説明

制御プログラム及び画像形成装置並びに印刷制御方法

【課題】秘密情報の漏洩を確実に防止することができる制御プログラム及び画像形成装置並びに印刷制御方法の提供。
【解決手段】画像形成装置に、ハードウェア又はソフトウェアとして、秘密情報を含む元文書データと隠蔽位置を示す指定位置情報と秘密情報の公開範囲を示す公開範囲情報とを関連付けて保存する保存制御部と、元文書の印刷を指示するユーザが元文書データに関連付けられた公開範囲情報で規定される公開範囲に合致するかを判断する認証部と、公開範囲に合致するユーザが印刷を指示した場合は、1部又は認証されたユーザ分の元文書を印刷すると共に残りの部数は元文書の指定位置を塗り潰した加工文書を印刷し、公開範囲に合致しないユーザが印刷を指示した場合は、全部数、加工文書を印刷する出力制御部とを設け、元文書が閲覧権限のないユーザに配布されないようにして秘密情報の漏洩を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御プログラム及び画像形成装置並びに印刷制御方法に関し、特に、秘密情報を含む文書の印刷を制御する制御プログラム及び画像形成装置並びに印刷制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機能やファクシミリ機能、プリンタ機能、スキャナ機能などを備える複写機や複合機(MFP:Multi Function Peripheral)など(以下、これらを総称して画像形成装置と呼ぶ。)が普及しており、会社などで広く利用されている。この画像形成装置で印刷される文書には、全てのユーザが閲覧可能な文書もあれば、特定のユーザのみが閲覧可能な秘密情報を含む文書もあり、後者の文書を印刷する場合には秘密情報が漏洩しないように印刷を制御する必要がある。
【0003】
上記印刷制御に関して、例えば、下記特許文献1には、ユーザの識別IDを入力し、画像上で複写禁止領域を指定する指定情報を入力すると、その画像上に、その入力された識別IDに対応付けて複写禁止領域を設定し、その複写禁止領域を識別可能に表示し、そして、その複写禁止領域に複写禁止マークを合成した画像データを生成して出力する画像形成方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−32487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の方法では、入力された識別IDが、その複写禁止領域に対応して登録されているIDと一致すると、元の原稿画像に複写禁止マークが付与された画像を印刷するように制御し、入力された識別IDが登録されているIDと一致しない場合は、その画像を印刷しない、或いは、その複写禁止領域を除いた画像だけを印刷するように制御するため、認証されないユーザに対して複写禁止領域に記録された情報が開示されないようにすることができる。
【0006】
しかしながら、この方法は、あくまでも画像形成装置をユーザと1:1の関係で使用するものであり、ユーザが他人の配布のために複数部出力するという思想がないため、認証されたユーザは複写禁止領域に複写禁止マークが付与された画像を何枚でも印刷することができ、印刷物を閲覧権限のないユーザに配布してしまった場合には、秘密情報の漏洩を防止することができないという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、秘密情報の漏洩を確実に防止することができる制御プログラム及び画像形成装置並びに印刷制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の制御プログラムは、コンピュータを、秘密情報を含む第1の文書の印刷を指示するユーザの識別情報に基づいて、前記ユーザが、予め定められた前記秘密情報の公開範囲に合致するかを判断する認証部、前記ユーザが前記公開範囲に合致する場合は、少なくとも1部、前記第1の文書を印刷させ、前記ユーザが前記公開範囲に合致しない場合は、全部数、前記第1の文書の指定位置を隠蔽した第2の文書を印刷させる出力制御部、として機能させるものである。
【0009】
また、本発明の制御プログラムは、コンピュータを、秘密情報を含む第1の文書の文書データと前記第1の文書中の隠蔽する位置を示す指定位置情報と前記秘密情報の公開範囲を示す公開範囲情報とを関連付けて保存する保存制御部、前記第1の文書の印刷を指示するユーザの識別情報に基づいて、前記ユーザが前記第1の文書の文書データに関連付けられた前記公開範囲情報で規定される公開範囲に合致するかを判断する認証部、前記ユーザが前記公開範囲に合致する場合は、少なくとも1部、前記第1の文書を印刷させ、前記ユーザが前記公開範囲に合致しない場合は、全部数、前記第1の文書の前記指定位置を隠蔽した第2の文書を印刷させる出力制御部、として機能させるものである。
