内燃機関の制御装置
【課題】 フューエルカットによる触媒の劣化を抑制し、かつ必要以上にフューエルカットが禁止されることを抑制する。
【解決手段】 ECUは、触媒温度TCが予め定められた温度TC(0)よりも高ければ(S104にてYES)、前回の変速からの経過時間が判定時間を経過するまでの間に変速が行なわれた場合(S108にてYES)、変速時F/C許可フラグをリセットするステップ(S110)と、前回の変速が行なわれてからの経過時間が判定時間を経過した場合(S112にてYES)、変速時F/C許可フラグをセットするステップ(S114)とを含むプログラムを実行する。
【解決手段】 ECUは、触媒温度TCが予め定められた温度TC(0)よりも高ければ(S104にてYES)、前回の変速からの経過時間が判定時間を経過するまでの間に変速が行なわれた場合(S108にてYES)、変速時F/C許可フラグをリセットするステップ(S110)と、前回の変速が行なわれてからの経過時間が判定時間を経過した場合(S112にてYES)、変速時F/C許可フラグをセットするステップ(S114)とを含むプログラムを実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関し、特に、常時噛合い式のギヤトレーンから構成される自動変速機に連結された内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関(たとえばエンジン)において、車両の減速時などに燃料の供給を停止する技術(フューエルカット)が知られている。しかしながら、フューエルカットを実行すると、空気がそのまま触媒に流れ込むため、触媒の酸化反応が急激に促進され、触媒の劣化の要因となる場合がある。したがって、フューエルカットを実行する場合には、触媒の劣化を考慮する必要がある。
【0003】
特開2004−50878号公報(特許文献1)は、触媒の劣化を抑制できる内燃機関の制御装置を開示する。特許文献1に記載の制御装置は、内燃機関の稼働中に、内燃機関に対して燃料を供給する燃料供給部と、予め定められた減速運転条件下において、燃料供給部による内燃機関への燃料供給を停止する燃料停止部と、触媒の温度が予め定められた温度を超える場合には、予め定められた減速運転条件下であっても、内燃機関への燃料供給の停止を禁止する燃料停止禁止部と、変速装置における変速比の状態を検出する変速状態検出部と、予め定められた減速運転条件下であって触媒の温度が予め定められた温度を超えることにより、燃料停止禁止部によって燃料供給の停止が禁止されたとき、燃料供給の停止が禁止されてからの経過時間が予め定められた基準時間以内の間に、変速状態検出部が最高速状態への変速比の変更を検出する場合には、燃料停止禁止部による燃料供給の停止の禁止を続行し、予め定められた基準時間以内の間に変速状態検出部が最高速状態への変速比の変更を検出しない場合には、燃料供給の停止の禁止を解除して燃料停止部による燃料供給の停止を行なう燃料供給状態制御部と含む。
【0004】
この公報に開示された内燃機関の制御装置によれば、予め定められた減速運転条件下であって、触媒温度が予め定められた温度を超える場合に、一旦は燃料供給の停止が禁止される。そして、予め定められた基準時間内に、変速装置における最高速状態への変速比の変更が検出された時には、そのまま燃料供給の停止の禁止が続行される。また、予め定められた基準時間内に、最高速状態への変速比の変更が検出されなかった時には、燃料供給の停止が行なわれる。このように一旦は燃料供給の停止を禁止してから、さらに燃料供給の停止の禁止を続行するかどうか判断することで、不必要な燃料カットを行なって触媒の劣化が進行してしまう不都合を、確実に防止することができる。
【特許文献1】特開2004−50878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、特に欧州において、常時噛合い式のギヤトレーンから構成される自動変速機を搭載した車両が販売されている。このような車両においては、自動で変速が行なわれるモードと運転者がシフトレバーなどを操作することにより変速が行なわれるモードとを選択可能なものもある。変速時にはクラッチを解放するために内燃機関の出力が低下される。このような自動変速機を搭載した車両において、フューエルカットを実行する領域を拡大して燃費をよくするため、変速時に対応させてフューエルカットを行なうことが考えられる。この場合も、フューエルカットにより触媒が劣化し得る。特に、運転者が意図的に変速を繰返す度にフューエルカットが行なわれると、それだけフューエルカットが行なわれる時間が長くなり、触媒の劣化が進行し得る。そのため、特許文献1に記載の制御装置のように、触媒温度が予め定められた温度を超えた場合にフューエルカットを禁止し、禁止されてから基準時間経過後に禁止を解除することが考えられる。
【0006】
しかしながら、このような場合のフューエルカットを禁止するには基準時間を長くする必要がある。基準時間が長くなれば、運転者の意図的な変速が行なわれない場合においても、フューエルカットの禁止時間が長くなり、燃費の観点から不利になるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、燃料供給の停止(フューエルカット)による触媒の劣化を抑制し、かつ必要以上に燃料供給の停止が禁止されることを抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る内燃機関の制御装置において、内燃機関は、常時噛合い式のギヤトレーンから構成される自動変速機に連結されている。内燃機関から排出される排気は、触媒により浄化される。制御装置は、内燃機関へ燃料を供給するための燃料供給手段と、自動変速機の変速時に対応させて、内燃機関への燃料供給を停止するように、燃料供給手段を制御するための制御手段と、触媒の温度を検出するための検出手段と、触媒の温度および変速が行なわれてからの経過時間に基づいて、制御手段による燃料供給の停止を許可するか禁止するかを判定するための判定手段とを含む。
【0009】
第1の発明によると、燃料供給手段により内燃機関に燃料が供給され、制御手段が、自動変速機の変速時に対応させて内燃機関への燃料供給を停止するように、燃料供給手段を制御する。検出手段により触媒の温度が検出され、たとえば触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、変速が行なわれてからの経過時間により、判定手段が、制御手段による燃料供給の停止を許可するか禁止するかを判定する。これにより、前回の変速が行なわれてから予め定められた判定時間が経過した後は、燃料供給の停止を許可すると判定し、経過する前は禁止すると判定することができる。そのため、判定時間が経過するまでは燃料供給の停止を禁止して触媒の温度上昇を抑制し、判定時間経過後は、燃料供給を停止することができる。このとき、判定時間を短く設定すれば、短期的な周期で変速が繰り返される場合の燃料供給の停止を禁止し、変速が繰り返されなければ、速やかに燃料供給の停止を許可することができる。また、燃料供給が停止された状態が終了してから判定時間以上経過した後は、燃料供給の停止を許可すると判定し、経過する前は禁止すると判定することができる。そのため、判定時間が経過するまでは燃料供給の停止を禁止して触媒の温度上昇を抑制し、判定時間経過後は、変速が繰返されても、変速時に対応させて燃料供給を停止することができる。その結果、燃料供給の停止による触媒の劣化を抑制し、かつ必要以上に燃料供給の停止が禁止されること抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することができる。
【0010】
第2の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第1の発明の構成に加え、判定手段は、触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、前回の変速が行なわれてから予め定められた時間が経過した後は、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、予め定められた時間が経過する前は、制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段を含む。
【0011】
第2の発明によると、触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、前回の変速が行なわれてから判定時間が経過した後は、燃料供給の停止を許可すると判定され、判定時間が経過する前は、燃料供給の停止を禁止すると判定される。判定時間を短く設定すれば、短期的な周期で変速が繰り返される場合の燃料供給の停止を禁止し、変速が繰り返されなければ、速やかに燃料供給の停止を許可することができる。これにより、燃料供給の停止が連続して行なわれ、触媒の温度上昇を抑制し、かつ必要以上に燃料供給の停止が禁止されることを抑制することができる。
【0012】
第3の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第1の発明の構成に加え、判定手段は、触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、制御手段により燃料供給が停止された状態が終了してから予め定められた判定時間以上経過した後は、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、制御手段により燃料供給が停止された状態が終了してから予め定められた時間が経過する前は、制御手段により燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段を含む。
【0013】
第3の発明によると、触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、燃料供給が停止された状態が終了してから判定時間以上経過した後は、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定される。判定時間が経過する前は、燃料供給の停止を禁止すると判定される。これにより、判定時間が経過するまでは燃料供給の停止を禁止して触媒の温度上昇を抑制し、判定時間経過後は、変速が繰返されても、変速時に対応させて燃料供給を停止することができる。
【0014】
第4の発明に係る内燃機関の制御装置は、第1〜3のいずれかの発明の構成に加え、自動変速機が内燃機関に要求する要求トルクを算出するための手段と、要求トルクに基づいて、制御手段による燃料供給を許可するか禁止するかを判定するためのトルク判定手段とをさらに含む。
【0015】
第4の発明によると、自動変速機が内燃機関に要求する要求トルクが算出される。たとえば、要求トルクが内燃機関の最低トルクよりも低い場合、燃料供給の停止を許可すると判定される。要求トルクが内燃機関の最低トルクよりも高い場合、燃料供給の停止を禁止すると判定される。これにより、内燃機関がトルク制御可能な領域内で燃料供給が行なわれ、必要以上に燃料供給が停止されて触媒が劣化することを抑制することができる。
【0016】
第5の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第4の発明の構成に加え、トルク判定手段は、要求トルクが予め定められたトルクよりも低い場合、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、要求トルクが予め定められたトルク以上の場合、制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段を含む。
【0017】
第5の発明によると、要求トルクが内燃機関の予め定められたトルクよりも低い場合、燃料供給の停止を許可すると判定される。要求トルクが内燃機関の予め定められたトルク以上の場合、燃料供給の停止を禁止すると判定される。これにより、内燃機関がトルク制御可能な領域内で燃料供給が行なわれ、必要以上に燃料供給が停止されて触媒が劣化することを抑制することができる。
【0018】
第6の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第5の発明の構成に加え、予め定められたトルクは、内燃機関が出力可能な最低トルクである。
【0019】
第6の発明によると、要求トルクが内燃機関の最低トルクよりも低い場合、燃料供給の停止を許可すると判定される。要求トルクが内燃機関の最低トルク以上の場合、燃料供給の停止を禁止すると判定される。これにより、内燃機関がトルク制御可能な領域内で燃料供給が行なわれ、必要以上に燃料供給が停止されて触媒が劣化することを抑制することができる。
【0020】
第7の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第1〜6のいずれかの発明の構成に加え、内燃機関は、クラッチを介して自動変速機に連結されている。制御装置は、クラッチが解放状態である場合、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、クラッチが係合状態であって燃料供給が停止されている場合、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、クラッチが係合状態であって燃料が供給されている場合、制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段をさらに含む。
【0021】
第7の発明によると、クラッチが解放状態である場合、燃料供給の停止を許可すると判定される。これにより、燃料供給の停止によりトルクが減少方向に急変した場合、ショックの発生を抑制することができる。クラッチが係合状態であって燃料供給が停止されている場合、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定される。これにより、燃料供給停止の禁止によりトルクが増加方向に急変した場合のショックの発生を抑制し、燃料供給の停止を継続することができる。クラッチが係合状態であって燃料が供給されている場合、制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定される。これにより、トルクが急変した場合にショックが発生するおそれがある状態において、燃料供給の停止を禁止して、トルクの急変によるショックの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0023】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、エンジン100で発生した駆動力が、クラッチ200、変速機300、デファレンシャルギヤ400およびドライブシャフト402を介して車輪404に伝達されることにより走行する。エンジン100、クラッチ200および変速機300は、ECU(Electronic Control Unit)500により制御される。本実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、たとえば、ECU500において実行されるプログラムにより発現される。
【0024】
エンジン100は、ガソリンエンジンである。なおガソリンエンジンの代わりにディーゼルエンジンであってもよい。クラッチ200は、エンジン100のクランクシャフト600に連結されている。クラッチ出力軸202は、スプライン310を介して変速機300の入力軸302に連結されている。
【0025】
