光送信器
【課題】VCSEL等の発光素子の個数が少なくても大きな伝送容量を確保することができるとともに、装置の小型化が容易な光インターコネクション用光送信器を提供する。
【解決手段】光送信器は、波長多重連続光が入力される光導波路117と、光導波路117の長さ方向に沿って配置され、外部から供給される電気信号に応じて光導波路117を通る光に対し、入力ポートからスルーポートへの透過率を変化させて変調を行う複数の変調器121と、複数の変調器121により変調された光を出力する光信号出力部113とを有する。複数の変調器121は、変調可能な光の波長がそれぞれ異なる。
【解決手段】光送信器は、波長多重連続光が入力される光導波路117と、光導波路117の長さ方向に沿って配置され、外部から供給される電気信号に応じて光導波路117を通る光に対し、入力ポートからスルーポートへの透過率を変化させて変調を行う複数の変調器121と、複数の変調器121により変調された光を出力する光信号出力部113とを有する。複数の変調器121は、変調可能な光の波長がそれぞれ異なる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI(大規模集積回路)等の電子デバイス間を光学的に接続して信号の送受信を行う光インターコネクションに用いられる光送信器に関し、特に伝送容量が大きい光インターコネクションに適用できる光送信器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報処理装置内では、同一のプリント基板上又は異なるプリント基板上に搭載された電子デバイス(LSI等)間で信号の送受信を行っている。このような電子デバイス間のインターコネクションにおいて、将来は10Tb/s(テラバイト/秒)にも及ぶ大きな伝送容量(伝送帯域)が必要となることが予想されている。このような伝送容量の大容量化に伴い、従来から一般的に用いられているCu(銅)等の金属配線による電気的なインターコネクションに替えて、光によるインターコネクションを用いることが検討されている。
【0003】
光インターコネクションを実現するためには、電気信号を光信号に変換するE/O(電気/光)変換素子を備えた光送信器と、光信号を電気信号に変換するO/E(光/電気)変換素子を備えた光受信器とが必要となる。E/O変換素子としては、例えば低コストで消費電力が小さいという特徴を有する面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:以下、「VCSEL」という)を用いることが検討されている。また、O/E変換素子としては、フォトダイオード等を用いることができる。
【0004】
非特許文献1には、図1に示す構造の光インターコネクション用光送信器が記載されている。この光送信器は、プリント基板10上に搭載されたLSI11、複数個のVCSEL12及び光導波路アレイ13により構成されている。この光送信器では、複数個のVCSEL12がプリント基板10の幅方向に配列(一次元配列)されている。各VCSEL12には、LSI11から個別に電気信号が供給され、各VCSEL12からは電気信号に応じた光信号(変調光)が出力される。
【0005】
これらのVCSEL12から出力される光信号は、光導波路アレイ13を通って例えば同一のプリント基板10上又は他のプリント基板上に搭載された光受信器に入力され、電気信号に変換される。この非特許文献1には、10Gb/s(ギガバイト/秒)駆動のVCSELを32個使用し、合計で320Gb/sの伝送容量を確保できる光送信器が記載されている。
【0006】
非特許文献2には、VCSELを二次元配列して伝送容量を大きくした光送信器が記載されている。この非特許文献2の光送信器では、図2(a),(b)に示すように、プリント基板20上に搭載されたLSI21の上に(M×N)個のVCSEL22を二次元配列している。ここで、Mは図2(b)のY方向に並んだVCSEL22の数であり、NはX方向に並んだVCSEL22の数である。これらのVCSEL22からは、LSI21から供給される電気信号に応じた光信号(変調光)が出力される。
【0007】
VCSEL22の上方には、各VCSEL22にそれぞれ対応する(M×N)個のマイクロレンズを二次元配列して構成されたマイクロレンズアレイ23と、マイクロレンズアレイ23を透過した光信号をプリント基板20に平行な方向に反射する45度ミラー24とが設けられている。この非特許文献2に記載された光送信器の構成を用いれば、将来的には、例えば10Gb/s駆動のVCSEL22を1000個使用することにより、10Tb/sの伝送容量を実現することも原理的に可能と考えられる。
【0008】
非特許文献3には、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)伝送技術を用いた光送信器が記載されている。この非特許文献3の光送信器においても、図3(a),(b)に示すようにプリント基板30上に搭載されたLSI31の上に(M×N)個のVCSEL32を二次元配列している。ここで、Mは図3(b)のY方向に並んだVCSEL32の数であり、NはX方向に並んだVCSEL32の数である。これらのVCSEL32は、LSI31から供給される電気信号に応じた光信号(変調光)を出力する。この非特許文献3の光送信器では、X方向に並んだN個のVCSEL32から放出される光の波長が相互に異なっている。
【0009】
VCSEL32の上方には、X方向に並んだN個のVCSEL32から出力された光信号を多重化し、WDM光信号として出力する光マルチプレクサ34が配置されている。この光マルチプレクサ34の下面側には、各VCSEL32に対向するように配置された(M×N)個のマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイ34aが設けられている。また、光マルチプレクサ34の上面側には、光マルチプレクサ34から出力されるWDM光信号を集光するM個のマイクロレンズ34bがY方向に並んで配置されている。更に、これらのマイクロレンズ34bの上方には、それぞれ光ファイバ35がその端面(入光面)をマイクロレンズ34bに向けて配置されている。
【0010】
このように構成された非特許文献3の光送信器において、(M×N)個のVCSEL32から出力された光信号は、マイクロレンズアレイ34aを通って光マルチプレクサ34に入力される。光マルチプレクサ34は、X方向に並んだN個のVCSEL32の放出光をそれぞれ多重化してMチャネル分のWDM光信号を生成し、それらのWDM光信号(空間パラレルWDM光信号)を上方に出力する。光マルチプレクサ34から出力されたMチャネル分のWDM光信号は、それぞれマイクロレンズ34bを介して対応する光ファイバ35内に進入する。そして、それらの光ファイバ35を通って同一のプリント基板30上又は他のプリント基板上に搭載された光受信器に伝送される。
【0011】
このように、非特許文献3の光送信器では、光マルチプレクサ34を用いてMチャネル分のWDM光信号を生成し、それらのWDM光信号をM本の光ファイバにより伝送することで、合計250Gb/sの伝送容量を実現している。
【0012】
その他、本発明に関係すると思われる従来技術として、特許文献1,2及び非特許文献4〜7がある。特許文献1には、導波路型光変調器の構造が記載されている。また、特許文献2には、波長選択性を持った発光機能又は受光機能を有する微小タイル状素子を、薄膜トランジスタ回路に電気的に接続した波長多重TFT回路間光インターコネクション回路が記載されている。更に、非特許文献4,5には光カプラの構造が記載されており、非特許文献6,7には複数のリング状光導波路により構成される変調器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−109457号公報
【特許文献2】特開2004−193144号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】2003年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会C-3-123
【非特許文献2】Electronic Components and Technology Conference、231page, 2000年
【非特許文献3】IEEE Photonics Technology Letters, vol.17, No.1, 220-222page, 2005年
【非特許文献4】IEEE Photonics Technology Letters, vol. 4, page1032-1035, 1992年
【非特許文献5】IEEE Photonics Technology Letters, vol. 1, page241-243, 1989年
【非特許文献6】IEEE Journal of Lightwave Technology, vol. 24, page2146-2155, 2006年
【非特許文献7】Journal of Applied Physics, vol. 96, page6008-6015, 2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本願発明者等は、上述した非特許文献1〜3に記載された光送信器には以下に示す問題点があると考えている。すなわち、非特許文献1に記載された技術では、10Gb/s駆動のVCSELを使用して10Tb/sの伝送容量を確保しようとすると、1000個のVCSELを用意する必要がある。しかしながら、1000個ものVCSELの信頼性を同時に確保することは極めて困難である。また、1000個のVCSELを一方向に配列させるためには大きなスペースが必要となり、実装密度の観点から実現困難であると考えられる。
【0016】