【0010】
本発明においては、複数部の印刷が指示された場合において、前記認証部は、前記ユーザが入力した、前記第1の文書を利用する他のユーザの識別情報に基づいて、前記他のユーザが前記公開範囲に合致するかを判断し、前記出力制御部は、前記ユーザが前記公開範囲に合致する場合は、前記公開範囲に合致するユーザ分の前記第1の文書を印刷させると共に、残りの部数は前記第2の文書を印刷させる構成とすることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記出力制御部は、前記第1の文書を印刷させる場合に、前記指定位置に記録された情報を識別可能に印刷させる構成とすることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記出力制御部は、前記第2の文書を印刷させる場合に、隠蔽した前記指定位置に前記公開範囲を識別可能に印刷させる構成とすることができる。
【0013】
また、本発明の画像形成装置は、秘密情報を含む第1の文書を表示する表示部と、前記第1の文書中の隠蔽位置の指定、及び、前記秘密情報の公開範囲の設定を可能にする操作部と、前記第1の文書の文書データと前記隠蔽位置を示す指定位置情報と前記公開範囲を示す公開範囲情報とを関連付けて保存する保存制御部と、前記第1の文書の印刷を指示するユーザの識別情報に基づいて、前記ユーザが前記第1の文書の文書データに関連付けられた前記公開範囲情報で規定される公開範囲に合致するかを判断する認証部と、前記ユーザが前記公開範囲に合致する場合は、少なくとも1部、前記第1の文書を印刷させ、前記ユーザが前記公開範囲に合致しない場合は、全部数、前記第1の文書の前記指定位置を隠蔽した第2の文書を印刷させる出力制御部と、を少なくとも備えるものである。
【0014】
また、本発明の印刷制御方法は、秘密情報を含む第1の文書を表示する表示ステップと、前記第1の文書中の隠蔽位置が指定され、前記秘密情報の公開範囲が設定されると、前記第1の文書の文書データと設定された前記隠蔽位置を示す指定位置情報と設定された前記公開範囲を示す公開範囲情報とを関連付けて保存する保存ステップと、前記第1の文書の印刷を指示するユーザの識別情報に基づいて、前記ユーザが前記第1の文書の文書データに関連付けられた前記公開範囲情報で規定される公開範囲に合致するかを判断する認証ステップと、前記ユーザが前記公開範囲に合致する場合は、少なくとも1部、前記第1の文書を印刷させ、前記ユーザが前記公開範囲に合致しない場合は、全部数、前記第1の文書の前記指定位置を隠蔽した第2の文書を印刷させる出力ステップと、を少なくとも有するものである。
【0015】
このように、本発明では、公開範囲に合致するユーザが印刷を指示した場合は、所定部数のみ、第1の文書が印刷され、公開範囲に合致しないユーザが印刷を指示した場合は、全部数、第1の文書の指定位置を隠蔽した第2の文書が印刷されるため、秘密情報の漏洩を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の制御プログラム及び画像形成装置並びに印刷制御方法によれば、秘密情報の漏洩を確実に防止することができる。
【0017】
その理由は、秘密情報を含む元文書データと隠蔽位置を指定する指定位置情報と秘密情報の公開範囲を規定する公開範囲情報とが関連付けて保存され、ユーザが元文書の印刷を指示した場合に、該ユーザが元文書データに関連付けられた公開範囲情報で規定される公開範囲に合致するかが判断され、ユーザが公開範囲に合致する場合は、所定部数のみ、元文書が印刷され、ユーザが公開範囲に合致しない場合は、全部数、元文書の指定位置を隠蔽した加工文書が印刷されるからである。
【0018】
