説明

分子配向が制御された有機絶縁性フィルムおよびそれを用いた接着フィルム、フレキシブル金属張積層板、多層フレキシブル金属張積層板、カバーレイフィルム、TAB用テープ、COF用ベーステープ

【課題】
本発明は、連続的に生産される有機絶縁フィルムであって全幅において特定の物性を有する新規な有機絶縁フィルムおよびこれを用いた接着フィルム、フレキシブル金属張積層板、多層フレキシブル金属張積層板、カバーレイフィルム、TAB用テープ、COF用ベーステープを提供するものである。
【解決手段】連続的に生産される有機絶縁性フィルムであって、フィルムの全幅において下記(1)〜(3)を満たす有機絶縁性フィルムによって上記課題を解決しうる。(1)フィルムのMOR−c値が1.05以上5.0以下、(2)分子鎖主軸配向角がMD方向に対して−30から30度、(3)フィルムMOR−c値の最大値と最小値の差が1.0以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に生産される有機絶縁性フィルムであって、全幅にわたって、フィルムのMD方向(長手方向)、TD方向(フィルム巾方向)に均一に配向した有機絶縁性フィルムおよびそれを用いた接着フィルム、フレキシブル金属張積層板、多層フレキシブル金属張積層板、カバーレイフィルム、TAB用テープ、COF用ベーステープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機絶縁性フィルムは、工業用途に供せられているが、なかでも、ポリイミドフィルムは、高耐熱性、高電気絶縁性を有することから耐熱性を必要とする電気絶縁用素材として広範な産業分野で使用されており、特に金属箔が積層された電気配線板の支持体としての用途においては例えばIC等の電気部品と銅箔との接続にハンダを使用することができ、電気配線の小型軽量化が可能となった。またポリイミドフィルムを支持体とする電気配線板は折り曲げが可能であり、長尺の電気配線板が作成できることからこのポリイミドフィルムは電気絶縁用支持体として重要な位置を占めるに至った。しかしながら電気配線板の用途の多様化と共に配線数の高密度化の進展に伴って電気絶縁用支持体としての力学的性質およびその面内等方性や寸法安定性の改善がより求められている。
【0003】
エレクトロニクスの技術分野においては、益々高密度実装の要求が高くなり、それに伴いフレキシブルプリント配線板(以下、FPCという)を用いる技術分野においても、高密度実装の要求が高くなってきている。FPCの製造工程において、寸法変化率が大きい工程はエッチング工程の前後であり、この工程の前後においてFPCの寸法変化率が小さいこと、または/及び寸法変化率のバラツキが小さいことが高密度実装をするために要求されている。
【0004】
フレキシブル金属張積層板においてエッチングによって金属箔の少なくとも一部を除去する前後の寸法変化率は、通常、エッチング工程前のフレキシブル金属張積層板における所定の寸法およびエッチング工程後の所定の寸法の差分と、上記エッチング工程前の所定の寸法との比で表される。寸法変化率が、フレキシブル金属張積層板面内においてその値が均一であれば、すなわち、フレキシブル金属張積層板面内の全方向にて寸法変化率の値が均一であれば、配線形成後のフレキシブル金属張積層板へ部品を搭載する際に、補正係数を加味することで実装する部品と基板とが良好に接続することが可能となる。全方向において、寸法変化率が均一であるフィルムとは、理想的には等方的なフィルムである。
【0005】
しかし、全幅において等方的なフィルムの製造方法が種々検討されているが、必ずしも十分ではない。等方的なフィルムを用いてFPCを製造する場合、非等方的に変化する寸法変化の量を計算した上で、設計を行うことが可能であるが、全幅において、等方的でなくても、全幅において均一な物性であればよく、全幅においてMD方向に配向したフィルムも有用と考えられる。しかし、連続的に生産される有機絶縁性フィルムであって、フィルムの全幅において、
(1)MOR−c値が1.05以上5.0以下、
(2)分子鎖主軸配向角がMD方向に対して−30から30度、
(3)フィルムMOR−c値の最大値と最小値の差が1.0以下
を満たすフィルムは、今のところ知られていない。
【0006】
一方、特許文献1には、ポリイミドフィルムの機械的送り方向(MD方向)の線膨張係数と機械的送り方向と直交する方向(TD方向)の線膨張係数の比を設定することによって、得られるFPCの寸法安定性を改良する試みがなされている。そして、フィルムの線膨張係数の比を特定の値にするために、MD方向およびTD方向に延伸を行っている。しかし、具体的に開示されているのは、自己支持性を有するポリアミック酸膜の両端を固定した状態でのMD方向への延伸であり、連続的なフィルム製造プロセスで得られる、全幅にわたって長手方向に均一に配向したフィルムについては開示されていない。
【0007】
また、FPCの代表的な製造方法として、柔軟性を有する有機絶縁性フィルムを基板とし、この基板の表面に、各種接着材料を介して金属箔を加熱・圧着することにより貼りあわせる方法がある。上記絶縁性フィルムとしては、ポリイミドフィルム等が好ましく用いられている。上記接着材料としては、エポキシ系、アクリル系等の熱硬化性接着剤が一般的に用いられている(これら熱硬化性接着剤を用いたFPCを以下、三層FPCともいう)。
【0008】
熱硬化性接着剤は比較的低温での接着が可能であるという利点がある。しかし今後、耐熱性、屈曲性、電気的信頼性といった要求特性が厳しくなるに従い、熱硬化性接着剤を用いた三層FPCでは対応が困難になると考えられる。これに対し、絶縁性フィルムに直接金属層を設けたり、接着層に熱可塑性ポリイミドを使用したFPC(以下、二層FPCともいう)が提案されている。この二層FPCは、三層FPCより優れた特性を有し、今後需要が伸びていくことが期待される。
【0009】
二層FPCに用いるフレキシブル金属張積層板の作製方法としては、金属箔上にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を流延、塗布した後イミド化するキャスト法、スパッタ、メッキによりポリイミドフィルム上に直接金属層を設けるメタライジング法、熱可塑性ポリイミドを介してポリイミドフィルムと金属箔とを貼り合わせるラミネート法が挙げられる。この中で、ラミネート法は、対応できる金属箔の厚み範囲がキャスト法よりも広く、装置コストがメタライジング法よりも低いという点で優れている。ラミネートを行う装置としては、ロール状の材料を繰り出しながら連続的にラミネートする熱ロールラミネート装置またはダブルベルトプレス装置等が用いられている。上記の内、生産性の点から見れば、熱ロールラミネート法をより好ましく用いることができる。
【0010】
従来の三層FPCをラミネート法で作製する際、接着層に熱硬化性樹脂を用いていたため、ラミネート温度は200℃未満で行うことが可能であった(特許文献2参照)。これに対し、二層FPCは熱可塑性ポリイミドを接着層として用いるため、熱融着性を発現させるために200℃以上、場合によっては400℃近くの高温を加える必要がある。そのため、ラミネートされて得られたフレキシブル金属張積層板に残留歪みが発生し、エッチングして配線を形成する際、並びに部品を実装するために半田リフローを行う際に寸法変化となって現れる。
【0011】
特にラミネート法の一例を挙げると、ポリイミドフィルム上に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設ける際に、熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を流延、塗布した後に連続的に加熱してイミド化を行い、金属箔を貼り合わせる方法があるが、イミド化の工程だけでなく、金属層を張り合わせる際も連続的に加熱加圧を行うため、材料は張力がかけられた状態で加熱環境下に置かれることが多い。その結果、フレキシブル積層板から金属箔をエッチングする際と、半田リフローを通して加熱する際にこの歪みが解放され、これらの工程の前後で寸法変化となって現れる場合が多かった。
【0012】
近年、電子機器の小型化、軽量化を達成するために、基板に設けられる配線は微細化が進んでおり、実装する部品も小型化、高密度化されたものが搭載される。そのため、微細な配線を形成した後の寸法変化が大きくなると、設計段階での部品搭載位置からずれて、部品と基板とが良好に接続されなくなるという問題が生じる。
そこで、ラミネート圧力の制御や、接着フィルムの張力制御により、寸法変化を抑える試みがなされている(特許文献2または3参照)。しかしながら、これらの手段により寸法変化は改善されるものの、まだ充分ではなく、更なる寸法変化の改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−199830号公報
【特許文献2】特開2000−309051
【特許文献3】特開2002−326308号公報
【特許文献4】特開2002−326280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、連続的に生産される有機絶縁フィルムであって全幅において特定の物性を有する新規な有機絶縁フィルムを提供するものであり、FCCL(フレキシブル銅張り積層体)・FPC(フレキシブルプリント配線板)を連続的に生産しても、全幅にわたって、全方向において(例えば、MD方向、TD方向、斜め45°方向)寸法変化、さらには寸法変化のバラツキの少ないFCCLやFPCを製造しうるポリイミドフィルムおよびこれを用いた接着フィルム、フレキシブル金属張積層板、多層フレキシブル金属張積層板、カバーレイフィルム、TAB用テープ、COF用ベーステープを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1. 連続的に生産される有機絶縁性フィルムであって、フィルムの全幅において下記(1)〜(3)を満たす有機絶縁性フィルム。
(1)フィルムのMOR−c値が1.05以上5.0以下、
(2)分子鎖主軸配向角がMD方向に対して−30から30度、
(3)フィルムMOR−c値の最大値と最小値の差が1.0以下
2.前記有機絶縁性フィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とする1記載の有機絶縁性フィルム。
3.前記ポリイミドフィルムが下記一般式1,2で示される繰り返し単位の内少なくとも1種を有するポリイミド樹脂を含有するポリイミドフィルムであることを特徴とする2記載の有機絶縁性フィルム。
【0016】
【化1】

【0017】
一般式1
式中R1は
【0018】
【化2】

【0019】
から選ばれる2価の有機基(式中R2は、−CH、−Cl、−Br、−F または−CHO)であり、
Rは、
【0020】
【化3】

【0021】
(式中nは1〜3の整数 Xは、水素、ハロゲン、カルボキシル基、炭素数6以下の低級アルキル基、炭素数6以下の低級アルコキシル基から選ばれる1価の置換基を表す)及び/または
【0022】
【化4】

【0023】
(式中Y、Zは、水素、ハロゲン、カルボキシル基、炭素数6以下の低級アルキル基、炭素数6以下の低級アルコキシル基から選ばれる1価の置換基を表し、Aは−O−、−S−、−CO−、−SO−、−CH−から選ばれる2価の連結基を表す)で表される2価の有機基である。
【0024】
【化5】

