説明

制動力制御装置及び制動力制御方法

【課題】運転者がブレーキペダルの操作量を急速に減少させた際に、運転者へ与える違和感を低減することが可能な制動力制御装置及び制動力制御方法を提供する。
【解決手段】運転者によるブレーキペダルの非操作時に第一連通路を介してリザーブタンクと連通するマスタシリンダと第二連通路を介して連通し、且つ車輪に制動力を付与するホイールシリンダの液圧を、ブレーキペダルの操作量に応じてマスタシリンダで発生するマスタシリンダ圧以上の液圧に増圧し、ブレーキペダルの操作量が、予め設定した操作量閾値以上から当該操作量閾値未満に減少すると、マスタシリンダ圧以上の液圧に増圧した液圧に対する、増圧の度合いを減少させ、且つブレーキペダルの戻し方向への操作速度が予め設定した操作速度閾値以上の場合に、操作速度が操作速度閾値未満の場合よりも、操作量閾値を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動時に運転者のブレーキアシスト制御を行う制動力制御装置及び制動力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、運転者によるブレーキペダルの操作量に応じてマスタシリンダで発生したマスタシリンダ圧(ブレーキ液の及ぼす圧力)を用いて、車輪に制動力を付与するホイールシリンダを備えたブレーキ装置がある。このようなブレーキ装置としては、例えば、特許文献1に記載されているものがある。
【0003】
特許文献1に記載されているブレーキ装置では、マスタシリンダ圧以上の液圧に増圧したホイールシリンダ圧により、マスタシリンダ圧に応じた制動力以上の制動力を車輪に付与している。ここで、マスタシリンダは、ブレーキペダルの非操作時(ブレーキペダルの操作量が略「0」の状態を含む)には、第一連通路を介して、ブレーキ液を貯留しているリザーブタンクと連通する。また、ホイールシリンダは、第二連通路を介してマスタシリンダと連通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−142369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のブレーキ装置では、運転者によるブレーキペダルの操作量が非操作時の操作量へ急速に減少すると、ホイールシリンダのブレーキ液が、第二連通路を介して、マスタシリンダへ急速に流入する場合がある。さらに、マスタシリンダへ急速に流入したブレーキ液が、第一連通路を介して、リザーブタンクへ急速に流入する場合がある。
【0006】
ホイールシリンダからマスタシリンダへ急速に流入したブレーキ液が、リザーブタンクへ急速に流入すると、第一連通路をブレーキ液が急速に流れることにより発生する音が、運転者へ違和感を与えるという問題が発生するおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、運転者がブレーキペダルの操作量を急速に減少させた際に、運転者へ与える違和感を低減することが可能な、制動力制御装置及び制動力制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、ブレーキペダルの操作量が予め設定した操作量閾値以上から当該操作量閾値未満に減少すると、マスタシリンダ圧以上の液圧に増圧した液圧の、増圧の度合いを減少させる。これに加え、ブレーキペダルの戻し方向への操作速度が予め設定した操作速度閾値以上の場合に、操作速度が操作速度閾値未満の場合よりも、操作量閾値を大きくする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運転者によるブレーキペダルの操作量が減少した際に、ブレーキペダルの戻し方向への操作速度が高いと、液圧の増圧の度合いの減少を開始するタイミングを速くすることとなる。このため、ブレーキペダルの操作量が急速に減少した場合における、ホイールシリンダとマスタシリンダとの液圧の差を減少させて、第一連通路を流れるブレーキ液によって生じる音の発生を抑制し、運転者へ与える違和感を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一実施形態の制動力制御装置を適用した車両の概略構成を示す図である。
【図2】油圧ユニットの油圧回路を示す図である。
【図3】ブレーキコントローラの詳細な構成を示す図である。
【図4】本発明の第一実施形態において、ブレーキコントローラが行う処理を示すフローチャートである。
【図5】制動力制御装置が行う処理を示すフローチャートである。
【図6】ブレーキアシスト制御を終了する処理における、マスタシリンダ圧及び各ホイールシリンダの液圧と経過時間との関係を示す図である。
【図7】本発明の第二実施形態において、ブレーキコントローラが行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
(構成)
図1は、本実施形態の制動力制御装置を適用した車両Vの概略構成を示す図である。
図1中に示すように、車両Vは、車輪Wと、ホイールシリンダ1と、ブレーキペダル2と、マスタシリンダ4と、油圧ユニット6と、ブレーキコントローラ8を備えている。
車輪Wは、自動変速機10等を介してエンジン12の駆動軸と連結している左右一対の前輪WFと、前輪WFよりも車両前後方向後方にオフセットして配置した、左右一対の後輪WRから構成している。なお、以降の説明では、左右一対の前輪WFを、左前輪WFL及び右前輪WFRと記載し、左右一対の後輪WRを、左後輪WRL及び右後輪WRRと記載する場合がある。
【0012】
左前輪WFL、右前輪WFR、左後輪WRL及び右後輪WRRには、それぞれ、車輪速センサ14を設けている。各車輪速センサ14は、対応する車輪Wの回転状態(回転数、回転速度)を検出し、この検出した回転状態を含む情報信号をブレーキコントローラ8へ出力する。なお、以降の説明では、左前輪WFLに設けた車輪速センサ14を、車輪速センサ14FLと記載し、右前輪WFRに設けた車輪速センサ14を、車輪速センサ14FRと記載する場合がある。同様に、以降の説明では、左後輪WRLに設けた車輪速センサ14を、車輪速センサ14RLと記載し、右後輪WRRに設けた車輪速センサ14を、車輪速センサ14RRと記載する場合がある。
【0013】
自動変速機10は、エンジン12の発生した駆動力を、変速機コントローラ16が制御した変速比で、前輪WFに伝達する。
変速機コントローラ16は、運転者によるアクセルペダル18の操作量や変速操作(例えば、シフトレバーの操作)等に応じて、自動変速機10の変速比を制御する。また、変速機コントローラ16は、ギア位置信号(自動変速機10のレンジポジション:「P」、「N」、「D」、「R」等)を含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
【0014】
エンジン12は、駆動力を発生可能な内燃機関であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを用いて形成し、エンジンコントローラ20により制御して、駆動軸を回転させる。
エンジンコントローラ20は、運転者によるアクセルペダル18の操作量等に応じて、エンジン12のトルクや回転数、スロットル開度等を制御し、エンジン12のコントロールを行う。これにより、エンジンコントローラ20は、運転者の意思を反映した車両Vの加減速コントロールを行う。また、エンジンコントローラ20は、エンジン12が発生するトルクを含む情報信号と、アクセルペダル18の操作量を含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
【0015】
ホイールシリンダ1は、左前輪WFL、右前輪WFR、左後輪WRL及び右後輪WRRに、それぞれ設けてあり、液圧により、対応する車輪Wに制動力を付与する。なお、以降の説明では、左前輪WFLに設けたホイールシリンダ1を、ホイールシリンダ1FLと記載し、右前輪WFRに設けたホイールシリンダ1を、ホイールシリンダ1FRと記載する場合がある。同様に、以降の説明では、左後輪WRLに設けたホイールシリンダ1を、ホイールシリンダ1RLと記載し、右後輪WRRに設けたホイールシリンダ1を、ホイールシリンダ1RRと記載する場合がある。
【0016】
各ホイールシリンダ1は、油圧ユニット6を介してマスタシリンダ4と連通しており、油圧ユニット6から供給された液圧(ブレーキ液の及ぼす圧力)を用いて、対応する車輪Wに制動力を付与する。
ブレーキペダル2は、運転者による車両Vの制動時に操作されるペダルであり、制動倍力装置22を介して、マスタシリンダ4に接続している。
【0017】
制動倍力装置22は、例えば、電動ブースタを用いて形成してあり、車両Vの制動時において、運転者のブレーキペダル2の操作量を、予め設定された比率で倍力する。
また、ブレーキペダル2には、ブレーキセンサ24を設けている。
ブレーキセンサ24は、例えば、ブレーキペダル2のストロークを検出可能なブレーキストロークセンサ等を用いて形成してあり、運転者によるブレーキペダル2のストロークを検出する。そして、この検出したブレーキペダル2のストロークを含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
【0018】
マスタシリンダ4は、制動倍力装置22が倍力した、運転者によるブレーキペダル2の操作量に応じた液圧(マスタシリンダ圧)を発生させ、この発生させた液圧を、油圧ユニット6へ供給する。
また、マスタシリンダ4は、ブレーキペダル2の非操作時に、第一連通路26を介して、ブレーキ液を貯留したリザーブタンク28と連通する。すなわち、第一連通路26の一端は、常にリザーブタンク28と連通し、第一連通路26の他端は、ブレーキペダル2の非操作時に、マスタシリンダ4内のピストン(図示せず)によって閉鎖されない位置で、マスタシリンダ4と連通している。
【0019】
ここで、ブレーキペダル2の非操作時は、運転者によるブレーキペダル2の操作量が「0」の状態である。また、本実施形態では、運転者によるブレーキペダル2の操作量が略「0」の状態を含む。なお、運転者によるブレーキペダル2の操作量が略「0」の状態とは、例えば、運転者によるブレーキペダル2の操作量が、ブレーキペダル2に設定された遊びの範囲内である状態とする。
【0020】
油圧ユニット6は、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号に基づいて、マスタシリンダ4から供給された液圧を、マスタシリンダ圧以上の液圧に増圧し、この増圧した液圧を、各ホイールシリンダ1に供給する。ここで、油圧ユニット6は、増圧した液圧に対し、その増圧の度合いを制御(増圧、減圧または保持)した液圧を、各ホイールシリンダ1に供給する。なお、油圧ユニット6の具体的な構成は、後述する。
【0021】
ブレーキコントローラ8は、上述した自動変速機コントローラ16、エンジンコントローラ20、車輪速センサ14及びブレーキセンサ24が出力した情報信号の入力を受ける。これに加え、ブレーキコントローラ8は、後述するヨーレート・横加速度センサ30及び操舵角センサ32が出力した情報信号の入力を受ける。なお、本実施形態では、一例として、各コントローラ(16、20)及び各センサ(14、24、30、32)とブレーキコントローラ8との間における情報信号の出入力を、CAN(Controller Area Network)を経由して行う場合を説明する。
