制振装置、制振構造、及び制振パネル
【課題】組付け手数、部品点数の増大をもたらすことなく、低価格で、耐火性、耐久性に優れ、しかも二方向から加わる振動、衝撃による応力を吸収緩和することができる制振装置を提供する。
【解決手段】建築物を構成する複数の枠材の交差部に取り付けられる振動吸収要素としての板バネ制振ユニット21を備えた制振装置20であって、板バネ制振ユニットは、一方の枠材11と他方の枠材13に夫々両端部を固定される少なくとも一枚の湾曲したベースバネ板60と、ベースバネ板の少なくとも一端部に対して一端部を固定配置されると共に該一端部を除いた内側面の少なくとも一部を該ベースバネ板の一面と摺擦可能に積層された少なくとも一枚の摺擦バネ板70と、を備え、第1の摺擦バネ板は、ベースバネ板よりも短尺であり、板バネ制振ユニットと各枠材との間に介在する補強材を備えた。
【解決手段】建築物を構成する複数の枠材の交差部に取り付けられる振動吸収要素としての板バネ制振ユニット21を備えた制振装置20であって、板バネ制振ユニットは、一方の枠材11と他方の枠材13に夫々両端部を固定される少なくとも一枚の湾曲したベースバネ板60と、ベースバネ板の少なくとも一端部に対して一端部を固定配置されると共に該一端部を除いた内側面の少なくとも一部を該ベースバネ板の一面と摺擦可能に積層された少なくとも一枚の摺擦バネ板70と、を備え、第1の摺擦バネ板は、ベースバネ板よりも短尺であり、板バネ制振ユニットと各枠材との間に介在する補強材を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振装置、制振構造、制振パネルの改良に係り、特に低価格でありながら長期間にわたり安定した制振性能を維持することができる制振装置、制振構造、制振パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
地震対策を施した建築物の構造として、建築物の剛性を高める「耐震構造」、建築物内に配置したダンパ装置等で運動エネルギを吸収する「制振構造」、地盤から建築物への振動伝搬を遮断する「免震構造」があり、それぞれに様々な技術が提案されている。
「耐震構造」にあっては、建築物構造体の剛性を増す必要があるため、材料費等のコストが嵩む一方で、建築物内部における振動は緩和されず内部に配置された物品が損傷するおそれがあり、これに対する対策が別途必要となる。
「免震構造」にあっては、地盤から建築物へ伝わる振動を遮断するための大がかりな免震装置を設ける必要があるため、設備費用や工事費用が嵩むという問題がある。
このため、木造建築では、比較的低コストで実現でき建築物内部の損傷も防止できる「制振構造」を採用することが望ましい。
【0003】
尚、以下では、建築物の地震対策としての「制振構造」のみならず、交通振動、風揺れを防止するための構造をも含めて「制振構造」と称して説明する。
建築物の制振構造の一例が特許文献1に開示されている。この制振構造は、矩形枠材の内側四隅に4つのブレースの基端部を固定し、それら4つのブレースの先端部を互いに接近させると共に、対角線方向で向き合った両ブレースを平行にオフセットして配置し、上側又は左右の一方側の2つのブレースの先端部を共通の第1浮動部材に固定する一方、残り2つのブレースの先端部を共通の第2浮動部材に固定し、それら第1浮動部材と第2浮動部材との間を粘弾性体で連結して粘弾性ダンパを構成した建物壁部の制振構造において、上側2つの前記両ブレースの延長線の交点と、下側2つの前記両ブレースの延長線の交点との間の中間点を間に挟んだ2個所に前記粘弾性体を分けて配置したものである。
この制振構造においては、粘弾性ダンパには粘性弾性部材を使用しているが、粘弾性ダンパとして耐久性や耐火性に優れたものを使用しなければならずその材質が限定され、コストが嵩むという問題がある。
また、ブレースを用いて粘弾性ダンパを枠材に組み付ける構造であるため、組付け手数が増大して簡易な組付けが困難となるばかりでなく、全体重量が増大するために木造家屋への適用に適さないという問題がある。
【0004】
次に、特許文献2には、粘弾性ダンパを使用しない制振構造として、横枠と縦枠の接合部に取り付けられる耐震具であって、地震の揺れを吸収する摩擦パッドを介して回動自在に連結された2つのリンクアームからなる減衰機構と、一方向へ変形した減衰機構を原形に復帰させる復元力を発生する復元機構と、を有したものが開示されている。この耐震具は、横枠と縦枠とが直交する角隅部において両枠材間に跨って配置されることにより、摩擦パッドによりリンクアームに加わる揺れを吸収すると共に、変形したリンクアームを復元機構によって復元させるように構成されている。この耐震具は、建造物を構成する矩形枠材の任意の隅部に対して簡易に取り付けることができるメリットを有している。
しかし、この耐震具にあっては、リンクアームの変形に際して摩擦パッドによりエネルギを吸収、減衰できる振動方向が一方向に過ぎず、反対方向からの振動を吸収、減衰することはできない。反対方向からの振動を吸収するためには他の耐震具を同一の枠材の隅部に逆向きに設ける必要があり、使用する耐震具数の増大による取付け手数、コストの増大をもたらすことが明かである。また、厚み方向スペースが狭く極限された枠材の隅部において、2つのリンクアーム間、及び各リンクアームと各枠材との間に配置した摩擦パッドのみに依存してエネルギを吸収する構成であるため、摩擦パッドによる摩擦力を適正値に設定することが極めて困難である。
【0005】
次に、特許文献3には、長さの異なる複数枚の板バネをピラミッド状に積層すると共に各板バネの中央部間をヒンジパッドにより連結した重ね板バネを制振ダンパとして利用した建物の制振装置が開示されているが、枠材からの応力を制振ダンパに伝達する手段としてのブレースを必須とするため、取付け手数が増大し、しかも重量が増大するために木造家屋用には適さないと言う不具合がある。また、板バネをピラミッド状に積層した制振具にあっては、ピラミッドの頂部側から底面に向かって加わる応力に対しては板バネ間の摩擦によって応力を吸収し、減衰することができるが、反対方向から加わる応力を吸収、減衰できないという問題がある。
次に、特許文献4は、木造軸組建築物の梁と間仕切げたとが相互に接する箇所に、湾曲した二枚の板バネから成る補強部材を設けた構成が開示されている。一方の板バネの一端部を梁に固定し、他方の板バネの一端部を間仕切げたに固定すると共に両板バネの他端部同志は互いにスライド自在に係合されている。しかし、地震等によって両枠材が変形した場合には両板バネは他端部同志が相対的に変位する伸縮動作を行うに過ぎず板バネ同志の摩擦による振動エネルギの吸収緩和という効果は期待できない。特に、板バネの他端部同志は単に小片により係止されているに過ぎないため、地震による大きな振動エネルギにより小片が破損し易く、制振効果を期待することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−126868公報
【特許文献2】特許第3470807号
【特許文献3】特開平10−082203公報
【特許文献4】特開2003−96911公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように複数の板バネを積層した従来の制振装置にあっては、ブレース等、枠材の振動を板バネに伝達する伝達部材を必須とするため、部品点数の増大による組付け作業の複雑、困難化、重量増、コスト増を招き、木造建築物に適さなくなるという問題と、一方向から加わる応力に対してはエネルギを吸収する効果を発揮できても反対側からの応力には対応できないという問題があった。
本発明は上記に鑑みて成されたものであり、組付け手数、部品点数の増大をもたらすことなく、低価格で、耐火性、耐久性に優れ、しかも二方向から加わる振動、衝撃による応力を吸収緩和することができる制振装置、制振構造、制振パネルを提供することを目的とする。
更に本発明では、制振装置を構成するバネ板が枠材の取付け面に食い込むことによる制振効果の低下を防止し、更に制振装置の組付け作業性を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来の課題は以下の手段で解決される。
本発明の制振装置は、建築物を構成する複数の枠材の交差部に取り付けられる振動吸収要素としての板バネ制振ユニットを備えた制振装置であって、前記板バネ制振ユニットは、一方の前記枠材と他方の前記枠材に夫々両端部を固定される少なくとも一枚の湾曲したベースバネ板と、該ベースバネ板の長手方向中間部によって中間部を支持されることにより内側面の少なくとも一部を該ベースバネ板の一面と摺擦可能に積層された少なくとも一枚の摺擦バネ板と、を備えたことを特徴とする。
本発明においては、地震等により建築物に加わる運動エネルギは板バネ制振ユニットに伝達され、板バネ制振ユニットにおいて熱エネルギに変換され放出される。板バネ制振ユニットを構成する各バネ板は振動吸収要素として作用して枠材の振動を吸収する。そして、本発明では、振動吸収要素として機械要素として一般的に使用されているバネ板を使用するから、低価格とすることができると共に、耐久性、耐熱性に優れた制振装置を実現することができる。
【0009】
また、板バネ制振ユニットは機械要素として通常使用される構造を備えるものであり、バネ板の弾性変形及びバネ板同士の摩擦により運動エネルギを熱エネルギに変換して振動を吸収する。また、各バネ板を金属で構成した場合には耐久性及び耐熱性に優れるものとすることができる。各バネ板は、鋼材、特にバネ鋼材を材料とすることが適当であるが、弾性を備える金属性のものであれば差し支えない。
ベースバネ板に対する摺擦バネ板の取付け部位、取付け枚数等は、種々選定可能である。例えば、ベースバネ板の一面側、或いは両面側に1枚或いは2枚以上の摺擦バネ板を配置してもよい。
ベースバネ板及び摺擦バネ板の中間部とは、長手方向略中心部を意味し、寸法上の厳密な意味での中心部に限るものではない。ベースバネ板の中間部により摺擦バネ板の中間部を支持するとは、完全に固定的に支持する場合と、長手方向へ可動な状態で支持する場合を含む。
ベースバネ板の中間部に対して摺擦バネ板の中間部を支持することにより、両バネ板の接触面間は圧接状態となり、しかも地震等によって枠材が変形した場合には両バネ板間が摺擦し、地震によるエネルギを吸収、緩和する。
【0010】
本発明は、前記摺擦バネ板はその中間部を、前記ベースバネ板の長手方向中間部に固定したことを特徴とする。
中間部同士を固定することにより、両バネ板の中間部を除いた他の圧接面での摺擦力を高めることができる。
本発明は、前記摺擦バネ板の前記中間部を除いた部位を前記ベースバネ板に対して長手方向へ相対的に変位自在に圧接させる拘束部材を備えていることを特徴とする。
拘束部材によって両バネ板の非中間部を圧接させることにより十分な予圧を確保することができる。
本発明では、前記拘束部材は、前記ベースバネ板と前記摺擦バネ板を貫通するネジ及びナットであり、該ネジは前記ベースバネに設けた丸穴内に挿通固定される一方で、前記摺擦バネ板に設けた長穴内に遊嵌していることを特徴とする。
本発明では、前記拘束部材は、前記ベースバネ板と前記摺擦バネ板とを圧接させた状態で束ねる縛束部材であることを特徴とする。
縛束部材とは、例えば両バネ板の外面に巻掛けられてこれらを束ねる金属製のバンド等を含む。
【0011】
本発明は、前記ベースバネ板の両面に夫々前記摺擦バネ板を配置したことを特徴とする。
本発明は、前記板バネ制振ユニットは、前記ベースバネ板と接触する第1の摺擦バネ板と、該第1の摺擦バネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第2の摺擦バネ板を備え、該第2の摺擦バネ板の中間部を前記ベースバネ板の中間部によって支持したことを特徴とする。
本発明は、前記第2の摺擦バネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第3の摺擦バネ板を備え、該第3の摺擦バネ板の中間部を前記ベースバネ板の中間部により支持し、更に必要に応じて該第3の摺擦バネ板の外側面に対して第4の摺擦バネ板以降の摺擦バネ板を順次摺擦可能な積層状態で配置したことを特徴とする。
本発明は、個々の前記摺擦バネ板の長さは、直近外側に位置する他の摺擦バネ板の長さよりも長尺であり、前記各摺擦バネ板の両端部が階段状となるように積層されていることを特徴とする。
本発明は、前記板バネ制振ユニットと前記各枠材との間に介在する補強材を備えたことを特徴とする。
補強材と、ベースバネ板と、摺擦バネ板を予め組み付けた状態でユニット化することにより取扱性を高めることができる。
【0012】
本発明は、建築物を構成する複数の枠材の交差部に取り付けられる振動吸収要素としての板バネ制振ユニットを備えた制振装置であって、前記板バネ制振ユニットは、一方の前記枠材と他方の前記枠材に夫々両端部を固定される少なくとも一枚の湾曲したベースバネ板と、該ベースバネ板の少なくとも一端部に対して一端部を固定配置されると共に該一端部を除いた内側面の少なくとも一部を該ベースバネ板の一面と摺擦可能に積層された少なくとも一枚の第1の摺擦バネ板と、を備え、前記第1の摺擦バネ板は、前記ベースバネ板よりも短尺であり、前記板バネ制振ユニットは、前記各枠材に対し補強強材を介して固定されていることを特徴とする。
本発明においては、地震等により建築物に加わる運動エネルギは板バネ制振ユニットに伝達され、板バネ制振ユニットにおいて熱エネルギに変換され放出される。板バネ制振ユニットを構成する各バネ板は振動吸収要素として作用して枠材の振動を吸収する。そして、本発明では、振動吸収要素として機械要素として一般的に使用されているバネ板を使用するから、低価格とすることができると共に、耐久性、耐熱性に優れた制振装置を実現することができる。
【0013】
また、板バネ制振ユニットは機械要素として通常使用される構造を備えるものであり、バネ板の弾性変形及びバネ板同士の摩擦により運動エネルギを熱エネルギに変換して振動を吸収する。また、各バネ板を金属で構成した場合には耐久性及び耐熱性に優れるものとすることができる。各バネ板は、鋼材、特にバネ鋼材を材料とすることが適当であるが、弾性を備える金属性のものであれば差し支えない。
ベースバネ板に対する摺擦バネ板の取付け部位、取付け枚数等は、種々選定可能である。例えば、ベースバネ板の一端部の一面側、或いは両面側に1枚或いは2枚以上の摺擦バネ板を配置してもよいし、ベースバネ板の両端部の一面側、或いは両面側に1枚或いは2枚以上の摺擦バネ板を配置してもよい。
本発明の制振装置は、制振機能のみならず、枠材の交差部を補強することによる耐震性の向上を図ることもできる。
板バネ制振ユニットを直接枠材に対して固定した場合には地震等により枠材が変形する際に板バネ制振ユニットを構成するバネ板が局部的に枠材面に食い込みを起こし、制振装置として正常に作動し得ない状況が想定される。本発明では、補強材を介して板バネ制振ユニットを枠材に間接的に固定するようにしたのでバネ板と枠材との直接接触に起因したバネ板の食い込みを解消し、制振機能を正常に発揮させることが可能となる。
【0014】
また、制振装置の取り付け作業を行う場合に、予め板バネ制振ユニットに対して補強材が組み付けてあれば、主として補強材を枠材に固定する作業を実施することにより制振装置の取付けがほぼ完了するため、作業性を高めることができる。
本発明は、前記補強材は略L字状に湾曲、或いは屈曲した一枚の板材であり、一端を一方の前記枠材に固定され、他端を他方の前記枠材に固定され、更に他の少なくとも一箇所を前記各枠材に固定されていることを特徴とする。
板バネ制振ユニットを枠材に取り付ける際の枠材との固定部位は、長手方向両端部のみならず、それ以外の部位を含めることにより、交差する両枠材が変形したときの応力を各固定部位に分散して吸収緩和し、枠材へのバネ板の食い込みを防止できる。
本発明は、前記補強材は、中間部を前記交差部から離間させていることを特徴とする。
補強材を枠材同志の交差部(仕口)に跨って配置する際に、外力が加わった枠材同志の相対変位を規制しない方が制振効果上は好ましい。そこで、補強材の中間部を交差部から離間させている。
本発明は、前記補強材は前記各枠材に対して留め具により固定されていることを特徴とする。
【0015】
本発明は、前記補強材の両端部を固定する留め具は、前記板バネ制振ユニットを前記枠材に固定する締め付け具を兼ねることを特徴とする。
本発明は、前記留め具は、ネジ、或いは釘であることを特徴とする。
本発明は、前記補強材は、該補強材を添設する枠材面とは異なる枠材面に対して前記留め具により固定されていることを特徴とする。
施工上、補強材を添設する枠材面に留め具を取付けにくい場合には、他の枠材面に留め具を固定できるように構成すればよい。
本発明は、前記補強材は、前記板バネ制振ユニットの一端部と一方の前記枠材との間に介在する第1の補強片と、前記板バネ制振ユニットの他端部と他方の前記枠材との間に介在する第2の補強片と、から構成されていることを特徴とする。
板バネ制振ユニットの両端部を枠材に固定した場合に両端固定部で発生し易い枠材への食い込みを防止するためには、補強材は必ずしも両枠材に跨って延在する必要はなく、2つに分割配置してもよい。
【0016】
本発明は、前記第1の摺擦バネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第2の摺擦バネ板を備え、該第2の摺擦バネ板の一端部を前記第1の摺擦バネ板の一端部に対して固定配置したことを特徴とする。
本発明は、前記第2の摺擦バネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第3の摺擦バネ板を備え、該第3の摺擦バネ板の一端部を前記第2の摺擦バネ板の一端部に対して固定配置し、更に必要に応じて該第3の摺擦バネ板の外側面に対して第4の摺擦バネ板以降の摺擦バネ板を順次摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする。
本発明は、個々の前記摺擦バネ板の長さは、直近外側に位置する他の摺擦バネ板の長さよりも長尺であり、前記各摺擦バネ板の他端部が階段状となるように積層されていることを特徴とする。
本発明は、前記ベースバネ板の両面に対して夫々少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする。
