説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】排気ガス中のアロマ成分を分離し、添加弁から排気系内、エンジン筒内へ添加することができ、アロマ成分の浄化性能を向上させる内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、燃料中のアロマ分を分離し、アロマフリー燃料と、アロマ含有燃料とに分離する燃料分離装置17と、アロマフリー燃料を窒素酸化物浄化装置42に供給する第一の排気添加弁22−1と、アロマ含有燃料を粒子状物質捕集装置43に供給する第二の排気添加弁22−2とを備える。アロマフリー燃料23を常時エンジン筒内燃焼用の燃料として用いると共に、アロマ分を効率よく処理し、アロマ分に起因した煤の発生量を抑制する。また、NOX浄化用触媒に吸蔵された窒素酸化物の還元効率、粒子状物質捕集装置のPM再生効率を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料中のアロマ分を用い、内燃機関から排出される排気ガス中の有害成分の浄化性能を向上させる内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディーゼルエンジンの排気ガスには、炭素を主成分とする粒子状物質(以下、PM(Particulate Matter)という)が含まれ、大気汚染の原因となることが知られ、排気ガスからこれらの粒子状物質を捕捉・除去する必要がある。
【0003】
近年、例えばディーゼルエンジンの排ガス制御、中でも窒素酸化物(NOX)の後処理技術が検討され、還元剤として添加する軽油の性状によっては窒素酸化物(NOX)用浄化触媒の浄化性能が著しく異なる。還元剤である軽油中には、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物(Aromatic Compound)であるベンゼン系炭化水素(以下、「アロマ分」という)が含有されている。この軽油中に含有されるアロマ分はNOXの還元剤としては適していない。
【0004】
そのため、従来の複数種の燃料を混合した混合燃料を使用する内燃機関の排気浄化装置が提案されている。混合燃料を使用する内燃機関の排気浄化装置として、次のようなものがある(特許文献1)。
図4は、従来の内燃機関の排気浄化装置の構成を示す図である。図4に示すように、従来の内燃機関の排気浄化装置100は、排気ガスを排出する内燃機関の排気管101に介装した窒素酸化物(NOX)用浄化触媒102と、このNOX用浄化触媒102の上流側に窒素酸化物(NOX)を還元する還元剤103を添加する還元剤添加手段104と、軽油105が含有するアロマ分105aを除去するアロマ分除去手段106とを備えている。還元剤添加手段104は、軽油105を貯留する軽油タンク107と還元剤103を排気管101内に添加する添加弁108とを備え、還元剤103を排気管101内へ添加している。
【0005】
また、このアロマ分除去手段106は、軽油105に配合してアロマ分105aを分離するアロマ分除去溶媒110(例えば硫酸や硫酸塩溶液など)を貯留する除去溶媒タンク111と、軽油105にこのアロマ分除去溶媒110を配合してアロマ分105aを沈降させ還元剤103とアロマ分105aとに分離するアロマ分分離器112と、アロマ分105aとアロマ分除去溶媒110とを分離して回収する回収手段113とを備える。回収手段113は、アロマ分分離器112で分離されたアロマ分105aとアロマ分除去溶媒105との混合液114を貯留する回収タンク115と、混合液114からアロマ分105aを蒸留するヒータ115aと、蒸留後のアロマ分除去溶媒110を除去溶媒タンク111へ環流するリターンポンプ116とを備える。
【0006】