また、公開範囲情報に合致するユーザが複数部の印刷を指示し、該ユーザが元文書を利用する他のユーザの認証情報を入力した場合には、認証されたユーザ分の元文書が印刷され、残りの部数は加工文書が印刷されるため、元文書が閲覧権限のないユーザに配布されないようにすることができるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、その好ましい一実施の形態において、画像形成装置に、ハードウェア又はソフトウェアとして、秘密情報を含む元文書データと隠蔽位置を示す指定位置情報と秘密情報の公開範囲を示す公開範囲情報とを関連付けて保存する保存制御部と、元文書の印刷を指示するユーザが元文書データに関連付けられた公開範囲情報で規定される公開範囲に合致するかを判断する認証部と、公開範囲に合致するユーザが印刷を指示した場合は、1部又は認証されたユーザ分の元文書を印刷すると共に残りの部数は元文書の指定位置を塗り潰した加工文書を印刷し、公開範囲に合致しないユーザが印刷を指示した場合は、全部数、加工文書を印刷する出力制御部と、を設ける。このように、公開範囲情報に合致するユーザが印刷を指示した場合であって、1部又は認証されたユーザ分のみ、元文書を印刷することにより、元文書が閲覧権限のないユーザに配布されないようにすることができ、秘密情報の漏洩を確実に防止することができる。
【実施例】
【0020】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の一実施例に係る制御プログラム及び画像形成装置並びに印刷制御方法について、図1乃至図13を参照して説明する。図1乃至図3は、本実施例の印刷制御システムの構成を模式的に示す図である。また、図4は、本実施例の画像形成装置の構成を示すブロック図であり、図5は、画像形成装置の制御部の構成を示すブロック図である。また、図6は、本実施例の印刷制御システムを用いた文書の作成、データの保存手順を示すフローチャート図であり、図7は、本実施例の印刷制御システムを用いた文書の印刷手順を示すフローチャート図である。また、図8は、本実施例の元文書の構成例を示す図であり、図9及び図10は、本実施例の画像形成装置の表示部に表示される画面の構成例を示す図である。また、図11は、本実施例の元文書の印刷例を示す図であり、図12及び図13は、本実施例の加工文書の印刷例を示す図である。
【0021】
図1に示すように、本実施例の印刷制御システムは、閲覧権限を有するユーザに対してのみ公開すべき情報(以下、秘密情報と呼ぶ。)を含む第1の文書(以下、元文書と呼ぶ。)、又は、元文書の指定された位置を隠蔽した第2の文書(以下、加工文書と呼ぶ。)の印刷制御などを行う画像形成装置10で構成される。
【0022】
この画像形成装置10は、図4に示すように、制御部11と、スキャナ部12と、画像処理部13と、プリンタ部14と、ネットワーク接続部15と、記憶部16と、表示部17と、操作部18などを備え、各部はバスにより接続されている。
【0023】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などにより構成される。CPUは、操作部18の操作により、ROMに記憶されている各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って、画像形成装置10の各部の動作を制御する。
【0024】
スキャナ部12は、元文書などの原稿に記録された情報を読み取るものであり、原稿を走査する光源と、原稿で反射された光を電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Devices)と、電気信号をA/D変換するA/D変換器等により構成される。
【0025】
画像処理部13は、スキャナ部12で読み取った画像(以下、スキャン画像と呼ぶ。)に対して、拡大/縮小、回転、周波数変換、RGBデータからYMCKデータへの色変換、階調補正等の各種画像処理を行う。
【0026】
プリンタ部14は、転写紙に印刷する画像を形成する画像形成部、形成した画像を転写紙に転写する転写部、転写した画像を定着させる定着部、転写紙を搬送する搬送部、画像形成部や転写部、定着部をそれぞれクリーニングする個別のクリーニング部などを備え、電子写真方式により、入力されたデータに基づいて、転写紙上に画像を形成して出力する。
【0027】
ネットワーク接続部15は、NIC(Network Interface Card)、モデム、LANアダプタ、ルータ、TA(Terminal Adapter)等により構成され、通信ネットワークを介して接続される機器との通信制御を行う。
【0028】
記憶部16は、フラッシュメモリやハードディスク等により構成され、各種データや設定条件等を記憶する。本実施例では、特に、元文書の文書データ(以下、元文書データと呼ぶ。)、元文書に対してユーザが指定した位置を示す情報(以下、指定位置情報と呼ぶ。)、秘密情報を公開するユーザの範囲(以下、公開範囲と呼ぶ。)を示す情報(以下、公開範囲情報と呼ぶ。)、公開範囲を規定するテーブル、ユーザを認証するためのIDやパスワードなどの認証情報を記憶する。
【0029】
