説明

光輝性塗料組成物、光輝性塗膜形成方法および光輝性塗装物

【課題】貴金属または銅のコロイド粒子塗膜の膜厚のバラツキに起因して発生する色相ムラを緩和し、このため色相均一性に優れ、金属粒子感を感じさせない金属感を有する光輝性塗料組成物、光輝性塗膜形成方法、およびこの形成方法により形成された光輝性塗装物を提供すること。
【解決手段】貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液、および、蒸着金属顔料を含有し、前記貴金属または銅のコロイド粒子溶液中の金属固形分に対する前記蒸着金属顔料中の固形分の質量比率が、0.5/100〜50/100である光輝性塗料組成物とする。また、被塗基材に、上記の光輝性塗料組成物を塗装して光輝性ベース塗膜を形成した後、当該光輝性ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装してトップクリヤー塗膜を形成して、光輝性塗装物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝性塗料組成物、光輝性塗膜形成方法、およびこの形成方法により形成された光輝性塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車車体、アルミニウムホイール等の自動車部品などの高い意匠性を必要とする分野においては、アルミニウムフレーク等を用いた光輝性塗料を用いて、メタリック調を発現させる方法が行われており、近年では、このメタリック調の光輝感にも、めっき調等の高級感が求められるようになった。
【0003】
このような高級感のあるメタリック調の塗膜を形成するメタリック塗料として、例えば特開平11−343431号公報には、適度な金属面光沢を有する塗膜を形成することができるメタリック塗料として、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料、好ましくはこの光輝性顔料がアルミニウム粉を含むメタリック塗料が挙げられており、ベース塗膜の上にこのメタリック塗料を塗装した後、クリヤー上塗り層を形成することにより塗膜形成する旨が記載されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたメタリック調の塗膜は、光輝性顔料として、好ましくは金属膜がアルミニウムフレークである、蒸着金属膜を粉砕した金属片が用いられるため、めっき面から得られる金属調(以下、本明細書において「めっき調」という)に近づいてはいるものの、金属粒子感を感じさせない金属感は、いまだ十分に得ることはできなかった。
【0005】
また、めっき調の金属塗膜としては、例えば、高分子分散剤の存在下で還元して得られる、貴金属または銅のコロイド粒子を含有する塗料から塗膜を形成する工程と、この塗膜を加熱して塗膜中のコロイド粒子を融着させて金属薄膜を形成する工程と、を備えることにより得られた塗膜も知られている(特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載された塗膜は、特に反射型液晶表示装置用反射板に用いられるものであり、自動車等の高耐候性を必要とする被塗基材に適用するには、更なる改善が必要であった。
【0007】
更に、耐候性を有するキャンディトーンの光輝性塗装物が得られる組成物として、貴金属または銅のコロイド溶液、光輝性顔料、および、ビヒクルからなる塗料組成物が開示されている(特許文献3参照)。
【0008】
しかしながら、上記特許文献3に記載された塗料組成物に用いられる光輝性顔料としては、例えば、リーフィン型アルミニウム顔料またはノンリーフィン型アルミニウム顔料が挙げられている。これらアルミニウム顔料は塗料用として一般的に使用されるものであり、アルミニウム粉を機械力により粉砕処理して製造され、鱗片状の形状を有するものである。このため、塗膜中におけるアルミニウム片の重なり具合によっては、色ムラが生じる場合があった。
【特許文献1】特開平11−343431号公報
【特許文献2】特開2000−239853号公報
【特許文献3】特開平11−236521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、貴金属または銅のコロイド粒子塗膜の膜厚のバラツキに起因して発生する色相ムラを緩和し、このため色相均一性に優れ、金属粒子感を感じさせない金属感を有する光輝性塗料組成物、光輝性塗膜形成方法、およびこの形成方法により形成された光輝性塗装物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上述の課題に鑑み鋭意研究した結果、本発明に至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0011】
(1) 貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液、および、蒸着金属顔料を含有し、前記貴金属または銅のコロイド粒子溶液中の金属固形分に対する前記蒸着金属顔料中の金属固形分の質量比率が、0.5/100〜50/100である光輝性塗料組成物。
【0012】
(2) 前記蒸着金属顔料中の金属は、アルミニウムおよび/またはアルミニウムチタン合金である(1)記載の光輝性塗料組成物。
【0013】
(3) 前記貴金属または銅のコロイド粒子溶液中の固形分に対する、前記貴金属または銅の濃度は、83質量%以上99質量%未満である(1)または(2)記載の光輝性塗料組成物。
【0014】
(4) 前記光輝性塗料組成物は、ビヒクルを含有する(1)から(3)いずれか記載の光輝性塗料組成物。
【0015】
(5) 前記ビヒクルは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれる少なくとも一種の塗膜形成性樹脂を含む(4)記載の光輝性塗料組成物。
【0016】
(6) 前記ビヒクルは、アミノ樹脂およびブロックイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一種の架橋剤を更に含む(4)または(5)記載の光輝性塗料組成物。
【0017】
(7) (1)から(6)いずれか記載の光輝性塗料組成物の固形分に対する、前記ビヒクルの固形分の質量比率は、5/100〜30/100である(4)から(6)いずれか記載の光輝性塗料組成物。
【0018】
(8) 被塗基材に、(1)から(7)いずれか記載の光輝性塗料組成物を塗装して光輝性ベース塗膜を形成した後、当該光輝性ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装してトップクリヤー塗膜を形成する光輝性塗膜形成方法。
【0019】
(9) 前記光輝性ベース塗膜の平均乾燥膜厚は、0.01μm〜1.0μmである(8)記載の光輝性塗膜形成方法。
【0020】
(10) 前記被塗基材は、(a)溶液型塗料を噴霧塗装もしくは電着塗装することにより、または粉体塗料を噴霧塗装することにより、下塗塗膜が形成された基材、または (b)溶液型塗料を噴霧塗装もしくは電着塗装することにより、または粉体塗料を噴霧塗装により形成される下塗塗膜を形成後、当該下塗塗膜上に、溶液型塗料または粉体塗料を噴霧塗装することにより形成される中塗塗膜と、を有する基材、のいずれかである(8)または(9)に記載の光輝性塗膜形成方法。
【0021】
(11) 前記被塗基材は、アルミニウムホイールである(8)から(10)いずれか記載の光輝性塗膜形成方法。
【0022】
(12) 前記被塗基材は、自動車車体である(8)から(10)いずれか記載の光輝性塗膜形成方法。
【0023】
(13) 前記被塗基材は、自動車用プラスチック部材である(8)から(10)いずれか記載の光輝性塗膜形成方法。
【0024】
(14) (8)から(13)いずれか記載の光輝性塗膜形成方法により形成された光輝性塗装物。
【発明の効果】
【0025】
本発明の光輝性塗料組成物は、貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液、および、蒸着金属顔料を含有し、前記貴金属または銅のコロイド粒子溶液中の金属固形分に対する、前記蒸着金属顔料中の金属固形分の質量比率が、0.5/100〜50/100である光輝性塗料組成物である。また、本発明の光輝性塗膜形成方法は、被塗基材に、前記光輝性塗料組成物を塗装して光輝性ベース塗膜を形成後、当該光輝性ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装してトップクリヤー塗膜を形成する方法である。これによって、耐候性、高光沢を有し、めっき調塗膜と比較して金属粒子感を感じさせず高金属感を有する光輝性塗膜を得ることができる。また、本発明によれば、塗装作業性にも優れ、貴金属または銅のコロイド粒子塗膜の膜厚のバラツキに起因して発生する色相ムラがきわめて少ない高品質の光輝性塗膜を容易に得ることができる。
