説明

冷却装置

【課題】放熱面積を増やさなくても、冷却風の風上側の冷却能力と冷却風の風下側の冷却能力ともに優れ、被冷却体である発熱素子を複数実装しても、その温度差を低減できる冷却装置を提供する。
【解決手段】発熱素子に熱的に接続できる受熱ブロック2と、受熱ブロック2に熱的に接続された熱伝導部材と、前記熱伝導部材に熱的に接続された放熱フィン5、5’を複数有する放熱フィン群6とを備え、受熱ブロック2の表面に対して平行な方向に冷却風の流れが設定される冷却装置1であって、放熱フィン群6のうち、前記冷却風の風上側の部位と風下側の部位との中間部は、前記冷却風の風上側の部位の放熱フィンピッチ及び前記冷却風の風下側の部位の放熱フィンピッチよりも小さい放熱フィンピッチを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱素子を強制空冷で冷却する冷却装置に関し、より具体的には、鉄道車両、航空機、船舶等の移動体に搭載された電力変換装置等の発熱する電気部品を、強制空冷で冷却する冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の冷却装置として、図6(a)(b)に示す冷却装置41(以下、従来例1という)がある。この従来例1は、平板状の受熱ブロック42と、受熱ブロック42の表面に複数立設された側面視U字状のヒートパイプ43と、ヒートパイプ43へ受熱ブロック42表面に対して平行な方向に取り付けられた複数の放熱フィン45を有する放熱フィン群46とからなる。各放熱フィン45間の放熱フィンピッチは、いずれの部分も均一となるように形成されている(特許文献1)。
【0003】
従来例1の冷却装置41では、冷却性能を向上させるために、放熱フィン群46の放熱面積を増やす必要がある。このとき、放熱面積を増やすには、冷却風の流れ方向に放熱フィン45の寸法を長くする必要がある。しかし、放熱フィン45の寸法を冷却風の流れ方向に長くすると、放熱フィン45間を流れる冷却風の圧力は、風下側へと進むにつれて著しく低下してしまう。従って、従来例1の冷却装置41では、風下側と風上側とで冷却能力が大きく相違してしまう。例えば、受熱ブロック42に冷却風の風上側と風下側にそれぞれ発熱する電気部品(発熱素子)を実装する(図6(b)では、冷却風の風上側に並列に3個及び風下側に並列に3個)と、風下側に配置された発熱素子400−2は、放熱フィン45による冷却風の圧力損失によって、風上側に配置された発熱素子400−1と比較して冷却されにくく、温度の低下が抑えられてしまうという問題があった。
【0004】
そこで、図8に示すように、冷却風の流れ方向の放熱フィン45の寸法を短くする冷却装置41´(以下、従来例2という)では、冷却風の圧力損失が低減されるので、風下側に配置された発熱素子400−2に対する冷却能力は従来例1よりも向上する。しかし、従来例2では、放熱フィンの寸法とヒートパイプの配置との関係から、風上側と風下側に配置された側面視U字状のヒートパイプ43を側面視L字状のヒートパイプ43´に代える必要が生じるので、風上側に配置された発熱素子400−1に対する冷却能力が低下してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−119785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の冷却装置では、風上側に配置された発熱素子に対する冷却能力または風下側に配置された発熱素子に対する冷却能力が低下してしまう。従って、冷却装置に複数の発熱素子を実装すると、受熱ブロックの部位、つまり、発熱素子の実装位置によっては、十分に冷却できない発熱素子が存在してしまう。
【0007】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、放熱面積を増やさなくても、冷却風の風上側の冷却能力、冷却風の風下側の冷却能力ともに優れ、被冷却体である発熱素子を複数実装しても、その温度差を低減できる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、発熱素子に熱的に接続できる受熱ブロックと、前記受熱ブロックに熱的に接続された熱伝導部材と、前記熱伝導部材に熱的に接続された放熱フィンを複数有する放熱フィン群とを備え、前記受熱ブロックの表面に対して平行な方向に冷却風の流れが設定される冷却装置であって、前記放熱フィン群のうち、前記冷却風の風上側の部位と冷却風の風下側の部位との中間部が、前記冷却風の風上側の部位の放熱フィンピッチ及び前記冷却風の風下側の部位の放熱フィンピッチよりも小さい放熱フィンピッチを備えることを特徴とする冷却装置である。
【0009】
この態様では、放熱フィン群に、放熱フィンピッチの異なる部位が設けられている。すなわち、冷却装置の構成要素である1つの放熱フィン群のうち、冷却風の風上側の部位(「風上部」ということがある。)と冷却風の風下側の部位(「風下部」ということがある。)との中間部における放熱フィンのピッチは、中間部より冷却風の風上側の部位の放熱フィンのピッチよりも小さく、かつ中間部より冷却風の風下側の部位の放熱フィンのピッチよりも小さくなっている。
【0010】
このように、放熱フィン群の中間部の放熱フィンピッチを、同じ放熱フィン群の風上側の部位の放熱フィンピッチ及び同じ放熱フィン群の風下側の部位の放熱フィンピッチより小さくすることで、放熱フィン群中を流れる冷却風の圧力、風力が、放熱フィン群の風下側へと進むにつれて低下するのを抑制する。
【0011】
