説明

共通モード修正巻線及び簡素化された信号処理を有する誘導位置センサー

回転運動用誘導位置センサーは、送信コイル、及び送信コイルが交流電源により励磁される時に受信機信号を生成する受信コイルを含む。可動カプラー要素は、受信機信号がカプラー要素の位置に感応するように、送信コイル及び受信コイルとの間の誘導結合を変更する。受信機信号及び参照信号の比率は、カプラー要素の位置に感応するが、共通モード因子には実質的に感応しない。位置センサーの角度範囲又は位置範囲は、複数の受信コイルを使用して増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枢動アクセルペダルのような可動部品の位置の測定のための非接触誘導センサーに関係する。
【背景技術】
【0002】
自動車のような原動機付き乗物には、エンジン・スピードを制御するためのユーザが操作する制御装置が備えられている。典型的には、ユーザが操作する制御装置は、一般にアクセルペダルと呼ばれるフットペダルをペダルアームの下端に有するものである。アクセルペダルはスロットル制御信号を提供し、該スロットル制御信号は、アクセルペダルから、エンジンに組み合わされたエンジン・スロットル制御装置に伝達される。従来、アクセルペダルとエンジン・スロットル制御装置の間は機械的に接続されており、スロットル制御信号は機械的な信号である。しかしながら、最近の傾向は、フライ・バイ・ワイヤー(ワイヤ経由型)システムと呼ばれることがある、電子制御スロットル制御システムに向けられており、このシステムでは、アクセルペダルその他のユーザにより操作される制御装置がエンジン・スロットルと電子的に通信し、スロットル制御信号は電子信号である。商業的に受け入れられるためには、そのような電子スロットル制御システムは信頼性があり、製造するのに過度に高価でないものであるべきである。
【発明の開示】
【0003】
可動部品の部品位置を判定するための装置が、電気エネルギー源により励磁された時に電磁放射を生成する送信コイルと、前記送信コイルに近接して配置され、送信コイルが励磁された時に送信コイルと受信コイルとの間の誘導結合によって受信機信号を生成する、一又はそれ以上の受信コイルと、カプラー要素とを含む。カプラー要素は可動であり、カプラー要素の位置が、例えば、機械的取り付け又は他の機械的結合によって部品位置に関連づけられる。カプラー要素は、受信機信号が部品位置に関連するように送信コイルと受信コイルとの間の誘導結合を変更するものであり、該カプラー要素は、金属板、導線ループとするか、又は複数の導線ループを含むものとすることができる。
【0004】
カプラー要素の回転又は直線運動を使用して送信コイルと受信コイルとの間の誘導結合を変更することができ、例えば、カプラー要素の角度位置の関数としての送信コイルび受信コイルとの間の磁束結合を変更することにより、受信コイルから得られる参照信号を変更することができる。カプラー要素の位置はペダルの位置に関連づけられるようにすることができ、例えば、ペダルの動きがカプラー要素の角度位置に機械的に結合されるようにすることができる。2又はそれ以上の受信コイルを設け、それらの出力を結合することによりセンサーの角度範囲又は位置範囲を拡張することができる。角度範囲又は他の位置範囲は、セグメントに分割し、セグメントの各々についての受信機信号がセグメントの角度範囲に応じて選択されるようにすることができる。セグメント履歴を追跡することにより、角度範囲の拡張及び複数回転センサーを達成することができた。
【0005】
参照コイルは、送信コイルが励磁された時に、送信コイルとカプラー要素の位置とは実質的に独立した参照コイルとの間の誘導結合によって送信コイル参照信号を生成する。参照信号を使用して、例えば、温度、送信機の励磁電圧及びコイルとカプラとの間の相対的間隔の変化のような共通モード因子による、カプラー要素の位置の変化と関係のない任意の受信機信号の変動を補償することができる。受信機信号及び参照信号の比率であるレシオメトリック(ratiometric)信号を形成する電子回路を設けることができる。レシオメトリック信号は、回転カプラー要素の角度位置に感応するが、共通モード因子には感応しない。回転カプラー要素とコイルアッセンブリーとの間のギャップの距離は又、参照コイルを使用して補償することができる。
【0006】
1つの装置例において、出力信号は、第1の位置範囲セグメントにわたる第1受信機信号及び第2の位置範囲セグメントにわたる第2受信機信号から得られる。他のセグメントについて、更に別の受信機信号(他の受信コイルからの、又は第1及び第2受信機信号が反転されたもの)を使用することができる。セグメントの各々について、位置に対して良好な線形性の出力信号を可能とする少なくとも1つの受信機信号が得られることが好ましい。セグメント履歴は、追跡され、記憶され、記憶されたセグメント情報を使用して、使用する最良の受信機信号を選択することができる。選択される受信機信号は、非反転及び反転受信機信号の組から選択することができる。出力信号は、位置範囲(例えば、シータ角の位置の角度範囲)にわたり部品位置に実質的に線形に従属し、出力電圧が位置範囲のセグメントに従った調整値によって調整され、1つのセグメントにわたる出力電圧が隣接するセグメントにわたる出力電圧に円滑に移行することができる。回転センサーについて、出力は、回転部品の複数のターンのために位置の角度範囲が繰り返す鋸歯形状とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本出願は、2005年4月7日に出願された米国仮特許出願第60/669,145号の優先権を主張し、その内容を引用により本願明細書に組み入れる。
【0008】
本発明の例は、自動推進乗物(automotive vehicle)におけるアクセルペダルの位置検出器における使用、又は他の可動物体の位置に適応することができる誘導位置センサーを含む。代表例において、センサーは送信コイル及び受信コイルを含み、その両方がプリント回路板上にプリント回路技術によって形成される。送信コイル及び受信コイルの間の誘導結合は、送信コイルが例えば交流電源によって励磁される場合に、受信コイル中に受信機信号を誘導する。可動物体に取り付けられたカプラー要素(coupler element)は、送信コイルと受信コイルとの間の誘導結合を空間的に変更し、受信機信号が可動物体の位置を見出すために使用されることを可能にする。
【0009】