【0025】
(式中Rは、一般式1のRと同じであり、R3は、
【0026】
【化6】

【0027】
から選ばれる4価の有機基である。)
4.前記有機絶縁性フィルムは、少なくとも下記(A)〜(C)、
(A)高分子と有機溶剤を含む組成物を支持体上に連続的に流延・塗布し、ゲルフィルムを形成する工程、
(B)ゲルフィルムを支持体から引き剥がしゲルフィルムの両端を固定する工程、
(C)フィルムの両端を固定しながら加熱炉内を搬送する工程、
を含む有機絶縁性フィルムの製造方法により生産されることを特徴とする1〜3のいずれか一に記載の有機絶縁性フィルム。
5.前記有機絶縁性フィルムがポリイミドフィルムであり、(A)工程で用いる高分子がポリアミド酸であることを特徴とする4記載の有機絶縁フィルム。
6.幅500mm以上で連続的に生産して得られる1〜5のいずれか一に記載のポリイミドフィルム。
7.1〜6のいずれか一に記載の有機絶縁性フィルムを用いたフレキシブル金属張積層体。
8.1〜6のいずれか一に記載の有機絶縁性フィルムを用いたカバーレイフィルム。
9.1〜6のいずれか一に記載の有機絶縁性フィルムを用いたTAB用テープ。
10.1〜6のいずれか一に記載の有機絶縁性フィルムを用いたCOF用ベーステープ。
11.1〜6のいずれか一に記載の有機絶縁性フィルムを用いた多層フレキシブル配線板。
12.ポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けた接着フィルムであって、該接着フィルムは連続的に生産されるとともに、前記ポリイミドフィルムが、2〜6のいずれか一に記載のポリイミドフィルムであることを特徴とする接着フィルム。
13.前記接着フィルムの幅が250mm以上の長尺フィルムであることを特徴とする12記載の接着フィルム。
14.金属箔とともに、一対以上の金属ロールにより加熱および加圧して連続的に張り合わせられる12または13記載の接着フィルム。
15.12または13に記載の接着フィルムに金属箔を貼り合わせて得られることを特徴とする、フレキシブル金属張積層板。
16.ポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けた接着フィルムの製造方法であって、前記ポリイミドフィルムとして、2〜6のいずれか一に記載のポリイミドフィルムを用いて連続的に製造することを特徴とする接着フィルムの製造方法。
17.12または13記載の接着フィルムと金属箔とを加熱および加圧しながら連続的に張り合わせることを特徴とするフレキシブル金属張積層板の製造方法。
18.前記張り合わせ温度が、200℃以上であり、かつ前記熱可塑性ポリイミドのガラス転移点温度(Tg)+50℃以上であることを特徴とする17記載のフレキシブル金属張積層板の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、フィルムの幅方向の特性が均一となり該フィルムを用いることでFCCL(フレキシブル銅張り積層体)・FPC(フレキシブルプリント配線板)の製造工程中に発生する寸法変化(エッチング前後の寸法変化)を抑制すること可能となる。
【0029】
また、特に、フィルムと金属箔を加熱、加圧しながら貼り合わせるラミネート法で作製した際に寸法変化の発生が抑制されたフレキシブル金属張積層板が得られる接着フィルム、及びそれに金属箔を貼り合わせて得られるフレキシブル金属張積層板、特に幅250mm以上で連続的にラミネートした場合に、得られるフレキシブル金属張積層板の全幅において寸法変化率の安定性に優れる接着性フィルム、これを用いたフレキシブル金属張積層板、並びにその製造方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、分子配向角θの定義の説明図である。
【図2】図2は、ボーイング現象によって引き起こされるフィルム特性の面内バラツキイメージ図である。
【図3】図3は、端部固定フィルムを、両端固定をしない状態で、張力をかけながら加熱する方法の一例である。
【図4】図4は、端部固定フィルムを、両端固定をしない状態で、張力をかけながら加熱する方法の一例である。
【図5】図5は、熱風炉の一例である。
【図6】図6は、熱風炉の一例である。
【図7】図7は、輻射熱線ヒーター炉の一例である。
【図8】図8は、輻射熱線ヒーター炉の一例である。
【図9】図9は、熱風と輻射熱線を同時にフィルムに当てる炉の一例である。
【図10】図10は、熱風と輻射熱線を同時にフィルムに当てる炉の一例である。
【図11】図11は、ポリイミドフィルムの製造装置模式図である。
【図12】図12は、ポリイミドフィルムの把持装置間のフィルム把持状況を説明するための模式図である。
【図13】図13は、実施例及び比較例において配向度及び配向角を測定するためのサンプリング方法を示す図である。
【図14】図14は、寸法変化を測定するためのサンプリング方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[本発明の有機絶縁性フィルム]
本発明における有機絶縁性フィルムは、連続的に生産される有機絶縁性フィルムであって、フィルムの全幅においてMD方向に配向していることが必要である。すなわち、全幅において、下記(1)〜(3)を満たす有機絶縁性フィルムである。
(1)MOR−c値が1.05以上5.0以下、
(2)分子鎖主軸配向角がMD方向に対して−30から30度、
(3)フィルムMOR−c値の最大値と最小値の差が1.0以下
上記(1)〜(3)については、後述するように分子配向計を用いて測定した値である。分子配向計に供するサンプルは4cm×4cm角を使用する。そこで、本発明において全幅において上記(1)〜(3)を満たすとは、便宜上、ある幅をもって連続的に生産されるフィルムにおいて、4cm×4cm角のサンプルを次のように採取して測定し、どの位置においても上記(1)〜(3)を満たすことをいう。
【0032】
フィルム幅が1000mm以上であるフィルムでは、両端が含まれるよう、少なくとも等間隔に7点サンプルを採取する。フィルム幅が1000mmに満たないフィルムは、両端が含まれるよう、少なくとも等間隔に5点サンプルを採取する。この方法は、厳密には全幅において測定していないが、このように採取したサンプルすべてにおいて(1)〜(3)を満たせば、全幅においてサンプルを測定した場合にも(1)〜(3)を満たすと考えて良い。
【0033】
(MOR−cの測定)
フィルムの配向度合いを示す指標として用いるMOR並びにMOR−cについて説明する。MORとは、フィルム状またはシート状に成形された試料に、マイクロ波を照射した場合、吸収されたマイクロ波の透過強度が試料の異方性より異なることから、透過強度の差を表した極座標(配向パターン)の長軸と短軸の比を求めMOR値とし、分子配向状態を示す指標としたものである。なお、上記配向パターンから、配向角および異方性の程度を知ることができる。
【0034】
上述のように、フィルムの幅方向に対し、両端間を含め等間隔に、4cm×4cmのサンプルを切り出し、サンプルに搬送方向を明示する。このサンプルについて、分子配向計を用いMOR−c値を測定する。MOR−c値の測定は、KSシステムズ社製マイクロ波分子配向計MOA2012A型を用い測定することができる。このMOA2012A型によるMOR−c値の測定は、サンプル位置一点につき2分ほどしか測定時間を必要とせず、容易に測定することができる。
【0035】
MOR−c値は厚みに比例するため、本測定器で得られるMOR値を下式(1)を用いて厚みを75μmに換算したものとする。
MOR−c=(tc/t×(MOR−1))+1 ・・・ 式(1)
ここで、t =試料の厚み
tc=補正したい基準厚さ
MOR=上述の測定により得られた値
MOR−c=補正後のMOR値
上記式中、75をtcに代入して、補正後のMOR値を求める。得られたMCR−cの値は、MOR−cが、1.000に近いほど等方的フィルムであることを表す。従って、MCR−cの値は、面内分子配向を簡便に表す指標として用いうる。
【0036】
このようにして得られるフィルムMD方向のMOR−c値は、1.05以上5.0以下であることが好ましい。
【0037】
(フィルムの分子配向角)
分子配向角θの定義は以下のとおりである。上記のように採取したサンプルから、MOA2012型を用いて、フィルム面内での分子の配向方向(ε´の最大方位、ここで、ε´は、試料の誘電率である。)を角度の値として知ることができる。本発明においては、配向方向を示した直線を、その試料の「配向軸」とする。図1に示すように、フィルム中央部の長手方向(MD方向)にx軸をとり、ポリアミド酸を支持体上に流延させた際の進行方向を正の方向とする。このとき、x軸の正の方向と、前述の測定で得られた配向軸のなす角度を配向軸角度θとし、配向軸が第一象限及び第三象限にあるときの配向軸角度を正(0#<θ≦90#)、配向軸が第二象限及び第四象限にあるときの配向軸角度を負(−90#≦θ<0#)と定義する。
【0038】
分子鎖主軸配向角は、MD方向に対して−30から30度であり、好ましくは−20から20度であり、−15から15度であることが好ましい。
【0039】
(フィルムのMOR−c値の最大値と最小値の差)
フィルム全幅にわたって、MOR−c値を測定した場合の最大値と最小値の差は1.0以下が好ましい。更に好ましくは、0.8以下が好ましい。更に好ましくは0.6以下が好ましい。
【0040】
(本発明の有機絶縁性フィルムの物性)
上記の(1)〜(3)を満たすフィルムは、連続的にFCCLを製造した場合でも、フィルムの全幅にわたって寸法安定性の優れたFCCLを製造することができ、フィルムの有効利用が可能である。(1)〜(3)を満たすフィルムが寸法安定性に優れる理由は、FCCLのエッチング前後の寸法変化における課題と関係していると考えられる。本発明者らはFCCLのエッチング前後の寸法変化における課題を下記のように考えている。
【0041】
FCCLのエッチング前後の寸法変化は、フィルムの特性が幅方向で不均一であるために生じる問題である。その詳細を検討すると具体的には(1)FCCL寸法変化に影響を及ぼすフィルム特性は弾性率、線膨張係数、加熱収縮などであり、特に弾性率、線膨張係数が重要項目である。(2)ポリイミドフィルムは1000mm以上といった比較的フィルム幅が広く製造される場合、フィルム中央付近ではフィルム面内全方向にて上記特性などが均一である。一方、生産フィルム幅端部付近ではフィルム面内方向で特性が不均一となる(イメージ図を図2に示す)。特に顕著な傾向は、斜め方向での不均一性である場合が多い。この結果、FCCLのエッチング前後の寸法変化は、MD/TD方向ではフィルム全幅で差は少ないものの斜め方向の寸法変化がフィルムの幅方向の位置で大きく異なるため問題である。
【0042】
FCCLにおいてエッチングによって金属箔の少なくとも一部を除去する前後の寸法変化率は、通常、エッチング工程前のフレキシブル金属張積層板における所定の寸法およびエッチング工程後の所定の寸法の差分と、上記エッチング工程前の所定の寸法との比で表される。
【0043】
寸法変化率が、フレキシブル金属張積層板面内において、その値が均一であれば、配線形成後のフレキシブル金属張積層板へ部品を搭載する際に、補正係数を加味することで実装する部品と基板とが良好に接続することが可能となる。
【0044】
ところが、寸法変化率のバラツキが所定の範囲から外れると、フレキシブル金属張積層板において、特に微細な配線を形成した後の寸法変化が大きくなってしまい、設計段階での部品搭載位置からずれることになる。その結果、実装する部品と基板とが良好に接続されなくなるおそれがある。換言すれば、フレキシブル金属張積層板面内の寸法変化率バラツキが所定の範囲内であれば、設計時に、この寸法変化を見越して、ある一定の補正係数を見積り、設計することでこの問題を解消することができる。
【0045】
この場合、フレキシブル金属張積層板面内の全方向にて寸法変化率が均一である場合だけでなく、本願発明のフィルムのように、特定方向の寸法変化率が均一である場合でも可能である。本願発明のフィルムは、上記(A)〜(C)を満たすので、FCCLのエッチング前後の、MD方向の寸法変化を見越して補正係数を見積もることができる。このときFCCLのエッチング後の寸法変化の好ましい範囲は、0.10以下である。なお、寸法変化率の測定は、MD方向、TD方向、右斜め45度、左斜め45度について測定することが必須となる。ここで言う右斜め45度、左斜め45度とはMD方向を0度とした時の値である。本願発明のフィルムは、MD方向に配向が制御されたフィルムであるので、特に、右斜め45度、左斜め45度における特性差が少なく、従って、補正係数を見積もることが可能である。
【0046】
上記寸法変化率の測定方法は特に限定されるものではなく、フレキシブル金属張積層板において、エッチング工程の前後に生じる寸法の増減を測定できる方法であれば、従来公知のどのような方法でも用いることができる。
【0047】
本発明の有機絶縁性フィルムの好ましい態様は、フィルムのMOR−c値が1.05以上3.0以下となっており、分子鎖主軸配向角がMD方向に対して−25から25度となっており、フィルムMOR−c値の最大値と最小値の差が0.6以下となっている有機絶縁性フィルムである。より好ましくは、フィルムのMOR−c値が1.05以上3.0以下となっており、分子鎖主軸配向角がMD方向に対して−20から20度となっており、フィルムMOR−c値の最大値と最小値の差が0.40以下となっている有機絶縁性フィルムである。さらに好ましくは、フィルムのMOR−c値が1.05以上3.0以下となっており、分子鎖主軸配向角がMD方向に対して−15から15度となっており、フィルムMOR−c値の最大値と最小値の差が0.30以下となっている有機絶縁性フィルムである。
【0048】
また、本発明の別の好ましい態様は、フィルムのMOR−c値が3.0以上5.0以下となっており、分子鎖主軸配向角がMD方向に対して−25から25度となっており、フィルムMOR−c値の最大値と最小値の差が1.0以下となっている有機絶縁性フィルムである。より好ましくは、フィルムのMOR−c値が3.0以上5.0以下となっており、分子鎖主軸配向角がMD方向に対して−20から20度となっており、フィルムMOR−c値の最大値と最小値の差が0.7以下となっている有機絶縁性フィルムである。さらに好ましくは、フィルムのMOR−c値が3.0以上5.0以下となっており、分子鎖主軸配向角がMD方向に対して−15から15度となっており、フィルムMOR−c値の最大値と最小値の差が0.6以下となっている有機絶縁性フィルムである。
【0049】
(フィルムの製造)
本発明の、フィルムの全幅において下記(1)〜(3)
(1)フィルムのMOR−c値が1.05以上5.0以下、
(2)分子鎖主軸配向角がMD方向に対して−30から30度、
(3)フィルムMOR−c値の最大値と最小値の差が1.0以下
を満たすポリイミドフィルムを得る手段の一つとして、フィルムの製造条件を変更する方法が挙げられる。目的とするポリイミドフィルムを得るためには、例えば、高分子と有機溶剤を含む組成物を支持体上に連続的に流延・塗布し、ゲルフィルムを形成する工程、ゲルフィルムを支持体から引き剥がしゲルフィルムの両端を固定する工程、フィルムの両端を固定しながら加熱炉内を搬送する工程、を含む製造方法を採用することができ、これらの各条件を適宜選定する、あるいは、さらなる工程を追加することによって、製造すればよいのであるが、変更しうる製造条件および製造例について以下に例示する。
【0050】
(第一の方法)
本発明は、少なくとも下記(A)〜(C)
(A)高分子及び有機溶媒を含む組成物を支持体上に流延・塗布後、ゲルフィルムを形成する工程、
(B)該ゲルフィルムを引き剥がし、両端を固定しながら加熱する工程、
(C)(B)工程後に、フィルムの両端固定を解除した状態で加熱する工程
の工程を含む有機絶縁性フィルムの製造方法である。
【0051】
(A)工程
