説明

出隅用壁材留具及び断熱壁

【課題】 出隅での施工を行いやすくすることができる出隅用壁材留具を提供する。
【解決手段】 壁下地2の出隅に断熱材3と外装材4とを取り付けるための出隅用壁材留具に関する。壁下地2に固定するための固定片20と、固定片20の表面に突設される断熱材支持片21と、断熱材支持片21の屋外側に突設される外装材保持部22とを備える。側端部を傾斜させて突き合わせ部90として形成する。断熱材支持片21に断熱材3を、外装材保持部22に外装材4をそれぞれ保持させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建物、鉄骨建物、鉄筋コンクリート(RC)造建物などの新築とリフォームに好適に用いることができる出隅用壁材留具及びこれを用いた断熱壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外張り断熱工法は構造躯体の外側に断熱壁(断熱層)を設ける工法であって、一般的には、柱や間柱に断熱材を仮留した後、断熱材の表面側から胴縁を留め付け(胴縁と断熱材を同時に留め付ける)、この後、胴縁の表面にサイディングなどの外装材を留め付けるようにしている。しかしながら、この一般的な工法では、フォーム系の断熱材を用いた場合に、断熱材を柱や間柱へ釘やビス等で仮留めした後に胴縁で上から押さえ付けて留め付けなければならず、施工の手間が大きいという問題があった。また、外装材を施工するまでに、断熱材の施工と胴縁の施工とが必要であり、これによっても施工の手間が大きいという問題があった。さらに、断熱壁の断熱性能は断熱材の断熱性能のみで決められるので、大きな断熱効果を得ようとすると、厚みの大きな断熱材を用いなければならず、コストアップを招くなどの問題があった。
【0003】
そこで、これらの問題を解決するために、壁材留具を用いた断熱壁が提案されている(特許文献1参照)。図15(a)に特許文献1に記載された壁材留具Aの一例を示す。この壁材留具Aは、壁下地2の表面に固定される基板10表面から断熱材3と外装材4を支持するための支持板11が延出され、該支持板11の表裏面には、前記基板10表面にあてがわれる断熱材3を位置決めする係止片12が立設され、該位置決め用の係止片12から前記支持板11の先端側に必要な空間幅Sを隔てて外装材4の端部に掛かり合う一対の位置決め用の係止片13、14が前記支持板11に立設されたものである。
【0004】
そして、上記壁材留具Aを用いて断熱壁を構築するにあたっては、以下のようにして行う。まず、図15(b)に示すように、柱や桁などの壁下地2の表面に配置した基板10に釘やビスなどの止着具7を打ち込んで固定する。そして、発泡樹脂などからなる断熱材3を基板10と係止片12との間に設置し、次いで繊維補強セメント板などの外装材4を係止片13、14に設置する。外装材4は、上下端縁に互いに嵌合する接合用段部が形成され、係止片13は外装材4の裏面に当接され、係止片14は外装材4に形成した嵌合溝に係合される。このように断熱材3、外装材4の下端を設置して位置決めした後、これらの上端部に上記とは別の壁材留具Aを当てがい、壁下地2に基板10を釘やビスなどの止着具7で固定する。この後、断熱材3、外装材4の上端部に配置した壁材留具Aの上に上記とは別の断熱材3と外装材4とを上記と同様に載置する。このようにして壁材留具Aと断熱材3と外装材4とを順次壁下地2に取り付けていくことによって、壁下地2の外側に断熱壁を形成することができる。
【0005】
しかし、上記のような壁材留具Aを用いた場合、出隅での壁下地2からの外装材4の出幅が大きくなって施工がしにくいという問題があった。
