説明

処理銅箔及び未処理銅箔の粗化処理方法並びに銅張積層板

【課題】 表面に析出した微細粒子が表面から脱落し難い処理銅箔を得る。
【解決手段】 未処理銅箔と該未処理銅箔表面に析出し粗化処理層とを備えた処理銅箔において、粗化処理層に銅と、コバルト及びニッケルから選択される少なくとも一種と、硫黄、ゲルマニウム、リン及びすずから選択される少なくとも一種とを含有させることで、JISG4401-2006に規定されるSK2で作成された刃先角度22°±2°、厚み0.38mmの刃を備えたカッターナイフで粗化処理層を貫通する引き傷を1mm間隔で直交するように縦横11本並べることによって1mm×1mmの升目100個からなる碁盤目を形成し、碁盤目を覆うように配置したJISZ1522に規定される粘着力が3.88N/cmの粘着テープを圧力192kpaで30秒間圧着した後、粘着テープを180°方向に引っ張って引き剥がした際に未処理銅箔から剥がれ落ちる升目の数が30以下とする粗化処理層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理銅箔及び未処理銅箔の粗化処理方法並びに銅張積層板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、プリント配線板に使用される圧延銅箔や電解銅箔などの未処理銅箔には、樹脂基板に対して強固に接着して容易に引き剥がれない特性が必要とされており、このような特性を得るために未処理銅箔の処理方法が開発されている。
【0003】
未処理銅箔の処理方法としては、例えば、後出特許文献1には、印刷回路用銅箔の処理方法において、処理すべき銅箔の表面に銅20〜40mg/dm2とコバルト100〜3000μg/dm2から成る電気メッキ層を形成する処理方法が開示されている。
【0004】
また、後出特許文献2には、印刷回路用銅箔の処理方法において、銅箔の表面に銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる粗化処理後、コバルト−ニッケル合金めっき層を形成し、更に亜鉛−ニッケル合金めっき層を形成する処理方法が開示されている。
【0005】
また、後出特許文献3には、印刷回路用銅箔の処理方法において、処理すべき銅箔の表面に銅、コバルト及びニッケルから成る電気めっき層を形成する処理方法が開示されている
【0006】
また、後出特許文献4には、箔本体と、前記箔本体の片面または両面に電解めっきで微細粒子の集合組織を付着させる銅箔の処理方法において、前記微細粒子はその平均粒径が1μm以下であり、また前記微細粒子は、Cuと、Ni,Co,FeおよびCrの群から選ばれる少なくとも1種(I)とから成る合金粒子であるか、または、前記合金粒子と、V,Mo,およびWの群から選ばれる少なくとも1種(II)の酸化物粒子との混合物であり、前記微細粒子における前記元素(I)の存在量は、Cuの存在量1mg/dm2当たり0.1〜3mg/dm2であり、また前記混合物における前記元素(II)の存在量は、Cuの存在量1mg/dm2当たり0.02〜0.8mg/dm2であるものが開示されている。
【0007】
前記従来の処理方法によれば、未処理銅箔の表面に微細粒子が析出されるため、この微細粒子が樹脂基板との接着性を向上させる役割を果たし、処理銅箔と樹脂基板との間の引き剥がし強度が格段に向上する。
【0008】
また、前記従来の処理方法によって処理された処理銅箔は、近年開発が著しく進む薄型テレビ等に採用されているプラズマディスプレイパネルの部品としても使用されており、これは、プラズマディスプレイパネルにおいては、放電によって強い電磁波が発生するため、人体に悪影響を及ぼす可能性があることから、CISPR(国際無線障害特別委員会)やVCCI(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)等の規格においてプラズマディスプレイパネルから放射される電磁波の強さが規制されていて電磁波を遮断する部品として銅箔が好適だからであり、さらに、プラズマディスプレイパネルの部品として使用される処理銅箔は、プラズマディスプレイパネルの発色に直接影響を与えるため、黒色に着色する必要があるが、前記従来の処理方法によって処理された処理銅箔は、その処理面が黒色に着色されるため、別途着色工程を設ける必要がないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2−292895号公報