非特許文献2に記載された光送信器においても、10Gb/sのVCSELを使用して10Tb/sの伝送容量を確保するためには、1000個のVCSELを用意する必要がある。非特許文献2の光送信器ではVCSELを二次元配列するためスペース的には許容できるものの、非特許文献1の光送信器と同様に1000個ものVCSELの信頼性を同時に確保することは極めて困難であるという問題点がある。また、1000個のVCSELと1000個のマイクロレンズとの光軸を合わせるという煩雑な作業が必要となるという問題点もある。
【0017】
更に、非特許文献2の光送信器ではVCSELから出力された光信号を基板面に平行な方向に伝送するために45度ミラーが必要となる。このため、プリント基板の上方に45度ミラーを配置するためのスペースが必要となり、装置の小型化が阻害されるという問題点もある。
【0018】
非特許文献3の光送信器においても、10Gb/sのVCSELを使用して10Tb/sの伝送容量を確保するためには1000個のVCSELを用意する必要があり、これらのVCSELの信頼性を同時に確保することが困難であるという問題点がある。また、1000個のVCSELと1000個のマイクロレンズとの光軸を合わせるという煩雑な作業が必要となる。
【0019】
更に、非特許文献3の光送信器においても、VCSELから出力された光信号をプリント基板の表面に平行な方向に伝送するためには光ファイバを直角に曲げる必要があり、非特許文献2の光送信器と同様にプリント基板の上方にスペースが必要となって、装置の小型化が阻害されるという問題点がある。
【0020】
本発明の目的は、VCSEL等の発光素子の個数が少なくても大きな伝送容量を確保することができるとともに、装置の小型化が容易な光インターコネクション用光送信器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一観点によれば、波長多重連続光が入力される光導波路と、前記光導波路の長さ方向に沿って配置され、外部から供給される電気信号に応じて前記光導波路を通る光に対し、入力ポートからスルーポートへの透過率を変化させて変調を行う複数の変調器と、前記複数の変調器により変調された光を出力する光信号出力部とを有し、前記複数の変調器は変調可能な光の波長がそれぞれ異なる光送信器が提供される。
【0022】
本発明の光送信器では、波長多重連続光が供給される光導波路に沿って複数の変調器が配置されており、それらの変調器によりそれぞれ異なる波長の光に対し変調を行って、WDM光信号を生成する。この場合、変調器の数をN個とすると、WDM光信号の多重度はNとなる。この光信号は、光導波路の端面から光信号出力部を介して出力される。従って、光導波路が支持基板の表面に平行に形成されている場合、光信号は支持基板の表面に平行な方向に出力される。このため、光信号の進行方向を変更するためのミラーや光ファイバが必要なく、装置の小型化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、従来の光インターコネクション用光送信器(その1)を示す模式図である。
【図2】図2(a)は従来の光インターコネクション用光送信器(その2)を示す模式図、図2(b)は同じくその光送信器のVCSELの配置を示す図である。
【図3】図3(a)は従来の光インターコネクション用光送信器(その3)を示す模式図、図3(b)は同じくその光送信器のVCSELの配置を示す図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態に係るインターコネクション用光送信器を示す斜視図である。
【図5】図5は、第1の実施形態の光送信器の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、変調器の動作の概念を示す模式図である。
【図7】図7(a)は変調器集積素子の光導波路の構造を示す断面図、図7(b)は同じくその光導波路の各部の大きさを説明するための図である。
【図8】図8(a)は光カプラの構成を示す上面図、図8(b)は同じくその光カプラの各部の大きさを説明するための図である。
【図9】図9は、図8(b)に破線Aで囲んだ部分を拡大して示す図である。
【図10】図10は、変調器の構成を示す上面図である。
【図11】図11は、変調器のリング状光導波路の断面図である。
【図12】図12(a),(b)は変調器の特性を示す図である。
【図13】図13は、本発明の第2の実施形態のインターコネクション用光送信器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図4は本発明の第1の実施形態に係るインターコネクション用光送信器を示す斜視図であり、図5は同じくその光送信器の構成を示すブロック図である。
【0026】
図4に示すように、本実施形態に係る光送信器は、プリント基板(支持基板)110と、このプリント基板110上に搭載されたN個の発光素子(光源)111、変調器集積素子112及び光導波路アレイ(光信号出力部)113と、変調器集積素子112の上にフリップチップ接合されるLSI114とにより構成されている。変調器集積素子112の上面には、LSI114とフリップチップ接合するための電極115が設けられている。
【0027】
また、変調器集積素子112は、図5に示すように、光カプラ115と変調器アレイ部116とにより構成されており、変調器アレイ部116は、波長選択機能を有する(M×N)個の変調器121により構成されている。ここで、Mは図5のY方向に並んだ変調器121の数であり、NはX方向に並んだ変調器121の数である。図5においては、M=N=4としているが、M及びNの値は必要とされる総伝送容量及び各素子の性能などに基づいて決定される。
【0028】
N個の発光素子111は、発光素子111毎に異なる波長の連続光(すなわち、変調されていない光)を発生する。図5では4個の発光素子111が設けられており、それらの発光素子111で発生する光の波長がλ1,λ2,λ3,λ4であるとしている。本実施形態ではこれらの発光素子111として、発振波長単一性が優れているDFB(Distributed Feed-Back:分布帰還型)レーザを使用するものとする。各発光素子111は、図5に示すように、変調器集積素子112の光カプラ115と光結合している。
【0029】
光カプラ115は、N個の発光素子111から出力された波長が相互に異なる光を混合(多重化)して、波長多重連続光を生成する。この波長多重連続光は、M本(図5では4本)の光導波路117にそれぞれ出力され、変調器アレイ部116に伝達される。
【0030】
変調器アレイ部116では、図5に示すように、1本の光導波路117に対しN個(図5では4個)の変調器121が直列に接続されている。これらN個の変調器121は、LSI114から供給される電気信号に応じて、それぞれ異なる波長の光に対し変調を行う。ここでは、光カプラ115に近い変調器121から順に、波長λ1,λ2,λ3,λ4の光に対し変調を行うものとする。
【0031】
図6は変調器121の動作の概念を示す模式図である。図6では、波長λ4の光に対し変調を行う変調器を示している。この図6に示すように、光導波路117を通る光は、入力部121aにおいて波長λ4の光とそれ以外の波長λ1,λ2,λ3の光とに分離される。変調部121bは、入力部121aにより分離された波長λ4の光に対し、LSI114から供給される電気信号に応じた変調を行う。一方、入力部121aで分離された波長λ1,λ2,λ3の光は出力部121cに伝達される。出力部121cは、変調部121bで変調された波長λ4の光と、入力部121aから伝達された波長λ1,λ2,λ3の光とを混合(多重化)して、出力側光導波路117に出力する。このように、変調器121は、光導波路117を通る光のうち所定の波長の光のみを変調し、他の波長の光は入力時と同じ状態で出力する。
【0032】
光導波路アレイ113はM本(図5では4本)の光導波路113aにより構成されている。これらの光導波路113aは、変調器集積素子112のM本の光導波路117と1:1に光結合している。この光導波路アレイ113を介して、同一プリント基板110上又は他のプリント基板上に搭載された光受信器にWDM光信号が伝達される。
【0033】
以下、変調器集積素子112を構成する光導波路117、光カプラ115及び変調器121の具体的な構造について説明する。これらの光導波路117、光カプラ115及び変調器121は、いずれもシリコン基板(半導体基板)の上に形成された下部クラッド層、コア層及び上部クラッド層を基本的な要素として構成されている。また、これらの光導波路117、光カプラ115及び変調器121は、一般的な成膜法(例えば、CVD法)と、フォトリソグラフィ法及びエッチング法とを用いて同一シリコン基板上に一体的に形成される。
【0034】
図7(a)は変調器集積素子112の光導波路117の構造を示す断面図、図7(b)は同じくその光導波路117の各部の大きさを説明するための図である。図7(a)に示すように、シリコン基板130上には、下部クラッド層としてSiO2層131が形成されている。このSiO2層131の厚さt1(図7(b)参照)は例えば3.0μmである。
【0035】
SiO2層131の上には、コア層を構成するSi層132が形成されている。Si層132のうち光導波路となるリブ状の部分(以下、「コア132a」という)の厚さt2(図7(b)参照)は例えば250nm、それ以外部分のSi層132の厚さt3(図7(b)参照)は例えば50nmである。また、コア132aの幅w1(図7(b)参照)は例えば450nmである。本実施形態では、図7(a)に示すように、光導波路となる部分以外のSiO2層131の上にもSi層132が薄く(厚さt3)形成されている。以下、この薄く形成されたSi層132を、Si薄膜132bと呼ぶ。
【0036】
