制御装置、温度調節器およびゲイン調整装置
【課題】傾斜温度(温度差)を用いた温度制御などにおいて、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等が生じないようにすることを目的とする。
【解決手段】温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜モモードのコントローラCgと、平均温度に基づいて、操作量を演算する平均モードのコントローラCaとを備える温度調節器において、傾斜温度に基づいて、干渉を打ち消すように、傾斜モードおよび平均モードの各コントローラCg,Caの操作量を調整する傾斜モードおよび平均モードの非干渉化器Fg,Faを設けている。
【解決手段】温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜モモードのコントローラCgと、平均温度に基づいて、操作量を演算する平均モードのコントローラCaとを備える温度調節器において、傾斜温度に基づいて、干渉を打ち消すように、傾斜モードおよび平均モードの各コントローラCg,Caの操作量を調整する傾斜モードおよび平均モードの非干渉化器Fg,Faを設けている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象の温度や圧力などの物理状態を制御する制御装置、制御対象の温度を制御する温度調節器およびそれらのゲインを調整するのに好適なゲイン調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、被加熱物を、熱板上に載置して均一に加熱処理するような温度制御においては、温度調節器は、熱板に配設された温度センサからの検出温度に基づいて、熱板の温度が設定温度になるように操作信号(操作量)を出力し、SSR等を介して熱板に配設されたヒータの通電を制御することにより行なわれる。
【0003】
前記熱板に、複数のヒータおよび複数の温度センサを配設して複数の制御点、すなわち、複数チャネルの温度制御を行なう場合に、チャネル毎に個別に温度制御を行なうと、熱板の各制御点が熱的に連続しているために、各チャネル間の熱的な干渉が生じ、高い精度で均一な温度に制御するのが困難であり、特に、過渡時や外乱時には、一層困難となる。
【0004】
そこで、本件出願人は、チャネル毎に個別に温度制御するのではなく、複数の制御点に対応する複数の検出温度を、例えば、複数の検出温度の代表的な代表温度としての平均温度と、各検出温度の温度差である傾斜温度とに変換し、平均温度と傾斜温度とを制御量として温度制御する手法(以下「傾斜温度制御」ともいう)を提案した(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図20は、この傾斜温度制御の基本的な構成の一例を示す図であり、2チャネルの例を示している。
【0006】
熱板等の制御対象20の2つの制御点の検出温度θ1,θ2を、モード変換器3のモード変換行列Gmによって、両検出温度の平均値である平均温度θaおよび両検出温度の温度差である傾斜温度θgに変換し、平均温度θaと目標平均温度r1との偏差または傾斜温度θgと目標傾斜温度r2との偏差を平均モードまたは傾斜モードの各コントローラCa,Cgにそれぞれ入力し、各コントローラCa,Cgは、平均温度の偏差または傾斜温度の偏差をなくすように操作量を、例えば、PID演算して出力し、操作量を配分する前置補償器としての変換器4によってモード変換行列の逆行列Gm−1で変換して制御出力として配分し、この制御出力によって熱板等の制御対象20を加熱するヒータの通電を制御する。
【特許文献1】特許第3278807号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記傾斜温度制御方法では、平均温度を制御する平均モードのコントローラCaと傾斜温度(温度差)を制御する傾斜モードのコントローラCgとのゲインを、ZN法やCHR法などの従来の調整方法を用いて同じゲインに調整しているが、干渉の強い制御対象では、ハンチング等が生じる場合があるといった課題がある。
【0008】
本発明は、上述のような点に鑑みて為されたものであって、傾斜温度(温度差)などの物理量の差を用いた制御において、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等が生じない安定な制御を行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の制御装置は、制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの複数の物理量の差である傾斜物理量に基づいて、操作量を演算する傾斜物理量用の物理状態制御手段と、前記複数の物理量の代表的な物理量である代表物理量に基づいて、操作量を演算する代表物理量用の物理状態制御手段とを備える制御装置において、前記傾斜物理量を、前記傾斜物理量用の物理状態制御手段の入力側および出力側の少なくとも一方側に、干渉を打ち消すようにフィードバックする傾斜物理量用の非干渉化手段を備えている。
【0010】
物理状態とは、温度 、圧力、流量、速度あるいは液位などの様々な物理量の状態をいう。
【0011】
また、傾斜物理量とは、物理量の差、例えば、温度差、圧力差、流量差、速度差などの様々な物理量の差をいう。
【0012】
代表物理量とは、複数の物理量を代表する物理量をいい、例えば、温度 であれば、制御対象の平均温度 、或る位置(例えば中央位置)における温度などをいう。
【0013】
制御対象は、例えば、温度差のように物理状態に差があると、その差をなくすように物理状態が変化する際に干渉を生じることになるが、本発明の制御装置によると、非干渉化手段によって、物理状態の差、すなわち、傾斜物理量に基づいて、制御対象における干渉を打ち消すようにフィードバックして非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制し、安定な温度制御が可能となる。
【0014】
(2)本発明の温度調節器は、制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器において、前記傾斜温度を、前記傾斜温度用の温度制御手段の入力側および出力側の少なくとも一方側に、干渉を打ち消すようにフィードバックする傾斜温度用の非干渉化手段を備えている。
【0015】
傾斜温度とは、温度勾配、すなわち、温度差をいい、代表温度とは、代表的な温度をいい、例えば、平均温度であるのが好ましいが、或る位置(例えば、制御対象の中央の位置)における温度などであってもよい。
【0016】
温度制御手段は、少なくとも比例制御を行なうものであるのが好ましい。
【0017】
干渉とは、一方が他方に与える影響をいい、例えば、一方のチャネルの操作量が、他方のチャネルの制御量に与える影響をいう。
【0018】
非干渉化手段は、傾斜温度を、干渉を打ち消すように、温度制御手段の出力側である操作量、温度制御手段の入力側である偏差や目標温度などにフィードバックするのが好ましい。
【0019】
制御対象は、温度差があると、高温の部位から低温の部位への熱流によって干渉が生じることになるが、本発明の温度調節器によると、非干渉化手段によって、温度差、すなわち、傾斜温度に基づいて、制御対象における熱流を打ち消すようにフィードバックして非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制し、安定な温度制御が可能となる。
【0020】
(3)本発明の温度調節器の一つの実施形態では、前記傾斜温度を、前記代表温度用の温度制御手段の入力側および出力側の少なくとも一方側に、干渉を打ち消すようにフィードバックする代表温度用の非干渉化手段を備えている。
【0021】
この実施形態によると、代表温度用の非干渉化手段を備えているので、一層の非干渉化を図ることができる。
【0022】
(4)本発明の温度調節器の他の実施形態では、前記非干渉化手段は、前記制御対象の干渉が強い程、フィードバック量の絶対値を大きくするものである。
【0023】
この実施形態によると、制御対象の干渉が強い程、フィードバック量の絶対値を大きくして干渉を打ち消すことができる。
【0024】
(5)本発明の温度調節器の更に他の実施形態では、前記温度制御手段は、少なくとも比例制御を行うものであって、前記傾斜温度用の非干渉化手段は、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例操作量の絶対値を減少させるようにフィードバックするものである。
【0025】
制御対象における温度差による干渉は、傾斜温度用の温度制御手段の比例操作量に大きく影響するので、この実施形態によると、非干渉化手段によって、比例操作量の絶対値を減少させるようにフィードバックして非干渉化を図ることができる。
【0026】
(6)本発明の温度調節器の他の実施形態では、前記傾斜温度用の非干渉化手段は、前記傾斜温度に代えて、傾斜温度と目標傾斜温度との偏差を、入力とし、非干渉化演算の出力を、前記傾斜温度用の温度制御手段の出力側に、与えるものである。
【0027】
この実施形態によると、傾斜温度に代えて、傾斜温度の偏差を用いて非干渉化を図ることができる。
【0028】
(7)本発明の制御装置は、制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの複数の物理量の差である傾斜物理量に基づいて、操作量を演算する傾斜物理量用の物理状態制御手段と、前記複数の物理量の代表的な物理量である代表物理量に基づいて、操作量を演算する代表物理量用の物理状態制御手段とを備える制御装置において、前記傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値が、前記代表物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整されるものである。
【0029】
制御対象における物理状態の差による干渉は、傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例操作量に大きく影響するが、本発明の制御装置によると、傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値を小さな値に調整して、制御対象における干渉を打ち消すように比例操作量を出力して非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な制御が可能となる。
【0030】
(8)本発明の温度調節器は、制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器において、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値が、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整されるものである。
【0031】
制御対象における温度差による干渉は、傾斜温度用の温度制御手段の比例操作量に大きく影響するが、本発明の温度調節器によると、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を小さな値に調整して、制御対象における熱流を打ち消すように比例操作量を出力して非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な温度制御が可能となる。
【0032】
(9)本発明の温度調節器の一つの実施形態では、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインが、前記制御対象の干渉が強い程、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインとの差の絶対値が大きくなるように調整されるものである。
【0033】
この実施形態によれば、制御対象の干渉が強い程、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインを小さくして干渉を打ち消すことができる。
【0034】
