説明

内燃機関の制御装置

【課題】内燃機関の制御装置において、運転者が意図的に選択して緩加速を行うことができるようにし、また、緩加速制御を行っている間においてアクセルペダル等の操作量の正確さに神経質を使う必要をなくして運転者への負担を軽減し、さらに、道路事情に合わせて選択させて利便性を高くし、しかも、廉価とすることにある。
【解決手段】車両(1)には、車両加速中の加速度が所定の緩やかな加速度となる緩加速制御の作動と禁止を任意に選択する緩加速制御作動選択手段(18)を設ける。制御手段(14)は、車速が停車とみなせる速度且つ緩加速制御の作動が緩加速制御作動選択手段(18)で選択されている場合であって、ブレーキペダル(9)の操作がなくてアクセルペダル(8)の操作がある場合に、スロットルバルブ(10)の開度が速度制限用開度に一致するように電子スロットル装置(11)を作動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の制御装置に係り、特にブレーキペダルとアクセルペダルとの踏み間違いにより生じる急発進を抑制する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された内燃機関の制御装置としては、人為操作されるアクセルペダル及びブレーキペダルを設け、アクセルペダルの操作量を検出するアクセル操作量検出手段を設け、ブレーキペダルの操作の有無を検出するブレーキ操作検出手段を設け、車両の速度を検出する車速検出手段を設け、アクセルペダルの操作又は予め設定した開度の設定に基づいてスロットルバルブの開度を自動変更する電子スロットル装置を設け、そして、必要な場合に電子スロットル装置を作動して内燃機関のトルク制限を行う制御手段を設けたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−23769号公報
【特許文献2】特開2010−59820号公報
【特許文献3】特開2006−123711号公報
【0004】
特許文献1に係る自動車制御システムは、自動車の初動状態における発進設定方向とその発進設定方向に存在する障害物とを特定し、その初動状態において、運転者が示す誤発進前兆挙動を検出し、その誤発進前兆挙動が検出された場合に、誤発進予防出力を行うものである。
特許文献2に係る駆動力制御装置は、シフト位置が所定のシフト位置であることが検出された場合に、アクセルペダルの踏み込みによるアクセル操作を無効にするものである。
特許文献3に係る車両の安全制御装置は、車両の衝突可能性が有ると判定した場合に、加速要求を運転者による制動要求とみなして車両を制動させるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の内燃機関の制御装置では、運転者が意図的に選択して緩加速を行うことができず、また、緩加速制御を行っている間においてアクセルペダル等の操作量の正確さに神経質を使う必要があり、運転者への負担が大きくなり、さらに、道路事情に合わせて選択できず、利便性が低いという不都合があった。。
また、上記の特許文献1、特許文献2では、超音波センサやレーザセンサを使用して衝突物を検出した上で、アクセルペダルとブレーキペダルとの踏み間違いによる誤発進を検出し、エンジン出力を低減する手法をとっており、また、特許文献3では、超音波センサを用いて衝突可能性判定が成立した場合に制動を掛けるシステムとなっているので、高価なセンサを使用することにより、コストアップが発生するという不都合があった。
【0006】
そこで、この発明は、運転者が意図的に選択して緩加速を行うことができるようにし、また、緩加速制御を行っている間においてアクセルペダル等の操作量の正確さに神経質を使う必要をなくして運転者への負担を軽減し、さらに、道路事情に合わせて選択させて利便性を高くし、しかも、廉価とすることができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、人為操作されるアクセルペダル及びブレーキペダルを設け、前記アクセルペダルの操作量を検出するアクセル操作量検出手段を設け、前記ブレーキペダルの操作の有無を検出するブレーキ操作検出手段を設け、車両の速度を検出する車速検出手段を設け、前記アクセルペダルの操作又は予め設定した開度の設定に基づいてスロットルバルブの開度を自動変更する電子スロットル装置を設け、必要な場合に前記電子スロットル装置を作動して内燃機関のトルク制限を行う制御手段を設けた内燃機関の制御装置において、車両加速中の加速度が所定の緩やかな加速度となる緩加速制御の作動と禁止を任意に選択する緩加速制御作動選択手段を設け、前記制御手段は、車速が停車とみなせる速