説明

前立腺幹細胞及びその使用

前立腺癌の治療及び前立腺組織の再生における前立腺幹細胞及び前立腺癌幹細胞及びその使用が開示される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
関連出願
本出願は、35 USC 119(e)の下で2008年10月22日に出願された米国仮出願第61/196,930号の優先権の利益を請求し、その開示の全ては本願明細書に援用されたものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、前立腺幹細胞及び前立腺癌幹細胞及び前立腺癌の治療におけるそれらの使用及び前立腺組織の再生に関連する。
【背景技術】
【0003】
前立腺幹細胞(PSC)の存在は、齧歯類においてアンドロゲンの欠乏及び補充の繰り返されたサイクルに続いて正常な前立腺の再生が引き起こされるという観察に基づいて提唱されてきた。前立腺は、正常な成長及び組織の恒常性をアンドロゲンに依存している。アンドロゲンの欠乏に続いて、前立腺は、生存のためにアンドロゲンを必要とする細胞のアポトーシスにより退行が起こる。意外なことに、アンドロゲンの補充は、元の大きさ及び機能的な状態へと戻るように、前立腺の再生を誘導する。齧歯類前立腺において退行/再生プロセスが30サイクル以上繰り返されることができるという事実は、成体前立腺は寿命が長く、アンドロゲン非依存性の幹細胞集団を含むことを証明している。幹細胞が豊富な集団が、マウス及びヒトの両方の前立腺において同定された2−6、8−10
【0004】
いくつかの細胞表面マーカーは候補PSCsを同定することが報告され、それらは幹細胞抗原−1(Sca−1)、CD133(プロミニン−1)及びCD44を含む2−6。しかしながら、マウス前立腺におけるPSC以外の細胞もまたこれらのマーカーを発現するので、明確なPSC集団の同定は分かりにくいままである。
【0005】
CD117(c−kit、幹細胞因子受容体)は、レセプターチロシンキナーゼ・サブクラスIIIファミリーのメンバーであり、血小板由来増殖因子、マクロファージコロニー刺激因子及びFMS様レセプターチロシンキナーゼ(FLT3)リガンドに対するレセプターに関連している。Heinrich, M. C. et al., J. Clin. Oncol. 20 (6): 1692-1703 (2002)。c−Kit及びそのリガンドである幹細胞因子(SCF)は、造血、メラニン形成及び受精能に必須である。SCFは、細胞生存、増殖、分化、付着及び機能的活性化を促進するために、造血性階層の様々な段階で作用する。Ashman, L. K., et al, Intl. J. of Biochem. Cell Biol. 31:1037- 1051 (1999)。CD117の発現はヒト悪性腫瘍において観察され、CD117のキナーゼ活性は肥満細胞症/肥胖細胞性白血病、胚細胞腫瘍、小細胞肺癌(SCLC)、消化管間質腫瘍(GIST)、急性骨髄性白血病(AML)、神経芽細胞腫、メラノーマ、卵巣悪性腫瘍及び乳癌を含む多数の腫瘍の病態生理学に関係していると示された。J. Clin. Oncol. 20 (6): 1692-1703 (2002)(上掲)。
【0006】
癌幹細胞(CSC)は、自己複製する能力及び腫瘍を含む癌細胞の異種の系統を生じる能力を有する腫瘍細胞である。Clark, M. F. et al., Cancer Res. 66 (19): 9339-9344 (2006)。これらの細胞は、転移、治療耐性及び再発の原因となると考えられる。しかしながら、CSCは、癌腫瘍塊の小さい画分のみを構成しており、同定及び/又は単離するのは困難である。癌幹細胞は変異した正常な幹細胞から発生すると考えられる。これらの突然変異した幹細胞は、腫瘍性形質転換を経て、正常幹細胞上に存在する同じマーカーによって同定され得る癌幹細胞を含む腫瘍を形成する。Zhu, L. et al., Nature 457, 603-607 (2009)。
【発明の要約】
【0007】
本発明の一態様は、CD117を発現する単離された前立腺幹細胞を提供する。一実施態様において、幹細胞はさらにCD133及びCD44を発現する。一実施態様において、幹細胞は、さらにCD133及びCD44及びSca−1を発現する。いくつかの実施態様において、前立腺幹細胞は、インビトロで管腔を含む前立腺コロニーを形成することが可能である。他の実施態様において、前立腺幹細胞は、インビボで機能的な前立腺を形成することが可能である。
【0008】
本発明の別の態様は、CD117を発現する単離された前立腺癌幹細胞を提供する。一実施態様において、前立腺癌幹細胞はさらにCD133及びCD44を発現する。もう一つの実施態様では、前立腺癌幹細胞は、さらにCD133及びCD44及びSca−1を発現する。いくつかの実施態様において、前立腺癌幹細胞は、インビボモデルにおいて前立腺癌を形成することが可能である。
【0009】
本発明の別の態様は、CD117、CD133及びCD44を発現する細胞の集団を得るための、系統枯渇(Lin−)前立腺幹細胞集団を得ること及びLin−前立腺細胞集団を選別することを含む、前立腺幹細胞を単離する方法を提供する。一実施態様において、本発明の方法は、Sca−1を発現する細胞集団を得るためにLin−前立腺細胞集団を選別することをさらに含む。細胞は、例えば蛍光標示式細胞分取器(FACS)を用いて選別される。
【0010】