この態様では、放熱フィン群の風上部の放熱フィンピッチは中間部の放熱フィンピッチよりも相対的に大きいので、放熱フィン群の風上部では、冷却風は相対的に円滑に流れる。放熱フィン群の風上部を円滑に通り抜けた冷却風は、放熱フィン群の風上部の放熱フィンピッチよりも小さい放熱フィンピッチを備えた中間部へ流れる。このとき、中間部の放熱フィンピッチは風上部の放熱フィンピッチより相対的に小さいので、中間部では放熱フィンが冷却風の流れの抵抗となる。しかし、風下部は中間部の放熱フィンピッチよりも相対的に大きい放熱フィンピッチである、すなわち、風下部の放熱フィン間の間隔は中間部の放熱フィン間の間隔よりも広いため、冷却風は中間部を抜けやすく、中間部にて冷却風の圧力が損失するのを抑えることができる。よって、風下部にて冷却風の圧力、風力が低下するのを抑制できると考えられる。また、放熱フィン群の放熱フィンは、中間部に対して風上部と風下部がともに相対的に大きい放熱フィンピッチを有した配置になっているので、冷却風の風向きが逆になった場合でも、同様の効果が得られる。
【0012】
なお、「熱伝導部材」とは、熱伝導性に優れた部材であり、例えば、ヒートパイプや、25℃の熱伝導率が100W/(m・K)以上の金属(例えば、アルミニウム、銅)が挙げられる。
【0013】
本発明の態様は、前記風上側の部位の放熱フィンピッチと前記風下側の部位の放熱フィンピッチが、同じであることを特徴とする冷却装置である。
【0014】
本発明の態様は、前記風上側の部位の放熱フィンピッチ及び前記風下側の部位の放熱フィンピッチが、前記中間部の放熱フィンピッチの整数倍であることを特徴とする冷却装置である。
【0015】
本発明の態様は、発熱素子に熱的に接続できる受熱ブロックと、前記受熱ブロックに熱的に接続された熱伝導部材と、前記熱伝導部材に熱的に接続された放熱フィンを複数有する放熱フィン群とを備え、前記受熱ブロックの表面に対して平行な方向に冷却風の流れが設定される冷却装置であって、前記放熱フィン群が、前記冷却風の流れ方向に沿って複数縦列配置され、前記複数の放熱フィン群のうち、前記冷却風の風上側と風下側との中間部に配置された放熱フィン群が、前記冷却風の風上側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチ及び前記冷却風の風下側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチよりも小さい放熱フィンピッチを備えることを特徴とする冷却装置である。
【0016】
この態様では、複数の放熱フィン群のうち、少なくとも一つの放熱フィン群について、放熱フィンのピッチが、他の放熱フィン群の放熱フィンのピッチとは異なっている。すなわち、冷却風の流れ方向に対して平行またはほぼ平行に並べられた複数の放熱フィン群のうち、冷却風の風上側と風下側との中間部に配置された放熱フィン群の放熱フィンのピッチは、中間部より冷却風の風上側に配置された放熱フィン群の放熱フィンのピッチよりも小さく、かつ中間部より冷却風の風下側に配置された放熱フィン群の放熱フィンのピッチよりも小さくなっている。
【0017】
このように、冷却風の流れ方向に対して平行方向に複数設けられた放熱フィン群のうち、前記中間部に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチを、その風上側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチ及びその風下側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチより小さくすることで、放熱フィン群中を流れる冷却風の圧力、風力が、風下方向に配置された放熱フィン群中へ進むにつれて低下するのを抑制する。
【0018】
この態様にて、風下側に配置された放熱フィン群中において冷却風の圧力、風力の低下を抑制できるメカニズムについて説明する。風上側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチは中間部に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチよりも相対的に大きいので、風上側の放熱フィン群中では、冷却風は相対的に円滑に流れる。風上側の放熱フィン群を円滑に通り抜けた冷却風は、風上側の放熱フィン群の放熱フィンピッチよりも小さい放熱フィンピッチを備え、この風上側の放熱フィン群の風下側に配置された別の放熱フィン群、すなわち、中間部に配置された放熱フィン群へ流れる。このとき、中間部の放熱フィン群の放熱フィンピッチは風上側の放熱フィン群の放熱フィンピッチより相対的に小さいので、中間部の放熱フィン群では、放熱フィンが冷却風の流れの抵抗となる。しかし、風下側に配置された放熱フィン群は、中間部に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチよりも相対的に大きい放熱フィンピッチである、すなわち、風下側に配置された放熱フィン群の放熱フィン間の間隔は中間部に配置された放熱フィン群の放熱フィン間の間隔よりも広いため、冷却風は中間部に配置された放熱フィン群中を抜けやすく、中間部に配置された放熱フィン群中にて冷却風の圧力が損失するのを抑えることができる。よって、風下側の放熱フィン群中において冷却風の圧力、風力が低下するのを抑制できると考えられる。また、中間部に配置された放熱フィン群に対して、風上側に配置された放熱フィン群と風下側に配置された放熱フィン群はともに相対的に大きい放熱フィンピッチを有しているので、冷却風の風向きが逆になった場合でも、同様の効果が得られる。
【0019】
なお、明細書中、「放熱フィン群」とは、各放熱フィンまたは各放熱フィンの所定部位を冷却風の流れ方向に対して垂直方向に直線上に複数並べた放熱フィンの一群を意味する。
【0020】
