説明

処理装置、固体撮像素子および光通信システム

【課題】光通信を行う場合に、光送信部の周囲に設けられた画素部等の各部の冷却を最適化する。
【解決手段】固体撮像素子10側の平均発光レベル検出部20により光送信部14の平均発光レベルが検出される。平均発光レベル検出部20で検出された光送信部14の平均発光レベルは、処理部50側の光送信部発熱判断部60に供給される。光送信部発熱判断部60では、光送信部発熱判断部60から供給された平均発光レベルに基づいて光送信部14が発熱しているか否かが判断される。光送信部14が発熱していると判断されると、光送信部発熱判断部60から平均発光レベルに対応した光送信部14の温度Tが発熱抑制指示部80に供給される。発熱抑制指示部80では、光送信部14の温度Tをパラメータとして、熱伝播関数に基づいて光送信部14から画素部12等の各部のそれぞれに伝播する熱量が算出され、算出した熱量に基づいて各部の温度が推定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、固体撮像素子および光通信システムに関する。詳細には、光送信部の出力に応じた発熱情報を検出し、検出した発熱情報に基づいて光送信部が発熱しているか否かを判断し、光送信部が発熱したと判断された場合に、発熱情報に対応した光信号の温度情報をパラメータとする熱伝播関数を用いて各部に伝播する熱量や各部の温度を算出する処理装置等に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、データ伝送の大容量化・高速化に伴い、大容量・高速通信・低損失性に優れた光通信が広く利用されている。例えば、撮像装置などの電子機器においては、固体撮像素子により得られた画像信号を処理部に光無線通信により送信する電子機器が提案されている。この電子機器は、光信号を送信する光送信部と光送信部から送信された光信号を受信する光受信部とを備え、これらの機器間において光通信を行うものである。
【0003】
ここで、固体撮像素子の光通信部で発生した熱は、固体撮像素子内の画素部、A/D変換部および配線伝送路等に対して熱雑音を増加させてしまうおそれがある。この熱雑音の増加により、上記各部のS/N比(Signal to Noise ratio)の劣化や配線伝送路における伝送エラーを引き引き起こす場合がある。
【0004】
そこで、撮像装置などの電子機器内部において発生した熱による温度上昇を抑制する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、カメラヘッドに備えられた温度検出手段でカメラヘッドの内部温度を検出し、カメラ本体に備えられた温度判定手段により温度検出手段で検出した温度が所定温度を越える温度であるか否かを判定するカメラシステムが開示されている。このカメラシステムによれば、カメラヘッド内に備えられた撮像素子のノイズの影響が小さく抑えられて良好な画像を得ることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−140733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されるカメラシステムは、温度検出手段に設けられたカメラヘッドの内部の全体の温度を検出するものである。しかし、光送信部と光受信部との間で光通信を行う光通信システムにおいては、レーザダイオード等の発光素子が用いられるため、内部の温度に応じて、発光量の劣化が生じたり、発光していない等の問題が生じる場合がある。このような場合には、内部の全体温度を検出するよりも、特定の熱源(発光素子)の発熱を検出することが重要となってくる。
【0007】
さらには、個々の各部に伝播する熱は、光送信部と各部の距離や媒体等によって異なるものである。これに伴い、各部の温度も異なってくるため、内部全体を均一に冷却することが好ましくない場合もある。その結果、熱雑音を抑制できずに、各部のS/N比(Signal to Noise ratio)の劣化や伝送エラーを引き引き起こしてしまうという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光通信を行う場合に、光送信部の周辺に設けられた画素部等の各部の冷却を最適化できるようにした処理装置、固体撮像素子および光通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る処理装置は、上記課題を解決するものであり、固体撮像素子に設けられた光送信部から出力される光信号を受信する光受信部と、前記固体撮像素子から供給される前記光送信部の出力による発熱情報に基づいて前記光送信部が発熱しているか否かを判断する発熱判断部と、前記発熱判断部により前記光送信部が発熱したと判断された場合に、前記発熱判断部から供給される前記発熱情報に応じて予め設定された温度情報に基づき、前記光送信部で発生した熱の伝播を規定する熱伝播関数を用いて、前記固体撮像素子に設けられた光電変換部を含む各部における周辺熱情報を算出する発熱抑制指示部とを備えるものである。
【0010】
また本発明に係る固体撮像素子は、入射する光を電気信号に変換する光電変換部と、前記光電変換部により変換された前記電気信号を光信号に変換して出力する光送信部と、前記光送信部の出力による発熱情報を検出する発熱情報検出部と、前記発熱情報検出部から供給される前記発熱情報に基づいて前記光送信部が発熱しているか否かを判断する発熱判断部と、前記発熱判断部により前記光送信部が発熱したと判断された場合に、前記発熱判断部から供給される前記発熱情報に応じて予め設定された温度情報に基づき、前記光送信部で発生した熱の伝播を規定する熱伝播関数を用いて前記光電変換部を含む各部における周辺熱情報を算出する発熱抑制指示部とを備えるものである。
【0011】
また本発明に係る光通信システムは、入射する光を電気信号に変換する光電変換部と、前記光電変換部により変換された前記電気信号を光信号に変換して出力する光送信部と、前記光送信部の出力による発熱情報を検出する発熱情報検出部とを有する固体撮像素子と、前記固体撮像素子の前記光送信部から出力される前記光信号を受信する光受信部と、前記固体撮像素子の前記発熱情報検出部から供給される前記発熱情報に基づいて前記光送信部が発熱しているか否かを判断する発熱判断部と、前記発熱判断部により前記光送信部が発熱したと判断された場合に、前記発熱判断部から供給される前記発熱情報に応じて予め設定された温度情報に基づき、前記光送信部で発生した熱の伝播を規定する熱伝播関数を用いて、前記光電変換部を含む各部における周辺熱情報を算出する発熱抑制指示部とを有する処理装置とを備えるものである。
【0012】
本発明に係る光通信システムにおいては、固体撮像素子側の発熱情報検出部により、光送信部の出力に応じた発熱情報が検出される。発熱情報としては、例えば、光送信部の温度や光送信部から出力される光信号の発光レベル等が挙げられる。発熱情報検出部で検出された発熱情報は、処理装置側の光送信部発熱判断部に供給される。
【0013】
処理装置側の光送信部発熱判断部では、発熱情報部から供給された発熱情報に基づいて光送信部が発熱しているか否かが判断される。光送信部発熱判断部において光送信部が発熱していると判断されると、発熱情報に応じて予め設定された温度情報が光送信部発熱判断部から発熱抑制指示部に供給される。例えば、発熱情報検出部において発光レベルを検出する場合には、発光レベルに応じて予め保持された光送信部の温度が用いられる。また発熱情報検出部において光送信部の温度を検出する場合には、検出した光送信部の温度がそのまま用いられる。発熱抑制指示部では、光送信部発熱判断部から供給された温度情報をパラメータとして熱伝播関数を用いて、光電変換部を含む各部における温度や熱量などの周辺熱情報が算出される。すなわち、発熱抑制指示部では、光送信部と各部との間の距離や媒体、周辺温度等の条件によって各部に伝播する熱が異なるので、各部の距離等の条件を考慮して各部毎の熱量が算出される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光送信部の温度情報に基づいて熱伝播関数により、光送信部の周辺に設けられた各部の熱量や温度等の周辺熱情報を算出することができる。これにより、光送信部だけでなく、光送信部の周辺に設けられた各部の冷却についても最適化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信システム100Aの構成例を示すブロック図である。
【0016】
光通信システム100Aは、画像信号等を生成する固体撮像素子10と固体撮像素子10から光通信により送信された画像信号等に所定の処理を施す処理部(処理装置)50とを備えている。この光通信システム100Aは、固体撮像素子10側での平均発光レベルを検出し、処理部50側で検出された平均発光レベルを用いて固体撮像素子10が発熱しているかを判断するものである。
【0017】
固体撮像素子10は、光電変換部の一例である画素部12と光送信部14と発光レベル検出部の一例である平均発光レベル検出部20とを有している。画素部12は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサから構成され、図示しないレンズ等を介して入射された撮像光を画素毎に電気信号に変換して画像信号を生成する。画像信号は、例えば、増幅部で、ゲイン調整が行われ、CDS(Correlated Double Sampling circuit)によりノイズ除去される。ゲイン調整されたアナログの画像信号は、A/D変換部によりディジタルの画像信号に変換されて光送信部14に供給される。
【0018】
光送信部14は、例えばレーザダイオード(LD:Laser Diode)や面発光型半導体レーザアレイ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)から構成されている。光送信部14は、例えば、画像信号に応じた変調電流および図示しない制御部から駆動電流が供給されると、画素信号を光信号に変換して出力(発光)する。
【0019】
平均発光レベル検出部20は、光送信部14から出力される光信号を検出し、検出した光信号の発光レベル(光量)に基づいて光信号の平均発光レベルを算出する。平均発光レベル検出部20は、算出した平均発光レベルを処理部50側の光送信部発熱判断部60に供給する。
【0020】
処理部50は、光受信部52と光送信部発熱判断部60と制御部54とを有している。光受信部52は、例えばフォトダイオード(PD)から構成され、光送信部14から出力された光信号を受信して電気信号に変換する。電気信号に変換された画像信号は、後述するように所定の処理が施される。光送信部発熱判断部60は、発熱判断部の一例であり、固体撮像素子10側の平均発光レベル検出部20から供給される平均発光レベルに基づいて光送信部14が発熱しているか否かを判断する。
【0021】
制御部54は、例えば、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とから構成されている。CPUは、ROMに格納されているプログラムを実行して光通信システム100Aの固体撮像素子10および処理部50の動作を制御する。
【0022】
次に、平均発光レベル検出部20について説明する。図2は、平均発光レベル検出部20の構成例を示すブロック図である。平均発光レベル検出部20は、受光部201と増幅部202と積分部203とを有している。受光部201は、例えばモニタPDから構成され、光送信部14から出力された光信号を受光して電気信号に変換して増幅部202に供給する。
【0023】
積分部203は、増幅部202で増幅された光信号を積分して平滑化し、平滑化した光信号を増幅部202にフィードバックする。増幅部202は、受光部201から供給される光信号を積分部203からのフィードバック信号に基づいて増幅することにより、光送信部14で出力された光信号の平均発光レベルを出力する。
【0024】
図3は、増幅部202により増幅された光(入力)信号の周波数特性を示すグラフである。縦軸は光信号の出力値(dB)であり、横軸はその周波数である。本例では、光信号がF[Hz]以下の周波数を含む信号であり、図3に示した増幅部202の周波数特性である場合を想定する。図3に示すように、増幅部202により増幅される光信号は、領域At(平坦領域),領域Bt(こぶ領域)に比べると、領域Ct(リニア領域),領域Dt(減衰領域)の周波数成分は減衰している。
【0025】
増幅部202では増幅時に、例えば熱雑音(N(K))、1/fノイズ(N(1/f))、ランダムノイズ(Nrandom)が発生する。光信号に含まれる全体のノイズは以下の式(1)で与えられる。
【0026】
【数1】

【0027】
積分部203は、増幅部202から供給された光信号を平滑化し、光信号の周波数特性の安定化および光信号に含まれるランダムノイズの除去を行う。本願発明は増幅の特性に応じて積分時間を定義する。ランダムノイズの除去は以下の式を満たすように行われる。すなわち、式(2)のNrandomが最小(ゼロ)となるようなTに設定することでランダムノイズNrandomを除去することができる。
【0028】
【数2】

【0029】
また、光信号の出力波形の精度を上げるためには、出力波形に含まれるノイズを十分に抑制することができ、かつ、増幅部202の領域Aの周波数成分を十分に含むような積分時間を設定することが好ましい。ここで、ノイズとは、上述したランダムノイズNrandomを含む広義のノイズを意味しており、増幅部202以外、例えば画素部12やA/D変換部18で生じるノイズを含んでいる。ノイズを抑えるためには、積分時間Tを長く設定すれば良いが、あまり大きく設定すると光信号の変化が緩やかになり変化を検出することができなくなることが想定される。そこで、積分時間Tは、例えば図3で示した領域Aの周波数成分を含み、領域Btの周波数成分が抑えられる式(3)に示す時間Tに設定することが好ましい。
【0030】
【数3】

