説明

内燃機関の潤滑システム

【課題】ピストンおよびオイルを早期に昇温させることができる内燃機関の潤滑システムを提供する。
【解決手段】内燃機関の潤滑システム(100)は、内燃機関(10)の運転状態に関する情報を取得する運転情報取得手段と、内燃機関のピストンにオイルを供給するオイルジェット手段(40)と、オイルジェット手段に供給されるオイルを内燃機関の排気で加熱する加熱手段(51,60,61)と、運転情報取得手段の取得結果に基づいて、オイルジェット手段の動作を制御するとともに、加熱手段の動作を制御する制御手段(70)と、を備えることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の潤滑システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の潤滑システムとして、暖機時にオイルジェットによるピストンへのオイル供給を停止する潤滑システムが知られている。例えば、特許文献1には、触媒活性までの間(すなわち暖機中)、オイルジェットによるオイル供給を停止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−42346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
暖機時にオイルジェットによるオイル供給を停止させることによって、ピストンを早期に昇温させることができる。しかしながら、暖機時にオイルジェットによるオイル供給が停止された場合、オイルの受熱が抑制されることから、オイルを早期に昇温させることが困難になる。
【0005】
本発明は、ピストンおよびオイルを早期に昇温させることができる内燃機関の潤滑システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内燃機関の潤滑システムは、内燃機関の運転状態に関する情報を取得する運転情報取得手段と、前記内燃機関のピストンにオイルを供給するオイルジェット手段と、前記オイルジェット手段に供給されるオイルを前記内燃機関の排気で加熱する加熱手段と、前記運転情報取得手段の取得結果に基づいて、前記オイルジェット手段の動作を制御するとともに、前記加熱手段の動作を制御する制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る内燃機関の潤滑システムによれば、オイルジェット手段によるオイル供給を停止させることによって、ピストンを早期に昇温させることができる。また、加熱手段による加熱の実行を行うことによって、オイルを早期に昇温させることができる。
【0008】
上記構成において、前記運転情報取得手段は、前記内燃機関の運転状態に関する情報のうち前記ピストンの温度を判断するための情報を取得するピストン温度情報取得手段と、前記内燃機関の運転状態に関する情報のうち前記オイルジェット手段に供給されるオイルの温度を判断するための情報を取得するオイル温度情報取得手段と、含み、前記制御手段は、前記ピストン温度情報取得手段の取得結果に基づいて前記オイルジェット手段の動作を制御し、前記オイル温度情報取得手段の取得結果に基づいて前記加熱手段の動作を制御してもよい。
【0009】
この構成によれば、ピストン温度情報取得手段の取得結果に基づいてオイルジェットのオイル供給を停止させることによって、ピストンを昇温させることができる。また、オイル温度情報取得手段の取得結果に基づいて加熱手段によるオイルの加熱を実行することによって、オイルを昇温させることができる。その結果、ピストンの昇温およびオイルの昇温を適切に行うことができる。
【0010】
上記構成は、前記内燃機関の排気の一部を吸気に戻す排気再循環経路を備え、前記加熱手段は、前記排気再循環経路の排気と前記オイルジェット手段に供給されるオイルとの間で熱交換を行うEGRクーラを有していてもよい。
【0011】
この構成によれば、排気の一部を吸気に戻すことができることから、EGR効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ピストンおよびオイルを早期に昇温させることができる内燃機関の潤滑システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例1に係る内燃機関の潤滑システムの構成を示す模式図である。