(A)工程では、高分子と有機溶媒を含む組成物を、エンドレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延塗布後、乾燥させ、フィルムとしての自己支持性を有するゲルフィルムを形成する。高分子の例としては、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、芳香族ポリエステル、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエステルアミド、ビニルポリマー、ポリケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルフォンなどが上げられる。また、最終的に得られる高分子の前駆体であってもよく、そのような例として、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が挙げられる。
【0052】
本発明におけるゲルフィルムとは、高分子と有機溶剤を含有した有機溶剤溶液を加熱・乾燥させて一部の有機溶剤もしくは反応生成物(これらを残存成分と称する)が高分子フィルム中に残存している高分子樹脂フィルムをゲルフィルムと称する。ポリイミドフィルムの製造工程においては、ポリアミド酸溶液を溶解している有機溶剤、イミド化触媒、脱水剤、反応生成物(脱水剤の吸水成分、水など)がゲルフィルム中の残存成分として残る。ゲルフィルム中に残存する残存成分割合は、該ゲルフィルム中に存在する完全乾燥合成樹脂重量a(g)に対して残存する残存成分重量b(g)を算出した際に、残留成分割合cは下記の算出式で算出される値であり、該残存成分割合が500%以下であることが好ましく、さらに好ましくは10%以上300%以下、特に好ましくは20%以上200%以下であることが好ましい。
c=a/b×100・・・(式1)
500%以上の場合には、面内における残存成分重量のバラツキが相対的に大きくなり、得られるフィルムの特性を均一に制御することが困難な場合がある。
【0053】
完全乾燥合成樹脂重量aと残存成分重量bの算出方法は、100mm×100mmのゲルフィルム重量dを測定した後に、該ゲルフィルムを450℃のオーブン中で20分乾燥した後、室温まで冷却後、重量を測定し完全乾燥合成樹脂重量aとする。残存成分重量bは、ゲルフィルム重量dと完全乾燥合成樹脂重量aからb=d−aの算出式より算出される。
【0054】
ゲルフィルムを製造する工程において、支持体上で加熱・乾燥させる際の温度・風速・排気速度は残存成分割合が上記範囲内になるように決定することが好ましい。例えば、好ましい支持体上での乾燥温度は、200℃以下であり、好ましい乾燥時間は20秒〜30分である。
【0055】
(B)工程
(B)工程は、(A)工程で得られたゲルフィルムを引き剥がし、ピン、クリップなどで両端を固定しながら加熱する工程である。
【0056】
(B)工程での加熱温度は、最高雰囲気温度が450℃以下であることが、全幅にわたって分子の配向が制御されたフィルムが得られるという点から好ましい。さらに好ましくは、400℃以下である。雰囲気温度とは、輻射熱線処理の場合は、輻射熱線ヒーター炉内で走行するフィルム近傍の温度である。また、熱風処理の場合は、循環する熱風の温度のことを言う。
【0057】
(B)工程の加熱工程は、熱風処理または輻射熱線処理であることがフィルムを巾方向(TD方向)に均一に加熱できる点から好ましい。また、熱風処理と輻射熱線処理の組み合わせであることも、フィルムを巾方向(TD方向)に均一に加熱できる点から好ましい。(B)工程の加熱処理が熱風処理である場合には、450℃以下の熱風処理、更には400℃以下の熱風処理であることが好ましく、輻射熱線処理である場合には、430℃以下の輻射熱線処理であることが好ましく、さらには400℃以下の輻射熱線処理であることが好ましい。
【0058】
上記熱風処理において、フィルムに熱風を当てる方法として熱風炉を用いる場合、どのような熱風炉を用いてもよいが、一例として図3や図4に示すような熱風炉が考えられる。また、上記輻射熱線処理において、フィルムに輻射熱線を当てる方法として、種々の方法が考えられるが、一例として輻射熱線ヒーター炉を用いる場合、どのような輻射熱線ヒーター炉を用いてもよいが、一例として図5や図6に示すような輻射熱線ヒーター炉が考えられる。なお、ここでいう輻射熱線とは、どのようなものを用いてもよいが、一例として赤外線、遠赤外線等が挙げられる。また、熱風や輻射熱線をフィルムに当てる方法として図3〜図6に挙げるような熱風炉や輻射熱線ヒーター炉を単独で、もしくは組み合わせて用いる他に、図7や図8に示すような炉を用いて、熱風と輻射熱線を同時にフィルムに当てることも考えられる。また、フィルムの分子配向をTD方向に均一に保つという観点では、炉内でのフィルム巾に対し、熱風または/および輻射熱線をフィルム巾以上に設置することが好ましい。好ましくはフィルム巾に対し1.05倍以上の範囲で加熱することが好ましい。具体的には、熱風処理をジェットノズル方式で実施する場合は、ノズル巾をフィルム巾の1.05倍以上、輻射熱線ヒーターの場合は、ヒーター設置巾をフィルム巾の1.05倍以上とすることが好ましい。
【0059】
(B)工程での加熱温度は、後述する(C)工程における加熱温度と同じもしくは、より低いことが、MD方向に配向したフィルムが得られる点から好ましい。
【0060】
(C)工程
(C)工程は、(B)工程後に、両端を固定しているピン、クリップなどからフィルムを剥がすなどして、フィルムの両端固定を解除した状態で加熱する工程である。
(C)工程における張力が、フィルムのMD方向に0.10kg/mm2〜1.50kg/mm2であることが好ましい。0.10kg/mm2以下の張力であると、フィルムの配向がMD方向に制御されない場合があり、1.5kg/mm2以上であると、フィルムの平坦性が失われる場合がある。好ましくは0.20kg/mm2〜1.0kg/mm2、さらに好ましくは0.20kg/mm2〜0.80kg/mm2である。
【0061】
(C)工程における加熱温度は、最高雰囲気温度が430℃以上であることが好ましく、更に好ましくは450℃以上である。最高雰囲気温度が430℃より低いと、本発明であるMD配向効果が十分に得られず、従って全幅にわたってMD方向に配向したフィルムが得られない場合がある。
【0062】
(C)工程での加熱処理は、熱風処理または輻射熱線処理であることがフィルムを巾方向(TD方向)に均一に加熱できる点から好ましい。また、熱風処理と輻射熱線処理の組み合わせであることもフィルムを巾方向(TD方向)に均一に加熱できる点から好ましい。
【0063】
(C)工程の加熱処理が熱風処理である場合には、430℃以上の熱風処理、さらには450℃〜570℃、熱風処理であることが好ましく、特には470℃〜560℃であることが好ましい。最高雰囲気温度が430℃より低いと、本発明であるMD配向効果が十分に得られず、従って全幅にわたってMD方向に配向したフィルムが得られない可能性がある。輻射熱線処理である場合には、400℃以上の輻射熱線処理であることが好ましく、さらには430℃〜570℃であることが好ましく、特には450℃〜560℃であることが好ましい。最高雰囲気温度が400℃より低いと、本発明であるMD配向効果が十分に得られず、従って全幅にわたってMD方向に配向したフィルムが得られない可能性がある。
【0064】
また、(C)工程においては、熱風処理と輻射熱線処理を同時に行うこともフィルムを巾方向(TD方向)に均一に加熱できるの点から好ましく、この場合400℃以上、さらに好ましくは430℃〜570℃であることが好ましい。最高雰囲気温度が400℃より低いと、本発明であるMD配向効果が十分に得られず、従って全幅にわたってMD方向に配向したフィルムが得られない可能性がある。
【0065】
(C)工程の熱風処理における熱風炉、輻射熱線処理における輻射熱線ヒーター炉は、(B)工程に例示したものを使用することができる。
【0066】
なお、フィルム端部の固定を解除した後、図9に示すように一旦(B)工程後のフィルムを巻取ってから、(C)工程に供してもよいし(例えばロール・トゥー・ロールで張力制御可能なフィルム搬送装置を有する熱風炉や輻射熱線ヒーター炉などの加熱炉に、(B)工程後、巻き取った(B)工程後のフィルムを通し、(C)工程を行う等)、(B)工程後、図10に示すように端をピン等で固定しない状態で、引き続き熱風炉や輻射熱線ヒーター炉などの加熱炉に通す等の方法により、(C)工程を行ってもよい。
【0067】
(C)工程での加熱温度は、(B)工程における加熱温度と同じもしくは、より高いことが、MD方向に配向したフィルムが得られる点から好ましい。
【0068】
また、本発明者らは、MD方向に配向したフィルムを得るためには、(B)工程および(C)工程の加熱条件を、制御すればよいことを見出した。本発明において(B)工程で得られるフィルムは、特許文献2に記載される方法のように、完全にイミド化され残存溶媒がない状態である焼成後のポリイミドフィルムとは異なり、完全にイミド化され残存溶媒がない焼成後ポリイミドフィルムの手前の状態にあるものである。従って、イミド化率や残存成分割合などで一概に表現することが難しい。そこで、本発明者らは、完全にイミド化され残存溶媒がない焼成後ポリイミドフィルムの手前の状態を、フィルムの厚みで表すことができることを見出し、(B)工程で得られるフィルムの厚みbと、(C)工程で得られるフィルムの厚みcの関係が
b>c
となるように、各工程の焼成条件(温度・張力・滞留時間)を設定すればよいことを見出した。
【0069】
尚、厚みの測定は、TD方向に等間隔に10点厚みを測定しその厚みの平均値を(B)、(C)工程それぞれで測定し、そのフィルム厚みをb及びcと定義する。
【0070】
ポリイミドフィルムの製造例
具体的にポリイミドフィルムの製造について説明する。まず、(A)工程で用いられる、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の製法方法について説明する。ポリアミド酸の製造方法としては公知の方法を用いることができ、通常、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミン化合物の少なくとも1種を、実質的等モル量を有機溶媒中に溶解させて、得られた有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記芳香族酸二無水物とジアミン化合物の重合が完了するまで攪拌することによって製造される。これらの有機溶媒溶液は通常5〜35wt%、好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得る。
【0071】
重合方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができるが、特に好ましい重合方法として次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)ジアミン化合物を有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量のジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物が実質的に等モルとなるようにジアミン化合物を用いて重合させる方法。
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量のジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここにジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるようにジアミン化合物を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
などのような方法である。
【0072】
ジアミン化合物としては、特に限定はされないが、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−オキシジアニリン( 4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)、3,3’−オキシジアニリン ( 3,3’−ジアミノジフェニルエーテル)、3,4’−オキシジアニリン ( 3,4’−ジアミノジフェニルエーテル)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン(メタフェニレンジアミン)、1,2−ジアミノベンゼン(オルトフェニレンジアミン)及びそれらの類似物などの芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン等が挙げられ、これらを単独または、任意の割合の混合物を用いることができる。中でも特に、ジアミン成分としては、パラフェニレンジアミン、および/または4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを好適に用いることができる。上記ジアミン化合物を用いることで得られるポリイミドフィルムが剛直になり、配向を制御しやすいことから好ましい。
【0073】
また、芳香族酸二無水物成分としては、特に限定はされないが、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの類似物を含み、これらを単独または、任意の割合の混合物が好ましく用い得る。芳香族酸二無水物成分として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)を単独または、任意の割合の混合物として用いることができる。特に分子配向軸を制御する上では酸二無水物成分として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)から選択される少なくとも一種を含むことが得られるポリイミドフィルムが剛直な構造をもつことになり、配向を制御しやすくなるという点から好ましい。
【0074】
FCCL並びにFPCに用いられる有機絶縁性フィルムの基本特性は、適度な弾性率(2.5〜12.0GPa)、適度な線膨張係数(1〜30ppm/℃)、低吸湿膨張係数(15ppm/RH%以下 40〜80RH%)が好適であり、これら物性は組み合わされる接着剤や銅箔によって適宜選択される。また、FPCの屈曲性の観点から有機絶縁性フィルムの弾性率は4.0GPa以上が好ましい。FPCの折り曲げ性(スプリングバック性)の観点から有機絶縁性フィルムの弾性率は10.0GPa以下が好ましい。尚、上記弾性率は、JIS K7127「プラスチック 引っ張り特性の試験方法」に基づき、線膨張係数は、セイコーインスツルメント社製機械的分析装置、商品名TMA120Cにより窒素気流下昇温10/分にて23℃〜400℃の温度範囲で測定した後、100〜200℃の範囲内の平均値に基づく。
【0075】
また、FCCL並びにFPCに用いられる有機絶縁性フィルムの全面内での厚みは、以下の範囲内が接着剤塗布加工性並びにFPC加工工程の寸法変化率の観点で好ましい。
すなわち、所望の厚み(中心値)をTミクロンとすると、
(A)フィルム全面内にて、T−T×0.10ミクロン以上、かつ、T+T×0.10ミクロン以下、
(B)フィルム流れ方向(MD方向)については、最大値−最小値=T×0.15ミクロン以下、
(C)フィルム流れ方向と直交方向(TD方向)については、最大値−最小値=T×0.15ミクロン以下、
であることが好ましい。
上記(A)〜(C)の範囲を大きく逸脱すると、塗布される接着剤の厚みムラが生じて、最終的に得られるフィルムの特性、特に線膨張係数にバラツキが生じる傾向にある。
【0076】
また、接着剤を介して金属層を設けるFCCL並びにFPCを製造する場合、用いられる接着剤としては、熱可塑性ポリイミド系接着材を用いることがFCCL、FPCの耐熱性の観点から好ましく、FPCの屈曲性の観点から接着剤の厚みは10ミクロン以下が好ましい。接着剤と金属箔との接着性の観点から、接着剤の厚みは、0.5ミクロン以上が好ましい。
【0077】
上記特性を発現するにおいて好適なポリイミドフィルムは、一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリイミドフィルムである。
【0078】
【化7】