【特許文献1】特開2003−74132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、出隅での施工を行いやすくすることができる出隅用壁材留具及び断熱壁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の出隅用壁材留具Cは、壁下地2の出隅に断熱材3と外装材4とを取り付けるための出隅用壁材留具であって、壁下地2に固定するための固定片20と、固定片20の表面に突設される断熱材支持片21と、断熱材支持片21の屋外側に突設される外装材保持部22とを備え、側端部を傾斜させて突き合わせ部90として形成して成ることを特徴とするものである。
【0008】
本発明にあっては、断熱材3を壁下地2側に傾けるための傾斜手段を具備することができる。
【0009】
本発明にあっては、傾斜手段として、固定片20に傾斜部72を設けることができる。
【0010】
本発明にあっては、傾斜手段として、断熱材3を壁下地2側に押圧するための突起25を備えることができる。
【0011】
本発明の断熱壁は、上記のいずれかに記載の出隅用壁材留具Cを用いた断熱壁であって、出隅用壁材留具Cを壁下地2の出隅を構成する一方の面と他方の面にそれぞれ取り付けると共に、これら出隅用壁材留具C、Cの突き合わせ部90、90同士を突き合わせ、各出隅用壁材留具Cの断熱材支持片21に断熱材3を支持させると共に各出隅用壁材留具Cの外装材保持部22に外装材4を保持させて成ることを特徴とするものである。
【0012】
本発明にあっては、一方の出隅用壁材留具Cに支持させた断熱材3の端部裏面に、他方の出隅用壁材留具Cに支持させた断熱材3の端面91を当接し、これら断熱材3、3の間に形成される隙間34を閉塞するように気密テープ66を貼着することができる。
【発明の効果】
【0013】
出隅用壁材留具C、Cの突き合わせ部90、90同士を突き合わせた状態で、壁下地2の出隅に出隅用壁材留具C、Cを取り付けることによって、出隅の頂部93の外側にまで断熱材支持片21及び外装材保持部22を配置することができ、断熱材支持片21に断熱材3を、外装材保持部22に外装材4をそれぞれ保持させるによって、出隅で断熱材3と外装材4とを壁下地2に容易に取り付けることができて出隅での施工が行いやすくなり、しかも、断熱材3の側端部及び外装材4を出隅の頂部93の外側においても出隅用壁材留具Cで強固に支持して壁下地2に取り付けることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0015】
本発明で用いる壁材留具Aは、ステンレス鋼やアルミニウムなどの金属成形品あるいは硬質プラスチックなどのプラスチック成形品などで形成されるものであって、幅寸法が50mm程度のピース物(断熱材3や外装材4の幅寸法に比べて幅寸法が短い短尺物)として形成されている。また、壁材留具Aは、図2(a)(b)に示すように、固定片20、断熱材支持片21、上係止部27、下係止部28、外装材保持部22などを備えて形成されている。尚、壁材留具Aは長尺ものであってもよい。
【0016】
断熱材支持片21は略水平の平板状に形成されている。断熱材支持片21の後端には固定片20が上側に突出して設けられている。固定片20は断熱材支持片21の後端から前側に向って突出するように延設された屈曲部31と、屈曲部31の先端から後側に向かって突出するように延設された傾斜部72と、傾斜部72の先端から上側に向かって突出するように延設された固着部40とで形成されている。固着部40には複数の固着孔41が幅方向に並んで設けられている。尚、固着孔41は必ずしも複数個設ける必要はなく、1個であってもよい。また、断熱材支持片21の後端には挟持片43が下側に突出して設けられている。
【0017】
断熱材支持片21の前端には、上側に向って突出する上係止部27と、下側に向って突出する下係止部28とが形成されている。上係止部27と下係止部28とは上下に真っ直ぐに並んでおり、上係止部27と下係止部28の内部には空隙部44が形成されている。そして、この上係止部27と下係止部28が通気層形成手段30として形成されている。上係止部27の上部の前面(屋外側面)と下係止部28の下部の前面(屋外側面)は曲面に形成されており、外装材4や断熱材3が差し込みやすくなっている。また、上係止部27と下係止部28の厚み(前後方向の寸法)を変えることにより、外装材4と断熱材3の間に形成される通気層81の寸法を変えることができる。