度且つ緩加速制御の作動が前記緩加速制御作動選択手段で選択されている場合であって、前記ブレーキペダルの操作がなくて前記アクセルペダルの操作がある場合に、前記スロットルバルブの開度が速度制限用開度に一致するように前記電子スロットル装置を作動制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の内燃機関の制御装置は、運転者が意図的に選択して緩加速を行うことができるようにし、また、緩加速制御を行っている間においてアクセルペダル等の操作量の正確さに神経質を使う必要をなくして運転者への負担を軽減し、さらに、道路事情に合わせて選択させて利便性を高くし、しかも、廉価とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は内燃機関の制御装置のシステム構成図である。(実施例)
【図2】図2は車両の概略構成図である。(実施例)
【図3】図3は内燃機関の制御のフローチャートである。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、運転者が意図的に選択して緩加速を行うことができるようにし、また、緩加速制御を行っている間においてアクセルペダル等の操作量の正確さに神経質を使う必要をなくして運転者への負担を軽減し、さらに、道路事情に合わせて選択させて利便性を高くし、しかも、廉価とする目的を、車速が停車とみなせる速度且つ緩加速制御の作動が選択されている場合であって、ブレーキペダルの操作がなくてアクセルペダルの操作がある場合に、スロットルバルブの開度が速度制限用開度に一致するように電子スロットル装置を作動制御して実現するものである。
【実施例】
【0011】
図1〜図3は、この発明の実施例を示すものである。
図1、図2において、1は車両、2はこの車両1に搭載されたパワーユニット、3は内燃機関、4はこの内燃機関3に連結した変速機、5は車両1の制動(ブレーキ)装置、6は車両1の表示装置(メータ)である。
車両1には、人為操作されるステアリングホイール7と、人為操作されるアクセルペダル8及びブレーキペダル9とが設けられている。
内燃機関3は、アクセルペダル8の操作又は予め設定した開度の設定に基づいてスロットルバルブ10の開度を自動変更する電子スロットル装置11を備えている。この電子スロットル装置11は、内燃機関3の運転状態等の条件に応じて目標のスロットル開度を算出し、スロットルバルブ10の開度を制御する。
制動装置5は、ブレーキ液圧状態を制御するブレーキ液圧制御ユニット12を備えている。
【0012】
車両1には、図1に示すように、内燃機関3の制御装置13が設けられる。
この制御装置13において、表示装置6と電子制御スロットル装置11とブレーキ液圧制御ユニッ12トとは、制御手段(ECU)14に連絡し、この制御手段14によって制御される。
また、この制御手段14には、アクセルペダル8の操作量(アクセル開度)を検出するアクセル操作量検出手段であるアクセル操作量センサ15と、ブレーキペダル8の操作の有無を検出するブレーキ操作検出手段であるブレーキスイッチ16と、車両1の速度を検出する車速検出手段である車速センサ17と、車両加速中の加速度が所定の緩やかな加速度となる緩加速制御の作動と禁止を任意に選択する緩加速制御作動選択手段である緩加速制御作動選択スイッチ(以下「作動選択スイッチ」という)18と、変速機4のニュートラル(中立)状態を検知するニュートラルスイッチ19と、車両1のリバース(後退)時にオンするリバースランプ20とが連絡している。
制御手段14は、表示装置6と電子制御スロットル装置11とに連絡する速度制限処理手段14Aと、ブレーキ液圧制御ユニット12に連絡する制動判定処理手段14Bとを備え、そして、必要な場合に、電子スロットル装置11を作動し、スロットルバルブ10の開度を制限して内燃機関3のトルク制限を行うものである。
【0013】
制御手段14は、車速が停車とみなせる速度且つ緩加速制御の作動が作動選択スイッチ18で選択されている場合であって、ブレーキペダル9の操作がなくてアクセルペダル8の操作がある場合に、速度制限処理として、スロットルバルブ10の開度が速度制限用開度に一致するように電子スロットル装置11を作動制御する。
これにより、運転者が意図的に選択して緩加速を行うことができる。また、緩加速制御を行っている間は、運転者が意図的に操作することが必要であるが、その操作量の正確さに神経質を使う必要がなく、運転負担を軽減することができる。更に、急加速が必要な場合だけ作動選択スイッチ18により動作したり、一時的にキャンセルしたりできるため、道路事情に合わせて選択でき、利便性を高くできる。
【0014】