【0079】
一般式1
式中R1は
【0080】
【化8】

【0081】
から選ばれる2価の有機基(式中R2は、同一または異なって、−C
、−Cl、−Br、−Fまたは−CHOである)であり、
Rは、
【0082】
【化9】

【0083】
(式中nは1〜3の整数 Xは、同一または異なって、水素、ハロゲン、カルボキシル基、炭素数6以下の低級アルキル基、炭素数6以下の低級アルコキシル基から選ばれる1価の置換基を表す)及び/または
【0084】
【化10】

【0085】
(式中X、Y、同一または異なって、水素、ハロゲン、カルボキシル基、炭素数6以下の低級アルキル基、炭素数6以下の低級アルコキシル基から選ばれる1価の置換基を表し、Aは、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−CH−から選ばれる2価の連結基を表す)で表される2価の有機基である。
【0086】
また、一般式(2)で示される繰り返し単位を有するポリイミドフィルムも好ましい。
【0087】
【化11】

【0088】
(式中Rは、一般式(1)のRと同じであり、R3は、
【0089】
【化12】

【0090】
から選ばれる4価の有機基である。)
上記特性を発現するのに特に好適なポリイミドフィルムは、一般式(1)および一般式(2)を有するポリイミドフィルムである。
【0091】
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用い得る。
【0092】
これらポリアミド酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法については従来公知の方法を用いることができる。この方法には熱イミド化法と化学イミド化法が挙げられる。熱イミド化法は、脱水剤及びイミド化触媒を作用させることなく、加熱によってのみイミド化を促進させる方法である。加熱条件は、ポリアミド酸の種類、フィルムの厚さ等により、変動し得る。化学イミド化法は、ポリアミド酸有機溶媒溶液に、脱水剤及びイミド化触媒とを作用させる方法である。脱水剤としては、例えば無水酢酸などの脂肪族酸無水物、無水安息香酸などの芳香族酸無水物などが挙げられる。イミド化触媒としては、例えばトリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリンなどの複素環式第3級アミン類などが挙げられる。これらの中で、特に脱水剤としては無水酢酸、イミド化触媒としてイソキノリンを用いるのが好ましい。ポリアミド酸有機溶媒溶液のアミック酸1モルに対して無水酢酸はモル比で1.0〜4.0、好ましくは1.2〜3.5、更に好ましくは1.5〜2.5加えるのがよく、イソキノリンはポリアミド酸有機溶媒溶液のアミック酸1モルに対してモル比で0.1〜2.0、好ましくは0.2〜1.5、更に好ましくは0.3〜1.2、特に好ましくは0.3〜1.1の割合で加えると良好なポリイミドフィルムが得られる。具体的な例としては、ポリアミド酸・脱水剤・イミド化触媒混合後、短時間でイミド化することでダイス内での流動性が悪くなったり、テンター炉内にて搬送中にフィルムが破断したりすることがある。
【0093】
また、本発明を阻害しない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、有機滑剤(例えばワックス)などが通常添加される程度添加されてもよい。また、表面の易滑性や耐磨耗性、耐スクラッチ性等を付与するために、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、硫酸バリウム、アルミナおよびジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子等を添加したり、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する、いわゆる内部粒子を含有していてもよいし、界面活性剤を含有していてもよい。
【0094】
上述のようにして得られたポリアミド酸溶液を含む組成物を、もしくはポリアミド酸溶液に脱水剤及びイミド化触媒の混合物を添加した組成物を、エンドレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延塗布後、乾燥させ、フィルムとしての自己支持性を有するゲルフィルムを形成する。支持体上での乾燥は、200℃以下、20秒〜30分が好ましい。支持体としては、該溶液樹脂により溶解することが無く、該合成樹脂溶液の有機溶剤溶液を除去するために要する加熱にも耐えうる支持体であればどのような支持体でも用いることができる。特に好ましくは、金属板を繋ぎ合わせて作製した、エンドレスベルトもしくは金属ドラムが溶液状の塗布液を乾燥させる上で好ましい。尚、エンドレスベルトもしくはドラムの材質は、金属が好ましく用いられ中でも、SUS材が好ましく用いられる。表面には、クロム、チタン、ニッケル、コバルト等の金属にてメッキを施したものを用いることで表面上の溶剤の密着性が向上する、或いは、乾燥した有機絶縁性フィルムが剥離しやすくなるのでメッキ処理を施すことが好ましい。エンドレスベルト、金属ドラム上は平滑な表面を有することが好ましいが、エンドレスベルト上もしくは金属ドラム上には無数の凸凹を作製して用いることも可能である。エンドレスベルトもしくは金属ドラム上に加工される凸凹の直径は0.1μm〜100μmで深さが0.1〜100μmであることが好ましい。金属表面に凸凹を作製することで有機絶縁性フィルムの表面に微細な突起を作製することが可能となり、該突起によりフィルム同士の摩擦による傷の発生、もしくは、フィルム同士のすべり性を向上させることが可能となる。
【0095】
次に、支持体からフィルムを引き剥がし、前述のように、引き続きピン等で両端を固定した後このフィルムを搬送しながら、加熱する。さらに両端の固定を外した状態で、上述のように加熱することにより最終的なMD配向フィルムを得る。
【0096】
第二の方法
第二の方法は、連続的に生産される有機絶縁性フィルムの製造方法において、少なくとも下記(A)〜(C)、
(A)高分子と有機溶剤を含む組成物を支持体上に連続的に流延・塗布し、ゲルフィルムを形成する工程、
(B)ゲルフィルムを支持体から引き剥がしゲルフィルムの両端を固定する工程、
(C)フィルムの両端を固定しながら加熱炉内を搬送する工程、
を含む有機絶縁性フィルムの製造方法であって、前記(C)工程の少なくとも一部においてフィルム幅方向(TD方向)の張力が実質的に無張力となるように両端が固定されて搬送することを特徴とする有機絶縁性フィルムの製造方法である。以下、各工程を詳細に説明する。
【0097】
(A)工程
(A)工程は、(A)工程は、前述の第一の方法で詳述した、(A)高分子および有機溶剤を含む組成物を支持体上に連続的に流延・塗布し、ゲルフィルムを形成する工程と同様の方法を採用することができる。この工程におけるゲルフィルムの残留成分割合は、500%以下であることが好ましく、さらに好ましくは25〜200%、特に好ましくは30〜150%である。
【0098】
なお、ポリイミドフィルムを製造する場合、第二の方法においては、フィルムの弾性率が大きい方がより目的とするフィルムを得やすくなる。 ポリイミドフィルムの弾性率が向上するとフィルム中の残留揮発成分が揮発する際の体積収縮により、フィルム面内に収縮応力が発生し、該収縮応力により面内の分子配向が促進されることになる。その結果、ポリイミドフィルムの分子配向が進むのである。第二の方法においては、このような観点から、第一の方法で例示した酸二無水物の中で、ピロメリット酸、1, 2, 3, 4―ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3, 3’, 4, 4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2, 2’, 3, 3’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3, 3’, 4, 4’―ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2, 2’, 3, 3’―ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の酸二無水物から選択される少なくとも1種以上を用いることがポリイミドフィルムに耐熱性を付与し、フィルムの弾性率を向上させてポリイミドフィルムの配向を行いやすくする上で好ましい。
【0099】
また、第一の方法で例示したジアミン成分の中で、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンから選択される少なくとも1種以上を用いることが用いることがポリイミドフィルムの耐熱性を向上しフィルムの剛性を付与できる点から好ましい。更に、p-フェニレンジアミン及び/もしくは、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルを必須成分として併用することでポリイミドフィルムの弾性率を向上させてポリイミドフィルムの配向を行いやすくする上で好ましい。
【0100】
特に好ましいポリイミドフィルムは、(1) p-フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、ピロメリット酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)の4つのモノマーで作製されるポリイミドフィルム、(2) p-フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、ピロメリット酸二無水物、3, 3’, 4, 4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルム、(3) p-フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、ピロメリット酸二無水物、3, 3’, 4, 4’―ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルム、(4) p-フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、ピロメリット酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、3, 3’, 4, 4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルム、(5) p-フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3, 3’,4, 4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルム、(6) 4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、ピロメリット酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルム、(7) 4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、p-フェニレンジアミン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピロメリット酸二無水物、3, 3’, 4, 4’―ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルム、(8) p-フェニレンジアミン、3, 3’,4, 4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて作製されるポリイミドフィルムが分子配向角を制御しやすくなる利点があり、好適に用いられる。
【0101】
(B)工程
(B)工程は、ゲルフィルムを支持体から引き剥がし連続的にゲルフィルムの両端を固定する工程である。本願発明における、ゲルフィルムの端部を固定する工程とは、ピンシート、クリップ等の一般にフィルムの製造装置において用いられる把持装置を用いてゲルフィルムの端部を把持する工程である。本発明の、ゲルフィルムの両端を固定する工程を例示すると、図11の1に記載しているフィルム搬送装置に取り付けられた端部把持装置(ピンシートもしくはクリップ)でフィルム端部を把持し始める部位(図11の)をいう。
【0102】
後述する(C)工程においての少なくとも一部においてTD方向の張力が実質的に無張力となるように固定する方法として、この(B)工程の、ゲルフィルムの端部を固定する際に、TD方向の張力が実質的に無張力となるように固定してもよい。フィルムを固定する段階で、TD方向の張力が実質的に無張力となるように行い、そのまま(C)工程へ送る方法である。具体的には、端部を固定する際に、フィルムを弛ませて固定するのである。
【0103】
(C)工程
(C)工程は、フィルムの両端を固定しながら加熱炉内を搬送する工程である。本発明においては、この(C)工程の少なくとも一部においてフィルム幅方向(TD方向)の張力が実質的に無張力となるように固定されて搬送することが、目的とする有機絶縁性フィルムを得るという点から好ましい。
【0104】
ここで、TD方向の張力が実質的に無張力であるとは、フィルムの自重による張力以外に、機械的なハンドリングによる引っ張り張力がTD方向にかからないことを意味している。実質的にはフィルムの両端部固定端の距離(図12の8)よりも両端部固定端間のフィルムの幅(図12の9)が広いことを意味しており、そのような状況下でのフィルムを実質的に無張力下のフィルムと言う。図2を用いて説明すると、フィルムは、把持装置によって固定され、このとき図2の8の長さが両端部固定装置端の距離である。通常は、フィルムの両端はピンと張力がかかった状態であり、このとき、両端部固定端距離8と両端部固定端間のフィルムの幅9は同じである。本発明においては、図2のように、両端部固定端距離8とこの間のフィルムの幅9は異なり、両端部固定端の距離が小さくなっている。具体的には、フィルムは弛ませて固定されているのである。特に、MD方向の分子配向を制御しやすいという点から、両端部固定端の距離8をX、両端部固定端間のフィルムの幅9をYとしたとき、XとYが下記式を満足するように固定されていることが好ましい。
20.0≧(Y−X)/Y×100>0.00・・・・(式2)
(Y−X)/Y×100(これを便宜上TD収縮率という場合がある)を上記範囲以上に大きくすると、フィルムの弛みを安定的に制御することが難しくなり、弛み量が進行方向に対して変化する場合がある。また場合によってはフィルムの弛みによる端部把持装置からの脱落が生じ、安定したフィルムの製造ができない場合がある。さらに好ましくは15.0≧(Y−X)/Y×100>0.00である。特に好ましくは10.0≧(Y−X)/Y×100>0.00である。
【0105】
本発明においては、(C)工程における加熱炉の入り口において、TD方向の張力が実質的に無張力となるように固定されていることが、フィルム全幅においてMD方向に配向軸を向けてフィルムを製造する点から好ましい。加熱炉の入り口において、TD方向の張力が実質的に無張力となるように固定されて搬送するには、前述の(B)工程の、ゲルフィルムの端部を固定する際に、TD方向の張力が実質的に無張力となるように固定し、そのまま(C)工程に送る方法(第一の方法)の他に、(B)工程の後、一旦両端部固定端の距離を縮める操作(図11記載の方式)を行って、(C)工程に送る方法(第二の方法)が挙げられる。第一の方法は、ゲルフィルムの両端を固定する際に、式(2)を満たすように固定する方法が好ましく、第二の方法は、式(2)を満たすように固定端の距離を縮めることが好ましい。
【0106】
第一の方法もしくは、第二の方法を行った後に、さらに、(C)工程の加熱炉に入った後、両端部固定端の距離を縮める操作を行ってもよい(第三の方法)。第三の方法では、両端部固定端の距離を縮める操作は300℃以下、さらには250℃以下、特には200℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。300℃より高い温度領域において第三の操作を行った場合には、フィルムの配向を制御しにくくなる傾向にあり、特にフィルム端部での配向が制御しにくくなる傾向にある。
【0107】
以上本願発明では、ゲルフィルムに温度がかかる直前にTD方向の張力が実質的に無張力である状態を経由することが重要である。
【0108】
(C)工程では、フィルムが乾燥し、さらにイミド化反応が進むためフィルムはある程度収縮する。従って、加熱炉の入り口で、TD方向の張力が実質的に無張力となるように固定して搬送すると、その後、加熱によるフィルムの収縮によって、フィルム幅が小さくなるので、両端部固定端距離と両端部固定端間のフィルムの幅は同じとなり、しわのないフィルムが製造できるのである。
【0109】
本発明においては、(C)工程において、(C−2)フィルムをTD方向に引き延ばす工程を含んでいてもよい。
【0110】