誘導位置センサーは、交流電源によって電力が供給される送信コイル又は励磁コイル、送信コイルによって生成される時間変動磁界に応じた誘導信号を生成するための受信コイル又はピックアップ・コイル、及び時間変動磁場が、カプラー要素の位置の関数として、受信機に誘導される電流を変更する渦電流を、カプラー要素に発生するように、コイルに近接して配置される導電要素を含むことができる。
【0010】
カプラー要素は、カプラーの角度(又は回転)位置がスロットル要素の位置の関数であるように、自動車のアクセルペダルのような、位置測定が行われる可動部品に接続することができる。従って、受信コイル又はピックアップ・コイルに誘導される電圧は変化し、受信電圧を検出することによって、カプラー要素、従ってアクセルペダルの位置を決定することができる。この信号は乗物のエンジン・スピードを制御するために使用することができる。
【0011】
概要
誘導位置センサーの一例は、励磁用交流電源に接続された送信コイル及び受信コイルを含む。送信コイル及び受信コイルは、実質的に同一平面の、又は同じ回路板の異なる側又は層の上のコイルアッセンブリーとして、同じプリント回路板上に支持される。可動カプラー要素は回路板に近接して支持され、送信コイルと受信コイルの間の誘導結合を変更する。一例において、カプラー要素は、送信コイル及び受信コイルの一方又は両方の中心軸とすることができる回転軸の回りに回転する。カプラー要素の位置によって、送信コイルと受信コイルの間の誘導結合が変更されることにより、送信コイルによって誘導される受信機信号の振幅が変更される。更なる例は、我々の同時係属の米国特許出願であるKSR−12902において説明されている。
【0012】
受信機信号の振幅は、カプラー要素とプリント回路板との間のギャップの関数であり、このギャップは、生産の状況によって、ある程度は不可避的に変化する。ギャップに起因する変化、並びに励磁機又は供給電圧の変化、EMC及び温度差のような他の共通モード信号に対して受信機信号を修正するために、参照コイルが又、例えば送信コイル及び受信コイルと同じプリント回路板上に形成されて使用されることができる。参照コイルは受信コイルと同じ信号を受信するが、参照信号がカプラー要素の回転位置の変化に感応しない(insensitive)ように構成される。信号処理回路(又は信号処理装置)は受信機信号及び参照信号を受け取り、受信機信号と参照信号の比率を表す比率信号を形成する。以下で更に議論されるように、比率信号はカプラー要素の位置と関連づけられるが、通常の変化の範囲内では、ギャップ変化及び他の共通モード因子と実質的に独立なものとすることができる。
【0013】
プリント回路板は、電気エネルギー入力部、並びに受信機信号及び参照信号を提供する出力部を有するよう構成することができる。これに代えて、回路板上の電気回路を、受信機信号と参照信号の比率としての比率信号を生成するために使用することができる。信号処理回路を使用して、受信機信号を参照信号で除して、カプラーの位置の関数でない信号変化を実質的に除去することができる。
【0014】
本発明の実施例による誘導センサーは、コルピッツ発振器のような交流電源に接続された送信コイル(励磁コイルと呼ぶこともできる)、受信コイル、及び送信コイルと受信コイルに対して、カプラー要素の位置が送信コイルと受信コイルの間の誘導結合の強さに影響するような物理的関係で支持されるカプラー要素を含む。受信コイルによって提供される受信機信号はカプラー要素の位置と関連づけられることができる。
【0015】
送信コイル
送信コイルは、従来の環状コイル設計における一又はそれ以上のループとするか、又は他の構成を使用することができる。励磁コイルとも呼ぶことができる送信コイルは交流電源によって励磁される。励磁電源すなわち交流電流は、コルピッツ発振器ような電子式発振器又は他の電子発振器とすることができる。
【0016】
電気エネルギーによって励磁された場合、送信コイルは電磁界を生成する。送信コイルと任意の他の近接するコイルとの間には誘導結合があり、それによりそのコイルに信号が誘導される。送信コイルは、一又はそれ以上のターンを有する環状コイルとすることができる。励磁信号は交流電源によって送信コイルに供給される。送信コイルと受信コイルとの間の誘導結合は、受信コイルに受信機信号を生成する。
【0017】
カプラー要素
カプラー要素は、送信コイルと受信コイルとの間の誘導結合を変更する。カプラー要素は、送信コイルと受信コイルの間に位置することが便利な構成であるならばそのようにすることができるであろうが、送信コイルと受信コイルの間に位置する必要はない。更には、カプラー要素は、送信コイルと受信コイルの間の総磁束結合を変更する必要はなく、単に磁束結合の空間分布を変更することができる。カプラー要素は又、それが導電板である場合、渦板と呼ぶことができる。
【0018】
カプラー要素は、一般に平坦な形状の導電要素とすることができ、一又はそれ以上の半径方向に伸びる膨出部を含むものとすることができ、膨出部がプリント回路板に平行で且つ該回路板に近接し間隔をもった状態で、送信コイル及び受信コイルの中心線の回りを共に回転するように支持することができる。膨出部の構成は、受信コイルの構成に大きく依存するものとすることができる。カプラー要素は、可動物体に、取り付けられるか、又は他に機械的に結合され、その回転位置は可動物体の位置の関数である。更に以下に議論される受信コイルの構成は、受信コイルの出力部に、カプラー要素の位置の関数である電圧が生成されるものとすることができる。乗物への適用の一例において、カプラー要素は、可動ペダルアーム又は他の乗物の制御アームに、取り付けられるか、又は他に機械的に結合され、その回転位置は可動アームの位置の関数である。
【0019】
カプラー要素は、受信機信号が最小である、受信コイルに対する初期位置を有することができる。カプラー要素が初期位置から動くにつれて、カプラー要素は送信コイルと受信コイルとの間の誘導結合を変更する。本発明の例において、カプラー要素の初期構成では、受信コイル内の複数の誘導電位は同じ大きさで且つ反対の位相であるので、それらは相殺する傾向にある。カプラー要素が動くにつれて、送信コイルと第1ループ構成との間の誘導結合が変更され、受信コイル内の複数の誘導電位はもはや相殺しないので、受信機信号は増加する。
【0020】
受信コイル
一又はそれ以上の受信コイル信号が、差動構造を有する受信コイルによって提供される。受信コイル信号は、送信コイルに対する磁束結合によってループ構成に誘導される様々な電位からの寄与を含むことができる。受信コイルは、第1電位及び第2電位をそれぞれ提供し、カプラー要素がない場合にこれらの電位が相殺するコイル構成を提供する第1ループ構成及び第2ループ構成を含むことができる。カプラー要素が存在する場合は、第1及び第2電位は、カプラー要素の角度位置に応じて様々に変更される。