【0018】
外装材保持部22は下係止部28の前面に設けられている。従って、外装材保持部22は下係止部28の断熱材支持片21側の面と反対側の面に突設されている。外装材保持部22は下係止部28の前面から上方に向かって略倒く字状に形成される上向き保持片45と、上向き保持片45の下面に突設される断面略倒L字状の下向き保持片46とで形成されている。
【0019】
そして、上記のような壁材留具Aを用いて断熱壁を形成するにあたっては、次のようにして行う。まず、図3に示すように、壁下地2の下部の表面に土台水切り50とスタータ金具51とを取り付ける。ここで、図3には下地壁2として既存壁(既存の建物の壁)が示してある。スタータ金具51は、断面略ロ字状の基台57の上面に基台係止部58を突設すると共に基台57の上面後方に取付片59を設け、さらに、基台57の屋外側面に基台保持片60を突設することによって形成されている。そして、スタータ金具51の取付片59と土台水切り50の上部とにビスや釘等の止着具7を挿通して壁下地2に螺入することによって、壁下地2の表面(屋外側面)の下部に土台水切り50とスタータ金具51とを取り付ける。尚、スタータ金具51はピース物であってもよいし、長尺ものであってもよい。また、止着具7は壁下地2の柱や間柱などに留め付けることができる。
【0020】
次に、断熱材3をスタータ金具51に支持させる。断熱材3はウレタンフォームやフェノールフォームなどの樹脂発泡体やグラスウールやロックウールなどの繊維集合体などで形成されるボードを使用することができる。そして、断熱材3の下端部を壁下地2に取り付けたスタータ金具51の基台係止部58と取付片59の間に差し込むことによって、断熱材3をスタータ金具51に保持して支持させる。また、断熱材3と壁下地2の間には気密を確保するためのパッキン67が設けられている。このパッキン67としては、例えば、EPDMゴムを主成分とする発泡樹脂系テープを用いることができる。また、断熱材3と壁下地2の間にはパッキン67の厚み分の密閉層33が形成される。この密閉層33により、断熱効果がさらに向上する。
【0021】
次に、外装材4をスタータ金具51に支持させる。外装材4は繊維補強セメント板などで平板状に形成されるものであって、その下端には断面略逆V字状の溝部61が形成されている。そして、外装材4の溝部61を壁下地2に取り付けたスタータ金具51の基台保持片60に差し込むことによって、外装材4をスタータ金具51に保持して支持させる。従って、外装材4は断熱材3の屋外側に配置された状態となる。
【0022】
次に、スタータ金具51で壁下地2の屋外側に配置された上記断熱材3と外装材4の上側に上記壁材留具Aを取り付ける。壁材留具Aを取り付けるにあたっては、上記スタータ金具51で支持した断熱材3の上端部を壁材留具Aの挟持片43と下係止片28との間に挿入すると共に、上記スタータ金具51で支持した外装材4の上端の係止突部62に外装材保持部22の下向き保持片46を係止し、この後、固定片20の固着部40を止着具7により壁下地2に固定する。このようにして上記断熱材3と外装材4の上側に壁材留具Aを取り付けるが、壁材留具Aは断熱材3と外装材4の幅方向の複数箇所に設けるようにする。
【0023】
次に、図4に示すように、上記壁材留具Aの上にさらに別の断熱材3を載置する。すなわち、新たな断熱材3の下端部を壁下地2に取り付けた上記壁材留具Aの固定片20と上係止部27の間に差し込むことによって、断熱材3を壁材留具Aに保持して支持させる。そして、上記のように、上係止部27と固定片20との間に断熱材3の下端を差し込むと、この断熱材3の下部が傾斜手段である突起25で壁下地2側に押圧され、断熱材3は支点部26を支点として傾斜手段である傾斜部72の傾斜と同方向に傾くことになる。従って、断熱材3を壁材留具Aに支持させると、自然に壁下地2の方に傾いて壁下地2の表面によりかかった状態となる。これにより、断熱材3の上側に新たな壁材留具Aを取り付けて、断熱材3の上部を壁材留具Aで壁下地2に固定するまでの間に断熱材3が前方へ倒れないように、作業者が手で支持したりあるいは接着剤や粘着テープなどで断熱材3を壁下地2に仮固定したりする必要がなく、施工が行いやすくなるものである。