本発明における、(C−2)フィルムをTD方向に引き延ばす工程は、(C−1)工程を経た後、加熱炉の中で、フィルムをTD方向に引き延ばす工程である。(C−1)工程で、フィルム幅方向(TD方向)の張力が実質的に無張力となるように固定されて搬送するが、加熱炉内でフィルムが加熱されると、フィルムはある程度収縮する。収縮してフィルムの弛みがなくなった後、フィルムをTD方向に引き延ばすのである。引き延ばす量(これを便宜上膨張率という)は、引き延ばす前のTD方向の両端部固定端の幅をZ(図11の11)、フィルムが炉内でTD方向に引き伸ばされた際の両端部固定端の幅をW(図11の12)としたとき、下記式を満たすことが好ましい。
40.0≧(W−Z)/Z×100>0.00・・・・(式4)
(W−Z)/Z×100(これを便宜上TD膨張率という場合がある)を上記範囲以上に大きくすると、フィルムの分子配向軸をMD方向に制御することが難しくなる場合がある。さらに好ましくは30.0≧(W−Z)/Z×100>0.00である。特に好ましくは20.0≧(W−Z)/Z×100>0.00である。
(C−2)工程は、フィルムの把持幅を徐々に広げながらTD方向にフィルムを引き伸ばせばよい。さらに、必要に応じて(C−2)工程以降に再度収縮を行ってもよく、さらに、フィルム幅を広げることも可能であり、収縮量、拡大量に関しては適宜選定することが好ましい。
【0111】
(C−2)工程を行う温度は、耐熱性に優れるポリイミドフィルムの場合には、300℃以上500℃以下、特に好ましくは350℃以上480℃以下がポリイミドフィルムの弾性率が低下してフィルムを引き伸ばしやすくなるので好ましい。尚、上記温度では、フィルムが軟化して伸びきってしまう場合がある。その場合には、上記範囲以外の温度を適宜設定することが好ましい。
【0112】
さらに、(C−2)工程においては、TD膨張率を調整することによって、MD配向した状態でフィルムの配向度を小さくできる。つまり、(C−2)工程においてフィルムを引き伸ばすことによりフィルムの配向度を自在に制御することができる。
本願発明においては、(C−1)工程での収縮及び、(C−2)工程での引き伸ばし、更には、搬送する際のMD方向のフィルム張力、ゲルフィルムの残存成分重量、加熱温度を適宜調節して、MD方向に配向が制御されたフィルムを製造すればよい。また、有機絶縁性フィルムがポリイミドフィルムである場合は、化学イミド化を行うか、熱イミド化を行うかにより、フィルムの加熱温度、加熱時間が全く異なるが、熱イミド化の場合であっても、本願発明の方法内での制御を行えば、目的とするフィルムを得ることができる。
【0113】
本願発明に好適に用いられる加熱炉は、フィルム上面もしくは下面、或いは、両面から60℃以上の熱風をフィルム全体に噴射して加熱する方式の熱風炉、もしくは、遠赤外線を照射してフィルムを焼成する遠赤外線発生装置を備えた遠赤外線炉が用いられる。加熱工程においては、段階的に温度を上げて焼成することが好ましく、その為に、熱風炉、もしくは、遠赤外線炉、もしくは、熱風炉と遠赤外線炉を混在させながら数台連結して焼成する段階式の加熱炉を用いることが好ましい。
上記焼成過程において本願発明では、ポリイミドフィルムの製造工程においては、ゲルフィルムを把持し、炉内に搬送した際の最初に与えられる加熱温度は、300℃以下が好ましく、さらに60℃以上250℃以下であることが好ましく、特に好ましくは100℃以上200℃以下であることが、MD方向に配向が制御された有機絶縁性フィルムを得やすい点から好ましい。具体的には、2以上の複数の加熱炉内を搬送させ、第一の加熱炉(図11の2)の温度を300℃以下とすることが好ましい。また、他の有機絶縁性フィルムに適応させる場合には、有機絶縁性フィルムの種類及び溶剤の揮発温度を考慮して決定することが好ましい。特に、ゲルフィルム中に含まれる溶剤の沸点を調査し、該溶剤の沸点よりも100℃高い温度以下の温度で管理することが望ましい。
ポリイミドフィルムの製造において、炉内に搬送した際の最初に与えられる加熱温度が300℃より高い場合には、ボーイング現象(フィルムの収縮の影響で中央部がフィルムの端部よりも早く加熱炉内部に搬送されるため、端部に強い分子配向状態が発生する現象)が発生しフィルムの端部の配向軸を制御しにくくなる傾向にある。ポリイミドフィルムの焼成の際には、2番目の炉(図11の3)の温度は1番目の炉(図11の2)の温度プラス50℃以上、1番目の炉の温度プラス300℃以下に設定することが好ましい。特に好ましくは、1番目の炉の温度プラス60℃以上、1番目の炉の温度プラス250℃以下に設定することがポリイミドフィルムの分子配向軸をMD方向に制御する上で好ましい。それ以降の炉の温度は、通常のポリイミドフィルムの製造に用いられる温度にて、焼成することが好ましい。但し、1番目の炉(図11の2)の温度が60℃以下の場合には、次ぎの炉(図11の3)の温度を100℃以上、250℃以下の温度に設定することが好ましい。1番目の炉(図11の2)の温度が60℃以下の場合に2炉の温度を上記温度に設定することで、分子配向軸を制御したポリイミドフィルムの製造が可能となる。また、初期温度及び次炉の温度は上記のように設定することが好ましいが、それ以外の温度は通常のポリイミドフィルムの製造に用いられる焼成温度にて焼成することが好ましい。例えば、その一例として、ポリイミドフィルムの焼成には最高600℃までの温度に段階的に焼成し、室温まで徐々に冷却する方法等を用いることができる。最高焼成温度が低い場合には、イミド化率が完全でない場合があり充分に焼成することが必要となる。
【0114】
炉内に搬送される際のゲルフィルムに与えるMD方向に与えられる張力はフィルム1mあたりにかけられる張力(荷重)を算出することで、1〜20kg/mであることが好ましく、更に好ましくは1〜15kg/m、特に好ましくは1〜10kg/mであることが好ましい。張力が1kg/m以下の場合にはフィルムを安定して搬送することが難しく、フィルムを把持して安定したフィルムが製造しにくくなる傾向にある。また、フィルムにかける張力が20kg/m以上の場合には、特に、フィルムの端部においてMD方向に分子配向を制御しにくく、しかも、フィルム端部の配向度を制御することが難しくなる傾向にある。炉内に搬送されるゲルフィルムに与える張力発生装置としては、ゲルフィルムに荷重をかける荷重ロール、ロールの回転速度を調整して荷重を変化させるロール、ゲルフィルムを2つのロールで挟み込み張力の制御を行うニップロールを用いる方式等の種々の方法を用いてゲルフィルへの張力を調整することができる。
【0115】
尚、フィルムに与える張力はポリイミドフィルムの厚みにより上記範囲内で適宜調整することが好ましい。フィルム厚みとしては、1〜200μmの厚みが好ましく、特に好ましくは1〜100μmであることがポリイミドフィルムを成形する上で好ましい。フィルムの厚みが200μm以上の場合にはフィルムに発生する収縮応力が大きくなり、本願方法を適応しても、ポリイミドフィルムの配向度をMD方向に制御できない場合がある。
【0116】
本発明においては、(C−1)工程での収縮及び、(C−2)工程での引き伸ばし、更には、搬送する際のMD方向のフィルム張力、ゲルフィルムの残存成分重量、加熱温度を適宜調節して、MD方向に配向が制御されたフィルムを製造すればよい。また、有機絶縁性フィルムがポリイミドフィルムである場合は、化学イミド化を行うか、熱イミド化を行うかにより、フィルムの加熱温度、加熱時間が全く異なるが、熱イミド化の場合であっても、本願発明の方法内での制御を行えば、目的とするフィルムを得ることができる。
【0117】
[本発明の有機絶縁性フィルムの用途]
本発明においては、本発明の有機絶縁性フィルムの少なくとも片面に接着層を設けた接着フィルムであってもよい。また、本発明の有機絶縁性フィルムを用いたフレキシブル金属張積層板、多層フレキシブル金属張積層板であってもよく、カバーレイフィルム、TAB用テープ、COF用ベーステープであってもよい。
【0118】
本発明の有機絶縁性フィルムは、FCCLやFPCの製造に用いた場合、FCCLやFPCを製造する工程で発生する寸法変化を抑制しうるものである。特に、本発明の有機絶縁性フィルムを基板とし、この基板の表面に、各種接着材料を介して金属箔を加熱・圧着することにより貼りあわせる方法を用いた場合、発明の効果が顕著となる。その中でも、接着層に熱可塑性ポリイミドを使用したFPCを製造する場合に、極めて顕著な効果を発現する。
【0119】
そこで、有機絶縁性フィルムとしてポリイミドフィルムを用い、熱可塑性ポリイミドを有する接着層を設けた接着フィルムについて説明する。
【0120】
(接着フィルム)
本発明において好ましい接着フィルムは、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けた接着フィルムであり、連続的に生産される接着フィルムである。
【0121】
(I)ポリイミドフィルム
ポリイミドフィルムとしては、[本発明の有機絶縁性フィルム] の項で詳述したものを用いる。
【0122】
(II)熱可塑性ポリイミドを含有する接着層
本発明に係る接着フィルムの接着層に含有される熱可塑性ポリイミドとしては、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリエステルイミド等を好適に用いることができる。中でも、低吸湿特性の点から、熱可塑性ポリエステルイミドが特に好適に用いられる。
【0123】
なお、本発明における熱可塑性ポリイミドとは、ガラス転移温度を有し、かつ、圧縮モード(プローブ径3mmφ、荷重5g)の熱機械分析測定(TMA)において、10〜400℃(昇温速度:10℃/min)の温度範囲で永久圧縮変形を起こすものをいう。
【0124】
また、既存の装置でラミネートが可能であり、かつ得られる金属張積層板の耐熱性を損なわないという点から考えると、本発明における熱可塑性ポリイミドは、150〜300℃の範囲にガラス転移温度(Tg)を有していることが好ましい。なお、Tgは動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値により求めることができる。
【0125】
また、既存の装置でラミネートが可能であり、かつ得られる金属張積層板の耐熱性を損なわないという点から考えると、本発明における熱可塑性ポリイミドは、150〜300℃の範囲にガラス転移温度(Tg)を有していることが好ましい。なお、Tgは動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値により求めることができる。
【0126】
熱可塑性ポリイミドは、前駆体であるポリアミド酸をイミド化することにより得られる。熱可塑性ポリイミドの前駆体についても、特に限定されるわけではなく、公知のあらゆるポリアミド酸を用いることができる。また、その製造に関しても、公知の原料や反応条件等を用いることができる。また、必要に応じて無機あるいは有機物のフィラーを添加しても良い。
【0127】
(III)接着性フィルムの製造
本発明の接着フィルムは、上述の連続的に生産された特定のポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けることにより得られる。その具体的な製造方法としては、基材フィルムとなるポリイミドフィルムに接着層を形成する方法、又は接着層をシート状に成形し、これを上記ポリイミドフィルムに貼り合わせる方法等が好適に例示される。このうち、前者の方法を採る場合、接着層に含有される熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を完全にイミド化してしまうと、有機溶媒への溶解性が低下する場合があることから、ポリイミドフィルム上に上記接着層を設けることが困難となる場合がある。従って、上記観点から、熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含有する溶液を調製して、これを基材フィルムに塗布し、次いでイミド化する手順を採った方がより好ましい。
【0128】
ポリアミド酸溶液をポリイミドフィルムに流延、塗布する方法については特に限定されず、ダイコーター、リバースコーター、ブレードコーター等、既存の方法を使用することができる。接着層は連続的に形成する場合に、本発明の効果が顕著となる。すなわち、上述のようにして得られたポリイミドフィルムを巻き取り、これを繰り出して、熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含む溶液を、連続的に塗布する方法である。また、前記ポリアミド酸溶液には、用途に応じて、例えば、フィラーのような他の材料を含んでもよい。また耐熱性接着フィルム各層の厚み構成については、用途に応じた総厚みになるように適宜調整すれば良い。また、必要に応じて、接着層を設ける前にコロナ処理、プラズマ処理、カップリング処理等の各種表面処理をコアフィルム表面に施しても良い。
【0129】
この時のイミド化の方法としては、熱キュア法若しくはケミカルキュア法のどちらも用いることができる。いずれのイミド化手順を採る場合も、イミド化を効率良く進めるために加熱を行うが、その時の温度は、(熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度−100℃)〜(ガラス転移温度+200℃)の範囲内に設定することが好ましく、(熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度−50℃)〜(ガラス転移温度+150℃)の範囲内に設定することがより好ましい。熱キュアの温度は高い方がイミド化が起こりやすいため、キュア速度を速くすることができ、生産性の面で好ましい。但し、高すぎると熱可塑性ポリイミドが熱分解を起こすことがある。一方、熱キュアの温度が低すぎると、ケミカルキュアでもイミド化が進みにくく、キュア工程に要する時間が長くなってしまう。
【0130】
イミド化時間に関しては、実質的にイミド化および乾燥が完結するに十分な時間を取ればよく、一義的に限定されるものではないが、一般的には1〜600秒程度の範囲で適宜設定される。また、接着層の熔融流動性を改善する目的で、意図的にイミド化率を低くする及び/又は溶媒を残留させることもできる。
【0131】
イミド化する際にかける張力としては、MD方向に対して、1kg/m〜15kg/mの範囲内とすることが好ましく、5kg/m〜10kg/mの範囲内とすることが特に好ましい。張力が上記範囲より小さい場合、フィルム搬送時にたるみが生じ、均一に巻き取れない等の問題が生じることがある。逆に上記範囲よりも大きい場合、接着フィルムに強い張力がかかった状態で高温まで加熱されるため、コアフィルムをMD配向させていたとしても接着フィルムに熱応力が発生し、寸法変化に影響を与えることがある。
【0132】
(V)フレキシブル金属張積層板およびその製造方法
本発明に係るフレキシブル金属張積層板は、上記接着フィルムに金属箔を貼り合わせることにより得られる。使用する金属箔としては特に限定されるものではないが、電子機器・電気機器用途に本発明のフレキシブル金属張積層板を用いる場合には、例えば、銅若しくは銅合金、ステンレス鋼若しくはその合金、ニッケル若しくはニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる箔を挙げることができる。一般的なフレキシブル金属張積層板では、圧延銅箔、電解銅箔といった銅箔が多用されるが、本発明においても好ましく用いることができる。なお、これらの金属箔の表面には、防錆層や耐熱層あるいは接着性を向上させる為にカップリング剤処理等を実施しても良い。本発明において、上記金属箔の厚みについては特に限定されるものではなく、その用途に応じて、十分な機能が発揮できる厚みであればよい。
【0133】
本発明の接着フィルムは、金属箔との貼り合わせを、例えば、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置或いはダブルベルトプレス(DBP)による連続処理により行う場合に、特に顕著に効果を発現する。また、接着フィルムは、適当なフィルム幅にスリットした後、金属箔と連続的に張り合わせもよいが、フィルム幅が250mm以上である場合、寸法変化率が小さく、また、全幅において寸法変化率が安定するため、本発明の効果を特に発現しやすい態様といえる。
【0134】
金属層との張り合わせは、装置構成が単純であり保守コストの面で有利であるという点から、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置を用いることが好ましい。
【0135】
このような熱ロールラミネート装置を用いる場合は、寸法変化となって現れやすい。従って、本発明の接着フィルムは、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置によって張り合わせを行う場合に、顕著に効果を発現する。ここでいう「一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置」とは、材料を加熱加圧するための金属ロールを有している装置であればよく、その具体的な装置構成は特に限定されるものではない。
【0136】
