説明

全閉型電動機

【課題】塵埃の付着による回転子のアンバランスの拡大を防止し、分解保守作業を削減可能な電動機を提供する。
【解決手段】全閉型電動機は、ステータ鉄心12と、第1ブラケットおよび第2ブラケットと、第1軸受部17と、第2軸受部20と、2つの軸受部により回転自在に支持される回転軸23、およびロータ鉄心22を有するロータ26と、回転軸と一体に回転自在な冷却仕切円板30と、冷却仕切円板の外周部と第1ブラケットとの間に形成されたラビリンス構造部Xと、冷却仕切円板と第1軸受部および第1ブラケットとの間に規定され、第1軸受部の外周側に形成された吸気口36aから導入された外気を流通し、第1ブラケットに形成された排気口36bから外部に排気する通風空間34と、通風空間に接する冷却仕切円板の表面に形成されたアンバランス修正用の凹所42と、冷却仕切円板の材料より比重の軽い充填材であって、凹所に充填され凹所を閉じた充填材44と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、鉄道車両を駆動する車両用の全閉型電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両(以下、車両と称する)では、車体の下に配置された台車に主電動機(以下、「電動機」と呼ぶ)を装荷して、この電動機の回転力を継手と歯車装置を介して車輪に伝達して車両を走行させている。
【0003】
メインテナンス周期の延長、即ち、省メインテナンス性の高い電動機のニーズが高まっている。このようなニーズを満たすため、全閉型の電動機の開発が進められている。
【0004】
この電動機は、円筒状のフレームの内周側に設けられたステータ鉄心と、フレームの両端側に取付けられ、密閉ケースを構成したブラケットおよびハウジングと、を備え、これらブラケットおよびハウジングにそれぞれ軸受が内蔵されている。密閉ケース内には、回転子が設けられている。この回転子は、その両端部が軸受けによって回転自在に支持されたロータ軸と、ロータ軸の中央部に取り付けられたロータ鉄心と、を有し、ロータ鉄心は、ステータ鉄心の内側に隙間を置いて位置している。また、密閉ケース内で、ロータ軸の両端部に、冷却仕切円板が取り付けられ、冷却仕切円板の外周部とブラケットとの間、および他方の冷却仕切円板の外周部とフレームとの間、にラビリンスシール部を形成している。ブラケットの軸受の外周部分に吸気口が形成され、この吸気口から外気が冷却仕切円板の中心部分に導かれブラケットの通風路を通って外部に排出される。
【0005】
近年、回転子の発熱を抑え、よりコンパクトな電動機を実現するために、かご型ロータに代わって、永久磁石をロータ鉄心に挿入して構成する永久磁石形電動機も増えている。
【0006】
上記のように構成された全閉型の電動機は、外気が機内を流通しないため、機内が塵埃で汚損されることがなく、内部清掃のための電動機の分解を無くして省力化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−029150号公報
【特許文献2】特開2008−099491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、回転子は部品取付け完成後に回転体が持つ回転アンバランスを除去するアンバランス修正を実施する。アンバランス修正は、冷却仕切円板の傾斜部分に、穴を開ける方式や、アンバランス調整用の溝を形成し、この溝に錘を取り付ける方式が取られている。このように製造過程で事前にアンバランス修正を実施することにより、回転子のアンバランスは無くなるので電動機がアンバランスにより振動することを未然に防ぎ、スムーズに回転させることができるようになる。
【0009】
しかしながら、全閉型の電動機の場合、この穴加工部分や調整溝は冷却仕切円板とべアリングブラケットとの間、あるいは、冷却仕切円板とハウジングとの間の空間部内にあるため、外気に含まれ塵挨が穴や調整溝に堆積し易い。これらのアンバランス修正用の穴や調整溝に塵挨が堆積すると、アンバランス振動が拡大すると共に回転遠心力で塵挨が固まってしまい、剥がれ難くなる。そのため、定期的に塵挨を除去する作業が必要になり、全閉型の電動機の特徴である保守作業の大幅削減を達成する上で大きな問題となる。