本発明の別の態様は、CD117アンタゴニストの治療的有効量と前立腺幹細胞又は前立腺癌幹細胞とを接触させることを含むCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺幹細胞又は前立腺癌幹細胞の増殖を阻害する方法を提供する。
【0011】
本発明の別の態様は、患者の前立腺癌がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含むかどうかを決定すること、及び患者が前立腺癌がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含む場合にCD117アンタゴニストの治療的有効量を患者に投与することを含む、患者の前立腺癌の再発を防止する方法を提供する。一実施態様において、CD133アンタゴニスト又はCD44アンタゴニストの有効量もまた患者に投与される。
【0012】
本発明の別の態様は、患者がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含む前立腺癌を有するかどうかを決定すること、及び患者がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含む前立腺癌を有する場合にCD117アンタゴニストでの治療のための患者を選択することを含む、CD117アンタゴニストでの治療のための前立腺癌患者を選択する方法を提供する。いくつかの実施態様において、患者は前立腺癌の再発を有している。
【0013】
本発明の更に別の態様は、患者がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含む前立腺癌を有するかどうかを決定すること、及び患者がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含む前立腺癌を有する場合にCD117アンタゴニストでの治療のための患者を選択することを含む、患者における前立腺癌を治療する方法を提供する。一実施態様において、CD133アンタゴニスト又はCD44アンタゴニストの有効量もまた患者に投与される。いくつかの実施態様において、患者は前立腺癌の再発を経験している。
【0014】
本発明の更に別の態様は、患者がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含む前立腺癌を有するかどうかを決定すること、及び患者がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含む前立腺癌を有する場合にCD117アンタゴニストを伴うアジュバンド療法のための患者を選択することを含む、CD117アンタゴニストを伴うアジュバンド療法のための前立腺癌患者を選択する方法を提供する。
【0015】
本発明の更に別の態様は、患者がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含む前立腺癌を有するかどうかを決定すること、及び患者がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含む前立腺癌を有する場合にCD117アンタゴニストの治療的有効量を患者に投与することを含む、アジュバンド療法を前立腺癌治療を受ける患者に提供する方法を提供する。一実施態様において、CD133アンタゴニスト又はCD44アンタゴニストの有効量もまた患者に投与される。
【0016】
上記の態様のいくつかの実施態様において、CD117アンタゴニストは、抗CD117抗体又は小分子(例えばイマチニブメチル酸塩又はスニチニブリンゴ酸塩)である。
【0017】
本発明の更なる態様は、前立腺組織の増殖又は修復を必要とする患者において、CD117、CD133及びCD44を発現する前立腺幹細胞を移植することを含む、前立腺組織の増殖又は修復を促進する方法を提供する。一実施態様において、患者は部分的な前立腺を有し、幹細胞は部分的な前立腺に移植される。
【0018】
なお更なる本発明の態様は、機能的な前立腺を形成するための条件下で、哺乳類宿主においてCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺幹細胞を移植することを含む、前立腺の増殖を促進する方法を提供する。一実施態様において、幹細胞は宿主の腎被膜の下に移植される。一実施態様において、宿主はヒトであり、もう一つの実施態様において宿主はブタである。
【0019】
さらなる本発明の態様は、機能的な前立腺を形成し、前立腺を採取するための条件下で、哺乳類宿主においてCD117、CD133及びCD44を発現するヒト前立腺幹細胞を移植することを含む、必要とする患者に機能的な前立腺を提供する方法を提供する。一実施態様において、採取された前立腺は、機能的な前立腺を必要とするヒト患者に移植される。
【0020】
本発明の別の態様は、CD117、CD133及びCD44を発現する前立腺癌幹細胞とテスト化合物とを接触させること、及びテスト化合物が細胞の増殖を阻害するかどうか検出することを含む、前立腺癌幹細胞の増殖を阻害する化合物をスクリーニングする方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、成体C57BL/6マウスの完全な前立腺を示す。4対の葉(D−背葉、L−側葉、V−腹葉、A−前葉)が示されている。下部のパネルは、尿道に対して、それぞれの前立腺葉の遠位、中間及び近位の領域を示す。
【図2】図2は、遠位領域で標準化された、成体C57BL/6前立腺の異なる領域における遺伝子発現のQ−RT−PCRを示すグラフである。遠位との統計比較:P<0.05;**P<0.01;***P<0.001。
