光電変換素子及びその製造方法並びに撮像素子
【課題】光電変換効率及び高速応答性に優れた光電変換素子及び固体撮像素子を提供すること。
【解決手段】導電性膜と、光電変換膜と、透明導電性膜とを含む光電変換素子であって、
前記光電変換膜が、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが下記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とを含む、光電変換素子。
(A):λM1<λL1、かつλM2<λL2
(B):λM1<λL1、かつΔ|λM1−λL1|>Δ|λM2−λL2|
(A)及び(B)において、λL1、λL2、λM1、及びλM2は、波長400〜800nmの範囲における最大吸収強度の1/2の吸収強度を示す波長であって、λL1及びλL2は、前記光電変換材料をクロロホルムに溶解させたときのクロロホルム溶液スペクトルにおける波長を表し、λM1及びλM2は、前記光電変換材料単独の薄膜吸収スペクトルにおける波長を表す。ただし、λL1<λL2、λM1<λM2である。
【解決手段】導電性膜と、光電変換膜と、透明導電性膜とを含む光電変換素子であって、
前記光電変換膜が、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが下記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とを含む、光電変換素子。
(A):λM1<λL1、かつλM2<λL2
(B):λM1<λL1、かつΔ|λM1−λL1|>Δ|λM2−λL2|
(A)及び(B)において、λL1、λL2、λM1、及びλM2は、波長400〜800nmの範囲における最大吸収強度の1/2の吸収強度を示す波長であって、λL1及びλL2は、前記光電変換材料をクロロホルムに溶解させたときのクロロホルム溶液スペクトルにおける波長を表し、λM1及びλM2は、前記光電変換材料単独の薄膜吸収スペクトルにおける波長を表す。ただし、λL1<λL2、λM1<λM2である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及びその製造方法並びに撮像素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子としては、半導体中に光電変換部位を2次元的に配列して画素とし、各画素で光電変換により発生した信号をCCDやCMOS形式により電荷転送、読み出す、平面型受光素子が広く用いられている。従来の光電変換部位は、一般にSiなどの半導体中にpn接合を形成するなどして形成されている。
近年、多画素化が進む中で画素サイズが小さくなっており、フォトダイオード部の面積が小さくなり、開口率の低下、集光効率の低下が問題になっている。開口率等を向上させる手法として、有機材料を用いた光電変換層(光電変換膜)を有する固体撮像素子が検討されている。
【0003】
有機光電変換素子においては、高いS/N比を得ることが重要な課題の1つである。有機光電変換素子のS/N比を高くするには、光電変換効率の向上、低暗電流化が必要とされる。光電変換効率を向上させる技術としては、光電変換膜においてpn接合やバルクへテロ構造を導入することが検討されている。また、低暗電流化のための技術としては、ブロッキング層の導入等が検討されている。
【0004】
pn接合やバルクへテロ構造の導入する場合、暗電流の増大が問題になることが多い。また、光電変換効率の改善程度も材料の組み合わせにより程度の差があり、特にバルクへテロ構造を導入する方法をとる場合、バルクへテロ構造導入前に対しS/Nが増大しない場合もあり、どの材料を組み合わせるかが重要となる。
【0005】
また、使用する材料の種類、光電変換層の膜構造は、光電変換効率(励起子解離効率、電荷輸送性)、暗電流(暗時キャリア量等)の主要因の一つであるとともに、これまでの報告ではほとんど触れられていないが、信号応答速度の支配因子となる。特に、有機光電変換素子を固体撮像素子として用いる場合、高光電変換効率、低暗電流、高速応答速度を全て満たすことが重要あるが、そのような性能を満たす有機光電変換材料、素子構造はこれまで具体的に示されていない。
【0006】
有機光電変換膜において、高光電変換効率(高励起子解離効率)の発現のために、フラーレン又はフラーレン誘導体を用いたバルクへテロ構造を導入する技術が知られている。
例えば特許文献1において、フラーレン又はフラーレン誘導体を含有する光電変換層が開示されている。しかしながら、光電変換効率や応答速度の向上及び暗電流の低減においてさらなる改良が求められている。
【0007】
また、特許文献2には、複数の有機半導体によるバルクヘテロ膜を用い、かつ少なくとも1つの有機半導体が結晶粒子となっている太陽電池が記載されているが、高速応答性や暗電流の低減について開示されておらず、光電変換素子の撮像素子への適用に関する記載もない。
更に、非特許文献1において、高効率化に関して光電変換層の膜構造の重要性が示唆されている。しかしながら、非特許文献1における光電変換素子も太陽電池を意図したものであり、かかる文献に記載の技術をそのまま撮像センサに適用すると、使用材料、膜構造に起因する暗電流が大きく、撮像素子として使用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−123707号公報
【特許文献2】特開2002−076391号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Jpn.J.Appl.Phys,43,L1014(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、光電変換効率及び高速応答性に優れた光電変換素子及び固体撮像素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らによる鋭意検討の結果、高光電変換効率を得るためには、光電変換材料とフラーレン類の間でより効率的に励起子解離が行えるよう、光電変換材料とフラーレン類との界面での励起子クエンチサイトができない材料を組み合わせて接合状態を作ること、光電変換材料中の励起子拡散長を長くすることが重要であり、高速応答性を得るためには、フラーレン類中で電子が輸送性されるキャリアパスと光電変換材料中で正孔が輸送されるためのキャリアパスがそれぞれ輸送方向に分離して繋がった状態の膜構造とすることが重要であることがわかった。このような知見に基づいて、以下の手段により上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、上記課題は以下の手段により解決することができる。
(1)導電性膜と、光電変換層と、透明導電性膜とを含む光電変換素子であって、
前記光電変換層が、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが下記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とを含む、光電変換素子。
(A):λM1<λL1、かつλM2<λL2
(B):λM1<λL1、かつΔ|λM1−λL1|>Δ|λM2−λL2|
(A)及び(B)において、λL1、λL2、λM1、及びλM2は、波長400〜800nmの範囲における最大吸収強度の1/2の吸収強度を示す波長であって、λL1及びλL2は、前記光電変換材料をクロロホルムに溶解させたときのクロロホルム溶液スペクトルにおける波長を表し、λM1及びλM2は、前記光電変換材料単独の薄膜吸収スペクトルにおける波長を表す。ただし、λL1<λL2、λM1<λM2である。
(2)前記条件(B)が下記条件(B’)である、上記(1)に記載の光電変換素子。
(B’):λM1<λL1、かつΔ|λM1―λL1|>2×Δ|λM2―λL2|
(3)前記条件(B)が下記条件(B”)である、上記(1)に記載の光電変換素子。
(B”):λM1<λL1、かつΔ|λM1―λL1|>3×Δ|λM2―λL2|
(4)前記フラーレン又はフラーレン誘導体の少なくとも一部が結晶化した状態を含む、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
(5)前記フラーレン又はフラーレン誘導体が、基板に対して(111)方向に配向している、上記(4)に記載の光電変換素子。
(6)前記導電性膜と、前記光電変換層と、前記透明導電性膜とがこの順に積層された、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えた撮像素子であって、
前記光電変換層が上方に積層された半導体基板と、
前記半導体基板内に形成され、前記光電変換層で発生した電荷を蓄積するための電荷蓄積部と、
前記光電変換層の電荷を前記電荷蓄積部へ伝達するための接続部とを備えた撮像素子。
(8)上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、
基板上に、前記導電性膜、前記光電変換層、及び前記透明導電性膜を形成する工程を含み、
前記光電変換層の形成において、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが前記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とを、基板を加熱した状態で共蒸着する工程を含む、光電変換素子の製造方法。
(9)前記共蒸着における蒸着速度が0.5〜3Å/sである、上記(8)に記載の製造方法。
(10)前記共蒸着時の前記基板温度が100℃以下である、上記(8)又は(9)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光電変換効率及び高速応答性に優れた光電変換素子及び固体撮像素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】光電変換素子の構成例の一例を示す断面模式図である。
【図2】光電変換素子の他の構成例を示す断面模式図である。
【図3】撮像素子の1画素分の断面模式図である。
【図4】他の構成例の撮像素子の1画素分の断面模式図である。
【図5】他の構成例の撮像素子の1画素分の断面模式図である。
【図6】(a)が化合物(1)、図6(b)比較が化合物の吸収スペクトルを示す。
【図7】実施例1〜5における化合物(1)とフラーレンC60の共蒸着層の薄膜吸収スペクトルを示す。
【図8】実施例1におけるフラーレンC60を含む共蒸着層のX線回折パターンを示す。
【図9】実施例2におけるフラーレンC60を含む共蒸着層のX線回折パターンを示す。
【図10】実施例3におけるフラーレンC60を含む共蒸着層のX線回折パターンを示す。
【図11】実施例4におけるフラーレンC60を含む共蒸着層のX線回折パターンを示す。
【図12】実施例5におけるフラーレンC60を含む共蒸着層のX線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[光電変換素子]
本発明の光電変換素子は、導電性膜(導電性層とも言う)と、光電変換層(光電変換膜とも言う)と、透明導電性膜(透明導電性層とも言う)を含む光電変換素子であり、好ましくは上記それぞれの膜がこの順に積層されている。
以下、本発明の光電変換素子の好適な実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る光電変換素子の構成例を示す。図1に示す光電変換素子10は、基板Sと、基板S上に形成された下部電極として機能する導電性膜(以下、下部電極とする)11と、下部電極11上に形成された光電変換層12と、上部電極として機能する透明導電性膜(以下、上部電極とする)15とがこの順に積層された構成である。
【0015】
また、図2に別の光電変換素子の構成例を示す。図2に示す光電変換素子は、電荷ブロッキング層(電子ブロッキング層、正孔ブロッキング層)を備えた構成である。図2(a)に示す光電変換素子10aは、下部電極11と光電変換層12との間に電子ブロッキング層16Aを備えた構成であり、図2(b)に示す光電変換素子10bは、更に上部電極15と光電変換層12との間に正孔ブロッキング層16Bを備えた構成である。
図2に示すように、電子ブロッキング層16A、正孔ブロッキング層16Bを設けることにより、電圧が印加されたときに電極から光電変換層12に電子又は正孔の注入を抑制することができ、より確実に暗電流の低減を図ることができる。
なお、図2に示す構成は、電子を上部電極15に移動させ、正孔を下部電極11に移動させるように電圧を印加させる(すなわち、上部電極15を電子取り出し用電極とする)構成であるが、電子を下部電極11に移動させ、正孔を上部電極15に移動させるように電圧を印加させる(すなわち、下部電極11を電子取り出し用電極とする)場合は、下部電極11と光電変換層12との間に正孔ブロッキング層、上部電極15と光電変換層12との間に電子ブロッキング層を形成する。
また、電荷ブロッキング層を複数形成する構成とすることもできる。
【0016】
本実施形態に係る光電変換素子を構成する要素について説明する。
(電極)
電極(上部電極(透明導電性膜)15と下部電極(導電性膜)11)は、導電性材料から構成される。導電性材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、又はこれらの混合物などを用いることができる。
上部電極15から光が入射されるため、上部電極15は検知したい光に対し十分透明である事が必要である。具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属薄膜、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、高導電性、透明性等の点から、導電性金属酸化物である。上部電極15は光電変換層12上に成膜するため、該光電変換層12の特性を劣化させることのない方法で成膜される事が好ましい。
【0017】
下部電極11は、用途に応じて、透明性を持たせる場合と、逆に透明を持たせず光を反射させるような材料を用いる場合等がある。具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル、チタン、タングステン、アルミ等の金属及びこれらの金属の酸化物や窒化チタンなどの窒化物などの導電性化合物、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。
【0018】
電極を形成する方法は特に限定されず、電極材料との適正を考慮して適宜選択することができる。具体的には、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等により形成することができる。
電極の材料がITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で形成することができる。更に、ITOを用いて作製された膜に、UV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。
【0019】
上部電極15はプラズマフリーで作製することが好ましい。プラズマフリーで上部電極15を作成することで、プラズマが基板に与える影響を少なくすることができ、光電変換特性を良好にすることができる。ここで、プラズマフリーとは、上部電極15の成膜中にプラズマが発生しないか、又はプラズマ発生源から基体までの距離が2cm以上、好ましくは10cm以上、更に好ましくは20cm以上であり、基体に到達するプラズマが減ずるような状態を意味する。
【0020】
上部電極15の成膜中にプラズマが発生しない装置としては、例えば、電子線蒸着装置(EB蒸着装置)やパルスレーザー蒸着装置がある。EB蒸着装置又はパルスレーザー蒸着装置については、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)、及びそれらに付記されている参考文献等に記載されているような装置を用いることができる。以下では、EB蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をEB蒸着法と言い、パルスレーザー蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をパルスレーザー蒸着法と言う。
【0021】
プラズマ発生源から基体への距離が2cm以上であって基体へのプラズマの到達が減ずるような状態を実現できる装置(以下、プラズマフリーである成膜装置という)については、例えば、対向ターゲット式スパッタ装置やアークプラズマ蒸着法などが考えられ、それらについては沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)、及びそれらに付記されている参考文献等に記載されているような装置を用いることができる。
【0022】
透明な導電性金属酸化物(TCO)などの透明導電膜を上部電極15とした場合、DCショート、あるいはリーク電流増大が生じる場合がある。この原因の一つは、光電変換層12に導入される微細なクラックがTCOなどの緻密な膜によってカバレッジされ、反対側の第一電極膜11との間の導通が増すためと考えられる。そのため、Alなど膜質が比較して劣る電極の場合、リーク電流の増大は生じにくい。上部電極15の膜厚を、光電変換層12の膜厚(すなわち、クラックの深さ)に対して制御する事により、リーク電流の増大を大きく抑制できる。上部電極15の厚みは、光電変換層12厚みの1/5以下、好ましくは1/10以下であるようにする事が望ましい。
【0023】
通常、導電性膜をある範囲より薄くすると、急激な抵抗値の増加をもたらすが、本実施形態に係る光電変換素子を組み込んだ固体撮像素子では、シート抵抗は、好ましくは100〜10000Ω/□でよく、薄膜化できる膜厚の範囲の自由度は大きい。また、上部電極(透明導電性膜)15は厚みが薄いほど吸収する光の量は少なくなり、一般に光透過率が増す。光透過率の増加は、光電変換層12での光吸収を増大させ、光電変換能を増大させるため、非常に好ましい。薄膜化に伴う、リーク電流の抑制、薄膜の抵抗値の増大、透過率の増加を考慮すると、上部電極15の膜厚は、5〜100nmであることが好ましく、更に好ましくは5〜20nmである事が望ましい。
【0024】
(光電変換層)
光電変換層は、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが下記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とから形成される。
(A):λM1<λL1、かつλM2<λL2
(B):λM1<λL1、かつΔ|λM1−λL1|>Δ|λM2−λL2|
(A)及び(B)において、λL1、λL2、λM1、及びλM2は、波長400〜800nmの範囲における最大吸収強度の1/2の吸収強度を示す波長であって、λL1及びλL2は、前記光電変換材料をクロロホルムに溶解させたときのクロロホルム溶液スペクトルにおける波長を表し、λM1及びλM2は、前記光電変換材料単独の薄膜吸収スペクトルにおける波長を表す。ただし、λL1<λL2、λM1<λM2である。すなわち、λL1、λM1は短波側、λL2、λM2は長波側の波長を示す。
【0025】
つまり、前記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料は、薄膜吸収スペクトルがクロロホルム溶液吸収スペクトルに対して短波側にシフトするものである。一般にクロロホルム溶媒での吸収スペクトルは、溶媒効果により吸収スペクトルが長波化し、光電変換材料自体の持つ分子として吸収はより短波な位置にあると考えられ、本特許記載の方法で規定されるこのような光電変換材料は、薄膜状態ではJ会合性比率に比べH会合性比率が高くなっているか、J会合性方向の相互作用の種類が少ない、あるいは弱い(分子同士の接合状態がより少ない種類の状態として存在している)と考えられる。一般に、蒸着膜はH会合性が高いもの、J会合性が高いもの、H、J会合性が同程度に混在するものがあるが、本発明者らの検討によれば、よりH会合性比率の高い(あるいは、J会合性比率の少ない、会合状態の揃った)膜構造を実現できる光電変換材料を用いることにより、極めて高い応答速度が得られるとの知見が得られた。
H会合性比率が高くなっている状態では、正孔、電子輸送部分(ドナー部、アクセプター部)が、一方向に重なった構造になる。正孔、電子輸送部分が電荷輸送方向に対しランダムに存在したり、互い違いに存在すると、各電荷が輸送される際、輸送に関与しない構造を挟んで電荷を輸送しなければならないため、輸送阻害が生じると考えられるが、上記H会合性比率が高い状態では、そのような輸送に関与しない構造を挟んで輸送されないため、拘束応答が得られやすいと考えられる。また、J会合性のモーメント方向の輸送は、まさに、各電荷輸送部が互い違いに存在する方向になるため、J会合性方向の相互作用の種類が少ない、あるいは弱い方がより各電荷輸送部位の重なりが大きくなるため、高速応答が可能になると考えられる。
【0026】
前記条件(B)は、下記条件(B’)であることが好ましく、更に下記条件(B”)であることがより好ましい。
(B’):λM1<λL1、かつΔ|λM1―λL1|>2×Δ|λM2―λL2|
(B”):λM1<λL1、かつΔ|λM1―λL1|>3×Δ|λM2―λL2|
【0027】
前記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料としては、有機材料であることが好ましく、トリアリールアミン化合物であることがより好ましい。更にトリアリールアミン化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
一般式(I)
【0028】
【化1】
【0029】
一般式(I)中、Z1は5又は6員環を形成するのに必要な原子群を表す。L1、L2、L3はそれぞれ無置換メチン基、又は置換メチン基を表す。D1は原子群を表す。
nは0以上の整数を表す。
【0030】
Z1は5又は6員環を形成するのに必要な原子群を表し、形成される環としては、通常メロシアニン色素で酸性核として用いられるものが好ましく、その具体例としては例えば以下のものが挙げられる。
【0031】
(a)1,3−ジカルボニル核:例えば1,3−インダンジオン核、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン等。
(b)ピラゾリノン核:例えば1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾイル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン等。
(c)イソオキサゾリノン核:例えば3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オン等。
(d)オキシインドール核:例えば1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドール等。
(e)2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核:例えばバルビツル酸又は2−チオバルビツル酸及びその誘導体等。誘導体としては例えば1−メチル、1−エチル等の1−アルキル体、1,3−ジメチル、1,3−ジエチル、1,3−ジブチル等の1,3−ジアルキル体、1,3−ジフェニル、1,3−ジ(p−クロロフェニル)、1,3−ジ(p−エトキシカルボニルフェニル)等の1,3−ジアリール体、1−エチル−3−フェニル等の1−アルキル−1−アリール体、1,3−ジ(2―ピリジル)等の1,3位ジヘテロ環置換体等が挙げられる。
