説明

免震構造物

【課題】地震が発生した際において生じる構造物の最初の揺れを大幅に軽減させることが可能で、低メンテナンスでの使用が可能な免震構造物を提供する。
【解決手段】複数のすり鉢状凹部16が形成されたベース部10と、複数のすり鉢状凹部内16に転動可能に配設された複数の支持球20と、複数の支持球上に支持された躯体30と、躯体30の平面重心位置の重心位置すり鉢状凹部16Aに、中心から放射状に埋設された第1の電磁石60と、重心位置支持球20Aの中心から放射状に埋設された第2の電磁石70と、地震センサ40と、地震の加速度データに基づき、第1の電磁石60と第2の電磁石70の所要の電磁石62,72を励磁し、地震発生時において重心位置支持球20Aを自転させ、躯体30に作用する振動を減衰する減衰動作制御部50を具備することを特徴とする免震構造物100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免震構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の構造物には、地震対策として耐震構造が広く用いられている。このように構造物に耐震構造を採用することにより、地震が発生しても構造体としての損傷を大幅に減少させることができた。しかしながら、このような耐震構造は、地震による構造物の揺れの軽減は行わないため、地震時における構造物の揺れにより住宅等においては居住空間に設置されている大型家具が倒れ、居住空間(構造物の内部)に壊滅的な被害を受けることがある。また、倒れてきた大型家具の下敷きになり、居住者が大怪我や死亡してしまうという事故も実際に生じている。
【0003】
このような構造物の耐震構造に対して、近年では、免震構造や制振構造と呼ばれる構造を有する構造物が提案されている。このような構造物として、例えば、特許文献1に示すような構成が提案されている。
特許文献1には、複数の油圧シリンダを構造物の基礎に配設することで、地震時による構造物の揺れを軽減させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−176640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている免震構造は、地震により発生した構造物の揺れを減衰させるための構成であるが、建物の揺れを軽減するための反力を得るためには大規模な機械装置が必要になるため、免震構造物の建設コストが高騰してしまうという課題がある。また、流体シリンダを用いているため、メンテナンスが必要になるため、メンテナンスを怠ると実際の地震時に当初の設計機能が発揮できなくなるおそれもある。
【0006】
本発明は、地震が発生した際において生じる構造物の最初の揺れを大幅に軽減させることが可能で、低メンテナンスでの使用が可能な免震構造物の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本願発明は、上面に複数のすり鉢状凹部が形成されたベース部と、前記複数のすり鉢状凹部内のそれぞれに転動可能に配設された複数の支持球と、該複数の支持球上に支持された躯体と、前記複数のすり鉢状凹部のうち、前記躯体の平面重心位置に位置合わせして形成された重心位置すり鉢状凹部において、該重心位置すり鉢状凹部の中心から放射状に埋設された複数の電磁石からなる第1の電磁石と、前記重心位置すり鉢状凹部に配設された重心位置支持球内において、該重心位置支持球の中心から放射状に埋設された複数の電磁石からなる第2の電磁石と、地震の加速度を検出する地震センサと、該地震センサにより検出された加速度データに基づいて、前記第1の電磁石と前記第2の電磁石の所要の電磁石を励磁し、該励磁した電磁石の磁極を調整することにより、地震発生時において前記重心位置すり鉢状凹部内の前記重心位置支持球を自転させて、前記躯体に作用する振動を減衰する減衰動作制御部と、を具備することを特徴とする免震構造物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明における免震構造物の構成を採用することにより、簡易な電磁石の構成により地震による水平面内のあらゆる方向に対する振動を打ち消すための反力を得ることができるため、低コストで免震構造物を提供することが可能になる。
また、反力を得るための電磁石および第2の電磁石が外表面に露出していないため、反力源となる電磁石および第2の電磁石に錆の発生がなく、低メンテナンスで信頼性の高い免震構造物の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態にかかる免震構造物の概略断面図である。
【図2】本実施形態にかかる免震構造物の概略平面図である。
【図3】図1中のA部分の拡大説明図である。
