説明

光通信網、ノード装置および経路故障救済方法

【課題】 光通信網、ノード装置および経路故障救済方法において、迅速な切戻しや不要な切替発生の防止を可能とする。
【解決手段】 予備経路の各リンクあるいは各リンクとノードの正常性を監視し、前記予備経路が使用不可となった場合には、部分的なパス区間の両端のノードのうち少なくともいずれか一方を現用パス上の別のノードへ変更することで、部分的なパス区間を変更して別の予備経路を設定し、且つ異常情報を累積的に検出可能な障害監視区間を前記変更後の部分的な現用パス区間へ変更する際に、障害監視区間の警報発生を抑止して変更完了後に抑止を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信網、ノード装置および経路故障救済方法に係わり、性能監視や警報転送を故障救済に利用する光通信網、ノード装置および経路故障救済方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットに代表されるデータトラフィックの急増により、通信ネットワークの伝送容量の大容量化が進んでいる。伝送トラヒックの光信号化が進められている現在では、時分割多重技術または光波長多重技術を用いた大容量化が図られている。1チャネルあたり毎秒10ギガビットの伝送装置が実用化されている。また、1本のファイバで数チャネルから数十チャネル分を波長多重し、光増幅器および再生中継器を用いて数百kmを超える長距離伝送が可能なポイント・ツー・ポイント型の波長多重伝送装置も実用化されている。
【0003】
一方、今後の需要増とさらなる経済化、サービスの多様化に対応するため、通信ノードを環状に接続したリング型光ネットワーク、より接続度を増すために網目状に接続したメッシュ型光ネットワークが検討されている。こうした光ネットワークでは、各ノード装置を遠隔一元管理する監視制御システムとともに用いることで、回線の始点から終点までのエンド・ツー・エンドのパス管理の容易化およびパス設定の高速化が期待できる。また、各ノード装置の監視制御部が相互連携することで、回線の始点から終点までのエンド・ツー・エンドのパス管理の容易化およびパス設定の高速化が期待できる。さらに、光ネットワークをメッシュ型とすることで、メッシュ網内の予備容量を必要なときに必要な回線が使うように選択できるので、予備系を複数の現用パス共有化でき、網全体を経済的に実現できると考えられている。
【0004】
上述のようなメッシュ型光ネットワークを実現するため、入出力インタフェースとしてSTM−64/OC−192や10GbE等の光信号を収容でき、経路切替や予備装置への切替を行なう光信号切替装置および光クロスコネクト装置の開発が進められている。光クロスコネクト装置は、あるノードに接続されている伝送路同士の接続関係あるいは、伝送路とユーザ装置の接続関係を、自律分散制御的または集中・遠隔制御的に切り替えることができる。光入出力は光であるが信号処理を電気信号で行なう、いわゆるO-E-O(光-電子-光)型光クロスコネクト装置では伝送単位、例えばSTM−64あるいはOC−192より細かな例えばSTS−1単位で電子回路により処理するので、効率的な信号切替が可能である。
【0005】
一方、光信号を電気信号に変換せずに光スイッチを用いて切替を行なう、いわゆるO-O-O型の光クロスコネクト装置は、ノード処理情報の大容量化に対して、電子回路では実現困難な大容量情報の処理を行なうことができると期待されている。
【0006】
上述のメッシュ型光ネットワークにおける回線救済方式の例として、光パスを複数のノードと少なくとも一つのリンクで構成される部分パスに分割して、光クロスコネクト装置を用いて効率的な回線救済を行なう方法が特許文献文献1に記載されている。
【0007】
装置監視制御部が互いに通信してネットワークの状態情報交換や経路計算を行なう分散制御方式として、ネットワーク監視制御装置を省略あるいは簡略化することも可能である。このような装置間通信制御技術としては、インターネットエンジニアリングタスクフォース(The Internet Engineering Task Force;IETF)で非特許文献1ないし非特許文献3に示したRFCに規定されているいわゆるGMPLS(Generalized MultiProtocol Label Switching)のシグナリングプロトコルを利用することが可能である。
【0008】
非特許文献4には、誤り訂正符号付きの信号について、複数のノード間に渡ってビットインターリーブトパリティ(Bit Interleaved Parity;BIP)演算により累積的に性能監視を行なうことが可能なタンデムコネクションモニタリング(Tandem Connection Monitoring;TCM)の記載がある。
【0009】
【特許文献1】特開2003−258851号公報