Si層132の上には上部クラッド層としてSiO2層133が形成されており、コア132aの周囲はSiO2層131,133により覆われている。
【0037】
このように構成された光導波路117において、コア132aの屈折率はその周囲を覆うSiO2層131,133の屈折率よりも高いため、コア132aを通る光はSiO2層131,133との界面で全反射する。これにより、光はコア132a内に閉じ込められる。
【0038】
図8(a)は、光カプラ115の構成を示す上面図、図8(b)は同じくその光カプラ115の各部の大きさを説明するための図である。また、図9は、図8(b)に破線Aで囲んだ部分を拡大して示す図である。なお、この種の光カプラの構造は、前述の非特許文献4,5に記載されている。
【0039】
図8(a)に示すように、光カプラ115は、N本の光導波路141aにより構成される入力ポート側光導波路アレイ141と、スラブ導波路部142と、M本の光導波路143aにより構成される出力ポート側光導波路アレイ143と、ダミーの光導波路141b,143bとにより構成されている。これらの光導波路141a,141b,143a,143b及びスラブ導波路部142はコア層により構成され、その周囲にはクラッド層が配置されている。
【0040】
入力ポート側光導波路アレイ141を構成するN本の光導波路141aは、それぞれ対応する発光素子111に光結合される。入力側端面における光導波路141aの幅は例えば450nm(図7の光導波路117の幅と同じ)であり、入力側端面における光導波路141aのピッチp1(図8(b)参照)は例えば300μmである。また、図9に示すように、光導波路141aのうちスラブ導波路部142から50μmの範囲ではスラブ導波路部142に近づくほど光導波路141aの幅が広くなっており、スラブ導波路部142との接続部分の幅w2は例えば0.8μm、ピッチp2は例えば1.0μmに設定されている。
【0041】
出力ポート側光導波路アレイ143を構成するM本の光導波路143aも、光導波路141aと同様に、出力側端面における幅が例えば450nm、ピッチが例えば300μmに設定されている。また、光導波路143aのうちスラブ導波路部142から50μmの範囲では、スラブ導波路部142に近づくほど光導波路143aの幅が広くなっており、スラブ導波路部142との接続部分における光導波路143aの幅は例えば0.8μm、ピッチは例えば1.0μmに設定されている。
【0042】
スラブ導波路部142の入力側及び出力側の面の形状は、図8(b)に示すように、半径Rが例えば150μmの円によって規定されている。また、スラブ導波路部142の入力側のY方向の両側部及び出力側のY方向の両側部には、各光導波路143aに分配される波長多重連続光の均一性を確保するために、それぞれ複数のダミーの光導波路141b,143bが設けられている。
【0043】
図10は、変調器121の構成を示す上面図である。ここでは、変調器121としてリング状共振型光変調器を用いている。なお、この種のリング状共振型光変調器の構造は、前述の非特許文献6,7に記載されている。
【0044】
変調器121は、図10に示すように、リング状の3つの光導波路151a,151b,151cと、ドロップポート152とにより構成されている。リング状光導波路151a,151b,151cは、光導波路117とドロップポート152との間にY方向に並んで配置されている。光導波路117とリング状光導波路151a、リング状光導波路151aとリング状光導波路151b、リング状光導波路151bとリング状光導波路151c、リング状光導波路151cとドロップポート152は、それぞれ方向性結合器を構成している。ドロップポート152は光導波路により構成されており、リング状光導波路151a,151b,151cにより構成された方向性結合器を介して光導波路117から移送されてきた光を両方の端面から放散するという機能を備えている。
【0045】
リング状光導波路151a,151b,151cの大きさは変調する光の波長に応じて設定される。例えば波長が1.55μmの光を変調する変調器の場合、リング状光導波路151a,151b,151cの半径は8μmに設定される。また、光導波路117とリング状光導波路151aとにより構成される方向性結合器、及びリング状光導波路151cとドロップポート152とにより構成される方向性結合器は、いずれも結合係数が0.137、パワー移行率が1.9%に設定され、リング状光導波路151a,151bにより構成される方向性結合器、及びリング状光導波路151b,151cにより構成される方向性結合器は、いずれも結合係数が0.00746、パワー移行率が0.0056%に設定される。
【0046】
図11は、リング状光導波路151a,151b,151cの断面を示す図である。この図11に示すように、リング状光導波路151a,151b,151cの基本的な構造は図7(a)に示す光導波路117と同じであるが、コア132aの上方には導電性不純物を導入したポリシリコンからなる電極153が設けられている。また、Si薄膜132bのうちコア132aから若干離れた部分には導電性不純物が導入されており、その導電性不純物が導入された部分がコモン電極(接地電極)154となっている。これらの電極153,154は、変調器121の上方(変調器集積素子112の上面)に設けられたフリップチップ接続用電極(図4の電極115)に電気的に接続されている。それらの接続用電極の上には、LSI114がフリップチップ接続される。
【0047】
このように構成された変調器121において、電極153に電圧が印加されていないときには、光導波路117を通るλ1,λ2,λ3,λ4の波長の光はそのまま入力ポート(入力部)からスルーポート(出力部)に伝送される。電極153に電圧を印加すると、特定の波長の光(例えば波長λ1の光)のみがリング状光導波路151a,151b,151cを介してドロップポート152に移送され、他の波長の光(例えば、波長λ2,λ3,λ4の光)はスルーポートに伝送される。ドロップポート152に移送された光は、ドロップポート152の端部から放射されて散逸する。
【0048】
図12(a),(b)は変調器121の特性を示す図である。図12(a)は電極153に電圧を印加していないとき(光導波路の屈折率変化Δn=0のとき)の特性を示し、図12(b)は電極153に電圧を印加したときの特性を示している。なお、ここでは、波長が1.55μmの光に対し変調を行う変調器の特性を示している。また、図12(a),(b)において縦軸はスルーポート(出力部)への透過率(単位:dB)であり、変調器の入力ポート(入力部)に入力された光の強度とスルーポートに出力された光の強度との比の対数値である。ここでは、電圧を印加することにより、光導波路の7×10-4の屈折率変化(Δn=7×10-4)が生じるものとしている。
【0049】
図12(a)に示すように、電極153に電圧が印加されていないときには、変調器の遮断帯域は1.55μmよりも上側(波長が長いほう)に位置している。このため、光導波路117を通る波長1.55μmの光は、変調器で減衰されることなくスルーポートに出力される。一方、電極153に電圧を印加すると、図12(b)に示すように変調器の遮断帯域の中心が1.55μmの位置に移動する。このため、光導波路117を通る波長1.55μmの光は、リング状光導波路151a,151b,151cを介してドロップポート152に移送され、ドロップポート152の両端部から放散される。
【0050】
電極153に印加する電圧を時間的に変化させることにより、光導波路117を通る波長1.55μmの光が変調される。このようにして、光カプラ115から光導波路117に出力された波長多重連続光は、光導波路117に沿って配置されたN個の変調器121により変調され、その結果変調器アレイ部116からWDM光信号(変調光)が出力される。
【0051】
本実施形態において、変調器集積素子112における光導波路117の配設ピッチは光カプラ115の出力ポート側の光導波路143aの配設ピッチと同じであり、例えば300μmである。一方、変調器121のサイズは数10μm程度であるので、各光導波路117間の領域に変調素子121を配置することができる。
【0052】
なお、これらの光導波路117、光カプラ115及び変調器121は、その表面上にシリコン酸化膜(SiO2膜)及び結晶状シリコン膜が形成されたSOI(Silicon On Insulation)基板を用いて形成される。SOI基板のシリコン酸化膜が下部クラッド層となり、結晶状シリコン膜がコア層となる。
【0053】
以下、本発明を総伝送容量が10Tb/sの光送信器に適用する場合について説明する。10Tb/sの伝送容量を実現するために、本実施形態では、発光素子111として連続発振が可能な32個の端面出射型DFBレーザを使用する。これらのDFBレーザから出射される光の波長は、1.55μmを中心として50GHz間隔(約0.4nm間隔)であるとものとする。
【0054】
光カプラ115は、これら32個のDFBレーザから出射された相互に異なる波長の光を多重化して波長多重連続光を生成し、その波長多重連続光を32本の光導波路117に出力する。これらの32本の光導波路117には、それぞれ変調する光の波長が相互に異なる32個の変調器121が直列に接続されている。これらの変調器121は、LSI114から送られてくる電気信号により10Gb/sの速度で駆動され、それぞれ所定の波長の光に対し変調を行う。これらの変調器121により変調された32個のWDM光信号は、光導波路アレイ113に設けられた32本の光導波路113aを通って同一プリント基板110上又は他のプリント基板上に搭載された光受信器に送られる。
【0055】