(10)本発明のゲイン調整装置は、制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの複数の物理量の差である傾斜物理量に基づいて、操作量を演算する傾斜物理量用の物理状態制御手段と、前記複数の物理量の代表的な物理量である代表物理量に基づいて、操作量を演算する代表物理量用の物理状態制御手段とを備える制御装置の前記各物理状態制御手段のゲインを調整する装置において、前記傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値を、前記代表物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整するものである。
【0035】
制御対象における物理状態の差による干渉は、傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例操作量に大きく影響するが、本発明のゲイン調整装置によると、傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値を小さな値に調整するので、制御装置は、制御対象における干渉を打ち消すように比例操作量を出力して非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な制御が可能となる。
【0036】
(11)本発明のゲイン調整装置は、制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器の前記各温度制御手段のゲインを調整する装置において、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整するものである。
【0037】
制御対象における温度差による干渉は、傾斜温度用の温度制御手段の比例操作量に大きく影響するが、本発明のゲイン調整装置によると、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を小さな値に調整するので、温度調節器は、制御対象における熱流を打ち消すように比例操作量を出力して非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な温度制御が可能となる。
【0038】
(12)本発明のゲイン調整装置の一つの実施形態では、前記制御対象の干渉が強い程、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインと前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインとの差の絶対値が大きくなるように調整するものである。
【0039】
この実施形態によると、制御対象の干渉が強い程、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインを小さくして干渉を打ち消すことができる。
【0040】
(13)本発明のゲイン調整装置は、制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段と、各温度制御手段からの操作量を、前記制御対象を加熱する複数のヒータに配分する配分手段とを備える温度調節器の前記各温度制御手段のゲインを調整する装置において、評価指標に基づき前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインを探索して調整するものであって、比例ゲインの探索範囲内に、以下の式にて表される値を含むものである。
Kpa−{(βi,j/hi)(Ti/Tβi,j)+(βj,i/hj)(Tj/Tβj,i)}
但し、Kpa:代表温度用の温度制御手段の比例ゲイン
hi:ヒータiの発熱量
βi,j:ヒータjから隣のヒータiへの干渉度
Ti:ヒータiの無駄時間
Tβi,j:ヒータjから隣のヒータiへの無駄時間
本発明のゲイン調整装置によると、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインを、探索によって得られた小さな値に調整するので、温度調節器は、制御対象における熱流を打ち消すように比例操作量を出力して非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な温度制御が可能となる。
【0041】
(14)本発明のゲイン調整装置は、制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器の前記各温度制御手段のゲインを調整する装置において、評価指標に基づきゲインの良否を判定して探索するゲイン探索手段を有し、該ゲイン探索手段は、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を、代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値より小さな値で探索するものである。
【0042】
本発明のゲイン調整装置によれば、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインを、探索によって得られた小さな値に調整するので、温度調節器は、制御対象における熱流を打ち消すように比例操作量を出力して非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な温度制御が可能となる。
【0043】
(15)本発明の温度調節器の一つの実施形態では、前記ゲイン探索手段は、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの探索範囲に負の値を含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、傾斜物理量を、干渉を打ち消すように、傾斜物理量用の物理状態制御手段の入力側または出力側にフィードバックする非干渉化手段を設け、あるいは、傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値を、代表物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整するので、制御対象における物理状態の差(傾斜物理量)に起因する干渉を、打ち消すように作用させて非干渉化し、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な制御が可能となる。
【0045】
特に、傾斜温度を、干渉を打ち消すように、傾斜温度用の温度制御手段の入力側または出力側にフィードバックする非干渉化手段を設け、あるいは、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を、代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整するので、制御対象における温度差(傾斜温度)に起因する熱流の流れを、打ち消すように作用させて非干渉化し、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な温度制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0047】
図1は、本発明に係る温度調節器を用いた温度制御システムの構成図である。
【0048】
この実施の形態の温度調節器1は、制御対象2のモデルとして、本件出願人が、例えば、特開2004−94939号公報で提案しているフィードバック型のモデル構造を用いるものであり、2チャネルの傾斜温度制御に適用して説明する。
【0049】
この実施形態の温度調節器1は、制御対象2の2つの制御点の検出温度θ1,θ2を、モード変換行列(Gm)によって、両検出温度の平均値である平均温度θaおよび両検出温度の温度差である傾斜温度θgに変換するモード変換器3と、平均温度θaと目標平均温度r1との偏差に基づいて、操作量を演算する平均モードのコントローラCaと、傾斜温度θgと目標傾斜温度r2との偏差に基づいて、操作量を演算する傾斜モードのコントローラCgと、各コントローラCa,Cgの出力を、モード変換行列の逆行列(Gm−1)で変換して制御対象2へ配分する前置補償器としての変換器4とを備えており、かかる構成は、従来の傾斜温度制御と基本的に同様である。なお、この例では、傾斜温度制御おける代表温度を、平均温度としているが、平均温度に限らず、例えば、或るチャネルの温度を代表温度としてもよい。
【0050】
各モードのコントローラCa,Cgは、PIDコントローラが好ましいが、少なくともP制御を行うコントローラであればよい。
【0051】
この実施形態の温度調節器1では、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等が生じないように、傾斜温度θgを、各モードのコントローラCa,Cgの出力側にそれぞれフィードバックする平均モードおよび傾斜モードの非干渉化器Fa,Fgを備えるとともに、この非干渉化器Fa,Fgおよび各コントローラCa,Cgのゲインを調整するゲイン調整手段5とを備えている。
【0052】
上記モード変換器3、各コントローラCa,Cg、変換器4、非干渉化器Fa,Fgおよびゲイン調整手段5は、例えば、マイクロコンピュータによって構成される。
【0053】
ここで、制御対象2のモデル構造について簡単に説明する。
【0054】
このモデル構造は、上述のように本件出願人が先に提案しているものであって、各チャネルの温度θ1,θ2の差を、干渉項6を介して入力側に正負を異ならせてそれぞれフィードバックするものであり、H1,H2は、ヒータの発熱度合いを示すものである。
【0055】
このモデル構造は、熱干渉系の熱モデルであり、温度差があるときに、熱量の移動が生じ、この熱量の移動は、温度差に比例するというフーリエの法則の意味するところと等価である。
【0056】
温度差によって、一方のチャネルから他方のチャネルへ熱量の移動が生じ、一方のチャネルは熱量が奪われ(負)、他方のチャネルには熱量が足される(正)という熱干渉の現象をブロック線図で表したものであり、熱系の制御対象の干渉は、二つの温度があって、温度の差ができたときに、その温度差に比例した熱量の移動が起こるというフーリエの法則を意味しており、このモデル構造を、以下、「温度差モデル」ともいう。
【0057】
この実施形態では、干渉の度合いを表す干渉項6の伝達関数Gβおよび発熱度合いを表す伝達関数H1,H2は、それぞれ次式で示される。
Gβ=β/(Tβ・s+1)
H1=H2=Hi=hi/(Ti・s+1)
ここで、βは干渉度、Tβは干渉のむだ時間、hiはヒータの発熱量、Tiはむだ時間である。
【0058】
また、モデル構造の要素Hsiの伝達関数は、Hs1=Hs2=Hsi=gi/(Tsi・s+1)である。
【0059】
ゲイン調整手段5は、制御対象2の特性を求めるために、ステップ状の操作量を制御対象2に与えるMV設定手段9と、そのときの制御対象2のステップ応答波形を取得するPV取得手段10と、両チャネルの干渉度合いを求める干渉度推定手段11と、各コントローラCa,Cgのゲインおよび各非干渉化器Fa,Fgの設定を行なうゲイン設定手段12とを備えている。
【0060】
この実施形態の非干渉化器Fa,Fgの伝達関数は、それぞれ次式で表される。
【0061】
【数1】
【0062】
【数2】
【0063】
これらの伝達関数は、温度差モデルの干渉項をキャンセルするための非干渉化器を設計し、この非干渉化器に対してモード変換を実施することで求められる。
【0064】
平均モードの非干渉化器Faは、H1とH2との特性が等しい場合は、0となり、省略することができる。
【0065】
次に、この実施形態のコントローラの設計の手順を説明する。この実施形態では、非干渉化器Fa,Fgによって非干渉化を図っているので、平均モードおよび傾斜モードの各コントローラCa,Cgのゲインは、同じに設定することができる。
【0066】
(1)先ず、制御対象2の波形を取得し、見かけの傾きRiを求める。
【0067】
すなわち、図1において、制御対象2と変換器4との間の接続スイッチ7,8を切り、制御対象2を、ゲイン調整手段5側に接続する。
【0068】
MV設定手段9は、図2に示すように、1チャネルずつステップ状の操作量U1,U2を加え、PV取得手段10はその時の制御量PV1,PV2を全チャネル分取得する。
