説明

制御システム及び車載用制御システム

【課題】入力される信号の入力値が何らかの原因で変動しても、当該信号の入力値が変動しない場合と同様の制御を実現させ得る制御システムを提供する。
【解決手段】停止モード用制御プログラムでは、停止指令が第1制御装置CNT1にて認識された際に、第2制御装置CNT2において、当該停止モード用制御プログラムで規定された動作に基づいて中央演算装置CPUの演算処理を実行させることを規定している。これにより、制御装置CNT2では、不正確な状態とされた変動型入力信号を参照することがないので、参照する信号の数が緊急的に削減されるものの、正しい値の安定型入力信号のみに基づいて第2の負荷ACT2の正確な制御が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の制御装置を有する制御システム又は車載用制御システムに関し、特に、当該制御システム又は当該車載用制御システムへ入力される信号の入力値が何らかの原因で変動しても、当該信号の入力値が変動しない場合と同様の制御を応急的に実現させる際に用いて好適のものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の制御装置を備える制御システムが広く知られており、かかる制御装置は、各々が負荷を駆動させる機構的装置に設けられ、当該負荷を適宜に制御させる際に用いられる。また、この制御システムは、制御装置間に通信ラインを接続させ所定の情報を共有できる様にさせたもの、又は、接続される電源ラインを適宜に切換え、制御装置に供給させる電力を個別に制御させるもの等が存在する。
【0003】
かかる制御システムを構成する制御装置は、制御モータを駆動させる場面で用いられ、また、照明等の光度の調整を行う場面で用いられ、この他、空調、車両、電力制御等の様々な分野に適用されるものである。特に、車両に搭載される制御システムは、車載用制御システムと呼ばれ、内燃機関及びトランスミッション及び燃料供給用モータ及びバッテリー監視装置及びインバータ装置等の各種装置を適宜に制御させる。
【0004】
例えば、特開2002−187505号公報(特許文献1)では、車両に搭載される車載システム(特許請求の範囲における車載用制御システム)に関する技術が紹介されている。かかる車載システムは、複数の電子制御装置(特許請求の範囲における制御装置)を備え、当該電子制御装置のうち少なくとも何れかの電子制御装置には、EEPROM等の不揮発性記憶装置が搭載されている。そして、かかる構成により、車載システムでは、電源OFFに伴ってシステムが停止する際、当該システムで認識したトラブルデータ等を不揮発性記憶装置へ記録させ、各種データの保存及び次回電源ON時の各種データの参照を可能とさせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−187505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、制御装置に供給させる電力を個別に制御させるシステムで用いる場合、一方の制御装置に接続されたセンサの電力が他方の制御装置を経由して供給されることとすると、当該他方の制御装置の電源がOFFされると、これに応じて、かかる一方の制御装置では、センサから出力される信号の出力値が低下するので、不正確な信号の出力値に基づいて制御を行うことになるとの問題が生じる。
【0007】
即ち、電源ボタン又はイグニッションキーをOFF状態とした場合、入力信号を検出している制御装置では、電源がOFF状態とされる迄の間に検出した入力信号に基づいて所定の情報を記憶装置へ記憶させる処理を実施させるが、上述した他方の制御装置の電力停止に応じて動作中の制御装置における入力信号の出力値が低下することとなり、これにより、不正確な信号の出力値に基づいて誤った制御を行うことになるとの問題が生じる。
【0008】
また、かかる制御装置は、複数の信号ラインが接続されている場合にあっても、当該複数の信号ラインのうち一つでも信号の出力値を低下させる信号ラインが含まれると、これに応じて誤認識を招来させ、誤った制御を行う場合が有る。
【0009】
更に、負荷の停止条件が整う前に当該負荷に接続された制御装置がOFF状態とされると、次回の起動時に負荷が正しく駆動されなくなる原因ともなり得る。特に、自動車のトランスファーに設けられる車載用制御システムでは、停止条件が充足されていないと、当該トランスファーに設けられたハブとギヤとが離脱した状態となる場合が有り、次回にイグニッションキーを回しても、ハブとギヤとが上手く噛合わなければ、駆動輪へトルクを伝達できなくなるとの問題も生じる。
【0010】
本発明は上記課題に鑑み、入力される信号の入力値が何らかの原因で変動しても、当該信号の入力値が変動しない場合と同様の制御を応急的に実現させ得る制御システム及び車載用制御システムの提供を第1の目的とする。また、負荷の停止条件を充足してから制御装置等の電源をOFF状態とさせ、その後、次回に制御装置等がON状態とされても、負荷の駆動が期待され得る制御システム及び車載用制御システムの提供を第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明では次のような制御システムの構成とする。即ち、第1の負荷を駆動制御させる第1制御装置と、前記第1制御装置を除く他の制御装置のうち第2の負荷を駆動制御させる第2制御装置と、前記第2の負荷及び前記第2制御装置を電気的に接続させる複数の信号ラインのうち前記第1制御装置に供給される電源が当該第1制御装置によって遮断されると信号の出力値が低下されてしまう少なくとも一つの変動型信号ラインと、前記複数の信号ラインのうち前記第1制御装置に供給される電源が当該第1制御装置によって遮断されても信号の出力値が変動されない少なくとも一つの安定型信号ラインとを備える制御システムにおいて、
前記第2制御装置は、プログラムを格納させる記憶装置と前記プログラムで規定された動作処理を実現させる中央演算装置とを少なくとも備えるコンピュータを具備し、
前記記憶装置は、前記変動型信号ラインを介して入力される変動入力信号と前記安定型信号ラインを介して入力される安定入力信号とに基づき前記第2の負荷を制御させる非停止モード用制御プログラムと、前記変動入力信号を用いることなく前記安定入力信号に基づいて前記第2の負荷を制御させる停止モード用制御プログラムとが格納されていることとする。
【0012】
好ましくは、前記非停止モード用制御プログラムは、上述した制御システムを停止させる停止指令が前記第1制御装置にて認識されていない際に、当該非停止モード用制御プログラムで規定された動作を前記中央演算装置に対して演算処理させることを規定し、前記停止モード用制御プログラムは、前記停止指令が前記第1制御装置にて認識された際に、当該停止モード用制御プログラムで規定された動作が前記中央演算装置に対して演算処理させることを規定していることとする。
【0013】
好ましくは、前記非停止モード用制御プログラムは、前記変動入力信号と前記安定入力信号とに基づき、前記第2の負荷の駆動状態又は前記第2の負荷の停止状態を認識させる非停止モード負荷状態認識処理を規定し、前記停止モード用制御プログラムは、前記変動入力信号を用いることなく前記安定入力信号に基づき、前記第2の負荷の駆動状態又は前記第2の負荷の停止状態を認識させる停止モード負荷状態認識処理を規定していることとする。
【0014】
好ましくは、前記停止モード負荷状態認識処理は、前記第2の負荷の駆動停止を許可させる停止可能負荷状態と、前記第2の負荷の駆動停止を禁止させる停止禁止負荷状態と、から成る少なくとも二種類の負荷状態に分類させる処理を実行させることとする。
【0015】
好ましくは、前記停止モード用制御プログラムは、前記第2の負荷が駆動中の場合に、前記第2の負荷の駆動動作を続行させる負荷駆動処理及び/又は前記第2の負荷の停止動作を実行させる負荷停止処理を、前記停止モード負荷状態認識処理にて分類された前記負荷状態に基づいて規定させることとする。
【0016】
好ましくは、前記停止モード用制御プログラムは、更に、前記第2制御装置に供給される電源を遮断させるセルフシャット処理を規定しており、前記セルフシャット処理は、前記第2の負荷が停止された後に実行されることとする。
【0017】
また、上述した各制御システムは、前記第1制御装置及び前記第2制御装置を含む複数の制御装置の各々が、自動車に搭載された装置の制御を実現させる電子制御処理装置である車載用制御システムとするのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る制御システムによれば、安定入力信号及び変動入力信号に基づいて第2の負荷を制御させる非停止モード用制御プログラムと、安定入力信号のみに基づいて第2の負荷を制御させる停止モード用制御プログラムとを備えているので、変動入力信号の出力値が急激に変動する場合、制御プログラムを非停止モード用制御プログラムから停止モード用制御プログラムへ切替えることにより、第2制御装置では正しい出力値とされた信号のみによって演算処理を実施することが可能となるので、これにより、第2の負荷は誤動作されることなく制御される。
【0019】