【非特許文献1】L. Berger、”Generalized Multi-Protocol Label switchin (GMPLS) Signaling Functional Description”、[online]、2003年1月、IETF、[平成17年5月17日検索]、インターネット<URL:http://www.ietf.org/rfc/rfc3471.txt?number=3471>
【非特許文献2】P. Ashwood-Smith、外1名、”Generalized Multi-Protocol Label switchin (GMPLS) Signaling Constraint-based Routed Label Distribution Protocol (CR-LDP) Extensions”、[online]、2003年1月、IETF、[平成17年5月17日検索]、インターネット<URL:http://www.ietf.org/rfc/rfc3472.txt?number=3472>
【非特許文献3】L. Berger、”Generalized Multi-Protocol Label switchin (GMPLS) Signaling Resource ReserVation Protocol-Traffic Engineering (RSVP-TE) Extensions”、[online]、2003年1月、IETF、[平成17年5月17日検索]、インターネット<URL:http://www.ietf.org/rfc/rfc3473.txt?number=3473>
【非特許文献4】ITU、”Interfaces for the Optical Transport Network (OTN)”、ITU-T、G.709/Y.1331、2003年3月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ケーブル断以外の障害、例えば、(1)伝送路損失増加、光増幅器雑音、伝送路ファイバ中の非線形効果による光信号対雑音比の劣化、(2)伝送路ファイバの波長分散または偏波分散による波形劣化によりビット誤りとして観測される信号品質劣化、(3)切替ノード故障により、メッシュ型光ネットワークで予備経路への切替を実施しようとした場合、次のような課題がある。即ち、特許文献1には、機能的には予備経路への切替機能を持つが当該ノードと接続された予備資源が他の現用パスと共有され、且つ他の現用パスの障害復旧のために既に利用され(予備資源の枯渇)、予備経路に障害が発生している(予備経路異常)場合は、別の切替ノードを指定して別の予備経路で復旧するよう予備経路の再計算し、障害検出区間を再設定することが記載されている。しかし、具体的な障害検出区間再設定前後の手順については、明示されていなかった。
【0011】
ここで、現用パスのある区間で障害が発生し、複数の現用パスまたは現用部分パスと共有された予備経路に切り替えた場合を考えよう。この場合、障害が発生しなかった現用パスあるいは現用部分パスでの予備経路を再計算または再検索する処理を低減するには、前記障害は発生した現用パスの区間が正常になった場合は、予備経路から元の経路へ戻す、いわゆる切戻しが有効である。しかし、特許文献1では、切戻しまで考慮されておらず、障害が発生した経路の正常性復旧確認が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、切替区間毎に障害監視区間を設け、切替区間が予定する予備経路に予備資源の枯渇や予備経路の異常があった際、切替区間、予備経路および障害監視区間を変更する。また、障害監視区間変更時に元の障害監視区間の受信側の警報発生を抑止した後に送信側の設定を行ない且つ変更後の障害監視区間の送信側の設定を行った後に受信側の設定を行なう。これらが完了した後に変更後の障害監視区間の監視の抑止を解除する。また障害発生を契機に予備経路に切替えた場合に、予備経路の障害監視区間を設定するとともに、障害が発生した切替区間の障害監視区間も維持する。これによって、当該切替区間が正常に復旧したことを迅速に確認でき、切戻しの判断を容易とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光通信網、ノード装置および経路故障救済方法によれば、障害の発生した部分的な現用パスの正常状態への復旧が確認できるので、迅速で確実な切戻しを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いて図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、図1を用いて、回線救済方法を適用する光ネットワークを説明する。ここで、図1は光ネットワークのブロック図である。図1において、光ネットワーク10は、ノード20と、ノード間を接続する伝送路30と、ネットワーク監視制御装置40と、ネットワーク監視制御装置とノード間の監視制御信号を授受するための監視制御用ネットワーク50とノード間に設置される中継装置60で構成される。