また、制御手段14は、電子スロットル装置11の作動によるスロットルバルブ10の開度を速度制限用開度に一致する制御中、車速が所定の走行速度に達した場合、運転者が任意にブレーキペダル9の操作を行った場合、作動選択スイッチ18の選択切替操作により緩加速制御作動が禁止された場合のいずれかの場合が成立した際に、速度制限用開度に一致する制御を中止し、通常のアクセルペダル8の操作に基づくようにスロットルバルブ10の開度を制御する。
さらに、制御手段14は、電子スロットル装置11の作動によるスロットルバルブ10の開度を速度制限用開度に一致する制御中、アクセルペダル8の操作量が誤踏み込み判定用の設定値(θ)よりも大きく、且つアクセルペダル8の操作量の単位時間変化量(変化率)が誤踏み込み判定用の設定値(α)よりも大きい場合に、誤踏み込みと判定して制動装置5を作動させる。
これにより、ブレーキペダル9の誤操作である蓋然性が高い場合に、緩加速を中止して自動制動をかけるので、速やかに車両を停止させることができる。また、車両1が所定の走行速度に達した場合には、自動的に解除し、ブレーキペダル9の操作とスイッチ操作によって中止操作が可能であるので、利便性を高くできる。
上記の電子スロットル装置11のスロットル開度は、予め適合により設定したマップ等の速度制限用開度に一致するようにフィードバック制御する。上記のマップ等では、例えば、速度と開度とのテーブルとして、代表速度を定めた速度域毎にスロットル開度を設定している。補間計算により目標開度を設定し、加速中の中間速度では、目標開度を逐次更新して、この目標開度に一致するよう制御する。なお、通常復帰する際に、現在の目標開度と人為操作されたアクセルペダル8の操作量に基づいて設定した開度が乖離している場合には、激変緩和するように予め定めた勾配で漸増、漸減するよう制御して可及的速やかに復帰するように制御する。
【0015】
更に、制御手段14は、車両1の進行方向を判定する進行方向判定手段14Cを備え、前進の場合と後退の場合では速度制限用開度を異なる値に設定し、後退の場合の方が前進の場合と比べて時間当り変化量を小さく設定する。
この場合、車両1の進行方向は、変速機4が自動変速機の場合には、シフトレンジ(D、N、R等)に応じて判定しても良い。なお、この実施例において、リバースランプ20を利用しているのは、さらに、手動変速機にも応用できるようにするためである。
これにより、車両1の進行方向によって速度制限用開度が個別に設定されるので、利便性を高くできる。
【0016】
次に、この実施例に係る内燃機関の制御を、図3のフローチャートに基づいて説明する。
図3に示すように、制御手段14のプログラムがスタートすると(ステップA01)、先ず、車速Vが、V=0か否かを判断する(ステップA02)。
このステップA02がYESの場合には、作動選択スイッチ18がオンか否かを判断し(ステップA03)、このステップA03がYESの場合には、作動選択スイッチ18とニュートラルスイッチ19とリバースランプ20とからの出力値に基づいて車両進行方向を判定(取得)し(ステップA04)、そして、ブレーキスイッチ16がオフか否かを判断する(ステップA05)。
このステップA05がYESの場合には、アクセル操作量センサ15がオンか否かを判断し(ステップA06)、このステップA06がYESの場合には、作動選択スイッチ18等からの出力値に基づいて電子スロットル装置11を作動する速度制限処理を行い(ステップA07)、そして、アクセル操作量(アクセル開度)≦設定値(θ)、且つアクアクセル操作量(アクセル開度)変化率≦設定値(α)か否かを判断する(ステップA08)。
このステップA08がYESの場合には、車速(V)>設定値(V1)、又は、ブレーキペダルスイッチ16がオン、又は、作動選択スイッチ18がオフか否かを判断する(ステップA09)。このステップA09がNOの場合には、前記ステップA07に戻る。
一方、前記ステップA08がNOの場合には、ブレーキ液圧制御ユニット12を作動して制動処理を行う(ステップA10)。
このステップA10の処理後、又は、前記ステップA09がYESの場合には、電子スロットル装置11を作動して速度制限解除処理を行う(ステップA11)。
このステップA11の処理後、前記ステップA02がNOの場合、前記ステップA03がNOの場合、前記ステップA05がNOの場合、又は、前記ステップA06がNOの場合には、プログラムをエンドとする(ステップA12)。
【0017】