このような光送信器において、総伝送容量は10.24Tb/s(=32(WDM光信号の多重度)×32(光導波路の数)×10Gb/s(変調器の変調速度))となる。本実施形態の光送信器において、10Tb/sの伝送容量を実現するのに必要な発光素子111の個数は32個と少ない。また、変調器集積素子112内の光導波路117の数も32本と少なく、小型化が容易なリング状共振型光変調器を使用していることと相俟って、光送信器の小型化が容易である。例えば、総伝送容量が10Tb/sの光送信器の場合、駆動用のLSIと同等又はそれ以下のサイズ(例えば1cm角)とすることができる。
【0056】
更に、本実施形態の光送信器は、半導体製造技術を用いて比較的容易に製造できるので、製造コストが低く、信頼性が高いという利点もある。また、本実施形態では発光素子で変調光を生成するのではないため、発光素子111として連続発光するものを使用することができる。
【0057】
更にまた、本実施形態の光送信器は、光カプラ115及び変調器アレイ116がシリコン基板130上の下部クラッド層、コア層、上部クラッド層により一体的に形成されているので、光結合すべき部分は、発光素子111と変調器集積素子121との間、及び変調器集積素子121と光導波路アレイ113との間だけでよく、組立作業が容易である。
【0058】
更にまた、本実施形態の光送信器においては、発光素子111から出射された光をプリント基板110の表面に平行な方向に移動させながら変調を行うので、図2,図3に示すようにプリント基板面に垂直な方向に出射される光信号の進行方向を変化させるミラーや光ファイバを配置するためのスペースを確保する必要がなく、装置の小型化が容易に達成される。
【0059】
(第2の実施形態)
図13は、本発明の第2の実施形態のインターコネクション用光送信器を示す斜視図である。なお、本実施形態が第1の実施形態と異なる点は発光素子111の搭載方法が異なることにあり、その他の構成は基本的に第1の実施形態と同様であるので、図13において図4と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0060】
本実施形態においては、図13に示すように変調器集積素子112の入力側(図13では左側)にテラス部(段差部)112aが設けられており、このテラス部112aの上に発光素子111が搭載されている。テラス部112aには発光素子111との位置合わせ用マーク(図示せず)が設けられており、それらのマークを用いて発光素子111を所定の位置に配置することにより、発光素子111と変調器集積素子112の光導波路とを光結合することができる。
【0061】
前述の第1の実施形態では、プリント基板110の上に発光素子111と変調器集積素子112とを個別に搭載するため、発光素子111と変調器集積素子112との位置合わせが難しく、量産性が悪いことが考えられる。一方、本実施形態では、変調器集積素子112のテラス部112aに予め位置合わせマークを設けておき、それらの位置合わせマークを用いて変調器集積素子112の所定の位置に発光素子111を搭載すればよいので、第1の実施形態に比べて量産性が優れているという利点がある。
【0062】
なお、上記第1及び第2の実施形態では、光導波路117、光カプラ115及び変調器121がシリコン基板上に成膜されたシリコン材料からなる膜(Si膜及びSiO2膜)により形成されているものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、InP基板又はGaAs基板と、その基板に格子整合する材料からなる膜とにより光導波路117、光カプラ115及び変調器121を形成してもよい。
【0063】
また、上記第1及び第2の実施形態では、図10に示す構造の波長選択機能を有するリング状共振型光変調器を用いる場合について説明したが、波長選択機能を有する素子と変調素子とが個別に形成されていてもよい。
【0064】
更に、上記第1及び第2の実施形態では発光素子111として端面出射型DFBレーザを用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、発光素子111として、面発光レーザや多波長同時発振の光源を使用してもよい。
【0065】
以下、本発明の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
【0066】
(付記1)連続光が入力される光導波路と、
前記光導波路に沿って配置され、外部から供給される電気信号に応じて前記光導波路を通る光に対し変調を行う複数の変調器と、
前記複数の変調器により変調された光を出力する光信号出力部とを有し、
前記複数の変調器は変調可能な光の波長がそれぞれ異なることを特徴とする光送信器。
【0067】
(付記2)更に、相互に異なる波長の連続光を発生する複数の発光素子と、
前記複数の発光素子から出射される連続光を多重化して前記光導波路に供給する光カプラとを有することを特徴とする付記1に記載の光送信器。
【0068】
(付記3)前記光信号出力部は、前記複数の変調器により変調された光を支持基板の表面に平行な方向に出力することを特徴とする付記1に記載の光送信器。
【0069】
(付記4)M本(但し、Mは2以上の整数)の光導波路と、
前記M本の光導波路にそれぞれ連続光を供給する連続光供給部と、
前記M本の光導波路のそれぞれにN個(但し、Nは2以上の整数)づつ直列に接続され、外部から供給される電気信号に応じて前記光導波路を通る光に対し変調を行う変調器と、
前記M本の光導波路毎に前記N個の変調器により変調された光を出力する光信号出力部とを有し、
1本の光導波路に直列接続された前記N個の変調器は、変調可能な光の波長がそれぞれ異なることを特徴とする光送信器。
【0070】
(付記5)前記連続光供給部が、相互に異なる波長の連続光を発生するN個の発光素子と、前記N個の発光素子から出射された連続光を多重化して前記M本の光導波路にそれぞれ供給する光カプラとにより構成されていることを特徴とする付記4に記載の光送信器。
【0071】
(付記6)前記発光素子が、いずれもDFB(Distributed Feed-Back:分布帰還型)レーザであることを特徴とする付記5に記載の光送信器。
【0072】
(付記7)前記光導波路と、前記変調器と、前記光カプラとが一体的に形成されていることを特徴とする付記5に記載の光送信器。
【0073】
(付記8)前記光導波路、前記変調器及び前記光カプラが、同一半導体基板上に形成された下部クラッド層、コア層及び上部クラッド層により構成されていることを特徴とする付記5に記載の光送信器。
【0074】
(付記9)前記発光素子が、前記半導体基板上に搭載されていることを特徴とする付記8に記載の光送信器。
【0075】
(付記10)前記光導波路、前記変調器及び前記光カプラが、いずれもシリコン又はシリコン化合物により形成されていることを特徴とする付記5に記載の光送信器。
【0076】
(付記11)前記光導波路、前記変調器及び前記光カプラが、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて形成されていることを特徴とする付記5に記載の光送信器。
【0077】
(付記12)前記変調器の上方に、前記電気信号を供給する半導体装置に接続するための電極が配置されていることを特徴とする付記4に記載の光送信器。
【0078】
(付記13)前記変調器は、前記半導体装置とフリップチップ接合されることを特徴とする付記12に記載の光送信器。
【0079】
(付記14)前記光信号出力部は、前記変調器により変調された光を支持基板の表面に平行な方向に出力することを特徴とする付記4に記載の光送信器。
【0080】
(付記15)前記変調器が、リング共振型光変調器であることを特徴とする付記4に記載の光送信器。
【0081】
(付記16)前記N個の変調器が、1.55μmを中心として50GHz間隔の波長の光を変調することを特徴とする付記4に記載の光送信器。
【符号の説明】
【0082】
10,20,30,110…プリント基板、11,21,31,114…LSI、12,22,32…VCSEL、13,113…光導波路アレイ、23,34a…マイクロレンズアレイ、24…45度ミラー、34…光マルチプレクサ、34b…マイクロレンズ、35…光ファイバ、111…発光素子、112…変調集積素子、112a…テラス部、115…光カプラ、116…変調器アレイ部、117,141a,141b,143a,143b…光導波路、121…変調器、130…シリコン基板、131,133…SiO2層、132…Si層、132a…コア、132b…Si薄膜、141…入力ポート側光導波路アレイ、142…スラブ導波路部、143…出力ポート側光導波路アレイ、151a,151b,151c…リング状光導波路、152…ドロップポート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI(大規模集積回路)等の電子デバイス間を光学的に接続して信号の送受信を行う光インターコネクションに用いられる光送信器に関し、特に伝送容量が大きい光インターコネクションに適用できる光送信器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報処理装置内では、同一のプリント基板上又は異なるプリント基板上に搭載された電子デバイス(LSI等)間で信号の送受信を行っている。このような電子デバイス間のインターコネクションにおいて、将来は10Tb/s(テラバイト/秒)にも及ぶ大きな伝送容量(伝送帯域)が必要となることが予想されている。このような伝送容量の大容量化に伴い、従来から一般的に用いられているCu(銅)等の金属配線による電気的なインターコネクションに替えて、光によるインターコネクションを用いることが検討されている。
【0003】