【0022】
また、ブレーキコントローラ8は、各コントローラ(16、20)及び各センサ(14、24、30、32)から入力された各種の情報信号に基づき、ブレーキアシスト制御を行う処理を実行する。ここで、ブレーキアシスト制御とは、運転者の制動操作に応じた制動力に対して、より大きな制動力を発生させる制御である。また、運転者の制動操作に応じた制動力とは、運転者によるブレーキペダル2の操作量に応じて車輪Wに付与される制動力である。
【0023】
さらに、ブレーキコントローラ8は、各コントローラ(16、20)及び各センサ(14、24、30、32)から入力された各種の情報信号に基づき、油圧ユニット6へ、液圧の制御に関する指令信号を出力する。
なお、ブレーキコントローラ8の詳細な構成については、後述する。
ヨーレート・横加速度センサ30は、車両Vのヨーレート及び横加速度を検出し、この検出したヨーレート及び横加速度を含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
【0024】
操舵角センサ32は、例えば、ステアリングコラムに取り付けてあり、運転者によるステアリングホイール34の操舵角を検出し、この検出した操舵角を含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
【0025】
(油圧ユニット6の具体的な構成)
以下、図1を参照しつつ、図2を用いて、油圧ユニット6の具体的な構成について説明する。
図2は、油圧ユニット6の油圧回路を示す図である。
図2中に示すように、油圧ユニット6は、ブレーキ液が移動する油圧系統として、P(プライマリ)系統とS(セカンダリ)系統との二系統を有しており、いわゆる、X配管と呼ばれる配管構造となっている。
【0026】
(P系統及びS系統の概略構成)
以下、P系統及びS系統の概略構成について説明する。
P系統の一端には、マスタシリンダ4を接続しており、P系統の他端には、ホイールシリンダ1FL及びホイールシリンダ1RRを接続している。また、P系統には、P系統側ポンプ36Pを設けている。P系統の詳細な構成は、後述する。
【0027】
S系統の一端には、マスタシリンダ4を接続しており、S系統の他端には、ホイールシリンダ1FR及びホイールシリンダ1RLを接続している。また、S系統には、S系統側ポンプ36Sを設けている。S系統の詳細な構成は、後述する。
【0028】
ここで、P系統側ポンプ36PとS系統側ポンプ36Sは、一つのブレーキアシストモータ38によって駆動する。ブレーキアシストモータ38は、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により駆動する。
【0029】
(P系統の詳細な構成)
以下、P系統の詳細な構成について説明する。
マスタシリンダ4とP系統側ポンプ36Pの吸入側は、P系統側第一管路40Pによって接続しており、P系統側第一管路40P上には、P系統側ゲートインバルブ42Pを設けている。P系統側ゲートインバルブ42Pは、常閉型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
【0030】
また、P系統側第一管路40P上において、P系統側ゲートインバルブ42PとP系統側ポンプ36Pとの間には、P系統側第一チェックバルブ44Pを設けている。P系統側第一チェックバルブ44Pは、P系統側ゲートインバルブ42PからP系統側ポンプ36Pへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、P系統側ポンプ36PからP系統側ゲートインバルブ42Pへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
【0031】
P系統側ポンプ36Pの吐出側とホイールシリンダ1FL及びホイールシリンダ1RRは、P系統側第二管路46Pによって接続している。
P系統側第二管路46Pは、ホイールシリンダ1FLに接続するP系統側第一分岐路48FLと、ホイールシリンダ1RRに接続するP系統側第一分岐路48RRに分岐している。
【0032】
P系統側第一分岐路48FLには、P系統側ソレノイドインバルブ50FLを設けている。P系統側ソレノイドインバルブ50FLは、ホイールシリンダ1FLに対応する常開型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
【0033】
また、P系統側第一分岐路48FLには、P系統側ソレノイドインバルブ50FLを迂回するP系統側第一迂回管路52FLを設けており、P系統側第一迂回管路52FLには、P系統側第一迂回チェックバルブ54FLを設けている。P系統側第一迂回チェックバルブ54FLは、ホイールシリンダ1FLからP系統側ポンプ36Pへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、P系統側ポンプ36Pからホイールシリンダ1FLへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
【0034】
P系統側第一分岐路48RRには、P系統側ソレノイドインバルブ50RRを設けている。P系統側ソレノイドインバルブ50RRは、ホイールシリンダ1RRに対応する常開型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
【0035】
また、P系統側第一分岐路48RRには、P系統側ソレノイドインバルブ50RRを迂回するP系統側第一迂回管路52RRを設けており、P系統側第一迂回管路52RRには、P系統側第一迂回チェックバルブ54RRを設けている。P系統側第一迂回チェックバルブ54RRは、ホイールシリンダ1RRからP系統側ポンプ36Pへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、P系統側ポンプ36Pからホイールシリンダ1RRへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
【0036】
また、P系統側第二管路46P上において、P系統側ポンプ36Pの吐出側とP系統側第一分岐路48FL及びP系統側第一分岐路48RRに分岐した部分との間には、P系統側第二チェックバルブ56Pを設けている。P系統側第二チェックバルブ56Pは、P系統側ポンプ36PからP系統側ソレノイドインバルブ50FL及びP系統側ソレノイドインバルブ50RRへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、P系統側第二チェックバルブ56Pは、P系統側ソレノイドインバルブ50FL及びP系統側ソレノイドインバルブ50RRからP系統側ポンプ36Pへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
【0037】
また、マスタシリンダ4とP系統側第二管路46Pは、P系統側第三管路58Pによって接続している。P系統側第二管路46PとP系統側第三管路58Pは、P系統側ポンプ36PとP系統側ソレノイドインバルブ50FL及びP系統側ソレノイドインバルブ50RRとの間において合流している。
【0038】
P系統側第三管路58P上には、P系統側ゲートアウトバルブ60Pを設けている。P系統側ゲートアウトバルブ60Pは、常開型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
【0039】
また、P系統側第三管路58Pには、P系統側ゲートアウトバルブ60Pを迂回するP系統側第二迂回管路62Pを設けており、P系統側第二迂回管路62Pには、P系統側第二迂回チェックバルブ64Pを設けている。
【0040】
P系統側第二迂回チェックバルブ64Pは、マスタシリンダ4からP系統側ソレノイドインバルブ50FL及びP系統側ソレノイドインバルブ50RRへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、P系統側第二迂回チェックバルブ64Pは、P系統側ソレノイドインバルブ50FL及びP系統側ソレノイドインバルブ50RRからマスタシリンダ4へ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
【0041】
また、P系統側第一管路40P上において、P系統側ゲートインバルブ42PとP系統側第一チェックバルブ44Pとの間には、P系統側第四管路66Pが分岐している。
【0042】
P系統側第四管路66Pの一端は、P系統側第一管路40Pに接続しており、P系統側第四管路66Pの他端には、P系統側リザーバ68Pを設けている。P系統側リザーバ68Pは、P系統の管路内を移動するブレーキ液を貯蔵・吐出するタンクである。
P系統側リザーバ68PとP系統側ポンプ36Pとの間には、P系統側第三チェックバルブ70Pを設けている。P系統側第三チェックバルブ70Pは、P系統側リザーバ68PからP系統側ポンプ36Pへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、P系統側ポンプ36PからP系統側リザーバ68Pへ向かう方向のブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
【0043】
ホイールシリンダ1FL及びホイールシリンダ1RRとP系統側第四管路66Pは、P系統側第五管路72Pによって接続している。P系統側第四管路66PとP系統側第五管路72Pは、P系統側第三チェックバルブ70PとP系統側リザーバ68Pとの間において合流している。
【0044】
P系統側第五管路72Pは、ホイールシリンダ1FLに連通するP系統側第二分岐路74FLと、ホイールシリンダ1RRに連通するP系統側第二分岐路74RRに分岐している。
【0045】
P系統側第二分岐路74FLには、P系統側ソレノイドアウトバルブ76FLを設けている。P系統側ソレノイドアウトバルブ76FLは、ホイールシリンダ1FLに対応する常閉型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
【0046】
P系統側第二分岐路74RRには、P系統側ソレノイドアウトバルブ76RRを設けている。P系統側ソレノイドアウトバルブ76RRは、ホイールシリンダ1RRに対応する常閉型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
【0047】
マスタシリンダ4とP系統側ゲートインバルブ42P及びP系統側ゲートアウトバルブ60Pとの間の油路(管路)には、P系統側マスタシリンダ圧センサ78Pを設けている。
P系統側マスタシリンダ圧センサ78Pは、マスタシリンダ4からP系統へ供給されるブレーキ液の液圧を検出し、この検出した液圧を含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
