説明

再狭窄の治療および予防のための医薬組成物

(a)治療上有効な量の、構造式1および2で表わされる特定の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、溶媒和物または異性体、および(b)薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤、またはその任意の組み合わせ、を含む、再狭窄の治療および/または予防のための医薬組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管平滑筋細胞増殖を阻害することによる再狭窄の治療および/または予防に対し治療的効果を有する医薬組成物、より詳細には、(a)治療上有効な量の構造式1および構造式2によって表わされる化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、溶媒和物または異性体、および(b)薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤またはその任意の組み合わせを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管壁の損傷に対する1つの応答である血管平滑筋細胞増殖は、脂質により引き起こされた血管壁損傷を原因として動脈内膜内に二次的変化を示す動脈硬化症において顕著に見られる現象を意味する。かくして、血管平滑筋細胞増殖は、動脈硬化症の主要原因であるものとして認識されている。その上、血管平滑筋細胞増殖は、現在のところ動脈硬化症により狭窄された血管の機能を回復するための最良の方法である血管形成術、バイパス術または代用血管といったような外科手術の後に顕著に見られる公知の重大な問題である。
【0003】
従って、動脈硬化症を予防および治療する上で、血管平滑筋細胞増殖は非常に重要な要因であり、その結果としてこの血管平滑筋細胞増殖についての研究が活発に実施されている。近年、細胞エネルギー代謝において重大な役割を果たすものとして知られているAMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)の効果が、AMPK活性の増強が血管平滑筋細胞増殖を阻害するのに役立つという点において報告されてきている。
【0004】
これに関連して、NADは、AMPK活性を増大させるためのさまざまな因子の中でも重要な1つの因子であり、NAD(P)H:キニン・オキシドレダクターゼ1(NQO1)は、細胞中のNADを上昇させるための主たる因子である。
【0005】
NAD(P)H:キノン・オキシドレダクターゼ(EC1.6.99.2)は、DT−ジアフォラーゼ、キノン・レダクターゼ、メナジオン・レダクターゼ、ビタミンK・レダクターゼまたはアゾ染料レダクターゼとも呼ばれており、かかるNQOは、NQO1およびNQO2(非特許文献1)と呼称される2つのアイソタイプの形で存在する。NQOはフラボプロテインであり、キノンまたはキノン誘導体の2電子還元および解毒の触媒として作用する。NQOの活性は、非常に反応性の高いキノン代謝産物の形成を防止し、ベンゾ(d)ピレンおよびキノンを解毒し、クロムの毒性を減少させる。NQOの活性は、全ての種類の組織の中で発見されるが、組織によって変動する。一般に、NQOの高レベル発現が癌細胞、肝臓、胃および腎臓の組織中で確認されている。NQO遺伝子発現は、生体異物、抗酸化物質、酸化物質、重金属、UV光、放射線曝露などによって引き起こされる。NQOは、酸化的ストレスによって誘発される数多くの細胞防御機序の一部である。NQO遺伝子発現を含めたこのような細胞防御機序が関与する遺伝子の付随した発現は、酸化的ストレス、フリーラジカルおよび新生組織形成に対し細胞を防御するのに役立つ。
【0006】
NQO1は、上皮および内皮細胞の中に広く分布している。このことは即ち、NQO1が空気、食道または血管を介して吸収された化合物に対する防御機序として作用し得るということを意味する。最近の調査から、NQO1がレドックス機序を通した細胞周期調節p53の安定化に参与することがわかっている。
【0007】
NQOは、電子ドナーとしてNADHおよびNADPHの両方を利用する。NADPHは生合成プロセス内で還元剤として使用されるが、一方NADHはエネルギー生成反応内で使用される。NADPHは、脂肪合成に関与する重要な因子であり、パルミチン酸塩の合成には、14個のNADPH分子が必要となる。
【0008】
しかしながら、反応性酸素種(ROS)といったようなフリーラジカルが生成され、その間に脂肪合成およびエネルギー生成の後に残った余剰のNAD(P)Hが、血漿膜上に存在するNAD(P)Hオキシダーゼと呼ばれる酸化酵素により除去される。肥満および糖尿病における酸化的ストレスの増大の主たる原因は、NAD(P)Hオキシターゼであることが発見されている(非特許文献2)。同様に、NAD(P)Hオキシダーゼにより生成される反応性酸素種(ROS)といったフリーラジカルが、癌、心臓血管疾患、高血圧、動脈硬化症、心臓肥大、虚血性心疾患、敗血症、炎症性身体条件および疾患、血栓症、脳神経疾患(例えば脳出血(卒中)、アルツハイマ病およびパーキンソン病)、老化促進といったようなさまざまな疾病の発症の原因となる主要な要因であることも発見された(非特許文献3)。
【0009】
従って、生体内または生体外でのNAD/NADHおよびNADP/NADPH比が減少し、かくして余剰のNADHおよびNADPH分子が残留する場合、これらは脂肪生合成の中で利用される。更に、余剰のNADHおよびNADPHは、過剰な量で存在する場合に反応性酸素種(ROS)の生成を引き起こす主要基質としても使用されることから、NADHおよびNADPHは、ROSによって引き起こされる炎症性身体条件および疾病を含めた重大な疾患についての病原性因子であるかもしれない。これらの理由から、NADおよびNADPによる脂肪の酸化およびさまざまなエネルギー消費(代謝)は、NAD/NADHおよびNADP/NADPH比を増加した状態に安定維持するべく生体内または生体外環境を確立できる場合に活性化されるものと考えられている。
【0010】
近年、脂肪の酸化を含めた数多くの代謝に関与するさまざまな酵素のための補酵素または基質として機能するNA(D)Pが大いに注目を集めている。具体的には、NA(D)Pは、数多くの生物学的代謝プロセスに関与する生体内物質であり、NAD依存性DNAリガーゼ、NAD依存性オキシドレダクターゼ、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)、CD38、AMPK、CtBPおよびSir2pファミリーの成員を含めたさまざまな種類の酵素のための補酵素または基質として使用されると同時に、エネルギー代謝、DNA修復および転写の調節を担うさまざまな酵素の補酵素として使用される。NADは、以上で言及した生体内作用を通して、転写調節、長寿、カロリー制限により媒介される疾患において重要な役割を果たすことが発見された。
【0011】
従って、細胞内レドックス状態を調節する主要な要因であるNAD(P)/NAD(P)H比は、生体の代謝状態を反映する指標とみなされることが多い。NAD(P)/NAD(P)H比は、代謝プロセスの変化と共に変動する。とりわけ、NADは代謝調節因子として機能することがわかっている。さまざまな老化に伴う疾病が、NADまたはNAD(P)/NAD(P)Hのレドックス状態の変化と直接的または間接的に結びつけられている。
【0012】
一方で、AMP活性化されたタンパク質キナーゼ(AMPK)は、生命体内のエネルギー状態、レドックス状態の程度およびリン酸化を検知するタンパク質であり、AMPによってのみならずNADによっても活性化されることが確認された(非特許文献4)。リン酸化により活性化されたAMPKは、脂肪合成の阻害、グルコース摂取の促進、脂肪分解(リポリシス)および脂肪の酸化の促進、解糖の促進、インスリン感受性の増強、グリコーゲン合成の抑制、トリグリセリドおよびコレステロール合成の抑制、炎症の軽減(抗炎症作用)、血管拡張作用、心臓血管系の機能的改善、ミトコンドリア再生および筋肉構造変化、抗酸化作用、老化防止および抗癌効果といったようなさまざまな機能および作用を示すことが報告されている。更に、以上で言及したさまざまな活性および機能に起因して、AMPKは、肥満、糖尿病、メタボリック症候群、脂肪肝、虚血性心疾患、高血圧、変性脳疾患、高脂血症、糖尿病性合併症および勃起障害といったような疾病の治療のための標的タンパク質としても認知されている(非特許文献5、非特許文献6;非特許文献7)。
【0013】
リー(Lee)ら(非特許文献8)は、アルファ−リポ酸が視床下部AMPK活性を抑制しかくして食欲を制御することによって抗肥満効果を及ぼすことができる、ということを示唆した。彼らはまた、アルファ−リポ酸が、視床下部ではなく筋肉組織内でのAMPKの活性化を介して脂肪代謝を促進し、アルファ−リポ酸が、特に含脂肪細胞の中でUCP−1を活性化することによりエネルギー消費を容易にするという理由で肥満の治療用として治療上有効なものであることを報告した。
【0014】
ロジェ(Roger)ら(非特許文献9)は、AMPK活性化因子またはマロニル−CoA還元因子が、かかる異常な疾病および症候群からの回復またはその予防用として考えられる標的であり得るということを示唆した。
【0015】
ナンダクマール(Nandakumar)ら(非特許文献10)は、虚血性心疾患において、AMPKが、脂肪およびグルコース代謝の調節を介して虚血灌流傷害を治療するための標的であると考えられる、ということを提案した。
【0016】
ミン(Min)ら(非特許文献11)は、AMPKが、アルコール性脂肪肝の調節のために有効であることを報告した。
【0017】
ジュヌヴィエーブ(Genevieve)ら(非特許文献12)は、肥満関連性糖尿病を含めた慢性炎症性身体条件または内毒素性ショックにおける炎症メディエータであるiNOS酵素の活性をAMPKの活性化が阻害し、かくしてAMPKは、インスリン感受性を増強することのできる機序をもつ新しい薬剤を開発するために有効である、ということを報告した。更に、彼らは、iNOS活性の阻害がAMPKの活性化によってもたらされ、かくしてこの発見事実は敗血症、多発性硬化症、心筋梗塞、炎症性腸疾患および膵臓ベータ細胞機能不全といったような疾病に対し臨床的に応用可能である、ということを報告した。
【0018】
ジン・ピン(Zing−Ping)ら(非特許文献13)は、AMPKが、マウスの筋肉細胞および心筋細胞内においてCa−カルモジュリンの存在下で、リン酸化を通して内皮NOシンターゼを活性化するということを報告した。これは、AMPKが狭心症を含めた心疾患に関与することを表わしている。
【0019】
ジャビエ(Javier)ら(非特許文献14)は、エネルギーの利用を制限することによって寿命を延ばすことができ、このような延長された寿命は、生体内AMP/ATP比が増大させられ従ってAMPKのα2サブユニットがAMPにより活性化されるような形で達成される、ということを報告した。従って、彼らは、AMPKが、延命とエネルギーレベルおよびインスリン様シグナル情報の間の関係を検出するためのセンサとして機能し得るということを示唆した。
【0020】
一方、活性成分として従来のナフトキノンベースの化合物を有する一部の医薬組成物が公知である。それらの中でも、β−ラパコンは、南米原産のラパチョの木(Tabebuia avellanedae)から得られたラパコールから誘導された天然植物製品である。デュニオンおよびα−デュニオンもまた、南米原産のストレプトカルプス・デュニイ(Streptocarpus dunniino)の葉から得られる。南米では古来、これらの天然の3環式ナフトキノン誘導体は、標準的に南米の風土病であるシャーガス病の治療において並びに抗癌薬として広く使用されてきており、同様に、優れた治療効果を及ぼすものとして公知である。特に、抗癌薬としてのその薬理作用は一般に西洋諸国に知られていることから、これらの3環式ナフトキノン誘導体は最近になって人々の注目を著しく引きつけた。事実、特許文献1の中で開示されている通り、このような3環式ナフトキノン誘導体化合物は、現在数多くの研究グループおよび機関によりさまざまな抗癌薬として開発されている。
【0021】
しかしながら、さまざまな調査および研究にも関わらず、かかるナフトキノン化合物は、NADおよびAMPK活性の増大を介して、血管平滑筋細胞増殖により引き起こされる動脈硬化症のための外科手術またはその処置に付随する再狭窄を治療または防止するための治療的効能を有するという事実は、いまだに未知であり続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第5,969,163号明細書
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】ROM.J.INTERN.MED.2000〜2001年、第38〜39巻、33〜50頁
【非特許文献2】Free Radical Biology & Medicine.第37巻、第1号、115〜123頁、2004年
【非特許文献3】J.Pharm.Pharmacol.2005年、第57号(1):111〜116頁
【非特許文献4】J.Biol.Chem.2004年12月17日;279号(51):52934〜9頁
【非特許文献5】Nat.Med.2004年7月;第10号(7):727〜33頁
【非特許文献6】Nature reviews、第3号、340〜351頁、2004年
【非特許文献7】Genes & Development、第27号、1〜6頁、2004年
【非特許文献8】Nature medicine、第13号(6月)、2004年
【非特許文献9】Cell、第117号、145〜151頁、2004年
【非特許文献10】Progress in lipid research、第42号、238〜256頁、2003年
【非特許文献11】Am.J.Physiol.Gastrointest Liver Physiol、第287号、G1〜6頁、2004年
【非特許文献12】J.Biol.Chem、第279号、20767〜74頁、2004年
【非特許文献13】FEBS Letters、第443号、285〜289頁、1999年
【非特許文献14】Genes & Develop.2004年
【非特許文献15】V.ナイアー(Nair)ら、Tetrahedron Lett.第42号(2001年)、4549〜4551頁
【非特許文献16】A.C.ベーリー(Baillie)ら、J.Chem.Soc.(C)、1968年、48〜52頁
【非特許文献17】J.K.スナイダー(Snyder)ら、Tetrahedron Letters、第28号(1987年)、3427〜3430頁
【非特許文献18】Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.,ペンシルバニア州イーストン、第18版、1990年
【非特許文献19】J.Org.Chem.、第55号(1990年)4995〜5008頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
以上で記述したような事実に基づくさまざまな網羅的および集中的な研究および実験の結果として、本発明の発明人らは、特異的化合物の使用を介したNQO1の活性化が、血管平滑筋細胞増殖を阻害することにより動脈硬化症の処置のための外科手術に付随する再狭窄の予防および/または治療にとって有効である、ということを改めて確認した。本発明は、これらの発見事実に基づいて完成されたものである。
【0025】
従って、本発明の目的は、動脈硬化症の処置のための外科手術に付随する再狭窄の治療および予防のために治療的効果をもつ化合物を活性成分として含む医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の一態様に従うと、前述のおよびその他の目的は、(a)以下の構造式1および2:
【化1】

