説明

光通信システム

【課題】 正規受信者のビット誤り率(BER)が不正受信者のBERよりも小さい場合、両者の差を利用して安全に通信を行えることが原理的に可能である。この条件を満たす光送受信法を得ることが課題である。
【解決手段】 正規受信者にもビット誤りを生じさせるような揺らぎを伴ったキャリア光を用い、信号は誤り訂正符号化して送受信する。2n値(nは1以上の整数)の信号に対してn + 1以上の基底を用い、正規の送受信者は予め種鍵を共有した上で、それを用いて基底を選択した通信を行う。信号伝送では信号と乱数を伝送し、その乱数は次回の伝送基底選択に利用する。不正受信者は基底を知らないが、誤り訂正符号の復号化のために2n値判定をしなければならず、正規受信者よりもBERが大きくなる。正規受信者と不正受信者のBERに関する差は情報理論的に安全な情報量を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光通信システムに関し、特に光通信あるいは一般の通信において安全性を向上させることができる光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信における秘匿性の要求は古来より未来に亘る永遠のテーマであり、近年のネットワーク社会においては暗号学の発展によりその要求を確保してきた。一般に暗号は安全性の程度に応じて情報理論的安全性と計算量的安全性の2つに大別される。送信者の送信信号に関する変数をX,正規受信者の受信信号に関する変数をY,不正受信者の受信信号に関する変数をZ,送信者と正規受信者間の相互情報量をI(X;Y) ,送信者と不正受信者間の相互情報量をI(X;Z)とすれば正規の送受信者間で情報理論的に安全性が保証された情報量CはC = I(X;Y) - I(X;Z)になる。正規の送受信者間で予め情報量Cの秘密鍵を共有しておき正規の送受信者間で情報量C以下の通信をした場合、情報理論的に安全な通信が可能になる。しかしながら、これではあまりに膨大な秘密鍵が必要なため、一般的には少量の秘密鍵を用いて数学的に解読を困難にし、解読に非現実的な時間を要することを安全性の根拠にした暗号を用いることが多い(計算量的安全性)。計算量的に安全な暗号は現状の解読技術と計算機の能力に対して解読が困難なだけで技術の進歩に伴い安全性は低下する。この問題点に対して量子力学の性質を利用して十分な情報量Cの秘密鍵を生成する方法の研究が活発である。しかしながら、量子力学的性質はミクロの世界で現れるものであり、現実に導入する場合には制限事項も多い。
【0003】
一般に暗号の強度は、正規受信者と盗聴者が同じ信号を得ると仮定し、解読がどの程度困難かにより評価する。しかしながら、現実の通信路にはノイズがあり,一般にビット誤りが存在する。即ち、正規受信者と盗聴者が同じ信号を得るとの仮定は必ずしも正しくない。このビット誤りが生じる点を利用すれば量子力学的性質を利用しなくても安全な情報量C = I(X;Y) - I(X;Z)を確保できることが知られている。相互情報量はビット誤り率(BER)の増加で減少するので、正規受信者よりも不正受信者のBERが大きい通信路を実現できれば情報理論的に安全な通信が可能になる(非特許文献1)。尚、不正受信者よりも正規受信者のBERが大きい通信路においても公衆通信路を用いた後処理により安全な情報量Cを得る方法があり得ることも情報理論において示されている(非特許文献2)。但し、具体的な方法論が確立しているわけではない。
【0004】
【特許文献1】特開2008-003339号公報
【非特許文献1】A. D. Wyner, “The wire-tap channel,”Bell Syst. Tech. J., 54, 1335 (1975).
【非特許文献2】U. M. Maurer, “Secret key agreement by public discussion from common information,”IEEE Trans. Inf. Theory, 39, 733 (1993).
【非特許文献3】C. H. Bennett, G. Brassard, and J.-M. Robert, SIAM J. Comput. 17, 210 (1988))
【非特許文献4】T. Tomaru, and M. Ban, “Secure optical communication using antisqueezing,”Phys. Rev. A 74, 032312 (2006)
【非特許文献5】T. Tomaru, “LD light antisqueezing through fiber propagation in reflection-type interferometer,”Opt. Exp. 15, 11241 (2007))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に不正受信者が正規受信者よりも悪い条件で盗聴しているとは限らず、正規受信者と不正受信者のどちらのBERが大きいかは伝送路と不正受信法に依存する。正規受信者よりも不正受信者のBERが確実に大きい通信路を実現できれば確実に安全な情報量Cを確保できる。そこで、正規受信者よりも不正受信者のBERが確実に大きい通信路を実現することが課題である。また、情報理論的に安全な情報量を見積もるために、実現した通信路における送信者と不正受信者間の相互情報量I(X;Z)を見積もる方法が課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず課題を解決するための手段と原理を列挙する。