変速機300は、常時噛合い式のギヤトレーンから構成されている。変速機300におけるギヤ段の選択は、アクチュエータ304によりシフトフォークシャフトを摺動させることにより行なわれる。アクチュエータ304は、油圧により作動するものであってもよく、電力により作動するものであってもよい。なお、ダイレクトシリンダを用いたアクチュエータによりギヤ段の選択を行なってもよい。
【0026】
ECU500は、エンジンECU502、トランスミッションECU504、メモリ506およびカウンタ508を含む。エンジンECU502は、エンジン100を制御する。トランスミッションECU504は、クラッチ200および変速機300を制御する。エンジンECU502とトランスミッションECU504とは、相互に信号を送受信する。メモリ506は、ECU500が実行するプログラムやマップなどを記憶する。カウンタ508は、変速機300の変速が行なわれてからの経過時間を計測する。
【0027】
ECU500には、ポジションセンサ510、アクセル開度センサ512、ブレーキスイッチ514、車速センサ516、入力軸回転数センサ518、出力軸回転数センサ520、およびタイミングロータ522の外周に対向して設けられたクランクポジションセンサ524から信号が送信される。
【0028】
ポジションセンサ510は、シフトレバーのシフトポジションを検出する。アクセル開度センサ512は、アクセルペダルのアクセル開度を検出する。ブレーキスイッチ514は、ブレーキペダルが踏まれたか否かを検出する。車速センサ516は、車速を検出する。入力軸回転数センサ518は、変速機300の入力軸の回転数を検出する。出力軸回転数センサ520は、変速機300の出力軸の回転数を検出する。クランクポジションセンサ524はエンジン回転数を検出する。
【0029】
ECU500は、これらのセンサから送信された信号、カウンタ508が計測した経過時間、メモリ506に記憶されたプログラムおよびマップなどに基づいて演算処理を行なう。本実施の形態において、ECU500は、運転者のシフトレバー操作に基づいて、変速(アップシフトおよびダウンシフト)を行なう。なお、シフトレバー操作の代わりに、ステアリング(図示せず)に設けられたスイッチの操作に基づいて、変速を行なってもよい。
【0030】
図2を参照して、エンジン100についてさらに説明する。エンジン100に吸入される空気は、エアクリーナ102によりろ過され、吸気管104およびインテークマニホールド106を通り、インジェクタ108から噴射された燃料とともに燃焼室内に導入される。
【0031】
燃焼室内で、空気と燃料との混合気が点火プラグ110により点火され、燃焼する。混合気が燃焼することにより、エンジン100は駆動力を発生する。燃焼後の混合気、すなわち排気ガスは、エギゾーストマニホールド112に導かれ、触媒144により浄化された後、車外に排出される。
【0032】
燃焼室内に導入される空気は、スロットルバルブ114により制御される。空気の量は、エアフローメータ526により検出され、検出結果を表す信号がECU500に送信される。スロットルバルブ114の開度は、スロットル開度センサ528により検出され、検出結果を表す信号がECU500に送信される。
【0033】
図3を参照して、クラッチ200についてさらに説明する。クラッチ200は、乾式単板式の摩擦クラッチである。図3に示すように、クラッチ200は、クラッチ出力軸202と、クラッチ出力軸202に配設されたクラッチディスク204と、クラッチハウジング206と、クラッチハウジング206に配設されたプレッシャプレート208と、ダイヤフラムスプリング210と、クラッチレリーズシリンダ212と、レリーズフォーク214と、レリーズスリーブ216とを含む。
【0034】
ダイヤフラムスプリング210が、プレッシャプレート208を図3において右方向に付勢することにより、クラッチディスク204が、エンジン100のクランクシャフト600に取り付けられたフライホイール602に押付けられ、クラッチが係合される。
【0035】
クラッチレリーズシリンダ212が、レリーズフォーク214を介して図3において右方向へ、レリーズスリーブ216を移動させることにより、ダイヤフラムスプリング210の内端部が図3において右方向へ移動する。ダイヤフラムスプリング210の内端部が図3において右方向へ移動すると、プレッシャプレート208が図3において左方向に移動し、クラッチディスク204とフライホイール602とが離れてクラッチが解放される。
【0036】
クラッチレリーズシリンダ212は、リザーバ218から油圧ポンプ220により汲み上げられた作動油の油圧が、クラッチソレノイドバルブ222を介して供給されることにより作動する。クラッチソレノイドバルブ222は、クラッチレリーズシリンダ212に対する油圧の供給および排出を切換える。クラッチソレノイドバルブ222は、ECU500により制御される。
【0037】
クラッチレリーズシリンダ212に油圧が供給されると、クラッチレリーズシリンダ212のピストンが図3において左方向に移動し、レリーズスリーブ216が図3において右方向へ移動してクラッチが解放される。クラッチレリーズシリンダ212のピストンの位置(クラッチストローク)は、クラッチストロークセンサ532により検出される。クラッチストロークセンサ532の検出結果を表す信号は、ECU500に送信される。
【0038】
ECU500は、クラッチストロークセンサ532から送信された信号に基づいて、クラッチ200が解放状態にあるか、係合状態にあるか、半係合状態にあるかを検出する。なお、クラッチ200を電力により作動するようにしてもよい。
【0039】
図4を参照して、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置においてECU500が実行するプログラムの制御構造について説明する。
【0040】
ステップ(以下、ステップをSと略す)300にて、ECU500は、変速が必要か否かを判別する。変速が必要か否かは、たとえばメモリ506に記憶された変速線図などに基づいて判別したり、運転者がシフトレバーを操作したか否かにより判別すればよい。変速が必要である場合(S300にてYES)、処理はS100に移される。そうでない場合(S300にてNO)、この処理は終了する。
【0041】
S100にて、ECU500は、変速時F/C(Fuel Cut)許可フラグ設定サブルーチンを実行する。S200にて、ECU500は、変速時F/C実行フラグ設定サブルーチンを実行する。
【0042】
S400にて、ECU500は、変速時F/C実行フラグがセットされているか否かを判別する。変速時F/C実行フラグがセットされている場合(S400にてYES)、処理はS500に移される。そうでない場合(S400にてNO)、処理はS700に移される。
【0043】
S500にて、ECU500は、変速を行なうとともに、変速時に対応させてフューエルカットを行なう。S600にて、ECU500は、変速時F/C履歴フラグをセットする。S700にて、ECU500は、フューエルカットを実行せずに変速を行なう。S800にて、ECU500は、カウンタ508により、変速が行なわれてからの経過時間のカウントを開始する。
【0044】
図5を参照して、変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンについて説明する。
S102にて、ECU500は、エンジン回転速度やエンジン負荷などに基づいて、触媒温度TCを推定する。S104にて、ECU500は、触媒温度TCが、予め定められた温度TC(0)よりも高いか否かを判別する。触媒温度TCがTC(0)よりも高い場合(S104にてYES)、処理はS106に移される。そうでない場合(S104にてNO)、処理はS114に移される。
【0045】
S106にて、ECU500は、変速時F/C履歴フラグがセットされているか否かを判別する。変速時F/C履歴フラグがセットされている場合(S106にてYES)、処理はS108に移される。そうでない場合(S106にてNO)、処理はS114に移される。
【0046】
S108にて、ECU500は、前回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行時のシフト位置と、今回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行時のシフト位置が変化(つまり変速)したか否かを判別する。変速が行なわれた場合(S108にてYES)、処理はS110に移される。そうでない場合(S108にてNO)、処理はS112に移される。S110にて、ECU500は、変速時F/C許可フラグをリセットする。
【0047】
S112にて、ECU500は、フューエルカットが実行された状態で変速が行なわれてからの経過時間が、予め定められた判定時間が経過したか否かを判別する。判定時間が経過した場合(S112にてYES)、処理はS114に移される。そうでない場合(S112にてNO)、この処理は終了する。S114にて、ECU500は、変速時F/C許可フラグをセットする。S116にて、ECU500は、変速時F/C履歴フラグをリセットする。
【0048】
図6および図7を参照して、変速時F/C実行フラグ設定サブルーチンについて説明する。
【0049】
S202にて、ECU500は、変速機300がエンジン100に対して要求する要求正味トルクTSを算出する。ここで、正味トルクとは、変速機300に実際に入力されるトルクである。要求正味トルクTSの算出方法は、一般的な周知技術を利用すればよいため、ここではさらなる詳細な説明は繰返さない。
【0050】
S204にて、ECU500は、要求正味トルクTSが、予め定められた要求正味トルクTS(0)よりも低いか否かを判別する。要求正味トルクTS(0)は、フューエルカットしないと実現できないような値(たとえば負値)に設定される。たとえばクラッチ200を解放する際に、負荷の減少によりエンジン100が吹き上がることを抑制するために、要求正味トルクTSがTS(0)よりも低くなる。要求正味トルクTSが、TS(0)よりも低い場合(S204にてYES)、フューエルカットによる瞬時のトルクダウンを変速機300が要求していると判別され、処理はS206に移される。そうでない場合(S204にてNO)、処理は図7に示すS224に移される。
【0051】
図6に戻り、S206にて、ECU500は、要求正味トルクTSを、要求図示トルクTZに変換する。図示トルクとは、エンジン100が実際に出力するトルクである。要求図示トルクTZは、要求正味トルクTSに、機械部品等のフリクショントルクやオルタネータ(図示せず)などの補機類の負荷トルクを加算して算出される。要求図示トルクTZの算出方法は、一般的な周知技術を利用すればよいため、ここではさらなる詳細な説明は繰返さない。
【0052】
S208にて、ECU500は、要求図示トルクTZが、予め定められた要求図示トルクTZ(0)よりも低いか否かを判別する。要求図示トルクTZ(0)は、吸入される空気量を減らしたり、点火時期を遅角したりすることによりエンジン100が出力可能な最低トルクに設定される。ここで出力可能な最低トルクとは、機能的な限界ではなく、失火やエンストなどの発生がなく正常に運転可能な最低トルクを意味する。要求図示トルクTZが、TZ(0)よりも低い場合(S208にてYES)、処理はS210に移される。そうでない場合(S208にてNO)、処理は図7に示すS224に移される。
【0053】
図6に戻り、S210にて、ECU500は、F/C禁止要求信号がない状態にあるかF/C禁止要求信号がある状態にあるかを判別する。F/C禁止要求信号とは、クラッチ200が係合状態にある場合に、トランスミッションECU504からエンジンECU502に送信される信号である。F/C禁止要求信号がない状態にある場合(S210にてYES)、すなわち、クラッチ200が解放状態にある場合、処理はS216に移される。そうでない場合(S210にてNO)、すなわちクラッチ200が係合状態にある場合、処理はS214に移される。
【0054】
S214にて、ECU500は、車両の減速時においてエンジン100のアイドル時に行なわれるアイドル時フューエルカットが実行中であるか否かを判別する。フューエルカットが実行中である場合(S214にてYES)、処理はS216に移される。そうでない場合(S214にてNO)、処理は図7に示すS224に移される。
【0055】
図6に戻り、S216にて、ECU500は、エンジン回転数が、アイドル時F/C復帰回転数よりも高いか否かを判別する。ここで、アイドル時F/C復帰回転数とは、アイドル時フューエルカットを実行した場合において、フューエルカットが行なわれている状態から燃料を噴射してエンジン100を駆動させる状態に復帰させる回転数である。エンジン回転数が、アイドル時F/C復帰回転数よりも高い場合(S216にてYES)、処理は図7に示すS218に移される。そうでない場合(S216にてNO)、処理はS224に移される。
【0056】
S218にて、ECU500は、変速時F/C許可フラグがセットされているか否かを判別する。変速時F/C許可フラグがセットされている場合(S218にてYES)、処理はS220に移される。そうでない場合(S218にてNO)、処理はS224に移される。
【0057】
S220にて、ECU500は、エンジン100がアイドル時であるという条件以外のアイドル時F/C実行条件が成立しているか否かを判別する。ここで、アイドル時F/C実行条件は、アイドル時フューエルカットを行なうための条件をいい、たとえば、触媒温度が高い、且つギヤ段が最高段でないという条件などを含む。アイドル時F/C実行条件は、一般的な周知技術を利用すればよいため、ここではさらなる詳細な説明は繰返さない。アイドル時F/C実行条件が成立している場合(S220にてYES)、処理はS222に移される。そうでない場合(S220にてNO)、処理はS224に移される。S222にて、ECU500は、変速時F/C実行フラグをセットする。S224にて、ECU500は、変速時F/C実行フラグをリセットする。
【0058】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECU500の動作について説明する。なお、以下の説明では、現在のギヤ段に変速する際(前回の変速時)に対応してフューエルカットが実行され(S500)、変速時F/C履歴フラグがセットされている(S600)状態であると想定する。
【0059】
変速時に対応してフューエルカットが実行されて(S500)、変速時F/C履歴フラグがセットされ(S600)、変速が行なわれてからの経過時間のカウントが開始されると(S800)、再び変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンが実行される(S100)。
【0060】
変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンでは、触媒温度TCが検出され(S102)、触媒温度TCが、予め定められた温度TC(0)よりも高いか否かが判別される(S104)。
【0061】
触媒温度TCが、予め定められた温度TC(0)以下であれば(S104にてNO)、フューエルカットにより触媒温度が上昇しても問題がない状態であるといえる。この場合、変速時F/C許可フラグがセットされ(S114)、変速時の連続フューエルカットが許可される。この場合、変速時F/C履歴フラグがリセットされる(S116)。
【0062】
一方、触媒温度TCが、予め定められた温度TC(0)よりも高ければ(S104にてYES)、フューエルカットによる触媒温度の上昇を抑制する必要がある。この場合、変速時F/C履歴フラグがセットされているか否かが判別され(S106)、前回の変速時にフューエルカットが行なわれた否かが判別される。
【0063】