【0069】
図3および図4に、チャネル1およびチャネル2のステップ応答の実験結果の一例を示す。なお、Ri’は、後述のチャネルiの見かけの傾きを示している。
【0070】
図3および図4において、チャネル1の入力である操作量をU1、出力である検出温度をPV1とし、チャネル2の入力である操作量をU2、出力である検出温度をPV2としている。
【0071】
また、この図3および図4では、図5に示すように、チャネル1にステップ状の操作量U11を入力したときのチャネル2の操作量をU21、前記操作量U11に対するチャネル1,2の検出温度の変化をPV11,PV21とし、また、チャネル2にステップ状の操作量U22を入力したときのチャネル1の操作量をU12、前記操作量U22に対するチャネル1,2の検出温度の変化をPV12,PV22としている。
【0072】
図3では、チャネル1の操作量U11=1のステップ入力に対して、チャネル1の検出温度PV11が、5.148となったことを示している。また、チャネル2もチャンネル1の影響を受けて検出温度PV21が、5.071となったことを示している。
【0073】
このチャネル1の応答波形、すなわち、チャネル1の操作量U1の変化U11に対する検出温度PV1の応答波形PV11から、後述のようにして、見掛けの傾きR1’=0.5、むだ時間L1’=0.7秒が得られる。
【0074】
また、チャネル2の操作量U2を、図4に示すように、同様にステップ状に変化させて、応答波形を計測する。
【0075】
このチャネル2の応答波形、すなわち、チャネル2の操作量U2の変化U22に対する検出温度PV2の応答波形PV22から、見掛けの傾きR2’=0.5、むだ時間L2’=0.7秒が得られる。
【0076】
ここで、見かけの傾きR’と真の傾きRとの関係について説明する。
【0077】
図6に示すように、例えば、二つのヒータブロック21,22からなる干渉のある制御対象2の温度を、熱電対等の温度センサ13で検出し、温度調節器14によって、SSR15を介してヒータ16による通電を制御する温度制御システムにおいて、図7に示すように、各ヒータの目標温度SPをステップ状に変化させてステップ応答波形を計測する
図8は、ステップ応答波形であり、実線は、干渉がない場合を示し、破線は、干渉がある場合を示している。
【0078】
干渉がある場合には、干渉領域への熱の流出が生じるために、温度上昇の波形がなだらかとなり、本来は、真の傾きR(=K/T)を求めたいのに、見かけの傾きR’(=K/T’)が求まることになる。また、RとR’との関係は、次のようになる。
R=K/T>R’=K/T’
従って、ZN法によるゲイン設計では、比例ゲインKp=1.2/RLは、適正な値よりも大きく見積もられることになる。
【0079】
(2)そこで、この実施形態では、チャネル毎に真の傾きRi、無駄時間Liを、次式によって算出する。
Ri=Ri’×(PV1i+PV2i+…+PVni)/PVii
Li=LI’
i:チャネル番号
n:最大チャネル数
PV1i:チャネルiにステップ入力を与えた時のチャネル1の制御量(PV1)
上述の図3および図4の実験結果に適用すると、
R1=R1’×(PV11+PV21)/PV11
=0.5×(5.148+5.071)/5.148=0.993
L1=L1’=0.7
R2=R2’×(PV12+PV22)/PV22
=0.5×(5.071+5.122)/5.122=0.995
L2=L2’=0.7
となる。
【0080】
ここで、上記のようにして見かけの傾きR’から真の傾きRが得られる理由について定性的に説明する。
【0081】
チャネル数がnのとき、n個間に干渉無く分割された状態の温度上昇の傾きを真のRと定義する。しかし、実際には、n個はつながっているのでi番目のチャネルに加えた熱流は他のチャネルに漏れる。そのために、チャネルiの温度上昇は低下し、他のチャネルの温度は上昇する。干渉が非常に大きいときには、全てのチャネルが同じ傾きRで上昇する。そのときの傾きは、チャネル数分の一になる。
【0082】
干渉が非常に大きくないときには、加熱するチャネルの傾きRが最も大きく、その周辺に離れるに従って、傾きRが小さくなる。漏れた熱流による温度上昇R分を全て集めて1つのセルの温度上昇にすれば、真の傾きRを求めることができる。これを意味するものが次の数式である。
Ri=Ri’×(R1i+R2i+・・・+Rni)/Rii
このままでも良いが、Rの代わりに計測し易い定常温度のPVを使った場合が上記式となる。1次遅れの時定数が揃ってTとして等しいとき、R=K/Tの式からRの比率はKの比率に比例し、MVが一定であれば,PV=K×MVなので、RをPVに置きかえることができ、上述の式が得られる。
【0083】
(3)次に、以上のようにして得られた真の傾きRi、無駄時間Liを用いて各モードの傾きRa(=Rg)、無駄時間La(=Lg)を計算する。ここで、各モードの傾きRa(=Rg)はRiの最大値とする。
Ra=max(Ri)=max(0.993,0.995)=0.995
La=max(Li)=max(0.7,0.7)=0.7
尚、各モードの傾きRa(=Rg)はRiの平均値としてもよい。
【0084】
(4)次に、ZN法によって各モードのコントローラCa,Cgのゲインを設計する。
Kpa=Kpg=1.2/(Ra×La)=1.2/(0.995×0.7)=1.72
Tia=Tig=2×La=2×0.7=1.4
Tda=Tdg=0.5×La=0.5×0.7=0.35
(5)次に、干渉成分βを同定する。
【0085】
この干渉成分βは、本件出願人が先に提案して国際公開されている、例えば、WO2006/088072に示されるように、定常特性から得ることができ、例えば、各チャネルに順番にステップ状の入力を与えたときの各チャンネルの定常状態での出力の変化を計測することにより、求めることができる。
【0086】
ここで、上記国際公開された出願の内容を引用して干渉成分βの導出の概要を説明する。
【0087】
図9は、上述のモデル構造を複数チャネルに適用したものであり、図1の要素Hsiが、図9のモデル要素601〜60nに対応し、干渉項6が、フィードバック要素6112〜61(n−1)nに対応する。また、図9および後述の図10では、θは熱抵抗を示している。
【0088】
複数(n)のモデル要素601〜60nは、定常ゲインK1〜Knおよび時定数T1〜Tnを用いた一次遅れ系とし、複数(n−1)のフィードバック要素6112〜61(n−1)nは、熱抵抗θ12〜θ(n−1)nによる定値としている。また、入力をP1〜Pn、出力をT1〜Tnとしている。
【0089】
ここでは、定常特性を考え、定常状態からパラメータを求める。
【0090】
熱系の制御対象の伝達関数G(s)を、一次遅れ系とすると、
G(s)=K/(1+Ts)
となる。ここで、Kは定常ゲイン、Tは時定数、sはラプラス変換の演算子である。
【0091】
定常状態では、s=0なので、
G(s)=K
となる。
【0092】
定常ゲインKは、一定値の熱流(入力)Pと定常温度(出力)Tとを使って
K=T/P
と表すことができる。
【0093】
一方、熱抵抗θは、オームの法則に似せて、熱流Pと温度Tとを用いて
θ=T/P
と表すことができる。
【0094】
したがって、定常状態では、
K=θ
と表すことができる。
【0095】
したがって、図9のモデル構造において、定常特性(s=0)のみを考えると、モデル要素601〜60nは、時定数T1〜Tnの項が消えるとともに、定常ゲインK1〜Knを熱抵抗θ1〜θnに置き換えることができ、図10に示すように、1入力1出力の熱抵抗θ1〜θnをそれぞれ有する複数(n)のモデル要素601〜60nと、モデル要素601〜60nの出力の差を入力側にフィードバックする熱抵抗θ12〜θ(n−1)nをそれぞれ有する複数(n−1)のフィードバック要素6112〜61(n−1)nとを備えるモデル構造となる。
【0096】
図10のモデル構造の各要素のパラメータである熱抵抗θ1〜θn,θ12〜θ(n−1)nを、次のようにして求めるものである。
【0097】
すなわち、第1の入力P1にステップ入力P11を入力したときに、定常状態で計測される各出力T1〜Tnの変化を、T11〜T1nとし、第2の入力P2にステップ入力P22を入力したときに、定常状態で計測される各出力T1〜Tnの変化を、T21〜T2nとし、同様に、第nの入力Pnにステップ入力Pnnを入力したときに、定常状態で計測される各出力T1〜Tnの変化を、Tn1〜Tnnとすると、各要素の熱抵抗θ1〜θn,θ12〜θ(n−1)nは、下記の数3,数4の式で算出することができる。
【0098】
なお、制御対象を熱処理盤とすると、ステップ入力P11〜Pnnとしては、熱処理盤を加熱するヒータ出力を想定することができ、定常状態で計測される各出力T1〜Tnの変化であるT11〜Tnnとしては、温度変化を想定することができる。
【0099】
【数3】
【0100】
【数4】
【0101】
上記式によって、各要素の熱抵抗が算出できる理由について、上記国際公開された出願に詳述している。
【0102】
以上のようにして、各チャネルに順番にステップ状の入力を与えたときの各チャネルの定常状態での出力の変化を計測することにより、フィードバック要素、すなわち、図1の干渉項6の熱抵抗である干渉成分を求めることができる。
【0103】
この例では、例えば、β=5.0が求まる。
【0104】
(6)次に、非干渉化器Fa,Fgを、上述(1),(2)式の伝達関数に従って設計する。
【0105】
平均モードの非干渉化器Faは、H1とH2との特性が等しい場合には不要になる。
【0106】
傾斜モードの非干渉化器Fgは、簡単のため、周波数特性の無い部分だけで非干渉化しても、十分な効果が得られる。
【0107】
上述のように、H1とH2との特性が等しい場合には、図11に示すように、平均モードの非干渉化器Faを省略する構成としてもよい。なお、図11では、ゲイン調整手段5は図示省略している。
【0108】
また、傾斜モードの非干渉化器Fgを、周波数特性の無い部分Fg’=(β/Tβ)[(T1/h1)+(T2/h2)]だけで構成し、図12に示すように、従来の傾斜モードのコントローラCgに並列に設ける構成としてもよい。
【0109】
この構成は、図13に示すように、傾斜モードのコントローラCgの操作量からFg’を減算するものであり、この簡略化した非干渉化器(−Fg’)を、従来の傾斜モードのコントローラCgに実装して、図14に示されるように、傾斜モードのコントローラCg’を構成してもよい。この場合には、新たに非干渉化器を追加することなく、従来の温度調節器をそのまま利用できることになる。
【0110】
この図14の新たな傾斜モードのコントローラCg’では、傾斜モードの比例ゲインを下げ、積分ゲインおよび微分ゲインは、前の値を維持するようにしている。すなわち、平均モードのコントローラCaに比べて、比例ゲインは、干渉分だけ小さくし、積分ゲインおよび微分ゲインは同じにしている。
【0111】
この例では、
Kpg=Kpa−(T1/h1+T2/h2)×β/Tβ
=1.72−(1/1+1/1)×5/5=−0.28
Kig=Kia=0.58
Kdg=Kda=2.86
となる。
【0112】
このように、簡略化した傾斜モードの非干渉化器(−Fg’)を、従来の傾斜モードのコントローラCgに実装する場合のゲイン調整の手順は、次のようになる。
【0113】
すなわち、上述と同様に、制御対象2の波形を取得し、見かけの傾きRiを求め、見かけの傾きRiからチャネル毎に真の傾きRi、無駄時間Liを、算出し、平均モードのRa、Laを計算し、平均モードのコントローラCaのゲインを設計し、次に、干渉成分βを同定し、最後に、傾斜モードのコントローラCgを、平均モードのコントローラCaに比べて、比例ゲインは、干渉分だけ小さく、積分ゲインおよび微分ゲインは同じになるように設計する。
【0114】
図15は、以上のようにして平均モードおよび傾斜モードの各コントローラCa,Cgのゲインが調整されたときのステップ応答を示す図であり、この図15では、各モードの波形が重なって不明瞭になるのを避けるために、平均モードおよび傾斜モードの各ステップ応答を(a),(b)に分けてそれぞれ示している。
【0115】
この図15に示すように、最初は、波形がハンチングしているが、最終的には、目標値に整定している。
【0116】