【0031】
したがって、上述したランダムノイズNrandomおよび広義のノイズを除去するためには、上記式(2)のランダムノイズNrandomを最小とすると共に、上記(3)を満たすような積分時間Tに設定する。そして、積分部203は、増幅部202から供給された光信号を上記積分時間Tにより積分を行い、積分により得られたフィードバック信号を増幅部202にフィードバックする。フィードバック信号は、F1[Hz]までの周波数成分を含むものとする。
【0032】
増幅部202では、積分部203からのフィードバック信号により、入力と出力の特性が等しくなるように動作するので、増幅部202から出力される光信号は、F1[Hz]の周波数成分を大きく含む信号になる。これにより、増幅部202からは、ランダムノイズNrandomや広義のノイズが除去された安定化した光信号が出力される。
【0033】
図4は、他の平均発光レベル検出部20Aの構成例を示す図である。平均発光レベル検出部20Aは、平均発光レベルの精度のさらなる向上を図るため、上述した受光部201、増幅部202および積分部203の他に、さらに演算部204を有している。
【0034】
図5は、増幅部202で増幅処理された光信号の出力波形を示すグラフである。縦軸は振幅を示し、横軸は時間を示す。演算部204では、増幅部202で増幅処理された光信号の出力波形に対して、互いに異なる複数の時間(t0〜tn)でのサンプル(出力)値(A0〜An)を利用して、光送信部14から出力される光信号の平均受光レベルを算出する。
【0035】
(第1の構成例)
図6は、演算部204の第1の構成例を示すブロック図である。演算部204は、複数の減算部501a,501b,501c,501dと比較・演算部502と重み付け部503,503b,503c,503dと加算部504とから構成されている。
【0036】
減算部501aは、現在の時間である時間t4の発光レベルA4から時間t3の発光レベルA3を減算して比較・演算部502に出力する。減算部501bは、時間t4の発光レベルA4から時間t2の発光レベルA2を減算して比較・演算部502に出力する。減算部501cは、時間t4の発光レベルA4から時間t1の発光レベルA1を減算して比較・演算部502に出力する。減算部501dは、時間t4の発光レベルA4から時間t0の発光レベルA0を減算して比較・演算部502に出力する。
【0037】
比較・演算部502は、減算部501a〜501dから入力される差分値に基づいて光信号の外形を推定し、推定した光信号の外形を重み付け部503a〜503dのそれぞれに出力する。
【0038】
重み付け部503aは、光信号の外形における時間A3のサンプル値に対して重み付け係数X4を重み付け演算して加算部504に出力する。重み付け部503bは、光信号の外形における時間A2のサンプル値に対して重み付け係数X3を重み付け演算して加算部504に出力する。重み付け部503cは、光信号の外形における時間A1のサンプル値に対して重み付け係数X2を重み付け演算して加算部504に出力する。重み付け部503dは、光信号の外形における時間A0のサンプル値に対して重み付け係数X1を重み付け演算して加算部504に出力する。
【0039】
加算部504は、重み付け部503a〜503dから出力される重み付けされた各サンプル値と時間t4のサンプル値を加算する。そして、例えば、加算値と平均発光レベルとが対応付けられたルックアップテーブルを参照することにより、加算値に対応した平均発光レベルが得られる。また、加算値そのものを平均発光レベルとしてもよい。
【0040】
(第2の構成例)
図7は、演算部204の第2の構成例を示すブロック図である。平均発光レベル検出部20Aは加算部504を有している。加算部504は、光送信部14から入力される、光信号の時間t0〜t4におけるサンプル値を取得して加算する。そして、加算部504は、上述したように、例えば加算値と平均発光レベルとが対応付けられたルックアップテーブルを参照することにより、加算値に対応した平均発光レベルを取得する。
【0041】
(第3の構成例)
図8は、演算部204の第3の構成例を示すブロック図である。平均発光レベル検出部20Aは、遅延器506a,506b,506cと、加算部504とから構成されている。増幅部202から出力された光信号の発光レベル(サンプル値(A(t)))は演算部204に入力され、各遅延器506a,506b,506cによって1サンプリングずつ遅延される。例えば、遅延器506aには時間t3におけるサンプル値A3が保持され、遅延器506bには時間t2におけるサンプル値A2が保持され、遅延器506cには時間t1におけるサンプル値A1が保持される。
【0042】
演算部204に時間t4におけるサンプル値A4が入力されると、加算部504にサンプル値A1〜A4が入力される。加算部504はサンプル値A1〜A4を加算する。そして、例えば加算値と平均発光レベルとが対応付けられたルックアップテーブルを参照することにより、加算値に対応した平均発光レベルを取得する。
【0043】
次に、光送信部発熱判断部60について説明する。まず、光送信部発熱判断部60を説明する前に、半導体レーザ(光送信部14に相当)の温度上昇と、半導体レーザの動作の関係について説明する。図9は、一般的な半導体レーザの温度上昇と半導体レーザの動作の関係を説明するための図である。式(i)は動作(駆動)電流Iopと光量Pとの関係を示す式であり、式(ii)は発振領域における温度上昇ΔTj(直流動作)を示す式であり、式(iii)は閾値電流と温度上昇ΔTjの関係を示す式である。
【0044】
半導体レーザに動作電流Iopが流れると、閾値電流Ithは一定であるので温度上昇ΔTjを引き起こす(式(ii)参照)。半導体レーザの温度上昇ΔTjが引き起こされると、閾値電流Ithは増加する(式(iii)参照)。閾値電流Ithが増加して外部微分量子光率ηdが低下すると、光量Pが小さくなる(式(i)参照)。一方、光量Pを保持するために動作電流Iopを増加すると、さらに温度上昇ΔTjを引き起こす。そこで、閾値電流Ithを小さく、外部微分量子効率ηdを高く、熱抵抗を小さくする工夫が必要となる。
【0045】
図10は光送信部発熱判断部60の構成例を示すブロック図である。光送信部発熱判断部60は、比較部601と演算部602とデータ保持部603と値参照部604とを有している。
【0046】
データ保持部603には、例えば、平均発光レベル検出部20から出力される単位時間毎の平均発光レベルA(t)が更新されて保持されると共に、光送信部14の発熱の可否を判断する際に用いられる閾値としての発熱時発光レベル閾値Athが保持される。発熱時発光レベル閾値Athとは、例えば、発熱により光送信部14等に悪影響を及ぼす温度を発熱温度としたときの光送信部14の発光レベルである。
【0047】
値参照部(ルックアップテーブル)604には、光送信部14を駆動する駆動電流と、駆動電流に応じた平均発光レベルおよび光送信部14の温度とが対応付けられて記憶される。図11は、光送信部14の駆動(順)電流と光出力の関係の一例を示す図である。縦軸は光信号の光量Po(光出力)を示し、横軸は順電流を示す。例えば、順電流Ifを80mAとした場合、光送信部14の温度が25℃のときには光出力Poが30mWであり、光送信部14の温度が60℃のときには光出力Poが15mWである。このように、同じ順電流Ifを光送信部14に供給したとしても、光送信部14の温度によって出力される光信号の光出力Poは変化する。すなわち、光送信部14の温度が上昇すると消光比、発光(受光)レベルは小さくなる。値参照部604には、このような関係を有するパラメータのそれぞれが互いに関連付けられて記憶される。
【0048】
図10に戻り、比較部601は、平均発光レベル検出部20から平均発光レベルA(t)を取得すると共に、データ保持部603に保持されている発熱時発光レベル閾値Athを参照する。比較部601は、取得した平均発光レベルA(t)と発熱時発光レベル閾値Athとを比較する。
【0049】
演算部602は、比較部601の比較結果に基づいて光送信部14が発熱しているか否かを判断し、判断結果を後述する発熱抑制指示部80(図1参照)に供給する。また、演算部602は、平均発光レベル検出部20から出力された平均発光レベルA(t)に対応した光送信部14の温度T(t)を値参照部604から取得して、後述する発熱抑制指示部80に供給する。温度T(t)は、画素部12等の各部の温度を取得(推定)する際に用いられる。
【0050】
次に、光送信部発熱判断部60の判断動作について説明する。
<第1の判断動作>
図12は光送信部発熱判断部60の第1の判断動作の一例を示すフローチャートである。図13に示す光送信部発熱判断部60に入力される平均発光レベルの時間変化を示すグラフを参照しながら説明する。ステップST10で比較部601は、平均発光レベル検出部20から出力される光信号の平均発光レベルA(t)を取得してステップST12に進む。
【0051】
ステップST12の比較部601は、データ保持部603から発熱時発光レベル閾値Athを読み出し、平均発光レベルA(t)と発熱時発光レベル閾値Athとを比較する。比較した結果、光信号の平均発光レベルA(t)が発熱時発光レベル閾値Athよりも小さいと判断した場合(図13の例えばP1参照)にはステップST16に進む。一方、光信号の平均発光レベルA(t)が発熱時発光レベル閾値Athよりも大きいと判断した場合(図13の例えばP2参照)にはステップST14に進む。
【0052】
ステップST16で演算部602は、光信号の平均発光レベルA(t)が発熱時発光レベル閾値Athよりも小さい場合、光送信部14が所定の温度、例えば光送信部14や周辺の各機能部に悪影響を与える温度以上になったと判断し、光送信部14が発熱していると判断する。
【0053】
一方、ステップST14で演算部602は、光信号の平均発光レベルA(t)が発熱時発光レベル閾値Athよりも大きい場合、時間tをインクリメントしてステップST10に戻る。ステップST10では時間(t+1)に対応した平均発光レベルA(t+1)を取得し、上述した一連の判断動作を繰り返し行う。
【0054】
<第2の判断動作>
図14は、光送信部発熱判断部60の第2の判断動作の一例を示すフローチャートである。ステップST20で比較部601は、平均発光レベル検出部20から出力される現在の時間における光信号の平均発光レベルA(t)を取得すると共に、データ保持部603から過去の時間における平均発光レベルA(t−1)を取得する。
【0055】
ステップST22で比較部601は、現在の平均発光レベルA(t)と過去の平均発光レベルA(t−1)との差分を算出して平均発光レベル変化量ΔA(t)を取得する。同様の処理により、例えば過去の平均発光レベル変化量ΔA(t−1)を取得する。
【0056】
ステップST24で比較部601は、平均発光レベル変化量ΔA(t)が0よりも小さいか否かを判断すると共に、平均発光レベル変化量ΔA(t−1)が0よりも小さいか否かを判断する。つまり、本例では、連続する時間において連続して平均発光レベル変化量ΔAが減少傾向にある場合には、光送信部14の温度が上昇していると判断する。比較部601は、平均発光レベル変化量ΔA(t)<0、かつ、平均発光レベル変化量ΔA(t−1)<0の条件を満たすと判断した場合にはステップST26に進み、上記条件を満たさないと判断した場合にはステップST28に進む。
【0057】
ステップST26で演算部602は、上記条件を満たすと判断した場合、光送信部14の温度が上昇しているとして、光送信部14が発熱していると判断する。一方、ステップST28で演算部602は、上記条件を満たさないと判断した場合、tをインクリメントしてステップST20に戻る。ステップST20では時間(t+1)に対応した平均発光レベル変化量A(t+1)を取得し、上述した一連の判断動作を繰り返し行う。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態によれば、平均発光レベル検出部20により光送信部14から出力された光信号の平均発光レベルを算出するので、算出した平均発光レベルの変化に基づいて光送信部14が発熱したかを判断することができる。これにより、発熱源を正確に特定することができ、例えば光送信部14に対して冷却処理を行う場合には、光送信部14の発熱に応じた最適な冷却処理を行うことができる。また、本実施の形態によれば、平均発光レベル検出部20を固体撮像素子10側に設けるので、平均発光レベル検出部20を光送信部14と同一のチップに集積することができる。
【0059】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る光通信システム100Bについて説明する。本実施の形態では、処理部50または固体撮像装置10に光波形歪検出部70を設けている点において上記第1の実施の形態と異なる。なお、上述した第1の実施の形態の光通信システム100Aと共通する構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0060】
図15(A)は、光波形歪検出部70を処理部50に設けた場合の光通信システム100Bの構成例を示すブロック図である。光通信システム100Bは、固体撮像素子10と処理部50とを備えている。固体撮像素子10は、画素部12と光送信部14とを有している。処理部50は、光受信部52と光波形歪検出部70と光送信部発熱判断部60と制御部54とを有している。光波形歪検出部70は、光受信部52で受光された光信号の光波形歪度を検出するものであり、検出した光波形歪度を光送信部発熱判断部60に供給する。光送信部発熱判断部60は、光波形歪検出部70から供給された光波形歪度に基づいて光送信部14が発熱しているか否かを判断する。
【0061】
また、光波形歪検出部70は固体撮像素子10側に設けることもできる。図15(B)は、光波形歪検出部70を固体撮像素子10に設けた場合の光通信システム100Bの構成例を示すブロック図である。固体撮像素子10は、画素部12と光送信部14と光波形歪検出部70とを有している。光波形歪検出部70は、光送信部14で発光された光信号の光波形歪度を検出し、検出した光波形歪度を処理部50の光送信部発熱判断部60に供給する。光送信部発熱判断部60は、光波形歪検出部70から供給された光波形歪度に基づいて光送信部14が発熱しているか否かを判断する。
【0062】
図16は、図15(A)および図15(B)に示した光波形歪検出部70の構成を示すブロック図である。光波形歪検出部70は、受光部701と増幅部702と演算部703と参照部704とを有している。受光部701は、例えばモニタPDから構成され、光送信部14から発光された光信号を電気信号に変換して増幅部702に出力する。増幅部702は、受光部201から出力された光信号を増幅して演算部703に供給する。
【0063】
参照部704は、遅延回路を有した電気回路や所定時間毎に更新されるルックアップテーブルにより構成され、ルックアップテーブルには例えば遅延を調整した光送信部14の入力駆動波形が保持されている。演算部703は、増幅部702から出力された光信号の出力波形の歪度を、参照部704の入力駆動波形を参照することで算出して光波形歪度を光送信部発熱判断部60に供給する。本例では、後述するように光信号の出力波形の歪度を3つの算出パターンにより算出している。光送信部発熱判断部60は、光送信部発熱判断部60により算出された光波形歪度に基づいて光送信部14が発熱したか否かを判断する。
【0064】
(第1の歪度算出方法)
まず、第1の歪度算出方法について説明する。第1の歪度算出方法は、光出力波形の立ち上がり、立下りの傾きに着目した方法である。図17(A)は入力駆動信号の入力駆動波形を示すグラフであり、図17(B),図17(C),図17(D)は、光送信部14の温度が変化したときに光受信部52で受信される各光出力波形を示すグラフである。図17(A)〜図17(D)の縦軸は波形の振幅を示し、横軸は時間を示す。なお、入力駆動波形に対して出力波形は遅延を生ずるが、遅延の位相に関しては省略して説明する。
【0065】
図17(B)〜図17(D)に示すように、同じ入力駆動信号により光送信部14を駆動した場合でも、光送信部14の温度変化に応じて、光受信部52で受信される光信号の光出力波形の立ち上がり(上昇)および立ち下がり(下降)時間が変化する。例えば、光送信部14の温度が図17(B)、図17(C)、図17(D)の順番で上昇したとすると、光信号の光出力波形の立ち上がりおよび立下りの傾きは徐々に小さくなっていく。つまり、温度の上昇に伴い、光信号の光出力波形の立ち上がりの傾きは、I1>I2>I3>I4の関係を満たしている。
【0066】
図18は光出力波形および入力駆動波形をモニタに表示したものであり、図18(A)は光送信部14の温度が5°の場合であり、図18(B)は光送信部14の温度が28°の場合である。ここでは、光波形出力として、光受信部52での波形を例にとり、現象の説明を行う。図18(A)と図18(B)とを比較すると、光送信部14の温度が高い図18(B)の光出力波形の傾きI6の方が、温度の低い図18(A)の光出力波形の傾きI5よりも小さくなっていることが分かる。
【0067】
そこで、第1の歪度算出方法では、光出力波形の立ち上がり、立下りの傾きに着目して出力波形の歪度から光送信部14が温度上昇しているか否かを判断する。具体的には、参照部704は、例えば、入力駆動信号の入力駆動波形の立ち上がりの傾きを基準傾き(閾値)として保持している。演算部703は、光信号の光出力波形の傾きと、参照部704から読み出した入力駆動波形の立ち上がりの基準傾きと比較し、比較結果を光送信部発熱判断部60に供給する。光送信部発熱判断部60は、光波形歪検出部70の演算部703から供給された比較結果に基づいて、傾きの差が所定の閾値を超えた場合(例えば小さい場合)には光送信部14が発熱していると判断する。そして、光送信部発熱判断部60は、判断結果に基づく制御信号を生成して制御部54(図15参照)に供給する。制御部54は、光送信部発熱判断部60から供給される制御信号に基づいて後述する冷却部の制御を行う。
【0068】
(第2の歪度算出方法)
次に、第2の歪度算出方法について説明する。第2の歪度算出方法は、光信号が出力されるまでの遅延時間(発振遅れ時間)の変化に着目した方法である。図19(A)は入力駆動信号の入力駆動波形を示すグラフであり、図19(B),図19(C),図19(D)は、光送信部14の温度が変化したときに光受信部52で受信される各光出力波形を示すグラフである。図19(A)〜図19(D)の縦軸は波形の振幅を示し、横軸は時間を示す。なお、入力駆動波形に対して出力波形は遅延を生ずるが、遅延の位相に関しては省略して説明する。
【0069】
光送信部14の温度と光送信部14から光信号が出力されるまでの発振時間とは以下の式(4)により規定される。
【0070】
【数4】