【0026】
本発明により得られる光輝性塗膜は、上記のように意匠性を有するため、自動車、二輪車等の乗物外板、各種部品、容器外面、コイルコーティング、および家電等の光輝性が要求される分野において好ましく使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0028】
<光輝性塗料組成物>
本発明の光輝性塗料組成物は、貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液、および、蒸着金属顔料を含有し、前記貴金属または銅のコロイド粒子溶液中の固形分に対する前記蒸着金属顔料中の金属固形分の質量比率が、0.5/100〜50/100である光輝性塗料組成物である。
【0029】
[貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液]
貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液とは、貴金属または銅の微粒子が溶媒中に分散しており、溶液として視認できるような状態にあるものを意味する。
【0030】
貴金属または銅のコロイド粒子溶液は、電気透析、遠心分離、限外濾過、デカンテーション等の操作が施されていることが望ましい。本発明にかかる貴金属または銅のコロイド粒子溶液は、例えば、高分子顔料分散剤の存在下で、貴金属または銅の化合物を還元して貴金属または銅のコロイド粒子溶液を得る製造工程、および、上記製造工程で得られた貴金属または銅のコロイド粒子溶液を限外濾過処理する濃縮工程を通じて得ることができる。
【0031】
貴金属または銅のコロイド粒子溶液において用いられる貴金属または銅の化合物は、溶媒に溶解することにより貴金属イオンまたは銅イオンを生じ、上記貴金属イオンまたは銅イオンが還元されて上記コロイド粒子溶液を供給するものである。上記コロイド粒子溶液となる貴金属としては、特に限定されず、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができる。なかでも、金、銀、白金、パラジウムが好ましく、高光沢で、めっき調塗膜と比較して金属粒子感を感じさせない金属感を発現させることができる点から、銀または金が特に好ましい。
【0032】
上記貴金属または銅の化合物としては上述の貴金属または銅を含むものであれば特に限定されず、例えば、テトラクロロ金(III)酸四水和物(塩化金酸)、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(塩化白金酸)、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)二水和物、酢酸銅(II)一水和物、硫酸銅(II)、塩化パラジウム(II)二水和物、三塩化ロジウム(III)三水和物等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記貴金属または銅の化合物は、溶媒中の貴金属または銅のモル濃度が0.01mol/L以上となるように用いられることが好ましい。0.01mol/L未満であると、得られる貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液の貴金属または銅のモル濃度が低すぎて、効率的でない。0.05mol/L以上であることが好ましく、0.1mol/L以上であることがより好ましい。
【0034】
貴金属または銅の化合物が溶解される溶媒としては、上記貴金属または銅化合物を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、水、有機溶媒等を挙げることができる。上記有機溶媒等としては特に限定されず、例えば、エタノール、エチレングリコール等の炭素数1〜4のアルコール、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類等を挙げることができる。また、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記溶媒が水と有機溶媒との混合溶媒である場合には水溶性の有機溶媒が好ましく、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコール等が挙げられる。本発明においては、後の濃縮工程で行う限外濾過処理に適する点から、水、アルコールならびに水およびアルコールの混合溶液のいずれかを用いることが好ましい。
【0035】
上記高分子顔料分散剤は、高分子量の重合体に顔料表面に対する親和性の高い官能基が導入されているとともに、溶媒和部分をも含む構造を有する、両親媒性の共重合体である。このものは、分散剤として好適であり、通常は顔料ペーストの製造時に顔料分散剤として使用されているものである。上記高分子顔料分散剤は、上記コロイド粒子溶液と共存しており、上記コロイド粒子溶液が溶媒中で分散するのを安定化する働きをしていると考えられる。
【0036】
上記高分子顔料分散剤の数平均分子量は、1000〜100万であることが好ましい。1000未満であると、分散安定性が充分ではないことがあり、100万を超えると粘度が高すぎて取り扱いが困難となる場合がある。数平均分子量は、2000〜50万であることが好ましく、4000〜50万であることがさらに好ましい。
【0037】
上記高分子顔料分散剤としては、上述の性質を有するものであれば特に限定されず、例えば、特開平11−80647号公報で開示されたものを挙げることができる。また、市販されているものを使用することもできる。上記市販品としては、例えば、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32550、ソルスパース35100、ソルスパース37500、ソルスパース41090(以上、アビシア社製)、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック181、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192、ディスパービック2000、ディスパービック2001(以上、ビックケミー社製)、ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453、EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49、EFKA−1501、EFKA−1502、EFKA−4540、EFKA−4550(以上、EFKAケミカル社製)、フローレンDOPA−158、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンG−700、フローレンTG−720W、フローレン−730W、フローレン−740W、フローレン−745W、(以上、共栄社化学社製)、アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB811、アジスパーPB821、アジスパーPW911(以上、味の素社製)、ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル62(以上、ジョンソンポリマー社製)等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記高分子顔料分散剤の使用量は、上記貴金属または銅の化合物中の貴金属または銅と、高分子顔料分散剤と、の合計量に対して30質量%以下であることが好ましい。30質量%を超えると、後の濃縮工程で限外濾過処理を行っても、溶液における固形分中の貴金属または銅の濃度を所望の濃度に高めることができないおそれがある。より好ましくは20質量%以下であり、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0039】
上述の高分子顔料分散剤存在下で、還元性化合物を用いることにより、上記貴金属または銅の化合物を貴金属または銅へ還元することができる。上記還元性化合物としてはアミンが好ましく用いられる。例えば、上記貴金属または銅の化合物と、高分子顔料分散剤と、の溶液にアミンを添加して攪拌、混合することにより、貴金属イオンまたは銅イオンが常温付近で貴金属または銅に還元される。上記アミンを使用することにより、危険性や有害性の高い還元剤を使用する必要も、加熱や特別な光照射装置を使用することもなしに、5〜100℃程度、好ましくは20〜80℃程度の反応温度で、貴金属または銅の化合物を還元することができる。
【0040】