現時点では、前回の変速時に対応してフューエルカットが実行され(S500)、変速時F/C履歴フラグがセットされた状態(S600、S106にてYES)であるため、変速時に連続してフューエルカットを実行することを禁止する必要がある。
【0064】
この変速(S500)が、前回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行した後に行なわれたものであれば(S108にてYES)、変速時F/C許可フラグがリセットされる(S110)。すなわち、フューエルカットが実行された状態で変速(S500)が行なわれると、その直後に実行される変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンにおいて、必ず変速時F/C許可フラグがリセットされる(S110)。
【0065】
変速時F/C許可フラグがリセットされた後は(S110)、変速が行なわれない状態(S300にてNO、S108にてNO)が続く限り、変速が行なわれてからの経過時間が、判定時間を経過したか否かが判別される(S112)。
【0066】
前回の変速(S500)が行なわれてからの経過時間が、判定時間を経過すると(S112にてYES)、フューエルカットを実行しても触媒温度TCが異常上昇せず、問題がない状態であるといえる。この場合、変速時F/C許可フラグがセットされ(S114)、変速時の連続フューエルカットが許可されて、変速時F/C履歴フラグがリセットされる(S116)。
【0067】
前回の変速(S500)が行なわれてからの経過時間が、判定時間を経過していなければ(S112にてNO)、変速時F/C許可フラグがリセットされた状態(S110)が維持される。そのため、判定時間を経過するまでの間に、たとえば運転者がシフトレバーを操作することにより、変速が繰返される限り(S300にてYES、S700)、変速時F/C許可フラグがリセットされた状態(S110)が継続する。この判定時間は、変速が行なわれてからの経過時間と比較されるため、判定時間を短く設定することにより、短期的な周期で変速が繰返される場合のフューエルカットを禁止することができる。そのため、通常の周期での変速繰り返しの場合は、速やかにフューエルカットを許可し、燃費を向上することができる。
【0068】
変速時F/C許可フラグ設定サブルーチン(S100)の終了後、変速時F/C実行フラグ設定サブルーチンが実行される(S200)。変速時F/C実行フラグ設定サブルーチン(S200)では、要求正味トルクTSが算出され(S202)、要求正味トルクTSが、予め定められた要求正味トルクTS(0)よりも低いか否かが判別される(S204)。
【0069】
要求正味トルクTSが、TS(0)以上であれば(S204にてNO)、フューエルカットによる瞬時のトルクダウンを変速機300が要求していない状態であるといえる。この場合は、変速時F/C実行フラグがリセットされ(S224)、変速が必要な場合であっても(S300にてYES)、フューエルカットが実行されずに変速が行なわれる(S400にてNO、S700)。フューエルカットが実行されずに変速が行なわれると(S700)、変速が行なわれてからの経過時間がカウントされる(S800)。
【0070】
一方、要求正味トルクTSが、TS(0)よりも低い場合(S204にてYES)、フューエルカットによる瞬時のトルクダウンを変速機300が要求している状態であるといえる。この場合、要求正味トルクTSが要求図示トルクTZに変換され(S206)、要求図示トルクTZが、予め定められた要求図示トルクTZ(0)よりも低いか否かが判別される(S208)。これにより、吸入される空気量を減らしたり、点火時期を遅角したりすることにより、フューエルカットを実行せずに、変速機300が要求するトルクをエンジン100が出力可能か否かが判別される。
【0071】
要求図示トルクTZがTZ(0)以上の場合(S208にてNO)、すなわち、フューエルカットを実行せずに、変速機300が要求するトルクをエンジン100が出力可能である場合、変速時F/C実行フラグがリセットされる(S224)。したがって、変速が必要な場合であっても(S300にてYES)、フューエルカットが実行されずに変速が行なわれる(S400にてNO、S700)。これにより、エンジン100のトルクを制御可能な領域においてフューエルカットが実行されることを抑制することができる。フューエルカットが実行されずに変速が行なわれると(S700)、変速が行なわれてからの経過時間がカウントされる(S800)。
【0072】
要求図示トルクTZが、TZ(0)よりも低い場合(S208にてYES)、すなわち、フューエルカットを実行しなければ、変速機300の要求を満たすことができない場合、F/C禁止要求信号の有無が判別される(S210)。
【0073】
クラッチ200が係合状態にあり、トランスミッションECU504からエンジンECU502にF/C禁止要求信号が送信されていれば(S210にてNO)、現在、アイドル時フューエルカットが実行中であるか否かが判別される(S214)。
【0074】
アイドル時フューエルカットが実行中でなければ(S214にてNO)、クラッチ200が係合状態である場合において(S210にてNO)、変速時にフューエルカットを実行すると、急なトルクダウンによるショックが発生するおそれがあるといえる。この場合、変速時F/C実行フラグがリセットされ(S224)、変速が必要な場合であっても(S300にてYES)、フューエルカットが実行されずに変速が行なわれる(S400にてNO、S700)。これにより、フューエルカットによりショックが発生し、ドライバビリティが悪化することを抑制することができる。フューエルカットが実行されずに変速が行なわれると(S700)、変速が行なわれてからの経過時間がカウントされる(S800)。
【0075】
クラッチ200が解放状態にあり、トランスミッションECU504からエンジンECU502にF/C禁止要求信号が送信されていなければ(S210にてYES)、フューエルカットを実行してもショックが発生しない状態であるといえる。
【0076】
また、クラッチ200が係合状態であっても(S210にてNO)、アイドル時フューエルカットが実行中であれば(S214にてYES)、変速時にフューエルカットを実行(継続)しても、ショックが発生しない状態であるといえる。
【0077】
これらの場合(S210にてYES、S214にてYES)、エンジン回転数が、アイドル時F/C復帰回転数よりも高いか否かが判別される(S216)。
【0078】
エンジン回転数が、アイドル時F/C復帰回転数以下の状態では(S216にてNO)、変速時にフューエルカットを実行すると、エンストが生じるおそれがある。この場合、変速時F/C実行フラグがリセットされ(S224)、変速が必要な場合であっても(S300にてYES)、フューエルカットが実行されずに変速が行なわれる(S400にてNO、S700)。これにより、フューエルカットによるエンストを抑制することができる。フューエルカットが実行されずに変速が行なわれると(S700)、変速が行なわれてからの経過時間がカウントされる(S800)。
【0079】
エンジン回転数が、アイドル時F/C復帰回転数よりも高ければ(S216にてYES)、変速時にフューエルカットを実行しても、エンストが生じるおそれがないといえる。この場合、変速時F/C許可フラグがセットされているか否かが判別される(S218)。
【0080】
変速時F/C許可フラグがセットされていなければ(S218にてNO)、変速時のフューエルカットを短期間な周期で連続して行なうことが禁止されている状態である。この場合、変速時F/C実行フラグがリセットされ(S224)、フューエルカットしてもエンストを伴なわずに変速が可能な場合であっても、フューエルカットが実行されずに変速が行なわれる(S400にてNO、S700)。これにより、変速時の連続フューエルカットが禁止されて触媒の温度上昇が抑制され、触媒の劣化が抑制される。フューエルカットが実行されずに変速が行なわれると(S700)、変速が行なわれてからの経過時間がカウントされる(S800)。
【0081】
変速時F/C許可フラグがセットされていれば(S218にてYES)、変速時にフューエルカットを行なっても、触媒144の劣化に対して問題がない状態であるといえる。この場合、エンジン100がアイドル時であるという条件以外のアイドル時F/C実行条件が成立しているか否かが判別される(S220)。
【0082】
アイドル時F/C実行条件が成立していなければ(S220にてNO)、変速時F/C実行フラグがリセットされ(S224)、フューエルカットしても触媒144の劣化に対して問題なく変速が可能な場合であっても、フューエルカットが実行されずに変速が行なわれる(S700)。
【0083】
アイドル時F/C実行条件が成立していれば(S220にてYES)、変速時F/C実行フラグがセットされ(S222)、変速が必要な場合は(S300にてYES)、フューエルカットが実行されて変速が行なわれる(S500)。フューエルカットを実行した状態で変速が行なわれると(S500)、変速時F/C履歴フラグがセットされ(S600)、変速してからの経過時間のカウントが開始される(S800)。
【0084】
以上のように、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUは、変速時に対応してフューエルカットを実行した場合、変速時F/C許可フラグをリセットする。変速が行なわれてからの経過時間が予め定められた判定時間を経過する前に、次の変速が行なわれると、変速時F/C許可フラグはリセットした状態に維持される。変速時F/C許可フラグがリセットされた状態では、次の変速が行なわれる場合に、フューエルカットが実行されない。これにより、短期的な周期で変速が繰返される場合において、フューエルカットが連続して実行されることを抑制することができる。そのため、触媒温度の上昇を抑制することができる。その結果、フューエルカットにより触媒が劣化することを抑制することができる。
【0085】
また、経過時間を変速が行なわれてからカウントするため、判定時間を短く設定することにより、短期的な周期で変速が繰返される場合のフューエルカットを抑制し、変速が繰返されない場合は速やかにフューエルカットを許可して燃費を向上することができる。
【0086】
<第2の実施の形態>
図8および図9を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。前述の第1の実施の形態においては、変速を繰返す限り変速時F/C許可フラグをリセットするが、本実施の形態においては、判定時間を経過した後は、変速しても変速時F/C許可フラグがセットされる。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。それ
らについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0087】
図8を参照して、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECU500が実行するプログラムの制御走行について説明する。
【0088】
図8に示すように、本実施の形態においては、前述の第1の実施の形態における変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンに代えて、変速時F/C許可フラグ設定サブルーチン(S900)を実行する。変速時F/C実行フラグ設定サブルーチンについては、前述の第1の実施の形態と同じである。その他、前述の第1の実施の形態の同じステップについては、同一のステップ番号を付してある。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0089】
図8に示すように、S802にて、ECU500は、カウンタ508により、フューエルカットを実行した状態で変速が行なわれてからの経過時間を計測する。
【0090】
図9を参照して、変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンについて説明する。
S902にて、触媒温度TCを検出する。S904にて、ECU500は、触媒温度TCが、予め定められた温度TC(0)より高いか否かを判別する。触媒温度TCが、TC(0)よりも高い場合(S904にてYES)、処理はS906に移される。そうでない場合(S904にてNO)、処理はS920に移される。
【0091】
S906にて、ECU500は、変速時F/C実行フラグがリセットされた状態にあるか否かを判別する。変速時F/C実行フラグがリセットされた状態にある場合(S906にてYES)、処理はS908に移される。そうでない場合(S906にてNO)、この処理は終了する。
【0092】
S908にて、ECU500は、前回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行した際、変速時F/C実行フラグがセットされていたか否かを判別する。変速時F/C実行フラグがセットされていた場合(S908にてYES)、処理はS910に移される。そうでない場合(S908にてNO)、処理はS912に移される。
【0093】
S910にて、ECU500は、カウンタ508のカウントをリセットする。S912にて、ECU500は、カウンタ508にカウントに基づいて、F/C禁止時間TPを算出する。
【0094】
S914にて、ECU500は、F/C禁止時間TPが、予め定められた時間TP(0)よりも短いか否かを判別する。F/C禁止時間TPが、予め定められた時間TP(0)よりも短い場合(S914にてYES)、処理はS918に移される。そうでない場合(S914にてNO)、処理はS920に移される。
【0095】
S918にて、ECU500は、変速時F/C許可フラグをリセットする。S920にて、ECU500は、変速時F/C許可フラグをセットする。
【0096】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置における、ECU500の動作について説明する。
【0097】
車両の走行中、触媒温度TCが検出される(S902)。触媒温度TCがTC(0)以下であれば(S904にてNO)、フューエルカットを実行して触媒温度が上昇しても
、触媒144の劣化に対しては問題がない状態であるといえる。この場合、変速時F/C許可フラグがセットされ(S920)、変速時のフューエルカットが許可される。
【0098】
一方、触媒温度TCが、TC(0)より高ければ(S904にてYES)、触媒144が劣化するおそれがあるため、フューエルカットを抑制する必要があるといえる。この場合、変速時F/C実行フラグがリセットされていれば(S906にてYES)、前回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行した際、変速時F/C実行フラグがセットされていたか否かが判別される(S908)。
【0099】
前回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行した際、変速時F/C実行フラグがセットされていれば(S908にてYES)、変速時F/C実行フラグがセットされた状態からリセットされた状態に変わった状態といえる。この場合、カウンタ508のカウントをリセットする(S910)。
【0100】
一方、前回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行した際、変速時F/C実行フラグがリセットされていれば(S908にてNO)、カウンタ508のカウントが継続される。このカウンタ508のカウントに基づいて、F/C禁止時間TPが算出される(S912)。
【0101】
