制御装置
【課題】サーボモータで駆動される被駆動体の振動を抑制する。
【解決手段】 サーボモータ2で駆動される被駆動体3に加速度検出手段7を設ける。該加速度検出手段7で検出された加速度検出値に係数14を乗じて補正値を求め、速度指令からこの補正値を減じて補正し、速度制御処理部12で速度フィードバック制御を行い、電流指令を求める。さらに電流制御処理を行ってサーボモータ2を駆動し、被駆動体3を移動させる。被駆動体の振動により加速度検出値が増大すれば、速度指令が補正されてこの振動を抑制するように作用するから、被駆動体3の振動は抑制される。加速度検出値に基づく速度指令の補正処理を速度制御処理周期毎実行することにより、処理時間を少なくして、被駆動体3の振動を抑制できる。
【解決手段】 サーボモータ2で駆動される被駆動体3に加速度検出手段7を設ける。該加速度検出手段7で検出された加速度検出値に係数14を乗じて補正値を求め、速度指令からこの補正値を減じて補正し、速度制御処理部12で速度フィードバック制御を行い、電流指令を求める。さらに電流制御処理を行ってサーボモータ2を駆動し、被駆動体3を移動させる。被駆動体の振動により加速度検出値が増大すれば、速度指令が補正されてこの振動を抑制するように作用するから、被駆動体3の振動は抑制される。加速度検出値に基づく速度指令の補正処理を速度制御処理周期毎実行することにより、処理時間を少なくして、被駆動体3の振動を抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械を駆動する制御装置に関する。特に、機械に加速度検出手段を取り付けて機械の加速度情報をフィードバックし、機械動作の安定化を図った制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械において、サーボモータで駆動される被駆動体の位置や速度を制御するために、通常、位置フィードバック、速度フィードバックさらには電流フィードバック制御がなされている。図16はこのサーボモータを制御するサーボ制御部のブロック図である。サーボモータ2または該サーボモータ2によって駆動される被駆動体3には、その速度及び位置を検出する位置検出手段6、速度検出手段5が設けられている。さらには、サーボモータ2を駆動する電流値を検出する電流検出手段4が設けられ、これらの検出手段4,5,6の検出信号がフィードバックされている。
【0003】
位置制御処理部11においては、位置指令と位置検出手段6からの位置フィードバック信号により位置偏差を求め該位置偏差に位置ループゲインを乗じて速度指令が求められる。また、速度制御処理部12では、位置制御処理部11から出力された速度指令と速度検出手段5からの速度フィードバック信号により速度偏差を求め比例、積分(または積分、比例)等の速度フィードバック制御を行い電流指令を求める。電流制御処理部13ではこの電流指令と電流フィードバック信号とにより電流フィードバック制御を行い、サーボアンプを介してサーボモータ2を駆動制御する。
【0004】
以上が一般的に行われている工作機械の送り軸等の被駆動体3の位置、速度、電流の制御方法であり、通常、プロセッサによってこの位置、速度、電流の制御処理が行われている。このような位置、速度、電流のフィードバック制御を行っても、サーボモータ2の角加速度が急激に変化する際、被駆動体3に振動が発生する場合があり、その対策として、被駆動体3の加速度を検出する加速度センサを設け、該加速度センサからの信号を速度フィードバック制御により出力される電流指令から差し引き、電流フィードバック制御の電流指令とする制御方法が提案されている。
【0005】
被駆動体に振動が発生すると、加速度センサで検出される被駆動体の加速度信号中の振動成分は、電流フィードバック制御に対する電流指令に対して誤差となることから、この誤差が無くなるように電流指令から差し引き、サーボモータの駆動電流を制御することで振動を抑制したものである(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平6−91482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
制御系において、応答性をよくするには、微分制御を用いればよいことは知られている。サーボモータの位置、速度制御においても、速度ループ制御にPID(比例、積分、微分)制御を用い応答性を向上させることができる。しかし、位置または速度検出器からの位置または速度情報を微分(または速度偏差を微分)することにより得られる加速度情報には、ノイズが多く制御性が悪いという問題がある。また、ノイズを除去するためにフィルタを加えた場合、フィルタによる位相変化が制御性を悪化させるという問題を含んでいる。
【0008】
特許文献1に示されるような加速度センサを用いた場合、ノイズ、位相変化の少ない加速度情報を得ることができる。しかし、この特許文献1に記載された発明は、加速度センサで検出した加速度検出値に基づいて電流指令を補正し電流制御処理を行うものである。一般に、電流制御周期は位置、速度制御周期より短く、加速度検出値を使用して電流指令を補正する場合処理時間が増大するという問題がある。
【0009】
さらには、電流指令値から加速度検出値を引く方式では、加速度検出値を制御装置に取り込む際の通信による遅れ、また、電流指令を入力してから被駆動体が移動するまでの遅れの影響で、振動抑制効果が十分に得られない場合がある。また、加速度センサで検出した加速度検出値で電流指令を補正して制御し、被駆動体を往復運動させ、同位置に戻ったとき、加速度情報の積分値が「0」にならないという問題がある。
本発明は上述した問題点を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、本願請求項1に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を備え、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して前記速度指令を補正することを特徴とするものである。また、請求項2に係る発明は、前記速度指令の補正を、加速度検出値に所定の係数を乗算した結果を前記速度指令から減算することによって行うものとした。
【0011】
請求項3に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値と前記速度指令値の1階微分値とを用いて速度指令値を補正することを特徴とするものである。
請求項4に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と前記速度推定値と前記速度検出値とを用いて被駆動体の速度を制御する速度制御処理部とを有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令と前記速度推定値とを用いて速度を制御する速度制御処理部を備えることを特徴とするものである。また請求項6に係る発明は、上述の請求項1乃至5に係る発明において、さらに、位置指令値と位置検出値とを用いて速度指令を速度制御処理部に出力し位置を制御する位置制御処理部を有し、前記速度指令を補正する代わりに、前記位置指令を補正することを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段とを有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値と前記速度指令値の1階微分値とを用いて前記速度制御処理部が出力する電流指令値を補正することを特徴とするものである。
請求項8に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記速度推定値を用いて電流指令を補正することを特徴とするものである。
【0014】
請求項9に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記加速度検出値に所定の係数を乗算した結果だけでなく、前記速度推定値に所定の係数を乗算した結果でも電流指令を補正することを特徴とするものである。
【0015】
請求項10に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記加速度検出値に所定の係数を乗算した結果だけでなく、前記速度推定値と前記速度指令との差分に所定の係数を乗算した結果でも電流指令を補正することを特徴とするものである。
【0016】
請求項11に係る発明は、請求項1、2に係る発明において、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを備え、前記速度推定値を用いて電流指令も補正することを特徴とするものである。また、請求項12に係る発明は、請求項1〜11に係る発明において、被駆動体の位置を制御する位置制御処理部に位置偏差を積分する項を適用することで、前記加速度検出値により生じる定常偏差や速度推定値により生じる定常偏差の影響を除去することを特徴とするものである。
【0017】
請求項13、14に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、速度推定に定常成分を除去するフィルタ若しくは速度推定値を速度指令値に収束させるフィルタを適用し、フィルタの出力値を用いて前記速度検出値または前記速度指令値を補正することを特徴とするものである。
また、請求項15に係る発明は、請求項1〜11に係る発明において、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段が検出する加速度検出値にバンドパスフィルタを適用して出力するようにしたものである。
【0018】
請求項16、17に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて電流指令を作成する速度制御処理部と、サーボモータを駆動する駆動装置の電流を検出する電流検出手段と、前記速度制御処理部で作成された電流指令と電流検出値とを用いて電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて前記速度指令または前記電流指令に補正を行う制御装置において、上位コントローラからの信号により加速度検出値を使用した補正の強さを変更すること、若しくは、上位コントローラからの信号により加速度検出値を使用した補正を行わないようにすることを特徴とするものである。そして、上位コントローラからの信号として、請求項18に係る発明は、外部からの信号を利用するものとし、請求項19に係る発明は、プログラム指令に基づく信号を利用するものとし、請求項20に係る発明は、工作機械における切削送り時か否かの信号とした。また、請求項21に係る発明は、サーボモータが停止しているときに、上位コントローラはこの信号を出力するようにした。