上記還元性化合物として用いられるアミンとしては、特に限定されず、例えば、特開平11−80647号公報に例示されているものを使用することができる。具体的には、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N′−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等の脂環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン;ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルキシリレンジアミン等のアラルキルアミン等を挙げることができる。また、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミンも挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、アルカノールアミンが好ましく、ジメチルアミノエタノールがより好ましい。
【0041】
上記還元性化合物としては、上記アミンの他に、一般的に還元剤として使用されている、水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩;ヒドラジン化合物;クエン酸;酒石酸;アスコルビン酸;ギ酸;ホルムアルデヒド;亜ニチオン酸塩、スルホキシル酸塩誘導体等を使用することも可能である。入手容易なことから、クエン酸;酒石酸;アスコルビン酸が好ましい。これらは、単独または上記アミンと組み合わせて使用することが可能であるが、アミンとクエン酸、酒石酸、アスコルビン酸を組み合わせる場合には、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸はそれぞれ塩の形のものを用いることが好ましい。また、クエン酸やスルホキシル酸塩誘導体は、鉄(II)イオンと併用することによって、その還元性の向上を図ることができる。
【0042】
上記還元性化合物の添加量は、上記貴金属または銅の化合物中の貴金属または銅を還元するのに必要な量以上であることが好ましい。この量未満であると、還元が不充分となるおそれがある。また、上限は特に規定されないが、上記貴金属または銅の化合物中の貴金属または銅を還元するのに必要な量の30倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましい。
【0043】
上記還元性化合物を添加する方法は特に限定されず、例えば、上記高分子顔料分散剤の添加後に行うことができ、この場合においては、例えば、まず溶媒に上記高分子顔料分散剤を溶解させ、さらに、上記還元性化合物または貴金属または銅の化合物の何れかを溶解させて得られる溶液に、還元性化合物または貴金属または銅の化合物の残った方を加えることで、還元を進行させることができる。また、上記還元性化合物を添加する方法としては、予め高分子顔料分散剤と上記還元性化合物とを混合しておき、この混合物を貴金属または銅の化合物の溶液に加える形態をとってもよい。
【0044】
また、上記貴金属または銅の化合物を貴金属または銅へ還元する方法としては、上記の還元性化合物の添加により化学的に還元する方法以外に、高圧水銀灯を用いて光照射する方法を使用することも可能である。
【0045】
上記還元により、平均粒子径が約1nm〜100nmである上記コロイド粒子溶液を含む溶液を得ることができる。上記還元後の溶液は、上記貴金属または銅のコロイド粒子および上記の高分子顔料分散剤を含むものであり、貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液となる。
【0046】
次に、上記還元後の溶液に対して濃縮工程が行われる。貴金属または銅のコロイド粒子溶液は、上記貴金属または銅のコロイド粒子および上記高分子顔料分散剤のほかに、原料に由来する塩化物イオン等の雑イオン、還元で生じた塩や、場合によりアミンを含むものである。これらの雑イオン、塩やアミンは、上記濃縮工程で得られる貴金属または銅のコロイド粒子溶液の安定性に悪影響を及ぼすおそれがあるため、除去しておくことが望ましい。これらの成分の除去には、電気透析、遠心分離、限外濾過、デカンテーションの方法が用いられるが、これらの成分の除去と同時に貴金属または銅の濃度を高められることから、限外濾過の方法が好ましく採用できる。
【0047】
本発明の高濃度金属コロイド粒子溶液は、例えば、還元により得られる貴金属または銅のコロイド粒子溶液を、限外濾過処理することにより得ることができる。本発明においては、貴金属または銅のコロイド粒子溶液を限外濾過することにより、貴金属または銅のコロイド粒子溶液中の雑イオン、塩やアミンが除去されるだけでなく、さらに高分子顔料分散剤の一部も除去される。
【0048】
上記高分子顔料分散剤の一部等が除去される前の、貴金属または銅のコロイド粒子溶液は、その貴金属または銅のコロイド粒子および高分子顔料分散剤から成る固形分が、質量基準で0.05〜50%であることが好ましい。0.05%未満であると、貴金属または銅のモル濃度が低すぎて非効率的であり、50%を超えると高分子顔料分散剤の一部を除去することが困難な場合がある。
【0049】
上記限外濾過(Ultrafiltration:UF)は、精密濾過(Microfiltration:MF)に用いられる濾過膜よりも、さらにふるいの目が小さい濾過膜によるものである。限外濾過は、通常、高分子量物質やコロイド物質の分離を目的として用いられるものであるが、本発明においては、貴金属または銅のコロイド粒子溶液における固形分中の貴金属または銅の濃度を高めるために用いられる。
【0050】
上記限外濾過は、通常、分離対象となる物質の径が1nm〜5μmである。上記径を対象とすることにより、上記不要な雑イオン、塩やアミンとともに、上記高分子顔料分散剤を除去し、濃縮工程で得られる金属コロイド粒子溶液の固形分中の貴金属または銅の濃度を高めることができる。1nm未満であると、不要な成分が濾過膜を通過せず排除できないことがあり、5μmを超えると、上記金属コロイド粒子の多くが濾過膜を通過し、高濃度の貴金属または銅のコロイド粒子溶液が得られない場合がある。
【0051】
上記限外濾過に用いる濾過膜としては、特に限定されないが、通常、例えば、ポリアクリロニトリル、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂製のものが挙げられる。これらのうち、ポリアクリロニトリル、ポリサルフォンが好ましく、ポリアクリロニトリルがより好ましい。また、上記限外濾過の濾過膜は、上記限外濾過終了後に通常行われる濾過膜の洗浄を効率よく行う点から、逆洗浄が可能な濾過膜を用いることが好ましい。
【0052】
上記限外濾過の濾過膜としては、その分画分子量が3000〜80000であるものが好ましい。上記分画分子量とは、一般的に、高分子溶液を限外濾過膜に通す場合に、限外濾過膜の孔内を通過して外に排除される高分子の分子量を指し、濾過膜の孔径を評価するために用いられる。上記分画分子量が大きい値を示す程、濾過膜の孔径は大きい。本発明においては、3000未満だと不要な高分子顔料分散剤等が充分に除去されにくく、80000を超えると上記貴金属または銅のコロイド粒子が濾過膜を通過しやすくなるために、目的とする貴金属または銅のコロイド粒子溶液が得られない場合がある。より好ましくは、10000〜60000である。
【0053】
上記限外濾過の濾過モジュールの形態は特に限定されず、例えば、濾過膜の形態別に、中空糸型モジュール(キャピラリーモジュールとも呼ばれる)、スパイラルモジュール、チューブラーモジュール、プレート型モジュール等が挙げられ、何れも本発明に好適に用いられる。膜面積が大きいほど濾過に要する時間を短縮することができるため、これらのうち、濾過面積の割にコンパクトな形態を有する中空糸型モジュールが、効率の点から好ましい。また、処理を行う貴金属または銅のコロイド粒子溶液の量が多い場合には、使用する限界濾過膜本数が多いものを使うことが好ましい。
【0054】
上記限外濾過の方法は特に限定されず、例えば、従来公知の方法等が用いられる。通常、製造工程で得られた貴金属または銅のコロイド粒子溶液を限外濾過膜に通すことにより行われ、これにより、上述の雑イオン、塩、アミンや高分子顔料分散剤を含む濾液が排除できる。上記限外濾過は、通常、濾液中の上記雑イオンが所望の濃度以下になるまで繰り返し行う。その際、処理する貴金属または銅のコロイド粒子溶液の濃度を一定にするために、排除された濾液の量と同じ量の溶剤を加えることが好ましい。このとき加える溶剤としては、還元時に用いていたものと異なる種類のものを用いることで、貴金属または銅のコロイド粒子溶液の溶剤を置換することが可能となる。例えば、処理する貴金属コロイドまたは銅コロイド粒子溶液の溶剤が水の場合には、エタノール等のアルコールに置換することにより、乾燥性、基材への濡れ性等に優れるものとすることができ、一方、溶剤がエタノール等のアルコールの場合には、水に置換することにより、環境性に優れるものとすることができる。
【0055】
