説明

分離ユニットの形態の乗員室を備えた自動車

本発明は、乗員室(2)が分離ユニットとして車両に組み込まれた自動車(1)に関する。前記自動車(1)は、衝突時に、乗員室(2)が、車両の残りの部分に配置されかつ乗員室(2)が支持されている案内面(15)によって、車両の残りの部分に対して車両の縦方向と上方向に同時に変位可能となるための装置を備えている。本発明の目的は、衝突時の車両の乗員に対する損傷の危険を低減することにある。この目的のため、装置は、乗員室(2)が衝撃と反対方向に移動可能となるように具体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
包括的な種類の自動車が特許文献1に開示されている。この文献には、自動車と障害物との正面衝突の際に作動して、車両の残りの部分から分断されるユニットとして設計された乗員室の前側を上方向に持ち上げ、それによって乗員室が車両の残りの部分の台から取り外されるようになっている装置が記載されている。同時に、一端を乗員室の後側に固定され、かつ他端をリールに固定された電動式のケーブルプルが作動する。ここで該リールは、乗員室の前部領域で車両に取り付けられており、モータがトルクを発生するようになっている。そして、ケーブルプルがリールに巻き取られ、その結果、ローラ/レールシステムによって車両の残りの部分の後部領域に案内された乗員室が、回転点を中心に回転される。最終的な位置では、乗員室は垂直方向に直立する、すなわちその前側を上方向に向け、それによって衝突した直接の領域から引き離される。しかしながら、この車両の概念の欠点は、車両の正面衝突時に、乗員室が、乗員室の慣性力によってだけでなくケーブルプルの張力によっても、衝撃方向に、特に激しく前方向に加速され、その結果、乗員室が車両のフロントエンドを越えて前方向に斜めに放り出されることである。この場合、背の高い障害物、例えば樹木、壁又は商用車に衝突した場合、乗員室の乗員が特に高い損傷の危険にさらされる可能性が高い。
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第41 02 526 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、衝突時の車両の乗員に対する損傷の危険を低減するという趣旨で包括的な種類の自動車を開発するという目的に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、本発明により、請求項1の特徴によって達成される。
【0006】
衝撃時に衝撃方向と反対側に乗員室を移動することによって、追加のクラッシュゾーンの長さが得られ、そこでプロセス中に乗員室が破損を受けることなく運動衝撃エネルギーが吸収され得る。車両の乗員はより穏やかな揺れを受けないが、乗員室は上記のクラッシュゾーンの長さによって侵害からも無傷のままとなる。このため乗員に対する損傷のリスクが著しく低減される。乗員室の衝突安全性の大きな向上が得られたことにより、乗員の安全性を危険にさらすことなく、乗員室に従来用いられていた他の複雑な安全装置、例えば付加的な補強構造又はクランブルゾーンなどを削減したり、あるいは省略することさえできる。その結果、乗員室の、ひいては車両全体の簡単な構造が可能となる。この場合、寸法的に安定なプラスチックで構成された乗員室を使用することも考えられ得る。
【0007】
本発明の好適な改良の形態は、従属項から明らかとなり得る。さらに、本発明は、図面に示された複数の例示的な実施の形態を参照して、以下により詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、乗員室2が分離ユニットとして車両の残りの部分に組み込まれた自動車1を示している。この場合、乗員室2は、フロントダッシュボード3と、後部背壁4と、さらにウインドウ6を有するドア5と、フロントガラス7と、リアウインドウ8と、完全なルーフ構造9とを備えている。車両の残りの部分は、自動車1の駆動ユニットを備えたフロントエンド10と、トランクを備えたリヤエンド11を含んでおり、これらのエンドは、2つの側方縦方向部材13によって互いに連結されており、該縦方向部材13は、フロントエンド10とリヤエンド11との間に延びており、自動車1の根太領域を形成している。