表示部17は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(electroluminescence)表示装置等からなり、制御部11からの表示信号に従って画面上にスキャナ部12で読み取った元文書の隠蔽位置を指定する画面や公開範囲を設定する画面などを表示する。また、操作部18は、操作ボタンやマウス等からなり、表示部17に表示された画面で、元文書に対する隠蔽位置を指定したり、隠蔽位置に記録された情報の公開範囲を設定する操作を可能とする。なお、表示部17と操作部18は別々の装置としても良いし、表示部17上に、透明電極が格子状に配置された感圧式の操作部(タッチパネル)18を設けた一体の装置としてもよく、タッチパネルの場合は、また、手指やタッチペン等で押下された力点のXY座標を電圧値で検出し、検出された位置信号を操作信号として制御部11に出力する。
【0030】
また、制御部11は、画像形成装置10の各部の動作に加えて、図5に示すように、元文書データと指定位置情報と公開範囲情報とを関連付けて所定の保存場所に保存する保存制御部11aと、元文書の印刷を要求するユーザが入力した識別情報に基づいて、該ユーザが元文書データに関連付けられた公開範囲情報で規定される公開範囲に合致するか否かを判定する認証部11bと、該ユーザが公開範囲に合致する場合は、1部又は認証されたユーザ分のみ元文書を印刷し、該ユーザが公開範囲に合致しない場合には、全部数、元文書の指定位置を隠蔽した加工文書を印刷する出力制御部11cとしても機能する。
【0031】
なお、上記認証部11b及び出力制御部11c、又は、保存制御部11a、認証部11b及び出力制御部11cはハードウェアとして構成してもよいし、コンピュータを、認証部11b及び出力制御部11c、又は、保存制御部11a、認証部11b及び出力制御部11cとして機能させる制御プログラムとして構成し、該制御プログラムを制御部11上で動作させる構成としてもよい。
【0032】
また、本実施例では、元文書データと指定位置情報と公開範囲情報とを画像形成装置10の記憶部16に記憶する場合を示すが、例えば、図2に示すように、印刷制御システムを画像形成装置10とサーバ20とがLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)などの通信ネットワークで接続された構成とし、元文書データと指定位置情報と公開範囲情報とをサーバ20などの画像形成装置10以外の場所に保存してもよい。
【0033】
また、元文書の作成や隠蔽する位置の指定、公開範囲の設定、元文書データと指定位置情報と公開範囲情報の保存などはパーソナルコンピュータなどのコンピュータ機器でも実行することができ、その場合は、図3に示すように、印刷制御システムを、画像形成装置10とコンピュータ機器30と必要に応じてサーバ20とが通信ネットワークで接続された構成とし、コンピュータ機器30の制御部にハードウェア又はソフトウェアとして保存制御部を設けることもできる。
【0034】
以下、上記構成の画像形成装置10を用いて元文書データと指定位置情報と公開範囲情報とを保存するまでの手順について、図6のフローチャート図を参照して説明する。
【0035】
まず、ステップS101で、図8に示すような、秘密情報41と公開が制限されない情報(以下、公開情報42と呼ぶ。)とが印刷された元文書40を画像形成装置10にセットし、ユーザが操作部18を操作してスキャンを指示すると、スキャナ部12は、光源で元文書40を走査し、元文書40で反射された光をCCDで受光して電気信号に変換し、その電気信号をA/D変換して元文書40の情報が記録されたスキャン画像を作成し、制御部11は、表示部17に、図9(a)に示すような隠蔽位置指定画面50を表示させる。なお、ここでは元文書40をスキャンする構成としているが、画像形成装置10の記憶部16に予め記憶された元文書データや通信ネットワークを介して受信した元文書データを表示部17に表示させる構成としてもよい。また、コンピュータ機器30を含む印刷制御システムの場合はコンピュータ機器30で元文書データを作成してもよい。
【0036】
次に、ステップS102で、ユーザは操作部18を操作して隠蔽位置を指定する。この隠蔽位置の指定方法は特に限定されず、範囲を指定してもよいし、文書の始点と終点を指定してもよいし、座標を入力してもよい。また、隠蔽位置は一つでもよいし複数でもよい。
【0037】
次に、ステップS103で、制御部11は、操作部18で指定された隠蔽位置を表示部17に判別可能に表示させる。この表示方法も任意であり、図9(b)に示すように、指定された隠蔽位置を枠で囲んで表示してもよいし、色を変えて表示してもよいし、網掛け等の装飾を付加して表示してもよい。