(f)2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核:例えばローダニン及びその誘導体等。誘導体としては例えば3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−アリルローダニン等の3−アルキルローダニン、3−フェニルローダニン等の3−アリールローダニン、3−(2−ピリジル)ローダニン等の3位ヘテロ環置換ローダニン等が挙げられる。
【0032】
(g)2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(2−チオ−2,4−(3H,5H)−オキサゾールジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等。
(h)チアナフテノン核:例えば3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイド等。
(i)2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン等。
(j)2,4−チアゾリジンジオン核:例えば2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオン等。
(k)チアゾリン−4−オン核:例えば4−チアゾリノン、2−エチル−4−チアゾリノン等。
(l)2,4−イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核:例えば2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(m)2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン(2−チオヒダントイン)核:例えば2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(n)2−イミダゾリン−5−オン核:例えば2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オン等。
(o)3,5−ピラゾリジンジオン核:例えば1,2−ジフェニル−3,5−ピラゾリジンジオン、1,2−ジメチル−3,5−ピラゾリジンジオン等。
(p)ベンゾチオフェンー3−オン核:例えばベンゾチオフェンー3−オン、オキソベンゾチオフェンー3−オン、ジオキソベンゾチオフェンー3−オン等。
(q)インダノン核:例えば1−インダノン、3−フェニルー1−インダノン、3−メチルー1−インダノン、3,3−ジフェニルー1−インダノン、3,3−ジメチルー1−インダノン等。
【0033】
Z1で形成される環として好ましくは、1,3−ジカルボニル核、ピラゾリノン核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えばバルビツル酸核、2-チオバルビツール酸核)、2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核、2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核、2,4−チアゾリジンジオン核、2,4−イミダゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン核、2−イミダゾリン−5−オン核、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェンー3−オン核、インダノン核であり、より好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えばバルビツル酸核、2-チオバルビツール酸核)、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェンー3−オン核、インダノン核であり、更に好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えばバルビツル酸核、2-チオバルビツール酸核)であり、特に好ましくは1,3−インダンジオン核、バルビツル酸核、2-チオバルビツール酸核、最も好ましくは1,3−インダンジオン核及びそれらの誘導体である。
【0034】
Z1により形成される環として好ましいものは下記の式で表される。
【0035】
【化2】
【0036】
Z3は5ないし6員環を形成するに必要な原子群を表す。Z3としては上記Z1により形成される環中から選ぶことができ、好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)であり、特に好ましくは1,3−インダンジオン核、バルビツル酸核、2-チオバルビツール酸核及びそれらの誘導体である。
【0037】
アクセプター部同士の相互作用を制御する事により、C60などのフラーレン又はフラーレン誘導体と共蒸着膜とした際、高い正孔輸送性を発現させる事ができることを見出した。アクセプター部の構造、及び立体障害となる置換基の導入により相互作用の制御を行う事が可能である。バルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核において、2つのN位の水素を好ましくは2つとも、置換基により置換する事で好ましく分子間相互作用を制御する事が可能であり、置換基としては後述の置換基Wがあげられるが、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基である。
Z1により形成される環が1,3−インダンジオン核の場合、下記一般式(IV)で示される基又は下記一般式(V)で示される基である場合が好ましい。
一般式(IV)
【0038】
【化3】
【0039】
R41〜R44はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
一般式(V)
【0040】
【化4】
【0041】
R41、R44、R45〜R48はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
前記一般式(IV)で示される基の場合、R41〜R44はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては例えば後述の置換基Wとして挙げたものが適用できる。また、R41〜R44はそれぞれ隣接するものが、結合して環を形成することができ、R42とR43が結合して環(例えば、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環)を形成する場合が好ましい。R41〜R44としては全てが水素原子である場合が好ましい。
前記一般式(IV)で示される基が前記一般式(V)で示される基である場合が好ましい。
前記一般式(V)で示される基の場合、R41、R44、R45〜R48はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては例えば後述の置換基Wとして挙げたものが適用できる。R41、R44、R45〜R48としては全てが水素原子である場合が好ましい。
【0042】
Z1により形成される環が2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)の場合、下記一般式(VI)で示される基である場合が好ましい。
一般式(VI)
【0043】
【化5】
【0044】
R81、R82はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R83は、酸素原子、硫黄原子又は置換基を表す。
前記一般式(VI)で示される基の場合、R81、R82はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては例えば後述の置換基Wとして挙げたものが適用できる。R81、R82としてはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基(2−ピリジル等)が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、t−ブチル)を表す場合がより好ましい。
R83は、酸素原子、硫黄原子又は置換基を表すが、R83としては酸素原子、又は硫黄原子を表す場合が好ましい。前記置換基としては結合部が窒素原子であるものと炭素原子であるものが好ましく、窒素原子の場合はアルキル基(炭素数1〜12)若しくはアリール基(炭素数6〜12)が好ましく、具体的にはメチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、フェニルアミノ基、又はナフチルアミノ基が挙げられる。炭素原子の場合は更に少なくとも一つの電子吸引性基が置換していれば良く、電子吸引性基としてはカルボニル基、シアノ基、スルホキシド基、スルホニル基、又はホスホリル基が挙げられ、更に置換基を有している場合が良い。この置換基としては後述の置換基Wが挙げられる。R83としては、該炭素原子を含む5員環又は6員環を形成するものが好ましく、具体的には下記構造のものが挙げられる。
【0045】
【化6】
【0046】
【化7】
【0047】
上記の基中のPhはフェニル基を表す。
式(I)において、L1、L2、L3はそれぞれ独立に、無置換メチン基、又は置換メチン基を表す。置換メチン基同士が結合して環(例、6員環例えばベンゼン環)を形成してもよい。置換メチン基の置換基は後述の置換基Wが挙げられるが、L1、L2、L3は全てが無置換メチン基である場合が好ましい。
【0048】
nは0以上の整数を表し、好ましくは0以上3以下の整数を表し、より好ましくは0である。nを増大させた場合、吸収波長域が長波長にする事ができるが、熱による分解温度が低くなる。可視域に適切な吸収を有し、かつ蒸着成膜時の熱分解を抑制する点でn=0が好ましい。
【0049】
式(I)において、D1は原子群を表す。前記D1は−NRa(Rb)を含む基であることが好ましく、更に、前記D1が−NRa(Rb)が置換したアリール基(好ましくは、置換されてよい、フェニル基、ナフチル基又はアントラセニル基、より好ましくは、置換基されてもよい、フェニル基又はナフチル基)を表す場合が好ましい。Ra、Rbはそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を表し、Ra、Rbで表される置換基は後述の置換基Wが挙げられるが、好ましくは、脂肪族炭化水素基(好ましくは置換されてよいアルキル基、アルケニル基)、アリール基(好ましくは置換されてよいフェニル基)、又はヘテロ環基である。
前記ヘテロ環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサジアゾール等の5員環が好ましい。
Ra、Rbが置換基(好ましくはアルキル基、アルケニル基)である場合、それらの置換基は、−NRa(Rb)が置換したアリール基の芳香環(好ましくはベンゼン環)骨格の水素原子、又は置換基と結合して環(好ましくは6員環)を形成してもよい。この場合、D1は後記の一般式(VIII)、(IX)又は(X)で表される場合が好ましい。
Ra、Rbは互いに置換基同士が結合して環(好ましくは5員又は6員環、より好ましくは6員環)を形成してもよく、また、Ra、RbはそれぞれがL(L1、L2、L3のいずれかを表す)中の置換基と結合して環(好ましくは5員又は6員環、より好ましくは6員環)を形成してもよい。
D1はパラ位にアミノ基が置換したアリール基(好ましくはフェニル基)である場合が好ましい。この場合、D1は下記一般式(II)で示されることが好ましい。
前記アミノ基は置換されていてもよい。該アミノ基の置換基としては、後述の置換基Wが挙げられるが、脂肪族炭化水素基(好ましくは置換されてよいアルキル基)、アリール基(好ましくは置換されてよいフェニル基)、又はヘテロ環基が好ましい。
前記アミノ基はアリール基が2つ置換した、いわゆるジアリール基置換のアミノ基が好ましく、この場合、D1は下記一般式(III)で示されることが好ましい。
更に、前記アミノ基の置換基(好ましくは置換されてよいアルキル基、アルケニル基)は、該アミノ基がパラ位に置換したアリール基の芳香環(好ましくはベンゼン環)骨格の水素原子、又は置換基と結合して環(好ましくは6員環)を形成してもよい。
一般式(II)
【0050】
【化8】
【0051】
式中、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。またR1とR2、R3とR4、R5とR6、R2とR5、R4とR6がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
一般式(III)
【0052】
【化9】
【0053】
式中、R11〜R14、R20〜R24、R30〜R34はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。またR11〜R14、R20〜R24、R30〜R34がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
【0054】
Ra、Rbが脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基の場合の置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルホニル基、シリル基、芳香族ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、芳香族ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、芳香族ヘテロ環基である。具体例は後述の置換基Wで挙げたものが適用できる。
【0055】
Ra、Rbとして好ましくはアルキル基、アリール基、又は芳香族へテロ環基である。Ra、Rbとして特に好ましくはアルキル基、Lと連結して環を形成するアルキレン基、又はアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、Lと連結して5ないし6員環を形成するアルキレン基、又は置換若しくは無置換のフェニル基であり、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基である。
【0056】
前記D1が下記の一般式(VII)で示される場合も好ましい。
一般式(VII)
【0057】
【化10】
【0058】
式中、R91〜R98はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。mは0以上の整数を表す。mは0又は1である場合が好ましい。Rx、Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、mが2以上の場合、各6員環に結合するRx、Ryは異なる置換基であっても良い。また、R91とR92、R92とRxと、RxとR94、R94とR97、R93とRy、RyとR95、R95とR96、R97とR98はそれぞれ互いに独立して環を形成しても良い。また、L3(nが0のときはL1)との結合部は、R91、R92、R93の位置でも良く、その場合、一般式(VII)中のL3との結合部として表記されている部位に、それぞれR91、R92、R93に相当する置換基又は水素原子が結合し、隣接するR同士は結合して環を形成しても良い。ここで、「隣接するR同士は結合して環を形成しても良い。」とは、例えば、R91がL3(nが0のときはL1)との結合部になる場合、一般式(VII)の結合部にはR90が結合しているとするとR90とR93とが結合し環を形成してもよく、また、R92がL3(nが0のときはL1)との結合部になる場合、一般式(VII)の結合部にはR90が結合しているとするとR90とR91、R90とR93とがそれぞれ結合し環を形成してもよく、また、R93がL3(nが0のときはL1)との結合部になる場合、一般式(VII)の結合部にはR90が結合しているとするとR90とR91、R91とR92とがそれぞれ結合し環を形成してもよいことを言う。
上記の環はベンゼン環である場合が好ましい。
R91〜R98、Rx、Ryの置換基は置換基Wが挙げられる。
R91〜R96はいずれも水素原子である場合が好ましく、Rx、Ryはいずれも水素原子である場合が好ましい。R91〜R96は水素原子であり、かつRx、Ryも水素原子である場合が好ましい。
前記R97及びR98は、それぞれ独立に、置換基されてよいフェニル基を表す場合が好ましく、該置換基としては置換基Wが挙げられるが、好ましくは無置換フェニル基である。
mは0以上の整数を表すが、0又は1が好ましい。
【0059】
前記D1が一般式(VIII)、(IX)又は(X)で表される基である場合も好ましい。
一般式(VIII)
【0060】
【化11】
【0061】
式中、R51〜R54はそれぞれ独立に、水素又は置換基を表す。該置換基として置換基Wが挙げられる。R52とR53、R51とR52はそれぞれ連結して環を形成してもよい。
一般式(IX)
【0062】
【化12】
【0063】
式中、R61〜R64はそれぞれ独立に、水素又は置換基を表す。該置換基として置換基Wが挙げられる。R62とR63、R61とR62はそれぞれ連結して環を形成してもよい。
一般式(X)
【0064】
【化13】
【0065】
式中、R71〜R73はそれぞれ独立に、水素又は置換基を表す。該置換基として置換基Wが挙げられる。R72とR73はそれぞれ連結して環を形成してもよい。
【0066】
前記D1は前記一般式(II)又は(III)で示される基がより好ましく用いられる。
一般式(II)中、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。またR1とR2、R3とR4、R5とR6、R2とR5、R4とR6がそれぞれ互いに結合し
て環を形成してもよい。
R1〜R4における置換基は置換基Wが挙げられるが、好ましくはR1〜R4が水素原子、又はR2とR5若しくはR4とR6が5員環を形成する場合であり、より好ましくはR1〜R4のいずれもが水素原子である場合である。
R5、R6における置換基は置換基Wが挙げられるが、置換基の中でも、置換若しくは無置換のアリール基が好ましく、置換アリール基の置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチレン基、フェナントリル基、アントリル基)が好ましい。R5、R6は好ましくはフェニル基、アルキル置換フェニル基、フェニル置換フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基又はフルオレニル基(好ましくは9,9’−ジメチル−2−フルオレニル基)である。
一般式(III)中、R11〜R14、R20〜R24、R30〜R34はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。またR11〜R14、R20〜R24、R30〜R34がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。その環形成の例としては、R11とR12、R13とR14が結合してベンゼン環を、R20〜R24の隣接する2つ(R24とR23、R23とR20、R20とR21、R21とR22)が結合してベンゼン環を、R30〜R34の隣接する2つ(R34とR33、R33とR30、R30とR31、R31とR32)が結合してベンゼン環を、R22とR34が結合してN原子と共に5員環を形成する場合が挙げられる。
R11〜R14、R20〜R24、R30〜R34で表される置換基は置換基Wが挙げられるが、好ましくはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)であり、これらの基は更に置換基W(好ましくはアリール基)が置換していてもよい。中でも、R20、R30が前記置換基である場合が好ましく、かつ、その他のR11〜R14、R21〜R24、R31〜R34は水素原子である場合がより好ましい。
【0067】
一般式(I)で表される化合物は、特開2000−297068号公報に記載の化合物であり、前記公報に記載のない化合物も、前記公報に記載の合成方法に準じて製造することができる。
以下に、一般式(I)で示される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
【化14】
【0069】
【化15】
【0070】
【化16】
【0071】
【化17】
【0072】
【化18】
【0073】
【化19】
【0074】
【化20】
【0075】
上記のR101、R102はそれぞれ独立に水素原子、又は置換基を表す。置換基としては後述の置換基Wが挙げられるが、アルキル基、又はアリール基が好ましい。
前記一般式(I)で表される化合物は、特開2000−297068号公報に従って、合成することができる。
【0076】
また、フラーレン又はフラーレン誘導体と前記光電変換材料とで形成される光電変換層中において、前記光電変換材料のH会合性がより高められた状態にすることが好ましい。光電変換層中において前記光電変換材料のH会合性がより高められた状態(よりJ会合性分比率の少ない状態)にすることで、高い光電変換効率を実現することができる。
ここで、「H会合性がより高められた(よりJ会合性分比率の少ない)状態」(「光電変換層のH会合性強化度」)とは、基板上に成膜した混合層(フラーレン又はフラーレン誘導体と光電変換材料との混合層)が、400〜800nmの範囲において、最大吸収波長λmaxでの吸光度の半分の強度を示す波長を示す波長λn1(λmax<λn1)とした場合、成膜条件を変更する事によってλn1をより小さくした状態を指す。
前記光電変換材料のH会合性がより高められた状態とするには、適当な光電変換材料を選択するとともに、光電変換層中における前記光電変換材料の含有量、成膜速度、及び蒸着時の基板温度を適切に制御することで実現することができる。
【0077】
また、光電変換層はフラーレン又はフラーレン誘導体を含む。光電変換層は、好ましくは、フラーレン又はフラーレン誘導体と、それ以外の少なくとも1種の材料が混合、若しくは積層された状態で形成される。
前記光電変換材料が電子輸送性が低い化合物であっても、前記光電変換材料とフラーラン又はフラーレン誘導体との混合層とすることにより、正孔を前記光電変換材料中で移動させ、電子をフラーレン又はフラーレン誘導体中で移動させることで、光電変換材料の低い電子輸送性を補完し、高い応答速度が得られる。
フラーレンとは、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブを表す。
フラーレン誘導体とは、フラーレンに置換基が付加された化合物である。置換基としては、アルキル基、アリール基、又は複素環基が好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、炭素数1〜5がより好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。複素環基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、キノリニル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
フラーレン誘導体としては、特に以下の化合物が好ましい。
【0078】
【化21】
【0079】
【化22】
【0080】
また、フラーレン及びフラーレン誘導体としては、日本化学会編 季刊化学総説No.43(1999)、特開平10−167994号公報、特開平11−255508号公報、特開平11−255509号公報、特開2002−241323号公報、特開2003−196881号公報等に記載の化合物を用いることもできる。
【0081】
光電変換層中において、フラーレン又はフラーレン誘導体の少なくとも一部が結晶化した状態であることが好ましい。