本発明の態様は、前記風上側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチと前記風下側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチが、同じであることを特徴とする冷却装置である。
【0021】
本発明の態様は、前記風上側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチ及び前記風下側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチが、前記中間部に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチの整数倍であることを特徴とする冷却装置である。
【0022】
本発明の態様は、前記熱伝導部材が、ヒートパイプであることを特徴とする冷却装置である。
【0023】
本発明の態様は、前記ヒートパイプが、側面視U字状またはL字状であることを特徴とする冷却装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の態様によれば、冷却風の風上側の冷却能力と冷却風の風下側の冷却能力が、ともに優れるので、一つの冷却装置に発熱量の異なる発熱素子が複数実装されても、冷却風の風下側に実装された発熱素子がその風上側に実装された発熱素子よりも冷却されにくくなるのを防止できる。また、発熱素子の実装位置の違いによる冷却能力の差異を低減できるので、相対的に発熱量の多い発熱素子が、相対的に発熱量の少ない他の発熱素子よりも冷却されにくくなるのを抑制でき、発熱素子間の温度差を均一化できる。また、放熱面積を小さくしても冷却能力が向上する、すなわち、放熱フィンの面積を従来よりも小さくしても冷却能力が向上するので、冷却装置の小型化、軽量化ができ、製造コストも低減できる。さらに、風上側の放熱フィンピッチと風下側の放熱フィンピッチを従来よりも広く設定できるので、冷却風の圧力が、放熱フィンにより損失するのを抑えることができ、風下側の冷却能力を向上させることができる。
【0025】
本発明の態様によれば、風上側の放熱フィンピッチと風下側の放熱フィンピッチとが同じであることにより、風下側の冷却能力を風上側の冷却能力に、より近づけることができる。従って、風上側と風下側の冷却能力をより均一化できる。
【0026】
本発明の態様によれば、風上側と風下側の放熱フィンピッチが、その中間部の放熱フィンピッチの整数倍なので、中間部の放熱フィンピッチと風上側・風下側の放熱フィンピッチの位相を揃えることが可能となり、放熱フィン群中を流れる冷却風の圧力が、放熱フィンにより損失するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る冷却装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態例に係る冷却装置であって、複数の発熱素子を取り付けた状態の側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態例に係る冷却装置であって、複数の発熱素子を取り付けた状態の平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態例に係る冷却装置の斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態例に係る冷却装置であって、複数の発熱素子を取り付けた状態の側面図である。
【図6】(a)図は従来例に係る冷却装置の斜視図、(b)図は従来例に係る冷却装置に複数の発熱素子を実装した状態を示す説明図である。
【図7】従来例に係る冷却装置であって、複数の発熱素子を取り付けた状態の平面図である。
【図8】他の従来例に係る冷却装置の斜視図である。
【図9】他の従来例に係る冷却装置であって、複数の発熱素子を取り付けた状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の第1実施形態例に係る冷却装置について図1〜3を用いながら説明する。図1、2に示すように、本発明の第1実施形態例に係る冷却装置1は、ヒートパイプ式冷却装置であって、平板状の受熱ブロック2と、受熱ブロック2の表面に鉛直方向に取り付けられた複数のヒートパイプ3と、ヒートパイプ3に取り付けられた複数の放熱フィン5、5´とを備えている。ヒートパイプ3の形状は、側面視U字状(側面視U字状ヒートパイプ3−1)または側面視L字状(側面視L字状ヒートパイプ3−2)となっている。第1実施形態例に係る冷却装置1では、側面視U字状ヒートパイプ3−1について、いずれも寸法と形状が同じであり、側面視L字状ヒートパイプ3−2について、いずれも寸法と形状が同じである。ヒートパイプ3は、側面視U字状またはL字状となっている側面部が冷却風の流れ方向に対して平行となるように、直線上に複数配列されて、1つのヒートパイプ群4が形成されている。
【0029】
1つのヒートパイプ群4を構成するヒートパイプ3の数は、必要とする冷却能力及び冷却装置1のサイズに応じて適宜選択可能である。図3に示すように、冷却装置1に設けられたヒートパイプ群4には、3つの側面視U字状ヒートパイプ3−1からなるヒートパイプ群4−1と、3つの側面視U字状ヒートパイプ3−1に加えて冷却風の最も風上側に側面視L字状ヒートパイプ3−2が1つ配置されたヒートパイプ群4−2との2パターンがある。ヒートパイプ群4−1及びヒートパイプ群4−2は、いずれも冷却風の流れ方向に対して直交方向に複数列(図では17列)設けられている。また、ヒートパイプ群4−1とヒートパイプ群4−2とは、交互に配置されている。従って、冷却装置1では、受熱ブロック2に、側面視U字状ヒートパイプ3−1が51個、側面視L字状ヒートパイプ3−2が8個、取り付けられている。さらに、ヒートパイプ群4−1とヒートパイプ群4−2は、冷却風の流れ方向に対して平行方向に特定間隔ずれた配置関係となっている。なお、側面視U字状ヒートパイプ3−1と側面視L字状ヒートパイプ3−2について、上記のような、いずれも同じ寸法と形状を有している態様に限定はされず、障害物の回避等、必要に応じて、所定の側面視U字状ヒートパイプ3−1と側面視L字状ヒートパイプ3−2の寸法、形状を、適宜、変更させてもよい。