【0024】
次に、断熱材支持片21を挟んで上下に隣接する断熱材3、3の間に形成される隙間を閉塞するように気密テープ66を貼着する。この気密テープ66は通気性のない基材に粘着層を設けて形成されるテープ材であって、上下に隣接する断熱材3、3に亘って気密テープ66を貼着することによって、隙間を閉塞して断熱性の低下を防止するものである。そして、この気密テープ66を貼着する際には、上記外装材4の上端は断熱材支持片21よりも下側に設けた外装材保持部22の下向き保持片46に係止されているために、外装材4の上端が上記隙間よりも下側に位置することになる。従って、上記隙間を気密テープ66で閉塞する際に、外装材4の上端が邪魔にならず、気密テープ66の貼着作業が行いやすくなるものである。
【0025】
次に、上記壁材留具Aにさらに別の外装材4を支持させる。すなわち、新たな外装材4の下端部の溝部61を壁下地2に取り付けた上記壁材留具Aの外装材保持部22の上向き保持片45に差し込むことによって、外装材4を壁材留具Aに保持して支持させる。ここで、この上側の外装材4の下端で下側の外装材4及び壁材留具Aの外装材保持部22を被覆する。
【0026】
この後、壁材留具Aに支持した上記断熱材3と外装材4の上側にさらに別の壁材留具Aを取り付ける。この壁材留具Aは上記と同様の方法で取り付けることができる。そして、所定数の壁材留具Aと断熱材3と外装材4とを順次取り付ける。
【0027】
図5は断熱壁の上端付近を示すものであり、最上の断熱材3の上側には木胴縁80が壁下地2に取り付けられている。また、最上の外装材4と断熱材3との間及び最上の外装材4と木胴縁80の間にはスペーサ69が設けられており、この外装材4の表面(屋外面)からスペーサ69を貫通して木胴縁80に止着具7が螺入され、外装材4の上部が固定されている。さらに、最上の外装材4と軒天井70の間には見切り縁71が設けられている。また、外装材4と断熱材3の間には通気層形成手段30の厚み寸法分の通気層81が形成される。この通気層81により、外装材4の裏面側の結露を防止することができる。
【0028】
上記の壁材留具Aにおいて、上係止部27と下係止部28の後面(断熱材支持片21側の面であって、壁材留具Aを壁下地2に取り付けた際に壁下地2側に向く面)には突起25が設けられている。また、この上係止部27の突起25よりもやや下側の位置において固定片20の前面(断熱材支持片21側の面であって、壁材留具Aを壁下地2に取り付けた際に壁下地2と反対側に向く面)には支点部26が形成されている。支点部26は屈曲部31と傾斜部72の境界部分の屈曲部分により形成されている。
【0029】
そして、上記のように、上係止部27と固定片20との間に断熱材3の下端を差し込むと、この断熱材3の下部が突起25で壁下地2側に押圧されると共に断熱材3の下部が支点部26を支点として傾斜部72の傾斜と同方向に傾くことになる。従って、断熱材3を壁材留具Aに支持させると、自然に壁下地2の方に傾いて壁下地2の表面によりかかった状態となる。よって、断熱材3の上側に新たな壁材留具Aを取り付けるまでに、接着剤や粘着テープを用いることなく、断熱材3を壁下地2側に突起25で押圧して仮固定することができ、断熱材3及び外装材4の施工を容易に行うことができる。尚、突起25や支点部26は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて設ければよい。
【0030】