【0071】
ここで、tdは発振遅れ時間であり、τnは電子のライフ・タイムであり、Ipは変調電流であり、Ibはバイアス電流であり、Ithは閾値電流である。また、T0は特性温度であり、Tjは活性層の温度であり、Ith0は係数である。上記式(4)の関係から、活性層の温度Tjに対して、発振遅れ時間tdは一意に決まり、Tj=Fund(td)の関係が成立する。
【0072】
したがって、同じ入力駆動信号により光送信部14を駆動した場合でも、光送信部14の温度の変化により、光送信部14から光信号が出力されるまでの発振時間が変化する。ここで、入力駆動信号の発振時間と光信号の発振時間との差を発振遅れ時間Tlとする。例えば、光送信部14の温度が図19(B)、図19(C)、図19(D)の順番で上昇したとすると、温度上昇に応じて光信号の発振遅れ時間Tlが長くなっていく。つまり、温度上昇に伴い、光信号の発振遅れ時間T1はT1>T2>T3の関係を満たしている。
【0073】
図20は光出力波形および入力駆動波形をモニタに表示したものであり、図20(A)は光送信部14の温度が2°の場合であり、図20(B)は光送信部14の温度が30°の場合である。ここでは、光波形出力として、光受信部52での波形を例にとり、現象の説明を行う。図20(A)と図20(B)とを比較すると、光送信部14の温度が高い図20(B)の方が、発振遅れ時間が長くなっていることが分かる。
【0074】
そこで、第2の歪度算出方法では、出力波形の立ち上がりの発振遅れ時間に着目して光送信部14が温度上昇しているか否かを判断する。具体的には、参照部704は、入力駆動信号の入力駆動波形の発振遅れ時間を基準発振遅れ時間(閾値)として保持している。演算部703は、光信号の光出力波形の発振遅れ時間と、参照部704から読み出した入力駆動波形の基準発振遅れ時間と比較し、比較結果を光送信部発熱判断部60に供給する。光送信部発熱判断部60は、光波形歪検出部70から供給された比較結果に基づいて、例えば発振遅れ時間の差が所定の閾値を超えた場合には光送信部14が発熱していると判断する。
【0075】
(第3の歪度算出方法)
次に、第3の歪度算出方法について説明する。第3の歪度算出方法では、光信号の出力波形の光送信部14に入力される入力駆動信号の駆動波形に対する変形の度合い(波形歪度)に基づいて光送信部14が発熱しているか否かを判断する。光信号の出力波形の光送信部14に入力される入力駆動信号の駆動波形に対する変形の度合いを示す量(波形歪度)は、以下の式(5)により定義される。式(5)は入力駆動波形に対して、出力波形がどの程度波形形状が変化したかを定量化したものである。
【0076】
【数5】

