる。光源素子11R、11G、及び11Bとしては、例えば、レーザ、LED(Light Emitting Diode)、SHG(Second Harmonic Generation)素子等を用いることができる。
【0014】
明るさや高画質を確保しながら小型化を実現する観点からすると、光源素子11R、11G、及び11Bとして、それぞれ半導体レーザを用いると好適である。光源素子11R、11G、及び11Bは、制御手段(図示せず)により、出射パワーや出射タイミング等を制御される。なお、制御手段(図示せず)は、光走査装置10の内部に設けてもよいし、外部に設けてもよい。
【0015】
光源素子11R、11G、及び11Bから画像信号の内容に応じて出射された各光束(発散光)は、それぞれカップリングレンズ12R、12G、及び12Bで略平行光又は収束光に変換されてアパーチャ13R、13G、及び13Bに入射する。カップリングレンズ12R、12G、及び12Bとしては、例えば、凸状のガラスレンズやプラスティックレンズ等を用いることができる。
【0016】
アパーチャ13R、13G、及び13Bは、それぞれに入射される光束を整形する機能を有する。アパーチャ13R、13G、及び13Bは、それぞれに入射される光束の発散角等に応じて円形、楕円形、長方形、正方形等の様々な形状とすることができる。
【0017】
なお、光源素子11R、11G、及び11Bに対して、共通の1つのカップリングレンズ、及び共通の1つのアパーチャを設ける構成としてもよい。但し、光源素子11R、11G、及び11Bに対して、それぞれカップリングレンズ12R、12G、及び12B、並びに、アパーチャ13R、13G、及び13Bを設けることにより、光源素子11R、11G、及び11Bのそれぞれの発散角の差異に関わらず、光利用効率を確保しながら、被走査面18上のビームスポット径を所望の値に調整できるメリットがある。
【0018】
アパーチャ13R、13G、及び13Bで整形された各光束は、合成素子14に入射し光路合成される。合成素子14は、例えば、プレート状或いはプリズム状のダイクロイックミラーであり、波長に応じて各光束を反射又は透過し、1つの光路に合成する機能を有する。
【0019】
合成素子14で光路合成された各光束は、レンズ15により光偏向器16の反射面に向かって導かれる。レンズ15としては、例えば、凹面側を光偏向器16に向けて配置された単一のメニスカスレンズ等を用いることができる。ここで、図3を参照しながら、レンズ15について更に詳しく説明する。
【0020】
図3は、レンズ15について説明するための図である。図3において、15R及び15Bは、レンズ15に入射する互いに波長の異なる2つの光束を示している。レンズ15の第2面15bから出射される光束15R及び15Bは、光偏向器16の反射面に納まる大きさで出射されることが好ましい。レンズ15は、アパーチャ13R及び13Bで取り込んだ光束15R及び15Bをできるだけ小さくして光偏向器16に送り込む必要があるため、レンズ15の第1面15aは光束15R及び15Bのそれぞれの光束径を集束させるために凸面であることが好ましい。
【0021】
ここで、光束15Rを長波長、光束15Bを短波長の光束とすると、第1面15aでの集光状態は図3に示したように光束15Rと光束15Bとの間で異なる(分散する)。レンズ15がメニスカスレンズでない他の形態(両凸レンズや平凸レンズ等)であると、出射する光束15R及び15Bの発散角は波長に応じてばらついてしまう。
【0022】
レンズ15として、第2面15bを凹面としたメニスカスレンズを用いることにより、第1面15aで分散した光束15R及び15Bは、第2面15bで発散度合いが再び戻される方向に屈折する。その結果、異なる波長の光束15R及び15Bが入射するレンズ15において、出射する光束15R及び15Bの発散度合いのばらつきを収束して光偏向器16に送ることができるため、特定の波長の光束の光量が損失されることなく、画像の輝度を向上することが可能となる。
【0023】
図1及び図2に戻り、入射光学系から出射され光偏向器16の反射面に導かれた光束は、光偏向器16により2次元的に偏向される。光偏向器16としては、例えば、直交する2軸に対して揺動する1つの微小なミラーや、1軸に揺動又は回動する2つの微小なミラー等を用いることができる。光偏向器16は、例えば、半導体プロセス等で作製されたMEMSとすることができる。光偏向器16は、例えば、圧電素子の変形力を駆動力とするアクチュエータにより駆動することができる。
【0024】
