説明

削孔装置の削孔位置管理方法

【課題】
絶対方位によらず基準方位に対する方位角度差のみで座標を算出して画一的に管理することができ、より高精度に削孔装置の位置を管理することができる削孔装置の削孔位置管理方法の提供
【解決手段】
削孔装置に連結され、チューンドドライジャイロ、加速度計及び回転角検知手段からの出力に基づいて傾斜角及び方位角を算出する算出手段とを有する方位傾斜角検知装置を使用し、傾斜角及び方位角と移動距離とに基づいて削孔装置の位置座標を算出する方法において、方位傾斜角検知装置を予め設定した現場座標系Y軸の軸方向に向けて配置し、その状態で方位傾斜角検知装置により現場座標系Y軸の方位を算出し、算出された現場座標系Y軸の方位を基準方位とし、その後、方位傾斜角検知装置を削孔装置に組み込んで削孔作業を行い、所定距離を削孔する毎に各測定位置における測定方位と基準方位との方位角度差を検出し、方位角度差に基づいて位置座標算出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小口径ボーリング等の削孔装置の先端部位置を管理するための削孔装置の削孔位置管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小口径ボーリング等の削孔装置として、図2に示すごとき削孔装置が知られている。
【0003】
この削孔装置は、屈曲可能な鞘管1と、鞘管1の中心に挿入された同じく屈曲可能な削孔用ロッド2と、削孔用ロッド2の先端部に連結され、鞘管1の先端部外に突出させた可撓性先端ロッド2aと、可撓性先端ロッド2aの先端部に固定された削孔ビット3とを備え、削孔用ロッド2及び可撓性先端ロッド2aを回転させながら押し出すことにより掘り進み、これに追随させて鞘管1を推進させるようになっている。尚、図中符号4は削孔用ロッド2の回転及び押し出し、それに伴う鞘管1の押し出し作業等を行う支援装置であり、符号6は管理制御用コンピュータである。
【0004】
また、この削孔装置には、削孔装置の位置管理が必要な部分、即ち削孔用ロッド2の先端部に該削孔用ロッド2と一体に回転できるように方位傾斜角検知装置5が連結され、削孔用ロッド2の先端部と共に動作し、削孔用ロッド2の先端部と同じ方位角及び傾斜角を検出するようになっている。
【0005】
この方位傾斜角検知装置として、削孔用ロッド2の先端部に連結された計測ケース内に計測ケースの中心軸及び該中心軸と直交する配置の軸をそれぞれ入力軸とするレートジャイロを配置し、レートジャイロより検出された角速度を積分することにより相対方位を求め、それにより削孔装置の削孔位置を管理する方位傾斜角検知装置が知られている。
【0006】
しかし、このような方位計測装置では、推進しながら移動中の各角速度を測定するため、このときの振動や衝撃を外乱として拾い、それにより誤差の生じた角速度が計測され、それを積分することにより相対方位を求めると、角速度の誤差が蓄積されて大きな誤差を有する相対方位になるという問題があった。また、レートジャイロは静止状態においても温度や湿度の変動によりドリフトするという性質を有しており、その値、即ちドリフトレートの影響で測定精度が低下するという問題があった。
【0007】
更には、このような方位計測装置では、削孔開始方向を基準として、その位置からの角度変化量を用いて位置演算を行うため、削孔開始方向を正確に合わせなければならず、トランシット等を使用しての緻密な作業を強いられるうえ、位置を誤差なくセットすることはかなり困難であり、仮に正確にセットできたとしても初回の計測位置まで削孔する間に削孔装置や削孔用ロッドの位置がずれてしまって、そのずれが誤差となってしまうという問題もあった。
【0008】
そこで、上述の問題を解決すべく、図3に示す如き方位傾斜角検知装置を使用した削孔装置が開発され、高精度の削孔位置管理が行えるようになっている(特許文献1を参照)。
【0009】