【0077】
ここで、Txは、入力駆動波形(送信波形)であり、0から1の範囲にレベルが収まるように正規化されている。Rxは出力波形(受信波形)であり、0から1の範囲にレベルが収まるように正規化されている。光送信部14での処理遅延は補正してあるものとする。上記式(5)から分かるように、波形変形が大きいほど、波形歪度Dの値は大きくなる。つまり、光送信部14の温度が上昇すると、波形歪度Dの値は大きくなる。
【0078】
また、波形歪度Dは、図21に示すように、光送信部14の温度Tと関連付けて値参照部604のルックアップテーブルに保持される。このルックアップテーブルは、後述するように波形歪度Dから光送信部14の温度Tを取得し、取得した温度Tから冷却対象物を冷却する際の冷却駆動電圧値等を算出する際に用いられる。
【0079】
<第1の判断動作>
図22は、第3の歪度算出方法の第1の判断動作の一例を示すフローチャートである。図23に示す光送信部発熱判断部60に入力される波形歪度を示すグラフを参照しながら説明する。
【0080】
ステップST30で光送信部発熱判断部60の比較部601は、光波形歪検出部70の受光部701で受光した光信号の光出力波形と光波形歪検出部70の参照部704から参照した入力駆動信号の入力駆動波形とを用いて上記式(5)により演算することで得られた波形歪度D(t)を取得する。
【0081】
ステップST32で光送信部発熱判断部60の比較部601は、演算により得られた波形歪度D(t)と予め設定された閾値Dthとを比較し、波形歪度D(t)が閾値Dthよりも大きいと判断された場合(図23の例えばQ1参照)にはステップST34に進む。一方、波形歪度D(t)が閾値Dthよりも小さいと判断した場合(図13の例えばQ2参照)にはステップST36に進む。
【0082】
ステップST34で光送信部発熱判断部60の演算部602は、波形歪度D(t)が閾値Dthよりも大きいと判断した場合には、光送信部14が所定の温度、例えば光送信部14や周辺の各機能部に悪影響を与える温度以上になったと判断して光送信部14が発熱していると判断する。
【0083】
一方、ステップST36の光送信部発熱判断部60の演算部602は時間tをインクリメントしてステップST30に戻る。ステップST30では時間(t+1)に対応した波形歪度D(t+1)を取得する。
【0084】
<第2の判断動作>
図24は、光送信部発熱判断部60の第2の判断動作の一例を示すフローチャートである。ステップST40で光送信部発熱判断部60の比較部601は、光波形歪検出部70の受光部701で受光した光信号の光出力波形と光波形歪検出部70の参照部704から参照した入力駆動信号の入力駆動波形とを用いて上記式(5)により演算することで得られた波形歪度D(t)を取得すると共に、光送信部発熱判断部60のデータ保持部603から過去の波形歪度D(t−1)を取得する。
【0085】
ステップST42で光送信部発熱判断部60の比較部601は、現在の波形歪度D(t)と過去の波形歪度D(t−1)との差分を算出して波形歪度変化量ΔD(t)を取得する。同様にして、例えば過去の波形歪度変化量ΔD(t−1)を取得する。
【0086】
ステップST44で光送信部発熱判断部60の比較部601は、波形歪度ΔD(t)が0より大きいか否かを判断すると共に、波形歪度ΔD(t−1)が0より大きいか否かを判断する。つまり、本例では、連続する時間において連続して波形歪度Dが増加傾向にある場合には、光送信部14の温度が上昇していると判断する。光送信部発熱判断部60の比較部601は、波形歪度ΔD(t)>0、かつ、ΔD(t−1)>0であると判断した場合にはステップST46に進む。一方、演算部602は、波形歪度ΔD(t)>0、かつ、ΔD(t−1)>0でないと判断した場合にはステップST48に進む。
【0087】
ステップST46で光送信部発熱判断部60の演算部602は、波形歪度ΔD(t)>0、かつ、ΔD(t−1)>0であると判断した場合には、光送信部14の温度が上昇しているとして、光送信部14が発熱していると判断する。一方、ステップST48の光送信部発熱判断部60の演算部602は、波形歪度ΔD(t)>0、かつ、ΔD(t−1)>0でないと判断した場合には、tをインクリメントしてステップST40に戻る。ステップST40では時間(t+1)に対応した波形歪度D(t+1)を取得する。
【0088】
以上説明したように、本実施の形態によれば、光波形歪検出部70により入力駆動信号の入力駆動波形に対する光信号の光出力波形の歪度に基づいて光送信部14が発熱したかを判断することができる。これにより、発熱源を正確に特定することができ、例えば光送信部14に対して冷却処理を行う場合には、光送信部14の発熱に応じた最適な冷却処理を行うことができる。また、本実施の形態によれば、光波形歪検出部70を固体撮像素子10側に設けるので、光波形歪検出部70を光送信部14と同一のチップに集積することができる。なお、上述した第1〜第3の歪度算出方法については、図15(B)に示した光波形歪検出部70を固体撮像素子10側に設けた光通信システム100Bについても適用することができる。
【0089】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態に係る光通信システム100Cについて説明する。本実施の形態では、温度検出部22を設けている点において上記第1の実施の形態と異なる。なお、上述した第1の実施の形態の光通信システム100Aと共通する構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0090】
図25は、本発明の第3の実施の形態に係る光通信システム100Cの構成例を示すブロック図である。光通信システム100Cは、固体撮像素子10と処理部50とを備えている。固体撮像素子10は、画素部12と光送信部14と温度検出部22とを有している。処理部50は、光受信部52と光送信部発熱判断部60と制御部54とを有している。
【0091】
温度検出部22は、例えば熱センサにより構成され、光送信部14の近傍に配置され、光送信部14の温度を検出して処理部50側の光送信部発熱判断部60に供給する。光送信部発熱判断部60の構成は図10で示したブロック構成と同様の構成を有する。
【0092】
光送信部発熱判断部60は、固体撮像素子10側の温度検出部22から供給される平均温度に基づいて光送信部14が発熱しているか否かを判断する。光送信部発熱判断部60の値参照部604は、光送信部14が発熱しているか否かを判断する際に用いられる、光送信部14における許容最大温度T_opt_maxを保持する。
【0093】
次に、光送信部発熱判断部60の判断動作について説明する。判断動作としては、例えば光送信部許容最大温度を上回ったか否かにより発熱を判断する第1の判断動作と、光送信部14の温度が増加傾向にあるか否かにより発熱を判断する第2の判断動作とがある。
【0094】
(第1の判断動作)
図26は光送信部発熱判断部60の第1の判断動作の一例を示すフローチャートである。図27に示す光送信部発熱判断部60に入力される光送信部14の温度の時間変化を示すグラフを参照しながら説明する。ステップST100で比較部601は、温度検出部22により入力される光送信部14の温度T_optを取得してステップST102に進む。
【0095】
ステップST102の比較部601は、値参照部604から許容最大温度T_opt_maxを読み出し、温度T_optと許容最大温度T_opt_maxとを比較する。比較した結果、光送信部14の温度T_optが許容最大温度T_opt_maxよりも大きいと判断した場合(図27の例えばR1参照)にはステップST104に進む。一方、光送信部14の温度T_optが許容最大温度T_opt_maxよりも小さいと判断した場合(図27の例えばR2参照)にはステップST106に進む。
【0096】
ステップST104で演算部602は、温度T_optが許容最大温度T_opt_maxよりも大きい場合、光送信部14が所定の温度、例えば光送信部14や周辺の各機能部に悪影響を与える温度以上になったと判断し、光送信部14が発熱していると判断する。
【0097】
一方、ステップST106で演算部602は、温度T_optが許容最大温度T_opt_maxよりも小さい場合、時間tをインクリメントしてステップST100に戻る。ステップST100では時間(t+1)に対応した温度T_optを取得する。
【0098】
(第2の判断動作)
図28は、光送信部発熱判断部60の第2の判断動作の一例を示すフローチャートである。ステップST110で比較部601は、温度検出部22により入力される光送信部14の温度T_opt(t)を取得すると共に、データ保持部603から過去の温度T_opt(t−1)を取得する。
【0099】
ステップST112で演算部602は、現在の温度T_opt(t)と過去の温度T_opt(t−1)との差分を算出して温度変化量ΔT_opt(t)を取得する。同様にして、例えば過去の温度変化量ΔT_opt(t−1)を取得する。
【0100】
ステップST114で比較部601は、温度変化量ΔT_opt(t)が0よりも大きいか否かを判断すると共に、温度変化量ΔT_opt(t−1)が0よりも大きいか否かを判断する。つまり、本例では、連続する時間において連続して温度変化量が増加傾向にある場合には、光送信部14の温度が上昇していると判断する。演算部602は、温度変化量ΔT_opt(t)>0、かつ、温度変化量ΔT_opt(t−1)>0の条件を満たすと判断した場合にはステップST116に進み、上記条件を満たさないと判断した場合にはステップST118に進む。
【0101】
ステップST116で演算部602は、上記条件を満たすと判断した場合、光送信部14の温度が上昇しているとして、光送信部14が発熱していると判断する。
【0102】
一方、ステップST118で演算部602は、上記条件を満たさないと判断した場合、tをインクリメントしてステップST110に戻る。ステップST110では時間(t+1)に対応した温度T_opt(t+1)を取得する。このように、本実施の形態によっても、温度検出部22を光送信部14の周辺(近傍)に配置することで光送信部14が発熱したかを判断することができる。
【0103】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態に係る光通信システム100Dについて説明する。本実施の形態では、固体撮像素子10および処理部50に冷却制御部32,93および冷却部30,90を設けている点において上記第1の実施の形態と異なる。なお、上述した第1の実施の形態の光通信システム100Aと共通する構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0104】
図29は、本発明の第4の実施の形態に係る光通信システム100Dの構成例を示すブロック図である。光通信システム100Dは、固体撮像素子10と処理部50とを備えている。固体撮像素子10は、画素部12と光送信部14と平均発光レベル検出部20と冷却制御部32と冷却部30とを有している。処理部50は、光受信部52と光送信部発熱判断部60と発熱抑制指示部80と冷却制御部92と冷却部90とを有している。冷却制御部32、92および冷却部30,90は、固体撮像素子10および処理部50の何れか一方だけに設けても良い。
【0105】
発熱抑制指示部80は、光送信部発熱判断部60により光送信部14の発熱が判断されると、冷却制御部32,92に冷却対象物の冷却を指示する。発熱抑制指示部80は、図30に示すように、主として値参照部801と通知部802とから構成されている。値参照部801は、後述するように、冷却部30,90を駆動するための冷却駆動値を保持しており、例えば光送信部14の温度等に対応した冷却駆動電圧等を含む冷却駆動値を読み出して通知部802に供給する。通知部802は、値参照部801から供給された冷却駆動値を冷却制御部32,92に供給する。
【0106】
冷却制御部32,92は、発熱抑制指示部80の通知部802からの冷却駆動値に基づいて冷却部30,90を駆動する。冷却部30,90は、後述するようにペルチェ素子やファン等により構成され、冷却制御部32,93からの冷却駆動値に基づいて冷却対象物である光送信部14等の冷却を行う。
【0107】
図31は、光通信システム100Dの動作の一例を示すフローチャートである。ステップST50で光送信部発熱判断部60は、平均発光レベル検出部20から光送信部14から出力された光信号の平均発光レベルを取得する。ステップST52で光送信部発熱判断部60は、取得した平均発光レベルから光送信部14の発熱を判断し、判断結果を発熱抑制指示部80に通知する。
【0108】
ステップST54で発熱抑制指示部80は、光送信部発熱判断部60から供給される判断結果に基づいて冷却制御部92に冷却部90を冷却するように指示する。ステップST56で冷却制御部92は、発熱抑制指示部80からの指示に基づいて冷却部90の駆動を行う。これにより、発熱が確認された光送信部14等を冷却することができる。
【0109】
次に、光送信部14の熱の及ぼす要因について説明する。図32は、光送信部14の熱の及ぼす要因を説明するための図である。光送信部14で生じた熱は、例えば空間や、基板を通じて、各S/N劣化要因部(1)〜(4)に伝播する。本発明においては、光送信部14で生じた熱がS/N劣化要因部に与える影響を、光送信部14から各部へ伝播する熱量でモデル化し、その指標として熱伝播関数を定義する。この熱伝播関数を利用し、光送信部14の発熱により各S/N劣化要因部に伝播する熱量及び、各S/N劣化要因部の温度変化および温度を算出する。この熱伝播関数は、後述のように関数系あるいはルックアップテーブルの形式などで表現される。
【0110】
図33(A)および図33(B)は、熱伝播関数の入出力を説明するための図である。関数系により表現された熱伝播関数について説明する。図33(A)に示す熱伝播関数では、光送信部14と各S/N劣化要因部(1)〜(4)(処理ブロック)との距離r、周辺温度パラメータTa、周辺媒体パラメータSの入力により、各S/N劣化要因部(1)〜(4)に伝播される熱量を算出する。図33(B)に示す熱伝播関数では、距離r、周辺温度パラメータTa、周辺媒体パラメータSに加えて熱容量パラメータCの入力により、各S/N劣化要因部(1)〜(4)に伝播される熱量および伝播した熱により上昇した各S/N劣化要因部(1)〜(4)の温度を算出する。以下では、図33(A)に示す熱伝播関数を用いた例について説明し、その後、変形例について説明する。
【0111】
(図33(A)に示す熱伝播関数の説明)
周辺温度パラメータTaは、光送信部14と各S/N劣化要因部(1)〜(4)との間の温度分布、および固体撮像素子10内の温度分布などを示す。温度分布が得られない場合など、例えば、光送信部14の温度などを利用する。周辺媒体パラメータSは、光送信部14とS/N劣化要因部(1)〜(4)との間の空間や実装される基板などの媒体であり、媒体の熱伝播率なども考慮される。熱容量パラメータCは、各処理ブロックや媒体等の熱容量である。これらのパラメータr、T,S,Cは、例えば図30に示した値参照部801等に記憶され、各部に伝播した熱量を算出するときに値参照部801から読み出されて参照される。
【0112】
続けて、熱伝播関数について詳細に説明する。図34(A)は光送信部14から発生する熱がA/D変換部18へ伝播する経路を示す図であり、図34(B)はその変形例を示す図である。なお、以下では、光送信部14の熱が伝播する処理ブロックとしてA/D変換部18を一例として説明する。
【0113】
温度勾配がある場合、ある微小(単位)面積dAを通過する単位時間当たりの熱量dQは、温度勾配dT/drと、周辺の物質の形状、状態などで決まる周辺媒体パラメータS(ここでは、熱伝導率を想定)を利用して下記式(6)で記述される。
【0114】
【数6】

【0115】
なお、式(6)では、温度勾配に関する向きは考慮せず、大きさのみを考慮する。また、rは光送信部14とA/D変換部18の位置関係を示し、Tは周囲温度を示す。
【0116】
ここで、光送信部14からA/D変換部18へ熱が伝わる経路は、周囲の状態に応じて複数存在する。例えば、図34(A)に示すように、熱伝播経路としては、基板15内を伝わる経路Raや空間部を伝わる経路Rbが存在している。そのため、複数の経路Ra,Rb毎に物質の状態などが変化してくるので、各経路Ra,Rbに応じて周辺媒体パラメータSa,Sbも変化する。そこで、A/D変換部18を通過する熱量Qは、様々な経路を経てA/D変換部18に伝わる熱の総和を算出することで決定される。A/D変換部18を通過する熱量Qは、下記式(7)で記述される。
【0117】
【数7】

【0118】
ここで、dQLiは、経路Liを経て、単位面積dAを通過する単位時間当たりの熱量である。なお、上記式(7)は、単位時間当たりの熱量となるので、実際には時間方向の積分を行う。
【0119】
また、図34(B)に示すように、光送信部14とA/D変換部18との間の経路Raに、異なる別の物質Ma,Mbが介在している場合が考えられる。この場合、光送信部14からの熱は、周辺媒体パラメータSa,Sb,Saの順で伝播されてA/D変換部18に伝わる。そのため、A/D変換部18に伝播する熱量Qは、これらの周辺媒体パラメータSa,Sbを考慮して上記式(7)により算出する。
【0120】
このようにして、光送信部14、A/D変換部18等の周辺温度Tと位置関係rから、温度勾配を算出し、さらに、周辺媒体パラメータSを利用することで、各部の熱量Qを得ることができる。つまり、図33(A)に示すように、熱伝播関数は、周辺温度(周辺温度パラメータ)T,位置関係(距離)r,周辺媒体パラメータSを入力パラメータとすることで、A/D変換部18等の各部の熱量Qを得ることができる。
【0121】
(図33(B)に示す熱伝播関数の説明)
一方、上述した熱量Qと熱容量Cの関係は、下記式(8)で記述される。
【0122】
【数8】

【0123】
そこで、各部の温度Tは、例えばLUTに保持した各部の熱容量Cを参照し、上記式(8)を用いることで得ることができる。よって図33(B)に示すように、本発明における熱伝播関数は、パラメータr,T,Sに加え、熱容量Cを入力パラメータとすることで、熱量Qを得るとともに、各部の温度Tを得ることができる。さらに各部の温度Tが得ることにより、温度上昇ΔTも同時に得ることが可能になる。
【0124】
ところで、温度勾配を全ての経路において得ることが困難な場合には、熱源(光送信部14)に対して、最も熱の伝導効率が高い経路を選び、その経路における周辺媒体パラメータS、距離rを利用する。さらに、光送信部14の熱容量Cおよび温度Tを利用し、各部の熱量Qを下記の式(9)により算出する。式(9)ではA/D変換部18を例にする。
【0125】
【数9】

