説明

光電変換素子及び固体撮像素子

【課題】十分な暗電流抑制効果と高い光電変換効率を両立させることができる光電変換素子及び固体撮像素子を提供する。
【解決手段】一対の電極と、一対の電極の間に配置された光電変換層と、一方の電極と光電変換層との間に形成され、一対の電極への電圧印加時に一対の電極の一方から光電変換層に電荷が注入されるのを抑制する電荷ブロッキング層と、を備えた光電変換素子であって、電荷ブロッキング層が絶縁性材料と導電性材料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部電極と、下部電極に対向する上部電極と、下部電極と上部電極との間に形成された有機光電変換層とを備えた光電変換素子及び固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池では、電力を取り出すことを目的とするため外部電界は加えずに性能を評価するが、画像入力素子や光センサー等のように光電変換効率を最大限に引き出す必要がある有機光電変換素子では、光電変換効率向上や応答速度向上のために外部から電圧を印加することが多い。そのような場合、外部電界により電極からの正孔注入もしくは電子注入により暗電流が増加し、光電流/暗電流比の大きな素子を得ることができなかった。そのため、光電流を減らさずに、いかに暗電流を抑制するかという技術が光電変換素子の重要な技術の一つであるといえる。
【0003】
これまでに、電極からのキャリア注入(暗電流)に対してショットキー障壁となるブロッキング層を電極と光電変換層の間に挿入することにより暗電流を抑制する方法が知られている。この方法では、外部電界印加時に電極からのキャリア注入を抑えるために、できるだけ電極とのショットキー障壁が大きくなる材料をブロッキング層として用いられる。ブロッキング層の材料としては、二酸化ケイ素や一酸化ケイ素などが知られている。従来、ブロッキング層を備えた光電変換素子としては、例えば、下記特許文献に示すものがある。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−229860号公報
【特許文献2】特開平05−129576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ブロッキング層の材料として、二酸化ケイ素を用いると確かに絶縁性が高く暗電流を抑制することはできるが、光電変換して発生したキャリアも阻害してしまうために光電変換効率の低下が問題となっていた。また、一酸化ケイ素を用いた場合は、二酸化ケイ素より導電性が高いために光電変換効率の低下は少ないが、暗電流の抑制効果も小さく、十分なS/N比が得られなかった。
従来では、このような問題を解決するため、電極からのキャリア注入による暗電流を抑えるために、電極と光電変換層の間にブロッキング層として絶縁層を入れるという方法が知られている。
【0006】
例えば、上記特許文献1では、スパッタ法やシリコンの酸化などにより二酸化ケイ素(一部一酸化ケイ素も含む)からなる絶縁膜を電極と光電変換層の間に配置し暗電流をさげることができたとされているが、該絶縁膜の膜厚を厚くすると暗電流が確かに抑制できるが、信号キャリアの読み出しも阻害する為光電変換効率はさがってしまう。また絶縁膜の厚みを薄くすると光電変換効率の低下は小さくなるが、十分な暗電流抑制効果が得られなかった。いずれにしても、十分なS/N比は得られなかった。また、絶縁性が高い膜を用いた場合、応答速度の遅れが発生することも問題となっていた。この原因としては、絶縁層界面、もしくは層中での信号キャリアの蓄積などが考えられるが、十分な対策案は提示されていなかった。
【0007】
また、特許文献2では、比較的導電性の高い一酸化シリコンをブロッキング層として用いることにより、光電変換効率の低下を抑えると共に比較的速い応答速度が得られていたが、二酸化ケイ素などに比べて絶縁性が十分ではないため、高いS/N比を得ることはできていなかった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、十分な暗電流抑制効果と高い光電変換効率を両立させることができる光電変換素子及び固体撮像素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
(1)一対の電極と、前記一対の電極の間に配置された光電変換層と、前記一方の電極と前記光電変換層との間に形成され、前記一対の電極への電圧印加時に前記一対の電極の一方から前記光電変換層に電荷が注入されるのを抑制する電荷ブロッキング層と、を備えた光電変換素子であって、前記電荷ブロッキング層が絶縁性材料と導電性材料を含む光電変換素子。
(2)上記(1)に記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層が、注入される電荷の移動を前記絶縁性材料でブロックするとともに、前記導電性材料が注入される電荷の逆導電型となる光電変換素子。
(3)上記(1)又は(2)に記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層を構成する絶縁性材料が有機高分子ポリマーからなる光電変換素子。
(4)上記(1)又は(2)に記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層を構成する絶縁性材料がSiO2などの無機酸化物もしくはLiFなどの無機フッ化物もしくは窒化シリコンなどの無機窒化物のいずれか1つ又は複数からなる光電変換素子。
(5)上記(1)又は(2)に記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層を構成する導電性材料の少なくとも1種がペリレン誘導体、もしくはフラーレンC60、フラーレンC70、フラーレン酸化物などのカーボンクラスターもしくはその誘導体などの電子輸送性材料である光電変換素子。
(6)上記(1)又は(2)に記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層を構成する導電性材料の少なくとも1種が、下記一般式(A−1)または一般式(B−1)で表されるいずれかの電子輸送性材料である光電変換素子。
【化3】

一般式(A−1)中、LA1は連結基を、ZA1は含窒素ヘテロ環の形成に必要な原子群を、nA1は2以上の整数を表す。但し、一般式(A−1)で表される化合物は、分子内に少なくとも3つ以上の窒素原子を有する。
【化4】