【0048】
(S系統の詳細な構成)
以下、S系統の詳細な構成について説明する。
マスタシリンダ4とS系統側ポンプ36Sの吸入側は、S系統側第一管路40Sによって接続しており、S系統側第一管路40S上には、S系統側ゲートインバルブ42Sを設けている。S系統側ゲートインバルブ42Sは、常閉型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
【0049】
また、S系統側第一管路40S上において、S系統側ゲートインバルブ42SとS系統側ポンプ36Sとの間には、S系統側第一チェックバルブ44Sを設けている。S系統側第一チェックバルブ44Sは、S系統側ゲートインバルブ42SからS系統側ポンプ36Sへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、S系統側ポンプ36SからS系統側ゲートインバルブ42Sへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
【0050】
S系統側ポンプ36Sの吐出側とホイールシリンダ1FR及びホイールシリンダ1RLは、S系統側第二管路46Sによって接続している。
S系統側第二管路46Sは、ホイールシリンダ1FRに接続するS系統側第一分岐路48FRと、ホイールシリンダ1RLに接続するS系統側第一分岐路48RLに分岐している。
【0051】
S系統側第一分岐路48FRには、S系統側ソレノイドインバルブ50FRを設けている。S系統側ソレノイドインバルブ50FRは、ホイールシリンダ1FRに対応する常開型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
また、S系統側第一分岐路48FRには、S系統側ソレノイドインバルブ50FRを迂回するS系統側第一迂回管路52FRを設けている。S系統側第一迂回管路52FRには、S系統側第一迂回チェックバルブ54FRを設けている。
【0052】
S系統側第一迂回チェックバルブ54FRは、ホイールシリンダ1FRからS系統側ポンプ36Sへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、S系統側第一迂回チェックバルブ54FRは、S系統側ポンプ36Sからホイールシリンダ1FRへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
【0053】
S系統側第一分岐路48RLには、S系統側ソレノイドインバルブ50RLを設けている。S系統側ソレノイドインバルブ50RLは、ホイールシリンダ1RLに対応する常開型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
【0054】
また、S系統側第一分岐路48RLには、S系統側ソレノイドインバルブ50RLを迂回するS系統側第一迂回管路52RLを設けている。S系統側第一迂回管路52RLには、S系統側第一迂回チェックバルブ54RLを設けている。
【0055】
S系統側第一迂回チェックバルブ54RLは、ホイールシリンダ1RLからS系統側ポンプ36Sへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、S系統側第一迂回チェックバルブ54RLは、S系統側ポンプ36Sからホイールシリンダ1RLへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
【0056】
また、S系統側第二管路46S上において、S系統側ポンプ36Sの吐出側とS系統側第一分岐路48FR及びS系統側第一分岐路48RLに分岐した部分との間には、S系統側第二チェックバルブ56Sを設けている。S系統側第二チェックバルブ56Sは、S系統側ポンプ36SからS系統側ソレノイドインバルブ50FR及びS系統側ソレノイドインバルブ50RLへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、S系統側第二チェックバルブ56Sは、S系統側ソレノイドインバルブ50FR及びS系統側ソレノイドインバルブ50RLからS系統側ポンプ36Sへ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
【0057】
また、マスタシリンダ4とS系統側第二管路46Sは、S系統側第三管路58Sによって接続している。S系統側第二管路46SとS系統側第三管路58Sは、S系統側ポンプ36SとS系統側ソレノイドインバルブ50FR及びS系統側ソレノイドインバルブ50RLとの間において合流している。
【0058】
S系統側第三管路58S上には、S系統側ゲートアウトバルブ60Sを設けている。S系統側ゲートアウトバルブ60Sは、常開型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
【0059】
また、S系統側第三管路58Sには、S系統側ゲートアウトバルブ60Sを迂回するS系統側第二迂回管路62Sを設けており、S系統側第二迂回管路62Sには、S系統側第二迂回チェックバルブ64Sを設けている。
【0060】
S系統側第二迂回チェックバルブ64Sは、マスタシリンダ4からS系統側ソレノイドインバルブ50FR及びS系統側ソレノイドインバルブ50RLへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、S系統側第二迂回チェックバルブ64Sは、S系統側ソレノイドインバルブ50FR及びS系統側ソレノイドインバルブ50RLからマスタシリンダ4へ向かう方向へのブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
【0061】
また、S系統側第一管路40S上において、S系統側ゲートインバルブ42SとS系統側第一チェックバルブ44Sとの間には、S系統側第四管路66Sが分岐している。
S系統側第四管路66Sの一端は、S系統側第一管路40Sに接続しており、S系統側第四管路66Sの他端には、S系統側リザーバ68Sを設けている。S系統側リザーバ68Sは、P系統の管路内を移動するブレーキ液を貯蔵・吐出するタンクである。
【0062】
S系統側リザーバ68SとS系統側ポンプ36Sとの間には、S系統側第三チェックバルブ70Sを設けている。S系統側第三チェックバルブ70Sは、S系統側リザーバ68SからS系統側ポンプ36Sへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容するバルブである。また、S系統側第三チェックバルブ70Sは、S系統側ポンプ36SからS系統側リザーバ68Sへ向かう方向のブレーキ液の流れを禁止するバルブである。
【0063】
ホイールシリンダ1FR及びホイールシリンダ1RLとS系統側第四管路66Sは、S系統側第五管路72Sによって接続している。S系統側第四管路66SとS系統側第五管路72Sは、S系統側第三チェックバルブ70SとS系統側リザーバ68Sとの間において合流している。
S系統側第五管路72Sは、ホイールシリンダ1FRに連通するS系統側第二分岐路74FRと、ホイールシリンダ1RLに連通するS系統側第二分岐路74RLに分岐している。
【0064】
S系統側第二分岐路74FRには、S系統側ソレノイドアウトバルブ76FRを設けている。S系統側ソレノイドアウトバルブ76FRは、ホイールシリンダ1FRに対応する常閉型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
S系統側第二分岐路74RLには、S系統側ソレノイドアウトバルブ76RLを設けている。S系統側ソレノイドアウトバルブ76RLは、ホイールシリンダ1RLに対応する常閉型の電磁弁であり、ブレーキコントローラ8が出力した指令信号により動作(開閉)する。
【0065】
マスタシリンダ4とS系統側ゲートインバルブ42S及びS系統側ゲートアウトバルブ60Sとの間の油路(管路)には、S系統側マスタシリンダ圧センサ78Sを設けている。
S系統側マスタシリンダ圧センサ78Sは、マスタシリンダ4からS系統へ供給されるブレーキ液の液圧を検出し、この検出した液圧を含む情報信号を、ブレーキコントローラ8へ出力する。
【0066】
(ブレーキコントローラの詳細な構成)
以下、図1及び図2を参照しつつ、図3を用いて、ブレーキコントローラ8の詳細な構成について説明する。
図3は、ブレーキコントローラ8の詳細な構成を示す図である。
図3中に示すように、ブレーキコントローラ8は、ブレーキ操作量検出部80と、ブレーキ操作速度検出部82と、ブレーキアシスト作動判定部84と、制御開始判定部86を備えている。これに加え、ブレーキコントローラ8は、操作量閾値設定部88と、制御終了判定部90と、制動力制御量算出部92と、ブレーキアシスト制御部94を備えている。
【0067】
ブレーキ操作量検出部80は、P系統側マスタシリンダ圧センサ78P及びS系統側マスタシリンダ圧センサ78Sが出力した情報信号の入力に基づき、マスタシリンダ4からP系統及びS系統へ供給される液圧を検出する。
ここで、マスタシリンダ4からP系統及びS系統へ供給される液圧(マスタシリンダ圧)は、運転者によるブレーキペダル2の操作量と相関関係にある。すなわち、運転者によるブレーキペダル2の操作量が増加すると、マスタシリンダ圧も増加する関係が成立している。
【0068】
したがって、マスタシリンダ圧は、運転者によるブレーキペダル2の操作量に応じた圧力となる。このため、ブレーキ操作量検出部80は、マスタシリンダ圧を検出することにより、運転者によるブレーキペダル2の操作量を検出する。
【0069】
ブレーキ操作速度検出部82は、ブレーキ操作量検出部80と同様にマスタシリンダ圧を検出し、さらに、検出したマスタシリンダ圧の単位時間当たりの変化量を算出する。これにより、ブレーキ操作速度検出部82は、運転者によるブレーキペダル2の操作速度を検出する。
【0070】
ここで、本実施形態では、ブレーキ操作速度検出部82が検出する、運転者によるブレーキペダル2の操作速度を、戻し方向(踏み込んだブレーキペダル2を、非操作時の位置へ戻す方向)への操作速度とする。
【0071】
ブレーキアシスト作動判定部84は、ブレーキアシスト作動フラグが成立しているか否かを判定することにより、上述したブレーキアシスト制御が行われているか否かを判定する。ここで、ブレーキアシスト作動フラグとは、ブレーキアシスト制御が行われている条件で成立するフラグである。
【0072】
制御開始判定部86は、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト制御が行われていないと判定した場合に、ブレーキ操作量検出部80が検出した運転者によるブレーキペダル2の操作量が、予め設定した制御開始閾値以上であるか否かを判定する。
ここで、制御開始閾値は、運転者が走行中の車両Vを減速させる意思があると判定可能な程度の、運転者によるブレーキペダル2の操作量(踏み込み量)であり、予め、実験等によって求めた値である。
【0073】