本発明は、前記ベースバネ板の片面に対して少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする。
【0017】
本発明は、前記ベースバネ板の片面の両端部、或いは該ベースバネ板の両面の両端部に対して、少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする。
本発明は、前記ベースバネ板の片面の一端部と、該ベースバネ板の他面の他端部に対して夫々少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする。
本発明は、前記ベースバネ板を介して対向する前記各摺擦バネ板の内の少なくとも第1の摺擦バネ板の他端部同志をオーバーラップさせたことを特徴とする。
本発明は、前記ベースバネ板の両面に夫々少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置した場合に、前記各摺擦バネ板の長さを前記ベースバネ板よりも短尺にしたことを特徴とする。
【0018】
本発明は、前記ベースバネ板の厚み、或いは/及び、幅を、前記摺擦バネ板と異ならせたことを特徴とする。
本発明に係る制振構造は、建築物を構成する横枠と縦枠との交差部に、前記各制振装置を配置したことを特徴とする。
本発明の制振装置は、複数の枠材が交差する部位に適用することができる。建築物を構成する枠材の交差部に配置することにより、建造物の要所を制振性のものとすることができる。このため、建物の状況に応じた制振工事を適正に行うことができる。
本発明に係る制振パネルは、略矩形の枠材と、該枠材の少なくとも1つの隅部に配置される前記各制振装置と、を備えたことを特徴とする。
建築物を構成する矩形の枠材に制振装置を配置することができ、枠材を制振性のものとすることができ、既存建物の枠材にこの構造を採用することにより、既存建築物の制振工事を適正に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、制振装置を、建築物を構成する矩形状の枠材の内部に配置され、入力される運動エネルギを熱エネルギに変換することにより振動を吸収する振動吸収要素としての板バネ部材と、前記枠材の振動を前記板バネ部材に伝達する伝達部材を備えて構成したので、低価格であり、耐火性、耐久性に優れた制振装置、制振構造、制振パネルを実現することができる。
また、バネ板から成る板バネ制振ユニットを枠材に対して補強材を介して固定するようにしたので、直接固定した場合に発生し得る種々の不具合を一挙に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る制振パネルを示すものであり、(a)は全体正面図、(b)は(a)中に示された制振装置の拡大図である。
【図2】(a)及び(b)は夫々板バネ制振ユニットの変形状態を示す図である。
【図3】(a)及び(b)は補強材の他の構成例を示す図である。
【図4】(a)及び(b)は本発明の板バネ制振ユニットの一例の分解斜視図、及び組付け状態を示す図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る補強材の構成図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る制振装置の構成例を示す図である。
【図7】本発明の板バネ制振ユニットの他の構成例の説明図である。
【図8】(a)及び(b)は夫々本発明の制振装置(板バネ制振ユニット)の他の構成例の説明図である。
【図9】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る制振装置(板バネ制振ユニット)の構成例を示す図である。
【図10】(a)は本発明の一実施形態に係る制振パネルの全体正面図であり、(b)は(a)中に示された一つの制振装置の拡大斜視図である。
【図11】板バネ制振ユニットの構成を示す正面図である。
【図12】(a)(b)(c)(d)及び(e)は板バネ制振ユニットの構成例を示す正面図、平面図、ベースバネ板の構成図、摺擦バネ板の構成図、及びネジ止め部の断面図である。
【図13】(a)及び(b)は制振パネルの挙動を示す説明図である。
【図14】多板構造の板バネ制振ユニットの構成と、各摺擦バネ板の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。まず、本発明に係る制振パネルについて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る制振パネルを示すものであり、(a)は全体正面図、(b)は(a)中に示された一つの制振装置の拡大図であり、図2(a)及び(b)は夫々板バネ制振ユニットの変形状態を示す図である。
本発明に係る制振パネル1は、長方形状の枠材である木製枠(枠材)10の少なくとも一つの隅部(本例では四隅)に制振装置20を配置した構成を備えている。木製枠10は建築物の一部を構成しており、木材で構成された2本の横枠11、12と、2本の縦枠13、14とが図示していない金具、ネジ等で連結されて構成される。
制振装置20は、建築物を構成する横枠(枠材)11、12と縦枠(枠材)13、14との交差部(隅部)に取り付けられて入力される振動を吸収する手段である。以下では、略矩形の木製枠10を構成する隅部に制振パネル1を組み付ける場合について説明するが、本発明の適用範囲は矩形枠材の隅部に限定されるものではなく、複数の枠材が交差(直交に限らない)する部位全てに適用可能である。
制振装置20は、地盤から木製枠10に入力される運動エネルギを熱エネルギに変換することにより振動を吸収する振動吸収要素としての板バネ制振ユニット21と、板バネ制振ユニット21と各枠材との間に配置される補強材50と、を備えている。即ち板バネ制振ユニット21は、各枠材に対して補強材50を介して固定されている。
【0022】
板バネ制振ユニット21は、中間部50Aが湾曲した略L字状の一枚の鋼製板材から成る補強材50を介して木製枠を構成する各隅部の内側面により両端部を固定された少なくとも一枚の湾曲した長尺のベースバネ板22と、ベースバネ板22の少なくとも一端部22aに対して一端部30aを固定配置されると共にその内側面(ベースバネ板と摺擦する面)の少なくとも一部をベースバネ板22の一面と摺擦可能に積層された少なくとも一枚の湾曲した第1の摺擦バネ板30と、を備えている。ベースバネ板22は、図示のように湾曲した外周面22Aが、木製枠10の隅部の内側面と対面するように組み付けられる。
第1の摺擦バネ板30の外側面(ベースバネ板と摺擦しない面)に対してさらに第2の摺擦バネ板40を積層すると共に、その一端部40aを第1の摺擦バネ板30の一端部30aに対して固定している。
第2の摺擦バネ板40の一端部40aを第1の摺擦バネ板30の一端部30aに固定する方法としては、ネジ等により両者を直接固定してもよいし、他のブラケット等を用いてベースバネ板22に対して各摺擦バネ板間を締結固定してもよい。要するに、どのような固定方法であれ、ベースバネ板22の一端部に対して他の摺擦バネ板の一端部を固定する構造は、直接固定、間接固定に関係なく、全て本発明の技術的範囲に含まれるものである。この点は、以下に述べる他の実施形態における固定構造にも同様に当てはまる。
【0023】
ベースバネ板22は、バネ鋼製の薄板を所定の曲率にて湾曲加工した金属板材であり、ベースバネ板22の両端部を、木製枠10の隅部にて互いに交差する横枠11と縦枠13の適所(この例では内側面)に対してネジ(ボルト)、釘その他の適宜の留め具23により固定する。ベースバネ板22と各枠材との間に板状の補強材50を介在させることにより、バネ板が枠材面に食い込みを起こすことを防止したり、制振装置の組付け作業性を高める効果を期待できる。補強材50は、各枠材から加わる応力がベースバネ板22の両端部のみならず、補強材50と各枠材とを固定する他の留め具(ネジ、釘等)51による固定箇所に分散されるように固定する。即ち、補強材50はその両端部のみならず、他の部位を各枠材と固定されることにより、板バネ制振ユニット21を構成する金属製のバネ板が木製枠材の取付け面に食い込んで制振機能を発揮し得なくなる不具合を解消することができる。
また、この例では、ベースバネ板22の長手方向中心部Cから両端固定部までの長さを同一長としたが、中心部Cから両端固定部までの長さを異ならせても良い。ベースバネ板22の厚みは例えば5mmとし、幅は5cmとする。
本例では、ベースバネ板22の一端部22a側の両面に夫々第1の摺擦バネ板30の一端部30aをネジ23により固定すると共に、各第1の摺擦バネ板30の他端側は自由端状とし、ベースバネ板22が面方向へ変形する時にベースバネ板に対して長手方向へ相対的に摺動できるように構成している。
【0024】
各第1の摺擦バネ板30は、その内側面(ベースバネ板と対向した面)がベースバネ板の両面(外周面22Aと内周面22B)と夫々接触するようにその曲率(湾曲形状)が予め設定された湾曲板であり、本例では、バネ鋼製の薄板を所定の曲率にて湾曲加工した金属板材から成る。各第1の摺擦バネ板30は、外力が加わらない静止時に、その少なくとも一部が、ベースバネ板22の外周面22A及び内周面22Bに対して接触(圧接を含む)するようにその曲率を設定される。この点は、以下に説明する他の摺擦バネ板についても同様に当てはまる。なお、ベースバネ板22を挟んで配置された各第1の摺擦バネ板30の長さは、ほぼ同等となるように設定してもよいし、一方を他方よりも長くしてもよい。第1の摺擦バネ板30(他の摺擦バネ板についても同様)の厚み及び幅は例えばベースバネ板22と同等となるように設定してもよいし、ベースバネ板よりも薄くしてもよい。
ベースバネ板22の両面に対して第1の摺擦バネ板30を摺擦可能に積層した状態で一端部を固定(積層状態で固定配置)しているため、板バネ制振ユニット21の面方向両側から加わる応力により各第1のバネ板30がベースバネ板22の各面22A、22Bと摺動することによって地震等によって木製枠に加わるエネルギを吸収、緩和することができる。常時において、ベースバネ板22の両面と各第1の摺擦バネ板30の内側面との間は、全面的に密着した状態で接触していてもよいし、部分的に接触していてもよい。
【0025】
各第2の摺擦バネ板40は、その内側面(第1の摺擦バネ板30と対向した面)が各第1の摺擦バネ板30の外側面と夫々接触するようにその曲率(湾曲形状)が予め設定された湾曲板である。各第1の摺擦バネ板30の外側面に対して夫々第2の摺擦バネ板40を積層すると共に、夫々の一端部40aを第1の摺擦バネ板30の一端部30aに対して固定している。この際、各第2の摺擦バネ板40は、各第1の摺擦バネ板30の外側面に対して接触、或いは所定の力で圧接するようにその曲率を設定される。従って、板バネ制振ユニット21に対して面方向両側から加わる応力により各第2のバネ板40が各第1の摺擦バネ板30の外側面と摺動することによってエネルギを吸収、緩和することができる。
各摺擦バネ板30、40の関係は、内側に位置する摺擦バネ板30の長さよりも、直近外側に位置する他の摺擦バネ板40の長さが順次短尺となるように寸法設定されており、各摺擦バネ板30、40の他端部30b、40bが階段状となるように構成されている。
即ち、第1の摺擦バネ板30の長手方向寸法をベースバネ板22の長手方向寸法よりも短尺にする一方で、第2の摺擦バネ板40の長手方向寸法を第1の摺擦バネ板30の長手方向寸法よりも更に短尺にすることにより、各摺擦バネ板30、40の他端部が階段状(或いはピラミッド状)となる。このようにベースバネ板22に対して摺擦バネ板を階段状、或いはピラミッド状に積層することにより、板バネ制振ユニット21の強度、耐久性を適切に維持しつつ、所定以上の応力が加わった場合の弾性変形を容易化することができる。また、複数のバネ板を多段状に積層することにより、入力される運動エネルギを熱エネルギに変換して振動を吸収する振動吸収要素としての板バネ制振ユニット21全体としての振動吸収能力を所望の値に調整することが容易となる。
なお、ベースバネ板22と第1の摺擦バネ板30との外周に巻掛けられてこれらを束ねるバンド等の縛束部材によって常時圧接させて両バネ板の接触面に予圧を加えておくことにより、地震発生時の応答性を高めるように構成しても良い。また、第1の摺擦バネ板30と第2の摺擦バネ板40との間も同様にバンド等の縛束部材によって常時圧接させて予圧を加えておくようにしてもよい。
【0026】
なお、使用するバネ板の材質、枚数、形状は必要とされる制振特性に合わせて任意に選択することができる。即ち、図示の実施形態では、摺擦バネ板として第1、第2の摺擦バネ板30、40のみを示したが、各第2の摺擦バネ40の外側面に対して更に図示しない第3の摺擦バネを積層状態で固定配置したり、各第3の摺擦バネの外側面に対して更に第4の摺擦バネ等々を順次積層状態で固定配置してもよいことは勿論であり、摺擦バネの積層枚数に制限はない。また、ベースバネ板22、各摺擦バネ板30、40の板厚、及び材質は同一であることが製造手数を考慮すると好ましいが、必要に応じて板厚、材質を異ならせても良い。例えば、ベースバネ板22の厚みを最大厚とし、各摺擦バネ板の厚みを薄くする等の種々のアレンジが可能である。
また、この例では、木製枠10の4つの隅部に制振装置20を配置するようにしたが、これは一例に過ぎず、木製枠10に対する制振装置20の組付け箇所、組付け態様には種々の変形が可能である。
【0027】
以上の構成を備えた板バネ制振ユニット21においては、制振パネル1の挙動を示す図2(a)(b)に示したように対向する二方向からの応力P1、P2に対応して弾性変形しつつバネ板間で摺擦が行われることによるエネルギの吸収、緩和と、その後の原形への弾性復帰が行われる。同図中に破線で示したのは応力P1によって各バネ板が変形している状態であり、応力P2が加わった場合には各バネ板は逆方向に変形する。
このように構成したので、対向する二方向からの応力P1、P2に対応して弾性変形しつつバネ板間で摺擦することによるエネルギの吸収、緩和と、その後の原形への弾性復帰ができるように構成されている。
この点を更に詳細に説明すると、板バネ制振ユニット21を構成するベースバネ板22及び各摺擦バネ板30、40は、制振パネル1を構成する横枠11、12及び縦枠13、14の変形に対応してエネルギを吸収する。図2(a)は一方からの応力P1が加わった場合の変形状態であり、(b)は他方からの応力P2が加わった場合の変形状態を示している。
地震等による揺れがない静止状態では、木製枠10は変形しておらず、図1(a)(b)に示したようにベースバネ板22、摺擦バネ板30、40は変形していない。
【0028】
一方、地震等により、制振パネル1が振動して応力P1、P2が加わると、木製枠10が変形してベースバネ板22が変形する。
地震発生時に上側の横枠11は、下側の横枠12に対して横方向へ相対的に変位する。ここで横枠11が横枠12に対して相対的に矢印A方向に移動したとき、縦枠13と横枠11に夫々両端部を固着されたベースバネ板22はB方向に伸長変形する。ベースバネ板22の伸長変形により、ベースバネ板22の一端部22aの両側面に夫々配置された各摺擦バネ板30、40のうちベースバネ板22の外周面側に位置する摺擦バネ板30out、40out(外側摺擦バネ板群)は同方向Bへ変形するために、ベースバネ板22と第1の摺擦バネ板30outとの接触部間、並びに第1の摺擦バネ板30outと第2の摺擦バネ板40outとの接触部間に、夫々相対移動(摺動)と、それに起因した摩擦抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。一方、B方向へ伸長変形したベースバネ板22の内周面側に位置する摺擦バネ板30in、40in(内側摺擦バネ板群)は圧縮変形しないために、ベースバネ板22と第1の摺擦バネ板30inとの間、並びに第1及び第2の摺擦バネ板30in、40in間は離間し、大きな摩擦抵抗は発生しない。このため、ベースバネ板22が伸長方向Bへ変形するに際して、第1の摺擦バネ板30outと第2の摺擦バネ板40outの変形及び摩擦抵抗による抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。
【0029】
次に、図2(b)に示すように横枠11が矢印Aと反対の方向Cに移動したときには、縦枠13と横枠11に夫々両端部を固着されたベースバネ板22はD方向に圧縮変形する。ベースバネ板22の圧縮変形により、ベースバネ板22の一端部22aの両側面に夫々配置された各摺擦バネ板30、40のうちベースバネ板22の内周面側に位置する摺擦バネ板30in、40inも同方向Dへ圧縮変形するためにベースバネ板22と第1の摺擦バネ板30inとの接触部間、並びに第1の摺擦バネ板30inと第2の摺擦バネ板40inとの接触部間に、夫々相対移動(摺動)と、それに起因した摩擦抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。一方、圧縮変形したベースバネ板22の外周面側に位置する摺擦バネ板30out、40outは圧縮変形しないために、ベースバネ板22と第1の摺擦バネ板30outとの間、並びに第1及び第2の摺擦バネ板30out、40out間は離間し、大きな摩擦抵抗は発生しない。このため、ベースバネ板22がD方向へ圧縮変形するに際して、第1の摺擦バネ板30inと第2の摺擦バネ板40inの変形及び摩擦抵抗によって抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。
このため、制振パネル1が振動すると、制振パネル1の運動エネルギは板バネ部材を構成する各バネ板22、30、40の変形及び摩擦により熱エネルギに変換されて大気中に放出され、制振パネル1の振動は減衰される。
【0030】
以上のように本例に係る制振パネル1によれば、建築物の木製枠10の隅部に制振装置20を設置することにより、地震等に起因した破壊的な衝撃、振動を有効に吸収することができ、制振パネル1を使用した建築物を制振構造とすることができる。このとき、制振パネル1には、振動吸収要素としてバネ鋼製の部材で形成した板バネ部材を使用したので、製造原価を低くできると共に、耐久性、耐熱性に優れたものとすることができる。
また、本例では、制振装置20を木製枠10の内部に配置して制振パネル1を構成したが、予め建物に組み付けられた木製枠10に対して本発明の制振装置20を配置することができる。この場合は既存建築物の制振化工事に適用することができる。