一般式(B−1)中、LB1は連結基を、ZB1は、芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環の形成に必要な原子群を、nB1は2以上の整数を表す。但し、一般式(B−1)で表される化合物は、分子内に少なくとも3つ以上の窒素原子を有する。
(7)上記(1)又は(2)に記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層を構成する導電性材料がペンタセンもしくはその誘導体などの正孔輸送性材料である光電変換素子。
(8)上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層の厚みが10nm〜200nmである光電変換素子。
(9)上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記一対の電極に外部から印加される電圧を前記一対の電極間の距離で割った値が1.0×105V/cm〜1.0×107V/cmである光電変換素子。
(10)上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
少なくとも1つの前記光電変換部が上方に積層された半導体基板と、
前記半導体基板内に形成され、前記光電変換部の前記光電変換層で発生した電荷を蓄積するための電荷蓄積部と、
前記光電変換部の前記一対の電極のうちの前記電荷を取り出すための電極と、前記電荷蓄積部とを電気的に接続する接続部とを備える光電変換素子。
(11)上記(10)記載の光電変換素子であって、
前記半導体基板内に、前記光電変換部の前記光電変換層を透過した光を吸収し、該光に応じた電荷を発生してこれを蓄積する基板内光電変換部を備える光電変換素子。
(12)上記(11)記載の光電変換素子であって、
前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内に積層されたそれぞれ異なる色の光を吸収する複数のフォトダイオードである光電変換素子。
(13)上記(11)記載の光電変換素子であって、
前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内の入射光の入射方向に対して垂直な方向に配列されたそれぞれ異なる色の光を吸収する複数のフォトダイオードである光電変換素子。
(14)上記(12)又は(13)記載の光電変換素子であって、
前記半導体基板上方に積層された前記光電変換部が1つであり、
前記複数のフォトダイオードが、青色の光を吸収可能な位置にpn接合面が形成された青色用フォトダイオードと、赤色の光を吸収可能な位置にpn接合面が形成された赤色用フォトダイオードであり、
前記光電変換部の前記光電変換層が緑色の光を吸収するものである光電変換素子。
(15)上記(10)から(14)のいずれか1つに記載の光電変換素子をアレイ状に多数配置した固体撮像素子であって、
前記多数の光電変換素子の各々の前記電荷蓄積部に蓄積された前記電荷に応じた信号を読み出す信号読み出し部を備える固体撮像素子。
【0010】
本発明は、一対の電極と光電変換層との間に電荷ブロッキングを設け、この電荷ブロッキング層が絶縁性材料と導電性材料とを含む構成である。一対の電極の一方から光が入射して光電変換部で信号電荷が発生させ、光電変換部から他方の電極へ信号電荷を移す際に、電荷ブロッキング層に含まれる導電性材料によって信号電荷が輸送することができる。こうすれば、絶縁性材料によって信号電荷の移動を抑えて暗電流の発生を抑制するとともに、導電性材料によって信号電荷を輸送することで光電変換効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、十分な暗電流抑制効果と高い光電変換効率を両立させることができる光電変換素子及び固体撮像素子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
(第一実施形態)
図1(a)は、本発明の第一実施形態である光電変換素子の基本的構成を示す断面模式図である。また、図1(b)は、第一実施形態の光電変換素子の変形例を示す断面模式図である。
図1(a)に示す光電変換素子は、基板Sと、該基板S上に形成された下部電極(画素電極)101と、下部電極101上に形成された正孔ブロッキング層105と、正孔ブロッキング層105上に形成された光電変換層102と、光電変換層102上に形成された上部電極(対向電極)104とを備える。また、図1(b)に示す光電変換素子は、基板Sと、該基板S上に形成された下部電極(画素電極)101と、下部電極101上に形成された電子ブロッキング層103と、電子ブロッキング層103上に形成された光電変換層102と、光電変換層102上に形成された上部電極(対向電極)104とを備える。以下の説明においては、正孔ブロッキング層105と電子ブロッキング層103とを総称して、電荷ブロッキング層ともいう。
【0013】
図1に示す光電変換素子は、上部電極104上方から光が入射するものとしている。又、図1(a)に示す光電変換素子は、光電変換層102で発生した電荷(正孔及び電子)のうち、正孔を上部電極104に移動させ、電子を下部電極101に移動させるように、下部電極101及び上部電極104間にバイアス電圧が印加されるものとしている。つまり、上部電極104を正孔捕集電極とし、下部電極101を電子捕集電極としている。図1(b)は(a)とは逆向きのバイアス電圧を印加する構成となっている。
【0014】
上部電極104は、光電変換層102に光を入射させる必要があるため、透明な導電性材料で構成されている。ここで、透明とは、波長が約420nm〜約660nmの範囲の可視光を約80%以上透過することを言う。透明な導電性材料としてはITOを用いることが好ましい。
【0015】
下部電極101は導電性材料であればよく、透明である必要はない。しかし、図1に示す光電変換素子は、後述するが、下部電極101下方にも光を透過させることが必要になる場合もあるため、下部電極101も透明な導電性材料で構成することが好ましい。上部電極104と同様に、下部電極101においてもITOを用いることが好ましい。
【0016】
光電変換層102は、光電変換機能を有する有機材料を含んで構成される。有機材料としては、例えば電子写真の感光材料に用いられているような、様々な有機半導体材料を用いることができる。その中でも、高い光電変換性能を有すること、分光する際の色分離に優れていること、長時間の光照射に対する耐久性が高いこと、真空蒸着を行いやすいこと、等の観点から、キナクリドン骨格を含む材料やフタロシアニン骨格を含む有機材料が特に好ましい。
【0017】
光電変換層102として以下式で示されるキナクリドンを用いた場合には、光電変換層102にて緑色の波長域の光を吸収してこれに応じた電荷を発生することが可能となる。
【0018】
【化5】

【0019】
光電変換層102として以下式で示される亜鉛フタロシアニンを用いた場合には、光電変換層102にて赤色の波長域の光を吸収してこれに応じた電荷を発生することが可能となる。
【0020】
【化6】

【0021】
また、光電変換層102を構成する有機材料は、有機p型半導体及び有機n型半導体の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。有機p型半導体及び有機n型半導体として、それぞれキナクリドン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、及びフルオランテン誘導体のいずれかを特に好ましく用いることができる。
【0022】
有機p型半導体(化合物)は、ドナー性有機半導体(化合物)であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上記したように、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いてよい。
【0023】
有機n型半導体(化合物)は、アクセプター性有機半導体(化合物)であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いてよい。
【0024】
p型有機色素、又はn型有機色素としては、いかなるものを用いても良いが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)が挙げられる。
【0025】
次に金属錯体化合物について説明する。金属錯体化合物は金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体であり、金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、または錫イオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、または亜鉛イオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、または亜鉛イオンである。前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社 H.Yersin著1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社山本明夫著1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
【0026】
配位子として、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。好ましくは2座配位子である。例えばピリジン配位子、ビピリジル配位子、キノリノール配位子、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子)などが挙げられる)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環置換チオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、またはシロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる)であり、より好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、またはシロキシ配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、またはシロキシ配位子が挙げられる。
【0027】
本実施形態において、図1(a)に示す光電変換素子において、正孔ブロッキング層105は絶縁性材料と導電性材料を含む構成である。また、図1(b)に示す光電変換素子において、電子ブロッキング層103は絶縁性材料と導電性材料を含む構成である。これら電荷ブロッキング層が、注入される電荷の移動を前記絶縁性材料でブロックするとともに、導電性材料が注入される電荷の逆導電型の電荷のキャリアとなる。次に、電子ブロッキング層103および正孔ブロッキング層105を構成する材料の候補について説明する。
まず、絶縁性材料とは、一般的に絶縁体といわれる体積抵抗率が108Ωcm以上のものを指すが、必要とする暗電流値によっては、これ以下の体積抵抗率のものを使用することもできる。
また、導電性材料とは、体積抵抗率が108Ωcm以下のものを指し、光電変換層で発生した信号電荷を輸送するためには、体積抵抗率が106Ωcm以下の材料が好ましい。
【0028】
電子ブロッキング層103および正孔ブロッキング層105を構成する絶縁性材料は有機高分子ポリマーからなることが好ましい。絶縁性有機高分子ポリマーとして、アクリル系有機樹脂、ポリイミド、BCB、PVA、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどから選択できる。特に、アクリル系有機樹脂、ポリカーボネートが好ましく、中でもビスフェノールZ型ポリカーボネート類、いわゆるポリカーボネートZ(PCz)が特に好ましい。
【0029】
また、電荷ブロッキング層を構成する絶縁性材料はSiO2などの無機酸化物もしくはLiFなどの無機フッ化物もしくは窒化シリコンなどの無機窒化物のいずれか1つ又は複数からなってもよい。
【0030】
(正孔ブロッキング層)
正孔ブロッキング層105を構成する導電性材料には、電子輸送性有機材料を用いることができ、例えば、ペリレン誘導体、もしくはフラーレンC60、フラーレンC70、フラーレン酸化物などのカーボンクラスターもしくはその誘導体などが好ましい。
【0031】
電子輸送性材料とは、正孔をブロックして電子を通す材料であって、主にカーボンクラスターまたはその誘導体などを用いることができる。ここで、カーボンクラスターまたはその誘導体とは、炭素原子が、炭素−炭素間結合の種類は問わず数個から数百個結合して形成されている集合体であって、必ずしも100%炭素クラスターのみで構成されているとは限らず、他原子の混在や、置換基を有する場合も含むものである。正孔ブロック性材料として用いるカーボンクラスターは、例えば、フラーレン類の1種あるいは数種を含有してなるものである。
ここで用いられるフラーレンとは、sp2炭素よりなる球状あるいはラグビーボール状のカーボンクラスターの総称であり、一般にC60、C70、C76、C78、C84等が知られている。本発明では、これらを単独で、あるいは混合物として用いることできる。好適には、C60とC70の混合物を用いることができる。また、フラーレンを酸化した酸化フラーレンを好適に用いることができる。酸化フラーレンとしては、C60(O)1、C60(O)2、C60(O)3等の混合物を用いることができる。好適には、下記式に示すような、酸素置換基がレギオ選択則に従って集合して付加している化合物が好ましく、官能基が付加したものであってもよい。
【化7】