上記限外濾過は、通常なされる操作により行うことができ、例えば、いわゆるバッチ方式で行うことができる。このバッチ方式は、限外濾過が進んだ分、処理対象である貴金属または銅のコロイド粒子溶液を加えていく方法である。なお、固形分濃度を高めるために、上記雑イオンが所望の濃度以下に除去された後、さらに上記限外濾過を行うことも可能である。
【0056】
上記限外濾過処理をする濃縮工程により得られる、貴金属または銅のコロイド粒子溶液は、上記濃縮工程前の貴金属または銅のコロイド粒子溶液の貴金属または銅の濃度の値により具体的な値は異なるが、濃縮工程後は濃縮工程前に比べて、貴金属または銅の濃度は増加している。例えば、処理前後での貴金属または銅の濃度の差は、0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。
【0057】
上記濃縮工程により得られる貴金属または銅のコロイド粒子溶液中の固形分に対する、貴金属または銅の濃度は、83質量%以上99質量%未満であることが好ましく、90質量%以上98質量%未満であることがより好ましく、93質量%以上98質量%未満であることがさらに好ましい。83質量%未満だと、加熱条件を穏やかにした場合に実質的に高光沢を有し、かつ、めっき調塗膜と比較して金属粒子感を感じさせない金属感を有する塗膜を得ることができないおそれがある。99質量%以上であると、粒子の分散安定性が損なわれるおそれがある。なお、貴金属または銅のコロイド粒子溶液の固形分に対する、貴金属または銅の濃度は、TG−DTA等で測定して決定することができるが、測定を行わない場合には、仕込みに用いた配合量から計算される値を用いても構わない。
【0058】
本発明においては、限外濾過処理を行うことにより、貴金属または銅のコロイド粒子溶液中における高分子顔料分散剤の一部を除去し、その結果、貴金属または銅のコロイド粒子溶液の貴金属または銅の濃度が、限外濾過処理を行う前に比べて高められる。従って、従来の貴金属または銅のコロイド粒子溶液よりも貴金属または銅の濃度が高いために、得られる貴金属または銅のコロイド粒子溶液を基材に塗布し、これまでに比べて加熱条件を穏やかにした場合にも、高光沢を有し、かつ、めっき調塗膜と比較して金属粒子感を感じさせない金属感を有する塗膜を得ることができる。このため、特にプラスチックや紙等の基材のような、耐熱温度が比較的低いものに対して塗布する場合にも、これらの基材上に高光沢を有し、かつ、めっき調塗膜と比較して金属粒子感を感じさせない金属感を有する塗膜を形成することが可能となる。
【0059】
[蒸着金属顔料]
本発明にかかる蒸着金属顔料は、ベースフィルム上に金属薄膜を蒸着させ、ベースフィルムを剥離した後、蒸着金属薄膜をフレーク状とすることにより得られる。上記蒸着金属顔料は、フレーク状のまま、または公知の方法により溶剤中に分散させて使用することができる。本発明における蒸着は、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、化学気相法(CVD法)等による乾式めっき法を意味する。また、上記蒸着金属顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される粒径分布の50%値である。
【0060】
蒸着金属顔料に用いられる金属としては、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等の貴金属;アルミニウム、インジウム、銅、チタン、ニッケル、スズ等の金属;アルミニウムチタン合金、ニッケル合金、クロム合金等の合金;インジウムスズ酸化物、酸化チタン等の金属酸化物等を例示できる。好ましくは、アルミニウムおよび/またはアルミニウムチタン合金が使用される。
【0061】
上記蒸着金属顔料は、例えば、配向ポリプロピレン、結晶性ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルムをベースフィルムとして用い、その上に必要により剥離剤を塗布し、剥離剤の上に金属蒸着を行う。金属蒸着後、蒸着金属薄膜の酸化を防止するため、例えば蒸着面の上にトップコート剤を塗布することもできる。剥離剤およびトップコート剤としては、例えば、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ニトロセルロース、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、石油系樹脂等の樹脂を用いることができる。
【0062】
上記蒸着金属薄膜を上記ベースフィルムから剥離し、粉砕処理することによりフレーク状の蒸着金属顔料を得ることができる。また、必要に応じてさらに分級することにより、粒度分布を特定範囲とすることができるが、平均厚みが0.01〜0.10μm、平均粒径が5〜30μmのものが好ましい。なお、フレーク状の蒸着金属顔料には剥離剤およびトップコート剤が付着している場合があるが、これらは一般にメタリック塗料として使用する際の溶剤に溶解される。
【0063】
[光輝性塗料組成物の製造方法]
本発明の光輝性塗料組成物は、貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液、および、蒸着金属顔料を含有する。この光輝性塗料組成物は、好ましくは、貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液に、蒸着金属顔料を加えることにより得られる。
【0064】
本発明の光輝性塗料組成物において、上記貴金属または銅のコロイド粒子溶液中の金属固形分に対する、上記蒸着金属顔料中の金属固形分の質量比率は、0.5/100〜50/100である。上記蒸着金属顔料中の金属/上記貴金属または銅のコロイド粒子の貴金属または銅が、金属固形分質量比で0.5/100未満の場合には、貴金属または銅のコロイド粒子溶液からなる塗膜の膜厚のバラツキに起因して発生する色相ムラを緩和できず、このため色相の不均一性が起こり易く、上記蒸着金属顔料中の金属/上記貴金属または銅のコロイド粒子の貴金属または銅が、金属固形分質量比で50/100を超える場合には、金属粒子感を感じさせない金属感を得ることが難しい。上記貴金属または銅のコロイド粒子溶液中の金属固形分に対する、上記蒸着金属顔料中の金属固形分の質量比率は、好ましくは1/100〜40/100である。
【0065】
[ビヒクル]
本発明の光輝性塗料組成物には、ビヒクルが含まれることが好ましい。好ましく用いられるビヒクルは、塗膜形成用樹脂と必要に応じて架橋剤からなるものである。
【0066】
ビヒクルに含まれる塗膜形成用樹脂としては、(a)アクリル樹脂、(b)ポリエステル樹脂、(c)アルキッド樹脂、(d)フッ素系樹脂、(e)エポキシ樹脂、(f)ポリウレタン樹脂、(g)ポリエーテル樹脂等が挙げられ、これらは、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびフッ素系樹脂の少なくとも一種であることが好ましい。
【0067】
上記(a)アクリル樹脂としては、アクリル系モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体が挙げられる。上記共重合に使用し得るアクリル系モノマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、フェニル、ベンジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル等のエステル化物類、アクリル酸またはメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのカプロラクトンの開環付加物類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−メチロールアクリルアミド、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類等を挙ることができる。これらと共重合可能な上記他のエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、イタコン酸、マレイン酸、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0068】
上記(b)ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂を挙げることができ、例えば、多塩基酸と多価アルコールを加熱縮合して得られた縮合物が挙げられる。多塩基酸としては、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸等の飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和多塩基酸を挙げることができる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の三価アルコールが挙げられる。