【図3】図3aは、背葉で標準化された、成体C57BL/6前立腺の異なる葉における遺伝子発現のQ−RT−PCRを示すグラフである。図3bは、背葉(D)、側葉(L)、腹葉(V)及び前葉(A)間の遺伝子発現の統計解析である。P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001。
【図4】図4は、成体C57BL/6の前立腺(正常、去勢後3日、去勢後14日、及び3日間のホルモン補充を伴う去勢後14日)の遺伝子発現のQ−RT−PCR解析である。データはGADPHに対する倍数変化として表される。ホルモン補充との統計比較:P<0.05;**P<0.01;***P<0.0001。全てのバーは、平均+標準誤差を表す。
【図5】図5は、磁気ビーズソーティングを用いたCD117+細胞の集積を示すグラフである。
【図6】図6は、CD117+前立腺幹細胞が自己複製能力を有することを確認するために用いられた、連続的な単離及び移植手法の構成図である。
【図7】図7aは、抗CD117抗体で処理された前立腺及び未処理の前立腺の前立腺領域における正味の増殖の経時的な定量を示すグラフである。P<0.05;**P<0.01。図7bは、抗CD117処理の8日後に測定された前立腺及び未処置の前立腺の、mm2あたりの分岐点の定量を示すグラフである。P<0.001。
【図8】図8aは、CD117+/−でソーティングされた集団における、SLUG発現のQ−RT−PCR解析である。P<0.03。図8bは、成体C57BL/6の前立腺(正常、去勢後3日、去勢後14日、及び3日間のホルモン補充を伴う去勢後14日)におけるSLUG発現のマイクロアレイ解析である。データは正常なものに対する倍数変化として表される。ホルモン補充との統計比較:P<0.02。図8cは、抗CD117抗体で処理されたエキソビボ前立腺におけるSLUG発現のQ−RT−PCR解析である。データは1日目のコントロールに対する倍数変化として表される。P<0.003。
【図9】図9は、成体C57BL/6の前立腺において、前立腺幹細胞の一及び複数のマーカーを発現する生存細胞の割合を示すグラフである。
【図10】図10は、表面マーカーSca−1、CD133、CD44及びCD117の組合せを発現する細胞集団を得るために用いられた蛍光活性化細胞分類手法の工程系統図である。
【図11】図11は、腎被膜移植3ヵ月後の移植片重量の定量を示すグラフである。データは、2つの独立した実験から得られる。(LinSca−1CD133CD44CD117対LinSca−1CD133CD44CD117:P=0.002;LinSca−1CD133CD44CD117対LinSca−1CD133CD44CD117:P=0.03;LinSca−1CD133CD44CD117対UGM:P=0.004)。
【図12】図12は、腎被膜移植3ヵ月後のUGMのみ、LinSca−1CD133CD44CD117、LinSca−1CD133CD44CD117、及びLinSca−1CD133CD44CD117移植の前立腺産生能力を示すグラフである。
【図13】図13は、単一細胞移植手法の構成図である。
【図14】図14aは、単一細胞移植から単離される細胞のレーザーキャプチャーマイクロディセクション(LCM)に続くPCRを基とした遺伝子型判定を示す。図14bは、LinSca−1CD133CD44CD117細胞集団における前立腺幹細胞の頻度を決定するための限界希釈分析法を示す。
【図15】図15aは、ヒト臨床良性非BPH前立腺検体中の、前立腺幹細胞の一及び複数のマーカーを発現している生存細胞の割合を示しているグラフである。図15bは、ヒト臨床良性BPH前立腺検体中の、前立腺幹細胞の一及び複数のマーカーを発現している生存細胞の割合を示しているグラフである。
【好ましい実施例の詳細な説明】
【0022】
定義
特に明記しない限り、用語「CD117」は、霊長類(例えば人間及びサル)及び齧歯類(例えばマウス及びラット)のような哺乳動物を含むあらゆる脊椎動物の供給源からのあらゆるCD117を意味する。その用語は、「全長」CD117、プロセシングされていないCD117、及び細胞におけるプロセシングから生じるCD117のあらゆる形態を含む。その用語は、例えばスプライス変異体、対立遺伝子変異体及び他のアイソフォームなどのCD117の自然発生的な変異体をも含む。その用語は、CD117の少なくとも一つの生物学的活性(例えばキナーゼ活性)を維持する天然CD117の断片又は変異体を含む。CD117は、科学文献において、c−kit、及び幹細胞因子受容体とも称される。
【0023】
特に明記しない限り、用語「CD44」は、霊長類(例えば人間及びサル)及び齧歯類(例えばマウス及びラット)のような哺乳動物を含むあらゆる脊椎動物の供給源からのあらゆるCD44を意味する。その用語は、「全長」CD44、プロセシングされていないCD44、及び細胞におけるプロセシングから生じるCD44のあらゆる形態を含む。その用語は、例えばスプライス変異体、対立遺伝子変異体及び他のアイソフォームなどのCD44の自然発生的な変異体をも含む。その用語は、CD44の少なくとも一つの生物学的活性(例えばキナーゼ活性)を維持する天然CD44の断片又は変異体を含む。
【0024】
