説明

光輝性複合構造体およびその製造法

【課題】光沢性を有しかつ微細な繊維状の色彩模様を有する光輝性の構造体を提供すること。
【解決手段】(1)基体(A)、
(2)その基体(A)の表面上に形成された、光学干渉性繊維の切断片を含有した複合メッキ層(B)および
(3)その複合メッキ層(B)の表面上に形成されたコート層(C)
よりなる光輝性複合構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝性複合構造体およびその製造法に関する。更に詳しくは、全体として光沢性を有しかつ微細な繊維状の色彩模様を有する複合構造体およびその製造法に関する。また見る方向によって色彩と色調が微妙に変化する光輝性の複合構造体およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解メッキや無電解メッキにより、金属或いはプラスチックの基体の表面に種々の金属皮膜を形成させる技術は、従来より広く実用化されている。このメッキ技術により基体表面に金属皮膜が形成され、製品の腐蝕が防止され、耐磨耗性が向上し、潤滑性が改良されると共に金属光沢のある装飾製品を得ることが可能となる。
メッキ液中に、金属、無機化合物または有機化合物の微粒子を混入させて、金属皮膜のマトリックス中にこれら微粒子を分散させる方法も知られ実用化されている。このメッキ方法は“複合メッキ”と称されている。複合メッキによって金属や合金単独で得られなかった新しい機能を引き出すことができる。例えば複合メッキにより金属皮膜のマトリックス中に、タルク、マイカ、アルミニウムなどの無機化合物または金属の微粒子を分散させて、表面の光輝性や美観を改変することができる。
【0003】
一方、光干渉作用によって発色する光学干渉性繊維は知られている(例えば特許文献1参照)。光学干渉性繊維は、2種のポリマー層の屈折率差、各層の光学的距離および層の積層数により、光干渉および発色が起り、特定波長の鮮明な色が発現する。この発色は塗料や顔料の光の吸収による発色と全く異なった色調を示し優美さを有している。
前記光学干渉性繊維は通常の繊維と同様に織物、編物、刺繍糸、不織布などに適用することによって種々の発色性を呈する繊維製品を得ることができる(例えば特許文献2)。光学干渉性繊維の種類、組合せおよび構造(例えば織り方、編み方など)にもよるが見る方向によって微妙に色彩や色調が変化し優美な繊維製品となる。
【0004】
光学干渉性繊維は、その発色性を利用して繊維製品以外の用途にも使用することが提案されている。前記特許文献2には、光学干渉性繊維をチップドファイバー(短繊維)として、例えば紙製品に混入した装飾紙、塗料に入れて塗装皮膜中に散在させた表面塗装装飾、化粧品(マニキュア、アイシャドウなど)に混入することが提案されている。
特許文献3には光学干渉性繊維を1μm〜10mmの長さにカットし、これに着色剤を配合することによりマニキュア液、アイシャドウ、メイクアップ製品の如き化粧品として利用することが提案されている。この特許文献3の化粧品は、具体的には、光学干渉性繊維を0.3mmの長さにカットしたものをメイクアップ製品、マスカラやマニキュア液に配合している。
【特許文献1】日本特許第3356438号明細書
【特許文献2】特開2004−170028号公報
【特許文献3】特許出願公表 特表2004−519429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学干渉性繊維をカットしたもの(以下単に“切断片”ということがある)を塗料中に配合して塗膜を形成した場合、スプレーによる塗装では、繊維の切断片が塗料液中に安定して均一に分散させることが困難であり、さらに繊維の切断片を膜全体に均質に散在させることも容易ではない。一方、刷毛塗装の場合、繊維の長さ方向(配列方向)が塗る方向に揃い、繊維をランダム方向に配列させることができない。
塗料中に光学干渉性繊維の切断片を配合することによる問題は、塗料膜が繊維表面を皮覆することによって光干渉効果の大幅な低減がさけられないことである。
そこで本発明者らは、複合メッキ技術により光学干渉性繊維の利用について研究を進めた。先ず、この繊維の切断片として長さ75μmのものを使用して複合メッキ膜を形成させたところ、太陽光を当てると強い光を反射するものの、屋内光での発色は殆んど認められず、全体の模様も優美なものとはならなかった。
【0006】