【0126】
Rsは、光送信部14とA/D変換部18との間において、熱の伝導効率が最も高い経路における、周辺媒体パラメータSと、その媒体を経由する経路における最短距離rにより決まる比例定数である。つまり、固体撮像素子10内の配置により一意に決定可能な値である。光送信部14の熱容量Cは、例えばルックアップテーブルに予め保持したものを用いることができる。同時に、比例定数Rsもルックアップテーブルに予め保持したものを用いることができる。
【0127】
(図38に示す変形例の説明)
以上、関数形の熱伝播関数について説明したが、式(9)に示すように、温度勾配を利用することなく簡易的に推定する場合、予め光送信部14の温度と、A/D変換部18の熱量とを対応付けたルックアップテーブルを作成することが可能になる。また、A/D変換部18の熱容量も予め知ることができるので、後述する図38のように、光送信部14の温度からA/D変換部18の温度を得ることが可能になる。これが、ルックアップテーブルの形式で実現される熱伝播関数となる。ここで、図38にあるように、光送信部14の温度だけでなく、温度変化も考慮することで、A/D変換部18の温度を精度よく得ることが可能になる。
【0128】
このようにして、光送信部14から生じた熱が、各S/N劣化要因部(1)〜(4)に与える影響、例えばここでは、各S/N劣化要因部に伝播する熱量を算出する。ここで、各S/N劣化要因部(1)〜(4)に伝播される熱量は、例えば、各S/N劣化要因部(1)〜(4)の温度上昇などを引き起こし、図32に示すように、画素部等の各S/N劣化要因部(1)〜(4)に対して悪影響を与え、例えばS/N比(Signal to Noise ratio)を劣化させる要因となる。そこで、発熱抑制指示部80では、上記各パラメータr、T,S,Cを熱伝播関数(1)〜(4)により演算を行い、各部の温度を算出することで、冷却を行う際の最適な冷却駆動値を算出して冷却制御部32,92に供給する。
【0129】
図35は、発熱抑制指示部80の動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、温度上昇ΔTiを参照し、各部の冷却駆動値を取得する例を示しているが、後述の図40にあるように各部の温度Tiおよび温度上昇ΔTiを利用し、冷却駆動値を取得することも可能である。ステップST60で、光送信部発熱判断部60から光送信部14の温度Tを取得する。光送信部14の温度Tは、平均発光レベル検出部20で取得した平均発光レベルに応じたものが、値参照部604のルックアップテーブル(図10参照)から読み出されて供給される。
【0130】
ステップST62で、上述した熱伝播関数により、固体撮像素子10の各部に伝播した熱量を算出する。つまり、光送信部14の温度Tを1つのパラメータとして熱伝播関数により得られた熱量から、光送信部14の周辺に配置された各部の温度を算出(推定)する。パラメータとしては、図33で示した距離r、周辺温度パラメータTa、周辺媒体パラメータSおよび熱容量パラメータCを用いることができる。
【0131】
ステップST64で、各部の熱容量を参照することで、各部の温度上昇ΔTiを取得する。例えば、各部の熱容量を例えばルックアップテーブル(LUT)に保持し、ステップST62で算出した各部の熱量を、LUTから参照した各部の熱容量で割ることで、各部の温度Tを算出する。そして、算出した各部の所定時間における温度Tの差分から、各部の温度上昇を算出する。
【0132】
ステップST66で、各部の温度上昇ΔTiを参照し、各部の冷却駆動値を取得する。つまり、各部では、光送信部14の温度変化に応じて、温度が急激に上昇している場合や緩やかに上昇している場合があるので、これらの状況を考慮して各部の冷却駆動値を算出する。冷却駆動値は、例えば光送信部14の温度上昇ΔTiに対応付けられて、ルックアップテーブルに保持される。
【0133】
ステップST68で、各部の冷却制御部32,92に冷却駆動値を通知する。冷却制御部32,92は、冷却駆動値に基づいて冷却部30,90を駆動させる。
【0134】
<第4の実施の形態の第1の詳細例>
次に、上述した各S/N劣化要因部(1)〜(4)象を、固体撮像素子10の画素部12、カラムCDS部13、A/D変換部18および配線伝送部19とした場合について説明する(図43参照)。なお、上述した第1〜第3の実施の形態の光通信システム100A〜100Dと共通する構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0135】
固体撮像素子10の光送信部14が発熱した場合、発生した熱は、光送信部14自体の他に、光送信部14の周辺に配置された画素部12やカラムCDS部13、A/D変換部18、配線伝送部19等の各部に対しても伝播されて悪影響を与える。そのため、この例では、光送信部14以外の画素部12等の各部に対しても冷却を行う。各部の冷却を行う際には、各部で生じる熱雑音が出力画像信号の劣化に与える影響の度合いに応じて、どの箇所をどの程度冷却するかを決定して冷却を行う。
【0136】
図36は、本発明の第4の実施の形態の第1の詳細例に係る光通信システム100Eの構成を示すブロック図である。光通信システム100Eは、固体撮像素子10と処理部50とを備えている。固体撮像素子10は、光送信部14と平均発光レベル検出部20と冷却制御部32と冷却部30a〜30eと冷却の制御対象となる画素部12、カラムCDS部13、A/D変換部18および配線伝送部19とを有している。処理部50は、光受信部52と光送信部発熱判断部60と発熱抑制指示部80と冷却制御部92と冷却部90とを有している。なお、本例では、平均発光レベル検出部20を用いた例を説明するが、平均発光レベル検出部20に代えて上述した温度検出部22を適用しても良い。
【0137】
固体撮像素子10側の冷却部30aは、画素部12の近傍または画素部12に接触して配置される。同様に、冷却部30bはカラムCDS部13の近傍またはカラムCDS部13に接触して配置され、冷却部30cはA/D変換部18の近傍またはA/D変換部18に接触して配置され、冷却部30dは配線伝送部19の近傍または配線伝送部19に接触して配置される。冷却部30eは、光送信部14の近傍または光送信部14に接触して配置される。冷却部30a〜30eのそれぞれは冷却制御部32に接続され、冷却制御部32から供給される冷却駆動値に基づいて画素部12等の各部の冷却を行う。
【0138】
処理部50側の冷却部90は、例えば固体撮像素子10側の画素部12等を冷却したり処理部50側の光受信部52を冷却したりする。冷却部90は冷却制御部92に接続され、冷却制御部92から供給される冷却駆動値に基づいて画素部12等の各部の冷却を行う。
【0139】
ここで、光送信部14での発熱と、上記画素部12等の各部との依存関係について説明する。図37は、光送信部14での発熱と各部との依存関係を説明するための図である。光送信部14からの熱は、各熱伝播関数(1)〜(4)に基づいて画素部12、カラムCDS部13、A/D変換部18、配線伝送部19等の各部に伝播される。
【0140】
熱伝播関数は、光送信部14から発生する熱が画素部12等の各部へ伝播される熱量を表す指標である。熱量は周辺熱情報の一例を構成する。熱伝播関数は、前述および図38に示すように、光送信部14の温度パラメータTopおよび温度変化パラメータΔTopの入力に基づいてルックアップテーブルを参照することで、画素部12等の各部の温度パラメータTiを出力する。
【0141】
次に、発熱抑制指示部80について説明する。図39は、発熱抑制指示部80の詳細な構成例を示すブロック図である。この例では、ルックアップテーブルを参照することで各部の温度を取得すると共に冷却駆動値を取得する。発熱抑制指示部80は、各部温度取得部803とLUT_CTMP804と各部冷却駆動値算出部805とLUT_TTMP806とLUT_DRV807と各部冷却駆動値取得部808と有している。なお、LUT_CTMP804、LUT_TTMP806およびLUT_DRV807は図30で示した発熱抑制指示部80の値参照部801に対応し、各部冷却駆動値取得部808は図30で示した発熱抑制指示部80の通知部802に対応している。
【0142】
図40(A)はLUT_CTMP804の構成の一例を示す図である。LUT_CTMP804は、第1の記憶部の一例であり、画素部12、カラムCDS部13、A/D変換部18および配線伝送部19の温度を推定する際に参照されるものである。LUT_CTMP804には、画素部12、カラムCDS部13、A/D変換部18および配線伝送部19のそれぞれの推定温度Tp,Tc,Ta,Ttが光送信部14の温度Tおよび温度変化ΔTに対応付けられて記憶されている。なお、画素部12、カラムCDS部13、A/D変換部18および配線伝送部19のそれぞれの推定温度Tp,Tc,Ta,Ttは、周辺熱情報の一例を構成する。
【0143】
図40(B)は画素部12のLUT_TTMP806の構成の一例を示す図である。LUT_TTMP806は各部の冷却駆動値を決定する際に参照されるものであり、LUT_TTMP806には画素部12、カラムCDS部13、A/D変換部18および配線伝送部19のそれぞれの許容温度TTMP_maxが記憶されている。許容温度TTMP_maxとは、温度Tbaseで発生するノイズNbaseに対して、異なる温度Tで発生するノイズを一定比Mmax[dB]以内の増大に抑えることができる許容温度である。本例では画素部12についてのみ示すが、他のカラムCDS部13等についても同様の構成を有する。
【0144】
図40(C)は画素部12のLUT_DRV807の構成の一例を示す図である。LUT_DRV807は、第2の記憶部の一例であり、画素部12等の各部の冷却駆動値を決定する際に参照されるものである。LUT_DRV807には、各部の温度Tpおよび温度変化ΔTpと各部の冷却の度合い(例えば冷却駆動値)が対応付けられて記憶される。本例では画素部12についてのみ示すが、他のカラムCDS部13等についても同様の構成を有する。
【0145】
続けて、発熱抑制指示部80の動作について説明する。図41は、発熱抑制指示部80の動作の一例を示すフローチャートである。ステップS70で各部温度取得部803は、光送信部発熱判断部60から光送信部14の温度T、温度変化ΔTを取得する。温度変化ΔTは、例えば取得した単位時間毎の温度Tから算出する。
【0146】
ステップS72で各部温度取得部803は、光送信部14の温度Tを利用してLUT_CTMP804を参照することで画素部12等の各部の温度Tp,Tc,Ta,Ttを取得する。ここで、各部冷却駆動値算出部805は、後述するように、各部の温度Tや温度上昇ΔTを利用し、LUT_TTMP806の許容温度TTMP_maxを参照することで、最適な冷却駆動値を算出する。
【0147】
ステップS74で各部冷却駆動値取得部808は、取得した各部の温度Tp,Tc,Ta,Ttから各部の温度変化ΔTp,ΔTc,ΔTa,ΔTtを算出する。各部の温度変化ΔTp,ΔTc,ΔTa,ΔTtは、例えば光送信部発熱判断部60から時間tと時間(t−1)における温度を取得することで算出できる。そして、各部の温度Tp,Tc,Ta,Tt、温度変化ΔTp,ΔTc,ΔTa,ΔTtを利用し、LUT_DRV807を参照することで冷却駆動値を取得する。
【0148】
ステップS76で各部冷却駆動値取得部808は、取得した冷却駆動値を、画素部12等の各部の冷却制御部32,92に設定する。これにより、各部の温度Tや温度上昇ΔTを考慮して、各部を冷却するための最適な駆動電圧値を取得することができる。
【0149】
(LUT_CTMPの作成方法)
次に、上述したLUT_CTMP804の作成方法について説明する。図42(A)は光送信部14、画素部12およびA/D変換部18の温度変化を示すグラフである。縦軸は各部の温度を示し、横軸は時間を示す。図42(B)は光送信部14、画素部12およびA/D変換部18は温度変化量(率)を示すグラフである。縦軸は各部の温度変化量を示し、横軸は時間を示す。
【0150】
光送信部14、画素部12およびA/D変換部18のそれぞれは駆動動作により発熱する。光送信部14の発熱により、上述した熱伝播関数に基づいて画素部12およびA/D変換部18の温度上昇が引き起こされる。また、光送信部14の発熱の温度変化によっても、各部の温度の上昇傾向は変化する。例えば、光送信部14が同じ温度であっても、光送信部14の発熱が飽和している場合(時間t2)と、発熱している最中(時間t1)とでは各部の温度は異なることになる。
【0151】
そこで、LUT_CTMP804を作成する際には、光送信部14の温度Tおよび温度変化ΔTに関連付けて画素部12およびA/D変換部18の温度Tを記憶する。光送信部14の温度Tや画素部12等の各部の温度Tは実測により取得しても良いし、光送信部14の温度Tを利用して上述した熱伝播関数で演算することで各部の温度Tを取得しても良い。これにより、LUT_CTMP804を参照することで、画素部12およびA/D変換部18の正確な温度を推定することができる。また、LUT_CTMP804の作成する際には、実測により複数の代表点において、各部の温度を測定し、代表点での値を利用して、代表点の間を補間するようにして各部の温度を算出することもできる。代表点の間を補間する際には、上述した関数系の熱伝播関数を利用して算出することもできる。
【0152】
(LUT_TTMPの作成方法)
次に、LUT_TTMP806の作成方法について説明する。図43は、固体撮像素子10の構成例を示す図である。以下では、図43に示すように、光送信部14の発熱が影響する画素部12、カラムCDS部13、A/D変換部18および配線伝送部19に分けて説明する。
【0153】
(1)画素部12について
光送信部14からの発熱は、画素部12に対して2つの悪影響を与えることが知られている。1つは(i)暗電流の増加であり、もう1つは(ii)FD(電荷増幅部)アンプのノイズの増加である。
【0154】
(i)暗電流
暗電流とは、フォトダイオードの中で光による光電変換以外に熱的に発生する電子・正孔による電流である。エネルギ・バンドの中ほどに位置する再生再結合からの暗電流は、Shockley-Read-hallモデルによると、温度が10℃上昇する毎に約2倍に増加することが分かっている。このShockley-Read-hallモデルにより、温度Tbaseに対してΔTだけ温度変化した場合の温度Tの暗電流Idarkは下記式(10)で与えられる。
【0155】
【数10】

ここで、Idark_thは温度Tbaseにおける暗電流である。
【0156】
許容温度TTMP_maxは、上記式(10)の暗電流Idark_thに対して、発生する暗電流がXmax[dB]まで増大する温度として決定される。許容温度TTMP_maxは下記式(11)で与えられる。
【0157】
【数11】

【0158】
このようにして、暗電流IdarkをXmax[dB]以下に抑えるための許容温度TTMP_maxを算出できる。算出した画素部12の許容温度TTMP_maxはLUT_TTMP806に保持される。
【0159】
(ii)FDアンプ
固体撮像素子10から光信号が得られる回路では必ずノイズが発生する。画素部12で光電変換されてFDアンプから出力される光信号の電圧は大きい方が、S/N比が高く取れるので、FDアンプでの変換効率が撮像の感度に重要となる。
【0160】
FDアンプでは以下の式(12)で記述される熱雑音が発生する。例えばMOSトランジスタのチャネル抵抗等により熱雑音が発生する。そのため、増幅後の電圧にノイズが入ってしまう。
【0161】
【数12】