また、停止指令が第1制御装置で認識されていないとき、第2制御装置では、非停止モード用制御プログラムが起動されているので、安定入力信号及び変動入力信号によって、多くの信号から所定の情報を正確に認識することが可能となる。また、停止指令が第1制御装置で認識されたとき、第2制御装置では、停止モード用制御プログラムが起動されるので、誤検出を誘発させる変動出力信号を排除させ、安定入力信号のみに基づいて所定の情報を正確に認識することが可能となる。
【0020】
更に、停止モード用制御プログラムの停止モード負荷状態認識処理では、第2の負荷の負荷状態を停止可能負荷状態と停止禁止負荷状態とに分類させるので、当該第2の負荷における停止条件が整っているか否かが判別可能となる。
【0021】
併せて、停止モード用制御プログラムの停止モード負荷状態認識処理では、停止条件が整っていないとき、当該第2の負荷の負荷状態を他の負荷状態に再設定させ、再設定された負荷状態が停止条件を充足した際に第2の負荷を停止させるので、停止された第2の負荷は必ず停止条件を充足させたものとなる。
【0022】
加えて、停止モード用制御プログラムで規定されるセルフシャットオフ処理は、第2の負荷ACT2が停止された後に実行されるので、第2の負荷の停止条件が整ってから、第2制御装置の電源が遮断されることとなる。
【0023】
更に加えて、車両に搭載された車載用制御システムによれば、ハブの切換動作中にイグニッションキーがOFFされて電源の一部が供給されなくなっても、正規の出力状態を維持している安定出力信号に基づいてハブのポジションが正確に把握されるので、ハブがトランスファーのギヤから外れた状態で車載用制御システムの電源が切られることを防止できる。これにより、車載用制御システムは、各ハブが何れかのギヤに噛合わされてから電源が落とされるので、次回にイグニッションキーを回した際、内燃機関から供給された駆動トルクを何れかの駆動輪に伝達できる状態が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態に係る制御システムの回路構成を示す図
【図2】実施の形態に係る制御装置で認識される複数の信号を示す図
【図3】制御装置の機能ブロック図
【図4】非停止モード用制御プログラムによって規定される動作処理を現すフローチャート
【図5】停止モード用制御プログラムによって規定される動作処理を現すフローチャート
【図6】実施の形態に係る負荷状態認識処理を現すフローチャート
【図7】実施例1に係る四輪駆動車の構成を示す図
【図8】実施例1に係る制御システムの回路構成を示す図
【図9】実施例1に係る制御装置で認識される負荷状態を示す図
【図10】実施例1に係る負荷状態認識処理を現すフローチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して説明する。図1には、本実施の形態に係る制御システムの構成が示されている。図示の如く、制御システムSYS1は、第1の電子制御機構Ap1と第2の電子制御機構Ap2とこの他図示されない他の電子制御機構とから構成されている。
【0026】
かかる第1の電子制御機構Ap1は、電源回路Reg1と制御装置CNT1とドライブ回路DRV1と負荷ACT1とから構成されている。また、電源ラインLv1及びLv1’、信号ラインLo1及びLi1が適宜接続され、このうち、電源ラインLv1’には電源Va1が印加されている。
【0027】
電源回路Reg1は、入力端が電源ラインLv1’に接続され、出力端が制御装置CNT1に接続される。かかる電源回路Reg1は、電源IC等が用いられ、バッテリー電源Va1から印加される電源を一定の電圧値に調整させ、これによって生成された電源Vcc又はA/D電源Avccを制御装置へ供給させる。ここで、電源Vccとは、制御装置CNT1を駆動させるものとされ、A/D電源Avccとは、制御装置CNT1を構成するA/D変換装置の基準電位を与える際に用いられるものとされる。
【0028】
制御装置CNT1は、記憶装置MRY、A/D変換装置、中央演算装置CPU、クロック回路CL、この他、シリアル通信ラインに接続された通信回路等が設けられており、第1の負荷ACT1を駆動制御させる。記憶装置MRYは、通信演算装置CPUによって演算された情報又はシリアル通信ラインを介して受信した情報等が不揮発性記憶装置ROM又は揮発性記憶装置RAMへ記録されている。また、中央演算装置CPUの動作処理を規定させる制御プログラムが不揮発性記憶装置ROMに記録されている。ここで、不揮発性記憶装置ROMには、マスクROMまたはEPROMまたはEEPROM等が適宜用いられる。一方、揮発性記憶装置RAMには、電源供給が停止されると格納された情報を消失してしまう装置が用いられ、例えば、DRAM又はSDRAM等が適宜利用される。中央演算装置CPUは、制御プログラムで規定された動作処理を数値演算によって実行させる。かかる制御装置CNT1では、入力された情報に応じて新たな情報を生成し、当該新たな情報を適宜なタイミングにて信号ラインLo1へと出力させる。また、制御装置CNT1は、シリアル通信ラインSTを介して、当該制御装置CNT1にて加工された情報を他の制御装置へ送信させ、又は、他の制御装置から受信した情報を更に他の制御装置へと転送させる。そして、これら他の制御装置へ転送される情報の中には、制御装置CNT1の電源供給が途絶えることを報知させる停止指令を表現した情報も含まれる。かかる停止指令は、例えば、制御システムSYS1の操縦者が停止ボタンを押すと、当該停止指令の情報は、停止ボタンに接続された制御装置で認識され、更に、第1制御装置及び第2制御装置を含む各制御装置で共有可能とされる。尚、本実施の形態では、通信方式がシリアル通信で使用される通信ラインを用いているが、情報の通信方式及び通信ラインは如何なる方式のものであっても良い。従って、CAN通信又はLIN通信等の通信プロトコルを採用したものも使用可能である。更に加えて、制御装置CNT1には、第2の電子制御機構Ap2に接続された電源ラインLvxが設けられ、かかる電源ラインLvxにバッテリー電源Va1の印加を遮断又は許可させるリレー手段が設けられている。かかるリレー手段は図示されていないが、機構的構成から成るものの他、バイポーラトランジスタ、MOSFET、IGBT、サイリスタ等を用いても良い。また、第2制御装置に内蔵された各回路によってリレー手段を構築させても良い。そして、第2制御装置CNT2では、かかるリレー手段を具備する第1制御手段CNT1の動作によって、電源Va1の供給が遮断され又は許可される。
【0029】
ドライブ回路DRV1は、電源ラインLv1及びLv1’と信号ラインLo1とが接続されている。そして、制御装置CNT1から駆動信号が出力されると、電源ラインLv1と電源ラインLv1’とが導通され、これにより、電源ラインLv1にバッテリー電源Va1が供給される。
【0030】
負荷ACT1は、バッテリー電源Va1が印加されると所定の動作を実現させる。また、種々のセンサが設けられており、かかる動作に関する信号を出力させ、信号ラインLi1を介して制御装置CNT1へ伝達させる。
【0031】
かかる構成を具備する第1の電子制御機器Ap1では、以下の如く動作を行う。即ち、制御装置CNT1は、負荷ACT1から受信した入力信号に基づいて所定の演算処理を実行させ、ドライブ回路DRV1に対して駆動信号を出力させる。かかる信号を受信したドライブ装置DRV1は、バッテリー電源Va1を適宜に導通させ、これにより、負荷ACT1では、バッテリー電源Va1の供給状態に応じた動作を行い、更に、かかる動作状態に相当する信号を制御装置CNT1へ帰還させることで、当該制御装置CNT1で予定される動作状態に制御される。
【0032】
一方、第2の電子制御機構Ap2にあっても、上述した第1の電子制御機構Ap1と同様の構成を含み、電源回路Reg2と制御装置CNT2とドライブ回路DRV2と負荷ACT2とリレー装置(特許請求の範囲におけるリレー手段)RYLsとから構成される。ここで、第2の負荷及び第2制御装置を電気的に接続させる信号ラインLi2a〜Li2cは、図示の如く複数本設けられている。尚、本電子制御機構Ap2に係る構成のうち第1の電子制御機構Ap1と同様の作用を奏する構成については、説明を省略することとする。
【0033】
電源回路Reg2は、入力端が電源ラインLvxに接続され、出力端がリレー装置RYLsに接続される。かかる電源回路Reg2は、前述の如く、電源IC等が用いられる。
【0034】
リレー装置RYLsは、入力端子及び出力端子及び信号端子を備え、信号端子にON/OFF信号が出力されると、かかる信号に応じて、入力端子と出力端子とを導通又は非導通とさせる。従って、本実施の形態では、図示の如く、入力端子及び出力端子及び信号端子の各々に電源回路Reg2及び制御装置CNT2及び信号ラインLsgが接続されているので、制御装置CNT2からON信号が出力されると、当該第2制御装置へ電源Va1、Va2の供給がリレー装置RYLsの動作によって許可され、制御装置CNT2からOFF信号が出力されると、当該第2制御装置へ電源Va1、Va2の供給がリレー装置RYLsの動作によって遮断される。尚、かかるリレー装置は、上述した機構的構成から成るものの他、バイポーラトランジスタ、MOSFET、IGBT、サイリスタ等を用いても良い。また、第2制御装置に内蔵された各回路によってリレー手段を構築させても良い。
【0035】