除去溶媒タンク111にはポンプ111pが設けられており、図示しない制御装置によりアロマ分分離器112へアロマ分除去溶媒110を供給するようにしている。また、軽油タンク107はポンプ107pを備えており、図示しない制御装置の指示によりアロマ分分離器112へ軽油105を供給している。アロマ分分離器112は、軽油タンク107から供給される軽油105と、除去溶媒タンク111から供給されるアロマ分除去溶媒110とを受け入れ、所定時間鎮静することでその上澄みの軽油である還元剤103とアロマ分105aを含む混合液114とに分離している。アロマ分分離器112内のポンプ112pを駆動し、アロマ分105aが除去された軽油105を還元剤103として窒素酸化物(NOX)用浄化触媒102の上流側に添加している。また、アロマ分105aを含む混合液114は電磁弁120を開弁し、回収タンク115に排出している。
【0007】
また、気化されたアロマ分105aはエンジン燃焼用の燃料タンク117へ送られて燃焼用の軽油に混入してエンジン118へ供給される。また、回収タンク115内に残留したアロマ分除去溶媒110は、リターンポンプ116を駆動し、除去溶媒回収通路119を介して除去溶媒タンク111に回収し、再利用している。
【0008】
このように、従来の内燃機関の排気浄化装置100では、アロマ分除去手段106によりアロマ分105aを除去した上澄みの軽油を還元剤103として窒素酸化物浄化用触媒102の上流側に添加することで、排気ガスG中の添加窒素酸化物の浄化性能を向上させている。
【0009】
【特許文献1】特開2006−132435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の内燃機関の排気浄化装置では、NOX浄化用触媒102の再生を図ることだけを目的とし、分離されたアロマ分105a処理が充分に考慮されていない、という問題がある。
【0011】
即ち、従来の内燃機関の排気浄化装置100では、気化された高濃度のアロマ分105aがエンジン燃焼用の燃料タンク117へ送給され、燃焼用の例えば軽油と混合しエンジン118へ供給されているが、高濃度のアロマ分105aを供給し続けるとエンジン118の許可可能な範囲以上のアロマ分105aとなり、その結果増大したアロマ分105aに起因して発生する煤の量が更に増大する、という問題がある。
【0012】
また、通常、例えば20%程度の高濃度のアロマ分105aがエンジン118に送給されるが、長時間の運転に伴い、回収タンク115で高濃度のアロマ分105aが徐々に濃縮されるため、この濃縮され気化されたアロマ分105aがエンジン燃焼用として供給されることで、エンジン118の燃焼効率が悪化する、という問題がある。
【0013】
また、排気ガス中のPMは、PMフィルタ等により捕集され、この捕集されたPMは定期的に強制酸化してPM捕集機能を再生(以下、「PM再生」という)しているが、アロマ分105aが主要因となって発生する煤に起因するPMは、アロマ分105aが増大すると、この増大するアロマ分105aに起因するPMの発生量が更に増大し、PM再生頻度が増える、という問題がある。
【0014】
また、アロマ分105aを燃焼することによって、NOX浄化用触媒102が被毒されるため、NOX浄化用触媒102の再生頻度も高くなり、触媒効率が低下する、という問題がある。
【0015】
更には、NOX浄化用触媒102の触媒活性を維持するため、触媒床温は例えば200〜400℃程度と低い温度で行なわれているのに対し、アロマ分105aを酸化分解するためには更に高温を必要とするため、アロマ分105aの酸化分解が進行しない、という問題がある。
【0016】
この結果、アロマ分105aの酸化分解が十分に行われないとアロマ分105aを含有した排気ガスが大気中に放出され、環境汚染を引き起こす、という問題がある。
【0017】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、排気ガス中のアロマ成分を分離し、添加弁から排気系内、エンジン筒内へ添加することができ、アロマ成分の浄化性能を向上させる内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、排気通路内の排気ガス中の窒素酸化物を浄化する窒素酸化物浄化用触媒が収容されている窒素酸化物浄化装置と、該窒素酸化物浄化装置の下流側に設けられ、前記排気通路内の前記排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタ機能を備えた粒子状物質捕集装置とを有する内燃機関の排気浄化装置であって、燃料中のアロマ分を分離し、アロマ分を