具体的に説明すると、車速センサ17にて停車判定、又は作動選択スイッチ18(運転者が制御の必要性を判断した場合にオンされる)にて制御許可可否、ニュートラルスイッチ19及びリバースランプ20にて車両進行方向が判定、ブレーキスイッチ16にて制動可否、アクセル操作量センサ15にて発進可否を判定し、全ての条件が成立した場合に、一定時間である速度(例えば、前進時はエコノミー運転の推奨値である5秒間で20km/h、後進時は5km/h前後)に到達するように、電子スロットル装置11を調整することにより、アクセル操作量(アクセル開度)によらず速度制限を行うことで、車両1の急激な発進を抑制する。
また、速度制限制御時は、表示手段6内にあるインジケータにて運転者に注意を促す構成とする。なお、速度制限制御中にアクセル操作量(アクセル開度)が設定値(θ)以上で且つアクセル操作量(アクセル開度)変化率が設定値(α)以上の場合は、ブレーキペダル9との誤踏みと判断し、ブレーキ液圧制御ユニット12に制動指令を要求する。ブレーキ液圧制御ユニット12は、制動指令を受けて急制動(0.6m/s2以上)を行う。速度制限解除時は、アクセル操作量(アクセル開度)に応じて駆動力を戻すが、急激な駆動力回復を避けるため、徐々に駆動力を戻すように制限を設ける。
【産業上の利用可能性】
【0018】
この発明に係る内燃機関の制御装置を、各種内燃機関に適用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 車両
2 パワーユニット
3 内燃機関
4 変速機
5 制動装置(ブレーキ装置)
6 表示装置(メータ)
7 ステアリングホイール
8 アクセルペダル
9 ブレーキペダル
10 スロットルバルブ
11 電子スロットル装置
12 ブレーキ液圧制御ユニット
13 内燃機関の制御装置
14 制御手段(ECU)
14A 速度制限処理手段
14B 制動判定処理手段
14C 進行方向判定手段
15 アクセル操作量センサ(アクセル操作量検出手段)
16 ブレーキスイッチ(ブレーキ操作検出手段)
17 車速センサ(車速検出手段)
18 作動選択スイッチ(緩加速制御作動選択スイッチ)
19 ニュートラルスイッチ
20 リバースランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人為操作されるアクセルペダル及びブレーキペダルを設け、前記アクセルペダルの操作量を検出するアクセル操作量検出手段を設け、前記ブレーキペダルの操作の有無を検出するブレーキ操作検出手段を設け、車両の速度を検出する車速検出手段を設け、前記アクセルペダルの操作又は予め設定した開度の設定に基づいてスロットルバルブの開度を自動変更する電子スロットル装置を設け、必要な場合に前記電子スロットル装置を作動して内燃機関のトルク制限を行う制御手段を設けた内燃機関の制御装置において、車両加速中の加速度が所定の緩やかな加速度となる緩加速制御の作動と禁止を任意に選択する緩加速制御作動選択手段を設け、前記制御手段は、車速が停車とみなせる速度且つ緩加速制御の作動が前記緩加速制御作動選択手段で選択されている場合であって、前記ブレーキペダルの操作がなくて前記アクセルペダルの操作がある場合に、前記スロットルバルブの開度が速度制限用開度に一致するように前記電子スロットル装置を作動制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電子スロットル装置の作動による前記スロットルバルブの開度を速度制限用開度に一致する制御中、車速が所定の走行速度に速した場合、運転者が任意に前記ブレーキペダルの操作を行った場合、前記緩加速制御作動選択手段の選択切替操作により緩加速制御作動が禁止された場合のいずれかの場合が成立した際に、速度制限用開度に一致する制御を中止し、通常の前記アクセルペダルの操作に基づくように前記スロットルバルブの開度を制御し、前記電子スロットル装置の作動による前記スロットルバルブの関度を速度制限用開度に一致する制御中、前記アクセルペダルの操作量が誤踏み込み判定用の設定値より大きく、且つ前記アクセルペダルの操作量の単位時間変化量が誤踏み込み判定用の設定値より大きい場合に、誤踏み込みと判定して制動装置を作動させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、車両の進行方向判定手段を備え、前進の場合と後退の場合では速度制限用開度を異なる値に設定し、後退の場合の方が前進の場合と比べて時間当り変化量を小さく設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−95269(P2013−95269A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239973(P2011−239973)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】