1.キャリア光に揺らぎを伴った光を利用し、正規受信者に対してもビット誤りがある。
【0007】
このため誤り訂正符号化して伝送する。
2.伝送時の信号が2値の場合、送信基底数は2以上にする。
3.正規の送受信者は種鍵を予め共有するとし、それにより正規の送受信者はどの基底を用いて信号を送受信したかを知るものとする。従って、正規受信者は2値判定可能である。
4.不正受信者は送信基底を知らないので、例えば基底数が2ならば4値判定できるのみである。
5.ビット誤りがあるので誤り訂正符号の復号化が必須である。
6.誤り訂正符号は2値信号に対する符号なので、復号時には2値判定した結果が必要である。
7.4値判定しかできない不正受信者も復号のために2値判定しなければならない。
【0008】
このため「不正受信者のビット誤り率>正規受信者のビット誤り率」が実現される。
8.この差の分が正規の送受信者間の安全な情報量を与える。送受信する信号を乱数とし、プライバシーアンプの手法により送受信した乱数信号のビット数から安全な情報量までビット数を減らせば、情報理論的に安全な鍵を送受信者間で新たに共有できたことになる。
【0009】
即ち、この鍵を用いてone-time-padの暗号通信が可能になる。
9.予め正規の送受信者間で共有していた種鍵を繰り返し使用すると不正受信された信号の解読を許すことになるので、信号(乱数信号を含む)と乱数(乱数信号とは別)を交互に送受信し、送受信された乱数を新たな秘密鍵として送受信基底を刷新していく。
【0010】
キャリア光に揺らぎ(ノイズ)を伴った光を用いて、正規受信者に対しても必ずビット誤りが存在する点が本発明のポイントである。ビット誤りを訂正するために、信号伝送時には誤り訂正符号を用いる。キャリア光に信号を重畳する際、nビット(nは1以上の整数)をひとまとめにして1変調当たり2n値とすれば必要な送信基底数はn基底となるが、本発明ではn + 1基底以上とし、正規の送受信者が予め種鍵(乱数列)を共有することによりどの送信基底を利用するかが既知とする。従って、正規受信者は通常の受信が可能で、ビット誤りは誤り訂正符号の復号時に訂正される。一方、不正受信者は種鍵を知らず、基底情報を持たずに信号光を検出しなければならないために2n値の判定ができず、基底数をm (> n)とすれば2m値の判定ができるだけである。揺らぎがあるために不正受信者も誤り訂正符号を復号しなければならないが、誤り訂正符号は2m値に対するものではなく2n値に対するものなので不正受信者も2n値判定しなければならない。その際に不正受信者は種鍵を知らない分だけ不利になり、BERが正規受信者よりも大きくなる。
【0011】
種鍵の長さが有限なものとすれば、それを繰り返し利用した場合、ストリーム暗号等と同様に解読される可能性が出てくる。そのため送信機に乱数発生器を具備し、信号と乱数を交互に伝送し、送受信された乱数を次回の伝送時の基底選択のための新たな種鍵とすることで種鍵を刷新していく。信号と乱数を例えば1:1の比で伝送した場合、同じ基底を2回使うことになる。もしビット誤りがなければ同じ種鍵を2回使えば基底が解読される可能性があるが、キャリア光に揺らぎがあればたとえ鍵を2回使ったとしても揺らぎの効果はまだ残り、不正受信者のBERが正規受信者のBERよりも大きいことが維持される。
【0012】
安全性が保証される情報量は正規受信者と不正受信者のBERから算出される相互情報量の差だけである。したがって、送信された信号すべてに亘って安全性が保証されているわけではない。そのため、信号そのものも乱数で構成し(これを乱数信号と呼ぶ)、送受信者間で共有された乱数信号のビット数を安全な情報量まで論理演算により減らす処理を行い(ビット数を減らすことにより1ビット当たりの安全な情報量は増える点に着目し、このようなビット数を減らす処理はプライバシーアンプと呼ばれる)、それを送受信者が新たに共有した秘密鍵としてone-time-padの暗号通信をする方法が有効である。即ち、以上の処理は予め送受信者間で共有されていた少量の秘密鍵を増幅する手段になっている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、予め送受信者間で少量の種鍵を共有していれば通常の光通信路を用いて情報理論的に安全性が保証された通信が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(実施例1)
本発明は位相変調方式、振幅変調方式のいずれでも適用可能であるが、ここでは位相変調方式の場合を示す。また簡単化のため信号は2値とし、基底数は2とする。位相変調は参照光を必要とするPhase-shift keying (PSK)でも差動型のDifferential-phase-shift keying(DPSK)でもどちらでも良い。図1は本発明の基本的部分の一例を示すブロック図である。図2は位相空間内の信号の様子を示す。各三日月形の部分が各信号状態の揺らぎを模式的に示す。信号が2値、基底数が2なので信号状態は合計4値になる。基底がq軸に選ばれた場合、q軸を基準にした位相0とπの状態が“1”,“0”の信号になり(図2(a))、p軸に基底が選ばれた場合、位相π/2と3π/2の状態が“1”, “0”の信号になる(図2(b))。
【0015】