操作量閾値設定部88は、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト制御が行われていると判定した場合に、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度に応じて、実施中のブレーキアシスト制御を終了する際に用いる操作量閾値を設定する。
【0074】
ここで、操作量閾値は、運転者がブレーキペダル2の操作を止める意思があると考えられる、運転者によるブレーキペダル2の操作量であり、具体的には、ブレーキペダル2の操作量に対応する液圧である。これは、運転者が、踏み込んだブレーキペダル2に対する踏力を弱めて、ブレーキペダル2の位置を非操作時の位置へ戻す意思があると判断可能な程度の操作量であり、例えば、車両Vの構成やブレーキ装置の性能等に応じて、予め、実験等によって求めた値である。
【0075】
具体的には、操作量閾値設定部88は、ブレーキ操作速度検出部82が検出した運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度が、予め設定した操作速度閾値以上であるか否かを判定する。
【0076】
ここで、操作速度閾値は、運転者がブレーキペダル2を完全に戻した状態において、各ホイールシリンダ1に液圧が残る程度の、運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度である。これは、運転者によるブレーキペダル2の操作が、急速な戻し操作(踏み込んだブレーキペダル2に対する踏力を弱めて、ブレーキペダル2の位置を戻す操作)であるか否かを判定可能な程度の速度であり、予め、実験等によって求めた値である。
【0077】
なお、運転者がブレーキペダル2を完全に戻した状態とは、運転者がブレーキペダル2を戻し方向へ操作して、ブレーキペダル2の位置を非操作時の位置まで戻した状態である。
すなわち、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が操作速度閾値以上である場合とは、運転者によるブレーキペダル2の操作が急速な戻し操作であり、運転者によるブレーキペダル2の操作量が、非操作時の操作量へ急速に減少する場合である。
【0078】
そして、操作量閾値設定部88は、ブレーキペダル2の操作速度が、予め設定した操作速度閾値以上である場合に、操作量閾値を第一操作量閾値に設定する。ここで、第一操作量閾値は、ブレーキペダル2の操作時(踏み込み時)におけるマスタシリンダ圧よりも低い液圧である。
【0079】
一方、操作量閾値設定部88は、ブレーキペダル2の操作速度が、予め設定した操作速度閾値未満である場合に、操作量閾値を、第一操作量閾値未満の値である、第二操作量閾値に設定する。すなわち、第二操作量閾値は、第一操作量閾値よりも低い液圧である。
【0080】
したがって、操作量閾値設定部88は、ブレーキペダル2の操作速度が操作速度閾値以上である場合に、ブレーキペダル2の操作速度が操作速度閾値未満の場合よりも操作量閾値を大きくする。
制御終了判定部90は、ブレーキ操作量検出部80が検出した運転者によるブレーキペダル2の操作量が、予め、操作量閾値設定部88が設定した操作量閾値未満であるか否かを判定する。
【0081】
制動力制御量算出部92は、ブレーキアシスト作動判定部84による判定結果を参照するとともに、油圧ユニット6から各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量(制御液圧)を算出する。ここで、油圧ユニット6から各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量とは、マスタシリンダ圧を増圧し、さらに、この増圧した液圧の増圧の度合いを制御(増圧、減圧または保持)するための、液圧の変化量である。
【0082】
さらに、制動力制御量算出部92は、算出した制御量に応じて、ブレーキアシストモータ38の駆動量と各バルブ(42、50、60、76)の動作(開閉)状態を演算する。そして、この演算した駆動量及び動作状態を含む指令信号を、制御周期毎に、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ出力する。
【0083】
具体的には、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト作動フラグが成立していないと判定している場合に、運転者によるブレーキペダル2の操作量が制御開始閾値以上となった場合には、運転者によるブレーキペダル2の操作量に補正係数を乗算して、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量(制御液圧)を算出する。ここで、ブレーキペダル2の操作量に乗算する補正係数は、単位時間毎にゲインαを付けて(例えば、制御周期毎に)時間積分した値であり、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧を目標の液圧とするための値である。具体的には、マスタシリンダ圧以上の液圧に増圧した液圧を、目標の液圧とするための、マスタシリンダ圧以上の液圧に増圧した液圧に対する、増圧の度合い(増圧、減圧または保持)である。すなわち、マスタシリンダ圧、ホイールシリンダ圧及び液圧の制御量の関係は、以下の様になる。
【0084】
ホイールシリンダ圧=マスタシリンダ圧+液圧の制御量
=マスタシリンダ圧+(ブレーキペダル操作量×補正係数)
=マスタシリンダ圧+(ブレーキペダル操作量×α・t1) … (1)
【0085】
但し、t1は、制御量算出開始からの経過時間であり、予め設定した所定時間(例えば5秒)を最大値とする。また、上記式(1)におけるマスタシリンダ圧は、液圧の制御量算出開始時のマスタシリンダ圧である。
【0086】
一方、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト作動フラグが成立していると判定している場合に、運転者によるブレーキペダル2の操作量が操作量閾値未満となった場合には、実施中のブレーキアシスト制御における液圧の制御量(制御液圧)が「0」へ向けて減少するように、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。この場合、前回のブレーキアシスト制御における液圧の制御量(前回値)を、「0」へ向けて予め定められた所定の減少速度βで減少させる。すなわち、前回のブレーキアシスト制御で各ホイールシリンダ1へ供給した液圧に対し、その増圧の度合いを減少させる。つまり、液圧の制御量は、以下の様に制御される。
【0087】
液圧の制御量=減少開始時の液圧の制御量−β・t2 … (2)
【0088】
但し、t2は、液圧の制御量減少開始時からの経過時間である。なお、上述の通り、液圧の制御量は最小値が0となる。
なお、ここで、液圧の制御量を減少させる際の制御内容は、上記の内容に限定されるものではない。すなわち、例えば、制御量減少開始からの経過時間に応じて、上記式(1)の補正係数α・t1を、制御量減少開始時の補正係数α・t1から減少させることによって、液圧の制御量を減少させてもよい。
【0089】
ここで、前回のブレーキアシスト制御で各ホイールシリンダ1へ供給した液圧に対し、その増圧の度合いを減少させる際には、操作量閾値設定部88が設定した操作量閾値に応じて、増圧の度合いの減少を開始するタイミングを変化させる。
【0090】
具体的には、操作量閾値が第一操作量閾値である場合、操作量閾値が第二操作量閾値である場合よりも、前回のブレーキアシスト制御で各ホイールシリンダ1へ供給した液圧に対して、増圧の度合いの減少を開始するタイミングを速くする。
【0091】
ブレーキアシスト制御部94は、ブレーキアシスト作動判定部84による判定結果と、制動力制御量算出部92が算出した液圧の制御量に応じて、上述したブレーキアシスト制御を行うか否かを決定する。ここで、ブレーキアシスト制御を行う状態は、実施中のブレーキアシスト制御を継続する状態も含む。
【0092】
具体的には、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト作動フラグが成立していないと判定した場合、ブレーキアシスト制御を行うように、ブレーキアシスト作動フラグを成立させる。また、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト作動フラグが成立していると判定した場合であっても、上述した制御終了判定部90が、ブレーキペダル2の操作量が操作量閾値以上であると判定した場合、ブレーキアシスト作動フラグを成立させる。
【0093】
一方、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト作動フラグが成立していると判定した場合、制動力制御量算出部92が算出した液圧の制御量が「0」であるか否かを判定する。
【0094】
そして、制動力制御量算出部92が算出した液圧の制御量が「0」である場合、実施中のブレーキアシスト制御が終了するように、ブレーキアシスト作動フラグを消去する。一方、制動力制御量算出部92が算出した液圧の制御量が「0」ではない場合、ブレーキアシスト作動フラグが成立している状態を継続させて、制動力制御量算出部92が算出した液圧の制御量を用いたブレーキアシスト制御を継続させる。
【0095】
(ブレーキコントローラ8が行う処理)
以下、図1から図3を参照しつつ、図4を用いて、ブレーキコントローラ8が行う処理を詳細に説明する。
図4は、ブレーキコントローラ8が行う処理を示すフローチャートである。
図4中に示すフローチャートは、走行(前進走行)中の車両Vにおいて、車両Vの運転者が、車両Vを制動・減速させるためにブレーキペダル2を操作(踏み込み)した状態からスタート(図4中に示す「START」)する。図4中に示すフローチャートを開始すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS100の処理へ移行する。
【0096】
ステップS100では、ブレーキ操作量検出部80が、マスタシリンダ圧を検出して、運転者によるブレーキペダル2の操作量を検出(ステップS100に示す「操作量検出」)する。ここで、ブレーキ操作量検出部80によるマスタシリンダ圧の検出は、例えば、10[msec]毎等、所定のサンプリング時間毎に行う。ステップS100において、ブレーキペダル2の操作量を検出すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS102へ移行する。
【0097】
ステップS102では、ブレーキ操作速度検出部82が、マスタシリンダ圧の単位時間当たりの変化量を算出して、運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度を検出(ステップS102に示す「操作速度検出」)する。ここで、ブレーキ操作速度検出部82によるマスタシリンダ圧の単位時間当たりの変化量の算出は、例えば、ブレーキ操作量検出部80によるマスタシリンダ圧の検出に伴って行う。ステップS102において、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度を検出すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS104へ移行する。