ところが、比較的長い切断片を使用すると、屋外での発光効果も充分であり、また屋内においては赤、青、緑の各色が充分に発色するメッキ膜が形成された。長い繊維切断片が混在した複合メッキ膜はメッキ膜表面に繊維の端部が露出し(突出し)、接触によって繊維切断片の一部が脱落することがあり、またメッキ膜の表面平滑性が不充分であることが判明した。
さらに研究を重ねた結果、複合メッキ技術によって、金属マトリックス中に光学干渉性繊維の切断片を分散共折させた後、その表面を装飾メッキや樹脂コートによってコート膜を形成させると、繊維の切断片の脱落を防止できるのみならず、表面平滑性も向上し、さらに驚くべきことに、発色性が一層改良されることが見出された。かくして光学干渉性繊維の発色効果が充分に発現され、メッキ光沢と共にその発色効果が鮮やかにしかも全く新しい模様が出現することになった。すなわち繊維の配列方向がランダムであり、見る方向によって色調や色彩が微妙に変化し、装飾性に富んだ高級感のある光輝性複合材料構造体
が得られることが見出された。
【0007】
かくして本発明によれば、(1)基体(A)、(2)その基体(A)の表面上に形成された光学干渉性繊維の切断片を分散して含有する複合メッキ層(B)および(3)その複合メッキ層(B)の表面に形成されたコート層(C)よりなる光輝性複合構造体が提供される。
【0008】
さらに本発明によれば、基体(A)上に、光学干渉性繊維の切断片を分散して含有するメッキ液を施して、該基体(A)の表面に複合メッキ層(B)を形成させ、次いでその複合メッキ層(B)の表面にコート層(C)を形成させることを特徴とする光輝性複合構造体の製造法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
先ず複合メッキ層(B)中に分散配合される繊維切断片の元となる素材としての光学干渉性繊維について説明する。以下光学干渉性繊維を単に“繊維”と略称することがある。
【0010】
光学干渉繊維としては、光の波長の干渉によって色を発現する繊維であればよく、具体的でかつ好ましい繊維は日本特許第3356438号明細書(再公表特許WO98/46815公報)に記載された繊維を挙げることができる。
光学干渉性繊維は、屈折率の異なる互に独立したポリマー層を扁平断面の長軸方向と平行に交互に積層してなる扁平状(断面)の繊維であって高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP)の比率(SP値)が、0.8≦SP/SP≦1.2、好ましくは0.8≦SP/SP≦1.1の範囲にある繊維が使用される。
【0011】
上記繊維は、その扁平断面の外周部には、交互積層体部を形成するポリマーのいずれかのポリマーによる、各ポリマー層の厚みよりその厚みが大きい保護層部が形成され、これにより、該フィラメントの反射スペクトルの半値幅λL=1/2が0nm<λL=1/2<200nmの範囲にあるものが好適である。
また繊維は、上記交互積層体部における各ポリマー層の厚みが0.02〜0.3μm、好ましくは0.05〜0.15μmであることが望ましく、保護層部の厚みが2〜10μm、好ましくは3〜7μmであるのが有利である。さらに繊維は、交互積層体部における屈折率の異なる互いに独立したポリマー層が5層以上120層以下、好ましくは15層〜100層、特に好ましくは25層〜70層の範囲であるのが有利である。
繊維は、その長さ方向の直角の断面形状が扁平であることが望ましく、断面の扁平率(長軸/短軸の比)が1.5〜15、好ましくは2〜10、特に好ましくは3〜10の範囲が望ましい。
【0012】
光学干渉性繊維は、屈折率の異なる互いに独立したポリマー層を形成するそれぞれのポリマー(A成分およびB成分)の組合せが、下記(1)〜(5)に例示したものが好ましい。
(1)独立したポリマー層を形成するそれぞれのポリマー(A成分およびB成分)が、スルホン酸金属塩基を有する二塩基酸成分をポリエステルを形成している全二塩基酸成分当り0.3〜10モル%共重合しているポリエチレンテレフタレート(A成分)および酸価が3以上を有するポリメチルメタクリレート(B成分)である光学干渉機能を有する繊維。
(2)独立したポリマー層を形成するそれぞれポリマー(A成分およびB成分)が、スルホン酸金属塩基を有する二塩基酸成分をポリエステルを形成している全二塩基酸成分当り0.3〜5モル%共重合しているポリエチレンナフタレート(A成分)および脂肪族ポリアミド(B成分)である光学干渉機能を有する繊維。