【化2】

(式中、
とRが各々独立して水素、ハロゲン、アミノ、アルコキシ、またはC−C低級アルキルまたはアルコキシであるか、そうでなければRおよびRが合わされて、飽和状態または部分不飽和または完全不飽和状態となっていてよい置換または未置換環状構造を形成してよく;
、R、R、R、RおよびRが各々独立して水素、ヒドロキシ、アミノ、C−C20アルキル、アルケンまたはアルコキシ、C−C20シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、そうでなければR〜Rのうちの2つの置換基が合わされて、飽和状態または部分不飽和または完全不飽和状態となっていてよい環状構造を形成してよく;
XがC(R)(R’)、N(R’’)、OおよびSからなる群から選択され、好ましくはOまたはS、より好ましくはOであり、ここで、R’が水素またはC−C低級アルキルであり;
YがSである場合、RおよびRは存在せず、かつYがNである場合、Rは水素またはC−C低級アルキルでありかつRは存在しないことを条件として、YはC、SまたはNであり;
nが0である場合nに隣接する炭素原子は直接結合を介して環状構造を形成することを条件として、nは0または1である);
によって表わされる化合物、またはそれらの薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、溶媒和物または異性体の中から選択された治療上の有効量の1つ以上の化合物、および
(b) 薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤、或いはそれらの任意の組み合わせ、
を含む、再狭窄を治療および/または予防するための医薬組成物を提供することにより達成可能である。
【0027】
再狭窄に対する構造式1の化合物の治療的効果を確認するため、本発明の発明人らは実験を行なった。その結果として、構造式1または2に従った化合物を血管平滑筋細胞に投与した場合、NQO1発現が上昇し、NQO1発現に従って増大したNADがAMPK活性を上昇させて血管平滑筋細胞増殖を阻害することが確認された。更に、化合物の投与は動脈硬化症の治療のためのバルーン血管形成を実施した後の内膜過形成を阻害することも同様に確認された。
【0028】
この点に関して、構造式1または2の化合物は、バルーン血管形成を実施した後に頻繁に発生する血管平滑筋細胞増殖に付随する再狭窄および脂質による血管壁損傷後の血管平滑筋細胞増殖に付随する動脈硬化症の予防および治療に対してすぐれた効果を有すると考えられている。
【0029】
本開示で使用される際、「薬学的に許容可能な塩」というのは、それが投与される生体に著しい刺激を引き起こすことがなく、かつ化合物の生物活性および特性を無効にしない化合物の処方物を意味する。薬学的塩の例としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸などの無機酸;酒石酸、蟻酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸およびサリチル酸といった有機酸;またはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸などのスルホン酸などの薬学的に許容可能なアニオンを含有する非毒性酸付加塩を形成することのできる酸と化合物の酸付加塩が含まれ得る。具体的には、薬学的に許容可能なカルボン酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩、アルギニン、リジンおよびグアニジンなどのアミノ酸との塩、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジエタノールアミン、コリンおよびトリエチルアミンなどの有機塩基との塩が含まれる。本発明に従った化合物は、当該技術分野において周知の従来の方法によってその塩に転換されてよい。
【0030】
本明細書で使用される際、「プロドラッグ」という用語は、生体内で親薬物へと転換される作用物質を意味する。プロドラッグは、或る種の状況下で親薬物よりも容易に投与できるという理由で、有用であることが多い。これらは例えば、親薬物がそうでない場合でも、経口投与によって生物学的利用能を有する。プロドラッグは同様に、親薬物に比べて改善された医薬組成物中の溶解度をも有し得る。プロドラッグの1つの例は、限定的な意味なく、水溶性が移動性にとって不利である場合に細胞膜を横断しての輸送を容易にするべくエステル(「プロドラッグ」)として投与されるもののその後ひとたび水溶性が有益である細胞の内部に入った時点で活性実体であるカルボン酸へと代謝的に加水分解させられる本発明の化合物であると考えられる。プロドラッグのさらなる例は、酸性基に結合された短鎖ペプチド(ポリアミノ酸)であってもよく、ここでペプチドは活性部分を曝すために代謝される。
【0031】
このようなプロドラッグの一例として、本発明に従った薬学化合物は活性成分として以下の構造式1a:
【化3】

によって表されるプロドラッグを含み、
式中、
、R、R、R、R、R、R、R、Xおよびnが構造式1に定義されている通りである。
【0032】
およびR10が、各々独立して−SONaであるか、または以下の構造式A:
【化4】

で表わされる置換基またはその塩であり;
この式中、
11およびR12は各々独立して水素或いは置換または未置換のC−C20直鎖アルキルまたはC−C20分岐アルキルであり、
・ R13は、以下の置換基i)〜viii):
i)水素;
ii)置換または未置換のC−C20直鎖アルキルまたはC−C20分岐アルキル;
iii)置換または未置換アミン;
iv)置換または未置換のC−C10シクロアルキルまたはC−C10ヘテロシクロアルキル;
v)置換または未置換のC−C10アリールまたはC−C10ヘテロアリール;
vi)R、R’およびR’’が各々独立して水素、または置換または未置換のC−C20直鎖アルキルまたはC−C20分岐アルキルであり、R14が水素、置換または未置換アミン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択されており、lが1〜5の中から選択されている、−(CRR’−NR’’CO)−R14
vii)置換または未置換カルボキシル;
viii)−OSONa
からなる群から選択されており;
kが0である場合、R11およびR12は存在せず、R13は直接カルボニル基に対し結合されていることを条件として、kは0〜20の中から選択されている。
【0033】
本明細書で使用される際、「溶媒和物」という用語は、非共有分子間力により結合させられた化学量論的または非化学量論的量の溶媒を更に含む本発明の化合物またはその塩を意味する。好ましい溶媒は、揮発性、非毒性でかつ/またはヒトへの投与のために許容できるものである。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物を意味する。
【0034】
本明細書で使用される際、「異性体」という用語は、同じ化学式または分子式を有するものの光学的または立体的に異なっている本発明の化合物またはその塩を意味する。D型光学異性体およびL型光学異性体が、選択された置換体のR〜R型に応じて構造式1中に存在し得る。
【0035】
特別の定めのないかぎり、「構造式1または構造式2の化合物」という用語は、化合物自体およびその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、溶媒和物または異性体を包含するように意図されている。
【0036】
本明細書で使用される際、「アルキル」という用語は、脂肪族炭化水素基を意味する。アルキル部分は、「飽和アルキル」基であってよく、これはそれがいかなるアルケン部分もアルキン部分も含まないことを意味している。代替的には、アルキル部分は「不飽和アルキル」部分であってもよく、これは、それが少なくとも1つのアルケンまたはアルキン部分を含むことを意味している。「アルケン」部分という用語は、少なくとも2つの炭素原子が少なくとも1つの炭素−炭素2重結合を形成している基を意味し、「アルキン」部分というのは、少なくとも2つの炭素原子が少なくとも1つの炭素−炭素3重結合を形成している基を意味する。アルキル部分は、それが置換されているか未置換であるかに関わらず、分岐、直鎖または環状であってよい。
【0037】
本明細書で使用される際、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、内部で1つ以上の環炭素原子が酸素、窒素または硫黄で置換され、かつ限定されるわけではないが例えばフラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソチアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジンおよびトリアジンを含む炭素環基を意味する。
【0038】
本明細書で使用される際「アリール」という用語は、共役パイ(π)電子系を有する少なくとも1つの環を有し、炭素環式アリール(例えばフェニル)および複素環アリール(例えばピリジン)基の両方共を含む芳香族置換基を意味する。この用語には、単環式または縮合環多環式(即ち隣接する炭素原子対を共有する環)基が含まれる。
【0039】
本明細書で使用される際「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つの複素環を含む芳香族基を意味する。
【0040】
アリールまたはヘテロアリールの例としては、フェニル、フラン、ピラン、ピリジル、ピリミジル及びトリアジルが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0041】
本発明に従った構造式1または2のR、R、R、R、R、R、RおよびRは、任意に置換されていてよい。置換される場合、1つまたは複数の置換基は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂肪環、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト(isocyanato)、チオシアナト(thiocyanato)、イソチオシアナート(isothiocyanato)、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、並びに1置換および2置換アミノを含むアミノ、およびその保護誘導体の中から個別にかつ独立して選択された1つ以上の基である。更に、構造式1a中の置換基R11、R12およびR13は以上で定義された通りに置換されていてもよく、置換される場合は、以上に言及された置換基として置換され得る。
【0042】
構造式1の化合物のうち、好ましいのは、以下の構造式3および4の化合物である。
【0043】
構造式3の化合物は、nが0であり、隣接する炭素原子がその間の直接結合を介して1つの環状構造(フラン環)を形成する化合物であり、以下では「フラン化合物」または「フラノ−o−ナフトキノン誘導体」と呼ばれることが多い。
【化5】

【0044】
構造式4の化合物は、nが1である化合物であり、以下では「ピラン化合物」または「ピラノ−o−ナフトキノン」と呼ばれることが多い。
【化6】

【0045】
構造式1中、RおよびRの各々は特に好ましくは水素である。
【0046】
構造式3のフラン化合物中、特に好ましいのは、R、RおよびRが水素である構造式3aの化合物、またはR、RおよびRが水素である構造式3bの化合物である。
【化7】

【化8】

【0047】
更に、構造式4のピラン化合物のうち、特に好ましいのは、R、R、R、R、RおよびRが水素である構造式4aの化合物であるか、またはRおよびRが合わされて置換または未置換の環状構造を形成する構造式4bまたは4cの化合物である。
【化9】

【化10】

【化11】

【0048】
構造式2の化合物中、限定されるわけではないが好ましいのは、以下の構造式2aおよび2bの化合物である。
【0049】
構造式2aの化合物は、nが0であり隣接する炭素原子がそれらの間の直接結合を介して環状構造を形成し、YがCである化合物である。
【化12】

【0050】
構造式2bの化合物は、nが1でありYがCである化合物である。
【化13】

【0051】
構造式2aまたは2bにおいて、R、R、R、R、R、R、R、RおよびXは、構造式2に定義されている通りである。
【0052】
本明細書で使用される際「医薬組成物」という用語は、希釈剤または担体などのその他の化学化合物と構造式1または2の化合物の混合物を意味する。医薬組成物は、生体への化合物の投与を容易にする。当該技術分野では、さまざまな化合物投与技法が公知であり、これには、経口、注入、エアロゾル、非経口および局所投与が含まれるがこれらに限定されるわけではない。医薬組成物は同様に、関心対象の化合物を塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などといった酸と反応させることによって得ることもできる。再狭窄の治療及び予防に治療上有効な、有効成分には、以下「活性成分」と呼ばれる、上述の構造式のすべての化合物が含まれる。
【0053】
「治療上有効な量」という用語は、その化合物を投与した時点で、治療を必要とする疾病の症候のうちの1つ以上を或る程度緩和または軽減する、或いは予防を必要とする疾病の臨床的指標または症候の開始を遅延するのに有効である活性成分の量を意味する。かくして、治療上有効な量というのは、(i)疾病の進行速度を逆転させる効果;(ii)疾病の更なる進行を或る程度阻止する効果;および/または(iii)疾病に付随する1つ以上の症候を或る程度緩和する(または、好ましくは除去する)効果を示す活性成分の量を意味する。治療上有効な量は、治療を必要としている疾病について公知の生体内および生体外モデル系において、関連する化合物で実験を行なうことによって、経験的に決定してよい。
【0054】
活性成分の調製
本発明に従った医薬組成物においては、以下で例示される通り活性成分としての構造式1または2の化合物は、当該技術分野において公知の従来の方法および/または有機化学合成の分野における一般的技術および実践方法に基づくものであるさまざまなプロセスによって調製可能である。以下で記述されている調製プロセスは単なる一例にすぎず、その他のプロセスを利用することもできる。従って本発明の範囲は、以下のプロセスに限定されるわけではない。
【0055】
調製方法1:酸触媒環化による活性材料の合成
比較的単純な化学的構造を有する3環式ナフトキノン(ピラノ−o−ナフトキノンおよびフラノ−o−ナフトキノン)誘導体は一般に、触媒として硫酸を用いた環化を介して比較的高い収量で合成される。このプロセスに基づいて、構造式1のさまざまな化合物を合成することができる。
【0056】
より具体的には、上述の合成を以下のように要約してもよい。
【化14】