制御装置CNT2は、第1制御装置を除く他の制御装置のうちの一つであって、図示される第2の負荷ACT2を駆動制御させる。制御装置CNT2は、記憶装置MRY、A/D変換装置、中央演算装置CPU、クロック回路CL、この他、シリアル通信ラインSTに接続された通信回路等が設けられている。尚、本実施の形態では、通信方式がシリアル通信で使用される通信ラインを用いているが、情報の通信方式及び通信ラインは如何なる方式のものであっても良い。従って、CAN通信又はLIN通信等の通信プロトコルを採用したものも使用可能である。
【0036】
制御装置CNT2に内蔵される記憶装置MRYは、入力された信号に基づいて第2の負荷ACT2を制御させる制御プログラムとして、非停止モード用プログラムと停止モード用プログラムとが格納されている。非停止モード用プログラムは、信号ラインLi2a〜Li2bを介して入力される安定入力信号と信号ラインLi2cを介して入力される変動入力信号とに基づいて制御装置CNT2の動作を規定し、これにより、第2の負荷ACT2の制御を実施させる。一方、停止モード用プログラムは、信号ラインLi2cから入力された変動入力信号を参照することなく、信号ラインLi2a〜Li2bから入力される安定入力信号に基づいて制御装置CNT2の動作を規定し、第2の負荷ACT2の制御を実施させる。尚、本実施の形態では、以下、信号ラインLi2a及びLi2bを安定型信号ラインと呼び、信号ラインLi2cを変動型信号ラインと呼ぶ。
【0037】
負荷ACT2は、図示の如く、センサSEN1及びセンサSEN2及びセンサSEN3が設けられている。かかるセンサSEN1乃至センサSEN3は、信号ラインLi2a〜Li2cが各々接続されており、所定の信号を当該信号ラインへ出力させる。ここで、所定の信号とは、負荷ACT2の動作状態を電気信号化させたものであって、例えば、モータのシャフトが基準位置(基準アングル)から回動された現在位置(現在アングル)を示す信号であっても良く、負荷ACT2の温度を測定した信号であっても良く、この他、負荷ACT2の動作情報が電気情報化され得るあらゆる信号を想定している。かかるセンサSEN1〜SEN3は、配線の仕方によっては信号を出力させるための駆動電源が異なる場合があり、かかる場合、全ての駆動電源が正常の電圧を供給させることで、制御装置CNT2には、正確な信号が入力されることとなる。しかし、当該駆動電源のうちの何れかが変動又は急降下した場合、センサSEN1〜SEN3に印加される駆動電源が一部異なるため、駆動電源の変動から影響を受ける信号と駆動電源の変動から影響を受けない信号とを併せて生じさせることが有り、これにより、制御装置CNT2では、一部不正確な信号を受信してしまう現象が生じる。
【0038】
尚、本実施の形態では、図示の如く、センサSEN2及びセンサSEB3は、電源Va2によって信号を生成させる回路が形成されており、センサSEN1は、電源Va1によって信号を生成させる回路が形成されている。即ち、信号ラインLi2a、Li2bで伝送される安定入力信号は、電源Va2によってプルアップされた信号とされ、信号ラインLi2cで伝送される信号は、電源Va1によってプルアップされた信号とされる。
【0039】
本実施の形態では、第1制御装置CNT1が停止指令に係る情報に基づいて自身に供給される電源Va1を遮断する制御(以下、セルフシャットオフ制御と呼ぶ。)を実施させるので、当該制御装置1が当該停止指令に係る情報を認識すると、電子制御機構Ap2には電源Va1が供給されなくなる。従って、第2の負荷ACT2へ供給される電力は、電源Va2のみに頼らざるを得なくなり、電源Va1に相当する電力成分が実質的に低下することとなる。このとき、センサSEN2及びSEN3は電源Va1の供給状態に関わらず信号の出力値に変動を生じさせないものの、センサSEN1では、図示の如く、信号ラインLi2cが電源Va1によってプルアップされているので、当該信号ラインLi2cへ出力させる信号の電圧値を低下させてしまう。即ち、第2の負荷ACT2と第2制御装置CNT2とを電気的に接続させる複数の信号ラインのうち安定型信号ラインLi2a〜Li2bは、第1制御装置CNT1に供給される電源Va1が当該第1制御装置CNT1によって遮断されても信号の出力値が変動されることはない。一方、複数の信号ラインのうち変動型信号ラインLi2cは、第1制御装置CNT1に供給される電源Va1が当該第1制御装置CNT1によって遮断されると信号の出力値が低下してしまう。尚、かかる安定型信号ライン又は変動型信号ラインは、各々が複数本であるか否かを問うものではない。
【0040】
そこで、第1制御装置CNT1がセルフシャットオフ制御を実施する場合には、上述した非停止モード用制御プログラム及び停止モード用制御プログラムが、以下の如く規定されているのが好ましい。即ち、停止モード用制御プログラムでは、停止指令が第2制御装置CNT2にて認識された際に、当該停止モード用制御プログラムで規定された動作が中央演算装置CPUに対して演算処理させることを規定しているのが好ましい。これにより、制御装置CNT2では、不正確な状態とされた変動型入力信号を参照することがないので、参照する情報(信号)の数が緊急的に削減されるものの、正しい値の安定型入力信号のみに基づいて第2の負荷ACT2の正確な制御が実現される。一方、非停止モード用制御プログラムでは、停止指令が第2制御装置CNT2にて認識されていない際に、当該非停止モード用制御プログラムで規定された動作を中央演算装置CPUに対して演算処理させることを規定しているのが好ましい。これにより、制御装置CNT2では、多くの信号に基づいて、第2の負荷ACT2の本来要求される正確な制御が実現される。
【0041】
図2には、制御装置CNT2へ入力される信号の組合せが示されている。ここで、図2(a)では、制御装置CNT1にてセルフシャットオフ機能が作動していない信号の組合せが示されており、図2(b)では、制御装置CNT1にてセルフシャットオフ機能が作動した場合の信号の組合せが示されている。
【0042】
図2(a)に示す如く、制御装置CNT2には、安定型信号ラインLi2aを介して安定入力信号Sg1が入力され、安定型信号ラインLi2bを介して安定入力信号Sg2が入力され、変動型信号ラインLi2cを介して変動入力信号Sg3が入力される。そして、これらの信号Sg1〜Sg3は、各々の信号のHigh/Low状態によって、第2の負荷ACT2の状態を表現している。具体的に説明すると、制御装置CNT2で認識され得る第2の負荷ACT2の状態は、図示の如く、State1、State2、State3、State4の4類型に分類される。ここで、State1〜State4は、第2の負荷ACT2の動作状態を示すものであって、例えば、State1〜State4は、第2の負荷ACT2がモータの場合、当該モータのシャフトの停止しているアングルを示すものであっても良く、温度のレベルを段階的に示すものであっても良い。また、第2の負荷ACT2がソレノイドアクチュエータ又は油圧装置の場合、かかる装置のスライド距離を示すものであっても良く、第2の負荷ACT2がフォトダイオード又はピエゾ圧電素子又はペルティエ素子等の半導体素子とされる場合、かかる半導体素子から出力される信号の出力値を段階的に示すものであっても良い。尚、State1〜State4の各々を、以下、負荷状態と呼ぶこととする。
【0043】
本実施の形態では、負荷状態がState1とされるとき、制御装置CNT2へ入力される信号は(Sg1、Sg2,Sg3)=(H、H、H)とされる。また、負荷状態がState2とされるとき、制御装置CNT2へ入力される信号は(Sg1、Sg2,Sg3)=(H、L、L)とされる。同様に、負荷状態がState3とされるとき、(Sg1、Sg2,Sg3)=(L、L、H)とされ、負荷状態がState4とされるとき、(Sg1、Sg2,Sg3)=(L、H、L)とされる。尚、信号の組合せを示す括弧内のH及びLは、それぞれHigh値及びLow値を示すものである。また、図を参照すると、State1及びState3は、電源の遮断を避けなければならない負荷状態とされ、State2及びState4は、電源の遮断が許容される負荷状態とされている。そして、第2制御装置CNT2の記憶装置MRYには、State1及びState3に対応させて電源遮断禁止情報を現すフラグが立てられる。
【0044】
一方、図2(b)には、制御装置CNT1にてセルフシャットオフ機能が作動した場合の信号の組合せが示されている。即ち、変動入力信号Sg3が低下した場合の信号の組合せが示されている。図示の如く、負荷状態がState1とされるとき、変動入力信号Sg3がLow状態として認識されてしまうので、(Sg1、Sg2,Sg3)=(H、H、L)とされる。また、負荷状態がState2とされるとき、変動入力信号Sg3に変化は無く、(Sg1、Sg2,Sg3)=(H、L、L)とされる。また、負荷状態がState3とされるとき、変動入力信号Sg3がLow状態として認識されてしまうので、(Sg1、Sg2,Sg3)=(L、L、L)とされる。また、負荷状態がState4とされるとき、変動入力信号Sg3に変化は無く、(Sg1、Sg2,Sg3)=(L、H、L)とされる。このとき、それぞれの負荷状態を比較すると、第2の負荷ACT2が負荷状態State1である場合、変動型信号Sg3の誤認識が生じ、当該第2制御装置CNT2では、認識された負荷状態が何れのStateにも該当しないエラーが生じるため、セルフシャットオフ機能を働かせて第2制御装置自身の電源を落とすことができなくなる問題が生じる。また、第2の負荷ACT2が負荷状態State3である場合にあっても、同様に、認識された負荷状態が何れのStateにも該当しないエラーが生じるため、セルフシャットオフ機能を働かせることができなくなる問題が生じる。