特に明記しない限り、用語「CD133」は、霊長類(例えば人間及びサル)及び齧歯類(例えばマウス及びラット)のような哺乳動物を含むあらゆる脊椎動物の供給源からのあらゆるCD133を意味する。その用語は、「全長」CD133、プロセシングされていないCD133、及び細胞におけるプロセシングから生じるCD133のあらゆる形態を含む。その用語は、例えばスプライス変異体、対立遺伝子変異体及び他のアイソフォームなどのCD44の自然発生的な変異体をも含む。その用語は、CD133の少なくとも一つの生物学的活性を維持する天然CD44の断片又は変異体を含む。CD133は、科学文献においてプロミニン−1とも称される。
【0025】
特に明記しない限り、用語「Sca−1」は、霊長類(例えば人間及びサル)及び齧歯類(例えばマウス及びラット)のような哺乳動物を含むあらゆる脊椎動物の供給源からのあらゆるSca−1を意味する。その用語は、「全長」Sca−1、プロセシングされていないSca−1、及び細胞におけるプロセシングから生じるSca−1のあらゆる形態を含む。その用語は、例えばスプライス変異体、対立遺伝子変異体及び他のアイソフォームなどのSca−1の自然発生的な変異体をも含む。その用語は、Sca−1の少なくとも一つの生物学的活性を維持する天然Sca−1の断片又は変異体を含む。
【0026】
本明細書で用いられる用語「前立腺幹細胞」(PSC)又は「前立腺幹細胞」(PSCs)は、自己複製できる前立腺細胞又は前立腺で見いだされる全ての上皮細胞型を産生することが可能な前立腺細胞を意味する。前立腺幹細胞は、インビトロで内腔を含む前立腺コロニーを形成する能力によって検出することができる。前立腺幹細胞は、最終的にインビボで機能的な前立腺を形成することが可能である。
【0027】
本明細書で用いられる用語「前立腺癌幹細胞(一又は複数)」(PCSC)は、前立腺癌と関連する発癌性細胞を生じ得る細胞を意味する。前立腺癌幹細胞は、変異した正常な前立腺からの前立腺癌の確立、及び/又は一次癌治療後の前立腺癌の再確立に関与する細胞である。前立腺癌幹細胞は、インビトロでの細胞増殖アッセイを用いて検出することができる。それらは、インビボでの移植アッセイを用いても検出することができる。例えば、提唱された前立腺癌幹細胞は、インビボ宿主モデルに注射又は移植され、そのモデルは細胞の注射/移植がそのモデルにおいて前立腺癌を発達させるかを決定するために試験される。モデルにおいて前立腺癌を発生させる細胞は、前立腺癌幹細胞である。
【0028】
本明細書において交換可能に用いられる用語「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、あらゆる長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又は塩基及び/又はその類似体、又はDNA又はRNAポリメラーゼによってポリマーに取り込まれるあらゆる基質であり得る。ポリヌクレオチドは、例えばメチル化ヌクレオチド及びその類似体などの修飾ヌクレオチドを含む。
【0029】
用語「検出」は、直接的および間接的な検出を含むあらゆる検出手段を含む。
【0030】
本明細書で用いられる用語「診断」は、分子又は病理学的状態、疾患又は症状の同定(例えば癌(前立腺癌など)又は癌の特定の型(例えば特定の変異によって特徴づけられる前立腺癌)の同定)を意味する。本明細書で用いられる用語「予測」は、癌に起因する死、又は癌などの腫瘍疾患の再発、転移性拡散及び薬剤耐性を含む進行の可能性の予測を意味する。本明細書で用いられる用語「予測」は、患者が薬剤又は一組の薬剤に有利又は不利に応答する可能性をも意味する。一実施態様において、予測はそれらの反応の程度に関連する。一実施態様において、予測は、患者が治療(例えば特定の治療剤による治療及び/又は原発腫瘍の外科的除去及び/又は再発が起こらない特定の期間の化学療法)後に生存するかどうか、及び/又はその確率に関連する。もう一つの実施態様では、予測は、患者が癌の再発を経験するかどうか、及び/又はその確率に関連する。本発明の予測方法は、あらゆる特定の患者のために最も適切な治療種類を選択することによって治療方法を決定するために、臨床的に用いることができる。本発明の予測方法は、患者が処理計画(例えば特定の治療剤又は組合せの投与、外科的介入、化学療法、その他を含む特定の治療計画)に有利に応答するかどうかを予測する、又は治療計画後に患者が長期生存するかを予測する上で有益なツールである。患者は、本発明の予測方法に基づいて特定の治療を受けるために選択されてもよい。
【0031】
用語「細胞増殖性疾患」及び「増殖性疾患」は、無視できない程度の異常な細胞増殖と関連した疾患を意味する。一実施態様において、細胞増殖性疾患は、癌である。
【0032】
本明細書で用いられる「腫瘍」は、悪性又は良性の全ての腫瘍性細胞の成長及び増殖、及び全ての前癌状態及び癌性の細胞及び組織を意味する。本明細書で用いられる用語「癌」、「癌性の」、「細胞増殖性の疾患」、「増殖性疾患」及び「腫瘍」は相互排他的ではない。
【0033】
用語「癌」及び「癌性の」は、一般的に無秩序な細胞成長及び増殖によって特徴づけられる哺乳動物の生理的状態を意味する、又は表している。癌の例は、これに限定されないが、上皮性悪性腫瘍、リンパ腫(例えばホジキン及び非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫及び白血病を含む。より具体的な癌の例は、へん平細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、腎細胞癌、胃腸癌、胃癌、食道癌、膵臓癌、グリオーマ、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓カルシノーマ、メラノーマ、白血病及び他のリンパ増殖性疾患及び様々な形態の頭頚部癌を含む。
【0034】