【0032】
また、電子輸送性材料としては、下記一般式(A−1)、(B−1)で表される化合物も好適に用いることができる。
【0033】
【化8】

【0034】
一般式(A−1)中、LA1は連結基を、ZA1は含窒素ヘテロ環の形成に必要な原子群を、nA1は2以上の整数を表す。但し、一般式(A−1)で表される化合物は、分子内に少なくとも3つ以上の窒素原子を有する。
【0035】
【化9】

【0036】
(一般式(B−1)中、LB1は連結基を、ZB1は、芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環の形成に必要な原子群を、nB1は2以上の整数を表す。但し、一般式(B−1)で表される化合物は、分子内に少なくとも3つ以上の窒素原子を有する。)
【0037】
まず、一般式(A−1)で表される化合物について説明する。
一般式(A−1)におけるLA1は連結基を表す。LA1で表される連結基としては、単結合の他、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子、ゲルマニウム原子等を含んで形成される連結基が好ましい。LA1としてより好ましくは、単結合、炭素原子、ケイ素原子、ホウ素原子、酸素原子、硫黄原子、ゲルマニウム原子、芳香族炭化水素環、及び芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくは炭素原子、ケイ素原子、芳香族炭化水素環、及び芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくは、二価以上の芳香族炭化水素環、二価以上の芳香族ヘテロ環、及び炭素原子であり、さらに好ましくは、二価以上の芳香族炭化水素環、及び二価以上の芳香族ヘテロ環であり、特に好ましくは1,3,5−ベンゼントリイル基、1,2,5,6−ベンゼンテトライル基、1,2,3,4,5,6−ベンゼンヘキサイル基、2,2'−ジメチル−4,4'−ビフェニレン基、2,4,6−ピリジントリイル基、2,3,4,5,6−ピリジンペンタイル基、2,4,6−ピリミジントリイル基、2,4,6−トリアジントリイル基、及び2,3,4,5−チオフェンテトライル基である。LA1で表される連結基の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
【化10】

【0039】
【化11】

【0040】
【化12】

【0041】
A1は更に置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスメチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子であり、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シシリル基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基、フッ素原子である。LA1としては、上記の中で特に下記の2,4,6−トリアジントリイル基が好ましい。
【0042】
【化13】

【0043】
一般式(A−1)におけるZA1は、含窒素ヘテロ環の形成に必要な原子群を表し、ZA1を含んで形成される含窒素ヘテロ環は、単環であっても二環以上の環が縮合した縮環であってもよい。ZA1を含んで形成される含窒素ヘテロ環として好ましくは、5〜8員の含窒素ヘテロ環であり、より好ましくは5〜7員の含窒素ヘテロ環であり、更に好ましくは5又は6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、特に好ましくは5員の芳香族ヘテロ環である。LA1に連結する複数の、ZA1を含んで形成される含窒素ヘテロ環は、同一でも異なっていてもよい。
【0044】
A1を含んで形成される含窒素ヘテロ環の具体例としては、例えば、ピロール環、インドール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアザイゾール環、アザインドール環、カルバゾール環、カルボリン環(ノルハルマン環)、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環、プリン環、ピラゾ−ル環、インダゾール環、アザインダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、アゼピン環、イミノスチルベン環(ジベンゾアゼピン環)、トリベンゾアゼピン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環等が挙げられ、好ましくはオキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環であり、より好ましくはベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環である。
【0045】
A1は可能であればさらに他の環と縮合環を形成してもよく、また置換基を有していてもよい。ZA1に導入可能な置換基としては、例えば、一般式(A−1)におけるLA1の置換基として挙げたものが適用でき、好ましい範囲も同様である。
A1は2以上の整数を表し、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6を表す。
一般式(A−1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
【0046】
【化14】

