説明

円形溶接用トーチ駆動装置、これを備えた溶接装置、及び溶接方法

【課題】従来、車両運搬船の車両搭載甲板へのラッシングポットの取り付けは、手作業で行われており、ラッシングポットの個数が多く、多くの工数を要するというという問題がある。
【解決手段】固定台と、固定台の内側に回転台支持用ベアリングを介して設けられた回転台と、回転台の上部に取り付けられ、トーチを回転台の回転軸心から偏心して支持するトーチ支持台と、回転台の中央に差込金物支持用ベアリングを介して設けられた差込金物とを備えた円形溶接用トーチ駆動装置を採用した。これにより、差込金物を車両搭載甲板のラッシンクポット等の、溶接面が円形の金物内に挿入することにより簡単に円形溶接用トーチ駆動装置を位置決めすることができ、確実に車両搭載甲板の上面と溶接面が円形の金物との接合部の溶接作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運搬船(自動車運搬船、カーフェリー等)において、車両を固縛するために車両運搬船の車両搭載甲板に取り付けられる多数のラッシングポット等の、溶接面が円形の金物の周囲を、円形に溶接するための、円形溶接用トーチ駆動装置、これを備えた溶接装置、及び溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両運搬船では、搭載された車両を固縛するために、多数のラッシングポット(埋込型車両固縛金物)を、車両搭載甲板に溶接により取り付けている。
この場合、船舶建造時において、車両搭載甲板ブロックの製作時には、車両搭載甲板ブロックは反転させられ、車両搭載甲板ブロックに明けられた多数の穴に各々ラッシングポットが差し込まれ、車両搭載甲板とラッシングポットとは全周囲に亘って溶接(裏面全周囲溶接)される。
その後、車両搭載甲板ブロックは反転させられ正規の状態にて船台に搭載され、取り付け済みの車両搭載甲板ブロックと溶接接続された後、車両搭載甲板ブロックの上面から、車両搭載甲板の穴とラッシングポットとが全周囲に亘って溶接(上面全周囲溶接)される。
【0003】
このとき、取り付けるラッシングポットの数量は、車両運搬船1隻当たり1万〜2万個程度であり、この多数のラッシングポットの上面全周囲溶接は手作業で行われていた。
この場合、ラッシングポットの個数が多く、多くの工数を要していた。
また、ラッシングポットにおける個々の溶接作業量は少ないが、広い区画に点在しており、作業場所を逐次移動しつつ作業する必要があり、段取替えが頻繁に発生していた。
更に、溶接作業は、下向き姿勢での連続作業であり、作業者の腰・手首の負担が大きくなっていた。
このように、手作業による溶接には種々の問題があった。
【0004】
一方、今までに、自動溶接機を使用して上面全周囲溶接を行うことが試みられていたが、自動溶接機(送給機・電源装置)が重く、段取替えに多くの時間を要する上に、溶接機械を、各ラッシングポットに対して正確に位置合わせを行う必要があり、位置調整に多大な時間を要するという問題があった。
【0005】
なお、補強リブを外周面に取り付けた大形被溶接円筒に該被溶接円筒の一部を成す円形の被溶接金物を立向姿勢で自動溶接する装置として、溶接箇所の上下の補強リブに跨がって取り付けられる架台上に上、下方向に移動自在な上下位置調整スライドを搭載する一方、前記被溶接円筒と直交する水平面内において該円筒に対して任意の傾きを以って固定しうる角度調整板を前記上下位置調整スライドに取り付けると共に溶接ヘッドを支える支持アームを前記水平面内において旋回可能に該角度調整板に取り付けて溶接ヘッドの溶接トーチを被溶接物に対して直交するように調整可能とし、更に前記溶接トーチを前記被溶接金物まわりに回転するようにすると共に該溶接トーチの反対側に配置された非接触センサによって溶接トーチを被溶接物に治って上下動させるように溶接ヘッドに装置した立向円周自動溶接装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、円形の被溶接金物を自動溶接する装置ではあるものの、補強リブ等がなく平らな車両搭載甲板におけるラッシングポットの溶接には適用できない。
しかも、装置が複雑で重量が重たいものとなり、1万〜2万個もあるラッシングポットを溶接する場合、溶接装置の移動、セッティングに多大の時間を要するという問題がある。
【0007】
また、母材の貫通孔に管材を指し込み、管材と母材とを溶接する管内周溶接装置として、直線部分と一定曲率のコーナ部とを有する形状の被溶接部が内周面に形成された管材に固定され且つ前記直線部分と平行な案内部が形成されたベースと、このベースの前記案内部に沿って駆動し且つこの案内部と直角な案内部が形成されたスライダと、このスライダの前記案内部に沿って駆動し且つこの案内部及び前記ベースの案内部と直角な案内部が形成された台車と、この台車の前記案内部に沿って駆動し且つこの駆動方向と平行な軸回りに駆動回転可能に前記台車に支持されたホルダと、前記被溶接部と対向する溶接トーチが設けられると共に前記管材の内周面に当接する倣いローラが設けられ且つこの倣いローラを常に前記管材の内周面に押圧する押圧部材を介して前記ホルダに取り付けられたブラケットと、このブラケットの溶接進行方向前方に突設されて前記管材の内周面に当接し得るリミットスイッチと、溶接アークの電圧を検出する電圧検出器と、前記リミットスイッチからの信号により前記ホルダの駆動回転と前記スライダ及び前記台車の駆動とを制御すると共に前記電圧検出器からの信号により前記溶接アークの電圧が常に一定となるように前記ホルダの駆動を制御する制御機器とを備えた管内間溶接装置が開示されている(例えば、特許文献2。)。
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載のものは、母材に取り付ける管材の他端が開放されたものにしか採用できず、車両搭載甲板におけるラッシングポットのように、底があるものには適用できないという問題がある。
【0009】
また、円筒構造物の円形の穴に円盤状貫通金物を嵌め込み、円形穴貫通部材の中心穴に溶接装置をセットするセット治具の軸を取り付け袋ナットで溶接装置の中心軸を固定し、円形の穴と円盤状貫通金物とを溶接するものが開示されている(例えば、特許文献3。)。
【0010】
しかしながら、特許文献3に記載のものは、円盤状貫通金物に孔を明ける必要があり、孔を明けることができないラッシングポットには適用できない。
また、車両搭載甲板においては、裏面の天井の高さは3〜4mあり、裏面から固定用の締め付けナットを1万〜2万個、取り付け/取り外し作業を行うことは実用上困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭59−48708号公報
【特許文献2】特開昭59−27782号公報
【特許文献3】特開平6−234071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の種々の問題点を解決すべく提案されたものであり、車両運搬船の車両搭載甲板用の多数のラッシングポット等の、溶接面が円形の金物を、溶接による取り付け作業において、段取替えが容易で、簡単に位置調整ができる、円形溶接用トーチ駆動装置、これを備えた溶接装置、及び溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたもので、特許請求の範囲に記載された各発明は、円形溶接用トーチ駆動装置、これを備えた溶接装置、及び溶接方法として、それぞれ以下に述べる各手段を採用したものである。
【0014】
(1)第1の手段の円形溶接用トーチ駆動装置は、
固定台と、
前記固定台の内側に回転台支持用ベアリングを介して設けられた回転台と、
前記回転台の上部に取り付けられ、トーチを支持するトーチ支持台と、
前記固定台に明けられたトーチノズル挿入孔と、
前記回転台の下方中央に設けられた差込金物とを備えたことを特徴とする円形溶接用トーチ駆動装置。
【0015】
(2)第2の手段の円形溶接用トーチ駆動装置は、
固定台と、
前記固定台の内側に回転台支持用ベアリングを介して設けられた回転台と、
前記回転台の上部に取り付けられ、トーチを前記回転台の回転軸心から偏心して支持するトーチ支持台と、
前記固定台に明けられたトーチノズル挿入孔と、
前記回転台の中央に差込金物支持用ベアリングを介して設けられた差込金物とを備えたことを特徴とする。
【0016】
(3)第3の手段は、第2の手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記固定台の下部周囲に取り付けられた固定用電磁石を備えたことを特徴とする。
【0017】
(4)第4の手段は、第2又は3の手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記差込金物は、ラッシングポットの係止棒を跨ぐ係止棒跨ぎ部が下部中央に形成されたものであることを特徴とする。
【0018】