【0009】
フロントエンド10及びリヤエンド11は、乗員室2の下に基本的に位置する車両構造の一部である縦方向部材13と共に、窪み14を形成し、該窪み14は、垂直方向に延在する壁27によってフロントエンド10につながれ、フロントエンド10に面する斜めに延在する案内面15によって壁28の形態でリヤエンド11につながれている。この例示的な実施の形態では、これらのつながりの形態は、正面衝突に好適な態様で設計されている。一方、代替案としては、階段状壁27の代わりに、リヤエンド11に面する斜めに延在する案内面を備えた壁も同様に考えることができ、その結果、本発明は、後部の衝撃の場合、例えばリヤエンドの衝突の場合にも有利に用いることができる。他方、前記斜めの案内面15はまた、リヤエンドの衝突の際の安全上の目的のために、単にフロントエンドにだけ配置されてもよい。
【0010】
乗員室2は窪み14に取付けられており、乗員室2は、縦方向部材13上に着座しており、スカート部16によって縦方向部材13を外側で覆っている。衝撃によって変位が引き起こされる場合、このスカート部16が用いられて、縦方向部材13に沿って乗員室2が安定して縦方向に案内される(図2)。乗員室2の後部背壁4及びフロントダッシュボード3の輪郭は、フロントエンド10及びリヤエンド11の連結部の形に応じて設計されている。通常の運転状態では、乗員室2は、固定手段によって、車両の残りの部分、例えばフロントエンド10及びリヤエンド11に、しっかりと固着されている。これらは、規定の作用している力のモーメントを超えると、例えばロック解除によって取り外されるように設計されていてもよく、あるいは乗員室2と車両の残りの部分との固着連結が前記力のモーメントによって引き剥がされる所定の破断点を与えられており、それによって前記乗員室は車両の残りの部分に対して移動可能となっている。
【0011】
さらに、弾性の軸受、好ましくはゴム軸受23(図3)が、自動車の残りの部分に、特に縦方向部材13に配置可能であり、該軸受上に乗員室2が載り、その結果、乗員室2の乗員が、運転時の感覚の快適性の向上を感じる。この向上は、ゴム軸受に関連して、エンジンの振動、及び車道の凹凸によって引き起こされる振動から発生する振動が取り除かれることによるものである。据付に関して簡単な態様で、車両の残りの部分は、個別のモジュール、すなわちフロントエンドモジュール、リヤエンドモジュール、及び縦方向部材モジュールを備えていてもよい。
【0012】
自動車1はさらに、乗員室2を、車両の残りの部分に対して車両の縦方向に移動するための装置を含んでいる。運転モード中に正面衝突が起こった場合、衝突センサによって、装置が同時か又は直前に作動される。そして装置は、リヤエンド11の案内面15を介して、乗員室2を後方向と同時に上方向に衝撃と反対方向に移動し、固定手段が移動によって取り外されるか、又は切り離される。固定手段はまた、センサを用いて制御されてもよく、特に衝撃の前に既に取り外されていてもよい。乗員室2が後方及び上方向に移動すると、乗員室2は追加のクラッシュゾーン17の分だけフロントエンド10の壁27から間隔を空けられ、その結果、自動車1は、乗員室2が破損することなく、従来知られている衝突システムの場合よりもかなり多くの衝撃エネルギーを吸収することができる。これに関して、案内面15の傾斜角度が重要な役割を果たす。前記傾斜角度が小さいほど、利用できる追加のクラッシュゾーン17が大きくなり、角度を小さくすることにより、乗員室2の乗員に特に高い安全性がもたらされる。しかしながら、本発明による自動車1を実現する際に、傾斜角度の設計は、リヤエンド11の長さ、ひいては自動車1の全長やトランクの寸法に適合させなければならず、このことが任意の所望の角度を選択する能力を制限している。本発明は、乗員室2が完全に独立している、すなわち舵取り装置及びブレーキが電気的に作動し、かつ乗員室2からシャシへのいかなる機械的連結もない自動車1の場合、特に好ましい。なぜなら、このことにより、支障なく、乗員室2が全体的に後方及び上方向に移動可能となるからである。
【0013】