【0010】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その課題は、塵埃の付着による回転子のアンバランスの拡大を防止し、分解保守作業を削減可能な全閉型電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態によれば、全閉型電動機は、ステータ鉄心と、前記ステータ鉄心の軸方向の両側に配置されケースを構成する第1ブラケットおよび第2ブラケットと、軸受を保持し前記第1ブラケットに設けられた第1軸受部と、軸受を保持し、前記第2ブラケットに設けられた第2軸受部と、前記2つの軸受により回転自在に支持され前記第1、第2ブラケット内に延在する回転軸、およびこの回転軸に取り付けられ前記ステータ鉄心の内側に隙間を置いて対向するロータ鉄心を有するロータと、前記ロータ鉄心と前記第1軸受部との間で前記ロータに固定され、前記回転軸と一体に回転自在な冷却仕切円板と、前記冷却仕切円板の外周部と前記第1ブラケットとの間の環状の微小隙間により形成されたラビリンス構造部と、前記冷却仕切円板と前記第1軸部および第1ブラケットとの間に規定され、前記第1軸受部の軸受の外周側に形成された吸気口から導入された外気を流通し、前記第1ブラケットに形成された排気口から外部に排気する通風空間と、前記通風空間に接する前記冷却仕切円板の表面に形成されたアンバランス修正用の凹所と、前記冷却仕切円板の材料より比重の軽い充填材であって、前記凹所に充填され凹所を閉じた充填材と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る全閉型の電動機を示す断面図。
【図2】図2は、前記電動機の冷却仕切円板の正面図。
【図3】図3は、前記電動機の他の冷却仕切円板の正面図。
【図4】図4は、前記冷却仕切円板のバランス調整溝および錘の部分を示す断面図。
【図5】図5は、第2の実施形態に係る全閉型の電動機を示す断面図。
【図6】図6は、第3の実施形態に係る全閉型の電動機を示す断面図。
【図7】図7は、第4の実施形態に係る全閉型の電動機を示す断面図。
【図8】図8は、第5の実施形態に係る全閉型の電動機を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら、種々の実施形態について説明する。なお、実施形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る全閉型の電動機を示している。この電動機は、ほぼ円筒状のフレーム10を備え、このフレーム10の内周部に円筒状のステータ鉄心12が配置されている。ステータ鉄心12の軸方向両端面には、環状の一対の鉄心押え11a、11bが固定されている。ステータ鉄心12は、磁性材、例えば、珪素鋼板からなる環状の金属板を多数枚積層して構成されている。ステータ鉄心12の内周部には、それぞれ軸方向に延びた複数のスロットが形成され、これらのスロットにステータコイル13が埋め込まれている。ステータコイル13のコイルエンドはステータ鉄心12の両端面から軸方向に張り出している。ステータ鉄心12およびステータコイル13によりステータ(固定子)14が構成されている。
【0015】
フレーム10の軸方向一端側には、円盤状のべアリングブラケット15がボルト止めされ、フレーム10の一端を閉塞している。フレーム10の一端側の円筒部およびベアリングブラケット15は、ケースの一部を構成する第1ブラケットとして機能する。ベアリングブラケット15の中心部に、軸受16を内蔵した第1軸受部17が設けられている。フレーム10の軸方向他端は、円盤状の側板19により閉塞されている。フレーム10の軸方向他端部および側板19は、ケースの一部を構成する第2ブラケットとして機能する。側板19の中心部に、軸受18を内蔵した第2軸受部、ここでは、軸受ハウジング20がボルト止めされている。そして、フレーム10、ベアリングブラケット15、第1軸受部17、側板19、軸受ハウジング20により、内部が密閉されたケース(機体)が構成されている。
【0016】
ステータ鉄心12の内側に、隙間Gを置いて、円柱形状のロータ鉄心22が同軸的に配置されている。ロータ鉄心22の中心部に回転軸23が同軸的に取り付けられ、その両端部は第1軸受部17および第2軸受部18によって回転自在に支持されている。これにより、回転軸23は、ケース内に同軸的に延在している。回転軸23およびロータ鉄心22はロータ(回転子)26を構成している。回転軸23の駆動側端部23aは機外に延出し、この部分に駆動歯車装置を接続するための継手が取り付けられる。