光インターコネクションを実現するためには、電気信号を光信号に変換するE/O(電気/光)変換素子を備えた光送信器と、光信号を電気信号に変換するO/E(光/電気)変換素子を備えた光受信器とが必要となる。E/O変換素子としては、例えば低コストで消費電力が小さいという特徴を有する面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:以下、「VCSEL」という)を用いることが検討されている。また、O/E変換素子としては、フォトダイオード等を用いることができる。
【0004】
非特許文献1には、図1に示す構造の光インターコネクション用光送信器が記載されている。この光送信器は、プリント基板10上に搭載されたLSI11、複数個のVCSEL12及び光導波路アレイ13により構成されている。この光送信器では、複数個のVCSEL12がプリント基板10の幅方向に配列(一次元配列)されている。各VCSEL12には、LSI11から個別に電気信号が供給され、各VCSEL12からは電気信号に応じた光信号(変調光)が出力される。
【0005】
これらのVCSEL12から出力される光信号は、光導波路アレイ13を通って例えば同一のプリント基板10上又は他のプリント基板上に搭載された光受信器に入力され、電気信号に変換される。この非特許文献1には、10Gb/s(ギガバイト/秒)駆動のVCSELを32個使用し、合計で320Gb/sの伝送容量を確保できる光送信器が記載されている。
【0006】
非特許文献2には、VCSELを二次元配列して伝送容量を大きくした光送信器が記載されている。この非特許文献2の光送信器では、図2(a),(b)に示すように、プリント基板20上に搭載されたLSI21の上に(M×N)個のVCSEL22を二次元配列している。ここで、Mは図2(b)のY方向に並んだVCSEL22の数であり、NはX方向に並んだVCSEL22の数である。これらのVCSEL22からは、LSI21から供給される電気信号に応じた光信号(変調光)が出力される。
【0007】
VCSEL22の上方には、各VCSEL22にそれぞれ対応する(M×N)個のマイクロレンズを二次元配列して構成されたマイクロレンズアレイ23と、マイクロレンズアレイ23を透過した光信号をプリント基板20に平行な方向に反射する45度ミラー24とが設けられている。この非特許文献2に記載された光送信器の構成を用いれば、将来的には、例えば10Gb/s駆動のVCSEL22を1000個使用することにより、10Tb/sの伝送容量を実現することも原理的に可能と考えられる。
【0008】
非特許文献3には、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)伝送技術を用いた光送信器が記載されている。この非特許文献3の光送信器においても、図3(a),(b)に示すようにプリント基板30上に搭載されたLSI31の上に(M×N)個のVCSEL32を二次元配列している。ここで、Mは図3(b)のY方向に並んだVCSEL32の数であり、NはX方向に並んだVCSEL32の数である。これらのVCSEL32は、LSI31から供給される電気信号に応じた光信号(変調光)を出力する。この非特許文献3の光送信器では、X方向に並んだN個のVCSEL32から放出される光の波長が相互に異なっている。
【0009】
VCSEL32の上方には、X方向に並んだN個のVCSEL32から出力された光信号を多重化し、WDM光信号として出力する光マルチプレクサ34が配置されている。この光マルチプレクサ34の下面側には、各VCSEL32に対向するように配置された(M×N)個のマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイ34aが設けられている。また、光マルチプレクサ34の上面側には、光マルチプレクサ34から出力されるWDM光信号を集光するM個のマイクロレンズ34bがY方向に並んで配置されている。更に、これらのマイクロレンズ34bの上方には、それぞれ光ファイバ35がその端面(入光面)をマイクロレンズ34bに向けて配置されている。
【0010】
このように構成された非特許文献3の光送信器において、(M×N)個のVCSEL32から出力された光信号は、マイクロレンズアレイ34aを通って光マルチプレクサ34に入力される。光マルチプレクサ34は、X方向に並んだN個のVCSEL32の放出光をそれぞれ多重化してMチャネル分のWDM光信号を生成し、それらのWDM光信号(空間パラレルWDM光信号)を上方に出力する。光マルチプレクサ34から出力されたMチャネル分のWDM光信号は、それぞれマイクロレンズ34bを介して対応する光ファイバ35内に進入する。そして、それらの光ファイバ35を通って同一のプリント基板30上又は他のプリント基板上に搭載された光受信器に伝送される。
【0011】
このように、非特許文献3の光送信器では、光マルチプレクサ34を用いてMチャネル分のWDM光信号を生成し、それらのWDM光信号をM本の光ファイバにより伝送することで、合計250Gb/sの伝送容量を実現している。
【0012】
その他、本発明に関係すると思われる従来技術として、特許文献1,2及び非特許文献4〜7がある。特許文献1には、導波路型光変調器の構造が記載されている。また、特許文献2には、波長選択性を持った発光機能又は受光機能を有する微小タイル状素子を、薄膜トランジスタ回路に電気的に接続した波長多重TFT回路間光インターコネクション回路が記載されている。更に、非特許文献4,5には光カプラの構造が記載されており、非特許文献6,7には複数のリング状光導波路により構成される変調器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−109457号公報
【特許文献2】特開2004−193144号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】2003年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会C-3-123
【非特許文献2】Electronic Components and Technology Conference、231page, 2000年
【非特許文献3】IEEE Photonics Technology Letters, vol.17, No.1, 220-222page, 2005年
【非特許文献4】IEEE Photonics Technology Letters, vol. 4, page1032-1035, 1992年
【非特許文献5】IEEE Photonics Technology Letters, vol. 1, page241-243, 1989年
【非特許文献6】IEEE Journal of Lightwave Technology, vol. 24, page2146-2155, 2006年
【非特許文献7】Journal of Applied Physics, vol. 96, page6008-6015, 2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本願発明者等は、上述した非特許文献1〜3に記載された光送信器には以下に示す問題点があると考えている。すなわち、非特許文献1に記載された技術では、10Gb/s駆動のVCSELを使用して10Tb/sの伝送容量を確保しようとすると、1000個のVCSELを用意する必要がある。しかしながら、1000個ものVCSELの信頼性を同時に確保することは極めて困難である。また、1000個のVCSELを一方向に配列させるためには大きなスペースが必要となり、実装密度の観点から実現困難であると考えられる。
【0016】
非特許文献2に記載された光送信器においても、10Gb/sのVCSELを使用して10Tb/sの伝送容量を確保するためには、1000個のVCSELを用意する必要がある。非特許文献2の光送信器ではVCSELを二次元配列するためスペース的には許容できるものの、非特許文献1の光送信器と同様に1000個ものVCSELの信頼性を同時に確保することは極めて困難であるという問題点がある。また、1000個のVCSELと1000個のマイクロレンズとの光軸を合わせるという煩雑な作業が必要となるという問題点もある。
【0017】
更に、非特許文献2の光送信器ではVCSELから出力された光信号を基板面に平行な方向に伝送するために45度ミラーが必要となる。このため、プリント基板の上方に45度ミラーを配置するためのスペースが必要となり、装置の小型化が阻害されるという問題点もある。
【0018】
非特許文献3の光送信器においても、10Gb/sのVCSELを使用して10Tb/sの伝送容量を確保するためには1000個のVCSELを用意する必要があり、これらのVCSELの信頼性を同時に確保することが困難であるという問題点がある。また、1000個のVCSELと1000個のマイクロレンズとの光軸を合わせるという煩雑な作業が必要となる。
【0019】
更に、非特許文献3の光送信器においても、VCSELから出力された光信号をプリント基板の表面に平行な方向に伝送するためには光ファイバを直角に曲げる必要があり、非特許文献2の光送信器と同様にプリント基板の上方にスペースが必要となって、装置の小型化が阻害されるという問題点がある。
【0020】
本発明の目的は、VCSEL等の発光素子の個数が少なくても大きな伝送容量を確保することができるとともに、装置の小型化が容易な光インターコネクション用光送信器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一観点によれば、波長多重連続光が入力される光導波路と、前記光導波路の長さ方向に沿って配置され、外部から供給される電気信号に応じて前記光導波路を通る光に対し、入力ポートからスルーポートへの透過率を変化させて変調を行う複数の変調器と、前記複数の変調器により変調された光を出力する光信号出力部とを有し、前記複数の変調器は変調可能な光の波長がそれぞれ異なる光送信器が提供される。