(3)独立したポリマー層を形成するそれぞれポリマー(A成分およびB成分)が、側鎖にアルキル基を少なくとも1個有する二塩基酸成分および/またはグリコール成分を共重合成分とし、該共重合成分を全繰返し単位当り5〜30モル%共重合している共重合芳香族ポリエステル(A成分)およびポリメチルメタアクリレート(B成分)である光学干渉機能を有する繊維。
(4)独立したポリマー層を形成するそれぞれポリマー(A成分およびB成分)が、4,4’−ヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンを二価フェノール成分とするポリカーボネート(A成分)およびポリメチルメタクリレート(B成分)である光学干渉機能を有する繊維。
(5)独立したポリマー層を形成するそれぞれポリマー(A成分およびB成分)が、ポリエチレンテレフタレート(A成分)および脂肪族ポリアミド(B成分)である光学干渉機能を有する繊維。
【0013】
本発明において使用される光学干渉性繊維の単繊維としての繊度は、1〜30dtex、好ましくは2〜20dtexの範囲であるのが有利である。またこの繊維は切断して使用されその繊維の長さは80μm〜5,000μm、好ましくは100μm〜4,000μm、特に好ましくは150μm〜3,000μmの範囲が適当である。繊維の長さが前記範囲よりも短い場合、繊維が微細片となり、メッキした複合構造体の表面に繊維の長さに基づく模様として発現されずしかも発色が充分に感知され難くなる。しかし繊維長が80μm以上、特に100μm以上となると、繊維の配列のランダム模様が明瞭に現われ、光干渉による発色が充分に認識できるようになる。
前記した光学干渉性繊維の切断片は、電解メッキや無電解メッキの処理を行う場合のメッキ液中に分散して通常のメッキ操作によって基体上に複合メッキ層を形成させる。
【0014】
複合メッキ膜を形成させる基体は、メッキ皮膜を形成することができるものであればよく、その材質としては鉄、アルミニウム、ニッケル、種々の合金などの金属;ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリオレフィンなどのプラスチックが挙げられる。また基体の形状としては、メッキ皮膜を形成できるものであればよく、例えば平板のみならず、表面が凹凸を有するもの、棒状、パイプ状などいずれの形態であってもよく、また後述するような種々の用途の形態もしくはその部品であってもよい。
【0015】
複合メッキ層を形成するマトリックスとしての皮膜金属としては銀、銅、ニッケル、パラジウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル−コバルト、ニッケル−鉄、ニッケル−リン、ニッケル−タングステン、ニッケル−パラジウム、ニッケル−スズ、ニッケル−亜鉛、スズ−鉛、スズ−ビスマス、スズ−銀、白金、ロジウム、インジウム、銅−スズ、銅−亜鉛、銅−スズ−亜鉛およびクロムが例示される。
前述した皮膜金属としては、銀、銅、ニッケル、パラジウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル−コバルト、ニッケル−鉄、ニッケル−リン、ニッケル−タングステン、ニッケル−パラジウム、ニッケル−スズ、ニッケル−亜鉛、スズ−鉛、スズ−ビスマス、スズ−銀が好ましく、銀、銅およびニッケルが特に好ましい。
【0016】
前記したメッキ用の金属を使用して、電解メッキまたは無電解メッキによって基体上へ金属皮膜を形成させる。メッキ液の組成は、それ自体公知の電解メッキまたは無電解メッキに使用されるものが使用される。その際前記した光学干渉性繊維の切断片をメッキ液中に分散させたものが使用される。
メッキ液中に前記繊維の切断片を分散させて、メッキ処理することにより、繊維がランダム方向に配列された複合メッキ層が基体上に形成される。メッキ液中に分散される繊維の切断片は、メッキ液1L(リットル)当り、0.05〜15g、好ましくは0.1〜10g、特に好ましくは0.15〜8gの範囲が望ましい。
メッキ液中において、繊維の切断片が良好に安定して分散しかつ切断片がメッキ皮膜中に均一に分散し固定化させるために、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤は、メッキ液1L当り0.1〜10g、好ましくは0.2〜8g、特に好ましくは0.5〜5gの範囲である。
【0017】