光電変換層中において、フラーレン又はフラーレン誘導体の少なくとも一部が結晶化した状態とは、光電変換層の少なくとも一部分においてフラーレン又はフラーレン誘導体が結晶化していることを意味する。例えば、光電変換層が、結晶化したフラーレン又はフラーレン誘導体からなる層部分と、結晶化せず無配向(例えばアモルファス)なフラーレン又はフラーレン誘導体からなる層部分との積層構造からなる場合などがあり得る。結晶化した層部分の検出は、断面TEM像での電子線回折が存在する部位を計測することで求めることができる。
フラーレン又はフラーレン誘導体が結晶化した状態であるか否かは、フラーレン又はフラーレン誘導体と前記光電変換材料とを基板上に共蒸着した膜のX線回折像や断面の電子線回折像に、フラーレン又はフラーレン誘導体の結晶構造に由来する結晶ピークあるいは回折点が認められるかどうかで判断できる。
フラーレン又はフラーレン誘導体の少なくとも一部が結晶化した状態であることにより、更に高い光電変換効率が得られるとともに、フラーレン又はフラーレン誘導体のキャリアパスが有効に形成された状態となるので、素子の高速応答性に更に寄与することができる。
フラーレン又はフラーレン誘導体の少なくとも一部を結晶化させる手段としては、適当な光電変換材料を選択した上で、フラーレン類の比率を上げること、成膜中に基板を加熱すること等が挙げられる。
【0082】
また、フラーレン又はフラーレン誘導体が結晶化した状態である場合、基板に対して(111)方向に配向している(以下、「(111)配向している」ともいう)ことが好ましい。フラーレン又はフラーレン誘導体が(111)配向していることにより、ランダムに結晶化した構造を含む場合よりもフラーレン又はフラーレン誘導体を含む光電変換膜の凹凸が抑制され、それにより上部電極がその凹凸に入り込んで下部電極と近接してリーク電流が増大する事が抑制されたり、光電変換膜の上に成膜する層(例えば電荷ブロッキング層)の平坦性、カバレッジが向上するため注入電流が抑制されたりする事となり、高い暗電流抑制効果が得られる。
フラーレン又はフラーレン誘導体が前記方向に配向した状態であることは、基板上に成膜した光電変換層をX線回折法で測定することにより、フラーレン又はフラーレン誘導体の結晶のピークが観察され、かつ該ピークが基板に垂直な方向に(111)方向の指数のみ複数((111)、(222)、(333)など)観測されることから確認できる。
光電変換層中において、フラーレン又はフラーレン誘導体が結晶化した層部分においては、一様に(配向方向が同じに)結晶化していることが好ましく、該層部分において50〜100%のフラーレン又はフラーレン誘導体が結晶化していることが好ましく、80〜100%のフラーレン又はフラーレン誘導体が結晶化していることが好ましい。結晶化している割合、及び一様に結晶化している割合は、X線回折によるピークの比率や断面TEM像での電子線回折により求めることができる。
【0083】
フラーレン又はフラーレン誘導体の前記結晶方向を制御するには、成膜時における基板温度及び蒸着速度等を調節することでも前記結晶方向を実現することができる。具体的には、基板温度をより高い温度で加熱し、蒸着速度をより遅い速度にすることが好ましい。但し、過度に高温、低蒸着速度にすると、フラーレン又はフラーレン誘導体の結晶化が促進され、フラーレン又はフラーレン誘導体と光電変換材料との混合層における膜面の凹凸が増大することがある。膜面の凹凸が増大すると、その上層に電極を敷設した際、ショート(リーク電流)が増大する原因となり、暗電流が増大するため、好ましくない。
【0084】
また、光電変換膜中に存在するフラーレン又はフラーレン誘導体以外の材料の種類やフラーレン又はフラーレン誘導体の比率を変更することによっても膜凹凸の増大が抑制しつつ前記結晶方向を実現することができるので、素子の感度、高速応答性、低暗電流性が優れたものとなる。
具体的には、フラーレン及びフラーレン誘導体の含有量は、光電変換層中50モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましく、75モル%以上が更に好ましい。また、含有量の上限は、90モル%が好ましい。
【0085】
更に、フラーレン又はフラーレン誘導体と光電変換材料との混合層の上に、膜応答を緩和する層を積層することによっても、前記膜面凹凸を抑制することができる。この膜応答を緩和する層としては、電荷ブロック層(電子ブロッキング層、正孔ブロッキング層)がその効果を担うことが好ましい。
なお、混合層の膜面凹凸は、算術平均粗さRaが3.0nm以下であることが好ましく、2.0nm以下であることがより好ましい。
【0086】
光電変換層は、蒸着により形成することができる。蒸着は、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)のいずれでもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。真空蒸着により成膜する場合、真空度、蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定することができる。
また、光電変換層を形成する際、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが前記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とを、基板を加熱した状態で共蒸着することが好ましい。
【0087】
基板温度は、光電変換膜中に存在するフラーレン又はフラーレン誘導体以外の材料の種類、フラーレン又はフラーレン誘導体の含有比率等によって異なるが、120℃以下とすることが好ましく、100℃以下とすることがより好ましい。基板温度の下限は、60℃以上とすることが好ましく、70℃以上とすることがより好ましい。基板温度を上記のように制御することにより、フラーレン又はフラーレン誘導体を基板に対して一様に(111)配向させる上で好ましい。
また、蒸着速度は、光電変換膜中に存在するフラーレン又はフラーレン誘導体以外の材料の種類、フラーレン又はフラーレン誘導体の含有比率等によって異なるが、0.1〜15Å/sとすることが好ましく、電変換材料のH会合性をより高める観点から0.5〜3.0Å/sとすることがより好ましい。
【0088】
(電荷ブロッキング層)
本発明に係る光電変換素子は、前述のように電荷ブロッキング層を有することが好ましい。電荷ブロッキング層を有することにより、より確実に暗電流を抑制することができる。
電荷ブロッキング層(16A,16B)は、蒸着により形成することができる。蒸着は、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)のいずれでもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。真空蒸着により成膜する場合、真空度、蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定することができる。
電荷ブロッキング層の厚みは、10nm以上300nm以下が好ましく、更に好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。10nm以上とすることにより、好適な暗電流抑制効果が得られ、300nm以下とすることにより、好適な光電変換効率が得られる。
【0089】
(電荷ブロッキング層形成用材料)
電荷ブロッキング層(正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層)を形成するための材料としては、以下のものが挙げられる。正孔ブロッキング層は、電子受容性有機材料を用いることができる。
電子受容性材料としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物などを用いることができる。また、電子受容性有機材料でなくとも、十分な電子輸送性を有する材料ならば使用することは可能である。ポルフィリン系化合物や、DCM(4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(4−(ジメチルアミノスチリル))−4Hピラン)等のスチリル系化合物、4Hピラン系化合物を用いることができる。
具体的には、以下の化合物が好ましい。なお、以下の具体例において、Eaはその材料の電子親和力(eV)を示し、Ipはその材料のイオン化ポテンシャル(eV)を示す。
【0090】
【化23】
【0091】
電子ブロッキング層には、電子供与性有機材料を用いることができる。
具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、十分なホール輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。
具体的には、以下の化合物が好ましい。
【0092】
【化24】
【0093】
【化25】
【0094】
[撮像素子]
次に、光電変換素子を備えた撮像素子の構成例を説明する。なお、以下に説明する構成例において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
【0095】
(撮像素子の第1構成例)
図3は、撮像素子の1画素分の断面模式図である。
撮像素子100は、1画素が同一平面上でアレイ状に多数配置されたものであり、この1画素から得られる信号によって画像データの1つの画素データを生成することができる。
【0096】
図3に示す撮像素子の1画素は、n型シリコン基板1と、n型シリコン基板1上に形成された透明な絶縁膜7と、絶縁膜7上に形成された下部電極101、下部電極101上に形成された光電変換層102と、光電変換層102上に形成された透明電極材料を含む上部電極104とを有する光電変換素子を備えている。光電変換素子上には開口の設けられた遮光膜14が形成されている。上部電極104上には透明な絶縁膜105が形成されている。なお、遮光膜14は絶縁膜7中に形成されている形式も好ましい。
【0097】
n型シリコン基板1内には、その浅い方からp型不純物領域(以下、p領域と略す)4と、n型不純物領域(以下、n領域と略す)3と、p領域2がこの順に形成されている。p領域4の遮光膜14によって遮光されている部分の表面部には、高濃度のp領域6が形成され、p領域6の周りはn領域5によって囲まれている。
【0098】
p領域4とn領域3とのpn接合面のn型シリコン基板1表面からの深さは、青色光を吸収する深さ(約0.2μm)となっている。したがって、p領域4とn領域3は、青色光を吸収してそれに応じた電荷を蓄積するフォトダイオード(Bフォトダイオード)を形成する。
【0099】
p領域2とn型シリコン基板1とのpn接合面のn型シリコン基板1表面からの深さは、赤色光を吸収する深さ(約2μm)となっている。したがって、p領域2とn型シリコン基板1は、赤色光を吸収してそれに応じた電荷を蓄積するフォトダイオード(Rフォトダイオード)を形成する。
【0100】
p領域6は、光電変換層102の電荷を蓄積する電荷蓄積部であり、絶縁膜7に開けられた開口に形成された接続部9を介して下部電極101と電気的に接続されている。下部電極101で捕集された正孔は、p領域6の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、p領域6にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部9は、下部電極101とp領域6以外とは絶縁膜8によって電気的に絶縁される。
【0101】
p領域2に蓄積された電子は、n型シリコン基板1内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域4に蓄積された電子は、n領域3内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域6に蓄積されている電子は、n領域5内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、撮像素子100外部へと出力される。各MOS回路は配線10によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。なお、p領域2、p領域4に引き出し電極を設け、所定のリセット電位をかけると、各領域が空乏化し、各pn接合部の容量は限りなく小さい値になる。これにより、接合面に生じる容量を極めて小さくすることができる。
【0102】
このような構成により、光電変換層102でG光を光電変換し、n型シリコン基板1中のBフォトダイオードとRフォトダイオードでB光及びR光を光電変換することができる。また上部でG光がまず吸収されるため、B−G間及びG−R間の色分離は優れている。これが、シリコン基板内に3つのPDを積層し、シリコン基板内でBGR光を全て分離する形式の撮像素子に比べ、大きく優れた点である。
なお、上記基板1、各領域2〜6について、それぞれ、p型とn型を逆にすることにより下部電極101で電子を捕集する形式にすることも可能である。また、領域2、3を省略し、絶縁膜105上、若しくはその下にカラーフィルターを形成することで、該カラーフィルターでBGRの色分離を行い、各画素それぞれに該当する光に対し光電変換層102で光電変換して各画素でBGRそれぞれの光を検出する形式も可能である。その場合、下部電極101はBGR各光を透過しない事が望ましく、例えば、Al、Mo、TiNなどが好ましく用いられる。
【0103】
(撮像素子の第2構成例)
本実施形態では、図3の撮像素子のようにシリコン基板1内に2つのフォトダイオードを積層する構成ではなく、入射光の入射方向に対して垂直な方向に2つのフォトダイオードを配列して、p型シリコン基板内で2色の光を検出するようにしたものである。
【0104】
図4は、本構成例の撮像素子の1画素分の断面模式図である。
なお、図3の撮像素子例の場合と同様に、図4中の各領域についてp型とn型を逆転させることにより、下部電極101で電子を捕集する形式にすることも可能である。
図4に示す撮像素子200の1画素は、n型シリコン基板17と、n型シリコン基板17上方に形成された下部電極101、下部電極101上に形成された光電変換層102と、該光電変換層102上に形成された上部電極104とを有する光電変換素子を備えている。光電変換素子上には開口の設けられた遮光膜34が形成されている。また、上部電極104上には透明な絶縁膜33が形成されている。なお、遮光部34は絶縁膜24中に形成されている形式も好ましい。
【0105】
遮光膜34の開口下方のn型シリコン基板17表面には、n領域19とp領域18からなるフォトダイオードと、n領域21とp領域20からなるフォトダイオードとが、n型シリコン基板17表面に並んで形成されている。n型シリコン基板17表面上の任意の面方向が、入射光の入射方向に対して垂直な方向となる。
【0106】
n領域19とp領域18からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してB光を透過するカラーフィルタ28が形成され、その上に下部電極101が形成されている。n領域21とp領域20からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してR光を透過するカラーフィルタ29が形成され、その上に下部電極101が形成されている。カラーフィルタ28,29の周囲は、透明な絶縁膜25で覆われている。
【0107】
n領域19とp領域18からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ28を透過したB光を吸収してそれに応じた電子を発生し、発生した電子をp領域18に蓄積する基板内光電変換部として機能する。n領域21とp領域20からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ29を透過したR光を吸収してそれに応じた電子を発生し、発生した電子をp領域20に蓄積する基板内光電変換部として機能する。
【0108】
n型シリコン基板17表面の遮光膜34によって遮光されている部分には、p領域23が形成され、p領域23の周りはn領域22によって囲まれている。
【0109】
p領域23は、絶縁膜24,25に開けられた開口に形成された接続部27を介して下部電極101と電気的に接続されている。下部電極101で捕集された正孔は、p領域23の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、p領域23にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部27は、下部電極101とp領域23以外とは絶縁膜26によって電気的に絶縁される。
【0110】
p領域18に蓄積された電子は、n型シリコン基板17内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域20に蓄積された電子は、n型シリコン基板17内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域23に蓄積されている電子は、n領域22内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、撮像素子200外部へと出力される。各MOS回路は配線35によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。
なお、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成してもよい。つまり、p領域18、p領域20、及びp領域23に蓄積された電子をn型シリコン基板17内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその電子に応じた信号を出力させるような信号読出し部であってもよい。
【0111】
このように、信号読み出し部は、CCD及びCMOS構造が挙げられるが、消費電力、高速読出し、画素加算、部分読出し等の点からは、CMOSの方が好ましい。
なお、図4の撮像素子では、カラーフィルタ28,29によってR光とB光の色分離を行っているが、カラーフィルタ28,29を設けず、p領域20とn領域21のpn接合面の深さと、p領域18とn領域19のpn接合面の深さを各々調整して、それぞれのフォトダイオードでR光とB光を吸収するようにしてもよい。
【0112】
n型シリコン基板17と下部電極101との間(例えば絶縁膜24とn型シリコン基板17との間)に、光電変換層102を透過した光を吸収して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を形成することも可能である。この場合、n型シリコン基板17内に、この無機光電変換部の電荷蓄積領域に蓄積された電荷に応じた信号を読み出すためのMOS回路を設け、このMOS回路にも配線35を接続しておけばよい。
また、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、n型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としてもよい。更に、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを複数とし、n型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としてもよい。また、カラー画像を作る必要がないのであれば、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、光電変換部を1つだけ積層した構成としてもよい。
【0113】
(撮像素子の第3構成例)
本実施形態の撮像素子は、シリコン基板内にフォトダイオードを設けず、シリコン基板上方に複数(ここでは3つ)の光電変換素子を積層した構成である。
【0114】
図5は、本構成例の撮像素子の1画素分の断面模式図である。なお、図3、4の撮像素子例の場合と同様に、図5中の42〜47の各領域について、p型とn型を逆転させることにより、下部電極101r、101g、101bで電子を捕集する形式にすることも可能である。
図5に示す撮像素子300は、R光電変換素子と、B光電変換素子と、G光電変換素子とをシリコン基板41の上方に順に積層した構成である。
【0115】
R光電変換素子は、シリコン基板41上方に、下部電極101rと、下部電極101r上に形成された光電変換層102rと、該光電変換層102r上に形成された上部電極104rと備える。
【0116】
B光電変換素子は、上記のR光電変換素子の上部電極104r上に積層された下部電極101bと、下部電極101b上に形成された光電変換層102bと、該光電変換層102b上に形成された上部電極104bとを備える。
【0117】
G光電変換素子は、上記のB光電変換素子の上部電極104b上に積層された下部電極101gと、下部電極101g上に形成された光電変換層102gと、該光電変換層102g上に形成された上部電極104gを備える。本構成例の撮像素子は、R光電変換素子とB光電変換素子とG光電変換素子とが、この順に積層された構成である。
【0118】
R光電変換素子の上部電極104rとB光電変換素子の下部電極101bとの間に透明な絶縁膜59が形成され、B光電変換素子の上部電極104bとG光電変換素子の下部電極101gとの間に透明な絶縁膜63が形成されている。G光電変換素子の上部電極104g上には、開口を除く領域に遮光膜68が形成され、該上部電極104gと遮光膜68を覆うように透明な絶縁膜67が形成されている。
【0119】
R,G,Bの各光電変換素子に含まれる下部電極、光電変換層、及び上部電極は、それぞれ、既に説明した光電変換素子のものと同じ構成とすることができる。ただし、光電変換層102gは、緑色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する有機材料を含むものとし、光電変換層102bは、青色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する有機材料を含むものとし、光電変換層102rは、赤色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する有機材料を含むものとする。
【0120】
シリコン基板41表面の遮光膜68によって遮光されている部分には、p領域43,45,47が形成され、それぞれの周りはn領域42,44,46によって囲まれている。
【0121】
p領域43は、絶縁膜48に開けられた開口に形成された接続部54を介して下部電極101rと電気的に接続されている。下部電極101rで捕集された正孔は、p領域43の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、p領域43にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部54は、下部電極101rとp領域43以外とは絶縁膜51によって電気的に絶縁される。
【0122】
p領域45は、絶縁膜48、R光電変換素子、及び絶縁膜59を貫通する孔に形成された接続部53を介して下部電極101bと電気的に接続されている。下部電極101bで捕集された正孔は、p領域45の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、p領域45にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部53は、下部電極101bとp領域45以外とは絶縁膜50によって電気的に絶縁される。
【0123】
p領域47は、絶縁膜48、R光電変換素子、絶縁膜59、B光電変換素子、及び絶縁膜63を貫通する孔に形成された接続部52を介して下部電極101gと電気的に接続されている。下部電極101gで捕集された正孔は、p領域47の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、p領域47にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部52は、下部電極101gとp領域47以外とは絶縁膜49によって電気的に絶縁される。