【0015】
ネットワーク監視制御装置40は、ネットワークの構成管理、障害管理、帯域管理、性能管理、セキュリティ管理を実施する。ネットワーク監視制御装置40は、任意のノード間に需要に応じた通信帯域を確保するために、構成管理情報や障害管理情報を参照して該当するノードの利用可能なIF部を必要数分と、障害の発生していない経路を選択し、該当するノードを含む複数のノードのスイッチ部を制御して通信路またはパスを設定する。ノード20間には、伝送距離を延長するための再生中継または線形中継を行なう中継装置60が設置されている。中継装置60は、伝送距離に応じて、適切な距離間隔毎に設置されるので、ノード間に複数となることもある。中継装置60のうち、再生中継器は、伝送路を伝播してきた光信号を一旦電気信号へ変換し、波形整形やディジタル的な品質監視、即ちBIPによるビット誤り監視等を行なう。一方、線形中継器は、エルビウム添加ファイバなどを利用した光ファイバ増幅器により、波長多重信号の一括増幅を行なう。線形中継器は、光半導体増幅器でも良い。
【0016】
ここで中継装置60は、伝送距離を延伸できる機能があれば、ファイバや半導体中の非線形効果などを利用することで光信号を電気信号に変換することなく波形整形や信号対雑音比の改善効果のあるいわゆる光2R(Reshaping, Retiming)または光3R(Reshaping, Retiming, Regeneration)中継装置でも良い。中継装置60は、複数ある回線のうち、所望の回線のみを分岐・挿入する構成としても良い。特に光信号を電気信号に変換せずに上述の分岐・挿入を行なう装置は、OADM(Optical Add Drop Multiplexer)と呼ばれる。
ネットワーク監視制御装置40は、1台あるいは冗長化されたサーバによる集中制御方式でも良い。
【0017】
上述の各ノードの詳細な構成について図2を用いて説明する。ここで、図2はノードの機能ブロック図である。ノード20は、装置監視制御部21と、主信号の切替を行なうスイッチ部22と、オーバーヘッド処理およびBIPを用いた主信号品質監視と伝送路へ出力される波長を変換する複数のIF部23と、複数のIF部の出力を波長多重して伝送路ファイバへ送出する複数のWDM部24で構成される。IF部23では、伝送距離拡大や、ファイバの季節変動や物理的外力による損失変動や部品の経年劣化など他の要因による品質劣化を補償するために、誤り訂正符号処理を行なう。IF部23は、STM(Synchronous Transport Module)−64(10Gbit/s)をインタフェースとするクライアント装置100からの信号を収容し、非特許文献4で規定されるOTU(Optical Transport Unit)−2(10.7Gbit/s)で、ITU−Tで規定された波長を持つ信号へ変換してWDM部へ出力する。また、逆に、WDM部からの信号を上記の逆変換を行なう機能を持つ。またIF部23は、あるノードで一方の伝送路から別の伝送路へ転送される信号に対しては、OTU−2の信号を再生中継する機能を持つ。
【0018】
クライアント信号としては、他にGbE(Gigabit Ethernet(登録商標))(1Gbit/s)、10GbE(10.3Gbit/s)を収容することも可能であり、その場合、WDM部とのインタフェース速度は、これらに誤り訂正符号分の比率、7%程度を付加したものになる。なお、誤り訂正符号の比率は、必要な訂正能力に応じて、増加することもある。
【0019】
WDM部24は、IF部23からの出力を波長多重し、必要な場合は増幅して伝送路ファイバへ送出する。また、WDM部24は、伝送路ファイバからの波長多重信号について分離してIF部23へ送出する。WDM部24は、必要に応じて、波長分離の前もしくは後でIF部23への送出の前に増幅し、主信号光に監視制御用信号(監視光)を波長多重・分離する、等の機能を持つ。
【0020】
WDM部24が伝送路ファイバ送出する際のパワーは、ノード間の損失や光増幅器の雑音指数による光信号対雑音比(Optical Signal-to-Noise Ratio;OSNR)およびファイバ中の非線形効果による波形劣化や雑音増加を考慮して決められる。非線形効果としては、自己位相変調(Self Phase Modulation;SPM)や相互位相変調(Cross Phase Modulation;XPM)や四波混合(Four Wave Mixing;FWM)といったものが知られ、波形劣化量は、波長数、ファイバの分散、非線形定数に依存する。ファイバの分散および非線形定数はファイバがシングルモード(SMF)か分散シフトファイバ(DSF)かによっても異なる。同じDSFであっても、個体差も存在する。IF部23への送出前の増幅器の出力パワーは、受信器のダイナミックレンジや受信感度を考慮して決められる。WDM部24には、ファイバの波長分散による波形劣化を相殺する分散補償器を組み込んでも良い。分散補償器としては、伝送路ファイバと正負の符号が異なる分散補償ファイバ、ファイバ回折格子、光学レンズ、共振器など利用したものが市販されている。