【0017】
ロータ鉄心22は、磁性材、例えば、珪素鋼板からなる環状の金属板を多数枚積層して構成され、その内部に複数の永久磁石25が配置されている。ロータ鉄心22は、回転軸23に取り付けられた一対の鉄心押え24a、24bにより、軸方向両側面から挟まれるように支持されている。鉄心押え板24a、24bは、環状に形成され、その外径は、ロータ鉄心22の外径よりも僅かに小さく形成されている。
ステータコイル13に通電することにより、ロータ鉄心22が回転し、回転軸23がロータ鉄心22と一体に回転される。これにより、永久磁石型電動機が構成されている。なお、ロータは、かご型ロータとし、誘導電動機を構成してもよい。
【0018】
駆動端側の第1軸受部17とロータ鉄心22との間で回転軸23に第1冷却仕切円板30が同軸的に取付けられ、回転軸23と一体に回転自在となっている。第1冷却仕切円板30は、ほぼロート形状に形成され、ロータ鉄心22側から第1ブラケット15に向かって傾斜して延びている。第1冷却仕切円板30の中心部は、鉄心押え24aに密着している。第1冷却仕切円板30の外周縁部とベアリングブラケット15の機内側の張出部15aの内周部とは、円環状の微小間隙を置いて、互いに係合している。この円環状の微小間隙部は、互いに凹凸形状の略二段構造に形成され、ラビリンス構造部Xを形成している。第1冷却仕切円板30において、第1軸受部17と対向する外面に複数の羽根31が形成されている。
【0019】
反駆動端側の軸受ハウジング20とロータ鉄心22との間で鉄心押え24bに第2冷却仕切円板32が同軸的に取付けられ、回転軸23と一体に回転自在となっている。第2冷却仕切円板32は、ほぼロート形状に形成され、ロータ鉄心22側から側板19に向かって傾斜して延びている。第1冷却仕切円板32の中心部は、鉄心押え24bに密着している。第2冷却仕切円板32の外周縁部と側板19の機内側の張出部19aの内周部とは、円環状の微小間隙を置いて、互いに係合している。この円環状の微小間隙部は、互いに凹凸形状の略二段構造に形成され、ラビリンス構造部Yを形成している。第2冷却仕切円板32において、軸受ハウジング20と対向する外面に複数の羽根33が形成されている。
【0020】
第1冷却仕切円板30および第2冷却仕切円板32は、ステータ鉄心12およびロータ鉄心22が位置する機内側空間と機外とを機密に遮断しているとともに、ロータ26の発熱を放熱する役目を有している。
【0021】
第1冷却仕切円板30の外側に通風空間34を置いて第1軸受部17が設けられている。この通風空間34は、ステータコイル13やロータ26による発熱が第1軸受部17に影響を与えない断熱構造を構成している。通風空間34に外気を導入できるように、第1軸受部17に通風空間34に連通する複数の吸気口36aが形成され、また、べアリングブラケット15に通風空間34に通じる複数の排気口36bが形成されている。第1冷却仕切円板30の通風空間34に面する内径部分には羽根31がついているため、ロータ26と共に第1冷却仕切円板30が回転すると、外気が吸気口36aから通風空間34内に導入され、通風空間34内を冷却した後、排気口36bから再び電動機外部に排出される。この外気の通風で、第1冷却仕切円板30からロータ26の熱が伝わり放熱冷却される。併せて第1軸受部17、べアリングブラケット15が冷却されるので軸受16の発熱や軸受への伝熱も抑制される。
【0022】
第2冷却仕切円板32の外側に通風空間37を置いて軸受ハウジング20および側板19が設けられている。この通風空間37は、ステータコイル13やロータによる発熱が軸受ハウジング20に影響を与えない断熱構造を構成している。通風空間37に外気を導入できるように、側板19および軸受ハウジング20に通風空間37に連通する複数の吸気口38aが形成され、また、側板19に通風空間37に通じる複数の排気孔38bが形成されている。
【0023】
第2冷却仕切円板32の通風空間37に面する内径部分には羽根33が設けられているため、ロータ26と共に第2冷却仕切円板32が回転すると、外気が吸気口38aから通風空間37内に導入され、通風空間37内を冷却した後、排気口38bから再び電動機外部に排出される。この外気の通風で、第2冷却仕切円板32からロータ26の熱が伝わり放熱冷却される。併せて軸受ハウジング20、側板19が冷却されるので軸受18の発熱や軸受への伝熱も抑制される。