メッキ液中に添加される界面活性剤は、カチオン系界面活性剤が好ましく、その具体例を示すと、例えばパーフルアルキル4級アンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、(15)ココアルキルメチルアンモニウム、(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、塩化ジオレイルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ココベンジルジメチルアンモニウムおよび塩化セチルトリメチルアンモニウムが挙げられる。これらのうち、パーフルアルキル4級アンモニウムクロライドが好ましい。
【0018】
基体上に形成される金属メッキ皮膜は、5〜15μm、好ましくは6〜12μm、特に好ましくは7〜10μmの範囲の厚さであるのが有利である。この金属メッキ皮膜層中に繊維の切断片が均一に分散した複合メッキ層が形成される。複合メッキ層は、金属メッキ皮膜層中に繊維の切断片が均一に分散して切断片の一部が埋没して固定された状態で存在する。つまり金属マトリックス中に繊維の切断片の一部がメッキ皮膜面に沿って分散して埋め込まれている。
繊維の切断片は、金属メッキ膜層の表面にその一部が露出しており、金属メッキ膜は、表面が平滑ではない。しかし繊維の切断片は金属マトリックス中に分散して固定化されているので容易には離脱しない。しかし表面を物理的に擦ると切断片の一部がはがれることがある。
【0019】
複合メッキ層中に分散されている繊維の切断片は、メッキ皮膜1m当り、0.1〜15g、好ましくは0.5〜12g、特に好ましくは1〜10gの範囲で分散しているのが望ましい。繊維の切断片の分散量が少ないと光輝性を有する模様が充分に発現されず、一方あまりに多い分散量では、繊維のランダム配列による独特の模様が得られなくなる。
前記した方法によって得られた複合メッキ層(B)が形成された基体は、表面に繊維の切断片の一部が露出している。そこで複合メッキ層の表面にコート層(C)を形成させることにより、表面が平滑となるばかりでなく、繊維の切断片がコート層(C)によってしっかりと固定化され、その上繊維の光輝性や色彩が増し、一層美観を呈するようになる。このコート層(C)は樹脂コートでもよく、また装飾メッキでもよい。
【0020】
樹脂コートする方法として電着塗装法、スプレー法が挙げられる。電着塗装法による樹脂コート層を設けることにより、耐食性の向上、繊維の切断片の脱落防止の効果を得ることができる。しかし、電着塗装は皮膜の厚みが薄いので表面を平滑することはやや困難が伴う。電着塗装には、例えばニューペイトン(登録商標)NAYEDクリア887を使用することができる。
【0021】
一方スプレー法によって樹脂コート層を形成させると、表面の平滑性が充分に保持される。その上樹脂コート層を形成させることにより発色性の向上効果も得られる。すなわち、屋内においても繊維の切断片に基づく、赤、緑、青或いは紫の色調をはっきりと確認できる。この発色効果は、薄い皮膜の前記電着塗装であっても、厚い皮膜のスプレー法でも同じ程度である。
前記したように装飾メッキによってコート層(C)を形成させることもできる。複合メッキ層の表面に装飾メッキを行うことによって、異なった色調を有する構造体を得ることもできる。例えば装飾メッキにより表面に黒い皮膜層を形成させることにより、繊維の切断片の発色が通常よりも明瞭に判別できるようになる。また光沢のある皮膜層を形成させることにより、一層高級感のある構造体を得ることも可能となる。
【0022】
装飾メッキの例を示すと、ブラックニッケルメッキ処理の場合、トップNIBコンク300ml/Lを使用しpH4.0で陰極電流密度0.25A/dm、温度25℃、時間7分の条件で実施することが可能である。また金メッキ処理の場合、シアン化金カリウム2〜5g/L、クエン酸50g/L、クエン酸カリウム70g/Lを使用し、pH4〜5で陰極電流密度0.1〜1A/dm、温度25〜50℃の条件で実施することができる。これら塗装メッキの条件は、単なる一例であってその条件は適宜変更することができる。
【0023】
本発明による光輝性複合構造体は、下記に説明する特徴および利点を有している。
(1)全体としてメッキ光沢性を有し、光学干渉性繊維の切断片がランダム方向に配置されていることにより、特異性のある模様と色の変化が生じる。すなわち、繊維の切断片が長さ方向にランダムに配列されかつ繊維の一部が重なり合うことによって平面的に均一に配列されていないことによって、見る方向により色彩の強弱や色調の変化が微妙に起る。つまり方向追従性のある色彩変化を有する独特の繊維片の模様を発現できる。