【特許文献2】特開平9−87889号公報
【特許文献3】特公平6−50794号公報
【特許文献4】特許第3474127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前記従来の処理方法においては、銅箔の表面に微細粒子を析出させるため、表面処理銅箔を取り扱う際に表面から微細粒子が脱落し易く、この脱落した微細粒子によってプリント配線板やプラズマディスプレイパネル等の生産ラインが汚染されてしまうという問題点があった。
【0011】
そこで、本発明者は、表面に析出した微細粒子が表面から脱落し難い処理銅箔を得ることを技術的課題として、その具現化をはかるべく、試作・実験を繰り返した結果、未処理銅箔と該未処理銅箔表面に析出した粗化処理層とを備えた処理銅箔において、粗化処理層に銅と、コバルト及びニッケルから選択される少なくとも一種と、硫黄、ゲルマニウム、リン及びすずから選択される少なくとも一種とを含有させれば、粗化処理層を形成する微細粒子が脱落し難くなるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0013】
即ち、本発明に係る処理銅箔は、未処理銅箔と該未処理銅箔表面に析出した粗化処理層とを備えた処理銅箔において、粗化処理層が銅と、コバルト及びニッケルから選択される少なくとも一種と、硫黄、ゲルマニウム、リン及びすずから選択される少なくとも一種とを含有しているものである。
【0014】
また、本発明に係る処理銅箔は、未処理銅箔と該未処理銅箔表面に析出した粗化処理層とを備えた処理銅箔において、JISG4401-2006に規定されるSK2で作成された刃先角度22°±2°、厚み0.38mmの刃を備えたカッターナイフで粗化処理層を貫通する引き傷を1mm間隔で直交するように縦横11本並べることによって1mm×1mmの升目100個からなる碁盤目を形成し、碁盤目を覆うように配置したJISZ1522に規定される粘着力が3.88N/cmの粘着テープを圧力192kpaで30秒間圧着した後、粘着テープを180°方向に引っ張って引き剥がした際に未処理銅箔から剥がれ落ちる升目の数が30以下のものである。
【0015】
また、本発明に係る銅張積層板は、前記いずれかの処理銅箔を樹脂基板上に加熱圧着させてなるものである。
【0016】
また、本発明に係る未処理銅粉の処理方法は、未処理銅箔表面に銅と、コバルト及びニッケルから選択される少なくとも一種と、硫黄、ゲルマニウム、リン及びすずから選択される少なくとも一種とを含有してなる電気メッキ層を形成するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、未処理銅箔と該未処理銅箔表面に析出した粗化処理層とを備えた処理銅箔において粗化処理層を銅と、コバルト及びニッケルから選択される少なくとも一種と、硫黄、ゲルマニウム、リン及びすずから選択される少なくとも一種とを含有する電気メッキ層で形成したので、プリント配線板やプラズマディスプレイパネルに求められる特性を維持したまま粉落ちを抑制することができる。
【0018】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係る処理銅箔を示した断面図である。
【図2】粉落ち度合いを評価する際に使用されるカッターナイフを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
本発明に係る処理銅箔は、図1に示すように、未処理銅箔の一方面に粗化処理層が形成されている。
【0022】
未処理銅箔としては、電解液に浸した陽極と陰極との間に電流を流すことによって陰極側に析出させて形成される電解銅箔や、インゴット状の銅を圧延してなる圧延銅箔などを使用すればよい。なお、未処理銅箔の厚さは、6μm〜300μmが好ましく、より好ましくは、9μm〜70μmである。また、未処理銅箔表面の粗度(RZJIS)は、粗化処理層の形成に伴う粗度の上昇を考慮して0.1μm〜1.2μmが好ましく、より好ましくは0.5μm〜1.0μmである。
【0023】
粗化処理層は、銅と、コバルト及びニッケルから選択される少なくとも一種と、硫黄、ゲルマニウム、リン及びすずから選択される少なくとも一種とが含まれた電気メッキ層であり、未処理銅箔の表面に析出される0.5μm以下の微細粒子によって形成されている。
【0024】