F/C禁止時間TPが、TP(0)よりも短い場合には(S914にてYES)、変速時F/C許可フラグがリセットされる(S918)。これにより、前回フューエルカットが実行された状態で変速が行なわれてから予め定められた時間TP(0)以内に変速時F/Cが要求された場合に、フューエルカットが禁止される。
【0102】
F/C禁止時間TPが、TP(0)以上になれば(S914にてNO)、変速時F/C許可フラグがセットされる(S920)。これにより、フューエルカットが実行された状態で変速が行なわれてから、同一のギヤ段が維持され予め定められた時間TP(0)以上経過した場合は、その後の変速時に対応させたフューエルカットが許可される。そのため、燃費を向上することができる。
【0103】
以上のように、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUは、フューエルカットが実行された状態で変速F/Cが行なわれてから、変速後のギヤ段が維持され、予め定められた時間TP(0)が経過した場合、変速時F/C許可フラグをセットする。これにより、予め定められた時間TP(0)の経過後は、運転者により意図的に変速が繰返された場合であっても、フューエルカットを行ない、燃費を向上することができる。
【0104】
<第3の実施の形態>
図10および図11を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。前述の第1の実施の形態においては、変速時にフューエルカットを実行していたが、本実施の形態においては、変速時フューエルカットに加え、変速時にアイドル状態となれば、アイドル時フューエルカットを実行する。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0105】
図10を参照して、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECU500が実行するプログラムの制御構造について説明する。
【0106】
S1000にて、ECU500は、変速機300の変速中であるか否かを判別する。変速中である場合(S1000にてYES)、処理はS1100に移される。そうでない場合(S1000にてNO)、この処理は終了する。
【0107】
S1100にて、ECU500は、アイドル時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行する。S1200にて、ECU500は、アイドル時F/C実行条件が成立しているか否かを判別する。アイドル時F/C実行条件が成立している場合(S1200にてYES)、処理はS1300に移される。そうでない場合(S1200にてNO)、この処理は終了する。
【0108】
S1300にて、ECU500は、アイドル時F/C許可フラグがセットされているか否かを判別する。アイドル時F/C許可フラグがセットされている場合(S1300にてYES)、処理はS1400に移される。そうでない場合(S1300にてNO)、この処理は終了する。S1400にて、ECU500は、フューエルカットを実行する。
【0109】
図11を参照して、アイドル時F/C許可フラグ設定サブルーチンについて説明する。
S1102にて、ECU500は、トランスミッションECU504からエンジンECU502に、F/C禁止要求信号が送信されているか否かを判別する。F/C禁止要求信号が送信されている場合(S1102にてYES)、すなわちクラッチ200が係合状態である場合、処理はS1104に移される。そうでない場合(S1102にてNO)、すなわちクラッチ200が解放状態である場合、処理はS1108に移される。
【0110】
S1104にて、ECU500は、アイドル時フューエルカットが実行中でないかどうかを判別する。アイドル時フューエルカットが実行中でない場合(S1104にてYES)、処理はS1106に移される。そうでない場合(S1104にてNO)、処理はS1108に移される。S1106にて、ECU500は、アイドル時F/C許可フラグをリセットする。
【0111】
S1108にて、ECU500は、トルク優先要求信号が、トランスミッションECU504からエンジンECU502に送信されているか否かを判別する。ここで、トルク優先要求信号とは、変速中に、たとえばエンジン100を吹き上げて、エンジン回転数と変速機300の入力軸回転数とを同期させる場合にトランスミッションECU504からエンジンECU502に送信される信号である。トルク優先要求信号が送信されている間、エンジン100は、変速機300側の要求通りにトルクアップを行なう。トルク優先要求信号が送信されている場合(S1108にてYES)、処理はS1110に移される。そうでない場合(S1108にてNO)、処理はS1118に移される。
【0112】
S1110にて、ECU500は、要求正味トルクTSを算出する。S1112にて、ECU500は、要求正味トルクTSが、予め定められたトルクTS(0)より小さいか否かを判別する。要求正味トルクTSが、TS(0)より小さい場合(S1112にてYES)、処理はS1114に移される。そうでない場合(S1112にてNO)、処理はS1106に移される。
【0113】
S1114にて、ECU500は、要求正味トルクTSを、要求図示トルクTZに変換する。S1116にて、ECU500は、要求図示トルクTZが、予め定められたトルクTZ(0)より小さいか否かを判別する。要求図示トルクTZが、TZ(0)より小さい場合(S1116にてYES)、処理はS1118に移される。そうでない場合(S1116にてNO)、処理はS1106に移される。S1118にて、ECU500は、アイドル時F/C許可フラグをセットする。
【0114】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るECU500の動作について説明する。
【0115】
車両の走行中、変速機300の変速中であれば(S1000にてYES)、アイドル時F/C許可フラグ設定サブルーチンが実行される(S1100)。アイドル時F/C許可フラグ設定サブルーチン(S1100)では、トランスミッションECU504からエンジンECU502に、F/C禁止要求信号が送信されているか否かが判別される(S1102)。クラッチ200が係合状態であって、F/C禁止要求信号が送信されており(S1102にてYES)、アイドル時フューエルカット実行中でなければ(S1104にてYES)、フューエルカットにより、トルクが急変し、ショックが発生するおそれがある。この場合、アイドル時F/C許可フラグがリセットされる(S1106)。アイドル時F/C許可フラグがリセットされると(S1106)、アイドル時F/C実行条件が成立しても(S1200にてYES)、フューエルカットが実行されない(S1300にてNO)。
【0116】
一方、F/C禁止要求信号がなく(S1102にてNO)、クラッチ200が解放状態にあれば、フューエルカットによりトルクが急変しても、ショックが発生するおそれがない状態であるといえる。
【0117】
また、F/C禁止要求信号があり(S1102にてYES)、クラッチ200が係合状態であっても、すでにフューエルカットが実行されていれば(S1104にてNO)、ショックが発生することがない状態であるといえる。
【0118】
これらの場合(S1102にてNO、1104にてNO)、トルク優先要求信号がトランスミッションECU504からエンジンECU502に送信されているか否かが判別される(S1108)。
【0119】
トルク優先要求信号がなければ(S1108にてNO)、たとえばエンジン100を吹き上げて、エンジン回転数と変速機300の入力軸回転数を同期させる必要がない状態であるといえる。この場合、アイドル時F/C許可フラグがセットされる(S1118)。アイドル時F/C許可フラグがセットされると(S1118)、アイドル時F/C実行条件が成立すれば(S1200にてYES)、フューエルカットが実行される(S1300にてYES、S1400)。
【0120】
トルク優先要求信号があれば(S1108にてYES)、たとえばエンジン100の回転数を吹き上げて、エンジン回転数と変速機300の入力軸回転数を同期させる必要がある状態であるといえる。この場合、要求正味トルクTSが算出され(S1110)、要求正味トルクTSが、予め定められたトルクTS(0)より小さいか否かが判別される(S1112)。
【0121】
要求正味トルクTSが、TS(0)以上であれば(S1112にてNO)、変速機300がフューエルカットによるトルクダウンを要求していない状態であるといえる。この場合、アイドル時F/C許可フラグがリセットされる(S1106)。アイドル時F/C許可フラグがリセットされると(S1106)、アイドル時F/C実行条件が成立しても(S1200にてYES)、フューエルカットが実行されない(S1300にてNO)。
【0122】
要求正味トルクTSが、TS(0)より小さければ(S1112にてYES)、変速機300がフューエルカットを要求している状態であるといえる。要求正味トルクTSが、要求図示トルクTZに変換され(S1114)、要求図示トルクTZが、予め定められたトルクTZ(0)よりも小さいか否かが判別される(S1116)。
【0123】
要求図示トルクTZが、TZ(0)以上であれば(S1116にてNO)、フューエルカットを実行しなくても、吸入される空気量を絞ったり、点火時期を遅角することにより変速機300が要求するトルクをエンジン100が出力可能である状態であるといえる。この場合、アイドル時F/C許可フラグがリセットされる(S1106)。アイドル時F/C許可フラグがリセットされると(S1106)、アイドル時F/C実行条件が成立しても(S1200にてYES)、フューエルカットが実行されない(S1300にてNO)。
【0124】
要求図示トルクTZが、TZ(0)より小さければ(S1116にてYES)、フューエルカットを実行しなければ、変速機300が要求するトルクをエンジン100が実行できない状態であるといえる。この場合、アイドル時F/C許可フラグがセットされる(S1118)。アイドル時F/C許可フラグがセットされると(S1118)、アイドル時F/C実行条件が成立すれば(S1200にてYES)、フューエルカットが実行される(S1300にてYES、S1400)。
【0125】
以上のように、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUは、変速中に、トランスミッションECUからエンジンECUにトルク優先信号が送信されていなければ、アイドル時F/C許可フラグをセットする。また、トルク優先信号が送信されている場合であっても、フューエルカットしなければ変速機が要求するトルクとならない場合、アイドル時F/C許可フラグをセットする。アイドル時F/C許可フラグがセットされていれば、アイドル時F/C実行条件が成立すると、フューエルカットが行なわれる。これにより、アイドル時フューエルカットを実行する領域を拡大することができ、燃費を向上することができる。
【0126】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置を搭載した車両を示す制御ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置により制御されるエンジンを示す制御ブロック図である。
【図3】クラッチを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その1)である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その2)である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その3)である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その4)である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その1)である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その2)である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その1)である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その2)である。
【符号の説明】
【0128】
100 エンジン、108 インジェクタ、144 触媒、200 クラッチ、300 変速機、500 ECU、502 エンジンECU、504 トランスミッションECU、506 メモリ、508 カウンタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関し、特に、常時噛合い式のギヤトレーンから構成される自動変速機に連結された内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関(たとえばエンジン)において、車両の減速時などに燃料の供給を停止する技術(フューエルカット)が知られている。しかしながら、フューエルカットを実行すると、空気がそのまま触媒に流れ込むため、触媒の酸化反応が急激に促進され、触媒の劣化の要因となる場合がある。したがって、フューエルカットを実行する場合には、触媒の劣化を考慮する必要がある。
【0003】
特開2004−50878号公報(特許文献1)は、触媒の劣化を抑制できる内燃機関の制御装置を開示する。特許文献1に記載の制御装置は、内燃機関の稼働中に、内燃機関に対して燃料を供給する燃料供給部と、予め定められた減速運転条件下において、燃料供給部による内燃機関への燃料供給を停止する燃料停止部と、触媒の温度が予め定められた温度を超える場合には、予め定められた減速運転条件下であっても、内燃機関への燃料供給の停止を禁止する燃料停止禁止部と、変速装置における変速比の状態を検出する変速状態検出部と、予め定められた減速運転条件下であって触媒の温度が予め定められた温度を超えることにより、燃料停止禁止部によって燃料供給の停止が禁止されたとき、燃料供給の停止が禁止されてからの経過時間が予め定められた基準時間以内の間に、変速状態検出部が最高速状態への変速比の変更を検出する場合には、燃料停止禁止部による燃料供給の停止の禁止を続行し、予め定められた基準時間以内の間に変速状態検出部が最高速状態への変速比の変更を検出しない場合には、燃料供給の停止の禁止を解除して燃料停止部による燃料供給の停止を行なう燃料供給状態制御部と含む。
【0004】
この公報に開示された内燃機関の制御装置によれば、予め定められた減速運転条件下であって、触媒温度が予め定められた温度を超える場合に、一旦は燃料供給の停止が禁止される。そして、予め定められた基準時間内に、変速装置における最高速状態への変速比の変更が検出された時には、そのまま燃料供給の停止の禁止が続行される。また、予め定められた基準時間内に、最高速状態への変速比の変更が検出されなかった時には、燃料供給の停止が行なわれる。このように一旦は燃料供給の停止を禁止してから、さらに燃料供給の停止の禁止を続行するかどうか判断することで、不必要な燃料カットを行なって触媒の劣化が進行してしまう不都合を、確実に防止することができる。