【0021】
装置監視制御部21は、ネットワーク監視制御装置およびノード20のスイッチ部22、IF部23、WDM部24と通信を行なう通信制御部211と、CPU212と、構成管理情報格納部213と、障害管理情報格納部214と、性能管理情報格納部215と、切替管理情報格納部216とから構成される。
【0022】
スイッチ部22は、ノード20の装置監視制御部21、IF部23、WDM部24と通信を行なう通信制御部221と、CPU部222と、切替状態部223、性能情報部224と、障害情報部225と、駆動制御部226と、スイッチ部227とから構成される。
なお、WDM部24は、波長多重部と波長分離部とに分かれていても良い。また、IF部23は、入力IFと出力IFとに分かれていても良い。
【0023】
図3を用いて、光ネットワークで回線救済方法を適用する際に光パスを設定する手順を説明する。ここで、図3はパス設定のフロー図である。ネットワーク監視制御装置40において、まず、所望のノード間に対して、現用経路を検索し、複数の候補があればその中からオペレータまたは所定の規則にしたがってネットワーク監視制御装置が選択する(S301)。現用経路が決定されると、次にネットワーク監視制御装置が予備経路の検索・設定を行ない(S302)、予備経路に切り替えるノード間に障害監視区間を設定する(S303)。次に、現用経路と予備経路双方の監視制御を実行する(S304)。
【0024】
予備経路の設定方法について、特許文献1に記載されたように、現用パスを複数の部分的な現用パス区間に分割し、その部分的パス区間毎に予備経路を割り当てることで効率的な予備資源の活用と迅速な回線救済が可能となる。効率的でシンプルな経路設定を行なうには、例えば、パスを形成するノード数が最小となるように現用経路を選択し、迂回経路である予備経路は複数の現用パスで共有し、さらに切戻しを行なうことが有効である。
【0025】
切替ノード間の障害監視の方法として、TCMを用いることができる。TCMを用いる場合、IF部23で光/電気(O/E)変換した後の電子回路による処理で上述のBIPによるビット誤り数を算出する。また、IF部23に予め組み込まれるか、あるいはネットワーク監視制御装置から指示された閾値と、前述のビット誤り数を比較する。IF部23は、単位時間あたりの誤り数が閾値を超えた場合に障害と判定して、警報を装置監視制御部21経由にてネットワーク監視装置40に発出する。ネットワーク監視装置40は、これを切替のトリガとして、予備経路へ切替えて回線救済を行なう。
【0026】
ここで、予備経路への切替は、各ノードの装置監視制御部21が、予めネットワーク監視制御装置40からの予備経路計算に基く切替情報を格納し、上述の警報発生をトリガにノード間で主信号のオーバーヘッドを用いたシグナリングで予備経路への切替を行ない、その結果をネットワーク監視制御装置40へ転送することにしても良い。パスの種別については、双方向でも良いし、片方向でも良い。双方向の場合は、方向毎に別ファイバを用いても良いし、一心で双方向伝送を行って良い。
【0027】
図4ないし図7により、回線救済方法の手順を説明する。ここで、図4はネットワーク監視装置が実施するパス監視を説明するフロー図である。図4において、ネットワーク監視装置40は、正常時では、現用経路上の監視区間の正常判定(S401)、予備経路上の正常判定(S402)は、共にYesであり、監視停止指示が無い限り(S403)、ステップ401とステップ403およびステップ402とステップ403を繰り返す。一方、ステップ401でNo(現用経路の監視区間で異常)となると、予備経路に切り替える(S404)。
【0028】
この切替によって、現用経路(当初の予備経路)は、正常となるが、予備経路(当初の現用経路)は異常となるので、ステップ402がNoとなり、予備経路と切替ノードの変更(S405)と、性能監視区間の変更/追加(S406)を実施する。ここで、予備経路は複数の部分的パス区間で共用化されることを許容するので、予備経路上のノードのスイッチは特定の予備経路用の設定がされているとは限らない。このため、予備経路の監視は、隣接するノード間のスイッチ設定を含まないリンク毎に行なう。また、一時的にスイッチ部を制御して予備経路上の切替ノード間の複数のリンクとノード全てを通して行なうことも可能である。
【0029】
次に予備経路に異常が発生した場合について図5を用いて説明する。ここで図5は現用経路と予備経路を説明するブロック図である。図5において、当初、現用系部分パス区間80−1(図5(a)B−C−D)に対して、適切な予備経路90−1(図5(a)B−H−I−J−D)が設定されている。図5(b)において、ネットワーク監視制御装置40は、現用系が正常である間に予備経路での異常(J−D間)が検出する。ネットワーク監視制御装置40は、正常系の異常時に迅速に回線救済を行なうために、別の予備経路を準備する。具体的には、ネットワーク監視制御装置40により最新の構成情報、障害情報、性能情報等に基いて予備経路の再検索を行ない、別の予備経路90−3(B−H−I−J−K−E)を設定する。ネットワーク監視制御装置40は、切替ノードを決定する(ノードBとノードE)。ネットワーク監視制御装置40は、切替ノードの変更に伴い、障害監視区間を変更する(図5(a)のB−C−Dから図5(b)のB−C−D−Eへ)。