【0019】
請求項22に係る発明は、サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の位置を検出する位置検出手段と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて被駆動体の位置を推定する位置推定処理部と、前記被駆動体の位置を指定する位置指令値と前記位置推定値と前記位置検出値とを用いて前記被駆動体の速度指令値を作成する位置制御処理部とを有することを特徴とするものである。
請求項23に係る発明は、被駆動体を複数のサーボモータで駆動するタンデム制御であって、各サーボモータの制御を請求項1〜22に係る発明の制御装置で行うものとした。
【発明の効果】
【0020】
加速度検出手段は、ノイズや位相変化が少ないことから、より正確な加速度情報に基づいて被駆動体の振動を抑制する補正ができる。特に、加速度検出手段はその配設位置を選択できるから、被駆動体における振動を抑えたい箇所に配置することによって、応答性よく、かつ正確にその振動を抑制することができる。また、電流制御処理周期よりも長い位置、速度制御周期で補正処理を実行できるから、補正に要する処理時間が少なくてすむ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の概要を説明する概要説明図である。
本発明においては、サーボモータ2で駆動される被駆動体3に加速度検出手段7を設けるものであり、該加速度検出手段7で検出した加速度検出値は、モータ制御部1に入力される。また、モータ制御部1には、被駆動体3の位置、速度を検出する位置検出手段6、速度検出手段5からの位置検出値、速度検出値が入力されている。さらに、位置指令、速度指令が入力され、位置、速度の制御さらには電流制御をこのモータ制御部1で実施し、サーボモータ2を駆動制御するものである。なお、図1中、符号9は、サーボモータの回転運動を直線運動に変換して被駆動体を駆動するボールネジ/ナット機構である。
【0022】
被駆動体3の位置及び速度を制御する場合には、図16に示したような位置制御処理部11、速度制御処理部12、電流制御処理部13をこのモータ制御部は備え、位置検出手段6及び速度検出手段5からの位置検出信号、速度検出信号に基づいて、位置ループ制御、速度ループ制御さらに、電流ループ制御が実施される。また、位置制御は行わず、速度制御のみ行う場合は、図16に示す位置制御処理部11及び位置検出手段6は設けられないものとなる。
【0023】
そして、本発明においては、上述した位置、速度、電流の制御処理を行うと共に加速度検出手段7からの加速度検出値に基づいて、位置指令、速度指令、電流指令等を補正して、被駆動体3の振動発生を防止するようにしているものである。なお、図1では、位置、速度を検出する検出手段をサーボモータに取り付けて、サーボモータの位置、速度を検出することによって被駆動体の位置、速度を検出する例を示している。当然、被駆動体3の位置、速度を直接検出する手段を設けてもよいものである。
【0024】
図2は、本発明の第1の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。この第1の実施形態は、加速度検出手段7で検出した加速度検出値によって、速度指令を補正するものである。
位置制御処理部から出力される速度指令、または上位コントローラ等から指令される速度指令から、速度検出手段5の出力である速度フィードバック値を減じて速度偏差を求めるが、このとき被駆動体3の加速度を検出する加速度検出手段7からの加速度検出値に所定係数14を乗じた値をも減じて速度指令を補正する。なお、加速度検出値に所定係数14を乗じた値を速度指令から減じても、速度指令と速度フィードバックの差である速度偏差から減じても、さらには、速度フィードバックに加算することによって補正してもよいものであり、結局、速度制御処理部12に入力される指令を加速度検出値によって補正するものである。これらは実質的に速度指令の補正と同じである。
【0025】
速度制御処理部12では、こうして入力された指令(補正された速度偏差)に基づいて、速度制御処理が実行されて電流指令が求められる。図2で示す第1の実施形態では、速度制御を積分項12a、比例項12bでPI(比例、積分)制御を行う例を示しているが、この速度制御処理部12での制御は、IP制御(積分、比例制御)で構成しても、またPID制御(比例、積分、微分制御)で構成してもよいものであり、本実施形態においては、速度指令を加速度検出値に基づいて補正する点に特徴があるものである。
【0026】
被駆動体が急激に加速され、加速度検出手段7から出力される加速度検出値が増大すると、速度指令は、この加速度検出値に係数を乗じた値分減少し、加速度を減少させるように作用する。しかも、速度制御の積分制御が加速度検出値を取り込む通信遅れや電流指令から被駆動体の移動までの遅れを補正する働きをするため、遅れの悪影響が抑制されることから、効率的に振動の発生を防止することができる。
【0027】
なお、モータ制御部1における電流制御処理部13の電流制御処理は従来と同様であり、この速度制御処理部12以降の処理動作は従来のサーボモータ制御処理と同じである。また、位置制御をも行う場合は、位置制御処理部が位置ループ制御を行い速度指令を出力する点も従来と同じである。
【0028】
本実施形態では、速度指令を加速度検出値に基づいて補正するものであり、速度制御処理周期毎にこの補正処理も実行されるものである。そのため、特許文献1に記載された発明のように電流制御と共に加速度検出値に基づく補正処理を行う場合と比較し、速度制御処理周期は電流制御処理周期よりも長いので、処理時間が少なくすむというメリットがある。
【0029】
図3は、本発明の第2の実施形態の要部ブロック図である。この第2の実施形態は、図2に示した第1の実施形態と比較し、速度指令を補正する補正内容が異なる点である。この第2の実施形態では、速度指令を微分の項16で1階微分して指令加速度を求め、該指令加速度から加速度検出手段7で検出した加速度検出値を減じて加速度偏差を求め、該加速度偏差に係数15を乗じて補正量を求め、この補正量を速度指令に加算するようにしたものであり、この処理を速度制御処理と共に実行するものである。他は従来のサーボ制御と同じである。
【0030】
速度指令から求められる指令加速度と加速度検出手段7で検出された加速度検出値の差は、指令された加速度に対する実際の加速度との差であり、検出した加速度検出値から、実際に必要な加速度(指令加速度)を減じたもので、被駆動体3の振動によって発生している加速度を意味している。この振動によって発生している加速度に基づいて速度指令を補正することによって、より効率的に振動を抑制するようにしたものである。
【0031】
図4は、本発明の第3の実施形態の要部ブロック図である。
この第3の実施形態は、速度指令の補正として、加速度検出手段7で検出した加速度検出値を積分して速度推定値を求める速度推定処理部17を設け、該速度推定処理部17で求められた速度推定値を速度指令から減じて速度偏差を求め、該速度偏差に係数18を乗じて補正量を求め、該補正量を速度指令に加算して補正し、若しくは速度フィードバック値を補正するものである。この補正処理を速度制御処理と共に速度制御周期毎に行うものである。速度制御処理部での制御がPI(比例、積分)制御、PID(比例、積分、微分)制御の場合には、加速度検出値に基づいて速度指令を補正しても、速度検出手段から出力される速度フィードバックを補正しても実質的に差異はないが、IP(積分、比例)制御の場合、速度制御処理部での制御の比例制御は速度フィードバックにのみ作用することになるから、速度指令に対して補正すれば、速度制御処理部12での積分制御のみに補正が作用し、比例制御には作用しないことになる。また、速度フィードバックを補正するようにすれば、比例制御も積分制御に対しても加速度検出値による補正が作用することになる。よって、IP(積分、比例)制御の場合、加速度検出値による補正の対象を速度指令か速度フィードバック値かの最適な方を採用するようにする。なお、他の位置制御、電流制御等は、従来と同様である。
【0032】
この第3の実施形態では、加速度検出手段7で検出した加速度検出値に基づいて速度が推定され、速度指令と推定速度との差である速度偏差(推定速度偏差)が求められるものであるが、この速度偏差(推定速度偏差)は、指令速度と、実際の速度との差を意味するから、速度偏差にこの求められた速度偏差(推定速度偏差)に基づく補正量を補正することによって、指令速度になるように補正されることになる。即ち、被駆動体3の振動によって発生した速度偏差(推定速度偏差)が解消するように速度指令が補正されて制御されることになるから、被駆動体3の振動が抑制されることになる。
【0033】
図5は、本発明の第4の実施形態の要部ブロック図である。
この第4の実施形態は、加速度検出手段で検出した加速度検出値を積分して速度推定値を求める速度推定処理部17を設け、該速度推定処理部17で求められた速度推定値に係数19を乗じた値を速度フィードバック値として、速度制御処理部12で速度制御処理を行うものである。この場合、速度検出手段を必要としないものである。
【0034】
図6は、本発明の第5の実施形態の要部ブロック図である。
この第5の実施形態は、上述した第1〜第4の実施形態と異なり、速度制御処理部12から出力される電流指令を補正するようにしたものである。微分の項16で速度指令を1階微分して指令加速度を求め、該指令加速度から加速度検出手段7で検出した加速度検出値を減じて加速度偏差を求め、該加速度偏差に係数20を乗じて補正量を求め、該補正量を速度制御処理部12での速度制御処理によって得られた電流指令に加算して補正するものである。この電流指令を補正する場合も、速度制御処理周期毎に速度制御処理と共に実行するものである。
【0035】
この第5の実施形態において、加速度偏差として求められるものは、被駆動体3の振動によって発生した加速度分であり、該加速度偏差を電流指令に補正することによって、この振動を抑制するものである。
【0036】
図7は、本発明の第6の実施形態の要部ブロック図である。
この第6の実施形態は、加速度検出手段7で検出された加速度検出値を積分して速度推定値を求める速度推定処理部17を設け、該速度推定処理部17から出力される速度推定値に係数a(符号21)を乗じた値と、加速度検出値に係数b(符号22)を乗じた値を、速度制御処理部12での速度制御処理で求められる電流指令から減じて補正し、該補正した電流指令をサーボアンプに出力するものである。この場合も、電流指令を補正する処理は、速度制御処理周期毎実行され、速度制御処理によって得られる電流指令が各周期毎補正されることになる。
【0037】
