説明

制御された温度で試料を保存するための自動システム

試料(19)を保存するための一連の円板(9)を収容する、温度制御手段(3)を持つ少なくとも1つの温度が制御される断熱保存チャンバ(1)と、断熱棚(6)によりチャンバ(1)から分離される上部チャンバ(2)に収容された、捕捉装置(18)を備えたカルテシアンロボットシステム(4)とを含む、試料を制御温度で保存するための自動システム(100)であって、制御されるアクセス開口(7)を通過する前記カルテシアンシステム(4)が、I/O引出し(20)と前記一連の円板(9)との間で試料(19)を移動させる。ロボット装置(4)と一連の円板の各々とを組み合わせて同期して移動させることにより、各保存部位に到達することができる。自動システム(100)の装置の管理は、専用の管理ソフトウェアにより駆動されるネットワークコントロールシステムによって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存装置の分野に含まれ、詳細には、試料全般、特に生物試料を制御された温度で保存するための自動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生物材料の試料を低温で保存するための、サーモスタット装置が公知である。この種の装置には、上部に開口を持つ、いわゆる水平型の凍結装置と、前部に開口を持つ垂直型の凍結装置とがある。
【0003】
前述した公知の装置では、一般に小型の容器内に試料が保存される。この容器は、手動で動かされるバスケットまたは支持体内に、手動で配置される。
【0004】
現在使用可能な解決法では、制御が手動でしか行われず、以下に述べる重大な制約がある。
・操作時の人為ミス
・試料識別時の人為ミス
・作業者が低温部分に誤って接触した場合の、生物学的汚染や火傷の危険性
・手動プロセスの非常に緩慢な速度と、これに伴う高い管理費
特許文献1に開示された自動監視付き保存装置にも、このような制約がある。これらの装置は、非常に複雑な構造を有し、試料の移動がかなり複雑である。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5233844号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、試料、特に生物試料を投入/取出し時に自動で移動させることができ、前述した制約をなくすことのできる、制御された温度で試料を保存するためのシステムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、特許請求の範囲の内容により達成される。
【0008】
本発明の特徴は、特に添付図面を参照することにより強調される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
システム100は、主に、断熱棚6により水平方向に分離されて、機能上互いに接続された、2つのチャンバ1、2、すなわち、下方に配置されて試料を制御された温度で収容する第1のチャンバ、および、第1のチャンバの上方に配置されて、試料を室温で収容する第2のチャンバの組立品と、2つのチャンバ間、上部チャンバから外部へ、および外部から上部チャンバへ試料を移動させる手段とから構成される。
【0010】
下部チャンバは、非限定的な例として、下部チャンバの側部に配置される、温度を制御する手段3を備える。
【0011】
同様に、上部チャンバ2は、非限定的な例として、上部チャンバの側部に配置される、試料のロボット移動システムを制御するための手段5を備える。
【0012】
チャンバ1は、軸8を中心として積み重なった円板9を含み、円板上には試料19の部位(場所、位置)17が配置される。
【0013】
各円板は、3つの周囲支持体22により支持され、これら支持体22は、120゜で互いに機械的に接続された3つの対応する垂直材23に配置される。これにより、全ての円板に対して同様に、各円板の重量が、それ自身の各々の支持体22に支持される。
【0014】
各円板は、ゼロノッチに対応した半径方向スロット14を有し、ノッチを位置合わせすることにより、複数の円板のスロットが同一の垂線に確実に位置合わせされることを特徴としている。ゼロ位置にある円板9は、チャンバ1とチャンバ2とを分離する棚6に形成された、制御されるアクセス開口7と同一の垂線上に半径方向スロット14を有する。前述した垂直方向の位置合わせにより、カルテシアンシステム(直交システム;Cartesian system)4が、その捕捉装置18を使用して、積み重なった円板すべてを垂直に貫通することができる。
【0015】
これに関し、捕捉装置18は、断熱棚6に位置する開口7と、該当する部位を含む円板より上方にある円板のすべての半径方向スロット14とを順に通過して、先に回転した円板上の部位に到達することができる。したがって、試料19を前記部位で捕捉し、または前記部位に配置することができる。
【0016】
各円板に設けられるゼロ装置12は、試料19の装填または取出し動作に関する部位を含む円板を除くすべての円板を、ゼロ位置に固定する。試料19の装填または取出し動作に関する部位を含む円板は、制御されるアクセス開口7の垂線に関連する部位17に位置するまで軸8を中心に回転する。