【0030】
障害監視区間の変更に際して、ネットワーク監視制御装置40は、まず、双方向信号のうち、図5のノードEからB方向への信号について、TCMバイトの受信側のノードBにて警報抑止処理を行なう。ネットワーク監視制御装置40は、次に、送信側ノードをEからDに変更してから、受信側ノードの警報抑止を解除し、新しい障害監視区間の監視を開始する。これにより、障害監視区間の変更時の誤った警報発出や、不要な切替およびそれに伴う現用回線の瞬断を防止できる。ここでは、切替ノードがノードBとDの場合に、ノードJ−D間に障害が発生した場合について説明したが、同じノードJ−D間を予備経路として共有する切替ノードD−Fの場合も同様である。この場合、切り替えノードをD−FからノードE−Fへ変更するとともに、障害監視区間もD−FからE−Fへ変更する。
【0031】
なお、障害監視区間における監視は、現用経路では光パスを用いて切替ノード間で行なう。また予備経路では、障害発生前にノードでの接続設定をしない場合は、予備経路を形成するノード間のリンク毎の誤り検出により行なう。また、予備経路上もノードでの接続設定をおこなう場合は、切替ノード間での誤り検出で監視を行っても良い。ネットワーク監視制御装置40は、これらの装置から監視情報を収集する。ネットワーク監視制御装置40は、予備経路を形成する複数のリンクの監視情報を累積して、予備経路の障害監視区間の監視を行なう。
【0032】
次に現用系部分パス区間に異常が検出された場合について、図6を用いて説明する。ここで、図6はパスの張替えを説明するブロック図である。図6(a)に示す、光ネットワーク10−2において、ネットワーク監視制御装置40は、障害が検出された旧現用系部分パス区間の障害監視区間70−1(B−C−D)の設定は維持しつつ、最新の予備経路への切替を実行し、切替後の経路(旧予備経路)にも障害監視区間70−2(B−H−I−J−D)を設定する。なお、障害監視区間70−1(B−C−D)には、復旧確認用の信号を流しておく。復旧確認用の信号は,専用のビット列を用いても良いし、通常用いられる下流への警報通知信号で代用しても良い。これにより、旧現用系パス区間が正常に復帰したことをビット誤り数に基き、リアルタイムに判断できるので、迅速で確実な切戻しが実行可能となる。切戻しの契機としては、ネットワーク監視制御装置40が、正常復帰確認を検出して、それをオペレータに可視化して知らせることでオペレータが判断して切戻し操作を実行しても良いし、オペレータが事前に適切な条件をネットワーク監視制御装置40および装置監視制御部21に設定しておき、正常性復帰確認後に自動で実行しても良い。
【0033】
図6(b)を参照して、図6(a)でパス切替後のノードJ−D間で障害が検出された場合には、最新の予備経路への切替を実行し、旧現用系部分パス区間の障害監視区間70−1(B−C−D)を障害監視区間70−3(B−C−D−E)に変更し、切替後の経路にも障害監視区間70−4(B−H−I−J−K−E)を設定する。なお、障害監視区間70−3(B−C−D−E)には、復旧確認用の信号を流しておく。これにより、旧現用系パス区間が正常に復帰したことをビット誤り数に基き、リアルタイムに判断できるので、迅速で確実な切戻しが実行可能となる。
【0034】
なお、図5および図6においてネットワーク監視制御装置が、予備経路への切替、旧現用経路への切り戻しを判断しているが、各ノードの装置監視制御部が判断しても良いことは、上述した通りである。
【0035】
図7を参照して、ネットワーク監視制御装置が保有するパステーブルを説明する。ここで、図7Aは図5の予備経路異常によるパステーブルの変更を説明する図である。また、図7Bは図6(a)の現用経路異常によるパステーブルの変更を説明する図である。
【0036】
図7Aにおいて、パステーブル200Aは、パス情報210と、部分パス情報220と、予備バス情報230とから構成される。また、パス情報200は、パスID211と、始点ノード212と、終点ノード213とから構成される。パスID「00000001」のパスは、ノードAとノードFとの間のパスである。このパスは、複数の部分パスで構成される。即ち、部分パス情報220は、部分パスID221と、始点ノード222と、終点ノード223と、中継ノード224とを含む。これらのノードには部分パスの複数のリンクを確定するように、各ノードが順番に記載される。部分パス情報220は、さらに性能監視225と、部分パス状態226と、予備パス数227とを含む。部分パス状態226に記載される状態は、「アクティブ」「スタンバイ」「フォルト」のいずれかである。部分パスがアクティブのとき、その部分パスは現用系として選択されている。部分パスがフォルトのとき、その部分パスには障害がある。部分パスがスタンバイのとき、その部分パスは障害がないが現用系としては選択されていない。性能監視224がONのとき、部分パス全体としての性能評価を実施している。したがって、部分パス状態がアクティブのとき、ONである。予備パス数227は、その部分パスに対する予備パスの数を記入する。なお、ここでは簡単のため全て1とした。
