説明

分光測定装置、及び分光測定方法

【課題】精度の良い分光スペクトルを迅速に測定可能な分光測定装置、及び分光測定装置の制御方法を提供する。
【解決手段】分光測定装置1は、固定反射膜、可動反射膜、及び電圧印加により反射膜間ギャップのギャップ量を変化させる静電アクチュエーターを備えた波長可変干渉フィルター5と、光の光強度を検出するディテクター11と、測定対象光の分光スペクトルを測定する制御回路部20と、を備え、制御回路部20は、ピーク対応ギャップ量を検出するピーク検出部23と、静電アクチュエーターに印加する電圧を設定するフィルター駆動部22と、分光スペクトルを測定する分光測定部24とを備える。フィルター駆動部22は、ギャップ量を、定間隔ギャップ量及びピーク対応ギャップ量に段階的に変化させ、分光測定部24は、各定間隔ギャップ量、ピーク対応ギャップ量に対する光強度を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光測定装置、及び分光測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに対向する一対の反射膜を有し、この反射膜間の距離を変化させることで、測定対象の光から所定波長の光を取り出す波長可変干渉フィルターが知られている。また、このような波長可変干渉フィルターを用いて、測定対象の光の分光スペクトルを測定する分光測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1には、一対の基板の互いに対向する面にそれぞれ反射膜が設けられた波長可干渉フィルターを備えた光学装置が記載されている。この波長可変干渉フィルターは、電圧印加により反射膜間のギャップ(エアギャップ)を変化させることができる。そして、この光学装置では、エアギャップの基準位置を調整するために、波長可変干渉フィルターに印加する電圧を段階的に変化させて、波長可変干渉フィルターを透過した光の強度をモニターすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−308688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、分光測定装置では、測定対象光の分光スペクトルを取得するために、各波長に対する光強度を検出する。しかしながら、上記特許文献1に記載のように、波長可変干渉フィルターに印加する電圧を段階的に変化させたり、反射膜間のギャップを一定間隔で段階的に変化させたりする場合、正確な分光スペクトルが得られない場合がある。
図7は、従来の分光測定装置により得られた分光スペクトルを示す図である。図7において、破線は、実際の測定対象光のスペクトル曲線を示し、プロット点は、従来の分光測定装置により測定された光強度、実線は、当該プロット点を結んで得られたスペクトル曲線を示す。
図7に示すように、測定波長の間隔を一定間隔として光強度を検出すると、隣り合う2つの測定波長の間にピーク波長を有するような測定対象光に対して、正確なピーク位置を検出することができない。したがって、このような測定により得られた測定波長の光強度に基づいてスペクトル曲線を求めたとしても、正確なスペクトル曲線を得ることができないという課題があった。
一方、測定波長の間隔を小さくすることで、測定対象光の正確なピーク位置を検出することもできるが、この場合、測定ピッチが短く、測定回数が多くなるため、測定に係る時間が増大するという課題があった。
【0006】
本発明は、精度の良い分光スペクトルを迅速に測定可能な分光測定装置、及び分光測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の波長可変干渉フィルターは、第一反射膜、前記第一反射膜に所定のギャップ量のギャップを介して対向する第二反射膜、及び前記ギャップ量を変化させるギャップ量変更部を備えた波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターにより取り出された光の光強度を検出する検出部と、前記波長可変干渉フィルターを制御し、測定対象光の分光スペクトルを測定する制御部と、を備えた分光測定装置であって、前記制御部は、前記波長可変干渉フィルターにより、前記測定対象光のピーク波長の光を取り出すためのギャップ量であるピーク対応ギャップ量を検出するピーク検出部と、前記ギャップ量変更部を制御して、前記ギャップのギャップ量を変化させるフィルター駆動部と、前記フィルター駆動部により設定されたギャップ量に対する光強度を取得し、分光スペクトルを測定する分光測定部と、を備え、前記フィルター駆動部は、前記ギャップのギャップ量を、所定の測定ピッチ毎の定間隔ギャップ量、及び前記ピーク対応ギャップ量に段階的に変化させ、前記分光測定部は、前記各定間隔ギャップ量、及び前記ピーク対応ギャップ量に対する光強度を取得することを特徴とする。
【0008】
本発明では、ピーク検出部により、測定対象光のピーク波長に対応したピーク対応ギャップ量を検出する。そして、フィルター駆動部は、ギャップのギャップ量を、一定の測定ピッチ間隔となる複数の定間隔ギャップ量と、ピーク検出部により検出されたピーク対応ギャップ量と、に段階的に変化させる。そして、分光測定部は、これらの各ギャップ量に対する光強度を測定する。
このため、本発明では、定間隔ギャップ量に対応して取り出された光の光強度だけでなく、測定対象光のピーク波長の光の光強度を取得することができる。ここで、本発明で述べる「測定対象光のピーク波長」とは、測定対象光の正確なピーク波長に加え、ピーク波長から僅かにずれる場合も含むものである。
この場合、定間隔ギャップ量の間隔である測定ピッチを大きめに設定した場合であっても、ピーク対応ギャップ量に対応した光強度の測定を実施することで、測定により得られた分光スペクトルのピーク位置が、測定対象光のピーク位置を一致もしくは近似させることができる。これにより、精度の高い分光スペクトルの測定を実施することができる。
また、例えばピーク対応ギャップ量を検出せず、測定ピッチを短く設定することで、分光スペクトルの精度を向上させる場合に比べて、ギャップ量の設定回数を少なくでき、測定を迅速に実施することができる。
以上により、本発明では、精度の良い分光スペクトルを迅速に測定することができる。
【0009】
本発明の分光測定装置において、当該分光測定装置の動作モードを、前記ピーク対応ギャップ量を検出するピーク検出モード、及び、前記測定対象光の分光スペクトルを測定する測定モードのいずれかに切り替えるモード切替部を備え、前記モード切替部により、前記ピーク検出モードに切り替えられた際、前記フィルター駆動部は、前記ギャップのギャップ量を連続的に変化させ、前記ピーク検出部は、前記検出部により検出される光強度の変化状態に基づいて、光強度の極大点を検出し、当該極大点が検出された際に前記フィルター駆動部により設定されたギャップ量を前記ピーク対象ギャップ量として検出することが好ましい。