【0022】
本発明の光送信器では、波長多重連続光が供給される光導波路に沿って複数の変調器が配置されており、それらの変調器によりそれぞれ異なる波長の光に対し変調を行って、WDM光信号を生成する。この場合、変調器の数をN個とすると、WDM光信号の多重度はNとなる。この光信号は、光導波路の端面から光信号出力部を介して出力される。従って、光導波路が支持基板の表面に平行に形成されている場合、光信号は支持基板の表面に平行な方向に出力される。このため、光信号の進行方向を変更するためのミラーや光ファイバが必要なく、装置の小型化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、従来の光インターコネクション用光送信器(その1)を示す模式図である。
【図2】図2(a)は従来の光インターコネクション用光送信器(その2)を示す模式図、図2(b)は同じくその光送信器のVCSELの配置を示す図である。
【図3】図3(a)は従来の光インターコネクション用光送信器(その3)を示す模式図、図3(b)は同じくその光送信器のVCSELの配置を示す図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態に係るインターコネクション用光送信器を示す斜視図である。
【図5】図5は、第1の実施形態の光送信器の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、変調器の動作の概念を示す模式図である。
【図7】図7(a)は変調器集積素子の光導波路の構造を示す断面図、図7(b)は同じくその光導波路の各部の大きさを説明するための図である。
【図8】図8(a)は光カプラの構成を示す上面図、図8(b)は同じくその光カプラの各部の大きさを説明するための図である。
【図9】図9は、図8(b)に破線Aで囲んだ部分を拡大して示す図である。
【図10】図10は、変調器の構成を示す上面図である。
【図11】図11は、変調器のリング状光導波路の断面図である。
【図12】図12(a),(b)は変調器の特性を示す図である。
【図13】図13は、本発明の第2の実施形態のインターコネクション用光送信器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図4は本発明の第1の実施形態に係るインターコネクション用光送信器を示す斜視図であり、図5は同じくその光送信器の構成を示すブロック図である。
【0026】
図4に示すように、本実施形態に係る光送信器は、プリント基板(支持基板)110と、このプリント基板110上に搭載されたN個の発光素子(光源)111、変調器集積素子112及び光導波路アレイ(光信号出力部)113と、変調器集積素子112の上にフリップチップ接合されるLSI114とにより構成されている。変調器集積素子112の上面には、LSI114とフリップチップ接合するための電極115が設けられている。
【0027】
また、変調器集積素子112は、図5に示すように、光カプラ115と変調器アレイ部116とにより構成されており、変調器アレイ部116は、波長選択機能を有する(M×N)個の変調器121により構成されている。ここで、Mは図5のY方向に並んだ変調器121の数であり、NはX方向に並んだ変調器121の数である。図5においては、M=N=4としているが、M及びNの値は必要とされる総伝送容量及び各素子の性能などに基づいて決定される。
【0028】
N個の発光素子111は、発光素子111毎に異なる波長の連続光(すなわち、変調されていない光)を発生する。図5では4個の発光素子111が設けられており、それらの発光素子111で発生する光の波長がλ1,λ2,λ3,λ4であるとしている。本実施形態ではこれらの発光素子111として、発振波長単一性が優れているDFB(Distributed Feed-Back:分布帰還型)レーザを使用するものとする。各発光素子111は、図5に示すように、変調器集積素子112の光カプラ115と光結合している。
【0029】
光カプラ115は、N個の発光素子111から出力された波長が相互に異なる光を混合(多重化)して、波長多重連続光を生成する。この波長多重連続光は、M本(図5では4本)の光導波路117にそれぞれ出力され、変調器アレイ部116に伝達される。
【0030】
変調器アレイ部116では、図5に示すように、1本の光導波路117に対しN個(図5では4個)の変調器121が直列に接続されている。これらN個の変調器121は、LSI114から供給される電気信号に応じて、それぞれ異なる波長の光に対し変調を行う。ここでは、光カプラ115に近い変調器121から順に、波長λ1,λ2,λ3,λ4の光に対し変調を行うものとする。
【0031】
図6は変調器121の動作の概念を示す模式図である。図6では、波長λ4の光に対し変調を行う変調器を示している。この図6に示すように、光導波路117を通る光は、入力部121aにおいて波長λ4の光とそれ以外の波長λ1,λ2,λ3の光とに分離される。変調部121bは、入力部121aにより分離された波長λ4の光に対し、LSI114から供給される電気信号に応じた変調を行う。一方、入力部121aで分離された波長λ1,λ2,λ3の光は出力部121cに伝達される。出力部121cは、変調部121bで変調された波長λ4の光と、入力部121aから伝達された波長λ1,λ2,λ3の光とを混合(多重化)して、出力側光導波路117に出力する。このように、変調器121は、光導波路117を通る光のうち所定の波長の光のみを変調し、他の波長の光は入力時と同じ状態で出力する。
【0032】
光導波路アレイ113はM本(図5では4本)の光導波路113aにより構成されている。これらの光導波路113aは、変調器集積素子112のM本の光導波路117と1:1に光結合している。この光導波路アレイ113を介して、同一プリント基板110上又は他のプリント基板上に搭載された光受信器にWDM光信号が伝達される。
【0033】
以下、変調器集積素子112を構成する光導波路117、光カプラ115及び変調器121の具体的な構造について説明する。これらの光導波路117、光カプラ115及び変調器121は、いずれもシリコン基板(半導体基板)の上に形成された下部クラッド層、コア層及び上部クラッド層を基本的な要素として構成されている。また、これらの光導波路117、光カプラ115及び変調器121は、一般的な成膜法(例えば、CVD法)と、フォトリソグラフィ法及びエッチング法とを用いて同一シリコン基板上に一体的に形成される。
【0034】
図7(a)は変調器集積素子112の光導波路117の構造を示す断面図、図7(b)は同じくその光導波路117の各部の大きさを説明するための図である。図7(a)に示すように、シリコン基板130上には、下部クラッド層としてSiO2層131が形成されている。このSiO2層131の厚さt1(図7(b)参照)は例えば3.0μmである。
【0035】
SiO2層131の上には、コア層を構成するSi層132が形成されている。Si層132のうち光導波路となるリブ状の部分(以下、「コア132a」という)の厚さt2(図7(b)参照)は例えば250nm、それ以外部分のSi層132の厚さt3(図7(b)参照)は例えば50nmである。また、コア132aの幅w1(図7(b)参照)は例えば450nmである。本実施形態では、図7(a)に示すように、光導波路となる部分以外のSiO2層131の上にもSi層132が薄く(厚さt3)形成されている。以下、この薄く形成されたSi層132を、Si薄膜132bと呼ぶ。
【0036】
Si層132の上には上部クラッド層としてSiO2層133が形成されており、コア132aの周囲はSiO2層131,133により覆われている。
【0037】
このように構成された光導波路117において、コア132aの屈折率はその周囲を覆うSiO2層131,133の屈折率よりも高いため、コア132aを通る光はSiO2層131,133との界面で全反射する。これにより、光はコア132a内に閉じ込められる。
【0038】
図8(a)は、光カプラ115の構成を示す上面図、図8(b)は同じくその光カプラ115の各部の大きさを説明するための図である。また、図9は、図8(b)に破線Aで囲んだ部分を拡大して示す図である。なお、この種の光カプラの構造は、前述の非特許文献4,5に記載されている。
【0039】
図8(a)に示すように、光カプラ115は、N本の光導波路141aにより構成される入力ポート側光導波路アレイ141と、スラブ導波路部142と、M本の光導波路143aにより構成される出力ポート側光導波路アレイ143と、ダミーの光導波路141b,143bとにより構成されている。これらの光導波路141a,141b,143a,143b及びスラブ導波路部142はコア層により構成され、その周囲にはクラッド層が配置されている。
【0040】
入力ポート側光導波路アレイ141を構成するN本の光導波路141aは、それぞれ対応する発光素子111に光結合される。入力側端面における光導波路141aの幅は例えば450nm(図7の光導波路117の幅と同じ)であり、入力側端面における光導波路141aのピッチp1(図8(b)参照)は例えば300μmである。また、図9に示すように、光導波路141aのうちスラブ導波路部142から50μmの範囲ではスラブ導波路部142に近づくほど光導波路141aの幅が広くなっており、スラブ導波路部142との接続部分の幅w2は例えば0.8μm、ピッチp2は例えば1.0μmに設定されている。
【0041】
出力ポート側光導波路アレイ143を構成するM本の光導波路143aも、光導波路141aと同様に、出力側端面における幅が例えば450nm、ピッチが例えば300μmに設定されている。また、光導波路143aのうちスラブ導波路部142から50μmの範囲では、スラブ導波路部142に近づくほど光導波路143aの幅が広くなっており、スラブ導波路部142との接続部分における光導波路143aの幅は例えば0.8μm、ピッチは例えば1.0μmに設定されている。