【0124】
p領域43に蓄積されている電子は、n領域42内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域45に蓄積されている電子は、n領域44内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域47に蓄積されている電子は、n領域46内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、撮像素子300外部へと出力される。各MOS回路は配線55によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。なお、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成してもよい。つまり、p領域43,45,47に蓄積された電子をシリコン基板41内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその電子に応じた信号を出力させるような信号読出し部であってもよい。
【0125】
以上の説明において、B光を吸収する光電変換層とは、例えば、少なくとも400〜500nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であるものを意味する。G光を吸収する光電変換層とは、例えば、少なくとも500〜600nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。R光を吸収する光電変換層とは、例えば、少なくとも600〜700nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。
【0126】
[置換基W]
置換基Wについて記載する。
置換基Wとしてはハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といっても良い)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)2)、ホスファト基(−OPO(OH)2)、スルファト基(−OSO3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。
【0127】
更に詳しくは、置換基Wは、下記の(1)〜(48)などを表す。
(1)ハロゲン原子
例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子
(2)アルキル基
直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基を表す。それらは、(2−a)〜(2−e)なども包含するものである。
(2−a)アルキル基
好ましくは炭素数1から30のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)
【0128】
(2−b)シクロアルキル基
好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)
(2−c)ビシクロアルキル基
好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基(例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)
【0129】
(2−d)トリシクロアルキル基
好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のトリシクロアルキル基(例えば、1−アダマンチル)
【0130】
(2−e)更に環構造が多い多環シクロアルキル基
なお、以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基を表すが、更にアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。
【0131】
(3)アルケニル基
直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、(3−a)〜(3−c)を包含するものである。
【0132】
(3−a)アルケニル基
好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基(例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)
【0133】
(3−b)シクロアルケニル基
好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)
【0134】
(3−c)ビシクロアルケニル基
置換又は無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基(例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)
【0135】
(4)アルキニル基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)
【0136】
(5)アリール基
好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基(例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル、フェロセニル)
【0137】
(6)複素環基
好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の、芳香族若しくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数2から50の5若しくは6員の芳香族の複素環基である。
(例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル。なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でも良い)
【0138】
(7)シアノ基
【0139】
(8)ヒドロキシ基
【0140】
(9)ニトロ基
【0141】
(10)カルボキシ基
【0142】
(11)アルコキシ基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)
【0143】
(12)アリールオキシ基
好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)
【0144】
(13)シリルオキシ基
好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)
【0145】
(14)ヘテロ環オキシ基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)
【0146】
(15)アシルオキシ基
好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)
【0147】
(16)カルバモイルオキシ基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)
【0148】
(17)アルコキシカルボニルオキシ基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基(例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)
【0149】
(18)アリールオキシカルボニルオキシ基
好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)
【0150】
(19)アミノ基
好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアニリノ基(例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)
【0151】
(20)アンモニオ基
好ましくは、アンモニオ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキル、アリール、複素環が置換したアンモニオ基(例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)
【0152】
(21)アシルアミノ基
好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基(例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)
【0153】
(22)アミノカルボニルアミノ基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ(例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)
【0154】
(23)アルコキシカルボニルアミノ基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)
【0155】
(24)アリールオキシカルボニルアミノ基
好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)
【0156】
(25)スルファモイルアミノ基
好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基(例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)
【0157】
(26)アルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ(例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)
【0158】
(27)メルカプト基
【0159】
(28)アルキルチオ基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)
【0160】
(29)アリールチオ基
好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールチオ(例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)
【0161】
(30)ヘテロ環チオ基
好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)
【0162】
(31)スルファモイル基
好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)
【0163】
(32)スルホ基
【0164】
(33)アルキル若しくはアリールスルフィニル基
好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)
【0165】
(34)アルキル若しくはアリールスルホニル基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)
【0166】
(35)アシル基
好ましくは、ホルミル基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基(例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)
【0167】
(36)アリールオキシカルボニル基
好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)
【0168】
(37)アルコキシカルボニル基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)
【0169】
(38)カルバモイル基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイル(例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)
【0170】
(39)アリール及びヘテロ環アゾ基
好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換若しくは無置換のヘテロ環アゾ基(例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)
【0171】
(40)イミド基
好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド
【0172】
(41)ホスフィノ基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィノ基(例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)
【0173】
(42)ホスフィニル基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニル基(例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)
【0174】
(43)ホスフィニルオキシ基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基(例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)
【0175】
(44)ホスフィニルアミノ基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基(例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)
【0176】
(45)ホスフォ基
【0177】
(46)シリル基
好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシリル基(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)
(47)ヒドラジノ基
好ましくは炭素数0から30の置換若しくは無置換のヒドラジノ基(例えば、トリメチルヒドラジノ)
(48)ウレイド基
好ましくは炭素数0から30の置換若しくは無置換のウレイド基(例えばN,N−ジメチルウレイド)
【0178】
また、2つのWが共同して環を形成することもできる。このような環としては芳香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環や、これらが更に組み合わされて形成された多環縮合環が挙げられる。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、及びフェナジン環が挙げられる。
【0179】
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、−CONHSO2−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SO2NHSO2−基(スルフォニルスルファモイル基)が挙げられる。より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、アリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
【実施例】
【0180】
[実施例1]
以下のようにして、光電変換素子を作製した。
まず、基板上に、アモルファス性ITO30nmをスパッタ法により成膜し下部電極を形成した。この下部電極上に、下記化合物(1)とフラーレン(C60)をそれぞれ単層換算で100nm、300nmとなるように、蒸着速度は1.7Å/sで共蒸着した層をそれぞれ真空加熱蒸着により、25℃に基板の温度を制御した状態で成膜し、光電変換層を形成した。更に、その上に、TPDを20nm、mMTDATAを300nm成膜して電子ブロッキング層を形成した。光電変換層及び電子ブロッキング層の真空蒸着は全て4×10−4Pa以下の真空度で行った。
更にその上に、上部電極としてスパッタ法によりアモルファス性ITOを10nm成膜して、透明の上部電極を形成し、光電変換素子を作製した。
【0181】
[実施例2]
実施例1の光電変換層の成膜において、化合物(1)とフラーレン(C60)の共蒸着層を基板温度80℃にて成膜すること以外は同様にして光電変換素子を作製した。
【0182】
[実施例3]
実施例1の光電変換層の成膜において、化合物(1)とフラーレン(C60)の共蒸着層を基板温度105℃にて成膜すること以外は同様にして光電変換素子を作製した。
【0183】
[実施例4]
実施例1の光電変換層の成膜において、化合物(1)とフラーレン(C60)の共蒸着層を蒸着速度13.6Å/sで成膜すること以外は同様にして光電変換素子を作製した。
【0184】
[実施例5]
実施例1の光電変換層の成膜において、化合物(1)とフラーレン(C60)の共蒸着層を基板温度−35℃にて成膜すること以外は同様にして光電変換素子を作製した。
【0185】
[比較例1]
実施例1の光電変換層の成膜において、化合物(1)とフラーレン(C60)の共蒸着層を比較化合物とフラーレン(C60)の共蒸着層に変更すること以外は同様にして光電変換素子を作製した。
【0186】
【化26】
【0187】
[化合物の吸収スペクトルの測定]
化合物(1)と比較化合物について、下記方法に従い、それぞれクロロホルム溶液吸収スペクトルと単材料膜の薄膜吸収スペクトルを測定した。この吸収スペクトルを図6に示す。図6(a)が化合物(1)、図6(b)が比較化合物の吸収スペクトルを示している。また、実施例1〜5における化合物(1)とフラーレンC60の共蒸着層の薄膜吸収スペクトルを、図7に示す。なお、図6及び図7に示す吸収スペクトルは、400〜800nm領域での最大吸光度を1として規格化したものを示している。更に、λL1、λL2、λM1、及びλM2を下記表に示す。
図6、図7及び下記表からわかるように、化合物(1)は、薄膜吸収スペクトルがクロロホルム溶液吸収スペクトルに対して短波側にシフトしており、薄膜状態で本発明が規定するところの、H会合性を示す化合物であることがわかる。一方、比較化合物は、薄膜吸収スペクトルがクロロホルム溶液吸収スペクトルに対して短波側にも長波側にもほぼ均等に広がっており、薄膜状態で本発明が規定するところの、H会合性及びJ会合性が同程度に混在していることが分かる。
(クロロホルム溶液吸収スペクトル)
クロロホルムに0.005mMの濃度で溶解させ、クロロホルムのみの場合をリファレンスとして各波長の垂直透過光成分を検出し、吸収スペクトルを測定した。
(薄膜吸収スペクトル)
ITOを100nm成膜したガラス基板上に、各化合物を100nm成膜し、ITO100nm成膜したガラス基板をリファレンスとして各波長の垂直透過光成分を検出し、吸収スペクトルを測定した。
【0188】
【表1】
【0189】
[X線回折の解析]
X線回折装置(2θ―θ法)を用い、実施例1〜5における化合物(1)とフラーレンC60の共蒸着層をITO電極基板上に成膜した場合のX線回折の解析を行った(θ=0°が基板の水平方向に、すなわち、θ=90°が基板に対して垂直方向に一致するように試料をセットした)。その結果を図8〜12に示す。
【0190】
[評価]
実施例1〜5及び比較例1の素子について、光電変換効率及び0〜98%信号強度への立ち上がり時間を測定し、評価した。ここで、光電変換効率は、400〜800nmの範囲で最も光電変換効率が高い波長(最大感度波長)での光電変換効率である。また、0〜98%信号強度への立ち上がり時間は、平衡状態の信号量を100%とした場合、光を入射してから、98%の信号量に到達するまでの時間である。更に、印加電圧は、各例で項目ごとに適当な同じ電界強度を印加した。ただし、画素電極側に正の電圧を印加し、画素電極側で電子を捕集した。この結果を下記表に示す。また、下記表中の「光電変換材料のH会合性」「光電変換層のH会合性強化度」とは、本明細書本文中で記載した吸収スペクトル挙動を表している。
【0191】
【表2】
【0192】
また、実施例2及び3の素子について、暗電流を測定した。印加電圧は上記と同様とした。暗電流は、作成した素子にソースメーターを接続し、光が当たらない状態で電圧印加しながら流れる電流量を測定する事で計測した。実施例2,3の暗電流の測定結果を下記表に示す。
【0193】
【表3】
【0194】
表2に示すように、本実施例に係る素子は、光電変換効率に優れ、かつ応答時間が短いことが分かる。従って、本発明によれば、高感度かつ応答速度の高い光電変換素子を得ることができる。なお、H会合性が更に強化された実施例2及び3では、更に光電変換効率が向上していることがわかる。更に、表3より、光電変換膜中のフラーレンC60の配向性((111)配向)を制御することにより、暗電流がより低減された光電変換素子が得られることがわかる。また、本実施例1〜5の光電変換素子を用いて撮像素子を作製すると、高感度かつ応答速度の高い撮像素子が得られる。
【符号の説明】
【0195】
11 下部電極(導電性膜)
12 光電変換層(光電変換膜)
15 上部電極(透明導電性膜)
16A 電子ブロッキング層
16B 正孔ブロッキング層
100,200,300 撮像素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及びその製造方法並びに撮像素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子としては、半導体中に光電変換部位を2次元的に配列して画素とし、各画素で光電変換により発生した信号をCCDやCMOS形式により電荷転送、読み出す、平面型受光素子が広く用いられている。従来の光電変換部位は、一般にSiなどの半導体中にpn接合を形成するなどして形成されている。
近年、多画素化が進む中で画素サイズが小さくなっており、フォトダイオード部の面積が小さくなり、開口率の低下、集光効率の低下が問題になっている。開口率等を向上させる手法として、有機材料を用いた光電変換層(光電変換膜)を有する固体撮像素子が検討されている。
【0003】
有機光電変換素子においては、高いS/N比を得ることが重要な課題の1つである。有機光電変換素子のS/N比を高くするには、光電変換効率の向上、低暗電流化が必要とされる。光電変換効率を向上させる技術としては、光電変換膜においてpn接合やバルクへテロ構造を導入することが検討されている。また、低暗電流化のための技術としては、ブロッキング層の導入等が検討されている。
【0004】
pn接合やバルクへテロ構造の導入する場合、暗電流の増大が問題になることが多い。また、光電変換効率の改善程度も材料の組み合わせにより程度の差があり、特にバルクへテロ構造を導入する方法をとる場合、バルクへテロ構造導入前に対しS/Nが増大しない場合もあり、どの材料を組み合わせるかが重要となる。
【0005】
また、使用する材料の種類、光電変換層の膜構造は、光電変換効率(励起子解離効率、電荷輸送性)、暗電流(暗時キャリア量等)の主要因の一つであるとともに、これまでの報告ではほとんど触れられていないが、信号応答速度の支配因子となる。特に、有機光電変換素子を固体撮像素子として用いる場合、高光電変換効率、低暗電流、高速応答速度を全て満たすことが重要あるが、そのような性能を満たす有機光電変換材料、素子構造はこれまで具体的に示されていない。
【0006】
有機光電変換膜において、高光電変換効率(高励起子解離効率)の発現のために、フラーレン又はフラーレン誘導体を用いたバルクへテロ構造を導入する技術が知られている。
例えば特許文献1において、フラーレン又はフラーレン誘導体を含有する光電変換層が開示されている。しかしながら、光電変換効率や応答速度の向上及び暗電流の低減においてさらなる改良が求められている。