【0030】
放熱フィン5、5´は、矩形の薄板である。放熱フィン5、5´は、その表面が冷却風の流れ方向に対して平行方向またはほぼ平行方向となるよう取り付けられている。また、放熱フィン5、5´の表面は、受熱ブロック2の表面に対して平行方向またはほぼ平行方向となっている。この放熱フィン5、5´が、受熱ブロック2の表面に対して垂直方向に所定間隔で複数並べられて、1つの放熱フィン群6が形成されている。これにより、冷却風が放熱フィン群6中を円滑に流れる構成となっている。
【0031】
冷却装置1では、1つの放熱フィン群6は、同一寸法・形状の放熱フィン5、5´が受熱ブロック2の表面に対して垂直方向に等しい間隔tで複数並べられた放熱フィン群部、2つから形成されている。つまり、1つの放熱フィン群6は、風上側放熱フィン群部7と、冷却風の流れ方向に対して平行方向であって、風上側放熱フィン群部7の冷却風の風下側に設けられた風下側放熱フィン群部8と、から形成されている。すなわち、風上側放熱フィン群部7では、放熱フィン5が受熱ブロック2の表面に対して垂直方向に等間隔tにて複数並べられており、風下側放熱フィン群部8では、放熱フィン5´が受熱ブロック2の表面に対して垂直方向に等間隔tにて複数並べられている。風上側放熱フィン群部7の放熱フィン5と風下側放熱フィン群部8の放熱フィン5´とは、同一寸法・形状のものが用いられている。風上側放熱フィン群部7の各放熱フィン5と風下側放熱フィン群部8の各放熱フィン5´とは、相互に、受熱ブロック2の表面に対して垂直方向に上記間隔tの半分幅(0.5t)ずれた位置関係にて取り付けられている。そして、風上側放熱フィン群部7の風下側の部位と風下側放熱フィン群部8の風上側の部位とが、受熱ブロック2の表面に対して垂直方向に交互に重複、すなわち、受熱ブロック2の表面に対して垂直方向に交互に積層配置されて積層部9が形成されている。つまり、積層部9では、風上側放熱フィン群部7の放熱フィン5の風下側の所定部位と風下側放熱フィン群部8の放熱フィン5´の風上側の所定部位とが、受熱ブロック2の表面に対して垂直方向に、交互に配置されている。このように、冷却装置1の放熱フィン群6は、風上側放熱フィン群部7の風上側部位(すなわち、風上部)と、風下側放熱フィン群部8の風下側部位(すなわち、風下部)と、風上側放熱フィン群部7の風上側部位と風下側放熱フィン群部8の風下側部位との中間部にある積層部9(すなわち、中間部)と、を備えている。
【0032】
従って、積層部9では、放熱フィン5、5´が受熱ブロック2の表面に対して垂直方向に、0.5tの間隔、すなわち、風上側放熱フィン群部7の放熱フィン5及び風下側放熱フィン群部8の放熱フィン5´の間隔tに対して半分の間隔にて、並べられている。従って、風上側放熱フィン群部7の放熱フィンピッチと風下側放熱フィン群部8の放熱フィンピッチとは等しく、積層部9の放熱フィンピッチは、風上側放熱フィン群部7の放熱フィンピッチ及び風下側放熱フィン群部8の放熱フィンピッチの2倍となっている。このように、風上側放熱フィン群部7の放熱フィン5と風下側放熱フィン群部8の放熱フィン5´を同一形状とすることで、積層部9が風上部と風下部に対して2倍の放熱フィンピッチを有した配置となり、放熱フィン群6は積層部9を中心にして対称形状とできる。上記対称形状を形成するのに、放熱フィン5、5´の種類を増やすことが不要となり、部品点数を減らすことができる。
【0033】
風上側放熱フィン群部7の放熱フィン5と風下側放熱フィン群部8の放熱フィン5´とは、相互に、寸法・形状が同じなので、放熱フィン群6の側面部は、放熱フィン5、5´の縁部が、それぞれ揃った状態となっている。
【0034】
上記放熱フィン5、5´及び受熱ブロック2は、いずれも熱伝導性のよい金属材料の平板であり、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などで製造されている。ヒートパイプ3のコンテナ材料も、放熱フィン5、5´及び受熱ブロック2と同様の金属材料で製造されている。ヒートパイプ3の作動液には、コンテナ材料との適合性に合せた作動液が減圧状態で封入される。例えば、コンテナが銅である場合には、作動液は純水を用いている。
【0035】
ヒートパイプ3及び放熱フィン5、5´が取り付けられていない側に相当する受熱ブロック2の裏面には、被冷却体である発熱素子100を実装させることで、冷却装置1と発熱素子100との熱的接続が可能となる。
【0036】
第1実施形態例に係る冷却装置1では、放熱フィン5、5´は、冷却風の流れ方向に対して垂直方向の寸法(幅)は500mm、冷却風の流れ方向に対して平行方向の寸法(長さ)は350mm、厚さは0.5mmである。風上側放熱フィン群部7の放熱フィン5と風下側放熱フィン群部8の放熱フィン5´は、いずれも、受熱ブロック2の表面に対して垂直方向に等間隔(6mm間隔)に、複数枚(図1、2に示す実施形態例では15枚)並べられている。従って、風上部の放熱フィン5間の空隙、風下部の放熱フィン5´間の空隙は、それぞれ5.5mmである。また、風上側放熱フィン群部7の放熱フィン5と風下側放熱フィン群部8の放熱フィン5´とが受熱ブロック2の表面に対して垂直方向に交互に配置されている積層部9では、放熱フィン5、5´が、受熱ブロック2の表面に対して垂直方向に、交互に、等間隔(3mm間隔)にて、複数枚(図1、2に示す実施形態例では30枚)並べられている。積層部9の長さは、必要とする冷却能力に応じて適宜選択可能であり、第1実施形態例に係る冷却装置1では225mmである。