光偏向器16により2次元的に偏向された光束は、凹面ミラー17に入射し、凹面ミラー17により折り返されて被走査面18に2次元像を描画する。被走査面18に入射する光束は、光偏向器16に入射する光束の進行方向と成す角が近いことが好ましい。このような配置により、被走査面18上での2次元像の歪を低減できる。又、光束が被走査面18に垂直に近い状態で入射するため、2次元像内の広域にわたって透過効率を高くできる。
【0025】
光走査装置10において、凹面ミラー17を用いることにより、以下のような効果を奏する。第1に、凹面ミラー17は波長分散を有さないため、被走査面18上の画像の色ずれを低減できる。第2に、凹面ミラー17は光束の走査角を縮減させるため、被走査面18上の画像の色ずれを低減できる。第3に、被走査面18の入射角を全走査角において低減することができ、被走査面18の輝度を増大することができる。ここで、色ずれとは、波長の異なる光源素子11R、11G、及び11Bにより被走査面18に形成される複数のスポットの位置ずれを指す。第4に、凹面ミラー17で光路を折り返すことにより、光走査装置10を小型化できる。
【0026】
又、凹面ミラー17は、少なくとも1の方向において非円弧面形状を有することにより、被走査面18上の速度特性を補正できる。つまり、光偏向器16により偏向された光束に等速性を与え、被走査面18上の画素ピッチを均一化できる。
【0027】
なお、凹面ミラー17に代えて被走査面18の直前にフレネルレンズや屈折レンズを設けることもできるが、フレネルレンズを設けた場合にはフレネルレンズの鋸歯形状のバックカット部に影が生じ、光量損失が生じる点で好ましくない。又、屈折レンズを設けた場合には複数の光束に分散が生じ、複数の光束が波長に応じてずれてしまい、色ずれが生じる点で好ましくない。
【0028】
被走査面18は、凹面ミラー17で反射された光束が入射して2次元像が形成される透過性を有する面である。被走査面18としては、例えば、拡散板を用いることができる。拡散板は、入射光をその進行方向側に拡散させる機能を有する。拡散板に代えてマイクロレンズアレイを用いることもできるが、マイクロレンズアレイは各レンズ間で影が生じるため光量損失が大きく、光利用効率が低下する点で好ましくない。
【0029】
一方、拡散板は表面形状の設計によって透過光の拡散角を選択できるので、後続の光学系に送り込む光束の光量損失を少なくできる点で好ましい。例えば、拡散板の表面にランダムな微少凹凸を形成したり、ライン状の凹凸を形成したりすることにより、高い透過率を維持しながら必要な範囲だけに光を拡散することが可能となり、後続の光学系に送り込む光束の光量損失を少なくできる。
【0030】
ここで、図4を参照しながら、光偏向器16及び凹面ミラー17の配置について更に詳しく説明する。図4は、光偏向器16及び凹面ミラー17の配置について説明するための図である。図4を参照するに、光偏向器16と凹面ミラー17とは、全光束について、互いにその偏角(入射光束と出射光束とがなす角)の符号が反対になるように配置されている。光偏向器16と凹面ミラー17をYZ平面に垂直な方向(X方向)から見ると、光偏向器16に入射し光偏向器16で偏向されて凹面ミラー17で反射する光束の光路は"Z"の文字を描く。
【0031】
図4のYZ平面において、入射光束の進行方向から数えて左回り角度を正の偏角と定義すると、光偏向器16においては偏角16dは正であり、凹面ミラー17においては偏角17dは負である。このように、光偏向器16と凹面ミラー17とは、互いにその偏角の符号が反対になるように配置されている。このような配置を採用することにより、被走査面18の上端及び下端に達する光束の光路差が減少するため、被走査面18上の画像の台形歪や曲がりを低減できる。
【0032】
なお、このような配置を採用せずに画像に台形歪や曲がりが発生した場合に、電気的に補正することも可能であるが、無効な画素が生じるため、画像が暗くなる問題がある。本実施の形態では、電気的に補正しなくても画像の台形歪や曲がりを低減できるため、明るさや高画質を確保できる。
【0033】
このように、第1の実施の形態では、光源素子11R、11G、及び11Bから出射された互いに波長の異なる光束を2次元的に走査し被走査面18上に多色画像を形成する光走査装置10において、光路中に光偏向器16と凹面ミラー17とを互いにその偏角の符号が反対になるように配置している。これにより、以下の効果を奏する。
【0034】
すなわち、凹面ミラー17を用いることにより、被走査面18上の画像の色ずれを低減できる。
【0035】
又、凹面ミラー17を用いることにより、被走査面18の入射角を全走査角において低減することができ、被走査面18の輝度を増大することができる。
【0036】
又、光偏向器16と凹面ミラー17とを互いにその偏角の符号が反対になるように配置することにより、被走査面18の上端及び下端に達する光束の光路差が減少するため、被走査面18上の画像の台形歪、曲がりを低減できる。