追加のクラッシュゾーン17では、車両構造は、図3及び4から明らかなように、車両の縦方向に押し込まれ、かつここで根太領域の縦方向部材13の一部を構成する部分12を有している。図3によれば、部分12は、車両の横方向に曲がって蛇腹状に折り畳むことができる。その結果、衝突時に、さらに、追加の変形ゾーンが利用可能となり、特定の態様で変形が開始されることが可能となり、それによって自動車1がこの部分12で規定の方向に押し込まれ得る。この措置によって、衝撃エネルギーが同時に消費され、乗員室2の乗員は衝撃の際により穏やかな揺れを受けることになる。
【0014】
これに対する代替案としては、図4によれば、縦方向部材13はまた、複数の構成部品18及び19を備えていてもよく、第1の構成部品18は中空構造であり、第2の構成部品19の周囲に係合しており、ここで重なり区域20が形成され、空いた距離が自由になっており、衝突時に、この重なり区域20にわたって、第2の構成部品19が第1の構成部品18内に相対的に縦方向に変位され得る。構成部品18及び19は、簡単な態様で互いに挿入され、衝突時に切り離され得る連結手段21、例えばねじによって、重なり区域20に沿って互いに固定されている。衝突時に、連結手段21は破断され、それによって縦方向部材部品18及び19は互いにはまり込む。これによって、一方では、衝撃エネルギーが同様に散逸され、他方では、揺れがより穏やかになる。また、特に省エネルギー態様で設計されたこの部分12は、例として図3及び4に示されているように、車両構造の中央トンネル22(図3)に形成されていてもよい。
【0015】
乗員室2が衝撃と反対方向に移動可能となるための装置は、多くの形態で具体化されていてもよい。例えば、装置は、衝突センサ、並びに、一方で乗員室2の端部壁、例えばフロントダッシュボード3に、他方で車両の残りの部分に形成された止め具に支持された1つ又は複数の圧縮ばねを含むことができ、板状壁27のこの場合、フロントエンド10に形成される。乗員室2は車両の残りの部分にロックされ、衝突センサが衝撃又はすぐ差し迫った衝突を検出した後にロックを解除する。圧縮ばねの代わりに、引張ばねを使用してもよいが、但しここで該引張ばねは、一端をリヤエンド11に、他端を乗員室の後部背壁4に支持される。衝突時に、ロック具によって形成された乗員室2のロックを解除した場合、予圧をかけられた圧縮ばね又は引張ばねは弛緩し、それによって、乗員室2は、それらのばねによって、案内面15に沿って後方及び上方向に押されるか又は引っ張られる。
【0016】
装置のさらなる変形した形態では、装置は、衝突センサ、並びに、衝撃方向に面した、乗員室2の端部壁(フロントダッシュボード3)と、車両の残りの部分の対向する壁、ここではフロントエンド10の板状の階段状壁27との間に配置された着火装置を含んでいることが考えられる。衝撃又はすぐ差し迫った衝撃を検出した後に、衝突センサが電気信号を用いて装置の点火器を作動させ、これにより着火装置によって爆発圧力が放出され、この放出された力が極めて短時間内に後方及び上方向に乗員室2を押す。上記の変形した形態の場合、案内面15が多くとも45°の所定の角度で傾斜している場合、衝撃と反対側への乗員室2の変位ができるだけ妨げられずに行われ、従って本発明による装置の十分な機能が保証されるのに非常に有利である。
【0017】
改良された案内では、案内面15には、互いに平行に延在しかつそれに沿って乗員室2が規定の方向に案内される延在レール24が配置されており、それによって、衝突時に乗員室2の制御されない変位移動が起こらなくなる。延在レール24は、直線的に延在しかつ案内面15に組み込まれる溝であってもよく、溝に係合するウェブ又は複数のピンが、ダッシュボード3又は後部壁4に配置されていてもよい。代替案としては、延在レール24自体はまた、乗員室2に形成された通路又は溝に遊びを設けて取り付けられるウェブを構成してもよい。案内の容易さを向上させるために、及び乗員室2の安定した水平位置を維持するために、車両構造に、この例示的な実施の形態ではフロントエンドの近傍の中央トンネル22に、乗員室2の底部で対応する案内手段と相互作用する延在レール25も同様に形成されている。乗員室2の左右のフロントエンド及びリヤエンドに配置され、全てが互いに平行であり、かつ衝撃方向に対して上方向に斜めに向いているガイドのおかげで、車両の衝突の際に、乗員室2全体が、均一な平行な変位で上方向及び後方に移動され、それによって、乗員の快適な座り心地を損ね、かつ健康上の危険を招くおそれのある傾斜移動を防止する。さらに、乗員室2は、据付が容易な態様でレールガイドを介して窪み14に正確に挿入され、そこで位置決め可能であり、その後、乗員室2はロック具によって取り付け位置に固着される。