(2)繊維切断片の一本一本が細い線状として色彩を呈し、多数の繊維切断片がランダム方向に配置された模様であるので、細かい綾模様の如き美観を呈する。
(3)メッキ光沢性と共に、見る方向または光の方向の変化に伴って、色彩の強弱が微妙に変化し、細い繊維の長さ方向のランダム配置による独特の模様が発現され、全体として幻想的で高級感を有する構造体となる。
(4)メッキ層中に繊維切断片が一緒に複合化されているので基材と繊維切断片が強固にかつよく密着した構造体となる。
(5)メッキ技術により装飾できるので、基体(A)は平板のみならず凹凸を有するものまたは各種の形態を有するものであっても光輝性複合構造体を得ることができる。
(6)殊に複合メッキ層の表面のコート層として黒色乃至暗色のメッキ層を形成させることにより、より強く色調のコントラストを有する構造体が得られる。
【0024】
本発明の光輝性複合構造体は、前述した独特の色彩および模様を表面に有するので、その特徴を生かして、種々の装飾品の用途に使用することができる。例えば下記に列挙した各製品の表面全体やその一部に本発明の光輝性複合構造体を使用することができる。メガネフレーム、携帯電話のボディ、ゴルフクラブ、時計の文字盤、ベルトのバックル、おもちゃ(ゲーム機のボディ、プラモデルなど)、文具(ボールペン、ホッチキス、消しゴムのケース、定規、電卓のボディ、筆、クリップなど)、化粧用塗の容器(口紅、ファンデーション、日焼け止め、スプレーなど)、アルミ灰皿、ヘアピン、ライター、ドアノブ、腕時計ケース、眼鏡ケース、時計バンド、喫煙具、栓抜き、照明器具、洋食器(コップ、皿、スプーン、フォーク、トレイなど)、ボタン、オーディオ、カー用品(シフトノブ、ステアリング、エンブレム、オーディオ、インパネ、スピーカーなど)、カメラ、バッヂ、メダル、キーホルダー、名刺入れ、キーケース、刀剣、馬具、インテリア、額縁、ネクタイピン、宝石箱、ヘルメット、アクセサリー類(カチューシャ、指輪、ネックレス、ブレスレット、アンクレット、ピアス、イヤリング)、CDケース、ブックスタンド、水筒のボディ、タイル、鍵、お菓子の容器、表札、楽器(タンバリン、ギター、ドラムなど)、反射板の代替、ヘルメット、ルアー。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
【0026】
実施例1
サンプルとしてアルミ板(サイズ:5cm×5cm×3mm)を用い、下記のメッキ条件にて下地メッキを行った後、電解複合メッキを行った。
【0027】
<ジンケート処理>
1.アルカリ脱脂 55℃、5分
・炭酸ナトリウム 5g/L
・メタケイ酸ナトリウム 15g/L
・第三リン酸ナトリウム 15g/L
2.エッチング 常温、30秒
・水酸化ナトリウム 50g/L
3.スマット除去 常温、30秒
・硝酸 500ml/L
4.ジンケート処理 常温、30秒
・苛性ソーダ 120g/L
・酸化亜鉛 20g/L
・塩化第二鉄 2g/L
・硝酸ナトリウム 1g/L
5.ジンケート剥離 常温、30秒
・硝酸 500ml/L
6.ジンケート処理 常温30秒
・4と同じ
【0028】
<下地電解メッキ組成>
成分 含有量
硫酸ニッケル六水和物 300g/L
塩化ニッケル六水和物 65g/L
ホウ酸 45g/L
サッカリン 2g/L
1,4−ブチンジオール 0.2g/L
【0029】
<メッキ条件>
メッキ浴のpH 4.0
メッキ浴の温度 50℃
陰極電流密度 4A/dm
メッキ時間 5分
攪拌条件 空気攪拌
【0030】
<電解複合メッキ液組成>
成分 含有量
スルファミン酸ニッケル 200ml/L
塩化ニッケル 40g/L
ホウ酸 35g/L
パーフルアルキル4級アンモニウムクロライド(*1) 1g/L
(*1)フッ素含有カチオン性界面活性剤
光学干渉性繊維の切断片 GM40C75(*2) 1g/L
(*2)帝人ファイバー製:切断片サイズ 75μm×12μm×29μm
Color:GREEN 偏平度:2.4
ポリマー層数:60(ポリエステル30層/ナイロン30層)
一層当りの平均厚み:85nm
【0031】
<メッキ条件>
メッキ浴のpH(*3) 4.0
メッキ浴の温度 60℃
陰極電流密度 3A/dm
メッキ時間 40分
攪拌条件 緩やかな機械攪拌
サンプルの向き 横向き
(*3)スルファミン酸もしくは炭酸ニッケルを用いてpH調整を行った。
この実施例1で得られた光輝性複合構造体の表面写真を図1に示す(倍率は約100倍)。
【0032】
実施例2
サンプルとしてアルミ板(サイズ5cm×5cm×3mm)を用い、下記のメッキ条件にて下地メッキを行った後、電解複合メッキを行った。下地メッキまでは、実施例1と同様に行った。