【0010】
本発明によれば、ピーク検出モードでは、光強度の正確な値を検出する必要がなく、ピーク位置を検出できればよい。この場合、反射膜間のギャップのギャップ量を連続的に変化させ(スイープさせ)、検出部から検出された光強度の変化の変化状態から極大点を検出することで、容易に、かつ迅速に、ピーク波長を検出することができる。
この場合、例えばギャップ量を段階的に変化させ、各段階においてギャップ量の変動がなくなるまで待機し、ギャップ量の変動がなくなった時点で光強度を検出するといった手順を、繰り返して実施するような方法に比べて、迅速に測定対象光のピーク波長の位置を検出できる。すなわち、ピーク検出部は、迅速にピーク対応ギャップ量を検出することができ、迅速に測定モードに移行できるので、分光測定に係る時間も短縮することができる。
【0011】
本発明の分光測定装置において、前記ギャップ量変更部は、印加される電圧の大きさに応じて前記ギャップのギャップ量を変化させ、前記モード切替部により、前記ピーク検出モードに切り替えられた際、前記フィルター駆動部は、前記ギャップ変更部に印加する電圧を、前記測定ピッチよりも小さいピーク検出ピッチに対応した電圧間隔で段階的に変化させることが好ましい。
【0012】
ここで、ピーク検出モードでは、上述したように、ギャップ量の変動が静止するまで待つ必要がない。
本発明では、フィルター駆動部は、ギャップ量変更部に対して印加するステップ電圧を、ピーク検出ピッチに対応した電圧間隔で段階的に変化させる。この時、ピーク検出モードでは、正確な光強度の検出が不要で、ピーク波長の位置を検出できればよい。したがって、フィルター駆動部は、電圧を変化させた後、ギャップ量の変動がなくなるまで待機する必要がなく、所定の間隔で順次電圧を変化させ、連続的にギャップ量を変更させればよい。
そして、本発明では、ピーク検出部は、検出部により検出された光強度の変化状態に基づいて、光強度の極大点を検出し、当該極大点が検出された際、フィルター駆動部により設定された電圧を取得することで、波長可変干渉フィルターからピーク波長の光を取り出すために必要なステップ電圧(ピーク対応電圧)を容易に取得することができる。
なお、ギャップ量変更部に印加される電圧と、当該電圧の印加により設定されるギャップ量とは、それぞれ対応した値となるので、波長可変干渉フィルターからピーク波長の光を取り出すための電圧を検出することは、ピーク対応ギャップを検出することを意味する。
また、本発明では、フィルター駆動部は、測定ピッチよりも小さいピーク検出ピッチに対応した電圧間隔で、ギャップ量変更部に印加する電圧を変化させるので、測定ピッチでは検出できないピーク波長をも精度よく検出することができる。
【0013】
本発明の分光測定装置において、前記ギャップ量変更部は、印加される電圧の大きさに応じて前記ギャップのギャップ量を変化させ、前記モード切替部により前記ピーク検出モードに切り替えられた際、前記フィルター駆動部は、前記ギャップ量変更部に対して連続的に変化するアナログ電圧を印加することが好ましい。
本発明では、ピーク検出モードにおいて、フィルター駆動部は、ギャップ量変更部に対して連続的に変化するアナログ電圧を印加してギャップ量を連続的に変化させる。
この場合、ギャップ量変更部に印加される電圧値をモニターし、光強度の極大点が検出されたタイミングにおける電圧値を読み取ることで、容易に、波長可変干渉フィルターからピーク波長の光を取り出すために必要なピーク対応電圧を取得することができる。
また、この場合、モニターする電圧値は連続的に変化する値であるため、例えば一定ピッチ間隔のステップ電圧からピーク対応電圧を取得する場合に比べて、より正確なピーク対応電圧を取得することができる。
【0014】
本発明の分光測定装置において、前記検出部は、検出した光の光強度に応じた検出信号を出力し、当該分光測定装置は、前記検出信号を微分処理する微分回路を備え、前記ピーク検出部は、前記微分回路により微分処理された前記検出信号に基づいて、前記ピーク対応ギャップ量を検出することが好ましい。
本発明によれば、検出部から出力された検出信号は、微分回路に入力され、微分回路により処理された信号に基づいて、測定対象光のピーク波長を検出する。つまり、微分回路では、検出信号の信号変化量が算出される。したがって、ピーク検出部は、信号変化量が0となる位置を検出することで、容易に測定対象光におけるピーク波長の位置を検出することができる。
【0015】
本発明の分光測定方法は、第一反射膜、前記第一反射膜に所定ギャップ量のギャップを介して対向する第二反射膜、及び電圧が印加されることで前記ギャップ量を変化させるギャップ量変更部を備えた波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターにより取り出された光の光強度を検出する検出部と、前記波長可変干渉フィルターを制御し、測定対象光の分光スペクトルを測定する制御部と、を備えた分光測定装置における分光測定方法であって、前記制御部は、前記波長可変干渉フィルターにより、前記測定対象光のピーク波長の光を取り出すためのギャップ量であるピーク対応ギャップ量を検出するピーク検出ステップと、前記ピーク検出ステップの後、前記測定対象光の分光スペクトルを測定する測定ステップと、を実施し、前記測定ステップは、前記ギャップのギャップ量を、所定の測定ピッチ毎の定間隔ギャップ量、及び前記ピーク波長に対応したピーク対応ギャップ量に段階的に変化させ、前記各定間隔ギャップ量及び前記ピーク対応ギャップ量に対する光強度を取得し、分光スペクトルを測定することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、測定対象光のピーク波長を検出するピーク検出ステップを実施した後、測定ステップを実施する。この測定ステップでは、一定の測定ピッチ毎の定間隔ギャップ量、及び取得されたピーク波長に対応したピーク対応ギャップ量に段階的に変化させ、分光測定部は、各ギャップ量に対する光強度を測定する。
このため、本発明では、上記発明と同様に、定間隔ギャップ量に対応して取り出された光の光強度だけでなく、測定対象光のピーク波長の光の光強度を取得することができ、より測定対象光に近い分光スペクトルを測定することができる。
また、例えば測定ピッチよりも短いピッチで詳細な分光測定を実施する場合に比べて、迅速な測定を実施できる。
以上により、本発明では、精度の良い分光スペクトルを迅速に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る第一実施形態の分光測定装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す平面図。