【0018】
着火装置及びばね駆動装置の上記の変形した形態の代替案としては、図3が、乗員室2を移動する装置であって、車両の縦方向に沿って配置され、かつ車両の衝突の衝撃力によって車両の縦方向に作動可能である摺動要素29を含む装置を示している。剛性の摺動要素29は、クラッシュゾーン全体にわたって、一端を乗員室2に連結され、他端で車両に留め付けられた態様で、フロントエンド10又は下側車両構造に取り付けられた衝撃吸収部26を支えている。これによって、センサ技術に経費をかけることなく、乗員室2を上方向及び後方に移動するために、衝撃エネルギー自体が簡単な態様で用いられる。このプロセスで、衝突エネルギーがさらに消費される。できるだけ均一な力の印加を実現するために、互いに平行に配置され、かつ衝撃方向に互いに同一平面で終端している複数の摺動要素29を設けると好都合である。摺動要素29が、押し込まれる車両構造の部分12に対して車両の縦方向に移動可能であるように、摺動要素29は、フロントエンド10又は乗員室2の下に位置する車両構造に固定されるようになっている。すなわち摺動要素29は、部分12に直接接触していてはならない。これによって得られる効果は、乗員室2が、部分12によって与えられた追加のクラッシュゾーンを越えてできるだけ妨げられずに後方に移動できることである。当然のことながら、後部の衝突のために、1つ又は複数の摺動要素29をまた、リヤエンド11に取り付けてもよい。摺動要素29をフロントエンド10又はリヤエンド11に取り付ける際に、乗員室2を届く限り遠くまで連続的に移動するために、前記摺動要素の壁27、28を形成することも考えられ、ここで該壁は、乗員室2の下に位置する車両構造及び乗員室2のダッシュボード3、壁4に隣接しており、衝突時に、構造は壁27、28に入り込むようになっており、ここでこの変形した形態では、縦方向部材13はフロントエンド10とリヤエンド11との間にのみ延在している。摺動要素29は、衝撃吸収部26を形成する作動板31と共にプッシュロッド30として構造的には設計されている。
【0019】
衝撃吸収部26はまた、縦方向にフロントエンド10へ突出するように、乗員室2の上流側に取り付けられていてもよい。この場合、衝撃吸収部26はフロントエンド10又は下側車両構造に固定されておらず、プッシュロッド30がフロントエンド10又は下側車両構造に単に案内されており、それによって、プッシュロッド30が作動板31と共に、フロントエンド10及び下側車両構造に対して車両の縦方向に移動を行うことができる。このため、乗員室2はフロントエンド10の衝撃の前に自動的に既に後ろに押されており、その結果、追加のクラッシュゾーン17が早い時点で空けられ、乗員室2が侵害から特に保護される。これに関して、乗員室2が後ろに移動するために起こる乗員に対するさらなる負の加速は、次に来る衝突に誘発される負の加速とは別の時点に移動され、その結果、乗員は負の加速が同時に増す場合におけるような身体への大きな負荷を受けない。衝撃吸収部26を上流側に取り付けること、及び結果として得られる追加のクラッシュゾーン17の早期の露出のおかげで、押し込まれ得る部分12の形状を全体的に省略することが可能となり、その結果、衝突安全性を大きく損なう結果を伴わずに、自動車1の製造経費が著しく削減される。
【0020】
図3の例示的な実施の形態では、自動車1の左側に配置された摺動要素29は、衝撃吸収部26と反対にある端部32に、ケーブルプル34に係合する回転可能な偏向プーリ33を有している。一方、ケーブルプルは、縦方向部材13に回転可能に固定された偏向プーリ35、36、37、38を介して、車両の左側で偏向プーリ39に固定されており、該偏向プーリ39は、リヤエンド11の案内面15の上側縁部40に回転可能に固定されている。そこに位置するケーブルプル34の端部41は、乗員室2の後部背壁4の左側に取り付けられている。他方、ケーブルプル34は、偏向プーリ35を介して中央トンネル22の上を通って、車両の右側の縦方向部材13上の偏向プーリ42に案内され、そこからまず同様に右の縦方向部材13に固定された偏向プーリ43に案内され、最終的にリヤエンド11の案内面15の右側に取り付けられた偏向プーリ44に案内されている。