更に、本発明の板バネ制振ユニット21は、地震等により発生する応力を減衰させる制振機能のみならず、木製枠に対する補強性を有した耐震部材としても機能する。即ち、木製枠の隅部、或いは縦枠と横枠との交差部に配置することによりその強度を高めて耐震性を向上することができる。
また、本発明の板バネ制振ユニットを備えた制振装置は、軽量、小型であり、低廉であるため、建築物の新築工事のみならず、リフォームするに際しても、組付け工事を容易に実施できる。具体的には、専門業者でない個人であっても、ホームセンター等の小売店で購入してきた本制振装置を簡易に取り付けることができる。
以上説明した本発明の効果は、以下の他の実施形態においても同様に当てはまる。
【0031】
次に、本発明の板バネ制振ユニット21は、各枠材11、12、13、14の面(ユニット添設面)に対して補強材50を介して固定されているため、ベースバネ板、その他のバネ板が枠材面に直接固定されている場合に比して、地震等による外力によって枠材が変形した場合における金属製バネ板の木製枠材への食い込みが発生しなくなり、板バネ制振ユニットによる制振機能を正常に発揮させることが可能となる。
特に、補強材50は、両端部のみならずそれ以外の部位を少なくとも一箇所、各枠材に対して留め具51により固定されているので、地震による応力を各留め具51による各固定部に分散して吸収緩和することが可能となる。本例では図1(b)に示したように補強材50の幅方向に2箇所ずつネジ51を打ち込んで固定しているがこれは一例に過ぎず、ネジによる固定箇所数、固定位置は任意である。
留め具51による補強材の固定位置は、板バネ制振ユニット21の両端部に近い位置に集中して設けることにより枠材の変形時にバネ板が枠材に食い込むことをより効果的に防止できるが、板バネ制振ユニット21の両端部から離間した位置にも分散して留め具51による固定位置を設けて更なる応力分散効果を図ることも有効である。
【0032】
また、湾曲した薄い鋼板から成る補強材50の両端部を板バネ制振ユニット21と共に枠材11、13に固定する一方で、その中間部50Aを枠材の交差部から離間させているので、仕口を構成する各枠材11、13の変形自由度が十分に確保されている。従って、地震による建築物の変形に応じて枠材同志の変形を許容しつつ振動エネルギをバネ板間の摺動により吸収緩和することが可能となる。即ち、補強材50は仕口の変形を妨害しないように構成することが必要である。
なお、補強材50の中間部50Aは図示のように湾曲している必要はなく、例えば図3(a)のように45度に傾斜した構成であってもよい。
なお、図3(b)に示すように補強材50の中間部50Aを90度に屈曲させたL字形状とし、この中間部50Aを交差部に密着させたとしても、補強材のバネ性によって仕口の変形を妨害することがない場合には補強材の中間部と交差部との間が離間しない構成としてもよい。
【0033】
本発明の制振装置20を両枠材11、13の交差部(仕口)に留め具51を用いて固定する際には、補強材50を枠材に対して固定することとなるが、補強材50の幅を各バネ板の幅よりも広くしておき、各バネ板の幅方向端縁から張り出した補強材50の部位に固定穴を設けてネジ等を締結するようにすれば、バネ板がネジを螺着する作業に際しての障害となることがない。即ち、例えば各枠材11、13の内側面の幅を105mmとした場合に、補強材50の幅を90mmとし、バネ板の幅を90mm未満とすることにより補強材にネジ止めするためのスペースを確保することが可能となる。
或いは、図4に示すように板バネ制振ユニット21と補強材50とを留め具23により着脱自在に連結し、ホームセンター等においては連結された状態で販売する一方で、取付け時には板バネ制振ユニットから分離した補強材50を先行して単独で枠材に固定するようにしてもよい。即ち、建築物の仕口にこの制振装置20を取り付ける場合には、図4(a)のようにネジ等から成る留め具23を緩めて補強材50を分離し、補強材50に設けた固定穴50aを用いて補強材50を先行して枠材11、13の内側面の所定位置に固定する。その後、板バネ制振ユニット21の両端部に設けた取付け穴と補強材両端部の固定穴50bを連通させた状態で留め具23を用いて枠材11、13に対して固定する。なお、留め具23としてネジを用いる場合には必要に応じてワッシャ(座金)、ナット等を用いることは勿論である。
なお、このような取付け作業中に、板バネ制振ユニット21を構成する各バネ板がばらばらにならないように予めバネ板同志の一端部間を接着剤、図示しない固定クリップ、針金、その他の締結手段により固定しておいてもよい。
補強材50を備えない場合、即ち板バネ制振ユニット21単体の両端部を直接枠材にネジ止めする場合、枠材への正規の取付け位置から僅かでも位置ずれしたり、取付け角度がずれを起こすと、板バネ制振ユニット21を正しく取り付けることが困難となる。取付け位置を微調整するために一旦ネジ固定した板バネ制振部材を取り外して固定し直す作業を繰り返すことは極めて非効率的である。特に、板バネ制振ユニット21は重量物であり、形状が複雑であるため、取付け作業時における位置精度が確保し難い。
【0034】
これに対して本発明では、軽量、且つ形状がシンプルな補強材50単体を正規の取付け位置に留め具51を用いて固定する作業を先行させることができるので、位置決め精度を高めやすい。このように正確な位置に高精度に固定した補強材に対して後から板バネ制振ユニット21を留め具23を用いて締結することになるので、板バネ制振ユニットの位置決め精度を高めることができ、取付け作業の試行錯誤から開放される。
また、補強材50を組み付けた状態にある板バネ制振ユニット21を枠材に取り付ける作業を行う場合にも、補強材50と枠材との位置関係のみを考慮して組付けを行えばよいので位置精度を確保し易い。
また、制振装置20を工場にて完成して出荷、運搬する際に、板バネ制振ユニット21と補強材50とを留め具23により確実に固定しておくことにより、段ボール箱内に梱包する際に緩衝材をさほど厳重に充填しなくても運搬時の衝撃等によって補強材50やバネ板が変形することがなくなる。従って、保形性、取扱性を高めることができる。
また、本発明の制振装置20では、金属製の補強材50と板バネ制振ユニット21を構成するバネ板とを直接締結させる構成となっているため、金属同志の強い締結力(仕圧力)を得ることができ、板バネ制振ユニットを枠材にネジ止めしたときの弛みを防止することができる。
【0035】
次に、図5(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る補強材の構成図である。上記実施形態に係る補強材は単なる帯状の金属板材であるため、各枠材11、13の内側面に対して留め具51を用いて固定せざるを得なかった。このため、枠材間に形成される仕口にこの板バネ制振ユニット21を取り付ける際には、図3において説明したように補強材50のみを単独で枠材に予め固定する方が便利であった。しかし、このようにバネ板から分離した補強材50を予め枠材に固定してから、補強材50を介してバネ板群を枠材に固定する作業は繁雑である。
そこで、図5に示すように板状の補強材本体52の側方からブラケット片53を屈曲形成し、このブラケット片53に設けた固定穴53aを利用してネジ、釘等の留め具51を枠材の側面に打ち込むように構成すれば、補強材50をバネ板から分離させる必要をなくし、購入した板バネ制振ユニット21をそのまま枠材の仕口に取り付けることができる。つまり、補強材50をこのように構成することにより、補強材50を固定する枠材面(内側面)とは異なる枠材面(側面)に対して留め具51により固定することが可能となり、制振装置の組付け作業性を大幅に高めることが可能となる。しかも、ブラケット53に設けた固定穴53aを補強材の中間部位に複数箇所設けることにより枠材の変形によるエネルギを複数箇所に分散して、各バネ板の枠材への食い込みを防止することができる。
なお、補強材の両端部を枠材に固定する留め具23は、板バネ制振ユニットを枠材に固定する留め具23を兼ねることができる点も利点である。
【0036】
次に、図6は本発明の他の実施形態に係る制振装置の構成例を示している。この制振装置20は板バネ制振装置21の両端部と各枠材11、13との間に介在する補強材50を2つに分離した構成が特徴的である。
即ち、図6の実施形態に係る補強材50は、板バネ制振ユニット21の一端部と枠材11との間に介在する第1の補強片55と、板バネ制振ユニット21の他端部と他方の枠材13との間に介在する第2の補強片56と、から構成されており、両補強片55、56との間は連結されていない。各補強片55、56と各枠材11、13との間は少なくとも一箇所以上の部位で留め具51により固定されている。
このように補強材50は一枚の部材で構成する必要はなく、板バネ制振ユニット21の両端部に相当する枠材部位と、それ以外の枠材部位を夫々別個独立の補強片を介して固定するようにしてもよい。
なお、図6中に破線で示すように枠材11、13の交差部に中間部材57を配置してもよい。この中間部材57は、第1及び第2の補強片55、56とは別部品としており、枠材の交差部の変形を許容しつつ補強する機能を発揮することができる。
図5に示した変形例と図6の実施形態とを組み合わせた構成としてもよい。
【0037】
次に、図7は本発明の板バネ制振ユニットの他の構成例の説明図であり、この実施形態に係る板バネ制振ユニット21は、ベースバネ板22の長手方向両端部の内外両周面22A、22Bに対して夫々摺擦バネ板30、40を積層状態で固定配置した構成が特徴的である。即ち、図1の実施形態では摺擦バネ板をベースバネ板22の一端部22aにのみ組み付けたが、ベースバネ板22の他端部22b側での摩擦抵抗をも十分に確保したい場合には当該他端部22bに摺擦バネ板30、40、・・・を順次組み付けることが好ましい。なお、ベースバネ板の両端部の両面に夫々一枚の摺擦バネ板30を積層状態で固定配置してもよい。
ベースバネ板22の両端部に摺擦バネ板を積層配置することにより、本発明の板バネ制振ユニット21の耐震部材としての機能を高めることができる。
なお、ベースバネ板22に対する摺擦バネ板30、40、・・・の組付け構造、ベースバネ板22の変形時におけるバネ板間の摺擦による振動、衝撃エネルギの吸収機能については、図1において説明した事項がそのまま当てはまる。
また、補強材50の構成、機能については、図1乃至図5において述べた事項がそのまま本実施形態にも当てはまる。
【0038】
次に、図8(a)及び(b)は夫々本発明の制振装置(板バネ制振ユニット)の他の構成例の説明図である。
まず、図8(a)の実施形態に係る板バネ制振ユニット21は、ベースバネ板22の長手方向一端部22aの何れか一方の面のみに摺擦バネ板を積層状態で固定配置した構成が特徴的である。即ち、図1の実施形態では摺擦バネ板をベースバネ板22の一端部22aの両面に対して夫々組み付けたが、この板バネ制振ユニットを組み付ける枠材の特性、或いは建築物中における枠材の位置等の各種条件によっては、ベースバネ板22の一端部22a(或いは他端部22b)の片面のみに摺擦バネ板を積層配置すれば足りることもある。このようにベースバネ板22の片面のみに摺擦バネ板を積層配置した場合には、一方向から加わる応力のみを減衰させる機能しか発揮できないが、木製枠10の横方向に隣接する他の隅部にも板バネ制振ユニット21を組み付けることにより、両板バネ制振ユニット21が夫々異なった方向からの応力を吸収緩和することができるため差し支えない。
なお、この例では、ベースバネ板22の湾曲した外周面22Aに摺擦バネ板を取り付けたが、内周面22Bに取り付けても良い。
次に、図8(b)の実施形態に係る板バネ制振ユニット21は、ベースバネ板22の長手方向両端部22a、22bの同一面のみに摺擦バネ板を積層状態で固定配置した構成が特徴的である。なお、この例では、ベースバネ板22の内周面22Bに摺擦バネ板を取り付けたが、外周面22Aに取り付けても良い。
なお、ベースバネ板22に対する摺擦バネ板30、40、・・・の組付け構造、ベースバネ板22の変形時におけるバネ板間の摺擦による振動、衝撃エネルギの吸収機能については、図1において説明した事項がそのまま当てはまる。
また、補強材50の構成、機能については、図1乃至図5において述べた事項がそのまま本実施形態にも当てはまる。
【0039】
次に、図9(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る制振装置(板バネ制振ユニット)の構成例を示す図である。
まず、図9(a)に係る板バネ制振ユニット21は、ベースバネ板22の一端部22aの一面(22B)と、他端部22bの他面(22A)に夫々一枚、又は二枚以上の摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置した構成が特徴的である。
即ち、この例では、ベースバネ板22の両端部の異なった面上に夫々摺擦バネ板30、40を順次積層した状態で端部間を固定しており、対向する二方向からの応力P1、P2に対応して弾性変形しつつバネ板間で摺擦することによるエネルギの吸収、緩和と、その後の原形への弾性復帰ができるように構成されている。
図9(b)に係る板バネ制振ユニット21は、図9(b)の変形例であり、ベースバネ板22を挟んで対向配置される少なくとも2枚の摺擦バネ板、この例では2枚の第1の摺擦バネ板30を各他端部30bがオーバーラップするように長尺に構成した点が特徴的である。このように構成しても、対向する正逆二方向からの応力P1、P2に対応して弾性変形しつつバネ板間で摺擦することによるエネルギの吸収、緩和と、その後の原形への弾性復帰ができるように構成されている。
なお、ベースバネ板22に対する摺擦バネ板30、40、・・・の組付け構造、ベースバネ板22の変形時におけるバネ板間の摺擦による振動、衝撃エネルギの吸収機能については、図1において説明した事項がそのまま当てはまる。
また、補強材50の構成、機能については、図1乃至図5において述べた事項がそのまま本実施形態にも当てはまる。
【0040】
以上のように本発明では、補強材50を介して板バネ制振ユニット21を枠材に間接的に固定するようにしたのでバネ板と枠材との直接接触に起因したバネ板の食い込みを解消し、制振機能を正常に発揮させることが可能となる。即ち、板バネ制振ユニットを直接枠材に対して直接固定した場合には地震等により枠材が変形する際に板バネ制振ユニットを構成するバネ板が局部的に枠材面に食い込みを起こし、制振装置として正常に作動し得ない状況が想定されるが、本発明ではそのような不具合を解決できる。
また、制振装置の取り付け作業を行う場合に、予め板バネ制振ユニットに対して補強材が組み付けてあれば、主として補強材を枠材に固定する作業を実施することにより制振装置の取付けがほぼ完了するため、作業性を高めることができる。
また、板バネ制振ユニットを枠材に取り付ける際の枠材との固定部位は、長手方向両端部のみならず、それ以外の部位とすることにより、枠材が変形したときの応力を各固定部位に分散して吸収緩和し、枠材へのバネ板の食い込みを防止できる。
補強材を枠材同志の交差部(仕口)に跨って配置する際に、外力が加わった枠材同志の相対変位を規制しない方が制振効果上は好ましい。そこで、補強材の中間部を交差部から離間させることが有効である。
施工上、補強材を添設する枠材面に留め具を取付けにくい場合には、他の枠材面に留め具を固定できるように構成すればよい。
板バネ制振ユニットの両端部を枠材に固定した場合に両端固定部で発生し易い枠材への食い込みを防止するためには、補強材は必ずしも両枠材に跨って延在する必要はなく、2つに分割配置してもよい。
【0041】
次に、図10乃至図13に基づいて本発明の他の実施形態に係る制振装置について説明する。
図10(a)は本発明の一実施形態に係る制振パネルの全体正面図であり、(b)は(a)中に示された一つの制振装置の拡大斜視図であり、図11は板バネ制振ユニットの構成を示す正面図である。図12(a)(b)(c)(d)及び(e)は板バネ制振ユニットの構成例を示す正面図、平面図、ベースバネ板の構成図、摺擦バネ板の構成図、及びネジ止め部の断面図であり、図13(a)及び(b)は制振パネルの挙動を示す説明図である。
なお、図1、図2と同一部分には同一符号を付して重複した構成、作用、効果の説明は省略する。つまり、各実施形態間において同一符号、同一名称で表された各部材は、共通の構成上、作用上、効果上の特徴を有している。
制振装置20は、地盤から木製枠10に入力される運動エネルギを熱エネルギに変換することにより振動を吸収する振動吸収要素としての板バネ制振ユニット21と、板バネ制振ユニット21と各枠材との間に配置される補強材50と、を備えている。即ち板バネ制振ユニット21は、各枠材に対して補強材50を介して固定されている。
図10(a)の例では、木製枠10の2つの上部隅部に制振装置20を組み付けた場合を示したが、下部隅部に組み付けても良い。
【0042】
補強材50は必ずしも必須ではないが、本実施形態では補強材を併用した構成例に基づいて説明する。
板バネ制振ユニット21は、中間部50Aが湾曲した略L字状の一枚の鋼製板材から成る補強材50を介して木製枠を構成する各隅部(枠材11、13)の内側面により両端部を固定された少なくとも一枚の湾曲した長尺のベースバネ板60と、ベースバネ板60の長手方向中間部61によって中間部71を支持されることにより内側面(ベースバネ板と摺擦する面)の少なくとも一部を該ベースバネ板の一面と摺擦可能に積層された少なくとも一枚の湾曲した摺擦バネ板(第1の摺擦バネ板)70と、を備えている。
本実施形態では、ベースバネ板60の外側面60Aと内側面60Bに夫々摺擦バネ板70を配置した例を示しているが、ベースバネ板の何れか一方の面のみに摺擦バネ板を配置してもよい。
ベースバネ板60は、バネ鋼製の薄板を所定の曲率にて湾曲加工した金属板材であり、ベースバネ板60の両端部を、木製枠10の隅部にて互いに交差する横枠11と縦枠13の適所(この例では内側面)に対してネジ(ボルト)、釘その他の適宜の拘束部材により固定する。
また、この例では、ベースバネ板60の長手方向中心部から両端固定部までの長さを同一長としたが、中心部から両端固定部までの長さを異ならせても良い。ベースバネ板60の厚みは例えば5mmとし、幅は5cmとする。
【0043】