【0047】
次に、一般式(B−1)で表される化合物について説明する。
一般式(B−1)におけるLB1は連結基を表す。LB1で表される連結基としては、前記一般式(A−1)における連結基LA1の具体例として挙げたものが適用できる。LB1として好ましくは、単結合、二価以上の芳香族炭化水素環、二価以上の芳香族ヘテロ環、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子であり、より好ましくは、二価以上の芳香族炭化水素環、二価以上の芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくは1,3,5−ベンゼントリイル基、1,2,5,6−ベンゼンテトライル基、1,2,3,4,5,6−ベンゼンヘキサイル基、2,2'−ジメチル−4,4'−ビフェニレン基、2,4,6−ピリジントリイル基、2,3,4,5,6−ピリジンペンタイル基、2,4,6−ピリミジントリイル基、2,4,6−トリアジントリイル基、2,3,4,5−チオフェンテトライル基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子である。
【0048】
B1はさらに置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、例えば、前記一般式(A−1)におけるLA1の置換基として挙げたものが適用でき、好ましい範囲も同様である。
B1としては、上記の中でも特に1,3,5−ベンゼントリイル基が好ましい。
【0049】
B1は芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環を形成するのに必要な原子群を表し、ZB1を含んで形成される芳香族炭化水素環、又は芳香族ヘテロ環は、単環であっても二環以上の環が縮合した縮環であってもよい。LB1に連結する複数の、ZB1を含んで形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環は、同一でも異なっていてもよい。
【0050】
B1を含んで形成される芳香族炭化水素環は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環であり、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、トリフェニレン環などが挙げられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環である。
【0051】
B1を含んで形成される芳香族ヘテロ環は、単環又は二環以上の環が縮合した縮合環のヘテロ環であり、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜10の芳香族ヘテロ環である。該ヘテロ環として好ましくは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子の少なくとも一つを含む芳香族ヘテロ環である。ZB1で含んで形成されるヘテロ環の具体例としては、例えば、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナントリジン環、プテリジン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、シンノリン環、フタラジン環、トリアジン環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、イソチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、インドール環、イミダゾピリジン環、カルバゾール環、フェナントロリン環等が挙げられ、好ましくはピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナントリジン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、フタラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾピリジン環、カルバゾール環、フェナントロリン環であり、より好ましくはピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、フタラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾピリジン環、フェナントロリン環であり、更に好ましくはベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾピリジン環、フェナントロリン環であり、特に好ましくはベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環である。
【0052】
B1を含んで形成される芳香族炭化水素環、又は芳香族ヘテロ環は、さらに他の環と縮合環を形成してもよく、また、置換基を有していてもよい。導入可能な置換基としては、例えば、前記一般式(A−1)におけるLA1の置換基として挙げたものが適用でき、好ましい範囲も同様である。
B1は2以上の整数を表し、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6を表す。
一般式(B−1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
【0053】
【化15】