【0021】
例えば、第1及び第2ループ構成は、反対位相の信号を生成するよう構成され、受信機信号が、第1及び第2信号の組み合わせであり、従って、第1及び第2信号が同じ大きさである場合に、受信機信号が最小値であるものとすることができる。受信機信号の大きさが、第1ループ構成に誘導された第1信号の振幅と第2ループ構成に誘導された第2信号の振幅との差であり、そのような構成は差動構造と呼ばれるので、受信機信号は又、差動信号と呼ぶことができる。本発明の他の例において、受信コイルは、別々のループ構造からの別々の第1及び第2信号を、処理のための電子回路に供給することができる。
【0022】
単一の受信コイルの第1及び第2ループ構成は、受信コイルを貫く所定の磁束変化に対して反対の極性の第1及び第2電圧を供給するよう構成することができる。受信コイルは、カプラー要素がない場合に第1及び第2信号が互いに相殺する傾向にあるように、構成することができる。カプラー要素は又、それが第1ループ構成及び第2ループ構成への磁束伝播を等しく阻止するゼロ位置を有し、第1及び第2信号が効果的に互いに相殺するものとすることができる。カプラー要素が初期位置に対して第1方向に動くにつれて、カプラー要素は、第2信号を誘導する磁束をより多く阻止する一方、同時に第1信号を誘導する磁束をより少なく阻止する。従って、第1信号の大きさが増加し、第2信号の大きさが減少し、受信機信号の大きさが増加する。カプラー要素は又、第2信号の大きさが増加し、第1信号の大きさが減少する第2方向に可動とすることができる。
【0023】
拡張された角度範囲及び複数ターンコイル
本発明の実施例は又、複数ターンセンサーのような拡張された角度範囲センサーを含む。複数ターンセンサーは、例えば、互いに角度オフセットを有する2又はそれ以上の複数極コイルを使用する複数の受信コイルを含むことができる。センサーは、信号処理のためのASICモジュールを有する電子機器モジュールを含むことができる。電子機器モジュールは、参照コイル、一又は複数の受信コイル及び交流電源による励磁において電磁界を発生する送信コイルのようなコイルを支持するプリント回路板を含むことができる。複数ターンセンシングのために、多数のターン(又は多数のいくつかの回転角度)に関して仮想接地レベルを調整することができる一方、センサーの回転履歴は論理スタックによって管理される。どの受信機信号を使用するかは、論理回路により判定される。予め決定される信号電圧に達すると、マルチプレクサを使用して複数の受信コイルの1つが選択される。
【0024】
例えば、3極カプラー要素を使用して、単一の受信コイルの角度範囲は約30度とすることができる。仮想接地レベルは、複数のこの角度範囲の数に従って設定することができる。センサーシステムの角度範囲は、3つの受信コイル及びセグメント管理を使用して、120度とすることができる。回転履歴は、例えば、リンクされたリストのデータ構造によるスタック動作を使用して、記憶装置に記憶することができる。仮想接地レベル調整器は、プラトー(plateu)電圧の調整に使用されるものと同様のものを使用することができる。
【0025】
出力電圧は、位置について完全に線形的に従属するものではないとすることができる。線形性の使用可能な範囲は、真の接地レベル(true ground)に対して負の電圧とすることができる仮想接地レベル(virtual ground)を外挿して、定義することができる。比率信号は(受信機信号+A)/(参照信号+B)の比として形成することができ、ここで、参照信号及び受信機信号は、例えば、それぞれ受信機及び参照信号の復調及びローパスフィルタリングすることによって得られた直流電圧を意味している。A及びBは、わずかに非線形となる応答範囲においても線形であると仮定することによる、仮想接地レベル補正を言う。使用可能な線形の範囲の幅は、位置の正確さの仕様によって決定することができる。補正項A及びBは非常に類似する傾向があり、同じ値をAとBの両方に対して使用することができる。
【0026】
出力電圧の範囲は、上限及び下限プラトーにクランプすることができる。トリム抵抗器を使用して、所望の値にゲイン傾斜を調整するために、トリムを使用することができる。例えば炭素ストリップを焼き切る抵抗器のレーザトリミングを使用することができ、又は適用によっては又、伝統的な回転摺動子可変抵抗器を使用することができる。自動推進乗物の電子スロットル制御への適用において、このトリムステップは、工場での調整中に一度行われることができる。レシオメトリックセンシングが使用される場合には、これは非常に効果的であることができる。
【0027】
図1Aは、差動構造を有する参照コイル10を示す。コイル平面を貫く磁束の変化に対して、コイルの内部ターン12及び外部ターン(14)に反対の方向性(handedness)の電位が誘導される。16のような半径方向の構造においては、電位はほとんど発生しない。内部ターンの直径は外部ターンの直径よりも小さいので、外部ターンに誘導される電位を打ち消すためには、更なる内部ターンが必要である。参照コイルの外部直径がD0で、内部直径iである場合には、参照コイルの構成によって、カプラー要素が除去された時に参照信号がゼロとなることができる。出力(18)の参照信号は、内部ターンに生成される電位、及び外部ターンに生成される反対の電位から生じる。カプラー要素は、参照コイルに近接して配置されている場合には、外部ターンへの誘導結合の一部を阻止し、結果として生じる参照信号を引き起こす。参照信号は、カプラー要素の回転位置と実質的に独立であるが、小さいギャップよりも大きい、カプラー要素と参照コイルとの間のギャップに対しては感応する。参照コイルは、コイル構成の半径方向の部分に誘導された信号が打ち消されように、設計することができる。
【0028】
均一な磁束がnii2=noo2、ここで、niは内部ターンの数で、noは外部ターンの数であると仮定した近似式。本実施例において、参照コイルは1つの外部ターン及び2つの内部ターンを有している。組み立てられた装置において、磁束密度は、外側の外周に向かって大きいことが見出された。本実施例のコイルは、直径17.7mmの2つの内部ターン(又は直径14.4mmの3つの内部ターン)、及び直径25mmの1つの外部ターンを有していた。参照コイルは、実験的に調整し、カプラー要素が取り外された場合に参照信号がゼロ、カプラーが参照に近い場合に信号が最大になるようにできる。特定の場合において、有効ギャップについて同じ特性曲線に整合させるために、カプラーが取り除かれた場合にゼロであることは必ずしも必要ではなく、これは、いくつかの用途において有用であることができるであろう。
【0029】
本発明の好ましい実施例において、カプラー要素の位置と実質的に独立な参照信号を提供する、好ましくは差動構成を有する参照コイルが設けられる。しかしながら、参照信号は、一般に共通モード因子と呼ぶことができる、受信機信号の強さに影響を及ぼす因子と同じ因子に影響を受けやすい。共通モード因子は、下記の一又はそれ以上を含むことができる:カプラー要素と送信機(又は受信機)コイルとの間のカプラー・ギャップ、送信コイルに印加された励磁電圧の変動、受信機雑音を引き起こす環境電磁界、温度変化等。
【0030】
誘導センサーは、センサー出力がセンサーの形状における生産変動と独立の標準形をとるように、較正することができる。自動推進システムにおいて、コイル(プリント回路板上で支持されることができる)とカプラー要素(アクセルペダルに連結される)との間のカプラー・ギャップは、受信コイルに誘導される信号に強く影響を及ぼし、このカプラー・ギャップは、大量生産プロセスにおいて正確に制御することが難しい。しかしながら、較正プロセスは故障と費用高の原因となり得る。
【0031】
従来の誘導センサーは、温度のような共通モード因子用の広範囲な較正曲線を必要とする。例えば、従来の誘導センサーは、温度補正を実行するために、温度センサー、温度補正因子のルックアップ・テーブル及び回路を含むことができる。本発明の実施例によりレシオメトリック信号を使用することにより、この追加的な複雑性及び関連する信頼性の無さをかなり回避することかできる。
【0032】
受信機信号及び参照信号の比率として比率信号を決定することによって、共通モード因子の影響を非常に抑えることができ、その結果、比率信号は、共通モード因子と実質的に独立であるが、カプラーの位置と関連づけられることができる。比率信号は、デジタル論理回路の複雑さ及び処理遅延を避け、且つ高分解能アナログ/デジタル変換器の必要性をも避けて、アナログ回路を使用して完全に決定することができる。
【0033】
参照コイルは受信コイルと大きさが同様とすることができるが、送信コイルによって参照コイルに誘導される参照電圧が、カプラー要素の位置と実質的に独立であるように構成することができる。送信コイルと受信コイルとの間の誘導結合に影響するように、送信コイルと参照コイルとの間の誘導結合は、同様の共通モード因子によって影響を受ける。これらの因子は、カプラー要素と送信コイル及び受信コイルを支持するプリント回路板との間のギャップ、又はカプラー要素と送信コイル若しくは送信コイルを支持する他の構造との間のギャップを含むことができる。参照コイルを使用して補償されることができる他の共通モード因子は、送信コイル用の交流電源の変動から生じる受信機信号変動、センサーの動作と関係のない漂遊電磁気信号から引き起こされる電圧に起因する変化、温度変化等を含む。
【0034】
図1Bは、非導電基体22上にセグメント化された導電領域20を含む回転センサーのためのカプラー要素を示す。カプラー要素がない場合には、参照コイルからの信号はない。特定の場合において、有効ギャップについて同じ特性曲線に整合させるために、カプラーが取り除かれた場合にゼロであることは必ずしも必要ではなく、これは、いくつかの用途において有用であることができるであろう。しかしながら、参照コイルは、カプラー要素に平行に且つ近くに配置される場合には、カプラー要素と参照コイルとの間のギャップに関係づけられる参照信号を生成する。
【0035】
カプラー要素セグメントの内径は、受信コイルの内径とほぼ等しいことが好ましい。外径は、受信コイルの直径とほぼ等しいか、又は受信コイルの直径よりも小さいことが好ましい。
【0036】
カプラー要素は、回転ディスク上で支持されることができる。電子スロットルへの適用において、ペダルが押し下げられると、カプラー要素が回転し、それが本発明による誘導センサーによって検出される。
【0037】
図2は、二重受信コイル構造を示す。二重受信コイルは、2つの受信コイルが互いに電気的位相において90度ずれている一方、受信コイルの各々が自身の順(方向)(forward)コイル及び逆(方向)(backward)コイルのペアを有し、差動信号を生成する(2つの受信信号は位相がずれて得られる)ように配置された、2つの受信コイル(40及び42)を含む。2又はそれ以上のコイルを使用することによって、第1コイルの線形領域を超えて角度位置を測定することができる。黒丸(44)は、回路板を貫通する柱を表すもので、いくつかの接続部は隠れた位置にある。図は、2組の幾分L字型で反対方向に配置された導線を示す。
【0038】
図3は、第1及び第2受信コイルから得られる信号(それぞれ#1及び#2と表される)を示す。これらの2つの信号は、太線で強調される線形領域を示す。更に、これらの2つの信号は、反転され、2つの受信コイル(それぞれ#1’及び#2’と表される)から第3及び第4信号を提供することができる。本実施例において、第1受信コイルによって、0−30度の範囲にわたって線形の位置測定を行うことができる。測定された30度の角度において、第2受信コイルからの情報によって、60度の角度範囲まで拡げることができ、反転信号を使用することにより、120度まで角度測定領域を更に拡げることができる。従って、角度範囲に従って、線形セグメントの1つを選択するためにセンサー回路が使用されることができる。仮想接地レベル(VG)が又示される。
【0039】
図4は、拡張された角度範囲にわたって、どのようしてセンサーシステムから線形センサー出力が得られるのかを示す。スタックカウンタがセグメント番号を追跡するために使用され、電圧オフセットが出力電圧に加えられ、様々な信号の線形部分から拡張された線形出力が得られる。
【0040】
論理回路(スタック)が1つのユニットをプッシュし、又はポップし、それに対応して電圧変換器が、示されるユニット電圧レベルを増加し、又は減少させる。縦座標に沿って示されるカウントは、スタックの値に対応する。論理ユニットは、スタックの深さに対応するデジタル・アナログ(DA)変換器のスイッチ状態を維持する。3極カプラー要素を使用して、最大の適当な線形の範囲は30度である。電圧レベルは、図5に関して以下で議論されるように検出される交点の数に従って、又は通過するセグメントに従って設定することができる。従って、線形信号の角度範囲は、3つのセグメント管理で少なくとも120度とすることができる。リンクされたリストのデータ構造によるスタック動作を用いて記録を保持することができる。
