説明

円柱状ブロックのくり抜き方法及び装置

【課題】サファイア単結晶インゴットからコアドリルを用いて結晶方向と所望の角度をなす結晶方位の円柱状ブロックを採取する方法において、コアビットの刃先部がインゴットから逃げたり、ブレることなくスムースに切り込み始め、くり抜き終了近くでインゴットに欠けやひび割れ等を生ずることがないようにする。
【解決手段】インゴット27までの距離を計測し、最短距離と最長距離の間を三区分する。コアビット13の送り量は送りモータ16のエンコーダ17から回転数を読取ることにより求める。制御装置29は送りモータ16を制御し、刃先部12の送り量が前記最短距離に達して切り込みを行う区分まではコアビット13の送りを低速に、次の区分においては低速ではあるが、送り速度を上げ、最後の区分においては更に送り速度を上げる。全ての刃先部12がインゴット27に切り込んだのちは、高速送りを行い、くり抜き終了近くで低速送りとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイア単結晶インゴットからコアドリルを用いて円柱状のブロックをくり抜き加工する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サファイア基盤となるウェハは通常、サファイア単結晶インゴットから切削加工した円柱状のブロックを一定の厚みにスライスすることにより得られ、下記特許文献1には、CZ法(チョクラルスキー法)又はEFG法(Edge-defined Film-fed. Growth Method)等によって得られたサファイア単結晶インゴットからコアドリルを用い、円筒状のコアビットを2〜10mm/minの送り速度で送って円柱状のブロックをくり抜き加工する方法が開示されており、コアドリルを用いたくり抜き方法は、断面が真円に近い精度の良好な円柱状のブロックを1回の穿孔作業で容易かつ短時間で得られる、としている。
【0003】
下記特許文献1にはまた、所望の結晶方位を有するウェハを製造するためにサファイア単結晶インゴットの結晶成長方向であるa軸に対して、所定の角度或いはa軸と直交するc軸の方向へ穿孔することにより、サファイア単結晶インゴットと異なる結晶方位を有する円柱状のブロックを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−971
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サファイア単結晶インゴットは、概して結晶成長方向と直交する断面が結晶成長方向で変化するいびつな形状となっている。結晶方向のa軸と直交するc軸の結晶方位を有する円柱状のブロックの製造をコアドリルを用いて行う場合、切削加工によりa軸と平行な基準面を作成したのち、コアドリル下のテーブル上に基準面を当てて、サファイア単結晶インゴットを設置するが、コアビットはドリルのようなセンターを有しないため狙った位置に正確に切り込むことが容易でない。すなわちインゴットへ切り込む際、図1に示すようにコアドリルを構成するコアビット1の刃先部2の一部がインゴット3の傾斜ないし湾曲部に当たると、刃先部2が図の矢印方向に逃げたり、ブレたりし易くなる。しかもサファイアは硬度が高いうえに靭性が低く脆いため、前述する刃先部のブレによりインゴットが欠けたり、割れやひびを生じ易い。
【0006】
本発明は、サファイア単結晶インゴットからコアドリルを用いて結晶方向のa軸と所望の角度を有する結晶方位の円柱状ブロックを前記のような問題を生ずることなく、スムースにくり抜くことができる方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係わる発明は、コアドリルを用い、該コアドリルを構成する円筒状のコアビットを送りモータで送って、テーブル上に横倒しした状態で設置されるサファイア単結晶インゴットをくり抜き、結晶方向と所望の角度を有する結晶方位の円柱状ブロックを製造する方法であって、コアドリルを構成するコアビットの刃先部の一部がサファイア単結晶インゴットに切り込み始める当初は、送りモータの回転速度を下げ、前記刃先部の一部が前記インゴットに切り込んだのちは、送りモータの回転速度を連続的或いは段階的に増加させ、刃先部の全てが前記インゴットに切り込むと、送りモータの回転速度を高速の一定速度に維持させ、前記刃先部がくり抜きの終了する近くまで達すると、送りモータの回転速度を再び低下させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、前記テーブル上に横倒しした状態で設置されるサファイア単結晶インゴットから採取しようとする円柱状ブロックの円形断面の中心が前記コアビットの回転中心に位置するように前記インゴットを位置決めしたのち、コアドリルに設けた第1の計測手段によって、コアビットの刃先部直下の刃先部が当たる箇所のインゴットまでの距離を刃先部の円周方向に沿って連続的に測定し、ついで前記送りモータの回転数を第2の計測手段で読取ることによって求めた前記刃先部の送り量が前記第1の計測手段によって計測された前記インゴットまでの距離のうちの最短距離に達し、コアビットの刃先部がインゴットに切り込んだ当初は送りモータの回転速度を低速にし、その後コアビットの刃先部が全て前記インゴットに切り込むに至るまで送りモータの回転速度を連続して、或いは段階的に増加させ、コアビットの刃先部が全て前記インゴットに切り込んだのちは送りモータの回転速度を高速の一定速度に維持させ、コアビットの刃先部がインゴットの置かれるテーブル近くに達すると、送りモータの回転速度を再び低下させるように制御装置が送りモータを制御することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係わる発明は、請求項2に係わる発明を実施する装置であって、先端にダイヤモンド砥粒のチップよりなる刃先部を備えたコアビットと、該コアビットを回転駆動する回転駆動装置と、送りモータを備え、前記コアビットを送る送り装置とを有するコアドリルと、インゴットが設置されるxy方向に移動可能なテーブルと、該テーブルをx軸方向に送る第1の移動装置と、前記テーブルをy軸方向に送る第2の移動装置と、前記テーブル上に横倒しした状態で設置されるサファイア単結晶インゴットから採取しようとする円柱状ブロックの円形断面の中心が前記コアビットの回転中心に位置するように前記インゴットを位置決めする位置決め手段と、前記コアドリルに設置され、前記テーブル上に設置したサファイア単結晶インゴットまでの距離を計測する第1の計測手段と、前記コアドリルの送りモータの回転数を読取る第2の計測手段と、該第2の計測手段によって読取った送りモータの回転数からコアビット先端の刃先部の送り量を演算する機能、前記第1の計測手段による計測が前記刃先部直下の刃先部が当たる箇所のインゴットに対し、刃先部の円周方向に沿って連続的に行われるように前記第1及び第2の移動装置を制御する機能及び前記演算により求めたコアビットの刃先部の送り量が前記第1の計測手段によって計測された計測値のうち、最短距離を越えるまで送りモータの回転数を低速に制御し、最短距離を越えたのち、コアビット刃先部が全て前記インゴットに切り込むに至るまで連続的に或いは段階的に送りモータの回転数を増加するように制御し、全ての刃先部が前記インゴットに食い込んだのちは送りモータの回転数を高速の一定速度に維持させ、前記刃先部の送り量がテーブル近くに達すると、送りモータの回転数を低速に制御する機能を有する制御装置とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係わる発明は、請求項2に係わる発明を実施する別の装置に関するもので、先端にダイヤモンド砥粒のチップよりなる刃先部を備えたコアビットと、該コアビットを回転駆動する回転駆動装置と、送りモータを備え、前記コアビットを送る送り装置とを有するコアドリルと、一垂直軸線の回りに回転可能に軸支されるテーブルと、前記コアドリルに設置され、前記テーブル上に横倒しした状態で設置されるサファイア単結晶インゴットをコアビットの回転中心に位置決めする第2の位置決め手段と、前記コアドリルに設置され、前記テーブル上に設置したサファイア単結晶インゴットまでの距離を計測する第1の計測手段と、前記コアドリルの送りモータの回転数を読取る第2の計測手段と、該第2の計測手段によって読取った送りモータの回転数からコアビット先端の刃先部の送り量を演算する機能及び該演算により求めたコアビットの刃先部の送り量が前記第1の計測手段によって計測された計測値のうち、最短距離を越えるまで送りモータの回転数を低速に制御し、最短距離を越えたのち、コアビット刃先部が全て前記インゴットに切り込むに至るまで連続的に或いは段階的に送りモータの回転数を増加するように制御し、全ての刃先部が前記インゴットに食い込んだのちは送りモータの回転数を高速の一定速度に維持させ、前記刃先部の送り量がテーブル近くに達すると、送りモータの回転数を低速に制御する機能を有する制御装置とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係わる発明によると、コアビット先端の刃先部がサファイア単結晶インゴットに切り込む時点では送りモータが低速に回転するため、インゴットへの切り込みがスムースに行われ、前述するような刃先部の逃げやブレによるインゴットの欠損や割れ、ひびを生ずることがない。刃先部がある程度切り込むと、その後、送り速度を上げても逃げが生じにくくなる。刃先部が全てインゴットに切り込まれると、刃先部の逃げを生ずることはなく、高速で送ってもインゴットが損傷したり、割れやひびを生じない。くり抜きが終了する近くでは、インゴットや切り込まれた円柱状のブロックに割れを生じ易くなるが、送り速度を低速にすることにより、こうした問題を生じにくくなる。以上のようにして本発明によれば、サファイア単結晶インゴットから狙い通りの円柱法ブロックをスムースに効率よく採取することができる。