【特許文献1】特開2004−50878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、特に欧州において、常時噛合い式のギヤトレーンから構成される自動変速機を搭載した車両が販売されている。このような車両においては、自動で変速が行なわれるモードと運転者がシフトレバーなどを操作することにより変速が行なわれるモードとを選択可能なものもある。変速時にはクラッチを解放するために内燃機関の出力が低下される。このような自動変速機を搭載した車両において、フューエルカットを実行する領域を拡大して燃費をよくするため、変速時に対応させてフューエルカットを行なうことが考えられる。この場合も、フューエルカットにより触媒が劣化し得る。特に、運転者が意図的に変速を繰返す度にフューエルカットが行なわれると、それだけフューエルカットが行なわれる時間が長くなり、触媒の劣化が進行し得る。そのため、特許文献1に記載の制御装置のように、触媒温度が予め定められた温度を超えた場合にフューエルカットを禁止し、禁止されてから基準時間経過後に禁止を解除することが考えられる。
【0006】
しかしながら、このような場合のフューエルカットを禁止するには基準時間を長くする必要がある。基準時間が長くなれば、運転者の意図的な変速が行なわれない場合においても、フューエルカットの禁止時間が長くなり、燃費の観点から不利になるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、燃料供給の停止(フューエルカット)による触媒の劣化を抑制し、かつ必要以上に燃料供給の停止が禁止されることを抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る内燃機関の制御装置において、内燃機関は、常時噛合い式のギヤトレーンから構成される自動変速機に連結されている。内燃機関から排出される排気は、触媒により浄化される。制御装置は、内燃機関へ燃料を供給するための燃料供給手段と、自動変速機の変速時に対応させて、内燃機関への燃料供給を停止するように、燃料供給手段を制御するための制御手段と、触媒の温度を検出するための検出手段と、触媒の温度および変速が行なわれてからの経過時間に基づいて、制御手段による燃料供給の停止を許可するか禁止するかを判定するための判定手段とを含む。
【0009】
第1の発明によると、燃料供給手段により内燃機関に燃料が供給され、制御手段が、自動変速機の変速時に対応させて内燃機関への燃料供給を停止するように、燃料供給手段を制御する。検出手段により触媒の温度が検出され、たとえば触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、変速が行なわれてからの経過時間により、判定手段が、制御手段による燃料供給の停止を許可するか禁止するかを判定する。これにより、前回の変速が行なわれてから予め定められた判定時間が経過した後は、燃料供給の停止を許可すると判定し、経過する前は禁止すると判定することができる。そのため、判定時間が経過するまでは燃料供給の停止を禁止して触媒の温度上昇を抑制し、判定時間経過後は、燃料供給を停止することができる。このとき、判定時間を短く設定すれば、短期的な周期で変速が繰り返される場合の燃料供給の停止を禁止し、変速が繰り返されなければ、速やかに燃料供給の停止を許可することができる。また、燃料供給が停止された状態が終了してから判定時間以上経過した後は、燃料供給の停止を許可すると判定し、経過する前は禁止すると判定することができる。そのため、判定時間が経過するまでは燃料供給の停止を禁止して触媒の温度上昇を抑制し、判定時間経過後は、変速が繰返されても、変速時に対応させて燃料供給を停止することができる。その結果、燃料供給の停止による触媒の劣化を抑制し、かつ必要以上に燃料供給の停止が禁止されること抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することができる。
【0010】
第2の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第1の発明の構成に加え、判定手段は、触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、前回の変速が行なわれてから予め定められた時間が経過した後は、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、予め定められた時間が経過する前は、制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段を含む。
【0011】
第2の発明によると、触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、前回の変速が行なわれてから判定時間が経過した後は、燃料供給の停止を許可すると判定され、判定時間が経過する前は、燃料供給の停止を禁止すると判定される。判定時間を短く設定すれば、短期的な周期で変速が繰り返される場合の燃料供給の停止を禁止し、変速が繰り返されなければ、速やかに燃料供給の停止を許可することができる。これにより、燃料供給の停止が連続して行なわれ、触媒の温度上昇を抑制し、かつ必要以上に燃料供給の停止が禁止されることを抑制することができる。
【0012】
第3の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第1の発明の構成に加え、判定手段は、触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、制御手段により燃料供給が停止された状態が終了してから予め定められた判定時間以上経過した後は、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、制御手段により燃料供給が停止された状態が終了してから予め定められた時間が経過する前は、制御手段により燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段を含む。
【0013】
第3の発明によると、触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、燃料供給が停止された状態が終了してから判定時間以上経過した後は、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定される。判定時間が経過する前は、燃料供給の停止を禁止すると判定される。これにより、判定時間が経過するまでは燃料供給の停止を禁止して触媒の温度上昇を抑制し、判定時間経過後は、変速が繰返されても、変速時に対応させて燃料供給を停止することができる。
【0014】
第4の発明に係る内燃機関の制御装置は、第1〜3のいずれかの発明の構成に加え、自動変速機が内燃機関に要求する要求トルクを算出するための手段と、要求トルクに基づいて、制御手段による燃料供給を許可するか禁止するかを判定するためのトルク判定手段とをさらに含む。
【0015】
第4の発明によると、自動変速機が内燃機関に要求する要求トルクが算出される。たとえば、要求トルクが内燃機関の最低トルクよりも低い場合、燃料供給の停止を許可すると判定される。要求トルクが内燃機関の最低トルクよりも高い場合、燃料供給の停止を禁止すると判定される。これにより、内燃機関がトルク制御可能な領域内で燃料供給が行なわれ、必要以上に燃料供給が停止されて触媒が劣化することを抑制することができる。
【0016】
第5の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第4の発明の構成に加え、トルク判定手段は、要求トルクが予め定められたトルクよりも低い場合、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、要求トルクが予め定められたトルク以上の場合、制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段を含む。
【0017】
第5の発明によると、要求トルクが内燃機関の予め定められたトルクよりも低い場合、燃料供給の停止を許可すると判定される。要求トルクが内燃機関の予め定められたトルク以上の場合、燃料供給の停止を禁止すると判定される。これにより、内燃機関がトルク制御可能な領域内で燃料供給が行なわれ、必要以上に燃料供給が停止されて触媒が劣化することを抑制することができる。
【0018】
第6の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第5の発明の構成に加え、予め定められたトルクは、内燃機関が出力可能な最低トルクである。
【0019】
第6の発明によると、要求トルクが内燃機関の最低トルクよりも低い場合、燃料供給の停止を許可すると判定される。要求トルクが内燃機関の最低トルク以上の場合、燃料供給の停止を禁止すると判定される。これにより、内燃機関がトルク制御可能な領域内で燃料供給が行なわれ、必要以上に燃料供給が停止されて触媒が劣化することを抑制することができる。
【0020】
第7の発明に係る内燃機関の制御装置においては、第1〜6のいずれかの発明の構成に加え、内燃機関は、クラッチを介して自動変速機に連結されている。制御装置は、クラッチが解放状態である場合、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、クラッチが係合状態であって燃料供給が停止されている場合、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、クラッチが係合状態であって燃料が供給されている場合、制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段をさらに含む。
【0021】
第7の発明によると、クラッチが解放状態である場合、燃料供給の停止を許可すると判定される。これにより、燃料供給の停止によりトルクが減少方向に急変した場合、ショックの発生を抑制することができる。クラッチが係合状態であって燃料供給が停止されている場合、制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定される。これにより、燃料供給停止の禁止によりトルクが増加方向に急変した場合のショックの発生を抑制し、燃料供給の停止を継続することができる。クラッチが係合状態であって燃料が供給されている場合、制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定される。これにより、トルクが急変した場合にショックが発生するおそれがある状態において、燃料供給の停止を禁止して、トルクの急変によるショックの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0023】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、エンジン100で発生した駆動力が、クラッチ200、変速機300、デファレンシャルギヤ400およびドライブシャフト402を介して車輪404に伝達されることにより走行する。エンジン100、クラッチ200および変速機300は、ECU(Electronic Control Unit)500により制御される。本実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、たとえば、ECU500において実行されるプログラムにより発現される。
【0024】
エンジン100は、ガソリンエンジンである。なおガソリンエンジンの代わりにディーゼルエンジンであってもよい。クラッチ200は、エンジン100のクランクシャフト600に連結されている。クラッチ出力軸202は、スプライン310を介して変速機300の入力軸302に連結されている。
【0025】
変速機300は、常時噛合い式のギヤトレーンから構成されている。変速機300におけるギヤ段の選択は、アクチュエータ304によりシフトフォークシャフトを摺動させることにより行なわれる。アクチュエータ304は、油圧により作動するものであってもよく、電力により作動するものであってもよい。なお、ダイレクトシリンダを用いたアクチュエータによりギヤ段の選択を行なってもよい。
【0026】
ECU500は、エンジンECU502、トランスミッションECU504、メモリ506およびカウンタ508を含む。エンジンECU502は、エンジン100を制御する。トランスミッションECU504は、クラッチ200および変速機300を制御する。エンジンECU502とトランスミッションECU504とは、相互に信号を送受信する。メモリ506は、ECU500が実行するプログラムやマップなどを記憶する。カウンタ508は、変速機300の変速が行なわれてからの経過時間を計測する。
【0027】
ECU500には、ポジションセンサ510、アクセル開度センサ512、ブレーキスイッチ514、車速センサ516、入力軸回転数センサ518、出力軸回転数センサ520、およびタイミングロータ522の外周に対向して設けられたクランクポジションセンサ524から信号が送信される。
【0028】
ポジションセンサ510は、シフトレバーのシフトポジションを検出する。アクセル開度センサ512は、アクセルペダルのアクセル開度を検出する。ブレーキスイッチ514は、ブレーキペダルが踏まれたか否かを検出する。車速センサ516は、車速を検出する。入力軸回転数センサ518は、変速機300の入力軸の回転数を検出する。出力軸回転数センサ520は、変速機300の出力軸の回転数を検出する。クランクポジションセンサ524はエンジン回転数を検出する。
【0029】
ECU500は、これらのセンサから送信された信号、カウンタ508が計測した経過時間、メモリ506に記憶されたプログラムおよびマップなどに基づいて演算処理を行なう。本実施の形態において、ECU500は、運転者のシフトレバー操作に基づいて、変速(アップシフトおよびダウンシフト)を行なう。なお、シフトレバー操作の代わりに、ステアリング(図示せず)に設けられたスイッチの操作に基づいて、変速を行なってもよい。
【0030】
図2を参照して、エンジン100についてさらに説明する。エンジン100に吸入される空気は、エアクリーナ102によりろ過され、吸気管104およびインテークマニホールド106を通り、インジェクタ108から噴射された燃料とともに燃焼室内に導入される。
【0031】
燃焼室内で、空気と燃料との混合気が点火プラグ110により点火され、燃焼する。混合気が燃焼することにより、エンジン100は駆動力を発生する。燃焼後の混合気、すなわち排気ガスは、エギゾーストマニホールド112に導かれ、触媒144により浄化された後、車外に排出される。
【0032】
燃焼室内に導入される空気は、スロットルバルブ114により制御される。空気の量は、エアフローメータ526により検出され、検出結果を表す信号がECU500に送信される。スロットルバルブ114の開度は、スロットル開度センサ528により検出され、検出結果を表す信号がECU500に送信される。
【0033】
図3を参照して、クラッチ200についてさらに説明する。クラッチ200は、乾式単板式の摩擦クラッチである。図3に示すように、クラッチ200は、クラッチ出力軸202と、クラッチ出力軸202に配設されたクラッチディスク204と、クラッチハウジング206と、クラッチハウジング206に配設されたプレッシャプレート208と、ダイヤフラムスプリング210と、クラッチレリーズシリンダ212と、レリーズフォーク214と、レリーズスリーブ216とを含む。
【0034】
ダイヤフラムスプリング210が、プレッシャプレート208を図3において右方向に付勢することにより、クラッチディスク204が、エンジン100のクランクシャフト600に取り付けられたフライホイール602に押付けられ、クラッチが係合される。
【0035】
クラッチレリーズシリンダ212が、レリーズフォーク214を介して図3において右方向へ、レリーズスリーブ216を移動させることにより、ダイヤフラムスプリング210の内端部が図3において右方向へ移動する。ダイヤフラムスプリング210の内端部が図3において右方向へ移動すると、プレッシャプレート208が図3において左方向に移動し、クラッチディスク204とフライホイール602とが離れてクラッチが解放される。