【0045】
そこで、本実施の形態では、第2制御装置CNT2が非停止モード用制御プログラム及び停止モード用制御プログラムを適宜に使い分けることにより、負荷状態Stateの正確な検出が実現される。以下、かかるプログラムによって構築される機能的手段及びプログラムによって実行される動作処理について説明する。
【0046】
図3には、第2制御装置CNT2で構築される機能的手段がブロックにて図示されている。図示の如く、第2制御装置CNT2には、負荷用信号出力手段M01と入力信号検出手段M02と負荷状態認識手段M03と負荷状態記憶手段M04と負荷停止条件判定手段M05とセルフシャットオフ実行手段M06とが構築されている。尚、これらの手段M01〜M06は、当然の如く、記憶手段MRYに格納されたソフトウェアと第2制御装置CNT2に設けられた各種ハードウェアとが協働して実現されるものである。
【0047】
負荷用信号出力手段M01は、適宜な駆動信号を出力させ、ドライブ回路DRV1を駆動させることにより、第2の負荷ACT2を駆動制御させる。
【0048】
入力信号検出手段M02は、第2の負荷ACT2から受信した安定入力信号Sg1及び安定入力信号Sg2及び変動入力信号Sg3の各々について、A/D変換装置によってアナログ信号からデジタル信号へ変換させる。また、かかる如く認識された各信号をクロックタイミング毎に揮発性メモリRAMへ記録させる。
【0049】
負荷状態認識手段M03は、非停止モード用制御プログラムが起動されるとき、第2の負荷ACT2から入力された信号配列(Sg1、Sg2、Sg3)と、予め記憶装置MRYに記録された負荷状態の信号配列(Sg1、Sg2、Sg3)とを比較させ、入力された信号配列の現す負荷状態Stateを認識する。一方、停止モード用制御プログラムが起動されるとき、第2の負荷ACT2から入力された信号配列(Sg1、Sg2)と、予め記憶装置MRYに記録された負荷状態の信号配列(Sg1、Sg2)とを比較させ、入力された信号配列の現す負荷状態Stateを認識する。
【0050】
負荷状態記憶手段M04は、非停止モード用制御プログラムが起動されるとき、入力された信号配列(Sg1、Sg2、Sg3)に基づいて認識した負荷状態Stateを、記憶装置MRYに格納させる。一方、停止モード用制御プログラムが起動されるとき、入力された信号配列(Sg1、Sg2)に基づいて認識した負荷状態Stateを、記憶装置MRYに格納させる。
【0051】
負荷停止条件判定手段M05は、認識した負荷状態が、電源の遮断を避けなければならない負荷状態に属するか、或いは、電源の遮断が許容される負荷状態に属するかを判定する。具体的には、記憶装置MRYから「電源の遮断が許容される負荷状態StateX1〜Xn」を読み出し、かかる負荷状態StateX1〜Xnの何れかが負荷状態認識手段M02で認識された負荷状態Stateと一致する場合、認識した負荷状態が電源の遮断を許容し得る負荷状態に属すると判定する。これに対し、記憶装置MRYから「電源の遮断が禁止される負荷状態StateY1〜Yn」を読み出し、負荷状態StateY1〜Ynの何れかが負荷状態認識手段M03で認識された負荷状態Stateと一致する場合、認識した負荷状態が電源の遮断を避けなければならない負荷状態に属すると判定する。
【0052】
セルフシャットオフ実行手段M06は、認識された負荷状態Stateが「電源の遮断が許容される負荷状態StateX1〜Xn」に属するという判定結果を負荷停止条件判定手段M05で得た場合、かかる判定結果に基づいて、リレーRYLsを遮断させるOFF信号を出力させる。
【0053】
図4には、非停止モード用制御プログラムによって規定される動作処理を現すフローチャートが示されている。非停止モード用制御プログラムPgonは、電源スイッチがON状態とされてから直ちに起動され、以下に示す種々の処理を規定する。
【0054】
図示の如く、非停止モード用制御プログラムPgonは、当該プログラムが起動されると、先ず、操縦パネルから負荷状態Stateの変更が要求されるまで、待機状態をキープする。そして、制御システムSYS1によって駆動される装置の制御パネルを操縦者が操作し、当該操縦者の操作意図に応じて、操縦パネルから負荷状態Stateの変更指令が出力されると(S001)、負荷状態Stateの変更指令に係る情報が複数の制御装置で共有可能な情報とされるので、第2制御装置CNT2にあっても負荷状態Stateの変更指令が認識される。即ち、変更指令の情報とは、第2の負荷ACT2を駆動させることにより新たに設定させたい負荷状態Stateに関する情報をいう。
【0055】
第2制御装置CNT2にて変更指令が認識されると、非停止モード用制御プログラムPgonは、非停止モード負荷状態認識処理を実行させる(S002)。非停止モード負荷状態認識処理は、第2の負荷における負荷状態を認識させ、具体的には、State1〜State4のうちの何れの負荷状態とされるかを認識する。かかる認識処理は、負荷状態認識手段M03にて説明した如く、第2の負荷ACT2から入力された信号配列(Sg1、Sg2、Sg3)と、予め記憶装置MRYに記録された負荷状態の信号配列(Sg1、Sg2、Sg3)とを比較させ、入力された信号配列の現す負荷状態Stateを認識させる。
【0056】
かかる如く第2の負荷ACT2における負荷状態が認識されると、第2の負荷ACT2が変更指令に相当する負荷状態と一致するように、第2の負荷ACT2を適宜に駆動させる(S003)。例えば、第2の負荷ACT2における現在の負荷状態がState1であって、変更指令に相当する負荷状態がState4とされるとき、「S003」では、第2制御装置CNT2が適当な駆動信号を出力させることで、第2の負荷ACT2の負荷状態をState4へと制御させる。
【0057】
第2の負荷ACT2が駆動され始めると、第2の負荷ACT2に関する負荷状態の監視処理を実行させる(S004)。かかる監視処理では、第2の負荷ACT2に関する負荷状態Stateが所定の周期毎に認識され、第2の負荷ACT2に関する現在の負荷状態Stateが変更指令に相当する負荷状態であるか否かを判別する。そして、かかる監視処理では、第2の負荷ACT2に関する現在の負荷状態Stateが変更指令に相当しない負荷状態であると判別した場合、図示の如く、非停止モード負荷状態認識処理(S002)から処理を繰り替えさせる。一方、当該監視処理では、第2の負荷ACT2に関する現在の負荷状態Stateが変更指令に相当する負荷状態であると判別した場合、負荷の停止処理を実行させる。
【0058】
かかる負荷の停止処理(S005)では、第2制御装置CNT2によってドライブ回路DRV2を停止させ、これにより、第2の負荷ACT2を停止させる。即ち、負荷の停止処理(S005)では、第2の負荷ACT2に関する負荷状態Stateが変更指令に相当する負荷状態とされるときに第2の負荷ACT2を停止させるので、第2の負荷ACT2に関する負荷状態Stateは、確実に、変更指令に相当する負荷状態にセットされることとなる。
【0059】
かかる如く第2の負荷ACT2における負荷状態Stateがセットされると、当該負荷状態Stateに係る情報を不揮発性記憶装置ROMへ格納させ(S006)、その後、第2制御装置CNT2が新たな変更指令を受信するまで待機状態をキープする。
【0060】
然る後、操縦者が装置の制御パネルを操作して装置の電源をOFF状態に設定すると、電源OFFに係る情報が複数の制御装置で共有され、電子演算機構Ap1では、電源OFFに係る情報の認識直後に、第1制御装置CNTの電源が落とされる。このとき、電子演算機構Ap2では、前述の如く、電源Va1が供給されなくなるので、複数の信号ラインのうち一部の信号ラインの信号が著しく低下することとなる。従って、装置の電源をOFF状態とさせてから第2制御装置CNT2の供給電力が遮断される迄の間、第2の負荷ACT2における負荷状態を正確に把握するため、以下の処理が緊急的に行われる。
【0061】
図5を参照して、かかる処理について説明する。先ず、装置の電源スイッチがOFF状態に設定されると、図示の如く、第2制御装置CNT2では、停止モード用制御プログラムPgofが起動される。停止モード用制御プログラムPgofが起動されると、先ず、第2の負荷ACT2が駆動中であるか否かの判定が実施される(S101)。
【0062】