【0012】
請求項2及び請求項3、4に係わる発明によると、請求項1に係わる発明によって得られる円柱状ブロックを自動的に製造することができる。しかも請求項3に係わる発明においては、サファイア単結晶インゴットから円柱状ブロックを採取後、更にテーブルをxy方向に送って新たに採取しようとする円板状ブロックの円形断面の中心をコアビットの回転中心に位置決めすることで、同じサファイア単結晶インゴットから複数の円柱状ブロックを採取することができる。また請求項4に係わる発明においては、テーブルを回転させるだけで第1の計測手段による円周上でのインゴットまでの距離の計測が簡易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コアビット刃先部がインゴットの傾斜部に当たるときの説明図。
【図2】本発明に係わるくり抜き加工装置の模式図。
【図3】同装置のテーブルの平面図。
【図4】インゴットまでの測定値を示す展開図。
【図5】本発明に係わるくり抜き加工装置の別の例の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の円柱状ブロックのくり抜き装置について図面により説明する。
図2は、本装置全体の模式図を示すもので、コアドリルはコアドリルユニット11として示され、該ユニットは先端にダイヤモンド砥粒のチップよりなる刃先部12を備えたコアビット13を有し、該コアビット13は駆動モータ14よりなる回転駆動装置によって垂直軸線の回りを回転駆動されるようになっている。
【0015】
コアビット13はまた、コアドリルにおいてよく知られるように、送りモータ16と、ピニオンラック機構或いはボールネジよりなる往復直線運動機構(その一例が特許文献1にも開示されている。)により、前記垂直軸線に沿って送られて昇降できるようになっており、送りモータ16は、その回転数が第2の計測手段であるエンコーダ17により計測されるようになっている。
【0016】
コアドリルユニット11はまた、90°の角度で配置される一対のレーザラインマーカー18と第1の計測手段であるレーザ距離計19を備えている。このレーザ距離計19は採取しようとする円柱状ブロックの径に合わせて径方向に位置調整可能であるか、径方向に位置を変えて取り外し可能に取り付けられ、或いは採取される円柱状ブロックのサイズに合わせて複数個所に設けられる。
【0017】
コアドリルユニット11のベース21上には図3に示すように、矢印のx方向に移動可能なテーブル22aと、該テーブル22a下において矢印のy方向に移動可能なテーブル22bよりなるテーブル22が設置され、テーブル22aは第1の移動装置を構成するx軸用モータ24と、図示しないボールネジ又はピニオンラック機構によりx軸方向に送られ、またテーブル22bは第2の移送装置を構成するy軸用モータ25と図示しないボールネジ又はピニオンラック機構によりy軸方向に送られるようになっている。
【0018】
制御装置29は、CPUと、送り制御用のプログラム、インゴット位置決め用のプログラム、送りモータ16の回転数よりコアビット刃先部の上下位置を算出する計算式、円周上のxy座標を求める式などを格納するROMと、前記第1及び第2の計測手段によって計測された計測値、その他各種のデータを一時的に記憶するRAM等からなって全体がパソコンで構成されている。そして前記x軸用モータ24及びy軸用モータ25を制御する機能と(両モータ24及び25はそれぞれ、制御装置29によることなく、手動ボタンの操作によっても起動、停止を行うことができるようになっている)、コアビット13を回転駆動する駆動モータ14及び送りモータ16を制御する機能と、送りモータ16のエンコーダ17から読取った回転数の累積値から前記刃先部12の送り量を演算する機能と、前記レーザ距離計19によって刃先部直下の刃先部が当たる箇所のインゴットまでの距離の測定が刃先部の円周方向に沿って連続的に行われるように前記第1及び第2の移動装置を制御する機能、前記レーザ距離計19によって求められたサファイア単結晶インゴットまでの距離のうち、最小距離と最大距離の間を数区分し、コアビットの刃先部の送り量が増して区分された各レベルに達する都度、送りモータ16の回転が低速ではあるが次第に増加し、刃先部の送り量が前記最大距離を越えると、送り速度が高速の一定速度となり、更に刃先部の送り量がテーブルに近づくと、送り速度が低速となるように前記送りモータ16を制御する機能を備えている。ここでサファイア単結晶インゴット27は、前述のCZ法やEFG法或いはキロプロス法によって製造されたものである。