【0024】
一方、ステータ14の発熱は、ステータ鉄心12と密着しているフレーム10に伝熱して外気に直接自然放熱すると共に、車両が走行時にフレーム10に当たった走行風が冷却を促進する。
【0025】
ロータ26は部品取付け完成後に回転体が持つ回転アンバランスを除去するため、アンバランス修正を実施する。本実施形態では、図1および図2に示すように、第1冷却仕切円板30および第2冷却仕切円板32の傾斜部分の外面、すなわち、外気が流通する通風空間34、37に接する面に凹所、例えば、円形の有底穴40、長孔42、溝、あるいは、貫通孔を加工してバランス修正を施している。凹所は、これらに限らず、切欠きとしてもよい。円形の有底穴40、長孔42、溝、あるいは、貫通孔は、回転軸23と同芯の円に沿って機械加工されている。更に、バランス修正用の有底穴40、長孔42、溝、あるいは貫通孔には、第1および第2冷却仕切円板30、32の材料より比重の軽い充填材(詰物)44が充填され、塞がれている。この充填材44により、バランス修正用の穴40、長孔42、あるいは貫通孔が塞がれ、その表面が元の第1および第2冷却仕切円板30、32の表面形状と同じに、つまり、面一に、なっている。充填材44としては、例えば、比重0.23程度のシリコンゴム等を用いることができる。このような比重の軽い充填材44を充填することでアンバランス修正がされている。
【0026】
また、ロータ26の回転バランス修正は、図3および図4に示すように、第1冷却仕切円板30および第2冷却仕切円板32の傾斜部分の外面、すなわち、外気が流通する通風空間34、37に接する面に、予め、回転軸23と同軸の環状のバランス調整溝46を加工しておき、バランス修正時、バランス調整溝46の任意の位置にアンバランス修正用の錘48を取付ける構成としてもよい。そして、バランス調整溝46の内、錘48が付いていない部分には、第1および第2冷却仕切円板30、32の材料より比重の軽い充填材(詰物)44が充填され、塞がれている。充填材44により、バランス調整溝46が塞がれ、その表面が元の第1および第2冷却仕切円板30、32の表面形状と同じに、つまり、面一に、なっている。充填材44としては、例えば、比重0.23程度のシリコンゴム等を用いることができる。このような比重の軽い充填材44を充填することでアンバランス修正がされている。上記のようなバランス修正用の穴、長孔や錘はアンバランス修正時のアンバランス量より、予め大き目の穴や錘としておき、軽量の詰物を充填することでアンバランス量が無くなるようにするものである。
【0027】
以上のように構成された全閉型の電動機によれば、ステータコイル13の発熱は、ステータ鉄心12の外周面、フレーム10を介して外気に放熱し、ロータの発熱は第1および第2冷却仕切円板30、32で放熱する。第1および第2軸受部17、20は、加熱源のステータコイル13等から第1、第2冷却仕切円板30、32により規定された通風空間34、37で隔離されされ、また、これらの通風空間に導入された外気により冷却される。そのため、熱の影響が少なくなり全閉化が実現できる。全閉構造とすることで、塵挨の機内への堆積を防ぐことができ、機内の清掃が不要になり、格段に保守の低減を図ることができる。
【0028】
また、製造過程で事前にアンバランス修正を実施することによりロータのアンバランスは無くなるので電動機がアンバランスにより振動することを未然に防ぎ、スムーズに回転させることができるようになる。冷却仕切円板の冷却風が通過する面にある穴や錘の付いてない溝に冷却仕切円板より比重の軽い詰物を充填することや不要な穴や溝を設けないことで表面は滑らかになり、吸気口36a、38aから浸入した外部塵挨が、冷却仕切円板の穴や溝に付着堆積することを防止し、冷却風と一緒に排気口36b、38bより外部に排出される。そのため、経年的に付着しながら堆積増加する塵挨によるロータのアンバランスの拡大が防止でき、より理想的な全閉形電動機を提供することができる。
【0029】
次に、他の実施形態に係る全閉型の電動機について説明する。
以下に述べる実施形態において、前述した第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0030】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る全閉型の電動機の一部を示している。第2の実施形態では、全閉型の電動機において、アンバランス修正用の穴や溝、錘を外気が入らない機内側に設ける構成とすることで、これら穴、溝への塵埃の付着、堆積を防止し、ロータのアンバランスの拡大を抑制している。