【0054】
電子輸送性材料として、この他に、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物などを用いることができる。また、ポルフィリン系化合物や、DCM(4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(4-(ジメチルアミノスチリル))-4Hピラン)等のスチリル系化合物、4Hピラン系化合物なども用いることができる。
【0055】
(電子ブロッキング層)
また、電子ブロッキング層を構成する導電性材料はペンタセンもしくはその誘導体などの正孔輸送性材料であることが好ましい。
正孔輸送性材料とは、電子をブロックして正孔を通す材料であって、ペンタセンやアミン化合物などの電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。具体的には、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。
具体的には、低分子材料では、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1'−ビフェニル)−4,4'−ジアミン(TPD)や4,4'−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4',4"−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。
【0056】
上部電極104と下部電極101との間に外部から印加される電圧を、電極101,104間の距離で割った値が1.0×105V/cm〜1.0×107V/cmであることが好ましい。
【0057】
電荷ブロッキング層の膜厚は、薄すぎると十分なブロッキング性を確保することができず、逆に厚すぎると光電変換層にかかる電界が小さくなるため効率の低下を招いてしまうので、0.01〜15μmであることが好ましい。より好ましくは、0.03〜1μm、さらに好ましくは、0.05〜0.2μmである。また、電荷ブロッキング層に含有される電荷輸送性材料の含有量については、電荷輸送性材料の含有量が少なすぎる場合には信号電荷の輸送が困難になり、光電変換効率が低くなってしまう。逆に多すぎる場合には、ポリマーのバインダーとしての性能が不十分となり、膜の安定性、光電変換層に対する密着性が悪化するため好ましくない。そのため、電荷輸送性材料の含有量は電荷ブロッキング層の0.01wt%以上、より好ましくは、1〜50wt%であることが好ましい。
【0058】
このような構成の光電変換素子によれば、一対の電極101,104と光電変換層102との間に電荷ブロッキング105(又は103)を設け、この電荷ブロッキング層が絶縁性材料と導電性材料とを含む構成である。一対の電極101,104の一方から光が入射して光電変換部で信号電荷が発生させ、光電変換部102から他方の電極へ信号電荷を移す際に、電荷ブロッキング層に含まれる導電性材料によって信号電荷が輸送することができる。こうすれば、絶縁性材料によって信号電荷の移動を抑えて暗電流の発生を抑制するとともに、導電性材料によって信号電荷を輸送することで光電変換効率を向上させることができる。
【0059】
以下の第2実施形態〜第5実施形態では、上述したような光電変換素子を半導体基板上方に積層した構成のセンサとしてあげられる構成例を説明する。なお、以下に説明する実施形態において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
【0060】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。図2において図1と同等の構成には同一符号を付してある。
固体撮像素子100は、図2に示す1画素が同一平面上でアレイ状に多数配置されたものであり、この1画素から得られる信号によって画像データの1つの画素データを生成することができる。
【0061】
図2に示す固体撮像素子の1画素は、p型シリコン基板1と、p型シリコン基板1上に形成された透明な絶縁膜7と、絶縁膜7上に形成された下部電極101、下部電極101上に形成された光電変換層102、光電変換層102の上に形成された電子ブロッキング層103(図示省略)、光電変換層102の下に形成された正孔ブロッキング層105(図示省略)、及び、電子ブロッキング層103上に形成された上部電極104からなる第一実施形態で説明した構成の光電変換素子とを含んで構成され、光電変換素子上には開口の設けられた遮光膜14が形成されている。上部電極104上には透明な絶縁膜15が形成されている。
【0062】
p型シリコン基板1内には、その浅い方からn型不純物領域(以下、n領域と略す)4と、p型不純物領域(以下、p領域と略す)3と、n領域2がこの順に形成されている。n領域4の遮光膜14によって遮光されている部分の表面部には、高濃度のn領域(n+領域という)6が形成され、n+領域6の周りはp領域5によって囲まれている。
【0063】
n領域4とp領域3とのpn接合面のp型シリコン基板1表面からの深さは、青色光を吸収する深さ(約0.2μm)となっている。したがって、n領域4とp領域3は、青色光を吸収してそれに応じた電荷を蓄積するフォトダイオード(Bフォトダイオード)を形成する。本実施形態において、Bフォトダイオードは、半導体基板内に形成され、光電変換部102の光電変換層で発生した電荷を蓄積するための電荷蓄積部として機能する。Bフォトダイオードで発生した電子は、n領域4に蓄積される。
【0064】
n領域2とp型シリコン基板1とのpn接合面のp型シリコン基板1表面からの深さは、赤色光を吸収する深さ(約2μm)となっている。したがって、n領域2とp型シリコン基板1は、赤色光を吸収してそれに応じた電荷を蓄積するフォトダイオード(Rフォトダイオード)を形成する。Rフォトダイオードは、半導体基板内に形成され、光電変換部102の光電変換層で発生した電荷を蓄積するための電荷蓄積部として機能する。Rフォトダイオードで発生した電子は、n領域2に蓄積される。
【0065】
n+領域6は、絶縁膜7に開けられた開口に形成された接続部9を介して下部電極101と電気的に接続されている。下部電極101で捕集された正孔は、n+領域6の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、n+領域6にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部9は、下部電極101とn+領域6以外とは絶縁膜8によって電気的に絶縁される。
【0066】
n領域2に蓄積された電子は、p型シリコン基板1内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、n領域4に蓄積された電子は、p領域3内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、n+領域6に蓄積されている電子は、p領域5内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子100外部へと出力される。各MOS回路は配線10によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。なお、n領域2、n領域4に引き出し電極を設け、所定のリセット電位をかけると、各領域が空乏化し、各pn接合部の容量は限りなく小さい値になる。これにより、接合面に生じる容量を極めて小さくすることができる。
【0067】
このような構成により、光電変換層102でG光を光電変換し、p型シリコン基板1中のBフォトダイオードとRフォトダイオードでB光およびR光を光電変換することができる。また上部でG光がまず吸収されるため、B−G間およびG−R間の色分離は優れている。これが、シリコン基板内に3つのPDを積層し、シリコン基板内でBGR光を全て分離する形式の固体撮像素子に比べ、大きく優れた点である。
【0068】
本実施形態の固体撮像素子100において、電子ブロッキング層又は正孔ブロッキング層のうち一方を、注入される電荷の移動をブロックするとともに、注入される電荷の逆導電型となる構成とする。こうすることで、電荷ブロッキング層に含まれる絶縁性材料によって注入電荷の移動を抑えて暗電流の発生を抑制するとともに、導電性材料によって信号電荷を輸送することで光電変換効率を向上させることができる。
【0069】
(第3実施形態)
本実施形態では、図2のシリコン基板1内に2つのフォトダイオードを積層するのではなく、入射光の入射方向に対して垂直な方向に2つのフォトダイオードを配列して、p型シリコン基板内で2色の光を検出するようにしたものである。
【0070】
図3は、本発明の第3実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。図3において図1と同等の構成には同一符号を付してある。
図3に示す固体撮像素子200の1画素は、p型シリコン基板17と、p型シリコン基板17上方に形成された下部電極101、下部電極101上に形成された光電変換層102、光電変換層102上に形成された電子ブロッキング層103(図示省略)、光電変換層102の下に形成された正孔ブロッキング層105(図示省略)、及び、電子ブロッキング層103上に形成された上部電極104からなる第一実施形態で説明した構成の光電変換素子とを含んで構成され、光電変換素子上には開口の設けられた遮光膜34が形成されている。また、上部電極104上には透明な絶縁膜33が形成されている。
【0071】
遮光膜34の開口下方のp型シリコン基板17表面には、p領域19とn領域18からなるフォトダイオードと、p領域21とn領域20からなるフォトダイオードとが、p型シリコン基板17表面に並んで形成されている。p型シリコン基板17表面上の任意の面方向が、入射光の入射方向に対して垂直な方向となる。
【0072】
p領域19とn領域18からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してB光を透過するカラーフィルタ28が形成され、その上に下部電極101が形成されている。p領域21とn領域20からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してR光を透過するカラーフィルタ29が形成され、その上に下部電極101が形成されている。カラーフィルタ28,29の周囲は、透明な絶縁膜25で覆われている。
【0073】
p領域19とn領域18からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ28を透過したB光を吸収してそれに応じた電子を発生し、発生した電子をn領域18に蓄積する基板内光電変換部として機能する。p領域21とn領域20からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ29を透過したR光を吸収してそれに応じた電子を発生し、発生した電子をn領域20に蓄積する基板内光電変換部として機能する。
【0074】
n型シリコン基板17表面の遮光膜34によって遮光されている部分には、n+領域23が形成され、n+領域23の周りはp領域22によって囲まれている。
【0075】
n+領域23は、絶縁膜24,25に開けられた開口に形成された接続部27を介して下部電極101と電気的に接続されている。下部電極101で捕集された正孔は、n+領域23の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、n+領域23にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部27は、下部電極101とn+領域23以外とは絶縁膜26によって電気的に絶縁される。