摺擦バネ板70は、その内側面(ベースバネ板と対向した面)がベースバネ板の両面と夫々接触するようにその曲率(湾曲形状)が予め設定された湾曲板であり、本例では、バネ鋼製の薄板を所定の曲率にて湾曲加工した金属板材から成る。各摺擦バネ板70は、外力が加わらない静止時に、その少なくとも一部が、ベースバネ板60の外周面及び内周面に対して接触(圧接を含む)するようにその曲率を設定される。この点は、後述する他の摺擦バネ板についても同様に当てはまる。なお、ベースバネ板60を挟んで配置された各摺擦バネ板70の長さは、ほぼ同等となるように設定してもよいし、一方を他方よりも長くしてもよい。摺擦バネ板70(他の摺擦バネ板についても同様)の厚み及び幅は例えばベースバネ板60と同等となるように設定してもよいし、ベースバネ板よりも薄くしてもよい。
ベースバネ板60の両面の中間部61により摺擦バネ板70の中間部71を支持し、中間部以外の部位を摺擦可能にしているため、板バネ制振ユニット21の面方向両側から加わる応力により各摺擦バネ板がベースバネ板60の両面と摺動することによって地震等によって木製枠に加わるエネルギを吸収、緩和することができる。常時において、ベースバネ板60の両面と各第1の摺擦バネ板70の内側面との間は、全面的に密着した状態で接触していてもよいし、部分的に接触していてもよい。
なお、ここで中間部61、71とは、ベースバネ板60及び摺擦バネ板70の長手方向略中心部を意味するが、寸法上における厳密な意味での中心部である必要はなく、実際の長手方向中心部よりも何れか一方に多少位置ずれしている部位も中間部に含まれる。要するに、ベースバネ板60の中間部61によって摺擦バネ板70の中間部71を支持(固定、及び長手方向へスライド可能な構成も含む)することにより、地震等による枠材の変形時に摺擦バネ板70の長手方向両端部(非中間部=後述するアーム部72)がベースバネ板60の面に対して摺擦できるように構成されていればよい。
【0044】
ベースバネ板60は、図示のように湾曲した外周面60Aが、木製枠10の隅部の内側面と対面するように組み付けられる。本例では、ベースバネ板60の両端部の幅を他の部位よりも狭くして補強材50の露出面積を増大させることにより留め具66による補強材固定スペースを確保しているが、これは一例に過ぎず、ベースバネ板の両端部の幅を狭くせずに(或いは他の部位よりも広くして)ベースバネ板の両端部と補強材50を枠材に対して留め具によって共締めするように構成してもよい。
各第1の摺擦バネ板70は、その中間部71をネジ80とナット81によりベースバネ板60の中間部61に締結される一方で、中間部71から長手方向両端に向かって延びる各アーム部(非中間部)72の内側面をベースバネ板の外周面60A及び内周面60Bと対面(接触)させている。
図12(b)(c)に示すようにベースバネ板60は、長手方向両端部の板面に補強板50とのネジ締結用の丸穴62を有すると共に、中間部61には第1の摺擦バネ板70の中間部71をネジ締結するための丸穴63を有し、更に中間部61を除いた部位、即ち各アーム部64の適所には第1の摺擦バネ板70の対応する部位をネジ締結するための丸穴65が形成されている。
【0045】
一方、第1の摺擦バネ板70は同図(d)に示すように中間位置71にベースバネ板60の中間位置にある丸穴62と連通する丸穴73を有すると共に、丸穴73の両側方には夫々ベースバネ板60の丸穴65と連通する長穴74が形成されている。
同図(a)及び(e)に示すように、丸穴62と丸穴73はネジ80とナット81により締結され、各丸穴65と各長穴74は、拘束部材としてのネジ82とナット83とスプリングワッシャとによって締結される。即ち、丸穴62と丸穴73を連通するようにネジ80を挿通してナット81で締結することによりベースバネ板60の中間位置61に対して第1の摺擦バネ板70の中間位置71を固定する一方で、連通状態にある丸穴65と長穴74にネジ82を挿通してスプリングワッシャを介してナット83で所定の締結力により締結することにより、各アーム72は対向するベースバネ板60の面に対して長手方向へ摺擦(移動)可能に支持される。拘束部材82、83により第1の摺擦バネ板70のアーム部72をベースバネ板60の面に対して所定の力で常時圧接させておくことにより、地震発生時にベースバネ板に対して第1の摺擦バネ板のアーム部が長手方向へ変位する際に地震エネルギを吸収、緩和することができる。
なお、第1の摺擦バネ板70の中間位置71に長穴74と同様の長穴を設けることにより、ベースバネ板60に対して第1の摺擦バネ板70が全体として(長穴の長手方向長の範囲内で)長手方向へ変位可能となるように構成してもよい。つまり、第1の摺擦バネ板の中間部71はベースバネ板の中間部61に対して完全に固定してもよいし、長手方向へ可動な状態に支持してもよい。
【0046】
本例では、ネジ82の頭部が枠材側に位置しているため、枠材の内側面との干渉を避けるために、枠材の内側面にネジ頭部を嵌合するための凹所を予め形成しておく。
また、上記実施形態では、摺擦バネ板70のアーム部72(非中間部)をベースバネ板60に対して長手方向へ相対的に変位自在に圧接させる拘束部材として、ネジ82とナット83を用いたが、これは一例に過ぎず、摺擦バネ板70のアーム部72とベースバネ板60の外周に巻き付いて両部材を圧接させた状態で束ねる金属製バンドの如き縛束部材を用いても良い。
以上の構成を備えた板バネ制振ユニット21においては、制振パネル1の挙動を示す図13(a)(b)に示したように対向する二方向からの応力P1、P2に対応して弾性変形しつつバネ板間で摺擦が行われることによるエネルギの吸収、緩和と、その後の原形への弾性復帰が行われる。同図中に破線で示したのは応力P1によって各バネ板が変形している状態であり、応力P2が加わった場合には各バネ板は逆方向に変形する。
このように構成したので、対向する二方向からの応力P1、P2に対応して弾性変形しつつバネ板間で摺擦することによるエネルギの吸収、緩和と、その後の原形への弾性復帰ができるように構成されている。
【0047】
この点を更に詳細に説明すると、板バネ制振ユニット21を構成するベースバネ板60及び各摺擦バネ板70は、制振パネル1を構成する横枠11、12及び縦枠13、14の変形に対応してエネルギを吸収する。図13(a)は一方からの応力P1が加わった場合の変形状態であり、(b)は他方からの応力P2が加わった場合の変形状態を示している。
地震等による揺れがない静止状態では、木製枠10は変形しておらず、図10(a)(b)に示したようにベースバネ板60、画摺擦バネ板70は変形していない。
一方、地震等により、制振パネル1が振動して応力P1、P2が加わると、木製枠10が変形してベースバネ板60が変形する。
地震発生時に上側の横枠11は、下側の横枠12に対して横方向へ相対的に変位する。ここで横枠11が横枠12に対して相対的に矢印A方向に移動したとき、縦枠13と横枠11に夫々両端部を固着されたベースバネ板60はB方向に伸長変形する。ベースバネ板60の伸長変形により、ベースバネ板60の両面60A、60Bに夫々配置された各摺擦バネ板70のうちベースバネ板60の外周面60A側に位置する摺擦バネ板70out、(外側摺擦バネ板)は同方向Bへ変形するために、ベースバネ板60と第1の摺擦バネ板70outとの接触部間に、夫々相対移動(摺動)と、それに起因した摩擦抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。一方、B方向へ伸長変形したベースバネ板60の内周面側に位置する摺擦バネ板70in(内側摺擦バネ板)は圧縮変形しないために、ベースバネ板60と第1の摺擦バネ板70inとの間は離間し、大きな摩擦抵抗は発生しない。このため、ベースバネ板60が伸長方向Bへ変形するに際して、第1の摺擦バネ板70outの変形、及びベースバネ板との摩擦による抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。
【0048】
次に、図13(b)に示すように横枠11が矢印Aと反対の方向Cに移動したときには、縦枠13と横枠11に夫々両端部を固着されたベースバネ板60はD方向に圧縮変形する。ベースバネ板60の圧縮変形により、ベースバネ板60の両面60A、60Bに夫々配置された各摺擦バネ板70のうちベースバネ板60の内周面側に位置する摺擦バネ板70inも同方向Dへ圧縮変形するためにベースバネ板60と第1の摺擦バネ板70inとの接触部間に、夫々相対移動(摺動)と、それに起因した摩擦抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。一方、圧縮変形したベースバネ板60の外周面側に位置する摺擦バネ板70outは圧縮変形しないために、ベースバネ板60と第1の摺擦バネ板70outとの間は離間し、大きな摩擦抵抗は発生しない。このため、ベースバネ板60がD方向へ圧縮変形するに際して、第1の摺擦バネ板70inの変形、及びベースバネ板との間の摩擦によって抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。
このため、制振パネル1が振動すると、制振パネル1の運動エネルギは板バネ部材を構成する各バネ板70の変形及び摩擦により熱エネルギに変換されて大気中に放出され、制振パネル1の振動は減衰される。
なお、補強材50について図1乃至図7において説明した構成、作用、効果は、図10乃至図13の実施形態にも同様に当てはまる。
【0049】
上記実施形態では、一枚のベースバネ板60の両面に夫々一枚の摺擦バネ板(第1の摺擦バネ板)70を配置した構成例を示したが、第1の摺擦バネ板70の外側に第2、第3の摺擦バネ板を多段状に積層することも有効である。
即ち、図14は多板構造の板バネ制振ユニットの構成と、各摺擦バネ板の構成説明図であり、この板バネ制振ユニット21は、ベースバネ板60と接触する第1の摺擦バネ板70と、第1のバネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第2の摺擦バネ板90を備え、第2の摺擦バネ板の中間部91をベースバネ板の中間部61によって支持した構成が特徴的である。第2の摺擦バネ板の中間部91をベースバネ板の中間部によって支持する手段としては、例えばネジ80とナット81とを用いる。この場合、ネジ80とナット81とによって、ベースバネ板60と第1の摺擦バネ板70と第2の摺擦バネ板90とを共締めすることとなる。
一方、第2の摺擦バネ板90のアーム部(非中間部)92は第1の摺擦バネ板70に対して摺擦するように拘束部材によって組み付ける。即ち、図14中に示したように第2の摺擦バネ板90はその中間部91に丸穴95を有すると共に、アーム部92には長穴96を有する。更に、第1の摺擦バネ板70には第2の摺擦バネ板の長穴96と対応する位置に長穴75を有している。
【0050】
上記実施形態では、ベースバネ板60の両側面に夫々第1及び第2の摺擦バネ板を積層した例を示したが、ベースバネ板60の何れか一方の面のみに第1及び第2の摺擦バネ板を配置してもよいし、一方の面に第1の摺擦バネ板を配置する一方で、他方の面には第1及び第2の摺擦バネ板を配置するようにしてもよい。
なお、特に図示しないが、第2の摺擦バネ板90の外側面に第3の摺擦バネ板、第4の摺擦バネ板を順次積層するように構成してもよい。ベースバネ板に対して第3の摺擦バネ板、或いは第4の摺擦バネ板を支持する構造は、ベースバネ板と第2の摺擦バネ板との関係と同様である。
また、このように第1の摺擦バネ板の外側に他の摺擦バネ板を多段状に積層する構造を採用した場合には、個々の摺擦バネ板の長さは、直近外側に位置する他の摺擦バネ板の長さよりも長尺とし、各摺擦バネ板の両端部が階段状となるように積層するのが好ましい。
本発明においては、補強材と、ベースバネ板と、摺擦バネ板を予め組み付けた状態でユニット化することにより取扱性を高めることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…制振パネル、10…木製枠、11、12…横枠、13、14…縦枠、20…制振装置、21…板バネ制振ユニット、22…ベースバネ板、60A…一端部、22b…他端部、30…第1の摺擦バネ板、40…第2の摺擦バネ板、50…補強材、53…ブラケット片、55、56…補強片、60…ベースバネ板、61…中間部、62…アーム部、70…摺擦バネ板(第1の摺擦バネ板)、71…中間部、72…アーム部、80…ネジ、81…ナット、82…ネジ、83…ナット、90…第2の摺擦バネ板、91…中間部、92…アーム部
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振装置、制振構造、制振パネルの改良に係り、特に低価格でありながら長期間にわたり安定した制振性能を維持することができる制振装置、制振構造、制振パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
地震対策を施した建築物の構造として、建築物の剛性を高める「耐震構造」、建築物内に配置したダンパ装置等で運動エネルギを吸収する「制振構造」、地盤から建築物への振動伝搬を遮断する「免震構造」があり、それぞれに様々な技術が提案されている。
「耐震構造」にあっては、建築物構造体の剛性を増す必要があるため、材料費等のコストが嵩む一方で、建築物内部における振動は緩和されず内部に配置された物品が損傷するおそれがあり、これに対する対策が別途必要となる。
「免震構造」にあっては、地盤から建築物へ伝わる振動を遮断するための大がかりな免震装置を設ける必要があるため、設備費用や工事費用が嵩むという問題がある。
このため、木造建築では、比較的低コストで実現でき建築物内部の損傷も防止できる「制振構造」を採用することが望ましい。
【0003】
尚、以下では、建築物の地震対策としての「制振構造」のみならず、交通振動、風揺れを防止するための構造をも含めて「制振構造」と称して説明する。
建築物の制振構造の一例が特許文献1に開示されている。この制振構造は、矩形枠材の内側四隅に4つのブレースの基端部を固定し、それら4つのブレースの先端部を互いに接近させると共に、対角線方向で向き合った両ブレースを平行にオフセットして配置し、上側又は左右の一方側の2つのブレースの先端部を共通の第1浮動部材に固定する一方、残り2つのブレースの先端部を共通の第2浮動部材に固定し、それら第1浮動部材と第2浮動部材との間を粘弾性体で連結して粘弾性ダンパを構成した建物壁部の制振構造において、上側2つの前記両ブレースの延長線の交点と、下側2つの前記両ブレースの延長線の交点との間の中間点を間に挟んだ2個所に前記粘弾性体を分けて配置したものである。
この制振構造においては、粘弾性ダンパには粘性弾性部材を使用しているが、粘弾性ダンパとして耐久性や耐火性に優れたものを使用しなければならずその材質が限定され、コストが嵩むという問題がある。
また、ブレースを用いて粘弾性ダンパを枠材に組み付ける構造であるため、組付け手数が増大して簡易な組付けが困難となるばかりでなく、全体重量が増大するために木造家屋への適用に適さないという問題がある。
【0004】
次に、特許文献2には、粘弾性ダンパを使用しない制振構造として、横枠と縦枠の接合部に取り付けられる耐震具であって、地震の揺れを吸収する摩擦パッドを介して回動自在に連結された2つのリンクアームからなる減衰機構と、一方向へ変形した減衰機構を原形に復帰させる復元力を発生する復元機構と、を有したものが開示されている。この耐震具は、横枠と縦枠とが直交する角隅部において両枠材間に跨って配置されることにより、摩擦パッドによりリンクアームに加わる揺れを吸収すると共に、変形したリンクアームを復元機構によって復元させるように構成されている。この耐震具は、建造物を構成する矩形枠材の任意の隅部に対して簡易に取り付けることができるメリットを有している。
しかし、この耐震具にあっては、リンクアームの変形に際して摩擦パッドによりエネルギを吸収、減衰できる振動方向が一方向に過ぎず、反対方向からの振動を吸収、減衰することはできない。反対方向からの振動を吸収するためには他の耐震具を同一の枠材の隅部に逆向きに設ける必要があり、使用する耐震具数の増大による取付け手数、コストの増大をもたらすことが明かである。また、厚み方向スペースが狭く極限された枠材の隅部において、2つのリンクアーム間、及び各リンクアームと各枠材との間に配置した摩擦パッドのみに依存してエネルギを吸収する構成であるため、摩擦パッドによる摩擦力を適正値に設定することが極めて困難である。
【0005】
次に、特許文献3には、長さの異なる複数枚の板バネをピラミッド状に積層すると共に各板バネの中央部間をヒンジパッドにより連結した重ね板バネを制振ダンパとして利用した建物の制振装置が開示されているが、枠材からの応力を制振ダンパに伝達する手段としてのブレースを必須とするため、取付け手数が増大し、しかも重量が増大するために木造家屋用には適さないと言う不具合がある。また、板バネをピラミッド状に積層した制振具にあっては、ピラミッドの頂部側から底面に向かって加わる応力に対しては板バネ間の摩擦によって応力を吸収し、減衰することができるが、反対方向から加わる応力を吸収、減衰できないという問題がある。
次に、特許文献4は、木造軸組建築物の梁と間仕切げたとが相互に接する箇所に、湾曲した二枚の板バネから成る補強部材を設けた構成が開示されている。一方の板バネの一端部を梁に固定し、他方の板バネの一端部を間仕切げたに固定すると共に両板バネの他端部同志は互いにスライド自在に係合されている。しかし、地震等によって両枠材が変形した場合には両板バネは他端部同志が相対的に変位する伸縮動作を行うに過ぎず板バネ同志の摩擦による振動エネルギの吸収緩和という効果は期待できない。特に、板バネの他端部同志は単に小片により係止されているに過ぎないため、地震による大きな振動エネルギにより小片が破損し易く、制振効果を期待することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−126868公報
【特許文献2】特許第3470807号
【特許文献3】特開平10−082203公報
【特許文献4】特開2003−96911公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように複数の板バネを積層した従来の制振装置にあっては、ブレース等、枠材の振動を板バネに伝達する伝達部材を必須とするため、部品点数の増大による組付け作業の複雑、困難化、重量増、コスト増を招き、木造建築物に適さなくなるという問題と、一方向から加わる応力に対してはエネルギを吸収する効果を発揮できても反対側からの応力には対応できないという問題があった。