【図4】重心位置支持球の断面図である。
【図5】他の支持球の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかる免震構造物の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3に示すように、本実施形態にかかる免震構造物100は、地中に構築されたベース部10と、ベース部10の上面において所要の配列で配設された複数の支持球20A,20,・・・と、複数の支持球20A,20,・・・上に支持される躯体30と、を有している。また、ベース部10および躯体30が構築されている敷地内には、地震の発生による加速度を検出する地震センサ40が配設されている。地震センサ40には、地震センサ40の検出信号に基づいて地震により発生する構造物へ振動を減衰させる減衰動作制御部50が接続されている。また、ベース部10および重心位置支持球20Aには、減衰動作制御部50により動作制御され、地震による躯体30の振動を減衰させるための減衰機構(第1の電磁石60および第2の電磁石70)が配設されている。減衰機構の詳細については後述する。
【0011】
ベース部10は、底板12と底板12の外周縁部を起立させた起立壁14とを有する上面開口の筒状体に形成されている。底板12の上面には、所要の配列に複数のすり鉢状凹部16A,16,・・・が形成されている。それぞれのすり鉢状凹部16A,16、・・・には、支持球20A,20,・・・が収容され、これら支持球20A,20,・・・の上に躯体30が支持されている。躯体30の荷重は複数の支持球20A,20,・・・により均等に支持されている。ここでは、躯体30として鉄筋コンクリート構造の住宅を想定している。
【0012】
本明細書中においては、図1,2に示すように、躯体30の平面重心位置の真下位置に形成されたすり鉢状凹部を重心位置すり鉢状凹部16Aと称し、重心位置すり鉢状凹部16Aに収容されている支持球を重心位置支持球20Aと称し、他の位置に形成されたすり鉢状凹部16、およびここに収容される他の支持球20と区別することにする。
本実施形態においては、説明を簡単するため、ベース部10の底板12の平面中央位置と躯体30の平面重心位置とが一致した状態で説明を行っている。底板12の平面中央位置(躯体30の平面重心位置)に配設された重心位置すり鉢状凹部16Aには、第1の電磁石60と位置検出センサSが埋設されている。
【0013】
第1の電磁石60は、重心位置すり鉢状凹部16Aの傾斜面とほぼ平行となるように配設されている。本実施形態においては、第1の電磁石60は4つの独立した電磁石62,62,・・・により構成した。それぞれの電磁石62,62,・・・は、図2に示すように、電磁石62の軸線が東西南北方向に沿うような配列で底板12内(重心位置すり鉢状凹部16Aの下方位置)に放射状配列をなすように配設した。各電磁石62,62,・・・への電源供給は、電磁波転送方式を採用しているので、電磁石62,62,・・・に電源を供給するための電線は不要である。電磁波転送による電源供給は公知技術であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0014】
重心位置支持球20Aは、強化ガラス材等により球体状に形成されたコア部材22と、コア部材22の外周面を被覆するばね性を具備する板バネ材24とゴム材としての硬質ゴム材26と、コア部材22の中心位置からコア部材32の外表面に向けて、放射状配列に埋設された複数の独立した電磁石72,72,・・・からなる第2の電磁石70と位置検出センサSと対をなす第2の位置検出センサSSとにより形成されている。
【0015】
重心位置支持球20Aについて具体的に説明をする。
まず、球体状をなすコア部材22に、コア部材22の中心位置から放射状配列に第2の電磁石70を埋設する。第2の電磁石70内の特定の電磁石72の外側先端部には第2の位置検出センサSSが予め取り付けられている。コア部材22に内蔵された第2の電磁石70(電磁石72,72,・・・)への電源供給は、第1の電磁石60への電源供給方式と同様にして行うことができる。
【0016】
次にコア部材22の外周面にひも状に形成された板バネ材24を巻き付けて被覆した後、同じくひも状に形成されたゴム材としての硬質ゴム26を板バネ材24による被覆面の上にさらに巻き付ける工程を繰り返し行い、コア部材22の外表面を板バネ材24と硬質ゴム材26とによって交互に被覆した積層構造体を形成する。本実施形態においては、板バネ材24、硬質ゴム26、板バネ材24、硬質ゴム26、板バネ材24の順に被覆し、5層に被覆された積層構造体とした。