この第6の実施形態では、加速度検出値に係数bを乗じて得られた補正量による補正のみでは、加速度検出値の取り込みによる遅れや電流指令から被駆動体の移動までの遅れによる影響を抑えることができないが、速度推定値に係数a(符号21)を乗じて得られる補正量による補正により遅れを補正し効率的に振動の発生を防止することができる。
【0038】
図8は、本発明の第7の実施形態の要部ブロック図である。
この第7の実施形態は、加速度検出手段7で検出された加速度検出値を積分して速度推定値を求める速度推定処理部17を設け、さらに、指令速度と速度推定値との差を求めて、この差に係数a(符号23)を乗じて第1の補正量とし、加速度検出値に係数b(符号24)を乗じて第2の補正量を求め、速度制御処理部12の速度制御処理によって得られた電流指令に第1の補正量を加算し、第2の補正量を減ずる補正を行うものである。他は従来のサーボ制御と同一である。
【0039】
この第7の実施形態では、加速度検出値に基づく補正により、第1の補正量と第2の補正量の2つにより遅れによる影響を抑え、振動を抑制することになる。
【0040】
図9は、本発明の第8の実施形態の要部ブロック図である。
この第8の実施形態は、第1の実施形態にさらに、速度推定処理部17を付加し、速度推定値に基づいて電流指令をも補正するようにしたものである。加速度検出手段7で検出した加速度検出値に係数a(符号25)を乗じて速度指令の補正値を求め、この補正値を速度指令から減じて補正された速度指令とし速度制御処理を行う。さらに、速度推定処理部17で加速度検出値を積分して速度推定値を求め、該速度推定値に係数b(符号26)を乗じて電流指令の補正値を求め、速度制御処理部12の速度制御処理により求められた電流指令から減じて、補正された電流指令とする。
【0041】
図10は、本発明の第9の実施形態の要部ブロック図である。
この第9の実施形態は、上述した第1〜第8の実施形態において、加速度検出値に基づいて、また、該加速度検出値に基づいて求めた速度推定値により、速度指令または電流指令を補正する制御を行うと、被駆動体が往復運動して同位置に戻ったとき、加速度検出値の積分値が0とならない場合があり、また、被駆動体が一定速度になったとき、加速度検出値の積分値が0とならず定常偏差が生じる場合があり、これを防止するようにしたものである。そのために位置制御処理部11に積分処理を行う積分項11aを比例項11bに追加して設けたものである。
【0042】
図10に示す例では、図5に示した第4の実施形態における位置制御処理部に積分項を設けた例を示している。加速度検出値または/及び速度推定値による補正によって生じる定常偏差は、位置制御処理部11における積分項11aの処理により、位置偏差が無くなるように、位置制御処理部11より速度指令が出力されることにより、定常偏差を抑えることができる。
【0043】
図11は、本発明の第10の実施形態の要部ブロック図である。
この第10の実施形態では、加速度検出手段7で検出された加速度検出値を速度推定処理部17で積分し速度推定値を求め、該速度推定値をフィルタ28でフィルタ処理して、そのフィルタ28の出力値に係数29を乗じた値と、指令速度と速度フィードバック値に基づいて速度制御処理部12で速度制御処理を実行するものである。なお、図11では、速度指令を補正する例を示しているが、速度制御処理部の制御がPI(比例、積分)制御、PID(比例、積分、微分)制御である場合は、速度指令を補正しても速度フィードバックを補正しても同じである。しかし、IP(積分、比例)制御では、速度指令を補正すれば、速度制御の積分制御にのみ補正の影響が作用するが、速度フィードバックを補正するものであれば、比例制御も積分制御にもこの補正の影響が発生する。そのため、IP(積分、比例)制御の場合には、補正する対象を速度指令か速度フィードバックかを選択するようにする。また、このフィルタ28を、速度推定値に含まれる定常成分を除去するように構成することによって、定常成分を除去するようにする。また、このフィルタ28を、速度推定値を速度指令値に収束させるように構成することによって、速度指令に対する追従性を向上させる。
【0044】
さらに、上述とした第1〜第9の実施形態において、加速度検出手段の出力を、被駆動体3の固有周波数領域を通過させるバンドパスフィルタに通して、該フィルタ処理した後の加速度検出値を用いて補正するように構成することによって、被駆動体3の振動成分をより正確に除去するようにしてもよいものである。
【0045】
図12は、本発明の第11の実施形態の要部ブロック図である。
この第11の実施形態は、加速度検出手段7で検出された加速度検出値のフィードバックゲインを上位コントローラ30からの指令で変更できるようにしたものである。
工作機械においては、切削時には被駆動体(ワークを保持するテーブル又は工具)3は切削反力を受けるため、早送り時とは異なる条件、状況となる。そのため、この状況に合わせて、加速度検出値による補正の影響を変えることができるようにしたものである。
【0046】
この第11の実施形態では、上述した第1〜第10の実施形態に対して適用ができ、加速度検出値のフィードバックゲインを変えるようにしたものである。図12に示す例では、速度指令及び電流指令を共に補正する図9に示した第8の実施形態に適用した例を示しているが、他の実施形態を適用してもよいものである。
【0047】
上位コントローラ30は、オペレータ等が外部からゲイン選択指令信号を入力することによって、または、加工プログラム等によるプログラム中にゲイン選択指令を組み込んでおき、このプログラムの実行によってゲイン選択指令を出力するようにする。さらには、上位コントローラ30が、切削指令か、早送り指令か等の工作機械の状況を判別し(プログラム指令でこの状況は判別できる)、ゲイン選択指令を出力するようにする。また、このゲイン選択指令は、被駆動体3の移動が停止している状態、即ち、サーボモータ2の移動が停止している状態で実行するようにする。例えば、切削送りから早送りに変わるとき、早送りから切削送りに変わるとき、その間に停止状態になるので、この停止状態時にゲイン選択指令を出力するようにする。
【0048】
上位コントローラ30からゲインK1を選択するゲイン選択指令が出力され、ゲインK1が選択され、加速度検出手段7で検出された加速度検出値にゲインK1が乗じられる。このゲインK1が乗じられた加速度検出値に基づいて、上述した第1〜第10の実施形態に示すように、速度指令または/及び電流指令が補正される。また、上位コントローラからゲインK2を選択するゲイン選択指令が出力されたときには、加速度検出値にゲインK2が乗じらた加速度検出値に基づいて、上述した第1〜第10の実施形態に示すように速度指令または/及び電流指令が補正される。
【0049】
図13は、本発明の第12の実施形態の要部ブロック図である。この第12の実施形態は、上位コントローラ30からの指令で、加速度検出手段7で検出した加速度検出値に基づいて速度指令及び/または電流指令を補正する場合と、補正しない場合を選択できるようにしたものである。上述した図12に示す第11の実施形態における選択する一方のゲイン、例えばゲインK2が「0」の場合に相当するものである。この一方のゲインK2が「0」になっていることの違いによる差異のみで、他は第12の実施形態と同等である。
【0050】
図14は、本発明の第13の実施形態の要部ブロック図である。
この第13の実施形態は、モータ制御部1のサーボ制御として位置制御処理部11を有するものであって、位置指令を加速度検出手段7で検出される加速度検出値によって補正するようにしたものである。この第13の実施形態では、加速度検出値を2階積分して推定位置を求める位置推定処理部31を有しており、該位置推定処理部31で求めた推定位置に係数32を乗じた値を位置指令から減じて補正するものである。位置制御処理部11では、通常、比例制御なされるものであり、位置指令と位置検出手段6からのフィードバック値を減じて位置偏差が求められ、該位置偏差にポジションゲイン(比例ゲイン)が乗じられて速度指令となるものであるから、加速度検出値に基づく位置指令の補正分もポジションゲインが乗じられて、補正分の速度指令が生じるものとなり、結局は速度指令を補正した、第1の実施形態等と同様なものとなる。
【0051】
また、上述した位置指令と速度指令の関係から、上述した第1〜第4の実施形態においては速度指令を補正しているが、この速度指令を補正する代わりに、位置指令を補正するようにしてもよいものである。速度指令を補正するときと、位置指令を補正するときでは、係数を変えればよいものである。
【0052】
図15は、本発明の第14の実施形態の要部ブロック図である。
この第14の実施形態は、1つの被駆動体を複数(この実施形態では2つ)のサーボモータによって駆動するタンデム制御に本発明の加速度検出値による補正制御を実行する制御装置の例である。
【0053】
この図15で示す例では、マスタ軸33とスレーブ軸34の2つの軸を有し、各軸のサーボモータ2,2によって、1つの被駆動体3’を駆動制御するものである。図15では、マスタ軸33、スレーブ軸34、共に速度制御及び電流制御を行う例を記載しているが、位置制御を行う場合は、位置制御処理部11も追加されるものである。そして、マスタ軸33及びスレーブ軸34を駆動する各サーボモータ2,2のモータ制御部は上述した図2〜図14等で示される各実施形態の構成を採用するものである。この図15に示す例では、図9に示す第8の実施形態のモータ制御をマスタ軸33、スレーブ軸34に共に採用し、速度指令と電流指令を加速度検出値に基づいて補正する例を示している。このマスタ軸33、スレーブ軸34のサーボモータ2,2の制御に、図2〜図5、図11に示す第1〜第4、第10の実施形態を用い、加速度検出値により速度指令を補正するようにしてもよく、図6〜図8、図10に示すような第5〜第7の実施形態または第9の実施形態を用い、加速度検出値により電流指令を補正するようにしてもよい。さらには、図14に示す第13実施形態のように、加速度検出値によって位置指令を補正するサーボモータ制御を採用してもよいものである。
【0054】
また、タンデム制御の場合においても、図15,図16に示したように上位コントローラからの指令で、加速度検出値による位置、速度、電流指令の補正を行うか否か、及び、行う場合における加速度検出値による補正の大きさ(ゲインの大きさ)を選択変更できるように構成してもよいものである。
【0055】
上述した各実施形態では、速度制御処理部としてPI(比例、積分)制御を行う例を図示しているが、この速度制御処理部をIP(積分、比例)制御に、またはPID(比例、積分、微分)制御に代えてもよいものである。
【0056】