【0057】
即ち、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを1つの塩基の存在下でさまざまなアリル臭化物またはその等化物と反応させた場合、C−アルキル化生成物およびO−アルキル化生成物が同時に得られる。同様に反応条件のみに応じて2つの誘導体のうちのいずれかを合成することもまた可能である。O−アルキル化誘導体は、トルエンまたはキシレンといったような溶媒を用いてO−アルキル化誘導体を還流させることによってクライゼン転位を通してもう1つのタイプのC−アルキル化誘導体に転換されることから、さまざまなタイプの3置換−2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン誘導体を得ることが可能である。かくして得られたさまざまなタイプのC−アルキル化誘導体は、触媒として硫酸を用いた環化に付されてよく、かくして、構造式1の化合物の中でピラノ−o−ナフトキノンまたはフラノ−o−ナフトキノン誘導体を合成することができる。
【0058】
調製方法2:3−メチレン−1,2,4−[3H]ナフタレントリオンを用いたディールス・アルダー反応
非特許文献15によって教示されている通り、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンおよびホルムアルデヒドを合わせて加熱することで生成され3−メチレン−1,2,4[3H]ナフタレントリオンをさまざまなオレフィン化合物とのディールス・アルダー反応に付すことによって、さまざまなピラノ−o−ナフトキノン誘導体を比較的容易に合成できるということが報告されている。この方法は、さまざまな形態のピラノ−o−ナフトキノン誘導体を、触媒として硫酸を用いる環化の誘発に比べ比較的単純化された要領で合成できる、という点において有利である。
【化15】

【0059】
調製方法3:ラジカル反応によるハロアルキル化と環化
フラノ−o−ナフトキノン誘導体の合成のためにも、クリプトタンシノンおよび15,16−ジヒドロ−タンシノンの合成において用いたものと同じ方法を適切に使用できる。即ち、非特許文献16により教示されているように3−ハロプロパン酸または4−ハロブタン酸誘導体から誘導された2−ハロエチルまたは3−ハロエチルラジカル化学種を2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンと反応させ、かくして3−(2−ハロエチルまたは3−ハロプロピル)−2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを合成し、これを次に適切な酸性触媒条件下で環化に付してさまざまなピラノ−o−ナフトキノンまたはフラノ−o−ナフトキノン誘導体を合成することができる。
【化16】

【0060】
調製方法4:ディールス・アルダー反応による4,5−ベンゾフランジオンの環化
クリプトタンシノンおよび15,16−ジヒドロ−タンシノンの合成において使用されるもう1つの方法は、非特許文献17によって教示されている方法であり得る。この方法に従うと、フラノ−o−ナフトキノン誘導体を、4,5−ベンゾフランジオン誘導体とさまざまなジエン誘導体の間のディールス・アルダー反応を介した付加環化により合成することができる。
【化17】