本発明は上記に鑑みて成されたものであり、組付け手数、部品点数の増大をもたらすことなく、低価格で、耐火性、耐久性に優れ、しかも二方向から加わる振動、衝撃による応力を吸収緩和することができる制振装置、制振構造、制振パネルを提供することを目的とする。
更に本発明では、制振装置を構成するバネ板が枠材の取付け面に食い込むことによる制振効果の低下を防止し、更に制振装置の組付け作業性を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来の課題は以下の手段で解決される。
本発明の制振装置は、建築物を構成する複数の枠材の交差部に取り付けられる振動吸収要素としての板バネ制振ユニットを備えた制振装置であって、前記板バネ制振ユニットは、一方の前記枠材と他方の前記枠材に夫々両端部を固定される少なくとも一枚の湾曲したベースバネ板と、該ベースバネ板の長手方向中間部によって中間部を支持されることにより内側面の少なくとも一部を該ベースバネ板の一面と摺擦可能に積層された少なくとも一枚の摺擦バネ板と、を備えたことを特徴とする。
本発明においては、地震等により建築物に加わる運動エネルギは板バネ制振ユニットに伝達され、板バネ制振ユニットにおいて熱エネルギに変換され放出される。板バネ制振ユニットを構成する各バネ板は振動吸収要素として作用して枠材の振動を吸収する。そして、本発明では、振動吸収要素として機械要素として一般的に使用されているバネ板を使用するから、低価格とすることができると共に、耐久性、耐熱性に優れた制振装置を実現することができる。
【0009】
また、板バネ制振ユニットは機械要素として通常使用される構造を備えるものであり、バネ板の弾性変形及びバネ板同士の摩擦により運動エネルギを熱エネルギに変換して振動を吸収する。また、各バネ板を金属で構成した場合には耐久性及び耐熱性に優れるものとすることができる。各バネ板は、鋼材、特にバネ鋼材を材料とすることが適当であるが、弾性を備える金属性のものであれば差し支えない。
ベースバネ板に対する摺擦バネ板の取付け部位、取付け枚数等は、種々選定可能である。例えば、ベースバネ板の一面側、或いは両面側に1枚或いは2枚以上の摺擦バネ板を配置してもよい。
ベースバネ板及び摺擦バネ板の中間部とは、長手方向略中心部を意味し、寸法上の厳密な意味での中心部に限るものではない。ベースバネ板の中間部により摺擦バネ板の中間部を支持するとは、完全に固定的に支持する場合と、長手方向へ可動な状態で支持する場合を含む。
ベースバネ板の中間部に対して摺擦バネ板の中間部を支持することにより、両バネ板の接触面間は圧接状態となり、しかも地震等によって枠材が変形した場合には両バネ板間が摺擦し、地震によるエネルギを吸収、緩和する。
【0010】
本発明は、前記摺擦バネ板はその中間部を、前記ベースバネ板の長手方向中間部に固定したことを特徴とする。
中間部同士を固定することにより、両バネ板の中間部を除いた他の圧接面での摺擦力を高めることができる。
本発明は、前記摺擦バネ板の前記中間部を除いた部位を前記ベースバネ板に対して長手方向へ相対的に変位自在に圧接させる拘束部材を備えていることを特徴とする。
拘束部材によって両バネ板の非中間部を圧接させることにより十分な予圧を確保することができる。
本発明では、前記拘束部材は、前記ベースバネ板と前記摺擦バネ板を貫通するネジ及びナットであり、該ネジは前記ベースバネに設けた丸穴内に挿通固定される一方で、前記摺擦バネ板に設けた長穴内に遊嵌していることを特徴とする。
本発明では、前記拘束部材は、前記ベースバネ板と前記摺擦バネ板とを圧接させた状態で束ねる縛束部材であることを特徴とする。
縛束部材とは、例えば両バネ板の外面に巻掛けられてこれらを束ねる金属製のバンド等を含む。
【0011】
本発明は、前記ベースバネ板の両面に夫々前記摺擦バネ板を配置したことを特徴とする。
本発明は、前記板バネ制振ユニットは、前記ベースバネ板と接触する第1の摺擦バネ板と、該第1の摺擦バネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第2の摺擦バネ板を備え、該第2の摺擦バネ板の中間部を前記ベースバネ板の中間部によって支持したことを特徴とする。
本発明は、前記第2の摺擦バネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第3の摺擦バネ板を備え、該第3の摺擦バネ板の中間部を前記ベースバネ板の中間部により支持し、更に必要に応じて該第3の摺擦バネ板の外側面に対して第4の摺擦バネ板以降の摺擦バネ板を順次摺擦可能な積層状態で配置したことを特徴とする。
本発明は、個々の前記摺擦バネ板の長さは、直近外側に位置する他の摺擦バネ板の長さよりも長尺であり、前記各摺擦バネ板の両端部が階段状となるように積層されていることを特徴とする。
本発明は、前記板バネ制振ユニットと前記各枠材との間に介在する補強材を備えたことを特徴とする。
補強材と、ベースバネ板と、摺擦バネ板を予め組み付けた状態でユニット化することにより取扱性を高めることができる。
【0012】
本発明は、建築物を構成する複数の枠材の交差部に取り付けられる振動吸収要素としての板バネ制振ユニットを備えた制振装置であって、前記板バネ制振ユニットは、一方の前記枠材と他方の前記枠材に夫々両端部を固定される少なくとも一枚の湾曲したベースバネ板と、該ベースバネ板の少なくとも一端部に対して一端部を固定配置されると共に該一端部を除いた内側面の少なくとも一部を該ベースバネ板の一面と摺擦可能に積層された少なくとも一枚の第1の摺擦バネ板と、を備え、前記第1の摺擦バネ板は、前記ベースバネ板よりも短尺であり、前記板バネ制振ユニットは、前記各枠材に対し補強強材を介して固定されていることを特徴とする。
本発明においては、地震等により建築物に加わる運動エネルギは板バネ制振ユニットに伝達され、板バネ制振ユニットにおいて熱エネルギに変換され放出される。板バネ制振ユニットを構成する各バネ板は振動吸収要素として作用して枠材の振動を吸収する。そして、本発明では、振動吸収要素として機械要素として一般的に使用されているバネ板を使用するから、低価格とすることができると共に、耐久性、耐熱性に優れた制振装置を実現することができる。
【0013】
また、板バネ制振ユニットは機械要素として通常使用される構造を備えるものであり、バネ板の弾性変形及びバネ板同士の摩擦により運動エネルギを熱エネルギに変換して振動を吸収する。また、各バネ板を金属で構成した場合には耐久性及び耐熱性に優れるものとすることができる。各バネ板は、鋼材、特にバネ鋼材を材料とすることが適当であるが、弾性を備える金属性のものであれば差し支えない。
ベースバネ板に対する摺擦バネ板の取付け部位、取付け枚数等は、種々選定可能である。例えば、ベースバネ板の一端部の一面側、或いは両面側に1枚或いは2枚以上の摺擦バネ板を配置してもよいし、ベースバネ板の両端部の一面側、或いは両面側に1枚或いは2枚以上の摺擦バネ板を配置してもよい。
本発明の制振装置は、制振機能のみならず、枠材の交差部を補強することによる耐震性の向上を図ることもできる。
板バネ制振ユニットを直接枠材に対して固定した場合には地震等により枠材が変形する際に板バネ制振ユニットを構成するバネ板が局部的に枠材面に食い込みを起こし、制振装置として正常に作動し得ない状況が想定される。本発明では、補強材を介して板バネ制振ユニットを枠材に間接的に固定するようにしたのでバネ板と枠材との直接接触に起因したバネ板の食い込みを解消し、制振機能を正常に発揮させることが可能となる。
【0014】
また、制振装置の取り付け作業を行う場合に、予め板バネ制振ユニットに対して補強材が組み付けてあれば、主として補強材を枠材に固定する作業を実施することにより制振装置の取付けがほぼ完了するため、作業性を高めることができる。
本発明は、前記補強材は略L字状に湾曲、或いは屈曲した一枚の板材であり、一端を一方の前記枠材に固定され、他端を他方の前記枠材に固定され、更に他の少なくとも一箇所を前記各枠材に固定されていることを特徴とする。
板バネ制振ユニットを枠材に取り付ける際の枠材との固定部位は、長手方向両端部のみならず、それ以外の部位を含めることにより、交差する両枠材が変形したときの応力を各固定部位に分散して吸収緩和し、枠材へのバネ板の食い込みを防止できる。
本発明は、前記補強材は、中間部を前記交差部から離間させていることを特徴とする。
補強材を枠材同志の交差部(仕口)に跨って配置する際に、外力が加わった枠材同志の相対変位を規制しない方が制振効果上は好ましい。そこで、補強材の中間部を交差部から離間させている。
本発明は、前記補強材は前記各枠材に対して留め具により固定されていることを特徴とする。
【0015】
本発明は、前記補強材の両端部を固定する留め具は、前記板バネ制振ユニットを前記枠材に固定する締め付け具を兼ねることを特徴とする。
本発明は、前記留め具は、ネジ、或いは釘であることを特徴とする。
本発明は、前記補強材は、該補強材を添設する枠材面とは異なる枠材面に対して前記留め具により固定されていることを特徴とする。
施工上、補強材を添設する枠材面に留め具を取付けにくい場合には、他の枠材面に留め具を固定できるように構成すればよい。
本発明は、前記補強材は、前記板バネ制振ユニットの一端部と一方の前記枠材との間に介在する第1の補強片と、前記板バネ制振ユニットの他端部と他方の前記枠材との間に介在する第2の補強片と、から構成されていることを特徴とする。
板バネ制振ユニットの両端部を枠材に固定した場合に両端固定部で発生し易い枠材への食い込みを防止するためには、補強材は必ずしも両枠材に跨って延在する必要はなく、2つに分割配置してもよい。
【0016】
本発明は、前記第1の摺擦バネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第2の摺擦バネ板を備え、該第2の摺擦バネ板の一端部を前記第1の摺擦バネ板の一端部に対して固定配置したことを特徴とする。
本発明は、前記第2の摺擦バネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第3の摺擦バネ板を備え、該第3の摺擦バネ板の一端部を前記第2の摺擦バネ板の一端部に対して固定配置し、更に必要に応じて該第3の摺擦バネ板の外側面に対して第4の摺擦バネ板以降の摺擦バネ板を順次摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする。
本発明は、個々の前記摺擦バネ板の長さは、直近外側に位置する他の摺擦バネ板の長さよりも長尺であり、前記各摺擦バネ板の他端部が階段状となるように積層されていることを特徴とする。
本発明は、前記ベースバネ板の両面に対して夫々少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする。
本発明は、前記ベースバネ板の片面に対して少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする。
【0017】
本発明は、前記ベースバネ板の片面の両端部、或いは該ベースバネ板の両面の両端部に対して、少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする。
本発明は、前記ベースバネ板の片面の一端部と、該ベースバネ板の他面の他端部に対して夫々少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする。
本発明は、前記ベースバネ板を介して対向する前記各摺擦バネ板の内の少なくとも第1の摺擦バネ板の他端部同志をオーバーラップさせたことを特徴とする。
本発明は、前記ベースバネ板の両面に夫々少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置した場合に、前記各摺擦バネ板の長さを前記ベースバネ板よりも短尺にしたことを特徴とする。
【0018】
本発明は、前記ベースバネ板の厚み、或いは/及び、幅を、前記摺擦バネ板と異ならせたことを特徴とする。
本発明に係る制振構造は、建築物を構成する横枠と縦枠との交差部に、前記各制振装置を配置したことを特徴とする。
本発明の制振装置は、複数の枠材が交差する部位に適用することができる。建築物を構成する枠材の交差部に配置することにより、建造物の要所を制振性のものとすることができる。このため、建物の状況に応じた制振工事を適正に行うことができる。
本発明に係る制振パネルは、略矩形の枠材と、該枠材の少なくとも1つの隅部に配置される前記各制振装置と、を備えたことを特徴とする。
建築物を構成する矩形の枠材に制振装置を配置することができ、枠材を制振性のものとすることができ、既存建物の枠材にこの構造を採用することにより、既存建築物の制振工事を適正に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、制振装置を、建築物を構成する矩形状の枠材の内部に配置され、入力される運動エネルギを熱エネルギに変換することにより振動を吸収する振動吸収要素としての板バネ部材と、前記枠材の振動を前記板バネ部材に伝達する伝達部材を備えて構成したので、低価格であり、耐火性、耐久性に優れた制振装置、制振構造、制振パネルを実現することができる。
また、バネ板から成る板バネ制振ユニットを枠材に対して補強材を介して固定するようにしたので、直接固定した場合に発生し得る種々の不具合を一挙に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る制振パネルを示すものであり、(a)は全体正面図、(b)は(a)中に示された制振装置の拡大図である。
【図2】(a)及び(b)は夫々板バネ制振ユニットの変形状態を示す図である。
【図3】(a)及び(b)は補強材の他の構成例を示す図である。
【図4】(a)及び(b)は本発明の板バネ制振ユニットの一例の分解斜視図、及び組付け状態を示す図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る補強材の構成図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る制振装置の構成例を示す図である。
【図7】本発明の板バネ制振ユニットの他の構成例の説明図である。
【図8】(a)及び(b)は夫々本発明の制振装置(板バネ制振ユニット)の他の構成例の説明図である。
【図9】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る制振装置(板バネ制振ユニット)の構成例を示す図である。
【図10】(a)は本発明の一実施形態に係る制振パネルの全体正面図であり、(b)は(a)中に示された一つの制振装置の拡大斜視図である。
【図11】板バネ制振ユニットの構成を示す正面図である。
【図12】(a)(b)(c)(d)及び(e)は板バネ制振ユニットの構成例を示す正面図、平面図、ベースバネ板の構成図、摺擦バネ板の構成図、及びネジ止め部の断面図である。
【図13】(a)及び(b)は制振パネルの挙動を示す説明図である。
【図14】多板構造の板バネ制振ユニットの構成と、各摺擦バネ板の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。まず、本発明に係る制振パネルについて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る制振パネルを示すものであり、(a)は全体正面図、(b)は(a)中に示された一つの制振装置の拡大図であり、図2(a)及び(b)は夫々板バネ制振ユニットの変形状態を示す図である。
本発明に係る制振パネル1は、長方形状の枠材である木製枠(枠材)10の少なくとも一つの隅部(本例では四隅)に制振装置20を配置した構成を備えている。木製枠10は建築物の一部を構成しており、木材で構成された2本の横枠11、12と、2本の縦枠13、14とが図示していない金具、ネジ等で連結されて構成される。
制振装置20は、建築物を構成する横枠(枠材)11、12と縦枠(枠材)13、14との交差部(隅部)に取り付けられて入力される振動を吸収する手段である。以下では、略矩形の木製枠10を構成する隅部に制振パネル1を組み付ける場合について説明するが、本発明の適用範囲は矩形枠材の隅部に限定されるものではなく、複数の枠材が交差(直交に限らない)する部位全てに適用可能である。
制振装置20は、地盤から木製枠10に入力される運動エネルギを熱エネルギに変換することにより振動を吸収する振動吸収要素としての板バネ制振ユニット21と、板バネ制振ユニット21と各枠材との間に配置される補強材50と、を備えている。即ち板バネ制振ユニット21は、各枠材に対して補強材50を介して固定されている。
【0022】
板バネ制振ユニット21は、中間部50Aが湾曲した略L字状の一枚の鋼製板材から成る補強材50を介して木製枠を構成する各隅部の内側面により両端部を固定された少なくとも一枚の湾曲した長尺のベースバネ板22と、ベースバネ板22の少なくとも一端部22aに対して一端部30aを固定配置されると共にその内側面(ベースバネ板と摺擦する面)の少なくとも一部をベースバネ板22の一面と摺擦可能に積層された少なくとも一枚の湾曲した第1の摺擦バネ板30と、を備えている。ベースバネ板22は、図示のように湾曲した外周面22Aが、木製枠10の隅部の内側面と対面するように組み付けられる。
第1の摺擦バネ板30の外側面(ベースバネ板と摺擦しない面)に対してさらに第2の摺擦バネ板40を積層すると共に、その一端部40aを第1の摺擦バネ板30の一端部30aに対して固定している。
第2の摺擦バネ板40の一端部40aを第1の摺擦バネ板30の一端部30aに固定する方法としては、ネジ等により両者を直接固定してもよいし、他のブラケット等を用いてベースバネ板22に対して各摺擦バネ板間を締結固定してもよい。要するに、どのような固定方法であれ、ベースバネ板22の一端部に対して他の摺擦バネ板の一端部を固定する構造は、直接固定、間接固定に関係なく、全て本発明の技術的範囲に含まれるものである。この点は、以下に述べる他の実施形態における固定構造にも同様に当てはまる。
【0023】