サーボモータの位置、速度、電流の各制御は通常プロセッサにより実行されており、位置、速度制御処理周期は、電流制御処理周期よりも長い。本発明の各実施形態はこの電流処理周期よりも長い周期で実行される位置、速度制御処理周期において、加速度検出値による位置指令、速度指令、電流指令の補正を行う処理を実行するようにしている。これによって、この補正に要する処理時間を短くしているものである。補正に要する処理時間が短くなることから、例えば、電流周期毎に加速度検出値を求め、位置、速度処理周期毎で平均値を求め、この平均値に基づいて補正するという処理も可能となる。このような平均値を用いて補正すれば、滑らかな加速度補正ができる。
【0057】
図17は、本発明による加速度検出値に基づく補正を行わずに速度制御処理部12による速度制御がPI(比例、積分)制御の場合における実験結果を示す図である。図18は、図2に示した第1の実施形態により同一の実験を行いその実験結果を示す図である。図19は、図9に示した第8の実施形態により同一の実験を行いその実験結果を示す図である。各図とも符号Aは被駆動体(サーボモータ)の位置を示し、符号Bは、被駆動体(サーボモータ)の加速度である。図17と図18を比較し、明らかに振動が抑制されていることが分かる。また、この抑制効果は、図19に示す第8の実施形態の方がさらによくなっていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の概要を説明する概要説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図5】本発明の第4の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図6】本発明の第5の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図7】本発明の第6の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図8】本発明の第7の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図9】本発明の第8の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図10】本発明の第9の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図11】本発明の第10の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図12】本発明の第11の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図13】本発明の第12の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図14】本発明の第13の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図15】本発明の第14の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図16】従来のサーボモータ制御のブロックである。
【図17】加速度検出値に基づく補正を行わずに速度制御処理部がPI(比例、積分)制御を行ったときの実験結果を示す図である。
【図18】本発明の第1の実施形態による実験結果を示す図である。
【図19】本発明の第8の実施形態による実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 モータ制御部
2 サーボモータ(アンプを含む)
3 被駆動体
4 電流検出手段
5 速度検出手段
6 位置検出手段
7 加速度検出手段
11 位置制御処理部
12 速度制御処理部
13 電流制御処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械を駆動する制御装置に関する。特に、機械に加速度検出手段を取り付けて機械の加速度情報をフィードバックし、機械動作の安定化を図った制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械において、サーボモータで駆動される被駆動体の位置や速度を制御するために、通常、位置フィードバック、速度フィードバックさらには電流フィードバック制御がなされている。図16はこのサーボモータを制御するサーボ制御部のブロック図である。サーボモータ2または該サーボモータ2によって駆動される被駆動体3には、その速度及び位置を検出する位置検出手段6、速度検出手段5が設けられている。さらには、サーボモータ2を駆動する電流値を検出する電流検出手段4が設けられ、これらの検出手段4,5,6の検出信号がフィードバックされている。
【0003】
位置制御処理部11においては、位置指令と位置検出手段6からの位置フィードバック信号により位置偏差を求め該位置偏差に位置ループゲインを乗じて速度指令が求められる。また、速度制御処理部12では、位置制御処理部11から出力された速度指令と速度検出手段5からの速度フィードバック信号により速度偏差を求め比例、積分(または積分、比例)等の速度フィードバック制御を行い電流指令を求める。電流制御処理部13ではこの電流指令と電流フィードバック信号とにより電流フィードバック制御を行い、サーボアンプを介してサーボモータ2を駆動制御する。
【0004】
以上が一般的に行われている工作機械の送り軸等の被駆動体3の位置、速度、電流の制御方法であり、通常、プロセッサによってこの位置、速度、電流の制御処理が行われている。このような位置、速度、電流のフィードバック制御を行っても、サーボモータ2の角加速度が急激に変化する際、被駆動体3に振動が発生する場合があり、その対策として、被駆動体3の加速度を検出する加速度センサを設け、該加速度センサからの信号を速度フィードバック制御により出力される電流指令から差し引き、電流フィードバック制御の電流指令とする制御方法が提案されている。
【0005】
被駆動体に振動が発生すると、加速度センサで検出される被駆動体の加速度信号中の振動成分は、電流フィードバック制御に対する電流指令に対して誤差となることから、この誤差が無くなるように電流指令から差し引き、サーボモータの駆動電流を制御することで振動を抑制したものである(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平6−91482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
制御系において、応答性をよくするには、微分制御を用いればよいことは知られている。サーボモータの位置、速度制御においても、速度ループ制御にPID(比例、積分、微分)制御を用い応答性を向上させることができる。しかし、位置または速度検出器からの位置または速度情報を微分(または速度偏差を微分)することにより得られる加速度情報には、ノイズが多く制御性が悪いという問題がある。また、ノイズを除去するためにフィルタを加えた場合、フィルタによる位相変化が制御性を悪化させるという問題を含んでいる。
【0008】
特許文献1に示されるような加速度センサを用いた場合、ノイズ、位相変化の少ない加速度情報を得ることができる。しかし、この特許文献1に記載された発明は、加速度センサで検出した加速度検出値に基づいて電流指令を補正し電流制御処理を行うものである。一般に、電流制御周期は位置、速度制御周期より短く、加速度検出値を使用して電流指令を補正する場合処理時間が増大するという問題がある。
【0009】
さらには、電流指令値から加速度検出値を引く方式では、加速度検出値を制御装置に取り込む際の通信による遅れ、また、電流指令を入力してから被駆動体が移動するまでの遅れの影響で、振動抑制効果が十分に得られない場合がある。また、加速度センサで検出した加速度検出値で電流指令を補正して制御し、被駆動体を往復運動させ、同位置に戻ったとき、加速度情報の積分値が「0」にならないという問題がある。
本発明は上述した問題点を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、本願請求項1に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を備え、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して前記速度指令を補正することを特徴とするものである。また、請求項2に係る発明は、前記速度指令の補正を、加速度検出値に所定の係数を乗算した結果を前記速度指令から減算することによって行うものとした。
【0011】
請求項3に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値と前記速度指令値の1階微分値とを用いて速度指令値を補正することを特徴とするものである。
請求項4に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と前記速度推定値と前記速度検出値とを用いて被駆動体の速度を制御する速度制御処理部とを有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令と前記速度推定値とを用いて速度を制御する速度制御処理部を備えることを特徴とするものである。また請求項6に係る発明は、上述の請求項1乃至5に係る発明において、さらに、位置指令値と位置検出値とを用いて速度指令を速度制御処理部に出力し位置を制御する位置制御処理部を有し、前記速度指令を補正する代わりに、前記位置指令を補正することを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段とを有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値と前記速度指令値の1階微分値とを用いて前記速度制御処理部が出力する電流指令値を補正することを特徴とするものである。
請求項8に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記速度推定値を用いて電流指令を補正することを特徴とするものである。
【0014】
請求項9に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記加速度検出値に所定の係数を乗算した結果だけでなく、前記速度推定値に所定の係数を乗算した結果でも電流指令を補正することを特徴とするものである。
【0015】
請求項10に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記加速度検出値に所定の係数を乗算した結果だけでなく、前記速度推定値と前記速度指令との差分に所定の係数を乗算した結果でも電流指令を補正することを特徴とするものである。
【0016】