【0069】
上記(c)アルキッド樹脂としては、上記多塩基酸と多価アルコールに、さらに油脂・油脂脂肪酸(大豆油、アマニ油、ヤシ油、ステアリン酸等)、天然樹脂(ロジン、コハク等)等の変性剤を反応させて得られたアルキッド樹脂を用いることができる。
【0070】
上記(d)フッ素系樹脂としては、フッ化ビニリデン樹脂、四フッ化エチレン樹脂のいずれか一方またはこれらの混合体、フルオロオレフィンとヒドロキシ基を含有する重合性化合物、およびその他の共重合可能なビニル系化合物からなるモノマー混合物を共重合させて得られる各種フッ素系共重合体からなる樹脂を挙げることができる。
【0071】
上記(e)エポキシ樹脂としては、ビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応によって得られる樹脂等が挙げられる。ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、Fが挙げられる。上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(いずれも商品名、シェルケミカル社製)が挙げられ、また適当な鎖延長剤を用いてこれらを鎖延長したものを用いることもできる。
【0072】
上記(f)ポリウレタン樹脂としては、アクリル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等の各種ポリオール成分とポリイソシアネート化合物との反応によって得られるウレタン結合を有する樹脂を挙げることができる。上記ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、およびその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(4,4’−MDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(2,4’−MDI)、およびその混合物(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロへキシルメタン・ジイソシアネート(水素化HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(HXDI)等を挙げることができる。
【0073】
上記(g)ポリエーテル樹脂としては、エーテル結合を有する重合体または共重合体であり、ポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、もしくはポリオキシブチレン系ポリエーテル、またはビスフェノールAもしくはビスフェノールFなどの芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテル等の、1分子当たりに少なくとも2個の水酸基を有するポリエーテル樹脂が挙げられる。また、上記ポリエーテル樹脂と、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の多価カルボン酸類、またはこれらの酸無水物等の反応性誘導体と、を反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエーテル樹脂が挙げられる。
【0074】
上記塗膜形成用樹脂には、硬化性を有するタイプと、ラッカータイプがあるが、通常、硬化性を有するタイプのものが使用される。硬化性を有するタイプの場合には、アミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、アミン系、ポリアミド系、イミダゾール類、イミダゾリン類、多価カルボン酸等の架橋剤と混合して使用され、加熱または常温で硬化反応を進行させることができる。また、硬化性を有しないラッカータイプの塗膜形成用樹脂と、硬化性を有するタイプとを併用することも可能である。架橋剤は、アミノ樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物の少なくとも一種であることが好ましい。
【0075】
上記ビヒクルが架橋剤を含む場合には、塗膜形成用樹脂と架橋剤との割合としては、固形分換算で、塗膜形成用樹脂が90〜50質量%、架橋剤が10〜50質量%であり、好ましくは塗膜形成用樹脂が85〜60質量%、架橋剤が15〜40質量%である。架橋剤が10質量%未満では(塗膜形成用樹脂が90質量%を超えると)、塗膜中の架橋が充分ではない。一方、架橋剤が50質量%を超えると(塗膜形成用樹脂が50質量%未満では)、塗料の貯蔵安定性が低下するとともに硬化速度が大きくなるため、塗膜外観が悪くなる。
【0076】
本発明の光輝性塗料組成物において、好ましいビヒクルの含有量は、上記光輝性塗料組成物の固形分に対して、上記ビヒクルの固形分の質量比率が、5/100〜30/100である。固形分換算で、ビヒクル/光輝性塗料組成物(質量比)=5/100未満では、塗膜の耐候性が低下する恐れがあり、ビヒクル/光輝性塗料組成物の固形分(質量比)=30/100を超えると、金属粒子感を感じさせない金属感を有し難くなる。より好ましいビヒクルの含有量は、固形分換算で、ビヒクル/光輝性塗料組成物(質量比)=5/100〜20/100である。
【0077】
[紫外線吸収剤・光安定剤]
上記光輝性塗料組成物は、耐候性の観点から、紫外線吸収剤および/または光安定剤を含有することも可能である。
【0078】
[紫外線吸収剤]
上記紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシルベンゾエート、4−t−オクチルフェニルサリシレート等のサリシレート系紫外線吸収剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2′−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′,5′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾリトアゾール系紫外線吸収剤等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記ビヒクル100固形分質量部に対して、固形分として2〜20質量部であることが好ましい。2質量部未満であると、耐候性試験時にクラックが発生するおそれがあり、20質量部を超えると、硬化性が低下するおそれがある。10〜15質量部であることがより好ましい。
【0080】
上記光安定剤としては、例えば、フェニル−4−ピペリジニルカーボネート、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン系光安定剤;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、ブチル2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート系光安定剤等を挙げることができる。なかでも、少量でより大きな効果を有するヒンダードアミン系光安定剤を好ましく用いることができる。
【0081】
上記光安定剤の含有量は、上記ビヒクル100固形分質量部に対して、固形分として0.5〜10質量部であることが好ましい。0.5質量部未満であると、耐候性試験時にクラックが発生するおそれがあり、10質量部を超えると、硬化性が低下するおそれがある。1〜5質量部であることがより好ましい。
【0082】
[その他の成分]
上記光輝性塗料組成物には、上記成分の他に、脂肪族アミドの潤滑分散体であるポリアミドワックスや酸化ポリエチレンを主体としたコロイド状分散体を添加することも可能である。また、ポリエチレンワックス、沈降防止剤、硬化触媒、酸化防止剤、レベリング剤、シリコーンや有機高分子等の表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、滑剤、架橋性重合体粒子(ミクロゲル)等を、適宜添加して含有させることもできる。これらの添加剤は、通常、上記ビヒクル100質量部(固形分基準)に対して、例えば、それぞれ15質量部以下の割合で配合することにより、塗料や塗膜の性能を改善することができる。
【0083】
上記光輝性塗料組成物は、溶剤型、水性、粉体型等の種々の形態をとることができる。溶剤型塗料または水性塗料としては、一液型塗料を用いてもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等のような二液型樹脂を用いてもよい。
【0084】
<光輝性塗膜成形方法>
本発明の光輝性塗膜形成方法は、被塗基材に、上記の光輝性塗料組成物を塗装して光輝性ベース塗膜を形成した後、当該光輝性ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装してトップクリヤー塗膜を形成する方法である。