【0037】
予備パス情報230は、予備パスID231と、中継ノード232と、優先順位233と、性能監視234と、予備パス状態235とから構成される。予備パスの数は全て1なので、優先順位233も全て1である。予備パス状態235の状態は、「アクティブ」「スタンバイ」「フォルト」「デアクティブ」のいずれかである。「アクティブ」「スタンバイ」「フォルト」は部分パスの説明での記載と同様である。「デアクティブ」は予備パスに対応する部分パスが「スタンバイ」状態のときの、予備パスの状態である。
【0038】
図7Aにおいて、「→」の左の状態が図5(a)の性能監視区間を選択している状態である。一方、「→」の右の状態が図5(b)の性能監視区間を選択している状態である。図5(b)に示すノードJ−D間で障害が発生すると、図7AのノードJ−Dを使用する予備パスである予備パスID「s0002.001」と「s0003.001」の予備パス状態235がフォルトになる。この結果、予備パスを失った部分パスID「s0002」と「s0003」が、アクティブからスタンバイとなる。この代わりに、部分パスID「s0004」と「s0005」が、スタンバイからアクティブとなる。対応する予備パスID「s0004.001」と「s0005.001」の予備パス状態235がデアクティブからスタンバイになる。なお、部分パス情報220の性能監視225は、部分パス状態226に応じて、ONとOFFとが切り替わる。
【0039】
図7Bにおいて、「→」の左の状態が図6(a)現用系に障害が発生する前のパステーブルある。一方、「→」の右の状態が図6(a)障害が発生した後のパステーブルある。図6(a)に示すノードB−C間で障害が発生すると、図7BのノードB−Cを使用する部分パスID「s0002」の部分パス状態226がアクティブからフォルトになる。これに伴って対応する予備パスID「s0002.001」の予備パス状態225はスタンバイからアクティブに変わり、性能監視225もOFFからONに変わる。しかし、部分パスID「s0002」の性能監視225はOFFに変わるのではなく、ONを継続する。このようにONを継続できるのは、予備経路の各ノードのスイッチ状態が不定であるのに対し、現用経路の中間ノードのスイッチ状態は保持されているためである。即ち、始点ノードと終点ノードのスイッチ設定は変更されても、始点ノードと終点ノードとの接続は維持されているからである。このとき始点ノードBおよび終点ノードDは復旧確認用の信号を障害経路に送り、ノードB−D間の性能監視を継続する。本実施例に拠れば、性能監視で復旧を検出できるので、最もシンプルな構成である旧現用系への切り戻した容易に行なえる。
【0040】
回線救済方法は上述の実施例に限定されるものではない。上述の実施例では、各ノードへの障害監視区間の設定、予備経路の切り替え指示や、予備経路計算についてネットワーク監視制御装置が行なう例を示したが、図1の説明で記述したような装置監視制御部の相互通信による情報交換に基いて、障害監視区間の設定や予備経路の計算や予備経路への切替指示を行った場合でも同様であることは明白である。予備経路の計算には、IETFで議論されているOSPF(Open Shortest Path First)と呼ばれるルーティングプロトコルをベースにしても良い。
【0041】
障害監視方法について、上述の実施例では、非特許文献4のTCMを用いる場合について述べたが、これ以外に、SDHのセクションオーバヘッドの監視用バイト(B2バイト)や、OTNのOTUkセクションモニタによりリンク毎の性能監視情報をネットワーク監視制御装置が収集し、所定のノード間における信号品質を演算し、閾値と比較して障害発生を判断しても良い。
【0042】
図5および図6のネットワーク構成は、ノードが3方路以上の伝送路で接続された光ネットワークであれば、同様の効果が期待できる。なお、終端ノードでは、方路数は2方路でも構わない。
本実施例によれば、誤った警報や不要な切替を発生させずに障害監視区間を変更できるので、柔軟な予備経路の設定による高信頼な光ネットワークを提供できる。
【0043】
予備経路については、異常が発生してから計算しても良いし、周期的あるいは直前に収集した情報を元に異常発生前に計算しておき、ネットワーク監視制御装置に格納しておいても良いし、装置監視制御部に配信し、例えば図2に示した切替監視情報格納部に格納しておいても良い。後者のようにすることで、障害発生後の回線救済の処理時間あるいは回線救済のための予備経路準備時間を短縮できるので、ネットワークの信頼性を向上できる。