【0037】
又、凹面ミラー17を用いることにより、光走査装置10を小型化できる。
【0038】
つまり、画像の明るさや画質を確保しながら光走査装置10の小型化を実現できる。
【0039】
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、第1の実施の形態とは光学素子の配置が異なる光走査装置の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0040】
図5は、第1の実施の形態の変形例1に係る光走査装置の光路を例示する図である。図5は、光走査装置20を図2と同様の方向から視た図である。但し、図5では図2と同様に光偏向器16、凹面ミラー17、及び被走査面18は図示が省略されている。なお、光走査装置20において、光偏向器16、凹面ミラー17、及び被走査面18の配置は、光走査装置10と同様である。
【0041】
図5を参照するに、光走査装置20では、光源素子11R、カップリングレンズ12R、及びアパーチャ13Rと、光源素子11G、カップリングレンズ12G、及びアパーチャ13Gと、光源素子11B、カップリングレンズ12B、及びアパーチャ13Bとが、それぞれの光束の進行方向が略平行となるように並設されている。
【0042】
アパーチャ13R、13G、及び13Bで整形された各光束が合成素子14に入射して光路合成される点、及び合成素子14以降の光学系に関しては、光走査装置10と同様である。
【0043】
このように、光源素子、カップリングレンズ、アパーチャ、合成素子等の配置は、適宜決定することができる。
【0044】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、第1の実施の形態に係る光走査装置10を用いた画像形成装置の例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0045】
図6は、第1の実施の形態に係る光走査装置を搭載した画像形成装置の例を示す図である。図6を参照するに、画像形成装置50は、大略すると、第1の実施の形態に係る光走査装置10と、凹面ミラー51と、半透過鏡52とを有する。但し、後述するように、半透過鏡52は、画像形成装置50の必須の構成要素ではない。
【0046】
画像形成装置50において、光走査装置10の被走査面18を透過した各光束は、凹面ミラー51により折り返されて(反射されて)、半透過鏡52に入射する。半透過鏡52は、可視域の透過率が0%又は100%でない鏡であり、凹面ミラー51により折り返された光束が入射する側に、例えば、誘電体多層膜或いはワイヤーグリッド等が形成された反射面を有する。半透過鏡52の反射面は、光源素子が出射する光束の波長帯を選択的に反射するものとすることができる。すなわち、波長λR,λG,及びλBを包含する反射ピークや反射バンドを有するものや、特定の偏向方向に対して反射率を強めるように形成されたものとすることができる。
【0047】
つまり、半透過鏡52は、光走査装置10の光源素子11R、11G、及び11Bが放出する光束の波長帯を選択的に反射する。そのため、光走査装置10から放出される特定波長の複数の画像光による明るさを増大することができる。
【0048】
なお、凹面ミラー51の反射面は、アナモフィックとすることができる。つまり、凹面ミラー51の反射面は、所定方向の曲率と、それに直交する方向の曲率とが異なる反射面とすることができる。凹面ミラー51の反射面をアナモフィックとすることにより、反射面の曲面形状を調整可能となり、収差補正性能を向上できる。
【0049】
画像形成装置50では、凹面ミラー51と、反射面が平面の半透過鏡52とを用いる例を示したが、凹面ミラー51に代えて平面ミラーを用い、半透過鏡52の反射面を凹面としてもよい。つまり、光走査装置10の被走査面18を透過した各光束を折り返すミラーと、半透過鏡52の有する少なくとも1つの光学面が凹面であればよい。又、光走査装置10等のレイアウトによっては、凹面又は平面のミラーを2枚以上備えていてもよい。
【0050】
画像形成装置50は、乗用車等の車両に搭載することができる。その際、半透過鏡52は、車両のフロントウィンドウ等と一体化されてもよい。画像形成装置50を乗用車等の車両において運転者の前方に配置することにより、半透過鏡52の反射面(フロントウィンドウ等と一体化されている場合もある)で反射された光束は、運転席にいる運転者の眼球58へ入射し、被走査面18の2次元像が、半透過鏡52の反射面(フロントウィンドウ等と一体化されている場合もある)よりも前方の所定の位置に拡大された虚像59として視認される。