なお、図16には、比較のために、非干渉化器Fa,Fgを設けることなく、平均モードのコントローラCaと傾斜モードのコントローラCgとを、同じゲインに調整した従来例、すなわち、図20の従来例のステップ応答を示している。図16(a)に示すように平均モードをステップ状に変化させると、図16(b)に示すように干渉によって傾斜モードが発散してしまう。
【0117】
図17は、本発明の他の実施形態の図1に対応する構成図であり、この実施形態では、平均モードの非干渉化器Faは省略し、傾斜モードの非干渉化器Fgを簡略化して傾斜モードのコントローラCgに実装して、上述の図14に示される傾斜モードのコントローラCg’を構成したものである。
【0118】
この実施形態では、傾斜モードのコントローラCg’のゲインの調整を、探索によって行うものである。
【0119】
すなわち、この実施形態のゲイン調整手段5−1は、ゲイン探索手段16を有しており、ゲイン探索によって、傾斜モードのコントローラCg’ゲインを調整するものである。
【0120】
平均モードのコントローラCaのゲインを設計し、干渉成分βを求めるまでの手順は、上述の実施形態と同様である。
【0121】
この実施形態では、傾斜モードのコントローラCg’ゲインの設計を次のようにして行う。
【0122】
すなわち、ゲイン探索手段16は、傾斜モードのゲイン候補を傾斜モードのコントローラCg’に設定する。
【0123】
ゲイン探索手段16は、傾斜モードの目標値r2としてステップ状の目標入力を入れる。ゲイン探索手段16は、評価指標として傾斜モードの偏差平方和(Σ(r2−θg)2)を計算し、結果を記憶する。
【0124】
傾斜モードの比例ゲイン候補として0または以下の式で表される値のうち小さい方に達するまでゲインを少しずつ小さくなるように変更する。傾斜モードの積分ゲイン、微分ゲインは変更しない。
Kgi*=Kpa−{(βi,i+1/hi)(Ti/Tβi,i+1)+(βi+1,i/hi+1)(Ti+1/Tβi+1,i)}
ここで、Kgi*:チャネルiの比例ゲインの推定値
Kpa:平均モードの比例ゲイン
hi:ヒータiの発熱量
βi,j:ヒータjからヒータiへの干渉度
Ti:ヒータiの無駄時間
Tβi,j:ヒータjからヒータiへの無駄時間
一連の探索が終了したら、最も偏差平方和が小さくなる比例ゲインをKpgとしてコントローラCg’に設定する。
【0125】
以上でゲイン探索を終了する。
【0126】
なお、積分ゲインおよび微分ゲインは、上述の実施形態と同様に、平均モードのコントローラCaと同じ値に設定する。
【0127】
上述の各実施形態では、平均および傾斜の操作量を、配分する前置補償器を、モード変換行列Gmの逆行列Gm−1で変換する変換器4で構成したけれども、本発明の他実施形態として、図18に示すように、変換器4と、干渉係数の行列Gpの逆行列Gp−1で変換する変換器17とによって、前置補償器を構成してもよい。
【0128】
ここで、干渉係数は、各ヒータに与える操作量を順番に変動させて、そのときの検出温度の最大振幅ΔPVまたは傾き(ΔPVを、最大振幅に至るまでの時間から無駄時間を引いた時間で割った値)である。
【0129】
その他の構成は、上述の実施形態と同様である。
【0130】
また、本発明は、図19に示されるように、カスケード制御に適用してもよい。すなわち、上述の実施形態を用いて主ループを構成し、副ループのコントローラC1,C2の目標温度を調整するようにしてもよい。
【0131】
上述の各実施形態では、ゲイン調整手段は、温度調節器に内蔵させたけれども、本発明の他の実施形態として、ゲイン調整装置として、温度調節器とは独立の装置として構成し、通信などによって温度調節器に対してゲインを設定するようにしてもよい。
【0132】
上述の各実施形態では、制御対象の温度の制御に適用して説明したけれども、本発明は、温度に限らず、圧力、流量、液位などの他の物理量の制御にも適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、制御対象から得られる複数の物理量の差である傾斜物理量、例えば、傾斜温度を利用して制御する温度調節器などの制御装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る温度制御システムの構成図である。
【図2】ステップ応答を説明するための図である。
【図3】一方のチャネルにステップ入力を与えたときの出力を示す図である。
【図4】他方のチャネルのステップ入力を与えたときの出力を示す図である。
【図5】入力と出力との対応を示すタイムチャートである。
【図6】温度制御システムの全体構成を示す図である。
【図7】ステップ入力波形を示す図である。
【図8】見かけの傾きR’と真の傾きRとを示す波形図である。
【図9】図1のモデル構造のブロック線図である。
【図10】定常状態に対応する図9のブロック線図である。
【図11】本発明の他の実施形態の要部の構成図である。
【図12】本発明の更に他の実施形態の要部の構成図である。
【図13】図12の要部の詳細構成を示す図である。
【図14】本発明の他の実施形態の傾斜モードのコントローラの構成図である。
【図15】実施形態の制御波形を示す図である。
【図16】従来例の制御波形を示す図である。
【図17】本発明の他の実施形態の温度制御システムの構成図である。
【図18】本発明の更に他の実施形態の温度制御シテスムの構成図である。
【図19】本発明の他の実施形態の温度制御シテスムの構成図である。
【図20】従来例の温度制御システムの構成図である。
【符号の説明】
【0135】
1 温度調節器
2 制御対象
3 モード変換器
5,5−1 ゲイン調整手段
Ca 平均モードのコントローラ
Cg,Cg’ 傾斜モードのコントローラ
Fa 平均モードの非干渉化器
Fg,Fg’ 傾斜モードの非干渉化器
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象の温度や圧力などの物理状態を制御する制御装置、制御対象の温度を制御する温度調節器およびそれらのゲインを調整するのに好適なゲイン調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、被加熱物を、熱板上に載置して均一に加熱処理するような温度制御においては、温度調節器は、熱板に配設された温度センサからの検出温度に基づいて、熱板の温度が設定温度になるように操作信号(操作量)を出力し、SSR等を介して熱板に配設されたヒータの通電を制御することにより行なわれる。
【0003】
前記熱板に、複数のヒータおよび複数の温度センサを配設して複数の制御点、すなわち、複数チャネルの温度制御を行なう場合に、チャネル毎に個別に温度制御を行なうと、熱板の各制御点が熱的に連続しているために、各チャネル間の熱的な干渉が生じ、高い精度で均一な温度に制御するのが困難であり、特に、過渡時や外乱時には、一層困難となる。
【0004】
そこで、本件出願人は、チャネル毎に個別に温度制御するのではなく、複数の制御点に対応する複数の検出温度を、例えば、複数の検出温度の代表的な代表温度としての平均温度と、各検出温度の温度差である傾斜温度とに変換し、平均温度と傾斜温度とを制御量として温度制御する手法(以下「傾斜温度制御」ともいう)を提案した(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図20は、この傾斜温度制御の基本的な構成の一例を示す図であり、2チャネルの例を示している。
【0006】
熱板等の制御対象20の2つの制御点の検出温度θ1,θ2を、モード変換器3のモード変換行列Gmによって、両検出温度の平均値である平均温度θaおよび両検出温度の温度差である傾斜温度θgに変換し、平均温度θaと目標平均温度r1との偏差または傾斜温度θgと目標傾斜温度r2との偏差を平均モードまたは傾斜モードの各コントローラCa,Cgにそれぞれ入力し、各コントローラCa,Cgは、平均温度の偏差または傾斜温度の偏差をなくすように操作量を、例えば、PID演算して出力し、操作量を配分する前置補償器としての変換器4によってモード変換行列の逆行列Gm−1で変換して制御出力として配分し、この制御出力によって熱板等の制御対象20を加熱するヒータの通電を制御する。
【特許文献1】特許第3278807号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記傾斜温度制御方法では、平均温度を制御する平均モードのコントローラCaと傾斜温度(温度差)を制御する傾斜モードのコントローラCgとのゲインを、ZN法やCHR法などの従来の調整方法を用いて同じゲインに調整しているが、干渉の強い制御対象では、ハンチング等が生じる場合があるといった課題がある。
【0008】
本発明は、上述のような点に鑑みて為されたものであって、傾斜温度(温度差)などの物理量の差を用いた制御において、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等が生じない安定な制御を行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の制御装置は、制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの複数の物理量の差である傾斜物理量に基づいて、操作量を演算する傾斜物理量用の物理状態制御手段と、前記複数の物理量の代表的な物理量である代表物理量に基づいて、操作量を演算する代表物理量用の物理状態制御手段とを備える制御装置において、前記傾斜物理量を、前記傾斜物理量用の物理状態制御手段の入力側および出力側の少なくとも一方側に、干渉を打ち消すようにフィードバックする傾斜物理量用の非干渉化手段を備えている。
【0010】
物理状態とは、温度 、圧力、流量、速度あるいは液位などの様々な物理量の状態をいう。
【0011】
また、傾斜物理量とは、物理量の差、例えば、温度差、圧力差、流量差、速度差などの様々な物理量の差をいう。
【0012】
代表物理量とは、複数の物理量を代表する物理量をいい、例えば、温度 であれば、制御対象の平均温度 、或る位置(例えば中央位置)における温度などをいう。
【0013】
制御対象は、例えば、温度差のように物理状態に差があると、その差をなくすように物理状態が変化する際に干渉を生じることになるが、本発明の制御装置によると、非干渉化手段によって、物理状態の差、すなわち、傾斜物理量に基づいて、制御対象における干渉を打ち消すようにフィードバックして非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制し、安定な温度制御が可能となる。
【0014】
(2)本発明の温度調節器は、制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器において、前記傾斜温度を、前記傾斜温度用の温度制御手段の入力側および出力側の少なくとも一方側に、干渉を打ち消すようにフィードバックする傾斜温度用の非干渉化手段を備えている。
【0015】
傾斜温度とは、温度勾配、すなわち、温度差をいい、代表温度とは、代表的な温度をいい、例えば、平均温度であるのが好ましいが、或る位置(例えば、制御対象の中央の位置)における温度などであってもよい。
【0016】
温度制御手段は、少なくとも比例制御を行なうものであるのが好ましい。
【0017】
干渉とは、一方が他方に与える影響をいい、例えば、一方のチャネルの操作量が、他方のチャネルの制御量に与える影響をいう。
【0018】
非干渉化手段は、傾斜温度を、干渉を打ち消すように、温度制御手段の出力側である操作量、温度制御手段の入力側である偏差や目標温度などにフィードバックするのが好ましい。
【0019】
制御対象は、温度差があると、高温の部位から低温の部位への熱流によって干渉が生じることになるが、本発明の温度調節器によると、非干渉化手段によって、温度差、すなわち、傾斜温度に基づいて、制御対象における熱流を打ち消すようにフィードバックして非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制し、安定な温度制御が可能となる。
【0020】
(3)本発明の温度調節器の一つの実施形態では、前記傾斜温度を、前記代表温度用の温度制御手段の入力側および出力側の少なくとも一方側に、干渉を打ち消すようにフィードバックする代表温度用の非干渉化手段を備えている。