【0061】
更に、以上で言及した調製方法に基づくと、置換基の種類に応じて関連する合成方法を用いてさまざまな誘導体を合成してもよい。かくして合成された誘導体および方法の具体例は、下表1に例示されている。具体的な調製方法については、以下の実施例において記述される。
【0062】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【0063】
本発明の医薬組成物は、それ自体公知の要領で、例えば従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥プロセスを用いて製造してよい。
【0064】
本発明に従って使用するための医薬組成物は、更に、薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤またはそれらのあらゆる組み合わせを含んでもよい。従って、本発明に従って使用される医薬組成物は、薬学的に使用することのできる調製物への活性化合物の加工を容易にする賦形剤および助剤を含む1つ以上の薬学的に許容可能な担体を用いて、従来の要領で処方してよい。医薬組成物は、生体に対する化合物の投与を容易にする。
【0065】
「担体」という用語は、細胞または組織内への化合物の取込みを容易にする化学化合物を意味する。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、数多くの有機化合物の生体細胞または組織内への摂取を容易にすることから、一般に利用される担体である。
【0066】
「希釈剤」という用語は、関心対象の化合物を溶解させると同時に化合物の生物学的に活性な形態を安定化させる、水中に希釈された化学化合物を定義づけしている。緩衝溶液中に溶解した塩が、当該技術分野において希釈剤として用いられている。一般的に使用されている1つの緩衝溶液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)であるが、それはこれが人体の体液のイオン強度条件に類似しているからである。緩衝塩は低濃度で溶液のpHを制御できることから、緩衝希釈液は、化合物の生物活性をほとんど修飾しない。
【0067】
本明細書で記述された化合物は、そのままで人間の患者に投与することもできるし、或いはまた、組み合わせ療法の場合のようなその他の活性成分または適切な担体または1つまたは複数の賦形剤と混合されている医薬組成物の形で投与されてもよい。化合物の処方および投与のための技法は、非特許文献18の中に見出すことができる。
【0068】
当該技術分野においては化合物を投与するさまざまな技術が公知であり、経口、注入、エアゾル、非経口および局所投与が含まれるが、これらに限定されるわけではない。医薬組成物は同様に、関心対象の化合物を塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などといった酸と反応させることによって得ることもできる。
【0069】
化合物は、当該技術分野において公知のさまざまな方法により処方されてよく、好ましくは、薬学的に許容可能なものである薬学的に許容可能な経口、外用、経粘膜および注入調製物の形に処方され、より好ましくは経口調製物の形に処方されてよい。
【0070】
経口投与用の本発明の医薬組成物は好ましくは腸標的処方物の形に調製される。
【0071】
一般に、経口医薬組成物は、経口投与すると胃を通過し、小腸により大部分が吸収され、次に体の全ての組織中に拡散され、かくして、標的組織に対して治療効果をもたらす。
【0072】
これに関連して、本発明に従った経口医薬組成物は、腸標的処方を介して活性成分として構造式1または2の化合物の活性成分の生体吸収性および生物学的利用能を増強する。より具体的には、本発明に従った医薬組成物内の活性成分が主として胃および小腸の上部部分で吸収される場合、体内に吸収された活性成分は直接肝臓代謝を受け、このときこの代謝にはこの活性成分の実質的分解が付随し、従って、所望のレベルの治療的効果をもたらすことは不可能である。一方、活性成分が概ね下部小腸の周囲およびその下流側で吸収される場合には、吸収された活性成分はリンパ管を介して標的組織まで移動し、かくして高い治療効果をもたらすと予想される。
【0073】
更に、本発明に従った医薬組成物は、それが消化プロセスの最終目標である結腸までターゲティングするような形で構築されていることから、薬物の生体内保持時間を増大させることが可能であり、かつ体内へ薬物を投与した結果としての体の代謝に起因して発生し得る薬の分解を最小限におさえることも同様に可能である。その結果、薬物の薬物速度論的特性を改善すること、疾病の治療にとって必要な活性成分の臨界有効用量を著しく低下させること、そして微量の活性成分を投与しただけでも所望の治療的効果を得ること、が可能である。更にこの経口医薬組成物においては、胃内pH変化および食糧摂取パターンの結果としてもたらされるかもしれない生物学的利用能の個体間および個体内での変動を低減させることにより薬物の吸収変動を最小限におさえることも可能である。
【0074】
従って、本発明に従った腸標的処方物は、活性成分が小腸および大腸内そしてより好ましくは空腸そして下部小腸に対応する結腸および回腸内、特に好ましくは回腸または結腸内で概ね吸収されるような形で構成されている。
【0075】
腸標的処方は、さまざまな方法を通して、消化管の数多くの生理学的パラメータを利用することによって設計することができる。本発明の1つの好ましい実施形態においては、腸標的処方物は、(1)pH感受性重合体に基づく処方方法、(2)腸特異的細菌酵素により分解可能である生分解性重合体に基づく処方方法、(3)腸特異的細菌酵素により分解可能である生分解性マトリクスに基づく処方方法、または(4)所与の遅延時間後の薬物の放出を可能にする処方方法、およびその任意の組合せによって調製され得る。
【0076】
具体的には、pH感受性重合体を用いた腸標的処方(1)は、消化管のpH変化に基づく薬物送達系である。胃のpHは1〜3の範囲内にあり、一方小腸および大腸のpHは、胃のものと比べて高い7以上の値を有する。この事実に基づいて、医薬組成物が消化管のpH変動に影響されることなく下部小腸部分に確実に到達するようにするために、pH感受性重合体を使用することができる。pH感受性重合体の例としては、メタクリル酸−アクリル酸エチル共重合体(オイドラギット:ロームファルマ社の登録商標)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)およびそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つのものが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0077】
好ましくは、pH感受性重合体をコーティングプロセスにより付加してよい。例えば、重合体の添加は、溶媒内に重合体を混合して水性コーティング懸濁液を形成し、得られたコーティング懸濁液を噴射してフィルムコーティングを形成し、そしてフィルムコーティングを乾燥させることによって実施可能である。
【0078】
腸特異的細菌酵素によって分解可能である生分解性重合体を用いた腸標的処方(2)は、腸内細菌によって産生され得る特異的酵素の分解能力を利用することに基づくものである。特異的酵素の例としては、アゾレダクターゼ、細菌ヒドロラーゼグリコシダーゼ、エステラーゼ、ポリサッカリダーゼなどが含まれていてよい。
【0079】
標的としてアゾレダクダーゼを用いた腸標的処方を設計することが望まれる場合には、生分解性重合体は、アゾ芳香族連結を含む重合体例えばスチレンとヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の共重合体であり得る。活性成分を含有する処方物に重合体が添加される場合、例えばバクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)およびユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)といった腸内細菌によって特異的に分泌されるアゾレダクターゼの作用を介して重合体のアゾ基の還元によって活性成分を腸内に解放させることができる。
【0080】
標的としてグリコシダーゼ、エステラーゼ、またはポリサッカリダーゼを用いた腸標的処方を設計することが望まれる場合、生分解性重合体は、天然多糖またはその置換誘導体であってよい。例えば、生分解性重合体は、デキストランエステル、ペクチン、アミラーゼ、エチルセルロースおよびその薬学的に許容可能な塩であってよい。重合体が活性成分に添加される場合、例えばビフィドバクテリア(Bifidobacteria)およびバクテロイデス(Bacteroides)菌株といった腸内細菌によって特異的に分泌される各酵素の作用を介して重合体の加水分解により腸内に活性成分を解放することができる。これらの重合体は天然材料であり、生体内毒性のリスクが低いという利点をもつ。
【0081】
腸特異的細菌酵素により分解可能である生分解性マトリクスを用いた腸標的処方(3)は、生分解性重合体が互いに架橋され活性成分または活性成分含有処方物に添加されている1つの形態であり得る。生分解性重合体の例としては、硫酸コンドロイチン、グアーガム、キトサン、ペクチンなどといった天然重合体が含まれ得る。薬物放出度は、マトリクス構成重合体の架橋度に応じて変動し得る。
【0082】
天然重合体に加えて、生分解性マトリクスは、N置換アクリルアミドに基づく合成ヒドロゲルであってよい。例えば、N−tert−ブチルアクリルアミドとアクリル酸との架橋または2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび4−メタクリロイルオキシアゾベンゼンの共重合により合成されるヒドロゲルをマトリクスとして使用してよい。架橋は以上で言及した通り例えばアゾ連結であり得、処方は、腸薬物送達のための最適な条件を提供するべく架橋密度が維持され、腸に薬物が送達された時点で腸粘膜と相互作用するべく連結が分解される一つの形態である。
【0083】
更に、遅延時間の後の薬物の経時的放出を伴う腸標的処方(4)は、pHの変化とは無関係に予め定められた時間の後活性成分を放出することができるようになっている1つの機序を利用する薬学送達系である。活性薬物の腸内放出を達成するためには、処方物は、胃内pH環境に対し耐性がなくてはならず、腸内への活性成分の放出に先立ち、体から腸への薬物の送達にかかる時限に対応する5〜6時間の間、サイレント期(silent phase)にあるべきである。時間特異的遅延放出処方物は、酸化ポリエチレンとポリウレタンとの共重合に基づいて調製されたヒドロゲルの付加により調製可能である。
【0084】
具体的には、遅延放出処方物は、不溶性重合体に対して薬物を適用した後以上で言及した組成を有するヒドロゲルを添加した結果、胃および小腸の上部消化管内にとどまる間に処方物が水を吸収し次に膨潤し、その後下部消化管である小腸の下部部分まで移動し薬物を解放する構成を有しており、この薬物の遅延時間はヒドロゲルの長さに応じて決定される。
【0085】
重合体のもう1つの例としては、エチルセルロース(EC)を、遅延放出投薬量処方において使用することができる。ECは不溶性重合体であり、水の浸透に起因する膨潤媒質の膨潤または蠕動運動に起因する腸の内部圧力の変化に応答して、薬物放出時間を遅延させるための因子として役立ち得る。遅延時間は、ECの厚みにより制御され得る。付加的な例としては、重合体の厚み制御により所与の時限の後に薬物を放出できるようにする遅延剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を使用してもよく、これは5〜10時間の遅延時間を有し得る。
【0086】
本発明に従った経口医薬組成物においては、活性成分は、高い結晶化度を伴う結晶構造、または低い結晶化度を伴う結晶構造を有していてよい。好ましくは、活性成分は、低い結晶度の結晶構造を有していてよく、これは、構造式1または2の化合物における難溶性に付随する問題を解決しかつ溶解速度および生体内吸収率を増大させることができる。
【0087】
本明細書で使用される際、「結晶化度」という用語は、合計化合物の結晶部分の重量分率として定義づけされ、当該技術分野において公知の従来の方法によって決定され得る。例えば、結晶化度の測定は、結晶部分と非晶質部分の各密度に対してまたはそこから適切な値を加算および/または減算することによって得られる予め設定された値を予め仮定することにより結晶化度を計算する密度法または沈澱法、融解熱の測定が関与する方法、X線回折解析の時点でX線回折速度分布から結晶質回折分率と非晶質回折分率を分離することによって結晶化度が計算されるX線方法、または赤外吸収スペクトルの結晶性バンドの間の幅のピークから結晶化度を計算する赤外線方法によって実施することができる。
【0088】
本発明に従った経口医薬組成物中では、活性成分の結晶化度は好ましくは50%以下である。より好ましくは、活性成分は、材料の固有の結晶性が完全に失われた非晶質構造を有し得る。非晶質化合物は、結晶質化合物に比べて比較的高い溶解度を示し、薬物の溶解速度および生体内吸収を著しく改善することができる。
【0089】
本発明の1つの好ましい実施形態においては、非晶質構造は、活性成分を微細粒子または細粒の形へ調製(活性成分の微粉化)する間に形成され得る。微細粒子は、例えば活性成分の噴霧乾燥、重合体との活性成分の融解物の形成が関与する融解方法、溶媒中への活性成物の溶解度の重合体と活性成分との共沈物の形成が関与する共沈、封入体形成、溶媒の揮発などによって調製可能である。活性成分が非晶質構造でない場合即ち結晶構造または半結晶構造を有している場合でも、活性成分の機械的粉砕を介した細粒への微粉化が、粒子の大きな比表面積に起因して、溶解度の改善に寄与し、その結果として、活性薬物の溶解速度および生体吸収速度は改善される。
【0090】
噴霧乾燥は、或る種の溶媒中に活性成分を溶解させ、結果として得た溶液を噴霧乾燥させることによって、細粒を作る方法である。噴霧乾燥プロセスの間に、化合物の結晶性が高い率で失われ、そのため、非晶質状態がもたらされ、従って、細かい粉末の形での噴霧乾燥された生成物が得られる。
【0091】
機械的粉砕は、活性成分粒子に対し強い物理的力を適用することにより活性成分を細粒へと粉砕する方法である。機械的粉砕は、ジェット粉砕、ボール粉砕、振動粉砕、ハンマー粉砕などといったさまざまな粉砕プロセスを使用することによって実施可能である。特に好ましいのは、40℃未満の温度で空気圧を用いて実施され得るジェット粉砕である。
【0092】
その一方で、結晶構造の如何に関わらず、微粒子状活性成分の粒径の減少は、比表面積の増加、ひいては、溶解速度および溶解度の増加を導く。しかしながら、粒径が小さすぎるとこのようなサイズをもつ細粒の調製が困難になり、それと同時に、溶解度の劣化を結果としてもたらしかねない粒子の集塊または凝集をもたらす。従って、1つの好ましい実施形態においては、活性成分の粒径は、5nm〜500μmの範囲内にあってよい。この範囲内であれば、粒子の集塊または凝集を最大限に阻害でき、粒子の高い比表面積に起因して溶解速度および溶解度を最大限にすることができる。
【0093】
好ましくは、細粒の形成中に発生し得る粒子の集塊または凝集を防ぐための付加的に界面活性剤を添加してもよく、かつ/または、静電気の発生を防ぐために帯電防止剤を更に添加してもよい。
【0094】
必要な場合には、粉砕プロセス中に吸湿材料を更に添加することができる。構造式1または2の化合物は水により結晶化される傾向を有し、従って、吸湿材料の取込みは、経時的な化合物の再結晶化を阻害し、微粉化に起因する化合物粒子の溶解度の増加を維持することができる。更に、吸湿材料は、活性成分の治療効果に不利な影響を及ぼすことなく、医薬組成物の凝固および凝集を抑制するのに役立つ。
【0095】
界面活性剤の例としては、ドキュセートナトリウムおよびラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムおよびセトリミドなどのカチオン界面活性剤;モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびソルビタンエステルという非イオン性界面活性剤;ポリエチレン−ポリプロピレン重合体およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン重合体(ポロキサマー)およびGelucireTMシリーズ(ガットフォスコーポレーション、米国)などの両親媒性重合体;モノカプリル酸プロピレングリコール;オレオイル・マクロゴール−6−グリセリド、リノレオイル・マクロゴール−6−グリセリド、カプリロカプロイル・マクロゴール−8−グリセリド、モノラウリン酸プロピレングリコールおよびポリグリセリル−6−ジオレエートが含まれていてよいが、それらに限定されるわけではない。これらの材料は単独でも、その任意の組み合わせの形ででも使用することができる。
【0096】
吸湿剤の例としては、コロイドシリカ、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、塩化ナトリウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸カリウム、およびアルミノケイ酸カルシウムなどが含まれていてよいが、それらに限定されるわけではない。これらの材料は単独でも、その任意の組み合わせの形ででも使用することができる。
【0097】
上述の吸湿剤の一部を帯電防止剤として使用してもよい。
【0098】
界面活性剤、帯電防止剤および吸湿剤は、上述の効果を達成することのできる一定の量で添加され、かかる量は、微粉化条件に応じて適切に調整されてよい。好ましくは、活性成分の合計重量に基づいて0.05〜20重量%の範囲内で添加物を使用してよい。
【0099】
1つの好ましい実施形態においては、本発明に従った医薬組成物の経口投与向け調製物への処方中に、水溶性重合体、可溶化剤および崩壊促進剤を更に添加してもよい。好ましくは、所望の剤形への組成物の処方は、溶媒中で添加物および微粒子状の活性成分を混合し、混合物を噴霧乾燥することによって行なってよい。
【0100】
水溶性重合体は、構造式1または構造式2の化合物分子または粒子の周囲を親水性にしてその結果として水溶性を増強することによって微粒子状の活性成分の凝集を防ぎ、かつ好ましくは活性成分としてのナフトキノンベースの化合物の非晶質状態を維持するために役立つ。
【0101】
好ましくは、水溶性重合体はpH非依存性重合体であり、胃腸内pHの個体間および個体内変動の下でさえ、活性成分の結晶性喪失および親水性の増強をもたらすことができる。
【0102】
水溶性重合体の好ましい例としては、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルエチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール;ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルフタレート、ポリビニルピロリドン(PVP)およびこれらを含有する重合体;ポリアルケンオキシドまたはポリアルケングリコールおよびこれらを含有する重合体からなる群から選択された少なくとも1つが含まれ得る。好ましいのはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0103】
本発明の医薬組成物においては、所与のレベルよりも高い水溶性重合体を過剰に含有することによって更に高い溶解度が提供されることは全くなく、不利なことに、処方物の硬度が全体的に増大することそして、溶離剤に対する曝露の時点での水溶性重合体の過度の膨潤に起因する処方物のまわりのフィルム形成により、処方物中に溶離剤が浸透しないことといったさまざまな問題をもたらす。従って、可溶化剤は好ましくは、構造式1または2の化合物の物理的特性を修飾することによって処方物の溶解度を最大限にするように添加される。
【0104】
この点に関して、可溶化剤は、難溶性の構造式1または2の化合物の可溶化および湿潤性を増強するために役立ち、食習慣および食糧摂取後の薬物投与の時間差に由来する構造式1または2の化合物の生物学的利用能の変動を著しく低減させることができる。可溶化剤は、従来広く用いられてきた界面活性剤または両親媒性化合物から選択してよく、可溶化剤の具体例は、以上で定義づけした界面活性剤を意味し得る。
【0105】
崩壊促進剤は、薬物放出速度を改善するのに役立ち、標的部位における薬物の急速な放出を可能にして、薬物の生物学的利用能を増大させる。
【0106】
崩壊促進剤の好ましい例としては、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウムおよび低級置換ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択された少なくとも1つのものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。好ましいのは、クロスカルメロースナトリウムである。