上記熱ラミネートを実施する手段の具体的な構成は特に限定されるものではないが、得られる積層板の外観を良好なものとするために、加圧面と金属箔との間に保護材料を配置することが好ましい。保護材料としては、熱ラミネート工程の加熱温度に耐えうるものであれば特に限定されず、非熱可塑性ポリイミドフィルム等の耐熱性プラスチック、銅箔、アルミニウム箔、SUS箔等の金属箔等を好適に用いることができる。中でも、耐熱性、再利用性等のバランスが優れる点から、非熱可塑性ポリイミドフィルムがより好ましく用いられる。また、厚みが薄いとラミネート時の緩衝並びに保護の役目を十分に果たさなくなるため、非熱可塑性ポリイミドフィルムの厚みは75μm以上であることが好ましい。
【0137】
また、この保護材料は必ずしも1層である必要はなく、異なる特性を有する2層以上の多層構造でも良い。
【0138】
上記熱ラミネート手段における被積層材料の加熱方式は特に限定されるものではなく、例えば、熱循環方式、熱風加熱方式、誘導加熱方式等、所定の温度で加熱し得る従来公知の方式を採用した加熱手段を用いることができる。同様に、上記熱ラミネート手段における被積層材料の加圧方式も特に限定されるものではなく、例えば、油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式等、所定の圧力を加えることができる従来公知の方式を採用した加圧手段を用いることができる。
【0139】
上記熱ラミネート工程における加熱温度、すなわちラミネート温度は、接着フィルムのガラス転移温度(Tg)+50℃以上の温度であることが好ましく、接着フィルムのTg+100℃以上がより好ましい。Tg+50℃以上の温度であれば、接着フィルムと金属箔とを良好に熱ラミネートすることができる。またTg+100℃以上であれば、ラミネート速度を上昇させてその生産性をより向上させることができる。
【0140】
また、加熱温度は、200℃以上、さらには、300℃以上である場合に特に顕著に発明の効果を発現する。本発明の接着フィルムは、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に、熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けており、これにより耐熱性を付与することができる。通常、接着層に熱可塑性ポリイミドを用いると、熱融着性を発現させるために200℃以上、場合によっては400℃近くの高温を加える必要がある。そのため、ラミネートされて得られたフレキシブル金属張積層板に残留歪みが発生し、エッチングして配線を形成する際、並びに部品を実装するために半田リフローを行う際に寸法変化となって現れる場合があった。本発明の接着フィルムは、ポリイミドフィルムとして全幅において特定の物性を有するフィルムを用いているため、高温で積層しても、寸法変化率が小さく、かつ全幅において寸法変化率が安定したフレキシブル金属積層板が得られる。
【0141】
上記熱ラミネート工程におけるラミネート速度は、0.5m/分以上であることが好ましく、1.0m/分以上であることがより好ましい。0.5m/分以上であれば十分な熱ラミネートが可能になり、1.0m/分以上であれば生産性をより一層向上することができる。
【0142】
上記熱ラミネート工程における圧力、すなわちラミネート圧力は、高ければ高いほどラミネート温度を低く、かつラミネート速度を速くすることができる利点があるが、一般にラミネート圧力が高すぎると得られる積層板の寸法変化が悪化する傾向がある。また、逆にラミネート圧力が低すぎると得られる積層板の金属箔の接着強度が低くなる。そのためラミネート圧力は、49〜490N/cm(5〜50kgf/cm)の範囲内であることが好ましく、98〜294N/cm(10〜30kgf/cm)の範囲内であることがより好ましい。この範囲内であれば、ラミネート温度、ラミネート速度およびラミネート圧力の三条件を良好なものにすることができ、生産性をより一層向上することができる。
【0143】
上記ラミネート工程における接着フィルム張力は、0.01〜4N/cm、さらには0.02〜2.5N/cm、特には0.05〜1.5N/cmが好ましい。張力が上記範囲を下回ると、ラミネートの搬送時にたるみや蛇行が生じ、均一に加熱ロールに送り込まれないために外観の良好なフレキシブル金属張積層板を得ることが困難となることがある。逆に、上記範囲を上回ると、接着層のTgと貯蔵弾性率の制御では緩和できないほど張力の影響が強くなり、寸法安定性が劣ることがある。
【0144】
本発明にかかるフレキシブル金属張積層板を得るためには、連続的に被積層材料を加熱しながら圧着する熱ラミネート装置を用いることが好ましいが、この熱ラミネート装置では、熱ラミネート手段の前段に、被積層材料を繰り出す被積層材料繰出手段を設けてもよいし、熱ラミネート手段の後段に、被積層材料を巻き取る被積層材料巻取手段を設けてもよい。これらの手段を設けることで、上記熱ラミネート装置の生産性をより一層向上させることができる。上記被積層材料繰出手段および被積層材料巻取手段の具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば、接着フィルムや金属箔、あるいは得られる積層板を巻き取ることのできる公知のロール状巻取機等を挙げることができる。
【0145】
さらに、保護材料を巻き取ったり繰り出したりする保護材料巻取手段や保護材料繰出手段を設けると、より好ましい。これら保護材料巻取手段・保護材料繰出手段を備えていれば、熱ラミネート工程で、一度使用された保護材料を巻き取って繰り出し側に再度設置することで、保護材料を再使用することができる。また、保護材料を巻き取る際に、保護材料の両端部を揃えるために、端部位置検出手段および巻取位置修正手段を設けてもよい。これによって、精度よく保護材料の端部を揃えて巻き取ることができるので、再使用の効率を高めることができる。なお、これら保護材料巻取手段、保護材料繰出手段、端部位置検出手段および巻取位置修正手段の具体的な構成は特に限定されるものではなく、従来公知の各種装置を用いることができる。
【0146】
本発明にかかる製造方法により得られるフレキシブル金属張積層板においては、金属箔を除去する前後の寸法変化率、並びに金属箔除去後に250℃、30分の加熱を行う前後の寸法変化率の合計値が、MD方向、TD方向共に−0.06〜+0.06の範囲にあることが非常に好ましい。金属箔除去前後の寸法変化率は、エッチング工程前のフレキシブル金属張積層板における所定の寸法およびエッチング工程後の所定の寸法の差分と、上記エッチング工程前の所定の寸法との比で表される。加熱前後の寸法変化率は、エッチング工程後のフレキシブル金属張積層板における所定の寸法および加熱工程後の所定の寸法の差分と、上記加熱工程前の所定の寸法との比で表される。
【0147】
寸法変化率がこの範囲内から外れると、フレキシブル金属張積層板において、微細な配線を形成した後、並びに部品搭載時の寸法変化が大きくなってしまい、設計段階での部品搭載位置からずれる場合がある。その結果、実装する部品と基板とが良好に接続されなくなるおそれがある。換言すれば、寸法変化率が上記範囲内であれば、部品搭載に支障がないと見なすことが可能になる。
【0148】
上記寸法変化率の測定方法は特に限定されるものではなく、フレキシブル金属張積層板において、エッチングまたは加熱工程の前後に生じる寸法の増減を測定できる方法であれば、従来公知のどのような方法でも用いることができる。
【0149】
ここで、寸法変化率の測定は、MD方向、TD方向の双方について測定することが必須となる。連続的にイミド化並びにラミネートする場合、MD方向およびTD方向では張力のかかり方が異なるため、熱膨張・収縮の度合いに差が現れ、寸法変化率も異なる。したがって、寸法変化率の小さい材料では、MD方向およびTD方向の双方ともに変化率が小さいことが要求される。本発明においては、フレキシブル金属張積層板の、金属箔を除去する前後の寸法変化率、並びに金属箔除去後に250℃、30分の加熱を行う前後の寸法変化率の合計値が、MD方向、TD方向共に−0.06〜+0.06の範囲にあることが非常に好ましい。
【0150】
なお、寸法変化率を測定する際のエッチング工程の具体的な条件は特に限定されるものではない。すなわち、金属箔の種類や形成されるパターン配線の形状等に応じてエッチング条件は異なるので、本発明において寸法変化率を測定する際のエッチング工程の条件は従来公知のどのような条件であってもよい。同様に、加熱工程においても、250℃で30分間加熱がなされれば良く、具体的な条件は特に限定されない。
【0151】
本発明にかかる製造方法によって得られるフレキシブル金属張積層板は、前述したように、金属箔をエッチングして所望のパターン配線を形成すれば、各種の小型化、高密度化された部品を実装したフレキシブル配線板として用いることができる。もちろん、本発明の用途はこれに限定されるものではなく、金属箔を含む積層体であれば、種々の用途に利用できることはいうまでもない。
【0152】
また、本発明においては、特に、連続的に生産される幅250mm以上の接着フィルムの場合には、上述の寸法変化率が小さいのみならず、フィルムの全幅における寸法変化率が安定しているという効果を奏する。
【実施例】
【0153】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例、比較例におけるフィルムの分子配向角の評価は次のようにして行った。
【0154】
(フィルムの分子配向角)
原反フィルムの幅方向に対し、両端間を等間隔に、4cm×4cmのサンプルを切り出し、サンプルに搬送方向を明示し、分子配向計を用い測定した。
MOR−c値の測定は、KSシステムズ社製マイクロ波分子配向計MOA2012A型を用い測定した。このMOA2012A型によるMOR−c値は厚みに比例するため、本測定器で得られるMOR値を下式(1)を用いて厚みを75μmに換算したものとする。
MOR−c=(tc/t×(MOR−1))+1
ここで、t =試料の厚み
tc=補正したい基準厚さ
MOR=上述の測定により得られた値
MOR−c=補正後のMOR値
上記式中、75をtcに代入して、補正後のMOR値を求める。得られたMCR−cの値は、MOR−cが、1.000に近いほど等方的フィルムであることを表す。
また、フィルム中央部の長手方向(MD方向)にx軸をとり、ポリアミド酸を支持体上に流延させた際の進行方向を正の方向とする。このとき、x軸の正の方向と、前述の測定で得られた配向軸のなす角度を配向軸角度θとし、配向軸が第一象限及び第三象限にあるときの配向軸角度を正(0#<θ≦90#)、配向軸が第二象限及び第四象限にあるときの配向軸角度を負(−90#≦θ<0#)と定義し、配向角を求めた。
サンプリング方法は図13の通り測定した。
【0155】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度は、セイコーインスツルメンツ社製 DMS200により、昇温速度3℃/分にて、室温から400℃までの温度範囲で測定し、貯蔵弾性率の変曲点をガラス転移温度とした。
【0156】
(熱可塑性の判定)
圧縮モード(プローブ径3mmφ、荷重5g)の熱機械分析測定(TMA)において、10〜400℃(昇温速度:10℃/min)の温度範囲で永久圧縮変形を起こすか否かにより判定した。
【0157】
(厚み測定)
厚みの測定は、TD方向に等間隔に10点厚みを測定しその厚みの平均値をフィルム厚みとする。尚、測定にはHEIDENHAIN社製(ドイツ製)MT12を用いて測定を行った。実施例7〜10、15の後処理前後の厚みを表14に記載する。
【0158】
(フレキシブル積層板寸法変化率)
JIS C6481に基づいて、作成したフレキシブル銅張積層板に4つの穴を形成し、各穴のそれぞれの距離を測定した。次に、エッチング工程を実施してフレキシブル積層板から金属箔を除去した後に、20℃、60%RHの恒温室に24時間放置した。その後、エッチング工程前と同様に、上記4つの穴について、それぞれの距離を測定した。金属箔除去前における各穴の距離の測定値をD1とし、金属箔除去前における各穴の距離の測定値をD2として、次式により寸法変化率を求めた。
寸法変化率(%)={(D2−D1)/D1}×100
なお、上記寸法変化率は、MD方向、TD方向、右斜め45度方向、左斜め45度方向の4方向について測定した。
なお、実施例26〜33、比較例5,6については、さらに加熱処理後の寸法変化率を求めた。すなわち、上記操作に続いて、エッチング後の測定サンプルを250℃で30分加熱した後、20℃、60%RHの恒温室に24時間放置した。その後、上記4つの穴について、それぞれの距離を測定した。加熱後における各穴の距離の測定値をD3として、次式により加熱前後の寸法変化率を求めた。
寸法変化率(%)={(D3−D2)/D2}×100
なお、上記寸法変化率は、MD方向及びTD方向の双方について測定した。
【0159】
(金属箔の引き剥がし強度:接着強度)
JIS C6471の「6.5 引きはがし強さ」に従って、サンプルを作製し、5mm幅の金属箔部分を、180度の剥離角度、50mm/分の条件で剥離し、その荷重を測定した。
【0160】
(実施例1)
ピロメリット酸二無水物/p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)/4,4’-ジアミノジフェニルエーテル/パラフェニレンジアミンを、それぞれモル比1/1/1/1の比率で、N,N’-ジメチルアセトアミド溶媒下、固形分が18%になるように重合した。
この重合溶液を約0℃に冷却した上で、約0℃に冷却したポリアミド酸有機溶媒溶液のアミック酸1モルに対して2.1モル%の無水酢酸及び1.1モル%のイソキノリンを添加し、充分に攪拌した後、ダイより押し出して、エンドレスベルト上に流延塗布した。エンドレスベルト上で、140℃以下で加熱することでゲルフィルムに残存する残存成分割合が54%のゲルフィルムを得た。この自己支持性を有したグリーンシート(ゲルフィルム)を引き剥がし、続いてシートの両端を連続的にシートを搬送するピンシートに弛みなく固定し、その後、熱風加熱炉(1〜3炉)、遠赤炉、徐冷炉に搬送し、徐冷炉から搬出したところでピンからフィルムを引き剥がし、巻取って約1.5m幅の18.5μmポリイミドフィルムを得た。ここで収縮率は表2に示す通りである。TD方向に実質的に無張力となるように固定されるように両端固定端距離を縮める工程は、炉内にフィルムが挿入される前に終了させ、両端固定端距離を拡張する工程は3炉にて行った。表中IR炉は遠赤炉を表す。
【0161】
(実施例2)
収縮率、膨張率を表2のように変更した他は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0162】
(実施例3)
収縮率、膨張率、加熱条件を表1、2のように変更した他は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0163】
(実施例4)
収縮率、膨張率、加熱条件を表1、2のように変更した他は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0164】
(比較例1)
収縮率、膨張率、加熱条件を表1、2のように変更した他は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0165】
(実施例5)
ピロメリット酸二無水物/p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)/4,4’-ジアミノジフェニルエーテル/パラフェニレンジアミンを、それぞれモル比1/1/1/1の比率で、N,N’-ジメチルアセトアミド溶媒下、固形分が18%になるように重合した。
この重合溶液を約0℃に冷却した上で、約0℃に冷却したポリアミド酸有機溶媒溶液のアミック酸1モルに対して2.1モル%の無水酢酸及び1.1モル%のイソキノリンを添加し、充分に攪拌した後、ダイより押し出して、エンドレスベルト上に流延塗布した。エンドレスベルト上で、140℃以下で加熱することで残存成分割合60%のゲルフィルムを得た。この自己支持性を有したグリーンシート(ゲルフィルム)を引き剥がし、続いてシートの両端を連続的にシートを搬送するピンシートに弛みなく固定し、熱風加熱炉、遠赤炉、徐冷炉に搬送し、徐冷炉から搬出したところでピンからフィルムを引き剥がし、巻取って約0.5m幅の18.5μmポリイミドフィルムを得た。
収縮率、膨張率は表4に示す。TD方向に実質的に無張力となるように固定されるように両端固定端距離を縮める工程は、炉内にフィルムが挿入される前に終了させ、両端固定端距離を拡張する工程は4炉にて行った。熱風加熱炉(1〜4炉)、遠赤炉、徐冷炉の雰囲気温度並びに滞留時間は表3に示す。
【0166】
(実施例6)
収縮率、膨張率、加熱条件を表3、4のように変更した他は、実施例5と同様にしてフィルムを得た。
【0167】
(比較例2)
収縮率、膨張率、加熱条件を表3、4のように変更した他は、実施例5と同様にしてフィルムを得た。
【0168】
(実施例7)
ピロメリット酸二無水物/p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)/4,4’-ジアミノジフェニルエーテル/パラフェニレンジアミンを、それぞれモル比1/1/1/1の比率で、N,N’-ジメチルアセトアミド溶媒下、固形分が18%になるように重合した。