【0033】
<電解複合メッキ液組成>
成分 含有量
スルファミン酸ニッケル 200ml/L
塩化ニッケル 40g/L
ホウ酸 35g/L
パーフルアルキル4級アンモニウムクロライド 1g/L
光学干渉性繊維の切断片 GM100C1000(*4) 1g/L
(*4)帝人ファイバー製:切断片サイズ 1000μm×17μm×54μm
Color:GREEN 偏平度:3.2
ポリマー層数:60(ポリエステル30層/ナイロン30層)
一層当りの平均厚み:85nm
【0034】
<メッキ条件>
メッキ浴のpH(*5) 4.0
メッキ浴の温度 60℃
陰極電流密度 3A/dm
メッキ時間 40分
攪拌条件 緩やかな機械攪拌
サンプルの向き 横向き
(*5)スルファミン酸もしくは炭酸ニッケルを用いてpH調整を行った。
この実施例2で得られた光輝性複合構造体の表面写真を図2に示す(倍率は約50倍)。
【0035】
実施例3
サンプルとしてアルミ板(サイズ5cm×5cm×3mm)を用い、下記のメッキ条件にて下地メッキを行った後、電解複合メッキを行った。下地メッキまでは、実施例1と同様に行った。
【0036】
<電解複合メッキ液組成>
成分 含有量
スルファミン酸ニッケル 200ml/L
塩化ニッケル 40g/L
ホウ酸 35g/L
パーフルアルキル4級アンモニウムクロライド 1g/L
光学干渉性繊維の切断片 GM100C1000(*6) 1g/L
(*6)実施例2と同じ切断片
【0037】
<メッキ条件>
メッキ浴のpH(*7) 4.0
メッキ浴の温度 60℃
陰極電流密度 3A/dm
メッキ時間 40分
攪拌条件 実施例2に比べてやや緩やかな機械攪拌
サンプルの向き 上向き
(*7)スルファミン酸もしくは炭酸ニッケルを用いてpH調整を行った。
この実施例3で得られた光輝性複合構造体の表面写真を図3に示す(倍率は約50倍)。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1により得られた光輝性複合構造体の表面写真である(倍率は約100倍)。
【図2】実施例2により得られた光輝性複合構造体の表面写真である(倍率は約50倍)。
【図3】実施例3により得られた光輝性複合構造体の表面写真である(倍率は約50倍)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)基体(A)、
(2)その基体(A)の表面上に形成された、光学干渉性繊維の切断片を含有した複合メッキ層(B)および
(3)その複合メッキ層(B)の表面上に形成されたコート層(C)
よりなる光輝性複合構造体。
【請求項2】
該複合メッキ層(B)は、二重メッキ層により構成され、基板(A)側のメッキ層(B−1)およびコート層(C)側の着色メッキ層(B−2)よりなる請求項1記載の光輝性複合構造体。
【請求項3】
該光学干渉性繊維の切断片は、80〜5,000μmの長さを有する請求項1記載の光輝性複合構造体。
【請求項4】
該複合メッキ層(B)は、その層面において光学干渉性繊維の切断片がランダム方向に配置されている請求項1記載の光輝性複合構造体。
【請求項5】
該コート層(C)は、透明または半透明の樹脂コート層である請求項1記載の光輝性複合構造体。
【請求項6】
基体(A)上に、光学干渉性繊維の切断片を分散して含有するメッキ液を施して、該基体(A)上に複合メッキ層(B)を形成させ、次いでその複合メッキ層(B)の表面にコート層(C)を形成させることを特徴とする光輝性複合構造体の製造法。
【請求項7】
該メッキ液は、界面活性剤を含有したものである請求項6記載の製造法。
【請求項8】
該メッキ液は、光学干渉性繊維の切断変を0.1〜15g/Lの濃度で含有している請求項6記載の製造法。
【請求項9】
該コート層(C)は、スプレー法による樹脂コート層である請求項6記載の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−203513(P2007−203513A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22664(P2006−22664)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【出願人】(390036364)清川メッキ工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】