「S101」で第2の負荷ACT2が駆動中であると判定された場合、第2制御装置CNT2では、停止モード負荷状態認識処理(S102)を実行させる。停止モード負荷状態認識処理(S102)では、変動入力信号Sg3を用いることなく、安定入力信号Sg1及びSg2に基づき、第2の負荷ACT2の負荷状態を認識する。かかる処理を具体的に説明すると、停止モード負荷状態認識処理(S102)は、図6に示す如く、第2制御装置CNT2に対して入力された複数の信号のうち、安定入力信号Sg1を当該制御装置に認識させ、当該安定入力信号Sg1のH/L判定を実施させる(S1021)。ここで、安定入力信号Sg1がHigh状態であると認識された場合、安定入力信号Sg2のH/L判定を更に実施させ(S1022)、安定入力信号(Sg1、Sg2)=(H、H)とされるとき、第2の負荷ACT2の負荷状態がState1であると認識する処理を行い(S1023)、一方、安定入力信号(Sg1、Sg2)=(H、L)とされるとき、第2の負荷ACT2の負荷状態がState2であると認識する処理を行う(S1024)。これに対し、安定入力信号Sg1のH/L判定結果がLow状態であると認識された場合(S1021)、安定入力信号Sg2のH/L判定を更に実施させる。(S1025)。そして、安定入力信号(Sg1、Sg2)=(L、H)とされるとき、第2の負荷ACT2の負荷状態がState3であると認識する処理を行い(S1026)、一方、安定入力信号(Sg1、Sg2)=(L、L)とされるとき、第2の負荷ACT2の負荷状態がState4であると認識する処理を行う(S1027)。即ち、停止モード負荷状態認識処理(S102)では、第1制御装置の動作に応じて変動する変動入力信号Sg3を用いずに、安定入力信号(Sg1、Sg2)のみによって、第2の負荷ACT2の負荷状態Stateを認識させる。従って、負荷状態の認識に用いられる信号は、全てが正しい出力値とされる信号であるので、第2制御装置CNT2では、負荷状態の誤認識を生じることなく、正確な負荷状態の認識が実現される。
【0063】
上述の如く、負荷状態が認識されると(S1023、S1024、S1026、S1027)、停止モード負荷状態認識処理(S102)では、図示の如く、負荷状態分類処理(S1028)を実行させる。かかる負荷状態分類処理(S1028)では、認識した4類型の負荷状態について、第2の負荷ACT2の駆動停止を許可させる停止可能負荷状態と、第2の負荷ACT2の駆動停止を禁止させる停止禁止負荷状態とに分類させる処理を実行させる。具体的に説明すると、第2制御装置CNT2の記憶装置MRYには、図2に示される「電源遮断禁止」又は「電源遮断許可」に係る情報が数値化されて記録されており、中央演算装置CPUでは、認識した負荷状態の信号配列と一致する負荷状態の「電源遮断禁止」又は「電源遮断許可」に係る情報を記憶装置MRYの中から認識し、これにより、認識した負荷状態が、「電源遮断禁止」又は「電源遮断許可」の何れに対応するかを分類させる。
【0064】
再び図5に戻り負荷状態認識処理(S102)の後の処理について説明する。図示の如く、負荷状態認識処理(S102)が終了すると、現在の負荷状態Stateにおいて第2の負荷ACT2を停止させて良いか否かを判定する(S103)。かかる「S103」の処理では、停止モード負荷状態認識処理(S102)にて分類された負荷状態State1〜State4に基づいて、負荷停止処理(S104)又は負荷駆動処理(S105)の何れかの処理を実行させる。具体的に説明すると、「S103」の処理では、負荷状態が「電源遮断禁止」に対応する負荷状態の場合、即ち、State1又はState3の場合、負荷の停止条件が成立していないとして、負荷駆動処理(S105)を実行させ、第2の負荷ACT2の駆動動作を続行させる。一方、負荷状態が「電源遮断許可」に対応する負荷状態の場合、即ち、State2又はState4の場合、負荷の停止条件が成立しているとして、負荷停止処理(S104)を実行させ、第2の負荷ACT2の停止動作を実行させる。
【0065】
また、停止モード用制御プログラムPgofでは、かかる如く第2の負荷ACT2が停止されると(S104)、これによって確定した負荷状態を第2制御装置CNT2の不揮発性記憶装置ROMに格納させ(S106)、その後、セルフシャット処理を実行させる(S107)。かかるセルフシャットオフ処理では、第2制御装置CNT2からリレー装置RYLsをOFF状態にさせる信号を出力させ、これにより、当該第2制御装置CNT2に供給される電源を遮断させる。尚、このセルフシャットオフ処理は、第2の負荷ACT2が上述した制御を経て停止された後に実行されるので、第2の負荷ACT2は停止されても良い負荷状態にセットされてから、第2制御装置ACT2の電源が遮断されることとなる。
【0066】
即ち、停止モード用制御プログラムPgofでは、第2の負荷ACT2が駆動していた場合、第2の負荷ACT2を停止させると不都合が生じる負荷状態のとき、当該第2の負荷ACT2の負荷状態を他の負荷状態に再設定させ、再設定された負荷状態が停止条件を充足した際に第2の負荷ACT2を停止させ、その後、第2制御装置ACT2の電源を遮断させる。
【0067】
これに対し、「S101」で第2の負荷ACT2が停止していると判定された場合、第2制御装置CNT2では、「S102」と同様、安定入力信号Sg1及びSg2によって認識する停止モード負荷状態認識処理(S108)を実行させる。ここでは、第2の負荷ACT2が停止しているので、当該第2の負荷ACT2は停止されても良い負荷状態にセットされていることが明らかである。従って、「S108」の処理終了後、第2の負荷ACT2の負荷状態の再設定を実施させること無く、確定している負荷状態の情報をを第2制御装置CNT2の不揮発性記憶装置ROMに格納させ(S106)、その後、セルフシャットオフ処理を実行させる(S107)。
【0068】
上述の如く、本実施の形態に係る制御システムSYS1では、安定入力信号Sg1、Sg2及び変動入力信号Sg3に基づいて第2の負荷ACT2を制御させる非停止モード用制御プログラムPgonと、安定入力信号Sg1,Sg2のみに基づいて第2の負荷ACT2を制御させる停止モード用制御プログラムPgofとを備えているので、変動入力信号の出力値が急激に変動する場合、制御プログラムを非停止モード用制御プログラムPgonから停止モード用制御プログラムPgofへ切替えることにより、第2制御装置CNT2では正しい出力値とされた信号のみによって演算処理を実施することが可能となるので、これにより、第2の負荷ACT2は所望の動作が実現される。
【0069】
また、停止指令が第1制御装置CNT1で認識されていないときは、非停止モード用制御プログラムPgonが起動されているので、安定入力信号Sg1、Sg2及び変動入力信号Sg3によって、多くの信号から所定の情報を正確に認識することが可能となる。また、停止指令が第1制御装置CNT1で認識されたときは、停止モード用制御プログラムPgofが起動されるので、誤検出を誘発させる変動出力信号Sg3を排除させ、安定入力信号Sg1、Sg2のみに基づいて所定の情報を正確に認識することが可能となる。
【0070】
更に、停止モード用制御プログラムPgofの停止モード負荷状態認識処理(S102)では、第2の負荷ACT2の負荷状態を停止可能負荷状態と停止禁止負荷状態とに分類させるので、当該第2の負荷ACT2における停止条件が整っているか否かが判別可能となる。
【0071】
併せて、停止モード用制御プログラムPgofの停止モード負荷状態認識処理(S102)では、停止条件が整っていないとき、当該第2の負荷ACT2の負荷状態を他の負荷状態に再設定させ、再設定された負荷状態が停止条件を充足した際に第2の負荷ACT2を停止させるので、停止された第2の負荷ACT2は必ず停止条件を充足させたものとなる。
【0072】
加えて、停止モード用制御プログラムPgofで規定されるセルフシャットオフ処理(S107)は、第2の負荷ACT2が停止された後に実行されるので、第2の負荷ACT2の停止条件が整ってから、第2制御装置ACT2の電源が遮断されることとなる。
【実施例1】
【0073】
図7には、本実施例に適用される四輪駆動車の構成が示されている。図示の如く、四輪駆動車MVは、エンジンEGNとトランスミッションTRMとバッテリーBtrとドライブ装置DRV2と4WD用トランスファーTRFとフロントディファレンシャル(以下、フロントデフと呼ぶ)DFFとリヤディファレンシャル(以下、リヤデフと呼ぶ)DFBとフロントタイヤTFR、TFLとリヤタイヤTBR、TBLと図示されない複数の電子制御処理装置ECU(所謂、electric control unit)とから構成される。尚、同図では、かかる複数の電子制御処理装置ECUのうち、4WD用トランスファーを制御させる電子制御ユニットECU2(特許請求の範囲における第2制御装置)のみが示されている。
【0074】
エンジンEGNは、四輪駆動車のエンジンルームに格納され、化石燃料等をシリンダー内で燃焼させることで駆動トルクを出力させる。
【0075】
トランスミッションTRMは、複数のギヤ比を実現させるギヤボックスを備え、エンジンEGNから出力された駆動トルクを走行状態に合わせて調整させる。
【0076】
バッテリーBtrは、四輪駆動車の適宜なスペースに載置され、種々の装置に電力を供給する。
【0077】
ドライブ装置DRV2は、第1のリレーRYL1及び第2のリレーRYL2から構成され、バッテリーBtrの電力を適宜な設定状態で出力させる。尚、かかるドライブ装置DRV2の構成及び動作については、追って詳述する。
【0078】
4WD用トランスファーTRFは、図示の如く、アクチュエータACTと可変速ハブHUB1と駆動切換ハブHUB2と主動側スプロケットFSPと従動側スプロケットDSPとチェーンCHとセンターデフDFCとフロントドライブシャフトDSFとリヤドライブシャフトDSBとから構成される。
【0079】