(5)第5の手段は、第2乃至4のいずれかの手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記差込金物は、ラッシングポット内面と当接するラッシングポット内壁当接部が下部外周に形成されたものであることを特徴とする。
【0019】
(6)第6の手段は、第2乃至5のいずれかの手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記差込金物は、ラッシングポットへの挿入時に前記差込金物を案内する下端外周傾斜部が下端外周に形成されたものであることを特徴とする。
【0020】
(7)第7の手段は、第2乃至6のいずれかの手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記固定台の上部に取り付けられた枠状の固定台枠を備えたことを特徴とする。
【0021】
(8)第8の手段は、第2乃至7のいずれかの手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記差込金物の上部に取り付けられて前記差込金物が自在に回転するのを規制する回転規制手段を備えたことを特徴とする。
【0022】
(9)第9の手段は、第2乃至8のいずれかの手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記固定台に取り付けられた駆動モータと、
前記駆動モータの出力軸に取り付けられた駆動歯車と、
前記回転台の外周に形成され前記駆動歯車と噛合する受動歯車部とを備えたことを特徴とする。
【0023】
(10)第10の手段は、第9の手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記駆動モータを制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前回の溶接作業時と逆の方向に前記駆動モータを回転させて溶接作業を行う通常運転制御回路を有することを特徴とする。
【0024】
(11)第11の手段は、第10の手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記固定台に取り付けられて前記回転台の作業開始位置を検出する作業開始位置検出器を備え、
前記制御装置は、作業開始釦を有し、
前記通常運転制御回路は、
前記作業開始釦が操作されることにより、前記溶接作業を行い、前記作業開始位置検出器が作動した信号を受信した後、一定継続時間前記溶接作業を行って停止し、その後、前記溶接作業を停止した状態で前記駆動モータを逆転し、前記作業開始位置検出器が作動した信号を受信したときに前記駆動モータを停止する制御を実行するものであることを特徴とする。
【0025】
(12)第12の手段は、第11の手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記制御装置は、
リセット釦と、
前記リセット釦が操作されることにより、前記作業開始位置検出器が作動する迄、直前の溶接作業時と逆の方向に前記駆動モータを回転させる制御を実行するリセット回路とを有することを特徴とする。
【0026】
(13)第13の手段の溶接装置は、
請求項11又は12に記載の円形溶接用トーチ駆動装置と、
前記トーチ支持台に前記回転台の回転軸心から偏心して支持されたトーチと、
前記トーチにシールエア、溶接用電流及びトーチワイヤを供給する溶接機本体とを備え、
前記通常運転制御回路は、前記作業開始釦が押されたときから、前記作業開始位置検出器が作動した信号を受信し前記一定継続時間が経過するまで、前記溶接機本体を駆動させる制御を行うものであることを特徴とする。
【0027】
(14)第14の手段の溶接方法は、
固定台と、前記固定台の内側に回転可能に設けられた回転台と、前記回転台の上部に取り付けられたトーチ支持台と、前記固定台に取り付けられ前記回転台を回転させる駆動モータと、下部中央にラッシングポットの係止棒を跨ぐ係止棒跨ぎ部が形成されて前記回転台の中央下部に回動自在に設けられた差込金物と、前記駆動モータを制御する制御装置とを有する円形溶接用トーチ駆動装置と、
前記トーチ支持台に配設されたトーチと、
前記トーチにシールエア、溶接用電流及びトーチワイヤを供給する溶接機本体とを備え、
前記係止棒跨ぎ部が車両搭載甲板のラッシングポットの係止棒を跨ぐように前記差込金物をラッシングポット内に挿入して前記円形溶接用トーチ駆動装置を車両搭載甲板上に設置し、
前記制御装置により、前回の溶接作業時と逆の方向に前記駆動モータにより前記トーチを旋回させて、前記車両搭載甲板の上面と前記ラッシングポットとの接合部の溶接作業を行うことを特徴とする。
【0028】
(15)第15の手段は、第14の手段の溶接方法において、
前記固定台の下部周囲に3個の固定用電磁石を有し、
前記固定用電磁石を励磁することにより、前記円形溶接用トーチ駆動装置を車両搭載甲板上に固定することを特徴とする。
【0029】
(16)第16の手段は、第14又は15の手段の溶接方法において、
前記円形溶接用トーチ駆動装置は、前記差込金物の上部に取り付けられて前記差込金物が自在に回転するのを規制する回転規制手段を有し、
前記円形溶接用トーチ駆動装置の移動中は、前記差込金物が回転規制手段により前記回転台に対し一定の方向に向いていることを特徴とする。
【0030】
(17)第17の手段は、第1の手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記回転台の上面に設けられ前記差込金物を昇降させる差込金物昇降装置とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【0031】
(18)第18の手段は、第17の手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記差込金物昇降装置は、
前記差込金物に取付けられるとともに前記回転台を貫通して上方に延在する差込金物昇降軸と、
前記回転台の上面に取り付けられた差込金物昇降用モータと、
前記差込金物昇降用モータの出力軸に連結された回転ねじと、
前記回転ねじと噛合し前記回転ねじの回転により昇降するナットブロックと、
中央部に前記差込金物昇降軸が軸支され一端が前記ナットブロックに軸支され他端が前記回転台に軸支されたリンクとを有することを特徴とする。
【0032】
(19)第19の手段は、第17又は18の手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記固定台の下部周囲に取り付けられた固定用電磁石を備えたことを特徴とする。
【0033】
(20)第20の手段は、第17乃至19のいずれかの手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記固定台に取り付けられた駆動モータと、
前記駆動モータの出力軸に取り付けられた駆動歯車と、
前記回転台の外周に形成され前記駆動歯車と噛合する受動歯車部とを備えたことを特徴とする。
【0034】
(21)第21の手段は、第17乃至20のいずれかの手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記差込金物は、降下したときに車両搭載甲板に明けられた穴に嵌り込むように形成されたものであることを特徴とする。
【0035】
(22)第22の手段は、第17乃至21のいずれかの手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記固定台の上部に取り付けられた枠状の固定台枠を備えたことを特徴とする。
【0036】
(23)第23の手段は、第20の手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記駆動モータを制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前回の溶接作業時と逆の方向に前記駆動モータを回転させて溶接作業を行う通常運転制御回路を有することを特徴とする。
【0037】
(24)第24の手段は、第23の手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記固定台に取り付けられて前記回転台の作業開始位置を検出する作業開始位置検出器を備え、
前記制御装置は、作業開始釦を有し、
前記通常運転制御回路は、
前記作業開始釦が操作されることにより、前記差込金物を上昇させた後、前記溶接作業を行い、前記作業開始位置検出器が作動した信号を受信した後、一定継続時間前記溶接作業を行って停止し、その後、前記溶接作業を停止した状態で前記駆動モータを逆転し、前記作業開始位置検出器が作動した信号を受信したときに前記駆動モータを停止する制御を実行するものであることを特徴とする。
【0038】
(25)第25の手段は、第24の手段の円形溶接用トーチ駆動装置において、
前記制御装置は、
リセット釦と、