【0037】
つまり、風上側放熱フィン群部7の放熱フィン5の長さ350mm及び風下側放熱フィン群部8の放熱フィン5´の長さ350mmのうち、風上側放熱フィン群部7の風下側225mmと風下側放熱フィン群部8の風上側225mmとから、放熱フィン群6の積層部9が形成されている。従って、冷却装置1の放熱フィン群6では、風上側放熱フィン群部7のうち、積層部9を構成している風下側部位以外の部位、すなわち、積層部9を構成していない風上部は125mmであり、風下側放熱フィン群部8のうち、積層部9を構成している風上側部位以外の部位、すなわち、積層部9を構成していない風下部は同じく125mmである。
【0038】
また、受熱ブロック2の寸法は、適宜選択可能であるが、冷却装置1では、幅500mm、長さ1000mm、厚さ25mmである。ヒートパイプ3の寸法も、適宜選択可能であるが、冷却装置1では、側面視U字状ヒートパイプ3−1の寸法、側面視L字状ヒートパイプ3−2の寸法は、いずれも、パイプ径15.88mm、側面視U字またはL字部分の幅方向の寸法106mmである。側面視U字状ヒートパイプ3−1、側面視L字状ヒートパイプ3−2は、いずれも、パイプの断面形状は円形である。
【0039】
第1実施形態例に係る冷却装置1では、冷却風が図1〜3の矢印の方向にて供給される。よって、冷却風の流れの向きが、受熱ブロック2表面に対して平行または略平行の方向と一致するように、すなわち、冷却風が放熱フィン5、5´の表面に対して平行または略平行方向に流れるように、冷却装置1は設置される。これにより、冷却風は、それぞれの放熱フィン5、5´間の空隙を円滑に通り抜けることができ、よって、放熱フィン5、5´から熱を効率的に奪うことができる。
【0040】
次に、第1実施形態例に係る冷却装置1に複数の発熱量の発熱素子を実装した場合について、図3を用いて説明する。受熱ブロック2の冷却風の風上側の部位と風下側の部位のそれぞれに冷却風の流れ方向に対して直交方向に3個ずつ、合計6個の発熱素子100が実装されている場合を例にとって説明する。
【0041】
各発熱素子100から放出された熱は、各発熱素子100と熱的に接続された受熱ブロック2に伝達される。受熱ブロック2に伝達された熱は、受熱ブロック2と熱的に接続されたヒートパイプ3の底部に相当する加熱部へ伝達される。すると、ヒートパイプ3の熱輸送系が作動し、ヒートパイプ3の加熱部に吸収された熱は、該加熱部から延びているヒートパイプ3の冷却部を介して、冷却風の流れを受けている、ヒートパイプ3と熱的に接続された放熱フィン5、5´へと伝達され、放熱フィン5、5´から冷却装置1の外部へと放出される。
【0042】
このように、第1実施形態例に係る冷却装置1に、冷却風の流れ方向に対して直交方向に3個並べられた発熱素子100の列が、冷却風の流れ方向に対して平行方向に2列実装されている場合、風上側に実装された発熱素子100−1の上昇温度は35.6℃、風下側に実装された発熱素子100−2の上昇温度は35.2℃であり、発熱素子100−1と発熱素子100−2の上昇温度差は0.4℃であった。
【0043】
一方、従来例1については、図6(b)、図7に示すように、第1実施形態例に係る冷却装置1との比較のために、放熱フィン群6に代えて、幅500mm×長さ500mm×厚さ0.5mmの放熱フィン45を冷却装置1の積層部9と同じ間隔にて積層部9と同じく30枚取り付けて放熱フィン群46を形成し、さらに側面視L字状ヒートパイプを全て側面視U字状ヒートパイプ43に置き換えた、すなわち、側面視U字状ヒートパイプ43を59個設置した以外は、冷却装置1と同様の構成とした。さらに、受熱ブロック42に冷却装置1と同じ発熱素子400を同じ配置関係にて実装した。
【0044】
従来例1では、風上側に実装された発熱素子400−1の上昇温度は31.0℃、風下側に実装された発熱素子400−2の上昇温度は39.0℃であり、発熱素子400−1と発熱素子400−2の上昇温度差は8.0℃であった。従来例1では、放熱フィン45によって冷却風の圧力が大きく損失した結果、風下側の発熱素子400−2は、風上側の発熱素子400−1と比較して冷却されにくくなったためである。
【0045】
さらに、従来例2の冷却装置41´についても、図8、9に示すように、第1実施形態例に係る冷却装置1との比較のために、受熱ブロック42に従来例1と同じ発熱素子400を同じ配置関係にて実装した。従来例2の冷却装置41´については、放熱フィン群6に代えて、幅500mm×長さ350mm×厚さ0.5mmの放熱フィン45を、冷却装置1の積層部9と同じ間隔にて30枚取り付けて放熱フィン群46を形成し、さらに、3つの側面視U字状ヒートパイプからなるヒートパイプ群のうち冷却風の最も風上側にある側面視U字状ヒートパイプをそれぞれ側面視L字状ヒートパイプ43´に置き換え、3つの側面視U字状ヒートパイプに加えて最も風上側に側面視L字状ヒートパイプが1つ配置されたヒートパイプ群のうち最も風下側にある側面視U字状ヒートパイプをそれぞれ側面視L字状ヒートパイプ43´に置き換えた、すなわち側面視U字状ヒートパイプ43を34個、側面視L字状ヒートパイプ25個とした以外は、冷却装置1と同様の構成とした。
【0046】
従来例2では、風上側に実装された発熱素子400−1の上昇温度は37.0℃、風下側に実装された発熱素子400−2の上昇温度は33.0℃であり、発熱素子400−1と発熱素子400−2の上昇温度差は4.0℃であった。従来例2では、放熱フィンの長さが短いことから、風上側の側面視U字状のヒートパイプ43を側面視L字状のヒートパイプ43´に代える必要が生じるので、風上側に配置された発熱素子400−1に対する冷却能力が低下してしまうためである。
【0047】