ケーブルプル34の端部45は、乗員室2の後部背壁4の右側に固定されている。衝突時に、摺動要素29が、乗員室2に対して縦方向に変位され、このプロセスで、ケーブルプル34に押し込まれ、該ケーブルプル34は、このプロセス中にケーブルの長さの残りの部分の短縮が起こることによって、引張応力で乗員室2をリヤエンド11の方向に位置させる。乗員室2を案内面15に沿って上方向に衝撃領域から引っ張ることにより、摺動要素29が乗員室2のフロントダッシュボード3に直接結合されている場合に存在するおそれのある、剛性の摺動要素29が乗員室2に侵入するリスクが基本的に回避される。両側に等しい効果で作用する張力によって、乗員室2は、案内面15のガイドレール24に沿って、均一にかつ滞ることなく移動される。さらに、このケーブルプルによる変形した形態は、案内面15に沿った乗員室2の移動が実質的に傾斜角度とは無関係であり、それにもかかわらず支障なく移動を行うことができるという利点を与える。これにより、車両設計の変形の大きな可能性が得られる。
【0021】
代替案としては、1つのケーブルプル34が、いずれの場合も自動車1の両側に配置され、ケーブルプル34の2つの端部がいずれの場合も乗員室の後部背壁4の左右に取り付けられることも考えられる。それによって、乗員室2が、1つのケーブルプル34が衝突状況で引きちぎられた場合であってもなお引っ張られ得ることを保証する。さらに、乗員室2の縦方向の移動に支障を与え得る、車両の一方の縦方向側から他方の縦方向側へのケーブルプル34の横方向のガイドが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】乗員室が据付位置にある、本発明による自動車の斜視図。
【図2】乗員室が正面衝突の場合の状態にある、図1の本発明による自動車の斜視図。
【図3】乗員室を変位させるための本発明による装置を備えた、乗員室を囲む車体の残りの部分の斜視図。
【図4】長さ変更可能な縦方向部材を備えた、本発明による自動車の、乗員室を囲む車体の詳細な斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員室が分離ユニットとして車両の残りの部分に組み込まれた自動車であり、衝突時に、前記乗員室が、前記車両の残りの部分に配置されかつ前記乗員室が支えられている案内面を介して、前記車両の残りの部分に対して前記車両の縦方向と同時に上方向に移動可能となるための装置を有する自動車であって、
前記装置は、前記乗員室(2)が衝撃と反対方向に移動可能となるように設計されていることを特徴とする自動車。
【請求項2】
前記装置が、少なくとも1つの摺動要素(29)を含み、該摺動要素(29)が、前記車両の縦方向に沿って配置され、衝撃力によって前記車両の縦方向に作動可能であり、クラッシュゾーン全体にわたって、一端を前記乗員室(2)に連結され、他端で衝撃吸収部(26)を支えていることを特徴とする請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
前記摺動要素(29)が、前記乗員室(2)の下に基本的に位置し、前記車両の縦方向に押し込まれかつ前記摺動要素(29)に対して移動可能である部分(12)を有する車両構造に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車。
【請求項4】
前記部分(12)が、前記乗員室(2)が載っている前記車両構造の縦方向部材(13)の一部であることを特徴とする請求項3に記載の自動車。
【請求項5】
前記部分(12)が、前記車両の横方向に曲がって蛇腹状に折り畳まれることを特徴とする請求項3あるいは4に記載の自動車。
【請求項6】
前記車両構造が、第1の構成部品(18)及び第2の構成部品(19)を備え、前記第1の構成部品(18)が中空構造であり、かつ前記第2の構成部品の周囲に係合しており、重なり区域(20)が形成され、空いた距離が自由になっており、衝突時に、該重なり区域(20)にわたって前記第2の構成部品(19)が前記第1の構成部品(18)内に変位可能であり、
前記第2の構成部品(19)が、前記第1の構成部品(18)と共に、衝突時に切り離され得る連結部によって前記区域(20)で互いに固定されていることを特徴とする請求項3あるいは4に記載の自動車。