請求項11に係る発明は、請求項1、2に係る発明において、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを備え、前記速度推定値を用いて電流指令も補正することを特徴とするものである。また、請求項12に係る発明は、請求項1〜11に係る発明において、被駆動体の位置を制御する位置制御処理部に位置偏差を積分する項を適用することで、前記加速度検出値により生じる定常偏差や速度推定値により生じる定常偏差の影響を除去することを特徴とするものである。
【0017】
請求項13、14に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、速度推定に定常成分を除去するフィルタ若しくは速度推定値を速度指令値に収束させるフィルタを適用し、フィルタの出力値を用いて前記速度検出値または前記速度指令値を補正することを特徴とするものである。
また、請求項15に係る発明は、請求項1〜11に係る発明において、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段が検出する加速度検出値にバンドパスフィルタを適用して出力するようにしたものである。
【0018】
請求項16、17に係る発明は、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて電流指令を作成する速度制御処理部と、サーボモータを駆動する駆動装置の電流を検出する電流検出手段と、前記速度制御処理部で作成された電流指令と電流検出値とを用いて電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて前記速度指令または前記電流指令に補正を行う制御装置において、上位コントローラからの信号により加速度検出値を使用した補正の強さを変更すること、若しくは、上位コントローラからの信号により加速度検出値を使用した補正を行わないようにすることを特徴とするものである。そして、上位コントローラからの信号として、請求項18に係る発明は、外部からの信号を利用するものとし、請求項19に係る発明は、プログラム指令に基づく信号を利用するものとし、請求項20に係る発明は、工作機械における切削送り時か否かの信号とした。また、請求項21に係る発明は、サーボモータが停止しているときに、上位コントローラはこの信号を出力するようにした。
【0019】
請求項22に係る発明は、サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の位置を検出する位置検出手段と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて被駆動体の位置を推定する位置推定処理部と、前記被駆動体の位置を指定する位置指令値と前記位置推定値と前記位置検出値とを用いて前記被駆動体の速度指令値を作成する位置制御処理部とを有することを特徴とするものである。
請求項23に係る発明は、被駆動体を複数のサーボモータで駆動するタンデム制御であって、各サーボモータの制御を請求項1〜22に係る発明の制御装置で行うものとした。
【発明の効果】
【0020】
加速度検出手段は、ノイズや位相変化が少ないことから、より正確な加速度情報に基づいて被駆動体の振動を抑制する補正ができる。特に、加速度検出手段はその配設位置を選択できるから、被駆動体における振動を抑えたい箇所に配置することによって、応答性よく、かつ正確にその振動を抑制することができる。また、電流制御処理周期よりも長い位置、速度制御周期で補正処理を実行できるから、補正に要する処理時間が少なくてすむ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の概要を説明する概要説明図である。
本発明においては、サーボモータ2で駆動される被駆動体3に加速度検出手段7を設けるものであり、該加速度検出手段7で検出した加速度検出値は、モータ制御部1に入力される。また、モータ制御部1には、被駆動体3の位置、速度を検出する位置検出手段6、速度検出手段5からの位置検出値、速度検出値が入力されている。さらに、位置指令、速度指令が入力され、位置、速度の制御さらには電流制御をこのモータ制御部1で実施し、サーボモータ2を駆動制御するものである。なお、図1中、符号9は、サーボモータの回転運動を直線運動に変換して被駆動体を駆動するボールネジ/ナット機構である。
【0022】
被駆動体3の位置及び速度を制御する場合には、図16に示したような位置制御処理部11、速度制御処理部12、電流制御処理部13をこのモータ制御部は備え、位置検出手段6及び速度検出手段5からの位置検出信号、速度検出信号に基づいて、位置ループ制御、速度ループ制御さらに、電流ループ制御が実施される。また、位置制御は行わず、速度制御のみ行う場合は、図16に示す位置制御処理部11及び位置検出手段6は設けられないものとなる。
【0023】
そして、本発明においては、上述した位置、速度、電流の制御処理を行うと共に加速度検出手段7からの加速度検出値に基づいて、位置指令、速度指令、電流指令等を補正して、被駆動体3の振動発生を防止するようにしているものである。なお、図1では、位置、速度を検出する検出手段をサーボモータに取り付けて、サーボモータの位置、速度を検出することによって被駆動体の位置、速度を検出する例を示している。当然、被駆動体3の位置、速度を直接検出する手段を設けてもよいものである。
【0024】
図2は、本発明の第1の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。この第1の実施形態は、加速度検出手段7で検出した加速度検出値によって、速度指令を補正するものである。
位置制御処理部から出力される速度指令、または上位コントローラ等から指令される速度指令から、速度検出手段5の出力である速度フィードバック値を減じて速度偏差を求めるが、このとき被駆動体3の加速度を検出する加速度検出手段7からの加速度検出値に所定係数14を乗じた値をも減じて速度指令を補正する。なお、加速度検出値に所定係数14を乗じた値を速度指令から減じても、速度指令と速度フィードバックの差である速度偏差から減じても、さらには、速度フィードバックに加算することによって補正してもよいものであり、結局、速度制御処理部12に入力される指令を加速度検出値によって補正するものである。これらは実質的に速度指令の補正と同じである。
【0025】
速度制御処理部12では、こうして入力された指令(補正された速度偏差)に基づいて、速度制御処理が実行されて電流指令が求められる。図2で示す第1の実施形態では、速度制御を積分項12a、比例項12bでPI(比例、積分)制御を行う例を示しているが、この速度制御処理部12での制御は、IP制御(積分、比例制御)で構成しても、またPID制御(比例、積分、微分制御)で構成してもよいものであり、本実施形態においては、速度指令を加速度検出値に基づいて補正する点に特徴があるものである。
【0026】
被駆動体が急激に加速され、加速度検出手段7から出力される加速度検出値が増大すると、速度指令は、この加速度検出値に係数を乗じた値分減少し、加速度を減少させるように作用する。しかも、速度制御の積分制御が加速度検出値を取り込む通信遅れや電流指令から被駆動体の移動までの遅れを補正する働きをするため、遅れの悪影響が抑制されることから、効率的に振動の発生を防止することができる。
【0027】
なお、モータ制御部1における電流制御処理部13の電流制御処理は従来と同様であり、この速度制御処理部12以降の処理動作は従来のサーボモータ制御処理と同じである。また、位置制御をも行う場合は、位置制御処理部が位置ループ制御を行い速度指令を出力する点も従来と同じである。
【0028】
本実施形態では、速度指令を加速度検出値に基づいて補正するものであり、速度制御処理周期毎にこの補正処理も実行されるものである。そのため、特許文献1に記載された発明のように電流制御と共に加速度検出値に基づく補正処理を行う場合と比較し、速度制御処理周期は電流制御処理周期よりも長いので、処理時間が少なくすむというメリットがある。
【0029】
図3は、本発明の第2の実施形態の要部ブロック図である。この第2の実施形態は、図2に示した第1の実施形態と比較し、速度指令を補正する補正内容が異なる点である。この第2の実施形態では、速度指令を微分の項16で1階微分して指令加速度を求め、該指令加速度から加速度検出手段7で検出した加速度検出値を減じて加速度偏差を求め、該加速度偏差に係数15を乗じて補正量を求め、この補正量を速度指令に加算するようにしたものであり、この処理を速度制御処理と共に実行するものである。他は従来のサーボ制御と同じである。
【0030】
速度指令から求められる指令加速度と加速度検出手段7で検出された加速度検出値の差は、指令された加速度に対する実際の加速度との差であり、検出した加速度検出値から、実際に必要な加速度(指令加速度)を減じたもので、被駆動体3の振動によって発生している加速度を意味している。この振動によって発生している加速度に基づいて速度指令を補正することによって、より効率的に振動を抑制するようにしたものである。
【0031】
図4は、本発明の第3の実施形態の要部ブロック図である。
この第3の実施形態は、速度指令の補正として、加速度検出手段7で検出した加速度検出値を積分して速度推定値を求める速度推定処理部17を設け、該速度推定処理部17で求められた速度推定値を速度指令から減じて速度偏差を求め、該速度偏差に係数18を乗じて補正量を求め、該補正量を速度指令に加算して補正し、若しくは速度フィードバック値を補正するものである。この補正処理を速度制御処理と共に速度制御周期毎に行うものである。速度制御処理部での制御がPI(比例、積分)制御、PID(比例、積分、微分)制御の場合には、加速度検出値に基づいて速度指令を補正しても、速度検出手段から出力される速度フィードバックを補正しても実質的に差異はないが、IP(積分、比例)制御の場合、速度制御処理部での制御の比例制御は速度フィードバックにのみ作用することになるから、速度指令に対して補正すれば、速度制御処理部12での積分制御のみに補正が作用し、比例制御には作用しないことになる。また、速度フィードバックを補正するようにすれば、比例制御も積分制御に対しても加速度検出値による補正が作用することになる。よって、IP(積分、比例)制御の場合、加速度検出値による補正の対象を速度指令か速度フィードバック値かの最適な方を採用するようにする。なお、他の位置制御、電流制御等は、従来と同様である。
【0032】
この第3の実施形態では、加速度検出手段7で検出した加速度検出値に基づいて速度が推定され、速度指令と推定速度との差である速度偏差(推定速度偏差)が求められるものであるが、この速度偏差(推定速度偏差)は、指令速度と、実際の速度との差を意味するから、速度偏差にこの求められた速度偏差(推定速度偏差)に基づく補正量を補正することによって、指令速度になるように補正されることになる。即ち、被駆動体3の振動によって発生した速度偏差(推定速度偏差)が解消するように速度指令が補正されて制御されることになるから、被駆動体3の振動が抑制されることになる。