粗化処理層表面の粗度(RZJIS)は、0.6μm〜2.0μmが好ましく、より好ましくは0.8μm〜1.5μmである。なお、粗化処理層表面の粗度は、プリント配線板に使用する場合にはファインパターン化に大きく影響し、プラズマディスプレイパネルに使用する場合には発色に大きく影響するため、いずれの場合においても低粗度であることが要求される。
【0025】
粗化処理層を構成する微細粒子は、次の評価方法によって評価した粉落ち度合いを示す数値が30以下であることが好ましく、より好ましくは20以下である。粉落ち度合いを示す数値が、30を越えると、粉落ちが顕著になって生産ラインの汚染が著しくなる。
【0026】
粉落ち度合いの評価方法について詳述すると、JISG4401に規定されるSK2で作成された図2の(a)及び図2の(b)に示すような形状及び寸法のカッターナイフの刃を粗化処理層の表面に対して35°〜45°の範囲の所定角度に保持させながら粗化処理層を刃が貫通するように引くことによって切り傷を形成し、当該引き傷を1mm間隔で直交するように縦横11本並べることによって1mm×1mmの升目100個からなる碁盤目を形成し、碁盤目を覆うように配置したJISZ1522に規定される粘着力が3.88N/cmのセロハン粘着テープを圧力192kpaで30秒間圧着した後、セロハン粘着テープを180°方向に引っ張って引き剥がした際に未処理銅箔から剥がれた升目を数え、当該数によって粉落ち度合いを評価する。
【0027】
また、粗化処理層表面は、JISZ8729に定義される表色系L*・a*・b*がL*<30、a*<5、b*<5を満たしており、黒色系の色彩を有している。
【0028】
なお、粗化処理層上に公知の処理方法に基づき、クロメート処理層やシランカップリング処理層を積層してもよい。
【0029】
次に、未処理銅箔表面に粗化処理層を析出させる処理方法を説明する。
【0030】
未処理銅箔の処理方法は、所定の組成からなる電解液に陰極となる未処理銅箔及び陽極を浸して両極間に電流を流すことによって陰極側に微細粒子を析出させる。
【0031】
電解液としては、硫酸銅水溶液に対してコバルト及びニッケルから選択される少なくとも一種と、硫黄、ゲルマニウム、リン及びすずから選択される少なくとも一種を含有させたものを使用する。
【0032】
硫酸銅水溶液としては、溶媒となる水に溶質となる硫酸銅を溶解させたものを使用すればよく、また、更に硫酸を加えたものを使用してもよい。従って、本発明における「硫酸銅水溶液」には、硫酸酸性硫酸銅水溶液も含まれる。なお、生産効率を考慮すると、硫酸酸性硫酸銅水溶液を使用することが好ましい。
【0033】
なお、硫酸銅水溶液は、硫酸銅五水和物を水に溶かして形成すればよく、電解液中における銅の濃度を3〜200g/Lにすることが好ましく、より好ましくは10〜100g/Lである。また、電解液中における硫酸の濃度は電解液のpHが2〜6になるように調整する。
【0034】
また、コバルトは、硫酸コバルト七水和物、塩化コバルトなどとして硫酸銅水溶液に添加すればよい。
【0035】
また、ニッケルは、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケルなどとして硫酸銅水溶液に添加すればよい。
【0036】
また、ゲルマニウムは、二酸化ゲルマニウムなどとして硫酸銅水溶液に添加すればよい。
【0037】
また、すずは、ピロリン酸すずなどとして硫酸銅水溶液に添加すればよい。
【0038】
また、硫黄は、メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウムなどとして硫酸銅水溶液に添加すればよい。
【0039】
また、リンは、次亜リン酸ナトリウム一水和物、亜リン酸ナトリウムなどとして硫酸銅水溶液に添加すればよい。
【0040】
なお、前記処理銅箔を樹脂基板に加熱圧着することにより、プリント配線基板やプラズマディスプレイパネルとして使用できる銅張積層板を形成することができる。
【0041】
樹脂基板は、ガラス布などの基材に絶縁樹脂を含浸させたものであり、絶縁樹脂としては、ポリイミド、フェノール、エポキシ、ポリエステル、液晶ポリマなどを使用すればよい。
【0042】
なお、銅張積層板における処理銅箔の引きはがし強さは0.7kN/m以上であることが好ましく、より好ましくは0.8kN/m以上である。引きはがし強さが0.7kN/m未満になると、銅張積層板を各用途に使用するために加工する際に処理銅箔が剥がれてしまう可能性が高くなり、扱い難い。
【0043】