前記リセット釦が操作されることにより、前記作業開始位置検出器が作動する迄、直前の溶接作業時と逆の方向に前記駆動モータを回転させる制御を実行するリセット回路とを有することを特徴とする。
【0039】
(26)第26の手段の溶接装置は、
第23乃至25のいずれかの手段に記載の円形溶接用トーチ駆動装置と、
前記トーチ支持台にその先端が前記回転台の回転軸心から偏心して支持されたトーチと、
前記トーチにシールエア、溶接用電流及びトーチワイヤを供給する溶接機本体とを備え、
前記通常運転制御回路は、前記作業開始釦が押されたときから、前記作業開始位置検出器が作動した信号を受信し前記一定継続時間が経過するまで、前記溶接機本体を駆動させる制御を行うものであることを特徴とする。
【0040】
(27)第27の手段の溶接方法は、
固定台と、前記固定台の内側に回転可能に設けられた回転台と、前記回転台の上部に取り付けられたトーチ支持台と、前記固定台に取り付けられ前記回転台を回転させる駆動モータと、降下したときに車両搭載甲板に明けられた穴に嵌り込むように形成された差込金物と、前記差込金物を昇降させる差込金物昇降装置と、
前記駆動モータを制御する制御装置とを有する円形溶接用トーチ駆動装置と、
前記トーチ支持台に配設されたトーチと、
前記トーチにシールエア、溶接用電流及びトーチワイヤを供給する溶接機本体とを備え、
前記差込金物を車両搭載甲板に明けられた穴に嵌め込み前記円形溶接用トーチ駆動装置を車両搭載甲板上に設置し、
前記制御装置により、前記差込金物を上昇させた後、前回の溶接作業時と逆の方向に前記駆動モータにより前記トーチを旋回させて、前記車両搭載甲板に明けられた穴の内面と前記ラッシングポットとの接合部の溶接作業を行うことを特徴とする。
【0041】
(28)第28の手段は、第27の手段の溶接方法において、
前記固定台の下部周囲に3個の固定用電磁石を有し、
前記固定用電磁石を励磁することにより、前記円形溶接用トーチ駆動装置を車両搭載甲板上に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0042】
特許請求の範囲に記載の各請求項に係る発明によれば、差込金物を車両搭載甲板のラッシンクポット等の、溶接面が円形の金物、或いは車両搭載甲板に明けられた穴内に挿入することにより簡単に円形溶接用トーチ駆動装置を位置決めすることができ、確実に車両搭載甲板と溶接面が円形の金物との接合部の溶接作業を行うことができる。
【0043】
また、固定台の下部周囲に固定用電磁石を備えれば、この固定用電磁石を励磁することにより、円形溶接用トーチ駆動装置を車両搭載甲板上に強固に固定することができ、且つ、無励磁にすることにより、容易に円形溶接用トーチ駆動装置を移動させることができる。
【0044】
また、差込金物が自在に回転するのを規制する回転規制手段を備えたものにおいては、円形溶接用トーチ駆動装置の移動中においては差込金物の回転は規制され常に回転台に対し一定の方向に向いているので、次の溶接面が円形の金物への設置を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る円形溶接用トーチ駆動装置、これを備えた溶接装置の垂直断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る通常運転制御回路の制御フロー図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るリセット回路の制御フロー図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る円形溶接用トーチ駆動装置、これを備えた溶接装置のトーチ取り付け部分を示す垂直断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る円形溶接用トーチ駆動装置、これを備えた溶接装置の差込金物昇降装置を示す垂直断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る通常運転制御回路の制御フロー図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るリセット回路の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
<<<本発明の第1の実施形態>>>
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る円形溶接用トーチ駆動装置、これを備えた溶接装置の垂直断面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る通常運転制御回路の制御フロー図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係るリセット回路の制御フロー図である。
【0047】
搭載される車両の種類、大きさは色々であるため、どのような車両でも対応できるように、車両搭載甲板1の取り付け穴、及びラッシングポット2は、例えば、600〜1000mm間隔で縦横に配置されている。
車両運搬船において車両搭載甲板1は複数段あり、取り付け穴及びラッシングポット2の個数は、多いもので1隻当たり1万〜2万個になる。
ラッシングポット2は、底を有する円筒状のポット部2aと、ポット部2a内の上部に取り付けられた係止棒2bとで構成されている。
以下、車両運搬船の車両搭載甲板1に、底を有する円筒状のラッシングポット2を溶接する場合について説明するが、これに限定されるものではなく、溶接面が円形で中央が凹形状のその他の金物の溶接にも適用できるものである。
また、ポット部2aが半球状のラッシングポット2にも適用可能である。
【0048】
<<円形溶接用トーチ駆動装置、これを備えた溶接装置の構成>>
図1に基づき本発明の第1の実施形態に係る円形溶接用トーチ駆動装置、これを備えた溶接装置の構成につき説明する。
円形溶接用(ラッシングポット溶接用)トーチ駆動装置7は、下部周囲に3個の固定用電磁石12を有する固定台10と、固定台10の内側に回転台支持用ベアリング14を介して設けられた回転台30と、回転台30の上部に取り付けられると共にトーチ4を回転台30の回転軸心から偏心して支持するトーチ支持台40と、回転台30の中央下部に差込金物支持用ベアリング46a、46bを介して設けられた差込金物50と、固定台10の上部に取り付けられた枠状の固定台枠13とを備えている。
【0049】
<固定台>
固定台10は、アルミニウム製或いはアルミニウム合金製(以下、「アルミ製」と称する)のリング状の固定台基部11を備えている。
固定台10の固定台基部11の下部周囲には、3個の固定用電磁石12がボルトナット等により等間隔に取り付けられている。
なお、固定用電磁石12の個数は4個以上としても構わないが、車両搭載甲板1は必ずしも完全な平面ではないため、3個の固定用電磁石12による3点支持とした方が、円形溶接用トーチ駆動装置7の安定性が良くなる。
そして、固定用電磁石12は、後記する操作箱60及び制御箱65によりオン/オフ制御されるようになっている。
【0050】
固定台10の固定台基部11の上面には、少なくとも3本以上(例えば、4本)のアルミパイプ製の固定台枠13の固定台枠垂直部13aが取り付けられている。
固定台枠垂直部13aの頂部には、四角形枠状(或いは円形枠状)に形成されたアルミパイプ製の固定台枠13の上部ハンドル13bが取り付けられている。
この上部ハンドル13bは、円形溶接用トーチ駆動装置7を持ち運ぶ際のハンドル、及び後記するトーチ用パワーケーブル5の案内部材として機能するようになっている。
【0051】
固定台基部11には、アルミ製のモータ取付け台16が取り付けられている。
モータ取付け台16には、電動の駆動モータ17が取り付けられている。
駆動モータ17は、減速機、ブレーキ(電源オフ時にブレーキオン)付きのDCモータであり、後記する操作箱60及び制御箱65により正転/逆転制御されるようになっている。
また、駆動モータ17のモータ出力軸17aには、後記する受動歯車部32と噛合する小径の駆動歯車18が取り付けられている。
【0052】
更に、固定台基部11には、検出器取付け台19を介して、作業開始位置検出器(リミットスイッチ等)20が取り付けられている。
作業開始位置検出器20は、回転台30の作業開始位置を検出するものであり、後記する回転台基部31(或いは受動歯車部32)に取り付けられた位置検出器作動手段35により作動され、その作動信号は後記する操作箱60及び制御箱65に送信されるようになっている。
【0053】
固定台10のリング状の固定台基部11の内側には、回転台30を回転可能に支持する回転台支持用ベアリング14が設けられている。
回転台支持用ベアリング14の外輪は、固定台基部11の内側の凹部とベアリング押さえ15とによりその上下が挟まれて、固定台基部11に固定されている。
一方、回転台支持用ベアリング14の内輪は、回転台30の回転台基部31に、ベアリング固定用パッキン36とベアリング押さえ37とによりその上下が挟まれて、回転台30に固定されている。