アクチュエータACTは、制御モータMとドライビングシャフトSHと駆動テーブルTTとから構成される(図8参照)。ここで、制御モータMは、ドライブ装置DRV2を介して適宜に設定された電力が供給され、これにより、当該電力の状態に応じた動作を実現させる。駆動テーブルTTは、図8に示す如く、制御モータMに接続されたドライビングシャフトSHからトルクを受け、制御モータMの動作に応じて回動する。また、駆動テーブルTTは、可変速ハブHUB1及び駆動切換ハブHUB2に機構的に接続され、駆動テーブルTTの動作に応じて、可変速ハブHUB1及び駆動切換ハブHUB2のポジションを適宜に切換えさせる。
【0080】
可変速ハブHUB1は、車軸の軸心方向へスライドすることで、車軸に設けられた二種類のギヤの何れか一方に噛合わされる。これにより、当該可変速ハブHUB1は、そのポジションに応じてギヤ比が変動し、後段車軸の駆動トルクを二段階に変速させる。ここで、ギヤ比の高い可変速ハブHUB1のポジションをドライビングポジションHと呼び、ギヤ比の低い可変速ハブHUB1のポジションをロードライブポジションLと呼ぶ。
【0081】
駆動切換ハブHUB2は、車軸の軸心方向へスライドすることで、車軸に設けられた複数のギヤとの噛合状態が三段階に切替えられる。具体的には、ハブロックポジション4Lと差動ポジション4Fとフリーハブポジション2Fとに切替えられる。ここで、ハブロックポジション4Lは、センターデフDFCを介さずに、駆動切換ハブHUB2の後段の車軸とリヤドライブシャフトDSBとを直結させ、駆動切換ハブHUB2の後段の車軸のトルクをリヤドライブシャフトDSBへ直接的に伝達させる。差動ポジション4Fは、センターデフDFCを介して、駆動切換ハブHUB2の後段の車軸とリヤドライブシャフトDSBとが間接的に連結され、センターデフDFCの差動機能によって、駆動切換ハブHUB2の後段の車軸回転速度とリヤドライブシャフトDSBの車軸回転速度とに差異を与える。フリーハブポジション2Fは、駆動切換ハブHUB2の後段車軸とリヤドライブシャフトDSBとの接続を断ち、後段の主動側スプロケットFSPのみに駆動トルクを与える。
【0082】
主動側スプロケットFSPは、図示の如く、駆動切換ハブHUB2の後段の車軸に固定される。かかる主動側スプロケットFSPは、駆動切換ハブHUB2のポジションに関わりなく、駆動切換ハブHUB2の後段の車軸から同一の駆動トルクを受ける。
【0083】
従動側スプロケットDSPは、主動側スプロケットFSPと並列に配置され、フロントドライブシャフトDSFに軸着される。また、従動側スプロケットDSPは、チェーンCHによって、主動側スプロケットFSPの駆動トルクを受け、これにより、フロントドライブシャフトDSFへ当該駆動トルクを伝達させる。
【0084】
センターデフDFCは、入力側に主動側スプロケットFSPの後段車軸が接続され出力側にリヤドライブシャフトDSBが接続され、これらの車軸がベアリング(図示なし)によって回動自在に軸支される。そして、センターデフDFCは、入力軸と出力軸との間に回転速度の差を与える差動機能を具備し、当該機能によって、主動側スプロケットFSPから駆動トルクが入力されると、内蔵されるギヤアセンブリのギヤ比に応じて当該駆動トルクを変換し、リヤドライブシャフトDSBへ伝達させる。即ち、センターデフDFCでは、主動側スプロケットFSP後段の車軸の駆動トルクをリヤドライブシャフトDSBへ伝達する際、当該駆動トルクを適宜に調整し、入力された駆動トルクと異なる駆動トルクを出力させる。
【0085】
フロントデフDFFは、フロントドライブシャフトDSF、右フロントタイヤTFR及び左フロントタイヤTFLの車輪軸に接続される。そして、フロントドライブシャフトDSFから受けた駆動トルクを適宜に分配し、かかる如く分配された駆動トルクを各フロントタイヤTFR、TFLに伝達させる。
【0086】
リヤデフDFBは、リヤドライブシャフトDSB、右リヤタイヤTBR及び左リヤタイヤTBLの車輪軸に接続され、駆動トルクを双方のリヤタイヤTBR、TBLへ分配伝達させる。
【0087】
電子制御ユニットECU2は、信号ラインを介してドライブ装置DRV2に接続される。そして、電子制御装置ECU2は、ドライブ装置DRV2を制御し、アクチュエータACTに設けられた制御モータMを適宜に駆動させる。尚、かかる電子制御ユニットECU2の詳細については追って詳述する。
【0088】
かかる構成を具備する四輪駆動車MVでは、トランスミッションTRMを介してエンジンEGNから駆動トルクが伝達され、当該駆動トルクが4WD用トランスファーTRFに入力される。このとき、アクチュエータACTは、電子制御ユニットECU2及びドライブ装置DRV2によって制御され、可変速ハブHUB1のポジションと駆動切換ハブHUB2のポジションとを各々切換させ、これにより、4WD用トランスファーTRFでは、以下の動作を実現させる。
【0089】
先ず、可変速ハブHUB1のポジションがドライビングポジションHとされ、且つ、駆動切換ハブHUB2のポジションがフリーハブポジション2Fとされる場合、所謂、二輪ドライビングポジションNに設定される場合について説明する。かかる場合、四輪駆動車MVでは、可変速ハブHUB1のポジションがドライビングポジションHにセットされるので、高速のドライブモードにて駆動されることとなる。また、駆動切換ハブHUB2のポジションがフリーハブポジション2Fにセットされるので、リヤドライブシャフトDFBから切り離され、フロンドドライブシャフトDSFのみに駆動トルクが伝達され、フロントタイヤTFR、TFLのみを駆動させる。即ち、かかる場合、四輪駆動車MVは、駆動切換ハブHUB2のポジションによって、前輪駆動による走行を行うこととなる。
【0090】
次に、可変速ハブHUB1のポジションがドライビングポジションHとされ、且つ、駆動切換ハブHUB2のポジションが差動ポジション4Fとされる場合、所謂、四輪ドライビングポジション4HFに設定される場合について説明する。かかる場合、四輪駆動車MVでは、可変速ハブHUB1がドライビングポジションHとされるので高速ドライブモードにて駆動される。また、駆動切換ハブHUB2のポジションが差動ポジション4Fとされるので、リヤドライブシャフトDFBとフロントドライブシャフトDSFとが間接的に連結され、これにより、駆動切換ハブHUB2から出力される駆動トルクが双方のドライブシャフトへ差動的に分配される。即ち、かかる場合、四輪駆動車MVは、フロントタイヤTFR,TFLとリヤタイヤTBR,TBLとの間に差動を伴いつつ、四輪駆動状態にて走行を行うこととなる。
【0091】
更に、可変速ハブHUB1のポジションがドライビングポジションHとされ、且つ、駆動切換ハブHUB2のポジションがハブロックポジション4Lとされる場合、所謂、直結型高速四輪ドライビングポジション4HLに設定される場合について説明する。かかる場合、四輪駆動車MVでは、可変速ハブHUB1がドライビングポジションHとされるので高速ドライブモードにて駆動される。また、駆動切換ハブHUB2のポジションがハブロックポジション4Lとされるので、リヤドライブシャフトDFBとフロントドライブシャフトDSFとが直結される。即ち、かかる場合、四輪駆動車MVは、フロントタイヤTFR,TFLとリヤタイヤTBR,TBLとの双方に共通の駆動トルクを与える四輪駆動に切換えられ、高速状態にて走行を行うこととなる。
【0092】
更に、可変速ハブHUB1のポジションがロードライブポジションLとされ、且つ、駆動切換ハブHUB2のポジションがハブロックポジション4Lとされる場合、所謂、直結型低速四輪ドライビングポジション4LLに設定される場合について説明する。かかる場合、四輪駆動車MVでは、可変速ハブHUB1がロードライブポジションLとされるので低速ドライブモードにて駆動される。また、駆動切換ハブHUB2のポジションがハブロックポジション4Lとされるので、リヤドライブシャフトDFBとフロントドライブシャフトDSFとが直結される。即ち、かかる場合、四輪駆動車MVは、フロントタイヤTFR,TFLとリヤタイヤTBR,TBLとの双方に共通の駆動トルクを与える四輪駆動とされ、低速状態に切替えられて走行を行うこととなる。
【0093】
図8に示す如く、本実施例に係る制御システムSYS2は、電子制御機構Ap1と電子制御機構Ap2との少なくとも二つの機構から電子制御機構から構成されている。このうち電子制御機構Ap2は、バッテリー電源Brtとドライブ装置DRV2と制御モータACT2と駆動切換スイッチTSWと電子制御ユニットECU2と定電圧回路Reg2と通信ラインSTとから構成されている。図示の如く、電子制御ユニットECU1及び電子制御ユニットECU2を含む複数の制御装置の各々は、自動車に搭載された装置の制御を実現させる電子制御処理装置である。以下、かかる電子制御処理装置を車載用制御システムと呼ぶ。尚、電子制御機構Ap2を、以下、モータ制御装置MCと呼ぶこととする。また、上述した実施の形態と重複する構成部分については、同一の符号を付し、説明を省略することとする。
【0094】