本実施の形態においては、未処理銅箔の一方面のみに粗化処理層を形成したが、未処理銅箔の両面に粗化処理層を形成してもよい。
【実施例】
【0044】
実施例1
【0045】
未処理銅箔として厚さ18μmの圧延銅箔(日立電線株式会社製・品番:C1100R-H)を用意した。なお、圧延銅箔は、炭化水素系有機溶剤に60秒間浸して圧延油を除去した。
【0046】
次に、未処理銅箔の一方面に対して次の各処理を順次施した。
【0047】
(粗化処理)
【0048】
電解液として、硫酸銅五水和物40g/L、硫酸コバルト七水和物20g/L、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム130g/L、二酸化ゲルマニウム0.5g/Lを添加した水溶液を硫酸にてpH4.5に調整したものを用意した。そして、陽極として白金を使用すると共に、陰極として未処理銅箔を使用し、両極を浴温40℃の電解液に浸した状態で両極に対して電流密度2.5A/dm2、通電時間20秒で電流を流して粗化処理を施して処理銅箔を得た。
【0049】
実施例2〜12及び比較例1〜4
【0050】
表1に示すように、粗化処理に使用する電解液に添加される添加物及びその添加量を変更すると共に当該電解液のpHを調整し、また、粗化処理時における電流密度及び電解時間を変更した外は、前記実施例1と同様にして処理銅箔を得た。
【0051】
【表1】

【0052】
次に、前記実施例1〜12及び比較例1〜4にて得られた処理銅箔に対して次の測定を行った結果を表2に示す。
【0053】
(粗度RZJIS
【0054】
処理銅箔の処理が施された側の面について、JISB0651-2001に規定される触針式表面粗さ計に適合するサーフコーダSE1700α(株式会社小坂研究所製)にて、触針として触針先端の半径2μmのものを使用し、粗さ曲線用カットオフ値0.8mm、粗さ曲線の標準カットオフ値のためのカットオフ比300、測定距離2.5mmとしてJISB0601-2001に定義される十点平均粗さRZJISを測定した。
【0055】
(L*・a*・b*)
【0056】
JISZ8729に定義される表色系L*・a*・b*を分光測色計(コニカミノルタ株式会社製・品番:CM-508d)にて測定した。
【0057】
(粉落ち度合い)
【0058】
1mm間隔でガイドが設けられたクロスカットガイド(コーテック株式会社製・品番:CCJ-1)と、JISG4401-2006に規定されるSK2で作成された刃先角度22°±2°、厚み0.38mmの刃を備えたカッターナイフ(エヌティー株式会社製・品番:iA300RSP)と、
JISZ1522に規定される粘着力が3.88N/cmであって幅12mmの透明粘着テープ(ニチバン株式会社製・品番:CT405A-24)を用意した。
【0059】
そして、先ず、クロスカットガイド及びカッターナイフを用いて銅張積層板における処理銅箔の処理面上に直交する縦横11本の引き傷を1mm間隔で平行に並べて形成し、処理面の100mm2の中に100個の升目を形成した。この時、カッターナイフの刃を処理面に対して45°の角度に保ち、処理層を貫通するように1本について約0.5秒かけて等速に引いて切り傷を形成した。
【0060】
続いて、全ての升目を被覆するように処理面上にゆっくりと設置した透明粘着テープ上に100mm2のゴムシートを置き、更にゴムシート上に該ゴムシートと接触する底面の面積が100 mm2以上である200gの錘を置くことにより、透明粘着テープを処理面に対して192kpaで30秒間加圧した後、透明粘着テープを180°方向に引いて処理面から引き剥がした。そして、処理面から引き剥がした透明粘着テープを白紙に貼り付け、透明粘着テープに貼り付いた升目の個数を顕微鏡で観察して数えることにより、処理銅箔から剥がれ落ちた升目の個数を特定した。
【0061】
【表2】

【0062】
続いて、前記実施例1〜12及び比較例1〜4にて得られた処理銅箔の粗化処理層に対して次の処理を行った後、当該処理後の処理銅箔を樹脂基板に加熱圧着させることによって銅張積層板を得た。
【0063】
(クロメート処理)
【0064】
クロメート処理液として、重クロム酸ナトリウム10g/Lを含有するpH4.2の水溶液を用意した。そして、陽極として白金を使用すると共に、陰極として粗化処理が施された未処理銅箔を使用し、両極を浴温30℃のクロメート処理液に浸した状態で両極に対して電流密度0.5A/dm2、通電時間5秒で電流を流してクロメート処理を施した。