【0107】
以上で記述した通りのさまざまな要因を考慮に入れた上で、活性成分100重量部に基づいて、10〜1000重量部の水溶性重合体、1〜30重量部の崩壊促進剤および0.1〜20重量部の可溶化剤を添加することが好ましい。
【0108】
上述の成分に加えて、処方に関連して当該技術分野において公知のその他の材料を、必要とあれば任意に添加してもよい。
【0109】
噴霧乾燥用溶媒は、その物理的特性の修飾の無い高い溶解度および噴霧乾燥プロセス中の容易な揮発性を示す材料である。かかる溶媒の好ましい例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノールおよびエタノールが含まれていてよいが、それらに限定されるわけではない。これらの材料は、単独でも、その任意の組み合わせの形ででも使用できる。好ましくは、噴霧溶液中の固体含有量は、噴霧溶液の合計重量に基づいて、5〜50重量%の範囲内にある。
【0110】
上述の腸標的処方プロセスは、好ましくは、以上の通りに調製された処方粒子のために実施される。
【0111】
好ましい1つの実施形態においては、本発明に従った経口医薬組成物は、
(a) 構造式1または構造式2の化合物を単独で、または界面活性剤および吸湿剤材料と組合せた形で添加し、構造式1または2の化合物をジェットミルで粉砕して活性成分微細粒子を調製する工程;
(b) 水溶性重合体、可溶化剤および崩壊促進剤と併せて活性成分微細粒子を溶媒中に溶解させ、結果として得られた溶液を噴霧乾燥して処方物粒子を調製する工程;および
(c) pH感受性重合体および可塑化剤と併せて処方剤粒子を溶媒中に溶解させ、結果として得られた溶液を噴霧乾燥して、処方物粒子上に腸標的コーティングを実施する工程、
を含むプロセスによって調製され得る。
【0112】
界面活性剤、吸湿材料、水溶性重合体、可溶化剤および崩壊促進剤は、以上で定義づけした通りである。可塑化剤は、コーティングの硬化を防止するために添加される添加剤であり、例えばポリエチレングリコールなどの重合体を含み得る。
【0113】
代替的には、工程(a)のジェット粉砕されたシードとしての活性成分粒子上へ、工程(b)のビヒクルおよび工程(c)の腸標的コーティング材料を逐次的にまたは同時に噴霧することによって活性成分の処方を実施してもよい。
【0114】
注入のためには、本発明の作用物質は、水溶液、好ましくは生理学的に適合性ある緩衝液たとえばハンクス溶液、リンガー溶液、または生理食塩水といったような生理学的に適合性ある緩衝液中で処方される。経粘膜投与のためには、浸透すべき障壁に適した浸透剤が処方物中に使用される。かかる浸透剤は一般に、当該技術分野において公知である。
【0115】
化合物を、例えばボーラス注入または連続輸注といった注入による非経口投与向けに処方してもよい。注入用処方物は、防腐剤が付加された、例えばアンプルまたは多回投与用コンテナに入った、単位剤形の体裁をとっていてよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンといった形をとっていてもよく、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤といったような処方用作用物質を含有していてよい。
【0116】
代替的には、活性成分は、使用前に例えば発熱物質を含まない滅菌水といった適切なビヒクルを用いて構成するための粉末形態をしていてよい。
【0117】
本発明に従った医薬組成物は、一般的な錠剤形態並びに、罹患領域に活性成分を送出することのできるさまざまな形態へと調製または付加されてよい。例えば、組成物を、血管の中に挿入するべきメッシュステントの上にコーティングするかまたはその中に埋め込んでもよい。ステントは一般に、血管、胃腸管、胆管などの中の血液または体液の流量を調節するため外科手術により挿入される。これは、ステンレス鋼、形状記憶合金、ニチノール(Ti−Ni)などで作られたメッシュ様の材料である。従って、本発明に従った医薬組成物は、ステントの外部表面に対し直接コーティングされるかまたは予め定められた結合剤を介してそれに付着されること、または外向きに放出できる形態でステント内に埋込むことにより、罹患領域に適用してよい。以上においては、ステントのみが活性成分を付加するための媒体として例示されてきたが、当業者であれば、本発明の範囲および精神から逸脱することなくさまざまな修正、付加および置換が可能である、ということを認識するものである。
【0118】
本発明における使用に適した医薬組成物は、その意図された目的を達成するために有効な量で活性成分が含有されている組成物を含む。より具体的には、治療上有効な量というのは、疾病の症候を防止、軽減または改善するため、または治療対象の生存率を高めるための有効な化合物の量を意味する。治療上有効な量の判定は、特に本明細書で提供されている詳細な開示に照らして、当業者の能力範囲内に十分入るものである。
【0119】
本発明の医薬組成物が単位剤形の形に処方される場合、活性成分としての構造式1または2の化合物は、好ましくは約0.1〜1,000mgの単位用量で含まれている。投与される構造式1または2の化合物の量は、治療を受ける患者の体重および年令、疾病の特徴的性質および重症度に応じて、担当医により決定される。
【0120】
本発明は同様に、再狭窄の予防および治療のための薬物の調製における構造式1または2の化合物の使用をも提供している。本明細書で使用される。疾病症候群の「治療」という用語は、発病の症候を示す対象において薬物が使用された場合の疾病の進行の停止または遅延を意味する。「予防」という用語は、発病の症候を全く示さないものの発病の危険性が高い対象において薬物が使用された場合の発病症候の停止または遅延を意味する。
【0121】
本発明の上述のおよびその他の目的、特徴およびその他の利点は、添付の図面と合わせて以下の詳細な説明から更に明確に理解できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】濃度を変動させて本発明に従った化合物1で前処理した後の生体細胞の数に関する計数結果を示す棒グラフである。
【図2】本発明に従った化合物1で処理された血管平滑筋細胞内のNQO1の発現を確認するPT−PCRの結果である。
【図3】本発明に従った化合物1で処理された血管平滑筋細胞中のAMPKおよびACCのリン酸化度を確認する結果である。
【図4】本発明に従った化合物1で処理された血管平滑筋細胞内のp53、p21、網膜芽腫およびCDKの発現を確認する結果である。
【図5】本発明に従った化合物1で処理された血管平滑筋細胞中の細胞増殖の阻害を確認する結果である。
【図6】本発明に従った化合物1の投与を受けたラットにおける血管内膜過形成の観察結果である。
【図7】本発明に従った化合物1を投与したラットを屠殺することによる、オイルレッドOでの染色後の内部血管壁および大動脈弁上の脂質蓄積度の比較/観察結果である。
【発明を実施するための形態】
【0123】
ここで、本発明について、以下の実施例を参考にしながら更に詳細に記述する。これらの実施例は、本発明を例示することのみを目的として提供されており、本発明の範囲および精神を制限するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0124】
実施例1:β−ラパコン(化合物1)の合成
17.4g(0.10M)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを120mlのDMSO中に溶解させ、それに0.88g(0.11M)のLiHを徐々に添加した。ここで、この作業は、水素が放出されることから注意深く行なうべきである。反応溶液を撹拌し、水素がそれ以上生成されないことを確認した後、更に30分間撹拌した。その後、15.9g(0.10M)の臭化プレニル(1−ブロモ−3−メチル−2−ブテン)および3.35g(0.025M)のLiIを徐々に添加した。反応溶液を45℃まで加熱し、その後その温度で12時間勢いよく撹拌した。反応溶液を10℃未満に冷却し、76gの氷をまず最初に加え、その後250mlの水を加えた。その後、結果として得た溶液を1超の酸性pHに維持するため、25mlの濃HClを徐々に添加した。反応混合物に200mlのEtOAcを添加し、これを次に勢いよく撹拌し、かくして、EtOAc中に溶解しない白色固体を得た。これらの固体をろ過し、EtOAc層を分離した。100mlのEtOAcで水性層をもう一度抽出し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層を150mlの5%のNaHCOで洗浄し、濃縮した。結果として得た濃縮物を200mlのCHCl中に溶解させ、勢いよく振とうして、2NのNaOH水溶液70mlを添加し、2つの層を分離した。CHCl層を更に2回、2NのNaOH水溶液(70ml×2)での処理により分離した。かくして分離された水溶液を組み合わせ、2超の酸性pHに調整して、固体を形成させた。結果としての固体をろ過し、分離してラパコールを得た。かくして得られたラパコールを75%のEtOHから再結晶させた。結果としてのラパコールを80mlの硫酸と混合し、混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、それに200gの氷を添加して反応を完了させた。60mlのCHClを反応材料に添加し、次にこの材料を勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離させ、5%のNaHCOで洗浄した。30mlのCHClを用いてもう一度水性層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層をMgSO上で乾燥させ、濃縮して、純粋でないβ−ラパコンを得た。かくして得られたβ−ラパコンをイソプロパノールから再結晶させ、それにより純粋β−ラパコン8.37gを得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.05(1H,dd,J=1,8Hz)、7.82(1H,dd,J=1,8Hz)、7.64(1H,dt,J=1,8Hz)、7.50(1H,dt,J=1,8Hz)、2.57(2H,t,J=6.5Hz)、1.86(2H,t,J=6.5Hz)1.47(6H,s)
【0125】
実施例2:デュニオン(化合物2)の合成
実施例1内でラパコールを得るプロセスにおいて、EtOAc中に溶解させずに分離された固体は、C−アリル化生成物であるラパコールと異なりO−アルキル化生成物である2−プレニルオキシ−1,4−ナフトキノンである。分離された2−プレニルオキシ−1,4−ナフトキノンを最初にEtOAcからもう一度再結晶させた。3.65g(0.015M)のかくして精製された固体をトルエン中に溶解させ、トルエンを5時間還流させてクライゼン転位を誘発した。減圧下での蒸留によりトルエンを濃縮させ、次に更なる精製なく15mlの硫酸と混合した。結果として得た混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、それに100gの氷を添加して反応を完了させた。反応材料に50mlのCHClを添加し、それを勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離し、5%のNaHCOで洗浄した。20mlのCHClを用いて水層をもう一度抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、以前に抽出した有機層と組合せた。有機層をMgSO上で乾燥させ、シリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して2.32gの純粋デュニオンを得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.05(1H,d,J=8Hz)、7.64(2H,d,J=8Hz)、7.56(1H,m)、4.67(1H,q,J=7Hz)、1.47(3H,d,J=7Hz)、1.45(3H,s)1.27(3H,s)
【0126】
実施例3:α−デュニオン(化合物3)の合成
実施例2で精製された2−プレニルオキシ−1,4−ナフトキノン4.8g(0.020M)をキシレン中に溶解させ、キシレンを15時間還流させ、こうして、実施例2に比べて著しく高い温度条件下そして延長した反応条件下でクライゼン転位を誘発した。この反応プロセスによると、環化まで進行したα−デュニオンが、クライゼン転位を受けかつ2つのメチル基のうちの1つがシフトしていたラパコールと共に得られた。減圧下での蒸留によりキシレンを濃縮し、シリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して1.65gの純粋α−デュニオンを得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.06(1H,d,J=8Hz)、7.64(2H,m)、7.57(1H,m)、3.21(1H,q,J=7Hz)、1.53(3H,s)、1.51(3H,s)1.28(3H,d,J=7Hz)
【0127】
実施例4:化合物4の合成
17.4g(0.10M)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを120mlのDMSO中に溶解させ、それに0.88g(0.11M)のLiHを徐々に添加した。ここで、この作業は、水素が放出されることから注意深く行なうべきである。反応溶液を撹拌し、水素がそれ以上生成されないことを確認した後、更に30分間撹拌した。その後、14.8g(0.11M)の臭化メタリル(1−ブロモ−2−メチルプロペン)および3.35g(0.025M)のLiIを徐々に添加した。反応溶液を45℃まで加熱し、その後その温度で12時間勢いよく撹拌した。反応溶液を10℃未満に冷却し、80gの氷をまず最初に加え、その後250mlの水を加えた。その後、結果として得た溶液を1超の酸性pHに維持するため、25mlの濃HClを徐々に添加した。反応混合物に200mlのCHClを添加し、これを次に勢いよく振とうして2層を分離した。70mlのCHClで水性層をもう一度抽出し、先に抽出した有機層と組合せた。TLCにより新たに2つの材料が形成されたことを確認し、これらをその後、特別ないかなる分離プロセスも無く使用した。有機層を減圧下での蒸留により濃縮し、キシレン中に再度溶解させ、その後8時間還流した。このプロセスにおいて、TLC上の2つの材料を1つに組み合わせ、かくして比較的純粋なラパコール誘導体を得た。かくして得られたラパコール誘導体を80mlの硫酸と混合し、10分間室温で勢いよく撹拌し、それに200gの氷を添加して反応を完了させた。80mlのCHClを反応材料に添加し、次にこの材料を勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離させ、5%のNaHCOで洗浄した。50mlのCHClを用いてもう一度水性層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層をMgSO上で乾燥させ、濃縮して、純粋でないβ−ラパコン誘導体(化合物4)を得た。かくして得られたβ−ラパコン誘導体をイソプロパノールから再結晶させ、それにより純粋な化合物4を12.21g得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.08(1H,d,J=8Hz)、7.64(2H,m)、7.57(1H,m)、2.95(2H,s)、1.61(6H,s)
【0128】
実施例5:化合物5の合成
臭化メタリルの代りに臭化アリルを用いたという点を除いて、実施例4と同じ要領で化合物5を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.07(1H,d,J=7Hz)、7.65(2H,m)、7.58(1H,m)、5.27(1H,m)、3.29(1H,dd,J=10,15Hz)、2.75(1H,dd,J=7,15Hz)、1.59(3H,d,J=6Hz)
【0129】
実施例6:化合物6の合成
20mlのエーテル中に5.08g(40mM)の3−クロロプロピニルクロリドを溶解させ、−78℃まで冷却した。結果として得られた溶液に対して1.95g(25mM)の過酸化ナトリウム(Na)を、その温度で勢いよく撹拌しながら徐々に添加し、その後更に30分間勢いよく撹拌した。反応溶液を0℃まで加熱し、それに7gの氷を付加し、続いて更に10分間付加的に撹拌を行なった。有機層を分離し、0℃の冷水10mlでもう一度洗浄し、その後0℃のNaHCO水溶液で洗浄した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥させ、0℃未満で減圧下の蒸留によって濃縮し、こうして3−クロロプロピオン過酸を調製した。
【0130】
20mlの酢酸中に1.74g(10mM)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを溶解させ、先に調製した3−クロロプロピオン過酸を室温でそれに対して徐々に添加した。反応混合物を2時間撹拌しながら還流させ、その後減圧下で蒸留して酢酸を除去した。結果としての濃縮物をCHCl20ml中に溶解させ、20mlの5%NaHCOで洗浄した。20mlのCHClを用いてもう一度水層を抽出し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層をMgSO上で乾燥させ、濃縮して2−(2−クロロエチル)−3−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンと混和した形で化合物6を得た。結果として得た混合物をシリカゲル上のクロマトグラフィによって精製して、純粋なラパコン誘導体(化合物6)0.172gを得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.07(1H,d,J=7.6Hz)、7.56−7.68(3H,m)、4.89(2H,t,J=9.2Hz)、3.17(2H,t,J=9.2Hz)
【0131】
実施例7:化合物7の合成
17.4g(0.10M)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを120mlのDMSO中に溶解させ、それに0.88g(0.11M)のLiHを徐々に添加した。ここで、この作業は、水素が放出されることから注意深く行なうべきである。反応溶液を撹拌し、水素がそれ以上生成されないことを確認した後、更に30分間撹拌した。その後、19.7g(0.10M)の臭化シンナミル(3−フェニルアリル臭化物)および3.35g(0.025M)のLiIを徐々に添加した。反応溶液を45℃まで加熱し、その後その温度で12時間勢いよく撹拌した。反応溶液を10℃未満に冷却し、80gの氷をまず最初に加え、その後250mlの水を加えた。その後、結果として得た溶液を1超の酸性pHに維持するため、25mlの濃HClを徐々に添加した。反応混合物を溶解させるために200mlのCHClを添加し、これを次に勢いよく振とうして2層を分離した。水槽を廃棄し、2NのNaOH水溶液(100ml×2)でCHCl層を処理して水層を2回分離した。この時点で、2NのNaOH水溶液での抽出後に残ったCHCl層を実施例8中で再び使用した。かくして分離された水溶液を組み合わせ、濃HClを用いて2超の酸性pHに調整して、固体を形成させた。結果としての固体をろ過し、分離してラパコール誘導体を得た。かくして得られたラパコール誘導体を75%のEtOHから再結晶させた。結果としてのラパコール誘導体を50mlの硫酸と混合し、混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、それに150gの氷を添加して反応を完了させた。60mlのCHClを反応材料に添加し、次にこの材料を勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離させ、5%のNaHCOで洗浄した。30mlのCHClを用いてもう一度水性層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層を濃縮しシリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して2.31gの純粋な化合物7を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.09(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.83(1H,d,J=7.6Hz)、7.64(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.52(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.41(5H,m)、5.27(1H,dd,J=2.5,6.0Hz)、2.77(1H,m)2.61(1H,m)、2.34(1H,m)、2.08(1H,m)、0.87(1H,m)
【0132】
実施例8:化合物8の合成