含有しないアロマフリー燃料と、アロマ分を含有するアロマ含有燃料とに分離する燃料分離装置を有し、前記アロマフリー燃料をエンジン燃焼用の燃料として用いると共に、前記窒素酸化物浄化用触媒に吸蔵された窒素酸化物の還元時に前記アロマフリー燃料を用い、且つ、前記粒子状物質捕集装置に捕集されたPMを焼失してPM捕集機能を再生するPM再生時に前記分離したアロマ含有燃料を用いることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る内燃機関の排気浄化装置においては、前記燃料分離装置において分離された前記アロマフリー燃料を前記窒素酸化物浄化装置の上流側に供給する第一の排気添加弁と、前記燃料分離装置において分離された前記アロマ含有燃料を前記窒素酸化物浄化装置と前記粒子状物質捕集装置との間に供給する第二の排気添加弁とを有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る内燃機関の排気浄化装置においては、前記窒素酸化物浄化装置と前記粒子状物質捕集装置との間隔が、温度伝達が起こり難い所定間隔を有することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る内燃機関の排気浄化装置においては、前記燃料分離装置で分離された前記アロマ含有燃料を貯蔵するアロマ含有燃料タンクを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、燃料中のアロマ分をアロマフリー燃料とアロマ含有燃料とに分離する燃料分離装置を備え、アロマフリー燃料を常時エンジン筒内燃焼用の燃料として用いることができる。このため、エンジン燃焼により発生するPM生成を抑制しすることができると共に、粒子状物質捕集装置のPM再生頻度を減少することができる。
【0023】
また、アロマフリー燃料を窒素酸化物浄化装置の上流側に供給する第一の排気添加弁を備えているため、アロマフリー燃料を窒素酸化物浄化装置内に常時供給することができ、窒素酸化物浄化用触媒に反応性の高い還元剤を供給することで前記窒素酸化物浄化用触媒に吸蔵された窒素酸化物の還元効率を高めることができる。
【0024】
また、アロマフリー燃料を窒素酸化物浄化装置に窒素酸化物浄化用触媒が熱劣化しない程度にまで添加することで、窒素酸化物浄化用触媒の熱劣化を抑制しつつ、粒子状物質捕集装置内のフィルタ床温を上昇させることができる。
【0025】
また、アロマ含有燃料を窒素酸化物浄化装置と粒子状物質捕集装置との間に供給する第二の排気添加弁とを備えているため、アロマ含有燃料を常時粒子状物質捕集装置に供給することで粒子状物質捕集装置内のフィルタ床温を上昇させることができる。
【0026】
また、燃料中のアロマ分がPM再生時に酸化処理されるため、アロマ分を効率よく処理することができ、アロマ分の排出を抑制することができる。これにより、アロマ分に起因して発生する煤の発生量を抑制することができる。
【0027】
また、燃料分離装置で分離されたアロマ含有燃料を貯蔵するアロマ含有燃料タンクを有しているため、必要な場合にのみ粒子状物質捕集装置を供給することができる。
【0028】
従って、燃料中のアロマ分を効率よく有効に処理することで、アロマ分の排出を抑制し、アロマ分に起因して発生する煤の発生量を軽減することができると共に、窒素酸化物浄化用触媒に吸蔵された窒素酸化物の還元効率、粒子状物質捕集装置のPM再生効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、この発明に係る内燃機関の排気浄化装置をディーゼルエンジンシステムに適用した例について図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明の実施例に係る内燃機関の排気浄化装置を適用したディーゼルエンジンシステムを示す概略構成図である。図2は、図1に示すエンジンシステムの構成を簡略に示す概略図である。
図1に示すように、内燃機関(以下、エンジンと記す。)11は、燃料供給系12、燃焼室13、吸気系14および排気系15等を主要部として構成される直列4気筒のディーゼルエンジンシステムである。
【0031】