【0065】
(シランカップリング処理)
【0066】
シランカップリング処理液として、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン2mL/Lを含有する水溶液を用意した。そして、前記各処理が施された未処理銅箔を浴温30℃のシランカップリング処理液に10秒間浸してシランカップリング処理を施した。
【0067】
そして、前記各処理が完了した後、常温(25℃)にて自然乾燥させて処理銅箔を得た。
【0068】
続いて、接着剤が片面に塗布された厚さ65μmの接着剤付きポリイミドフィルム(東レ株式会社製・品番:#8200)を用意し、クロメート処理及びシランカップリング処理が施された処理銅箔の各処理が施されている側の面をポリイミドフィルムの接着剤が塗布された側の面に圧力1Mpa、加熱温度150℃にて5秒間圧着させた後、圧力1Mpa、加熱温度80℃にて1時間圧着状態を維持させ、その後、加熱温度を12時間かけて160℃まで昇温させ、最後に当該温度で4時間保持して銅張積層板を得た。
【0069】
そして、得られた銅張積層板に対して次の測定を行った結果を表3に示す。表3において各銅張積層板の測定結果は圧着した処理銅箔に対応する実施例又は比較例の番号にて示している。
【0070】
(銅張積層板における処理銅箔の引きはがし強さ)
【0071】
JISC5016-1994に規定される導体の引きはがし強さの測定方法に基づき、銅箔を銅箔除去面に対して90°方向に引きはがす方法にて引きはがし強さを測定した。
【0072】
【表3】

【0073】
表2及び表3の結果によれば、実施例1〜12の処理銅箔においては、粗化処理した面からの粉落ち度合いが30以下と低く保たれており、また、銅張積層板に加工した状態において0.80kN/m以上の高い引き剥がし強さを有している。これに対して、比較例1〜4の処理銅箔においては、粉落ち度合い及び引きはがし強さのいずれか一方又は双方が前記所定の数値範囲を有していない。また、実施例1〜12の処理銅箔については、プラズマディスプレイパネルとして使用可能なL*<30、a*<5、b*<5を満たす黒色系の色を有している。
【符号の説明】
【0074】
1 処理銅箔
2 未処理銅箔
3 粗化処理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未処理銅箔と該未処理銅箔表面に析出した粗化処理層とを備えた処理銅箔において、粗化処理層が銅と、コバルト及びニッケルから選択される少なくとも一種と、硫黄、ゲルマニウム、リン及びすずから選択される少なくとも一種とを含有していることを特徴とする処理銅箔。
【請求項2】
未処理銅箔と該未処理銅箔表面に析出された粗化処理層とを備えた処理銅箔において、JISG4401-2006に規定されるSK2で作成された刃先角度22°±2°、厚み0.38mmの刃を備えたカッターナイフで粗化処理層を貫通する引き傷を1mm間隔で直交するように縦横11本並べることによって1mm×1mmの升目100個からなる碁盤目を形成し、碁盤目を覆うように配置したJISZ1522に規定される粘着力が3.88N/cmの粘着テープを圧力192kpaで30秒間圧着した後、粘着テープを180°方向に引っ張って引き剥がした際に未処理銅箔から剥がれ落ちる升目の数が30以下であることを特徴とする処理銅箔。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の処理銅箔を樹脂基板上に加熱圧着させたことを特徴とする銅張積層板。
【請求項4】
未処理銅箔の処理方法であって、未処理銅箔表面に銅と、コバルト及びニッケルから選択される少なくとも一種と、硫黄、ゲルマニウム、リン及びすずから選択される少なくとも一種とを含有してなる電気メッキ層を形成することを特徴とする未処理銅箔の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−105960(P2011−105960A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258858(P2009−258858)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000239426)福田金属箔粉工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】