【0162】
ここで、Vnは単位帯域幅あたりの熱雑音電圧であり、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度である。
【0163】
図44は、FDアンプに生じる熱雑音スペクトルを示すグラフである。縦軸はFDアンプの温度Tにおける平均2乗熱雑音電圧値であり、横軸はFDアンプの動作周波数である。
【0164】
FDアンプの温度が温度Tbaseから温度Tに上昇した場合、FDアンプの動作周波数がfopだとすると、(V−Vbase)×fopの面積分だけ(網掛領域)ノイズが増加したと考えることができる。
ここで、上記(12)式を下記式(13)で定義する。
【0165】
【数13】

【0166】
Aは比例定数である。このように上記式(13)を定義したとき、温度Tbaseでの熱雑音スペクトル(面積)Nbaseは下記式(14)で与えられる。
【0167】
【数14】

【0168】
温度Tでの熱雑音スペクトル(面積)Nは下記式(15)で与えられる。
【0169】
【数15】

【0170】
TTMP_maxは、発生する熱雑音スペクトルN(面積)が、温度Tbase時に発生する熱雑音スペクトルNbaseに比べXmax[dB]まで増加するときの温度として決定される。TTMP_maxは、下記式(16)で与えられる。
【0171】
【数16】

【0172】
このようにして、FDアンプにおける総熱雑音をXmax[dB]以下に抑えるための許容温度TTMP_maxを算出することができる。算出したFDアンプの許容温度TTMP_maxはLUT_TTMP806に保持される。なお、画素部12では、暗電流およびFDアンプに応じた許容温度TTMP_maxが得られるので、両方の許容温度TTMP_maxを考慮して冷却駆動値を算出しても良いし、何れか一方の許容温度TTMP_maxを用いて冷却駆動値を算出しても良い。
【0173】
(2)カラムCDS部13について
アナログ入力を電圧-電荷変換する場合KCT(リセット)ノイズが発生する。光送信部14で発生した熱が、サンプリング回路の容量に接続された導線、スイッチなどのもつ抵抗の熱雑音に加わり、キャパシタで電圧をサンプリングする際に熱雑音をそのままサンプリングしてしまう。熱雑音は下記の式(17)で与えられる。
【0174】
【数17】

kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度であり、Cは容量である。
【0175】
ここで、カラムCDS部13の温度Tbase時のkTCノイズをNbaseとし、温度T時におけるkTCノイズをNとしたとき、許容温度TTMP_maxは、
【0176】
NがNbaseに比べXmax[dB]まで増大するときの温度として決定される。許容温度TTMP_maxは以下の式(18)で与えられる。
【0177】
【数18】

【0178】
このようにして、カラムCDS部13のkTCノイズをXmax[dB]以下に抑えるための許容温度TTMP_maxを算出できる。算出したカラムCDS部13の許容温度TTMP_maxはLUT_TTMP806に保持される。
【0179】
(3)A/D変換部18について
光送信部14で発生した熱の影響で、A/D変換部18の内部雑音(熱雑音)が増加し、S/N比が劣化する。また、光送信部14で発生した熱の影響で、電圧のサンプリング時にkTCのノイズが増加する。熱雑音は下記の式(19)で与えられる。
【0180】
【数19】

Vnは単位帯域幅あたりの熱雑音電圧であり、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度である。
【0181】
またKTCノイズは下記式(20)で与えられる。
【0182】
【数20】

kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度であり、Cは容量である。
【0183】
ここで、上述した図44を参照しつつ、熱雑音に着目し、A/D変換部18の許容温度TTMP_maxを算出する方法について説明する。
【0184】
A/D変換部18の温度が温度Tbaseから温度Tに上昇した場合、A/D変換部18の動作周波数がfopだとすると、(V−Vbase)×fopの面積分だけ(網掛領域)ノイズが増加したと考えることができる。
ここで、上記式(19)を下記式(21)で定義する。
【0185】
【数21】

【0186】
Aは比例定数である。このように上記式(21)を定義したとき、温度Tbaseでの熱雑音スペクトル(面積)Nbaseは下記式(22)で与えられる。
【0187】
【数22】

【0188】
温度Tでの熱雑音スペクトル(面積)Nは下記式(23)で与えられる。
【0189】
【数23】

【0190】
TTMP_maxは、発生する熱雑音スペクトルN(面積)が、温度Tbase時に発生する熱雑音スペクトルNbaseに比べXmax[dB]まで増加するときの温度として決定される。TTMP_maxは、下記式(24)で与えられる。
【0191】
【数24】

【0192】
このようにして、A/D変換部18における総熱雑音をXmax[dB]以下に抑えるための許容温度TTMP_maxを算出することができる。算出したA/D変換部18の許容温度TTMP_maxはLUT_TTMP806に保持される。
【0193】
(3)配線伝送部19について
光送信部14で熱が発生すると、上述した画素部12等の処理ブロック以外の、配線経路においてもノイズの影響が大きくなる。例えば、導線の抵抗の熱雑音等に影響を与える。導線の抵抗の熱雑音は下記の式(25)で与えられる。
【0194】
【数25】

なお、kはボルツマン定数であり、Rは抵抗値であり、Tは絶対温度である。
【0195】
ここで、上述した図44を参照しつつ、配線伝送部19の許容温度TTMP_maxを算出する方法について説明する。
【0196】
配線伝送部19の温度が温度Tbaseから温度Tに上昇した場合、配線伝送部19の動作周波数がfopだとすると、(V−Vbase)×fopの面積分だけ(網掛領域)ノイズが増加したと考えることができる。
ここで、上記(25)式を下記式(26)で定義する。
【0197】
【数26】

【0198】
Aは比例定数である。このように上記式(26)を定義したとき、温度Tbaseでの熱雑音スペクトル(面積)Nbaseは下記式(27)で与えられる。
【0199】
【数27】

【0200】
温度Tでの熱雑音スペクトル(面積)Nは下記式(28)で与えられる。
【0201】
【数28】

【0202】
TTMP_maxは、発生する熱雑音スペクトルN(面積)が、温度Tbase時に発生する熱雑音スペクトルNbaseに比べXmax[dB]まで増加するときの温度として決定される。TTMP_maxは、下記式(29)で与えられる。
【0203】
【数29】