【0033】
図5は、本発明の第4の実施形態の要部ブロック図である。
この第4の実施形態は、加速度検出手段で検出した加速度検出値を積分して速度推定値を求める速度推定処理部17を設け、該速度推定処理部17で求められた速度推定値に係数19を乗じた値を速度フィードバック値として、速度制御処理部12で速度制御処理を行うものである。この場合、速度検出手段を必要としないものである。
【0034】
図6は、本発明の第5の実施形態の要部ブロック図である。
この第5の実施形態は、上述した第1〜第4の実施形態と異なり、速度制御処理部12から出力される電流指令を補正するようにしたものである。微分の項16で速度指令を1階微分して指令加速度を求め、該指令加速度から加速度検出手段7で検出した加速度検出値を減じて加速度偏差を求め、該加速度偏差に係数20を乗じて補正量を求め、該補正量を速度制御処理部12での速度制御処理によって得られた電流指令に加算して補正するものである。この電流指令を補正する場合も、速度制御処理周期毎に速度制御処理と共に実行するものである。
【0035】
この第5の実施形態において、加速度偏差として求められるものは、被駆動体3の振動によって発生した加速度分であり、該加速度偏差を電流指令に補正することによって、この振動を抑制するものである。
【0036】
図7は、本発明の第6の実施形態の要部ブロック図である。
この第6の実施形態は、加速度検出手段7で検出された加速度検出値を積分して速度推定値を求める速度推定処理部17を設け、該速度推定処理部17から出力される速度推定値に係数a(符号21)を乗じた値と、加速度検出値に係数b(符号22)を乗じた値を、速度制御処理部12での速度制御処理で求められる電流指令から減じて補正し、該補正した電流指令をサーボアンプに出力するものである。この場合も、電流指令を補正する処理は、速度制御処理周期毎実行され、速度制御処理によって得られる電流指令が各周期毎補正されることになる。
【0037】
この第6の実施形態では、加速度検出値に係数bを乗じて得られた補正量による補正のみでは、加速度検出値の取り込みによる遅れや電流指令から被駆動体の移動までの遅れによる影響を抑えることができないが、速度推定値に係数a(符号21)を乗じて得られる補正量による補正により遅れを補正し効率的に振動の発生を防止することができる。
【0038】
図8は、本発明の第7の実施形態の要部ブロック図である。
この第7の実施形態は、加速度検出手段7で検出された加速度検出値を積分して速度推定値を求める速度推定処理部17を設け、さらに、指令速度と速度推定値との差を求めて、この差に係数a(符号23)を乗じて第1の補正量とし、加速度検出値に係数b(符号24)を乗じて第2の補正量を求め、速度制御処理部12の速度制御処理によって得られた電流指令に第1の補正量を加算し、第2の補正量を減ずる補正を行うものである。他は従来のサーボ制御と同一である。
【0039】
この第7の実施形態では、加速度検出値に基づく補正により、第1の補正量と第2の補正量の2つにより遅れによる影響を抑え、振動を抑制することになる。
【0040】
図9は、本発明の第8の実施形態の要部ブロック図である。
この第8の実施形態は、第1の実施形態にさらに、速度推定処理部17を付加し、速度推定値に基づいて電流指令をも補正するようにしたものである。加速度検出手段7で検出した加速度検出値に係数a(符号25)を乗じて速度指令の補正値を求め、この補正値を速度指令から減じて補正された速度指令とし速度制御処理を行う。さらに、速度推定処理部17で加速度検出値を積分して速度推定値を求め、該速度推定値に係数b(符号26)を乗じて電流指令の補正値を求め、速度制御処理部12の速度制御処理により求められた電流指令から減じて、補正された電流指令とする。
【0041】
図10は、本発明の第9の実施形態の要部ブロック図である。
この第9の実施形態は、上述した第1〜第8の実施形態において、加速度検出値に基づいて、また、該加速度検出値に基づいて求めた速度推定値により、速度指令または電流指令を補正する制御を行うと、被駆動体が往復運動して同位置に戻ったとき、加速度検出値の積分値が0とならない場合があり、また、被駆動体が一定速度になったとき、加速度検出値の積分値が0とならず定常偏差が生じる場合があり、これを防止するようにしたものである。そのために位置制御処理部11に積分処理を行う積分項11aを比例項11bに追加して設けたものである。
【0042】
図10に示す例では、図5に示した第4の実施形態における位置制御処理部に積分項を設けた例を示している。加速度検出値または/及び速度推定値による補正によって生じる定常偏差は、位置制御処理部11における積分項11aの処理により、位置偏差が無くなるように、位置制御処理部11より速度指令が出力されることにより、定常偏差を抑えることができる。
【0043】
図11は、本発明の第10の実施形態の要部ブロック図である。
この第10の実施形態では、加速度検出手段7で検出された加速度検出値を速度推定処理部17で積分し速度推定値を求め、該速度推定値をフィルタ28でフィルタ処理して、そのフィルタ28の出力値に係数29を乗じた値と、指令速度と速度フィードバック値に基づいて速度制御処理部12で速度制御処理を実行するものである。なお、図11では、速度指令を補正する例を示しているが、速度制御処理部の制御がPI(比例、積分)制御、PID(比例、積分、微分)制御である場合は、速度指令を補正しても速度フィードバックを補正しても同じである。しかし、IP(積分、比例)制御では、速度指令を補正すれば、速度制御の積分制御にのみ補正の影響が作用するが、速度フィードバックを補正するものであれば、比例制御も積分制御にもこの補正の影響が発生する。そのため、IP(積分、比例)制御の場合には、補正する対象を速度指令か速度フィードバックかを選択するようにする。また、このフィルタ28を、速度推定値に含まれる定常成分を除去するように構成することによって、定常成分を除去するようにする。また、このフィルタ28を、速度推定値を速度指令値に収束させるように構成することによって、速度指令に対する追従性を向上させる。
【0044】
さらに、上述とした第1〜第9の実施形態において、加速度検出手段の出力を、被駆動体3の固有周波数領域を通過させるバンドパスフィルタに通して、該フィルタ処理した後の加速度検出値を用いて補正するように構成することによって、被駆動体3の振動成分をより正確に除去するようにしてもよいものである。
【0045】
図12は、本発明の第11の実施形態の要部ブロック図である。
この第11の実施形態は、加速度検出手段7で検出された加速度検出値のフィードバックゲインを上位コントローラ30からの指令で変更できるようにしたものである。
工作機械においては、切削時には被駆動体(ワークを保持するテーブル又は工具)3は切削反力を受けるため、早送り時とは異なる条件、状況となる。そのため、この状況に合わせて、加速度検出値による補正の影響を変えることができるようにしたものである。
【0046】
この第11の実施形態では、上述した第1〜第10の実施形態に対して適用ができ、加速度検出値のフィードバックゲインを変えるようにしたものである。図12に示す例では、速度指令及び電流指令を共に補正する図9に示した第8の実施形態に適用した例を示しているが、他の実施形態を適用してもよいものである。
【0047】
上位コントローラ30は、オペレータ等が外部からゲイン選択指令信号を入力することによって、または、加工プログラム等によるプログラム中にゲイン選択指令を組み込んでおき、このプログラムの実行によってゲイン選択指令を出力するようにする。さらには、上位コントローラ30が、切削指令か、早送り指令か等の工作機械の状況を判別し(プログラム指令でこの状況は判別できる)、ゲイン選択指令を出力するようにする。また、このゲイン選択指令は、被駆動体3の移動が停止している状態、即ち、サーボモータ2の移動が停止している状態で実行するようにする。例えば、切削送りから早送りに変わるとき、早送りから切削送りに変わるとき、その間に停止状態になるので、この停止状態時にゲイン選択指令を出力するようにする。
【0048】
上位コントローラ30からゲインK1を選択するゲイン選択指令が出力され、ゲインK1が選択され、加速度検出手段7で検出された加速度検出値にゲインK1が乗じられる。このゲインK1が乗じられた加速度検出値に基づいて、上述した第1〜第10の実施形態に示すように、速度指令または/及び電流指令が補正される。また、上位コントローラからゲインK2を選択するゲイン選択指令が出力されたときには、加速度検出値にゲインK2が乗じらた加速度検出値に基づいて、上述した第1〜第10の実施形態に示すように速度指令または/及び電流指令が補正される。
【0049】
図13は、本発明の第12の実施形態の要部ブロック図である。この第12の実施形態は、上位コントローラ30からの指令で、加速度検出手段7で検出した加速度検出値に基づいて速度指令及び/または電流指令を補正する場合と、補正しない場合を選択できるようにしたものである。上述した図12に示す第11の実施形態における選択する一方のゲイン、例えばゲインK2が「0」の場合に相当するものである。この一方のゲインK2が「0」になっていることの違いによる差異のみで、他は第12の実施形態と同等である。
【0050】
図14は、本発明の第13の実施形態の要部ブロック図である。
この第13の実施形態は、モータ制御部1のサーボ制御として位置制御処理部11を有するものであって、位置指令を加速度検出手段7で検出される加速度検出値によって補正するようにしたものである。この第13の実施形態では、加速度検出値を2階積分して推定位置を求める位置推定処理部31を有しており、該位置推定処理部31で求めた推定位置に係数32を乗じた値を位置指令から減じて補正するものである。位置制御処理部11では、通常、比例制御なされるものであり、位置指令と位置検出手段6からのフィードバック値を減じて位置偏差が求められ、該位置偏差にポジションゲイン(比例ゲイン)が乗じられて速度指令となるものであるから、加速度検出値に基づく位置指令の補正分もポジションゲインが乗じられて、補正分の速度指令が生じるものとなり、結局は速度指令を補正した、第1の実施形態等と同様なものとなる。
【0051】
また、上述した位置指令と速度指令の関係から、上述した第1〜第4の実施形態においては速度指令を補正しているが、この速度指令を補正する代わりに、位置指令を補正するようにしてもよいものである。速度指令を補正するときと、位置指令を補正するときでは、係数を変えればよいものである。
【0052】
図15は、本発明の第14の実施形態の要部ブロック図である。