ベースバネ板22は、バネ鋼製の薄板を所定の曲率にて湾曲加工した金属板材であり、ベースバネ板22の両端部を、木製枠10の隅部にて互いに交差する横枠11と縦枠13の適所(この例では内側面)に対してネジ(ボルト)、釘その他の適宜の留め具23により固定する。ベースバネ板22と各枠材との間に板状の補強材50を介在させることにより、バネ板が枠材面に食い込みを起こすことを防止したり、制振装置の組付け作業性を高める効果を期待できる。補強材50は、各枠材から加わる応力がベースバネ板22の両端部のみならず、補強材50と各枠材とを固定する他の留め具(ネジ、釘等)51による固定箇所に分散されるように固定する。即ち、補強材50はその両端部のみならず、他の部位を各枠材と固定されることにより、板バネ制振ユニット21を構成する金属製のバネ板が木製枠材の取付け面に食い込んで制振機能を発揮し得なくなる不具合を解消することができる。
また、この例では、ベースバネ板22の長手方向中心部Cから両端固定部までの長さを同一長としたが、中心部Cから両端固定部までの長さを異ならせても良い。ベースバネ板22の厚みは例えば5mmとし、幅は5cmとする。
本例では、ベースバネ板22の一端部22a側の両面に夫々第1の摺擦バネ板30の一端部30aをネジ23により固定すると共に、各第1の摺擦バネ板30の他端側は自由端状とし、ベースバネ板22が面方向へ変形する時にベースバネ板に対して長手方向へ相対的に摺動できるように構成している。
【0024】
各第1の摺擦バネ板30は、その内側面(ベースバネ板と対向した面)がベースバネ板の両面(外周面22Aと内周面22B)と夫々接触するようにその曲率(湾曲形状)が予め設定された湾曲板であり、本例では、バネ鋼製の薄板を所定の曲率にて湾曲加工した金属板材から成る。各第1の摺擦バネ板30は、外力が加わらない静止時に、その少なくとも一部が、ベースバネ板22の外周面22A及び内周面22Bに対して接触(圧接を含む)するようにその曲率を設定される。この点は、以下に説明する他の摺擦バネ板についても同様に当てはまる。なお、ベースバネ板22を挟んで配置された各第1の摺擦バネ板30の長さは、ほぼ同等となるように設定してもよいし、一方を他方よりも長くしてもよい。第1の摺擦バネ板30(他の摺擦バネ板についても同様)の厚み及び幅は例えばベースバネ板22と同等となるように設定してもよいし、ベースバネ板よりも薄くしてもよい。
ベースバネ板22の両面に対して第1の摺擦バネ板30を摺擦可能に積層した状態で一端部を固定(積層状態で固定配置)しているため、板バネ制振ユニット21の面方向両側から加わる応力により各第1のバネ板30がベースバネ板22の各面22A、22Bと摺動することによって地震等によって木製枠に加わるエネルギを吸収、緩和することができる。常時において、ベースバネ板22の両面と各第1の摺擦バネ板30の内側面との間は、全面的に密着した状態で接触していてもよいし、部分的に接触していてもよい。
【0025】
各第2の摺擦バネ板40は、その内側面(第1の摺擦バネ板30と対向した面)が各第1の摺擦バネ板30の外側面と夫々接触するようにその曲率(湾曲形状)が予め設定された湾曲板である。各第1の摺擦バネ板30の外側面に対して夫々第2の摺擦バネ板40を積層すると共に、夫々の一端部40aを第1の摺擦バネ板30の一端部30aに対して固定している。この際、各第2の摺擦バネ板40は、各第1の摺擦バネ板30の外側面に対して接触、或いは所定の力で圧接するようにその曲率を設定される。従って、板バネ制振ユニット21に対して面方向両側から加わる応力により各第2のバネ板40が各第1の摺擦バネ板30の外側面と摺動することによってエネルギを吸収、緩和することができる。
各摺擦バネ板30、40の関係は、内側に位置する摺擦バネ板30の長さよりも、直近外側に位置する他の摺擦バネ板40の長さが順次短尺となるように寸法設定されており、各摺擦バネ板30、40の他端部30b、40bが階段状となるように構成されている。
即ち、第1の摺擦バネ板30の長手方向寸法をベースバネ板22の長手方向寸法よりも短尺にする一方で、第2の摺擦バネ板40の長手方向寸法を第1の摺擦バネ板30の長手方向寸法よりも更に短尺にすることにより、各摺擦バネ板30、40の他端部が階段状(或いはピラミッド状)となる。このようにベースバネ板22に対して摺擦バネ板を階段状、或いはピラミッド状に積層することにより、板バネ制振ユニット21の強度、耐久性を適切に維持しつつ、所定以上の応力が加わった場合の弾性変形を容易化することができる。また、複数のバネ板を多段状に積層することにより、入力される運動エネルギを熱エネルギに変換して振動を吸収する振動吸収要素としての板バネ制振ユニット21全体としての振動吸収能力を所望の値に調整することが容易となる。
なお、ベースバネ板22と第1の摺擦バネ板30との外周に巻掛けられてこれらを束ねるバンド等の縛束部材によって常時圧接させて両バネ板の接触面に予圧を加えておくことにより、地震発生時の応答性を高めるように構成しても良い。また、第1の摺擦バネ板30と第2の摺擦バネ板40との間も同様にバンド等の縛束部材によって常時圧接させて予圧を加えておくようにしてもよい。
【0026】
なお、使用するバネ板の材質、枚数、形状は必要とされる制振特性に合わせて任意に選択することができる。即ち、図示の実施形態では、摺擦バネ板として第1、第2の摺擦バネ板30、40のみを示したが、各第2の摺擦バネ40の外側面に対して更に図示しない第3の摺擦バネを積層状態で固定配置したり、各第3の摺擦バネの外側面に対して更に第4の摺擦バネ等々を順次積層状態で固定配置してもよいことは勿論であり、摺擦バネの積層枚数に制限はない。また、ベースバネ板22、各摺擦バネ板30、40の板厚、及び材質は同一であることが製造手数を考慮すると好ましいが、必要に応じて板厚、材質を異ならせても良い。例えば、ベースバネ板22の厚みを最大厚とし、各摺擦バネ板の厚みを薄くする等の種々のアレンジが可能である。
また、この例では、木製枠10の4つの隅部に制振装置20を配置するようにしたが、これは一例に過ぎず、木製枠10に対する制振装置20の組付け箇所、組付け態様には種々の変形が可能である。
【0027】
以上の構成を備えた板バネ制振ユニット21においては、制振パネル1の挙動を示す図2(a)(b)に示したように対向する二方向からの応力P1、P2に対応して弾性変形しつつバネ板間で摺擦が行われることによるエネルギの吸収、緩和と、その後の原形への弾性復帰が行われる。同図中に破線で示したのは応力P1によって各バネ板が変形している状態であり、応力P2が加わった場合には各バネ板は逆方向に変形する。
このように構成したので、対向する二方向からの応力P1、P2に対応して弾性変形しつつバネ板間で摺擦することによるエネルギの吸収、緩和と、その後の原形への弾性復帰ができるように構成されている。
この点を更に詳細に説明すると、板バネ制振ユニット21を構成するベースバネ板22及び各摺擦バネ板30、40は、制振パネル1を構成する横枠11、12及び縦枠13、14の変形に対応してエネルギを吸収する。図2(a)は一方からの応力P1が加わった場合の変形状態であり、(b)は他方からの応力P2が加わった場合の変形状態を示している。
地震等による揺れがない静止状態では、木製枠10は変形しておらず、図1(a)(b)に示したようにベースバネ板22、摺擦バネ板30、40は変形していない。
【0028】
一方、地震等により、制振パネル1が振動して応力P1、P2が加わると、木製枠10が変形してベースバネ板22が変形する。
地震発生時に上側の横枠11は、下側の横枠12に対して横方向へ相対的に変位する。ここで横枠11が横枠12に対して相対的に矢印A方向に移動したとき、縦枠13と横枠11に夫々両端部を固着されたベースバネ板22はB方向に伸長変形する。ベースバネ板22の伸長変形により、ベースバネ板22の一端部22aの両側面に夫々配置された各摺擦バネ板30、40のうちベースバネ板22の外周面側に位置する摺擦バネ板30out、40out(外側摺擦バネ板群)は同方向Bへ変形するために、ベースバネ板22と第1の摺擦バネ板30outとの接触部間、並びに第1の摺擦バネ板30outと第2の摺擦バネ板40outとの接触部間に、夫々相対移動(摺動)と、それに起因した摩擦抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。一方、B方向へ伸長変形したベースバネ板22の内周面側に位置する摺擦バネ板30in、40in(内側摺擦バネ板群)は圧縮変形しないために、ベースバネ板22と第1の摺擦バネ板30inとの間、並びに第1及び第2の摺擦バネ板30in、40in間は離間し、大きな摩擦抵抗は発生しない。このため、ベースバネ板22が伸長方向Bへ変形するに際して、第1の摺擦バネ板30outと第2の摺擦バネ板40outの変形及び摩擦抵抗による抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。
【0029】
次に、図2(b)に示すように横枠11が矢印Aと反対の方向Cに移動したときには、縦枠13と横枠11に夫々両端部を固着されたベースバネ板22はD方向に圧縮変形する。ベースバネ板22の圧縮変形により、ベースバネ板22の一端部22aの両側面に夫々配置された各摺擦バネ板30、40のうちベースバネ板22の内周面側に位置する摺擦バネ板30in、40inも同方向Dへ圧縮変形するためにベースバネ板22と第1の摺擦バネ板30inとの接触部間、並びに第1の摺擦バネ板30inと第2の摺擦バネ板40inとの接触部間に、夫々相対移動(摺動)と、それに起因した摩擦抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。一方、圧縮変形したベースバネ板22の外周面側に位置する摺擦バネ板30out、40outは圧縮変形しないために、ベースバネ板22と第1の摺擦バネ板30outとの間、並びに第1及び第2の摺擦バネ板30out、40out間は離間し、大きな摩擦抵抗は発生しない。このため、ベースバネ板22がD方向へ圧縮変形するに際して、第1の摺擦バネ板30inと第2の摺擦バネ板40inの変形及び摩擦抵抗によって抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。
このため、制振パネル1が振動すると、制振パネル1の運動エネルギは板バネ部材を構成する各バネ板22、30、40の変形及び摩擦により熱エネルギに変換されて大気中に放出され、制振パネル1の振動は減衰される。
【0030】
以上のように本例に係る制振パネル1によれば、建築物の木製枠10の隅部に制振装置20を設置することにより、地震等に起因した破壊的な衝撃、振動を有効に吸収することができ、制振パネル1を使用した建築物を制振構造とすることができる。このとき、制振パネル1には、振動吸収要素としてバネ鋼製の部材で形成した板バネ部材を使用したので、製造原価を低くできると共に、耐久性、耐熱性に優れたものとすることができる。
また、本例では、制振装置20を木製枠10の内部に配置して制振パネル1を構成したが、予め建物に組み付けられた木製枠10に対して本発明の制振装置20を配置することができる。この場合は既存建築物の制振化工事に適用することができる。
更に、本発明の板バネ制振ユニット21は、地震等により発生する応力を減衰させる制振機能のみならず、木製枠に対する補強性を有した耐震部材としても機能する。即ち、木製枠の隅部、或いは縦枠と横枠との交差部に配置することによりその強度を高めて耐震性を向上することができる。
また、本発明の板バネ制振ユニットを備えた制振装置は、軽量、小型であり、低廉であるため、建築物の新築工事のみならず、リフォームするに際しても、組付け工事を容易に実施できる。具体的には、専門業者でない個人であっても、ホームセンター等の小売店で購入してきた本制振装置を簡易に取り付けることができる。
以上説明した本発明の効果は、以下の他の実施形態においても同様に当てはまる。
【0031】
次に、本発明の板バネ制振ユニット21は、各枠材11、12、13、14の面(ユニット添設面)に対して補強材50を介して固定されているため、ベースバネ板、その他のバネ板が枠材面に直接固定されている場合に比して、地震等による外力によって枠材が変形した場合における金属製バネ板の木製枠材への食い込みが発生しなくなり、板バネ制振ユニットによる制振機能を正常に発揮させることが可能となる。
特に、補強材50は、両端部のみならずそれ以外の部位を少なくとも一箇所、各枠材に対して留め具51により固定されているので、地震による応力を各留め具51による各固定部に分散して吸収緩和することが可能となる。本例では図1(b)に示したように補強材50の幅方向に2箇所ずつネジ51を打ち込んで固定しているがこれは一例に過ぎず、ネジによる固定箇所数、固定位置は任意である。
留め具51による補強材の固定位置は、板バネ制振ユニット21の両端部に近い位置に集中して設けることにより枠材の変形時にバネ板が枠材に食い込むことをより効果的に防止できるが、板バネ制振ユニット21の両端部から離間した位置にも分散して留め具51による固定位置を設けて更なる応力分散効果を図ることも有効である。
【0032】
また、湾曲した薄い鋼板から成る補強材50の両端部を板バネ制振ユニット21と共に枠材11、13に固定する一方で、その中間部50Aを枠材の交差部から離間させているので、仕口を構成する各枠材11、13の変形自由度が十分に確保されている。従って、地震による建築物の変形に応じて枠材同志の変形を許容しつつ振動エネルギをバネ板間の摺動により吸収緩和することが可能となる。即ち、補強材50は仕口の変形を妨害しないように構成することが必要である。
なお、補強材50の中間部50Aは図示のように湾曲している必要はなく、例えば図3(a)のように45度に傾斜した構成であってもよい。
なお、図3(b)に示すように補強材50の中間部50Aを90度に屈曲させたL字形状とし、この中間部50Aを交差部に密着させたとしても、補強材のバネ性によって仕口の変形を妨害することがない場合には補強材の中間部と交差部との間が離間しない構成としてもよい。
【0033】
本発明の制振装置20を両枠材11、13の交差部(仕口)に留め具51を用いて固定する際には、補強材50を枠材に対して固定することとなるが、補強材50の幅を各バネ板の幅よりも広くしておき、各バネ板の幅方向端縁から張り出した補強材50の部位に固定穴を設けてネジ等を締結するようにすれば、バネ板がネジを螺着する作業に際しての障害となることがない。即ち、例えば各枠材11、13の内側面の幅を105mmとした場合に、補強材50の幅を90mmとし、バネ板の幅を90mm未満とすることにより補強材にネジ止めするためのスペースを確保することが可能となる。
或いは、図4に示すように板バネ制振ユニット21と補強材50とを留め具23により着脱自在に連結し、ホームセンター等においては連結された状態で販売する一方で、取付け時には板バネ制振ユニットから分離した補強材50を先行して単独で枠材に固定するようにしてもよい。即ち、建築物の仕口にこの制振装置20を取り付ける場合には、図4(a)のようにネジ等から成る留め具23を緩めて補強材50を分離し、補強材50に設けた固定穴50aを用いて補強材50を先行して枠材11、13の内側面の所定位置に固定する。その後、板バネ制振ユニット21の両端部に設けた取付け穴と補強材両端部の固定穴50bを連通させた状態で留め具23を用いて枠材11、13に対して固定する。なお、留め具23としてネジを用いる場合には必要に応じてワッシャ(座金)、ナット等を用いることは勿論である。
なお、このような取付け作業中に、板バネ制振ユニット21を構成する各バネ板がばらばらにならないように予めバネ板同志の一端部間を接着剤、図示しない固定クリップ、針金、その他の締結手段により固定しておいてもよい。
補強材50を備えない場合、即ち板バネ制振ユニット21単体の両端部を直接枠材にネジ止めする場合、枠材への正規の取付け位置から僅かでも位置ずれしたり、取付け角度がずれを起こすと、板バネ制振ユニット21を正しく取り付けることが困難となる。取付け位置を微調整するために一旦ネジ固定した板バネ制振部材を取り外して固定し直す作業を繰り返すことは極めて非効率的である。特に、板バネ制振ユニット21は重量物であり、形状が複雑であるため、取付け作業時における位置精度が確保し難い。
【0034】
これに対して本発明では、軽量、且つ形状がシンプルな補強材50単体を正規の取付け位置に留め具51を用いて固定する作業を先行させることができるので、位置決め精度を高めやすい。このように正確な位置に高精度に固定した補強材に対して後から板バネ制振ユニット21を留め具23を用いて締結することになるので、板バネ制振ユニットの位置決め精度を高めることができ、取付け作業の試行錯誤から開放される。
また、補強材50を組み付けた状態にある板バネ制振ユニット21を枠材に取り付ける作業を行う場合にも、補強材50と枠材との位置関係のみを考慮して組付けを行えばよいので位置精度を確保し易い。
また、制振装置20を工場にて完成して出荷、運搬する際に、板バネ制振ユニット21と補強材50とを留め具23により確実に固定しておくことにより、段ボール箱内に梱包する際に緩衝材をさほど厳重に充填しなくても運搬時の衝撃等によって補強材50やバネ板が変形することがなくなる。従って、保形性、取扱性を高めることができる。
また、本発明の制振装置20では、金属製の補強材50と板バネ制振ユニット21を構成するバネ板とを直接締結させる構成となっているため、金属同志の強い締結力(仕圧力)を得ることができ、板バネ制振ユニットを枠材にネジ止めしたときの弛みを防止することができる。
【0035】
次に、図5(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る補強材の構成図である。上記実施形態に係る補強材は単なる帯状の金属板材であるため、各枠材11、13の内側面に対して留め具51を用いて固定せざるを得なかった。このため、枠材間に形成される仕口にこの板バネ制振ユニット21を取り付ける際には、図3において説明したように補強材50のみを単独で枠材に予め固定する方が便利であった。しかし、このようにバネ板から分離した補強材50を予め枠材に固定してから、補強材50を介してバネ板群を枠材に固定する作業は繁雑である。