【0038】
次に、ステップS104で、制御部11は、操作部18からの情報に基づいて、隠蔽位置を示す指定位置情報を取得する。なお、指定位置情報は、範囲を指定した場合は角部の座標(矩形状の範囲の場合は対角の座標)とし、文書の始点と終点を指定した場合は始点と終点の座標とすることができる。
【0039】
次に、ステップS105で、隠蔽位置の指定が終了したら、ステップS106で、制御部11は、表示部17に公開範囲設定画面を表示させる。この公開範囲設定画面は、秘密情報を公開するユーザの範囲を規定するための画面であり、その構成は特に限定されないが、例えば、図10(a)に示すように役職などのグループで区分された公開範囲を選択可能に表示してもよいし、図10(b)に示すように秘密情報の閲覧を許可するユーザを個別に選択可能に表示してもよいし、これらを組み合わせてもよい。そして、ユーザは操作部18を操作して、所望のチェックボックスをチェックするなどして公開範囲を設定する。その際、全ての指定位置に対して同じ公開範囲を設定してもよいし、個々の指定位置に対して異なる公開範囲を設定してもよい。
【0040】
次に、ステップS107で、制御部11は、操作部18からの情報に基づいて、設定された公開範囲情報を取得する。なお、公開範囲が常に一定の場合は公開範囲の指定は省略することができる。
【0041】
そして、ステップS108で、保存制御部11aは、ステップS101で取得した元文書データとステップS104で取得した指定位置情報とステップS107で取得した公開範囲情報とを関連付けて記憶部16などに記憶する。なお、ここでは画像形成装置10の記憶部16に元文書データと指定位置情報と公開範囲情報とを記憶する構成としたが、例えば、図2に示す印刷制御システムの場合は、これらのデータをサーバ20に記憶してもよい。また、図3に示す印刷制御システムの場合は、元文書データの作成、隠蔽位置の指定、公開範囲の設定、これらのデータの保存をコンピュータ機器30で行ってもよい。
【0042】
次に、画像形成装置10を用いて文書を印刷する手順について、図7のフローチャート図を参照して説明する。
【0043】
まず、ステップS201で、ユーザは、操作部18を操作して元文書データと指定位置情報と公開範囲情報とが関連付けて保存された場所(ここでは記憶部16)にアクセスし、ユーザIDやパスワードなどの認証情報を入力する。
【0044】
次に、ステップS202で、認証部11bは、記憶部16に予め記憶されたIDやパスワードと入力されたIDやパスワードとを比較することによってユーザを認証する。なお、ユーザの認証方法は任意であり、IDがRFID(Radio Frequency Identification)タグに記録されたICカードを画像形成装置10に予め設けられたRFIDリーダにかざして認証したり、ユーザの指紋を読み取って認証するなどの方法を用いることもできる。
【0045】
次に、ステップS203で、認証部11bは、保存場所から元文書データに関連付けて記憶された公開範囲情報を取得し、ステップS204で、記憶部16に予め記憶されたテーブルなどを参照して、認証したユーザが公開範囲情報で規定される公開範囲に合致するか否かを判断する。
【0046】
そして、ユーザが秘密情報の公開範囲に合致する場合(例えば、公開範囲が課長以上でユーザが課長、部長の場合)は、ステップS205で、出力制御部11cは、保存場所から元文書データを読み出し、その元文書データを表示部17に表示させる。
【0047】
次に、ユーザは表示された元文書データを確認し、印刷するか否かを指示し、ステップS206で、印刷が指示された場合は、ステップS207で、制御部11は印刷設定画面などを表示部17に表示させてユーザが入力した印刷部数(総印刷部数と呼ぶ。)を確認し、ステップS208で、制御部11は総印刷部数が複数であるか否かを判断する。
【0048】
そして、総印刷部数が1部の場合は、ステップS209で、出力制御部11cは元文書データをプリンタ部14に送り、プリンタ部14に元文書40を印刷させる。この元文書40の印刷形態は特に限定されず、図11(a)に示すように、スキャン画像をそのまま印刷してもよいし、記憶部16から指定位置情報を読み出し、図11(b)に示すように、指定位置を塗り潰すと共に指定位置に記録された情報を抜き文字で印刷し、どの部分が指定位置かが分かるように印刷してもよい。なお、指定位置及び指定位置に記録された情報が識別可能であれば、塗り潰しの色や抜き文字の色は任意である。また、指定位置を塗り潰す代わりに、指定位置に記録された情報の色を変えたり、指定位置を枠で囲む構成などとすることもできる。