【図3】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図4】第一実施形態の分光測定装置の分光測定方法を示すフローチャート。
【図5】第一実施形態の分光測定装置により測定されたスペクトル曲線。
【図6】第二実施形態の分光測定装置の概略構成を示すブロック図。
【図7】従来の分光測定装置により得られたスペクトル曲線。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態を図面に基づいて説明する。
[分光測定装置の構成]
図1は、本発明に係る分光測定装置の概略構成を示すブロック図である。
分光測定装置1は、測定対象光における各波長の光強度を分析し、分光スペクトルを測定する装置である。また、本実施形態では、測定対象Xとして特に限定されないが、特に、特定の波長において鋭いピーク波長を有する光源装置や、発光体に対して、より有利に分光スペクトルの測定を実施することができる。
この分光測定装置1は、図1に示すように、波長可変干渉フィルター5と、ディテクター11(検出部)と、I−V変換器12と、アンプ13と、A/D変換器14と、電圧制御部15と、制御回路部20と、を備えている。
【0019】
ディテクター11は、波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光し、受光した光の光強度に応じた検出信号(電流)を出力する。
I−V変換器12は、ディテクター11から入力された検出信号を電圧値に変換し、アンプ13に出力する。
アンプ13は、I−V変換器12から入力された検出信号に応じた電圧(検出電圧)を増幅する。
A/D変換器14は、アンプ13から入力された検出電圧(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、制御回路部20に出力する。
電圧制御部15は、制御回路部20の制御に基づいて、波長可変干渉フィルター5の後述する静電アクチュエーター56に対して駆動電圧を印加する。
【0020】
[波長可変干渉フィルターの構成]
ここで、分光測定装置1に組み込まれる波長可変干渉フィルター5について、以下説明する。図2は、波長可変干渉フィルターの概略構成を示す平面図である。図3は、図2をIII−III線で断面し断面図である。
波長可変干渉フィルター5は、図2に示すように、例えば矩形板状の光学部材である。この波長可変干渉フィルター5は、図3に示すように、固定基板51および可動基板52を備えている。これらの固定基板51及び可動基板52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。そして、これらの固定基板51及び可動基板52は、固定基板51の第一接合部513及び可動基板の第二接合部523が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜などにより構成された接合膜53(第一接合膜531及び第二接合膜532)により接合されることで、一体的に構成されている。
【0021】
固定基板51には、本発明の第一反射膜を構成する固定反射膜54が設けられ、可動基板52には、本発明の第二反射膜を構成する可動反射膜55が設けられている。これらの固定反射膜54および可動反射膜55は、反射膜間ギャップG1(本発明のギャップ)を介して対向配置されている。そして、波長可変干渉フィルター5には、この反射膜間ギャップG1のギャップ量を調整(変更)するのに用いられる静電アクチュエーター56が設けられている。この静電アクチュエーター56は、本発明におけるギャップ量変更部に相当する。この静電アクチュエーター56は、固定基板51に設けられた固定電極561と、可動基板52に設けられた可動電極562とにより構成されている。これらの固定電極561,可動電極562は、電極間ギャップG2を介して対向する。ここで、これらの電極561,562は、それぞれ固定基板51及び可動基板52の基板表面に直接設けられる構成であってもよく、他の膜部材を介して設けられる構成であってもよい。ここで、電極間ギャップG2のギャップ量は、反射膜間ギャップG1のギャップ量より大きい。
また、波長可変干渉フィルター5を固定基板51(可動基板52)の基板厚み方向から見た図2に示すようなフィルター平面視において、固定基板51及び可動基板52の平面中心点Oは、固定反射膜54及び可動反射膜55の中心点と一致し、かつ後述する可動部521の中心点と一致する。
なお、以降の説明に当たり、固定基板51または可動基板52の基板厚み方向から見た平面視、つまり、固定基板51、接合膜53、及び可動基板52の積層方向から波長可変干渉フィルター5を見た平面視を、フィルター平面視と称する。
【0022】
(固定基板の構成)
固定基板51には、エッチングにより電極配置溝511および反射膜設置部512が形成されている。この固定基板51は、可動基板52に対して厚み寸法が大きく形成されており、固定電極561および可動電極562間に電圧を印加した際の静電引力や、固定電極561の内部応力による固定基板51の撓みはない。
また、固定基板51の頂点C1には、切欠部514が形成されており、波長可変干渉フィルター5の固定基板51側に、後述する可動電極パッド564Pが露出する。
【0023】
電極配置溝511は、フィルター平面視で、固定基板51の平面中心点Oを中心とした環状に形成されている。反射膜設置部512は、前記平面視において、電極配置溝511の中心部から可動基板52側に突出して形成されている。この電極配置溝511の溝底面は、固定電極561が配置される電極設置面511Aとなる。また、反射膜設置部512の突出先端面は、反射膜設置面512Aとなる。
また、固定基板51には、電極配置溝511から、固定基板51の外周縁の頂点C1,頂点C2に向かって延出する電極引出溝511Bが設けられている。
【0024】
電極配置溝511の電極設置面511Aには、固定電極561が設けられている。より具体的には、固定電極561は、電極設置面511Aのうち、後述する可動部521の可動電極562に対向する領域に設けられている。また、固定電極561上に、固定電極561及び可動電極562の間の絶縁性を確保するための絶縁膜が積層される構成としてもよい。
そして、固定基板51には、固定電極561の外周縁から、頂点C2方向に延出する固定引出電極563が設けられている。この固定引出電極563の延出先端部(固定基板51の頂点C2に位置する部分)は、電圧制御部15に接続される固定電極パッド563Pを構成する。
なお、本実施形態では、電極設置面511Aに1つの固定電極561が設けられる構成を示すが、例えば、平面中心点Oを中心とした同心円となる2つの電極が設けられる構成(二重電極構成)などとしてもよい。
【0025】