用語「前立腺腫瘍」又は「前立腺癌」は、前立腺のあらゆる腫瘍及び癌を意味する。
【0035】
用語「前立腺腫瘍細胞」又は「前立腺癌細胞」は、インビボ又はインビトロにおける前立腺腫瘍細胞又は前立腺癌細胞を意味し、そのような細胞から誘導される細胞株を含む。
【0036】
用語「腫瘍」又は「腫瘍性細胞」は、対応する正常組織又は細胞よりも急激に増殖する、又は増殖を開始させる刺激の除去後も増殖し続ける異常な組織又は細胞を意味する。
【0037】
「腫瘍細胞」又は「癌細胞」は、インビボ又はインビトロの何れかにおける腫瘍細胞又は癌細胞を意味し、そのような細胞から誘導される細胞株を含む。
【0038】
本明細書で用いられるように、「処理」(及び「処理する」又は「処置する」などの変型)又は「治療」は、個人又は細胞の自然経過を変えるための臨床介入を意味し、予防又は臨床病理学の経過の何れかにおいて行うことができる。治療の望ましい効果は、疾患の発生又は再発の予防、症状の緩和、疾患のあらゆる直接的または間接的な病理的帰結の減少、転移の予防、疾患進行速度の減少、疾患状態の改善又は一時的緩和、及び緩解又は改善された予後を含む。
【0039】
用語「アジュバント療法」は、癌再発のリスクを低下させるために、一次癌治療法後の特定のさらなる癌治療法を意味する。
【0040】
「個体」、「対象」又は「患者」は、脊椎動物である。特定の実施形態では、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物は、これに限定されるものではないが、家畜(例えばブタ及びウシ)、スポーツ動物、ペット(例えばネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(ヒト及びヒト以外の霊長類を含む)及び齧歯類(例えばマウス及びラット)を含む。特定の実施形態では、哺乳動物は人間である。
【0041】
「有効量」は、所望の治療又は予防結果を達成するのに、用量及び期間において必要な、有効な量を意味する。
【0042】
本発明の物質/分子の「治療的有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重などの因子、及び個体において所望の応答を引き起こすための物質/分子の能力によって異なり得る。治療的有効量は、治療上の有益な効果が物質/分子のあらゆる毒性作用又は有害作用を上回る量を含む。
【0043】
本明細書で用いられる用語「長期の」生存は、治療的処理の後の少なくとも1年、5年、8年又は10年間の生存を意味する。
【0044】
特定の治療剤又は治療選択肢に対する用語「増加した耐性」は、本発明において用いられる場合、薬剤の標準的用量、又は標準的治療プロトコルに対する減少した反応を意味する。
【0045】
特定の治療剤又は治療選択肢に対する用語「減少した感受性」は、本発明において用いられる場合、薬剤の標準的用量、又は標準的治療プロトコルに対する減少した反応を意味し、減少した反応は薬剤の用量又は治療の強度を増加させることで(少なくとも部分的に)補うことができる。
【0046】
「患者の反応」は、患者への利益を表すあらゆる指標を用いて評価することができ、限定されるものではないが、
(1)減速及び完全な増殖停止を含む腫瘍増殖のある程度の阻害;(2)腫瘍細胞数の減少;(3)腫瘍大きさの減少;(4)隣接した末しょう器官及び/又は組織への腫瘍細胞浸潤の阻害(すなわち減少、減速又は完全な休止);(5)転移の阻害(すなわち減少、減速又は完全な休止);(6)腫瘍の退縮又は拒絶を生じうる抗腫瘍免疫応答の増強;(7)腫瘍と関連する一つ以上の症状の、ある程度の軽減;(8)治療後の生存の長さの増加;及び/又は(9)治療後の一定の時点における死亡率の低下、を含む。
【0047】
治療剤に「反応する」腫瘍又は癌は、腫瘍進行のあらゆる減少を示すものであり、限定されるものではないが、(1)減速及び完全な増殖停止を含む腫瘍増殖の、ある程度の阻害;(2)腫瘍細胞数の減少;(3)腫瘍大きさの減少;(4)隣接した末しょう器官及び/又は組織への腫瘍細胞浸潤の阻害(すなわち減少、減速又は完全な休止);及び/又は(5)転移の阻害(すなわち減少、減速又は完全な休止)を含む。
【0048】
用語「アンタゴニスト」は最も広い意味で用いられ、部分的又は完全にポリペプチド(例えばCD117)の生物学的活性(例えばキナーゼ活性)を阻害又は中和する、又は部分的又は完全にポリペプチドをコード化している核酸の転写又は翻訳を阻害するあらゆる分子を含む。適切なアンタゴニスト分子は、限定されるものではないが、アンタゴニスト抗体、ポリペプチド断片、オリゴペプチド、有機分子(小分子を含む)及びアンチセンス核酸を含む。
【0049】
用語「アゴニスト」は、最も広い意味で用いられ、部分的又は完全にポリペプチドの生物学的活性を模倣する、又はポリペプチドをコード化している核酸の転写又は翻訳を増加させるあらゆる分子を含む。適切なアゴニスト分子は、限定されるものではないが、アゴニスト抗体、ポリペプチド断片、オリゴペプチド、有機分子(小分子を含む)、ポリヌクレオチド、ポリペプチド及びポリペプチド−Fc融合体を含む。
【0050】
本明細書で用いられる用語「細胞障害性剤」は、細胞機能を阻害又は防止する、及び/又は細胞死又は破壊を引き起こす物質を意味する。その用語は、以下に記載される放射性同位元素(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位元素)、化学療法剤(例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤)、酵素及び核酸分解酵素などの酵素断片、抗生物質及び毒素(例えばバクテリア、菌類、植物又は動物起源の小分子毒素又は酵素活性毒素)(その断片及び変異体を含む)、及び様々な抗腫瘍又は抗癌剤を含むことが意図されている。他の細胞障害性剤は以下に記載される。「殺腫瘍性」薬剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0051】