燃料供給系12は、燃料タンク16、燃料分離装置17、メイン燃料通路L1、燃料ポンプ18、コモンレール19、燃料噴射弁21、遮断弁V1〜V3、第一の排気添加弁22−1、第二の排気添加弁22−2、アロマフリー燃料送給通路L2、機関燃料通路L3、アロマフリー燃料添加通路L4及びアロマ含有燃料添加通路L5を備えて構成されている。また、燃料タンク16には、燃料の酸素濃度を検出する燃料酸素濃度センサ(燃料酸素濃度検出手段)22が設けられている。
【0032】
燃料タンク16からメイン燃料通路L1を介して汲み上げた燃料は、燃料分離装置17に供給される。燃料分離装置17は、燃料タンク16から供給される燃料中のアロマ分を分離し、アロマ分を含有しないアロマフリー燃料23と、アロマ分を含有するアロマ含有燃料24とに分離する。
【0033】
また、本実施例では、燃料分離装置17としては、燃料中のアロマ分を選択的に分離可能なシステムであればよく、例えばアロマ分を抽出して分離する方法、分離膜を用いる方法等があるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0034】
燃料ポンプ18は、燃料分離装置17からアロマフリー燃料送給通路L2を介して汲み上げたアロマフリー燃料23を高圧にし、機関燃料通路L3を経てコモンレール19に供給する。コモンレール19は、燃料ポンプ18から供給された高圧のアロマフリー燃料23を所定圧力に蓄圧し、各燃料噴射弁21に分配する。電磁弁である燃料噴射弁21は、燃焼室13内に燃料を噴射供給する。
【0035】
これにより、アロマフリー燃料23を各燃料噴射弁21より燃焼室13内に燃料を噴射供給することができるため、アロマフリー燃料23をエンジン筒内燃焼用の燃料として常時用いることができる。この結果、エンジン筒内燃焼により発生するアロマ分に由来するPM生成を抑制することができ、粒子状物質捕集装置43内に捕集される粒子状物質(PM)の発生が低減されるので、PMを強制酸化しPM捕集機能を再生するPM再生頻度を減少することができる。
【0036】
また、吸気系14は、各燃焼室13内に供給される吸入空気の通路(吸気通路)を形成するものである。排気系15は、各燃焼室13から排出される排気ガスの通路(排気通路)を形成するものである。
【0037】
また、エンジン11には、その排気により吸気31を過給するターボチャージャ32を備えている。ターボチャージャ32に設けられたインタークーラ33は、過給によって昇温した吸入空気を強制冷却する。このインタークーラ33よりも下流に設けられたスロットル弁34は、いわゆる電子スロットルであり、吸入空気の供給量を調整する。
【0038】
また、エンジン11には、吸気系14と排気系15をバイパスし、排気の一部を吸気系14に戻すEGR通路35が設けられている。EGR通路35には、排気流量を調整するEGR弁36と、排気を冷却するためのEGRクーラ37が設けられている。
【0039】
また、排気系15は、排気主通路41上に排気ガス中の窒素酸化物を浄化する窒素酸化物(NOX)浄化用触媒が収容されている窒素酸化物浄化装置42と、その下流側に前記排気ガス中の粒子状物質を捕集するPMフィルタを備えた粒子状物質捕集装置43とを配設している。
【0040】
窒素酸化物浄化装置42に収容されているNOX浄化用触媒は、排気空燃比がリーンのときに排気ガス中のNOXを吸蔵し、排気ガス中の排気空燃比がリッチのときに添加されるHC、CO等により吸蔵されたNOXを還元・放出するものである。
【0041】
NOX浄化用触媒として、具体的には、NSR(NOX Storage Reduction)やDPNR(Diesel Particulate−NOX Reduction System)が知られている。NSRとは、リーン運転モードでの運転中にNOXを硝酸塩の形で触媒中に吸蔵し、その硝酸塩を酸素濃度の低下した還元雰囲気でN2に還元するNOX吸蔵還元型触媒のことである。また、DPNRとは、粒子状物質(PM)とNOXを同時に連続して浄化させることが可能なシステムのことであり、例えば、PM捕集装置であるDPF(Diesel Particulate Filter)にNOX吸蔵還元型触媒を担持させたものである。本実施例においては、NOX浄化用触媒として、NOX吸蔵還元型触媒(NSR)を適用する。