【0036】
クラッチレリーズシリンダ212は、リザーバ218から油圧ポンプ220により汲み上げられた作動油の油圧が、クラッチソレノイドバルブ222を介して供給されることにより作動する。クラッチソレノイドバルブ222は、クラッチレリーズシリンダ212に対する油圧の供給および排出を切換える。クラッチソレノイドバルブ222は、ECU500により制御される。
【0037】
クラッチレリーズシリンダ212に油圧が供給されると、クラッチレリーズシリンダ212のピストンが図3において左方向に移動し、レリーズスリーブ216が図3において右方向へ移動してクラッチが解放される。クラッチレリーズシリンダ212のピストンの位置(クラッチストローク)は、クラッチストロークセンサ532により検出される。クラッチストロークセンサ532の検出結果を表す信号は、ECU500に送信される。
【0038】
ECU500は、クラッチストロークセンサ532から送信された信号に基づいて、クラッチ200が解放状態にあるか、係合状態にあるか、半係合状態にあるかを検出する。なお、クラッチ200を電力により作動するようにしてもよい。
【0039】
図4を参照して、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置においてECU500が実行するプログラムの制御構造について説明する。
【0040】
ステップ(以下、ステップをSと略す)300にて、ECU500は、変速が必要か否かを判別する。変速が必要か否かは、たとえばメモリ506に記憶された変速線図などに基づいて判別したり、運転者がシフトレバーを操作したか否かにより判別すればよい。変速が必要である場合(S300にてYES)、処理はS100に移される。そうでない場合(S300にてNO)、この処理は終了する。
【0041】
S100にて、ECU500は、変速時F/C(Fuel Cut)許可フラグ設定サブルーチンを実行する。S200にて、ECU500は、変速時F/C実行フラグ設定サブルーチンを実行する。
【0042】
S400にて、ECU500は、変速時F/C実行フラグがセットされているか否かを判別する。変速時F/C実行フラグがセットされている場合(S400にてYES)、処理はS500に移される。そうでない場合(S400にてNO)、処理はS700に移される。
【0043】
S500にて、ECU500は、変速を行なうとともに、変速時に対応させてフューエルカットを行なう。S600にて、ECU500は、変速時F/C履歴フラグをセットする。S700にて、ECU500は、フューエルカットを実行せずに変速を行なう。S800にて、ECU500は、カウンタ508により、変速が行なわれてからの経過時間のカウントを開始する。
【0044】
図5を参照して、変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンについて説明する。
S102にて、ECU500は、エンジン回転速度やエンジン負荷などに基づいて、触媒温度TCを推定する。S104にて、ECU500は、触媒温度TCが、予め定められた温度TC(0)よりも高いか否かを判別する。触媒温度TCがTC(0)よりも高い場合(S104にてYES)、処理はS106に移される。そうでない場合(S104にてNO)、処理はS114に移される。
【0045】
S106にて、ECU500は、変速時F/C履歴フラグがセットされているか否かを判別する。変速時F/C履歴フラグがセットされている場合(S106にてYES)、処理はS108に移される。そうでない場合(S106にてNO)、処理はS114に移される。
【0046】
S108にて、ECU500は、前回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行時のシフト位置と、今回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行時のシフト位置が変化(つまり変速)したか否かを判別する。変速が行なわれた場合(S108にてYES)、処理はS110に移される。そうでない場合(S108にてNO)、処理はS112に移される。S110にて、ECU500は、変速時F/C許可フラグをリセットする。
【0047】
S112にて、ECU500は、フューエルカットが実行された状態で変速が行なわれてからの経過時間が、予め定められた判定時間が経過したか否かを判別する。判定時間が経過した場合(S112にてYES)、処理はS114に移される。そうでない場合(S112にてNO)、この処理は終了する。S114にて、ECU500は、変速時F/C許可フラグをセットする。S116にて、ECU500は、変速時F/C履歴フラグをリセットする。
【0048】
図6および図7を参照して、変速時F/C実行フラグ設定サブルーチンについて説明する。
【0049】
S202にて、ECU500は、変速機300がエンジン100に対して要求する要求正味トルクTSを算出する。ここで、正味トルクとは、変速機300に実際に入力されるトルクである。要求正味トルクTSの算出方法は、一般的な周知技術を利用すればよいため、ここではさらなる詳細な説明は繰返さない。
【0050】
S204にて、ECU500は、要求正味トルクTSが、予め定められた要求正味トルクTS(0)よりも低いか否かを判別する。要求正味トルクTS(0)は、フューエルカットしないと実現できないような値(たとえば負値)に設定される。たとえばクラッチ200を解放する際に、負荷の減少によりエンジン100が吹き上がることを抑制するために、要求正味トルクTSがTS(0)よりも低くなる。要求正味トルクTSが、TS(0)よりも低い場合(S204にてYES)、フューエルカットによる瞬時のトルクダウンを変速機300が要求していると判別され、処理はS206に移される。そうでない場合(S204にてNO)、処理は図7に示すS224に移される。
【0051】
図6に戻り、S206にて、ECU500は、要求正味トルクTSを、要求図示トルクTZに変換する。図示トルクとは、エンジン100が実際に出力するトルクである。要求図示トルクTZは、要求正味トルクTSに、機械部品等のフリクショントルクやオルタネータ(図示せず)などの補機類の負荷トルクを加算して算出される。要求図示トルクTZの算出方法は、一般的な周知技術を利用すればよいため、ここではさらなる詳細な説明は繰返さない。
【0052】
S208にて、ECU500は、要求図示トルクTZが、予め定められた要求図示トルクTZ(0)よりも低いか否かを判別する。要求図示トルクTZ(0)は、吸入される空気量を減らしたり、点火時期を遅角したりすることによりエンジン100が出力可能な最低トルクに設定される。ここで出力可能な最低トルクとは、機能的な限界ではなく、失火やエンストなどの発生がなく正常に運転可能な最低トルクを意味する。要求図示トルクTZが、TZ(0)よりも低い場合(S208にてYES)、処理はS210に移される。そうでない場合(S208にてNO)、処理は図7に示すS224に移される。
【0053】
図6に戻り、S210にて、ECU500は、F/C禁止要求信号がない状態にあるかF/C禁止要求信号がある状態にあるかを判別する。F/C禁止要求信号とは、クラッチ200が係合状態にある場合に、トランスミッションECU504からエンジンECU502に送信される信号である。F/C禁止要求信号がない状態にある場合(S210にてYES)、すなわち、クラッチ200が解放状態にある場合、処理はS216に移される。そうでない場合(S210にてNO)、すなわちクラッチ200が係合状態にある場合、処理はS214に移される。
【0054】
S214にて、ECU500は、車両の減速時においてエンジン100のアイドル時に行なわれるアイドル時フューエルカットが実行中であるか否かを判別する。フューエルカットが実行中である場合(S214にてYES)、処理はS216に移される。そうでない場合(S214にてNO)、処理は図7に示すS224に移される。
【0055】
図6に戻り、S216にて、ECU500は、エンジン回転数が、アイドル時F/C復帰回転数よりも高いか否かを判別する。ここで、アイドル時F/C復帰回転数とは、アイドル時フューエルカットを実行した場合において、フューエルカットが行なわれている状態から燃料を噴射してエンジン100を駆動させる状態に復帰させる回転数である。エンジン回転数が、アイドル時F/C復帰回転数よりも高い場合(S216にてYES)、処理は図7に示すS218に移される。そうでない場合(S216にてNO)、処理はS224に移される。
【0056】
S218にて、ECU500は、変速時F/C許可フラグがセットされているか否かを判別する。変速時F/C許可フラグがセットされている場合(S218にてYES)、処理はS220に移される。そうでない場合(S218にてNO)、処理はS224に移される。
【0057】
S220にて、ECU500は、エンジン100がアイドル時であるという条件以外のアイドル時F/C実行条件が成立しているか否かを判別する。ここで、アイドル時F/C実行条件は、アイドル時フューエルカットを行なうための条件をいい、たとえば、触媒温度が高い、且つギヤ段が最高段でないという条件などを含む。アイドル時F/C実行条件は、一般的な周知技術を利用すればよいため、ここではさらなる詳細な説明は繰返さない。アイドル時F/C実行条件が成立している場合(S220にてYES)、処理はS222に移される。そうでない場合(S220にてNO)、処理はS224に移される。S222にて、ECU500は、変速時F/C実行フラグをセットする。S224にて、ECU500は、変速時F/C実行フラグをリセットする。
【0058】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECU500の動作について説明する。なお、以下の説明では、現在のギヤ段に変速する際(前回の変速時)に対応してフューエルカットが実行され(S500)、変速時F/C履歴フラグがセットされている(S600)状態であると想定する。
【0059】
変速時に対応してフューエルカットが実行されて(S500)、変速時F/C履歴フラグがセットされ(S600)、変速が行なわれてからの経過時間のカウントが開始されると(S800)、再び変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンが実行される(S100)。
【0060】
変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンでは、触媒温度TCが検出され(S102)、触媒温度TCが、予め定められた温度TC(0)よりも高いか否かが判別される(S104)。
【0061】
触媒温度TCが、予め定められた温度TC(0)以下であれば(S104にてNO)、フューエルカットにより触媒温度が上昇しても問題がない状態であるといえる。この場合、変速時F/C許可フラグがセットされ(S114)、変速時の連続フューエルカットが許可される。この場合、変速時F/C履歴フラグがリセットされる(S116)。
【0062】
一方、触媒温度TCが、予め定められた温度TC(0)よりも高ければ(S104にてYES)、フューエルカットによる触媒温度の上昇を抑制する必要がある。この場合、変速時F/C履歴フラグがセットされているか否かが判別され(S106)、前回の変速時にフューエルカットが行なわれた否かが判別される。
【0063】
現時点では、前回の変速時に対応してフューエルカットが実行され(S500)、変速時F/C履歴フラグがセットされた状態(S600、S106にてYES)であるため、変速時に連続してフューエルカットを実行することを禁止する必要がある。
【0064】
この変速(S500)が、前回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行した後に行なわれたものであれば(S108にてYES)、変速時F/C許可フラグがリセットされる(S110)。すなわち、フューエルカットが実行された状態で変速(S500)が行なわれると、その直後に実行される変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンにおいて、必ず変速時F/C許可フラグがリセットされる(S110)。
【0065】
変速時F/C許可フラグがリセットされた後は(S110)、変速が行なわれない状態(S300にてNO、S108にてNO)が続く限り、変速が行なわれてからの経過時間が、判定時間を経過したか否かが判別される(S112)。
【0066】
前回の変速(S500)が行なわれてからの経過時間が、判定時間を経過すると(S112にてYES)、フューエルカットを実行しても触媒温度TCが異常上昇せず、問題がない状態であるといえる。この場合、変速時F/C許可フラグがセットされ(S114)、変速時の連続フューエルカットが許可されて、変速時F/C履歴フラグがリセットされる(S116)。
【0067】
前回の変速(S500)が行なわれてからの経過時間が、判定時間を経過していなければ(S112にてNO)、変速時F/C許可フラグがリセットされた状態(S110)が維持される。そのため、判定時間を経過するまでの間に、たとえば運転者がシフトレバーを操作することにより、変速が繰返される限り(S300にてYES、S700)、変速時F/C許可フラグがリセットされた状態(S110)が継続する。この判定時間は、変速が行なわれてからの経過時間と比較されるため、判定時間を短く設定することにより、短期的な周期で変速が繰返される場合のフューエルカットを禁止することができる。そのため、通常の周期での変速繰り返しの場合は、速やかにフューエルカットを許可し、燃費を向上することができる。
【0068】
変速時F/C許可フラグ設定サブルーチン(S100)の終了後、変速時F/C実行フラグ設定サブルーチンが実行される(S200)。変速時F/C実行フラグ設定サブルーチン(S200)では、要求正味トルクTSが算出され(S202)、要求正味トルクTSが、予め定められた要求正味トルクTS(0)よりも低いか否かが判別される(S204)。
【0069】
要求正味トルクTSが、TS(0)以上であれば(S204にてNO)、フューエルカットによる瞬時のトルクダウンを変速機300が要求していない状態であるといえる。この場合は、変速時F/C実行フラグがリセットされ(S224)、変速が必要な場合であっても(S300にてYES)、フューエルカットが実行されずに変速が行なわれる(S400にてNO、S700)。フューエルカットが実行されずに変速が行なわれると(S700)、変速が行なわれてからの経過時間がカウントされる(S800)。
【0070】
一方、要求正味トルクTSが、TS(0)よりも低い場合(S204にてYES)、フューエルカットによる瞬時のトルクダウンを変速機300が要求している状態であるといえる。この場合、要求正味トルクTSが要求図示トルクTZに変換され(S206)、要求図示トルクTZが、予め定められた要求図示トルクTZ(0)よりも低いか否かが判別される(S208)。これにより、吸入される空気量を減らしたり、点火時期を遅角したりすることにより、フューエルカットを実行せずに、変速機300が要求するトルクをエンジン100が出力可能か否かが判別される。
【0071】
要求図示トルクTZがTZ(0)以上の場合(S208にてNO)、すなわち、フューエルカットを実行せずに、変速機300が要求するトルクをエンジン100が出力可能である場合、変速時F/C実行フラグがリセットされる(S224)。したがって、変速が必要な場合であっても(S300にてYES)、フューエルカットが実行されずに変速が行なわれる(S400にてNO、S700)。これにより、エンジン100のトルクを制御可能な領域においてフューエルカットが実行されることを抑制することができる。フューエルカットが実行されずに変速が行なわれると(S700)、変速が行なわれてからの経過時間がカウントされる(S800)。