【0098】
ステップS104では、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト作動フラグが成立しているか否かを判定(ステップS104に示す「ブレーキアシスト作動フラグ=0?」)する。これにより、ステップS104では、ブレーキアシスト制御が実施中であるか否かを判定する。
ステップS104において、ブレーキアシスト作動フラグが成立していない(図中に示す「Yes」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS106へ移行する。
【0099】
一方、ステップS104において、ブレーキアシスト作動フラグが成立している(図中に示す「No」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS108へ移行する。
【0100】
ステップS106では、制御開始判定部86が、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が、制御開始閾値以上であるか否かを判定(ステップS106に示す「操作量≧制御開始閾値?」)する。
ステップS106において、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が制御開始閾値以上である(図中に示す「Yes」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS110へ移行する。
【0101】
一方、ステップS106において、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が制御開始閾値未満である(図中に示す「No」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は終了(図4中に示す「END」)する。
【0102】
ステップS108では、操作量閾値設定部88において、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が、予め設定した操作速度閾値以上であるか否かを判定(ステップS108に示す「操作速度≧操作速度閾値?」)する。
ステップS108において、運転者によるブレーキペダル2の操作速度が予め設定した操作速度閾値以上である(図中に示す「Yes」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS114へ移行する。
【0103】
一方、ステップS108において、運転者によるブレーキペダル2の操作速度が予め設定した操作速度閾値未満である(図中に示す「No」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS116へ移行する。
【0104】
ステップS110では、制動力制御量算出部92が、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量(制御液圧)を算出(ステップS110に示す「制御量=操作量×補正係数」)する。これにより、ステップS110では、マスタシリンダ圧を増圧した液圧を各ホイールシリンダ1へ伝達して、運転者によるブレーキペダル2の操作量に応じた液圧に応じた制動力よりも大きい制動力を、各車輪Wに付与する。ステップS110において、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ指令信号を出力すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS112へ移行する。
【0105】
ステップS112では、ブレーキアシスト制御部94が、ブレーキアシスト制御を行うように、ブレーキアシスト作動フラグを成立(ステップS112に示す「ブレーキアシスト作動フラグ=1」)させる。ステップS112において、ブレーキアシスト作動フラグを成立させると、ブレーキコントローラ8が行う処理は終了(図4中に示す「END」)する。
【0106】
ステップS114では、操作量閾値設定部88において、操作量閾値を第一操作量閾値に設定(ステップS114に示す「操作量閾値=第一操作量閾値」)する。ステップS114において、操作量閾値を第一操作量閾値に設定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS118へ移行する。
【0107】
ステップS116では、操作量閾値設定部88において、操作量閾値を第二操作量閾値に設定(ステップS116に示す「操作量閾値=第二操作量閾値」)する。ステップS116において、操作量閾値を第二操作量閾値に設定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS118へ移行する。なお、ここで、前述の通り、上記第二操作量閾値は、上記第一操作量閾値よりも低い液圧値である。
【0108】
ステップS118では、制御終了判定部90が、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が、ステップS114またはステップS116で設定した操作量閾値未満であるか否かを判定(ステップS118に示す「操作量<操作量閾値?」)する。すなわち、ステップS118では、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が、予め、操作量閾値設定部88において、第一操作量閾値または第二操作量閾値に設定した操作量閾値未満であるか否かを判定する。
【0109】
ステップS118において、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が操作量閾値未満である(図中に示す「Yes」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS120へ移行する。
一方、ステップS118において、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が操作量閾値以上である(図中に示す「No」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS110へ移行する。
【0110】
ステップS120では、制動力制御量算出部92が、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出(ステップS120に示す「制御量=制御量(前回値)から「0」へ向けて減少」)する。そして、制動力制御量算出部92は、演算した駆動量及び開閉状態を含む指令信号を、制御周期毎に、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ出力する。ステップS120において、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ指令信号を出力すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS122へ移行する。
【0111】
ステップS122では、ブレーキアシスト制御部94が、制動力制御量算出部92が算出した、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量が「0」であるか否かを判定(ステップS122に示す「制御量=0?」)する。
ステップS122において、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量が「0」である(図中に示す「Yes」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS124へ移行する。ここで、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量が「0」である状態とは、ステップS120において算出した、「0」へ向けて減少する制御量が、「0」に達した状態である。
【0112】
一方、ステップS122において、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量が「0」ではない(図中に示す「No」)と判定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は終了(図4中に示す「END」)する。ここで、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量が「0」ではない状態とは、ステップS120において算出した、「0」へ向けて減少する制御量が、「0」に達しておらず、減少中の状態である。これにより、ステップS122では、制動力制御量算出部92が算出した液圧の制御量を用いたブレーキアシスト制御を継続させる。
【0113】
ステップS124では、ブレーキアシスト制御部94が、実施中のブレーキアシスト制御が終了するように、ブレーキアシスト作動フラグを消去(ステップS124に示す「ブレーキアシスト作動フラグ=0」)させる。ステップS124において、ブレーキアシスト作動フラグを消去すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は終了(図4中に示す「END」)する。
【0114】
(動作)
次に、図1から図4を参照しつつ、図5及び図6を用いて、本実施形態の制動力制御装置が行う処理の一例と、制動力制御装置が行う処理に伴う車両Vの動作の一例について説明する。
【0115】
図5は、制動力制御装置が行う処理を示すフローチャートである。
図5中に示すフローチャートは、車両Vが走行(前進走行)しており、ブレーキアシスト制御が実施されていない状態からスタート(図5中に示す「START」)する。図5中に示すフローチャートを開始すると、制動力制御装置が行う処理は、ステップS200の処理へ移行する。
【0116】
ステップS200では、ブレーキセンサ24またはブレーキ操作量検出部80が、運転者によるブレーキペダル2の操作を検出(ステップS200に示す「ブレーキペダルON」)する。ステップS200において、運転者によるブレーキペダル2の操作を検出すると、制動力制御装置が行う処理は、ステップS202へ移行する。
【0117】
ステップS202では、ブレーキ操作量検出部80が、運転者によるブレーキペダル2の操作量を検出(ステップS202に示す「操作量検出」)する(ステップS100参照)。ステップS202において、ブレーキペダル2の操作量を検出すると、制動力制御装置が行う処理は、ステップS204へ移行する。
【0118】
ステップS204では、上述したブレーキアシスト制御を開始(ステップS204に示す「ブレーキアシスト開始」)する処理を行う(ステップS104〜S112参照)。