ドライブ装置DRV2は、第1のリレーRYL1及び第2のリレーRYL2を具備し、当該第1のリレーRYL1及び第2のリレーRYL2は、各々が定電圧回路Reg2の入力端子に接続されている。第1のリレーを例にとり具体的に説明すると、当該第1のリレーRYL1には、図示の如く、ON接点とOFF接点と出力端子(以下、第1のリレーに設けられた出力端子を第1出力端子と呼び、第2のリレーに設けられた出力端子を第2出力端子と呼ぶ)とが設けられており、ON接点が定電圧回路Reg2の入力端子に接続され、OFF接点がアースへ接続される。そして、リレーに設けられたスイッチのON/OFF制御による切換動作が実施されると、出力端子がON接点又はOFF接点の何れか一方に導通されることとなる。ここで、リレー装置のON/OFF制御は、電子制御ユニットECU2から出力されるH−L信号によって実現される。尚、第2のリレー回路RYL2にあっても同様の構成とされ、ON接点が定電圧回路Reg2の入力端子に接続され、OFF接点がアースへ接続される。
【0095】
制御モータACT2は、上述の如く、駆動テーブルTTを駆動させる制御モータMを備えている。かかる制御モータMは、第1のリレーRYL1及び第2のリレーRYL2の双方に接続され、第1出力端子Tmfから出力される第1出力電圧V1と第2出力端子Tmsから出力される第2出力電圧V2とに応じて、正転動作又は反転動作又は停止状態に駆動制御される。
【0096】
駆動切換スイッチTSWは、四輪駆動車の操縦パネルに配置されるものであって、図示の如く、ダイヤル機構と複数の信号ラインとを備え、ダイヤル部のポジションに応じて適宜な信号を出力させる構成とされている。ダイヤル機構は、手動によって回動されるダイヤル部と当該ダイヤル部の周りに固定される表示部とから成る。当該表示部の表面には、二輪ドライビングポジションN、四輪ドライビングポジション4HF、直結型高速四輪ドライビングポジション4HL、直結型低速四輪ドライビングポジション4LLがそれぞれ刻印されており、当該表示部の裏面には、これらのドライビングポジションに対応する接触端子が設けられている。一方、ダイヤル部は、表面にダイヤル部の方向を示す方向矢が示されており、裏面には方向矢の位置に応じてスライドするスライド端子が設けられている。ここで、ダイヤル部を回動させると、スライド端子は表示部の接触端子に当接し、所定の電力が信号として信号ラインから出力される。従って、ダイヤル部の方向矢が所定のドライビングポジションにセットされると、駆動切換スイッチTSWに設けられた複数の信号ラインでは信号状態がHigh値又はLow値に各々設定され、かかる信号状態の組合せから成る信号を所定のドライビングポジションに対応させて出力させる。即ち、操縦者が操縦席でドライビングポジションの操作を行うと、駆動切換スイッチTSWでは、操縦者の指令に応じて当該ドライビングポジションに応じた信号を生成し、当該信号を第2制御装置CNT2に対して出力させる。
【0097】
電子制御ユニットECU2は、図示の如く、A/D変換装置と記憶装置MRYと中央演算装置(Central
Processing Unit)CPUとクロック回路CLとを少なくとも備えるコンピュータを具備する。A/D変換装置は、信号ラインLi1及びLi2を介して入力される安定入力信号Sg1及びSg2と信号ラインLi3を介して入力される変動入力信号Sg3が入力され、それぞれの信号をクロックタイミング毎にデジタル値に変換させる。
【0098】
通信ラインSTは、他の装置に設けられたECUに接続される。かかる通信ラインは、故障状態又はエラー状態等を他のECUと共有させる信号ラインであって、シリアル通信ライン、CAN通信ライン(Controller Area Network)、LIN通信ライン(Local
Interconnect Network)、この他、適宜な通信ラインが適用される。
【0099】
図9には、電子制御ユニットECU2へ入力される信号の組合せが示されている。図示の如く、電子制御ユニットECU2には、安定型信号ラインLi1を介して安定入力信号Sg1が入力され、安定型信号ラインLi2を介して安定入力信号Sg2が入力され、変動型信号ラインLi3を介して変動入力信号Sg3が入力される。そして、これらの信号Sg1〜Sg3は、各々の信号のHigh/Low状態によって、制御モータMの状態を表現している。具体的に説明すると、電子制御ユニットECU2で認識され得る制御モータMの負荷状態は、図示の如く、4HL、中間ポジション1、N、中間ポジション2、4HL、中間ポジション3、4LLの7類型に分類される。かかる制御モータMの負荷状態は、ドライビングシャフトSHに接続される制御モータMの駆動軸の回転角によって変化する。具体的に説明すると、本実施例に係る制御モータMの駆動軸は、基準アングルから末端アングルまでの回動範囲、即ち、0°〜250°の範囲を回動する。そして、制御モータMの駆動軸が0°〜25°の回動範囲に位置する場合、制御モータMの負荷状態は4HLとされる。また、制御モータMの駆動軸が25°〜75°の回動範囲に位置する場合、制御モータMの負荷状態は中間ポジション1とされる。また、制御モータMの駆動軸が75°〜100°の回動範囲に位置する場合、制御モータMの負荷状態はNとされる。また、制御モータMの駆動軸が100°〜150°の回動範囲に位置する場合、制御モータMの負荷状態は中間ポジション2とされる。また、制御モータMの駆動軸が150°〜175°の回動範囲に位置する場合、制御モータMの負荷状態は4HFとされる。また、制御モータMの駆動軸が175°〜225°の回動範囲に位置する場合、制御モータMの負荷状態は中間ポジション3とされる。また、制御モータMの駆動軸が225°〜250°の回動範囲に位置する場合、制御モータMの負荷状態は4LLとされる。ここで、中間ポジション1、中間ポジション2、中間ポジション3は、トランスファーTRFに設けられたハブHUB1、HUB2の何れかが切替途中のポジションとされるため、かかるポジションで長時間放置されるのは好ましくなく、上述した実施の形態における停止禁止負荷状態に該当する。一方、4HL、N、4HF、4LLは、両方のハブがトランスファーTRF内のギヤに噛み合わさっているので、実施の形態における停止許容負荷状態に該当する。
【0100】
安定出力信号Sg1は、電子制御ユニットECU1の電源Va1が供給されなくても出力値に影響を受けない信号であって、駆動軸のアングルに応じて出力値がVradに示すように線形的に変動する信号である。具体的に説明すると、センサSEN1には、制御モータMの駆動軸が回動すると安定出力信号Sg1の出力値を変動させる回路が形成されており、当該駆動軸の回動範囲が0°〜25°のとき、安定出力信号Sg1の出力値を4.0V〜3.7V(以下、この範囲の出力値をVaと呼ぶ)に設定させ、当該駆動軸の回動範囲が75°〜100°のとき、安定出力信号Sg1の出力値を3.0V〜2.7V(以下、この範囲の出力値をVbと呼ぶ)に設定させ、当該駆動軸の回動範囲が150°〜175°のとき、安定出力信号Sg1の出力値を2.0V〜1.7V(以下、この範囲の出力値をVcと呼ぶ)に設定させ、当該駆動軸の回動範囲が225°〜250°のとき、安定出力信号Sg1の出力値を1.0V〜0.7V(以下、この範囲の出力値をVdと呼ぶ)に設定させる。尚、安定出力信号Sg1は、電源Va2によってプルアップされている。
【0101】
安定出力信号Sg2は、電子制御ユニットECU1の電源Va1が供給されなくても出力値に影響を受けない信号であって、H/Lの2値化された信号である。具体的に説明すると、駆動軸の回動範囲が0°〜25°のとき、安定出力信号Sg2がHigh状態に設定され、駆動軸の回動範囲が25°〜225°のとき、安定出力信号Sg2がLow状態に設定され、駆動軸の回動範囲が225°〜250°のとき、安定出力信号Sg2が再びHigh状態に設定される。尚、安定出力信号Sg2は、電源Va2によってプルアップされている。
【0102】
変動出力信号Sg3は、電子制御ユニットECU1の電源Va1が供給されなくなると出力値に影響を受ける信号であって、H/Lの2値化された信号である。具体的に説明すると、駆動軸の回動範囲が0°〜100°のとき、電子制御ユニットECU1の電源Va1が供給されていると、変動出力信号Sg3がLow状態に設定され、駆動軸の回動範囲が0°〜100°のとき、電子制御ユニットECU1の電源Va1が供給されなくなると、変動出力信号Sg3がHigh状態に変動し、駆動軸の回動範囲が100°〜250°のとき、電源Va1の供給状態に関わりなく、変動出力信号Sg3がLow状態に設定さる。尚、安定出力信号Sg3は、電源Va1によってプルアップされている。
【0103】
よって、本実施例によれば、電子制御ユニットECU1の電源Va1が供給されている間は、負荷状態が4HLとされるとき、電子制御ユニットECU2へ入力される信号は(Sg1、Sg2,Sg3)=(Va、H、L)とされる。また、負荷状態がNとされるとき、電子制御ユニットECU2へ入力される信号は(Sg1、Sg2,Sg3)=(Vb、L、H)とされる。同様に、負荷状態が4HFとされるとき、(Sg1、Sg2,Sg3)=(Vc、L、L)とされ、負荷状態が4LLとされるとき、(Sg1、Sg2,Sg3)=(Vd、H、L)とされる。
【0104】