実施例7において2NのNaOH水溶液で抽出した後の残りのCHCl層を減圧下での蒸留により濃縮した。結果として得た濃縮物を30mlのキシレン中に溶解させ、その後10時間還流させてクライゼン転位を誘発した。キシレンを減圧下で蒸留により濃縮し、その後、更なる精製なく15mlの硫酸と混合した。結果として得た混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、100gの氷をそれに加えて反応を完了させた。50mlのCHClを反応材料に添加し、これを勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離し、5%のNaHCOで洗浄した。20mlのCHClを用いてもう一度水層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層をMgSO上で乾燥させ、濃縮し、シリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して1.26gの純粋化合物8を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.12(1H,dd,J=0.8,8.0Hz)、7.74(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.70(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.62(1H,dt,J=1.6,7.6Hz)、7.27(3H,m)、7.10(2H,td,J=1.2,6.4Hz)、5.38(1H,qd,J=6.4,9.2Hz)、4.61(1H,d,J=9.2Hz)、1.17(3H,d,J=6.4Hz)
【0133】
実施例9:化合物9の合成
10mlのアセトニトリル中に3.4g(22mM)の1.8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エンおよび1.26g(15mM)の2−メチル−3−ブチン−2−オールを溶解させ、結果としての溶液を0℃まで冷却した。3.2g(15mM)のトリフルオロ酢酸無水物を撹拌しながら反応溶液に徐々に添加し、次にこれを0℃で撹拌し続けた。1.74g(10mM)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンおよび135mg(1.0mM)の塩化銅(CuCl)を、もう1本のフラスコ内で10mlのアセトニトリル中に溶解させ、撹拌した。先に精製した溶液を徐々に反応溶液に添加し、これを次に20時間還流させた。反応溶液を、減圧下での蒸留により濃縮し、次にシリカゲル上のクロマトグラフィによって精製して0.22gの純粋化合物9を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.11(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.73(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.69(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.60(1H,dt,J=1.6,7.6Hz)、4.95(1H,d,J=3.2Hz)、4.52(1H,d,J=3.2Hz)、1.56(6H,s)
【0134】
実施例10:化合物10の合成
0.12gの化合物9を5mlのMeOH中に溶解させ、10mgの5%Pd/cをそれに添加し、その後3時間室温で勢いよく撹拌した。反応溶液をシリカゲルを通してろ過して5%のPd/Cを除去し、減圧下での蒸留により濃縮して化合物10を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.05(1H,td,J=1.2,7.6Hz)、7.64(2H,m)、7.54(1H,m)、3.48(3H,s),1.64(3H,s)、1.42(3H,s)、1.29(3H,s)
【0135】
実施例11:化合物11の合成
1.21g(50mM)のβ−ラパコン(化合物1)と1.14g(50mM)のDDQ(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン)を、50mlの四塩化炭素中に溶解させ、72時間還流した。反応溶液を減圧下での蒸留により濃縮し、その後シリカゲル上でのクロマトグラフィにより精製して1.18gの純粋化合物11を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.08(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.85(1H,dd,J=0.8,7.6Hz)、7.68(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.55(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、6.63(1H,d,J=10.0Hz)、5.56(1H,d,J=10.0Hz)、1.57(6H,s)
【0136】
実施例12:化合物12の合成
1.74g(10mM)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、3.4g(50mM)の2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、3.0g(100mM)のパラホルムアルデヒドおよび20mlの1,4−ジオキサンを圧力容器内に置き、48時間100℃で撹拌しながら加熱した。反応容器を室温まで冷却し、その中味をろ過した。ろ液を減圧下での蒸留によって濃縮し、その後シリカゲル上でのクロマトグラフィにより精製してβ−ラパコンの2−ビニル誘導体として238gの化合物12を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.07(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.88(1H,dd,J=0.8,7.6Hz)、7.66(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.52(1H,dt,J=0.8,7.6Hz)、5.87(1H,dd,J=10.8,17.2Hz)、5.18(1H,d,J=10.8Hz)、5.17(1H,17.2Hz)、2.62(1H,m)、2.38(1H,m)、2.17(3H,s)、2.00(1H,m)、1.84(1H,m)
【0137】
実施例13:化合物13の合成
1.74g(10mM)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、4.8g(50mM)の2.4−ジメチル−1,3−ペンタジエンおよび3.0g(100mM)のパラホルムアルデヒドを、20mlの1,4−ジオキサン中に溶解させ、結果としての混合物を10時間勢いよく撹拌しながら還流させた。反応容器を室温まで冷却し、その中味をろ過して固体からパラホルムアルデヒドを除去した。ろ液を減圧下での蒸留により濃縮し、次にシリカゲル上でのクロマトグラフィにより精製してβ−ラパコン誘導体として428mgの化合物13を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.06(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.83(1H,dd,J=0.8,7.6Hz)、7.65(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.50(1H,dt,J=0.8,7.6Hz)、5.22(1H,bs)、2.61(1H,m)、2.48(1H,m)、2.04(1H,m)、1.80(3H,d,J=1.0Hz)、1.75(1H,m)、1.72(1H,d,J=1.0Hz)、1.64(3H,s)
【0138】
実施例14:化合物14の合成
5.3g(30mM)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、20.4g(150mM)の2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンおよび9.0g(300mM)のパラホルムアルデヒドを50mlの1,4−ジオキサン中に溶解させ、結果としての混合物を10時間勢いよく撹拌しながら還流させた。反応容器を室温まで冷却し、その中味をろ過して固体からパラホルムアルデヒドを除去した。ろ液を減圧下での蒸留により濃縮し、次にシリカゲル上でのクロマトグラフィにより精製してβ−ラパコン誘導体として1.18gの化合物14を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.07(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.87(1H,dd,J=0.8,7.6Hz)、7.66(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.51(1H,dt,J=0.8,7.6Hz)、6.37(1H,dd,J=11.2,15.2Hz)、5.80(1H,broad d,J=11.2Hz)、5.59(1H,d,J=15.2Hz)、2.67(1H,dd,J=4.8,17.2Hz)、2.10(1H,dd,J=6.0,17.2Hz)、1.97(1H,m)、1.75(3H,bs)、1.64(3H,bs)、1.63(3H,s)、1.08(3H,d,J=6.8Hz)
【0139】
実施例15:化合物15の合成
5.3g(30mM)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、20.4g(50mM)のテルピネンおよび9.0g(300mM)のパラホルムアルデヒドを50mlの1,4−ジオキサン中に溶解させ、結果としての混合物を10時間勢いよく撹拌しながら還流させた。反応容器を室温まで冷却し、その中味をろ過して固体からパラホルムアルデヒドを除去した。ろ液を減圧下での蒸留により濃縮し、次にシリカゲル上でのクロマトグラフィにより精製して4環式o−キノン誘導体として1.12gの化合物15を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.06(1H,d,J=7.6Hz)、7.85(1H,d,J=7.6Hz)、7.65(1H,t,J=7.6Hz)、7.51(1H,t,J=7.6Hz)、5.48(1H,broad s)、4.60(1H,broad s)、2.45(1H,d,J=16.8Hz)、2.21(1H,m)、2.20(1H,d,J=16.8Hz)、2.09(1H,m)、1.77(1H,m)、1.57(1H,m)、1.07(3H,s)、1.03(3H,d,J=0.8Hz)、1.01(3H,d,J=0.8Hz),0.96(lH,m)
【0140】
実施例16:化合物16および17の合成
17.4g(0.10M)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを120mlのDMSO中に溶解させ、それに0.88g(0.11M)のLiHを徐々に添加した。ここで、この作業は、水素が放出されることから注意深く行なうべきである。反応溶液を撹拌し、水素がそれ以上生成されないことを確認した後、更に30分間撹拌した。その後、16.3g(0.12M)の臭化クロチルおよび3.35g(0.025M)のLiIを徐々に添加した。反応溶液を45℃まで加熱し、その後その温度で12時間勢いよく撹拌した。反応溶液を10℃未満に冷却し、80gの氷をまず最初に加え、その後250mlの水を加えた。その後、結果として得た溶液を1超の酸性pHに維持するため、25mlの濃HClを徐々に添加した。反応混合物を溶解させるために200mlのCHClを添加し、これを次に勢いよく振とうして2層を分離した。水層を廃棄し、2NのNaOH水溶液(100ml×2)でCHCl層を処理して水層を2回分離した。この時点で、2NのNaOH水溶液での抽出後に残ったCHCl層を実施例17中で使用した。かくして分離された水溶液を組み合わせ、濃HClを用いて2超の酸性pHに調整して、固体を形成させた。結果としての固体をろ過し、分離してラパコール誘導体を得た。かくして得られたラパコール誘導体を75%のEtOHから再結晶させた。結果としてのラパコール誘導体を50mlの硫酸と混合し、混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、その後150gの氷を添加して反応を完了させた。60mlのCHClを反応材料に添加し、次にこの材料を勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離させ、5%のNaHCOで洗浄した。30mlのCHClを用いてもう一度水性層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層を濃縮しシリカゲル上のクロマトグラフィにより精製それぞれ1.78および0.43gの純粋な化合物16および17を得た。
化合物16のH−NMR(CDCl,δ):δ8.07(1H,dd,J=0.8,6.8Hz)、7.64(2H,broad d,J=3.6Hz)、7.57(1H,m)、5.17(1H,qd,J=6.0,8.8Hz)、3.53(1H,qd,J=6.8,8.8Hz)、1.54(3H,d,6.8Hz)、1.23(3H,d,6.8Hz)
化合物17のH−NMR(CDCl,δ):δ8.06(1H,d,J=0.8,7.2Hz)、7.65(2H,broad d,J=3.6Hz)、7.57(1H,m)、4.71(1H,クインテット,J=6.4Hz)、3.16(1H,クインテット,J=6.4Hz)、1.54(3H,d,6.4Hz)、1.38(3H,d,6.4Hz)
【0141】
実施例17:化合物18および19の合成
実施例16において2NのNaOH水溶液で抽出した後の残りのCHCl層を減圧下での蒸留により濃縮した。結果として得た濃縮物を30mlのキシレン中に溶解させ、その後10時間還流させてクライゼン転位を誘発した。キシレンを減圧下で蒸留により濃縮し、その後、更なる精製なく15mlの硫酸と混合した。結果として得た混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、100gの氷をそれに加えて反応を完了させた。50mlのCHClを反応材料に添加し、これを勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離し、5%のNaHCOで洗浄した。20mlのCHClを用いてもう一度水層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層をMgSO上で乾燥させ、濃縮し、シリカゲル上のクロマトグラフィにより精製しそれぞれ0.62および0.43gの純粋化合物18および19を得た。
化合物18のH−NMR(CDCl,δ):8.06(1H,dd,J=0.8,7.2Hz)、7.81(1H,dd,J=0.8,7.6Hz)、7.65(1H,dt,J=0.8,7.6Hz)、7.51(1H,dt,J=0.8,7.2Hz)、4.40(1H,m)、2.71(1H,m)、2.46(1H,m)、2.11(1H,m)、1.71(1H,m)、1.54(3H,d,6.4Hz)、1.52(1H,m)
化合物19のH−NMR(CDCl,δ):8.08(1H,d,J=0.8,7.2Hz)、7.66(2H,broad d,J=4.0Hz)、7.58(1H,m)、5.08(1H,m)、3.23(1H,dd,J=9.6,15.2Hz)、2.80(1H,dd,J=7.2,15.2Hz)、1.92(1H,m)、1.82(1H,m)、1.09(3H,t,7.6Hz)
【0142】
実施例18:化合物20の合成
17.4g(0.10M)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを120mlのDMSO中に溶解させ、それに0.88g(0.11M)のLiHを徐々に添加した。ここで、この作業は、水素が放出されることから注意深く行なうべきである。反応溶液を撹拌し、水素がそれ以上生成されないことを確認した後、更に30分間撹拌した。その後、21.8g(0.10M)の臭化ゲラニルおよび3.35g(0.025M)のLiIを徐々に添加した。反応溶液を45℃まで加熱し、その後その温度で12時間勢いよく撹拌した。反応溶液を10℃未満に冷却し、80gの氷をまず最初に加え、その後250mlの水を加えた。その後、結果として得た溶液を1超の酸性pHに維持するため、25mlの濃HClを徐々に添加した。反応混合物を溶解させるために200mlのCHClを添加し、これを次に勢いよく振とうして2層を分離した。水層を廃棄し、2NのNaOH水溶液(100ml×2)でCHCl層を処理して水層を2回分離した。かくして分離された水溶液を組み合わせ、濃HClを用いて2超の酸性pHに調整して、固体を形成させた。結果としての固体をろ過し、分離して2−ゲラニル−3−ヒドロキシ−1,4−ナフトキンを得た。かくして得られた生成物を更なる精製なく50mlの硫酸と混合し、混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、その後150gの氷を添加して反応を完了させた。60mlのCHClを反応材料に添加し、次にこの材料を勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離させ、5%のNaHCOで洗浄した。30mlのCHClを用いてもう一度水性層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層を濃縮しシリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して3.62gの純粋な化合物20を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.05(1H,d,J=7.6Hz)、7.77(1H,d,J=7.6Hz)、7.63(1H,t,J=7.6Hz)、7.49(1H,t,J=7.6Hz)、2.71(1H,dd,J=6.0,17.2Hz)、2.19(1H,dd,J=12.8,17.2Hz)、2.13(1H,m)、1.73(2H,m)、1.63(1H,dd,J=6.0,12.8Hz)、1.59(1H,m)、1.57(1H,m)、1.52(1H,m)、1.33(3H,s)、1.04(3H,s)、0.93(3H,s)
【0143】
実施例19:化合物21の合成
2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの代りに6−クロロ−2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物21を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.02(1H,d,J=8Hz)、7.77(1H,d,J=2Hz)、7.50(1H,dd,J=2,8Hz)、2.60(2H,t,J=7Hz)、1.87(2H,t,J=7Hz)1.53(6H,s)
【0144】
実施例20:化合物22の合成
2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの代りに2−ヒドロキシ−6−メチル−1,4−ナフトキノンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物22を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.98(1H,d,J=8Hz)、7.61(1H,d,J=2Hz)、7.31(1H,dd,J=2,8Hz)、2.58(2H,t,J=7Hz)、1.84(2H,t,J=7Hz)1.48(6H,s)
【0145】
実施例21:化合物23の合成
2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの代りに6,7−ジメトキシ−2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物23を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.56(1H,s)、7.25(1H,s)、3.98(6H,s)、2.53(2H,t,J=7Hz)、1.83(2H,t,J=7Hz)1.48(6H,s)
【0146】
実施例22:化合物24の合成
1−ブロモ−3−メチル−2−ブテンの代りに1−ブロモ−3−メチル−2−ペンテンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物24を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.30−8.15(4H,m)、2.55(2H,t,J=7Hz)、1.83(2H,t,J=7Hz)、1.80(2H,q,7Hz)1.40(3H,s)、1.03(3H,t,J=7Hz)