【0051】
つまり、画像形成装置50により、所謂ヘッドアップディスプレイを実現できる。この場合、被走査面18の2次元像としては、例えば、車両の計器情報や地図情報等を挙げることができる。虚像59は半透過鏡52の反射面(フロントウィンドウ等と一体化されている場合もある)よりも前方の所定の位置にあるため、運転者は運転中に前景を見ている状態で焦点を大きく移動することなく、車両の計器情報や地図情報等を視認できる。
【0052】
このように、画像形成装置50では、凹面ミラー51及び半透過鏡52により、光走査装置10の被走査面18上に形成された2次元像の拡大された虚像59を得ることが可能となり、所謂ヘッドアップディスプレイを実現できる。
【0053】
又、画像形成装置50では、光走査装置10から半透過鏡52までの間に、単一の凹面ミラー51を配置しており、屈折系を有さないため、色収差の発生を防止できる。
【0054】
なお、以上の説明から明らかなように、画像形成装置50の構成要素として、半透過鏡52を含む場合と、半透過鏡52を含まない場合がある。画像形成装置50の構成要素として半透過鏡52を含まない場合には、半透過鏡52の機能を車両のフロントウィンドウ等に持たせることができる。
【0055】
〈第2の実施の形態の変形例〉
第2の実施の形態の変形例では、第2の実施の形態とは異なる画像形成装置の例を示す。なお、第2の実施の形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0056】
図7は、第1の実施の形態に係る光走査装置を搭載した画像形成装置の他の例を示す図である。図7を参照するに、画像形成装置60は、光走査装置10の配置が異なる点、凹面ミラー51が削除された点、半透過鏡52が半透過鏡62に置換された点が画像形成装置50(図6参照)と相違する。但し、画像形成装置50の場合と同様に、半透過鏡62は、画像形成装置60の必須の構成要素ではない。
【0057】
画像形成装置60において、光走査装置10の被走査面18から出射される各光束は、半透過鏡62に直接入射する。半透過鏡62は、半透過鏡52と同様に、可視域の透過率が0%又は100%でない鏡であり、被走査面18から出射された光束が入射する側に、例えば、誘電体多層膜或いはワイヤーグリッド等が形成された反射面を有する。半透過鏡62の反射面は、半透過鏡52と同様に、波長λR,λG,及びλBを包含する反射ピークや反射バンドを有するものや、特定の偏向方向に対して反射率を強めるように形成されたものとすることができる。
【0058】
つまり、半透過鏡62は、半透過鏡52と同様に、光走査装置10の光源素子11R、11G、及び11Bが放出する光束の波長帯を選択的に反射する。そのため、光走査装置10から放出される特定波長の複数の画像光による明るさを増大することができる。但し、半透過鏡62の反射面は、半透過鏡52の反射面(平面)とは異なり、凹面とされている。
【0059】
なお、半透過鏡62の反射面(凹面)は、アナモフィックとすることができる。半透過鏡62の反射面をアナモフィックとすることにより、反射面の曲面形状を調整可能となり、収差補正性能を向上できる。
【0060】
このように、画像形成装置60では、曲面(凹面)を有する半透過鏡62により、光走査装置10の被走査面18上に形成された2次元像の拡大された虚像59を得ることが可能となり、所謂ヘッドアップディスプレイを実現できる。
【0061】
又、画像形成装置60は、凹面ミラー51を有さないため、画像形成装置50よりも小型化することができる。
【0062】
なお、画像形成装置50と同様に、画像形成装置60の構成要素として、半透過鏡62を含む場合と、半透過鏡62を含まない場合がある。画像形成装置60の構成要素として半透過鏡62を含まない場合には、半透過鏡62の機能を車両のフロントウィンドウ等に持たせることができる。画像形成装置60の構成要素として半透過鏡62を含まない場合には、光走査装置10そのものが画像形成装置60として機能することになる。
【0063】
以上、好ましい実施の形態及びその変形例について詳説したが、上述した実施の形態及びその変形例に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態及びその変形例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0064】
例えば、各実施の形態及びその変形例では、光走査装置10において、3つの光源素子11R、11G、及び11Bを用いる例を示したが、単一の光源素子を用いて単色の画像を形成する構成としてもよい。この場合には、合成素子14は省略できる。
【0065】