【0049】
一方、ステップS207で総印刷部数が複数の場合は、指示された部数の元文書40を印刷すると、閲覧権限のないユーザに元文書40が配布されてしまう恐れがあることから、本実施例では、出力制御部11cは、総印刷部数が複数の場合であっても、1部のみ元文書40を印刷し、残りの部数は後述する加工文書を印刷するか、若しくは、元文書40を閲覧権限のある他のユーザに配布する場合を考慮して、認証されたユーザ分の元文書40を印刷し、残りの部数は加工文書を印刷するように制御する。
【0050】
後者の場合を具体的に説明すると、ステップS210で、制御部11は印刷設定画面などを表示部17に表示させてユーザが入力した元文書40の印刷部数(元文書印刷部数と呼ぶ。)を確認し、元文書印刷部数が2部以上の場合は元文書40を利用する他のユーザの認証情報の入力を求め、認証部11bは、記憶部16に予め記憶された認証情報と入力された認証情報とを比較することによって他のユーザが公開範囲に合致するかを判断する。例えば、元文書印刷部数が3部の場合は、元文書40は印刷を指示するユーザ以外の他の2人のユーザに利用されることから、他の2人のユーザの認証情報の入力を求め、その2人のユーザが公開範囲に合致するかを判断する。
【0051】
次に、ステップS211で、出力制御部11cは、元文書印刷部数が総印刷部数よりも少ない場合は、記憶部16から指定位置情報を読み出し、その指定位置情報に基づいて、図12(a)に示すように、元文書40中の指定位置を黒色などの所定の色で塗り潰した加工文書データを作成し、ステップS212で、この加工文書データをプリンタ部14に送り、認証されたユーザ分の元文書40をプリンタ部14に印刷させると共に、残りの部数は加工文書43を印刷させる。例えば、総印刷部数がN部で、認証されたユーザ(印刷を指示するユーザと元文書40を利用する他のユーザの合計)がn人(認証情報を入力した全てのユーザが認証された場合は元文書印刷部数と同じ。)の場合は、n部の元文書40を印刷し、N−n部の加工文書43を印刷する。
【0052】
なお、認証されたユーザの人数が総印刷部数と等しい場合は加工文書43を作成する必要がないため、ステップS211を省略することができる。また、加工文書43は図12(a)の構成に限定されず、例えば、隠蔽部44を紙と同じ色で塗り潰したり、図12(b)に示すように、隠蔽部44に対応する情報を削除して何も印刷されないようにすることもできる。
【0053】
また、単に隠蔽部44を塗り潰したり、隠蔽部44に何も印刷されないようにしただけでは、加工文書43を見たユーザは、自身がその秘密情報を閲覧する権限があるか否かが分からないため、出力制御部11cは、記憶部16から公開範囲情報を読み出し、例えば、図13(a)に示すように、隠蔽部44に公開範囲情報45を視認可能に(例えば、塗り潰した色とは異なる色や白抜きで)印刷することもできる。その場合に、図13(b)に示すように、隠蔽部44毎に異なる公開範囲情報45を印刷することもできる。
【0054】
一方、ステップS204で、印刷を指示するユーザが公開範囲に合致しない場合(例えば、公開範囲が課長以上でユーザが係長の場合)は、ステップS213で、出力制御部11cは、記憶部16から指定位置情報を読み出し、その指定位置情報に基づいて、元文書40中の指定位置を黒色などの所定の色で塗り潰した加工文書データを作成し、その加工文書データを表示部17に表示させる。
【0055】
次に、ユーザは表示された加工文書を印刷するか否かを指示し、ステップS214で、印刷が指示された場合は、ステップS215で、制御部11は印刷設定画面などを表示部17に表示させてユーザが入力した総印刷部数を確認し、ステップS216で、出力制御部11cは、その総印刷部数の加工文書43をプリンタ部14に印刷させる。
【0056】
このように、元文書データと指定位置情報と公開範囲情報とが関連付けて保存され、元文書の印刷を指示するユーザが公開範囲に合致する場合は、1部又は認証されたユーザ分の元文書40を印刷すると共に残りの部数は加工文書43を印刷し、ユーザが公開範囲に合致しない場合は、全部数、加工文書43を印刷する制御を行うため、元文書40が閲覧権限のないユーザに配布されないようにして、秘密情報の漏洩を確実に防止することができる。
【0057】