【0054】
<回転台>
回転台30の回転台基部31は、上記のごとく、固定台10の内側に回転台支持用ベアリング14を介して設けられており、回転台30の回転台基部31の外周には駆動歯車18と噛合する受動歯車部32が形成されている。
そして、回転台30は、駆動モータ17により、互いに噛合する小径の駆動歯車18及び大径の受動歯車部32を介して回転させられるようになっている。
【0055】
なお、受動歯車部32は、回転台基部31と一体的に形成したもとしても、リング状の受動歯車部32を回転台基部31の外周囲にねじ等により取り付けたものとしても良い。
また、材質としては、回転台基部31及び受動歯車部32をアルミ製としても、回転台基部31をアルミ製とし受動歯車部32を鉄製或いは鉄合金製(以下、「鉄製」と称する)としても良い。
【0056】
<トーチ支持台>
回転台基部31の上部には、トーチ支持台40が取り付けられている。
トーチ支持台40は、回転台基部31の上面に取り付けられた左右一対のアルミ製のトーチ固定用垂直板41と、左右のトーチ固定用垂直板41間に取り付けられたアルミ製のトーチ固定用上部水平板42aと、アルミ製のトーチ固定用下部水平板42bとで構成されている。
【0057】
トーチ固定用上部水平板42a及びトーチ固定用下部水平板42bは、一方端が回転台30の回転軸心から半径方向に延在している。
この延在した箇所に、トーチ4を挿入するための穴が各々明けられている。
各穴の内周面には、各々トーチ支持用ベアリング43a、43bが取り付けられている。
また、回転台基部31には、トーチ4の先端のトーチノズル部4aを貫入するトーチノズル挿入孔33が明けられている。
【0058】
そして、車両搭載甲板1に明けられた穴と円形のラッシングポット2との円形の溶接部Wの半径と、回転台基部31の回転軸心からトーチノズル挿入孔33の中心までの距離と、回転台基部31の回転軸心から各トーチ支持用ベアリング43a、43bの各中心までの距離とが一致すると共に、トーチノズル挿入孔33の中心と各トーチ支持用ベアリング43a、43bの各中心とを結ぶ線が、回転台基部31の回転軸心に対し平行なるように形成されている。
【0059】
トーチ4は、回転台30の回転軸心から偏心して、円形の溶接部Wに向くように、トーチ支持台40に、各トーチ支持用ベアリング43a、43bを介して回転自在に支持される。
そして、溶接作業時において、トーチ4は、駆動モータ17により、円形の溶接部Wに沿って回動、旋回する。
なお、トーチ4は、溶接機本体3からフレキシブルなトーチ用パワーケーブル5を通して、溶接のためのシールエア、溶接用電流、トーチワイヤ等が供給されるようになっている。
【0060】
回転台基部31の中心には、アルミ製の差込金物支持台45が取り付けられている。
差込金物支持台45の中心には、上下方向に貫通孔が明けられ、この貫通孔には上下に2個の差込金物支持用ベアリング46a、46bが取り付けられている。
【0061】
<差込金物>
差込金物50は、下部のラッシングポット内挿入部51と上部の差込金物回転軸52とにより構成されている。
なお、ラッシングポット内挿入部51及び差込金物回転軸52は、一体的に形成された鉄製の部材である。
【0062】
差込金物50の上部の差込金物回転軸52は、2個の差込金物支持用ベアリング46a、46bを介して差込金物支持台45に回転自在に取り付けられている。
なお、差込金物回転軸52の上端には、差込金物脱落防止板53が取り付けられており、円形溶接用トーチ駆動装置7の持ち運び時において、差込金物50が差込金物支持台45から脱落しないようになっている。
【0063】
差込金物50の下部のラッシングポット内挿入部51は、円形溶接用トーチ駆動装置7をラッシングポット2に設置したときに、ラッシングポット2内に嵌め込まれるようになっている。
そのため、ラッシングポット内挿入部51の下部中央には、ラッシングポット2の係止棒2bを跨ぐ係止棒跨ぎ部51cが形成されている。
【0064】
ラッシングポット内挿入部51の下端外周には、ラッシングポット2への挿入時に差込金物50を案内する下端外周傾斜部51aが形成されている。
ラッシングポット内挿入部51の下部外周には、ラッシングポット2内面と当接する、水平断面形状が円弧状のラッシングポット内壁当接部51bが形成されている。
円弧状のラッシングポット内壁当接部51bの直径は、ラッシングポット2の内径(直径)に対し僅かに小さい(1〜2mm程度)ものとなっている。
【0065】
なお、差込金物50の形状は、図1に図示のものに限定されるものではない。
例えば、ラッシングポット2が半球状の場合は、差込金物50のラッシングポット内挿入部51は、下部中央にラッシングポット2の係止棒2bを跨ぐ係止棒跨ぎ部51cが形成された半球状、或いは、半球状において下部を切り欠いた形状(半球台形状)とすることができる。
この場合、半球面が、差込金物50を案内する下端外周傾斜部51a兼ラッシングポット内壁当接部51bとなる。
【0066】
差込金物脱落防止板53の上面には、永久磁石取付け台54が取り付けられ、永久磁石取付け台54の上部側面には回転規制手段(回転規制用永久磁石)55が取り付けられている。
一方、アルミ製のトーチ固定用垂直板41の内側には、鉄製等磁性体の永久磁石案内板44が張り付けられている。
そして、回転規制手段55と永久磁石案内板44とが対峙しているとき、回転規制手段55と永久磁石案内板44との間には、1〜2mm程度の隙間ができるようになっている。
【0067】
このような構造とすることにより、円形溶接用トーチ駆動装置7の持ち運び時において、回転規制手段55は、永久磁石案内板44を吸引し永久磁石案内板44のほぼ中央に保持されるため、差込金物50が自在に回転するのを規制する。
したがって、差込金物50の係止棒跨ぎ部51cも、回転台30に対し予め設定された一定の方向に向くようになっている。
なお、回転規制手段55の吸引力は、駆動モータ17による回転台30の回転を阻害しない程度の強さとなっている。
【0068】
回転台基部31の係止棒跨ぎ部51cが見える位置に、点検孔34が明けられている。
そして、円形溶接用トーチ駆動装置7の持ち運び時、及び円形溶接用トーチ駆動装置7のラッシングポット2への設定時(非溶接作業時)において、係止棒跨ぎ部51cとラッシングポット2の係止棒2bとの関係が目視にて確認できるようになっている。
【0069】
<操作箱及び制御箱>
固定台枠垂直部13aの側面には、駆動モータ17を制御するための作業開始釦61、非常停止釦62、リセット釦63、回転スピード調整ツマミ64、駆動モータ17の駆動回路(サイリスタスタック等)等を有する操作箱60が取り付けられている。
また、溶接機本体3と操作箱60との間には、通常運転制御回路66、リセット回路67、電源スイッチ、DC電源用トランスを有する制御箱65が設けられている。
なお、図1に図示のものにおいては、円形溶接用トーチ駆動装置7の重量をできる限り軽くするために、制御箱65を別置型としているが、操作箱60と制御箱65とからなる制御装置を一体型としても良い。
溶接機本体3、操作箱60、制御箱65は、制御用ケーブル6により接続されており、制御用ケーブル6を介して電力の供給、信号の送受信が行われる。
【0070】
円形溶接用トーチ駆動装置7は上記のごとく構成されており、先ず、準備段階として、トーチ4をトーチ支持台40のトーチ固定用上部水平板42a、42bに取り付ける。
このとき、溶接機本体3とトーチ4とを接続するトーチ用パワーケーブル5は、上部ハンドル13bを通るようにする。
次に、上部ハンドル13bを把持して円形溶接用トーチ駆動装置7を運び、差込金物50の係止棒跨ぎ部51cがラッシングポット2の係止棒2bを跨ぐことを点検孔34から目視確認しながら、差込金物50をラッシングポット2内に差し込む。
設置が完了した後、作業開始釦61を押すことにより、固定用電磁石12は励磁されて円形溶接用トーチ駆動装置7は車両搭載甲板1上に固定される。
それと同時に、以下に説明する自動溶接作業が開始される。
【0071】
なお、作業開始位置検出器20は、リミットスイッチ式のものに限定されるものではなく、光電式のものとしても良い。
また、位置検出器作動手段35は、凸形状のものに限定されるものではなく、凹形状或いは貫通した穴形状のものとしても良い。
更に、位置検出器作動手段35は、回転台基部31上ではなく、例えばトーチ固定用上部水平板42aに取り付けるようにしても良い。
【0072】
<通常運転制御回路>
次に、図2に基づき、通常運転制御回路66における自動制御につき説明する。
通常運転制御回路66は、以下の演算、処理を実行する。
先ず、作業員により作業開始釦(スタートPB)61が押される(ステップS0)。
すると、通常運転制御回路66において、作業開始位置検出器20が作動しているか否か(原点LSがONか)を判断する(ステップS1)。
【0073】