送信機100内のレーザー光源110からの出力光は揺らぎ生成器120により揺らぎが加えられる(揺らぎ生成器120の具体例は実施例8で示す)。その結果、図2に示す三日月形の揺らぎを伴った状態になる。送受信者は予め種鍵(乱数列)を共有するものとする。送受信者は通信を始めるに当たって認証が必要なので、少なくとも認証用の鍵は保持していると考えられ、この仮定は妥当なものである。信号は符号器143により誤り訂正符号の符号化がなされる。符号化された信号は種鍵141を基に基底が選択されたうえで変調器130により位相揺らぎを伴ったキャリア光に重畳される。信号を重畳されたキャリア光は伝送路201を通して受信機に送られる。受信機300内では、送受信者間で予め共有した種鍵333を用いて変調器310を通して基底の選択をする。正規受信者は正しく基底選択できるので常に図2(c)の状態で受信できる。検出器320では2値判定をする(検出器320の具体的構成は実施例10で示す)。2値判定後の信号は復号器330により誤り訂正される。本発明ではキャリア光に揺らぎを伴った光が利用されているので正規受信者にもビット誤りが存在するが、誤り訂正符号を用いるのでビット誤りは訂正される。基本的にはこれで信号が送受信できたことになる。
【0016】
不正受信者は種鍵を知らないので2値判定することはできないが、基底数が2ならば4値判定することは可能である。ここで、4値判定ではなく位相の測定のみをしたとする。正規受信者も2値判定するに当たってしていることは位相の測定なので、両者とも位相測定をしていると解釈すれば両者の情報量は同じになる。しかしながら、本発明では揺らぎを伴ったキャリア光を利用していることが重要である。揺らぎのために必ずビット誤りがあり誤り訂正しなければならない。復号化は2値信号に対して行うので、最終的な信号を得るためには位相測定を行うだけでは不十分で必ず2値判定しなければならない。不正受信者が受信する信号の揺らぎ分布を模式的に示したものが図2(d)である。各信号状態の揺らぎが小さければ点線を境界線として4値判定可能になるが、各信号状態の揺らぎが重なり不正受信者のBERが正規受信者よりも悪くなることが見込まれる。誤り訂正符号の復号では2値判定された結果が必要なので不正受信者も復号に先立ち4値判定ではなく2値判定しなければならず、またこの時点でBERが確定する。不正受信者は基底を知らないために正規受信者よりも必然的にBERが大きくなり、正規受信者・送信者間の相互情報量と不正受信者・送信者間の相互情報量の差相当分の情報理論的安全性が保証される。
【0017】
図3に基底がq軸で信号が“1”の場合の正規受信者と不正受信者の2値判定に関する領域区分を示す。各領域の正規受信者の判定がB: “0”及びB: “1”で示され、不正受信者の判定がE: “0”及びE: “1”で示されている。正規受信者は基底を知っているのでqの正負判定をする。“1”の信号に対してq < 0になる確率がBERになる。不正受信者は正しい基底を知らないので4値判定できるのみで図3の場合、破線で区切られた4つの領域を判定することになる(図2(d)参照)。q軸及びp軸の正方向に“1”、負方向に“0”が割り振られていたならば、図3の左上から右下に引かれた破線の上側を“1”、下側を“0”と判定することになる。“1”の信号を仮定しているので“0”と判定する確率がBERになる。正規受信者と不正受信者が異なる判定をするのは図3の斜線部に測定値が入る場合である。領域1に測定値が入った場合、正規受信者は正しく判定したことになるが不正受信者は間違って判定したことになる。領域1に測定値が入る確率をP1とすればその確率分だけ不正受信者の不利分になる。一方、領域2に測定値が入った場合、正規受信者は誤って判定したことになり、不正受信者は正しく判定したことになる。領域2に測定値が入る確率をP2とすればその確率分だけ不正受信者は有利になる。したがって、両領域に測定値が入る確率の差(P1−P2)が不正受信者の不利分になる。この確率差を相互情報量の差に変換すれば情報理論的に安全性が保証された情報量を算出できる。
【0018】
正規受信者と不正受信者の間に生成できたBERの差を有効に利用するためには誤り訂正符号を適切に設定する必要がある。もし、用いた誤り訂正符号が不正受信者のBERに対しても誤り訂正可能ならば復号後は正規受信者と不正受信者間で情報量の差がなくなってしまうからである。従って、誤り訂正可能か不可能かの閾値が正規受信者のBERと不正受信者のBERの中間値に設定されるのが適当である。また、この閾値の両側で誤り訂正能力が急激に変化することが望ましい。即ち、この閾値よりも低いBERに対してはほぼ確実に誤り訂正可能で、この閾値よりも高いBERに対してはほとんど誤り訂正不可になっていることが望ましい。一般に誤り訂正符号の誤り訂正可能なBERと訂正能力が急激に変化するBERの閾値は、個別の符号に依存するだけでなく、符号の冗長度、反復度、畳み込みの程度等によっても変化する。従って、本発明で要求される設定はこれらのパラメタを調整することによって行う。
(実施例2)
実施例1では送受信者間で予め種鍵を共有しておりそれを用いて送信基底の選択をした。キャリア光に揺らぎを伴うために基底の多値化が有効であった。しかしながら、種鍵を繰り返し利用すると揺らぎの効果が縮小する。一般に同じ揺らぎの同じ信号をm回測定すれば揺らぎは1/√mに縮小されるからである。したがって、同じ種鍵を繰り返し使う回数を極力減らすことが有効である。そこで信号と乱数を交互に送り、伝送された乱数を次回の伝送時における基底選択のための秘密鍵に利用することを考える。信号と乱数を1:1の比で伝送するとすれば同じ秘密鍵を2回ずつ使うことになる。揺らぎの効果は1/√2に縮小されるが、まだ十分な大きさである。
【0019】