「毒素」は、細胞の成長又は増殖に有害作用を有し得るあらゆる物質である。
【0052】
「化学療法剤」は、癌の治療において有用な化学化合物である。化学療法剤の例は、チオテパ、CYTOXAN(登録商標)シクロフォスファミドのようなアルキル化剤;アルキル・スルホン酸エステル(例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン);アジリジン(例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)及びウレドーパ(uredopa));アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチルオロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン(ethylenimines)及びメチルアメラミン(methylamelamines);アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン(bullatacinone));デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ−ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトセシン(合成類似体カンポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトセシン、スコポレクチン(scopolectin)及び9−アミノカンプトセシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC−1065(そのアドレゼシン、カルゼルシン(carzelesin)及びビセレシン合成類似体を含む);ポドフィリン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体であるKW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチン(sarcodictyin);スポンギスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード(例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミン酸化物塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニマスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード);ニトロソ尿素(例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチン(ranimnustine));エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えばカリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ1及びカリケアマイシンオメガI1(Agnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)を参照);ダイネミシン(dynemicin)Aを含むダイネミシン(dynemicin);エスペラミシン;及びネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルチノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソL−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ−ドキソルビシン(cyanomorpholino-doxorubicin)、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;アンチメタボライト(例えばメトトレキセート及び5‐フルオロウラシル(5−FU));葉酸類似体(例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキサート);プリン類似体(例えばフルダラビン、6‐メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン);ピリミジン類似体(例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリディン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン);アンドロゲン(例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン);抗副腎剤(例えばアミノグルテチミド、ミトーテン、トリロスタン);葉酸補充薬(例えばフロリン酸);アセグラトン;アルドホスファミド・グリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン;エダトレキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エルフォルニチン(elfornithine);エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド(例えばメイタンシン及びアンサミトシン);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);2−エチルヒドラジド(2-ethylhydrazide);プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2−トリクロロ・トリエチルアミン;トリコテセン系(特にT−2トキシン、ベラクリンA(verracurin