【請求項7】
前記摺動要素(29)が、フロントエンド(10)及び/又はリヤエンド(11)に取り付けられ、
前記乗員室(2)の下に位置する前記車両構造、及び前記フロントエンド(10)若しくはリヤエンド(11)の隣接した壁(27、28)が、衝突時に、前記構造が前記壁(27、28)に入り込むように設計されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車。
【請求項8】
前記摺動要素(29)の前記衝撃吸収部(26)が、前記乗員室(2)の上流側に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項9】
前記摺動要素(29)が、前記乗員室(2)に固定されかつ前記車両の残りの部分に配置された偏向プーリ(35〜39、42〜44)を介して案内されるケーブルプル(34)に作動的に連結され、それによって前記乗員室(2)が、前記摺動要素(29)の前記乗員室(2)に対する変位が衝突によって引き起こされる際に、衝撃と反対方向に、前記案内面(15)に沿って前記ケーブルプル(34)によって上方向に引っ張られるようになっていることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項10】
前記ケーブルプル(34)が、前記車両の一方の縦方向側から他方の縦方向側まで延在しており、前記ケーブルプル(34)の2つの端部(41、45)が、前記車両の異なる縦方向側で前記乗員室(2)に取り付けられていることを特徴とする請求項9に記載の自動車。
【請求項11】
前記乗員室(2)が、前記フロントエンド及びリヤエンドで、互いに平行でありかつ衝撃方向に対して上方向に斜めに向いている前記案内面(15)に載っていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項12】
前記装置が、衝突センサ、並びに、一方で前記乗員室(2)のダッシュボード(3)又は背壁(4)に支持され、他方で前記車両の残りの部分に形成された止め具に支持された圧縮ばね又は張力ばねを含み、
前記乗員室(2)が、前記車両の残りの部分にロックされ、前記衝突センサが、衝撃を検出した後にロックを解除することを特徴とする請求項1に記載の自動車。
【請求項13】
前記装置が、衝突センサ、並びに、前記乗員室(2)の衝撃方向に面するダッシュボード(3)又は背壁(4)と、前記車両の残りの部分の対向する壁(27、28)との間に配置された着火装置を含み、前記衝突センサが、衝撃を検出した後に、電気信号を用いて爆発圧力を放出する前記装置の点火器を作動させることを特徴とする請求項1に記載の自動車。
【請求項14】
前記乗員室(2)が、前記車両の残りの部分に配置されたゴム軸受(23)に載っていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の自動車。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員室が分離ユニットとして車両の残りの部分に組み込まれた自動車であり、衝突時に、前記乗員室が、前記車両の残りの部分に配置されかつ前記乗員室が支えられている案内面を介して、前記車両の残りの部分に対して前記車両の縦方向と同時に上方向に移動可能となるための装置を有する自動車であって、
前記装置は、前記乗員室(2)全体が衝撃と反対方向に、平行に移動可能となるように設計されていることを特徴とする自動車。
【請求項2】
前記装置が、少なくとも1つの摺動要素(29)を含み、該摺動要素(29)が、前記車両の縦方向に沿って配置され、衝撃力によって前記車両の縦方向に作動可能であり、クラッシュゾーン全体にわたって、一端を前記乗員室(2)に連結され、他端で衝撃吸収部(26)を支えていることを特徴とする請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
前記摺動要素(29)が、前記乗員室(2)の下に基本的に位置し、前記車両の縦方向に押し込まれかつ前記摺動要素(29)に対して移動可能である部分(12)を有する車両構造に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車。
【請求項4】