本実施例を具体的に示したブロック図が図4である。信号列1をs1, s2, s3, …、乱数発生器140からの出力乱数列をr1, r2, r3, …とすれば合成器142において合成列s1, r1, s2, r2, s3, r3, …が形成され、符号器143において誤り訂正復号化される。
【0020】
ここでsiとrj (i, j = 1, 2, 3, …)は1ビットとは限らず任意のビット数でよい。siとrjが1ビットの場合は乱数ビットと信号ビットが交互に並べられた場合であり、siとrjが多ビットの場合はブロックごとに並べられた場合に相当する。さらに、乱数ビットと信号ビットの並びがランダムに見えるように並べ替えを行うことも有効である。乱数発生器140からの出力r1, r2, r3, …は次回の伝送時における基底選択用の秘密鍵に利用されるので種鍵141になる。この様子を示したのが図5である。受信機側では種鍵333に基づき変調器310において基底選択がなされ、検出器320において2値判定され、復号器330において乱数と信号の合成列s1, r1, s2, r2, s3, r3, …に復号される。次に分離器331により乱数列332 (r1, r2, r3, …)と信号列3 (s1, s2, s3, …)に分離され、乱数列332は次回の伝送時における基底選択用の秘密鍵に利用されるので種鍵333になる。
【0021】
合成器142において乱数列と信号列を並び替える場合、並べ替えの規則は予め決めておくものであるが、乱数発生器140から出力された乱数を元に並べ替えの規則を順次変えていくことも可能である。この並べ替えの規則を変えた乱数は上述のように受信機側に伝送されるので、受信機側でも並べ替え規則の変更に対応できる。
(実施例3)
実施例1、2においてはキャリア光の揺らぎを利用して安全な情報量Cを確保できることを示した。しかしながら、安全な情報量はC = I(X;Y) - I(X;Z)のみで、伝送されたビット数すべてが安全なわけではない。したがって、伝送したい信号すべてに安全性を保証する必要がある場合には別の仕組みが必要である。その一例を示したのが図6である。実施例1,2で信号としていた情報を乱数発生器1110から出力される乱数とし、ここでは乱数信号1と呼ぶことにする。乱数信号1は送信機100から伝送路201を通して受信機300まで実施例2の手続きにより伝送され、乱数信号3として出力される。乱数信号1、3は乱数なので情報そのものに意味がある訳ではない。そこで、ビット数縮小演算器1120及び3120により論理演算を繰り返して安全な情報量Cまで情報量を減らす。例えば、乱数信号列1,3をs1, s2, s3, s4, s5, s6, s7, s8,…としてti = s2i-1 + s2i(但し、i = 1, 2, 3, …、+は論理和を表す)と論理演算すればビット数は半分になる。この処理を繰り返せば、所望の情報量までビット数を減らすことができる。この処理は送信機側及び受信機側でまったく同じことを行うもので、所謂Privacy amplificationである(非特許文献3)。ビット数を減らされた乱数信号1121及び3121は情報理論的に安全性が保証された情報量Cになっているので、これをone-time-padの秘密鍵として実際に送りたい信号を暗号化して通常の暗号通信をすればよい。即ち、実際に送りたい信号11は、暗号鍵1121を用いて光送信機1130により伝送路202に送信され、光受信機3130において暗号鍵3121により平分に復号化され、最終的な出力信号31を得る。
【0022】
本実施例では伝送路は201と202の2つを利用するが両者とも通常の伝送路で十分である。両者は物理的に異なる伝送路でも構わないし、波長多重伝送のように物理的に同じ光伝送路であっても構わない。
(実施例4)
実施例3ではビット数縮小演算(Privacy amplification)を行い情報理論的に安全な情報量を確保した。しかしながら、一般の通信で常に情報理論的安全性が要求されるわけではなく、効率を上げるために安全性のレベルを下げることも考えうる。通常よく利用される計算量的安全性の暗号(ストリーム暗号、等)と揺らぎを伴うキャリア光を併用すれば、情報理論的安全性は達成できないまでも通常の計算量的安全性よりは高いレベルの安全性を実現できる。
【0023】
図7はそれを実現する一例のブロック図である。予め送受信者間で共有した種鍵141の一部を用いて擬似乱数発生器150により擬似乱数列を発生させ、暗号器151において信号1を暗号化する。その後は実施例2と同様な手続きにより乱数発生器140からの出力列と暗号化された信号列から合成器142において合成列を形成し、符号器143により誤り訂正符号化し、変調器130において110及び120により生成されたキャリア光に符号化された信号を重畳する。変調器130における基底選択は種鍵141の一部を用いて行う。受信機側では種鍵333の一部を用いて実施例2と同様に変調器310において基底選択を行い、検出器320において2値判定し、復号器330において誤り訂正符号の復号化を行い、分離器331において乱数と暗号化された信号を分離する。暗号化された信号は復号器341により暗号が解かれて出力信号3を得る。暗号の復号においては、種鍵333の一部を用いて擬似乱数発生器340を駆動し、その出力擬似乱数列を利用する。
【0024】
乱数発生器140からの出力は上記の伝送を通して送受信者間で共有され、実施例2と同様に次回の信号伝送における基底選択に利用されると共に、一部は擬似乱数発生器150及び340を駆動するための種鍵更新としても利用される。
(実施例5)