上記より、本発明の実施形態例に係る冷却装置1では、上記従来例1、2と比較して、風上側に実装された発熱素子と風下側に実装された発熱素子間の上昇温度差が大きく低減した。放熱フィンピッチが風上側の放熱フィンピッチより相対的に小さい積層部9では、放熱フィン5、5´が冷却風の流れの抵抗となる。しかし、風下部は積層部9の放熱フィンピッチよりも相対的に大きい放熱フィンピッチであるため、冷却風は積層部9を抜けやすく、積層部9にて冷却風の圧力が損失するのを抑えることができる。よって、風下側に実装された発熱素子の温度上昇をより抑えることができると考えられる。
【0048】
次に、本発明の第2実施形態例に係る冷却装置21について、図4、5を用いながら説明する。上記第1実施形態例の冷却装置1では、放熱フィン群6は、風上側放熱フィン群部7の放熱フィン5の風下側部位と風下側放熱フィン群部8の放熱フィン5´の風上側部位とが、受熱ブロック22の表面に対して垂直方向に交互に配置されて積層部9が形成されることで、風上側放熱フィン群部7の風上側部位と、風下側放熱フィン群部8の風下側部位と、上記各部位の中間部である積層部9と、3つの部位を備えていたが、これに代えて、図4、5に示すように、上記3つの部位を、それぞれ、別体の放熱フィン群として備えた冷却装置21としてもよい。
【0049】
冷却装置21は、放熱フィン25を等間隔に並べた、すなわち、等しいピッチにて放熱フィン25を複数設けた放熱フィン群26が、冷却風の流れ方向に対して平行方向に複数(図では3個)縦列配置されている。放熱フィン25は、矩形の薄板である。放熱フィン25は、その表面が冷却風の流れ方向に対して平行方向またはほぼ平行方向となるよう取り付けられている。また、放熱フィン25の表面は、受熱ブロック22の表面に対して平行方向またはほぼ平行方向となっている。冷却装置21でも、上記冷却装置1と同様に、それぞれの放熱フィン25はヒートパイプ23、すなわち、側面視U字状ヒートパイプ23−1と側面視L字状ヒートパイプ23−2に取り付けられている。また、ヒートパイプ23及び放熱フィン25が取り付けられていない側に相当する受熱ブロック22の裏面には、被冷却体である発熱素子200‐1、200−2を実装させることで、熱的接続が可能となる。
【0050】
複数の放熱フィン25が取り付けられた3つの放熱フィン群26のうち、第1放熱フィン群26−1の構成要素である各第1放熱フィン25−1の形状・寸法は相互に同一であり、第1放熱フィン群26−1の側面部は、第1放熱フィン25−1の縁部がそれぞれ揃った状態となっている。複数の放熱フィン25が取り付けられた3つの放熱フィン群26のうち、第2放熱フィン群26−2の構成要素である第2放熱フィン25−2の形状・寸法は相互に同一であり、第2放熱フィン群26−2の側面部は、第2放熱フィン25−2の縁部がそれぞれ揃った状態となっている。複数の放熱フィン25が取り付けられた3つの放熱フィン群26のうち、第3放熱フィン群26−3の構成要素である第3放熱フィン25−3の形状・寸法は相互に同一であり、第3放熱フィン群26−3の側面部は、第3放熱フィン25−2の縁部がそれぞれ揃った状態となっている。また、各放熱フィン群26、すなわち、第1放熱フィン群26−1、第2放熱フィン群26−2及び第3放熱フィン群26−3は相互に別体なので、第1放熱フィン群26−1と第2放熱フィン群26−2の間、第2放熱フィン群26−2と第3放熱フィン群26−3の間には、それぞれ、受熱ブロック22の表面に対して垂直方向の空隙が形成されている。
【0051】
冷却風の最も風上側に配置された第1放熱フィン群26−1では、第1放熱フィン25−1が、所定の等間隔tにて所定の枚数(図5では、冷却装置1の風上側放熱フィン群部7の放熱フィン5の枚数と同じである15枚)取り付けられている。冷却装置21では、第1放熱フィン25−1のピッチは、冷却装置1の風上側放熱フィン群部7の放熱フィン5のピッチに相当している。第1放熱フィン25−1の長さは適宜選択可能であるが、冷却装置21では、風上側放熱フィン群部7の風上側部位の長さとなっている。
【0052】
第1放熱フィン群26−1の風下側に隣接して配置された第2放熱フィン群26−2では、第2放熱フィン25−2が、前記間隔tよりも狭い等間隔t´にて第1放熱フィン群26−1よりも多い所定枚数(図5では、冷却装置1の積層部9の放熱フィン5、5´の枚数と同じである30枚)取り付けられている。冷却装置21では、第2放熱フィン25−2のピッチは、積層部9の放熱フィン5、5´のピッチに相当している。第2放熱フィン25−2の長さは適宜選択可能であるが、冷却装置21では、積層部9の長さとなっている。
【0053】
第2放熱フィン群26−2の風下側に隣接して配置された、すなわち、冷却風の最も風下側に配置された第3放熱フィン群26−3では、第3放熱フィン25−3が、所定の等間隔tにて所定の枚数(図5では、冷却装置1の風下側放熱フィン群部8の放熱フィン5´の枚数と同じである15枚)取り付けられている。冷却装置21では、第3放熱フィン25−3のピッチは、風下側放熱フィン群部8の放熱フィン5´のピッチに相当している。第3放熱フィン25−3の長さは適宜選択可能であるが、冷却装置21では、風下側放熱フィン群部8の風下側部位の長さとなっている。
【0054】
冷却装置21では、第1放熱フィン群26−1の第1放熱フィン25−1のピッチと第3放熱フィン群26−3の第3放熱フィン25−3のピッチは同じであって、第2放熱フィン群26−2の第2放熱フィン25−2のピッチよりも大きくなっている。また、冷却装置21では、第2放熱フィン群26−2の放熱フィン25−2のピッチは、第1放熱フィン群26−1及び第3放熱フィン群26−3のピッチと整数倍の関係(図5では2倍の関係であり、よって、間隔t´=0.5t)となっている。
【0055】