【0021】
この実施形態によると、代表温度用の非干渉化手段を備えているので、一層の非干渉化を図ることができる。
【0022】
(4)本発明の温度調節器の他の実施形態では、前記非干渉化手段は、前記制御対象の干渉が強い程、フィードバック量の絶対値を大きくするものである。
【0023】
この実施形態によると、制御対象の干渉が強い程、フィードバック量の絶対値を大きくして干渉を打ち消すことができる。
【0024】
(5)本発明の温度調節器の更に他の実施形態では、前記温度制御手段は、少なくとも比例制御を行うものであって、前記傾斜温度用の非干渉化手段は、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例操作量の絶対値を減少させるようにフィードバックするものである。
【0025】
制御対象における温度差による干渉は、傾斜温度用の温度制御手段の比例操作量に大きく影響するので、この実施形態によると、非干渉化手段によって、比例操作量の絶対値を減少させるようにフィードバックして非干渉化を図ることができる。
【0026】
(6)本発明の温度調節器の他の実施形態では、前記傾斜温度用の非干渉化手段は、前記傾斜温度に代えて、傾斜温度と目標傾斜温度との偏差を、入力とし、非干渉化演算の出力を、前記傾斜温度用の温度制御手段の出力側に、与えるものである。
【0027】
この実施形態によると、傾斜温度に代えて、傾斜温度の偏差を用いて非干渉化を図ることができる。
【0028】
(7)本発明の制御装置は、制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの複数の物理量の差である傾斜物理量に基づいて、操作量を演算する傾斜物理量用の物理状態制御手段と、前記複数の物理量の代表的な物理量である代表物理量に基づいて、操作量を演算する代表物理量用の物理状態制御手段とを備える制御装置において、前記傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値が、前記代表物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整されるものである。
【0029】
制御対象における物理状態の差による干渉は、傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例操作量に大きく影響するが、本発明の制御装置によると、傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値を小さな値に調整して、制御対象における干渉を打ち消すように比例操作量を出力して非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な制御が可能となる。
【0030】
(8)本発明の温度調節器は、制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器において、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値が、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整されるものである。
【0031】
制御対象における温度差による干渉は、傾斜温度用の温度制御手段の比例操作量に大きく影響するが、本発明の温度調節器によると、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を小さな値に調整して、制御対象における熱流を打ち消すように比例操作量を出力して非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な温度制御が可能となる。
【0032】
(9)本発明の温度調節器の一つの実施形態では、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインが、前記制御対象の干渉が強い程、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインとの差の絶対値が大きくなるように調整されるものである。
【0033】
この実施形態によれば、制御対象の干渉が強い程、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインを小さくして干渉を打ち消すことができる。
【0034】
(10)本発明のゲイン調整装置は、制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの複数の物理量の差である傾斜物理量に基づいて、操作量を演算する傾斜物理量用の物理状態制御手段と、前記複数の物理量の代表的な物理量である代表物理量に基づいて、操作量を演算する代表物理量用の物理状態制御手段とを備える制御装置の前記各物理状態制御手段のゲインを調整する装置において、前記傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値を、前記代表物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整するものである。
【0035】
制御対象における物理状態の差による干渉は、傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例操作量に大きく影響するが、本発明のゲイン調整装置によると、傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値を小さな値に調整するので、制御装置は、制御対象における干渉を打ち消すように比例操作量を出力して非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な制御が可能となる。
【0036】
(11)本発明のゲイン調整装置は、制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器の前記各温度制御手段のゲインを調整する装置において、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整するものである。
【0037】
制御対象における温度差による干渉は、傾斜温度用の温度制御手段の比例操作量に大きく影響するが、本発明のゲイン調整装置によると、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を小さな値に調整するので、温度調節器は、制御対象における熱流を打ち消すように比例操作量を出力して非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な温度制御が可能となる。
【0038】
(12)本発明のゲイン調整装置の一つの実施形態では、前記制御対象の干渉が強い程、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインと前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインとの差の絶対値が大きくなるように調整するものである。
【0039】
この実施形態によると、制御対象の干渉が強い程、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインを小さくして干渉を打ち消すことができる。
【0040】
(13)本発明のゲイン調整装置は、制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段と、各温度制御手段からの操作量を、前記制御対象を加熱する複数のヒータに配分する配分手段とを備える温度調節器の前記各温度制御手段のゲインを調整する装置において、評価指標に基づき前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインを探索して調整するものであって、比例ゲインの探索範囲内に、以下の式にて表される値を含むものである。
Kpa−{(βi,j/hi)(Ti/Tβi,j)+(βj,i/hj)(Tj/Tβj,i)}
但し、Kpa:代表温度用の温度制御手段の比例ゲイン
hi:ヒータiの発熱量
βi,j:ヒータjから隣のヒータiへの干渉度
Ti:ヒータiの無駄時間
Tβi,j:ヒータjから隣のヒータiへの無駄時間
本発明のゲイン調整装置によると、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインを、探索によって得られた小さな値に調整するので、温度調節器は、制御対象における熱流を打ち消すように比例操作量を出力して非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な温度制御が可能となる。
【0041】
(14)本発明のゲイン調整装置は、制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器の前記各温度制御手段のゲインを調整する装置において、評価指標に基づきゲインの良否を判定して探索するゲイン探索手段を有し、該ゲイン探索手段は、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を、代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値より小さな値で探索するものである。
【0042】
本発明のゲイン調整装置によれば、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインを、探索によって得られた小さな値に調整するので、温度調節器は、制御対象における熱流を打ち消すように比例操作量を出力して非干渉化を図ることが可能となり、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な温度制御が可能となる。
【0043】
(15)本発明の温度調節器の一つの実施形態では、前記ゲイン探索手段は、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの探索範囲に負の値を含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、傾斜物理量を、干渉を打ち消すように、傾斜物理量用の物理状態制御手段の入力側または出力側にフィードバックする非干渉化手段を設け、あるいは、傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値を、代表物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整するので、制御対象における物理状態の差(傾斜物理量)に起因する干渉を、打ち消すように作用させて非干渉化し、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な制御が可能となる。
【0045】
特に、傾斜温度を、干渉を打ち消すように、傾斜温度用の温度制御手段の入力側または出力側にフィードバックする非干渉化手段を設け、あるいは、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を、代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整するので、制御対象における温度差(傾斜温度)に起因する熱流の流れを、打ち消すように作用させて非干渉化し、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等を抑制して、安定な温度制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0047】
図1は、本発明に係る温度調節器を用いた温度制御システムの構成図である。
【0048】
この実施の形態の温度調節器1は、制御対象2のモデルとして、本件出願人が、例えば、特開2004−94939号公報で提案しているフィードバック型のモデル構造を用いるものであり、2チャネルの傾斜温度制御に適用して説明する。
【0049】