実施例4では擬似乱数を用いた暗号と揺らぎを伴うキャリア光の併用したシステムについて記述した。乱数発生器140からの出力列と信号列1の合成は信号列1を暗号化してから行った。しかしながら暗号化は、乱数発生器140からの出力乱数列と信号列1の合成後に行うことも可能である。図8にその場合のブロック図を示す。送信機内の暗号器151と合成器142の順番が図7と比べて入れ替わっている。同様に受信機内の分離器331と復号器341の順番が図7と図8とでは入れ替わっている。この順番が入れ替わっていること以外は本実施例の手続きは実施例4と同様である。本実施例では乱数を含めて暗号化されるので解読がより困難になる。
(実施例6)
実施例4及び5においては、擬似乱数を用いた暗号と揺らぎを伴うキャリア光を併用したシステムについて述べた。これらのシステムを実施例3で述べた鍵生成システムに適用することも可能である。即ち、図7及び図8の送受信機を図6の送受信機に適用することができる。この場合、ビット数縮小演算器1120及び3120では要求する安全性のレベルに応じて縮小されるビット数を決めればよい。
(実施例7)
実施例6まではレーザー光源110からの出力光を揺らぎ生成器120により揺らぎを伴う光にしてから変調器130において信号重畳がなされた。しかしながら、揺らぎの生成は信号重畳後においても可能である。従って、揺らぎ生成器120と変調器130の順番を入れ替えることが可能であり、例えば、図4の送受信系に対してそれを実現したものを図9に示す。他のシステム構成に対してもこの入れ替えは可能である。
(実施例8)
揺らぎ生成器120は様々な形態が考えられるが光ファイバのカー効果を使った方法が便利である。一例を図10に示す。レーザー光源110からの出力光は光アンプ121により増幅され、帯域フィルタ122を通過して光ファイバ123を伝播する。この際、光ファイバのカー効果を通して位相揺らぎが加わる。レーザー出力光はコヒーレント状態で比較的よく記述でき、位相空間上の揺らぎの形が円形であるが、光ファイバのカー効果を通して楕円形、またさらに進んで三日月形になる。このように揺らぎの形が楕円形や三日月形になった光をアンチスクイズド光と呼ぶ(非特許文献4および非特許文献5)。カー効果は光強度に比例して大きくなるので、パルス光にしてピーク強度を大きくするのが有効である。この場合、ファイバ伝播に伴うパルス広がりを抑えることが効果的であり、ソリトン条件を満足するようにパルス幅、光強度、ファイバの分散値を選ぶと良い(特許文献1)。また上記のソリトン条件よりもさらに光強度を増加させると高次ソリトンの条件を満たすことが可能になり(特許文献1)、パルス幅縮小効果が働きカー効果を増強することができる。またその際スペクトル幅が拡大することになり、スペクトルの拡大は位相検出において位相揺らぎと同等な効果を示すのでさらに揺らぎの効果が増強される。またカー効果と同様にラマン効果も位相揺らぎの拡大に有効である。
【0025】
図11は光サーキュレータ124とファラデーミラー125を用いてファイバ伝播の部分を往復にした実施例である。ファイバ長を半分にできる点が有利である。また、ファイバ伝播中の偏波状態に係わらずファイバ123を1往復した時点で偏波がちょうど90度回転するので、揺らぎ生成器出力時の偏波を安定させたい場合に有効である。さらに、揺らぎ生成器120内にファイバ干渉計を組み、振幅に対する位相揺らぎの比を大きくして、位相揺らぎの効果を大きくすることも有効である (非特許文献5)。
(実施例9)
実施例8においては光ファイバのカー効果で揺らぎを生成することを示した。揺らぎはその他熱揺らぎを始めとして様々な方法で生成することができる。一方、乱数発生器を用いて算術的に揺らぎ相当分の位相を付加することも可能である。図4のシステムに対してそれを実現した一例を図12に示す。乱数発生器115からの出力を揺らぎに見立てるために多値化し(回路116)、それと誤り訂正符号化された合成列及び種鍵141に基づく基底選択の信号を回路144において加算して変調器130への入力信号とする。この場合、キャリア光そのものの揺らぎは基本的にコヒーレント状態であるが、多くのビットを平均して見ると図2に示すような三日月形の揺らぎになる。信号列1から信号列3を得る手順は実施例2と同様である。
【0026】
また、図13に示すように多値化した乱数を用いてレーザーを直接電流変調して揺らぎに見立てる方法もある。
(実施例10)
位相変調方式の場合、検出器320は平衡型ホモダイン検出器を用いることができる。図14にDPSK方式対応の平衡型ホモダイン検出器を示す。DPSK方式では隣り合うビット間の位相差に信号が重畳されているので、1ビット遅延干渉計321を用いて隣り合うビット間で信号光を干渉させた上で2個の光検出器322及び323により電気信号に変換する。差動回路324は2つの電気信号の差を取るもので、これが出力信号となる。この出力は位相空間上にある信号をある軸方向に射影したものになっている。どの軸方向への射影になるかは1ビット遅延干渉計321の2つの光路の位相差で決まる。図2(c)の場合はq軸の値により信号判定する設定になっており、1ビット遅延干渉計321は射影軸がq軸になるように設定する。PSKの場合は、1ビット遅延干渉計321が不要になるが、参照光源が必要になりその参照光と信号光の干渉信号が2つの光検出器で電気信号に変換される。
【0027】
2値信号の場合は、上記のように平衡型ホモダイン検出器は1組でよいが、4値信号になれば2つの直交位相成分の出力が必要になるので2組の平衡型ホモダイン検出器を用いる。また、さらに多値にした場合でも2次元の位相空間内の座標を決定すればよいので4値信号の場合と同様に2組の平衡型ホモダイン検出器を用意すれば信号検出可能である。