【0031】
図5に示すように、第1冷却仕切円板30は、回転軸23に嵌合され鉄心押え24aに密着した円盤状の中心部30aと、この中心部からラビリンス構造部Xまでベアリングブラケット15に向かって傾斜して延びるロート形状の環状部30bと、を有している。そして、アンバランス修正用の穴や溝42は、中心部30aの外周面に形成されている。
【0032】
すなわち、電動機の機内側の溝加工位置が機内と機外を仕切るラビリンス部Xに近いと第1冷却仕切円板30の外周部に機械加工されているラビリンス部Xの機械加工精度が狂う可能性がある。冷却仕切円板30は、例えば、鋳物構造であるため、残留応力があり溝加工すると応力が開放され変形する可能性が考えられる。そのため、アンバランス修正用の穴や溝42は、ラビリンス部Xから離れた位置で、しかも、機械加工時に断面積変化率が少ない部分、つまり、中心部30aの外周領域に設けることがよい。この第1冷却仕切円板30は、単体で回転バランス修正が行われた後、回転軸23に取付けられる。
第2冷却仕切円板32も第1冷却仕切円板30と同様に構成され、中心部32aの外周面にバランス修正用の穴や溝42が形成されている。
【0033】
鉄心押え24a、24bは、永久磁石25からの磁束漏れを防止するため、永久磁石25の内周位置と同一かあるいはこの内周位置よりも小さい外径に形成されている。各鉄心押え24a、24bの外周部で、冷却仕切円板側の表面には、回転軸23と同軸の環状のバランス調整溝46が形成されている。バランス調整溝46の任意の位置に、アンバランス修正用の錘48が嵌合固定されている。
【0034】
第1および第2冷却仕切円板30、32を付けないでロータ26のバランス修正を行い、バランス調整溝46のバランス調整位置に錘48を取付ける。このバランス修正用の錘48を取付けてから、単品でバランス取りを済ませた、すなわち、溝42が加工された第1および第2冷却仕切円板30、32を回転軸23に取付ける。この場合、最終組立に発生するロータ全体の回転アンバランス量は少なく、第1あるいは第2冷却仕切円板30、32の表面を軽くグラインダーで擦る程度で最終動バランス修正が容易にできる。
【0035】
以上のように構成された全閉型の電動機によれば、バランス修正用の穴や溝は、機内側に設けていることから、これらの穴や溝に塵埃が付着、堆積することがなく、塵挨によるロータのアンバランスの拡大を防止することができる。また、バランス修正用の穴や溝は、冷却仕切円板において、ラビリンス部から離れた位置で、しかも機械加工時に断面積変化率が少ない部分に設けられているため、冷却仕切円板の強度を維持し、変形、加工精度の低下を防止することができる。
第2の実施形態において、電動機の他の構成は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0036】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係る全閉型の電動機を示している。第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、全閉型の電動機において、アンバランス修正用の穴や溝、錘を外気が入らない機内側に設ける構成とすることで、これら穴、溝への塵埃の付着、堆積を防止し、ロータのアンバランスの拡大を抑制している。
【0037】
アンバランス修正用の穴や溝42は、ラビリンス部Xから離れた位置で、しかも、機械加工時に断面積変化率が少ない部分、つまり、第1冷却仕切円板30の中心部30aの外周領域に設けられている。第2冷却仕切円板32も同様に構成され、中心部32aの外周面にバランス修正用の穴や溝42が形成されている。
【0038】