そこで、図5に示すように板状の補強材本体52の側方からブラケット片53を屈曲形成し、このブラケット片53に設けた固定穴53aを利用してネジ、釘等の留め具51を枠材の側面に打ち込むように構成すれば、補強材50をバネ板から分離させる必要をなくし、購入した板バネ制振ユニット21をそのまま枠材の仕口に取り付けることができる。つまり、補強材50をこのように構成することにより、補強材50を固定する枠材面(内側面)とは異なる枠材面(側面)に対して留め具51により固定することが可能となり、制振装置の組付け作業性を大幅に高めることが可能となる。しかも、ブラケット53に設けた固定穴53aを補強材の中間部位に複数箇所設けることにより枠材の変形によるエネルギを複数箇所に分散して、各バネ板の枠材への食い込みを防止することができる。
なお、補強材の両端部を枠材に固定する留め具23は、板バネ制振ユニットを枠材に固定する留め具23を兼ねることができる点も利点である。
【0036】
次に、図6は本発明の他の実施形態に係る制振装置の構成例を示している。この制振装置20は板バネ制振装置21の両端部と各枠材11、13との間に介在する補強材50を2つに分離した構成が特徴的である。
即ち、図6の実施形態に係る補強材50は、板バネ制振ユニット21の一端部と枠材11との間に介在する第1の補強片55と、板バネ制振ユニット21の他端部と他方の枠材13との間に介在する第2の補強片56と、から構成されており、両補強片55、56との間は連結されていない。各補強片55、56と各枠材11、13との間は少なくとも一箇所以上の部位で留め具51により固定されている。
このように補強材50は一枚の部材で構成する必要はなく、板バネ制振ユニット21の両端部に相当する枠材部位と、それ以外の枠材部位を夫々別個独立の補強片を介して固定するようにしてもよい。
なお、図6中に破線で示すように枠材11、13の交差部に中間部材57を配置してもよい。この中間部材57は、第1及び第2の補強片55、56とは別部品としており、枠材の交差部の変形を許容しつつ補強する機能を発揮することができる。
図5に示した変形例と図6の実施形態とを組み合わせた構成としてもよい。
【0037】
次に、図7は本発明の板バネ制振ユニットの他の構成例の説明図であり、この実施形態に係る板バネ制振ユニット21は、ベースバネ板22の長手方向両端部の内外両周面22A、22Bに対して夫々摺擦バネ板30、40を積層状態で固定配置した構成が特徴的である。即ち、図1の実施形態では摺擦バネ板をベースバネ板22の一端部22aにのみ組み付けたが、ベースバネ板22の他端部22b側での摩擦抵抗をも十分に確保したい場合には当該他端部22bに摺擦バネ板30、40、・・・を順次組み付けることが好ましい。なお、ベースバネ板の両端部の両面に夫々一枚の摺擦バネ板30を積層状態で固定配置してもよい。
ベースバネ板22の両端部に摺擦バネ板を積層配置することにより、本発明の板バネ制振ユニット21の耐震部材としての機能を高めることができる。
なお、ベースバネ板22に対する摺擦バネ板30、40、・・・の組付け構造、ベースバネ板22の変形時におけるバネ板間の摺擦による振動、衝撃エネルギの吸収機能については、図1において説明した事項がそのまま当てはまる。
また、補強材50の構成、機能については、図1乃至図5において述べた事項がそのまま本実施形態にも当てはまる。
【0038】
次に、図8(a)及び(b)は夫々本発明の制振装置(板バネ制振ユニット)の他の構成例の説明図である。
まず、図8(a)の実施形態に係る板バネ制振ユニット21は、ベースバネ板22の長手方向一端部22aの何れか一方の面のみに摺擦バネ板を積層状態で固定配置した構成が特徴的である。即ち、図1の実施形態では摺擦バネ板をベースバネ板22の一端部22aの両面に対して夫々組み付けたが、この板バネ制振ユニットを組み付ける枠材の特性、或いは建築物中における枠材の位置等の各種条件によっては、ベースバネ板22の一端部22a(或いは他端部22b)の片面のみに摺擦バネ板を積層配置すれば足りることもある。このようにベースバネ板22の片面のみに摺擦バネ板を積層配置した場合には、一方向から加わる応力のみを減衰させる機能しか発揮できないが、木製枠10の横方向に隣接する他の隅部にも板バネ制振ユニット21を組み付けることにより、両板バネ制振ユニット21が夫々異なった方向からの応力を吸収緩和することができるため差し支えない。
なお、この例では、ベースバネ板22の湾曲した外周面22Aに摺擦バネ板を取り付けたが、内周面22Bに取り付けても良い。
次に、図8(b)の実施形態に係る板バネ制振ユニット21は、ベースバネ板22の長手方向両端部22a、22bの同一面のみに摺擦バネ板を積層状態で固定配置した構成が特徴的である。なお、この例では、ベースバネ板22の内周面22Bに摺擦バネ板を取り付けたが、外周面22Aに取り付けても良い。
なお、ベースバネ板22に対する摺擦バネ板30、40、・・・の組付け構造、ベースバネ板22の変形時におけるバネ板間の摺擦による振動、衝撃エネルギの吸収機能については、図1において説明した事項がそのまま当てはまる。
また、補強材50の構成、機能については、図1乃至図5において述べた事項がそのまま本実施形態にも当てはまる。
【0039】
次に、図9(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る制振装置(板バネ制振ユニット)の構成例を示す図である。
まず、図9(a)に係る板バネ制振ユニット21は、ベースバネ板22の一端部22aの一面(22B)と、他端部22bの他面(22A)に夫々一枚、又は二枚以上の摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置した構成が特徴的である。
即ち、この例では、ベースバネ板22の両端部の異なった面上に夫々摺擦バネ板30、40を順次積層した状態で端部間を固定しており、対向する二方向からの応力P1、P2に対応して弾性変形しつつバネ板間で摺擦することによるエネルギの吸収、緩和と、その後の原形への弾性復帰ができるように構成されている。
図9(b)に係る板バネ制振ユニット21は、図9(b)の変形例であり、ベースバネ板22を挟んで対向配置される少なくとも2枚の摺擦バネ板、この例では2枚の第1の摺擦バネ板30を各他端部30bがオーバーラップするように長尺に構成した点が特徴的である。このように構成しても、対向する正逆二方向からの応力P1、P2に対応して弾性変形しつつバネ板間で摺擦することによるエネルギの吸収、緩和と、その後の原形への弾性復帰ができるように構成されている。
なお、ベースバネ板22に対する摺擦バネ板30、40、・・・の組付け構造、ベースバネ板22の変形時におけるバネ板間の摺擦による振動、衝撃エネルギの吸収機能については、図1において説明した事項がそのまま当てはまる。
また、補強材50の構成、機能については、図1乃至図5において述べた事項がそのまま本実施形態にも当てはまる。
【0040】
以上のように本発明では、補強材50を介して板バネ制振ユニット21を枠材に間接的に固定するようにしたのでバネ板と枠材との直接接触に起因したバネ板の食い込みを解消し、制振機能を正常に発揮させることが可能となる。即ち、板バネ制振ユニットを直接枠材に対して直接固定した場合には地震等により枠材が変形する際に板バネ制振ユニットを構成するバネ板が局部的に枠材面に食い込みを起こし、制振装置として正常に作動し得ない状況が想定されるが、本発明ではそのような不具合を解決できる。
また、制振装置の取り付け作業を行う場合に、予め板バネ制振ユニットに対して補強材が組み付けてあれば、主として補強材を枠材に固定する作業を実施することにより制振装置の取付けがほぼ完了するため、作業性を高めることができる。
また、板バネ制振ユニットを枠材に取り付ける際の枠材との固定部位は、長手方向両端部のみならず、それ以外の部位とすることにより、枠材が変形したときの応力を各固定部位に分散して吸収緩和し、枠材へのバネ板の食い込みを防止できる。
補強材を枠材同志の交差部(仕口)に跨って配置する際に、外力が加わった枠材同志の相対変位を規制しない方が制振効果上は好ましい。そこで、補強材の中間部を交差部から離間させることが有効である。
施工上、補強材を添設する枠材面に留め具を取付けにくい場合には、他の枠材面に留め具を固定できるように構成すればよい。
板バネ制振ユニットの両端部を枠材に固定した場合に両端固定部で発生し易い枠材への食い込みを防止するためには、補強材は必ずしも両枠材に跨って延在する必要はなく、2つに分割配置してもよい。
【0041】
次に、図10乃至図13に基づいて本発明の他の実施形態に係る制振装置について説明する。
図10(a)は本発明の一実施形態に係る制振パネルの全体正面図であり、(b)は(a)中に示された一つの制振装置の拡大斜視図であり、図11は板バネ制振ユニットの構成を示す正面図である。図12(a)(b)(c)(d)及び(e)は板バネ制振ユニットの構成例を示す正面図、平面図、ベースバネ板の構成図、摺擦バネ板の構成図、及びネジ止め部の断面図であり、図13(a)及び(b)は制振パネルの挙動を示す説明図である。
なお、図1、図2と同一部分には同一符号を付して重複した構成、作用、効果の説明は省略する。つまり、各実施形態間において同一符号、同一名称で表された各部材は、共通の構成上、作用上、効果上の特徴を有している。
制振装置20は、地盤から木製枠10に入力される運動エネルギを熱エネルギに変換することにより振動を吸収する振動吸収要素としての板バネ制振ユニット21と、板バネ制振ユニット21と各枠材との間に配置される補強材50と、を備えている。即ち板バネ制振ユニット21は、各枠材に対して補強材50を介して固定されている。
図10(a)の例では、木製枠10の2つの上部隅部に制振装置20を組み付けた場合を示したが、下部隅部に組み付けても良い。
【0042】
補強材50は必ずしも必須ではないが、本実施形態では補強材を併用した構成例に基づいて説明する。
板バネ制振ユニット21は、中間部50Aが湾曲した略L字状の一枚の鋼製板材から成る補強材50を介して木製枠を構成する各隅部(枠材11、13)の内側面により両端部を固定された少なくとも一枚の湾曲した長尺のベースバネ板60と、ベースバネ板60の長手方向中間部61によって中間部71を支持されることにより内側面(ベースバネ板と摺擦する面)の少なくとも一部を該ベースバネ板の一面と摺擦可能に積層された少なくとも一枚の湾曲した摺擦バネ板(第1の摺擦バネ板)70と、を備えている。
本実施形態では、ベースバネ板60の外側面60Aと内側面60Bに夫々摺擦バネ板70を配置した例を示しているが、ベースバネ板の何れか一方の面のみに摺擦バネ板を配置してもよい。
ベースバネ板60は、バネ鋼製の薄板を所定の曲率にて湾曲加工した金属板材であり、ベースバネ板60の両端部を、木製枠10の隅部にて互いに交差する横枠11と縦枠13の適所(この例では内側面)に対してネジ(ボルト)、釘その他の適宜の拘束部材により固定する。
また、この例では、ベースバネ板60の長手方向中心部から両端固定部までの長さを同一長としたが、中心部から両端固定部までの長さを異ならせても良い。ベースバネ板60の厚みは例えば5mmとし、幅は5cmとする。
【0043】
摺擦バネ板70は、その内側面(ベースバネ板と対向した面)がベースバネ板の両面と夫々接触するようにその曲率(湾曲形状)が予め設定された湾曲板であり、本例では、バネ鋼製の薄板を所定の曲率にて湾曲加工した金属板材から成る。各摺擦バネ板70は、外力が加わらない静止時に、その少なくとも一部が、ベースバネ板60の外周面及び内周面に対して接触(圧接を含む)するようにその曲率を設定される。この点は、後述する他の摺擦バネ板についても同様に当てはまる。なお、ベースバネ板60を挟んで配置された各摺擦バネ板70の長さは、ほぼ同等となるように設定してもよいし、一方を他方よりも長くしてもよい。摺擦バネ板70(他の摺擦バネ板についても同様)の厚み及び幅は例えばベースバネ板60と同等となるように設定してもよいし、ベースバネ板よりも薄くしてもよい。
ベースバネ板60の両面の中間部61により摺擦バネ板70の中間部71を支持し、中間部以外の部位を摺擦可能にしているため、板バネ制振ユニット21の面方向両側から加わる応力により各摺擦バネ板がベースバネ板60の両面と摺動することによって地震等によって木製枠に加わるエネルギを吸収、緩和することができる。常時において、ベースバネ板60の両面と各第1の摺擦バネ板70の内側面との間は、全面的に密着した状態で接触していてもよいし、部分的に接触していてもよい。
なお、ここで中間部61、71とは、ベースバネ板60及び摺擦バネ板70の長手方向略中心部を意味するが、寸法上における厳密な意味での中心部である必要はなく、実際の長手方向中心部よりも何れか一方に多少位置ずれしている部位も中間部に含まれる。要するに、ベースバネ板60の中間部61によって摺擦バネ板70の中間部71を支持(固定、及び長手方向へスライド可能な構成も含む)することにより、地震等による枠材の変形時に摺擦バネ板70の長手方向両端部(非中間部=後述するアーム部72)がベースバネ板60の面に対して摺擦できるように構成されていればよい。
【0044】
ベースバネ板60は、図示のように湾曲した外周面60Aが、木製枠10の隅部の内側面と対面するように組み付けられる。本例では、ベースバネ板60の両端部の幅を他の部位よりも狭くして補強材50の露出面積を増大させることにより留め具66による補強材固定スペースを確保しているが、これは一例に過ぎず、ベースバネ板の両端部の幅を狭くせずに(或いは他の部位よりも広くして)ベースバネ板の両端部と補強材50を枠材に対して留め具によって共締めするように構成してもよい。
各第1の摺擦バネ板70は、その中間部71をネジ80とナット81によりベースバネ板60の中間部61に締結される一方で、中間部71から長手方向両端に向かって延びる各アーム部(非中間部)72の内側面をベースバネ板の外周面60A及び内周面60Bと対面(接触)させている。
図12(b)(c)に示すようにベースバネ板60は、長手方向両端部の板面に補強板50とのネジ締結用の丸穴62を有すると共に、中間部61には第1の摺擦バネ板70の中間部71をネジ締結するための丸穴63を有し、更に中間部61を除いた部位、即ち各アーム部64の適所には第1の摺擦バネ板70の対応する部位をネジ締結するための丸穴65が形成されている。
【0045】
一方、第1の摺擦バネ板70は同図(d)に示すように中間位置71にベースバネ板60の中間位置にある丸穴62と連通する丸穴73を有すると共に、丸穴73の両側方には夫々ベースバネ板60の丸穴65と連通する長穴74が形成されている。
同図(a)及び(e)に示すように、丸穴62と丸穴73はネジ80とナット81により締結され、各丸穴65と各長穴74は、拘束部材としてのネジ82とナット83とスプリングワッシャとによって締結される。即ち、丸穴62と丸穴73を連通するようにネジ80を挿通してナット81で締結することによりベースバネ板60の中間位置61に対して第1の摺擦バネ板70の中間位置71を固定する一方で、連通状態にある丸穴65と長穴74にネジ82を挿通してスプリングワッシャを介してナット83で所定の締結力により締結することにより、各アーム72は対向するベースバネ板60の面に対して長手方向へ摺擦(移動)可能に支持される。拘束部材82、83により第1の摺擦バネ板70のアーム部72をベースバネ板60の面に対して所定の力で常時圧接させておくことにより、地震発生時にベースバネ板に対して第1の摺擦バネ板のアーム部が長手方向へ変位する際に地震エネルギを吸収、緩和することができる。
なお、第1の摺擦バネ板70の中間位置71に長穴74と同様の長穴を設けることにより、ベースバネ板60に対して第1の摺擦バネ板70が全体として(長穴の長手方向長の範囲内で)長手方向へ変位可能となるように構成してもよい。つまり、第1の摺擦バネ板の中間部71はベースバネ板の中間部61に対して完全に固定してもよいし、長手方向へ可動な状態に支持してもよい。
【0046】
本例では、ネジ82の頭部が枠材側に位置しているため、枠材の内側面との干渉を避けるために、枠材の内側面にネジ頭部を嵌合するための凹所を予め形成しておく。
また、上記実施形態では、摺擦バネ板70のアーム部72(非中間部)をベースバネ板60に対して長手方向へ相対的に変位自在に圧接させる拘束部材として、ネジ82とナット83を用いたが、これは一例に過ぎず、摺擦バネ板70のアーム部72とベースバネ板60の外周に巻き付いて両部材を圧接させた状態で束ねる金属製バンドの如き縛束部材を用いても良い。
以上の構成を備えた板バネ制振ユニット21においては、制振パネル1の挙動を示す図13(a)(b)に示したように対向する二方向からの応力P1、P2に対応して弾性変形しつつバネ板間で摺擦が行われることによるエネルギの吸収、緩和と、その後の原形への弾性復帰が行われる。同図中に破線で示したのは応力P1によって各バネ板が変形している状態であり、応力P2が加わった場合には各バネ板は逆方向に変形する。
このように構成したので、対向する二方向からの応力P1、P2に対応して弾性変形しつつバネ板間で摺擦することによるエネルギの吸収、緩和と、その後の原形への弾性復帰ができるように構成されている。
【0047】
この点を更に詳細に説明すると、板バネ制振ユニット21を構成するベースバネ板60及び各摺擦バネ板70は、制振パネル1を構成する横枠11、12及び縦枠13、14の変形に対応してエネルギを吸収する。図13(a)は一方からの応力P1が加わった場合の変形状態であり、(b)は他方からの応力P2が加わった場合の変形状態を示している。
地震等による揺れがない静止状態では、木製枠10は変形しておらず、図10(a)(b)に示したようにベースバネ板60、画摺擦バネ板70は変形していない。
一方、地震等により、制振パネル1が振動して応力P1、P2が加わると、木製枠10が変形してベースバネ板60が変形する。
地震発生時に上側の横枠11は、下側の横枠12に対して横方向へ相対的に変位する。ここで横枠11が横枠12に対して相対的に矢印A方向に移動したとき、縦枠13と横枠11に夫々両端部を固着されたベースバネ板60はB方向に伸長変形する。ベースバネ板60の伸長変形により、ベースバネ板60の両面60A、60Bに夫々配置された各摺擦バネ板70のうちベースバネ板60の外周面60A側に位置する摺擦バネ板70out、(外側摺擦バネ板)は同方向Bへ変形するために、ベースバネ板60と第1の摺擦バネ板70outとの接触部間に、夫々相対移動(摺動)と、それに起因した摩擦抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。一方、B方向へ伸長変形したベースバネ板60の内周面側に位置する摺擦バネ板70in(内側摺擦バネ板)は圧縮変形しないために、ベースバネ板60と第1の摺擦バネ板70inとの間は離間し、大きな摩擦抵抗は発生しない。このため、ベースバネ板60が伸長方向Bへ変形するに際して、第1の摺擦バネ板70outの変形、及びベースバネ板との摩擦による抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。