コア部材22に板バネ材24と硬質ゴム26を所要の層数(図4では5層)に積層させた後、最外層を被覆する板バネ材24の外表面をモールド材料28により被覆して重心位置支持球20Aを得ることができる。モールド材料28には硬質ゴム材を用いることができるが、この材料に限定されるものではない。図4に示すように、本実施形態における重心位置支持球20Aは、モールド材料28をモールド成形する際に外表面に複数の円錐体の突起部29が形成されたいわゆる金平糖形状に形成されている。
【0017】
このように形成された重心位置支持球20Aは、第1の電磁石60と第2の電磁石70との磁極状態の切り替え制御をすることにより、第1の電磁石60と第2の電磁石70との間において、磁力による吸引力や反発力を得ることができる。すなわち、重心位置支持球20Aは、これら磁力による吸引力および反発力によって重心位置すり鉢状凹部16Aの範囲内で自ら転動可能に構成されている。
本実施形態における免震構造物100は、重心位置すり鉢状凹部16A内における重心位置支持球20Aの転動方向および転動量を磁力により制御することで地震により生じる躯体30の振動を減衰している。
【0018】
第2の電磁石70を構成する複数の独立した電磁石72は、それぞれの電磁石72,72,・・・における磁極状態を独立に切り替えすることも可能である。具体的には、コア部材22の中心から放射状に電磁石72を埋設する形態とし、コア部材22の直径方向に2本の電磁石72の磁極が交互になるように配設して、それぞれの電磁石72の磁極を独立に切り替え制御することができる。
これとは別に、コア部材22の外表面を所定面積ごとに区分し、それぞれの所定区分範囲に内蔵された電磁石72の磁極が同極となるように配設し、所定区分範囲内の電磁石72の磁極状態をまとめて切り替え制御するように電磁石72のコイル(図示せず)の向きを揃えておくこともできる。この構成によれば、第2の電磁石70における特定領域の電磁石72の磁極切り替え制御を一括処理により行うことができ、減衰動作制御部50による演算時間を大幅に短縮することができるため好都合である。
【0019】
また、底板12において重心位置すり鉢状凹部16Aの外方位置を囲むようにして配設された他のすり鉢状凹部16(以下、単にすり鉢状凹部16という)には他の支持球20(以下、単に支持球20という)が収容されている。支持球20は、図5に示すように、重心位置支持球20Aの構成から第2の電磁石70と第2の位置検出センサSSを省いた構成であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
重心位置支持球20Aが第1および第2の電磁石60,70を構成する電磁石62,72の磁力により自転する構成であるのに対し、第2の支持球20は重心位置支持球20Aにより水平移動する躯体30の動きに合わせて従動する構成である点で重心位置支持球20Aと構成を異にしている。
【0020】
本実施形態にかかる免震構造物100には、図1および図2に示すように起立壁14と躯体30の外表面との間に形成された縁切部Zに鉛直方向における躯体30の揺れを減衰させるための鉛直方向減衰部材90が配設されている。このような鉛直方向減衰部材90としては、例えば、積層ゴムにより構成された免震支承を転用することができる。第1の電磁石60と第2の電磁石70を有する減衰機構80の構成に加え、鉛直方向減衰部材90を配設することにより躯体30に作用する振動を3次元的に減衰させることが可能になる。三次元的な地震動の減衰が不要である場合には、鉛直方向減衰部材90の配設は省略することもできる。
【0021】
また、本実施形態における免震建物100においては、ベース部10の起立壁14と躯体30との間には隙間が生じることになるため、雨天等によりベース部10の底板12上に水が浸入することが考えられる。そこで、本実施形態においては、図2に示すように、それぞれのすり鉢状凹部16(重心位置すり鉢状凹部16Aも含む)の内底部とベース部10の外部とを連通させた排水路18を配設している。この排水路18によりすり鉢状凹部16の内底部への水の滞留を防止することができる。
【0022】
先にも説明したとおり、それぞれのすり鉢状凹部16A,16,・・・には、突起部29を有する金平糖形状の第1および第2の支持球20A,20,・・・が収容されているので、それぞれのすり鉢状凹部16A,16,・・・の表面とそれぞれの支持球20A,20,・・・とは複数の点接触により配設されることになる。このような配設状態を採用することにより、それぞれのすり鉢状凹部16A,16,・・・の表面とそれぞれの支持球20A,20,・・・との間に隙間を形成することができる。この隙間により、起立壁14と躯体30との間から水が浸入しても、それぞれのすり鉢状凹部16A,16,・・・とそれぞれの支持球20A,20,・・・との間に水が停滞することはない。
【0023】