【0019】
本装置は以上のように構成され、サファイア単結晶インゴット27から円柱状のブロックをくり抜き加工する際には、インゴット27を結晶成長方向のa軸と平行な基準面を機械切削加工により作成し、基準面を下向きにしてテーブル上に設置する。
【0020】
次にインゴット27から採取しようとする円柱状ブロックの円形断面の中心点に相当する箇所oにマーク付けを行う。このマーク付けは例えばポンチを打ち込むか、或いはマジックその他筆記具によって記される。
【0021】
マーク付け後、レーザラインマーカー18でインゴット上に当てられた直交するラインの交点が前記マークに合致するようにボタン操作によってx軸用モータ24及びy軸用モータ25を起動停止しながらテーブル22のxy制御を行う。
【0022】
インゴット27にマーク付けされたマークをレーザラインマーカー18の交点に合致させることにより位置決めが行われ、したがってサファイア単結晶インゴット27から採取しようとする円柱状ブロックの円形断面の中心が前記コアビットの回転中心に位置するように前記インゴットを位置決めする位置決め手段は、前記マーク付け、レーザラインマーカー18、x軸用モータ24及びy軸用モータ25等により構成される。ここでx軸用モータ24及びy軸用モータ25は前記位置決め手段を構成するばかりでなく、レーザ距離計19によってインゴット27までの距離を測定するため、テーブル22a及びテーブル22bをxy制御する機能も有している。
【0023】
テーブル22a及びテーブル22bをxy制御してインゴット27にマーク付けされたマークをレーザラインマーカー18の交点に合致させたときのマーク付けされた点が中心点(0.0)となり、これより半径r、例えば3インチをテンキー等の外部入力手段により制御装置29に入力すると、制御装置29により前記中心点を中心とする半径rの実線で示す円周上のxy座標が求められる。
【0024】
制御装置29は次にレーザ距離計19によって行われる、コアビットの刃先部直下の刃先部が当たる箇所のインゴットまでの距離の測定が刃先部の円周方向に沿って連続的に行われるようにx軸用モータ24及びy軸用モータ25を制御し、テーブル22a、22bをxy制御する。これにより刃先部の円周方向に沿う、レーザ距離計19からインゴット27までの距離が連続的に測定され、制御装置29に出力される。
図4は、レーザ距離計19により刃先部に沿って測定された測定値を例示した展開図を示す。
【0025】
制御装置29は図4に例示された測定値のうち、最小値、すなわちコアビット刃先部12が最も早くインゴット27に当たる箇所である最短距離の測定値と、最大値、すなわちコアビット刃先部12が最も遅くインゴット27に当たる箇所(この箇所では刃先部12全体がインゴット27に切り込んだ状態となる)である最短距離の測定値を求め、この間を数区分、例えば3区分する。そして送りモータ16のエンコーダ17より求めたコアビットの刃先部12の送り量が前記最短距離を越え、図のB位置に達するまで送りモータ16の送り量が図4のB位置に達すると、送りモータ16の回転数をゆっくりであるが、増加させる。
【0026】
刃先部12の位置が図4のC位置に達すると、送りモータ16の回転数をゆっくりであるが更に増加させる。
刃先部12の位置が図4のD位置に達し、刃先部全体が一定の高速の送り量で切り込みを行う。
【0027】
刃先部12の位置がテーブル近くに達すると、制御装置29は送りモータ16の回転数を大幅に低下させ、ゆっくりと一定速度で回転させてインゴット27への切り込みを完了する。
【0028】
以上のようにしてくり抜き加工が行われ、インゴット27より円柱状ブロックが採取される。インゴット27の別の箇所から続いてコアビット13と同じ半径の円柱状ブロックを採取するときには、採取しようとする別の箇所のインゴット27に前記と同様にしてマーク付けを行ったのち、レーザラインマーカー18の交点がマークに合致するようにテーブル22a、22bのxy制御を行う。そして両者が合致したときのマーク付けされた点である中心点(x、y)を求めたのち、この中心点を中心とするコアビットの半径の円周(図4の一点鎖線で示す)上のxy座標を求め、ついで制御装置29によりテーブル22a、22bをxy制御してレーザ距離計19によるインゴット27までの距離の測定を刃先部12の円周方向に沿って行う。以後は前述の実施形態と同様、制御装置29による送りモータ16の制御が行われ、インゴット27から円柱状ブロックのくり抜きが行われる。