【0041】
図5は、1つの信号から別の信号へ移行する点としての、様々な信号間の交点の選択を示す。交点(XPと表される)において、オフセット電圧が調整され線形出力を得る。オフセット電圧は、調整可能な仮想接地レベル回路を使用して、例えば、1つの入力に対する切替可能な分圧器を有するオペアンプを使用して、得ることができる。図3にあるように、グラフは、第1及び第2受信信号(#1及び#2)、並びに反転信号を示す。
【0042】
比較器/セレクタ回路を使用して、所望の信号を選択することができる。本実施例において、第1判定点は30°である。比較器は、第1及び第2受信信号を比較し、それらは特定の許容範囲内において同一である。次いで、信号セレクタは、第2受信信号の反転形を選択し、信号が前と同じ方向に線形に増加する。
【0043】
複数ターン動作のために、セグメント(又はターン)の数に従って仮想接地レベルが調整される一方、セグメント履歴(及び従って、ターン履歴)がスタックによって管理される。論理ユニットが、所定のレシオメトリック信号を選択するために使用されることができる。複数の信号の1つが、予め決定された信号値に達した時にマルチプレクサを使用して選択されることができる。
【0044】
図6は、本発明による複数ターンセンサーの簡略概略図を示す。概略図は、第1及び第2受信コイル40及び42を示す。受信信号の各々は、整流され(整流器44及び48により)、反転される(インバータ46及び52により)。比較器52は、図に示されるように、使用する信号を選択するために交点を選択する。スタックマネージャーが、どのセグメントが使用されているかを追跡するために使用され、電圧レベルシフタ54が、信号にオフセット電圧を加え、線形出力を得る。
【0045】
右下のボックスは、信号フローの概要を示す。ボックス58は、スタックマネージャーからのデータを使用して信号をVLAにシフトすることに対応する。ボックス60は、外部のトリマブル抵抗器を使用してのゲイン設定に対応する。ボックス62は、外部のトリマブル抵抗器を使用するプラトー(plateau)設定に対応する。プラトー値は、任意の1つのセグメント内で得られる上限及び下限の信号値である。ボックス64は、チェナーザッピング(Zener zapping)を使用した仮想接地レベルの調整による信号較正に対応する。較正データは、デジタル形式で記憶され、デジタル・アナログ変換器が出力電圧を所望の範囲に調整するために使用されることができる。
【0046】
図7は、複数ターンセンサーシステムのブロック図を示す。システムは、送信コイル102、参照コイル104及び2つの受信コイル(106及び108)を含むコイル体100を含む。電子機器モジュール110は、参照信号の位相感応整流器(112)、第1及び第2受信信号の整流器/インバータ(114及び116)、比較器118、加算器120、アナログ除算器122、出力アンプ126、送信コイルを駆動する発振器128、較正用の電流出力を有する5ビットDAC(130)、4ビットデジタル・アナログ変換器(DAC)を含む360度の測位能力のための電圧レベル調整器(132)、及び電圧クランプ134を含む。トリマブル抵抗器136及び138によって、ゲイン及びクランプ電圧の調整がそれぞれ可能となる。クランプ電圧は、負荷抵抗(140)の出力電圧が超えることができない限界を規定する。論理ユニット112は、チェナーザッパー114及びカウンタ/スタック116を含む。外部較正装置124は、パラレル・シリアル変換器(118)を有し、パラレル・シリアル変換器118を使用して論理ユニットと通信する外部アナログ・デジタル変換器、及び較正用の出力電圧を測定する電圧測定装置122を含む。
【0047】
送信コイル102は、送信コイル端に接続される交流電源128によって励磁される。励磁された送信コイルは、誘導結合によって参照コイル104並びに2つの受信コイル106及び108に信号を誘導する電磁界を生成する。送信コイルと参照コイル及び2つの受信コイルとの間の誘導結合は、その上に導電領域を有する回転ディスクのようなカプラー要素によって変更される。しかしながら、送信コイルと参照コイルとの間の誘導結合は、回転カプラー要素の角度位置に感応しない。対照的に、受信機信号は、回転カプラー要素の角度位置に感応し、アナログ除算器122により形成された、選択された受信機信号及び参照信号の比率は、回転カプラー要素の角度位置と関連づけられる一方、送信コイルと回転カプラー要素との間のギャップのような共通モード因子について修正される。回転カプラー要素の回転によって、送信コイルと2つの受信コイルとの間の誘導結合が変更されるが、送信コイルと参照コイルとの間の誘導結合には大きく影響を及ぼさない。
【0048】
複数ターンセンサーについて、様々な出力形式が選択されることができる。1つの出力形式は360度鋸歯であり、別の出力形式は180度鋸歯であり、更に別の出力形式は90度鋸歯であるものとすることができる。自動推進乗物への適用について、出力電圧の範囲は、0.25V乃至4.75Vとすることができる。3極受信コイルの実施例において、単一の線形鋸歯信号は、12の線形センサー信号寄与のセグメントから構成される。6極受信コイルが使用された場合は、単一の線形鋸歯信号は、24の22.5°のセグメントを有するであろう。従って、電圧レベル調整器及び論理/スタックは、5ビットの能力を有するべきである。
【0049】
代替の手法において、セレクタ(マルチプレクサのような)が、位置範囲のセグメントに従って、複数の受信信号から1つの受信信号を選択するために使用される。後者の情報は、カウンタ/スタック装置を含む論理ユニットから得ることができる。次いで、選択された受信信号が、位相感応整流器を経てアナログ除算器に通る。アナログ除算器への第2入力は、位相感応整流器を経てアナログ除算器に通される参照コイルからの参照信号である。論理ユニットは又、仮想接地レベル調整器を制御し、位置範囲のセグメントの各々について出力電圧を適切に調整し、線形出力を得ることができる。例えば、仮想接地レベル調整器は、4つのレジスタアレイがアナログ仮想接地レベル出力を制御するために使用される、4ビットDACを含むことができる。第2仮想接地レベル調整器を使用して、例えば6ビットDACを使用して、較正を行うことができる。初期値、下限及び上限のプラトー電圧が、最初の較正ステップで検出され、適切な抵抗器の組合せを決定するようにプログラムされた論理ユニットが要求されるプラトー値を与えることができる。この較正は、製造中に1度行われる必要があるだけで、多くの従来の装置に対して大きな利点である。