【0085】
[被塗基材]
本発明の光輝性塗膜形成方法における被塗基材とは、基材そのまま、または基材に下塗塗膜を形成したもの、または基材に下塗塗膜と中塗塗膜を形成したもの、のいずれかを意味する。基材としては、特に限定されるものでなく、鉄、アルミニウム、銅またはこれらの合金等の金属類;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメチン樹脂、FRP等の各種合成樹脂材料;木材、紙や布等の繊維材料等の天然または合成材料等を挙げることができる。本発明の基材としては、好ましくは、アルミニウム(合金)製のアルミニムルホイール、鉄(合金)製の自動車車体、または、自動車車体および自動車部品を構成する自動車用プラスチックであり、これらが結合された部材を含む。
【0086】
[下塗塗膜および中塗塗膜の形成]
本発明においては、上記基材に下塗塗膜を形成したもの、または基材に下塗塗膜と中塗塗膜を形成したもの、のいずれかを被塗基材としてもよい。例えば、(a)溶液型(有機溶剤または水性)塗料を噴霧塗装もしくは電着塗装することにより、または粉体塗料を噴霧塗装することにより、下塗塗膜が形成された被塗基材、または、(b)溶液型(有機溶剤または水性)塗料を噴霧塗装もしくは電着塗装することにより、または粉体塗料を噴霧塗装により形成される下塗塗膜を形成後、溶液型(有機溶剤または水性)塗料または上記粉体塗料を噴霧塗装することにより形成される中塗塗膜と、を有する被塗基材、のいずれかを好ましく用いることができる。被塗基材が自動車車体および部品である場合には、予め上記基材に脱脂処理や化成処理、プライマー塗膜、電着塗膜からなる下塗塗膜を形成しておくことが好ましい。また、自動車部品としてのアルミニウムホイールの場合には、クリヤー粉体塗料等による下塗塗膜を形成しておくのが好ましい。また、自動車用プラスチック製バンパー等の場合には、プラスチック用プライマー塗料による下塗塗膜を形成しておくことが好ましい。
【0087】
本発明の光輝性塗膜形成方法においては、必要に応じて下塗塗膜または電着塗膜が形成された基材に、ウェットオンウェット(W/W法)、またはウェットオンドライ(W/D法)により中塗塗膜を形成することができる。なお、上記W/W法とは下地塗装をした後、風乾等により乾燥し、未硬化状態または半硬化状態の塗膜上に重ね塗り塗料を塗装する方法である。これに対して、上記W/D法とは焼き付けて硬化させた塗膜上に重ね塗り塗料を塗装する方法である。
【0088】
本発明において、必要に応じて中塗塗膜を形成する中塗塗料としては、アルミニウムホイールの場合には、クリヤー塗料または黒色塗料が好ましく、自動車車体および部品の場合は、着色顔料を使用することが好ましい。この着色顔料としては、有機系顔料として、アゾレーキ系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、また、無機系顔料として、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン等が挙げられる。また、タルク、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、シリカ等の各種体質顔料等を併用してもよい。
【0089】
上記中塗塗膜を形成するために用いられる中塗塗料に含まれるビヒクルは、塗膜形成用樹脂と必要に応じて架橋剤からなる。中塗塗料のビヒクルに含まれる上記塗膜形成用樹脂としては、(a)アクリル樹脂、(b)ポリエステル樹脂、(c)アルキッド樹脂が挙げられ、アクリル樹脂またはポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
【0090】
上記ビヒクルが架橋剤を含む場合には、ビヒクル中の塗膜形成用樹脂と架橋剤との割合は、固形分換算で塗膜形成用樹脂が90〜50質量%、架橋剤が10〜50質量%であり、好ましくは塗膜形成用樹脂が85〜60質量%、架橋剤が15〜40質量%である。架橋剤が10質量%未満では(塗膜形成用樹脂が90質量%を超えると)、塗膜中の架橋が充分でなくなる。一方で、架橋剤が50質量%を超えると(塗膜形成用樹脂が50質量%未満では)、塗料の貯蔵安定性が低下するとともに硬化速度が大きくなるため、塗膜外観が悪くなる。中塗塗料に含まれるビヒクルにおける架橋剤としては、アミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、アミン系、ポリアミド系、イミダゾール類、イミダゾリン類、多価カルボン酸等の架橋剤を挙げることができる。
【0091】
上記中塗塗料の形態としては、溶剤型、水性、粉体型等の種々の形態を用いることができる。溶剤型塗料または水性塗料としては、一液型塗料を用いてもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等のような二液型樹脂を用いてもよい。
【0092】
上記中塗塗膜の乾燥膜厚は、10〜100μmが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。中塗塗膜の乾燥膜厚が10μm未満の場合には、下地を隠蔽し難く、100μmを超える場合には、塗膜外観不良を生じるおそれがある。
【0093】
[光輝性ベース塗膜の形成]
本発明の光輝性塗膜形成方法における光輝性ベース塗膜は、上記光輝性塗料組成物を用いて形成される。本発明においては、上記光輝性塗料組成物を上記被塗基材に塗布し、得られた光輝性ベース塗膜に、W/W法またはW/D法により、トップクリヤー塗料を塗装し、次いでトップクリヤー塗膜を加熱することによって、色相ムラが少なく色相均一性に優れ、金属粒子感を感じさせない金属感を有する光輝性塗膜を得ることができる。
【0094】
本発明においては、光輝性ベース塗膜は、例えば、上記下塗塗膜または中塗塗膜を形成後、W/W法またはW/D法により、上記下塗塗膜上または中塗り塗膜上に形成することができる。
【0095】
上記光輝性塗料組成物の塗装方法は、特に限定されず、例えば、スプレー、スピンコーター、ロールコーター、シルクスクリーン、インクジェット等の塗装機具を用いたり、浸漬させたりすることができるほか、電気泳動や無電解メッキによっても行うことが可能である。塗布量は、本発明の光輝性塗料組成物の濃度、塗装方法等により、変化させることができ、用途に合わせて任意に設定することができる。
【0096】
また、光輝性ベース塗膜を加熱硬化させる場合には、加熱の方法は特に限定されず、例えば、ガス炉、電気炉、IR炉、誘導加熱炉など当業者によく知られたものを、加熱炉として使用することができる。加熱時間が比較的短時間である場合には、上記加熱炉がライン上に形成されている方法を用いることが好適であり、これにより、光輝性ベース塗膜をより効率的に形成することが可能となる。また、加熱前に、必要に応じて、常温乾燥あるいは強制乾燥を行ってもよい。
【0097】
本発明にかかる光輝性ベース塗膜の膜厚は、微小な粒径の貴金属または銅のコロイド粒子を含有するものであることから、平均乾燥膜厚が0.01μm〜1.0μmの薄膜が好ましい。平均乾燥膜厚が0.01μm未満では、色相ムラが生じるおそれがあり、また、平均乾燥膜厚が1.0μmを超えると、塗膜の強度が低下するおそれがある。より好ましくは、平均乾燥膜厚が0.02μm〜0.5μmである。
【0098】
[トップクリヤー塗膜の形成]
本発明の光輝性塗膜形成方法においては、光輝性ベース塗膜を形成の後、次いでクリヤー塗料を塗装してトップクリヤー塗膜を形成する。上記トップクリヤー塗膜は、下地層を隠蔽しない無色透明なクリヤー塗膜である。光輝性ベース塗膜の上にトップクリヤー塗膜を形成することにより、光輝性が向上し、上記光輝性ベース塗膜を保護することができる。
【0099】
本発明の光輝性塗膜形成方法においては、(1)上記光輝性ベース塗膜に対してトップクリヤー塗膜を少なくとも1層形成する方法、または(2)上記光輝性ベース塗膜にクリヤー塗膜が数回塗り重ねられた塗膜に対して、トップクリヤー塗膜を少なくとも1層形成する方法のいずれも採用できる。
【0100】
本発明においては、上記光輝性ベース塗膜に対して、好ましくはW/W法またはW/D法でトップクリヤー塗膜を少なくとも1層形成し、各塗膜を同時に焼き付け硬化させることが好ましい。また、トップクリヤー塗料を複数回塗装する場合には、最終のトップクリヤー塗料を塗装した後、同時に焼き付ければよく、初期にトップクリヤー塗料を塗装した段階では完全に硬化させなくてもよい。このようにW/W法により形成したトップクリヤー塗膜は、光輝性ベース塗膜、および、トップクリヤー塗膜とともに、80〜180℃で所定時間焼き付けることにより、硬化塗膜を得ることができる。焼き付け方法としては、上述の各種加熱炉を用いることができる。
【0101】