【0029】
前記実施形態では、コアビット13の刃先部12がインゴット27に切り込み始めてから全て切り込まれるまで、コアビット13の送りは3段階で変えられるようになっているが、3段階以外の2段階又は4段階以上に変えられるようにしてもよいし、無段で連続して変えられるようにしてもよい。
【0030】
前記実施形態ではまた、インゴット27にマーク付けしたマークとレーザポインター18の光点を合致させるのにボタン操作でx軸用モータ24とy軸用モータ25を操作し、テーブル22a、22bのxy制御を行っているが、モータ24、25を使用しないでハンドル操作でテーブル22a、22bをxy方向に送って行うこともできる。こうしたハンドル操作によるテーブル移動の一例が前述の特許文献1にも開示されている。
【0031】
前記実施形態ではまた、インゴット27までの距離を測定する第1の計測手段としてレーザ距離計を用いているが、超音波による距離計を用いてもよい。
【0032】
図5に示す実施形態では、テーブル31が垂直軸線の回りに回転可能に軸支され、テーブル下に取付けたステッピングモータ32により1回転するか、或いはステッピングモータ32に代え、手回しによって1回転するようにされる。
【0033】
本実施形態においては、先ず前記実施形態と同様、インゴット27にマーク付けを行い、マークがレーザラインマーカー18の交点に合致するようにインゴット27をテーブル31上に位置決めして設置する。これによりマークはテーブル31の回転中心に位置するようになる。本実施形態において、第2の位置決め手段はレーザラインマーカー18で構成される。
【0034】
インゴット設置後、テーブル31をモータにより、或いは手回しにより一回転させ、回転中心から距離rの位置に設置されたレーザ距離計19でインゴット27までの距離を測定する。以後は前述の実施形態と同様、制御装置29による送りモータ16の制御が行われ、インゴット27から円柱状ブロックのくり抜きが行われる。
【0035】
本実施形態による場合、テーブルをxy制御してインゴット27に付したマークをレーザポインター18の光点に合致させる必要もないし、レーザ距離計19による計測が刃先部直下の刃先部12に沿った円周上で行われるようにテーブルをxy制御する必要もなく、操作が容易で、制御装置29の制御プログラムも簡単となる。
実験例
【0036】
内径100mmのコアビットを用いてサファイア単結晶インゴットにくり抜き加工を行い、直径100mmの円柱状ブロックを作成した。このときのコアビットの送り量は、図4に示すように刃先部がインゴットに切り込み始め、全ての刃先部が切り込むまでを三区分し、Bレベルに達するまでは0.1mm/min、Cレベルに達するまでは0.5mm/min、Dレベルに達するまでは0.8mm/minに設定し、Dレベルに達すると、5mm/minに設定して行った。そして刃先部がインゴットの基準面から5mmの高さに達すると、送り量を0.5mm/minに下げ、くり抜きを完了した。
【0037】
刃先部がインゴットに切り込み始めたときにはコアビットの逃げやブレはなく、スムースな穿孔作業が行え、得られた円柱状ブロックに欠けや割れは生じなかった。
【符号の説明】
【0038】
11・・コアドリルユニット
12・・刃先部
13・・コアビット
14・・駆動モータ
16・・送りモータ
17・・エンコーダ
18・・レーザラインマーカー
19・・レーザ距離計
22、22a、22b、31・・テーブル
24・・x軸用モータ
25・・y軸用モータ
27・・インゴット
29・・制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアドリルを用い、該コアドリルを構成する円筒状のコアビットを送りモータで送って、テーブル上に横倒しした状態で設置されるサファイア単結晶インゴットをくり抜き、結晶方向と所望の角度を有する結晶方位の円柱状ブロックを製造する方法であって、コアドリルを構成するコアビットの刃先部の一部がサファイア単結晶インゴットに切り込み始める当初は、送りモータの回転速度を下げ、前記刃先部の一部が前記インゴットに切り込んだのちは、送りモータの回転速度を連続的或いは段階的に増加させ、刃先部の全てが前記インゴットに切り込むと、送りモータの回転速度を高速の一定速度に維持させ、前記刃先部がくり抜きの終了する近くまで達すると、送りモータの回転速度を再び低下させることを特徴とするサファイア単結晶インゴットから円柱状ブロックをくり抜く方法。
【請求項2】