この方位傾斜角検知装置5は、削孔装置の削孔用ロッド2の先端部に連結され、装置の外殻をなす筒状の計測用ケース7と、計測用ケース7内に配置されたセンサ支持台8と、センサ支持台8に回転台9を介して支持され、計測用ケースの中心軸y及び中心軸と直交しセンサ支持台と平行配置にある軸xを入力軸とするチューンドドライジャイロ10と、センサ支持台8にそれぞれ回転台11,12を介して支持され、計測用ケースの中心軸y方向の加速度を検知する加速度計13及び中心軸と直交しセンサ支持台と平行配置にある軸x方向の加速度を検知する加速度計14と、回転台9,11,12を同期的に回転させる回転制御手段15と、回転台12の回転角を検知する回転角検知手段16と、チューンドドライジャイロ10、加速度計13,14及び回転角検知手段16からの出力に基づいてセンサ支持台8の傾斜及び方位を算出する算出手段17とを備えている。尚、図中符号18は、z軸方向の加速度を測定する加速度計である。
【0010】
また、この方位傾斜角検知装置5は、必要に応じて、加速度計14からの出力をフィードバックして、センサ支持台8が中心軸回りで水平な状態となるようにセンサ支持台の位置を調整することができるようになっている。
【0011】
この方位傾斜角検知装置5は、所定の距離を移動する毎(直線区間では3m毎、曲線区間では1.5m毎)に、加速度計より傾斜角θを検出し、チューンドドライジャイロ10を用いて地球自転角速度の水平・鉛直成分を計測し、それに基づいて真北からの角度(絶対方位)αを検出する。
【0012】
この算出された(絶対)方位角α、傾斜角θ及び測定された削孔装置(センサ支持台)の移動距離Lに基づいて、方位角α、傾斜角θ及び移動距離Lの関係は図4に示すようになるので、削孔装置の位置座標を次式により求めることができる。尚、移動距離Lは、削孔用ロッドの押し出し量より計測することができる。
【0013】
=xn−1+Lcosθ・sinα
=yn−1+Lcosθ・cosα
=zn−1+Lsinθ
このような各座標成分を所望の移動距離毎(通常、直線区間では3m毎、曲線区間では1.5m毎)に算出し、その座標データに基づいて削孔装置の削孔位置を管理するようになっている。
【特許文献1】特開2004−125511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上述の如き従来の技術では、方位傾斜角検知装置により算出される方位角が絶対方位を基準としているため、位置座標に関して絶対方位を用いた座標系で画一的に管理することが好ましいが、実際に現場で真北を正確に測定することが困難であり、このような絶対方位座標系による位置座標管理が困難であるという問題があった。
【0015】
また、このような方位傾斜角検知装置は、方位傾斜角検知装置の持つ機械特性などの固有特性の違いにより、方位傾斜角検知装置毎にそれぞれ異なった誤差特性を有しており、各装置の性能は、例えば、図5に示すように、それぞれ計測方位中央値の方位誤差が±0.5°、方位計測精度が±0.35°(1σ)となっている。
【0016】
一方で、各方位傾斜角検知装置における、図6に示す如き機首方位に対する計測方位誤差は、方位傾斜角検知装置毎に異なり、一方位において、ある方位傾斜角検知装置の計測方位誤差が最大値(+0.5°)であり、別の方位傾斜角検知装置の計測方位誤差が最長値(−0.5°)である場合には、両方位傾斜角検知装置間の方位差は最大(1°)となり、この方位差が位置演算に与える影響により、100mの距離を削孔する間に最大約1.8mものずれが生じる場合があり、係る方位差は削孔位置管理において重要な問題となっている。特に、複数の削孔路線を複数の削孔装置を用いて並行して施行するような場合、各方位傾斜角検知装置の誤差特性に影響されずに施工を行えることが望ましい。
【0017】
そこで本発明は、上述の従来技術の問題を鑑み、絶対方位によらず方位角度差のみで座標を算出して画一的に管理することができ、より高精度に削孔装置の位置を管理することができる削孔装置の削孔位置管理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、削孔装置の位置管理が必要な部分に連結された計測用ケースと、該計測用ケース内に配置されたセンサ支持台と、該センサ支持台に回転台を介して支持され、前記計測用ケースの中心軸及び該中心軸と直交し前記センサ支持台と平行配置にある軸をそれぞれ入力軸とするチューンドドライジャイロと、該センサ支持台に回転台を介して支持され、前記計測用ケースの中心軸方向及び該中心軸と直交し前記センサ支持台と平行配置にある軸方向の加速度を検知する加速度計と、前記回転台を同期的に回転させる回転台制御手段と、前記回転台の回転角を検知する回転角検知手段と、前記センサ支持台の位置を前記中心軸回りで水平状態となるように調整する支持台調整手段と、前記チューンドドライジャイロ、加速度計及び回転角検知手段からの出力に基づいて前記センサ支持台の傾斜角及び方位角を算出する算出手段とを有する方位傾斜角検知装置を使用し、
