説明

内燃機関の可変動弁機構制御装置

【課題】本発明は、アイドル時、減速・惰行時の吸気負圧を確保すること、確保した吸気負圧によって補機類やブレーキ装置を確実に動作させることを目的としている。
【解決手段】このため、バルブのリフト時期を決める作動角の位相を変更する可変動弁機構と、所定の運転条件が成立した場合に可変動弁機構の位相を変更する制御装置を備える内燃機関の可変動弁機構制御装置であって、所定の運転条件として内燃機関の温度とアクセル開度と吸気負圧とを検出する内燃機関の可変動弁機構制御装置において、検出された内燃機関の温度が暖機状態とみなせる一定値以上であり、かつ、検出されたアクセル開度がアイドル状態とみなせる一定値以下であり、かつ、検出された吸気負圧が所定値以下である場合、可変動弁機構の前記作動角を所定の吸気負圧を生じる所定の作動角に収束するよう変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関が生じる吸気負圧を利用して補機類やブレーキ装置を動作する制御技術に関する。
特に、可変動弁機構(「可変バルブタイミング機構」または「VVT機構」、あるいは単に「VVT」ともいう。)を備えた内燃機関において補機類やブレーキ装置を動作する為の吸気負圧制御に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、自動車におけるブレーキ装置には、ブレーキ制動力を高めるためのブレーキブースタが組み合わせられている。
このブレーキブースタは、インテークマニホルド(以下「インマニ」ともいう。)内の負圧を利用するものが一般的である。
このため、前記ブレーキ装置のブレーキブースタの倍力機構の動作は、吸気負圧(「インテークマニホルド内圧」ともいう。)を利用して行っている。
一方、可変動弁機構付きの車両では、可変動弁機構の制御目標値は燃費向上のために負圧を少なくする設定としている。
そのためにブレーキに必要な負圧を確保できない場合がある。
また、補機類の動作として、燃料タンクからの蒸発ガスを燃焼室へ吸入するパージ動作、ブローバイガス(内燃機関の燃焼室からクランクケース内に漏れた混合気や燃焼ガス)を燃焼室へ吸入する動作は、吸気負圧を利用して行っている。
このとき、吸気バルブが十分な位相変更角を有する可変動弁機構を持つエンジンであれば、可変動弁角度を変化させることで、吸気負圧を増加させたり、減少させたりすることができる。
そして、ブレーキブースタに必要な吸気管圧を確保する為に、可変動弁機構を変化させる技術が知られている。
例えば、後述の特許文献1に開示されるものである。
最近のガソリンエンジンでは、燃費向上のため、スロットル閉じに因る吸気抵抗増大を抑制し、アイドルでの吸気負圧を少なくする設定としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−163635号公報
【特許文献2】特開2009−85145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の内燃機関の可変動弁機構制御装置においては、吸気負圧が一時的に弱くなってもブレーキブースタの容量により倍力機構の動作は可能であるが、やや長い時間にわたり吸気負圧が弱くなると使用頻度に応じて倍力機構の動作は弱くなり、最終的には倍力機構の動作がなくなってしまうので、運転者の操作力だけでブレーキ装置を動作させることになり、不便である。
また、吸気負圧が一時的に弱くなっても、その間の補機類の動作が止まるだけで済むが、やや長い時間にわたり吸気負圧が弱くなると、蒸発ガスやブローバイガスを排出させることができなくなり、潤滑油の劣化を早めたり、未燃ガスの大気放出が生じたりする可能性が生じるという不都合がある。
しかし、アイドルでの吸気負圧を少なくする設定とするように一律に制御していると、大気圧が低くなる高地やエンジン負荷が大きいときには、必要な吸気管圧が確保できないことがある。
例えば、特許文献2に開示されるように、ブレーキブースタの負圧を検出して可変動弁機構の位相を変更する場合、ブレーキ操作の使用によって負圧が減るので、位相変更によってブレーキブースタの負圧を増加させる目的を果たすことができ、この制御が行われている間は、これに付随して補機類の動作を行うこともできる。
しかし、高地における登坂が続く場合、ブレーキの使用頻度がなくブレーキブースタに負圧が確保されている状況では、ブレーキ装置への負圧確保の為の可変動弁機構の位相変更制御が働かないので、吸気負圧が極めて小さい状態が続き、蒸発ガスやブローバイガスを排出させる機会が著しく低くなるという不都合がある。
【0005】