この実施形態の温度調節器1は、制御対象2の2つの制御点の検出温度θ1,θ2を、モード変換行列(Gm)によって、両検出温度の平均値である平均温度θaおよび両検出温度の温度差である傾斜温度θgに変換するモード変換器3と、平均温度θaと目標平均温度r1との偏差に基づいて、操作量を演算する平均モードのコントローラCaと、傾斜温度θgと目標傾斜温度r2との偏差に基づいて、操作量を演算する傾斜モードのコントローラCgと、各コントローラCa,Cgの出力を、モード変換行列の逆行列(Gm−1)で変換して制御対象2へ配分する前置補償器としての変換器4とを備えており、かかる構成は、従来の傾斜温度制御と基本的に同様である。なお、この例では、傾斜温度制御おける代表温度を、平均温度としているが、平均温度に限らず、例えば、或るチャネルの温度を代表温度としてもよい。
【0050】
各モードのコントローラCa,Cgは、PIDコントローラが好ましいが、少なくともP制御を行うコントローラであればよい。
【0051】
この実施形態の温度調節器1では、干渉の強い制御対象であっても、ハンチング等が生じないように、傾斜温度θgを、各モードのコントローラCa,Cgの出力側にそれぞれフィードバックする平均モードおよび傾斜モードの非干渉化器Fa,Fgを備えるとともに、この非干渉化器Fa,Fgおよび各コントローラCa,Cgのゲインを調整するゲイン調整手段5とを備えている。
【0052】
上記モード変換器3、各コントローラCa,Cg、変換器4、非干渉化器Fa,Fgおよびゲイン調整手段5は、例えば、マイクロコンピュータによって構成される。
【0053】
ここで、制御対象2のモデル構造について簡単に説明する。
【0054】
このモデル構造は、上述のように本件出願人が先に提案しているものであって、各チャネルの温度θ1,θ2の差を、干渉項6を介して入力側に正負を異ならせてそれぞれフィードバックするものであり、H1,H2は、ヒータの発熱度合いを示すものである。
【0055】
このモデル構造は、熱干渉系の熱モデルであり、温度差があるときに、熱量の移動が生じ、この熱量の移動は、温度差に比例するというフーリエの法則の意味するところと等価である。
【0056】
温度差によって、一方のチャネルから他方のチャネルへ熱量の移動が生じ、一方のチャネルは熱量が奪われ(負)、他方のチャネルには熱量が足される(正)という熱干渉の現象をブロック線図で表したものであり、熱系の制御対象の干渉は、二つの温度があって、温度の差ができたときに、その温度差に比例した熱量の移動が起こるというフーリエの法則を意味しており、このモデル構造を、以下、「温度差モデル」ともいう。
【0057】
この実施形態では、干渉の度合いを表す干渉項6の伝達関数Gβおよび発熱度合いを表す伝達関数H1,H2は、それぞれ次式で示される。
Gβ=β/(Tβ・s+1)
H1=H2=Hi=hi/(Ti・s+1)
ここで、βは干渉度、Tβは干渉のむだ時間、hiはヒータの発熱量、Tiはむだ時間である。
【0058】
また、モデル構造の要素Hsiの伝達関数は、Hs1=Hs2=Hsi=gi/(Tsi・s+1)である。
【0059】
ゲイン調整手段5は、制御対象2の特性を求めるために、ステップ状の操作量を制御対象2に与えるMV設定手段9と、そのときの制御対象2のステップ応答波形を取得するPV取得手段10と、両チャネルの干渉度合いを求める干渉度推定手段11と、各コントローラCa,Cgのゲインおよび各非干渉化器Fa,Fgの設定を行なうゲイン設定手段12とを備えている。
【0060】
この実施形態の非干渉化器Fa,Fgの伝達関数は、それぞれ次式で表される。
【0061】
【数1】
【0062】
【数2】
【0063】
これらの伝達関数は、温度差モデルの干渉項をキャンセルするための非干渉化器を設計し、この非干渉化器に対してモード変換を実施することで求められる。
【0064】
平均モードの非干渉化器Faは、H1とH2との特性が等しい場合は、0となり、省略することができる。
【0065】
次に、この実施形態のコントローラの設計の手順を説明する。この実施形態では、非干渉化器Fa,Fgによって非干渉化を図っているので、平均モードおよび傾斜モードの各コントローラCa,Cgのゲインは、同じに設定することができる。
【0066】
(1)先ず、制御対象2の波形を取得し、見かけの傾きRiを求める。
【0067】
すなわち、図1において、制御対象2と変換器4との間の接続スイッチ7,8を切り、制御対象2を、ゲイン調整手段5側に接続する。
【0068】
MV設定手段9は、図2に示すように、1チャネルずつステップ状の操作量U1,U2を加え、PV取得手段10はその時の制御量PV1,PV2を全チャネル分取得する。
【0069】
図3および図4に、チャネル1およびチャネル2のステップ応答の実験結果の一例を示す。なお、Ri’は、後述のチャネルiの見かけの傾きを示している。
【0070】
図3および図4において、チャネル1の入力である操作量をU1、出力である検出温度をPV1とし、チャネル2の入力である操作量をU2、出力である検出温度をPV2としている。
【0071】
また、この図3および図4では、図5に示すように、チャネル1にステップ状の操作量U11を入力したときのチャネル2の操作量をU21、前記操作量U11に対するチャネル1,2の検出温度の変化をPV11,PV21とし、また、チャネル2にステップ状の操作量U22を入力したときのチャネル1の操作量をU12、前記操作量U22に対するチャネル1,2の検出温度の変化をPV12,PV22としている。
【0072】
図3では、チャネル1の操作量U11=1のステップ入力に対して、チャネル1の検出温度PV11が、5.148となったことを示している。また、チャネル2もチャンネル1の影響を受けて検出温度PV21が、5.071となったことを示している。
【0073】
このチャネル1の応答波形、すなわち、チャネル1の操作量U1の変化U11に対する検出温度PV1の応答波形PV11から、後述のようにして、見掛けの傾きR1’=0.5、むだ時間L1’=0.7秒が得られる。
【0074】
また、チャネル2の操作量U2を、図4に示すように、同様にステップ状に変化させて、応答波形を計測する。
【0075】
このチャネル2の応答波形、すなわち、チャネル2の操作量U2の変化U22に対する検出温度PV2の応答波形PV22から、見掛けの傾きR2’=0.5、むだ時間L2’=0.7秒が得られる。
【0076】
ここで、見かけの傾きR’と真の傾きRとの関係について説明する。
【0077】
図6に示すように、例えば、二つのヒータブロック21,22からなる干渉のある制御対象2の温度を、熱電対等の温度センサ13で検出し、温度調節器14によって、SSR15を介してヒータ16による通電を制御する温度制御システムにおいて、図7に示すように、各ヒータの目標温度SPをステップ状に変化させてステップ応答波形を計測する
図8は、ステップ応答波形であり、実線は、干渉がない場合を示し、破線は、干渉がある場合を示している。
【0078】
干渉がある場合には、干渉領域への熱の流出が生じるために、温度上昇の波形がなだらかとなり、本来は、真の傾きR(=K/T)を求めたいのに、見かけの傾きR’(=K/T’)が求まることになる。また、RとR’との関係は、次のようになる。
R=K/T>R’=K/T’
従って、ZN法によるゲイン設計では、比例ゲインKp=1.2/RLは、適正な値よりも大きく見積もられることになる。
【0079】
(2)そこで、この実施形態では、チャネル毎に真の傾きRi、無駄時間Liを、次式によって算出する。
Ri=Ri’×(PV1i+PV2i+…+PVni)/PVii
Li=LI’
i:チャネル番号
n:最大チャネル数
PV1i:チャネルiにステップ入力を与えた時のチャネル1の制御量(PV1)
上述の図3および図4の実験結果に適用すると、
R1=R1’×(PV11+PV21)/PV11
=0.5×(5.148+5.071)/5.148=0.993
L1=L1’=0.7
R2=R2’×(PV12+PV22)/PV22
=0.5×(5.071+5.122)/5.122=0.995
L2=L2’=0.7
となる。
【0080】
ここで、上記のようにして見かけの傾きR’から真の傾きRが得られる理由について定性的に説明する。
【0081】
チャネル数がnのとき、n個間に干渉無く分割された状態の温度上昇の傾きを真のRと定義する。しかし、実際には、n個はつながっているのでi番目のチャネルに加えた熱流は他のチャネルに漏れる。そのために、チャネルiの温度上昇は低下し、他のチャネルの温度は上昇する。干渉が非常に大きいときには、全てのチャネルが同じ傾きRで上昇する。そのときの傾きは、チャネル数分の一になる。
【0082】
干渉が非常に大きくないときには、加熱するチャネルの傾きRが最も大きく、その周辺に離れるに従って、傾きRが小さくなる。漏れた熱流による温度上昇R分を全て集めて1つのセルの温度上昇にすれば、真の傾きRを求めることができる。これを意味するものが次の数式である。
Ri=Ri’×(R1i+R2i+・・・+Rni)/Rii
このままでも良いが、Rの代わりに計測し易い定常温度のPVを使った場合が上記式となる。1次遅れの時定数が揃ってTとして等しいとき、R=K/Tの式からRの比率はKの比率に比例し、MVが一定であれば,PV=K×MVなので、RをPVに置きかえることができ、上述の式が得られる。
【0083】
(3)次に、以上のようにして得られた真の傾きRi、無駄時間Liを用いて各モードの傾きRa(=Rg)、無駄時間La(=Lg)を計算する。ここで、各モードの傾きRa(=Rg)はRiの最大値とする。
Ra=max(Ri)=max(0.993,0.995)=0.995
La=max(Li)=max(0.7,0.7)=0.7
尚、各モードの傾きRa(=Rg)はRiの平均値としてもよい。
【0084】
(4)次に、ZN法によって各モードのコントローラCa,Cgのゲインを設計する。
Kpa=Kpg=1.2/(Ra×La)=1.2/(0.995×0.7)=1.72
Tia=Tig=2×La=2×0.7=1.4
Tda=Tdg=0.5×La=0.5×0.7=0.35
(5)次に、干渉成分βを同定する。
【0085】
この干渉成分βは、本件出願人が先に提案して国際公開されている、例えば、WO2006/088072に示されるように、定常特性から得ることができ、例えば、各チャネルに順番にステップ状の入力を与えたときの各チャンネルの定常状態での出力の変化を計測することにより、求めることができる。
【0086】
ここで、上記国際公開された出願の内容を引用して干渉成分βの導出の概要を説明する。
【0087】
図9は、上述のモデル構造を複数チャネルに適用したものであり、図1の要素Hsiが、図9のモデル要素601〜60nに対応し、干渉項6が、フィードバック要素6112〜61(n−1)nに対応する。また、図9および後述の図10では、θは熱抵抗を示している。
【0088】
複数(n)のモデル要素601〜60nは、定常ゲインK1〜Knおよび時定数T1〜Tnを用いた一次遅れ系とし、複数(n−1)のフィードバック要素6112〜61(n−1)nは、熱抵抗θ12〜θ(n−1)nによる定値としている。また、入力をP1〜Pn、出力をT1〜Tnとしている。
【0089】
ここでは、定常特性を考え、定常状態からパラメータを求める。
【0090】
熱系の制御対象の伝達関数G(s)を、一次遅れ系とすると、
G(s)=K/(1+Ts)
となる。ここで、Kは定常ゲイン、Tは時定数、sはラプラス変換の演算子である。
【0091】
定常状態では、s=0なので、
G(s)=K
となる。
【0092】
定常ゲインKは、一定値の熱流(入力)Pと定常温度(出力)Tとを使って
K=T/P
と表すことができる。
【0093】
一方、熱抵抗θは、オームの法則に似せて、熱流Pと温度Tとを用いて
θ=T/P
と表すことができる。
【0094】
したがって、定常状態では、
K=θ
と表すことができる。
【0095】
したがって、図9のモデル構造において、定常特性(s=0)のみを考えると、モデル要素601〜60nは、時定数T1〜Tnの項が消えるとともに、定常ゲインK1〜Knを熱抵抗θ1〜θnに置き換えることができ、図10に示すように、1入力1出力の熱抵抗θ1〜θnをそれぞれ有する複数(n)のモデル要素601〜60nと、モデル要素601〜60nの出力の差を入力側にフィードバックする熱抵抗θ12〜θ(n−1)nをそれぞれ有する複数(n−1)のフィードバック要素6112〜61(n−1)nとを備えるモデル構造となる。