【0048】
次に、図13(b)に示すように横枠11が矢印Aと反対の方向Cに移動したときには、縦枠13と横枠11に夫々両端部を固着されたベースバネ板60はD方向に圧縮変形する。ベースバネ板60の圧縮変形により、ベースバネ板60の両面60A、60Bに夫々配置された各摺擦バネ板70のうちベースバネ板60の内周面側に位置する摺擦バネ板70inも同方向Dへ圧縮変形するためにベースバネ板60と第1の摺擦バネ板70inとの接触部間に、夫々相対移動(摺動)と、それに起因した摩擦抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。一方、圧縮変形したベースバネ板60の外周面側に位置する摺擦バネ板70outは圧縮変形しないために、ベースバネ板60と第1の摺擦バネ板70outとの間は離間し、大きな摩擦抵抗は発生しない。このため、ベースバネ板60がD方向へ圧縮変形するに際して、第1の摺擦バネ板70inの変形、及びベースバネ板との間の摩擦によって抵抗が発生し、振動によるエネルギを減衰する。
このため、制振パネル1が振動すると、制振パネル1の運動エネルギは板バネ部材を構成する各バネ板70の変形及び摩擦により熱エネルギに変換されて大気中に放出され、制振パネル1の振動は減衰される。
なお、補強材50について図1乃至図7において説明した構成、作用、効果は、図10乃至図13の実施形態にも同様に当てはまる。
【0049】
上記実施形態では、一枚のベースバネ板60の両面に夫々一枚の摺擦バネ板(第1の摺擦バネ板)70を配置した構成例を示したが、第1の摺擦バネ板70の外側に第2、第3の摺擦バネ板を多段状に積層することも有効である。
即ち、図14は多板構造の板バネ制振ユニットの構成と、各摺擦バネ板の構成説明図であり、この板バネ制振ユニット21は、ベースバネ板60と接触する第1の摺擦バネ板70と、第1のバネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第2の摺擦バネ板90を備え、第2の摺擦バネ板の中間部91をベースバネ板の中間部61によって支持した構成が特徴的である。第2の摺擦バネ板の中間部91をベースバネ板の中間部によって支持する手段としては、例えばネジ80とナット81とを用いる。この場合、ネジ80とナット81とによって、ベースバネ板60と第1の摺擦バネ板70と第2の摺擦バネ板90とを共締めすることとなる。
一方、第2の摺擦バネ板90のアーム部(非中間部)92は第1の摺擦バネ板70に対して摺擦するように拘束部材によって組み付ける。即ち、図14中に示したように第2の摺擦バネ板90はその中間部91に丸穴95を有すると共に、アーム部92には長穴96を有する。更に、第1の摺擦バネ板70には第2の摺擦バネ板の長穴96と対応する位置に長穴75を有している。
【0050】
上記実施形態では、ベースバネ板60の両側面に夫々第1及び第2の摺擦バネ板を積層した例を示したが、ベースバネ板60の何れか一方の面のみに第1及び第2の摺擦バネ板を配置してもよいし、一方の面に第1の摺擦バネ板を配置する一方で、他方の面には第1及び第2の摺擦バネ板を配置するようにしてもよい。
なお、特に図示しないが、第2の摺擦バネ板90の外側面に第3の摺擦バネ板、第4の摺擦バネ板を順次積層するように構成してもよい。ベースバネ板に対して第3の摺擦バネ板、或いは第4の摺擦バネ板を支持する構造は、ベースバネ板と第2の摺擦バネ板との関係と同様である。
また、このように第1の摺擦バネ板の外側に他の摺擦バネ板を多段状に積層する構造を採用した場合には、個々の摺擦バネ板の長さは、直近外側に位置する他の摺擦バネ板の長さよりも長尺とし、各摺擦バネ板の両端部が階段状となるように積層するのが好ましい。
本発明においては、補強材と、ベースバネ板と、摺擦バネ板を予め組み付けた状態でユニット化することにより取扱性を高めることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…制振パネル、10…木製枠、11、12…横枠、13、14…縦枠、20…制振装置、21…板バネ制振ユニット、22…ベースバネ板、60A…一端部、22b…他端部、30…第1の摺擦バネ板、40…第2の摺擦バネ板、50…補強材、53…ブラケット片、55、56…補強片、60…ベースバネ板、61…中間部、62…アーム部、70…摺擦バネ板(第1の摺擦バネ板)、71…中間部、72…アーム部、80…ネジ、81…ナット、82…ネジ、83…ナット、90…第2の摺擦バネ板、91…中間部、92…アーム部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物を構成する複数の枠材の交差部に取り付けられる振動吸収要素としての板バネ制振ユニットを備えた制振装置であって、
前記板バネ制振ユニットは、一方の前記枠材と他方の前記枠材に夫々両端部を固定される少なくとも一枚の湾曲したベースバネ板と、該ベースバネ板の少なくとも一端部に対して一端部を固定配置されると共に該一端部を除いた内側面の少なくとも一部を該ベースバネ板の一面と摺擦可能に積層された少なくとも一枚の摺擦バネ板と、を備え、
前記第1の摺擦バネ板は、前記ベースバネ板よりも短尺であり、
前記板バネ制振ユニットと前記各枠材との間に介在する補強材を備えたことを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記補強材は略L字状に湾曲、或いは屈曲した板材であり、一端を一方の前記枠材に固定され、他端を他方の前記枠材に固定され、更に他の少なくとも一箇所を前記各枠材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記補強材は、中間部を前記交差部から離間させていることを特徴とする請求項1又は2に記載の制振装置。
【請求項4】
前記補強材は前記各枠材に対して留め具により固定されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の制振装置。
【請求項5】
前記補強材の両端部を固定する留め具は、前記板バネ制振ユニットを前記枠材に固定する締め付け具を兼ねることを特徴とする請求項4に記載の制振装置。
【請求項6】
前記留め具は、ネジ、或いは釘であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項7】
前記補強材は、該補強材本体を添設する枠材面とは異なる枠材面に対して前記留め具により固定されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項8】
前記補強材は、前記板バネ制振ユニットの一端部と一方の前記枠材との間に介在する第1の補強片と、前記板バネ制振ユニットの他端部と他方の前記枠材との間に介在する第2の補強片と、から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
【請求項9】
前記摺擦バネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第2の摺擦バネ板を備え、該第2の摺擦バネ板の一端部を前記摺擦バネ板の一端部に対して固定配置したことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項10】
前記第2の摺擦バネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第3の摺擦バネ板を備え、該第3の摺擦バネ板の一端部を前記第2の摺擦バネ板の一端部に対して固定配置し、更に必要に応じて該第3の摺擦バネ板の外側面に対して第4の摺擦バネ板以降の摺擦バネ板を順次摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする請求項9に記載の制振装置。
【請求項11】
個々の前記摺擦バネ板の長さは、直近外側に位置する他の摺擦バネ板の長さよりも長尺であり、前記各摺擦バネ板の他端部が階段状となるように積層されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の制振装置。
【請求項12】
前記ベースバネ板の両面に対して夫々少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする請求項9乃至11の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項13】
前記ベースバネ板の片面に対して少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする請求項9乃至11の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項14】
前記ベースバネ板の片面の両端部、或いは該ベースバネ板の両面の両端部に対して、少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする請求項9乃至11の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項15】
前記ベースバネ板の片面の一端部と、該ベースバネ板の他面の他端部に対して夫々少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする請求項9乃11の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項16】
前記ベースバネ板を介して対向する前記各摺擦バネ板の内の少なくとも第1の摺擦バネ板の他端部同志をオーバーラップさせたことを特徴とする請求項15に記載の制振装置。
【請求項17】
前記ベースバネ板の両面に夫々少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置した場合に、前記各摺擦バネ板の長さを前記ベースバネ板よりも短尺にしたことを特徴とする請求項12、14、15又は16に記載の制振装置。
【請求項18】
前記ベースバネ板の厚み、或いは/及び、幅を、前記摺擦バネ板と異ならせたことを特徴とする請求項1乃至17の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項19】
建築物を構成する横枠と縦枠との交差部に、請求項1乃至18の何れか一項に記載の制振装置を配置したことを特徴とする制振構造。
【請求項20】
略矩形の枠材と、該枠材の少なくとも1つの隅部に配置される請求項1乃至18の何れか一項に記載の制振装置と、を備えたことを特徴とする制振パネル。
【請求項1】
建築物を構成する複数の枠材の交差部に取り付けられる振動吸収要素としての板バネ制振ユニットを備えた制振装置であって、
前記板バネ制振ユニットは、一方の前記枠材と他方の前記枠材に夫々両端部を固定される少なくとも一枚の湾曲したベースバネ板と、該ベースバネ板の少なくとも一端部に対して一端部を固定配置されると共に該一端部を除いた内側面の少なくとも一部を該ベースバネ板の一面と摺擦可能に積層された少なくとも一枚の摺擦バネ板と、を備え、
前記第1の摺擦バネ板は、前記ベースバネ板よりも短尺であり、
前記板バネ制振ユニットと前記各枠材との間に介在する補強材を備えたことを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記補強材は略L字状に湾曲、或いは屈曲した板材であり、一端を一方の前記枠材に固定され、他端を他方の前記枠材に固定され、更に他の少なくとも一箇所を前記各枠材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記補強材は、中間部を前記交差部から離間させていることを特徴とする請求項1又は2に記載の制振装置。
【請求項4】
前記補強材は前記各枠材に対して留め具により固定されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の制振装置。
【請求項5】
前記補強材の両端部を固定する留め具は、前記板バネ制振ユニットを前記枠材に固定する締め付け具を兼ねることを特徴とする請求項4に記載の制振装置。
【請求項6】
前記留め具は、ネジ、或いは釘であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項7】
前記補強材は、該補強材本体を添設する枠材面とは異なる枠材面に対して前記留め具により固定されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項8】
前記補強材は、前記板バネ制振ユニットの一端部と一方の前記枠材との間に介在する第1の補強片と、前記板バネ制振ユニットの他端部と他方の前記枠材との間に介在する第2の補強片と、から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
【請求項9】
前記摺擦バネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第2の摺擦バネ板を備え、該第2の摺擦バネ板の一端部を前記摺擦バネ板の一端部に対して固定配置したことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項10】
前記第2の摺擦バネ板の外側面に対して内側面の少なくとも一部を摺擦可能に積層した第3の摺擦バネ板を備え、該第3の摺擦バネ板の一端部を前記第2の摺擦バネ板の一端部に対して固定配置し、更に必要に応じて該第3の摺擦バネ板の外側面に対して第4の摺擦バネ板以降の摺擦バネ板を順次摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする請求項9に記載の制振装置。
【請求項11】
個々の前記摺擦バネ板の長さは、直近外側に位置する他の摺擦バネ板の長さよりも長尺であり、前記各摺擦バネ板の他端部が階段状となるように積層されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の制振装置。
【請求項12】
前記ベースバネ板の両面に対して夫々少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする請求項9乃至11の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項13】
前記ベースバネ板の片面に対して少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする請求項9乃至11の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項14】
前記ベースバネ板の片面の両端部、或いは該ベースバネ板の両面の両端部に対して、少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする請求項9乃至11の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項15】
前記ベースバネ板の片面の一端部と、該ベースバネ板の他面の他端部に対して夫々少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置したことを特徴とする請求項9乃11の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項16】
前記ベースバネ板を介して対向する前記各摺擦バネ板の内の少なくとも第1の摺擦バネ板の他端部同志をオーバーラップさせたことを特徴とする請求項15に記載の制振装置。
【請求項17】
前記ベースバネ板の両面に夫々少なくとも一枚の前記摺擦バネ板を摺擦可能な積層状態で固定配置した場合に、前記各摺擦バネ板の長さを前記ベースバネ板よりも短尺にしたことを特徴とする請求項12、14、15又は16に記載の制振装置。
【請求項18】
前記ベースバネ板の厚み、或いは/及び、幅を、前記摺擦バネ板と異ならせたことを特徴とする請求項1乃至17の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項19】
建築物を構成する横枠と縦枠との交差部に、請求項1乃至18の何れか一項に記載の制振装置を配置したことを特徴とする制振構造。
【請求項20】
略矩形の枠材と、該枠材の少なくとも1つの隅部に配置される請求項1乃至18の何れか一項に記載の制振装置と、を備えたことを特徴とする制振パネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−127189(P2012−127189A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−26291(P2012−26291)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【分割の表示】特願2009−863(P2009−863)の分割
【原出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(397049561)東建コーポレーション株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【分割の表示】特願2009−863(P2009−863)の分割
【原出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(397049561)東建コーポレーション株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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