さらに、第2放熱フィン群26−2は、第1放熱フィン群26−1及び第3放熱フィン群26−3と、相互に、放熱フィンのピッチの位相が揃えられている。つまり、それぞれの第1放熱フィン25−1の同一平面上には、第2放熱フィン群26−2のうち所定の第2放熱フィン25−2が配置されている。一方で、第1放熱フィン群26−1の第1放熱フィン25−1と第3放熱フィン群26−3の第3放熱フィン25−3は、相互に、受熱ブロック22の表面に対して垂直方向に上記間隔tの半分幅(0.5t)ずれた位置関係にて取り付けられている。従って、第1放熱フィン25−1と同一平面上にない第2放熱フィン25−2は、第3放熱フィン25−3と同一平面上に配置されている。
【0056】
第2実施形態例に係る冷却装置21においても、第2放熱フィン25−2のピッチが第1放熱フィン25−1のピッチより相対的に小さい第2放熱フィン群26−2では、第2放熱フィン25−2が冷却風の流れの抵抗となる。しかし、第3放熱フィン群26−3は、第2放熱フィン群26−2の放熱フィンピッチよりも相対的に大きい放熱フィンピッチであるため、冷却風は第2放熱フィン群26−2中を抜けやすく、第2放熱フィン群26−2中にて冷却風の圧力が損失するのを抑えることができる。よって、第3放熱フィン群26−3の部位にて冷却風の圧力、風力が低下するのを抑制できると考えられる。その結果、風下側に実装された発熱素子の温度上昇をより抑えることができると考えられる。
【0057】
次に、本発明の冷却装置の製造方法例について説明する。ここでは、実施形態例1の冷却装置1を例にとって説明する。受熱ブロック2の表面には、側面視U字状ヒートパイプ3−1及び側面視L字状ヒートパイプ3−2の取り付け位置に対応する箇所に、それぞれ凹部が形成されている。凹部は、側面視U字状ヒートパイプ3−1または側面視L字状ヒートパイプ3−2の底部と嵌合可能な寸法・形状となっている。
【0058】
まず、受熱ブロック2表面のそれぞれの凹部に、側面視U字状ヒートパイプ3−1または側面視L字状ヒートパイプ3−2の底部を嵌め込むことで、受熱ブロック2表面に対して鉛直方向に複数の側面視U字状ヒートパイプ3−1及び側面視L字状ヒートパイプ3−2(以下、ヒートパイプ3)を立設、固定する。これにより、ヒートパイプ3の底部表面と受熱ブロック2が当接し、ヒートパイプ3と受熱ブロック2が熱的に接続された状態となる。放熱フィン5、5´には、それぞれ、ヒートパイプ3のパイプの断面形状に対応した形状の孔部が、ヒートパイプ3の寸法とその配置に対応した所定位置に設けられている。全ての凹部にヒートパイプ3を立設、固定後、固定されたヒートパイプ3を、放熱フィン5、5´の孔部に嵌めて、放熱フィン5、5´をヒートパイプ3に取り付ける。このとき、風上側放熱フィン群部7を構成する放熱フィン5と風下側放熱フィン群部8を構成する放熱フィン5´とを交互に取り付けて積層部9を形成する。ヒートパイプ3の表面が放熱フィン5、5´の孔部内壁面と当接することで、ヒートパイプ3と放熱フィン5、5´とが熱的に接続される。このように、受熱ブロックへヒートパイプを設置し、設置されたヒートパイプに放熱フィンを取り付けることで本発明の冷却装置を製造する。
【0059】
次に、本発明の冷却装置の使用方法を説明する。ここでは、本発明の上記実施形態例に係る冷却装置1、21が、移動体(例えば鉄道車両)に搭載された電気部品(例えば電力変換装置)を冷却する使用方法を例にとって説明する。鉄道車両の床下面には外部と遮断された電力制御用の筐体が固定され、筐体内には電力変換装置等、電力を制御するための各種電気部品が格納されている。これら電気部品は稼動時に発熱し、そのまま発熱を放置すると昇温して正常な作動ができなくなるばかりか、最悪の場合には素子が熱により破壊される可能性がある。そこで、これら電気部品を冷却する必要がある。
【0060】
冷却装置1、21の受熱ブロック2、22裏面側に前記電気部品(以下、発熱素子という)を当接させて受熱ブロック2、22と熱的に接続する。発熱素子が格納された筐体内には、冷却装置1、21に冷却風を供給するためのファンが設置されている。このとき、ファンから送風された冷却風の流れ方向が、受熱ブロック2、22表面に対して平行方向となるように、ファンと冷却装置1、21を設置する。本発明の冷却装置は、特に、上記筐体内に格納された発熱素子を冷却する場合に、冷却装置の風下側部位にて効率よく冷却風の合流ができるので、確実に発熱素子の冷却を均一化できる。
【0061】
次に、本発明のその他の実施態様例について説明する。上記各実施形態例では、積層部及び第2放熱フィン群の放熱フィンピッチは等間隔であって、その風上側の放熱フィンピッチ及びその風下側の放熱フィンピッチよりも小さい間隔にて放熱フィンが取り付けられていたが、これに代えて、積層部及び第2放熱フィン群の放熱フィンピッチの一部を大きくしてもよい。すなわち、積層部の一部及び第2放熱フィン群の一部について、放熱フィンの間隔を積層部の他の部位及び第2放熱フィン群の他の部位より大きくしてもよい。このとき、大きくした放熱フィンの間隔は、その風上側の放熱フィンの間隔及びその風下側の放熱フィンの間隔と同じとしてもよい。これにより、積層部中及び第2放熱フィン群中での冷却風の流れがより円滑となり、発熱素子間の温度差をより均一化できる。
【0062】
例えば、風上側放熱フィン群部7の複数の放熱フィン5のうち、一部の放熱フィン5の積層部9に対応する部位について、第2放熱フィン群26−2の複数の第2放熱フィン25−2のうち、一部の第2放熱フィン25について、それぞれ、平面視凹形状、凸形状または凹凸の繰り返し形状に切り出し、凹部、凸部が冷却風の風下側を向くよう配置することで、積層部9及び第2放熱フィン群26−2の放熱フィンの一部の間隔を大きくすることができる。また、冷却装置21の場合には、第2放熱フィン26−2の一部をヒートパイプ23に取り付けないことで、一部の放熱フィンピッチを広げることができる。