一方、電子制御ユニットECU1の電源Va1が供給されなくなると、図示の如く、負荷状態が4HLとされるとき、変動入力信号Sg3がLow状態からHigh状態に切換わってしまうため、(Sg1、Sg2,Sg3)=(Va、H、H)となってしまう。また、負荷状態がNとされるとき、変動入力信号Sg3がLow状態からHigh状態に切換わってしまうため、(Sg1、Sg2,Sg3)=(Vb、L、H)となってしまう。このとき、負荷状態4HLにおける変動出力信号Sg3の変化後の信号配列を参照すると、認識された信号配列が何れの負荷状態にも該当しないエラーが生じるため、セルフシャットオフ機能を働かせて第2制御装置自身の電源を落とすことができなくなる問題が生じる。かかる問題は、負荷状態Nの場合にも同様に起こり得る。
【0105】
そこで、本実施例にあっても、電子制御ユニットECU2が非停止モード用制御プログラム及び停止モード用制御プログラムを適宜に使い分けることにより、負荷状態4HL〜4LLの正確な検出が実現される。以下、かかるプログラムによって実行される動作処理について説明するが、本実施例に係る動作処理は、実施の形態における図4乃至図6において説明した内容と略同様の内容とされている。そこで、停止モード用プログラムPgofのうち相違点の認められる停止モード負荷状態認識処理(S102)について、説明することとする。
【0106】
自動車の操縦者によってイグニッションキーがOFFに切替えられると、停止モード用制御プログラムPgofが起動され、かかるプログラムで規定される停止モード負荷状態認識処理(S102)では、図10に示す如く、電子制御ユニットECU2に対して入力された複数の信号のうち、安定入力信号Sg2のみによって負荷状態の認識を実施する。具体的に説明すると、停止モード負荷状態認識処理(S102)では、安定入力信号Sg2を当該電子制御ユニットECU2に認識させ、2値化された安定入力信号Sg2のH/L判定を実施させる(S102a)。ここで、安定入力信号Sg2がHigh状態であると認識された場合、安定入力信号Sg1の数値判定を更に実施させ(S102b)、安定入力信号(Sg1、Sg2)=(Va、H)とされるとき、制御モータMの負荷状態が4HLであると認識する処理を行い(S102c)、一方、安定入力信号(Sg1、Sg2)=(Vd、H)とされるとき、制御モータMの負荷状態が4LLであると認識する処理を行う(S102d)。これに対し、安定入力信号Sg2のH/L判定結果がLow状態であると認識された場合(S102a)、安定入力信号Sg1の数値判定を更に実施させる(S102e)。そして、安定入力信号(Sg1、Sg2)=(Vb、L)とされるとき、制御モータMの負荷状態がNであると認識する処理を行い(S102f)、一方、安定入力信号(Sg1、Sg2)=(Vc、L)とされるとき、制御モータMの負荷状態が4HFであると認識する処理を行う(S102g)。また、制御モータMの負荷状態がこれらの何れにも該当しない場合、中間ポジション1〜中間ポジション3の何れかであると認識される。即ち、停止モード負荷状態認識処理(S102)では、第1制御装置の動作に応じて変動する変動入力信号Sg3を用いずに、安定入力信号(Sg1、Sg2)のみによって、第2の負荷ACT2の負荷状態Stateを認識させる。従って、負荷状態の認識に用いられる信号は、全てが正しい出力値とされる信号であるので、第2制御装置CNT2では、負荷状態の誤認識を生じることなく、正確な負荷状態の認識が実現される。
【0107】
上述の如く、負荷状態が認識されると(S102c、S102d、S102e、S102f、S102g)、停止モード負荷状態認識処理(S102)では、負荷状態分類処理(S102i)を実行させ、第2の負荷ACT2の駆動停止を許可させる停止可能負荷状態と、第2の負荷ACT2の駆動停止を禁止させる停止禁止負荷状態とに分類させる処理を実行させる。
【0108】
本実施例の車載用制御システムSYS2によれば、ハブHUB1又はHUB2の切換動作中にイグニッションキーがOFFされて電源の一部が供給されなくなっても、正規の出力状態を維持している安定出力信号Sg1及びSg2に基づいてハブHUB1又はHUB2のポジションが正確に把握されるので、ハブHUB1又はHUB2がトランスファーTRFのギヤから外れた状態で車載用制御システムSYS2の電源が切られることを防止できる。これにより、車載用制御システムSYS2は、各ハブが何れかのギヤに噛合わされてから電源が落とされるので、次回にイグニッションキーを回した際、内燃機関から供給された駆動トルクを何れかの駆動輪に伝達できる状態が確保される。
【符号の説明】
【0109】
SYS1 制御システム
CNT1 第1制御装置
ACT1 第1の負荷
CNT2 第2制御装置
ACT2 第2の負荷
Li2c 変動型信号ライン
Sg3 変動入力信号
Li2a 安定型信号ライン
Sg1 安定入力信号
Li2b 安定型信号ライン
Sg2 安定入力信号
RYLs リレー手段
MRY 記憶装置
CPU 中央演算装置
Pgon 非停止モード用制御プログラム
Pgof 停止モード用制御プログラム State1 停止禁止負荷状態
State2 停止可能負荷状態 State3 停止禁止負荷状態 State4 停止可能負荷状態
S002 非停止モード負荷状態認識処理
S102 停止モード負荷状態認識処理
S107 セルフシャットオフ処理
SYS2 車載用制御システム
ECU1 電子制御処理装置
ECU2 電子制御処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の負荷を駆動制御させる第1制御装置と、前記第1制御装置を除く他の制御装置のうち第2の負荷を駆動制御させる第2制御装置と、前記第2の負荷及び前記第2制御装置を電気的に接続させる複数の信号ラインのうち前記第1制御装置に供給される電源が当該第1制御装置によって遮断されると信号の出力値が低下されてしまう少なくとも一つの変動型信号ラインと、前記複数の信号ラインのうち前記第1制御装置に供給される電源が当該第1制御装置によって遮断されても信号の出力値が変動されない少なくとも一つの安定型信号ラインとを備える制御システムにおいて、
前記第2制御装置は、プログラムを格納させる記憶装置と前記プログラムで規定された動作処理を実現させる中央演算装置とを少なくとも備えるコンピュータを具備し、
前記記憶装置は、前記変動型信号ラインを介して入力される変動入力信号と前記安定型信号ラインを介して入力される安定入力信号とに基づき前記第2の負荷を制御させる非停止モード用制御プログラムと、前記変動入力信号を用いることなく前記安定入力信号に基づいて前記第2の負荷を制御させる停止モード用制御プログラムとが格納されていることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記非停止モード用制御プログラムは、当該制御システムを停止させる停止指令が前記第1制御装置にて認識されていない際に、当該非停止モード用制御プログラムで規定された動作を前記中央演算装置に対して演算処理させることを規定し、
前記停止モード用制御プログラムは、前記停止指令が前記第1制御装置にて認識された際に、当該停止モード用制御プログラムで規定された動作が前記中央演算装置に対して演算処理させることを規定している請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記非停止モード用制御プログラムは、前記変動入力信号と前記安定入力信号とに基づき、前記第2の負荷の駆動状態又は前記第2の負荷の停止状態を認識させる非停止モード負荷状態認識処理を規定し、
前記停止モード用制御プログラムは、前記変動入力信号を用いることなく前記安定入力信号に基づき、前記第2の負荷の駆動状態又は前記第2の負荷の停止状態を認識させる停止モード負荷状態認識処理を規定していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記停止モード負荷状態認識処理は、前記第2の負荷の駆動停止を許可させる停止可能負荷状態と、前記第2の負荷の駆動停止を禁止させる停止禁止負荷状態と、から成る少なくとも二種類の負荷状態に分類させる処理を実行させることを特徴とする請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記停止モード用制御プログラムは、前記第2の負荷が駆動中の場合に、前記第2の負荷の駆動動作を続行させる負荷駆動処理及び/又は前記第2の負荷の停止動作を実行させる負荷停止処理を、前記停止モード負荷状態認識処理にて分類された前記負荷状態に基づいて規定させることを特徴とする請求項4に記載の制御システム。
【請求項6】
前記停止モード用制御プログラムは、更に、前記第2制御装置に供給される電源を遮断させるセルフシャット処理を規定しており、
前記セルフシャット処理は、前記第2の負荷が停止された後に実行されることを特徴とする請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の制御システムは、前記第1制御装置及び前記第2制御装置を含む複数の制御装置の各々が、自動車に搭載された装置の制御を実現させる電子制御処理装置であることを特徴とする車載用制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−134026(P2011−134026A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291661(P2009−291661)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】