この発明は、アイドル時、減速・惰行時の吸気負圧(インテークマニホルド内圧)を確保すること、確保した吸気負圧によって補機類やブレーキ装置を確実に動作させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、バルブのリフト時期を決める作動角の位相を変更する可変動弁機構と、所定の運転条件が成立した場合に可変動弁機構の位相を変更する制御装置を備える内燃機関の可変動弁機構制御装置であって、前記所定の運転条件として内燃機関の温度とアクセル開度と吸気負圧とを検出する内燃機関の可変動弁機構制御装置において、検出された前記内燃機関の温度が暖機状態とみなせる一定値以上であり、かつ、検出された前記アクセル開度がアイドル状態とみなせる一定値以下であり、かつ、検出された吸気負圧が所定値以下である場合、前記可変動弁機構の前記作動角を所定の吸気負圧を生じる所定の作動角に収束するよう変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、バルブのリフト時期を決める作動角の位相を変更する可変動弁機構と、所定の運転条件が成立した場合に可変動弁機構の位相を変更する制御装置を備える内燃機関の可変動弁機構制御装置であって、所定の運転条件として内燃機関の温度とアクセル開度と吸気負圧とを検出する内燃機関の可変動弁機構制御装置において、検出された内燃機関の温度が暖機状態とみなせる一定値以上であり、かつ、検出されたアクセル開度がアイドル状態とみなせる一定値以下であり、かつ、検出された吸気負圧が所定値以下である場合、可変動弁機構の作動角を所定の吸気負圧を生じる所定の作動角に収束するよう変化させる。
従って、内燃機関が暖機されたアイドル状態で、吸気負圧が低い場合には、VVTの位置変更によって、吸気負圧を増大させるので、ブレーキ装置や補機の動作を確保することができ、吸気負圧が高いなど他の場合では、燃費要求や排ガス浄化性能要求等に応える位置とすることができ、ブレーキ装置や補機の動作の確保と良好な燃費等とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は内燃機関の可変動弁機構制御装置の制御用フローチャートである。(実施例1)
【図2】図2は内燃機関の可変動弁機構制御装置のシステム図である。(実施例1)
【図3】図3はリフト量とクランクアングルとの関係を示す図である。(実施例1)
【図4】図4は内燃機関の可変動弁機構制御装置のシステム図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1〜図3はこの発明の第1実施例を示すものである。
図2において、1は内燃機関(図示せず)の可変動弁機構制御装置である。
この可変動弁機構制御装置1は、図2に示す如く、バルブのリフト時期を決める作動角の位相を変更する可変動弁機構(「可変バルブタイミング機構」または「VVT機構」ともいう。)2と、所定の運転条件が成立した場合に可変動弁機構2の位相を変更する制御装置3を備えている。
このとき、この制御装置3は、各種信号を入力して所定の運転条件が成立した場合に、前記可変動弁機構2の位相を変更するVVT制御機能を有している。
また、前記可変動弁機構制御装置1は、前記制御装置3の入力側に、水温センサ4と、クランク角センサ5と、吸気カム角センサ6と、スロットル/アクセル開度センサ7と、大気圧センサ8と、吸気圧センサ9とを備えている。
このとき、前記水温センサ4は、エンジン水温を検出して内燃機関の温度を検出するものである。
前記クランク角センサ5は、クランク角から回転速度を検出する。
前記吸気カム角センサ6は、図示しない吸気カムの位相を検出する。
前記スロットル/アクセル開度センサ7は、アクセル開度を検出する。
前記大気圧センサ8は、大気圧を検出する。
前記吸気圧センサ9は、吸気負圧(「インテークマニホルド内圧」ともいう。)を検出する。
つまり、前記可変動弁機構制御装置1は、前記所定の運転条件として内燃機関の温度とアクセル開度と吸気負圧とを検出している。
そして、前記可変動弁機構制御装置1は、前記制御装置3の出力側に、前記可変動弁機構2を備えている。
【0011】
また、前記可変動弁機構制御装置1は、検出された前記内燃機関の温度が暖機状態とみなせる一定値以上であり、かつ、検出された前記アクセル開度がアイドル状態とみなせる一定値以下であり、かつ、検出された吸気負圧が所定値以下である場合、前記可変動弁機構の前記作動角を所定の吸気負圧を生じる所定の作動角に収束するよう変化させる構成を有している。
詳述すれば、前記可変動弁機構制御装置1は、検出された前記内燃機関の温度が暖機状態とみなせる一定値以上、つまり、前記水温センサ4により検出されたエンジン水温Tがエンジン水温条件である一定値t以上であるか否かの判断を行う。