反射膜設置部512は、上述したように、電極配置溝511と同軸上で、電極配置溝511よりも小さい径寸法となる略円柱状に形成され、当該反射膜設置部512の可動基板52に対向する反射膜設置面512Aを備えている。
この反射膜設置部512には、図3に示すように、固定反射膜54が設置されている。この固定反射膜54としては、例えばAg等の金属膜や、Ag合金等の合金膜を用いることができる。また、例えば高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜を用いてもよい。さらに、誘電体多層膜上に金属膜(又は合金膜)を積層した反射膜や、金属膜(又は合金膜)上に誘電体多層膜を積層した反射膜、単層の屈折層(TiOやSiO等)と金属膜(又は合金膜)とを積層した反射膜などを用いてもよい。
【0026】
また、固定基板51の光入射面(固定反射膜54が設けられない面)には、固定反射膜54に対応する位置に反射防止膜を形成してもよい。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、固定基板51の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
【0027】
そして、固定基板51の可動基板52に対向する面のうち、エッチングにより、電極配置溝511、反射膜設置部512、及び電極引出溝511Bが形成されない面は、第一接合部513を構成する。この第一接合部513には、第一接合膜531が設けられ、この第一接合膜531が、可動基板52に設けられた第二接合膜532に接合されることで、上述したように、固定基板51及び可動基板52が接合される。
【0028】
(可動基板の構成)
可動基板52は、図2に示すようなフィルター平面視において、平面中心点Oを中心とした円形状の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、保持部522の外側に設けられた基板外周部525と、を備えている。
また、可動基板52には、図2に示すように、頂点C2に対応して、切欠部524が形成されており、波長可変干渉フィルター5を可動基板52側から見た際に、固定電極パッド563Pが露出する。
【0029】
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、可動基板52の厚み寸法と同一寸法に形成されている。この可動部521は、フィルター平面視において、少なくとも反射膜設置面512Aの外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成されている。そして、この可動部521には、可動電極562及び可動反射膜55が設けられている。
なお、固定基板51と同様に、可動部521の固定基板51とは反対側の面には、反射防止膜が形成されていてもよい。このような反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、可動基板52の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させることができる。
【0030】
可動電極562は、電極間ギャップG2を介して固定電極561に対向し、固定電極561と同一形状となる環状に形成されている。また、可動基板52には、可動電極562の外周縁から可動基板52の頂点C1に向かって延出する可動引出電極564を備えている。この可動引出電極564の延出先端部(可動基板52の頂点C1に位置する部分)は、電圧制御部15に接続される可動電極パッド564Pを構成する。
可動反射膜55は、可動部521の可動面521Aの中心部に、固定反射膜54と反射膜間ギャップG1を介して対向して設けられる。この可動反射膜55としては、上述した固定反射膜54と同一の構成の反射膜が用いられる。
なお、本実施形態では、上述したように、電極間ギャップG2のギャップ量が反射膜間ギャップG1のギャップ量よりも大きい例を示すがこれに限定されない。例えば、測定対象光として赤外線や遠赤外線を用いる場合等、測定対象光の波長域によっては、反射膜間ギャップG1のギャップ量が、電極間ギャップG2のギャップ量よりも大きくなる構成としてもよい。
【0031】
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、可動部521よりも厚み寸法が小さく形成されている。このような保持部522は、可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により、可動部521を固定基板51側に変位させることが可能となる。この際、可動部521が保持部522よりも厚み寸法が大きく、剛性が大きくなるため、保持部522が静電引力により固定基板51側に引っ張られた場合でも、可動部521の形状変化が起こらない。したがって、可動部521に設けられた可動反射膜55の撓みも生じず、固定反射膜54及び可動反射膜55を常に平行状態に維持することが可能となる。
なお、本実施形態では、ダイアフラム状の保持部522を例示するが、これに限定されず、例えば、平面中心点Oを中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成などとしてもよい。
【0032】
基板外周部525は、上述したように、フィルター平面視において保持部522の外側に設けられている。この基板外周部525の固定基板51に対向する面は、第一接合部513に対向する第二接合部523を備えている。そして、この第二接合部523には、第二接合膜532が設けられ、上述したように、第二接合膜532が第一接合膜531に接合されることで、固定基板51及び可動基板52が接合されている。
【0033】
以上のような波長可変干渉フィルター5では、固定電極パッド563P及び可動電極パッド564Pがそれぞれ電圧制御部15に接続されている。したがって、電圧制御部15により、固定電極561及び可動電極562間に電圧が印加されることで、静電引力により可動部521が固定基板51側に変位する。これにより、反射膜間ギャップG1のギャップ量を所定量に変更することが可能となる。
【0034】
[制御回路部の構成]
図1に戻り、分光測定装置1の制御回路部20について、説明する。
制御回路部20は、例えばCPUやメモリー等が組み合わされることで構成され、分光測定装置1の全体動作を制御する。この制御回路部20は、図1に示すように、モード切替部21、フィルター駆動部22、ピーク検出部23、及び分光測定部24を備えている。
【0035】
モード切替部21は、分光測定装置1における動作モードを切り替える。具体的には、モード切替部21は、動作モードをピーク検出モードと、測定モードとのいずれかにを切り替える。