鉄心押え24a、24bは、ロータ鉄心22に接する小径部と、ロータ鉄心22と隙間Hを置いて対向し小径部よりも大径の大径部と、を有する段付きの環状に形成されている。鉄心押え24a、24bの大径部の外径D1は永久磁石25の内径よりも大きく形成され、ロータ鉄心22に接触する小径部は、永久磁石25の磁束漏れに影響しない径D2のままにした段付き構造に形成されている。鉄心押え24a、24bの最大径部分は、ロータ鉄心22と隙間Hを置いて設けられている。そして、各鉄心押え24a、24bの最大径外周部で、冷却仕切円板側の表面には、回転軸23と同軸の環状のバランス調整溝46が形成されている。バランス調整溝46の任意の位置に、アンバランス修正用の錘48が嵌合固定されている。これにより、バランス調整溝46は、第1および第2冷却仕切円板30、32の外周部よりも外側に露出して位置している。
【0039】
上記構成により、単体で動バランス修正された第1、第2冷却仕切円板30、32をロータ26に取付けた状態で、バランス調整溝46に錘48を装着することができ、ロータ26組立て後に回転バランスの修正を行うことが可能となる。
第3の実施形態において、電動機の他の構成は、前述した第2の実施形態と同様である。
【0040】
(第4の実施形態)
図7は、第4の実施形態に係る全閉型の電動機を示している。第4の実施形態では、第3の実施形態と同様に、全閉型の電動機において、アンバランス修正用の穴や溝、錘を外気が入らない機内側に設ける構成とすることで、これら穴、溝への塵埃の付着、堆積を防止し、ロータのアンバランスの拡大を抑制している。
【0041】
図7に示すように、第4の実施形態によれば、鉄心押え24a、24bの最大径部の外径を更に大きくし、バランス調整溝46は、第1、第2冷却仕切円板30、32の中心部30a、32aの外周から完全に外側に位置している。このような構成とすることにより、鉄心押え24a、24bと第1、第2冷却仕切円板30、32との接触面積が更に広くなり、冷却性能がより向上する。
【0042】
また、バランス修正用の錘48を取付ける部分を、第1、第2冷却仕切円板30、32との接触面よりも冷却仕切円板側に突出させることにより、鉄心押え24a、24bの軸方向の厚みが薄くなり、電動機の軸方向のスペースに余裕が出て、車両用電動機を設計する上で有利となる。第4の実施形態において、電動機の他の構成は、前述した第2の実施形態と同様である。
【0043】
(第5の実施形態)
図8は、第5の実施形態に係る全閉型の電動機を示している。第5の実施形態では、第2の実施形態と同様に、全閉型の電動機において、アンバランス修正用の穴や溝、錘を外気が入らない機内側に設ける構成とすることで、これら穴、溝への塵埃の付着、堆積を防止し、ロータのアンバランスの拡大を抑制している。
【0044】
図8に示すように、第5の実施形態によれば、電動機は、永久磁石同期電動機に代わり、誘導電動機として構成されている。すなわち、ロータ鉄心22の外周部には、それぞれ軸方向に延びる複数の溝が形成され、各溝には、ロータバー50が埋め込まれている。ロータバー50の両端部はロータ鉄心22から張出し、その張出部分をエンドリング52、54で一体に接続して誘導電動機のかご形ロータを形成している。ステータコイル13に通電することにより、ロータ鉄心22が誘導されて回転し、回転軸23がロータ鉄心22と一体に回転される。
【0045】
鉄心押え24a、24bの外径はロータバー50により制約され、鉄心押え24a、24bの外周部に形成されたバランス調整溝46を避けた位置に、第1、第2冷却仕切円板30、32の中心部外径が来るように、第1、第2冷却仕切円板が構成されている。これにより、第1、第2冷却仕切円板30、32の伝熱による放熱効果を最大化している。
第5の実施形態において、電動機の他の構成は、前述した第2の実施形態と同様である。
【0046】
上記のように構成された第2ないし第5の実施形態においても、塵埃の付着による回転子のアンバランスの拡大を防止し、分解保守作業を削減可能な、より理想的な電動機を提供することができる。
【0047】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
第1および第2冷却仕切円板は、それぞれ羽根を有する構成としたが、これに限らず、フィンを有し、ファンとして機能する構成としてもよい。あるいは、羽根およびフィンを備えた構成としてもよい。冷却仕切円板は、ロータ鉄心の両側に限らず、いずれか一方側のみに設けてもよい。更に、冷却仕切円板により導入された外気が固定子外周部を通風冷却する構造のものでもよい。電動機はフレームを有する構成としたが、固定子鉄心外周部分にフレームのないフレームレス構造の電動機としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…フレーム、12…ステータ鉄心、14…ステータ、