なお、上記実施例では、画像形成装置10でユーザの認証、元文書40又は加工文書43の印刷制御を行う構成としたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、コンピュータ機器30でユーザの認証を行い、元文書40又は加工文書43が印刷されるように画像形成装置10を制御する構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、秘密情報を含む文書の作成、保存、印刷を制御する機能を備える制御プログラム、該機能を備える画像形成装置及び印刷制御方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例に係る印刷制御システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係る印刷制御システムの他の構成を模式的に示す図である。
【図3】本発明の一実施例に係る印刷制御システムの他の構成を模式的に示す図である。
【図4】本発明の一実施例に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施例に係る画像形成装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施例に係る印刷制御システムを用いた文書の作成、データの保存手順を示すフローチャート図である。
【図7】本発明の一実施例に係る印刷制御システムを用いた文書の印刷手順を示すフローチャート図である。
【図8】本発明の一実施例に係る元文書の構成例を示す図である。
【図9】本発明の一実施例に係る画像形成装置に表示される画面(隠蔽位置指定画面)の構成例を示す図である。
【図10】本発明の一実施例に係る画像形成装置に表示される画面(公開範囲設定画面)の構成例を示す図である。
【図11】本発明の一実施例に係る元文書の印刷例を示す図である。
【図12】本発明の一実施例に係る加工文書の印刷例を示す図である。
【図13】本発明の一実施例に係る加工文書の他の印刷例を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
10 画像形成装置
11 制御部
11a 保存制御部
11b 認証部
11c 出力制御部
12 スキャナ部
13 画像処理部
14 プリンタ部
15 ネットワーク接続部
16 記憶部
17 表示部
18 操作部
20 サーバ
30 コンピュータ機器
40 元文書
41 秘密情報
42 公開情報
43 加工文書
44 隠蔽部
45 公開範囲情報
50 隠蔽位置指定画面
51 公開範囲設定画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
秘密情報を含む第1の文書の印刷を指示するユーザの識別情報に基づいて、前記ユーザが、予め定められた前記秘密情報の公開範囲に合致するかを判断する認証部、
前記ユーザが前記公開範囲に合致する場合は、少なくとも1部、前記第1の文書を印刷させ、前記ユーザが前記公開範囲に合致しない場合は、全部数、前記第1の文書の指定位置を隠蔽した第2の文書を印刷させる出力制御部、として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項2】
コンピュータを、
秘密情報を含む第1の文書の文書データと前記第1の文書中の隠蔽する位置を示す指定位置情報と前記秘密情報の公開範囲を示す公開範囲情報とを関連付けて保存する保存制御部、
前記第1の文書の印刷を指示するユーザの識別情報に基づいて、前記ユーザが前記第1の文書の文書データに関連付けられた前記公開範囲情報で規定される公開範囲に合致するかを判断する認証部、
前記ユーザが前記公開範囲に合致する場合は、少なくとも1部、前記第1の文書を印刷させ、前記ユーザが前記公開範囲に合致しない場合は、全部数、前記第1の文書の前記指定位置を隠蔽した第2の文書を印刷させる出力制御部、として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項3】
複数部の印刷が指示された場合において、
前記認証部は、前記ユーザが入力した、前記第1の文書を利用する他のユーザの識別情報に基づいて、前記他のユーザが前記公開範囲に合致するかを判断し、
前記出力制御部は、前記ユーザが前記公開範囲に合致する場合は、前記公開範囲に合致するユーザ分の前記第1の文書を印刷させると共に、残りの部数は前記第2の文書を印刷させることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御プログラム。
【請求項4】
前記出力制御部は、前記第1の文書を印刷させる場合に、前記指定位置に記録された情報を識別可能に印刷させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の制御プログラム。