ピーク検出モードは、測定対象光のピーク波長、又は当該ピーク波長の光を波長可変干渉フィルター5から透過させるために必要な反射膜間ギャップG1のギャップ量(ピーク対応ギャップ量)、又は当該ピーク対応ギャップを設定するための静電アクチュエーターへの駆動電圧(ピーク対応電圧)を検出するための動作モードである。
測定モードは、測定対象光の各波長における光強度から、分光スペクトルを測定する動作モードである。
ここで、モード切替部21は、分光測定装置1による測定対象Xの分光スペクトルの測定処理が開始されると、まず、動作モードをピーク検出モードに切り替え、このピーク検出モードが終了すると、動作モードを測定モードに切り替える。
【0036】
フィルター駆動部22は、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に印加される駆動電圧を設定する。また、モード切替部21は、電圧制御部15を制御し、設定された駆動電圧を静電アクチュエーター56に印加させ、反射膜間ギャップG1のギャップ量を変化させる。
この時、フィルター駆動部22は、動作モードがピーク検出モードである場合、所定の電圧間隔で静電アクチュエーター56に印加する電圧を段階的に変化させる。ここで、この電圧間隔としては、反射膜間ギャップG1のギャップ量を、一定のピーク検出ピッチで変化させる場合に対応した間隔となる。このピーク検出ピッチとしては、例えば0.5nm〜2.5nm程度(測定波長間隔が1nm〜5.0nm)とされ、後述する測定ピッチに対して十分に小さい間隔となる。
また、ピーク検出モードでは、測定対象光におけるピーク位置が分かればよく、静電アクチュエーター56への印可電圧(ステップ電圧)を段階的に変化させる際に、各段階において、可動部521の振動が静止するまで待つ必要がない。つまり、フィルター駆動部22は、静電アクチュエーター56に印加するステップ電圧を一定の速度間隔で順次変化させてギャップ量を連続的に変動させる。
【0037】
一方、フィルター駆動部22は、動作モードが測定モードである場合、反射膜間ギャップG1のギャップ量を、測定ピッチ毎の定間隔ギャップ量と、ピーク検出モードで検出されたピーク波長に対応したギャップ量(ピーク対応ギャップ量)とに、段階的に変化させる。この場合、ディテクター11により高精度に光強度を検出する必要があるため、フィルター駆動部22は、ギャップ量を変化させる毎に、可動部521の振動が静止してギャップ量が安定するまで待機する。そして、光強度が測定されると、反射膜間ギャップG1のギャップ量を、次の設定ギャップ量(定間隔ギャップ量又はピーク対応ギャップ量)に設定する。
【0038】
ピーク検出部23は、動作モードがピーク検出モードである場合に、ディテクター11により検出された光強度の変化状態に基づいて、ピーク波長を検出する。そして、ピーク検出部23は、波長可変干渉フィルター5から当該ピーク波長の光を取り出すために、静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧(ピーク対応電圧)を検出する。
具体的には、ピーク検出部23は、ディテクター11により検出された光強度の変化状態から、極大点の位置(ピーク波長の位置)を検出する。そして、ピーク検出部23は、当該極大点が検出された際に静電アクチュエーター56に印加された駆動電圧(ピーク対応電圧)を取得する。
なお、静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧と、反射膜間ギャップG1のギャップ量とは、1対1の関係であり、それぞれ対応した値となる。したがって、ピーク検出部23がピーク対応駆動電圧を検出することは、ピーク検出部23がピーク波長に対応するピーク対応ギャップ量を取得することを意味する。
【0039】
また、本実施形態では、光強度の変化状態から、ピーク波長を検出し、当該ピーク波長が検出された際の静電アクチュエーター56への印加電圧から、ピーク対応駆動電圧を取得するが、これに限定されない。
例えば、波長可変干渉フィルター5の固定反射膜54及び可動反射膜55間に保持された静電容量を検出する静電容量検出用電極を備え、ピーク検出部23は、この静電容量検出用電極から出力値から、ピーク対応ギャップ量を検出する。そして、ピーク検出部23は、例えばメモリー等に記憶されたV−λ関係データ(駆動電圧と、ギャップ量(透過波長)との関係データ)に基づいて、ピーク対応駆動電圧を取得してもよい。
【0040】
分光測定部24は、動作モードが測定モードである場合に、フィルター駆動部22により設定された各設定ギャップ量に対応した光強度を取得し、分光スペクトルを測定する。また、分光測定部24は、測定結果から、スペクトル曲線(例えば図5参照)を作成してもよい。
【0041】
[分光測定装置による分光測定方法]
次に、上述した分光測定装置1による分光測定方法について、図面に基づいて説明する。
図4は、本実施形態の分光測定方法のフローチャートである。図5は、測定により得られたスペクトル曲線を示す図である。
図4に示すように、本実施形態の分光測定方法では、測定が開始されると、モード切替部21は、まず動作モードをピーク検出モードに設定する(S1)。
【0042】
S1でピーク検出モードに設定されると、制御回路部20は、反射膜間ギャップG1のギャップ量を変化させて、ピーク対応電圧を検出するピーク検出ステップを実施する(S2)。
このS2のピーク検出ステップでは、フィルター駆動部22は、電圧制御部15を制御して波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に印加する電圧を段階的に変化させる。この時、フィルター駆動部22は、反射膜間ギャップG1のギャップ量が、所定のピーク検出ピッチ(例えば1nm)で段階的に変化するよう、静電アクチュエーター56に印加させる駆動電圧を設定する。なお、これらの静電アクチュエーター56に印加させる駆動電圧の値は、例えば分光測定装置1の製造時において予め測定されており、メモリー等の記憶部に記憶しておけばよい。
また、この時、フィルター駆動部22は、ギャップ量が安定した値となるまで待機することなく、順次電圧を変化させてギャップ量を変化させる。つまり、フィルター駆動部22は、可動部521を一定速度で連続的に変位させる(スイープさせる)。
【0043】
上記のように、反射膜間ギャップG1のギャップ量を変動させると、波長可変干渉フィルター5から透過される光の波長も、反射膜間ギャップG1のギャップ量に応じて変化する。この透過光は、ディテクター11により受光され、ディテクター11から光強度に応じた検出信号が、I−V変換器12,アンプ13,A/D変換器14を介して制御回路部20に入力される。