(実施例11)
実施例10までは2値で2基底の位相変調方式を例にとって示してきた。しかしながら、本発明は強度変調方式においても適用可能で、強度変調方式の場合の最も基本的な部分のブロックを示したのが図15である。図16には2値で2基底の場合の強度分布関数の様子を示す。強度変調方式では“0”, “1”の信号強度が基底に依存して変化する。2値で2基底の場合、信号状態は合計4値になる。受信機では選択した基底に依存して判定閾値を変化させる。その結果、正規受信者は揺らぎによって引き起こされる僅かなビット誤り以外は正確に受信できるが、不正受信者は基底を知らないので、図16(d)に示すように4値判定しかできない。4値の信号の確率分布には重なりがあるためにビット誤りが多くなる。
【0028】
検出器320で行っていることが2値判定や領域判定ではなく強度測定であると考えれば、正規受信者と不正受信者が行っていることは同じになり、両者が持つ情報量には差がないことになるが、本発明では揺らぎの大きい光を使うためにビット誤りが存在し、誤り訂正符号を復号化しなければならない。その際、必ず2値判定しなければならず、不正受信者は基底を知らない分だけBERが大きくなる。これにより正規の送受信者間で安全な情報量を確保できる。
【0029】
以上述べたように、強度変調方式においても位相変調方式の場合と同様な原理で情報理論的に安全な通信が可能になる。図15は、図1の位相変調方式の場合のものを強度変調方式の場合に変更したものである。両方式の主な違いは、送信機側では位相変調器130が強度変調器になる。受信機側では基底選択に位相変調器310を用いるのではなく検出器320内において判定閾値を変化させることで行う。その他の手続きは位相変調方式でも強度変調方式でも同じである。また両方式において個別部品の構成は変わるが、実施例10までに述べた位相変調方式の原理的なことは強度変調方式の場合でもすべて適用できる。
【0030】
位相変調方式を主な例に取って実施例を述べた。実施例11で言及したように、本発明は位相変調方式及び強度変調方式の区別無く成立するものである。また、2値、2基底を例にとって実施例を述べたが、さらに多値、多基底の場合でも本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明では揺らぎを用いれば情報理論的に安全な通信が可能になることを示した。計算量的な安全性ではなく情報理論的に保証された安全性は計算機の能力が向上しても安全性が低下することはなく極めてレベルの高い安全性を与える。従って、潜在需要は高いと考えられる。また、本発明は現在の技術レベルでも十分に実用的なシステムを構築できるものであり、産業上の利用の可能性は高い。
付記:
1. 乱数発生器と、誤り訂正符号化する符号器と、レーザー光源と、そのレーザー光源からの出力光に位相揺らぎまたは強度揺らぎを発生させる手段と、変調器を具備する送信機と、
伝送されてきた信号光の位相又は強度を測定又は判定する手段と誤り訂正符号の復号器を具備する受信機と、
送受信機間に設けられた伝送路とを有し、
入力信号列に前記乱数発生器からの出力乱数列を加えた合成列が、前記符号器により符号化され、前記符号はnビット(nは1以上の整数)ごとに区切られて2n値として前記変調器において前記揺らぎを伴ったレーザー光に重畳され、
前記符号重畳の際の送信基底の数はn + 1以上とし、前記送信機側と前記受信機側間であらかじめ乱数からなる種鍵を共有し、1個目の符号の送信基底は前記種鍵の値により決定され、2個目以降の符号の送信基底は前記種鍵及び/又は前記乱数発生器からの前記出力乱数列により決定され、
受信機側では、前記送信側と同様に1個目の符号の受信基底が前記種鍵の値により決定され、2個目以降の符号の受信基底が前記種鍵及び/または1個目以降に伝送されてきた符号を構成する前記乱数発生器からの前記出力乱数列により決定され、その決定された基底を用いて前記伝送路を通して伝送されてきた符号重畳光が受信され、前記復号器により前記合成列に復号化され、復号化された前記合成列は前記乱数列と前記信号列に分離され、前記分離された乱数列は新たに送受信者間で共有された種鍵として前記2個目以降の符号の受信基底決定に利用されるものであり、
前記揺らぎを発生させる手段には光ファイバを具備し、前記レーザー光源からの出力光は高次ソリトン効果によりスペクトル拡大し、それを通して位相揺らぎが生じることを特徴とする光通信システム。
2.乱数発生器と、擬似乱数発生器と、誤り訂正符号化する符号器と、レーザー光源と、そのレーザー光源からの出力光に位相揺らぎまたは強度揺らぎを発生させる手段と、変調器を具備する送信機と、
伝送されてきた信号光の位相または強度を測定又は判定する手段と、誤り訂正符号の復号器と、擬似乱数発生器を具備する受信機と、
送受信機間に設けられた伝送路とを有し、
前記送信機側と前記受信機側間であらかじめ乱数からなる種鍵を共有し、前記種鍵の一部を入力として前記送信機内擬似乱数発生器から出力擬似乱数列を出力させ、入力信号列に前記乱数発生器からの出力乱数列を加えた合成列を前記擬似乱数列により暗号化し、前記暗号化された合成列は前記符号器により符号化され、前記符号はnビット(nは1以上の整数)ごとに区切られて2n値として前記変調器において前記揺らぎを伴ったレーザー光に重畳され、前記符号重畳の際の送信基底の数はn + 1以上とし、1個目の符号の送信基底は前記種鍵の残りの一部により決定され、2個目以降の符号の送信基底は前記種鍵及び/又は前記乱数発生器からの前記出力乱数列により決定され、前記出力乱数列の一部は前記擬似乱数発生器への入力鍵の刷新に利用され、