ここで、制動力制御装置がブレーキアシスト制御を開始する処理を行うと、制動力制御量算出部92が、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。そして、制動力制御量算出部92は、算出した制御量に応じて演算した指令信号を、制御周期毎に、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ出力する(ステップS114参照)。
【0119】
指令信号の入力を受けたP系統側ゲートインバルブ42P及びS系統側ゲートインバルブ42Sは、開放状態となると共に、P系統側ゲートアウトバルブ60P及びS系統側ゲートアウトバルブ60Sは閉鎖状態となる。
また、指令信号の入力を受けたブレーキアシストモータ38は、P系統側ポンプ36P及びS系統側ポンプ36Sを駆動する。そして、P系統側ポンプ36P及びS系統側ポンプ36Sは、マスタシリンダ4に貯留しているブレーキ液を吸引する。
【0120】
これにより、ホイールシリンダ1FL、ホイールシリンダ1RR、ホイールシリンダ1FR及びホイールシリンダ1RLには、マスタシリンダ圧よりも高い液圧に増圧された液圧が供給される。
【0121】
以上により、制動力制御装置がブレーキアシスト制御を開始する処理を行うと、車両Vでは、運転者によるブレーキペダル2の操作量に応じた制動力よりも大きな制動力を、各車輪Wに付与することとなる。なお、ゲートインバルブ42及びゲートアウトバルブ60S以外に指令信号の入力を受けるバルブ(50、76)は、マスタシリンダ圧を増圧した液圧に対する、増圧の度合いの制御(増圧、減圧または保持)に応じて動作する。
【0122】
ステップS204において、ブレーキアシスト制御を開始する処理を行うと、制動力制御装置が行う処理は、ステップS206へ移行する。
ステップS206では、制御終了判定部90が、運転者が車両Vの制動を終了させる意思がある(ステップS206に示す「制動終了?」)か否かを判定する(ステップS108〜S118参照)。すなわち、ステップS206では、運転者がブレーキペダル2の操作を止める意思があり、運転者によるブレーキペダル2の操作が、ブレーキペダル2の位置を非操作時の位置へ戻す意思があるか否かを判定する。
【0123】
ステップS206において、運転者が車両Vの制動を終了させる意思がある(図中に示す「Yes」)と判定すると、制動力制御装置が行う処理は、ステップS208へ移行する。
ここで、運転者が車両Vの制動を終了させる意思がある場合、運転者によるブレーキペダル2の操作量が非操作時の操作量へと減少して、各ホイールシリンダ1の液圧が、油圧ユニット6を介して、マスタシリンダ4へ流入する。これにより、運転者がブレーキペダル2を踏み込んでいる状態よりも、マスタシリンダ圧が減少する。
【0124】
一方、ステップS206において、運転者が車両Vの制動を終了させる意思がない(図中に示す「No」)と判定すると、制動力制御装置が行う処理は、ステップS204へ移行する。
ステップS208では、実施中のブレーキアシスト制御を終了する処理(ステップS208に示す「制御終了処理」)を行う(ステップS120〜S124参照)。
【0125】
制動力制御装置がブレーキアシスト制御を終了する処理を行うと、操作量閾値設定部88において、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が操作速度閾値以上であるか否かを判定(ステップS108参照)する。
【0126】
ここで、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が操作速度閾値以上である場合、運転者によるブレーキペダル2の操作量が非操作時の操作量へと急速に減少する。このため、運転者がブレーキペダル2を踏み込んでいる状態から、マスタシリンダ圧が急速に減少する。そして、運転者によるブレーキペダル2の操作量が非操作時の操作量に達すると、マスタシリンダ4は、第一連通路26を介してリザーブタンク28と連通する。これにより、マスタシリンダ4内のブレーキ液が、第一連通路26を介してリザーブタンク28へ流入する。
【0127】
また、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が操作速度閾値以上である場合、操作量閾値設定部88は、操作量閾値を第一操作量閾値に設定する(ステップS114参照)。
さらに、制御終了判定部90が、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が、第一操作量閾値未満であるか否かを判定する(ステップS114及びステップS118参照)。
【0128】
そして、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が、第一操作量閾値未満となると、制動力制御量算出部92が、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。具体的には、ブレーキアシスト制御において、各ホイールシリンダ1へ供給している液圧の制御量が「0」へ向けて減少するように、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。そして、制動力制御量算出部92は、算出した制御量に応じて演算した指令信号を、制御周期毎に、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ出力する(ステップS120参照)。
【0129】
ここで、第一操作量閾値は、ブレーキペダル2の操作時(踏み込み時)におけるマスタシリンダ圧よりも低く、また、第二操作量閾値よりも高い液圧である。
したがって、操作量閾値を第一操作量閾値に設定している場合、図6中に示すように、操作量閾値を第二操作量閾値に設定している場合よりも速いタイミングで、各ホイールシリンダ1の液圧の制御量が「0」へ向けて減少する。すなわち、制動力制御量算出部92は、運転者によるブレーキペダル2の操作量が、非操作時の操作量へ急速に減少する場合、ブレーキアシスト制御において増圧した液圧の、増圧の度合いの減少を開始するタイミングを速くする。具体的には、運転者によるブレーキペダル2の操作量が、非操作時の操作量へ緩やかに減少する場合と比較して、ブレーキアシスト制御において増圧した液圧の、増圧の度合いの減少を開始するタイミングを速くする。
【0130】
なお、図6は、ブレーキアシスト制御を終了する処理における、マスタシリンダ圧及び各ホイールシリンダ1の液圧と経過時間との関係を示す図である。また、図6中では、マスタシリンダ圧を、「M/C圧」と示し、各ホイールシリンダ1の液圧を、「W/C圧」と示している。
さらに、図6中では、操作量閾値を第一操作量閾値に設定している場合に、増圧の度合いの減少を開始するタイミングを、符合「T1」で示している。同様に、図6中では、操作量閾値を第二操作量閾値に設定している場合に、増圧の度合いの減少を開始するタイミングを、符合「T2」で示している。
【0131】
制動力制御量算出部92から指令信号の入力を受けたブレーキアシストモータ38は、駆動中のP系統側ポンプ36P及びS系統側ポンプ36Sを停止させて、ブレーキ液の吸引を停止させる。
また、指令信号の入力を受けたP系統側ゲートインバルブ42P及びS系統側ゲートインバルブ42Sは、閉鎖状態となる。
【0132】
したがって、P系統側ポンプ36P及びS系統側ポンプ36Sに吸引されていたブレーキ液は、再び、マスタシリンダ4へ移動する(戻る)。
これにより、ステップS204においてマスタシリンダ圧よりも高い液圧に増圧している、ホイールシリンダ1FL、ホイールシリンダ1RR、ホイールシリンダ1FR及びホイールシリンダ1RLの液圧も、マスタシリンダ圧と同様に減少する。
【0133】
ここで、図6中に示されているように、操作量閾値を第一操作量閾値に設定している場合に、増圧の度合いの減少を開始するタイミングT1は、操作量閾値を第二操作量閾値に設定している場合に増圧の度合いの減少を開始するタイミングT2よりも速い。なお、図6中では、T1とT2との時間差を、符号「TD」で示している。
すなわち、運転者によるブレーキペダル2の操作量が急速に減少した場合、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度が高いと、マスタシリンダ圧よりも高い液圧に増圧した液圧に対する、増圧の度合いの減少を開始するタイミングを速くすることとなる。
【0134】
したがって、運転者によるブレーキペダル2の操作量が急速に減少し、操作量閾値を第一操作量閾値に設定した場合、経過時間に比例して、ホイールシリンダ1とマスタシリンダ4との液圧の差が減少する。そして、運転者によるブレーキペダル2の操作量が非操作時の操作量(図6中に示す「液圧0」の状態)に達した時点では、ホイールシリンダ1とマスタシリンダ4との液圧の差が「0」となる。
【0135】
ホイールシリンダ1とマスタシリンダ4との液圧の差が減少すると、第一連通路26を流れるブレーキ液による音の発生が抑制される。このため、運転者によるブレーキペダル2の操作量が急速に減少した際に、運転者へ与える違和感を低減することが可能となる。これは、音の発生は、ブレーキペダル2の操作量が非操作時の操作量へ急速に減少して、マスタシリンダ4とリザーブタンク28が連通した際に、各ホイールシリンダ1の液圧が、マスタシリンダ4の液圧よりも高くなることに起因するためである。
【0136】
これに対し、操作量閾値を第二操作量閾値に設定した場合、ホイールシリンダ1とマスタシリンダ4との液圧の差は一定となり、両者は同じ傾きで時間の経過に伴い減少する。そして、運転者によるブレーキペダル2の操作量が非操作時の操作量に達した時点では、ホイールシリンダ1とマスタシリンダ4との液圧に、ブレーキペダル2の操作時におけるマスタシリンダ圧と同等の液圧差が発生することとなる。
【0137】
ステップS208において、実施中のブレーキアシスト制御を終了する処理を行うと、制動力制御装置が行う処理は終了(図5中に示す「END」)する。
【0138】
なお、上述したように、本実施形態の制動力制御装置の動作で実施する制動力制御方法は、ブレーキペダル2の操作量が操作量閾値以上から当該操作量閾値未満に減少すると、マスタシリンダ圧よりも高い液圧に増圧した液圧の増圧の度合いを減少させる方法である。これに加え、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度が操作速度閾値以上の場合に、操作速度が操作速度閾値未満の場合よりも、操作量閾値を大きくする方法である。
【0139】
以上により、P系統側マスタシリンダ圧センサ78Pと、S系統側マスタシリンダ圧センサ78Sと、ブレーキ操作量検出部80は、ブレーキ操作量検出手段に対応している。
同様に、P系統側マスタシリンダ圧センサ78Pと、S系統側マスタシリンダ圧センサ78Sと、ブレーキ操作速度検出部82は、ブレーキ操作速度検出手段に対応している。
【0140】
また、制御開始判定部86と、操作量閾値設定部88と、制御終了判定部90と、制動力制御量算出部92は、液圧制御手段に対応している。
また、油圧ユニット6が有する複数の管路(40、46、48、58、66、72、74)は、第二連通路に対応している。
【0141】
(第一実施形態の効果)