【図2】図2は、実施例2に係る内燃機関の潤滑システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1に係る内燃機関の潤滑システム100について説明する。図1は、潤滑システム100の構成を示す模式図である。潤滑システム100は、主として、内燃機関(エンジン)10と、各種経路(吸気経路20、排気経路21、排気再循環経路22、オイル経路23および冷媒経路24)と、温度センサ30と、オイルジェット装置40(O/J)と、第1EGRクーラ50と、第2EGRクーラ51と、EGRバルブ60と、三方弁61と、ECU70と、を備える。
【0016】
吸気経路20は、吸気を内燃機関10の吸気ポートに導くための経路である。排気経路21は、内燃機関10の排気ポートから排出された排気を潤滑システム100の外部へ排出するための経路である。排気再循環経路22は、排気経路21の経路途中と吸気経路20の経路途中とに接続され、排気経路21を流動する排気の一部を吸気経路20に導くための経路である。吸気経路20に戻される排気の一部(すなわち、排気再循環経路22の排気)をEGRガスと称する。
【0017】
オイル経路23は、オイルジェット装置40と第2EGRクーラ51との間を循環するオイルが流動するための経路である。冷媒経路24は、内燃機関10と第1EGRクーラ50との間を循環する冷媒(例えば水)が流動するための経路である。
【0018】
温度センサ30は、内燃機関10と第1EGRクーラ50との間を循環する冷媒の温度を取得して、取得結果をECU70に伝える。冷媒の温度は、内燃機関10の運転状態に応じて変化する。温度センサ30は、内燃機関10の運転状態に関する情報を取得する運転情報取得手段として機能する。また、冷媒の温度は、オイルの温度と相関関係を有する。よって、温度センサ30は、オイルの温度を判断するための情報を取得するオイル温度情報取得手段として機能する。なお、オイルの温度を判断できる情報を取得する手段であれば、温度センサ30に限られない。例えば、冷媒の温度を取得する温度センサ30の代わりに、オイルの温度を直接取得する温度センサ等を用いてもよい。
【0019】
オイルジェット装置40は、ECU70からの指示を受けて、内燃機関10のピストンにオイル経路23のオイルを供給する装置である。すなわち、オイルジェット装置40は、内燃機関10のピストンにオイルを供給するオイルジェット手段として機能する。オイルジェット装置40からオイルが供給されることによって、ピストンは冷却される。オイルジェット装置40のピストンへのオイル供給箇所は、オイルが供給されることによってピストンが冷却され得る箇所であれば特に限定されない。本実施例において、オイルジェット装置40は、ピストンの下面側(クランク側)に向けてオイルを噴射する。
【0020】
第1EGRクーラ50は、排気再循環経路22の排気(すなわち、EGRガス)と冷媒経路24の冷媒との間で熱交換を行う装置である。第1EGRクーラ50において、EGRガスは冷媒によって冷却される。
【0021】
第2EGRクーラ51は、EGRガスとオイル経路23のオイルとの間で熱交換を行う装置である。第2EGRクーラ51において、オイル経路23のオイルはEGRガスによって加熱される。
【0022】
EGRバルブ60は、排気再循環経路22の第1EGRクーラ50および第2EGRクーラ51より下流側に配置されている。EGRバルブ60は、ECU70からの指示を受けて、開閉する弁である。EGRバルブ60が開の場合、第1EGRクーラ50および第2EGRクーラ51と吸気経路20とは連通する。
【0023】
三方弁61は、排気再循環経路22の第1EGRクーラ50および第2EGRクーラ51より上流側に配置されている。三方弁61はECU70からの指示を受けて、EGRガスを、第1EGRクーラ50と第2EGRクーラ51のいずれか一方へ流入させる。三方弁61がEGRガスを第2EGRクーラ51に流入させ、かつEGRバルブ60が開の場合、第2EGRクーラ51において、オイル経路23のオイルとEGRガスとの間で熱交換が行われる。すなわち、第2EGRクーラ51、EGRバルブ60および三方弁61は、オイルジェット装置40に供給されるオイルを内燃機関10の排気で加熱する加熱手段として機能する。一方、三方弁61がEGRガスを第1EGRクーラ50に流入させ、かつEGRバルブ60が開の場合、第1EGRクーラ50において、冷媒経路24の冷媒とEGRガスとの間で熱交換が行われる。
【0024】