上記トップクリヤー塗料としては、上塗り用として一般に使用されているものを用いることができる。例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂およびこれらの変性樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱硬化性樹脂と、前述の架橋剤とを混合したものを用いることができる。本発明においては、特公平8−19315号公報に記載された、カルボシキル基含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーとを含有するトップクリヤー塗料が、酸性雨対策という観点から好ましく用いられる。
【0102】
また、これらのトップクリヤー塗料には、必要に応じて、その透明性を損なわない範囲で、改質剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤等の添加剤を配合することも可能である。
【0103】
本発明にかかるトップクリヤー塗膜の形態は、溶剤型、水性、または粉体型等の種々の形態を用いることができる。溶剤型塗料または水性塗料としては、一液型塗料を用いてもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等のような二液型樹脂を用いてもよい。
【0104】
上記トップクリヤー塗膜の乾燥膜厚は、10〜80μmであることが好ましく、この範囲を外れると塗膜外観が不充分となるおそれがある。より好ましくは、20〜50μmである。
【0105】
<光輝性塗装物>
本発明の光輝性塗装物は、上記光輝性塗膜形成方法により得られる塗装物である。
【実施例】
【0106】
次に、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのないかぎり質量部を表す。
【0107】
<実施例1〜42、比較例1〜8>
[被塗基材の調製]
燐酸亜鉛処理剤(商品名:「サーフダインSD2000」、日本ペイント社製)を使用して、ダル鋼板(長さ300mm、幅100mmおよび厚さ0.8mm)を化成処理した後、下塗塗膜としてカチオン電着塗料(商品名:「パワートップU−50」、日本ペイント社製)を乾燥膜厚が25μmとなるように電着塗装した。次いで、160℃で30分間焼き付け、被塗基材1Aを得た。
【0108】
クロメート処理剤(商品名:「アルサーフ1000」、日本ペイント社製)を使用して、脱脂したアルミニウム合金板(JIS−A5052P、長さ300mm、幅100mmおよび厚さ1mm)を化成処理し、下塗塗膜としてアクリル樹脂系粉体型クリヤー塗料(商品名:「パウダックスA400クリヤー」、日本ペイント社製)を乾燥膜厚が70μmとなるように形成し、160℃で30分間焼き付け、被塗基材1Bを得た。
【0109】
クロメート処理剤(商品名:「アルサーフ1000」、日本ペイント社製)を使用して、脱脂したアルミニウム合金板(JIS−A5052P、長さ300mm、幅100mmおよび厚さ1mm)を化成処理し、下塗塗膜としてエポキシ樹脂系粉体型グレー塗料(商品名:「ビリューシアHB−2000グレー」、日本ペイント社製)を乾燥膜厚が50μmとなるように形成し、160℃で30分間焼き付け、被塗基材1Cを得た。
【0110】
クロメート処理剤(商品名:「アルサーフ1000」、日本ペイント社製)を使用して、脱脂したアルミニウム合金板(JIS−A5052P、長さ300mm、幅100mmおよび厚さ1mm)を化成処理し、下塗塗膜としてアクリル樹脂系粉体型ブラック塗料(商品名:「パウダックスA400ブラック」、日本ペイント社製)を乾燥膜厚が70μmとなるように形成し、160℃で30分間焼き付け、被塗基材1Dを得た。
【0111】
脱脂したポリプロピレン板(自動車バンパー用部材、長さ300mm、幅100mmおよび厚さ5mm)を脱脂処理し、下塗塗膜としてアクリルアルキッドウレタン樹脂溶剤型グレー塗料(商品名:「RB−116プライマー」、日本ビー・ケミカル社製)を平均乾燥膜厚が10〜15μmとなるように形成し、80℃で30分間焼き付け、被塗基材1Eを得た。
【0112】
[中塗塗料]
表2に示す組合せおよび焼付条件にて、以下の中塗り塗料を塗装し、焼き付けた。
2A・・・ポリエステル樹脂系溶剤型ブラック塗料(商品名:「オルガG−65ブラック」、日本ペイント社製)。
2B・・・アクリル樹脂系溶剤型ブラック塗料(商品名:「スーパーラックM90ブラック」、日本ペイント社製)。
2C・・・プラスチック用中塗り塗料(商品名:「R−301ブラック」、日本ビー・ケミカル社製)。
【0113】
[貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液の調整]
〔貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液3A(銀)の製造〕
2リットルのコルベンに、ディスパービック190(ビックケミー社製)12g、および、イオン交換水420.5gを入れた。このコルベンをウォーターバスに入れ、ディスパービック190が溶解するまで、50℃で攪拌した。ここに、イオン交換水420.5gに溶解させた硝酸銀100gを攪拌しながら加えて、70℃で10分間攪拌した。次に、ジメチルアミノエタノール262gを加えたところ、液が一瞬で黒変し、液温が76℃まで上昇した。そのまま放置して液温が70℃まで下がったところで、この温度を保ちながら2時間攪拌を続け、黒っぽい黄色を呈する銀コロイドの水溶液を得た。得られた反応液を1リットルのポリ瓶に移し換え、60℃の恒温室で18時間静置した。次に、限外濾過モジュールAHP1010(旭化成社製;分画分子量50000、使用膜本数400本)、マグネットポンプ、下部にチューブ接続口のある3リットルのステンレスカップをシリコンチューブでつないで、限外濾過装置とした。先の60℃の恒温室で18時間静置した反応液をステンレスカップに入れて、さらに2リットルのイオン交換水を加えてから、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。約40分後にモジュールからの濾液が2リットルになった時点で、ステンレスカップに2リットルのエタノールを加えた。その後、濾液の伝導度が300μS/cm以下になったことを確認し、母液の量が500mlになるまで濃縮を行った。続いて、母液を入れた500mlステンレスカップ、限外濾過モジュールAHP0013(旭化成社製;分画分子量50000、使用膜本数100本)、チューブポンプ、および、アスピレーターからなる限外濾過装置を組んだ。このステンレスカップに先に得られた母液を入れ、固形分濃度を高めるための濃縮を行った。母液が約100mlになった時点でポンプを停止して、濃縮を終了し、固形分30%の銀コロイドのエタノール溶液を得た。この溶液中の銀コロイド粒子の平均粒子径は、27nmであった。また、TG−DTA(セイコーインストゥルメント製)を用いて、固形分中の銀の含有率を計測したところ、仕込みの93質量%に対して、96質量%であった。
【0114】
〔貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液3B(銀)の製造〕
40質量%の硝酸銀水溶液250.0gを1リットルのコルベンにとり、アセトン176.6gで希釈した後、ソルスパース24000(アビシア社製)を11.2g溶解させた。ソルスパース24000が完全に溶解してから、ジメチルアミノエタノールを262.0g加えて、鮮やかで濃厚な銀コロイド溶液を得た。得られた銀コロイド溶液を減圧下で加熱し、アセトンを除去した。ソルスパース24000は、水に不溶性なので、アセトン量の減少に伴い、ソルスパース24000に保護された銀コロイドが析出・沈殿した。上澄みの水層をデカンテーションで除去し、さらにイオン交換水で沈殿物を洗浄した後、完全に乾燥させて銀の固体ゾルを得た。得られた固体ゾルは、金属光沢を示した。得られた銀の固体ゾルを、エタノール230gに加えて攪拌し、固体ゾルを完全に溶解させ、濃厚な銀コロイドの、固形分23%の銀コロイドのエタノール溶液を得た。この溶液中の銀コロイド粒子の平均粒子径は、19nmであった。また、固形分中の銀の含有率は、仕込みの85質量%に対して、88質量%であった。
【0115】
〔貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液3C(銅)の製造〕