そして、ピーク検出部23は、入力された検出信号に基づいて、ピーク検出ピッチ毎の光強度の変化から極大点を検出し、当該極大点が検出された際に静電アクチュエーター56に印加された駆動電圧(ピーク対応電圧)を取得する。なお、ピーク検出部23は、極大点のみに限らず、極小点をも検出してもよい。
【0044】
S2の処理の後、モード切替部21は、分光測定装置1の動作モードを測定モードに切り替える(S3)。
これにより、制御回路部20は、測定ステップを実施する(S4)。このS4の測定ステップでは、フィルター駆動部22は、電圧制御部15を制御して、静電アクチュエーター56に設定ギャップ量に対応した駆動電圧を印加させ、反射膜間ギャップG1のギャップ量を設定ギャップ量に設定する(S5)。この設定ギャップ量は、S2により取得されたピーク対応電圧に対応したピーク対応ギャップ量、及び反射膜間ギャップG1の初期ギャップ量から所定の測定ピッチ(例えば5nm)毎のギャップ量となる定間隔ギャップ量を含む。なお、S2において、光強度の変化における極大点に加え、極小点を検出した場合、この極小点に対応したギャップ量を設定ギャップ量として加えてもよい。この極小点におけるギャップ量に対応した駆動電圧としては、S2において、極小点が取得された際の駆動電圧を設定することができる。
そして、フィルター駆動部22は、これらの設定ギャップ量に対応した駆動電圧(ステップ電圧)を、電圧値が小さい順(設定ギャップ量が大きい順)に静電アクチュエーター56に印加する。
【0045】
また、測定モードでは、設定ギャップ量に対応する波長の光における光強度を高精度に測定する必要があるため、フィルター駆動部22は、静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧を切り替えた後、可動部521が静止して、反射膜間ギャップG1のギャップ量の変動がなくなるまでの時間(安定化時間)待機する。この安定化時間としては、例えば、設定するギャップ量毎に設定してもよく、また、可動部521を初期状態から最大量変位させた際に、当該可動部521が静止するまでの時間を安定化時間として設定してもよい。
そして、分光測定部24は、前記安定化時間の経過後にディテクター11により検出される光強度を測定する(S6)。また、分光測定部24は、測定された光強度と、当該光強度に対応する駆動電圧(又は駆動電圧に対応した設定ギャップ量、又はその設定ギャップ量に対応して波長可変干渉フィルター5から射出された光の波長)とを関連付けて、メモリー等の記憶部に記憶する。
【0046】
この後、制御回路部20は、測定が完了したか否かを判断する(S7)。つまり、全ての設定ギャップ量に対する光強度の測定が終了したか否かを判断する。
S7において「No」と判断された場合、S5の処理に戻り、フィルター駆動部22は、次の設定ギャップ量に対応する駆動電圧を静電アクチュエーター56に印加する。
一方、S7において「Yes」と判断された場合、分光測定部24は、各設定ギャップ量に対して得られた光強度に基づいて、測定対象光の分光スペクトルを測定する。なお、フィルター駆動部22は、図5に示すようなスペクトル曲線を生成してもよい。
【0047】
本実施形態の分光測定装置1では、以上のような分光測定方法を実施することで、定間隔ギャップ量に対応した波長間隔(例えば10nm間隔)の光強度(図5におけるA)に加え、測定対象光のピーク波長の光強度(図5のA)をも検出することが可能となる。したがって、測定対象光のピーク波長が、例えば定間隔ギャップ量に対応した波長間に存在する場合であっても、測定対象光のピーク波長を検出することができ、実際の測定対象光の分光スペクトルに対する誤差が少ない測定結果を得ることができる。
【0048】
[実施形態の作用効果]
本実施形態では、分光測定処理において、まずモード切替部21によりピーク検出モードに切り替えられ、ピーク検出ステップが実施される。このピーク検出ステップでは、フィルター駆動部22は、波長可変干渉フィルター5の可動部521をスイープさせて、反射膜間ギャップG1のギャップ量を変化させる。そして、ピーク検出部23は、ディテクター11から出力された検出信号に基づいて、測定対象光の光強度の変化状態から極大点を検出し、その極大点に対応したピーク対応電圧(ピーク対応ギャップ量)を検出する。
そして、ピーク検出ステップが終了すると、モード切替部21により測定モードに切り替えられ、制御回路部20は、測定ステップを実施する。この測定ステップでは、フィルター駆動部22は、静電アクチュエーター56に印加する電圧を、所定の測定ピッチ毎の定間隔ギャップ量に対応した駆動電圧、及びピーク検出ステップで検出されたピーク対応電圧に段階的に切り替えて、分光測定部24は、各駆動電圧印可時における光強度を測定する。
このため、測定ステップにおいて、所定波長間隔毎の光強度に加え、測定対象光のピーク波長に対する光強度を測定することができ、実際の測定対象光の分光スペクトルと近似する測定結果を得ることができる。
特に、特定の波長で鋭いピーク波長を有する発光体では、当該ピーク波長が、測定波長と測定波長の間に存在する場合がある。このような場合、等間隔毎の測定波長における光強度の測定では、ピーク波長に対する正確な光強度を測定することができない。これに対して、上記のような分光測定装置1では、上述のように、このような特定波長に強いピークを有する測定対象光であっても、精度の高い測定を実施することができる。
また、測定ステップでは、例えば1nm間隔等の微小間隔でギャップ量を変化させる場合に比べて、光強度の測定回数が少なくなるため、その分、測定に係る時間を短縮することができる。
以上により、本実施形態では、高精度な分光スペクトルを迅速に測定することができる。
【0049】
また、ピーク検出ステップにおいて、フィルター駆動部22は、測定ピッチよりも小さいピーク検出ピッチに対応した電圧間隔で、静電アクチュエーター56に印加するステップ電圧を順次切り替えて、反射膜間ギャップG1のギャップ量を連続的に変化させる。
このように、ギャップ量を連続的に変化させることで、例えばピーク検出ピッチ毎に可動部521を静止させて光強度を検出する場合に比べて、ピーク検出ステップに係る時間を短縮できるので、分光測定処理全体の時間の短縮にも貢献できる。
また、ピーク検出部23は、測定ピッチよりも短い間隔であるピーク検出ピッチ毎に、極大点の有無を検出することができ、測定ピッチに対応した波長間に位置するピーク波長をも精度よく検出することができる。さらに、ピーク検出部23は、極大点を検出した際に、当該極大点が検出された際の静電アクチュエーター56に印加されたステップ電圧がピーク対応電圧となるため、容易にピーク対応電圧を検出でき、ピーク検出ステップにおける処理の高速化を図ることができる。
【0050】
[第二実施形態]