ECU70は、CPU71、ROM72およびRAM73を有するマイクロコンピュータである。ECU70は、燃料噴射量のマップを有している。ECU70は、燃料噴射量に基づいてピストンの温度を推定演算する。すなわち、ECU70は、ピストンの温度を判断するための情報を取得するピストン温度情報取得手段として機能する。なお、ECU70は、例えばアクセル開度センサの取得するアクセル開度に基づいて、ピストンの温度を判断してもよい。この場合、アクセル開度センサが、ピストン温度情報取得手段に相当する。
【0025】
また、ECU70は、燃料噴射量に基づいて推定演算されたピストンの温度と、温度センサ30の取得結果と、に基づいて、オイルジェット装置40の動作および加熱手段の動作を制御する制御手段として機能する。具体的には、ECU70は、推定演算されたピストンの温度に基づいて、オイルジェット装置40によるオイル供給が実行または停止されるように、オイルジェット装置40を制御する。より具体的には、ECU70は、推定演算されたピストンの温度が所定値以下の場合には、ピストンへのオイル供給が停止されるようにオイルジェット装置40を制御する。この場合、ピストンのオイルによる冷却が停止されることから、ピストンを早期に昇温させることができる。一方、ECU70は、推定演算されたピストンの温度が所定値以下でない場合には、オイル供給が実行されるようにオイルジェット装置40を制御する。この場合、ピストンは、オイルによって冷却される。
【0026】
また、ECU70は、温度センサ30の取得結果に基づいて、三方弁61およびEGRバルブ60を制御する。より具体的には、ECU70は、温度センサ30の取得結果が例えば暖機が必要な所定温度(例えば、80度程度)以下の場合、第2EGRクーラ51にEGRガスが流入するように三方弁61を制御するとともにEGRバルブ60を開に制御する。この場合、第2EGRクーラ51において、オイルはEGRガスによって加熱される。それにより、オイルを早期に昇温させることができる。第2EGRクーラ51を通過したEGRガスは、吸気経路20に流入する。それにより、EGR効果を得ることができる。
【0027】
一方、ECU70は、温度センサ30の取得結果が所定温度以下でない場合には、暖機が必要でないことから、第1EGRクーラ50にEGRガスが流入するように三方弁61を制御する。この場合、第2EGRクーラ51におけるオイル加熱は停止される。なお、第1EGRクーラ50にEGRガスが流入した場合に、さらにEGRバルブ60が開に制御された場合には、第1EGRクーラ50によって冷却されたEGRガスは、吸気経路20に流入する。それにより、EGR効果が得られる。
【0028】
なお、ECU70は、ピストンの温度と温度センサ30の取得結果のいずれか一方に基づいてオイルジェット装置40、三方弁61およびEGRバルブ60を制御してもよい。例えば、ECU70は、温度センサ30の取得結果が所定温度以下の場合、オイル供給が停止されるようにオイルジェット装置40を制御しかつ第2EGRクーラ51におけるオイル加熱が実行されるように三方弁61およびEGRバルブ60を制御してもよい。この場合においても、内燃機関10の運転状態に応じて、オイルジェット装置40によるオイル供給の実行および停止、並びにEGRガスによるオイル加熱の実行および停止を行うことができる。それにより、ピストンおよびオイルを早期に昇温させることができる。しかしながら、本実施例のようにECU70がピストンの温度に基づいてオイルジェット装置40を制御し、温度センサ30の取得結果に基づいて三方弁61およびEGRバルブ60を制御する方が、ピストンの昇温およびオイルの昇温をより適切に行うことができる点で好ましい。
【実施例2】
【0029】
続いて、本発明の実施例2に係る内燃機関の潤滑システム100aについて説明する。図2は、潤滑システム100aの構成を示す模式図である。潤滑システム100aは、EGR機構(第1EGRクーラ50、第2EGRクーラ51、冷媒経路24、排気再循環経路22、EGRバルブ60および三方弁61)を備えていない点において、図1の潤滑システム100と異なる。また、潤滑システム100aは、熱交換器用排気経路25と、熱交換器52と、開閉弁62および開閉弁63と、を備える点において、図1の潤滑システム100と異なる。
【0030】
熱交換器用排気経路25は、排気経路21の排気を、熱交換器52と排気経路21との間で循環させるための経路である。