【0007】
また、特許文献2には、複数の有機半導体によるバルクヘテロ膜を用い、かつ少なくとも1つの有機半導体が結晶粒子となっている太陽電池が記載されているが、高速応答性や暗電流の低減について開示されておらず、光電変換素子の撮像素子への適用に関する記載もない。
更に、非特許文献1において、高効率化に関して光電変換層の膜構造の重要性が示唆されている。しかしながら、非特許文献1における光電変換素子も太陽電池を意図したものであり、かかる文献に記載の技術をそのまま撮像センサに適用すると、使用材料、膜構造に起因する暗電流が大きく、撮像素子として使用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−123707号公報
【特許文献2】特開2002−076391号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Jpn.J.Appl.Phys,43,L1014(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、光電変換効率及び高速応答性に優れた光電変換素子及び固体撮像素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らによる鋭意検討の結果、高光電変換効率を得るためには、光電変換材料とフラーレン類の間でより効率的に励起子解離が行えるよう、光電変換材料とフラーレン類との界面での励起子クエンチサイトができない材料を組み合わせて接合状態を作ること、光電変換材料中の励起子拡散長を長くすることが重要であり、高速応答性を得るためには、フラーレン類中で電子が輸送性されるキャリアパスと光電変換材料中で正孔が輸送されるためのキャリアパスがそれぞれ輸送方向に分離して繋がった状態の膜構造とすることが重要であることがわかった。このような知見に基づいて、以下の手段により上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、上記課題は以下の手段により解決することができる。
(1)導電性膜と、光電変換層と、透明導電性膜とを含む光電変換素子であって、
前記光電変換層が、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが下記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とを含む、光電変換素子。
(A):λM1<λL1、かつλM2<λL2
(B):λM1<λL1、かつΔ|λM1−λL1|>Δ|λM2−λL2|
(A)及び(B)において、λL1、λL2、λM1、及びλM2は、波長400〜800nmの範囲における最大吸収強度の1/2の吸収強度を示す波長であって、λL1及びλL2は、前記光電変換材料をクロロホルムに溶解させたときのクロロホルム溶液スペクトルにおける波長を表し、λM1及びλM2は、前記光電変換材料単独の薄膜吸収スペクトルにおける波長を表す。ただし、λL1<λL2、λM1<λM2である。
(2)前記条件(B)が下記条件(B’)である、上記(1)に記載の光電変換素子。
(B’):λM1<λL1、かつΔ|λM1―λL1|>2×Δ|λM2―λL2|
(3)前記条件(B)が下記条件(B”)である、上記(1)に記載の光電変換素子。
(B”):λM1<λL1、かつΔ|λM1―λL1|>3×Δ|λM2―λL2|
(4)前記フラーレン又はフラーレン誘導体の少なくとも一部が結晶化した状態を含む、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
(5)前記フラーレン又はフラーレン誘導体が、基板に対して(111)方向に配向している、上記(4)に記載の光電変換素子。
(6)前記導電性膜と、前記光電変換層と、前記透明導電性膜とがこの順に積層された、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えた撮像素子であって、
前記光電変換層が上方に積層された半導体基板と、
前記半導体基板内に形成され、前記光電変換層で発生した電荷を蓄積するための電荷蓄積部と、
前記光電変換層の電荷を前記電荷蓄積部へ伝達するための接続部とを備えた撮像素子。
(8)上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、
基板上に、前記導電性膜、前記光電変換層、及び前記透明導電性膜を形成する工程を含み、
前記光電変換層の形成において、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが前記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とを、基板を加熱した状態で共蒸着する工程を含む、光電変換素子の製造方法。
(9)前記共蒸着における蒸着速度が0.5〜3Å/sである、上記(8)に記載の製造方法。
(10)前記共蒸着時の前記基板温度が100℃以下である、上記(8)又は(9)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光電変換効率及び高速応答性に優れた光電変換素子及び固体撮像素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】光電変換素子の構成例の一例を示す断面模式図である。
【図2】光電変換素子の他の構成例を示す断面模式図である。
【図3】撮像素子の1画素分の断面模式図である。
【図4】他の構成例の撮像素子の1画素分の断面模式図である。
【図5】他の構成例の撮像素子の1画素分の断面模式図である。
【図6】(a)が化合物(1)、図6(b)比較が化合物の吸収スペクトルを示す。
【図7】実施例1〜5における化合物(1)とフラーレンC60の共蒸着層の薄膜吸収スペクトルを示す。
【図8】実施例1におけるフラーレンC60を含む共蒸着層のX線回折パターンを示す。
【図9】実施例2におけるフラーレンC60を含む共蒸着層のX線回折パターンを示す。
【図10】実施例3におけるフラーレンC60を含む共蒸着層のX線回折パターンを示す。
【図11】実施例4におけるフラーレンC60を含む共蒸着層のX線回折パターンを示す。
【図12】実施例5におけるフラーレンC60を含む共蒸着層のX線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[光電変換素子]
本発明の光電変換素子は、導電性膜(導電性層とも言う)と、光電変換層(光電変換膜とも言う)と、透明導電性膜(透明導電性層とも言う)を含む光電変換素子であり、好ましくは上記それぞれの膜がこの順に積層されている。
以下、本発明の光電変換素子の好適な実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る光電変換素子の構成例を示す。図1に示す光電変換素子10は、基板Sと、基板S上に形成された下部電極として機能する導電性膜(以下、下部電極とする)11と、下部電極11上に形成された光電変換層12と、上部電極として機能する透明導電性膜(以下、上部電極とする)15とがこの順に積層された構成である。
【0015】
また、図2に別の光電変換素子の構成例を示す。図2に示す光電変換素子は、電荷ブロッキング層(電子ブロッキング層、正孔ブロッキング層)を備えた構成である。図2(a)に示す光電変換素子10aは、下部電極11と光電変換層12との間に電子ブロッキング層16Aを備えた構成であり、図2(b)に示す光電変換素子10bは、更に上部電極15と光電変換層12との間に正孔ブロッキング層16Bを備えた構成である。
図2に示すように、電子ブロッキング層16A、正孔ブロッキング層16Bを設けることにより、電圧が印加されたときに電極から光電変換層12に電子又は正孔の注入を抑制することができ、より確実に暗電流の低減を図ることができる。
なお、図2に示す構成は、電子を上部電極15に移動させ、正孔を下部電極11に移動させるように電圧を印加させる(すなわち、上部電極15を電子取り出し用電極とする)構成であるが、電子を下部電極11に移動させ、正孔を上部電極15に移動させるように電圧を印加させる(すなわち、下部電極11を電子取り出し用電極とする)場合は、下部電極11と光電変換層12との間に正孔ブロッキング層、上部電極15と光電変換層12との間に電子ブロッキング層を形成する。
また、電荷ブロッキング層を複数形成する構成とすることもできる。
【0016】
本実施形態に係る光電変換素子を構成する要素について説明する。
(電極)
電極(上部電極(透明導電性膜)15と下部電極(導電性膜)11)は、導電性材料から構成される。導電性材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、又はこれらの混合物などを用いることができる。
上部電極15から光が入射されるため、上部電極15は検知したい光に対し十分透明である事が必要である。具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属薄膜、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、高導電性、透明性等の点から、導電性金属酸化物である。上部電極15は光電変換層12上に成膜するため、該光電変換層12の特性を劣化させることのない方法で成膜される事が好ましい。
【0017】
下部電極11は、用途に応じて、透明性を持たせる場合と、逆に透明を持たせず光を反射させるような材料を用いる場合等がある。具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル、チタン、タングステン、アルミ等の金属及びこれらの金属の酸化物や窒化チタンなどの窒化物などの導電性化合物、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。
【0018】
電極を形成する方法は特に限定されず、電極材料との適正を考慮して適宜選択することができる。具体的には、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等により形成することができる。
電極の材料がITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で形成することができる。更に、ITOを用いて作製された膜に、UV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。
【0019】
上部電極15はプラズマフリーで作製することが好ましい。プラズマフリーで上部電極15を作成することで、プラズマが基板に与える影響を少なくすることができ、光電変換特性を良好にすることができる。ここで、プラズマフリーとは、上部電極15の成膜中にプラズマが発生しないか、又はプラズマ発生源から基体までの距離が2cm以上、好ましくは10cm以上、更に好ましくは20cm以上であり、基体に到達するプラズマが減ずるような状態を意味する。
【0020】
上部電極15の成膜中にプラズマが発生しない装置としては、例えば、電子線蒸着装置(EB蒸着装置)やパルスレーザー蒸着装置がある。EB蒸着装置又はパルスレーザー蒸着装置については、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)、及びそれらに付記されている参考文献等に記載されているような装置を用いることができる。以下では、EB蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をEB蒸着法と言い、パルスレーザー蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をパルスレーザー蒸着法と言う。
【0021】
プラズマ発生源から基体への距離が2cm以上であって基体へのプラズマの到達が減ずるような状態を実現できる装置(以下、プラズマフリーである成膜装置という)については、例えば、対向ターゲット式スパッタ装置やアークプラズマ蒸着法などが考えられ、それらについては沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)、及びそれらに付記されている参考文献等に記載されているような装置を用いることができる。
【0022】
透明な導電性金属酸化物(TCO)などの透明導電膜を上部電極15とした場合、DCショート、あるいはリーク電流増大が生じる場合がある。この原因の一つは、光電変換層12に導入される微細なクラックがTCOなどの緻密な膜によってカバレッジされ、反対側の第一電極膜11との間の導通が増すためと考えられる。そのため、Alなど膜質が比較して劣る電極の場合、リーク電流の増大は生じにくい。上部電極15の膜厚を、光電変換層12の膜厚(すなわち、クラックの深さ)に対して制御する事により、リーク電流の増大を大きく抑制できる。上部電極15の厚みは、光電変換層12厚みの1/5以下、好ましくは1/10以下であるようにする事が望ましい。
【0023】
通常、導電性膜をある範囲より薄くすると、急激な抵抗値の増加をもたらすが、本実施形態に係る光電変換素子を組み込んだ固体撮像素子では、シート抵抗は、好ましくは100〜10000Ω/□でよく、薄膜化できる膜厚の範囲の自由度は大きい。また、上部電極(透明導電性膜)15は厚みが薄いほど吸収する光の量は少なくなり、一般に光透過率が増す。光透過率の増加は、光電変換層12での光吸収を増大させ、光電変換能を増大させるため、非常に好ましい。薄膜化に伴う、リーク電流の抑制、薄膜の抵抗値の増大、透過率の増加を考慮すると、上部電極15の膜厚は、5〜100nmであることが好ましく、更に好ましくは5〜20nmである事が望ましい。
【0024】
(光電変換層)
光電変換層は、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが下記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とから形成される。
(A):λM1<λL1、かつλM2<λL2
(B):λM1<λL1、かつΔ|λM1−λL1|>Δ|λM2−λL2|
(A)及び(B)において、λL1、λL2、λM1、及びλM2は、波長400〜800nmの範囲における最大吸収強度の1/2の吸収強度を示す波長であって、λL1及びλL2は、前記光電変換材料をクロロホルムに溶解させたときのクロロホルム溶液スペクトルにおける波長を表し、λM1及びλM2は、前記光電変換材料単独の薄膜吸収スペクトルにおける波長を表す。ただし、λL1<λL2、λM1<λM2である。すなわち、λL1、λM1は短波側、λL2、λM2は長波側の波長を示す。
【0025】
つまり、前記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料は、薄膜吸収スペクトルがクロロホルム溶液吸収スペクトルに対して短波側にシフトするものである。一般にクロロホルム溶媒での吸収スペクトルは、溶媒効果により吸収スペクトルが長波化し、光電変換材料自体の持つ分子として吸収はより短波な位置にあると考えられ、本特許記載の方法で規定されるこのような光電変換材料は、薄膜状態ではJ会合性比率に比べH会合性比率が高くなっているか、J会合性方向の相互作用の種類が少ない、あるいは弱い(分子同士の接合状態がより少ない種類の状態として存在している)と考えられる。一般に、蒸着膜はH会合性が高いもの、J会合性が高いもの、H、J会合性が同程度に混在するものがあるが、本発明者らの検討によれば、よりH会合性比率の高い(あるいは、J会合性比率の少ない、会合状態の揃った)膜構造を実現できる光電変換材料を用いることにより、極めて高い応答速度が得られるとの知見が得られた。
H会合性比率が高くなっている状態では、正孔、電子輸送部分(ドナー部、アクセプター部)が、一方向に重なった構造になる。正孔、電子輸送部分が電荷輸送方向に対しランダムに存在したり、互い違いに存在すると、各電荷が輸送される際、輸送に関与しない構造を挟んで電荷を輸送しなければならないため、輸送阻害が生じると考えられるが、上記H会合性比率が高い状態では、そのような輸送に関与しない構造を挟んで輸送されないため、拘束応答が得られやすいと考えられる。また、J会合性のモーメント方向の輸送は、まさに、各電荷輸送部が互い違いに存在する方向になるため、J会合性方向の相互作用の種類が少ない、あるいは弱い方がより各電荷輸送部位の重なりが大きくなるため、高速応答が可能になると考えられる。
【0026】
前記条件(B)は、下記条件(B’)であることが好ましく、更に下記条件(B”)であることがより好ましい。
(B’):λM1<λL1、かつΔ|λM1―λL1|>2×Δ|λM2―λL2|
(B”):λM1<λL1、かつΔ|λM1―λL1|>3×Δ|λM2―λL2|
【0027】
前記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料としては、有機材料であることが好ましく、トリアリールアミン化合物であることがより好ましい。更にトリアリールアミン化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
一般式(I)
【0028】
【化1】
【0029】
一般式(I)中、Z1は5又は6員環を形成するのに必要な原子群を表す。L1、L2、L3はそれぞれ無置換メチン基、又は置換メチン基を表す。D1は原子群を表す。
nは0以上の整数を表す。
【0030】
Z1は5又は6員環を形成するのに必要な原子群を表し、形成される環としては、通常メロシアニン色素で酸性核として用いられるものが好ましく、その具体例としては例えば以下のものが挙げられる。
【0031】
(a)1,3−ジカルボニル核:例えば1,3−インダンジオン核、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン等。
(b)ピラゾリノン核:例えば1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾイル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン等。
(c)イソオキサゾリノン核:例えば3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オン等。
(d)オキシインドール核:例えば1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドール等。
(e)2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核:例えばバルビツル酸又は2−チオバルビツル酸及びその誘導体等。誘導体としては例えば1−メチル、1−エチル等の1−アルキル体、1,3−ジメチル、1,3−ジエチル、1,3−ジブチル等の1,3−ジアルキル体、1,3−ジフェニル、1,3−ジ(p−クロロフェニル)、1,3−ジ(p−エトキシカルボニルフェニル)等の1,3−ジアリール体、1−エチル−3−フェニル等の1−アルキル−1−アリール体、1,3−ジ(2―ピリジル)等の1,3位ジヘテロ環置換体等が挙げられる。
(f)2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核:例えばローダニン及びその誘導体等。誘導体としては例えば3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−アリルローダニン等の3−アルキルローダニン、3−フェニルローダニン等の3−アリールローダニン、3−(2−ピリジル)ローダニン等の3位ヘテロ環置換ローダニン等が挙げられる。
【0032】
(g)2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(2−チオ−2,4−(3H,5H)−オキサゾールジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等。
(h)チアナフテノン核:例えば3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイド等。
(i)2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン等。
(j)2,4−チアゾリジンジオン核:例えば2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオン等。
(k)チアゾリン−4−オン核:例えば4−チアゾリノン、2−エチル−4−チアゾリノン等。
(l)2,4−イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核:例えば2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(m)2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン(2−チオヒダントイン)核:例えば2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(n)2−イミダゾリン−5−オン核:例えば2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オン等。
(o)3,5−ピラゾリジンジオン核:例えば1,2−ジフェニル−3,5−ピラゾリジンジオン、1,2−ジメチル−3,5−ピラゾリジンジオン等。
(p)ベンゾチオフェンー3−オン核:例えばベンゾチオフェンー3−オン、オキソベンゾチオフェンー3−オン、ジオキソベンゾチオフェンー3−オン等。
(q)インダノン核:例えば1−インダノン、3−フェニルー1−インダノン、3−メチルー1−インダノン、3,3−ジフェニルー1−インダノン、3,3−ジメチルー1−インダノン等。
【0033】
Z1で形成される環として好ましくは、1,3−ジカルボニル核、ピラゾリノン核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えばバルビツル酸核、2-チオバルビツール酸核)、2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核、2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核、2,4−チアゾリジンジオン核、2,4−イミダゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン核、2−イミダゾリン−5−オン核、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェンー3−オン核、インダノン核であり、より好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えばバルビツル酸核、2-チオバルビツール酸核)、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェンー3−オン核、インダノン核であり、更に好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えばバルビツル酸核、2-チオバルビツール酸核)であり、特に好ましくは1,3−インダンジオン核、バルビツル酸核、2-チオバルビツール酸核、最も好ましくは1,3−インダンジオン核及びそれらの誘導体である。
【0034】
Z1により形成される環として好ましいものは下記の式で表される。
【0035】
【化2】
【0036】
Z3は5ないし6員環を形成するに必要な原子群を表す。Z3としては上記Z1により形成される環中から選ぶことができ、好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)であり、特に好ましくは1,3−インダンジオン核、バルビツル酸核、2-チオバルビツール酸核及びそれらの誘導体である。