また、前記可変動弁機構制御装置1は、検出された前記アクセル開度がアイドル状態とみなせる一定値以下、つまり、前記スロットル/アクセル開度センサ7により検出されたアクセル開度Aがアクセル開度条件である一定値a以下であるか否かの判断を行う。
更に、前記可変動弁機構制御装置1は、検出された吸気負圧が所定値以下、つまり、前記吸気圧センサ9により検出された吸気負圧P_A−P_Iが負圧条件である所定値p以下であるか否かの判断を行う。このとき、吸気負圧P_A−P_Iは、大気圧P_Aからインテークマニホルド内圧P_Iを減じることにより算出する。
そして、前記可変動弁機構制御装置1は、エンジン水温Tが一定値t以上、かつ、アクセル開度Aが一定値a以下かつ、吸気負圧P_A−P_Iが所定値p以下である場合に、前記可変動弁機構2の作動角を所定の吸気負圧を生じる所定の作動角に収束するよう変化させるものである。
従って、内燃機関が暖機されたアイドル状態で、吸気負圧が低い場合には、前記可変動弁機構2の位置変更によって、吸気負圧を増大させるので、ブレーキ装置や補機の動作を確保することができ、吸気負圧が高いなど他の場合では、燃費要求や排ガス浄化性能要求等に応える位置とすることができ、ブレーキ装置や補機の動作の確保と良好な燃費等とを両立することができる。
【0012】
追記すれば、前記可変動弁機構2を動作させると、吸入空気量が変化し、これに伴いインテークマニホルド(図示せず)内の負圧が変化する。
通常、前記可変動弁機構2の制御目標値は、燃費向上のために負圧を少なくする設定としている。
一方、エアコンやオルタネータ等の補機負荷が大きいときには、ブレーキ負圧不足が起こることがある。
これを回避するため、インテークマニホルドに取り付けられた前記吸気圧センサ9で検出した負圧値に応じて前記可変動弁機構2の制御目標値を変化させることでブレーキ負圧を確保する。
【0013】
更に、前記可変動弁機構制御装置1は、前記可変動弁機構2を吸気バルブ(図示せず)のみに備える。
つまり、この可変動弁機構2を、図2に示す如く、吸気バルブを最適なバルブタイミング(進角量及び遅角量)とするために吸気OCV(「吸気オイルコントロールバルブ」ともいう。)10によって構成する。
また、前記可変動弁機構制御装置1は、所定の吸気負圧を生じる所定の作動角を、吸気バルブの作動角を遅角する程増大する吹き返しによる吸気負圧減少と、吸気バルブの作動角を進角する程増大する排気バルブとのオーバラップに伴う内部EGRの増大による吸気負圧減少とのバランスによって定まる吸気不圧が増大する中間進角位置とする。
従って、排気バルブの閉じタイミングに関わらず、吸気バルブのリフト中の開き時間がクランク角180度より明らかに大きく設定されている場合でも、吹き返しと内部EGRとのバランスを採って最も吸気負圧が大きい位置に作用角を収束させることができる。
【0014】
追記すれば、前記可変動弁機構制御装置1を備える内燃機関では、前記可変動弁機構2は、図3に示す如く、基準となるイニシャル位置から進角側へ動かす。
そして、吸気バルブのリフト中の開き時間(クランク角範囲)がピストンの吸気行程に相当する180度より大きく設定(例えば1〜4割程度アップ)した前記可変動弁機構2を用いている。
また、前記内燃機関は、アクセル開度Aが一定値a以下となるアイドル制御では、吸気バルブを遅く閉じる設定、すなわち吸気バルブが閉じるタイミングを下死点より遅いタイミングとする設定としておき、吸気バルブにおける燃焼室内への吸入ガスをピストンが上昇する圧縮行程中にインテークマニホルド側へ所定量戻すこと、つまり、吹き返しにより、ポンピングロスを軽減している。これに伴い、吸気負圧は減少する。
そして、図3に示す如く、進角方向、すなわち、吸気バルブが早く閉じる方向へ動かすことによって、吹き返しを減少させ、負圧を確保できるようになる。つまり、負圧を確保するために、前記可変動弁機構2の作動角を進角方向、すなわち、吸気バルブを早く閉じる方向へ動かしている。
一方、進角が進み、吸気バルブの開きタイミングが排気バルブの閉じタイミングより早くなると、バルブオーバラップが生じる。バルブオーバラップが増加すると、内部EGR(再吸引されたり、滞留したりして燃焼室内残存する排気ガス)が増加する。排気ガスの圧力は吸気管内圧と比べ比較的高いため、進角させ過ぎると、ガスの流れや圧力の相互影響によって、逆に、吸気負圧が減少することになる。
ここでは、吸気バルブの作動角を閉じ、タイミングが下死点を超えて遅角する程増大する吹き返しによる吸気負圧減少と、吸気バルブの作動角を進角する程増大する排気バルブとのオーバラップに伴う内部EGRの増大による吸気負圧減少とのバランスによって定まる吸気負圧が増大する中間進角位置、すなわち、トレードオフの関係にある両者の谷間となる位置に定まる吸気負圧が増大する中間進角位置を設定し、この位置に収束するように前記可変動弁機構2を作動させている。