硫酸鉄(II)7水和物98.44gに脱イオン水150.0gを加え、湯浴中で70℃に加熱して溶解させた。これに、ソルスパース32550(有効成分50%の酢酸ブチル溶液・アビシア社製)1.00gとエタノール33.75gを加えて撹拌し、淡く青みを帯びた白色の混濁液を得た。別の容器に塩化銅(II)2水和物12.07質量部と2mol/L塩酸水溶液81.44質量部を反応容器に採り、撹拌し、塩化銅2水和物を溶解した。この銅(II)イオンを含んだ緑色水溶液を、反応容器に撹拌しながら添加し、湯浴を用いて70℃となるように加熱した。さらに別の容器に、ロンガリット(ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム2水和物)16.37gと脱イオン水16.5gを採り、50℃の湯浴中で撹拌しながら、溶解した。得られたロンガリット水溶液を、反応容器に、撹拌しながら瞬時に加えた。液はすみやかに淡緑色となり、その後、黒赤色を帯び始めた。その結果、非極性高分子保護樹脂と銅コロイド粒子とからなる黒褐色油状物の析出が認められた。TG−DTA測定の結果、固形分中の銅の含有率は83.3質量%であった。
【0116】
〔貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液3D(金)の製造〕
ディスパービック191(ビックケミー社製)の量を13.8g、上記銀コロイド粒子溶液Aの硝酸銀100gを5質量%の塩化金酸エタノール溶液1350gとした以外は、上記銀コロイド粒子溶液Aの製造と同様にして、固形分20%の金コロイドのエタノール溶液を得た。この溶液中の金コロイド粒子の平均粒子径は18nmであった。固形分中の金の含有率は、仕込みの70質量%に対して、90質量%であった。
【0117】
[蒸着金属顔料]
蒸着金属顔料としては、以下の顔料を使用した。
3E・・・平均厚みが20nm、平均粒径が9μmの蒸着アルミニウム顔料の酢酸エチル分散液。
3F・・・平均厚みが30nm、平均粒径が12μmの蒸着アルミニウム顔料の酢酸エチル分散液。
3G・・・平均厚みが30nm、平均粒径が15μmの蒸着アルミニウムチタン合金顔料フレーク。
【0118】
[光輝性塗料組成物の調製]
アクリル樹脂(スチレン/メチルメタクリレート/エチルメタクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸の共重合体、数平均分子量約20,000、水酸基価45、酸価15、固形分50質量%)と、メラミン樹脂(商品名:「ユーバン20SE」、三井化学(株)製、固形分60質量%)とを80:20の固形分質量比で配合して得たビヒクルに対し、上記コロイド粒子溶液3A〜3D、蒸着金属顔料3E〜3Gおよび紫外線吸収剤、光安定剤を表1に示す条件で配合した。次いで、有機溶剤(トルエン/キシレン/酢酸エチル/酢酸ブチルの質量比=70/15/10/5)とともに攪拌機により塗装適正粘度になるように攪拌混合し、光輝性塗料組成物1〜21を調製した。ただし、光輝性塗料組成物18〜21は、比較例に用いた。
【0119】
[クリヤー塗料]
クリヤー塗料としては、以下の塗料を使用した。
4A・・・アクリル樹脂系溶剤型クリヤー塗料(商品名:「スーパーラックO−130クリヤー」、日本ペイント社製)。
4B・・・カルボキシル基含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーのブレンドからなる溶剤型クリヤー塗料(商品名:「マックフローO−520クリヤー」、日本ペイント社製)。
4C・・・アクリル樹脂系粉体型クリヤー塗料(商品名:「パウダックスA−400」、日本ペイント社製)。
4D・・・2液型ウレタン系溶剤型クリヤー塗料(商品名:「naxスペリオクリヤー」、日本ペイント社製)。
4E・・・2液型ウレタン系溶剤型クリヤー塗料(商品名:「R−288クリヤー」、日本ビー・ケミカル社製)。
【0120】
[光輝性塗装物の形成]
被塗基材の被塗面に、表2に示す各塗膜を順次形成した。上記中塗り塗膜は、粉体型塗料では乾燥膜厚が100μm、溶液型塗料では乾燥膜厚が50μmとなるように形成し、次いで表1に示す光輝性塗料組成物を用いて、光輝性ベース塗膜を平均乾燥膜厚が表2に示した平均乾燥膜厚となるよう塗装し形成した。次いでトップクリヤー塗膜を、粉体型塗料では平均乾燥膜厚が100μm、溶液型塗料では平均乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し複層塗膜からなる光輝性塗装物を得た。
【0121】
〔評価方法〕
得られた光輝性塗装物の色相均一感、金属感、耐候性について、以下の評価方法にて評価を行った。
【0122】
[色相均一感]
形成された複合塗膜からなる光輝性塗装物の外観を目視で評価した。
○・・・色相ムラが観察されなかった。
△・・・わずかに色相ムラが観察された。
×・・・色相ムラが観察された。
【0123】
[金属感]
形成された複合塗膜からなる光輝性塗装物の外観を目視で評価した。
○・・・金属粒子感を感じさせない金属感が得られた。
△・・・わずかに金属粒子感を感じる金属感が得られた。
×・・・金属粒子感が感じられた。
【0124】
[耐候性]
形成された複合塗膜からなる光輝性塗装物について、サンシャイン・ウェザオ・メーター(スガ試験機社製)により600時間経過後、色彩色差計(形式:CR−331、ミノルタ社製)を用いて、変色度(ΔE)(基準:サンシャイン・ウェザオ・メーター試験前の複合塗膜)の測定を行った。
○・・・変色度:1未満。
△・・・変色度:1以上、5未満。
×・・・変色度:5以上。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
表2の結果から明らかのように、本発明の光輝性塗料組成物を用いた光輝性塗膜形成方法により塗膜を形成した本実施例1〜42は、耐候性があり、目的の意匠を有する光輝性塗装物を得ることができた。一方、比較例1〜8は、耐候性は得られたものの、目的の意匠を発現しない結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属または銅のコロイド粒子を含む貴金属または銅のコロイド粒子溶液、および、蒸着金属顔料を含有し、前記貴金属または銅のコロイド粒子溶液中の金属固形分に対する前記蒸着金属顔料中の金属固形分の質量比率が、0.5/100〜50/100である光輝性塗料組成物。
【請求項2】
前記蒸着金属顔料中の金属は、アルミニウムおよび/またはアルミニウムチタン合金である請求項1記載の光輝性塗料組成物。
【請求項3】
前記貴金属または銅のコロイド粒子溶液中の固形分に対する、前記貴金属または銅の濃度は、83質量%以上99質量%未満である請求項1または2記載の光輝性塗料組成物。
【請求項4】
前記光輝性塗料組成物は、ビヒクルを含有する請求項1から3いずれか記載の光輝性塗料組成物。
【請求項5】
前記ビヒクルは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびフッ素系樹脂から選ばれる少なくとも一種の塗膜形成性樹脂を含む請求項4記載の光輝性塗料組成物。
【請求項6】
前記ビヒクルは、アミノ樹脂およびブロックイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一種の架橋剤を更に含む請求項4または5記載の光輝性塗料組成物。
【請求項7】
請求項1から6いずれか記載の光輝性塗料組成物の固形分に対する、前記ビヒクルの固形分の質量比率は、5/100〜30/100である請求項4から6いずれか記載の光輝性塗料組成物。
【請求項8】
被塗基材に、請求項1から7いずれか記載の光輝性塗料組成物を塗装して光輝性ベース塗膜を形成した後、当該光輝性ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装してトップクリヤー塗膜を形成する光輝性塗膜形成方法。
【請求項9】
前記光輝性ベース塗膜の平均乾燥膜厚は、0.01μm〜1.0μmである請求項8記載の光輝性塗膜形成方法。
【請求項10】
前記被塗基材は、
(a)溶液型塗料を噴霧塗装もしくは電着塗装して形成された下塗塗膜、または、粉体塗料を噴霧塗装して形成された下塗塗膜を有する基材、または
(b)溶液型塗料を噴霧塗装もしくは電着塗装して形成された下塗塗膜、または、粉体塗料を噴霧塗装して形成された下塗塗膜と、これらの下塗塗膜上に溶液型塗料または粉体塗料を噴霧塗装して形成された中塗塗膜と、を有する基材、
のいずれかである請求項8または9記載の光輝性塗膜形成方法。
【請求項11】
前記被塗基材は、アルミニウムホイールである請求項8から10いずれか記載の光輝性塗膜形成方法。
【請求項12】
前記被塗基材は、自動車車体である請求項8から10いずれか記載の光輝性塗膜形成方法。
【請求項13】
前記被塗基材は、自動車用プラスチック部材である請求項8から10いずれか記載の光輝性塗膜形成方法。
【請求項14】
請求項8から13いずれか記載の光輝性塗膜形成方法により形成された光輝性塗装物。

【公開番号】特開2006−169269(P2006−169269A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359155(P2004−359155)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】