【0076】
n領域18に蓄積された電子は、p型シリコン基板17内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、n領域20に蓄積された電子は、p型シリコン基板17内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、n+領域23に蓄積されている電子は、p領域22内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子200外部へと出力される。各MOS回路は配線35によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。
なお、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成してもよい。つまり、n領域18、n領域20、及びn+領域23に蓄積された電子をp型シリコン基板17内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその電子に応じた信号を出力させるような信号読出し部であってもよい。
【0077】
このように、信号読み出し部は、CCDおよびCMOS構造が挙げられるが、消費電力、高速読出し、画素加算、部分読出し等の点からは、CMOSの方が好ましい。
【0078】
なお、図3では、カラーフィルタ28,29によってR光とB光の色分離を行っているが、カラーフィルタ28,29を設けず、n領域20とp領域21のpn接合面の深さと、n領域18とp領域19のpn接合面の深さを各々調整して、それぞれのフォトダイオードでR光とB光を吸収するようにしてもよい。この場合、p型シリコン基板17と下部電極101との間(例えば絶縁膜24とp型シリコン基板17との間)に、光電変換層102を透過した光を吸収して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を形成することも可能である。この場合、p型シリコン基板17内に、この無機光電変換部の電荷蓄積領域に蓄積された電荷に応じた信号を読み出すためのMOS回路を設け、このMOS回路にも配線35を接続しておけばよい。
【0079】
また、p型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、p型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としてもよい。更に、p型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを複数とし、p型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としてもよい。また、カラー画像を作る必要がないのであれば、p型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、光電変換部を1つだけ積層した構成としてもよい。
【0080】
本実施形態の固体撮像素子200において、電子ブロッキング層又は正孔ブロッキング層のうち一方を、注入される電荷の移動をブロックするとともに、注入される電荷の逆導電型となる構成とする。こうすることで、電荷ブロッキング層に含まれる絶縁性材料によって注入電荷の移動を抑えて暗電流の発生を抑制するとともに、導電性材料によって信号電荷を輸送することで光電変換効率を向上させることができる。
【0081】
(第4実施形態)
本実施形態の固体撮像素子は、図1のシリコン基板内にフォトダイオードを設けず、シリコン基板上方に複数(ここでは3つ)の光電変換素子を積層した構成である。
図4は、本発明の第4実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。
図4に示す固体撮像素子300は、シリコン基板41上方に、下部電極101r、下部電極101r上に積層された光電変換層102r、光電変換層102r上に形成された正孔ブロッキング層(図示省略)、光電変換層102rの下に形成された電子ブロッキング層(図示省略)、及び、正孔ブロッキング層上に積層された上部電極104rを含むR光電変換素子と、下部電極101b、下部電極101b上に積層された光電変換層102b、光電変換層102b上に形成された正孔ブロッキング層(図示省略)、光電変換層102rの下に形成された電子ブロッキング層(図示省略)、及び、正孔ブロッキング層上に積層された上部電極104bを含むB光電変換素子と、下部電極101g、下部電極101g上に積層された光電変換層102g、光電変換層102g上に形成された正孔ブロッキング層(図示省略)、光電変換層102rの下に形成された電子ブロッキング層(図示省略)、及び、正孔ブロッキング層上に積層された上部電極104gを含むG光電変換素子とが、それぞれに含まれる下部電極をシリコン基板41側に向けた状態で、この順に積層された構成となっている。
【0082】
シリコン基板41上には透明な絶縁膜48が形成され、その上にR光電変換素子が形成され、その上に透明な絶縁膜59が形成され、その上にB光電変換素子が形成され、その上に透明な絶縁膜63が形成され、その上にG光電変換素子が形成され、その上に開口の設けられた遮光膜68が形成され、その上に透明な絶縁膜67が形成されている。
【0083】
G光電変換素子に含まれる下部電極101g、光電変換層102g、正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層、及び上部電極104gは、それぞれ、図1に示す下部電極101、光電変換層102、電子ブロッキング層103、正孔ブロッキング層105、及び上部電極104と同じ構成である。ただし、光電変換層102gは、緑色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する有機材料を用いる。
【0084】
B光電変換素子に含まれる下部電極101b、光電変換層102b、正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層、及び上部電極104bは、それぞれ、図1に示す下部電極101、光電変換層102、電子ブロッキング層103、正孔ブロッキング層105、及び上部電極104と同じ構成である。ただし、光電変換層102bは、青色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する有機材料を用いる。
【0085】
R光電変換素子に含まれる下部電極101r、光電変換層102r、正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層、及び上部電極104rは、それぞれ、図1に示す下部電極101、光電変換層102、電子ブロッキング層103、正孔ブロッキング層105、及び上部電極104と同じ構成である。ただし、光電変換層102rは、赤色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する有機材料を用いる。
【0086】
シリコン基板41表面の遮光膜68によって遮光されている部分には、n+領域43,45,47が形成され、それぞれの周りはp領域42,44,46によって囲まれている。
【0087】
n+領域43は、絶縁膜48に開けられた開口に形成された接続部54を介して下部電極101rと電気的に接続されている。下部電極101rで捕集された正孔は、n+領域43の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、n+領域43にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部54は、下部電極101rとn+領域43以外とは絶縁膜51によって電気的に絶縁される。
【0088】
n+領域45は、絶縁膜48、R光電変換素子、及び絶縁膜59に開けられた開口に形成された接続部53を介して下部電極101bと電気的に接続されている。下部電極101bで捕集された正孔は、n+領域45の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、n+領域45にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部53は、下部電極101bとn+領域45以外とは絶縁膜50によって電気的に絶縁される。
【0089】
n+領域47は、絶縁膜48、R光電変換素子、絶縁膜59、B光電変換素子、及び絶縁膜63に開けられた開口に形成された接続部52を介して下部電極101gと電気的に接続されている。下部電極101gで捕集された正孔は、n+領域47の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、n+領域47にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部52は、下部電極101gとn+領域47以外とは絶縁膜49によって電気的に絶縁される。
【0090】
n+領域43に蓄積されている電子は、p領域42内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、n+領域45に蓄積されている電子は、p領域44内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、n+領域47に蓄積されている電子は、p領域46内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子300外部へと出力される。各MOS回路は配線55によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。なお、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成してもよい。つまり、n+領域43,45,47に蓄積された電子をシリコン基板41内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその正孔に応じた信号を出力させるような信号読出し部であってもよい。
【0091】
以上の説明において、B光を吸収する光電変換層とは、少なくとも400〜500nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であるものを意味する。G光を吸収する光電変換層とは、少なくとも500〜600nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。R光を吸収する光電変換層とは、少なくとも600〜700nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。
【0092】
本実施形態の固体撮像素子300において、電子ブロッキング層又は正孔ブロッキング層のうち一方を、注入される電荷の移動をブロックするとともに、注入される電荷の逆導電型となる構成とする。こうすることで、電荷ブロッキング層に含まれる絶縁性材料によって注入電荷の移動を抑えて暗電流の発生を抑制するとともに、導電性材料によって信号電荷を輸送することで光電変換効率を向上させることができる。
【0093】
(第5実施形態)
図5は、本発明の第五実施形態を説明するための固体撮像素子の断面模式図である。
p型シリコン基板81上方の同一面上の行方向とこれに直交する列方向には、主としてRの波長域の光を透過するカラーフィルタ93rと、主としてGの波長域の光を透過するカラーフィルタ93gと、主としてBの波長域の光を透過するカラーフィルタ93bとの3種類のカラーフィルタがそれぞれ多数配列されている。