図6には、横方向に隣接する断熱材3、3及び外壁材4、4の接合部分を示す。横方向に隣接する断熱材3、3の側端面の間には隙間34が形成されることがある。そこで、この隙間34を覆うようにして隙間34に沿って長い気密テープ66を貼着する。この気密テープ66は通気性のない基材に粘着層を設けて形成されるテープ材であって、左右に隣接する断熱材3、3に亘って気密テープ66を屋外面に貼着することによって、隙間34を閉塞して断熱性の低下を防止するものである。尚、気密テープ66は上下の壁材留具Aの間において貼着する。また、横方向に隣接する外壁材4、4の間には防水性を確保するために、バックアップ材35とシーリング36からなる防水材74を充填することができる。この防水材74で気密テープ66を表面側から押圧することができる。上記の場合、防水材74のバックアップ材35を気密テープ66の表面(屋外側面)に押し付けるようにするものであり、これにより、気密テープ66の粘着力が経時変化等により弱まったとしても、防水材74で断熱材3から剥がれないように押さえ付けることができ、断熱性の低下を防止することができるものである。上記の防水材74はバックアップ材35とシーリング36から構成されるが、バックアップ材35としては発泡ポリエチレンなどの樹脂発泡体で角棒状のものや丸棒状のものなどを用いることができる。また、シーリング36としては、シリコン系シーリング、ポリサルファイド系シーリング材、アクリルウレタン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、アクリル系シーリング材、スチレンブタジエンゴム系シーリング材、ブチルゴム系シーリング材などを用いて形成することができる。
【0031】
このようにして断熱材3と外装材4及び壁材留具Aからなる断熱壁を形成することができる。
【0032】
上記では既存の建物の壁の屋外側に断熱壁を形成する場合について説明したが、上記の壁材留具Aを用いて、新築の建物の外壁を断熱壁として形成することができる。この場合、壁下地2は、基礎37の上に設けられた土台38と、土台38に取り付けられる柱や間柱などの構造材39で形成されている。また、壁下地2の表面(屋外側面)には透湿防水シート47が全面に亘って取り付けられている。そして、まず、図7に示すように、壁下地2の下部の土台38の表面に土台水切り50とスタータ金具51とを取り付ける。土台水切り50及びスタータ金具51は上記と同様に形成されており、取付片59と土台水切り50の上部とに止着具7を挿通して土台38に螺入することによって、壁下地2の表面(屋外側面)の下部に土台水切り50とスタータ金具51とを取り付ける。
【0033】
次に、上記と同様にして、断熱材3及び外装材4をスタータ金具51に支持させる。次に、スタータ金具51で壁下地2の屋外側に配置された上記断熱材3と外装材4の上側に上記壁材留具Aを取り付ける。壁材留具Aを取り付けるにあたっては、上記と同様に行うことができ、スタータ金具51で支持した断熱材3の上端部を壁材留具Aの挟持片43と下係止片28との間に挿入すると共に、上記スタータ金具51で支持した外装材4の上端の係止突部62に外装材保持部22の下向き保持片46を係止し、この後、固定片20の固着部40を止着具7により壁下地2の構造材39に固定する。この後、図8に示すように、上記と同様にして所定数の壁材留具Aと断熱材3と外装材4とを順次取り付ける。
【0034】
図9は断熱壁の上端付近を示すものであり、最上の断熱材3の上側には木胴縁80が止着具7により壁下地2の構造材39に取り付けられている。この構造も上記既存壁を壁下地2とした場合と同様である。図10には、横方向に隣接する断熱材3、3及び外壁材4、4の接合部分を示す。この構造も壁下地2が土台38及び構造材39で形成されている以外は、上記既存壁を壁下地2とした場合と同様である。尚、壁材留具Aは構造材39の側面に設けた補助部材39aに止着具7で固定することができる。図11は壁材留具Aを断熱材3及び外装材4の横方向の略中央部に設けた場合を示す。この場合、壁材留具Aは間柱などの構造材39に止着具7で固定される。
【0035】