15…ベアリングブラケット、16、18…軸受、17…第1軸受部、
20…軸受ハウジング、22…ロータ鉄心、23…回転軸、
24a、24b…鉄心押え、26…ロータ、30…第1冷却仕切円板、
32…第2冷却仕切円板、34、37…通風空間、36a、38a…吸気口、
36b、38b…排気口、40…穴、42…長孔、44…充填材、
46…バランス調整溝、48…錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ鉄心と、
前記ステータ鉄心の軸方向の両側に配置されケースを構成する第1ブラケットおよび第2ブラケットと、
軸受を保持し前記第1ブラケットに設けられた第1軸受部と、
軸受を保持し、前記第2ブラケットに設けられた第2軸受部と、
前記軸受により回転自在に支持され前記第1、第2ブラケット内に延在する回転軸、およびこの回転軸に取り付けられ前記ステータ鉄心の内側に隙間を置いて対向するロータ鉄心を有するロータと、
前記ロータ鉄心と前記第1軸受部との間で前記ロータに固定され、前記回転軸と一体に回転自在な冷却仕切円板と、
前記冷却仕切円板の外周部と前記第1ブラケットとの間の環状の微小隙間により形成されたラビリンス構造部と、
前記冷却仕切円板と前記第1軸受部および第1ブラケットとの間に規定され、前記第1軸受部の軸受の外周側に形成された吸気口から導入された外気を流通し、前記第1ブラケットに形成された排気口から外部に排気する通風空間と、
前記通風空間に接する前記冷却仕切円板の表面に形成されたアンバランス修正用の凹所と、
前記冷却仕切円板の材料より比重の軽い充填材であって、前記凹所に充填され凹所を閉じた充填材と、
を備える全閉型電動機。
【請求項2】
前記凹所のバランス修正位置に固定された錘を備え、前記充填材は、前記凹所の前記錘を除く部分に充填されている請求項1に記載の全閉型電動機。
【請求項3】
前記凹所は、前記回転軸と同軸の円に沿って設けられている請求項1又は2に記載の全閉型電動機。
【請求項4】
ステータ鉄心と、
前記ステータ鉄心の軸方向の両側に配置されケースを構成する第1ブラケットおよび第2ブラケットと、
軸受を保持し前記第1ブラケットに設けられた第1軸受部と、
軸受を保持し、前記第2ブラケットに設けられた第2軸受部と、
前記2つの軸受により回転自在に支持され前記第1、第2ブラケット内に延在する回転軸、およびこの回転軸に取り付けられ前記ステータ鉄心の内側に隙間を置いて対向するロータ鉄心を有するロータと、
前記ロータ鉄心と前記第1軸受部との間で前記ロータに固定され、前記回転軸と一体に回転自在な冷却仕切円板と、
前記冷却仕切円板の外周部と前記第1ブラケットとの間の環状の微小隙間により形成されたラビリンス構造部と、
前記冷却仕切円板と前記第1軸受部および第1ブラケットとの間に規定され、前記第1軸受部の軸受の外周側に形成された吸気口から導入された外気を流通し、前記第1ブラケットに形成された排気口から外部に排気する通風空間と、
前記冷却仕切円板の機内側に接する部位に形成されたアンバランス修正用の凹所と、
を備える全閉型電動機。
【請求項5】
前記ロータは、前記回転軸に取付けられ前記ロータ鉄心の両側に接して設けられた鉄心押えを備え、
前記冷却仕切円板は、前記回転軸に嵌合され前記鉄心押えに接した環状の中心部と、この中心部から前記ラビリンス構造部まで前記1ブラケットに向かって傾斜して延びる環状部と、を有し、
前記凹所は、前記中心部の外周に形成されている請求項4に記載の全閉型電動機。
【請求項6】
前記鉄心押えは、前記ロータ鉄心に接する小径部と、ロータ鉄心と隙間を置いて対向し前記小径部よりも大径の大径部と、を有する段付きの環状に形成され、
前記大径部の外周部に形成され、前記冷却仕切円板の中心部の外側に位置するバランス調整用の溝と、この溝のバランス調整位置に固定された錘と、を備えている請求項5に記載の全閉型電動機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−27128(P2013−27128A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159050(P2011−159050)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】