【0147】
実施例23:化合物25の合成
1−ブロモ−3−メチル−2−ブテンの代りに1−ブロモ−3−エチル−2−ペンテンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物25を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.30−8.15(4H,m)、2.53(2H,t,J=7Hz)、1.83(2H,t,J=7Hz)、1.80(4H,q,7Hz)0.97(6H,t,J=7Hz)
【0148】
実施例24:化合物26の合成
1−ブロモ−3−メチル−2−ブテンの代りに1−ブロモ−3−フェニル−2−ブテンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物26を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.15−8.15(9H,m)、1.90−2.75(4H,m)、1.77(3H,s)
【0149】
実施例25:化合物27の合成
1−ブロモ−3−メチル−2−ブテンの代りに2−ブロモ−エチリデンシクロヘキサンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物27を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.30−8.25(4H,m)、2.59(2H,t,J=7Hz)、1.35−2.15(12H,m)
【0150】
実施例26:化合物28の合成
1−ブロモ−3−メチル−2−ブテンの代りに2−ブロモ−エチリデンシクロペンタンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物28を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.28−8.20(4H,m)、2.59(2H,t,J=7Hz)、1.40−2.20(10H,m)
【0151】
実施例27:化合物29の合成
実施例5で合成された化合物5を8.58g(20mM)、1000mlの四塩化炭素の中に溶解させ、その後11.4g(50mM)の2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノンを添加し、結果として得られた混合物を96時間還流させた。反応溶液を減圧下での蒸留により濃縮し、結果としての赤色固体を次にイソプロパノールから再結晶させ、かくして7.18gの純粋化合物29を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.05(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.66(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.62(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.42(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、6.45(1H,q,J=1.2Hz)、2.43(3H,d,J=1.2Hz)
【0152】
実施例28:化合物30の合成
非特許文献19で教示されている通りの合成方法と類似して、p−ベンゾキノンおよび1−(N−モルホリン)プロペンを用いて、4,5−ジクロロ−3−メチルベンゾイル[1,2−b]フラン−4,5−ジオン{ベンゾフラン−4,5−ジオン}を、p−ベンゾキノンおよび1−(N−モルホリン)プロペンを用いて合成した。かくして調製されたベンゾフラン−4,5−ジオン1.5g(9.3mM)および1−アセトキン−1,3−ブタジエン3.15g(28.2mM)を200mlのベンゼン中に溶解させ、結果としての混合物を12時間還流させた。反応溶液を室温まで冷却させ、減圧下での蒸留により濃縮した。この後、シリカゲル上でのクロマトグラフィを行なって1.13gの純粋化合物30を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.05(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.68(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.64(1H,td,J=1.2,7.6Hz)、7.43(1H,td,J=1.2,7.6Hz)、7.26(1H,q,J=1.2Hz)、2.28(3H,d,J=1.2Hz)
【0153】
実施例29:化合物31および32の合成
1.5g(9.3mM)の4,5−ジヒドロ−3−メチルベンゾ[1,2−b]フラン−4,5−ジオン{ベンゾフラン−4,5−ジオン}および45g(0.6M)の2−メチル−1,3−ブタジエンを200mlのベンゼン中に溶解させ、結果としての混合物を5時間還流させた。反応溶液を室温まで冷却し、減圧下での蒸留により完全に濃縮した。かくして得られた濃縮物を150mlの四塩化炭素中に再び溶解させ、その後2.3g(10mM)の2,3−ジヒドロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノンを添加し、結果として得た混合物を更に15時間還流させた。反応溶液を冷却させ、減圧下での蒸留により濃縮させた。結果としての濃縮物を、シリカゲル上のクロマトグラフィによって精製してそれぞれ0.13gおよび0.11gの純粋化合物31および32を得た。
化合物31のH−NMR(CDCl,δ):7.86(1H,s)、7.57(1H,d,J=8.1Hz)、7.42(1H,d,J=8.1Hz)、7.21(1H,q,J=1.2Hz)、2.40(3H,s)、2.28(1H,d,J=1.2Hz)
化合物32のH−NMR(CDCl,δ):δ7.96(1H,d,J=8.0Hz)、7.48(1H,s)、7.23(2H,m)、2.46(3H,s)、2.28(1H,d,J=1.2Hz)
【0154】
以下では、本発明で使用される物品および方法を記す。
【0155】
1. 細胞培養
血管平滑筋細胞培養法のためには、血管平滑筋細胞をラットの大動脈から単離し、これらを初代培養した。5%のCO下で37℃で、20%のウシ胎仔血清(FBS)を含有する培養溶液中において、血管平滑筋細胞を培養し成長させた。このプロセスで得た細胞を、実験用の新しい培養平板に移した。実験で使用した細胞は、4〜7回継代培養された始原細胞であった。NQO1を活性化させるため、血管平滑筋細胞を、細胞集団が80〜90%に達した時点で、0.5%のウシ胎仔血清を含有する培地内で24時間培養して細胞を休止態に保った。かかる細胞を実施例1の化合物(以下化合物1と呼ぶ)で処理した。
【0156】
2. 血管平滑筋細胞の増殖速度
血管平滑筋細胞の初代培養を96ウェル平板上に播種し、70%の細胞集団に達するまで培養し、0.5%のウシ胎仔血清を含有する培地に移して24時間再度培養した。それから細胞を休止態に保った。その後、細胞を血小板由来成長因子(PDGF)および化合物1で処理し、48時間37℃で反応させた。ここで、細胞増殖を確認するために試薬を処理した。更に4時間反応させた後、細胞増殖速度を検査するためにELISA読取り装置を用いて450nmで吸光度を測定した。
【0157】
3. RT−PCR
血管平滑筋細胞の初代培養を37℃で化合物1により処理し、予め定められた時限にわたり反応させた。RNAをトリゾールを用いて抽出し、その後、cDNAに逆転写させた。NQO1プライマを用いて、構築したcDNAを増幅し、その後電気泳動に付してNQO1の発現を確認した。
【0158】
4. ウエスタンブロット
化合物1との反応後に収集した血管平滑筋細胞をRIPA緩衝液(50mMのトリス−HCl、150mMのNaCl、5mMのEDTA、1%のNP−40、1mMのPMSF、1mMのDTTおよび1mg/mlのプロテアーゼ阻害物質)の中に溶解させて、総タンパクを単離した。各試料の単離タンパク質を定量化した。25μgのタンパク質を試料緩衝液と混合し、5分間沸とうさせた。沸とうさせたタンパク質を冷却し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル上での電気泳動に付し、かくしてタンパク質をそのサイズ別に分離した。これらのタンパク質を再びPVDF膜に移し、pAMPK、pACC、p53、p21、CDKおよびpRbに対する抗体と免疫反応させて、タンパク質の発現を確認した。更に、等量のタンパク質が使用されたか否かを確認するために、タンパク質を抗−β−アクチンと反応させた。
【0159】
5. 細胞周期分析
細胞周期分析のためには、FACSを用いた。24時間0.5%のウシ胎仔血清を含有する培地内でインキュベートした血管平滑筋細胞を2時間化合物1で前処理した。細胞をPDGFとインスリンで処理して細胞増殖を誘発し、48時間反応させた。その後、細胞を収集し、固定プロセスに通し、その後、ヨウ化プロピジウム(PI)での核染色を行なった。次にFACSを用いて細胞周期を分析した。
【0160】
6. 動物実験
バルーン血管形成を実施するためには、SDラットを用いた。22±2℃の恒常な温度および12時間明/暗(L/D)サイクルに維持した飼育室に動物を収容した。動物を2つのグループ即ち、普通食が投与される対照グループと100mg/kgの化合物1が投与される実験グループに分割し、各グループには4匹の動物が含まれていた。各グループ内の4匹の動物は、4週間各動物のための別々のかごの中で飼育し、この間に実験を行なった。動物は、普通食と化合物1の規定食の食餌摂取を続けながら、バルーン血管形成を実施する前2週間とその実施後2週間、飼育した。その後、動物の大動脈を単離して、H&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)染色を用いて過形成を確認した。
【0161】
7. 脂質生成の測定
動物を屠殺してその心臓と腹大動脈を単離し、それらをそれぞれ4%のホルマリン中で固定した。固定した心臓組織を等張スクロース溶液中に浸漬し、その後OCT化合物中に包埋することにより冷凍室中に貯蔵した。その間、固定された腹大動脈を長さ方向に切開し、内部血管が露出されるように準備した。凍結した心臓組織を厚み20μmの切片にし、コーティング用スライド上に付着させ、その間、腹大動脈をオイルレッドO溶液中に浸漬してオイルレッドO染色を行ない、これらを観察した。
【0162】
実験例1:血管平滑筋細胞増殖に対する化合物1の効果
血管平滑筋細胞増殖に対する化合物1の効果を判定するために、96ウェル平板内で培養した細胞を休止態に保ち、その後、濃度を変動させることで化合物1でこれらを処理し、48時間これらをPDGFと反応させた。WST細胞計数キットを使用して、生細胞数を計数した。この数は、平均数を計算するため3回以上の独立した実験において計数した。
【0163】
生細胞についての測定の結果は図1に提示されている。図1を参照すると、PDGFおよび化合物1で処理された血管平滑筋細胞の数は、PDGFのみで処理されたものと比べて著しく低いものであった。この数は、PDGFおよび化合物1での処理の無い対照グループ(PDGF:−、化合物1:−)の細胞数と類似していた。更に血管平滑筋細胞の数の減少度は、化合物1の投与用量が増加するにつれて増大することがわかった。結果として、血管平滑筋細胞の数の減少は、化合物1の投与に応じて濃度依存的であると考えられる。
【0164】
従って、化合物1は、血管平滑筋細胞数を減少させる効能を示す。かくして、化合物1は、血管平滑筋細胞の数の急速な増加に付随する再狭窄または動脈硬化症の治療に対しすぐれた効果をもつと考えられる。
【0165】
実験例2:NQO1の発現に対する化合物1の効果
以下の通り、NQO1の発現に対する化合物1の効果を調査するための研究を実施した。血管平滑筋細胞の初代培養を休止態に保ち、その後0.5μMの化合物1で処理した。予め定められた時限にわたりそれらを反応させた後、トリゾールを用いて細胞からRNAを抽出した。その後、NQO1プライマを用いてDNAを増幅し、次に電気泳動に付してNQO1の発現レベルを確認した。結果は図2に提示されている。図2を参照すると、血管平滑筋細胞内のNQO1の発現レベルが対照グループと比較したものよりも著しく高いことが確認された。結果として、化合物1はNQO1活性化因子としての機能を有すると考えられる。
【0166】
実験例3:AMPKおよびACCのリン酸化に対する化合物1の効果
この例は、再狭窄のための治療薬として機能する化合物1の機序を調査するように意図されたものであり、実験は、以下の通りに実施される。
【0167】
血管平滑筋細胞の初代培養を休止態に保ち、次に0.5μMの化合物1で処理した。予め定められた時限にわたりそれらを反応させた後、細胞を収集してウエスタンブロットを実施した。リン酸化されたAMPKおよびアセチル−CoAカルボキシラーゼ(ACC)そしてβ−アクチンに特異的な抗体を用いて定量化を行なった。結果を、3回以上の反復実験を通して確認した。結果は図3に提示されている。
【0168】
図3を参考すると、対照グループと比較した場合、化合物1によるAMPKおよびACCリン酸化度は、AMPKリン酸化の増大を示す一方で、ACCリン酸化の減少を示した。リン酸化されたAMPKは、化合物1での処理後1時間で観察でき、6時間持続した。これは、化合物1が、血管平滑筋細胞の数を減少させ、NQO1を活性化させることで細胞中のNADを増大させ、これが次にAMPKを活性化することにもなったからである。その上、AMPKの標的タンパク質であるものとして知られているACCのリン酸化度の減少の理由は、化合物1がAMPKを活性化しかくして、脂質生成のための重要な調節酵素であるACCの活性を阻害し、脂質代謝を増大させるということにあることが確認された。
【0169】
従って、再狭窄および動脈硬化症の治療薬として機能する化合物1の機序は、化合物1がNQO1およびAMPKの活性を増大させその結果血管平滑筋細胞増殖を阻害することになり、かつACC活性を減少させその結果脂質生成活性を阻害することになるようなものであることがわかる。
【0170】
実験例4:p53およびp21の発現の変化並びにRBおよびCDKの発現の変化に対する化合物1の効果
血管平滑筋細胞の初代培養を0.5μMの化合物1で処理した。予め定められた時限にわたりそれらを反応させた後、細胞を収集してウエスタンブロットを実施した。p53およびp21の発現(図4A)およびリン酸化された網膜芽腫(RB)およびサイクリン依存キナーゼ(CDK)の発現(図4B)も、25mgの細胞残屑で確認した。結果を、3回以上の反復実験を通して確認した。結果は図4に提示されている。
【0171】
CDK、網膜芽腫タンパク質、p53およびp53の発現レベルに応じて制御される下流のp21といったような細胞周期調節タンパク質の発現レベルを測定することにより、細胞増殖が進行したか否かを確認することができる。これは、血管平滑筋細胞増殖の阻害と密な関係をもつ。
【0172】
図4Aを参照すると、化合物1でタンパク質を処理する場合、p53の発現レベルは大幅に増大しないが、p21はp53の発現と相関関係をもつ大きな量で増大することが確認された。このことは、p53の下流側タンパク質であるp21の発現を誘発することにより細胞周期を阻害することができるということを示している。
【0173】
図4Bを参照すると、化合物1でタンパク質を処理した場合、リン酸化を通してCDKが活性化される。かくして、サイクリンD、サイクリンEおよびサイクリンBの発現レベルは全て、対照グループのものと比べて著しく低いことがわかる。ここで、サイクリンDは、細胞周期を開始する上で重要な役割を果たすことがわかっており、サイクリンEは、CDK2と結合するべくG1相の最後の段階で発現されることによりG1−S遷移にとって不可欠な因子として知られており、またサイクリンBは、M相への細胞周期の進行を加速する。
【0174】
従って、化合物1で血管平滑筋細胞を処理する場合、細胞増殖が、細胞周期の進行を調節することを通して阻害されることがわかる。このことは、化合物1が血管平滑筋細胞増殖の阻害に対し効果をもつと考えられることを示している。かくして、血管平滑筋細胞増殖に付随する再狭窄の治療のために化合物1を有効に用いることができるということを確認することができる。
【0175】
実験例5:細胞周期に対する化合物1の効果
血管平滑筋細胞の初代培養を0.5μMの化合物1で処理し、その後PDGFおよびインスリンと48時間反応させた。予め定められた時限にわたり反応させた後、細胞を固定しヨウ化プロピジウム(PI)で染色した。各試料について10,000個の細胞を計数し、図5に提示されている通り、百分率で細胞周期内の各相を提示する。
【0176】
図5を参照すると、化合物1、PDGFおよびインスリンで処理された図5CのG1相は62%であり、一方PDGFとインスリンのみで処理された図5BのG1相は57%である。これは、図5CのG1相が図5BのG1相と比べて更に増大していることを示している。
【0177】
G1相は、細胞増殖が阻害されたか否かを判定するための段階である。かくしてG1相の増大は、G1相がS相まで進行させられていないことから血管平滑筋細胞増殖が化合物1での処理によって阻害されることを暗示している。従って、化合物1が血管平滑筋細胞増殖の阻害のために有効であることが確認される。結果として、血管平滑筋細胞増殖に付随する動脈硬化症および再狭窄の治療のための組成物として化合物1を使用してもよい。
【0178】
実験例6:内膜過形成に対する化合物1の効果
バルーン血管形成を実施してから14日後に、頸動脈をラットから抽出した。H&E染色により頸動脈を染色した後、血管内膜過形成を観察した。結果は図6に提示されている。aは対照グループ、bは普通食グループにおけるバルーン血管形成を実施した後の血管内膜であり、cは100mg/kgの化合物1を投与したグループにおけるバルーン血管形成の実施後の血管内膜であり、dはバルーン血管形成を行なっていない100mg/kgの化合物1を投与したグループにおける対照グループである。
【0179】
図6のbおよびcからわかるように、普通食グループbは、バルーン血管形成の実施後の血管内の内膜過形成に起因する再狭窄を示している。一方、化合物1を投与したグループcは、内膜過形成率が低いため血流路が十分に確保されていることを示している。更に、内膜/中膜比を調べてみると、普通食グループbの内膜/中膜比は2.5であり、一方化合物1の投与グループcは1であり、これはグループbに比べはるかに低い値であることがわかる。このことは、グループcが著しく低い内膜過形成率を有することを暗示している。従って、化合物1は、動脈硬化症などに対する外科手術を実施した後の内膜過形成により誘発される再狭窄の問題を解決するための治療上有効な作用物質であり得ると考えられる。
【0180】
実験例7:血管内の脂質生成に対する化合物1の効果
それぞれ25mg/kgおよび50mg/kgの化合物1を4週間投与したラットを屠殺し、その心臓と腹大動脈を抽出して凍結切片を調製した。調製した切片をオイルレッドOで染色し、内部血管壁および大動脈弁上での脂質蓄積度を比較し観察した。
【0181】
A(図7の上部部分)は大動脈弁であり、B(図7の下部部分)は腹大動脈である。結果を確認するため、実験を3回反復した。結果は図7に提示されている。
【0182】
図7を参照すると、化合物1で処理された場合、AおよびBの両方における脂質生成が阻害され、血流量が増大し始めることが観察された。同様に、約50mg/kgの化合物1が投与されたラットの心臓および腹大動脈における血流量レベルが正常なラットのものとほぼ同じであることも観察された。従って、化合物1は、血管内の脂質生成の阻害に対し効果があると考えられ、脂質による血管壁損傷に起因する血管平滑筋細胞の急速な増殖に付随する動脈硬化症の実質的な治療のために有効に使用可能である。
【0183】
以上の記述から明らかであるように、本発明の医薬組成物は血管平滑筋細胞の急速な増殖の阻害に対し有効に機能することができる。従ってこの組成物は、血管平滑筋細胞増殖に付随する外科手術後に発生する再狭窄の実質的な治療および/または予防に対してすぐれた効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0184】
以上の記述から明らかであるように、本発明に従った医薬組成物は、血管平滑筋細胞増殖の阻害において有効である。従って、本発明に従った医薬組成物は、血管平滑筋細胞増殖に付随する外科手術の後に発生する再狭窄の根本的な予防および治療において有効である。
【0185】
本発明の好ましい実施形態を例示目的で開示してきたが、当業者は、添付の請求項で開示されている通りの本発明の範囲および精神から逸脱することなく、さまざまな修正、付加および置換が可能であるということを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再狭窄を治療および/または予防するための医薬組成物であって、
(a)治療上有効な量の、下記式(1)および(2):
【化1】