【0037】
アクセプター部同士の相互作用を制御する事により、C60などのフラーレン又はフラーレン誘導体と共蒸着膜とした際、高い正孔輸送性を発現させる事ができることを見出した。アクセプター部の構造、及び立体障害となる置換基の導入により相互作用の制御を行う事が可能である。バルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核において、2つのN位の水素を好ましくは2つとも、置換基により置換する事で好ましく分子間相互作用を制御する事が可能であり、置換基としては後述の置換基Wがあげられるが、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基である。
Z1により形成される環が1,3−インダンジオン核の場合、下記一般式(IV)で示される基又は下記一般式(V)で示される基である場合が好ましい。
一般式(IV)
【0038】
【化3】
【0039】
R41〜R44はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
一般式(V)
【0040】
【化4】
【0041】
R41、R44、R45〜R48はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
前記一般式(IV)で示される基の場合、R41〜R44はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては例えば後述の置換基Wとして挙げたものが適用できる。また、R41〜R44はそれぞれ隣接するものが、結合して環を形成することができ、R42とR43が結合して環(例えば、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環)を形成する場合が好ましい。R41〜R44としては全てが水素原子である場合が好ましい。
前記一般式(IV)で示される基が前記一般式(V)で示される基である場合が好ましい。
前記一般式(V)で示される基の場合、R41、R44、R45〜R48はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては例えば後述の置換基Wとして挙げたものが適用できる。R41、R44、R45〜R48としては全てが水素原子である場合が好ましい。
【0042】
Z1により形成される環が2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)の場合、下記一般式(VI)で示される基である場合が好ましい。
一般式(VI)
【0043】
【化5】
【0044】
R81、R82はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R83は、酸素原子、硫黄原子又は置換基を表す。
前記一般式(VI)で示される基の場合、R81、R82はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては例えば後述の置換基Wとして挙げたものが適用できる。R81、R82としてはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基(2−ピリジル等)が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、t−ブチル)を表す場合がより好ましい。
R83は、酸素原子、硫黄原子又は置換基を表すが、R83としては酸素原子、又は硫黄原子を表す場合が好ましい。前記置換基としては結合部が窒素原子であるものと炭素原子であるものが好ましく、窒素原子の場合はアルキル基(炭素数1〜12)若しくはアリール基(炭素数6〜12)が好ましく、具体的にはメチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、フェニルアミノ基、又はナフチルアミノ基が挙げられる。炭素原子の場合は更に少なくとも一つの電子吸引性基が置換していれば良く、電子吸引性基としてはカルボニル基、シアノ基、スルホキシド基、スルホニル基、又はホスホリル基が挙げられ、更に置換基を有している場合が良い。この置換基としては後述の置換基Wが挙げられる。R83としては、該炭素原子を含む5員環又は6員環を形成するものが好ましく、具体的には下記構造のものが挙げられる。
【0045】
【化6】
【0046】
【化7】
【0047】
上記の基中のPhはフェニル基を表す。
式(I)において、L1、L2、L3はそれぞれ独立に、無置換メチン基、又は置換メチン基を表す。置換メチン基同士が結合して環(例、6員環例えばベンゼン環)を形成してもよい。置換メチン基の置換基は後述の置換基Wが挙げられるが、L1、L2、L3は全てが無置換メチン基である場合が好ましい。
【0048】
nは0以上の整数を表し、好ましくは0以上3以下の整数を表し、より好ましくは0である。nを増大させた場合、吸収波長域が長波長にする事ができるが、熱による分解温度が低くなる。可視域に適切な吸収を有し、かつ蒸着成膜時の熱分解を抑制する点でn=0が好ましい。
【0049】
式(I)において、D1は原子群を表す。前記D1は−NRa(Rb)を含む基であることが好ましく、更に、前記D1が−NRa(Rb)が置換したアリール基(好ましくは、置換されてよい、フェニル基、ナフチル基又はアントラセニル基、より好ましくは、置換基されてもよい、フェニル基又はナフチル基)を表す場合が好ましい。Ra、Rbはそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を表し、Ra、Rbで表される置換基は後述の置換基Wが挙げられるが、好ましくは、脂肪族炭化水素基(好ましくは置換されてよいアルキル基、アルケニル基)、アリール基(好ましくは置換されてよいフェニル基)、又はヘテロ環基である。
前記ヘテロ環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサジアゾール等の5員環が好ましい。
Ra、Rbが置換基(好ましくはアルキル基、アルケニル基)である場合、それらの置換基は、−NRa(Rb)が置換したアリール基の芳香環(好ましくはベンゼン環)骨格の水素原子、又は置換基と結合して環(好ましくは6員環)を形成してもよい。この場合、D1は後記の一般式(VIII)、(IX)又は(X)で表される場合が好ましい。
Ra、Rbは互いに置換基同士が結合して環(好ましくは5員又は6員環、より好ましくは6員環)を形成してもよく、また、Ra、RbはそれぞれがL(L1、L2、L3のいずれかを表す)中の置換基と結合して環(好ましくは5員又は6員環、より好ましくは6員環)を形成してもよい。
D1はパラ位にアミノ基が置換したアリール基(好ましくはフェニル基)である場合が好ましい。この場合、D1は下記一般式(II)で示されることが好ましい。
前記アミノ基は置換されていてもよい。該アミノ基の置換基としては、後述の置換基Wが挙げられるが、脂肪族炭化水素基(好ましくは置換されてよいアルキル基)、アリール基(好ましくは置換されてよいフェニル基)、又はヘテロ環基が好ましい。
前記アミノ基はアリール基が2つ置換した、いわゆるジアリール基置換のアミノ基が好ましく、この場合、D1は下記一般式(III)で示されることが好ましい。
更に、前記アミノ基の置換基(好ましくは置換されてよいアルキル基、アルケニル基)は、該アミノ基がパラ位に置換したアリール基の芳香環(好ましくはベンゼン環)骨格の水素原子、又は置換基と結合して環(好ましくは6員環)を形成してもよい。
一般式(II)
【0050】
【化8】
【0051】
式中、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。またR1とR2、R3とR4、R5とR6、R2とR5、R4とR6がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
一般式(III)
【0052】
【化9】
【0053】
式中、R11〜R14、R20〜R24、R30〜R34はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。またR11〜R14、R20〜R24、R30〜R34がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
【0054】
Ra、Rbが脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基の場合の置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルホニル基、シリル基、芳香族ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、芳香族ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、芳香族ヘテロ環基である。具体例は後述の置換基Wで挙げたものが適用できる。
【0055】
Ra、Rbとして好ましくはアルキル基、アリール基、又は芳香族へテロ環基である。Ra、Rbとして特に好ましくはアルキル基、Lと連結して環を形成するアルキレン基、又はアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、Lと連結して5ないし6員環を形成するアルキレン基、又は置換若しくは無置換のフェニル基であり、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基である。
【0056】
前記D1が下記の一般式(VII)で示される場合も好ましい。
一般式(VII)
【0057】
【化10】
【0058】
式中、R91〜R98はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。mは0以上の整数を表す。mは0又は1である場合が好ましい。Rx、Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、mが2以上の場合、各6員環に結合するRx、Ryは異なる置換基であっても良い。また、R91とR92、R92とRxと、RxとR94、R94とR97、R93とRy、RyとR95、R95とR96、R97とR98はそれぞれ互いに独立して環を形成しても良い。また、L3(nが0のときはL1)との結合部は、R91、R92、R93の位置でも良く、その場合、一般式(VII)中のL3との結合部として表記されている部位に、それぞれR91、R92、R93に相当する置換基又は水素原子が結合し、隣接するR同士は結合して環を形成しても良い。ここで、「隣接するR同士は結合して環を形成しても良い。」とは、例えば、R91がL3(nが0のときはL1)との結合部になる場合、一般式(VII)の結合部にはR90が結合しているとするとR90とR93とが結合し環を形成してもよく、また、R92がL3(nが0のときはL1)との結合部になる場合、一般式(VII)の結合部にはR90が結合しているとするとR90とR91、R90とR93とがそれぞれ結合し環を形成してもよく、また、R93がL3(nが0のときはL1)との結合部になる場合、一般式(VII)の結合部にはR90が結合しているとするとR90とR91、R91とR92とがそれぞれ結合し環を形成してもよいことを言う。
上記の環はベンゼン環である場合が好ましい。
R91〜R98、Rx、Ryの置換基は置換基Wが挙げられる。
R91〜R96はいずれも水素原子である場合が好ましく、Rx、Ryはいずれも水素原子である場合が好ましい。R91〜R96は水素原子であり、かつRx、Ryも水素原子である場合が好ましい。
前記R97及びR98は、それぞれ独立に、置換基されてよいフェニル基を表す場合が好ましく、該置換基としては置換基Wが挙げられるが、好ましくは無置換フェニル基である。
mは0以上の整数を表すが、0又は1が好ましい。
【0059】
前記D1が一般式(VIII)、(IX)又は(X)で表される基である場合も好ましい。
一般式(VIII)
【0060】
【化11】
【0061】
式中、R51〜R54はそれぞれ独立に、水素又は置換基を表す。該置換基として置換基Wが挙げられる。R52とR53、R51とR52はそれぞれ連結して環を形成してもよい。
一般式(IX)
【0062】
【化12】
【0063】
式中、R61〜R64はそれぞれ独立に、水素又は置換基を表す。該置換基として置換基Wが挙げられる。R62とR63、R61とR62はそれぞれ連結して環を形成してもよい。
一般式(X)
【0064】
【化13】
【0065】
式中、R71〜R73はそれぞれ独立に、水素又は置換基を表す。該置換基として置換基Wが挙げられる。R72とR73はそれぞれ連結して環を形成してもよい。
【0066】
前記D1は前記一般式(II)又は(III)で示される基がより好ましく用いられる。
一般式(II)中、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。またR1とR2、R3とR4、R5とR6、R2とR5、R4とR6がそれぞれ互いに結合し
て環を形成してもよい。
R1〜R4における置換基は置換基Wが挙げられるが、好ましくはR1〜R4が水素原子、又はR2とR5若しくはR4とR6が5員環を形成する場合であり、より好ましくはR1〜R4のいずれもが水素原子である場合である。
R5、R6における置換基は置換基Wが挙げられるが、置換基の中でも、置換若しくは無置換のアリール基が好ましく、置換アリール基の置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチレン基、フェナントリル基、アントリル基)が好ましい。R5、R6は好ましくはフェニル基、アルキル置換フェニル基、フェニル置換フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基又はフルオレニル基(好ましくは9,9’−ジメチル−2−フルオレニル基)である。
一般式(III)中、R11〜R14、R20〜R24、R30〜R34はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。またR11〜R14、R20〜R24、R30〜R34がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。その環形成の例としては、R11とR12、R13とR14が結合してベンゼン環を、R20〜R24の隣接する2つ(R24とR23、R23とR20、R20とR21、R21とR22)が結合してベンゼン環を、R30〜R34の隣接する2つ(R34とR33、R33とR30、R30とR31、R31とR32)が結合してベンゼン環を、R22とR34が結合してN原子と共に5員環を形成する場合が挙げられる。
R11〜R14、R20〜R24、R30〜R34で表される置換基は置換基Wが挙げられるが、好ましくはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)であり、これらの基は更に置換基W(好ましくはアリール基)が置換していてもよい。中でも、R20、R30が前記置換基である場合が好ましく、かつ、その他のR11〜R14、R21〜R24、R31〜R34は水素原子である場合がより好ましい。
【0067】
一般式(I)で表される化合物は、特開2000−297068号公報に記載の化合物であり、前記公報に記載のない化合物も、前記公報に記載の合成方法に準じて製造することができる。
以下に、一般式(I)で示される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
【化14】
【0069】
【化15】
【0070】
【化16】
【0071】
【化17】
【0072】
【化18】
【0073】
【化19】
【0074】
【化20】
【0075】
上記のR101、R102はそれぞれ独立に水素原子、又は置換基を表す。置換基としては後述の置換基Wが挙げられるが、アルキル基、又はアリール基が好ましい。
前記一般式(I)で表される化合物は、特開2000−297068号公報に従って、合成することができる。
【0076】
また、フラーレン又はフラーレン誘導体と前記光電変換材料とで形成される光電変換層中において、前記光電変換材料のH会合性がより高められた状態にすることが好ましい。光電変換層中において前記光電変換材料のH会合性がより高められた状態(よりJ会合性分比率の少ない状態)にすることで、高い光電変換効率を実現することができる。
ここで、「H会合性がより高められた(よりJ会合性分比率の少ない)状態」(「光電変換層のH会合性強化度」)とは、基板上に成膜した混合層(フラーレン又はフラーレン誘導体と光電変換材料との混合層)が、400〜800nmの範囲において、最大吸収波長λmaxでの吸光度の半分の強度を示す波長を示す波長λn1(λmax<λn1)とした場合、成膜条件を変更する事によってλn1をより小さくした状態を指す。
前記光電変換材料のH会合性がより高められた状態とするには、適当な光電変換材料を選択するとともに、光電変換層中における前記光電変換材料の含有量、成膜速度、及び蒸着時の基板温度を適切に制御することで実現することができる。
【0077】
また、光電変換層はフラーレン又はフラーレン誘導体を含む。光電変換層は、好ましくは、フラーレン又はフラーレン誘導体と、それ以外の少なくとも1種の材料が混合、若しくは積層された状態で形成される。
前記光電変換材料が電子輸送性が低い化合物であっても、前記光電変換材料とフラーラン又はフラーレン誘導体との混合層とすることにより、正孔を前記光電変換材料中で移動させ、電子をフラーレン又はフラーレン誘導体中で移動させることで、光電変換材料の低い電子輸送性を補完し、高い応答速度が得られる。
フラーレンとは、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブを表す。
フラーレン誘導体とは、フラーレンに置換基が付加された化合物である。置換基としては、アルキル基、アリール基、又は複素環基が好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、炭素数1〜5がより好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。複素環基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、キノリニル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
フラーレン誘導体としては、特に以下の化合物が好ましい。
【0078】
【化21】
【0079】
【化22】
【0080】
また、フラーレン及びフラーレン誘導体としては、日本化学会編 季刊化学総説No.43(1999)、特開平10−167994号公報、特開平11−255508号公報、特開平11−255509号公報、特開2002−241323号公報、特開2003−196881号公報等に記載の化合物を用いることもできる。
【0081】
光電変換層中において、フラーレン又はフラーレン誘導体の少なくとも一部が結晶化した状態であることが好ましい。
光電変換層中において、フラーレン又はフラーレン誘導体の少なくとも一部が結晶化した状態とは、光電変換層の少なくとも一部分においてフラーレン又はフラーレン誘導体が結晶化していることを意味する。例えば、光電変換層が、結晶化したフラーレン又はフラーレン誘導体からなる層部分と、結晶化せず無配向(例えばアモルファス)なフラーレン又はフラーレン誘導体からなる層部分との積層構造からなる場合などがあり得る。結晶化した層部分の検出は、断面TEM像での電子線回折が存在する部位を計測することで求めることができる。
フラーレン又はフラーレン誘導体が結晶化した状態であるか否かは、フラーレン又はフラーレン誘導体と前記光電変換材料とを基板上に共蒸着した膜のX線回折像や断面の電子線回折像に、フラーレン又はフラーレン誘導体の結晶構造に由来する結晶ピークあるいは回折点が認められるかどうかで判断できる。
フラーレン又はフラーレン誘導体の少なくとも一部が結晶化した状態であることにより、更に高い光電変換効率が得られるとともに、フラーレン又はフラーレン誘導体のキャリアパスが有効に形成された状態となるので、素子の高速応答性に更に寄与することができる。
フラーレン又はフラーレン誘導体の少なくとも一部を結晶化させる手段としては、適当な光電変換材料を選択した上で、フラーレン類の比率を上げること、成膜中に基板を加熱すること等が挙げられる。
【0082】
また、フラーレン又はフラーレン誘導体が結晶化した状態である場合、基板に対して(111)方向に配向している(以下、「(111)配向している」ともいう)ことが好ましい。フラーレン又はフラーレン誘導体が(111)配向していることにより、ランダムに結晶化した構造を含む場合よりもフラーレン又はフラーレン誘導体を含む光電変換膜の凹凸が抑制され、それにより上部電極がその凹凸に入り込んで下部電極と近接してリーク電流が増大する事が抑制されたり、光電変換膜の上に成膜する層(例えば電荷ブロッキング層)の平坦性、カバレッジが向上するため注入電流が抑制されたりする事となり、高い暗電流抑制効果が得られる。
フラーレン又はフラーレン誘導体が前記方向に配向した状態であることは、基板上に成膜した光電変換層をX線回折法で測定することにより、フラーレン又はフラーレン誘導体の結晶のピークが観察され、かつ該ピークが基板に垂直な方向に(111)方向の指数のみ複数((111)、(222)、(333)など)観測されることから確認できる。
光電変換層中において、フラーレン又はフラーレン誘導体が結晶化した層部分においては、一様に(配向方向が同じに)結晶化していることが好ましく、該層部分において50〜100%のフラーレン又はフラーレン誘導体が結晶化していることが好ましく、80〜100%のフラーレン又はフラーレン誘導体が結晶化していることが好ましい。結晶化している割合、及び一様に結晶化している割合は、X線回折によるピークの比率や断面TEM像での電子線回折により求めることができる。
【0083】
フラーレン又はフラーレン誘導体の前記結晶方向を制御するには、成膜時における基板温度及び蒸着速度等を調節することでも前記結晶方向を実現することができる。具体的には、基板温度をより高い温度で加熱し、蒸着速度をより遅い速度にすることが好ましい。但し、過度に高温、低蒸着速度にすると、フラーレン又はフラーレン誘導体の結晶化が促進され、フラーレン又はフラーレン誘導体と光電変換材料との混合層における膜面の凹凸が増大することがある。膜面の凹凸が増大すると、その上層に電極を敷設した際、ショート(リーク電流)が増大する原因となり、暗電流が増大するため、好ましくない。
【0084】
また、光電変換膜中に存在するフラーレン又はフラーレン誘導体以外の材料の種類やフラーレン又はフラーレン誘導体の比率を変更することによっても膜凹凸の増大が抑制しつつ前記結晶方向を実現することができるので、素子の感度、高速応答性、低暗電流性が優れたものとなる。
具体的には、フラーレン及びフラーレン誘導体の含有量は、光電変換層中50モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましく、75モル%以上が更に好ましい。また、含有量の上限は、90モル%が好ましい。
【0085】
更に、フラーレン又はフラーレン誘導体と光電変換材料との混合層の上に、膜応答を緩和する層を積層することによっても、前記膜面凹凸を抑制することができる。この膜応答を緩和する層としては、電荷ブロック層(電子ブロッキング層、正孔ブロッキング層)がその効果を担うことが好ましい。
なお、混合層の膜面凹凸は、算術平均粗さRaが3.0nm以下であることが好ましく、2.0nm以下であることがより好ましい。
【0086】