【0042】
また、粒子状物質捕集装置43は、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するPMフィルタを備えたものである。粒子状物質捕集装置43として、例えばDPF(Diesel Particulate Filter)がある。
【0043】
ここでは、その粒子状物質捕集装置43を窒素酸化物浄化装置42よりも排気ガス流動方向下流に配置して、その窒素酸化物浄化装置42内のNOX浄化用触媒においてNOXを吸蔵し、排気ガス中のPM等を粒子状物質捕集装置43内のPMフィルタで捕集し、排気している。
【0044】
また、窒素酸化物浄化装置42内のNOX浄化用触媒や粒子状物質捕集装置43内のPMフィルタが活性状態にあるか否かについては、その夫々の触媒床温、フィルタ床温を検出することで判断してもよい。
【0045】
また、アロマフリー燃料23を窒素酸化物浄化装置42の上流側に供給する第一の排気添加弁22−1を有している。燃料分離装置17は、アロマフリー燃料23の一部をアロマフリー燃料添加通路L4を介して第一の排気添加弁22−1に供給する。この供給の際には、第一の排気添加弁22−1を開放し、アロマフリー燃料23の供給を行なう。また、必要でない時には閉鎖し、アロマフリー燃料23の供給を停止する。
【0046】
第一の排気添加弁22−1よりアロマフリー燃料23を窒素酸化物浄化装置42の上流側に常時供給することができるため、窒素酸化物浄化装置42内のNOX浄化用触媒に反応性の高い還元剤を供給できる。この結果、窒素酸化物浄化装置42内のNOX浄化用触媒に吸蔵されたNOXの還元効率を高めることができる。
【0047】
また、第一の排気添加弁22−1よりアロマフリー燃料23を窒素酸化物浄化装置42に供給し、窒素酸化物浄化装置42内のNOX浄化用触媒の熱劣化が起こらない温度(例えば400℃)程度にまで加温することで、NOX浄化用触媒の熱劣化を抑制しつつ、粒子状物質捕集装置43内のPMフィルタのフィルタ床温を上昇させることができる。
【0048】
また、アロマ含有燃料24を窒素酸化物浄化装置42と粒子状物質捕集装置43との間に供給する第二の排気添加弁22−2を有している。燃料分離装置17は、アロマ含有燃料24をアロマ含有燃料添加通路L5を介して第二の排気添加弁22−2に供給し、アロマ含有燃料24を粒子状物質捕集装置43に供給する。
【0049】
第二の排気添加弁22−2よりアロマ含有燃料24を窒素酸化物浄化装置42と粒子状物質捕集装置43との間に常時供給することができるため、粒子状物質捕集装置43内のPMフィルタのフィルタ床温を上昇させることができる。
【0050】
また、アロマフリー燃料23を供給してフィルタ床温が上昇した粒子状物質捕集装置43にアロマ含有燃料24を供給することで、粒子状物質捕集装置43内のフィルタ床温を更に上昇させることができる。
【0051】
よって、粒子状物質捕集装置43内のPMフィルタのPM再生に必要なフィルタ床温(例えば550℃)にまで効率良く上昇させ、粒子状物質捕集装置43のPM再生を行なうことができる。
【0052】
また、アロマ分の処理については、図4に示すような従来の内燃機関の排気浄化装置では、濃縮されたアロマ分をエンジン燃焼用に用い、アロマ分に起因して発生する煤の量を増大させ、エンジンの燃焼効率を悪化させてしまい、アロマ分の処理が充分に考慮されていない。
【0053】
これに対し、本願発明においては、上述のように、アロマフリー燃料23は燃焼用の燃料として常時用いることで、排気ガス中に煤を発生させないと共に、PM再生頻度を減らすことができる。また、窒素酸化物浄化装置42内のNOX浄化用触媒に吸蔵された窒素酸化物の還元時に、アロマフリー燃料23を還元剤として用いることで、NOX還元効率を高めることができる。更に、アロマ含有燃料24をPM再生時に粒子状物質捕集装置43に供給することでフィルタ床温を上昇させ、PM再生効率を高めるのに利用すると共に、アロマ分を燃焼・消費し、高濃度のアロマ分に起因して発生する煤の発生量を大幅に軽減し、アロマ分を効率良く有効に処理することができる。
【0054】