図12に断熱壁の入隅の構造を示す。ここで使用する入隅用壁材留具Bは上記壁材留具Aと断面形状が同一で、壁材留具Aの端部を斜めカットしたものであり、一対の入隅用壁材留具Bが斜めカットした側を合わせた状態で、入隅の構造材39の補助部材39aに止着具7で固定されている。また、入隅用壁材留具Bには上記壁材留具Aと同様にして断熱材3の端部及び外装材4の端部が取り付けられるが、隣り合う断熱材3、3の端部の接合部分の表面には気密テープ66が隙間34に沿って貼着されていると共に、隣り合う外装材4、4の端部の接合部分にはバックアップ材35とシーリング36からなる防水材74が充填されている。
【0036】
図13に断熱壁の出隅の構造を示す。ここで使用する出隅用壁材留具Cは図1(a)に示すように上記壁材留具Aと断面形状が同一であるが、図1(b)(c)に示すように、平面視において、一方の側端部が傾斜して形成された突き合わせ部90として形成されている。図1(b)の出隅用壁材留具Cと図1(c)の出隅用壁材留具Cとは平面視で線対称の形状に形成されており、本発明ではこれら一対の出隅用壁材留具C、Cを一組にして一つの出隅に使用するものである。尚、出隅用壁材留具Cは上記壁材留具Aの一方の側端部を斜めにカットして形成することができるが、これに限らず、各種の成形方法で成形することができる。
【0037】
そして、一対の出隅用壁材留具C、Cのうち、一方の出隅用壁材留具Cを壁下地2の出隅を構成する一方の外面に取り付けると共に他方の出隅用壁材留具Cを壁下地2の出隅を構成する他方の外面に取り付け、各出隅用壁材留具C、Cを出隅の構造材39に止着具7で固定する。この時、出隅の隣接する外面に取り付けられた一対の出隅用壁材留具C、Cの突き合わせ部90、90は突き合わせた状態となっている。
【0038】
この後、出隅用壁材留具Cには上記壁材留具Aの場合と同様にして断熱材3の端部が取り付けられるが、一方の出隅用壁材留具Cに支持させた断熱材3aの端部裏面に、他方の出隅用壁材留具Cに支持させた断熱材3bの端面91を当接するようにし、この隣り合う断熱材3a、3bの接合部分に形成される隙間34を覆うようにして、断熱材3a、3bの表面には気密テープ66が隙間34に沿って貼着されている。この気密テープ66により断熱性能を損なわないようにすることができる。また、出隅用壁材留具C、Cには外装材4として、平面視でL字状のコーナ外壁材42が取り付けられている。コーナ外壁材42と平板状の外壁材4との断面形状は同一であり、外壁材4を壁材留具Aに取り付ける場合と同様にして出隅用壁材留具Cにコーナ外壁材42を取り付けることができる。また、コーナ外壁材42と隣り合う外装材4の端部の接合部分にはバックアップ材35とシーリング36からなる防水材74が充填されている。
【0039】
このようにして断熱材3、外装材4、壁材留具A、入隅用壁材留具B、出隅用壁材留具C、コーナ外壁材42からなる断熱壁を形成することができる。
【0040】
そして、出隅用壁材留具Cにも上記の壁材留具Aと同様に傾斜手段として突起25と傾斜部72が形成されているので、上係止部27と固定片20との間に断熱材3の下端を差し込むと、この断熱材3の下部が傾斜手段である突起25で壁下地2側に押圧され、断熱材3は支点部26を支点として傾斜手段である傾斜部72の傾斜と同方向に傾くことになる。従って、断熱材3を出隅用壁材留具Cに支持させると、図14に示すように、自然に壁下地2の方に傾いて壁下地2の表面によりかかった状態となる。これにより、断熱材3の上部を壁材留具Aで壁下地2に固定するまでの間に断熱材3が前方へ倒れないように、作業者が手で支持したりあるいは接着剤や粘着テープなどで断熱材3を壁下地2に仮固定したりする必要がなく、施工が行いやすくなるものである。
【0041】