前記部分(12)が、前記乗員室(2)が載っている前記車両構造の縦方向部材(13)の一部であることを特徴とする請求項3に記載の自動車。
【請求項5】
前記部分(12)が、前記車両の横方向に曲がって蛇腹状に折り畳まれることを特徴とする請求項3あるいは4に記載の自動車。
【請求項6】
前記車両構造が、第1の構成部品(18)及び第2の構成部品(19)を備え、前記第1の構成部品(18)が中空構造であり、かつ前記第2の構成部品の周囲に係合しており、重なり区域(20)が形成され、空いた距離が自由になっており、衝突時に、該重なり区域(20)にわたって前記第2の構成部品(19)が前記第1の構成部品(18)内に変位可能であり、
前記第2の構成部品(19)が、前記第1の構成部品(18)と共に、衝突時に切り離され得る連結部によって前記区域(20)で互いに固定されていることを特徴とする請求項3あるいは4に記載の自動車。
【請求項7】
前記摺動要素(29)が、フロントエンド(10)及び/又はリヤエンド(11)に取り付けられ、
前記乗員室(2)の下に位置する前記車両構造、及び前記フロントエンド(10)若しくはリヤエンド(11)の隣接した壁(27、28)が、衝突時に、前記構造が前記壁(27、28)に入り込むように設計されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車。
【請求項8】
前記摺動要素(29)の前記衝撃吸収部(26)が、前記乗員室(2)の上流側に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項9】
前記摺動要素(29)が、前記乗員室(2)に固定されかつ前記車両の残りの部分に配置された偏向プーリ(35〜39、42〜44)を介して案内されるケーブルプル(34)に作動的に連結され、それによって前記乗員室(2)が、前記摺動要素(29)の前記乗員室(2)に対する変位が衝突によって引き起こされる際に、衝撃と反対方向に、前記案内面(15)に沿って前記ケーブルプル(34)によって上方向に引っ張られるようになっていることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項10】
前記ケーブルプル(34)が、前記車両の一方の縦方向側から他方の縦方向側まで延在しており、前記ケーブルプル(34)の2つの端部(41、45)が、前記車両の異なる縦方向側で前記乗員室(2)に取り付けられていることを特徴とする請求項9に記載の自動車。
【請求項11】
前記乗員室(2)が、前記フロントエンド及びリヤエンドで、互いに平行でありかつ衝撃方向に対して上方向に斜めに向いている前記案内面(15)に載っていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項12】
前記装置が、衝突センサ、並びに、一方で前記乗員室(2)のダッシュボード(3)又は背壁(4)に支持され、他方で前記車両の残りの部分に形成された止め具に支持された圧縮ばね又は張力ばねを含み、
前記乗員室(2)が、前記車両の残りの部分にロックされ、前記衝突センサが、衝撃を検出した後にロックを解除することを特徴とする請求項1に記載の自動車。
【請求項13】
前記装置が、衝突センサ、並びに、前記乗員室(2)の衝撃方向に面するダッシュボード(3)又は背壁(4)と、前記車両の残りの部分の対向する壁(27、28)との間に配置された着火装置を含み、前記衝突センサが、衝撃を検出した後に、電気信号を用いて爆発圧力を放出する前記装置の点火器を作動させることを特徴とする請求項1に記載の自動車。
【請求項14】
前記乗員室(2)が、前記車両の残りの部分に配置されたゴム軸受(23)に載っていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−504563(P2006−504563A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547496(P2004−547496)
【出願日】平成15年9月23日(2003.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010556
【国際公開番号】WO2004/039657
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】