【0044】
予備経路への切替のトリガとして、現用系部分パス区間の障害検出を例としたが、支障移転や予防保全等の目的でオペレータが予備経路への切替を起動しても良い。予備経路や障害監視区間の再設定のトリガとして、予定していた予備経路の障害検出の例を示したが、本実施例の効果はこの限りではない。別の現用系部分パス区間や別の回線救済方法で保護された現用パスの救済のために既に使用されたために、ある現用系部分パスの救済のために予定していた切替ノードでの切替ができないことをネットワーク監視制御装置あるいは装置監視制御装置が構成管理情報の更新により検知して、予備経路や切替ノードの組み合わせを変更する場合でも、本実施例の効果は同様である。
【0045】
図1あるいは図2のスイッチ部としては、電気スイッチでも良い。また、光スイッチとして光導波路可動型光スイッチ、光導波路非可動型光スイッチ、マイクロマシン型光スイッチ等が使用できる。
なお、本出願において現用経路とは、現在使用中の経路の場合と、絶対的な経路の名称の場合とがある。しかし、その使い分けは、当業者には容易に理解できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】光ネットワークのブロック図である。
【図2】ノードの機能ブロック図である。
【図3】パス設定のフロー図である。
【図4】パス監視を説明するフロー図である。
【図5】現用経路と予備経路を説明するブロック図である。
【図6】パスの張替えを説明するブロック図である。
【図7A】図5の予備経路異常によるパステーブルの変更を説明する図である。
【図7B】図6(a)の現用経路異常のよるパステーブルの変更を説明する図である。
【符号の説明】
【0047】
10…光ネットワーク、20…ノード装置、21…装置監視制御部、22…、スイッチ部、23…インタフェース部、24…WDM部、30…伝送路ファイバ、40…ネットワーク監視制御装置、50…監視制御用ネットワーク、60…中継器、70…障害監視区間、80…部分的パス、90…予備経路、100…クライアント装置、200…パステーブル、210…パス情報、220…部分パス情報、230…予備パス情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切替部を備え2方路の通信経路と接続された第1のノードと、切替部を備え2方路の通信経路と接続され、前記第1のノードと通信を行なう第2のノードとからなる光通信網であって、
性能監視された現用経路を用いて通信を行なう前記第1のノードと前記第2のノードとが、前記現用経路の障害を検出したとき、前記第1のノードおよび前記第2のノードは、通信経路を予備経路に切り替え、前記予備経路の性能監視を開始し、且つ前記現用経路の性能監視を継続することを特徴とする光通信網。
【請求項2】
請求項1の記載の光通信網であって、
前記予備経路を用いて通信を行なう前記第1のノードおよび前記第2のノードが、前記現用経路の復旧を検出したとき、前記第1のノードと前記第2のノードとは、通信経路を前記現用経路に切り戻すことを特徴とする光通信網。
【請求項3】
切替部を備え2方路の通信経路と接続された第1のノードと、切替部を備え2方路の通信経路と接続され前記第1のノードと通信を行なう第2のノードと、切替部を備え4方路の通信経路と接続され前記第1のノードと前記第2のノードとの通信を中継する第3のノードと、通信経路を形成する前記第1のノードと前記第2のノードと前記第3のノードとを含む複数のノードと接続された網監視制御装置とからなる光通信網であって、
前記網監視制御装置は、
前記第1のノードと前記第3のノードとの間を現用経路の第1の性能監視区間、前記第3のノードと前記第2のノードとの間を前記現用経路の第2の性能監視区間として、前記第1の性能監視区間および前記第2の性能監視区間を性能監視し、
前記第1のノードと前記第3のノードとの間の迂回経路を第1の予備経路、前記第3のノードと前記第2のノードとの間の迂回経路を第2の予備経路として、前記第1の予備経路および前記第2の予備経路の各リンクを監視し、
前記第3のノードに接続された前記第1の予備経路および前記第2の予備経路に障害が発生したことを検出したとき、前記第1のノードと前記第2のノードとの間を第3の性能監視区間として、前記第3の性能監視区間を性能監視し、前記第1のノードと前記第2のノードとの間の迂回経路を第3の予備経路として、前記第3の予備経路の各リンクを監視することを特徴とする光通信網。
【請求項4】
現用経路である第1の通信経路と予備経路である第2の通信経路と接続されたノード装置であって、
前記第1の通信経路または前記第2の通信経路から受信した波長多重信号を分波する波長分離部と、
前記波長分離部によって分波された光信号または配下のクライアント装置から受信した光信号を監視するとともに、前記光信号をスイッチ部に送信する入力インタフェース部と、