このため、進角量については、個々のエンジン諸元に依存するところが大きく、各エンジン固有の進角量の設定を決めるためには、事前に進角量と負圧との相関を実験等により把握しておく必要がある。
機関温度が低く完全暖機となっていない場合、例えば、可変動弁機構2の制御性が充分に確保できない可能性がある一方で、早期暖機するためのファーストアイドル制御により、吸気量および燃料噴射量を増量補正するなどを実施している。このため、このような状況では、負圧確保のための本制御を行わない方がこのましい。
吸気負圧は、大気圧を基準として絶対圧ゼロに近づく程負圧が大きいことになる為、吸気負圧P_A−P_Iが所定値p以下とは、吸気負圧P_A−P_Iが所定値pより大気圧に近いことを指す。
【0015】
次に図1の内燃機関の前記可変動弁機構制御装置1の制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0016】
この可変動弁機構制御装置1の制御用プログラムがスタート(101)すると、検出された内燃機関の温度が暖機状態とみなせる一定値以上、つまり、前記水温センサ4により検出されたエンジン水温Tが一定値t以上であるか否かの判断(102)に移行する。
この水温センサ4により検出されたエンジン水温Tが一定値t以上であるか否かの判断(102)がNOの場合には、後述する前記可変動弁機構制御装置1の制御用プログラムのストップ(「エンド」ともいう。)(106)に移行する。
上述の水温センサ4により検出されたエンジン水温Tが一定値t以上であるか否かの判断(102)がYESの場合には、検出されたアクセル開度がアイドル状態とみなせる一定値以下、つまり、前記スロットル/アクセル開度センサ7により検出されたアクセル開度Aが一定値a以下であるか否かの判断(103)に移行する。
このアクセル開度Aが一定値a以下であるか否かの判断(103)がNOの場合には、前記可変動弁機構制御装置1の制御用プログラムのストップ(106)に移行する。
上述のアクセル開度Aが一定値a以下であるか否かの判断(103)がYESの場合には、検出された吸気負圧が所定値以下、つまり、前記吸気圧センサ9により検出された吸気負圧P_A−P_Iが所定値p以下であるか否かの判断(104)に移行する。
この前記吸気圧センサ9により検出された吸気負圧P_A−P_Iが所定値p以下であるか否かの判断(104)がNOの場合には、前記可変動弁機構制御装置1の制御用プログラムのストップ(106)に移行する。
上述の前記吸気圧センサ9により検出された吸気負圧P_A−P_Iが所定値p以下であるか否かの判断(104)がYESの場合には、前記可変動弁機構制御装置1によって目標VVT作動角変更、つまり、前記制御装置3から前記可変動弁機構2に制御信号を出力し、前記吸気OCV10を動作させてバルブタイミングを変更する処理(105)に移行し、この処理(105)の後に前記可変動弁機構制御装置1の制御用プログラムのストップ(106)に移行する。
【実施例2】
【0017】
図4はこの発明の第2実施例を示すものである。
この第2実施例において、上述第1実施例のものと同一機能を果たす箇所には、同一符号を付して説明する。
【0018】
この第2実施例の特徴とするところは、内燃機関の前記可変動弁機構制御装置11の可変動弁機構12を吸気バルブおよび排気バルブのそれぞれに備えた点にある。
【0019】
すなわち、前記可変動弁機構制御装置11は、図4に示す如く、前記制御装置13の入力側に、水温センサ4と、クランク角センサ5と、吸気カム角センサ6と、スロットル/アクセル開度センサ7と、大気圧センサ8と、吸気圧センサ9とを備えるとともに、排気カム角センサ14を備えている。
この排気カム角センサ14は、図示しない排気カムの位相を検出する。
また、前記可変動弁機構12を、図4に示す如く、吸気バルブを最適なバルブタイミング(進角量及び遅角量)とするための吸気OCV(「吸気オイルコントロールバルブ」ともいう。)10と、吸気バルブを最適なバルブタイミング(進角量及び遅角量)とするための排気OCV(「排気オイルコントロールバルブ」ともいう。)15とによって構成する。
前記可変動弁機構制御装置11は、所定の吸気負圧を生じる前記所定の作動角は、排気バルブの作動角を進角する程減少する吸気バルブとのオーバラップに伴う内部EGRの減少によって吸気負圧が増大する排気バルブの作動角の最進角位置とする。