なお、駆動モータ17はブレーキ付き(非通電時、ブレーキオン)であり、通常、前回の溶接作業が正常に終了した後に次の溶接作業を開始する迄は、回転台30は回転せず、原点LSはONのままとなっている。
ステップS1において“No”と判断すると、円形溶接用トーチ駆動装置7、トーチ4等は作動させない(ステップS6)。
作動しないことは、目視により確認できる。
作動しない場合には、後記するリセット回路67による制御を行う。
【0074】
ステップS1において“Yes”と判断すると、溶接機本体3に溶接開始信号を送信する(ステップS2)。
この溶接開始信号は、作業開始釦(スタートPB)61を押し続けている間、スタートが完了するまで送信し続ける(ステップS3)。
これと並行して、固定用電磁石12を励磁し(ステップS4)、円形溶接用トーチ駆動装置7及びトーチ4は車両搭載甲板1に固定される。
このマグネット励磁を開始する信号は、作業開始釦(スタートPB)61を押し続けている間、スタートが完了するまで送信し続ける(ステップS5)。
【0075】
その後、溶接機本体3からの信号により、溶接電流を検知したか否かを判断し(ステップS7)、“No”と判断すると、作業開始釦(スタートPB)61を押しっぱなしか否かを判断し(ステップS8)、“Yes”と判断している間、溶接機本体3からの信号を待ち続ける。
ステップS8において“No”と判断されると、円形溶接用トーチ駆動装置7、トーチ4等は作動しない(ステップS30)。
作動しないことは、目視により確認できる。
作動しない場合には、後記するリセット回路67による制御を行う。
【0076】
ステップS7において“Yes”と判断すると、電源投入後にリセット操作、或いはスタート操作が未実施か否かを判断する(ステップS9)。
ステップS9において“No”と判断すると、前回の溶接作業における回転方向が正転か否かを判断する(ステップS10)。
ステップS9において“Yes”と判断するか、或いは、ステップS10において“No”と判断すると、駆動モータ(電動機)17を正転の方向に回転する(ステップS11)。
【0077】
その後、駆動モータ17により回転台30、トーチ4等が回転、旋回させられて、トーチ4により円形の溶接部Wが溶接される。
そして、作業開始位置検出器20が作動したか否か(原点LSがONか)を判断する(ステップS12)。
ステップS12において“No”と判断されている間は、ステップS11において、駆動モータ(電動機)17の正転駆動、溶接作業は継続される。
【0078】
ステップS12において“Yes” (原点LSがON)と判断すると、上記の溶接作業における回転方向(正転)を記憶する(ステップS13)。
【0079】
原点LSがON後も、溶接を重複させ溶接欠陥をなくすために、駆動モータ(電動機)17の正転駆動、溶接作業を継続する。
そして、予め設定された一定継続時間(例えば、1秒程度)が経過したか否かを判断する(ステップS14)。
ステップS14において“No”と判断している間は、ステップS11において、駆動モータ(電動機)17の正転駆動、溶接作業を継続する。
【0080】
ステップS14において“Yes” (原点LSがONした後、一定継続時間経過)と判断すると、駆動モータ(電動機)17を停止すると共に、溶接機本体3に溶接停止信号を送信し、予め設定された一定停止時間(例えば、2秒程度)が経過したか否かを判断する(ステップS15)。
この一定停止時間は、瞬時に駆動モータ(電動機)17を逆転させると過大な負荷が生じるので、それを防止するためのものである。
【0081】
ステップS15において“Yes”と判断すると、駆動モータ(電動機)17を逆転させ(溶接作業は停止状態)(ステップS16)、作業開始位置検出器20が作動したか否か(原点LSがONか)を判断する(ステップS17)。
ステップS17において“No”と判断している間は、ステップS16において、駆動モータ(電動機)17の逆転駆動を継続する。
ステップS17において“Yes”と判断すると、このラッシングポット2の溶接作業は終了し、固定用電磁石12への励磁電流も遮断する。
同時に、次のラッシングポット2でのスタートの準備も完了する(ステップS28)。
【0082】
一方、ステップS10において“Yes”と判断すると、駆動モータ(電動機)17を逆転の方向に回転する(ステップS21)。
そして、ステップS22〜S27において、ステップS12〜S17と同様の処理、制御(但し、正転、逆転を入れ替え)を行ない、このラッシングポット2の溶接作業は終了し、固定用電磁石12への励磁電流も遮断する。
同時に、次のラッシングポット2でのスタートの準備も完了する(ステップS28)。
【0083】
そして、円形溶接用トーチ駆動装置7及びトーチ4を次のラッシングポット2に移動させ、再度、ステップS0〜S28の処理、制御を行う。
なお、円形溶接用トーチ駆動装置7及びトーチ4等に何らかの異常が発生した場合には、非常停止釦62を押すことにより、溶接作業を停止させることができる。
また、回転スピード調整ツマミ64により、駆動モータ(電動機)17の回転速度を調整することができる。
【0084】
なお、上記の通常運転制御回路66での処理、演算において、ステップS13、S23の回転方向記憶の処理は、ステップS11、S21の駆動モータ(電動機)17の正転(逆転)の後、或いは、ステップS14、S24において“Yes”と判断した後に行うようにしても良い。
また、ステップS13、S23の回転方向記憶の処理に換えて、ステップS16,S26の後に回転方向を記憶し、次のラッシングポット2の溶接作業時には、この回転方向にて駆動モータ(電動機)17を駆動するようにしても良い。
【0085】
上記の通常運転制御回路66によれば、円形溶接用トーチ駆動装置7及びトーチ4をラッシングポット2に設置した後、作業開始釦61を押すのみで、固定用電磁石12により円形溶接用トーチ駆動装置7は車両搭載甲板1上に固定され、溶接作業が行われる。
このとき、回転台30及びトーチ4は前回の溶接作業時と逆の方向に回転、旋回させられるので、多数のラッシングポット2について繰り返し溶接作業を行っても、溶接機本体3とトーチ4とを接続するトーチ用パワーケーブル5が捩れることがない。
【0086】
また、トーチ4が1周し、車両搭載甲板1とラッシングポット2との全周囲の溶接作業が完了した後も、一定継続時間溶接作業を継続するようにしたので、溶接欠陥をなくすことができる。
その後、作業開始位置検出器20が作動するまで逆転させるようにしたので、ラッシングポット2の溶接作業が終了し、円形溶接用トーチ駆動装置7、トーチ4及び溶接機本体3の可動が停止した時点で、既に、次のラッシングポット2でのスタートの準備を完了させることができる。
【0087】
<リセット回路>
次に、図3に基づき、リセット回路67における自動制御につき説明する。
リセット回路67は、以下の演算、処理を実行する。
上記の通常運転制御回路66における制御において、作業開始釦61をいくら押しても各装置が全く作動しない原因の一つとして、作業開始位置検出器20が作動(原点LSがON)状態でない場合が考えられる。
そこで、リセット釦63を押すことにより、スタートの準備完了状態に戻すことができる。
【0088】
先ず、作業員によりリセット釦(リセットPB)63が押される(ステップS40)。
すると、リセット回路67は、電源投入後にリセット操作、或いはスタート操作が未実施か否かを判断する(ステップS41)。
ステップS41において“No”と判断すると、前回のリセット或いは溶接作業における回転方向が正転か否かを判断する(ステップS42)。
ステップS41において“Yes”と判断するか、或いは、ステップS42において“No”と判断すると、駆動モータ(電動機)17を正転の方向に回転し(ステップS43)、回転方向(正転)を記憶する(ステップS44)。
【0089】
その後、作業開始位置検出器20が作動したか否か(原点LSがONか)を判断する(ステップS45)。
ステップS45において“No”と判断している間は、ステップS43において、駆動モータ(電動機)17の正転駆動を継続する。
ステップS45において“Yes”と判断すると、リセットは完了する(ステップS49)。
【0090】
ステップS42において“Yes”と判断すると、駆動モータ(電動機)17を逆転の方向に回転する(ステップS46)。
そして、ステップS46〜S48において、ステップS43〜S45と同様の処理、制御(但し、正転、逆転を入れ替え)を行ない、リセットは完了する(ステップS49)。
【0091】
上記のリセット回路67によれば、リセット釦63(リセットPB)63を押すのみで、リセットは完了し、円形溶接用トーチ駆動装置7をスタート準備の状態に戻すことができる。
このとき、回転台30及びトーチ4は前回のリセット或いは溶接作業時と逆の方向に回転、旋回させられるので、溶接機本体3とトーチ4とを接続するトーチ用パワーケーブル5が捩れることがない。
【0092】
<<<本発明の第2の実施の形態>>>