【化2】

(式中、
とRは、各々独立して水素、ハロゲン、アミノ、アルコキシまたはC−C低級アルキルまたはアルコキシであるか、そうでなければ、RおよびRが合わされて、飽和、部分不飽和または完全不飽和となっていてよい置換または未置換環状構造を形成してよく;
、R、R、R、RおよびRは、各々独立して水素、ヒドロキシ、アミノ、C−C20アルキル、アルケンまたはアルコキシ、C−C20シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、そうでなければ、R〜Rのうちの2つの置換基が合わされて、飽和、部分不飽和または完全不飽和となっていてよい環状構造を形成してよく;
Xは、C(R)(R’)、N(R’’)(式中、R’が水素またはC−C低級アルキルである)、OおよびSからなる群から選択され、好ましくはOまたはS、より好ましくはOであり;
YはC、SまたはNであり、ただし、YがSである場合、RおよびRは存在せず、YがNである場合、Rは水素またはC−C低級アルキルでありかつRは存在せず;
nは0または1であり、ただし、nが0である場合、nに隣接する炭素原子は直接結合を介して環状構造を形成する)
で表わされる化合物、またはそれらの薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、溶媒和物または異性体の中から選択された1つ以上の化合物;および
(b)薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤、或いはそれらの任意の組み合わせ
を含む医薬組成物。
【請求項2】
XがOであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プロドラッグが、下記式(1a):
【化3】

(式中、
、R、R、R、R、R、R、R、Xおよびnは、前記式(1)に定義されている通りであり;
およびR10は、各々独立して−SONaであるか、または下記式(A):
【化4】

(式中、
11およびR12は、各々独立して水素或いは置換または未置換のC−C20直鎖アルキルまたはC−C20分岐アルキルであり、
13は、下記置換基i)〜viii):
i)水素
ii)置換または未置換のC−C20直鎖アルキルまたはC−C20分岐アルキル
iii)置換または未置換アミン
iv)置換または未置換のC−C10シクロアルキルまたはC−C10ヘテロシクロアルキル
v)置換または未置換のC−C10アリールまたはC−C10ヘテロアリール
vi)式−(CRR’−NR’’CO)−R14(式中、R、R’およびR’’は、各々独立して水素、または置換または未置換のC−C20直鎖アルキルまたはC−C20分岐アルキルであり、R14は、水素、置換または未置換アミン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され、lは、1〜5から選択される)で表わされる置換基
vii)置換または未置換カルボキシル
viii)−OSONa
からなる群から選択され;
kは0〜20の中から選択され、ただし、kが0である場合、R11およびR12は存在せず、R13はカルボニル基に直接結合する)
で表わされる置換基またはその塩である)
で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)の化合物が、下記式(3)および(4):
【化5】

【化6】

(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、前記式(1)において定義されている通りである)
で表わされる化合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
およびRの各々が水素であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(3)の化合物が、
、RおよびRがそれぞれ水素である下記式(3a):
【化7】

で表わされる化合物であるか、または
、RおよびRがそれぞれ水素である下記式(3b):
【化8】

で表わされる化合物であることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(4)の化合物が、下記式(4a)、(4b)および(4c):
【化9】

【化10】

【化11】

から選択された化合物であることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記式(2)の化合物が、
nが0であり、隣接する炭素原子がそれらの間の直接結合を介して環状構造を形成し、YがCである下記式(2a):
【化12】

で表わされる化合物であるか、または、
nが1であり、YがCである下記式(2b):
【化13】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、RおよびXは、前記式(1)において定義されている通りである)
で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記式(1)または(2)の化合物が、結晶構造を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記式(1)または(2)の化合物が、非晶質構造を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記式(1)または(2)の化合物が、細粒の形態に処方されていることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
細粒の形態のための前記処方が、機械的粉砕、噴霧乾燥、沈澱方法、高圧均質化および超臨界微粉化からなる群から選択された粒子微粉化方法によって実施されることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記処方が、機械的粉砕としてのジェット粉砕および/または噴霧乾燥により実施されることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記細粒の粒径が、5nm〜500μmの範囲内にあることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
腸を標的とする処方物に調製されていることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
腸を標的とする処方が、pH感受性重合体の付加によって実施されることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
腸を標的とする処方が、腸特異的細菌酵素によって分解可能である生分解性重合体の付加によって実施されることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
腸を標的とする処方が、腸特異的細菌酵素によって分解可能である生分解性マトリクスの付加によって実施されることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
腸を標的とする処方が、一定の遅延時間後に薬物が経時的に放出される構成(「時間特異的遅延放出処方」)によって実施されることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
血管内に挿入されるメッシュステント上にコーティングされるかまたはその中に埋込まれることによって、前記式(1)または前記式(2)の化合物が付加されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
血管平滑筋細胞の高速増殖に付随する疾患を予防および治療するための薬物の調製における、請求項1に記載の前記式(1)または前記式(2)で表わされる化合物の使用。
【請求項22】
前記疾病が再狭窄であることを特徴とする請求項21に記載の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−510982(P2010−510982A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538339(P2009−538339)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006011
【国際公開番号】WO2008/066297
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(509010436)マゼンス インコーポレイテッド (11)
【出願人】(506222797)ケーティ アンド ジー カンパニー リミテッド (9)
【Fターム(参考)】