【0031】
熱交換器52は、オイル経路23のオイルと熱交換器用排気経路25の排気との間で熱交換を行う装置である。
【0032】
開閉弁62は、オイル経路23に配置されている。開閉弁62は、ECU70の指示を受けて、熱交換器52へのオイルの流入の停止および開始を行う。開閉弁62が閉の場合、熱交換器52へのオイル流入は停止され、開閉弁62が開の場合、熱交換器52へのオイル流入は開始される。開閉弁63は、熱交換器用排気経路25に配置されている。開閉弁63は、ECU70の指示を受けて、熱交換器52への排気の流入の停止および開始を行う。開閉弁63が閉の場合、熱交換器52への排気流入は停止され、開閉弁63が開の場合、熱交換器52への排気流入は開始される。すなわち、熱交換器52、開閉弁62および開閉弁63は、オイル経路23のオイルを内燃機関の排気で加熱する加熱手段としての機能を有する。なお、潤滑システム100aは、開閉弁62および開閉弁63のいずれか一方のみを備えていてもよい。
【0033】
ECU70は、燃料噴射量に基づいて推定演算されたピストンの温度に基づいて、オイルジェット装置40の動作を制御する。この制御の詳細な説明は、実施例1と同様のため、省略する。
【0034】
また、ECU70は、温度センサ30の取得結果に基づいて開閉弁62および開閉弁63の動作を制御する。具体的には、ECU70は、温度センサ30の取得結果が例えば暖機が必要な所定温度(例えば、80度程度)以下の場合、熱交換器52における熱交換が実行されるように開閉弁62および開閉弁63を開にする。この場合、熱交換器52において、オイルは排気によって加熱される。それにより、オイルを早期に昇温させることができる。一方、ECU70は、温度センサ30の取得結果が所定温度以下でない場合には、暖機が必要でないことから、熱交換器52における熱交換が停止されるように開閉弁62および開閉弁63を制御する。この場合、熱交換器52におけるオイル加熱は停止される。
【0035】
本実施例に係る潤滑システム100aにおいても、ピストンおよびオイルを早期に昇温させることができる。
【0036】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 内燃機関
22 排気再循環経路
30 温度センサ
40 オイルジェット装置
50 第1EGRクーラ
51 第2EGRクーラ
52 熱交換器
60 EGRバルブ
61 三方弁
62 開閉弁
63 開閉弁
70 ECU
100 内燃機関の潤滑システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の運転状態に関する情報を取得する運転情報取得手段と、
前記内燃機関のピストンにオイルを供給するオイルジェット手段と、
前記オイルジェット手段に供給されるオイルを前記内燃機関の排気で加熱する加熱手段と、
前記運転情報取得手段の取得結果に基づいて、前記オイルジェット手段の動作を制御するとともに、前記加熱手段の動作を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の潤滑システム。
【請求項2】
前記運転情報取得手段は、前記内燃機関の運転状態に関する情報のうち前記ピストンの温度を判断するための情報を取得するピストン温度情報取得手段と、前記内燃機関の運転状態に関する情報のうち前記オイルジェット手段に供給されるオイルの温度を判断するための情報を取得するオイル温度情報取得手段と、含み、
前記制御手段は、前記ピストン温度情報取得手段の取得結果に基づいて前記オイルジェット手段の動作を制御し、前記オイル温度情報取得手段の取得結果に基づいて前記加熱手段の動作を制御する請求項1記載の内燃機関の潤滑システム。
【請求項3】
前記内燃機関の排気の一部を吸気に戻す排気再循環経路を備え、
前記加熱手段は、前記排気再循環経路の排気と前記オイルジェット手段に供給されるオイルとの間で熱交換を行うEGRクーラを有する請求項1または2に記載の内燃機関の潤滑システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−209895(P2010−209895A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60153(P2009−60153)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】