【0204】
このようにして、配線伝送部19における総熱雑音をXmax[dB]以下に抑えるための許容温度TTMP_maxを算出することができる。算出した配線伝送部19の許容温度TTMP_maxはLUT_TTMP806に保持される。
【0205】
(LUT_DRV807の作成方法)
次に、LUT_DRV807の作成方法について説明する。図45(A)は画素部12の温度の時間変化を示すグラフである。縦軸は温度を示し、横軸は時間を示す。図45(B)は画素部12の温度変化を示すグラフである。縦軸は温度変化を示し、横軸は時間を示す。図45(C)は画素部12を冷却する際の冷却駆動値の時間変化を示すグラフである。縦軸は冷却駆動値示し、横軸は時間を示す。
【0206】
LUT_DRV807の作成では、まず、画素部12の温度を実測により検出し、検出した温度から画素部12の温度変化を算出する。そして、画素部12の温度および温度変化を考慮して、画素部12の冷却駆動電圧値を算出する。これは、画素部12が急激に温度上昇した場合、画素部12の動作に著しい劣化を引き起こす可能性があるからである。
【0207】
そのため、画素部12の温度が同じであっても、緩やかに温度上昇している場合と、急激に温度上昇している場合とでは冷却の制御(冷却駆動電圧値)は異なる。例えば、時間t0時のように画素部12の温度上昇が急激な場合には、冷却の度合いが高くなるように冷却駆動電圧を大きく設定すると共に、急激な温度変化に対応すべく冷却駆動電圧をパルス的な立ち上がりを有するように設定する。このとき駆動電圧は、上述した画素部12の温度が上述した許容温度TTMP_maxに到達しないような大きさに設定される。
【0208】
一方、画素部12の温度上昇が緩やかである場合には、冷却駆動電圧を許容温度TTMP_maxに到達しない範囲において設定し、上昇した温度値に対応した冷却駆動電圧に設定される。また、温度変化が緩やかであるので比較的長い時間、冷却部に冷却駆動電圧が供給するように設定する。このようにして算出した冷却駆動電圧値Drvを、画素部12の温度および温度変化に対応付けてLUT_TTMPに保持する。なお、この冷却駆動電圧値の設定動作は、上述した関数系の熱伝播関数により求めた冷却駆動値に対しても適用することができる。
【0209】
また、光送信部14の発熱により、各部の温度上昇が引き起こされるので、各部の温度変化の代わりとして光送信部14の温度変化を利用することも可能である。または、各部の温度変化と、光送信部14の温度変化を使用してLUT_DRVを作成するようにしても良い。この場合には、光送信部14の温度および温度上昇を実測により測定し、測定した光送信部14の温度等のパラメータを上述した熱伝播関数を用いて算出することにより、光送信部14の周辺に位置する画素部12の温度を推定することもできる。
【0210】
<第4の実施の形態の第2の詳細例>
次に、本発明の第4の実施の形態の第2の詳細例に係る光通信システム100Fについて説明する。本実施の形態では、固体撮像素子10側の画素部12等の各部を冷却するための冷却部90a〜90dを処理部50側に設ける点において上記第4の実施の形態の第1の詳細例と異なる。なお、上述した第1〜第4の実施の形態の光通信システム100A〜100Eと共通する構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0211】
図46は、光通信システム100Fの構成例を示すブロック図である。光通信システム100Fは、固体撮像素子10と処理部50とを備えている。固体撮像素子10は、光送信部14と平均発光レベル検出部20と冷却制御部32と冷却部30と画素部12とカラムCDS部13とA/D変換部18と配線伝送部19とを有している。処理部50は、光受信部52と光送信部発熱判断部60と発熱抑制指示部80と冷却制御部92と冷却部90とを有している。
【0212】
処理部50の発熱抑制指示部80は、光送信部14が発熱したと判断されると、光送信部14やその周辺の画素部12等の各部を冷却するための冷却駆動値を冷却制御部32,92に供給する。冷却制御部92では、冷却駆動値に基づく駆動信号を生成して冷却部90a〜90dに供給する。冷却部90a〜90dは、固体撮像素子10側の画素部12、カラムCDS部13、A/D変換部18および配線伝送部19のそれぞれに対応して設けられ、冷却制御部92からの駆動信号に基づいて駆動する。このようにして、処理部50側から、固体撮像素子10側の画素部12、カラムCDS部13、A/D変換部18および配線伝送部19を冷却する。
【0213】
次に、上述した冷却制御部32,92および冷却部30,90の構成について説明する。図47は、冷却制御部32,92および冷却部30,90の構成例を示すブロック図である。冷却制御部92は、判断部921と冷却対象特性取得部922と冷却範囲設定部923と冷却量設定部924と冷却時間設定部925と吸収熱放出部926とを有している。
【0214】
判断部921には、発熱抑制指示部80から冷却駆動値が入力される。冷却駆動値は、上述した例では冷却量を設定する冷却駆動電圧としたが、この冷却駆動電圧の他に、冷却範囲、冷却時間等の情報を含んでいる。判断部921は、発熱抑制指示部80から供給される冷却駆動値を用いて、冷却対象特性取得部922から冷却対象の特性情報を参照することにより、冷却範囲や冷却量、冷却時間等を判断する。
【0215】
冷却範囲設定部923は、判断部921から供給される冷却駆動値に基づいて冷却範囲を設定し、冷却対象となる全てまたは一部の画素部12等の各部の冷却を行う。冷却量設定部924は、判断部921から供給される冷却駆動値に基づいて冷却量を設定し、冷却部90に設定した冷却量に基づく冷却駆動電圧を印加する。冷却時間設定部925は、判断部921から供給される冷却駆動値に基づいて冷却対象物の冷却時間を設定し、設定した冷却時間だけ冷却が行われるように冷却部90を制御する。なお、冷却範囲設定部923等は、冷却制御部32,92に設けても良いし、冷却部30,90に設けても良い。
【0216】
吸収熱放出部926は、固体撮像素子10や処理部50の各部の放出される熱を吸収し、吸収した熱を外部に放出する。これにより、固体撮像素子10や処理部50の各部の発熱を抑えることができる。
【0217】
<第4の実施の形態の第3の詳細例>
次に、本発明の第4の実施の形態の第3の詳細例に係る光通信システム100Gについて説明する。なお、上述した第1〜第4の実施の形態の光通信システム100A〜100Fと共通する構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0218】
図48は、光通信システム100Gの構成例を示すブロック図である。処理部50は、固体撮像素子10側の画素部12等の各部を冷却するための冷却部90を備えている。冷却部90は、1個で構成され、冷却制御部92から供給される冷却駆動電圧により駆動し、固体撮像素子10側の画素部12等の各部を冷却する。この冷却部90は、固体撮像素子10側の光送信部14やこの発熱の影響を受ける各部の全てを冷却することもできるし、特定の各部のみを冷却することもできる。
【0219】
次に、上述した冷却部30,90の具体的な構成例について説明する。冷却部30,90は、処理部50側から固体撮像素子10内の画素部12、カラムCDS部13、A/D変換部18および配線伝送部19を冷却するものと(図48参照)、固体撮像素子10内において画素部12の各部を冷却するものとに分けられる(図36参照)。
【0220】
処理部50側から固体撮像素子10を冷却するものとしては、例えば風冷式のファンや空冷式の乾燥空気の放射等が挙げられる。固体撮像素子10内から冷却するものとしては、例えば駆動式のペルチェ素子や液冷式の水の循環等が挙げられる。また、固体撮像素子10内に自然冷却の構造を有したヒートシンク、ヒートパイプ等を設置しても良い。冷却部30,90を制御する冷却制御部32,92、冷却部30,90を駆動する駆動部、冷却部30,90に電力を供給する電力供給部は固体撮像素子10側、処理部50側のいずれに設けることもできる。なお、以下の説明では、冷却制御部32,92、駆動部および電力供給部を便宜上、制御部920と呼ぶ。
【0221】
図49は、固体撮像素子10側に冷却部30を設け、冷却部30としてペルチェ素子300a〜300dを用いた例を示す図である。ペルチェ素子300a〜300dは、冷却対象となる冷却箇所A,B,C,Dのそれぞれに接触または近傍に配置される。ペルチェ素子300a〜300dのそれぞれには制御部920が接続され、制御部920から供給される駆動信号および電力により駆動される。これにより、ペルチェ素子300a〜300dは、冷却箇所A,B,C,Dからの熱を吸熱して冷却する。なお、冷却箇所A,B,C,Dには、上述した画素部12やカラムCDS部13、A/D変換部18、配線伝送部19等を配置しても良い。
【0222】
図50は、固体撮像素子10側に冷却部30を設け、冷却部30を水路302とバルブ303a,303b,303cにより構成した例を示す図である。冷却部30は、複数の水路302と、水路302中に設けられた水路を流れる水の流れを制御するバルブ303303a〜303cとから構成されている。複数の水路302は、水や不凍液などの液体が内部を流れる管体からなり、冷却箇所A,B,Cの近傍または冷却箇所A,B,C上を通過するように分岐して配置されている。バルブ303a〜303cのそれぞれは制御部920に接続され、制御部920から供給される制御信号や電力等により開閉動作が制御される。また冷却箇所、冷却温度に応じて水路302に流す水量を調整することもできる。
【0223】
図51は、バルブ303a〜303cの開閉制御の一例を示す図である。図51に示すように、冷却箇所Aの冷却を行う場合、制御部920は、バルブ303aを開くための制御信号、電力、駆動信号をバルブ303aに供給する。これにより、バルブ303aは開き(オン)、バルブ303bおよびバルブ303cは閉じた状態(オフ)となり、水路302aに流量Vaの液体が流れる。その結果、水路302a内部を流れる流量Vaの液体によって冷却箇所Aが冷却される。
【0224】
冷却箇所Bの冷却を行う場合、制御部920は、バルブ303bを開くための制御信号等をバルブ303bに供給する。これにより、バルブ303bは開き(オン)、バルブ303aおよびバルブ303cは閉じた状態(オフ)となり、水路302bに流量Vbの液体が流れる。その結果、水路302b内部を流れる流量Vbの液体によって冷却箇所Bが冷却される。
【0225】
冷却箇所Cの冷却を行う場合、制御部920は、バルブ303cを開くための制御信号等をバルブ303cに供給する。これにより、バルブ303cは開き(オン)、バルブ303aおよびバルブ303bは閉じた状態(オフ)となり、水路302cに流量Vcの液体が流れる。その結果、水路302c内部を流れる流量Vcの液体によって冷却箇所Cが冷却される。
【0226】
図52は、処理部50側に冷却部90を設け、冷却部90としてペルチェ素子900を用いた例を示す図である。冷却部90は、ペルチェ素子900と駆動アーム901とから構成されている。駆動アーム901は、その長手方向に伸縮可能であると共に、駆動アーム901の基端部が駆動アーム901を駆動する制御部920に回動可能に連結されている。ペルチェ素子900は、駆動アーム901の先端部に固定して取り付けられ、駆動アーム901内部に敷設される制御線により制御部920と電気的に接続されている。
【0227】
駆動アーム901は、その基端部を支点として冷却箇所A,B,Cの全てをカバーする範囲で回動し、その先端部のペルチェ素子900を冷却対象の冷却箇所の位置まで移動させる。ペルチェ素子900は、制御部920から供給された駆動信号等に基づいて駆動し、冷却箇所A,B,Cの熱を吸熱することで冷却を行う。また、予め各冷却箇所A,B,Cとの距離をメモリに記憶しておき、各冷却箇所A,B,Cの距離に応じて駆動アーム901を伸縮させることもできる。
【0228】
図53は、処理部50側に冷却部90を設け、冷却部90を空冷銃902により構成した例を示す図である。冷却部90は、乾燥空気空冷銃や冷却ガス空冷銃等の空冷銃902により構成されている。空冷銃902は、所定の範囲内で可動するように制御部920に取り付けられ、各冷却箇所A,B,Cに向けて乾燥空気や冷却ガス等の風Wを放出可能になっている。空冷銃902は、特定の冷却箇所A,B,Cを冷却するような構成としても良いし、冷却箇所A,B,Cの全体を一度に冷却するような構成としても良い。
【0229】
以上説明したように、本実施の形態によれば、光送信部14の発光レベルに基づいて光送信部14の周囲に配置された画素部12等の各部の温度を推定することができる。これにより、光送信部14だけでなく、画素部12等の各部の冷却も最適化することができる。その結果、光送信部14の発熱による各部のS/N比の劣化を抑えることができ、画像信号に生じるノイズを低減することができる。
【0230】
また、上述したように、冷却対象となる各部が実装される固体撮像素子10とは異なる処理部50に冷却部90を設けた場合には、冷却部90および冷却制御部92と固体撮像素子10との配置関係の制約が緩和され、設計の自由度をより向上させることができる。
【0231】
<第5の実施の形態>
次に、本発明の第5の実施の形態に係る光通信システム100Hについて説明する。本実施の形態では、処理部50に光信号の平均受光レベルを検出する平均受光レベル検出部72を設けている点において上記第1の実施の形態と異なる。なお、上述した第1〜第4の実施の形態の光通信システム100A〜100Gと共通する構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0232】
図54は、本発明の第5の実施の形態に係る光通信システム100Hの構成例を示すブロック図である。光通信システム100Hは、固体撮像素子10と処理部50とを備えている。固体撮像素子10は、画素部12と光送信部14と冷却制御部32と冷却部30とを有している。処理部50は、光受信部52と平均受光レベル検出部72と光送信部発熱判断部60と発熱抑制指示部80と冷却制御部92と冷却部90とを有している。冷却制御部32、92および冷却部30,90は、固体撮像素子10および処理部50の何れか一方だけに設けても良い。
【0233】
図55は、平均受光レベル検出部72の構成例を示すブロック図である。平均受光レベル検出部72は、増幅部721と積分部722と演算部723とを有している。増幅部721には、光受信部52で受信された光信号が入力される。増幅部721は、後述する積分部722から供給されるフィードバック信号に基づいて光信号を増幅して積分部722および演算部723に供給する。積分部722は、増幅部721で増幅された光信号を平滑化(安定化)およびノイズ除去して増幅部721にフィードバックする。演算部723は、増幅部721から出力された光信号から平均受光レベルを算出して光送信部発熱判断部60に供給する。増幅、積分および演算処理では、上述した平均発光レベル検出部20で説明した処理と同様の処理が行われる(図3〜図8参照)。
【0234】
図56は平均受光レベル検出部72の他の構成例を示す図であり、図56(A)は平均受光レベル検出部72に用いられる受光部の構成であり、図56(B)は光受信部52に用いられる受光部の構成を示す図である。
【0235】
平均受光レベル検出部72には、受光素子面積が大きく、かつ、応答速度の遅いモニタPDを利用することもできる。つまり、通信に使用される光受信部52の受光部とは別に、モニタPDを配置することで、光受信部52で受光した平均受光レベルを取得することが可能になる。
【0236】
図57は、光通信システム100Hの動作の一例を示すフローチャートである。ステップST80で光送信部発熱判断部60は、平均受光レベル検出部72から光送信部14から送信される光信号の平均受光レベルを取得する。ステップST82で光送信部発熱判断部60は、取得した平均受光レベルから光送信部14の発熱を判断し、判断結果を発熱抑制指示部80に通知する。
【0237】
ステップST84で発熱抑制指示部80は、光送信部発熱判断部60から供給される判断結果に基づいて各部を冷却するための冷却駆動値を供給し、冷却制御部92に冷却部90を冷却するように指示する。冷却駆動値は、上述したようなルックアップテーブルを参照することで取得できる。ステップST86で冷却制御部92は、発熱抑制指示部80からの指示(冷却駆動値)に基づいて冷却部90の駆動を行う。これにより、発熱が確認された光送信部14等を冷却することができる。
【0238】
<第6の実施の形態>
次に、本発明の第6の実施の形態に係る光通信システム100Iについて説明する。本実施の形態では、上記第5の実施の形態の平均受光レベル検出部72に加え、さらに光出力比較部40を設けている点において上記第5の実施の形態と異なる。なお、上述した第1〜第5の実施の形態の光通信システム100A〜100Hと共通する構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0239】
図58は、本発明の第6の実施の形態に係る光通信システム100Iの構成の一例を示すブロック図である。光通信システム100Iは、固体撮像素子10と処理部50とを備えている。固体撮像素子10は、画素部12と光送信部14と光出力比較部40と冷却制御部32と冷却部30とを有している。処理部50は、光受信部52と平均受光レベル検出部72と光送信部発熱判断部60と発熱抑制指示部80と冷却制御部92と冷却部90とを有している。
【0240】
図59は、光出力比較部40の構成を示すブロック図である。光出力比較部40は、受光部401と比較部402と基準値保持部403と基準値設定部404と値参照部405と有している。受光部401は、例えばモニタPDから構成され、光送信部14から出力される光信号を検出し、検出した光信号に応じた光モニタ電流を電圧V(t)に変換する。変換された電圧V(t)は比較部402に出力される。
【0241】