【0072】
要求図示トルクTZが、TZ(0)よりも低い場合(S208にてYES)、すなわち、フューエルカットを実行しなければ、変速機300の要求を満たすことができない場合、F/C禁止要求信号の有無が判別される(S210)。
【0073】
クラッチ200が係合状態にあり、トランスミッションECU504からエンジンECU502にF/C禁止要求信号が送信されていれば(S210にてNO)、現在、アイドル時フューエルカットが実行中であるか否かが判別される(S214)。
【0074】
アイドル時フューエルカットが実行中でなければ(S214にてNO)、クラッチ200が係合状態である場合において(S210にてNO)、変速時にフューエルカットを実行すると、急なトルクダウンによるショックが発生するおそれがあるといえる。この場合、変速時F/C実行フラグがリセットされ(S224)、変速が必要な場合であっても(S300にてYES)、フューエルカットが実行されずに変速が行なわれる(S400にてNO、S700)。これにより、フューエルカットによりショックが発生し、ドライバビリティが悪化することを抑制することができる。フューエルカットが実行されずに変速が行なわれると(S700)、変速が行なわれてからの経過時間がカウントされる(S800)。
【0075】
クラッチ200が解放状態にあり、トランスミッションECU504からエンジンECU502にF/C禁止要求信号が送信されていなければ(S210にてYES)、フューエルカットを実行してもショックが発生しない状態であるといえる。
【0076】
また、クラッチ200が係合状態であっても(S210にてNO)、アイドル時フューエルカットが実行中であれば(S214にてYES)、変速時にフューエルカットを実行(継続)しても、ショックが発生しない状態であるといえる。
【0077】
これらの場合(S210にてYES、S214にてYES)、エンジン回転数が、アイドル時F/C復帰回転数よりも高いか否かが判別される(S216)。
【0078】
エンジン回転数が、アイドル時F/C復帰回転数以下の状態では(S216にてNO)、変速時にフューエルカットを実行すると、エンストが生じるおそれがある。この場合、変速時F/C実行フラグがリセットされ(S224)、変速が必要な場合であっても(S300にてYES)、フューエルカットが実行されずに変速が行なわれる(S400にてNO、S700)。これにより、フューエルカットによるエンストを抑制することができる。フューエルカットが実行されずに変速が行なわれると(S700)、変速が行なわれてからの経過時間がカウントされる(S800)。
【0079】
エンジン回転数が、アイドル時F/C復帰回転数よりも高ければ(S216にてYES)、変速時にフューエルカットを実行しても、エンストが生じるおそれがないといえる。この場合、変速時F/C許可フラグがセットされているか否かが判別される(S218)。
【0080】
変速時F/C許可フラグがセットされていなければ(S218にてNO)、変速時のフューエルカットを短期間な周期で連続して行なうことが禁止されている状態である。この場合、変速時F/C実行フラグがリセットされ(S224)、フューエルカットしてもエンストを伴なわずに変速が可能な場合であっても、フューエルカットが実行されずに変速が行なわれる(S400にてNO、S700)。これにより、変速時の連続フューエルカットが禁止されて触媒の温度上昇が抑制され、触媒の劣化が抑制される。フューエルカットが実行されずに変速が行なわれると(S700)、変速が行なわれてからの経過時間がカウントされる(S800)。
【0081】
変速時F/C許可フラグがセットされていれば(S218にてYES)、変速時にフューエルカットを行なっても、触媒144の劣化に対して問題がない状態であるといえる。この場合、エンジン100がアイドル時であるという条件以外のアイドル時F/C実行条件が成立しているか否かが判別される(S220)。
【0082】
アイドル時F/C実行条件が成立していなければ(S220にてNO)、変速時F/C実行フラグがリセットされ(S224)、フューエルカットしても触媒144の劣化に対して問題なく変速が可能な場合であっても、フューエルカットが実行されずに変速が行なわれる(S700)。
【0083】
アイドル時F/C実行条件が成立していれば(S220にてYES)、変速時F/C実行フラグがセットされ(S222)、変速が必要な場合は(S300にてYES)、フューエルカットが実行されて変速が行なわれる(S500)。フューエルカットを実行した状態で変速が行なわれると(S500)、変速時F/C履歴フラグがセットされ(S600)、変速してからの経過時間のカウントが開始される(S800)。
【0084】
以上のように、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUは、変速時に対応してフューエルカットを実行した場合、変速時F/C許可フラグをリセットする。変速が行なわれてからの経過時間が予め定められた判定時間を経過する前に、次の変速が行なわれると、変速時F/C許可フラグはリセットした状態に維持される。変速時F/C許可フラグがリセットされた状態では、次の変速が行なわれる場合に、フューエルカットが実行されない。これにより、短期的な周期で変速が繰返される場合において、フューエルカットが連続して実行されることを抑制することができる。そのため、触媒温度の上昇を抑制することができる。その結果、フューエルカットにより触媒が劣化することを抑制することができる。
【0085】
また、経過時間を変速が行なわれてからカウントするため、判定時間を短く設定することにより、短期的な周期で変速が繰返される場合のフューエルカットを抑制し、変速が繰返されない場合は速やかにフューエルカットを許可して燃費を向上することができる。
【0086】
<第2の実施の形態>
図8および図9を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。前述の第1の実施の形態においては、変速を繰返す限り変速時F/C許可フラグをリセットするが、本実施の形態においては、判定時間を経過した後は、変速しても変速時F/C許可フラグがセットされる。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。それ
らについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0087】
図8を参照して、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECU500が実行するプログラムの制御走行について説明する。
【0088】
図8に示すように、本実施の形態においては、前述の第1の実施の形態における変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンに代えて、変速時F/C許可フラグ設定サブルーチン(S900)を実行する。変速時F/C実行フラグ設定サブルーチンについては、前述の第1の実施の形態と同じである。その他、前述の第1の実施の形態の同じステップについては、同一のステップ番号を付してある。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0089】
図8に示すように、S802にて、ECU500は、カウンタ508により、フューエルカットを実行した状態で変速が行なわれてからの経過時間を計測する。
【0090】
図9を参照して、変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンについて説明する。
S902にて、触媒温度TCを検出する。S904にて、ECU500は、触媒温度TCが、予め定められた温度TC(0)より高いか否かを判別する。触媒温度TCが、TC(0)よりも高い場合(S904にてYES)、処理はS906に移される。そうでない場合(S904にてNO)、処理はS920に移される。
【0091】
S906にて、ECU500は、変速時F/C実行フラグがリセットされた状態にあるか否かを判別する。変速時F/C実行フラグがリセットされた状態にある場合(S906にてYES)、処理はS908に移される。そうでない場合(S906にてNO)、この処理は終了する。
【0092】
S908にて、ECU500は、前回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行した際、変速時F/C実行フラグがセットされていたか否かを判別する。変速時F/C実行フラグがセットされていた場合(S908にてYES)、処理はS910に移される。そうでない場合(S908にてNO)、処理はS912に移される。
【0093】
S910にて、ECU500は、カウンタ508のカウントをリセットする。S912にて、ECU500は、カウンタ508にカウントに基づいて、F/C禁止時間TPを算出する。
【0094】
S914にて、ECU500は、F/C禁止時間TPが、予め定められた時間TP(0)よりも短いか否かを判別する。F/C禁止時間TPが、予め定められた時間TP(0)よりも短い場合(S914にてYES)、処理はS918に移される。そうでない場合(S914にてNO)、処理はS920に移される。
【0095】
S918にて、ECU500は、変速時F/C許可フラグをリセットする。S920にて、ECU500は、変速時F/C許可フラグをセットする。
【0096】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置における、ECU500の動作について説明する。
【0097】
車両の走行中、触媒温度TCが検出される(S902)。触媒温度TCがTC(0)以下であれば(S904にてNO)、フューエルカットを実行して触媒温度が上昇しても
、触媒144の劣化に対しては問題がない状態であるといえる。この場合、変速時F/C許可フラグがセットされ(S920)、変速時のフューエルカットが許可される。
【0098】
一方、触媒温度TCが、TC(0)より高ければ(S904にてYES)、触媒144が劣化するおそれがあるため、フューエルカットを抑制する必要があるといえる。この場合、変速時F/C実行フラグがリセットされていれば(S906にてYES)、前回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行した際、変速時F/C実行フラグがセットされていたか否かが判別される(S908)。
【0099】
前回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行した際、変速時F/C実行フラグがセットされていれば(S908にてYES)、変速時F/C実行フラグがセットされた状態からリセットされた状態に変わった状態といえる。この場合、カウンタ508のカウントをリセットする(S910)。
【0100】
一方、前回変速時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行した際、変速時F/C実行フラグがリセットされていれば(S908にてNO)、カウンタ508のカウントが継続される。このカウンタ508のカウントに基づいて、F/C禁止時間TPが算出される(S912)。
【0101】
F/C禁止時間TPが、TP(0)よりも短い場合には(S914にてYES)、変速時F/C許可フラグがリセットされる(S918)。これにより、前回フューエルカットが実行された状態で変速が行なわれてから予め定められた時間TP(0)以内に変速時F/Cが要求された場合に、フューエルカットが禁止される。
【0102】
F/C禁止時間TPが、TP(0)以上になれば(S914にてNO)、変速時F/C許可フラグがセットされる(S920)。これにより、フューエルカットが実行された状態で変速が行なわれてから、同一のギヤ段が維持され予め定められた時間TP(0)以上経過した場合は、その後の変速時に対応させたフューエルカットが許可される。そのため、燃費を向上することができる。
【0103】
以上のように、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUは、フューエルカットが実行された状態で変速F/Cが行なわれてから、変速後のギヤ段が維持され、予め定められた時間TP(0)が経過した場合、変速時F/C許可フラグをセットする。これにより、予め定められた時間TP(0)の経過後は、運転者により意図的に変速が繰返された場合であっても、フューエルカットを行ない、燃費を向上することができる。
【0104】
<第3の実施の形態>
図10および図11を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。前述の第1の実施の形態においては、変速時にフューエルカットを実行していたが、本実施の形態においては、変速時フューエルカットに加え、変速時にアイドル状態となれば、アイドル時フューエルカットを実行する。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0105】
図10を参照して、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECU500が実行するプログラムの制御構造について説明する。
【0106】
S1000にて、ECU500は、変速機300の変速中であるか否かを判別する。変速中である場合(S1000にてYES)、処理はS1100に移される。そうでない場合(S1000にてNO)、この処理は終了する。
【0107】
S1100にて、ECU500は、アイドル時F/C許可フラグ設定サブルーチンを実行する。S1200にて、ECU500は、アイドル時F/C実行条件が成立しているか否かを判別する。アイドル時F/C実行条件が成立している場合(S1200にてYES)、処理はS1300に移される。そうでない場合(S1200にてNO)、この処理は終了する。
【0108】
S1300にて、ECU500は、アイドル時F/C許可フラグがセットされているか否かを判別する。アイドル時F/C許可フラグがセットされている場合(S1300にてYES)、処理はS1400に移される。そうでない場合(S1300にてNO)、この処理は終了する。S1400にて、ECU500は、フューエルカットを実行する。
【0109】
図11を参照して、アイドル時F/C許可フラグ設定サブルーチンについて説明する。
S1102にて、ECU500は、トランスミッションECU504からエンジンECU502に、F/C禁止要求信号が送信されているか否かを判別する。F/C禁止要求信号が送信されている場合(S1102にてYES)、すなわちクラッチ200が係合状態である場合、処理はS1104に移される。そうでない場合(S1102にてNO)、すなわちクラッチ200が解放状態である場合、処理はS1108に移される。
【0110】
S1104にて、ECU500は、アイドル時フューエルカットが実行中でないかどうかを判別する。アイドル時フューエルカットが実行中でない場合(S1104にてYES)、処理はS1106に移される。そうでない場合(S1104にてNO)、処理はS1108に移される。S1106にて、ECU500は、アイドル時F/C許可フラグをリセットする。
【0111】