【請求項5】
前記出力制御部は、前記第2の文書を印刷させる場合に、隠蔽した前記指定位置に前記公開範囲を識別可能に印刷させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の制御プログラム。
【請求項6】
秘密情報を含む第1の文書を表示する表示部と、
前記第1の文書中の隠蔽位置の指定、及び、前記秘密情報の公開範囲の設定を可能にする操作部と、
前記第1の文書の文書データと前記隠蔽位置を示す指定位置情報と前記公開範囲を示す公開範囲情報とを関連付けて保存する保存制御部と、
前記第1の文書の印刷を指示するユーザの識別情報に基づいて、前記ユーザが前記第1の文書の文書データに関連付けられた前記公開範囲情報で規定される公開範囲に合致するかを判断する認証部と、
前記ユーザが前記公開範囲に合致する場合は、少なくとも1部、前記第1の文書を印刷させ、前記ユーザが前記公開範囲に合致しない場合は、全部数、前記第1の文書の前記指定位置を隠蔽した第2の文書を印刷させる出力制御部と、を少なくとも備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
複数部の印刷が指示された場合において、
前記認証部は、前記ユーザが入力した、前記第1の文書を利用する他のユーザの識別情報に基づいて、前記他のユーザが前記公開範囲に合致するかを判断し、
前記出力制御部は、前記ユーザが前記公開範囲に合致する場合は、前記公開範囲に合致するユーザ分の前記第1の文書を印刷させると共に、残りの部数は前記第2の文書を印刷させることを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記出力制御部は、前記第1の文書を印刷させる場合に、前記指定位置に記録された情報を識別可能に印刷させることを特徴とする請求項6又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記出力制御部は、前記第2の文書を印刷させる場合に、隠蔽した前記指定位置に前記公開範囲を識別可能に印刷させることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一に記載の画像形成装置。
【請求項10】
秘密情報を含む第1の文書を表示する表示ステップと、
前記第1の文書中の隠蔽位置が指定され、前記秘密情報の公開範囲が設定されると、前記第1の文書の文書データと設定された前記隠蔽位置を示す指定位置情報と設定された前記公開範囲を示す公開範囲情報とを関連付けて保存する保存ステップと、
前記第1の文書の印刷を指示するユーザの識別情報に基づいて、前記ユーザが前記第1の文書の文書データに関連付けられた前記公開範囲情報で規定される公開範囲に合致するかを判断する認証ステップと、
前記ユーザが前記公開範囲に合致する場合は、少なくとも1部、前記第1の文書を印刷させ、前記ユーザが前記公開範囲に合致しない場合は、全部数、前記第1の文書の前記指定位置を隠蔽した第2の文書を印刷させる出力ステップと、を少なくとも有することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項11】
複数部の印刷が指示された場合において、
前記認証ステップでは、前記ユーザが入力した、前記第1の文書を利用する他のユーザの識別情報に基づいて、前記他のユーザが前記公開範囲に合致するかを判断し、
前記出力ステップでは、前記ユーザが前記公開範囲に合致する場合は、前記公開範囲に合致するユーザ分の前記第1の文書を印刷させると共に、残りの部数は前記第2の文書を印刷させることを特徴とする請求項10記載の印刷制御方法。
【請求項12】
前記出力ステップでは、前記第1の文書を印刷させる場合に、前記指定位置に記録された情報を識別可能に印刷させることを特徴とする請求項10又は11に記載の印刷制御方法。
【請求項13】
前記出力ステップでは、前記第2の文書を印刷させる場合に、隠蔽した前記指定位置に前記公開範囲を識別可能に印刷させることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一に記載の印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−980(P2009−980A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166654(P2007−166654)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】