【0017】
各ゼロ装置12に設けられる位置センサ13により、円板9を停止させる装置の位置が確実に監視され、装填または取出しに関連する部位を含む円板のみが、ゼロ位置から回転するようになっている。
【0018】
装填または取出し用の部位を含む円板が、積み重なった円板9から解放されるのと同時に、対応する装置21が作動され、この円板の回転を開始して、カルテシアンロボットシステム(直交ロボットシステム)4の捕捉装置18の垂線に関連する部位に到達させる。
【0019】
非限定的な例として、電動軸25上の装置24を使用して、各円板を回転させるための装置21を、命令に従って噛み合う歯車により形成することができる。前記電動軸25の角度位置は、適切な解像度のエンコーダにより監視される。前記歯車21は、積み重なった円板9のうち対応する円板の周囲の歯部に永久的に係合する。
【0020】
断熱棚6によりチャンバ1から分離された上部チャンバ2も、前述したカルテシアンロボットシステム4に加えて、試料を識別するためのシステム11と、光学センサ10と、試料19の投入/取出しのためのI/O引出しとを含む。
【0021】
断熱棚6により行われる分離の主な目的は、チャンバ2内に収容されたすべての装置を室温に維持して、温度が制御されるチャンバ1を妨害することなく、これらの装置のメンテナンスを行うことができるようにすることである。
【0022】
非限定的な例として、少なくとも2つの数値制御軸を持つロボットシステム4は、水平移動用のスキッド(滑材)から構成され、このスキッドは、捕捉装置18を備えた垂直軸と光学センサ10の端部とを搬送して、部位17に対してグリッパ18が正確に位置決めされていることを示す戻り信号を得る。
【0023】
非限定的な例として、前記光学センサ10に光ファイバ装置または顕微鏡写真用カメラを形成することができる。
【0024】
円板の移動とロボットシステムの移動とを組み合わせた電子制御により、試料の部位を自動管理することができる。
【0025】
試料を制御温度で保存するための自動管理システム100の基本的な特徴は、チャンバ2内に配置された手段11による、試料を識別するための手順を使用して、保存部位17と試料19との間に確実な接続を確立し、投入または取出し時に、試料識別の移動を確認することができるようにしたことである。
【0026】
非限定的な例として、識別システム11は、バーコードリーダ、タグリーダ、または好ましくは、試料表面に直接付けられた2次元コードの識別装置とすることができる。
【0027】
試料の投入および取出しは、命令に従って外部を上部チャンバ2と連通させるI/O引出し20を使用して行われる。引出し20の特徴は、チャンバ2と外部との間にシールを形成して、開位置と閉位置の両方で、外気の湿気がチャンバ2内に入ることが最大限制限されるようにすることである。
【0028】
装填動作は、このように1つまたは複数の試料を装填することのできる引出しを開くよう命令することにより行われる。引出しを閉じると、試料がチャンバ2内に移送され、ここでロボットシステム4が、捕捉装置18を使用して各試料を捕捉し、装置11により識別プロセスを実行した後、試料を所要の部位に配置する。
【0029】
試料取出し動作は、前述した動作を逆の順序で実行することにより行われる。
【0030】
非限定的な例として、引出し20の移動を空気ピストンにより行うことができ、開位置および閉位置が特殊なセンサで監視される。
【0031】
試料を制御温度で保存するための自動管理システム100は、ソフトウェアモジュールおよびハードウェアモジュールからなる制御システムを利用している。モジュールの主な構成要素は以下のとおりである。
【0032】
ハードウェアの構成要素
・軸、センサ、およびIDセンサを案内するための電子システム
・システムの軸を移動させるための電気機械装置
ソフトウェアの構成要素
・オペレータとのグラフィックインターフェース
・部位と試料の管理データベース
・軸制御ドライバ
・ロボットプログラム
・内部装置間、および内部装置と外部との間の通信プロトコル
・システム診断
・遠隔制御装置
前述した本発明は、非限定的な例として挙げたものであり、したがって、あらゆる構成上の変更は、前述し、特許請求の範囲に記載した本技術解決法の保護枠内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】いくつかの部品を一部または全部取り外して他の部品を強調した、本発明の装置の概略側面図である。
【図2】図1に示すシステムを水平面で示す断面図である。
【図3】円板をある角度で回転させた、図2の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向スロット(14)と試料(19)を保存するための部位(17)とを備えた一連の円板(9)を収容する、少なくとも1つの温度が制御される断熱保存チャンバ(1)と、
前記チャンバ(1)の上方にあり、制御されるアクセス開口(7)を備えた断熱棚(6)により前記チャンバ(1)から分離されるチャンバ(2)に収容された、前記試料(19)を移動させる捕捉装置(18)を備えたカルテシアンロボットシステム(4)とを含む、前記試料(19)を保存するための自動システム(100)であって、