次に本発明の第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態では、ピーク検出ステップにおいて、反射膜間ギャップG1のギャップ量がピーク検出ピッチで変動するように、静電アクチュエーター56に駆動電圧(ステップ電圧)を印加した。これに対して、第二実施形態では、ピーク検出ステップにおいて、反射膜間ギャップG1のギャップ量を連続的に変化させるアナログ電圧を印加する点で、上記第一実施形態と相違する。
【0051】
図6は、第二実施形態の分光測定装置1Aの概略構成を示すブロック図である。なお、上記第一実施形態と同様の構成については、同符号を付し、その説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態の分光測定装置1Aでは、波長可変干渉フィルター5と、ディテクター11と、I−V変換器12と、アンプ13と、A/D変換器14と、電圧制御部15と、微分回路16と、スイッチ回路17と、制御回路部20とを備える。
微分回路16は、I−V変換器12から入力された検出信号を微分する。すなわち、微分回路16から出力される処理信号は、検出信号の変化量を示す信号をなる。
スイッチ回路17は、モード切替部21により設定される動作モードに応じて、A/D変換器14に渡す信号を切り替える。具体的には、スイッチ回路17は、モード切替部21により動作モードがピーク検出モードに切り替えられた場合、微分回路16から入力された処理信号をA/D変換器14に出力する。一方、スイッチ回路17は、モード切替部21により動作モードが測定モードに切り替えられた場合、アンプ13により増幅された検出信号をA/D変換器14に出力する。
また、電圧制御部15は、静電アクチュエーター56に印加する電圧をモニターする電圧計(図示略)を備える。
【0052】
また、制御回路部20のフィルター駆動部22Aは、モード切替部21によりピーク検出モードに設定された場合、電圧制御部15を制御して、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に連続的に変化するアナログ電圧を印加させる。
なお、フィルター駆動部22Aは、モード切替部21により測定モードに設定された場合は、上記第一実施形態のフィルター駆動部22と同様の処理を実施する。
【0053】
ピーク検出部23Aは、微分回路16により処理された処理信号に基づいて、検出信号における極大点及び極小点を検出する。すなわち、微分回路16から出力される処理信号は、検出信号の変化量を示す信号となる。したがって、ピーク検出部23Aは、処理信号の値が「0」となる点を検出することで、極大点及び極小点を容易に検出することができる。
そして、ピーク検出部23Aは、極大点及び極小点が検出された際の電圧制御部15の電圧計の値を、ピーク対応電圧として取得する。
【0054】
上記のような第二実施形態の分光測定装置1Aでは、上記第一実施形態の分光測定装置1と略同様の分光測定処理(図4)より分光スペクトルを測定することができる。
具体的には、本実施形態の分光測定装置1Aでは、S1において、モード切替部21により動作モードがピーク検出モードに切り替えられると、スイッチ回路17は、微分回路16から入力された処理信号を、A/D変換器14を介して制御回路部20に出力させるよう、スイッチングする。
【0055】
そして、S2におけるピーク検出ステップでは、フィルター駆動部22Aは、上述したように、電圧制御部15を制御して、静電アクチュエーター56にアナログ電圧を印加する。これにより、反射膜間ギャップG1のギャップ量は、連続的に変化し、波長可変干渉フィルター5を透過する透過光の波長も連続的に変化する。
したがって、ディテクター11から出力される検出信号も連続的に変化する検出信号となり、微分回路16に入力されることで、極大点及び極小点が「0」となる処理信号を生成することができる。
そして、ピーク検出部23Aは、この処理信号に基づいて、極大点及び極小点を検出し、当該極大点及び極小点が検出された際の静電アクチュエーター56への印加電圧を計測することで、ピーク対応電圧を取得する。
【0056】
この後、S3において、モード切替部21により動作モードがピーク検出モードに切り替えられると、スイッチ回路17は、アンプ13から入力された検出信号を、A/D変換器14を介して制御回路部20に出力させるよう、スイッチングする。
この後、制御回路部20は、上記第一実施形態と同様に、S4(S5〜S8)の測定ステップを実施する。
【0057】
[実施形態の作用効果]
本実施形態の分光測定装置1Aでは、ピーク検出ステップにおいて、フィルター駆動部22Aは、静電アクチュエーター56に連続的に変化するアナログ電圧を印加し、ピーク検出部23Aは、微分回路16により微分処理された処理信号に基づいて、極大点及び極小点に対応したピーク対応電圧を取得する。このような構成では、ピーク検出ピッチで反射膜間ギャップG1のギャップ量を変化させる場合に比べて、より正確にピーク波長の位置を検出することができる。
つまり、上記第一実施形態で検出されるピーク対応電圧は、ピーク検出ピッチに対応した電圧間隔の値となるため、ピーク検出ピッチのピッチ幅によっては、検出されたピーク波長と測定対象光の実際のピーク波長が僅かにずれる場合がある。これに対して、本実施形態では、連続的に変化するアナログ電圧のうち、検出信号の極大点又は極小点が検出された時点での電圧値を計測して、ピーク対応電圧とする。このため、ピーク波長の光を波長可変干渉フィルター5により取り出すためのピーク対応電圧(又はピーク対応ギャップ量)をより正確に検出することができる。したがって、測定ステップにより測定される分光スペクトルとしても、より誤差が少ない精度の高い分光スペクトルを測定することができる。
【0058】
また、ピーク検出部23Aは、微分回路16により微分処理された処理信号に基づいて、検出信号の極大点及び極小点を検出する。この場合、ピーク検出部23Aは、信号値が「0」である否かを判断すればよく、極大点及び極小点の検出を容易に実施できる。
【0059】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0060】
例えば、上記実施形態では、ピーク検出ステップにおいて、G1のギャップ量を連続的に変化させるとしたが、例えば、ピーク検出ピッチでギャップ量を変動させた際に、所定時間待機時間を設け、段階的にギャップ量を変化させてもよい。この場合でも、ピーク検出ステップでは、光強度の極大点を検出すればよいため、正確な光強度を測定する必要がなく、通常の光強度の測定処理に対して短時間での処理が可能となる。
【0061】
上記実施形態では、波長可変干渉フィルター5のギャップ量変更部として、電圧印加により静電引力により反射膜間ギャップG1のギャップ量を変動させる静電アクチュエーター56を例示したが、これに限定されない。