【0050】
適用
本発明の適用例は、カプラー要素がその位置がモニタされることが望まれる可動部品に取り付けられ、送信コイル、受信コイル及び支持回路がプリント回路板のような基板に配置される装置を含む。基板は、可動部品が動く筐体若しくは他の構造によって受けられるか、又は他に可動部品が動く筐体若しくは他の構造に近接して固定される。例えば、可動部品はペダルであり、ペダルハウジングが、コイルがその上に印刷されているプリント回路板を受けるように構成することができる。製造組立変動は、カプラー要素とプリント回路板との間のギャップの変動をもたらし、参照コイルの使用によって、多大な較正プロセスの必要なく、そのような製造変動の補償が可能となる。乗物への適用において、カプラー要素は、その回転位置がアクセルペダルの位置の関数であるように、アクセルペダルに機械的に連結される。
【0051】
コイル装置は、多くの形状を取ることができる。例えば、コイルは、センサーの位置分解能に影響を与える、様々な極数で巻かれることができる。受信コイルは、カプラー要素の位置が受信信号の振幅を変調するように構成される。参照コイルは、それが使用された場合には、参照信号がカプラー要素の位置と実質的に独立であり、参照信号及び受信信号を使用して得られた比率信号が又、カプラー要素の位置と関係づけられるが、温度のような因子と実質的に独立であるように構成することができる。
【0052】
1つの例において、送信コイル、受信コイル及び参照コイルは、カプラー要素に近接して配置される多層プリント回路板とすることができる、プリント回路板上に形成される。他の例において、コイルは、別々の構造上に形成されることができる。カプラー要素は、位置測定が行われる可動部品が元々有する部分とするか、又は可動部品に取り付けられるものとするか、或いは、他にカプラー要素の位置が可動部品の位置に関連づけられるように機械的に結合されるものとすることができる。本発明の実施形態は、角度センサー、回転速度センサー、及び可動部品の総角度回転から距離が判定される距離センサーを含む。
【0053】
本発明による誘導センサーは、交流電流により励磁される送信機巻線、受信機巻線、アクセルペダルに連結され、受信コイルに誘導される送信機信号の振幅を変化させるための巻線に関して配置される回転可能カプラー要素、及び受信機信号と同様で、カプラー回転位置と実質的に独立である信号を受信する、カプラーとコイルとの間のギャップの変動並びに他の共通モード信号について受信信号の補償に使用するための第3コイルを含む、自動推進乗物への適用において使用される非接触誘導センサーを含む。
【0054】
乗物への適用において、カプラー要素は、その回転位置がアクセルペダルの位置の関数であるように、アクセルペダルに機械的に連結される。本発明の適用例は、カプラー要素がその位置がモニタされることが望まれる可動部品に取り付けられ、送信コイル、受信コイル及び支持回路がプリント回路板のような基板に配置される構成を含む。基板は、可動部品が動く筐体若しくは他の構造によって受けられるか、又は他に可動部品が動く筐体若しくは他の構造に近接して固定される。例えば、可動部品はペダルであり、ペダルハウジングが、コイルがその上に印刷されているプリント回路板を受けるように構成することができる。製造組立変動は、カプラー要素とプリント回路板との間のギャップの変動をもたらし、参照コイルの使用によって、多大な較正プロセスの必要なく、そのような製造変動の補償が可能となる。位置センサーの他の適用例としては、電子スロットル制御、吸入管弁、ブレーキ制御、ステアリング、燃料タンクレベル読取り、及びギア選択シャフトがある。
【0055】
本発明の実施形態は、自動推進乗物への適用における枢動アクセルペダルのような可動部品の位置測定、及び乗物を制御するための部品の位置に直接比例する電気信号の生成のための非接触誘導センサーと共に使用するための信号処理システム、より具体的には誘導センサーと共に動作するそのような信号処理システムを含む。誘導センサーは、搬送信号を生成するための送信コイル、その位置測定が行われる部品に連結されたカプラー要素により変調された搬送信号を検出するための受信コイル、及びその搬送信号を受信するが、回転子と3つの巻線との間のギャップの変動、並びに電力供給変動のような他の共通モード信号について回転変調信号を修正するために使用することができる信号を生成するために、回転子の位置により影響を受けないように巻かれた参照コイルを含む、少なくとも3つの巻線を有することが好ましい。
【0056】
本発明による複数ターンセンサーは、速度及び/又は距離センサーとして使用することができる。車輪の直径のような情報は、そのような運動因子を得るために使用することができる。
【0057】
他の構成
コイル装置は、多くの形状を取ることができる。例えば、コイルは、センサーの位置分解能に影響を与える、様々な極数で巻かれることができる。受信コイルは、カプラー要素の位置が受信信号の振幅を変調するように構成される。参照コイルは、それが使用された場合には、参照信号がカプラー要素の位置と実質的に独立であり、参照信号及び受信信号を使用して得られた比率信号が又、カプラー要素の位置と関係づけられるが、温度のような因子と実質的に独立であるように構成することができる。
【0058】
1つの例において、送信コイル、受信コイル及び参照コイルは、多層プリント回路板とすることができる、プリント回路板上に印刷される。他の例において、コイルは、別々の構造上に形成されることができる。
【0059】
他の例において、送信コイルは、一又はそれ以上のターンを有するループとすることができる。他の例において、伝播される電磁束が、反対の磁界の方向の領域を含む磁界の方向の空間的変化を有するように、第1ループ構成及び第2ループ構成が反対の巻き方向を有する第1ループ構成及び第2ループ構成を含むことができる。
【0060】
本発明の他の適用において、他の機械的要素が、カプラーを駆動するために使用されることができるであろう。カプラーの動きは、直線、回転、又は一又はそれ以上の方向の回転及び直線運動のいくつかの組合せとすることができる。
【0061】