(1)液圧制御手段が、ブレーキ操作量検出手段が検出した操作量が予め設定した操作量閾値以上から当該操作量閾値未満に減少すると、マスタシリンダ圧以上の液圧に増圧した液圧の、増圧の度合いを減少させる。
また、液圧制御手段が、ブレーキ操作速度検出手段が検出した操作速度が予め設定した操作速度閾値以上の場合に、ブレーキ操作速度検出手段が検出した操作速度が操作速度閾値未満の場合よりも、操作量閾値を大きくする。
【0142】
このため、運転者によるブレーキペダルの操作量が急速に減少した際に、ブレーキペダルの戻し方向への操作速度が高いと、液圧の増圧の度合いの減少を開始するタイミングを速くすることが可能となる。
その結果、ブレーキペダルの操作量が急速に減少した場合における、ホイールシリンダとマスタシリンダとの液圧の差を減少させて、第一連通路を流れるブレーキ液による音の発生を抑制し、運転者へ与える違和感を低減することが可能となる。
【0143】
(2)本実施形態の制動力制御方法では、ブレーキペダルの操作量が予め設定した操作量閾値以上から当該操作量閾値未満に減少すると、マスタシリンダ圧以上の液圧に増圧した液圧の、増圧の度合いを減少させる。
また、本実施形態の制動力制御方法では、ブレーキペダルの戻し方向への操作速度が予め設定した操作速度閾値以上の場合に、操作速度が操作速度閾値未満の場合よりも、操作量閾値を大きくする。
【0144】
このため、運転者によるブレーキペダルの操作量が急速に減少した際に、ブレーキペダルの戻し方向への操作速度が高いと、液圧の増圧の度合いの減少を開始するタイミングを速くすることが可能となる。
【0145】
その結果、ブレーキペダルの操作量が急速に減少した場合における、ホイールシリンダとマスタシリンダとの液圧の差を減少させて、第一連通路を流れるブレーキ液による音の発生を抑制し、運転者へ与える違和感を低減することが可能となる。
【0146】
(変形例)
(1)本実施形態の制動力制御装置では、P系統側マスタシリンダ圧センサ78P及びS系統側マスタシリンダ圧センサ78Sにより、マスタシリンダ圧を検出して、運転者によるブレーキペダル2の操作量を検出したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、ブレーキセンサ24が検出する、ブレーキペダル2のストロークを用いて、運転者によるブレーキペダル2の操作量を検出してもよい。同様に、ブレーキペダル2のストロークを用いて、運転者によるブレーキペダル2の操作速度を検出してもよい。
【0147】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図3を参照して、本実施形態の構成を説明する。
【0148】
本実施形態の構成は、操作量閾値設定部88の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成とする。なお、操作量閾値設定部88以外の構成は、上述した第一実施形態と同様の構成とするため、詳細な説明を省略する。
操作量閾値設定部88は、予め、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度と操作量閾値との関係を示すマップを格納している。なお、操作量閾値設定部88が格納しているマップの説明は、後述する。
【0149】
また、操作量閾値設定部88は、ブレーキアシスト作動判定部84が、ブレーキアシスト制御が行われていると判定した場合に、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度に応じて、第一実施形態と同様の操作量閾値を設定する。
具体的には、ブレーキ操作速度検出部82が検出した運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度が、予め設定した増加補正閾値を超えているか否かを判定する。
【0150】
ここで、増加補正閾値は、上述した第一実施形態における操作速度閾値に対応するパラメータであり、予め、実験等によって求めた値である。また、増加補正閾値は、操作量閾値設定部88が格納しているマップに設定している。
すなわち、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が増加補正閾値を超えている場合とは、運転者によるブレーキペダル2の操作が急速な戻し操作であり、運転者によるブレーキペダル2の操作量が、非操作時の操作量へ急速に減少する場合である。
【0151】
そして、操作量閾値設定部88は、ブレーキ操作速度検出部82が検出した運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度が、増加補正閾値を超えている場合に、ブレーキペダル2の操作速度が高いほど、操作量閾値を大きな値に設定する。
ここで、操作量閾値を大きな値に設定する(大きくする)際には、設定する操作量閾値の上限を、ブレーキペダル2の操作時(踏み込み時)におけるマスタシリンダ圧よりも低い値(液圧)とする。
【0152】
(ブレーキコントローラ8が行う処理)
以下、図1から図4を参照しつつ、図7を用いて、ブレーキコントローラ8が行う処理を詳細に説明する。
【0153】
図7は、ブレーキコントローラ8が行う処理を示すフローチャートである。
図7中に示すフローチャートは、走行(前進走行)中の車両Vにおいて、車両Vの運転者が、車両Vを制動・減速させるためにブレーキペダル2を操作(踏み込み)した状態からスタート(図7中に示す「START」)する。図7中に示すフローチャートを開始すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS300の処理へ移行する。
【0154】
ステップS300の処理(ステップS300に示す「操作量検出」)は、上述したステップS100の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS300の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS302へ移行する。
ステップS302の処理(ステップS302に示す「操作速度検出」)は、上述したステップS102の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS302の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS304へ移行する。
【0155】
ステップS304の処理(ステップS304に示す「ブレーキアシスト作動フラグ=0?」)は、上述したステップS104の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS304の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS306またはステップS308へ移行する。
ステップS306の処理(ステップS306に示す「操作量≧制御開始閾値?」)は、上述したステップS106の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS306の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、図中に示す「Yes」の場合はステップS310へ移行し、図中に示す「No」の場合は終了(図7中に示す「END」)する。
【0156】
ステップS308では、操作量閾値設定部88において、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が、予め設定した増加補正閾値を超えているか否かを判定する。なお、ステップS308に示すマップ中では、増加補正閾値を破線により示している。
そして、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が、予め設定した増加補正閾値を超えている場合、ステップS308に示すマップにおける、ブレーキペダル2の操作速度と操作量閾値との関係に基づき、操作量閾値を設定する。すなわち、ステップS308では、ブレーキ操作速度検出部82が検出した運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度が、増加補正閾値を超えている場合に、ブレーキペダル2の操作速度が高いほど、操作量閾値を大きくする。
【0157】
なお、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が増加補正閾値未満である場合は、操作量閾値を、増加補正閾値以下の値に設定する。この場合、操作量閾値を、例えば、上述した第一実施形態における第二操作量閾値と同値に設定する。
ステップS308において、操作量閾値を設定すると、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS314へ移行する。
【0158】
ステップS310の処理(ステップS310に示す「制御量=操作量×補正係数」)は、上述したステップS110の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS310の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS312へ移行する。
ステップS312の処理(ステップS312に示す「ブレーキアシスト作動フラグ=1」)は、上述したステップS112の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS312の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は終了(図7中に示す「END」)する。
【0159】
ステップS314の処理(ステップS314に示す「操作量<操作量閾値?」)は、上述したステップS118の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS314の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、図中に示す「Yes」の場合はステップS316へ移行し、図中に示す「No」の場合はステップS310へ移行する。
【0160】
ステップS316の処理(ステップS316に示す「制御量=制御量(前回値)から「0」へ向けて減少」)は、上述したステップS120の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS316の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、ステップS318へ移行する。
【0161】
ステップS318の処理(ステップS318に示す「制御量=0?」)は、上述したステップS122の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS318の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は、図中に示す「Yes」の場合はステップS320へ移行し、図中に示す「No」の場合は終了(図7中に示す「END」)する。