以下、本発明の第2の実施形態を図4〜図7に基づいて説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る円形溶接用トーチ駆動装置、これを備えた溶接装置のトーチ取り付け部分を示す垂直断面図である。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る円形溶接用トーチ駆動装置、これを備えた溶接装置の差込金物昇降装置を示す垂直断面図である。なお、図4と図5とは、同じ垂直断面である。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る通常運転制御回路の制御フロー図である。
図7は、本発明の第2の実施形態に係るリセット回路の制御フロー図である。
【0093】
なお、本発明の第1の実施形態のものでは、車両搭載甲板1の明けられた穴に挿入されたラッシングポット2を溶接する。
この場合、車両搭載甲板1とラッシングポット2との円形状の溶接部Wは、車両搭載甲板1に対して概ね水平となっている。
従って、トーチノズル部4aは、概ね水平な溶接部Wに向くように概ね垂直に取り付けられている。
【0094】
一方、本発明の第2の実施形態のものでは、車両搭載甲板1の明けられた穴(図1に図示のものより若干小さな穴)に下面から押し当てて仮止め(スポット溶接等により)されたラッシングポット2を溶接する。
この場合、車両搭載甲板1に明けられた穴の内面とラッシングポット2の上端との円形状の溶接部Waは、車両搭載甲板1に対して傾斜している。
従って、トーチノズル部4aは、この溶接部Waに向くように斜め下方に向かって取り付けられている。
【0095】
本発明の第2の実施形態のものは、第1の実施形態のものと同様に、溶接機本体3、トーチ4、固定台10(固定台基部11、固定台枠13、固定台枠垂直部13a、上部ハンドル13bにより構成)、固定用電磁石12、モータ取付け台16、モータ出力軸17aを有する駆動モータ17、駆動歯車18、検出器取付け台19に取り付けられた作業開始位置検出器20(原点LS)、回転台30(回転台基部31、受動歯車部32により構成)、ベアリング押さえ15、ベアリング固定用パッキン36及びベアリング押さえ37により固定された回転台支持用ベアリング14、操作箱60(作業開始釦61、非常停止釦62、リセット釦63、回転スピード調整ツマミ64、駆動モータ17の駆動回路等を有する)、制御箱65(通常運転制御回路66a、リセット回路67a、電源スイッチ、DC電源用トランスを有する)等を備えている。
【0096】
そして、第2の実施形態のものは、トーチ支持台40a、差込金物50a、差込金物昇降装置89、制御箱における通常運転制御回路66a及びリセット回路67aが、第1の実施形態のものと異なっており、以下これらの構成につき説明する。
【0097】
なお、本発明の第2の実施形態における円形溶接用(ラッシングポット溶接用)トーチ駆動装置7aは、下部周囲に3個の固定用電磁石12を有する固定台10と、固定台10の内側に回転台支持用ベアリング14を介して設けられた回転台30と、回転台30の上部に取り付けられると共にトーチ4の先端を回転台30の回転軸心から偏心して支持するトーチ支持台40aと、回転台30の中央下部に昇降可能に設けられた差込金物50aと、固定台10の上部に取り付けられた枠状の固定台枠13とを備えている。
【0098】
<トーチ支持台>
回転台基部31の上部には、一対のトーチ支持台40aが、固定して取り付けられている。
各トーチ支持台40aは、アルミ製の垂直な平板により構成されている。
一対のトーチ支持台40a間には、トーチ4が、そのトーチノズル部4aが斜め下方に向くように(例えば、45°傾けて)取り付けられている。
なお、回転台基部31には、トーチ4の先端のトーチノズル部4aを貫入する点検兼用のトーチノズル挿入孔33aが明けられている。
【0099】
<差込金物>
回転台基部31の下方には、昇降する差込金物50aが配設されている。
この差込金物50aの直径は、車両搭載甲板1に明けられた穴の内径(直径)に対し僅かに小さい(1〜2mm程度)ものとなっている。
また、差込金物50aには、上昇時においてトーチノズル部4aと干渉しないように、U字状に切り込まれた点検兼用のトーチノズル挿入孔56が形成されている。
【0100】
差込金物50aのトーチノズル挿入孔56の両側には、一対の差込金物昇降軸71が、ナット等により取り付けられている。
一方、回転台基部31の上面には、一対のリニアブッシュ74が取り付けられている。
そして、各差込金物昇降軸71は、各リニアブッシュ74を上下方向に滑動自在に貫通し、リニアブッシュ74の上方に延在している。
【0101】
なお、回転台基部31の下面には、各差込金物昇降軸71を囲むように、各々上部スライドカバー73が取り付けられている。
また、差込金物50aの上面には、各上部スライドカバー73内に入り込むように、各々下部スライドカバー72が取り付けられている。
そして、溶接時においては、上部スライドカバー73及び各下部スライドカバー72により、各リニアブッシュ74と各差込金物昇降軸71との滑動部分が保護される。
【0102】
<差込金物昇降装置>
回転台基部31の上面の各差込金物昇降軸71の一側方には、一対のリンク端支持脚75が取り付けられている。
各リンク端支持脚75の上部には、各々上方に延在する支点支持用のリンク76が、回動軸P1を介して連結されている。
各支点支持用のリンク76の上部には、各々水平方向に配設された差込金物駆動用のリンク77が、回動軸P2(支点)を介して連結されている。
【0103】
各差込金物駆動用のリンク77の中央部は、各差込金物昇降軸71の上端と回動軸P3を介して連結されている。
なお、各差込金物駆動用のリンク77の中央部の回動軸P3(作用点)が貫通する軸孔は、リンク77の長手方向に長い長穴88となっている。
各差込金物駆動用のリンク77の他端(力点)は、後述するナットブロック84の両側面に各々回動軸P4を介して連結されている。
【0104】
一方、回転台基部31の上面の他側方には、上方に延在する電動モータ取付け台80が取り付けられている。
電動モータ取付け台80の上端には、減速ギアが内蔵された電動の差込金物昇降用モータ81が取り付けられている。
差込金物昇降用モータ81の出力軸(正確には、内蔵減速ギアの出力軸)には、上下方向に延在する回転ねじ83が、カップリング82を介して連結されている。
この回転ねじ83は、ナットブロック84を貫通して、ナットブロック84の内部のナットと噛合している。
【0105】
電動モータ取付け台80の側面には、上下方向に延在するスライドガイド85が取り付けられている。
そして、ナットブロック84は、スライドガイド85に沿って上下方向にスライドするようになっている。
スライドガイド85(或いは、電動モータ取付け台80)の上方には、ナットブロック84が上限に達したときに作動するナットブロック上限位置検出器(上限LS)86が取り付けられている。
スライドガイド85(或いは、電動モータ取付け台80)の下方には、ナットブロック84が下限に達したときに作動するナットブロック下限位置検出器(下限LS)87が取り付けられている。
【0106】
差込金物昇降装置89は、上述のごとく構成されており、差込金物昇降用モータ81により回転ねじ83を回転させることにより、ナットブロック84が、スライドガイド85に沿って昇降する。
スライドガイド85の昇降に伴って、差込金物駆動用のリンク77が、上下方向に旋回する。
このとき、差込金物駆動用のリンク77の回動軸P2(支点)が左右方向に移動するが、この左右方向の支点の移動は、支点支持用のリンク76が旋回することにより吸収される。
【0107】
差込金物駆動用のリンク77が上下方向に旋回することにより、差込金物駆動用のリンク77の中央部に連結された差込金物昇降軸71及び差込金物50aが昇降する。
このとき、差込金物駆動用のリンク77の上下方向の旋回に伴い、差込金物昇降軸71の上端の回動軸P3(作用点)が差込金物駆動用のリンク77に対して左右方向に移動するが、この左右方向の回動軸P3の移動は、長穴88により吸収される。
【0108】
<通常運転制御回路>
次に、図6に基づき、通常運転制御回路66aにおける自動制御につき説明する。
通常運転制御回路66aは、以下の演算、処理を実行する。
先ず、差込金物50aが車両搭載甲板1の孔に嵌め込まれた状態で、作業員により作業開始釦(スタートPB)61が押される(ステップS0)。
すると、通常運転制御回路66aにおいて、作業開始位置検出器20が作動しているか否か(原点LSがONか)を判断する(ステップS1)。
【0109】
ステップS1において“Yes”と判断すると、差込金物昇降用モータ81を駆動して差込金物50aを上昇させる(ステップS30)。
差込金物50aを上昇させることにより、トーチ4による溶接部Waの溶接が可能となる。
そして、ナットブロック上限位置検出器86(上限LS)が作動したか否かを判断する(ステップS31)。
ナットブロック上限位置検出器86がオンになる(Yes)と、本発明の第1の実施形態のものと同様に、ステップS3〜S17、S21〜S27の処理を行う。