該方位傾斜角検知装置より得られた傾斜角及び方位角と前記方位傾斜角検知装置の移動距離とに基づいて前記方位傾斜角検知装置の位置座標を算出する削孔装置の削孔位置管理方法において、
前記方位傾斜角検知装置を予め設定した現場座標系Y軸の軸方向に向けて配置し、その状態で該方位傾斜角検知装置により現場座標系Y軸の方位を算出し、該算出された現場座標系Y軸の方位を基準方位とし、その後、前記方位傾斜角検知装置を削孔装置に組み込み、所定距離を削孔する毎に前記方位傾斜角検知装置により算出された方位の前記基準方位に対する方位角度差を検出し、該方位角度差に基づいて前記位置座標を算出する削孔装置の削孔位置管理方法であることを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成に加え、方位傾斜角検知装置を備えた削孔装置を複数台使用するに際し、前記方位傾斜角検知装置毎に現場座標系Y軸の方位を算出し、該Y軸を基準方位とすることを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成に加え、削孔路線における最も直線部の長い部分の方位に現場座標系のY軸を設定することを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3の構成に加え、削孔開始位置において削孔装置に方位傾斜角検知装置を組み込み、その位置でセンサ支持台の初期位置を測量し、該初期位置における座標を基準座標に設定したことを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3又は4の構成に加え、障害物や隣接する削孔の位置を同一の現場座標系により管理することを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜4又は5の構成に加え、方位傾斜角検知装置は、所定の時間内に数回の方位算出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る削孔装置の削孔位置管理方法は、削孔装置の位置管理が必要な部分に連結された計測用ケースと、該計測用ケース内に配置されたセンサ支持台と、該センサ支持台に回転台を介して支持され、前記計測用ケースの中心軸及び該中心軸と直交し前記センサ支持台と平行配置にある軸をそれぞれ入力軸とするチューンドドライジャイロと、該センサ支持台に回転台を介して支持され、前記計測用ケースの中心軸方向及び該中心軸と直交し前記センサ支持台と平行配置にある軸方向の加速度を検知する加速度計と、前記回転台を同期的に回転させる回転台制御手段と、前記回転台の回転角を検知する回転角検知手段と、前記センサ支持台の位置を前記中心軸回りで水平状態となるように調整する支持台調整手段と、前記チューンドドライジャイロ、加速度計及び回転角検知手段からの出力に基づいて前記センサ支持台の傾斜角及び方位角を算出する算出手段とを有する方位傾斜角検知装置を使用し、
該方位傾斜角検知装置より得られた傾斜角及び方位角と前記センサ支持台の移動距離とに基づいて前記削孔装置の位置座標を算出する削孔装置の削孔位置管理方法において、
前記方位傾斜角検知装置を予め設定した現場座標系Y軸の軸方向に向けて配置し、その状態で該方位傾斜角検知装置により現場座標系Y軸の方位を算出し、該算出された現場座標系Y軸の方位を基準方位とし、その後、前記方位傾斜角検知装置を削孔装置に組み込み、所定距離を削孔する毎に前記方位傾斜角検知装置により算出された方位の前記基準方位に対する方位角度差を検出し、該方位角度差に基づいて前記位置座標を算出することにより、位置演算に用いる方位として純粋に方位傾斜角検知装置の検出した方位角度差を使用することができ、設定した現場座標系により位置座標を管理することができる。また、方位傾斜角検知装置の削孔方位を現場座標系上の方位として処理することができるので、削孔開始位置で煩雑な位置決め作業を行わずともよい。
【0025】