【0094】
カラーフィルタ93rは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、Rの波長域の光の他に、赤外域の光の一部も透過する。カラーフィルタ93gは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、Gの波長域の光の他に、赤外域の光の一部も透過する。カラーフィルタ93bは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、Bの波長域の光の他に、赤外域の光の一部も透過する。
【0095】
カラーフィルタ93r,93g,93bの配列は、公知の単板式固体撮像素子に用いられているカラーフィルタ配列(ベイヤー配列や縦ストライプ、横ストライプ等)を採用することができる。
【0096】
カラーフィルタ93r下方には、カラーフィルタ93rに対応させてn型不純物領域(以下、n領域という)83rが形成されており、n領域83rとp型シリコン基板81とのpn接合によって、カラーフィルタ93rに対応するR光電変換素子が構成されている。
【0097】
カラーフィルタ93g下方には、カラーフィルタ93gに対応させてn領域83gが形成されており、n領域83gとp型シリコン基板81とのpn接合によって、カラーフィルタ93gに対応するG光電変換素子が構成されている。
【0098】
カラーフィルタ93b下方には、カラーフィルタ93bに対応させてn領域83bが形成されており、n領域83bとp型シリコン基板81とのpn接合によって、カラーフィルタ93bに対応するB光電変換素子が構成されている。
【0099】
n領域83r上方には下部電極87r(図1の下部電極101と同じ機能を持つ)が形成され、n領域83g上方には下部電極87g(図1の下部電極101と同じ機能を持つ)が形成され、n領域83b上方には下部電極87b(図1の下部電極101と同じ機能を持つ)が形成されている。下部電極87r,87g,87bは、それぞれカラーフィルタ93r,93g,93bの各々に対応して分割されている。下部電極87r,87g,87bは、それぞれ、可視光及び赤外光に対して透明な材料で構成され、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zico Oxide)等を用いることができる。透明電極87r,87g,87bは、それぞれ、絶縁層内に埋設されている。
【0100】
下部電極87r,87g,87bの各々の上には、主として波長580nm以上の赤外域の光を吸収してこれに応じた電荷を発生し、赤外域以外の可視域(波長約380nm〜約580nm)の光を透過する、カラーフィルタ93r,93g,93bの各々で共通の一枚構成である光電変換層89(図1の光電変換層102と同じ機能を持つ)が形成されている。光電変換層89を構成する材料は、例えば、フタロシアニン系有機材料やナフタロシアニン系有機材料を用いる。
【0101】
光電変換層89上には、カラーフィルタ93r,93g,93bの各々で共通の一枚構成である上部電極80(図1の上部電極104と同じ機能を持つ)が形成されている。上部電極80は、可視光及び赤外光に対して透明な材料で構成され、例えばITOやIZO等を用いることができる。なお、図示していないが、光電変換層89と上部電極80との間には、図1の電子ブロッキング層103と同じ機能を持つ電子ブロッキング層が形成されている。
【0102】
下部電極87rと、それに対向する上部電極80と、これらに挟まれる光電変換層89の一部とにより、カラーフィルタ93rに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子を、半導体基板上に形成されたものであるため、R基板上光電変換素子という。
【0103】
下部電極87gと、それに対向する上部電極80と、これらに挟まれる光電変換層89の一部とにより、カラーフィルタ93gに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子をG基板上光電変換素子という。
【0104】
下部電極87bと、それに対向する上部電極80と、これらに挟まれる光電変換層89の一部とにより、カラーフィルタ93bに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子をB基板上光電変換素子という。
【0105】
n領域83rの隣には、R基板上光電変換素子の下部電極87rと接続された高濃度のn型不純物領域(以下、n+領域という)84rが形成されている。尚、n+領域84rに光が入るのを防ぐために、n+領域84r上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0106】
n領域83gの隣には、G基板上光電変換素子の下部電極87gと接続されたn+領域84gが形成されている。なお、n+領域84gに光が入るのを防ぐために、n+領域84g上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0107】
n領域83bの隣には、B基板上光電変換素子の下部電極87bと接続されたn+領域84bが形成されている。なお、n+領域84bに光が入るのを防ぐために、n+領域84b上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0108】
n+領域84r上にはタングステン、アルミニウム等の金属からなるコンタクト部86rが形成され、コンタクト部86r上に下部電極87rが形成されており、n+領域84rと下部電極87rはコンタクト部86rによって電気的に接続されている。コンタクト部86rは、可視光及び赤外光に対して透明な絶縁層85内に埋設されている。
【0109】
n+領域84g上にはタングステン、アルミニウム等の金属からなるコンタクト部86gが形成され、コンタクト部86g上に下部電極87gが形成されており、n+領域84gと下部電極87gはコンタクト部86gによって電気的に接続されている。コンタクト部86gは絶縁層85内に埋設されている。
【0110】
n+領域84b上にはタングステン、アルミニウム等の金属からなるコンタクト部86bが形成され、コンタクト部86b上に下部電極87bが形成されており、n+領域84bと下部電極87bはコンタクト部86bによって電気的に接続されている。コンタクト部86bは絶縁層85内に埋設されている。
【0111】
n領域83r,83g,83b、n+領域84r,84g,84bが形成されている以外の領域には、n領域83r及びn+領域84rに蓄積されている電子に応じた信号をそれぞれ読み出すためのnチャネルMOSトランジスタからなる信号読み出し部85rと、n領域83g及びn+領域84gに蓄積されている電子に応じた信号をそれぞれ読み出すためのnチャネルMOSトランジスタからなる信号読み出し部85gと、n領域83b及びn+領域84bに蓄積されている電子に応じた信号をそれぞれ読み出すためのnチャネルMOSトランジスタからなる信号読み出し部85bとが形成されている。信号読み出し部85r,85g,85bは、それぞれ、CCDによって構成してもよい。尚、信号読み出し部85r,85g,85bに光が入るのを防ぐために、信号読み出し部85r,85g,85b上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0112】
このような構成によれば、RGBカラー画像と、赤外画像とを同一解像度で同時に得ることができる。このため、この固体撮像素子を電子内視鏡等に応用すること等が可能となる。
【0113】
本実施形態の固体撮像素子400において、電子ブロッキング層又は正孔ブロッキング層のうち一方を、注入される電荷の移動をブロックするとともに、注入される電荷の逆導電型となる構成とする。こうすることで、電荷ブロッキング層に含まれる絶縁性材料によって注入電荷の移動を抑えて暗電流の発生を抑制するとともに、導電性材料によって信号電荷を輸送することで光電変換効率を向上させることができる。
【0114】
上記実施形態の光電変換部のうち、のいずれかの光電変換材料が近赤外域に吸収スペクトルの最大ピークをもつ有機半導体とすることができる。このとき、光電変換材料が可視域の光に対して透明とすることが好ましい。さらに、光電変換材料がSnPcもしくはシリコンナフタロシアニン類であることが好ましい。
【0115】
以下、本発明の実施例を説明する。本実施例では、電荷ブロッキング層が絶縁性材料と導電性材料とを含む光電変換素子において、暗電流を抑制するとともに、光電変換効率を向上させることができることを実証する。
【0116】
(実施例1)
25mm角のITO電極付ガラス基板を、アセトン、セミコクリーン、イソプロピルアルコール(IPA)でそれぞれ15分超音波洗浄した。最後にIPA煮沸洗浄を行った後、UV/O3洗浄を行った。
次に、この基板上にフラーレンを含有した正孔ブロッキング層を成膜した。フラーレンC60は、フロンティアカーボン株式会社製、nanom purpule(C60)を使用した。o−ジクロロベンゼンに2.5wt%のポリカーボネート樹脂PCz(三菱ガス化学社製 ユーピロンPCZ-400)、さらにPCzに対して30wt%のフラーレンC60を溶解して、塗布溶液を作製した。この溶液を光電変換層上にスピンコートにより成膜して、真空乾燥機で溶剤を蒸発させ、膜厚1000Åの正孔ブロッキング層を形成した。
その基板を有機蒸着室に移動し、基板ホルダーを回転させながら、正孔ブロッキング層上に光電変換層として、キナクリドン(アルドリッチジャパンから購入し昇華精製を施したもの)の蒸着速度を3.0Å/secに保ちながら、1000Åとなるように蒸着して光電変換層を形成した。
続いて、この基板を、真空を保ちながら金属蒸着室に搬送し、正孔ブロッキング層上に、対向電極としてアルミを厚み1000Åとなるように蒸着した。また、最下層のITO電極と、アルミ対向電極とが形成する光電変換領域の面積は2mm×2mmとした。この基板を大気に曝すことなく、水分、酸素をそれぞれ1ppm以下に保ったグローブボックスに搬送し、UV硬化性樹脂を用いて、吸湿剤を張ったガラスで封止を行った。
【0117】
このようにして作製した素子を、オプテル製定エネルギー量子効率測定装置(ソースメータはケースレー6430を使用)を用いて、素子に対して1.0×106 V/cm2 の外部電界を与えた場合において、図6に示すように、光非照射時に流れる暗電流値と光照射時に流れる光電流値を測定し外部量子効率を算出した。光電変換領域の面積は2mm×2mmのうち1.5mmφの領域に対して光照射を行った。照射した光量は50μW/cm2とした。波長は光電変換層キナクリドンの最大吸収波長である560nmで測定を行った。また、光照射時に得られた外部量子効率を光非照射時に得られた暗電流密度で割った値をS/N比とした。
【0118】
(実施例2)
実施例1において、フラーレンC60の代わりにフラーレンC70を用いたこと以外は実施例1と同様にしてS/N比を算出した。
【0119】
(実施例3)
実施例1において、フラーレンC60の代わりに酸化フラーレンを用いたこと以外は実施例1と同様にしてS/N比を算出した。
【0120】
(実施例4)
実施例1において、PCzとフラーレンC60からなる正孔ブロッキング層の代わりに、電子ビーム蒸着法によりSiO2を成膜しながらフラーレンC60を抵抗加熱で同時に蒸着し体積比で7:3の混合層を正孔ブロッキング層としたこと以外は実施例1と同様にしてS/N比を算出した。
【0121】
(実施例5)
実施例1において、フラーレンC60の代わりに下記式に示すETM1を用いたこと以外は実施例1と同様にしてS/N比を算出した。
【0122】
【化16】