例えば、固定電極561の代わりに、第一誘電コイルを配置し、可動電極562の代わりに第二誘電コイルまたは永久磁石を配置した誘電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。
さらに、静電アクチュエーター56の代わりに圧電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。この場合、例えば保持部522に下部電極層、圧電膜、および上部電極層を積層配置させ、下部電極層および上部電極層の間に印加する電圧を入力値として可変させることで、圧電膜を伸縮させて保持部522を撓ませることができる。
また、例えば、固定基板51及び可動基板52の間の空間を密閉空間とし、内部の空気圧を変化させることで反射膜間ギャップG1のギャップ量を変化させる波長可変干渉フィルターを用いてもよい。この場合、密閉空間の空気を例えばポンプ等を用いて加圧または減圧するが、フィルター駆動部22及び電圧制御部15により、ポンプを駆動させる際の電圧を変化させることで、上記実施形態と同様の動作を実施させることができる。
【0062】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更できる。
【符号の説明】
【0063】
1,1A…分光測定装置、5…波長可変干渉フィルター、11…ディテクター(検出部)、15…電圧制御部、20…制御回路部(制御部)、21…モード切替部、22,22A…フィルター駆動部、23,23A…ピーク検出部、24…分光測定部、54…固定反射膜(第一反射膜)、55…可動反射膜(第二反射膜)、56…静電アクチュエーター(ギャップ量変更部)、561…固定電極、562…可動電極、G1…反射膜間ギャップ(ギャップ)、X…測定対象。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一反射膜、前記第一反射膜に所定のギャップ量のギャップを介して対向する第二反射膜、及び前記ギャップ量を変化させるギャップ量変更部を備えた波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターにより取り出された光の光強度を検出する検出部と、
前記波長可変干渉フィルターを制御し、測定対象光の分光スペクトルを測定する制御部と、を備えた分光測定装置であって、
前記制御部は、
前記波長可変干渉フィルターにより、前記測定対象光のピーク波長の光を取り出すためのギャップ量であるピーク対応ギャップ量を検出するピーク検出部と、
前記ギャップ量変更部を制御して、前記ギャップのギャップ量を変化させるフィルター駆動部と、
前記フィルター駆動部により設定されたギャップ量に対する光強度を取得し、分光スペクトルを測定する分光測定部と、を備え、
前記フィルター駆動部は、前記ギャップのギャップ量を、所定の測定ピッチ毎の定間隔ギャップ量、及び前記ピーク対応ギャップ量に段階的に変化させ、
前記分光測定部は、前記各定間隔ギャップ量、及び前記ピーク対応ギャップ量に対する光強度を取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分光測定装置において、
当該分光測定装置の動作モードを、前記ピーク対応ギャップ量を検出するピーク検出モード、及び、前記測定対象光の分光スペクトルを測定する測定モードのいずれかに切り替えるモード切替部を備え、
前記モード切替部により、前記ピーク検出モードに切り替えられた際、
前記フィルター駆動部は、前記ギャップのギャップ量を連続的に変化させ、
前記ピーク検出部は、前記検出部により検出される光強度の変化状態に基づいて、光強度の極大点を検出し、当該極大点が検出された際に前記フィルター駆動部により設定されたギャップ量を前記ピーク対象ギャップ量として検出する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の分光測定装置において、
前記ギャップ量変更部は、印加される電圧の大きさに応じて前記ギャップのギャップ量を変化させ、
前記モード切替部により、前記ピーク検出モードに切り替えられた際、
前記フィルター駆動部は、前記ギャップ変更部に印加する電圧を、前記測定ピッチよりも小さいピーク検出ピッチに対応した電圧間隔で段階的に変化させる
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項4】
請求項2に記載の分光測定装置において、
前記ギャップ量変更部は、印加される電圧の大きさに応じて前記ギャップのギャップ量を変化させ、
前記モード切替部により前記ピーク検出モードに切り替えられた際、
前記フィルター駆動部は、前記ギャップ量変更部に対して連続的に変化するアナログ電圧を印加する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の分光測定装置において、
前記検出部は、検出した光の光強度に応じた検出信号を出力し、
当該分光測定装置は、前記検出信号を微分処理する微分回路を備え、
前記ピーク検出部は、前記微分回路により微分処理された前記検出信号に基づいて、前記ピーク対応ギャップ量を検出する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項6】
第一反射膜、前記第一反射膜に所定ギャップ量のギャップを介して対向する第二反射膜、及び電圧が印加されることで前記ギャップ量を変化させるギャップ量変更部を備えた波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターにより取り出された光の光強度を検出する検出部と、前記波長可変干渉フィルターを制御し、測定対象光の分光スペクトルを測定する制御部と、を備えた分光測定装置における分光測定方法であって、
前記制御部は、
前記波長可変干渉フィルターにより、前記測定対象光のピーク波長の光を取り出すためのギャップ量であるピーク対応ギャップ量を検出するピーク検出ステップと、
前記ピーク検出ステップの後、前記測定対象光の分光スペクトルを測定する測定ステップと、を実施し、
前記測定ステップは、
前記ギャップのギャップ量を、所定の測定ピッチ毎の定間隔ギャップ量、及び前記ピーク波長に対応したピーク対応ギャップ量に段階的に変化させ、前記各定間隔ギャップ量及び前記ピーク対応ギャップ量に対する光強度を取得し、分光スペクトルを測定する
ことを特徴とする分光測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64640(P2013−64640A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203285(P2011−203285)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】