従って、前記可変動弁機構12によって前記吸気OCV10が様々に変更されていても、その制御状態からの影響を受け難く、ほぼ安定して吸気負圧を増加させることができる。
また、前記可変動弁機構12によって前記排気OCV14のみを制御するので、制御が簡素で演算負荷が少なく、移行中も制御安定性を確保できる。
【0020】
追記すれば、内燃機関諸元やアイドルでの前記可変動弁機構12の動作状況によっては、前記排気OCV14を動かすことでも負圧確保できる場合がある。この第2実施例においては、一つの吸排気VVTである前記吸気OCV10及び前記排気OCV15を備える内燃機関の例を示す。
また、前記可変動弁機構12の排気OCV15は、基準となるイニシャル位置から遅角側へ動かす。これは、基準となるイニシャル位置から進角側へ動かす前記可変動弁機構12の吸気OCV10とは逆である。燃費要求などの理由により、内燃機関のアイドル時に、遅角側へ動かしていた場合、イニシャル位置方向へ戻すように進角させることで負圧を増加させることができる。
更に、この内燃機関の場合、前記可変動弁機構12の排気OCV15の最進角(イニシャル位置)で最も負圧が出る。内燃機関固有の最も負圧が出るVVT位置を探して設定すれば良い。この位置が複数ある場合は、他の条件に基づくVVT制御から移行する際の応答性などを考慮して設定すれば良い。
【0021】
なお、この発明は上述第1及び第2実施例に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
【0022】
例えば、圧力センサを採用していない車両の場合には、エアフローセンサで測定した実流量から推定したモデルインマニ圧を使用する特別構成とすることも可能である。
また、可変動弁機構の目標値変更をアイドルのみに限定させる特別構成とすることで、走行時の燃費要求とアイドルで必要な負圧要求とを両立することができる。
更に、ブレーキブースタ圧力を測定できる車両においては、インテークマニホルド内圧の代わりに、ブレーキブースタ圧力を使用する特別構成とすることにより、ブレーキ要求に限定したVVT目標値変更とすることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 内燃機関の可変動弁機構制御装置
2 可変動弁機構
3 制御装置
4 水温センサ
5 クランク角センサ
6 吸気カム角センサ
7 スロットル/アクセル開度センサ
8 大気圧センサ
9 吸気圧センサ
10 吸気OCV(「吸気オイルコントロールバルブ」ともいう。)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブのリフト時期を決める作動角の位相を変更する可変動弁機構と、所定の運転条件が成立した場合に可変動弁機構の位相を変更する制御装置を備える内燃機関の可変動弁機構制御装置であって、前記所定の運転条件として内燃機関の温度とアクセル開度と吸気負圧とを検出する内燃機関の可変動弁機構制御装置において、検出された前記内燃機関の温度が暖機状態とみなせる一定値以上であり、かつ、検出された前記アクセル開度がアイドル状態とみなせる一定値以下であり、かつ、検出された吸気負圧が所定値以下である場合、前記可変動弁機構の前記作動角を所定の吸気負圧を生じる所定の作動角に収束するよう変化させることを特徴とする内燃機関の可変動弁機構制御装置。
【請求項2】
前記可変動弁機構を吸気バルブのみに備え、所定の吸気負圧を生じる前記所定の作動角は、吸気バルブの作動角を遅角する程増大する吹き返しによる吸気負圧減少と、吸気バルブの作動角を進角する程増大する排気バルブとのオーバラップに伴う内部EGRの増大による吸気負圧減少とのバランスによって定まる吸気不圧が増大する中間進角位置とすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の可変動弁機構制御装置。
【請求項3】
前記可変動弁機構を吸気バルブおよび排気バルブのそれぞれに備え、所定の吸気負圧を生じる前記所定の作動角は、排気バルブの作動角を進角する程減少する吸気バルブとのオーバラップに伴う内部EGRの減少によって吸気負圧が増大する排気バルブの作動角の最進角位置とする。ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の可変動弁機構制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−193689(P2012−193689A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59168(P2011−59168)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】