【0123】
(実施例6)
実施例1において、フラーレンC60の代わりに下記式に示すETM2を用いたこと以外は実施例1と同様にしてS/N比を算出した。
【0124】
【化17】

【0125】
(実施例7)
実施例1において、フラーレンC60の代わりにペンタセンを用いて電子ブロッキング層を形成し、電圧印加方向を逆にして測定したこと以外は実施例1と同様にしてS/N比を算出した。
【0126】
(比較例1)
実施例1において、フラーレンC60を用いることなくPCzのみで正孔ブロッキング層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてS/Nを算出した。
【0127】
(比較例2)
実施例1において、フラーレン混合PCzの代わりに、スパッタ装置を用いてSiO2を100nm成膜して正孔ブロッキング層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてS/Nを算出した。
【0128】
(比較例3)
実施例1において、フラーレン混合PCzの代わりに、抵抗加熱蒸着法により、5×10-4Pa程度の真空度を保ったままSiOを100nm成膜して正孔ブロッキング層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてS/Nを算出した。
【0129】
(比較例4)
実施例5において、ペンタセンを用いることなくPCzのみで電子ブロッキング層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてS/Nを算出した。
【0130】
上記実施例及び比較例の測定の結果を下記表に示す。
【0131】
【表1】

【0132】
この結果、実施例1から7の光電変換素子は、暗電流(A/cm2)の値を小さく抑えることができたうえ、光電変換効率(%)も向上させることができ、良好なS/N比を得ることができた。
一方で、比較例1から4は、暗電流の抑制と光電変換効率の向上とを両立することができず、S/N比は、実施例1から7に比べていずれも低い値となった。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】光電変換素子の第1実施形態の構成を示す断面図である。
【図2】光電変換素子の第2実施形態の構成を示す断面図である。
【図3】光電変換素子の第3実施形態の構成を示す断面図である。
【図4】光電変換素子の第4実施形態の構成を示す断面図である。
【図5】光電変換素子の第5実施形態の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0134】
100,200,300,400 光電変換素子
101 画素電極
102 光電変換層
103 電子ブロッキング層(電荷ブロッキング層)
104 対向電極
105 正孔ブロッキング層(電荷ブロッキング層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、
前記一対の電極の間に配置された光電変換層と、
前記一方の電極と前記光電変換層との間に形成され、前記一対の電極への電圧印加時に前記一対の電極の一方から前記光電変換層に電荷が注入されるのを抑制する電荷ブロッキング層と、を備えた光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層が絶縁性材料と導電性材料を含む光電変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層が、注入される電荷の移動を前記絶縁性材料でブロックするとともに、前記導電性材料が注入される電荷の逆導電型となる光電変換素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層を構成する絶縁性材料が有機高分子ポリマーからなる光電変換素子。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層を構成する絶縁性材料がSiO2などの無機酸化物もしくはLiFなどの無機フッ化物もしくは窒化シリコン等の無機窒化物のいずれか1つ又は複数からなる光電変換素子。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層を構成する導電性材料の少なくとも1種がペリレン誘導体、もしくはフラーレンC60、フラーレンC70、フラーレン酸化物などのカーボンクラスターもしくはその誘導体などの電子輸送性材料である光電変換素子。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層を構成する導電性材料の少なくとも1種が、下記一般式(A−1)または一般式(B−1)で表されるいずれかの電子輸送性材料である光電変換素子。
【化1】

一般式(A−1)中、LA1は連結基を、ZA1は含窒素ヘテロ環の形成に必要な原子群を、nA1は2以上の整数を表す。但し、一般式(A−1)で表される化合物は、分子内に少なくとも3つ以上の窒素原子を有する。
【化2】

一般式(B−1)中、LB1は連結基を、ZB1は、芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環の形成に必要な原子群を、nB1は2以上の整数を表す。但し、一般式(B−1)で表される化合物は、分子内に少なくとも3つ以上の窒素原子を有する。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層を構成する導電性材料がペンタセンもしくはその誘導体などの正孔輸送性材料である光電変換素子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記電荷ブロッキング層の厚みが10nm〜200nmである光電変換素子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記一対の電極に外部から印加される電圧を前記一対の電極間の距離で割った値が1.0×105V/cm〜1.0×107V/cmである光電変換素子。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
少なくとも1つの前記光電変換部が上方に積層された半導体基板と、
前記半導体基板内に形成され、前記光電変換部の前記光電変換層で発生した電荷を蓄積するための電荷蓄積部と、
前記光電変換部の前記一対の電極のうちの前記電荷を取り出すための電極と、前記電荷蓄積部とを電気的に接続する接続部とを備える光電変換素子。
【請求項11】
請求項10記載の光電変換素子であって、
前記半導体基板内に、前記光電変換部の前記光電変換層を透過した光を吸収し、該光に応じた電荷を発生してこれを蓄積する基板内光電変換部を備える光電変換素子。
【請求項12】
請求項11記載の光電変換素子であって、
前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内に積層されたそれぞれ異なる色の光を吸収する複数のフォトダイオードである光電変換素子。
【請求項13】
請求項11記載の光電変換素子であって、
前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内の入射光の入射方向に対して垂直な方向に配列されたそれぞれ異なる色の光を吸収する複数のフォトダイオードである光電変換素子。
【請求項14】
請求項12又は13記載の光電変換素子であって、
前記半導体基板上方に積層された前記光電変換部が1つであり、
前記複数のフォトダイオードが、青色の光を吸収可能な位置にpn接合面が形成された青色用フォトダイオードと、赤色の光を吸収可能な位置にpn接合面が形成された赤色用フォトダイオードであり、
前記光電変換部の前記光電変換層が緑色の光を吸収するものである光電変換素子。
【請求項15】
請求項10から14のいずれか1つに記載の光電変換素子をアレイ状に多数配置した固体撮像素子であって、
前記多数の光電変換素子の各々の前記電荷蓄積部に蓄積された前記電荷に応じた信号を読み出す信号読み出し部を備える固体撮像素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−182095(P2009−182095A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18879(P2008−18879)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】