S1108にて、ECU500は、トルク優先要求信号が、トランスミッションECU504からエンジンECU502に送信されているか否かを判別する。ここで、トルク優先要求信号とは、変速中に、たとえばエンジン100を吹き上げて、エンジン回転数と変速機300の入力軸回転数とを同期させる場合にトランスミッションECU504からエンジンECU502に送信される信号である。トルク優先要求信号が送信されている間、エンジン100は、変速機300側の要求通りにトルクアップを行なう。トルク優先要求信号が送信されている場合(S1108にてYES)、処理はS1110に移される。そうでない場合(S1108にてNO)、処理はS1118に移される。
【0112】
S1110にて、ECU500は、要求正味トルクTSを算出する。S1112にて、ECU500は、要求正味トルクTSが、予め定められたトルクTS(0)より小さいか否かを判別する。要求正味トルクTSが、TS(0)より小さい場合(S1112にてYES)、処理はS1114に移される。そうでない場合(S1112にてNO)、処理はS1106に移される。
【0113】
S1114にて、ECU500は、要求正味トルクTSを、要求図示トルクTZに変換する。S1116にて、ECU500は、要求図示トルクTZが、予め定められたトルクTZ(0)より小さいか否かを判別する。要求図示トルクTZが、TZ(0)より小さい場合(S1116にてYES)、処理はS1118に移される。そうでない場合(S1116にてNO)、処理はS1106に移される。S1118にて、ECU500は、アイドル時F/C許可フラグをセットする。
【0114】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るECU500の動作について説明する。
【0115】
車両の走行中、変速機300の変速中であれば(S1000にてYES)、アイドル時F/C許可フラグ設定サブルーチンが実行される(S1100)。アイドル時F/C許可フラグ設定サブルーチン(S1100)では、トランスミッションECU504からエンジンECU502に、F/C禁止要求信号が送信されているか否かが判別される(S1102)。クラッチ200が係合状態であって、F/C禁止要求信号が送信されており(S1102にてYES)、アイドル時フューエルカット実行中でなければ(S1104にてYES)、フューエルカットにより、トルクが急変し、ショックが発生するおそれがある。この場合、アイドル時F/C許可フラグがリセットされる(S1106)。アイドル時F/C許可フラグがリセットされると(S1106)、アイドル時F/C実行条件が成立しても(S1200にてYES)、フューエルカットが実行されない(S1300にてNO)。
【0116】
一方、F/C禁止要求信号がなく(S1102にてNO)、クラッチ200が解放状態にあれば、フューエルカットによりトルクが急変しても、ショックが発生するおそれがない状態であるといえる。
【0117】
また、F/C禁止要求信号があり(S1102にてYES)、クラッチ200が係合状態であっても、すでにフューエルカットが実行されていれば(S1104にてNO)、ショックが発生することがない状態であるといえる。
【0118】
これらの場合(S1102にてNO、1104にてNO)、トルク優先要求信号がトランスミッションECU504からエンジンECU502に送信されているか否かが判別される(S1108)。
【0119】
トルク優先要求信号がなければ(S1108にてNO)、たとえばエンジン100を吹き上げて、エンジン回転数と変速機300の入力軸回転数を同期させる必要がない状態であるといえる。この場合、アイドル時F/C許可フラグがセットされる(S1118)。アイドル時F/C許可フラグがセットされると(S1118)、アイドル時F/C実行条件が成立すれば(S1200にてYES)、フューエルカットが実行される(S1300にてYES、S1400)。
【0120】
トルク優先要求信号があれば(S1108にてYES)、たとえばエンジン100の回転数を吹き上げて、エンジン回転数と変速機300の入力軸回転数を同期させる必要がある状態であるといえる。この場合、要求正味トルクTSが算出され(S1110)、要求正味トルクTSが、予め定められたトルクTS(0)より小さいか否かが判別される(S1112)。
【0121】
要求正味トルクTSが、TS(0)以上であれば(S1112にてNO)、変速機300がフューエルカットによるトルクダウンを要求していない状態であるといえる。この場合、アイドル時F/C許可フラグがリセットされる(S1106)。アイドル時F/C許可フラグがリセットされると(S1106)、アイドル時F/C実行条件が成立しても(S1200にてYES)、フューエルカットが実行されない(S1300にてNO)。
【0122】
要求正味トルクTSが、TS(0)より小さければ(S1112にてYES)、変速機300がフューエルカットを要求している状態であるといえる。要求正味トルクTSが、要求図示トルクTZに変換され(S1114)、要求図示トルクTZが、予め定められたトルクTZ(0)よりも小さいか否かが判別される(S1116)。
【0123】
要求図示トルクTZが、TZ(0)以上であれば(S1116にてNO)、フューエルカットを実行しなくても、吸入される空気量を絞ったり、点火時期を遅角することにより変速機300が要求するトルクをエンジン100が出力可能である状態であるといえる。この場合、アイドル時F/C許可フラグがリセットされる(S1106)。アイドル時F/C許可フラグがリセットされると(S1106)、アイドル時F/C実行条件が成立しても(S1200にてYES)、フューエルカットが実行されない(S1300にてNO)。
【0124】
要求図示トルクTZが、TZ(0)より小さければ(S1116にてYES)、フューエルカットを実行しなければ、変速機300が要求するトルクをエンジン100が実行できない状態であるといえる。この場合、アイドル時F/C許可フラグがセットされる(S1118)。アイドル時F/C許可フラグがセットされると(S1118)、アイドル時F/C実行条件が成立すれば(S1200にてYES)、フューエルカットが実行される(S1300にてYES、S1400)。
【0125】
以上のように、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUは、変速中に、トランスミッションECUからエンジンECUにトルク優先信号が送信されていなければ、アイドル時F/C許可フラグをセットする。また、トルク優先信号が送信されている場合であっても、フューエルカットしなければ変速機が要求するトルクとならない場合、アイドル時F/C許可フラグをセットする。アイドル時F/C許可フラグがセットされていれば、アイドル時F/C実行条件が成立すると、フューエルカットが行なわれる。これにより、アイドル時フューエルカットを実行する領域を拡大することができ、燃費を向上することができる。
【0126】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置を搭載した車両を示す制御ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置により制御されるエンジンを示す制御ブロック図である。
【図3】クラッチを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その1)である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その2)である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その3)である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その4)である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その1)である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その2)である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その1)である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る内燃機関の制御装置のECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その2)である。
【符号の説明】
【0128】
100 エンジン、108 インジェクタ、144 触媒、200 クラッチ、300 変速機、500 ECU、502 エンジンECU、504 トランスミッションECU、506 メモリ、508 カウンタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の制御装置であって、前記内燃機関は、常時噛合い式のギヤトレーンから構成される自動変速機に連結され、前記内燃機関から排出される排気は、触媒により浄化され、
前記内燃機関へ燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記自動変速機の変速時に対応させて、前記内燃機関への燃料供給を停止するように、前記燃料供給手段を制御するための制御手段と、
前記触媒の温度を検出するための検出手段と、
前記触媒の温度および変速が行なわれてからの経過時間に基づいて、前記制御手段による燃料供給の停止を許可するか禁止するかを判定するための判定手段とを含む、内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、前回の変速が行なわれてから予め定められた判定時間が経過した後は、前記制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、前記判定時間が経過する前は、前記制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、前記制御手段により燃料供給が停止された状態が終了してから予め定められた判定時間以上経過した後は、前記制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、前記制御手段により燃料供給が停止された状態が終了してから前記判定時間が経過する前は、前記制御手段により燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記自動変速機が前記内燃機関に要求する要求トルクを算出するための手段と、
前記要求トルクに基づいて、前記制御手段による燃料供給を許可するか禁止するかを判定するためのトルク判定手段とをさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記トルク判定手段は、前記要求トルクが予め定められたトルクよりも低い場合、前記制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、前記要求トルクが予め定められたトルク以上の場合、前記制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段を含む、請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記予め定められたトルクは、前記内燃機関が出力可能な最低トルクである、請求項5に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記内燃機関は、クラッチを介して前記自動変速機に連結され、
前記制御装置は、前記クラッチが解放状態である場合、前記制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、前記クラッチが係合状態であって燃料供給が停止されている場合、前記制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、前記クラッチが係合状態であって燃料が供給されている場合、前記制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項1】
内燃機関の制御装置であって、前記内燃機関は、常時噛合い式のギヤトレーンから構成される自動変速機に連結され、前記内燃機関から排出される排気は、触媒により浄化され、
前記内燃機関へ燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記自動変速機の変速時に対応させて、前記内燃機関への燃料供給を停止するように、前記燃料供給手段を制御するための制御手段と、
前記触媒の温度を検出するための検出手段と、
前記触媒の温度および変速が行なわれてからの経過時間に基づいて、前記制御手段による燃料供給の停止を許可するか禁止するかを判定するための判定手段とを含む、内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、前回の変速が行なわれてから予め定められた判定時間が経過した後は、前記制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、前記判定時間が経過する前は、前記制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記触媒の温度が予め定められた温度よりも高い場合、前記制御手段により燃料供給が停止された状態が終了してから予め定められた判定時間以上経過した後は、前記制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、前記制御手段により燃料供給が停止された状態が終了してから前記判定時間が経過する前は、前記制御手段により燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記自動変速機が前記内燃機関に要求する要求トルクを算出するための手段と、
前記要求トルクに基づいて、前記制御手段による燃料供給を許可するか禁止するかを判定するためのトルク判定手段とをさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記トルク判定手段は、前記要求トルクが予め定められたトルクよりも低い場合、前記制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、前記要求トルクが予め定められたトルク以上の場合、前記制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段を含む、請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記予め定められたトルクは、前記内燃機関が出力可能な最低トルクである、請求項5に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記内燃機関は、クラッチを介して前記自動変速機に連結され、
前記制御装置は、前記クラッチが解放状態である場合、前記制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、前記クラッチが係合状態であって燃料供給が停止されている場合、前記制御手段による燃料供給の停止を許可すると判定し、前記クラッチが係合状態であって燃料が供給されている場合、前記制御手段による燃料供給の停止を禁止すると判定するための手段をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−57628(P2006−57628A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206917(P2005−206917)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
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