前記入力インタフェース部からの光信号について経路設定を行なう前記スイッチ部と、
前記スイッチ部からの光信号を波長多重部またはクライアント装置に送信する出力インタフェース部と、
前記出力インタフェース部からの光信号を波長多重して前記第1の通信経路または前記第2の通信経路へ出力する波長多重部と、
装置監視制御部とからなり、
前記装置監視制御部は、前記第1の通信経路から受信した信号から障害を検出したとき、前記第2の通信経路を現用経路に切り替え、前記第1の通信経路に復旧確認信号を送出することを特徴とするノード装置。
【請求項5】
請求項4に記載のノード装置であって、
前記装置監視制御部は、前記第1の通信経路から受信した信号が復旧したことを検出したとき、前記第1の通信経路を現用経路に切り替えることを特徴とするノード装置。
【請求項6】
現用経路である第1の通信経路と第2の通信経路と、予備経路である第3の通信経路と接続されたノード装置であって、
前記第1の通信経路、前記第2の通信経路または前記第3の通信経路から受信した波長多重信号を分波する波長分離部と、
前記波長分離部によって分波された光信号または配下のクライアント装置から受信した光信号を監視するとともに、前記光信号をスイッチ部に送信する入力インタフェース部と、
前記入力インタフェース部からの光信号について経路設定を行なう前記スイッチ部と、
前記スイッチ部からの光信号を波長多重部またはクライアント装置に送信する出力インタフェース部と、
前記出力インタフェース部からの光信号を波長多重して前記第1の通信経路、前記第2の通信経路または前記第3の通信経路へ出力する波長多重部と、
網監視制御装置との通信とを行ない、当該ノード装置を制御する装置監視制御部とからなり、
前記装置監視制御部は、前記第3の通信経路から受信した信号から障害を検出したとき、前記網監視制御装置に通知し、通知を受けた前記網監視制御装置は性能監視区間の変更と予備経路を変更することを特徴とするノード装置。
【請求項7】
現用経路である第1の通信経路と予備経路である第2の通信経路と接続されたノード装置における経路故障救済方法であって、
前記第1の通信経路または前記第2の通信経路から受信した波長多重信号を分波するステップと、
分波された光信号または配下のクライアント装置から受信した光信号を監視するステップと、
監視を終えた光信号をスイッチ部に送信するステップと、
送信された光信号の経路設定を行なうステップと、
スイッチされた光信号を波長多重部またはクライアント装置に送信するステップと、
送信された光信号を波長多重して前記第1の通信経路または前記第2の通信経路へ出力するステップと、
前記監視するステップにおいて、前記第1の通信経路から受信した信号から障害を検出したとき、前記第2の通信経路を現用経路に切り替えるステップと、前記第1の通信経路に復旧確認信号を送出するステップとを含むことを特徴とする経路故障救済方法。
【請求項8】
請求項7に記載の経路故障救済方法であって、
前記第1の通信経路から受信した信号から復旧を検出するステップと、前記第1の通信経路を現用経路に切り替えるステップをさらに含む経路故障救済方法。
【請求項9】
現用経路である第1の通信経路と第2の通信経路と、予備経路である第3の通信経路と接続されたノード装置における経路故障救済方法であって、
前記第1の通信経路、前記第2の通信経路または前記第3の通信経路から受信した波長多重信号を分波するステップと、
分波された光信号または配下のクライアント装置から受信した光信号を監視するステップと、
監視を終えた光信号をスイッチ部に送信するステップと、
送信された光信号の経路設定を行なうステップと、
スイッチされた光信号を波長多重部またはクライアント装置に送信するステップと、
送信された光信号を波長多重して前記第1の通信経路、前記第2の通信経路または前記第3の通信経路へ出力するステップと、
前記監視するステップにおいて、前記第3の通信経路から受信した信号から障害を検出したとき、性能監視区間の変更と予備経路の変更とを要求メッセージを網監視制御装置に送信するステップとを含むことを特徴とする経路故障救済方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2007−36412(P2007−36412A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213728(P2005−213728)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度情報通信研究機構 「フォトニックネットワークに関する光アクセス網高速広帯域通信技術の研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000153465)株式会社日立コミュニケーションテクノロジー (770)
【Fターム(参考)】