【0063】
また、上記各実施形態例では、風上側の部位の放熱フィンピッチと風下側の部位の放熱フィンピッチとは同じであったが、これに代えて、上記部位間の放熱フィンピッチを相違させてもよい。
【0064】
また、上記各実施形態例では、ヒートパイプ群は冷却風の流れ方向に対して直交方向に複数列設けられ、ヒートパイプ群は冷却風の流れ方向に対して平行方向に交互に特定間隔ずらした状態としたが、ヒートパイプの配置関係はこれに限定されず、適宜選択可能である。例えば、上記配置関係に代えて、ヒートパイプ群は、冷却風の流れ方向に対して直交方向以外の所定の角度ずらした状態にて複数列並べてもよい。上記各実施形態例では、熱伝導部材として、ヒートパイプを用いたが、これに代えて、熱伝導性に優れた金属、例えば、25℃の熱伝導率が100W/(m・K)以上である、アルミニウム、銅などを用いてもよい。また、上記各実施形態例では、放熱フィン群において放熱フィンは等間隔に配置されていたが、放熱フィンの間隔に適宜変化を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
冷却風の風上側の部位と風下側の部位に発熱素子が実装されても、風下側の部位に実装された発熱素子を確実に冷却でき、各発熱素子間の温度が均一化されるので、多種類の発熱素子を冷却する冷却装置、例えば、鉄道車両に搭載された多数の発熱体を強制空冷で冷却する冷却装置などの分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0066】
1、21 冷却装置
2、22 受熱ブロック
3、23 ヒートパイプ
5、5´、25 放熱フィン
6、26 放熱フィン群
7 風上側放熱フィン群部
8 風下側放熱フィン群部
9 積層部
26−1 第1放熱フィン群
26−2 第2放熱フィン群
26−3 第3放熱フィン群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱素子に熱的に接続できる受熱ブロックと、前記受熱ブロックに熱的に接続された熱伝導部材と、前記熱伝導部材に熱的に接続された放熱フィンを複数有する放熱フィン群とを備え、前記受熱ブロックの表面に対して平行な方向に冷却風の流れが設定される冷却装置であって、
前記放熱フィン群のうち、前記冷却風の風上側の部位と風下側の部位との中間部が、前記冷却風の風上側の部位の放熱フィンピッチ及び前記冷却風の風下側の部位の放熱フィンピッチよりも小さい放熱フィンピッチを備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記風上側の部位の放熱フィンピッチと前記風下側の部位の放熱フィンピッチが、同じであることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記風上側の部位の放熱フィンピッチ及び前記風下側の部位の放熱フィンピッチが、前記中間部の放熱フィンピッチの整数倍であることを特徴とする請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
発熱素子に熱的に接続できる受熱ブロックと、前記受熱ブロックに熱的に接続された熱伝導部材と、前記熱伝導部材に熱的に接続された放熱フィンを複数有する放熱フィン群とを備え、前記受熱ブロックの表面に対して平行な方向に冷却風の流れが設定される冷却装置であって、
前記放熱フィン群が、前記冷却風の流れ方向に沿って複数縦列配置され、前記複数の放熱フィン群のうち、前記冷却風の風上側と風下側との中間部に配置された放熱フィン群が、前記冷却風の風上側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチ及び前記冷却風の風下側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチよりも小さい放熱フィンピッチを備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
前記風上側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチと前記風下側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチが、同じであることを特徴とする請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記風上側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチ及び前記風下側に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチが、前記中間部に配置された放熱フィン群の放熱フィンピッチの整数倍であることを特徴とする請求項4または5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記熱伝導部材が、ヒートパイプであることを特徴とする請求項1または4に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記ヒートパイプが、側面視U字状またはL字状であることを特徴とする請求項7に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−21140(P2013−21140A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153473(P2011−153473)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】