従って、位置範囲を有する、可動部品の部品位置に関連づけられる出力信号を提供するための装置例は、励磁信号により励磁された時に電磁放射を生成する送信コイル、各々が送信コイルが励磁された時に受信機信号を生成する、送信コイルに近接して配置される複数の受信コイル、部品位置及び各々がカプラー要素の位置に感応する受信機信号に関連づけられる位置を有するカプラー要素、判定される部品位置と実質的に独立な参照信号を提供する参照コイルを含む。コイルは、単一の回路板上に形成されたコイルアッセンブリーの一部とすることができる。信号処理装置は、例えば、同じ回路板上の電子回路であり、様々な信号を受信し、位置範囲の電流セグメントに従って受信機信号を選択し、可動部品の位置に関連づけられる出力信号を提供する。信号処理装置は、アナログ除算器を含み、選択された受信機信号は、アナログ除算器において参照信号により除され、出力信号から共通モード雑音効果を除去する。
【0062】
信号処理装置は、アナログ除算器及び電圧調整器を含むASICのようなアナログ回路、及びデジタル電子回路を含む論理ユニットを含むことができる。論理ユニットは、セグメント情報及び較正データを記憶するために使用することができる。論理ユニットに記憶されたデータは、アナログ回路に伝えられ、例えば、一又はそれ以上のデジタル・アナログ変換器を使用して、出力信号に対する適切な調整(所定のセグメントについてのプラトー値を含む)を行うために使用することができる。選択される受信機信号を選択するために使用されるセレクタは、論理ユニットにより提供されるセグメント情報を使用することができる。セグメント情報は、受信機信号の比較から、例えば、他で議論したように交点の検出によって判定される。
【0063】
複数の受信コイルは、実質的に同一平面に、例えば、単一の回路板により支持されるコイルアッセンブリーとして、参照コイル及び送信コイルと共に形成することができる。いくつかの例において、すべてのコイルは実質的に同一平面にあり、同じ中心軸を有している。回転センサーにおいて、カプラー要素は、この中心軸の周りを回転し、送信コイルと受信コイルの磁束結合を変更する金属板を含むことができる。カプラー要素は、測定される位置を有する可動部品に取り付けられ、又は他に関連づけられることができる。
【0064】
可動部品の位置を判定する代表的な方法は、送信コイルを励磁し、複数の受信コイルから複数の受信機信号を得て、可動部品のおおよその位置(セグメントのような)に従って選択される受信機信号を選択し、可動部品の位置と実質的に独立な参照信号を得て、その参照信号及び選択される受信機信号は共通モード信号の影響を受けるものであり、アナログ除算器回路において選択される受信機信号を参照信号で除して、共通雑音を除去するためにレシオメトリック信号を提供し、レシオメトリック信号を使用して可動部品の位置を判定することを含む。セグメントは、固定された部分のような、予め決定された位置範囲の部分とすることができる。
【0065】
本明細書において言及された特許、特許出願又は刊行物は、個々の文書の各々が具体的に且つ個別に引用により組み入れるよう指示されたのと同じ程度で引用により本明細書に組み入れられる。特に、2005年4月7日に出願された米国仮特許出願第60/669,145号が、その内容全体を引用により本明細書に組み入れる。
【0066】
本発明は、上述の例示的な実施例に限定されるものではない。実施例は、本発明の範囲に対する限定として意図されていない。ここで説明された方法、装置、構成等は、例示的なものであって、本発明の範囲に対する限定として意図されていない。本発明における変更及び他の用途が当業者に思い浮かぶであろう。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1A】参照コイルを示す。
【図1B】セグメント化された導電体を含むカプラー要素を示す。
【図2】受信コイルのペアを示す。
【図3】線形セグメントを選択することができるセンサー出力信号を示す。
【図4】多数の線形セグメントから構成する線形出力信号を示す。
【図5】線形セグメントを制限するために使用することができる交点を示す。
【図6】本システムのブロック図及び信号フローを示す。
【図7】複数ターンセンサーシステムのブロック図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメントに分割可能な位置範囲を有する可動部品の部品位置に関連づけられる出力信号を提供するための装置であって、
励磁信号により励磁された時に電磁放射を生成する送信コイルと、
前記送信コイルに近接して配置され、各々が、前記送信コイルが励磁された時に前記送信コイルと受信コイルとの間の誘導結合によって送信コイル受信機信号を生成する、送信コイル複数の受信コイルと、
前記部品位置に関連づけられるカプラー要素位置を有し、前記送信コイルと前記受信コイルの各々との間の前記誘導結合が該カプラー要素位置に感応するようになったカプラー要素と、
前記部品位置と実質的に独立な参照信号を生成する参照コイルと、
前記受信機信号及び前記参照信号を受信し、前記可動部品の位置に関連づけられる出力信号を提供する信号処理装置と、
を含み、
前記出力信号は、前記位置範囲のセグメントに従って選択される、選択される受信機信号から得られ、
前記信号処理装置は、アナログ除算器を含み、前記選択される受信機信号は、前記アナログ除算器において前記参照信号により除され、前記出力信号からコモンモード雑音効果を除去することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記出力信号は、前記位置範囲の第1セグメントにわたる第1受信機信号及び前記位置範囲の第2セグメントにわたる第2受信機信号から得られることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記選択される受信機信号は、非反転受信機信号及び反転受信機信号の組から選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記出力信号は、前記位置範囲にわたる部品位置に実質的に線形に従属することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記信号処理装置は、デジタル電子回路を含み、セグメント情報が記憶される論理ユニットを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記出力電圧は、前記論理ユニットに記憶された前記セグメント情報に従ってデジタル・アナログ変換器により生成される調整電圧によって調整されることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記信号処理装置は、前記論理ユニットに記憶された前記セグメント情報に従って受信機信号を選択するセレクタを更に含むことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項8】