【0096】
図10のモデル構造の各要素のパラメータである熱抵抗θ1〜θn,θ12〜θ(n−1)nを、次のようにして求めるものである。
【0097】
すなわち、第1の入力P1にステップ入力P11を入力したときに、定常状態で計測される各出力T1〜Tnの変化を、T11〜T1nとし、第2の入力P2にステップ入力P22を入力したときに、定常状態で計測される各出力T1〜Tnの変化を、T21〜T2nとし、同様に、第nの入力Pnにステップ入力Pnnを入力したときに、定常状態で計測される各出力T1〜Tnの変化を、Tn1〜Tnnとすると、各要素の熱抵抗θ1〜θn,θ12〜θ(n−1)nは、下記の数3,数4の式で算出することができる。
【0098】
なお、制御対象を熱処理盤とすると、ステップ入力P11〜Pnnとしては、熱処理盤を加熱するヒータ出力を想定することができ、定常状態で計測される各出力T1〜Tnの変化であるT11〜Tnnとしては、温度変化を想定することができる。
【0099】
【数3】
【0100】
【数4】
【0101】
上記式によって、各要素の熱抵抗が算出できる理由について、上記国際公開された出願に詳述している。
【0102】
以上のようにして、各チャネルに順番にステップ状の入力を与えたときの各チャネルの定常状態での出力の変化を計測することにより、フィードバック要素、すなわち、図1の干渉項6の熱抵抗である干渉成分を求めることができる。
【0103】
この例では、例えば、β=5.0が求まる。
【0104】
(6)次に、非干渉化器Fa,Fgを、上述(1),(2)式の伝達関数に従って設計する。
【0105】
平均モードの非干渉化器Faは、H1とH2との特性が等しい場合には不要になる。
【0106】
傾斜モードの非干渉化器Fgは、簡単のため、周波数特性の無い部分だけで非干渉化しても、十分な効果が得られる。
【0107】
上述のように、H1とH2との特性が等しい場合には、図11に示すように、平均モードの非干渉化器Faを省略する構成としてもよい。なお、図11では、ゲイン調整手段5は図示省略している。
【0108】
また、傾斜モードの非干渉化器Fgを、周波数特性の無い部分Fg’=(β/Tβ)[(T1/h1)+(T2/h2)]だけで構成し、図12に示すように、従来の傾斜モードのコントローラCgに並列に設ける構成としてもよい。
【0109】
この構成は、図13に示すように、傾斜モードのコントローラCgの操作量からFg’を減算するものであり、この簡略化した非干渉化器(−Fg’)を、従来の傾斜モードのコントローラCgに実装して、図14に示されるように、傾斜モードのコントローラCg’を構成してもよい。この場合には、新たに非干渉化器を追加することなく、従来の温度調節器をそのまま利用できることになる。
【0110】
この図14の新たな傾斜モードのコントローラCg’では、傾斜モードの比例ゲインを下げ、積分ゲインおよび微分ゲインは、前の値を維持するようにしている。すなわち、平均モードのコントローラCaに比べて、比例ゲインは、干渉分だけ小さくし、積分ゲインおよび微分ゲインは同じにしている。
【0111】
この例では、
Kpg=Kpa−(T1/h1+T2/h2)×β/Tβ
=1.72−(1/1+1/1)×5/5=−0.28
Kig=Kia=0.58
Kdg=Kda=2.86
となる。
【0112】
このように、簡略化した傾斜モードの非干渉化器(−Fg’)を、従来の傾斜モードのコントローラCgに実装する場合のゲイン調整の手順は、次のようになる。
【0113】
すなわち、上述と同様に、制御対象2の波形を取得し、見かけの傾きRiを求め、見かけの傾きRiからチャネル毎に真の傾きRi、無駄時間Liを、算出し、平均モードのRa、Laを計算し、平均モードのコントローラCaのゲインを設計し、次に、干渉成分βを同定し、最後に、傾斜モードのコントローラCgを、平均モードのコントローラCaに比べて、比例ゲインは、干渉分だけ小さく、積分ゲインおよび微分ゲインは同じになるように設計する。
【0114】
図15は、以上のようにして平均モードおよび傾斜モードの各コントローラCa,Cgのゲインが調整されたときのステップ応答を示す図であり、この図15では、各モードの波形が重なって不明瞭になるのを避けるために、平均モードおよび傾斜モードの各ステップ応答を(a),(b)に分けてそれぞれ示している。
【0115】
この図15に示すように、最初は、波形がハンチングしているが、最終的には、目標値に整定している。
【0116】
なお、図16には、比較のために、非干渉化器Fa,Fgを設けることなく、平均モードのコントローラCaと傾斜モードのコントローラCgとを、同じゲインに調整した従来例、すなわち、図20の従来例のステップ応答を示している。図16(a)に示すように平均モードをステップ状に変化させると、図16(b)に示すように干渉によって傾斜モードが発散してしまう。
【0117】
図17は、本発明の他の実施形態の図1に対応する構成図であり、この実施形態では、平均モードの非干渉化器Faは省略し、傾斜モードの非干渉化器Fgを簡略化して傾斜モードのコントローラCgに実装して、上述の図14に示される傾斜モードのコントローラCg’を構成したものである。
【0118】
この実施形態では、傾斜モードのコントローラCg’のゲインの調整を、探索によって行うものである。
【0119】
すなわち、この実施形態のゲイン調整手段5−1は、ゲイン探索手段16を有しており、ゲイン探索によって、傾斜モードのコントローラCg’ゲインを調整するものである。
【0120】
平均モードのコントローラCaのゲインを設計し、干渉成分βを求めるまでの手順は、上述の実施形態と同様である。
【0121】
この実施形態では、傾斜モードのコントローラCg’ゲインの設計を次のようにして行う。
【0122】
すなわち、ゲイン探索手段16は、傾斜モードのゲイン候補を傾斜モードのコントローラCg’に設定する。
【0123】
ゲイン探索手段16は、傾斜モードの目標値r2としてステップ状の目標入力を入れる。ゲイン探索手段16は、評価指標として傾斜モードの偏差平方和(Σ(r2−θg)2)を計算し、結果を記憶する。
【0124】
傾斜モードの比例ゲイン候補として0または以下の式で表される値のうち小さい方に達するまでゲインを少しずつ小さくなるように変更する。傾斜モードの積分ゲイン、微分ゲインは変更しない。
Kgi*=Kpa−{(βi,i+1/hi)(Ti/Tβi,i+1)+(βi+1,i/hi+1)(Ti+1/Tβi+1,i)}
ここで、Kgi*:チャネルiの比例ゲインの推定値
Kpa:平均モードの比例ゲイン
hi:ヒータiの発熱量
βi,j:ヒータjからヒータiへの干渉度
Ti:ヒータiの無駄時間
Tβi,j:ヒータjからヒータiへの無駄時間
一連の探索が終了したら、最も偏差平方和が小さくなる比例ゲインをKpgとしてコントローラCg’に設定する。
【0125】
以上でゲイン探索を終了する。
【0126】
なお、積分ゲインおよび微分ゲインは、上述の実施形態と同様に、平均モードのコントローラCaと同じ値に設定する。
【0127】
上述の各実施形態では、平均および傾斜の操作量を、配分する前置補償器を、モード変換行列Gmの逆行列Gm−1で変換する変換器4で構成したけれども、本発明の他実施形態として、図18に示すように、変換器4と、干渉係数の行列Gpの逆行列Gp−1で変換する変換器17とによって、前置補償器を構成してもよい。
【0128】
ここで、干渉係数は、各ヒータに与える操作量を順番に変動させて、そのときの検出温度の最大振幅ΔPVまたは傾き(ΔPVを、最大振幅に至るまでの時間から無駄時間を引いた時間で割った値)である。
【0129】
その他の構成は、上述の実施形態と同様である。
【0130】
また、本発明は、図19に示されるように、カスケード制御に適用してもよい。すなわち、上述の実施形態を用いて主ループを構成し、副ループのコントローラC1,C2の目標温度を調整するようにしてもよい。
【0131】
上述の各実施形態では、ゲイン調整手段は、温度調節器に内蔵させたけれども、本発明の他の実施形態として、ゲイン調整装置として、温度調節器とは独立の装置として構成し、通信などによって温度調節器に対してゲインを設定するようにしてもよい。
【0132】
上述の各実施形態では、制御対象の温度の制御に適用して説明したけれども、本発明は、温度に限らず、圧力、流量、液位などの他の物理量の制御にも適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、制御対象から得られる複数の物理量の差である傾斜物理量、例えば、傾斜温度を利用して制御する温度調節器などの制御装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る温度制御システムの構成図である。
【図2】ステップ応答を説明するための図である。
【図3】一方のチャネルにステップ入力を与えたときの出力を示す図である。
【図4】他方のチャネルのステップ入力を与えたときの出力を示す図である。
【図5】入力と出力との対応を示すタイムチャートである。
【図6】温度制御システムの全体構成を示す図である。
【図7】ステップ入力波形を示す図である。
【図8】見かけの傾きR’と真の傾きRとを示す波形図である。
【図9】図1のモデル構造のブロック線図である。
【図10】定常状態に対応する図9のブロック線図である。
【図11】本発明の他の実施形態の要部の構成図である。
【図12】本発明の更に他の実施形態の要部の構成図である。
【図13】図12の要部の詳細構成を示す図である。
【図14】本発明の他の実施形態の傾斜モードのコントローラの構成図である。
【図15】実施形態の制御波形を示す図である。
【図16】従来例の制御波形を示す図である。
【図17】本発明の他の実施形態の温度制御システムの構成図である。
【図18】本発明の更に他の実施形態の温度制御シテスムの構成図である。
【図19】本発明の他の実施形態の温度制御シテスムの構成図である。
【図20】従来例の温度制御システムの構成図である。
【符号の説明】
【0135】
1 温度調節器
2 制御対象
3 モード変換器
5,5−1 ゲイン調整手段
Ca 平均モードのコントローラ
Cg,Cg’ 傾斜モードのコントローラ
Fa 平均モードの非干渉化器
Fg,Fg’ 傾斜モードの非干渉化器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの複数の物理量の差である傾斜物理量に基づいて、操作量を演算する傾斜物理量用の物理状態制御手段と、前記複数の物理量の代表的な物理量である代表物理量に基づいて、操作量を演算する代表物理量用の物理状態制御手段とを備える制御装置において、
前記傾斜物理量を、前記傾斜物理量用の物理状態制御手段の入力側および出力側の少なくとも一方側に、干渉を打ち消すようにフィードバックする傾斜物理量用の非干渉化手段を備えることを特徴する制御装置。
【請求項2】
制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器において、
前記傾斜温度を、前記傾斜温度用の温度制御手段の入力側および出力側の少なくとも一方側に、干渉を打ち消すようにフィードバックする傾斜温度用の非干渉化手段を備えることを特徴する温度調節器。
【請求項3】
前記傾斜温度を、前記代表温度用の温度制御手段の入力側および出力側の少なくとも一方側に、干渉を打ち消すようにフィードバックする代表温度用の非干渉化手段を備える請求項2に記載の温度調節器。
【請求項4】
前記非干渉化手段は、前記制御対象の干渉が強い程、フィードバック量の絶対値を大きくする請求項2または3に記載の温度調節器。
【請求項5】
前記温度制御手段は、少なくとも比例制御を行うものであって、前記傾斜温度用の非干渉化手段は、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例操作量の絶対値を減少させるようにフィードバックする請求項2〜4のいずれか1項に記載の温度調節器。
【請求項6】
前記傾斜温度用の非干渉化手段は、前記傾斜温度に代えて、傾斜温度と目標傾斜温度との偏差を入力とし、非干渉化演算の出力を、前記傾斜温度用の温度制御手段の出力側に与える請求項2〜5のいずれか1項に記載の温度調節器。