前記カルテシアンロボットシステム(4)によって移動する前記捕捉装置(18)は、前記断熱棚(6)の前記制御されるアクセス開口(7)と、該当する部位(17)より上方にある前記一連の円板(9)の前記半径方向スロット(14)とを順に通過して、前記積み重なった円板(9)のうち1枚の円板の部位(17)に到達することができることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記積み重なった円板(9)の各々が、各円板の周囲に120゜で配置された3つの支持体(23)に保持されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各円板(9)を、1度に1枚ずつ、各円板(9)の対応する周囲に結合される装置(21)により回転することができることを特徴とする、請求項1および2に記載のシステム。
【請求項4】
対応する複数の円板(9)の周囲の歯部に常に接触する複数の歯車(21)と、適切に命令を受ける電動軸(25)と一体の係合装置(24)との複合体が、1つの歯車(21)と、前記積み重なった円板(9)のうち対応する円板とを回転させることを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
回転により前記部位(17)が前記スロットの下方に移動する円板を除くすべての前記円板(9)が、前記スロット(14)が垂直に位置合わせされた状態で、ゼロ装置(12)により拘束保持されることを特徴とする、請求項1および4に記載のシステム。
【請求項6】
前記円板拘束装置(12)は、前記拘束装置の位置と、拘束保持された各円板のゼロ位置とを監視することのできるセンサ(13)を備えることを特徴とする、請求項1、4および5に記載のシステム。
【請求項7】
前記積み重なった円板(9)のうち、前記装置(21)により回転される円板が、前記電動引張軸(25)に取り付けられたエンコーダにより、角度位置で監視されることを特徴とする、前記請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記チャンバ(2)が、前記システム(100)に対する投入/取出し時に試料を識別する装置(11)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムに対する前記試料の挿入/抜出し動作が、特に前記ロボット装置(4)を含む前記チャンバ(2)と外部とを接続するI/O引出し(20)を使用して行われることを特徴とする、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記試料へのアクセスを、前記ロボットシステム(4)によってのみ行うことができ、手動介入によって行うことができないことを特徴とする、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項11】
前記断熱パネル(6)の前記制御されるアクセス開口(7)が、前記開口を閉じた状態で維持する本体を備え、前記試料捕捉装置が通過するときのみ、特定の本体が前記開口を開くことを特徴とする、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項12】
前記試料(19)の前記捕捉装置(18)が、前記試料の部位に対する前記捕捉装置の正確な位置決めを監視するための光学センサ(10)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項13】
前記保存チャンバ(1)を駆動するための機構および前記保存チャンバ(1)にアクセスするための機構が、前記チャンバ(2)に収容されることにより、前記温度が制御されるチャンバ(1)を妨害することなく、前記装置でメンテナンス作業を行うことができることを特徴とする、前記請求項に記載のシステム(100)。
【請求項14】
前記システムの前記装置の全体の管理が、専用の管理ソフトウェアにより駆動されるネットワークコントロールシステムによって制御されることを特徴とする、前記請求項に記載のシステム(100)。
【請求項15】
前記ロボットシステムが、オペレータにより設定され前記システム(100)により実行されるすべての動作を記録するソフトウェアによって制御されることを特徴とする、前記請求項に記載のシステム(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−500302(P2006−500302A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539037(P2004−539037)
【出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010716
【国際公開番号】WO2004/028572
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(505111845)クリオロボティクス エス.アール.エル. (1)
【Fターム(参考)】