この重合溶液を約0℃に冷却した上で、約0℃に冷却したポリアミド酸有機溶媒溶液のアミック酸1モルに対して2.1モル%の無水酢酸及び1.1モル%のイソキノリンを添加し、充分に攪拌した後、ダイより押し出して、エンドレスベルト上に流延塗布した。エンドレスベルト上で、140℃以下で加熱することで残存成分割合23%のゲルフィルムを得た。この自己支持性を有したグリーンシート(ゲルフィルム)を引き剥がし、続いてシートの両端を連続的にシートを搬送するピンシートに固定し、熱風加熱炉、遠赤炉、徐冷炉に搬送し、徐冷炉から搬出したところでピンからフィルムを引き剥がし、巻取って約1.5m幅の18.5μmポリイミドフィルムを得た。熱風加熱炉(1〜3炉)、遠赤炉、徐冷炉の雰囲気温度および滞留時間は表5に示す。
次に、得られたフィルムを、後処理としてロールツーロールで、遠赤炉を用いた加熱処理しフィルムを得た。後処理である加熱処理の条件は表5に示す。
【0169】
(実施例8)
後処理の炉を熱風炉に、後処理張力を12.7kg/mに変更した他は、実施例7と同様にしてフィルムを得た。
【0170】
(実施例9)
ピロメリット酸二無水物/4,4’-ジアミノジフェニルエーテル/パラフェニレンジアミンを、それぞれモル比1/0.75/0.25の比率で、N,N’-ジメチルアセトアミド溶媒下、固形分が18%になるように重合した。具体的には、全ジアミン成分に対して75モル%の4,4’-ジアミノジフェニルエーテルをN,N’-ジメチルアセトアミド溶媒に溶かし、次にピロメリット酸二無水物を全量投入する(すなわち、すでに投入されているジアミン成分に対して133%の酸無水物を投入する)ことで、酸末端プレポリマーを得る。次いでこの酸末端プレポリマー溶液に、残りのジアミン成分(すなわち残りのパラフェニレンジアミン)を、全酸成分と実質的に等モルになるように、不足分のジアミンを添加し、反応させて重合溶液を得た。
この重合溶液を約0℃に冷却した上で、約0℃に冷却したポリアミド酸有機溶媒溶液のアミック酸1モルに対して2.0モル%の無水酢酸及び0.5モル%のイソキノリンを添加し、充分に攪拌した後、ダイより押し出して、エンドレスベルト上に流延塗布した。エンドレスベルト上で、140℃以下で加熱することで残存性分割合30%のゲルフィルムを得た。この自己支持性を有したグリーンシート(ゲルフィルム)を引き剥がし、続いてシートの両端を連続的にシートを搬送するピンシートに固定し、熱風加熱炉、遠赤炉、徐冷炉に搬送し、徐冷炉から搬出したところでピンからフィルムを引き剥がし、巻取って約1.5m幅の25μmポリイミドフィルムを得た。熱風加熱炉(1〜3炉)、遠赤炉、徐冷炉の雰囲気温度並びに滞留時間は表5に示す。
次に、得られたフィルムを、後処理としてロールツーロールで熱風IR炉(熱風と遠赤外線ヒーターを並行して用いた加熱炉)用いた加熱処理(MD方向へ張力をかけながら加熱処理)しフィルムを得た。後処理である加熱処理の条件は表5に示す。
【0171】
(実施例10)
後処理の後処理張力を変更した他は、実施例9と同様にしてフィルムを得た。
【0172】
(実施例11)
ピロメリット酸二無水物/p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)/4,4’-ジアミノジフェニルエーテル/パラフェニレンジアミンを、それぞれモル比1/1/1/1の比率で、N,N’-ジメチルアセトアミド溶媒下、固形分が18%になるように重合した。
この重合溶液を約0℃に冷却した上で、約0℃に冷却したポリアミド酸有機溶媒溶液のアミド酸1モルに対して2.1モル%の無水酢酸及び1.1モル%のイソキノリンを添加し、充分に攪拌した後、約5℃に保ったダイより押し出して、エンドレスベルト上に流延塗布した。エンドレスベルト上にて加熱・乾燥し残存成分割合54%のゲルフィルムを得た。
この自己支持性を有したグリーンシート(ゲルフィルム)を引き剥がし、続いてシートの両端を連続的にシートを搬送するピンシートに固定し、熱風加熱炉、遠赤炉、徐冷炉に搬送し、徐冷炉から搬出したところでピンからフィルムを引き剥がし、巻取って1.5m幅の18μmポリイミドフィルムを得た。
加熱炉(1〜3炉)、遠赤炉、徐冷炉の雰囲気温度並びに滞留時間は表10に、収縮率、膨張率、および得られたフィルムの分子配向軸角度は表11に示す通りである。TD方向に実質的に無張力となるように固定されるように両端固定端距離を縮める工程は、炉内にフィルムが挿入される前に終了させ、両端固定端距離を拡張する工程は3炉にて行った。表中IR炉は遠赤炉を表す。
【0173】
(実施例12)
収縮率・膨張率、加熱条件を表10、11のように変更した他は、実施例11と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの分子配向軸角度は表2に示す通りである。
【0174】
(実施例13)
収縮率・膨張率・加熱条件を表10,11のように変更した他は、実施例11と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの分子配向軸角度は表2に示す通りである。
【0175】
(実施例14)
収縮率・膨張率・加熱条件を表10,11のように変更した他は、実施例11と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの分子配向軸角度は表2に示す通りである。
【0176】
(実施例15)
ピロメリット酸二無水物/p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)/4,4’-ジアミノジフェニルエーテル/パラフェニレンジアミンを、それぞれモル比1/1/1/1の比率で、N,N’-ジメチルアセトアミド溶媒下、固形分が18%になるように重合した。
この重合溶液を約0℃に冷却した上で、約0℃に冷却したポリアミド酸有機溶媒溶液のアミック酸1モルに対して2.1モル%の無水酢酸及び1.1モル%のイソキノリンを添加し、充分に攪拌した後、約5℃に保ったダイより押し出して、エンドレスベルト上に流延塗布した。エンドレスベルト上で加熱・乾燥することで残存成分割合23%のゲルフィルムを得た。この自己支持性を有したグリーンシート(ゲルフィルム)を引き剥がし、続いてシートの両端を連続的にシートを搬送するピンシートに固定し、熱風加熱炉、遠赤炉、徐冷炉に搬送し、徐冷炉から搬出したところでピンからフィルムを引き剥がし、巻取って約1.5m幅の18.5μmポリイミドフィルムを得た。後処理としてロールツーロールでIR炉用いた加熱処理しフィルムを得た。
加熱炉(1〜3炉)、遠赤炉、徐冷炉の雰囲気温度および滞留時間、並びに後処理である加熱延伸処理の条件は表12に示す。
【0177】
(合成例1;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量1000mlのガラス製フラスコにDMFを600g、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(以下、BAPPともいう。)を82.1g加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAともいう。)を53.0g徐々に添加した。続いて、3,3’,4,4’−エチレングリコールジベンゾエートテトラカルボン酸二無水物(以下、TMEGともいう。)を4.1g添加し、氷浴下で30分間撹拌した。4.1gのTMEGを20gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が3000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。得られるポリイミド樹脂は熱可塑性であった。
なお、熱可塑性ポリイミドのガラス転移点温度は、次のようにして求めた。得られたポリアミド酸溶液を25μmPETフィルム(セラピールHP,東洋メタライジング社製)上に最終厚みが20μmとなるように流延し、120℃で5分間乾燥を行った。乾燥後の自己支持性フィルムをPETから剥離した後、金属製のピン枠に固定し、150℃で5分間、200℃で5分間、250℃で5分間、350℃で5分間乾燥を行った。得られた単層シートのガラス転移温度を測定したところ、235℃であった。
【0178】
(合成例2;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを780g、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(以下、BAPPともいう。)を115.6g加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら、BPDAを78.7g徐々に添加した。続いて、TMEG(エチレングリコールビストリメリット酸二無水物)を3.8g添加し、氷浴下で30分間撹拌した。2.0gのTMEGを20gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が3000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
得られるポリイミド樹脂は熱可塑性であった。
なお、熱可塑性ポリイミドのガラス転移点温度は、次のようにして求めた。得られたポリアミド酸溶液を25μmPETフィルム(セラピールHP,東洋メタライジング社製)上に最終厚みが20μmとなるように流延し、120℃で5分間乾燥を行った。乾燥後の自己支持性フィルムをPETから剥離した後、金属製のピン枠に固定し、150℃で5分間、200℃で5分間、250℃で5分間、350℃で5分間乾燥を行った。得られた単層シートのガラス転移温度を測定したところ、240℃であった。
【0179】
(合成例3;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを780g、BAPPを107.5g加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAともいう。)を54.9g徐々に添加した。続いて、TMEGを34.6g添加し、氷浴下で30分間撹拌した。3.0gのTMEGを20gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が3000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
得られるポリイミド樹脂は熱可塑性であった。
なお、熱可塑性ポリイミドのガラス転移点温度は、次のようにして求めた。得られたポリアミド酸溶液を25μmPETフィルム(セラピールHP,東洋メタライジング社製)上に最終厚みが20μmとなるように流延し、120℃で5分間乾燥を行った。乾燥後の自己支持性フィルムをPETから剥離した後、金属製のピン枠に固定し、150℃で5分間、200℃で5分間、250℃で5分間、350℃で5分間乾燥を行い、単層シートを得た。この熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度は190℃であった。
【0180】
(実施例16〜25、比較例3,4)
合成例1で得られたポリアミド酸溶液を固形分濃度10重量%になるまでDMFで希釈した後、実施例1〜10、比較例1,2で得られたポリイミドフィルムにそれぞれ下記手順でフレキシブル銅張積層板を作成した。ポリイミドフィルムの両面に、熱可塑性ポリイミド層(接着層)の最終片面厚みが3μmとなるようにポリアミド酸を塗布した後、120℃で4分間加熱を行った。続いて390℃で20秒間加熱してイミド化を行い、接着フィルムを得た。
得られた接着フィルムの両面に18μmの圧延銅箔(BHY−22B−T;ジャパンエナジー製)、さらにその両側に保護材料(アピカル125NPI;鐘淵化学工業株式会社製)を配して、熱ロールラミネート機を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力196N/cm(20kgf/cm)、接着フィルム張力0.07N/cm、ラミネート速度1.5m/分の条件で連続的に熱ラミネートを行い、フレキシブル金属張積層板を作製した。
【0181】
(実施例26)
合成例2で得られたポリアミド酸溶液を固形分濃度10重量%になるまでDMFで希釈した後、実施例11で得られたポリイミドフィルム(フィルム幅1500mm)の両面に、熱可塑性ポリイミド層(接着層)の最終片面厚みが4μmとなるようにポリアミド酸を塗布した後、140℃で1分間加熱を行った。続いて、張力5kg/m、雰囲気温度390℃の遠赤外線ヒーター炉の中を20秒間通して加熱イミド化を行って、接着フィルムを得た。得られた接着フィルムの両側に18μm圧延銅箔(BHY−22B−T,ジャパンエナジー社製)を、さらに銅箔の両側に保護材料(アピカル125NPI;鐘淵化学工業株式会社製)を用いて、ポリイミドフィルムの張力0.4N/cm、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力196N/cm(20kgf/cm)、ラミネート速度1.5m/分の条件で連続的に熱ロールラミネートを行い、本発明にかかるフレキシブル金属張積層板を作製した。
【0182】
(実施例27)
実施例11で得られたポリイミドフィルムの代わりに、実施例12で得られたポリイミドフィルムを用いる以外は、実施例26と同様の操作を行い、接着フィルム並びにフレキシブル金属張積層板を作製した。
【0183】
(実施例28)
実施例11で得られたポリイミドフィルムの代わりに、実施例13で得られたポリイミドフィルムを用いる以外は、実施例26と同様の操作を行い、接着フィルム並びにフレキシブル金属張積層板を作製した。
【0184】
(実施例29)
合成例3で得られたポリアミド酸溶液を固形分濃度10重量%になるまでDMFで希釈した後、実施例11で得られたポリイミドフィルムの両面に、熱可塑性ポリイミド層(接着層)の最終片面厚みが4μmとなるようにポリアミド酸を塗布した後、140℃で1分間加熱を行った。続いて、雰囲気温度330℃の遠赤外線ヒーター炉の中を20秒間通して加熱イミド化を行って、接着フィルムを得た。得られた接着フィルムの両側に18μm圧延銅箔(BHY−22B−T,ジャパンエナジー社製)を、さらに銅箔の両側に保護材料(アピカル125NPI;鐘淵化学工業株式会社製)を用いて、ポリイミドフィルムの張力0.4N/cm、ラミネート温度330℃、ラミネート圧力196N/cm(20kgf/cm)、ラミネート速度1.5m/分の条件で連続的に熱ロールラミネートを行い、本発明にかかるフレキシブル金属張積層板を作製した。
【0185】
(実施例30)
実施例11で得られたポリイミドフィルムの代わりに、実施例12で得られたポリイミドフィルムを用いる以外は、実施例29と同様の操作を行い、接着フィルム並びにフレキシブル金属張積層板を作製した。
【0186】
(実施例31)
実施例11で得られたポリイミドフィルムの代わりに、実施例13で得られたポリイミドフィルムを用いる以外は、実施例29と同様の操作を行い、接着フィルム並びにフレキシブル金属張積層板を作製した。
【0187】
(実施例32)
合成例2で得られたポリアミド酸溶液を固形分濃度10重量%になるまでDMFで希釈した後、実施例15で得られたポリイミドフィルムの両面に、熱可塑性ポリイミド層(接着層)の最終片面厚みが4μmとなるようにポリアミド酸を塗布した後、140℃で1分間加熱を行った。続いて、雰囲気温度390℃の遠赤外線ヒーター炉の中を20秒間通して加熱イミド化を行って、接着フィルムを得た。得られた接着フィルムの両側に18μm圧延銅箔(BHY−22B−T,ジャパンエナジー社製)を、さらに銅箔の両側に保護材料(アピカル125NPI;鐘淵化学工業株式会社製)を用いて、ポリイミドフィルムの張力0.4N/cm、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力196N/cm(20kgf/cm)、ラミネート速度1.5m/分の条件で連続的に熱ロールラミネートを行い、本発明にかかるフレキシブル金属張積層板を作製した。
【0188】
(実施例33)
合成例3で得られたポリアミド酸溶液を固形分濃度10重量%になるまでDMFで希釈した後、実施例15で得られたポリイミドフィルムの両面に、熱可塑性ポリイミド層(接着層)の最終片面厚みが4μmとなるようにポリアミド酸を塗布した後、140℃で1分間加熱を行った。続いて、雰囲気温度330℃の遠赤外線ヒーター炉の中を20秒間通して加熱イミド化を行って、接着フィルムを得た。得られた接着フィルムの両側に18μm圧延銅箔(BHY−22B−T,ジャパンエナジー社製)を、さらに銅箔の両側に保護材料(アピカル125NPI;鐘淵化学工業株式会社製)を用いて、ポリイミドフィルムの張力0.4N/cm、ラミネート温度330℃、ラミネート圧力196N/cm(20kgf/cm)、ラミネート速度1.5m/分の条件で連続的に熱ロールラミネートを行い、本発明にかかるフレキシブル金属張積層板を作製した。
【0189】
(比較例5)
実施例11で得られたポリイミドフィルムの代わりに、実施例14で得られたポリイミドフィルムを用いる以外は、実施例26と同様の操作を行い、接着フィルム並びにフレキシブル金属張積層板を作製した。
【0190】
(比較例6)
実施例11で得られたポリイミドフィルムの代わりに、実施例14で得られたポリイミドフィルムを用いる以外は、実施例31と同様の操作を行い、接着フィルム並びにフレキシブル金属張積層板を作製した。
【0191】
実施例26〜33、比較例5,6で得られたフレキシブル金属張積層板の特性を評価した結果を表13に示す。
【0192】
【表1】