【0110】
そして、ステップS17又はS27において“Yes”と判断すると、差込金物昇降用モータ81を駆動して差込金物50aを降下させる(ステップS32)。
そして、ナットブロック下限位置検出器87(下限LS)が作動したか否かを判断する(ステップS33)。
ナットブロック下限位置検出器87がオンになる(Yes)と、このラッシングポット2の溶接作業は終了し、固定用電磁石12への励磁電流も遮断する。
同時に、次のラッシングポット2でのスタートの準備も完了する(ステップS28)。
【0111】
<リセット回路>
次に、図7に基づき、リセット回路67aにおける自動制御につき説明する。
リセット回路67aは、以下の演算、処理を実行する。
【0112】
先ず、作業員によりリセット釦(リセットPB)63が押される(ステップS40)
すると、リセット回路67aは、本発明の第1の実施形態のものと同様のステップS41〜S48の処理と並行して、差込金物昇降用モータ81を駆動して差込金物50aを降下させる(ステップS50)。
そして、ナットブロック下限位置検出器87(下限LS)が作動したか否かを判断する(ステップS51)。
ナットブロック下限位置検出器87がオンになる(Yes)と、降下作業が終了する(ステップS52)。
【0113】
上記の通常運転制御回路66a、リセット回路67aによれば、本発明の第1の実施形態のものと同様の作用効果を奏する。
【0114】
<<<その他の実施形態>>>
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されず、本発明の範囲内で種々の変更を加えてよいことは言うまでもない。
【0115】
本発明及び各実施形態において、通常運転制御回路66、66a、リセット回路67、67aは、個々の電子回路の形態のものに限定されるものではなく、コンピュータにおける(サブ)プログラム、マイクロプロセッサー、シーケンサー等、各種の形態のものとすることができる。
また、駆動モータ17、差込金物昇降用モータは電動機に限定されるものではなく、エアーモータ、オイルモータ等各種のモータを採用することができる。
【0116】
<<作用、効果>>
上記の本発明の第1、2の実施形態に係る円形溶接用トーチ駆動装置7、7aは、上記のごとく、リング状の固定台10と、固定台10の内側に回転台支持用ベアリング14を介して設けられた回転台30と、回転台30の上部に取り付けられたトーチ支持台40、40aと、回転台30の中央に差込金物支持用ベアリング46a、46bを介して設けられた差込金物50、或いは昇降自在に設けられた差込金物50aとにより構成されており、差込金物50、50aをラッシングポット2、或いは車両搭載甲板に明けられた穴に差し込むだけで、簡単にトーチ4を位置決めすることができる。
そして、トーチ4は、ラッシングポット内挿入部51の中心、即ちラッシングポット2の中心、或いは車両搭載甲板に明けられた穴の中心を中心軸心として円形に旋回、回転させられるので、確実且つ正確に、車両搭載甲板1とラッシングポット2との接合部を円形状に溶接することができる。
【0117】
また、主要部分をアルミ製とすることにより、トーチ4を含めた装置全体の重量も8〜10kg程度に軽量化されているので、作業員は、容易に円形溶接用トーチ駆動装置7、7a及びトーチ4を移動させることができる。
また、作業員は、円形溶接用トーチ駆動装置7、7a及びトーチ4を移動し、ラッシングポット2へ差し込み、作業開始釦61を押すだけでの作業で良く、その後は通常運転制御回路66、66aにより自動的に円形に溶接作業が行われるので、セッティング時間が非常に少なくて済むため、−人の作業員で大略4台の複数台同時使用が可能であり、能率が4倍近く向上する。
【符号の説明】
【0118】
1 車両搭載甲板
2 ラッシングポット
2a ポット部
2b 係止棒
3 溶接機本体
4 トーチ
4a トーチノズル部
5 トーチ用パワーケーブル
6 制御用ケーブル
7、7a 円形溶接用トーチ駆動装置
10 固定台
11 固定台基部
12 固定用電磁石
13 固定台枠
13a 固定台枠垂直部
13b 上部ハンドル
14 回転台支持用ベアリング
15 ベアリング押さえ
16 モータ取付け台
17 駆動モータ(電動機)
17a モータ出力軸
18 駆動歯車
19 検出器取付け台
20 作業開始位置検出器(原点LS)
30 回転台
31 回転台基部
32 受動歯車部
33 トーチノズル挿入孔
33a 点検兼用のトーチノズル挿入孔
34 点検孔
35 位置検出器作動手段
36 ベアリング固定用パッキン
37 ベアリング押さえ
40、40a トーチ支持台
41 トーチ固定用垂直板
42a トーチ固定用上部水平板
42b トーチ固定用下部水平板
43a、43b トーチ支持用ベアリング
44 永久磁石案内板
45 差込金物支持台
46a、46b 差込金物支持用ベアリング
50、50a 差込金物
51 ラッシングポット内挿入部
51a 下端外周傾斜部
51b ラッシングポット内壁当接部
51c 係止棒跨ぎ部
52 差込金物回転軸
53 差込金物脱落防止板
54 永久磁石取付け台
55 回転規制手段
56 点検兼用のトーチノズル挿入孔
60 操作箱
61 作業開始釦
62 非常停止釦
63 リセット釦
64 回転スピード調整ツマミ
65 制御箱
66、66a 通常運転制御回路
67、67a リセット回路
70 差込金物昇降装置
71 差込金物昇降軸
72 下部スライドカバー
73 上部スライドカバー
74 リニアブッシュ
75 リンク端支持脚
76 支点支持用のリンク
77 差込金物駆動用のリンク
80 電動モータ取付け台
81 差込金物昇降用モータ(電動機)
82 カップリング
83 回転ねじ
84 ナットブロック
85 スライドガイド
86 ナットブロック上限位置検出器(上限LS)
87 ナットブロック下限位置検出器(下限LS)
88 長穴
89 差込金物昇降装置
P1、P2、P3、P4 回動軸
W、Wa 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定台と、
前記固定台の内側に回転台支持用ベアリングを介して設けられた回転台と、
前記回転台の上部に取り付けられ、トーチを支持するトーチ支持台と、
前記固定台に明けられたトーチノズル挿入孔と、
前記回転台の下方中央に設けられた差込金物とを備えたことを特徴とする円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項2】
固定台と、
前記固定台の内側に回転台支持用ベアリングを介して設けられた回転台と、
前記回転台の上部に取り付けられ、トーチを前記回転台の回転軸心から偏心して支持するトーチ支持台と、
前記固定台に明けられたトーチノズル挿入孔と、
前記回転台の中央に差込金物支持用ベアリングを介して設けられた差込金物とを備えたことを特徴とする円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項3】
前記固定台の下部周囲に取り付けられた固定用電磁石を備えたことを特徴とする請求項2に記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項4】
前記差込金物は、ラッシングポットの係止棒を跨ぐ係止棒跨ぎ部が下部中央に形成されたものであることを特徴とする請求項2又は3に記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項5】
前記差込金物は、ラッシングポット内面と当接するラッシングポット内壁当接部が下部外周に形成されたものであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項6】
前記差込金物は、ラッシングポットへの挿入時に前記差込金物を案内する下端外周傾斜部が下端外周に形成されたものであることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項7】
前記固定台の上部に取り付けられた枠状の固定台枠を備えたことを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項8】
前記差込金物の上部に取り付けられて前記差込金物が自在に回転するのを規制する回転規制手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至7のいずれかに記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項9】
前記固定台に取り付けられた駆動モータと、
前記駆動モータの出力軸に取り付けられた駆動歯車と、
前記回転台の外周に形成され前記駆動歯車と噛合する受動歯車部とを備えたことを特徴とする請求項2乃至8のいずれかに記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項10】