受信機側では、前記送信側と同様に1個目の符号の受信基底が前記種鍵の値により決定され、2個目以降の符号の受信基底が前記種鍵及び/または1個目以降に伝送されてきた符号を構成する前記乱数発生器からの前記出力乱数列により決定され、その決定された基底を用いて前記伝送路を通して伝送されてきた符号重畳光が受信され、前記復号器により前記暗号化された合成列に復号化され、前記送信側と同様にして前記種鍵の一部を用いて前記受信機内擬似乱数発生器から出力される擬似乱数列により前記暗号化された合成列の暗号が解かれ、暗号化が解かれた前記合成列は前記乱数列と前記信号列に分離され、前記分離された乱数列は新たに送受信者間で共有された種鍵として前記2個目以降の符号の送受信基底決定及び擬似乱数発生器の入力鍵刷新に利用されるものであり、
前記揺らぎを発生させる手段には光ファイバを具備し、前記レーザー光源からの出力光は高次ソリトン効果によりスペクトル拡大し、それを通して位相揺らぎが生じることを特徴とする光通信システム。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の基本的部分に対する構成の一例を示すブロック図。
【図2】位相変調方式における2値信号、2基底の場合の位相空間内の各信号の揺らぎを示す図(a, b)と、正規受信者の受信信号状態(c)及び不正受信者の受信信号状態(d)を示す図。
【図3】q軸を基底として“1”の信号を送信した場合の受信側における位相空間内の各座標値に対する “0”, “1”判定を示す図。“B”は正規受信者を示し、“E”は不正受信者を示す。
【図4】本発明の構成の一例を示すブロック図。
【図5】基底と合成列の関係を示すブロック図。
【図6】本発明の構成の一例を示すブロック図。
【図7】本発明の構成の一例を示すブロック図。
【図8】本発明の構成の一例を示すブロック図。
【図9】本発明の構成の一例を示すブロック図。
【図10】揺らぎ生成器の構成の一例を示すブロック図。
【図11】揺らぎ生成器の構成の一例を示すブロック図。
【図12】本発明の構成の一例を示すブロック図。
【図13】本発明の構成の一例を示すブロック図。
【図14】検出器の構成の一例を示すブロック図。
【図15】強度変調方式における本発明の基本的部分に対する構成の一例を示すブロック図。
【図16】強度変調方式における2値信号、2基底の場合の揺らぎを伴う各信号値の強度分布示す図(a, b)と、正規受信者の受信信号状態(c)及び不正受信者の受信信号状態(d)を示す図。
【符号の説明】
【0033】
1…信号(乱数信号)、3…信号(乱数信号)、11…信号、31…信号、100…送信機、110…レーザー光源、115…乱数発生器、116…多値化回路、120…揺らぎ生成器、121…光アンプ、122…帯域透過フィルタ、123…光ファイバ、124…サーキュレータ、125…ファラデーミラー、130…変調器、140…乱数発生器、141…種鍵、142…合成器、143…符号器、144…加算回路、150…擬似乱数発生器、151…暗号器、
201…光伝送路、202…光伝送路、
300…受信機、310…変調器、320…検出器、321…1ビット遅延干渉計、322…光検出器、323…光検出器、324…差動出力回路、330…復号器、331…分離器、332…乱数、333…種鍵、340…擬似乱数発生器、341…復号器、
1000…送信装置、1110…乱数発生器、1120…ビット数縮小演算器、1121…暗号鍵、1130…光送信機、
3000…受信装置、3120…ビット数縮小演算器、3121…暗号鍵、3130…光受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乱数発生器と、誤り訂正符号化する符号器と、レーザー光源と、そのレーザー光源からの出力光に位相揺らぎまたは強度揺らぎを発生させる手段と、変調器を具備する送信機と、
伝送されてきた信号光の位相又は強度を測定又は判定
する手段と誤り訂正符号の復号器を具備する受信機と、
送受信機間に設けられた伝送路とを有し、
入力信号列に前記乱数発生器からの出力乱数列を加えた合成列が、前記符号器により符号化され、前記符号はnビット(nは1以上の整数)ごとに区切られて2n値として前記変調器において前記揺らぎを伴ったレーザー光に重畳され、
前記符号重畳の際の送信基底の数はn + 1以上とし、前記送信機側と前記受信機側間であらかじめ乱数からなる種鍵を共有し、1個目の符号の送信基底は前記種鍵の値により決定され、2個目以降の符号の送信基底は前記種鍵及び/又は前記乱数発生器からの前記出力乱数列により決定され、
受信機側では、1個目の符号の受信基底が前記種鍵の値により決定され、2個目以降の符号の受信基底が前記種鍵及び/または1個目以降に伝送されてきた符号を構成する前記乱数発生器からの前記出力乱数列により決定され、その決定された基底を用いて前記伝送路を通して伝送されてきた符号重畳光が受信され、前記復号器により前記合成列に復号化され、復号化された前記合成列は前記乱数列と前記信号列に分離され、前記分離された乱数列は新たに送受信者間で共有された種鍵として前記2個目以降の符号の受信基底決定に利用されることを特徴とする光通信システム。
【請求項2】
前記乱数列と前記入力信号列から形成された前記合成列は並び替えが行われてから前記誤り訂正符号化されることを特徴とする請求項1記載の光通信システム。
【請求項3】
前記合成列が形成される前に入力信号列が暗号化されていることを特徴とする請求項1記載の光通信システム。
【請求項4】