セグメント情報は、受信機信号の比較から判定されることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記出力信号を所望の形に変更するために使用される較正データが、前記論理ユニットに記憶可能であることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記信号処理装置は、前記論理ユニットに記憶された構成データを受け取り、前記出力電圧に加えられる電圧調整を生成する較正デジタル・アナログ変換器を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記複数の受信コイルが実質的に同一平面にあることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の受信コイル及び前記参照コイルが単一の回路板に形成されることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記単一の回路板が更に、受信機信号の各々及び前記参照信号についてのアナログ除算器及び位相感応整流器を含むアナログASICを支持することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記部品位置が角度位置であり、前記カプラー要素がカプラー軸の周りを回転することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記位置範囲は、θ度の回転であり、前記出力信号は、回転角度に従属する、シータ度の周期の鋸歯を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
θが360であることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記部品位置はペダルの位置であり、該ペダルの動きは、前記カプラー要素の前記角度位置に機械的に結合されていることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記出力信号は、エンジンのスピード制御であることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
位置範囲を有する可動部品の部品位置に関連づけられる出力信号を提供するための装置であって、
励磁信号により励磁された時に電磁放射を生成する送信コイルと、
第1受信機信号を提供する第1受信コイルと、
第2受信機信号を提供する第2受信コイルと、
部品位置に関連づけられるカプラー要素位置を有し、前記送信コイルと前記受信コイルの各々との間の前記誘導結合が該カプラー要素位置に感応するようになったカプラー要素と、
前記カプラー要素の位置と実質的に独立な参照信号を生成する参照コイルと、
前記第1及び第2受信機信号及び前記参照信号を受信し、前記可動部品の位置に関連づけられる出力信号を提供する信号処理装置と、
を含み、
前記出力信号は、前記位置範囲の第1セグメントにわたる前記第1受信機信号及び前記位置範囲の第2セグメントにわたる前記第2受信機信号から得られることを特徴とする装置。
【請求項20】
前記第1受信機信号は、前記第1セグメントにわたる部品位置に実質的に線形に従属し、前記第2受信機信号は、前記第2セグメントにわたる部品位置に実質的に線形に従属することを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記第1及び第2受信コイルは、前記第1及び第2受信機信号が約90度位相がずれるように構成されることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記出力信号は、前記位置範囲の第1セグメントにわたる前記第1受信機信号、前記位置範囲の第2セグメントにわたる前記第2受信機信号、前記位置範囲の第3セグメントにわたる反転された第1受信機信号、及び前記位置範囲の第4セグメントにわたる反転された第2受信機信号から得られることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記第1及び第2受信コイル、前記参照コイル及び前記信号処理装置は、単一のプリント回路板上に形成されることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記信号処理装置は、前記受信機信号の選択が依拠するセグメント情報を記憶スタックを使用して追跡する論理ユニットを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項25】
可動部品の位置を判定する方法であって、
送信コイルを励磁するステップと、
複数の受信コイルから複数の受信機信号を得るステップと、
前記可動部品のおおよその位置に従って選択される受信機信号を選択するステップと、
前記可動部品の位置と実質的に独立な参照信号を得て、前記参照信号及び前記選択される受信機信号の両方がコモン雑音因子の影響を受けるステップと、
アナログ除算器回路において前記選択される受信機信号を前記参照信号で除して、コモン雑音因子を除去するためにレシオメトリック信号を提供するステップと、
前記レシオメトリック信号を使用して前記可動部品の位置を判定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
前記可動部品のおおよその位置に従って選択される受信機信号を選択するステップは、位置に実質的に線形に従属する出力信号を決定することができる受信機信号を選択するステップを含み、前記可動部品のおおよその位置は、前記可動部品の位置範囲の一部であることを特徴とする請求項25に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−534977(P2008−534977A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504864(P2008−504864)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000811
【国際公開番号】WO2006/106421
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(506121700)ケイエスアール インターナショナル カンパニー (6)
【Fターム(参考)】