この第14の実施形態は、1つの被駆動体を複数(この実施形態では2つ)のサーボモータによって駆動するタンデム制御に本発明の加速度検出値による補正制御を実行する制御装置の例である。
【0053】
この図15で示す例では、マスタ軸33とスレーブ軸34の2つの軸を有し、各軸のサーボモータ2,2によって、1つの被駆動体3’を駆動制御するものである。図15では、マスタ軸33、スレーブ軸34、共に速度制御及び電流制御を行う例を記載しているが、位置制御を行う場合は、位置制御処理部11も追加されるものである。そして、マスタ軸33及びスレーブ軸34を駆動する各サーボモータ2,2のモータ制御部は上述した図2〜図14等で示される各実施形態の構成を採用するものである。この図15に示す例では、図9に示す第8の実施形態のモータ制御をマスタ軸33、スレーブ軸34に共に採用し、速度指令と電流指令を加速度検出値に基づいて補正する例を示している。このマスタ軸33、スレーブ軸34のサーボモータ2,2の制御に、図2〜図5、図11に示す第1〜第4、第10の実施形態を用い、加速度検出値により速度指令を補正するようにしてもよく、図6〜図8、図10に示すような第5〜第7の実施形態または第9の実施形態を用い、加速度検出値により電流指令を補正するようにしてもよい。さらには、図14に示す第13実施形態のように、加速度検出値によって位置指令を補正するサーボモータ制御を採用してもよいものである。
【0054】
また、タンデム制御の場合においても、図15,図16に示したように上位コントローラからの指令で、加速度検出値による位置、速度、電流指令の補正を行うか否か、及び、行う場合における加速度検出値による補正の大きさ(ゲインの大きさ)を選択変更できるように構成してもよいものである。
【0055】
上述した各実施形態では、速度制御処理部としてPI(比例、積分)制御を行う例を図示しているが、この速度制御処理部をIP(積分、比例)制御に、またはPID(比例、積分、微分)制御に代えてもよいものである。
【0056】
サーボモータの位置、速度、電流の各制御は通常プロセッサにより実行されており、位置、速度制御処理周期は、電流制御処理周期よりも長い。本発明の各実施形態はこの電流処理周期よりも長い周期で実行される位置、速度制御処理周期において、加速度検出値による位置指令、速度指令、電流指令の補正を行う処理を実行するようにしている。これによって、この補正に要する処理時間を短くしているものである。補正に要する処理時間が短くなることから、例えば、電流周期毎に加速度検出値を求め、位置、速度処理周期毎で平均値を求め、この平均値に基づいて補正するという処理も可能となる。このような平均値を用いて補正すれば、滑らかな加速度補正ができる。
【0057】
図17は、本発明による加速度検出値に基づく補正を行わずに速度制御処理部12による速度制御がPI(比例、積分)制御の場合における実験結果を示す図である。図18は、図2に示した第1の実施形態により同一の実験を行いその実験結果を示す図である。図19は、図9に示した第8の実施形態により同一の実験を行いその実験結果を示す図である。各図とも符号Aは被駆動体(サーボモータ)の位置を示し、符号Bは、被駆動体(サーボモータ)の加速度である。図17と図18を比較し、明らかに振動が抑制されていることが分かる。また、この抑制効果は、図19に示す第8の実施形態の方がさらによくなっていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の概要を説明する概要説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図5】本発明の第4の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図6】本発明の第5の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図7】本発明の第6の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図8】本発明の第7の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図9】本発明の第8の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図10】本発明の第9の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図11】本発明の第10の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図12】本発明の第11の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図13】本発明の第12の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図14】本発明の第13の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図15】本発明の第14の実施形態のサーボモータ制御における要部ブロック図である。
【図16】従来のサーボモータ制御のブロックである。
【図17】加速度検出値に基づく補正を行わずに速度制御処理部がPI(比例、積分)制御を行ったときの実験結果を示す図である。
【図18】本発明の第1の実施形態による実験結果を示す図である。
【図19】本発明の第8の実施形態による実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 モータ制御部
2 サーボモータ(アンプを含む)
3 被駆動体
4 電流検出手段
5 速度検出手段
6 位置検出手段
7 加速度検出手段
11 位置制御処理部
12 速度制御処理部
13 電流制御処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を備え、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して前記速度指令を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記速度指令の補正は、加速度検出値に所定の係数を乗算した結果を前記速度指令から減算することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値と前記速度指令値の1階微分値とを用いて速度指令値を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と前記速度推定値と前記速度検出値とを用いて被駆動体の速度を制御する速度制御処理部とを有することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令と前記速度推定値とを用いて速度を制御する速度制御処理部を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
位置指令値と位置検出値とを用いて速度指令を速度制御処理部に出力し位置を制御する位置制御処理部を有し、前記速度指令を補正する代わりに、前記位置指令を補正することを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段とを有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値と前記速度指令値の1階微分値とを用いて前記速度制御処理部が出力する電流指令値を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項8】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記速度推定値を用いて電流指令を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項9】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記加速度検出値に所定の係数を乗算した結果だけでなく、前記速度推定値に所定の係数を乗算した結果でも電流指令を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項10】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記加速度検出値に所定の係数を乗算した結果だけでなく、前記速度推定値と前記速度指令との差分に所定の係数を乗算した結果でも電流指令を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項11】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記速度推定値を用いて電流指令も補正することを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項12】
被駆動体の位置を制御する位置制御処理部に位置偏差を積分する項を適用することで、前記加速度検出値により生じる定常偏差や速度推定値により生じる定常偏差の影響を除去することを特徴とする請求項1乃至11の内いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項13】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、速度推定に定常成分を除去するフィルタを適用し、フィルタの出力値を用いて前記速度検出値または前記速度指令値を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項14】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、速度推定値を速度指令値に収束させるフィルタを適用し、前記フィルタの出力値を用いて前記速度検出値または前記速度指令値を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項15】
被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段が検出する加速度検出値にバンドパスフィルタを適用することを特徴とする請求項1乃至11の内いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項16】
サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて電流指令を作成する速度制御処理部と、サーボモータを駆動する駆動装置の電流を検出する電流検出手段と、前記速度制御処理部で作成された電流指令と電流検出値とを用いて電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて前記速度指令または前記電流指令に補正を行う制御装置において、上位コントローラからの信号により加速度検出値を使用した補正の強さを変更することを特徴とする制御装置。