また、出隅用壁材留具Cの固着孔41の位置を壁下地2の構造材39の位置と合わせることにより、壁下地2から外装材4の突出幅が大きくなった場合でも、壁下地2に外装材4を強固に固定することができるものである。すなわち、出隅用壁材留具C、Cの突き合わせ部90、90同士を突き合わせた状態で、壁下地2の出隅に出隅用壁材留具C、Cを取り付けることによって、出隅の頂部93の外側にまで外装材保持部22を配置することができ、外装材4を出隅の頂部93の外側においても出隅用壁材留具Cで強固に支持して壁下地2に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)は側面図、(b)は一方の出隅用壁材留具の平面図、(c)は他方の出隅用壁材留具の平面図である。
【図2】同上の壁材留具の一例を示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図3】同上の断熱壁の一例を示す一部の断面図である。
【図4】同上の断熱壁の一例を示す一部の断面図である。
【図5】同上の断熱壁の一例を示す一部の断面図である。
【図6】同上の断熱壁の一例を示す一部の断面図である。
【図7】同上の断熱壁の他例を示す一部の断面図である。
【図8】同上の断熱壁の他例を示す一部の断面図である。
【図9】同上の断熱壁の他例を示す一部の断面図である。
【図10】同上の断熱壁の他例を示す一部の断面図である。
【図11】同上の断熱壁の他例を示す一部の断面図である。
【図12】同上の断熱壁の他例を示す一部の断面図である。
【図13】同上の断熱壁の他例を示す一部の断面図である。
【図14】同上の断熱材が傾斜した状態を示す断面図である。
【図15】(a)は従来例の壁材留具を示す斜視図、(b)は従来例の壁材留具を用いた断熱壁の一部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
2 壁下地
3 断熱材
4 外装材
20 固定片
21 断熱材支持片
22 外装材保持部
25 突起
72 傾斜部
90 突き合わせ部
91 端面
C 出隅用壁材留具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁下地の出隅に断熱材と外装材とを取り付けるための出隅用壁材留具であって、壁下地に固定するための固定片と、固定片の表面に突設される断熱材支持片と、断熱材支持片の屋外側に突設される外装材保持部とを備え、側端部を傾斜させて突き合わせ部として形成して成ることを特徴とする出隅用壁材留具。
【請求項2】
断熱材を壁下地側に傾けるための傾斜手段を具備して成ることを特徴とする請求項1に記載の出隅用壁材留具。
【請求項3】
傾斜手段として、固定片に傾斜部を設けて成ることを特徴とする請求項2に記載の出隅用壁材留具。
【請求項4】
傾斜手段として、断熱材を壁下地側に押圧するための突起を備えて成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の出隅用壁材留具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の出隅用壁材留具を用いた断熱壁であって、出隅用壁材留具を壁下地の出隅を構成する一方の面と他方の面にそれぞれ取り付けると共に、これら出隅用壁材留具の突き合わせ部同士を突き合わせ、各出隅用壁材留具の断熱材支持片に断熱材を支持させると共に各出隅用壁材留具の外装材保持部に外装材を保持させて成ることを特徴とする断熱壁。
【請求項6】
一方の出隅用壁材留具に支持させた断熱材の端部裏面に、他方の出隅用壁材留具に支持させた断熱材の端面を当接し、これら断熱材の間に形成される隙間を閉塞するように気密テープを貼着して成ることを特徴とする請求項5に記載の断熱壁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2007−9570(P2007−9570A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192752(P2005−192752)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】