又、画像形成装置50や60において、光走査装置10に代えて、光走査装置20を搭載してもよい。
【0066】
又、車両の一例として乗用車を挙げたが、航空機や電車等の他の車両にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0067】
10、20 光走査装置
11R、11G、11B 光源素子
12R、12G、12B カップリングレンズ
13R、13G、13B アパーチャ
14 合成素子
15 レンズ
15a レンズ15の第1面
15b レンズ15の第2面
15B、15R 光束
16 光偏向器
16d、17d 偏角
17 凹面ミラー
18 被走査面
50、60 画像形成装置
51 凹面ミラー
52、62 半透過鏡
58 運転者の眼球
59 虚像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2010−145745号公報
【特許文献2】特開2010−145746号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源素子と、前記光源素子から出射される光束が入射するカップリングレンズと、を含む入射光学系と、
前記入射光学系から出射される光束を2次元的に偏向する光偏向器と、
前記光偏向器により偏向された光束が入射する凹面ミラーと、前記凹面ミラーで反射された光束が入射して2次元像が形成される透過性を有する被走査面と、を含む走査光学系と、を有し、
前記光偏向器の反射面による偏角の符号と、前記凹面ミラーによる偏角の符号とが互いに反対である光走査装置。
【請求項2】
前記入射光学系は、
互いに波長の異なる複数の光源素子と、
前記複数の光源素子から出射される光束がそれぞれ入射する複数のカップリングレンズと、
前記複数のカップリングレンズから出射される各光束を合成する合成手段と、を含む請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
前記入射光学系において、前記カップリングレンズは前記複数の光源素子に対して各々設けられ、
前記カップリングレンズから出射される各光束に対して各々にアパーチャを設けた請求項2記載の光走査装置。
【請求項4】
各光源素子から出射される光束が共通で入射するレンズを前記光偏向器の前に設けた請求項2又は3記載の光走査装置。
【請求項5】
前記レンズは、凹面側を前記光偏向器に向けて配置された単一のメニスカスレンズである請求項4記載の光走査装置。
【請求項6】
前記凹面ミラーは、少なくとも1の方向において非円弧面形状を有する請求項1乃至5の何れか一項記載の光走査装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項記載の光走査装置と、
前記光走査装置から出射される光束を、外部に設けられた半透過鏡に向けて折り返すミラーと、を有し、
前記ミラーと前記半透過鏡の有する少なくとも1つの光学面が凹面である画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか一項記載の光走査装置と、
前記光走査装置から出射される光束を折り返すミラーと、
前記ミラーで折り返された前記光束が入射する半透過鏡と、を有し、
前記ミラーと前記半透過鏡の有する少なくとも1つの光学面が凹面である画像形成装置。
【請求項9】
前記ミラーは、単一の凹面ミラーである請求項7又は8記載の画像形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至6の何れか一項記載の光走査装置と、
前記光走査装置から出射される光束が入射する凹面を有する半透過鏡と、を有する画像形成装置。
【請求項11】
前記半透過鏡は、前記光源素子が出射する光束の波長帯を選択的に反射する請求項7乃至10の何れか一項記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記凹面がアナモフィックである請求項7乃至11の何れか一項記載の画像形成装置。
【請求項13】
請求項7乃至12の何れか一項記載の画像形成装置を搭載し、
前記半透過鏡をフロントウィンドウと一体化し、
運転者が前記半透過鏡の反射面よりも前方の所定の位置に前記2次元像の拡大された虚像を視認可能な車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−41182(P2013−41182A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179074(P2011−179074)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】