【0162】
ステップS320の処理(ステップS320に示す「ブレーキアシスト作動フラグ=0」)は、上述したステップS124の処理と同様であるため、その説明を省略する。ステップS320の処理を行うと、ブレーキコントローラ8が行う処理は終了(図7中に示す「END」)する。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0163】
(動作)
次に、図1から図7を参照して、本実施形態の制動力制御装置が行う処理の一例と、制動力制御装置が行う処理に伴う車両Vの動作の一例について説明する。なお、以下の説明では、実施中のブレーキアシスト制御を終了する処理以外は、上述した第一実施形態と同様の処理を行うため、異なる部分の処理と、この処理に伴う車両Vの動作を説明する。
【0164】
制動力制御装置がブレーキアシスト制御を終了する処理(ステップS208参照)を行うと、操作量閾値設定部88において、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が増加補正閾値を超えているか否かを判定(ステップS308参照)する。
ここで、ブレーキ操作速度検出部82が検出した操作速度が増加補正閾値を超えている場合、操作量閾値設定部88は、ブレーキペダル2の操作速度が高いほど、操作量閾値を大きくする(ステップS308参照)。
【0165】
さらに、制御終了判定部90が、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が、操作量閾値設定部88が設定した操作量閾値未満であるか否かを判定する(ステップS308及びステップS314参照)。
【0166】
そして、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が、操作量閾値設定部88が設定した操作量閾値未満となると、制動力制御量算出部92が、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。このとき、上述した第一実施形態と同様、ブレーキアシスト制御において、各ホイールシリンダ1へ供給している液圧の制御量が「0」へ向けて減少するように、各ホイールシリンダ1へ供給する液圧の制御量を算出する。そして、制動力制御量算出部92は、算出した制御量に応じて演算した指令信号を、制御周期毎に、ブレーキアシストモータ38及び各バルブ(42、50、60、76)へ出力する(ステップS316参照)。
【0167】
ここで、操作量閾値設定部88が設定した操作量閾値は、ブレーキペダル2の操作時(踏み込み時)におけるマスタシリンダ圧よりも低い液圧であり、また、ブレーキペダル2の操作速度が高いほど、大きな値となっている。
このため、運転者によるブレーキペダル2の戻し方向への操作速度に応じて、操作量閾値を適切な値に設定して、液圧の増圧の度合いの減少を開始するタイミングを変化させることが可能となる。
【0168】
これにより、車両Vの制動時において車輪Wに付与される制動力を、ブレーキペダル2の操作量に応じて変化させることが可能となり、制動時における車両Vの挙動を、ブレーキペダル2の操作量に応じた挙動とすることが可能となる。
以上により、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が大きいほど、各ホイールシリンダ1の液圧の制御量を「0」へ向けて減少させる際に、減少を開始するタイミングが速くなる。すなわち、制動力制御量算出部92は、運転者によるブレーキペダル2の操作量が、非操作時の操作量へ急速に減少する場合、ブレーキ操作量検出部80が検出した操作量が大きいほど、増圧の度合いの減少を開始するタイミングを速くする。
【0169】
これにより、実施中のブレーキアシスト制御においてマスタシリンダ圧よりも増圧されている、各ホイールシリンダ1の液圧は、マスタシリンダ圧と同様に減少する(ステップS208参照)。
このとき、運転者によるブレーキペダル2の操作量が急速に減少した場合、ブレーキペダル2の戻し方向への操作速度が高いと、液圧の増圧の度合いの減少を開始するタイミングを速くすることとなる。
【0170】
したがって、上述した第一実施形態と同様、運転者によるブレーキペダル2の操作量が急速に減少した場合、ホイールシリンダ1とマスタシリンダ4との液圧の差が減少するため、第一連通路26を流れるブレーキ液による音の発生が抑制される。
以上により、操作量閾値設定部88は、操作量閾値補正手段に対応している。
【0171】
(第二実施形態の効果)
(1)操作量閾値補正手段が、ブレーキ操作速度検出手段が検出した操作速度が高いほど、操作量閾値を大きくする。
このため、運転者によるブレーキペダルの戻し方向への操作速度に応じて、操作量閾値を適切な値に設定して、液圧の増圧の度合いの減少を開始するタイミングを変化させることが可能となる。
【0172】
その結果、ブレーキペダルの操作量が急速に減少した場合において、第一連通路を流れるブレーキ液による音の発生を抑制することが可能となる。これに加え、車両の制動時において車輪に付与される制動力を、ブレーキペダルの操作速度に応じて変化させることが可能となり、制動時における車両の挙動を、ブレーキペダルの操作速度に応じた挙動とすることが可能となる。これにより、ブレーキペダルの操作量が急速に減少した場合において、運転者へ与える違和感を低減することが可能となる。
【0173】
(2)操作量閾値補正手段が、ブレーキ操作速度検出手段が検出した操作速度が予め設定した増加補正閾値を超えると、ブレーキ操作速度検出手段が検出した操作速度が高いほど、操作量閾値を大きくする。
このため、運転者によるブレーキペダルの戻し方向への操作速度に対する誤検出を、抑制することが可能となる。
その結果、ブレーキペダルの操作量が急速に減少した場合において、第一連通路を流れるブレーキ液による音の発生の抑制や、制動時における車両の挙動に対する制御を、精度良く行うことが可能となる。
【0174】
(変形例)
(1)本実施形態の制動力制御装置では、操作量閾値補正手段が、ブレーキ操作速度検出手段が検出した操作速度が予め設定した増加補正閾値を超えた場合に、操作量閾値を増加させたが、これに限定するものではない。すなわち、操作量閾値補正手段が、ブレーキ操作速度検出手段が検出した操作速度が増加補正閾値を超えているか否かの判定結果を参照せずに、ブレーキ操作速度検出手段が検出した操作速度が高いほど、操作量閾値を大きくしてもよい。
【符号の説明】
【0175】
1 ホイールシリンダ(ホイールシリンダ1FL、ホイールシリンダ1FR、ホイールシリンダ1RL、ホイールシリンダ1RR)
2 ブレーキペダル
4 マスタシリンダ
6 油圧ユニット
8 ブレーキコントローラ
22 制動倍力装置
24 ブレーキセンサ
26 第一連通路
28 リザーブタンク
36 ポンプ
38 ブレーキアシストモータ
42 ゲートインバルブ
50 ソレノイドインバルブ
60 ゲートアウトバルブ
68 リザーバ
76 ソレノイドアウトバルブ
78 マスタシリンダ圧センサ(P系統側マスタシリンダ圧センサ78P、S系統側マスタシリンダ圧センサ78S)
80 ブレーキ操作量検出部
82 ブレーキ操作速度検出部
84 ブレーキアシスト作動判定部
86 制御開始判定部
88 操作量閾値設定部
90 制御終了判定部
92 制動力制御量算出部
94 ブレーキアシスト制御部
V 車両
W 車輪(左前輪WFL、右前輪WFR、左後輪WRL、右後輪WRR)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルの非操作時に第一連通路を介してリザーブタンクと連通し、且つ前記ブレーキペダルの操作量に応じたマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダと、
前記マスタシリンダと第二連通路を介して連通し、且つ液圧により車輪に制動力を付与するホイールシリンダと、
前記ホイールシリンダの液圧を前記マスタシリンダ圧以上の液圧に増圧制御する液圧制御手段と、
前記ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、
前記ブレーキペダルの戻し方向への操作速度を検出するブレーキ操作速度検出手段と、を備え、
前記液圧制御手段は、前記ブレーキ操作量検出手段が検出した前記操作量が予め設定した操作量閾値以上から当該操作量閾値未満に減少すると、前記液圧の増圧の度合いを減少させ、且つ前記ブレーキ操作速度検出手段が検出した前記操作速度が予め設定した操作速度閾値以上の場合に、前記ブレーキ操作速度検出手段が検出した前記操作速度が前記操作速度閾値未満の場合よりも、前記操作量閾値を大きくすることを特徴とする制動力制御装置。
【請求項2】
前記ブレーキ操作速度検出手段が検出した前記操作速度が高いほど前記操作量閾値を大きくする操作量閾値補正手段を備えることを特徴とする請求項1に記載した制動力制御装置。
【請求項3】
前記操作量閾値補正手段は、前記ブレーキ操作速度検出手段が検出した前記操作速度が予め設定した増加補正閾値を超えると、前記操作速度が高いほど前記操作量閾値を大きくすることを特徴とする請求項2に記載した制動力制御装置。
【請求項4】
前記液圧制御手段は、ホイールシリンダ圧が前記ブレーキペダルの操作量が大きくなるほど大きな制御液圧を前記マスタシリンダ圧に加算した液圧となるように前記ホイールシリンダ圧を制御することによって、前記ホイールシリンダ圧を前記マスタシリンダ圧以上の液圧に増圧制御することを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載した制動力制御装置。
【請求項5】
前記制御液圧は、前記ブレーキペダルの操作量に対して所定の係数である補正係数を乗算した値であって、
前記液圧制御手段は、前記ブレーキペダルの操作量が前記操作量閾値以上から当該操作量閾値未満に減少すると、前記補正係数を減少させることにより、前記ホイールシリンダの液圧の増圧の度合いを減少させることを特徴とする請求項4に記載した制動力制御装置。
【請求項6】
ブレーキペダルの非操作時に第一連通路を介してリザーブタンクと連通するマスタシリンダと第二連通路を介して連通し、且つ車輪に制動力を付与するホイールシリンダの液圧を、前記ブレーキペダルの操作量に応じて前記マスタシリンダで発生するマスタシリンダ圧以上の液圧に増圧し、
前記ブレーキペダルの操作量が予め設定した操作量閾値以上から当該操作量閾値未満に減少すると、前記液圧の増圧の度合いを減少させ、且つ前記ブレーキペダルの戻し方向への操作速度が予め設定した操作速度閾値以上の場合に、前記操作速度が前記操作速度閾値未満の場合よりも、前記操作量閾値を大きくすることを特徴とする制動力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−46135(P2012−46135A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192093(P2010−192093)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】