【0042】
スラブ導波路部142の入力側及び出力側の面の形状は、図8(b)に示すように、半径Rが例えば150μmの円によって規定されている。また、スラブ導波路部142の入力側のY方向の両側部及び出力側のY方向の両側部には、各光導波路143aに分配される波長多重連続光の均一性を確保するために、それぞれ複数のダミーの光導波路141b,143bが設けられている。
【0043】
図10は、変調器121の構成を示す上面図である。ここでは、変調器121としてリング状共振型光変調器を用いている。なお、この種のリング状共振型光変調器の構造は、前述の非特許文献6,7に記載されている。
【0044】
変調器121は、図10に示すように、リング状の3つの光導波路151a,151b,151cと、ドロップポート152とにより構成されている。リング状光導波路151a,151b,151cは、光導波路117とドロップポート152との間にY方向に並んで配置されている。光導波路117とリング状光導波路151a、リング状光導波路151aとリング状光導波路151b、リング状光導波路151bとリング状光導波路151c、リング状光導波路151cとドロップポート152は、それぞれ方向性結合器を構成している。ドロップポート152は光導波路により構成されており、リング状光導波路151a,151b,151cにより構成された方向性結合器を介して光導波路117から移送されてきた光を両方の端面から放散するという機能を備えている。
【0045】
リング状光導波路151a,151b,151cの大きさは変調する光の波長に応じて設定される。例えば波長が1.55μmの光を変調する変調器の場合、リング状光導波路151a,151b,151cの半径は8μmに設定される。また、光導波路117とリング状光導波路151aとにより構成される方向性結合器、及びリング状光導波路151cとドロップポート152とにより構成される方向性結合器は、いずれも結合係数が0.137、パワー移行率が1.9%に設定され、リング状光導波路151a,151bにより構成される方向性結合器、及びリング状光導波路151b,151cにより構成される方向性結合器は、いずれも結合係数が0.00746、パワー移行率が0.0056%に設定される。
【0046】
図11は、リング状光導波路151a,151b,151cの断面を示す図である。この図11に示すように、リング状光導波路151a,151b,151cの基本的な構造は図7(a)に示す光導波路117と同じであるが、コア132aの上方には導電性不純物を導入したポリシリコンからなる電極153が設けられている。また、Si薄膜132bのうちコア132aから若干離れた部分には導電性不純物が導入されており、その導電性不純物が導入された部分がコモン電極(接地電極)154となっている。これらの電極153,154は、変調器121の上方(変調器集積素子112の上面)に設けられたフリップチップ接続用電極(図4の電極115)に電気的に接続されている。それらの接続用電極の上には、LSI114がフリップチップ接続される。
【0047】
このように構成された変調器121において、電極153に電圧が印加されていないときには、光導波路117を通るλ1,λ2,λ3,λ4の波長の光はそのまま入力ポート(入力部)からスルーポート(出力部)に伝送される。電極153に電圧を印加すると、特定の波長の光(例えば波長λ1の光)のみがリング状光導波路151a,151b,151cを介してドロップポート152に移送され、他の波長の光(例えば、波長λ2,λ3,λ4の光)はスルーポートに伝送される。ドロップポート152に移送された光は、ドロップポート152の端部から放射されて散逸する。
【0048】
図12(a),(b)は変調器121の特性を示す図である。図12(a)は電極153に電圧を印加していないとき(光導波路の屈折率変化Δn=0のとき)の特性を示し、図12(b)は電極153に電圧を印加したときの特性を示している。なお、ここでは、波長が1.55μmの光に対し変調を行う変調器の特性を示している。また、図12(a),(b)において縦軸はスルーポート(出力部)への透過率(単位:dB)であり、変調器の入力ポート(入力部)に入力された光の強度とスルーポートに出力された光の強度との比の対数値である。ここでは、電圧を印加することにより、光導波路の7×10-4の屈折率変化(Δn=7×10-4)が生じるものとしている。
【0049】
図12(a)に示すように、電極153に電圧が印加されていないときには、変調器の遮断帯域は1.55μmよりも上側(波長が長いほう)に位置している。このため、光導波路117を通る波長1.55μmの光は、変調器で減衰されることなくスルーポートに出力される。一方、電極153に電圧を印加すると、図12(b)に示すように変調器の遮断帯域の中心が1.55μmの位置に移動する。このため、光導波路117を通る波長1.55μmの光は、リング状光導波路151a,151b,151cを介してドロップポート152に移送され、ドロップポート152の両端部から放散される。
【0050】
電極153に印加する電圧を時間的に変化させることにより、光導波路117を通る波長1.55μmの光が変調される。このようにして、光カプラ115から光導波路117に出力された波長多重連続光は、光導波路117に沿って配置されたN個の変調器121により変調され、その結果変調器アレイ部116からWDM光信号(変調光)が出力される。
【0051】
本実施形態において、変調器集積素子112における光導波路117の配設ピッチは光カプラ115の出力ポート側の光導波路143aの配設ピッチと同じであり、例えば300μmである。一方、変調器121のサイズは数10μm程度であるので、各光導波路117間の領域に変調素子121を配置することができる。
【0052】
なお、これらの光導波路117、光カプラ115及び変調器121は、その表面上にシリコン酸化膜(SiO2膜)及び結晶状シリコン膜が形成されたSOI(Silicon On Insulation)基板を用いて形成される。SOI基板のシリコン酸化膜が下部クラッド層となり、結晶状シリコン膜がコア層となる。
【0053】
以下、本発明を総伝送容量が10Tb/sの光送信器に適用する場合について説明する。10Tb/sの伝送容量を実現するために、本実施形態では、発光素子111として連続発振が可能な32個の端面出射型DFBレーザを使用する。これらのDFBレーザから出射される光の波長は、1.55μmを中心として50GHz間隔(約0.4nm間隔)であるとものとする。
【0054】
光カプラ115は、これら32個のDFBレーザから出射された相互に異なる波長の光を多重化して波長多重連続光を生成し、その波長多重連続光を32本の光導波路117に出力する。これらの32本の光導波路117には、それぞれ変調する光の波長が相互に異なる32個の変調器121が直列に接続されている。これらの変調器121は、LSI114から送られてくる電気信号により10Gb/sの速度で駆動され、それぞれ所定の波長の光に対し変調を行う。これらの変調器121により変調された32個のWDM光信号は、光導波路アレイ113に設けられた32本の光導波路113aを通って同一プリント基板110上又は他のプリント基板上に搭載された光受信器に送られる。
【0055】
このような光送信器において、総伝送容量は10.24Tb/s(=32(WDM光信号の多重度)×32(光導波路の数)×10Gb/s(変調器の変調速度))となる。本実施形態の光送信器において、10Tb/sの伝送容量を実現するのに必要な発光素子111の個数は32個と少ない。また、変調器集積素子112内の光導波路117の数も32本と少なく、小型化が容易なリング状共振型光変調器を使用していることと相俟って、光送信器の小型化が容易である。例えば、総伝送容量が10Tb/sの光送信器の場合、駆動用のLSIと同等又はそれ以下のサイズ(例えば1cm角)とすることができる。
【0056】
更に、本実施形態の光送信器は、半導体製造技術を用いて比較的容易に製造できるので、製造コストが低く、信頼性が高いという利点もある。また、本実施形態では発光素子で変調光を生成するのではないため、発光素子111として連続発光するものを使用することができる。
【0057】
更にまた、本実施形態の光送信器は、光カプラ115及び変調器アレイ116がシリコン基板130上の下部クラッド層、コア層、上部クラッド層により一体的に形成されているので、光結合すべき部分は、発光素子111と変調器集積素子121との間、及び変調器集積素子121と光導波路アレイ113との間だけでよく、組立作業が容易である。
【0058】
更にまた、本実施形態の光送信器においては、発光素子111から出射された光をプリント基板110の表面に平行な方向に移動させながら変調を行うので、図2,図3に示すようにプリント基板面に垂直な方向に出射される光信号の進行方向を変化させるミラーや光ファイバを配置するためのスペースを確保する必要がなく、装置の小型化が容易に達成される。
【0059】
(第2の実施形態)
図13は、本発明の第2の実施形態のインターコネクション用光送信器を示す斜視図である。なお、本実施形態が第1の実施形態と異なる点は発光素子111の搭載方法が異なることにあり、その他の構成は基本的に第1の実施形態と同様であるので、図13において図4と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0060】
本実施形態においては、図13に示すように変調器集積素子112の入力側(図13では左側)にテラス部(段差部)112aが設けられており、このテラス部112aの上に発光素子111が搭載されている。テラス部112aには発光素子111との位置合わせ用マーク(図示せず)が設けられており、それらのマークを用いて発光素子111を所定の位置に配置することにより、発光素子111と変調器集積素子112の光導波路とを光結合することができる。