光電変換層は、蒸着により形成することができる。蒸着は、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)のいずれでもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。真空蒸着により成膜する場合、真空度、蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定することができる。
また、光電変換層を形成する際、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが前記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とを、基板を加熱した状態で共蒸着することが好ましい。
【0087】
基板温度は、光電変換膜中に存在するフラーレン又はフラーレン誘導体以外の材料の種類、フラーレン又はフラーレン誘導体の含有比率等によって異なるが、120℃以下とすることが好ましく、100℃以下とすることがより好ましい。基板温度の下限は、60℃以上とすることが好ましく、70℃以上とすることがより好ましい。基板温度を上記のように制御することにより、フラーレン又はフラーレン誘導体を基板に対して一様に(111)配向させる上で好ましい。
また、蒸着速度は、光電変換膜中に存在するフラーレン又はフラーレン誘導体以外の材料の種類、フラーレン又はフラーレン誘導体の含有比率等によって異なるが、0.1〜15Å/sとすることが好ましく、電変換材料のH会合性をより高める観点から0.5〜3.0Å/sとすることがより好ましい。
【0088】
(電荷ブロッキング層)
本発明に係る光電変換素子は、前述のように電荷ブロッキング層を有することが好ましい。電荷ブロッキング層を有することにより、より確実に暗電流を抑制することができる。
電荷ブロッキング層(16A,16B)は、蒸着により形成することができる。蒸着は、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)のいずれでもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。真空蒸着により成膜する場合、真空度、蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定することができる。
電荷ブロッキング層の厚みは、10nm以上300nm以下が好ましく、更に好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。10nm以上とすることにより、好適な暗電流抑制効果が得られ、300nm以下とすることにより、好適な光電変換効率が得られる。
【0089】
(電荷ブロッキング層形成用材料)
電荷ブロッキング層(正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層)を形成するための材料としては、以下のものが挙げられる。正孔ブロッキング層は、電子受容性有機材料を用いることができる。
電子受容性材料としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物などを用いることができる。また、電子受容性有機材料でなくとも、十分な電子輸送性を有する材料ならば使用することは可能である。ポルフィリン系化合物や、DCM(4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(4−(ジメチルアミノスチリル))−4Hピラン)等のスチリル系化合物、4Hピラン系化合物を用いることができる。
具体的には、以下の化合物が好ましい。なお、以下の具体例において、Eaはその材料の電子親和力(eV)を示し、Ipはその材料のイオン化ポテンシャル(eV)を示す。
【0090】
【化23】
【0091】
電子ブロッキング層には、電子供与性有機材料を用いることができる。
具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、十分なホール輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。
具体的には、以下の化合物が好ましい。
【0092】
【化24】
【0093】
【化25】
【0094】
[撮像素子]
次に、光電変換素子を備えた撮像素子の構成例を説明する。なお、以下に説明する構成例において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
【0095】
(撮像素子の第1構成例)
図3は、撮像素子の1画素分の断面模式図である。
撮像素子100は、1画素が同一平面上でアレイ状に多数配置されたものであり、この1画素から得られる信号によって画像データの1つの画素データを生成することができる。
【0096】
図3に示す撮像素子の1画素は、n型シリコン基板1と、n型シリコン基板1上に形成された透明な絶縁膜7と、絶縁膜7上に形成された下部電極101、下部電極101上に形成された光電変換層102と、光電変換層102上に形成された透明電極材料を含む上部電極104とを有する光電変換素子を備えている。光電変換素子上には開口の設けられた遮光膜14が形成されている。上部電極104上には透明な絶縁膜105が形成されている。なお、遮光膜14は絶縁膜7中に形成されている形式も好ましい。
【0097】
n型シリコン基板1内には、その浅い方からp型不純物領域(以下、p領域と略す)4と、n型不純物領域(以下、n領域と略す)3と、p領域2がこの順に形成されている。p領域4の遮光膜14によって遮光されている部分の表面部には、高濃度のp領域6が形成され、p領域6の周りはn領域5によって囲まれている。
【0098】
p領域4とn領域3とのpn接合面のn型シリコン基板1表面からの深さは、青色光を吸収する深さ(約0.2μm)となっている。したがって、p領域4とn領域3は、青色光を吸収してそれに応じた電荷を蓄積するフォトダイオード(Bフォトダイオード)を形成する。
【0099】
p領域2とn型シリコン基板1とのpn接合面のn型シリコン基板1表面からの深さは、赤色光を吸収する深さ(約2μm)となっている。したがって、p領域2とn型シリコン基板1は、赤色光を吸収してそれに応じた電荷を蓄積するフォトダイオード(Rフォトダイオード)を形成する。
【0100】
p領域6は、光電変換層102の電荷を蓄積する電荷蓄積部であり、絶縁膜7に開けられた開口に形成された接続部9を介して下部電極101と電気的に接続されている。下部電極101で捕集された正孔は、p領域6の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、p領域6にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部9は、下部電極101とp領域6以外とは絶縁膜8によって電気的に絶縁される。
【0101】
p領域2に蓄積された電子は、n型シリコン基板1内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域4に蓄積された電子は、n領域3内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域6に蓄積されている電子は、n領域5内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、撮像素子100外部へと出力される。各MOS回路は配線10によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。なお、p領域2、p領域4に引き出し電極を設け、所定のリセット電位をかけると、各領域が空乏化し、各pn接合部の容量は限りなく小さい値になる。これにより、接合面に生じる容量を極めて小さくすることができる。
【0102】
このような構成により、光電変換層102でG光を光電変換し、n型シリコン基板1中のBフォトダイオードとRフォトダイオードでB光及びR光を光電変換することができる。また上部でG光がまず吸収されるため、B−G間及びG−R間の色分離は優れている。これが、シリコン基板内に3つのPDを積層し、シリコン基板内でBGR光を全て分離する形式の撮像素子に比べ、大きく優れた点である。
なお、上記基板1、各領域2〜6について、それぞれ、p型とn型を逆にすることにより下部電極101で電子を捕集する形式にすることも可能である。また、領域2、3を省略し、絶縁膜105上、若しくはその下にカラーフィルターを形成することで、該カラーフィルターでBGRの色分離を行い、各画素それぞれに該当する光に対し光電変換層102で光電変換して各画素でBGRそれぞれの光を検出する形式も可能である。その場合、下部電極101はBGR各光を透過しない事が望ましく、例えば、Al、Mo、TiNなどが好ましく用いられる。
【0103】
(撮像素子の第2構成例)
本実施形態では、図3の撮像素子のようにシリコン基板1内に2つのフォトダイオードを積層する構成ではなく、入射光の入射方向に対して垂直な方向に2つのフォトダイオードを配列して、p型シリコン基板内で2色の光を検出するようにしたものである。
【0104】
図4は、本構成例の撮像素子の1画素分の断面模式図である。
なお、図3の撮像素子例の場合と同様に、図4中の各領域についてp型とn型を逆転させることにより、下部電極101で電子を捕集する形式にすることも可能である。
図4に示す撮像素子200の1画素は、n型シリコン基板17と、n型シリコン基板17上方に形成された下部電極101、下部電極101上に形成された光電変換層102と、該光電変換層102上に形成された上部電極104とを有する光電変換素子を備えている。光電変換素子上には開口の設けられた遮光膜34が形成されている。また、上部電極104上には透明な絶縁膜33が形成されている。なお、遮光部34は絶縁膜24中に形成されている形式も好ましい。
【0105】
遮光膜34の開口下方のn型シリコン基板17表面には、n領域19とp領域18からなるフォトダイオードと、n領域21とp領域20からなるフォトダイオードとが、n型シリコン基板17表面に並んで形成されている。n型シリコン基板17表面上の任意の面方向が、入射光の入射方向に対して垂直な方向となる。
【0106】
n領域19とp領域18からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してB光を透過するカラーフィルタ28が形成され、その上に下部電極101が形成されている。n領域21とp領域20からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してR光を透過するカラーフィルタ29が形成され、その上に下部電極101が形成されている。カラーフィルタ28,29の周囲は、透明な絶縁膜25で覆われている。
【0107】
n領域19とp領域18からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ28を透過したB光を吸収してそれに応じた電子を発生し、発生した電子をp領域18に蓄積する基板内光電変換部として機能する。n領域21とp領域20からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ29を透過したR光を吸収してそれに応じた電子を発生し、発生した電子をp領域20に蓄積する基板内光電変換部として機能する。
【0108】
n型シリコン基板17表面の遮光膜34によって遮光されている部分には、p領域23が形成され、p領域23の周りはn領域22によって囲まれている。
【0109】
p領域23は、絶縁膜24,25に開けられた開口に形成された接続部27を介して下部電極101と電気的に接続されている。下部電極101で捕集された正孔は、p領域23の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、p領域23にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部27は、下部電極101とp領域23以外とは絶縁膜26によって電気的に絶縁される。
【0110】
p領域18に蓄積された電子は、n型シリコン基板17内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域20に蓄積された電子は、n型シリコン基板17内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域23に蓄積されている電子は、n領域22内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、撮像素子200外部へと出力される。各MOS回路は配線35によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。
なお、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成してもよい。つまり、p領域18、p領域20、及びp領域23に蓄積された電子をn型シリコン基板17内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその電子に応じた信号を出力させるような信号読出し部であってもよい。
【0111】
このように、信号読み出し部は、CCD及びCMOS構造が挙げられるが、消費電力、高速読出し、画素加算、部分読出し等の点からは、CMOSの方が好ましい。
なお、図4の撮像素子では、カラーフィルタ28,29によってR光とB光の色分離を行っているが、カラーフィルタ28,29を設けず、p領域20とn領域21のpn接合面の深さと、p領域18とn領域19のpn接合面の深さを各々調整して、それぞれのフォトダイオードでR光とB光を吸収するようにしてもよい。
【0112】
n型シリコン基板17と下部電極101との間(例えば絶縁膜24とn型シリコン基板17との間)に、光電変換層102を透過した光を吸収して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を形成することも可能である。この場合、n型シリコン基板17内に、この無機光電変換部の電荷蓄積領域に蓄積された電荷に応じた信号を読み出すためのMOS回路を設け、このMOS回路にも配線35を接続しておけばよい。
また、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、n型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としてもよい。更に、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを複数とし、n型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としてもよい。また、カラー画像を作る必要がないのであれば、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、光電変換部を1つだけ積層した構成としてもよい。
【0113】
(撮像素子の第3構成例)
本実施形態の撮像素子は、シリコン基板内にフォトダイオードを設けず、シリコン基板上方に複数(ここでは3つ)の光電変換素子を積層した構成である。
【0114】
図5は、本構成例の撮像素子の1画素分の断面模式図である。なお、図3、4の撮像素子例の場合と同様に、図5中の42〜47の各領域について、p型とn型を逆転させることにより、下部電極101r、101g、101bで電子を捕集する形式にすることも可能である。
図5に示す撮像素子300は、R光電変換素子と、B光電変換素子と、G光電変換素子とをシリコン基板41の上方に順に積層した構成である。
【0115】
R光電変換素子は、シリコン基板41上方に、下部電極101rと、下部電極101r上に形成された光電変換層102rと、該光電変換層102r上に形成された上部電極104rと備える。
【0116】
B光電変換素子は、上記のR光電変換素子の上部電極104r上に積層された下部電極101bと、下部電極101b上に形成された光電変換層102bと、該光電変換層102b上に形成された上部電極104bとを備える。
【0117】
G光電変換素子は、上記のB光電変換素子の上部電極104b上に積層された下部電極101gと、下部電極101g上に形成された光電変換層102gと、該光電変換層102g上に形成された上部電極104gを備える。本構成例の撮像素子は、R光電変換素子とB光電変換素子とG光電変換素子とが、この順に積層された構成である。
【0118】
R光電変換素子の上部電極104rとB光電変換素子の下部電極101bとの間に透明な絶縁膜59が形成され、B光電変換素子の上部電極104bとG光電変換素子の下部電極101gとの間に透明な絶縁膜63が形成されている。G光電変換素子の上部電極104g上には、開口を除く領域に遮光膜68が形成され、該上部電極104gと遮光膜68を覆うように透明な絶縁膜67が形成されている。
【0119】
R,G,Bの各光電変換素子に含まれる下部電極、光電変換層、及び上部電極は、それぞれ、既に説明した光電変換素子のものと同じ構成とすることができる。ただし、光電変換層102gは、緑色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する有機材料を含むものとし、光電変換層102bは、青色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する有機材料を含むものとし、光電変換層102rは、赤色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する有機材料を含むものとする。
【0120】
シリコン基板41表面の遮光膜68によって遮光されている部分には、p領域43,45,47が形成され、それぞれの周りはn領域42,44,46によって囲まれている。
【0121】
p領域43は、絶縁膜48に開けられた開口に形成された接続部54を介して下部電極101rと電気的に接続されている。下部電極101rで捕集された正孔は、p領域43の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、p領域43にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部54は、下部電極101rとp領域43以外とは絶縁膜51によって電気的に絶縁される。
【0122】
p領域45は、絶縁膜48、R光電変換素子、及び絶縁膜59を貫通する孔に形成された接続部53を介して下部電極101bと電気的に接続されている。下部電極101bで捕集された正孔は、p領域45の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、p領域45にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部53は、下部電極101bとp領域45以外とは絶縁膜50によって電気的に絶縁される。
【0123】
p領域47は、絶縁膜48、R光電変換素子、絶縁膜59、B光電変換素子、及び絶縁膜63を貫通する孔に形成された接続部52を介して下部電極101gと電気的に接続されている。下部電極101gで捕集された正孔は、p領域47の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、p領域47にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部52は、下部電極101gとp領域47以外とは絶縁膜49によって電気的に絶縁される。
【0124】
p領域43に蓄積されている電子は、n領域42内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域45に蓄積されている電子は、n領域44内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域47に蓄積されている電子は、n領域46内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、撮像素子300外部へと出力される。各MOS回路は配線55によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。なお、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成してもよい。つまり、p領域43,45,47に蓄積された電子をシリコン基板41内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその電子に応じた信号を出力させるような信号読出し部であってもよい。
【0125】
以上の説明において、B光を吸収する光電変換層とは、例えば、少なくとも400〜500nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であるものを意味する。G光を吸収する光電変換層とは、例えば、少なくとも500〜600nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。R光を吸収する光電変換層とは、例えば、少なくとも600〜700nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。
【0126】
[置換基W]
置換基Wについて記載する。
置換基Wとしてはハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といっても良い)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)2)、ホスファト基(−OPO(OH)2)、スルファト基(−OSO3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。
【0127】
更に詳しくは、置換基Wは、下記の(1)〜(48)などを表す。
(1)ハロゲン原子
例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子
(2)アルキル基
直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基を表す。それらは、(2−a)〜(2−e)なども包含するものである。
(2−a)アルキル基
好ましくは炭素数1から30のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)
【0128】
(2−b)シクロアルキル基
好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)
(2−c)ビシクロアルキル基
好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基(例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)
【0129】
(2−d)トリシクロアルキル基
好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のトリシクロアルキル基(例えば、1−アダマンチル)
【0130】
(2−e)更に環構造が多い多環シクロアルキル基
なお、以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基を表すが、更にアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。
【0131】
(3)アルケニル基
直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、(3−a)〜(3−c)を包含するものである。
【0132】
(3−a)アルケニル基