従って、燃料中のアロマ分を効率良く有効に処理し、アロマ分の排出を抑制し、高濃度のアロマ分に起因して発生する煤の発生量を大幅に軽減することができる。また、NOX浄化用触媒に吸蔵された窒素酸化物の還元効率と、粒子状物質捕集装置のPM再生効率の向上を図ることができる。
【0055】
また、粒子状物質捕集装置43内は高温となるため、窒素酸化物浄化装置42内のNOX浄化用触媒に熱が伝わり、熱劣化する虞がある。このため、窒素酸化物浄化装置42と粒子状物質捕集装置43との間隔は、窒素酸化物浄化装置42と粒子状物質捕集装置43とが温度伝達が起こり難いように所定の間隔を確保する。
【0056】
この結果、所定の間隔を確保することで、粒子状物質捕集装置43のPM再生時においても、窒素酸化物浄化装置42内のNOX浄化用触媒の熱劣化を防止しつつ、粒子状物質捕集装置43のPM再生効率を高めることができる。
【0057】
なお、アロマフリー燃料添加通路L4、アロマ含有燃料添加通路L5には調量弁(図示せず)も設けられている。この調量弁は、第一の排気添加弁22−1、第二の排気添加弁22−2に供給する燃料の圧力(燃圧)を制御する。電磁弁である第一の排気添加弁22−1、第二の排気添加弁22−2は、アロマフリー燃料23、アロマ含有燃料24を、適宜量、適宜タイミングで排気系15の窒素酸化物浄化装置42、粒子状物質捕集装置43に添加供給する。
【0058】
また、エンジン11の各部位には、吸気量を検出するエアフロメータ44と、粒子状物質捕集装置43内のPMフィルタのフィルタ床温を検出する温度センサ45とが設けられている。また、窒素酸化物浄化装置42の上流側と窒素酸化物浄化装置42と粒子状物質捕集装置43との間に排気ガス中の酸素濃度を検出する空燃比センサ46−1,46−2と、粒子状物質捕集装置43の下流側の窒素濃度を検出するNOXセンサ47とが設けられている。
【0059】
また、本実施例では、第一の排気添加弁22−1、第二の排気添加弁22−2はアロマフリー燃料23又はアロマ含有燃料24を微粉化し噴出することが可能なものであれば、特にこれに限定されるものではない。
【0060】
また、図示を省略するが、エンジン11の各部位には、吸気量を検出するエアフロメータ44、コモンレール19内の燃料の温度と圧力を検出する温度センサおよび圧力センサ、エンジン11のクランク軸回転を検出するクランクポジションセンサ、吸気温度を検出する吸気温センサ、吸気圧力を検出する吸気圧センサ、アクセルペダルの踏込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ、スロットル弁34の開度を検出するスロットルポジションセンサ、エンジン11の冷却水温を検出する水温センサ等が設けられている。
【0061】
図示しない電子制御装置(ECU)は、上記各種センサの検出信号を外部入力回路を介して入力し、これらの信号に基づき燃料噴射弁21や第一の排気添加弁22−1、第二の排気添加弁22−2の開閉制御等、エンジン11の運転状態に関する各種制御を実施する。このECUは、NOXセンサ47のNOX排出量に基づいて第一の排気添加弁22−1から噴出するアロマフリー燃料23の添加量と、第二の排気添加弁22−2から噴出するアロマ含有燃料24の添加量を調整する。
【0062】
このように、本実施例に係る内燃機関の排気浄化装置を適用したディーゼルエンジンシステムによれば、燃料中のアロマ分を分離し、アロマフリー燃料23とアロマ含有燃料24とに分離する燃料分離装置17を備えているため、アロマフリー燃料23を常時エンジン筒内燃焼用の燃料として用いることができる。この結果、エンジン筒内燃焼により発生するPM生成を抑制し、PM再生頻度を減少することができる。
【0063】
また、アロマフリー燃料23を窒素酸化物浄化装置42の上流側に供給する第一の排気添加弁22−1を備えているため、第一の排気添加弁22−1よりアロマフリー燃料23を窒素酸化物浄化装置42に常時供給することができ、NOX浄化用触媒に反応性の高い還元剤を供給できるため、窒素酸化物浄化装置42内のNOX浄化用触媒に吸蔵された窒素酸化物の還元効率を高めることができる。
【0064】
また、アロマフリー燃料23を窒素酸化物浄化装置42内のNOX浄化用触媒が熱劣化しない温度(例えば400℃)程度にまで添加することで、NOX浄化用触媒の熱劣化を抑制しつつ、粒子状物質捕集装置43内のPMフィルタのフィルタ床温を上昇させることができる。