前記テーブル上に横倒しした状態で設置されるサファイア単結晶インゴットから採取しようとする円柱状ブロックの円形断面の中心が前記コアビットの回転中心に位置するように前記インゴットを位置決めしたのち、コアドリルに設けた第1の計測手段によって、コアビットの刃先部直下の刃先部が当たる箇所のインゴットまでの距離を刃先部の円周方向に沿って連続的に測定し、ついで前記送りモータの回転数を第2の計測手段で読取ることによって求めた前記刃先部の送り量が前記第1の計測手段によって計測された前記インゴットまでの距離のうちの最短距離に達し、コアビットの刃先部がインゴットに切り込んだ当初は送りモータの回転速度を低速にし、その後コアビットの刃先部が全て前記インゴットに切り込むに至るまで送りモータの回転速度を連続して、或いは段階的に増加させ、コアビットの刃先部が全て前記インゴットに切り込んだのちは送りモータの回転速度を高速の一定速度に維持させ、コアビットの刃先部がインゴットの置かれるテーブル近くに達すると、送りモータの回転速度を再び低下させるように制御装置が送りモータを制御することを特徴とする請求項1記載のサファイア単結晶インゴットから円柱状ブロックをくり抜く方法。
【請求項3】
先端にダイヤモンド砥粒のチップよりなる刃先部を備えたコアビットと、該コアビットを回転駆動する回転駆動装置と、送りモータを備え、前記コアビットを送る送り装置とを有するコアドリルと、インゴットが設置されるxy方向に移動可能なテーブルと、該テーブルをx軸方向に送る第1の移動装置と、前記テーブルをy軸方向に送る第2の移動装置と、前記テーブル上に横倒しした状態で設置されるサファイア単結晶インゴットから採取しようとする円柱状ブロックの円形断面の中心が前記コアビットの回転中心に位置するように前記インゴットを位置決めする位置決め手段と、前記コアドリルに設置され、前記テーブル上に設置したサファイア単結晶インゴットまでの距離を計測する第1の計測手段と、前記コアドリルの送りモータの回転数を読取る第2の計測手段と、該第2の計測手段によって読取った送りモータの回転数からコアビット先端の刃先部の送り量を演算する機能、前記第1の計測手段による計測が前記刃先部直下の刃先部が当たる箇所のインゴットに対し、刃先部の円周方向に沿って連続的に行われるように前記第1及び第2の移動装置を制御する機能及び前記演算により求めたコアビットの刃先部の送り量が前記第1の計測手段によって計測された計測値のうち、最短距離を越えるまで送りモータの回転数を低速に制御し、最短距離を越えたのち、コアビット刃先部が全て前記インゴットに切り込むに至るまで連続的に或いは段階的に送りモータの回転数を増加するように制御し、全ての刃先部が前記インゴットに食い込んだのちは送りモータの回転数を高速の一定速度に維持させ、前記刃先部の送り量がテーブル近くに達すると、送りモータの回転数を低速に制御する機能を有する制御装置とを有することを特徴とする請求項2記載のサファイア単結晶インゴットから円柱状ブロックをくり抜く方法を実施する装置。
【請求項4】
先端にダイヤモンド砥粒のチップよりなる刃先部を備えたコアビットと、該コアビットを回転駆動する回転駆動装置と、送りモータを備え、前記コアビットを送る送り装置とを有するコアドリルと、一垂直軸線の回りに回転可能に軸支されるテーブルと、前記コアドリルに設置され、前記テーブル上に横倒しした状態で設置されるサファイア単結晶インゴットをコアビットの回転中心に位置決めする第2の位置決め手段と、前記コアドリルに設置され、前記テーブル上に設置したサファイア単結晶インゴットまでの距離を計測する第1の計測手段と、前記コアドリルの送りモータの回転数を読取る第2の計測手段と、該第2の計測手段によって読取った送りモータの回転数からコアビット先端の刃先部の送り量を演算する機能及び該演算により求めたコアビットの刃先部の送り量が前記第1の計測手段によって計測された計測値のうち、最短距離を越えるまで送りモータの回転数を低速に制御し、最短距離を越えたのち、コアビット刃先部が全て前記インゴットに切り込むに至るまで連続的に或いは段階的に送りモータの回転数を増加するように制御し、全ての刃先部が前記インゴットに食い込んだのちは送りモータの回転数を高速の一定速度に維持させ、前記刃先部の送り量がテーブル近くに達すると、送りモータの回転数を低速に制御する機能を有する制御装置とを有することを特徴とする請求項2記載のサファイア単結晶インゴットから円柱状ブロックをくり抜く方法を実施する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−116036(P2012−116036A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266232(P2010−266232)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000165424)株式会社コンセック (30)
【Fターム(参考)】