【0193】
【表2】

【0194】
【表3】

【0195】
【表4】

【0196】
【表5】

【0197】
【表6】

【0198】
【表7】

【0199】
【表8】

【0200】
【表9】

【0201】
【表10】

【0202】
【表11】

【0203】
【表12】

【0204】
【表13】

【符号の説明】
【0205】
0101 熱風
0102 フィルムの進行方向
0103 フィルム面
0201 ジェットノズル
0202 熱風
0203 フィルム進行方向
0204 フィルム面
0301 輻射熱線ヒーター
0302 フィルムの進行方向
0303 フィルム面
0401 輻射熱線ヒーター
0402 輻射熱線ヒーター
0403 フィルム進行方向
0404 フィルム面
0501 熱風
0502 輻射熱線ヒーター
0503 フィルム進行方向
0504 フィルム面
0601 ジェットノズル
0602 輻射熱線ヒーター
0603 熱風
0604 フィルム進行方向
0605 フィルム面
0701 ダイ
0702 ベルト
0703 ベルトから剥がしたゲルフィルムを両端固定
0704 熱風炉
0705 輻射熱線ヒーター炉
0706 フィルムの両端固定を外す
0707 (B)工程後フィルム巻取り
0708 (B)工程後フィルム繰出し
0709 熱風炉
0710 輻射熱線ヒーター炉
0711 (C)工程後フィルム巻取り
0801 ダイ
0802 ベルト
0803 ベルトから剥がしたゲルフィルムを両端固定
0804 熱風炉
0805 輻射熱線ヒーター炉
0806 フィルムの両端固定を外す
0807 熱風炉
0808 輻射熱線ヒーター炉
0809 (C)工程後フィルム巻取り
0901 配向軸
0902 配向軸
0903 ポリアミド酸を支持体に流伸した際の進行方向(MD方向)
1001 MD方向(フィルム搬送方向)
1002 TD方向(フィルム幅方向)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に生産される有機絶縁性フィルムであって、フィルムの全幅において下記(1)〜(3)を満たす有機絶縁性フィルム。
(1)フィルムのMOR−c値が1.05以上5.0以下、
(2)分子鎖主軸配向角がMD方向に対して−30から30度、
(3)フィルムMOR−c値の最大値と最小値の差が1.0以下
【請求項2】
前記有機絶縁性フィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1記載の有機絶縁性フィルム。
【請求項3】
前記ポリイミドフィルムが下記一般式1,2で示される繰り返し単位の内少なくとも1種を有するポリイミド樹脂を含有するポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項2記載の有機絶縁性フィルム。
【化1】

一般式1
式中R1は
【化2】

から選ばれる2価の有機基(式中R2は、−CH3、−Cl、−Br、−F または−CH3O)であり、
Rは、
【化3】

(式中nは1〜3の整数 Xは、水素、ハロゲン、カルボキシル基、炭素数6以下の低級アルキル基、炭素数6以下の低級アルコキシル基から選ばれる1価の置換基を表す)及び/または
【化4】

(式中Y、Zは、水素、ハロゲン、カルボキシル基、炭素数6以下の低級アルキル基、炭素数6以下の低級アルコキシル基から選ばれる1価の置換基を表し、Aは−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−CH2−から選ばれる2価の連結基を表す)で表される2価の有機基である。
【化5】

一般式2
(式中Rは、一般式1のRと同じであり、R3は、
【化6】

から選ばれる4価の有機基である。)
【請求項4】
前記有機絶縁性フィルムは、少なくとも下記(A)〜(C)、
(A)高分子と有機溶剤を含む組成物を支持体上に連続的に流延・塗布し、ゲルフィルムを形成する工程、
(B)ゲルフィルムを支持体から引き剥がしゲルフィルムの両端を固定する工程、
(C)フィルムの両端を固定しながら加熱炉内を搬送する工程、
を含む有機絶縁性フィルムの製造方法により生産されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機絶縁性フィルム。
【請求項5】
前記有機絶縁性フィルムがポリイミドフィルムであり、(A)工程で用いる高分子がポリアミド酸であることを特徴とする請求項4記載の有機絶縁フィルム。
【請求項6】
幅500mm以上で連続的に生産して得られる請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機絶縁性フィルムを用いたフレキシブル金属張積層体。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機絶縁性フィルムを用いたカバーレイフィルム。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機絶縁性フィルムを用いたTAB用テープ。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機絶縁性フィルムを用いたCOF用ベーステープ。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機絶縁性フィルムを用いた多層フレキシブル配線板。
【請求項12】
ポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けた接着フィルムであって、該接着フィルムは連続的に生産されるとともに、前記ポリイミドフィルムが、請求項2〜6のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムであることを特徴とする接着フィルム。
【請求項13】
前記接着フィルムの幅が250mm以上の長尺フィルムであることを特徴とする請求項12記載の接着フィルム。
【請求項14】
金属箔とともに、一対以上の金属ロールにより加熱および加圧して連続的に張り合わせられる請求項12または13記載の接着フィルム。
【請求項15】
請求項12または13に記載の接着フィルムに金属箔を貼り合わせて得られることを特徴とする、フレキシブル金属張積層板。
【請求項16】
ポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けた接着フィルムの製造方法であって、前記ポリイミドフィルムとして、請求項2〜6のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムを用いて連続的に製造することを特徴とする接着フィルムの製造方法。
【請求項17】
請求項12または13記載の接着フィルムと金属箔とを加熱および加圧しながら連続的に張り合わせることを特徴とするフレキシブル金属張積層板の製造方法。
【請求項18】
前記張り合わせ温度が、200℃以上であり、かつ前記熱可塑性ポリイミドのガラス転移点温度(Tg)+50℃以上であることを特徴とする請求項17記載のフレキシブル金属張積層板の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−25967(P2012−25967A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224355(P2011−224355)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【分割の表示】特願2006−510686(P2006−510686)の分割
【原出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】