【0061】
前述の第1の実施形態では、プリント基板110の上に発光素子111と変調器集積素子112とを個別に搭載するため、発光素子111と変調器集積素子112との位置合わせが難しく、量産性が悪いことが考えられる。一方、本実施形態では、変調器集積素子112のテラス部112aに予め位置合わせマークを設けておき、それらの位置合わせマークを用いて変調器集積素子112の所定の位置に発光素子111を搭載すればよいので、第1の実施形態に比べて量産性が優れているという利点がある。
【0062】
なお、上記第1及び第2の実施形態では、光導波路117、光カプラ115及び変調器121がシリコン基板上に成膜されたシリコン材料からなる膜(Si膜及びSiO2膜)により形成されているものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、InP基板又はGaAs基板と、その基板に格子整合する材料からなる膜とにより光導波路117、光カプラ115及び変調器121を形成してもよい。
【0063】
また、上記第1及び第2の実施形態では、図10に示す構造の波長選択機能を有するリング状共振型光変調器を用いる場合について説明したが、波長選択機能を有する素子と変調素子とが個別に形成されていてもよい。
【0064】
更に、上記第1及び第2の実施形態では発光素子111として端面出射型DFBレーザを用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、発光素子111として、面発光レーザや多波長同時発振の光源を使用してもよい。
【0065】
以下、本発明の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
【0066】
(付記1)連続光が入力される光導波路と、
前記光導波路に沿って配置され、外部から供給される電気信号に応じて前記光導波路を通る光に対し変調を行う複数の変調器と、
前記複数の変調器により変調された光を出力する光信号出力部とを有し、
前記複数の変調器は変調可能な光の波長がそれぞれ異なることを特徴とする光送信器。
【0067】
(付記2)更に、相互に異なる波長の連続光を発生する複数の発光素子と、
前記複数の発光素子から出射される連続光を多重化して前記光導波路に供給する光カプラとを有することを特徴とする付記1に記載の光送信器。
【0068】
(付記3)前記光信号出力部は、前記複数の変調器により変調された光を支持基板の表面に平行な方向に出力することを特徴とする付記1に記載の光送信器。
【0069】
(付記4)M本(但し、Mは2以上の整数)の光導波路と、
前記M本の光導波路にそれぞれ連続光を供給する連続光供給部と、
前記M本の光導波路のそれぞれにN個(但し、Nは2以上の整数)づつ直列に接続され、外部から供給される電気信号に応じて前記光導波路を通る光に対し変調を行う変調器と、
前記M本の光導波路毎に前記N個の変調器により変調された光を出力する光信号出力部とを有し、
1本の光導波路に直列接続された前記N個の変調器は、変調可能な光の波長がそれぞれ異なることを特徴とする光送信器。
【0070】
(付記5)前記連続光供給部が、相互に異なる波長の連続光を発生するN個の発光素子と、前記N個の発光素子から出射された連続光を多重化して前記M本の光導波路にそれぞれ供給する光カプラとにより構成されていることを特徴とする付記4に記載の光送信器。
【0071】
(付記6)前記発光素子が、いずれもDFB(Distributed Feed-Back:分布帰還型)レーザであることを特徴とする付記5に記載の光送信器。
【0072】
(付記7)前記光導波路と、前記変調器と、前記光カプラとが一体的に形成されていることを特徴とする付記5に記載の光送信器。
【0073】
(付記8)前記光導波路、前記変調器及び前記光カプラが、同一半導体基板上に形成された下部クラッド層、コア層及び上部クラッド層により構成されていることを特徴とする付記5に記載の光送信器。
【0074】
(付記9)前記発光素子が、前記半導体基板上に搭載されていることを特徴とする付記8に記載の光送信器。
【0075】
(付記10)前記光導波路、前記変調器及び前記光カプラが、いずれもシリコン又はシリコン化合物により形成されていることを特徴とする付記5に記載の光送信器。
【0076】
(付記11)前記光導波路、前記変調器及び前記光カプラが、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて形成されていることを特徴とする付記5に記載の光送信器。
【0077】
(付記12)前記変調器の上方に、前記電気信号を供給する半導体装置に接続するための電極が配置されていることを特徴とする付記4に記載の光送信器。
【0078】
(付記13)前記変調器は、前記半導体装置とフリップチップ接合されることを特徴とする付記12に記載の光送信器。
【0079】
(付記14)前記光信号出力部は、前記変調器により変調された光を支持基板の表面に平行な方向に出力することを特徴とする付記4に記載の光送信器。
【0080】
(付記15)前記変調器が、リング共振型光変調器であることを特徴とする付記4に記載の光送信器。
【0081】
(付記16)前記N個の変調器が、1.55μmを中心として50GHz間隔の波長の光を変調することを特徴とする付記4に記載の光送信器。
【符号の説明】
【0082】
10,20,30,110…プリント基板、11,21,31,114…LSI、12,22,32…VCSEL、13,113…光導波路アレイ、23,34a…マイクロレンズアレイ、24…45度ミラー、34…光マルチプレクサ、34b…マイクロレンズ、35…光ファイバ、111…発光素子、112…変調集積素子、112a…テラス部、115…光カプラ、116…変調器アレイ部、117,141a,141b,143a,143b…光導波路、121…変調器、130…シリコン基板、131,133…SiO2層、132…Si層、132a…コア、132b…Si薄膜、141…入力ポート側光導波路アレイ、142…スラブ導波路部、143…出力ポート側光導波路アレイ、151a,151b,151c…リング状光導波路、152…ドロップポート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長多重連続光が入力される光導波路と、
前記光導波路の長さ方向に沿って配置され、外部から供給される電気信号に応じて前記光導波路を通る光に対し、入力ポートからスルーポートへの透過率を変化させて変調を行う複数の変調器と、
前記複数の変調器により変調された光を出力する光信号出力部とを有し、
前記複数の変調器は変調可能な光の波長がそれぞれ異なることを特徴とする光送信器。
【請求項2】
波長多重連続光が入力される光導波路と、
前記光導波路の長さ方向に沿って配置され、外部から供給される電気信号に応じて前記光導波路を通る光に対し変調を行う複数の変調器と、
前記複数の変調器により変調された光を出力する光信号出力部とを有し、
前記複数の変調器は半径がそれぞれ異なるリング状共振型光変調器であることを特徴とする光送信器。
【請求項3】
前記光導波路がSi層をコア層とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信器。
【請求項4】
前記変調器の上に、前記電気信号を供給する半導体装置が接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光送信器。
【請求項1】
波長多重連続光が入力される光導波路と、
前記光導波路の長さ方向に沿って配置され、外部から供給される電気信号に応じて前記光導波路を通る光に対し、入力ポートからスルーポートへの透過率を変化させて変調を行う複数の変調器と、
前記複数の変調器により変調された光を出力する光信号出力部とを有し、
前記複数の変調器は変調可能な光の波長がそれぞれ異なることを特徴とする光送信器。
【請求項2】
波長多重連続光が入力される光導波路と、
前記光導波路の長さ方向に沿って配置され、外部から供給される電気信号に応じて前記光導波路を通る光に対し変調を行う複数の変調器と、
前記複数の変調器により変調された光を出力する光信号出力部とを有し、
前記複数の変調器は半径がそれぞれ異なるリング状共振型光変調器であることを特徴とする光送信器。
【請求項3】
前記光導波路がSi層をコア層とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信器。
【請求項4】
前記変調器の上に、前記電気信号を供給する半導体装置が接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光送信器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−108550(P2012−108550A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39563(P2012−39563)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【分割の表示】特願2006−224210(P2006−224210)の分割
【原出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【分割の表示】特願2006−224210(P2006−224210)の分割
【原出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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