【請求項17】
サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて電流指令を作成する速度制御処理部と、サーボモータを駆動する駆動装置の電流を検出する電流検出手段と、前記速度制御処理部で作成された電流指令と電流検出値とを用いて電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて前記速度指令または前記電流指令に補正を行う制御装置において、上位コントローラからの信号により加速度検出値を使用した補正を行わないことを特徴とする制御装置。
【請求項18】
上位コントローラからの信号として、外部からの信号を利用することを特徴とする請求項16または請求項17に記載の制御装置。
【請求項19】
上位コントローラからの信号として、プログラム指令に基づく信号を利用することを特徴とする請求項16または請求項17に記載の制御装置。
【請求項20】
上位コントローラからの信号として、工作機械における切削送り時か否かの信号としたことを特徴とする請求項16または請求項17に記載の制御装置。
【請求項21】
上位コントローラからの信号として、サーボモータが停止しているときを利用することを特徴とする請求項16または請求項17に記載の制御装置。
【請求項22】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の位置を検出する位置検出手段と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて被駆動体の位置を推定する位置推定処理部と、前記被駆動体の位置を指定する位置指令値と前記位置推定値と前記位置検出値とを用いて前記被駆動体の速度指令値を作成する位置制御処理部とを有することを特徴とする制御装置。
【請求項23】
被駆動体を複数のサーボモータで駆動するタンデム制御であって、各サーボモータは請求項1乃至22の内いずれか1項に記載の制御装置で構成し、被駆動体を駆動制御する制御装置。
【請求項1】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を備え、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して前記速度指令を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記速度指令の補正は、加速度検出値に所定の係数を乗算した結果を前記速度指令から減算することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値と前記速度指令値の1階微分値とを用いて速度指令値を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と前記速度推定値と前記速度検出値とを用いて被駆動体の速度を制御する速度制御処理部とを有することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令と前記速度推定値とを用いて速度を制御する速度制御処理部を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
位置指令値と位置検出値とを用いて速度指令を速度制御処理部に出力し位置を制御する位置制御処理部を有し、前記速度指令を補正する代わりに、前記位置指令を補正することを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段とを有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値と前記速度指令値の1階微分値とを用いて前記速度制御処理部が出力する電流指令値を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項8】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記速度推定値を用いて電流指令を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項9】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記加速度検出値に所定の係数を乗算した結果だけでなく、前記速度推定値に所定の係数を乗算した結果でも電流指令を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項10】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記加速度検出値に所定の係数を乗算した結果だけでなく、前記速度推定値と前記速度指令との差分に所定の係数を乗算した結果でも電流指令を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項11】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、該速度制御処理部からの電流指令に基づいて前記サーボモータを駆動する電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、前記速度推定値を用いて電流指令も補正することを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項12】
被駆動体の位置を制御する位置制御処理部に位置偏差を積分する項を適用することで、前記加速度検出値により生じる定常偏差や速度推定値により生じる定常偏差の影響を除去することを特徴とする請求項1乃至11の内いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項13】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、速度推定に定常成分を除去するフィルタを適用し、フィルタの出力値を用いて前記速度検出値または前記速度指令値を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項14】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて前記被駆動体の速度を制御する速度制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を使用して被駆動体の速度を推定する速度推定処理部とを有し、速度推定値を速度指令値に収束させるフィルタを適用し、前記フィルタの出力値を用いて前記速度検出値または前記速度指令値を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項15】
被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段が検出する加速度検出値にバンドパスフィルタを適用することを特徴とする請求項1乃至11の内いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項16】
サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて電流指令を作成する速度制御処理部と、サーボモータを駆動する駆動装置の電流を検出する電流検出手段と、前記速度制御処理部で作成された電流指令と電流検出値とを用いて電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて前記速度指令または前記電流指令に補正を行う制御装置において、上位コントローラからの信号により加速度検出値を使用した補正の強さを変更することを特徴とする制御装置。
【請求項17】
サーボモータにより駆動される被駆動体の速度を検出する速度検出手段と、前記被駆動体の速度を指定する速度指令値と速度検出値とを用いて電流指令を作成する速度制御処理部と、サーボモータを駆動する駆動装置の電流を検出する電流検出手段と、前記速度制御処理部で作成された電流指令と電流検出値とを用いて電流を制御する電流制御処理部と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段を有し、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて前記速度指令または前記電流指令に補正を行う制御装置において、上位コントローラからの信号により加速度検出値を使用した補正を行わないことを特徴とする制御装置。
【請求項18】
上位コントローラからの信号として、外部からの信号を利用することを特徴とする請求項16または請求項17に記載の制御装置。
【請求項19】
上位コントローラからの信号として、プログラム指令に基づく信号を利用することを特徴とする請求項16または請求項17に記載の制御装置。
【請求項20】
上位コントローラからの信号として、工作機械における切削送り時か否かの信号としたことを特徴とする請求項16または請求項17に記載の制御装置。
【請求項21】
上位コントローラからの信号として、サーボモータが停止しているときを利用することを特徴とする請求項16または請求項17に記載の制御装置。
【請求項22】
サーボモータの駆動を制御する制御装置であって、サーボモータにより駆動される被駆動体の位置を検出する位置検出手段と、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値を用いて被駆動体の位置を推定する位置推定処理部と、前記被駆動体の位置を指定する位置指令値と前記位置推定値と前記位置検出値とを用いて前記被駆動体の速度指令値を作成する位置制御処理部とを有することを特徴とする制御装置。
【請求項23】
被駆動体を複数のサーボモータで駆動するタンデム制御であって、各サーボモータは請求項1乃至22の内いずれか1項に記載の制御装置で構成し、被駆動体を駆動制御する制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−158026(P2006−158026A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341770(P2004−341770)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】
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