【0065】
また、アロマ含有燃料24を窒素酸化物浄化装置42と粒子状物質捕集装置43との間に供給する第二の排気添加弁22−2を備えているため、第二の排気添加弁22−2よりアロマ含有燃料24を窒素酸化物浄化装置42と粒子状物質捕集装置43との間に常時供給することができ、粒子状物質捕集装置43内のPMフィルタのフィルタ床温を上昇させることができる。このため、粒子状物質捕集装置43内のPMフィルタのPM再生に必要なフィルタ床温(例えば550℃)にまで効率良く上昇させることができる。
【0066】
また、図4に示すような従来の内燃機関の排気浄化装置では、濃縮されたアロマ分をエンジン燃焼用に用い、アロマ分105aに起因する煤の発生量を増大させ、エンジンの燃焼効率を悪化させている。これに対し、本願発明は、アロマフリー燃料23を燃焼用の燃料として常時用いているため、排気ガス中に煤を発生させないと共に、PM再生頻度を減らすことができる。また、窒素酸化物浄化装置42内のNOX浄化用触媒に吸蔵された窒素酸化物の還元時に、アロマフリー燃料23を還元剤として用いることで、NOX還元効率を高めることができる。更に、アロマ含有燃料24をPM再生時に粒子状物質捕集装置43に供給することでフィルタ床温を上昇させ、PM再生効率を高めることができると共に、アロマ分が燃焼・消費され、高濃度のアロマ分に起因して発生する煤の発生量を大幅に軽減でき、アロマ分を効率良く有効に処理することができる。
【0067】
このように、燃料中のアロマ分を効率よく有効に処理することで、アロマ分の排出を抑制し、アロマ分に起因して発生する煤の発生を大幅に抑制することができると共に、窒素酸化物浄化用触媒に吸蔵された窒素酸化物の還元効率と、粒子状物質捕集装置のPM再生効率の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0068】
本発明による実施例2に係る内燃機関の排気浄化装置をディーゼルエンジンシステムに適用した例について、図3を参照して説明する。
図3は、本発明の実施例に係る内燃機関の排気浄化装置をディーゼルエンジンシステムの構成を簡略に示す概略図である。
本実施例に係る内燃機関の排気浄化装置は、実施例1に係る内燃機関の排気浄化装置を適用したディーゼルエンジンシステムの構成と同様であるため、図1に示す実施例1の内燃機関の排気浄化装置を適用したディーゼルエンジンシステムの構成を示す図は省略し、ディーゼルエンジンシステムの構成を簡略に示す概略図を用いて説明する。また、実施例1と共通の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図3に示すように、本発明の実施例に係る内燃機関の排気浄化装置を適用したディーゼルエンジンシステムは、図1及び図2に示すアロマ含有燃料添加通路L5にアロマ含有燃料24を貯蔵するアロマ含有燃料タンク51を備えている。
【0069】
燃料分離装置17よりアロマ含有燃料添加通路L5−1を介してアロマ含有燃料タンク51に供給されたアロマ含有燃料24を貯蔵する。貯蔵されたアロマ含有燃料24はアロマ含有燃料添加通路L5−2を介して第二の排気添加弁22−2よりアロマ含有燃料24を必要な場合にのみ粒子状物質捕集装置43に供給することができる。
【0070】
このため、粒子状物質捕集装置43内のPMフィルタのフィルタ床温に応じてアロマ含有燃料24を粒子状物質捕集装置43に供給することで、粒子状物質捕集装置43内のPMフィルタのPM再生に必要な温度(例えば550℃)にまで上昇させることができる。
【0071】