【請求項7】
制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの複数の物理量の差である傾斜物理量に基づいて、操作量を演算する傾斜物理量用の物理状態制御手段と、前記複数の物理量の代表的な物理量である代表物理量に基づいて、操作量を演算する代表物理量用の物理状態制御手段とを備える制御装置において、
前記傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値が、前記代表物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整されることを特徴とする制御装置。
【請求項8】
制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器において、
前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値が、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整されることを特徴とする温度調節器
【請求項9】
前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインが、前記制御対象の干渉が強い程、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインとの差の絶対値が大きくなるように調整される請求項8に記載の温度調節器。
【請求項10】
制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの複数の物理量の差である傾斜物理量に基づいて、操作量を演算する傾斜物理量用の物理状態制御手段と、前記複数の物理量の代表的な物理量である代表物理量に基づいて、操作量を演算する代表物理量用の物理状態制御手段とを備える制御装置の前記各物理状態制御手段のゲインを調整する装置において、
前記傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値を、前記代表物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整することを特徴するゲイン調整装置。
【請求項11】
制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器の前記各温度制御手段のゲインを調整する装置において、
前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整することを特徴するゲイン調整装置。
【請求項12】
前記制御対象の干渉が強い程、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインと前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインとの差の絶対値が大きくなるように調整する請求項11に記載のゲイン調整装置。
【請求項13】
制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段と、各温度制御手段からの操作量を、前記制御対象を加熱する複数のヒータに配分する配分手段とを備える温度調節器の前記各温度制御手段のゲインを調整する装置において、
評価指標に基づき前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインを探索して調整するものであって、
比例ゲインの探索範囲内に、以下の式にて表される値を含むことを特徴とするゲイン調整装置。
Kpa−{(βi,j/hi)(Ti/Tβi,j)+(βj,i/hj)(Tj/Tβj,i)}
但し、Kpa:代表温度用の温度制御手段の比例ゲイン
hi:ヒータiの発熱量
βi,j:ヒータjから隣のヒータiへの干渉度
Ti:ヒータiの無駄時間
Tβi,j:ヒータjから隣のヒータiへの無駄時間
【請求項14】
制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器の前記各温度制御手段のゲインを調整する装置において、
評価指標に基づきゲインの良否を判定して探索するゲイン探索手段を有し、該ゲイン探索手段は、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を、代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値より小さな値で探索することを特徴とするゲイン調整装置。
【請求項15】
前記ゲイン探索手段は、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの探索範囲に負の値を含む請求項14に記載のゲイン調整装置。
【請求項1】
制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの複数の物理量の差である傾斜物理量に基づいて、操作量を演算する傾斜物理量用の物理状態制御手段と、前記複数の物理量の代表的な物理量である代表物理量に基づいて、操作量を演算する代表物理量用の物理状態制御手段とを備える制御装置において、
前記傾斜物理量を、前記傾斜物理量用の物理状態制御手段の入力側および出力側の少なくとも一方側に、干渉を打ち消すようにフィードバックする傾斜物理量用の非干渉化手段を備えることを特徴する制御装置。
【請求項2】
制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器において、
前記傾斜温度を、前記傾斜温度用の温度制御手段の入力側および出力側の少なくとも一方側に、干渉を打ち消すようにフィードバックする傾斜温度用の非干渉化手段を備えることを特徴する温度調節器。
【請求項3】
前記傾斜温度を、前記代表温度用の温度制御手段の入力側および出力側の少なくとも一方側に、干渉を打ち消すようにフィードバックする代表温度用の非干渉化手段を備える請求項2に記載の温度調節器。
【請求項4】
前記非干渉化手段は、前記制御対象の干渉が強い程、フィードバック量の絶対値を大きくする請求項2または3に記載の温度調節器。
【請求項5】
前記温度制御手段は、少なくとも比例制御を行うものであって、前記傾斜温度用の非干渉化手段は、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例操作量の絶対値を減少させるようにフィードバックする請求項2〜4のいずれか1項に記載の温度調節器。
【請求項6】
前記傾斜温度用の非干渉化手段は、前記傾斜温度に代えて、傾斜温度と目標傾斜温度との偏差を入力とし、非干渉化演算の出力を、前記傾斜温度用の温度制御手段の出力側に与える請求項2〜5のいずれか1項に記載の温度調節器。
【請求項7】
制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの複数の物理量の差である傾斜物理量に基づいて、操作量を演算する傾斜物理量用の物理状態制御手段と、前記複数の物理量の代表的な物理量である代表物理量に基づいて、操作量を演算する代表物理量用の物理状態制御手段とを備える制御装置において、
前記傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値が、前記代表物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整されることを特徴とする制御装置。
【請求項8】
制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器において、
前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値が、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整されることを特徴とする温度調節器
【請求項9】
前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインが、前記制御対象の干渉が強い程、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインとの差の絶対値が大きくなるように調整される請求項8に記載の温度調節器。
【請求項10】
制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの複数の物理量の差である傾斜物理量に基づいて、操作量を演算する傾斜物理量用の物理状態制御手段と、前記複数の物理量の代表的な物理量である代表物理量に基づいて、操作量を演算する代表物理量用の物理状態制御手段とを備える制御装置の前記各物理状態制御手段のゲインを調整する装置において、
前記傾斜物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値を、前記代表物理量用の物理状態制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整することを特徴するゲイン調整装置。
【請求項11】
制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器の前記各温度制御手段のゲインを調整する装置において、
前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値よりも小さな値に調整することを特徴するゲイン調整装置。
【請求項12】
前記制御対象の干渉が強い程、前記代表温度用の温度制御手段の比例ゲインと前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインとの差の絶対値が大きくなるように調整する請求項11に記載のゲイン調整装置。
【請求項13】
制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段と、各温度制御手段からの操作量を、前記制御対象を加熱する複数のヒータに配分する配分手段とを備える温度調節器の前記各温度制御手段のゲインを調整する装置において、
評価指標に基づき前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインを探索して調整するものであって、
比例ゲインの探索範囲内に、以下の式にて表される値を含むことを特徴とするゲイン調整装置。
Kpa−{(βi,j/hi)(Ti/Tβi,j)+(βj,i/hj)(Tj/Tβj,i)}
但し、Kpa:代表温度用の温度制御手段の比例ゲイン
hi:ヒータiの発熱量
βi,j:ヒータjから隣のヒータiへの干渉度
Ti:ヒータiの無駄時間
Tβi,j:ヒータjから隣のヒータiへの無駄時間
【請求項14】
制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段からの複数の検出温度の温度差である傾斜温度に基づいて、操作量を演算する傾斜温度用の温度制御手段と、前記複数の検出温度の代表的な温度である代表温度に基づいて、操作量を演算する代表温度用の温度制御手段とを備える温度調節器の前記各温度制御手段のゲインを調整する装置において、
評価指標に基づきゲインの良否を判定して探索するゲイン探索手段を有し、該ゲイン探索手段は、傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値を、代表温度用の温度制御手段の比例ゲインの絶対値より小さな値で探索することを特徴とするゲイン調整装置。
【請求項15】
前記ゲイン探索手段は、前記傾斜温度用の温度制御手段の比例ゲインの探索範囲に負の値を含む請求項14に記載のゲイン調整装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−250993(P2008−250993A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42540(P2008−42540)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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