さらにそれぞれのすり鉢状凹部16A,16,・・・には排水路18が設けられているから、起立壁14と躯体30との間から水が浸入しても排水路18を介して確実にベース部10の外部に排水することができる。
このような構成により、室外環境にさらされた状態であってもそれぞれの支持球20A,20,・・・の外表面に錆が発生することはなく、それぞれの支持球20A,20,・・・の動作不良が回避できる。すなわち、低メンテナンス性を備えつつ、地震時には確実に免震性能を発揮させることが可能になり好都合である。
【0024】
次に、本実施形態にかかる免震構造物についての具体的な動作について説明する。
地震が発生すると、地震センサ40が地震による加速度を検出すると共に検出した加速度情報を減衰動作制御部50に送信する。また、第1および第2の位置検出センサS,SSは、地震センサ40による地震の加速度の検出と同期して第1の磁石60と第2の電磁石70の位置情報を検出すると共に検出した位置情報を減衰動作制御部50に送信する。
減衰動作制御部50は、受信した地震の加速度情報と第1の磁石60と第2の電磁石70の位置情報に基づいて、振動情報算出手段52に地震に関する数値情報(振動方向、振幅、周期等)と、第1の電磁石60および第2の電磁石70の位置状態(第2の電磁石70の電磁石72の配設向き)を算出させる。
【0025】
振動情報算出手段52が算出した地震に関する数値情報と第1の電磁石60と第2の電磁石70の位置状態に基づいて、電力供給制御手段54が第1の電磁石60と第2の電磁石70を構成する各電磁石62,72への電力供給(励磁状態)を制御し、地震により躯体30に発生する振動を減衰(振動の発生をなくす)方向に重心位置支持球20Aを自転させる。このように、磁力により重心位置支持球20Aを躯体30の振動方向と反対側に回転させることにより、地震による躯体30の振動の発生を軽減または防止することができる。
【0026】
以上に説明したように、本実施形態にかかる免震構造物100の構成においては、減衰動作制御部50において実際に動作制御がなされる構成を第1の電磁石60および第2の電磁石70のみにすることができる。これにより、免震構造物100の構成を簡略にすることができ、動作制御が簡易、迅速であるとともに、動作制御に要する消費エネルギーを可及的に少なくすることができる点で従来技術に対してきわめて有利な作用効果を得ることができる。
【0027】
以上の実施形態においては、地震センサ40を免震構造物100の敷地内に配設した実施形態について説明をしたが、地震センサ40の配設位置はこの場所に限定されるものではない。敷地内への地震センサ40の配設に代えて、気象庁が配設している震度計の計測データを読み取り可能な構成としておくこともできる。震度計までの距離によっては敷地までの減衰データや地震波到達時間データ等により構成される補正データをさらに有していればなお好適である。
【0028】
また、本実施形態においては、振動情報算出手段52と電力供給制御手段54とをそれぞれ独立させた形態について説明しているが、振動情報算出手段52と電力供給制御手段54とをまとめてパーソナルコンピュータのCPU等に代表される中央処理部に置き換えることもできる。
【0029】
具体的には、一般的なパーソナルコンピュータの記憶手段に加速度データに基づいて躯体30に作用すると予想される振動についての数値データと、第1の電磁石60と第2の電磁石70との位置情報に基づいて、所定の方向に重心位置支持球20Aを回転させるために必要な第1の電磁石60と第2の電磁石70への供給電力データをそれぞれ記憶させ、CPUに記憶手段内の各データを読み取らせて、第1の電磁石60と第2の電磁石70への電力供給を制御することも可能である。
このようなパーソナルコンピュータにより減衰動作制御部50を構成し、パーソナルコンピュータの電力供給源として、太陽光発電により発電した電力を充電する蓄電池を用いれば、商用電力の供給がストップしてしまった場合であっても確実に減衰動作制御部50として機能させることができるため好都合である。
【0030】
また、本実施形態にかかる重心位置支持球20Aと支持球20の突起部29は、それぞれ円錐形状としているが、突起部29が円柱体や円錐台等の他の形状に形成されていてもよいし、それぞれの支持球20A,20,・・・の外表面への突起部29の形成を省略し、通常の球体状をなした支持球20A,20,・・・の形状を採用することも可能ではある。この形状であっても、それぞれのすり鉢状凹部16A,16,・・・には各々排水路18が配設されているため、水の侵入による支持球20A,20,・・・の錆発生を抑えることが可能である。
【0031】