好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基(例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)
【0133】
(3−b)シクロアルケニル基
好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)
【0134】
(3−c)ビシクロアルケニル基
置換又は無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基(例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)
【0135】
(4)アルキニル基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)
【0136】
(5)アリール基
好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基(例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル、フェロセニル)
【0137】
(6)複素環基
好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の、芳香族若しくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数2から50の5若しくは6員の芳香族の複素環基である。
(例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル。なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でも良い)
【0138】
(7)シアノ基
【0139】
(8)ヒドロキシ基
【0140】
(9)ニトロ基
【0141】
(10)カルボキシ基
【0142】
(11)アルコキシ基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)
【0143】
(12)アリールオキシ基
好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)
【0144】
(13)シリルオキシ基
好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)
【0145】
(14)ヘテロ環オキシ基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)
【0146】
(15)アシルオキシ基
好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)
【0147】
(16)カルバモイルオキシ基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)
【0148】
(17)アルコキシカルボニルオキシ基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基(例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)
【0149】
(18)アリールオキシカルボニルオキシ基
好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)
【0150】
(19)アミノ基
好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアニリノ基(例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)
【0151】
(20)アンモニオ基
好ましくは、アンモニオ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキル、アリール、複素環が置換したアンモニオ基(例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)
【0152】
(21)アシルアミノ基
好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基(例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)
【0153】
(22)アミノカルボニルアミノ基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ(例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)
【0154】
(23)アルコキシカルボニルアミノ基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)
【0155】
(24)アリールオキシカルボニルアミノ基
好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)
【0156】
(25)スルファモイルアミノ基
好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基(例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)
【0157】
(26)アルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ(例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)
【0158】
(27)メルカプト基
【0159】
(28)アルキルチオ基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)
【0160】
(29)アリールチオ基
好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールチオ(例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)
【0161】
(30)ヘテロ環チオ基
好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)
【0162】
(31)スルファモイル基
好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)
【0163】
(32)スルホ基
【0164】
(33)アルキル若しくはアリールスルフィニル基
好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)
【0165】
(34)アルキル若しくはアリールスルホニル基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)
【0166】
(35)アシル基
好ましくは、ホルミル基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基(例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)
【0167】
(36)アリールオキシカルボニル基
好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)
【0168】
(37)アルコキシカルボニル基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)
【0169】
(38)カルバモイル基
好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイル(例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)
【0170】
(39)アリール及びヘテロ環アゾ基
好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換若しくは無置換のヘテロ環アゾ基(例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)
【0171】
(40)イミド基
好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド
【0172】
(41)ホスフィノ基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィノ基(例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)
【0173】
(42)ホスフィニル基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニル基(例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)
【0174】
(43)ホスフィニルオキシ基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基(例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)
【0175】
(44)ホスフィニルアミノ基
好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基(例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)
【0176】
(45)ホスフォ基
【0177】
(46)シリル基
好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシリル基(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)
(47)ヒドラジノ基
好ましくは炭素数0から30の置換若しくは無置換のヒドラジノ基(例えば、トリメチルヒドラジノ)
(48)ウレイド基
好ましくは炭素数0から30の置換若しくは無置換のウレイド基(例えばN,N−ジメチルウレイド)
【0178】
また、2つのWが共同して環を形成することもできる。このような環としては芳香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環や、これらが更に組み合わされて形成された多環縮合環が挙げられる。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、及びフェナジン環が挙げられる。
【0179】
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、−CONHSO2−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SO2NHSO2−基(スルフォニルスルファモイル基)が挙げられる。より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、アリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
【実施例】
【0180】
[実施例1]
以下のようにして、光電変換素子を作製した。
まず、基板上に、アモルファス性ITO30nmをスパッタ法により成膜し下部電極を形成した。この下部電極上に、下記化合物(1)とフラーレン(C60)をそれぞれ単層換算で100nm、300nmとなるように、蒸着速度は1.7Å/sで共蒸着した層をそれぞれ真空加熱蒸着により、25℃に基板の温度を制御した状態で成膜し、光電変換層を形成した。更に、その上に、TPDを20nm、mMTDATAを300nm成膜して電子ブロッキング層を形成した。光電変換層及び電子ブロッキング層の真空蒸着は全て4×10−4Pa以下の真空度で行った。
更にその上に、上部電極としてスパッタ法によりアモルファス性ITOを10nm成膜して、透明の上部電極を形成し、光電変換素子を作製した。
【0181】
[実施例2]
実施例1の光電変換層の成膜において、化合物(1)とフラーレン(C60)の共蒸着層を基板温度80℃にて成膜すること以外は同様にして光電変換素子を作製した。
【0182】
[実施例3]
実施例1の光電変換層の成膜において、化合物(1)とフラーレン(C60)の共蒸着層を基板温度105℃にて成膜すること以外は同様にして光電変換素子を作製した。
【0183】
[実施例4]
実施例1の光電変換層の成膜において、化合物(1)とフラーレン(C60)の共蒸着層を蒸着速度13.6Å/sで成膜すること以外は同様にして光電変換素子を作製した。
【0184】
[実施例5]
実施例1の光電変換層の成膜において、化合物(1)とフラーレン(C60)の共蒸着層を基板温度−35℃にて成膜すること以外は同様にして光電変換素子を作製した。
【0185】
[比較例1]
実施例1の光電変換層の成膜において、化合物(1)とフラーレン(C60)の共蒸着層を比較化合物とフラーレン(C60)の共蒸着層に変更すること以外は同様にして光電変換素子を作製した。
【0186】
【化26】
【0187】
[化合物の吸収スペクトルの測定]
化合物(1)と比較化合物について、下記方法に従い、それぞれクロロホルム溶液吸収スペクトルと単材料膜の薄膜吸収スペクトルを測定した。この吸収スペクトルを図6に示す。図6(a)が化合物(1)、図6(b)が比較化合物の吸収スペクトルを示している。また、実施例1〜5における化合物(1)とフラーレンC60の共蒸着層の薄膜吸収スペクトルを、図7に示す。なお、図6及び図7に示す吸収スペクトルは、400〜800nm領域での最大吸光度を1として規格化したものを示している。更に、λL1、λL2、λM1、及びλM2を下記表に示す。
図6、図7及び下記表からわかるように、化合物(1)は、薄膜吸収スペクトルがクロロホルム溶液吸収スペクトルに対して短波側にシフトしており、薄膜状態で本発明が規定するところの、H会合性を示す化合物であることがわかる。一方、比較化合物は、薄膜吸収スペクトルがクロロホルム溶液吸収スペクトルに対して短波側にも長波側にもほぼ均等に広がっており、薄膜状態で本発明が規定するところの、H会合性及びJ会合性が同程度に混在していることが分かる。
(クロロホルム溶液吸収スペクトル)
クロロホルムに0.005mMの濃度で溶解させ、クロロホルムのみの場合をリファレンスとして各波長の垂直透過光成分を検出し、吸収スペクトルを測定した。
(薄膜吸収スペクトル)
ITOを100nm成膜したガラス基板上に、各化合物を100nm成膜し、ITO100nm成膜したガラス基板をリファレンスとして各波長の垂直透過光成分を検出し、吸収スペクトルを測定した。
【0188】
【表1】
【0189】
[X線回折の解析]
X線回折装置(2θ―θ法)を用い、実施例1〜5における化合物(1)とフラーレンC60の共蒸着層をITO電極基板上に成膜した場合のX線回折の解析を行った(θ=0°が基板の水平方向に、すなわち、θ=90°が基板に対して垂直方向に一致するように試料をセットした)。その結果を図8〜12に示す。
【0190】
[評価]
実施例1〜5及び比較例1の素子について、光電変換効率及び0〜98%信号強度への立ち上がり時間を測定し、評価した。ここで、光電変換効率は、400〜800nmの範囲で最も光電変換効率が高い波長(最大感度波長)での光電変換効率である。また、0〜98%信号強度への立ち上がり時間は、平衡状態の信号量を100%とした場合、光を入射してから、98%の信号量に到達するまでの時間である。更に、印加電圧は、各例で項目ごとに適当な同じ電界強度を印加した。ただし、画素電極側に正の電圧を印加し、画素電極側で電子を捕集した。この結果を下記表に示す。また、下記表中の「光電変換材料のH会合性」「光電変換層のH会合性強化度」とは、本明細書本文中で記載した吸収スペクトル挙動を表している。
【0191】
【表2】
【0192】
また、実施例2及び3の素子について、暗電流を測定した。印加電圧は上記と同様とした。暗電流は、作成した素子にソースメーターを接続し、光が当たらない状態で電圧印加しながら流れる電流量を測定する事で計測した。実施例2,3の暗電流の測定結果を下記表に示す。
【0193】
【表3】
【0194】
表2に示すように、本実施例に係る素子は、光電変換効率に優れ、かつ応答時間が短いことが分かる。従って、本発明によれば、高感度かつ応答速度の高い光電変換素子を得ることができる。なお、H会合性が更に強化された実施例2及び3では、更に光電変換効率が向上していることがわかる。更に、表3より、光電変換膜中のフラーレンC60の配向性((111)配向)を制御することにより、暗電流がより低減された光電変換素子が得られることがわかる。また、本実施例1〜5の光電変換素子を用いて撮像素子を作製すると、高感度かつ応答速度の高い撮像素子が得られる。
【符号の説明】
【0195】
11 下部電極(導電性膜)
12 光電変換層(光電変換膜)
15 上部電極(透明導電性膜)
16A 電子ブロッキング層
16B 正孔ブロッキング層
100,200,300 撮像素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性膜と、光電変換層と、透明導電性膜とを含む光電変換素子であって、
前記光電変換層が、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが下記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とを含む、光電変換素子。
(A):λM1<λL1、かつλM2<λL2
(B):λM1<λL1、かつΔ|λM1−λL1|>Δ|λM2−λL2|
(A)及び(B)において、λL1、λL2、λM1、及びλM2は、波長400〜800nmの範囲における最大吸収強度の1/2の吸収強度を示す波長であって、λL1及びλL2は、前記光電変換材料をクロロホルムに溶解させたときのクロロホルム溶液スペクトルにおける波長を表し、λM1及びλM2は、前記光電変換材料単独の薄膜吸収スペクトルにおける波長を表す。ただし、λL1<λL2、λM1<λM2である。
【請求項2】
前記条件(B)が下記条件(B’)である、請求項1に記載の光電変換素子。
(B’):λM1<λL1、かつΔ|λM1―λL1|>2×Δ|λM2―λL2|
【請求項3】
前記条件(B)が下記条件(B”)である、請求項1に記載の光電変換素子。
(B”):λM1<λL1、かつΔ|λM1―λL1|>3×Δ|λM2―λL2|
【請求項4】
前記フラーレン又はフラーレン誘導体の少なくとも一部が結晶化した状態を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記フラーレン又はフラーレン誘導体が、基板に対して(111)方向に配向している、請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記導電性膜と、前記光電変換層と、前記透明導電性膜とがこの順に積層された、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えた撮像素子であって、
前記光電変換層が上方に積層された半導体基板と、
前記半導体基板内に形成され、前記光電変換層で発生した電荷を蓄積するための電荷蓄積部と、
前記光電変換層の電荷を前記電荷蓄積部へ伝達するための接続部とを備えた撮像素子。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、
基板上に、前記導電性膜、前記光電変換層、及び前記透明導電性膜を形成する工程を含み、
前記光電変換層の形成において、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが前記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とを、基板を加熱した状態で共蒸着する工程を含む、光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
前記共蒸着における蒸着速度が0.5〜3Å/sである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記共蒸着時の前記基板温度が100℃以下である、請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項1】
導電性膜と、光電変換層と、透明導電性膜とを含む光電変換素子であって、
前記光電変換層が、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが下記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とを含む、光電変換素子。
(A):λM1<λL1、かつλM2<λL2
(B):λM1<λL1、かつΔ|λM1−λL1|>Δ|λM2−λL2|
(A)及び(B)において、λL1、λL2、λM1、及びλM2は、波長400〜800nmの範囲における最大吸収強度の1/2の吸収強度を示す波長であって、λL1及びλL2は、前記光電変換材料をクロロホルムに溶解させたときのクロロホルム溶液スペクトルにおける波長を表し、λM1及びλM2は、前記光電変換材料単独の薄膜吸収スペクトルにおける波長を表す。ただし、λL1<λL2、λM1<λM2である。
【請求項2】
前記条件(B)が下記条件(B’)である、請求項1に記載の光電変換素子。
(B’):λM1<λL1、かつΔ|λM1―λL1|>2×Δ|λM2―λL2|
【請求項3】
前記条件(B)が下記条件(B”)である、請求項1に記載の光電変換素子。
(B”):λM1<λL1、かつΔ|λM1―λL1|>3×Δ|λM2―λL2|
【請求項4】
前記フラーレン又はフラーレン誘導体の少なくとも一部が結晶化した状態を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記フラーレン又はフラーレン誘導体が、基板に対して(111)方向に配向している、請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記導電性膜と、前記光電変換層と、前記透明導電性膜とがこの順に積層された、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えた撮像素子であって、
前記光電変換層が上方に積層された半導体基板と、
前記半導体基板内に形成され、前記光電変換層で発生した電荷を蓄積するための電荷蓄積部と、
前記光電変換層の電荷を前記電荷蓄積部へ伝達するための接続部とを備えた撮像素子。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、
基板上に、前記導電性膜、前記光電変換層、及び前記透明導電性膜を形成する工程を含み、
前記光電変換層の形成において、フラーレン又はフラーレン誘導体と、吸収スペクトルが前記(A)及び(B)の少なくともいずれかの条件を満たす光電変換材料とを、基板を加熱した状態で共蒸着する工程を含む、光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
前記共蒸着における蒸着速度が0.5〜3Å/sである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記共蒸着時の前記基板温度が100℃以下である、請求項8又は9に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−14893(P2011−14893A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127490(P2010−127490)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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