前記駆動モータを制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前回の溶接作業時と逆の方向に前記駆動モータを回転させて溶接作業を行う通常運転制御回路を有することを特徴とする請求項9に記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項11】
前記固定台に取り付けられて前記回転台の作業開始位置を検出する作業開始位置検出器を備え、
前記制御装置は、作業開始釦を有し、
前記通常運転制御回路は、
前記作業開始釦が操作されることにより、前記溶接作業を行い、前記作業開始位置検出器が作動した信号を受信した後、一定継続時間前記溶接作業を行って停止し、その後、前記溶接作業を停止した状態で前記駆動モータを逆転し、前記作業開始位置検出器が作動した信号を受信したときに前記駆動モータを停止する制御を実行するものであることを特徴とする請求項10に記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項12】
前記制御装置は、
リセット釦と、
前記リセット釦が操作されることにより、前記作業開始位置検出器が作動する迄、直前の溶接作業時と逆の方向に前記駆動モータを回転させる制御を実行するリセット回路とを有することを特徴とする請求項11に記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の円形溶接用トーチ駆動装置と、
前記トーチ支持台に前記回転台の回転軸心から偏心して支持されたトーチと、
前記トーチにシールエア、溶接用電流及びトーチワイヤを供給する溶接機本体とを備え、
前記通常運転制御回路は、前記作業開始釦が押されたときから、前記作業開始位置検出器が作動した信号を受信し前記一定継続時間が経過するまで、前記溶接機本体を駆動させる制御を行うものであることを特徴とする溶接装置。
【請求項14】
固定台と、前記固定台の内側に回転可能に設けられた回転台と、前記回転台の上部に取り付けられたトーチ支持台と、前記固定台に取り付けられ前記回転台を回転させる駆動モータと、下部中央にラッシングポットの係止棒を跨ぐ係止棒跨ぎ部が形成されて前記回転台の中央下部に回動自在に設けられた差込金物と、前記駆動モータを制御する制御装置とを有する円形溶接用トーチ駆動装置と、
前記トーチ支持台に配設されたトーチと、
前記トーチにシールエア、溶接用電流及びトーチワイヤを供給する溶接機本体とを備え、
前記係止棒跨ぎ部が車両搭載甲板のラッシングポットの係止棒を跨ぐように前記差込金物をラッシングポット内に挿入して前記円形溶接用トーチ駆動装置を車両搭載甲板上に設置し、
前記制御装置により、前回の溶接作業時と逆の方向に前記駆動モータにより前記トーチを回転させて、前記車両搭載甲板の上面と前記ラッシングポットとの接合部の溶接作業を行うことを特徴とする溶接方法。
【請求項15】
前記固定台の下部周囲に3個の固定用電磁石を有し、
前記固定用電磁石を励磁することにより、前記円形溶接用トーチ駆動装置を車両搭載甲板上に固定することを特徴とする請求項14に記載の溶接方法。
【請求項16】
前記円形溶接用トーチ駆動装置は、前記差込金物の上部に取り付けられて前記差込金物が自在に回転するのを規制する回転規制手段を有し、
前記円形溶接用トーチ駆動装置の移動中は、前記差込金物が回転規制手段により前記回転台に対し一定の方向に向いていることを特徴とする請求項14又は15に記載の溶接方法。
【請求項17】
前記回転台の上面に設けられ前記差込金物を昇降させる差込金物昇降装置とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項18】
前記差込金物昇降装置は、
前記差込金物に取付けられるとともに前記回転台を貫通して上方に延在する差込金物昇降軸と、
前記回転台の上面に取り付けられた差込金物昇降用モータと、
前記差込金物昇降用モータの出力軸に連結された回転ねじと、
前記回転ねじと噛合し前記回転ねじの回転により昇降するナットブロックと、
中央部に前記差込金物昇降軸が軸支され一端が前記ナットブロックに軸支され他端が前記回転台に軸支されたリンクとを有することを特徴とする請求項17に記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項19】
前記固定台の下部周囲に取り付けられた固定用電磁石を備えたことを特徴とする請求項17又は18に記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項20】
前記固定台に取り付けられた駆動モータと、
前記駆動モータの出力軸に取り付けられた駆動歯車と、
前記回転台の外周に形成され前記駆動歯車と噛合する受動歯車部とを備えたことを特徴とする請求項17乃至19のいずれかに記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項21】
前記差込金物は、降下したときに車両搭載甲板に明けられた穴に嵌り込むように形成されたものであることを特徴とする請求項17乃至20のいずれかに記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項22】
前記固定台の上部に取り付けられた枠状の固定台枠を備えたことを特徴とする請求項17乃至21のいずれかに記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項23】
前記駆動モータを制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前回の溶接作業時と逆の方向に前記駆動モータを回転させて溶接作業を行う通常運転制御回路を有することを特徴とする請求項20に記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項24】
前記固定台に取り付けられて前記回転台の作業開始位置を検出する作業開始位置検出器を備え、
前記制御装置は、作業開始釦を有し、
前記通常運転制御回路は、
前記作業開始釦が操作されることにより、前記差込金物を上昇させた後、前記溶接作業を行い、前記作業開始位置検出器が作動した信号を受信した後、一定継続時間前記溶接作業を行って停止し、その後、前記溶接作業を停止した状態で前記駆動モータを逆転し、前記作業開始位置検出器が作動した信号を受信したときに前記駆動モータを停止する制御を実行するものであることを特徴とする請求項23に記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項25】
前記制御装置は、
リセット釦と、
前記リセット釦が操作されることにより、前記作業開始位置検出器が作動する迄、直前の溶接作業時と逆の方向に前記駆動モータを回転させる制御を実行するリセット回路とを有することを特徴とする請求項24に記載の円形溶接用トーチ駆動装置。
【請求項26】
請求項23乃至25のいずれかに記載の円形溶接用トーチ駆動装置と、
前記トーチ支持台にその先端が前記回転台の回転軸心から偏心して支持されたトーチと、
前記トーチにシールエア、溶接用電流及びトーチワイヤを供給する溶接機本体とを備え、
前記通常運転制御回路は、前記作業開始釦が押されたときから、前記作業開始位置検出器が作動した信号を受信し前記一定継続時間が経過するまで、前記溶接機本体を駆動させる制御を行うものであることを特徴とする溶接装置。
【請求項27】
固定台と、前記固定台の内側に回転可能に設けられた回転台と、前記回転台の上部に取り付けられたトーチ支持台と、前記固定台に取り付けられ前記回転台を回転させる駆動モータと、降下したときに車両搭載甲板に明けられた穴に嵌り込むように形成された差込金物と、前記差込金物を昇降させる差込金物昇降装置と、
前記駆動モータを制御する制御装置とを有する円形溶接用トーチ駆動装置と、
前記トーチ支持台に配設されたトーチと、
前記トーチにシールエア、溶接用電流及びトーチワイヤを供給する溶接機本体とを備え、
前記差込金物を車両搭載甲板に明けられた穴に嵌め込み前記円形溶接用トーチ駆動装置を車両搭載甲板上に設置し、
前記制御装置により、前記差込金物を上昇させた後、前回の溶接作業時と逆の方向に前記駆動モータにより前記トーチを回転させて、前記車両搭載甲板に明けられた穴の内面と前記ラッシングポットとの接合部の溶接作業を行うことを特徴とする溶接方法。
【請求項28】
前記固定台の下部周囲に3個の固定用電磁石を有し、
前記固定用電磁石を励磁することにより、前記円形溶接用トーチ駆動装置を車両搭載甲板上に固定することを特徴とする請求項27に記載の溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−64141(P2010−64141A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23277(P2009−23277)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】