このように、本実施例に係る内燃機関の排気浄化装置によれば、燃料中のアロマ分を効率よく有効に処理し、アロマ分の排出を抑制しつつ、粒子状物質捕集装置43内のPMフィルタのフィルタ床温に応じ、アロマ含有燃料24を適時PM再生用に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、この発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、燃料中のアロマ分を分離し、アロマフリー燃料とアロマ含有燃料とに分離し、アロマフリー燃料をエンジン筒内燃焼用の燃料として用い、窒素酸化物浄化装置にアロマフリー燃料を供給し、粒子状物質捕集装置にアロマ含有燃料を供給することで、燃料中のアロマ分を効率よく有効に処理し、NOXの放出、PM再生に有用であり、アロマ分に起因する煤の発生量を軽減しつつ、NOX浄化用触媒に吸蔵されたNOXの還元効率、粒子状物質捕集装置のPM再生効率の向上を図ることが可能な内燃機関に適している。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施例1に係る内燃機関の排気浄化装置を適用したディーゼルエンジンシステムを示す概略構成図である。
【図2】図1に示すエンジンシステムの構成を簡略に示す概略図である。
【図3】本発明の実施例2に係る内燃機関の排気浄化装置をディーゼルエンジンシステムの構成を簡略に示す概略図である。
【図4】従来の内燃機関の排気浄化装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
11 エンジン
12 燃料供給系
13 燃焼室
14 吸気系
15 排気系
16 燃料タンク
17 燃料分離装置
18 燃料ポンプ
19 コモンレール
21 燃料噴射弁
22−1 第一の排気添加弁
22−2 第二の排気添加弁
23 アロマフリー燃料
24 アロマ含有燃料
31 吸気
32 ターボチャージャ
33 インタークーラ
34 スロットル弁
35 EGR通路
36 EGR弁
37 EGRクーラ
41 排気主通路
42 窒素酸化物浄化装置
43 粒子状物質捕集装置
44 エアフロメータ
45 温度センサ
46−1,46−2 空燃比センサ
47 NOXセンサ
51 アロマ含有燃料タンク
L1 メイン燃料通路
L2 アロマフリー燃料送給通路
L3 機関燃料通路
L4 アロマフリー燃料添加通路
L5、L5−1、L5−2 アロマ含有燃料添加通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路内の排気ガス中の窒素酸化物を浄化する窒素酸化物浄化用触媒が収容されている窒素酸化物浄化装置と、
該窒素酸化物浄化装置の下流側に設けられ、前記排気通路内の前記排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタ機能を備えた粒子状物質捕集装置とを有する内燃機関の排気浄化装置であって、
燃料中のアロマ分を分離し、アロマ分を含有しないアロマフリー燃料と、アロマ分を含有するアロマ含有燃料とに分離する燃料分離装置を有し、
前記アロマフリー燃料をエンジン燃焼用の燃料として用いると共に、前記窒素酸化物浄化用触媒に吸蔵された窒素酸化物の還元時に前記アロマフリー燃料を用い、
且つ、前記粒子状物質捕集装置に捕集されたPMを焼失してPM捕集機能を再生するPM再生時に前記分離したアロマ含有燃料を用いることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記燃料分離装置において分離された前記アロマフリー燃料を前記窒素酸化物浄化装置の上流側に供給する第一の排気添加弁と、
前記燃料分離装置において分離された前記アロマ含有燃料を前記窒素酸化物浄化装置と前記粒子状物質捕集装置との間に供給する第二の排気添加弁とを有することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記窒素酸化物浄化装置と前記粒子状物質捕集装置との間隔が、温度伝達が起こり難い所定間隔を有することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つにおいて、
前記燃料分離装置で分離された前記アロマ含有燃料を貯蔵するアロマ含有燃料タンクを有することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−286180(P2008−286180A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134641(P2007−134641)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】