さらに、以上の実施形態においては、重心位置すり鉢状凹部16Aと重心位置支持球20Aとのそれぞれに一対の位置検出センサS,SSを配設しているが、これら一対の位置検出センサS,SSの配設は必須ではない。一対の位置検出センサS,SSを配設しない場合には、免震構造物100の構築時に、第1の電磁石60に対する重心位置支持球20Aの配設を精密に位置合わせした状態で配設すればよい。このように第1の電磁石60と第2の電磁石70を構成する各電磁石62,72の配設状態が把握できていれば、地震時において躯体30に作用する振動に対する励磁状態の制御精度は本実施形態と同程度の精度で行なうことができる。
地震後には、免震構造物100の施工者等によるアフターサービスにより、第1の電磁石60と第2の電磁石70を構成する各電磁石62,72の位置関係を地震発生前の初期状態にリセットすることも物理的には十分可能であるため問題はない。
【0032】
さらにまた、以上の実施形態においては、免震構造物100における躯体30として、鉄筋コンクリート構造の住宅を用いて説明を行っているが、本願発明における躯体30は、以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、木造住宅や鉄骨構造による一般住宅、鉄筋コンクリート構造や鉄骨構造等からなる集合住宅および商業ビル等に代表される他の建築構造物における躯体30や、土木構造物における躯体30に対しても本願発明の構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 ベース部
12 底板
14 起立壁
16A 重心位置すり鉢状凹部
16 すり鉢状凹部
18 排水路
20A 重心位置支持球
20 支持球
22 コア部材
24 板バネ材
26 硬質ゴム材
28 モールド材料
29 突起部
30 躯体
40 地震センサ
50 減衰動作制御部
52 振動情報算出手段
54 電力供給制御手段
60 第1の電磁石
62,72 電磁石
70 第2の電磁石
90 鉛直方向減衰部材
100 免震建物
S,SS 位置検出センサ
Z 縁切部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に複数のすり鉢状凹部が形成されたベース部と、
前記複数のすり鉢状凹部内のそれぞれに転動可能に配設された複数の支持球と、
該複数の支持球上に支持された躯体と、
前記複数のすり鉢状凹部のうち、前記躯体の平面重心位置に位置合わせして形成された重心位置すり鉢状凹部において、該重心位置すり鉢状凹部の中心から放射状に埋設された複数の電磁石からなる第1の電磁石と、
前記重心位置すり鉢状凹部に配設された重心位置支持球内において、該重心位置支持球の中心から放射状に埋設された複数の電磁石からなる第2の電磁石と、
地震の加速度を検出する地震センサと、
該地震センサにより検出された加速度データに基づいて、前記第1の電磁石と前記第2の電磁石の所要の電磁石を励磁し、該励磁した電磁石の磁極を調整することにより、地震発生時において前記重心位置すり鉢状凹部内の前記重心位置支持球を自転させて、前記躯体に作用する振動を減衰する減衰動作制御部と、を具備することを特徴とする免震構造物。
【請求項2】
前記減衰動作制御部は、
前記地震センサが検出した加速度に基づき、当該加速度により発生する前記躯体の振動の振動方向、振幅、周期をそれぞれ算出する振動情報算出手段と、
当該振動情報算出手段により算出された振動情報に基づいて、前記第1の電磁石と前記第2の電磁石への電力供給を制御する電力供給制御手段と、を有していることを特徴とする請求項1記載の免震構造物。
【請求項3】
前記複数の支持球は、コア部材と、当該コア部材の外周面を積層状態で被覆する板バネ材およびゴム材とによりなり、前記複数の支持球の外表面には複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の免震構造物。
【請求項4】
前記複数のすり鉢状凹部には、内底面と前記ベース部の外部とに連通する排水路が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の免震構造物。
【請求項5】
前記ベース部は、前記ベース部の平面外周縁部分が起立する起立壁に形成されていて、
前記躯体と前記起立壁との間に形成される縁切部に鉛直方向の振動を減衰する鉛直方向減衰部材が配設されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の免震構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−41782(P2012−41782A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185807(P2010−185807)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(303053459)株式会社エル・アイ・シー (6)
【Fターム(参考)】