方位傾斜角検知装置を備えた削孔装置を複数台使用するに際し、前記方位傾斜角検知装置毎に現場座標系Y軸の方位を算出し、該Y軸を基準方位とすることにより、方位傾斜角検知装置個々の方位検出特性のばらつきに影響されず、数台の方位傾斜角検知装置を有する削孔装置を統一した現場座標系で管理することができる。
【0026】
削孔路線における最も直線部の長い部分の方位に現場座標系のY軸を設定することにより、位置検出誤差を最小限にすることができる。
【0027】
削孔開始位置において削孔装置に方位傾斜角検知装置を組み込み、その位置でセンサ支持台の初期位置を測量し、該初期位置における座標を基準座標に設定したことにより、異なる方位傾斜角検知装置を有する削孔装置を用い、異なる削孔路線の全てを一つの現場座標系で一元管理することができる。
【0028】
障害物や隣接する削孔の位置を同一の現場座標系により管理することにより、全削孔や埋設物等の障害物との相対的位置関係も容易に管理することができる。
【0029】
方位傾斜角検知装置は、所定の時間内に数回の方位算出を行うことにより、複数の方位計測結果を比較することで、方位計測精度のバラツキを確認することができるとともに、低精度の計測結果を取り除き、より精度の高いデータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明方法に使用する方位傾斜角検知装置について説明する。尚、上述の実施例と同一の部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
本発明方法に使用される削孔装置1は、図2に示す削孔装置と同様に、屈曲可能な鞘管1と、鞘管1の中心に挿入された同じく屈曲可能な削孔用ロッド2と、削孔用ロッド2の先端部に連結され、鞘管1の先端部外に突出させた可撓性先端ロッド2aと、可撓性先端ロッド2aの先端部に固定された削孔ビット3とを備え、削孔用ロッド2及び可撓性先端ロッド2aを回転させながら押し出すことにより掘り進み、これに追随させて鞘管1を推進させるようになっている。尚、図中符号4は削孔用ロッド2の回転及び押し出し、それに伴う鞘管1の押し出し作業等を行う支援装置である。
【0032】
また、この削孔装置には、この削孔装置における位置管理が必要な部分、即ち削孔用ロッド2の先端部に該削孔用ロッド2と一体に回転できるように方位傾斜角検知装置5が連結され、削孔用ロッド2の先端部と共に動作し、削孔用ロッド2の先端部と同じ方位角及び傾斜角を検出するようになっている。
【0033】
この方位傾斜角検知装置5より出力された方位角及び傾斜角のデータは、削孔用ロッド2,2…の押し出し量より計測された削孔装置の移動距離データとともに管理制御用コンピュータ6に出力され、それに基づいて管理制御用コンピュータ6は、削孔装置の位置座標を算出し、その位置座標データを基に削孔装置を管理制御するようになっている。
【0034】
この方位傾斜角検知装置5は、削孔装置の位置管理が必要な部分、即ち削孔用ロッド2の先端部に連結され、外殻をなす筒状の計測用ケース7と、計測用ケース7内に配置されたセンサ支持台8と、センサ支持台8に回転台9を介して支持され、計測用ケースの中心軸y及び中心軸と直交しセンサ支持台と平行配置にある軸xを入力軸とするチューンドドライジャイロ10と、センサ支持台8にそれぞれ回転台11,12を介して支持され、計測用ケースの中心軸y及び中心軸と直交しセンサ支持台と平行配置にある軸x方向の加速度を検知する加速度計13,14と、回転台9,11,12を同期的に回転させる回転制御手段15と、回転台12の回転角を検知する回転角検知手段16と、チューンドドライジャイロ10、加速度計13,14及び回転角検知手段16からの出力に基づいてセンサ支持台8の傾斜及び方位を算出する算出手段17とを備えている。尚、図中符号18は、z軸方向の加速度を測定する加速度計である。
【0035】
また、この方位傾斜角検知装置5は、必要に応じて、加速度計14からの出力をフィードバックして、センサ支持台8が中心軸回りで水平な状態となるようにセンサ支持台の位置を調整することができるようになっている。
【0036】
この方位傾斜角検知装置5は、所定の距離を移動する毎に静止して、チューンドドライジャイロ、加速度計及び回転角検知手段からの出力に基づいて(絶対)方位角α、傾斜角θを算出するようになっている。
【0037】