前記誤り訂正符号化する前に前記合成列が暗号化されていることを特徴とする請求項1記載の光通信システム。
【請求項5】
前記誤り訂正符号はあるビット誤り率(BER)を境に低BER側は誤り訂正可能であるが高BER側は誤り訂正不可に設定させたものとし、受信機側のBERが前記低BER側になるように誤り訂正符号が設定されていることを特徴とする請求項1記載の光通信システム。
【請求項6】
前記入力信号が乱数信号であり、
送受信されたその乱数信号からプライバシーアンプによりその乱数信号のビット数を減らし、その減らされたビット数の乱数信号を暗号鍵として暗号通信することを特徴とする請求項1記載の光通信システム。
【請求項7】
前記揺らぎを発生させる手段を通して出力されたレーザー光はアンチスクイズド光であることを特徴とする請求項1記載の光通信システム。
【請求項8】
前記揺らぎを発生させる手段には光ファイバを具備し、カー効果により位相揺らぎを発生させることを特徴とする請求項1記載の光通信システム。
【請求項9】
前記揺らぎを発生させる手段には光ファイバを具備し、ラマン効果により位相揺らぎを発生させることを特徴とする請求項1記載の光通信システム。
【請求項10】
前記揺らぎを発生させる手段は、第2の乱数発生器を具備し、前記第2の乱数発生器からの出力乱数列は多値化され、前記レーザー光源あるいは前記変調器に入力されることを特徴とする請求項1記載の光通信システム。
【請求項11】
前記位相測定または判定をする手段は1組あるいは2組のホモダイン検出器からなることを特徴とする請求項1記載の光通信システム。
【請求項12】
前記位相測定または判定をする手段は2個の光検出器からなる平衡型検出器を1組又は2組で構成することを特徴とする請求項1記載の光通信システム。
【請求項13】
乱数発生器と、擬似乱数発生器と、誤り訂正符号化する符号器と、レーザー光源と、そのレーザー光源からの出力光に位相揺らぎまたは強度揺らぎを発生させる手段と、変調器を具備する送信機と、
伝送されてきた信号光の位相または強度を測定又は判定する手段と、誤り訂正符号の復号器と、擬似乱数発生器を具備する受信機と、
送受信機間に設けられた伝送路とを有し、
前記送信機側と前記受信機側間であらかじめ乱数からなる種鍵を共有し、前記種鍵の一部を入力として前記送信機内擬似乱数発生器から出力擬似乱数列を出力させ、入力信号列に前記乱数発生器からの出力乱数列を加えた合成列を前記擬似乱数列により暗号化し、前記暗号化された合成列は前記符号器により符号化され、前記符号はnビット(nは1以上の整数)ごとに区切られて2n値として前記変調器において前記揺らぎを伴ったレーザー光に重畳され、前記符号重畳の際の送信基底の数はn + 1以上とし、1個目の符号の送信基底は前記種鍵の残りの一部により決定され、2個目以降の符号の送信基底は前記種鍵及び/又は前記乱数発生器からの前記出力乱数列により決定され、前記出力乱数列の一部は前記擬似乱数発生器への入力鍵の刷新に利用され、
受信機側では、1個目の符号の受信基底が前記種鍵の値により決定され、2個目以降の符号の受信基底が前記種鍵及び/または1個目以降に伝送されてきた符号を構成する前記乱数発生器からの前記出力乱数列により決定され、その決定された基底を用いて前記伝送路を通して伝送されてきた符号重畳光が受信され、前記復号器により前記暗号化された合成列に復号化され、前記種鍵の一部を用いて前記受信機内擬似乱数発生器から出力される擬似乱数列により前記暗号化された合成列の暗号が解かれ、暗号化が解かれた前記合成列は前記乱数列と前記信号列に分離され、前記分離された乱数列は新たに送受信者間で共有された種鍵として前記2個目以降の符号の受信基底決定及び擬似乱数発生器の入力鍵刷新に利用されることを特徴とする光通信システム。
【請求項14】
前記誤り訂正符号はあるビット誤り率(BER)を境に低BER側は誤り訂正可能であるが高BER側は誤り訂正不可に設定させたものとし、受信機側のBERが前記低BER側になるように誤り訂正符号が設定されていることを特徴とする請求項13記載の光通信システム。
【請求項15】
前記揺らぎを発生させる手段を通して出力されたレーザー光はアンチスクイズド光であることを特徴とする請求項13記載の光通信システム。
【請求項16】
前記揺らぎを発生させる手段には光ファイバを具備し、カー効果により位相揺らぎを発生させることを特徴とする請求項13記載の光通信システム。
【請求項17】
前記揺らぎを発生させる手段には光ファイバを具備し、ラマン効果により位相揺らぎを発生させることを特徴とする請求項13記載の光通信システム。
【請求項18】
前記揺らぎを発生させる手段は、第2の乱数発生器を具備し、前記第2の乱数発生器からの出力乱数列は多値化され、前記レーザー光源あるいは前記変調器に入力されることを特徴とする請求項13記載の光通信システム。
【請求項19】
前記位相測定または判定をする手段は1組あるいは2組のホモダイン検出器からなることを特徴とする請求項13記載の光通信システム。
【請求項20】
前記位相測定または判定をする手段は2個の光検出器からなる平衡型検出器を1組あるいは2組で構成することを特徴とする請求項13記載の光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−35072(P2010−35072A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197197(P2008−197197)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】