値参照部405は、例えば、光送信部14を構成する発光部の駆動に必要なパラメータである、変調電流量およびバイアス電流量等が保持されるルックアップテーブルを有する。変調電流量およびバイアス電流量等のパラメータは、光送信部14(発光部)の駆動に合わせて所定時間毎に逐次更新される。
【0242】
基準値設定部404は、値参照部405のルックアップテーブルから変調電流量およびバイアス電流量を参照し、基準電圧値Vrefを算出して基準値保持部403に供給する。基準電圧値Vrefは、光送信部14の駆動に応じてルックアップテーブルに保持される変調電流等から算出される、許容最高温度時に光送信部14から想定される光出力(光モニタ電流)に応じたものである。基準値保持部403は、基準値設定部404から供給された基準電圧値Vrefを保持する。
【0243】
比較部402は、所定時間t毎に受光部401から電圧V(t)を取得すると共に、基準値保持部403から基準電圧値Vrefを取得し、電圧V(t)と基準電圧値Vrefとを比較し、比較結果を処理部50側の光送信部発熱判断部60に供給する。
【0244】
図60は、光通信システム100の光出力比較部40の動作の一例を示すフローチャートである。ステップST90で比較部402は、動作時の光送信部14の光出力に応じた光モニタ電流を変換した電圧V(t)を取得すると共に、基準値保持部403から電圧V(t)に対応した基準電圧値Vrefを取得する。
【0245】
ステップST92で比較部402は、電圧V(t)と基準電圧値Vrefとを比較する。比較部402は、電圧V(t)が基準電圧値Vrefよりも大きいと判断した場合にはステップST94に進み、電圧V(t)が基準電圧値Vrefよりも小さいと判断した場合にはステップST96に進む。ステップST94で比較部402は、電圧V(t)が基準電圧値Vrefよりも大きい場合には、ローレベルに対応した電圧レベルを生成して光送信部発熱判断部60に出力してステップST98に進む。ステップST98で比較部402は、時間tをインクリメントしてステップST90に戻る。ステップST90では、時間(t+1)における電圧V(t+1)が取得される。
【0246】
一方、ステップST96で比較部402は、電圧V(t)が基準電圧値Vrefよりも小さい場合には、ハイレベルに対応した電圧レベルを生成して光送信部発熱判断部60に出力する。ステップST98で比較部402は、時間tをインクリメントしてステップST90に戻り、ステップST90では時間(t+1)における電圧V(t+1)が取得される。このような一連の動作が繰り返され、得られた電圧レベルが光送信部発熱判断部60に供給される。光送信部発熱判断部60では、光出力比較部40から供給される電圧レベルに応じた出力値(ハイレベルまたはローレベル)に基づいて光送信部14の発熱の可否を判断する。
【0247】
図61は、光送信部発熱判断部60に入力される光出力比較部40の出力値の時間変化の一例を示すグラフである。縦軸は光出力比較部40により検出された光信号の電圧値を示し、横軸は時間を示す。グラフ中の点線は、光送信部14の発熱を判断するための閾値電圧値Vthである。
【0248】
上述した光出力比較部40の判断動作により、出力時間tの経過前まではローレベルの出力値が光出力比較部40から供給され、出力値が閾値電圧値Vth未満で推移している。時間txを過ぎるとハイレベルの出力値が光出力比較部40から供給され、出力値が閾値電圧値Vthを超えた状態で推移している。光送信部発熱判断部60は、光信号の電圧V(t)が閾値電圧値Vthを越えたときをトリガーとして、光送信部14が発熱していると判断する。
【0249】
以上説明したように、本実施の形態によれば、平均受光レベル検出部72により光送信部14から出力された光信号の平均受光レベルを算出するので、算出した平均受光レベルの変化に基づいて光送信部14が発熱したかを判断することができる。これにより、発熱源を正確に特定することができ、例えば光送信部14に対して冷却処理を行う場合には、光送信部14の発熱に応じた最適な冷却処理を行うことができる。
【0250】
また本実施の形態では、上述した平均発光レベルや光波形歪に加え、上述した光出力比較部40からの出力を利用することで、光送信部14における発熱検出の精度を向上させることができる。なお、光出力比較部40からの出力値にのみ光送信部14の発熱を判断することもできる。
【0251】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述した実施の形態では、光送信部発熱判断部60および発熱抑制指示部80を処理部50側に設けたが、固体撮像素子10側に光送信部発熱判断部60および発熱抑制指示部80を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0252】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光通信システムの構成例を示す図である。
【図2】平均発光レベル検出部の構成例を示すブロック図である。
【図3】増幅部で増幅された光信号の周波数特性を示す図である。
【図4】他の平均発光レベル検出部の構成例を示す図である。
【図5】増幅部で増幅処理された光信号の出力波形を示すグラフである。
【図6】演算部の第1の構成例を示すブロック図である。
【図7】演算部の第2の構成例を示すブロック図である。
【図8】演算部の第3の構成例を示すブロック図である。
【図9】半導体レーザの温度上昇と半導体レーザの動作の関係を説明するための図である。
【図10】光送信部発熱判断部の構成例を示すブロック図である。
【図11】光送信部の駆動電流と光出力の関係の一例を示す図である。
【図12】光送信部発熱判断部の第1の判断動作の一例を示すフローチャートである。
【図13】光送信部発熱判断部に入力される平均発光レベルの時間変化を示す図である。
【図14】光送信部発熱判断部の第2の判断動作の一例を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る光通信システムの構成例を示す図である。
【図16】光波形歪検出部の構成例を示すブロック図である。
【図17】入力駆動信号の入力駆動波形と光送信部からの光出力波形とを比較した図である(第1の歪度算出方法)。
【図18】光送信部で観測した光出力波形および入力駆動波形のモニタ表示例である。
【図19】入力駆動信号の入力駆動波形と光送信部からの光出力波形とを比較した図である(第2の歪度算出方法)。
【図20】入力駆動信号の入力駆動波形と光送信部からの光出力波形とを比較した図である。
【図21】波形歪度と光送信部の温度と対応付けて保持する値参照部の構成例である。
【図22】第3の歪度算出方法の第1の判断動作の一例を示すフローチャートである。
【図23】光送信部発熱判断部に入力される平均発光レベルの時間変化を示す図である。
【図24】光送信部発熱判断部の第2の判断動作の一例を示すフローチャートである。
【図25】本発明の第3の実施の形態に係る光通信システムの構成例を示すブロック図である。
【図26】光送信部発熱判断部の第1の判断動作の一例を示すフローチャートである。
【図27】光送信部発熱判断部に入力される光送信部の温度の時間変化を示す図である。
【図28】光送信部発熱判断部の第2の判断動作の一例を示すフローチャートである。
【図29】本発明の第4の実施の形態に係る光通信システムの構成例を示すブロック図である。
【図30】発熱抑制指示部の構成例を示すブロック図である。
【図31】光通信システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図32】光送信部の熱の及ぼす要因を説明するための図である。
【図33】熱伝播関数の構成例を示すブロック図である。
【図34】熱伝播関数を説明するための図である。
【図35】発熱抑制指示部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図36】第4の実施の形態の第1の詳細例に係る光通信システムの構成例を示すブロック図である。
【図37】光送信部における発熱と各部との依存関係を説明するための図である。
【図38】熱伝播関数の構成例を示す図である。
【図39】発熱抑制指示部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図40】LUT_CTMP、LUT_TTMPおよびLUT_DRVの構成例を示す図である。
【図41】発熱抑制指示部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図42】光送信部等の各部の温度変化と、その温度変化率を示す図である。
【図43】光送信部の発熱が影響する画素部等の各部の構成例を示す図である。
【図44】FDアンプに生じる熱雑音スペクトルを示す図である。
【図45】画素部の温度の時間変化、温度変化率、および冷却駆動値を示す図である。
【図46】第3の実施の形態の第2の詳細例に係る光通信システムの構成例を示す図である。
【図47】冷却制御部および冷却部の構成例を示すブロック図である。
【図48】第3の実施の形態の第3の詳細例に係る光通信システムの構成例を示す図である。
【図49】ペルチェ素子により構成した場合の光通信システムの構成例を示す図である。
【図50】水路およびバルブにより冷却部を構成した場合の光通信システムの構成例を示す図である。
【図51】バルブの開閉制御の一例を示す図である。
【図52】ペルチェ素子により冷却部を構成した場合の光通信システムの構成例を示す図である。
【図53】空冷銃により冷却部を構成した場合の光通信システムの構成例を示す図である。
【図54】本発明の第4の実施の形態に係る光通信システムの構成例を示すブロック図である。
【図55】平均受光レベル検出部の構成例を示すブロック図である。
【図56】平均受光レベル検出部の他の構成例を示す図であり、図
【図57】光通信システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図58】本発明の第5の実施の形態に係る光通信システムの構成例を示すブロック図である。
【図59】光出力比較部の構成を示すブロック図である。
【図60】光出力比較部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図61】光送信部発熱判断部に入力される光出力比較部の出力値の時間変化の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0253】
100A,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100H,100I・・・光通信システム、10・・・固体撮像素子、12・・・画素部、14・・・光送信部、20・・・平均発光レベル検出部、201・・・受光部、202・・・増幅部、203・・・積分部、204・・・演算部、22・・・温度検出部、30・・・冷却部、32・・・冷却制御部、50・・・処理部、52・・・光受信部、54・・・制御部、60・・・光送信部発熱判断部、601・・・比較部、602・・・演算部、603・・・データ保持部、604・・・値参照部、70・・・光波形歪検出部、72・・・平均受光レベル検出部、721・・・増幅部、722・・・積分部、723・・・演算部、80・・・発熱抑制指示部、801・・・値参照部、802・・・通知部、803・・・各部温度取得部、804・・・LUT_CTMP、805・・・各部冷却駆動値算出部、806・・・LUT_TTMP、807・・・LUT_DRV、808・・・各部冷却駆動値取得部、90・・・冷却部、92・・・冷却制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像素子に設けられた光送信部から出力される光信号を受信する光受信部と、
前記固体撮像素子から供給される前記光送信部の出力による発熱情報に基づいて前記光送信部が発熱しているか否かを判断する発熱判断部と、
前記発熱判断部により前記光送信部が発熱したと判断された場合に、前記発熱判断部から供給される前記発熱情報に応じて予め設定された温度情報に基づき、前記光送信部で発生した熱の伝播を規定する熱伝播関数を用いて、前記固体撮像素子に設けられた光電変換部を含む各部における周辺熱情報を算出する発熱抑制指示部と
を備える処理装置。
【請求項2】
前記熱伝播関数は、前記光送信部から発生する熱が前記各部に伝播する熱量を表す指標であり、
前記周辺熱情報は、前記各部に伝播する前記熱量であり、
前記発熱抑制指示部は、
前記温度情報を入力パラメータとして前記熱伝播関数を用いて前記各部に伝播する前記熱量を算出する
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記発熱抑制指示部は、
前記熱伝播関数により算出した前記各部に伝播する前記熱量と予め設定された前記各部の熱容量とに基づいて前記各部の温度を算出する
請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記発熱抑制指示部は、
算出した前記各部の前記温度から当該各部における温度上昇を算出し、算出した前記温度上昇に応じて前記各部を冷却する際の冷却条件を規定する冷却駆動情報を取得する
請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記冷却駆動情報は、
前記各部の前記温度が、前記各部の雑音を所定の閾値以下に抑えるための前記各部における許容温度に達しないように設定される
請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記各部および前記光送信部の少なくとも一方の冷却を行う冷却部と、
前記発熱抑制指示部から供給される前記冷却駆動情報に基づいて前記冷却部の駆動を制御する冷却制御部とをさらに備える
請求項4に記載の処理装置。
【請求項7】
前記熱伝播関数の前記入力パラメータは、
前記各部および前記光送信部の少なくとも一方の熱容量、前記光送信部と前記各部との距離、前記光送信部の周辺の周辺温度、および、前記光送信部と前記各部との間の周辺媒体のうち、少なくとも1以上を前記温度情報に加えて含む
請求項2に記載の処理装置。
【請求項8】
前記熱伝播関数は、
前記光送信部の前記温度情報と前記各部における前記周辺熱情報としての推定温度情報とを対応付けて記憶する第1の記憶部と、
前記各部の前記推定温度情報と当該各部を冷却する際の冷却条件を規定する冷却駆動情報とを対応付けて記憶する第2の記憶部とにより定義される
請求項1に記載の処理装置。
【請求項9】
前記発熱抑制指示部は、
前記発熱判断部から供給される前記温度情報を用いて、前記第1の記憶部から当該温度情報に対応した前記各部の前記推定温度情報を取得する各部温度取得部と、
前記各部温度取得部により取得された前記推定温度情報を用いて、前記第2の記憶部から当該推定温度情報に対応した前記冷却駆動情報を取得する冷却駆動情報取得部とをさらに備える
請求項8に記載の処理装置。
【請求項10】
前記第1の記憶部は、
前記各部の温度上昇と、当該各部における前記温度および前記冷却駆動情報とを対応付けて記憶し、
前記冷却駆動情報は、前記温度上昇に応じて設定される
請求項9に記載の処理装置。
【請求項11】
前記冷却駆動情報は、
前記各部の温度が、前記各部の雑音を所定の閾値以下に抑えるための前記各部における許容温度に達しないように設定される
請求項9に記載の処理装置。
【請求項12】
前記各部および前記光送信部の少なくとも一方の冷却を行う冷却部と、
前記発熱抑制指示部から供給される前記冷却駆動情報に基づいて前記冷却部の駆動を制御する冷却制御部とをさらに備える
請求項8に記載の処理装置。
【請求項13】
入射する光を電気信号に変換する光電変換部と、
前記光電変換部により変換された前記電気信号を光信号に変換して出力する光送信部と、
前記光送信部の出力による発熱情報を検出する発熱情報検出部と、
前記発熱情報検出部から供給される前記発熱情報に基づいて前記光送信部が発熱しているか否かを判断する発熱判断部と、
前記発熱判断部により前記光送信部が発熱したと判断された場合に、前記発熱判断部から供給される前記発熱情報に応じて予め設定された温度情報に基づき、前記光送信部で発生した熱の伝播を規定する熱伝播関数を用いて前記光電変換部を含む各部における周辺熱情報を算出する発熱抑制指示部と
を備える固体撮像素子。
【請求項14】
前記発熱情報検出部は、熱センサであり、
前記発熱情報は、前記熱センサにより検出される前記光送信部の温度である
請求項13に記載の固体撮像素子。
【請求項15】
入射する光を電気信号に変換する光電変換部と、
前記光電変換部により変換された前記電気信号を光信号に変換して出力する光送信部と、
前記光送信部の出力による発熱情報を検出する発熱情報検出部とを有する固体撮像素子と、
前記固体撮像素子の前記光送信部から出力される前記光信号を受信する光受信部と、
前記固体撮像素子の前記発熱情報検出部から供給される前記発熱情報に基づいて前記光送信部が発熱しているか否かを判断する発熱判断部と、
前記発熱判断部により前記光送信部が発熱したと判断された場合に、前記発熱判断部から供給される前記発熱情報に応じて予め設定された温度情報基づき、前記光送信部で発生した熱の伝播を規定する熱伝播関数を用いて、前記光電変換部を含む各部における周辺熱情報を算出する発熱抑制指示部とを有する処理装置と
を備える光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図56】
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【公開番号】特開2010−93751(P2010−93751A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264581(P2008−264581)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】