尚、方位傾斜角検知装置5は、所定の時間内(約3分)に方位角を数回算出し、管理制御用コンピュータ6は、その算出方位を比較することにより方位計測精度のバラツキを確認できるようになっており、また、複数の算出方位を比較することにより、削孔用ロッドのねじれが残っている場合等の削孔用ロッドが静止していない状態で計測されたことによって計測精度の低下したデータを取り除き、各算出方位角の精度を高めることができるようになっている。
【0038】
次に、上述の装置を使用した削孔装置の削孔位置管理方法について説明する。
【0039】
まず、図1に示すように、予め設定した現場座標系のY軸の方位を以下の手順により検出する。尚、図中符号20はデータ表示装置(ローカル表示盤)、21は方位傾斜角検知装置を制御する制御手段である。
【0040】
最初に、予め設定した現場座標系Y軸上に位置決め台22を設置し、この位置決め台22上に削孔装置より取り外された方位傾斜角検知装置5を戴置する。
【0041】
尚、現場座標系Y軸は、削孔路線における最も直線部の長い部分の方位に合わせて設定されている。
【0042】
このようにY軸を設定することによって、方位傾斜角検知装置5のとる方位が、基準方位に対し±30°程度の範囲内となり、方位を高い精度で計測できるようになる。
【0043】
即ち、実際の曲線区間の施行には鉄のロッド3を曲げる動作が含まれる為に、大きな角度変化は難しく、削孔方向に対し±30°程度の範囲で曲げることができれば十分であり、計測方位誤差は、sinカーブのような規則性をもって変化するとともに、方位傾斜角検知装置は、一方位に関しては方位計測精度±0.35°(1σ)内において非常に高い再現性をもつので、基準方位±30°程度の範囲では、方位を高い精度で計測することができる。
【0044】
次に、トランシット23を用いて、方位傾斜角検知装置5をY軸上に誘導し、その位置で方位傾斜角検知装置5により方位角を算出する。
【0045】
これによって、現場座標系Y軸の(絶対)方位角αが算出され、この値を基準方位として管理制御用コンピュータ6に登録する。
【0046】
これにより、方位傾斜角検知装置5のY軸を基準方位とした方位角αは、
α=α−α
で表すことができる。即ち、基準方位の絶対方位角αに対する計測された絶対方位角αの方位角度差で表すことができる。
【0047】
次に、削孔装置の削孔用ロッド2の先端部に削孔装置のリーダ上で方位傾斜角検知装置5を取り付け、その位置で方位傾斜角検知装置5の初期位置を光波側距離計やレベル計等を用いて測量し、その位置座標を現場座標系の発進点、即ち(x,y,z)とし、それを管理制御用コンピュータ6に入力する。
【0048】
尚、この削孔装置へ方位傾斜角検知装置5を取り付ける際に、削孔開始方向に正確に合わせて取り付ける必要がなく、容易に取り付けることができる。
【0049】
そして、削孔を開始し、所定の距離を削孔する毎(直線部分では3m毎、曲線部では1.5m毎)に、方位傾斜角検知装置5により方位角α及び傾斜角θを算出し、また、削孔用ロッドの押し出し量より削孔装置の計測位置間移動距離Lを計測し、方位角α、傾斜角θ及び移動距離Lを管理制御用コンピュータ6に自動入力する。
【0050】
これにより、管理制御用コンピュータ6は、この位置における現場座標系の各座標成分を次式により求める。
【0051】
=xn−1+Lcosθ・sin(α−α
=yn−1+Lcosθ・cos(α−α
=zn−1+Lsinθ
これにより、基準方位であるY軸に対する方位角を単純に方位傾斜角検知装置により算出した絶対方位角の差α−αにより求めることができ、各座標を予め設定した現場座標系で管理することができる。
【0052】
また、方位傾斜角検知装置を有する削孔装置1を複数台使用する場合においては、方位傾斜角検知装置毎に図1に示すY軸計測を行い、各方位傾斜角検知装置の基準方位をコンピュータに登録することが好ましい。
【0053】
このようにすることによって、方位傾斜角検知装置の方位検出特性のバラツキに関係なく、方位傾斜角検知装置を有する削孔装置を統一した現場座標系でより高い精度で運用することができる。
【0054】
また、管理制御用コンピュータには、計画路線をはじめ、支持杭や配管等の埋設物や、既存削孔の位置を上述の現場座標系上に入力することが好ましい。
【0055】
尚、上述の実施例では、図2に示す削孔装置を例に説明したが、本願発明は、その他様々の形態の装置の位置検出に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る削孔装置の削孔位置管理方法におけるY軸方位測定工程の概略を示す斜視図である。
【図2】削孔装置の概略を示す断面図である。
【図3】(a)は図2中の方位傾斜角検知装置を示す部分破断側面図、(b)は同部分破断平面図である。
【図4】同上の削孔装置の位置管理するための座標系を説明するための斜視図である。
【図5】同上の方位傾斜角検知装置の方位計測結果の分布を示すグラフである。
【図6】同上の方位傾斜角検知装置の計測方位誤差の推移の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
1 鞘管
2 削孔用ロッド
2a 可撓性先端ロッド
3 削孔ビット
4 支援装置
5 方位傾斜角検知装置
6 管理制御用コンピュータ
7 計測用ケース
8 センサ支持台
9 回転台
10 チューンドドライジャイロ
11,12 回転台
13,14 加速度計
15 回転制御手段
16 回転角検知手段
17 算出部
18 加速度計
20 データ表示装置
21 制御手段
22 位置決め台
23 トランシット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔装置の位置管理が必要な部分に連結された計測用ケースと、該計測用ケース内に配置されたセンサ支持台と、該センサ支持台に回転台を介して支持され、前記計測用ケースの中心軸及び該中心軸と直交し前記センサ支持台と平行配置にある軸をそれぞれ入力軸とするチューンドドライジャイロと、該センサ支持台に回転台を介して支持され、前記計測用ケースの中心軸方向及び該中心軸と直交し前記センサ支持台と平行配置にある軸方向の加速度を検知する加速度計と、前記回転台を同期的に回転させる回転台制御手段と、前記回転台の回転角を検知する回転角検知手段と、前記センサ支持台の位置を前記中心軸回りで水平状態となるように調整する支持台調整手段と、前記チューンドドライジャイロ、加速度計及び回転角検知手段からの出力に基づいて前記センサ支持台の傾斜角及び方位角を算出する算出手段とを有する方位傾斜角検知装置を使用し、
該方位傾斜角検知装置より得られた傾斜角及び方位角と、前記方位傾斜角検知装置の移動距離とに基づいて該方位傾斜角検知装置の位置座標を算出する削孔装置の削孔位置管理方法において、
前記方位傾斜角検知装置を予め設定した現場座標系Y軸の軸方向に向けて配置し、その状態で該方位傾斜角検知装置により現場座標系Y軸の方位を算出し、該算出された現場座標系Y軸の方位を基準方位とし、その後、前記方位傾斜角検知装置を削孔装置に組み込み、所定距離を削孔する毎に前記方位傾斜角検知装置により算出された方位の前記基準方位に対する方位角度差を検出し、該方位角度差に基づいて前記位置座標を算出することを特徴としてなる削孔装置の削孔位置管理方法。
【請求項2】
方位傾斜角検知装置を備えた削孔装置を複数台使用するに際し、前記方位傾斜角検知装置毎に現場座標系Y軸の方位を算出し、該Y軸を基準方位とする請求項1に記載の削孔装置の削孔位置管理方法。
【請求項3】
削孔路線における最も直線部の長い部分の方位に現場座標系のY軸を設定する請求項1又は2に記載の削孔装置の削孔位置管理方法。
【請求項4】
削孔開始位置において削孔装置に方位傾斜角検知装置を組み込み、その位置で該方位傾斜角検知装置の初期位置を測量し、該初期位置における座標を基準座標に設定した請求項1、2又は3に記載の削孔装置の削孔位置管理方法。
【請求項5】
障害物や隣接する削孔の位置を同一の現場座標系により管理する請求項1〜3又は4に記載の削孔装置の削孔位置管理方法。
【請求項6】
方位傾斜角検知装置は、所定の時間内に数回の方位算出を行う請求項1〜4又は5に記載の削孔装置の削孔位置管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−90025(P2006−90025A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277431(P2004−277431)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】