A)、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミト・ラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド(例えばTAXOL(登録商標))パクリタキセル)(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、クレモフォール(Cremophor)フリーABRAXANETM、パクリタキセルのアルブミン改変ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)及びTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル(chloranbucil);ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6‐チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナ類似体(例えばシスプラチン及びカルボプラチン);ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));プラチナ;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド(例えばレチノイン酸);カペシタビン(XELODA(登録商標));上記のあらゆる化学療法剤の製薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体;及び、例えばCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニソロンの併用療法の略語)及びFOLFOX(5−FU及びロイコボビンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATINTM)を用いた治療計画の略語)などの上記の二以上の組み合わせを含む。
【0053】
この定義には、癌の成長を促進するホルモンの効果を制御、減少、ブロック又は阻害するように作用する抗ホルモン剤であって、多くの場合全身性又は全身治療型である抗ホルモン剤も含まれる。それらは、それホルモンであってもよい。例として、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)及びFARESTON(登録商標)トレミフェンなどの抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM);抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方制御因子(ERD);例えば黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(例えばLUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標))酢酸ロイプロリド、ゴセレリン酢酸塩、ブセレリン酢酸塩及びトリプテレリン(tripterelin)などの、卵巣を抑制又はシャットダウンするように機能する薬剤;他の抗アンドロゲン物質(例えばフルタミド、ニルタミド(nilutamide)及びビカルタミド(bicalutamide));及び酵素アロマターゼ(例えば4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)メゲストロールアセテート、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール)及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールなどの副腎におけるエストロゲン産生を制御する酵素アロマターゼを阻害する、アロマターゼ阻害剤が含まれる。さらに、そのような化学療法剤の定義には、例えばクロドロネート(例えばBONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチドロン酸、NE−58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ドレゾロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロン酸、SKELID(登録商標)チルドロネート又はACTONEL(登録商標)リセドロネートなどのビスホスホネート;及びトロキサシタビン(1,3−ジオキソラン・ヌクレオシド・シトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な(abherant)細胞増殖に関与するシグナル経路の遺伝子(例えばPKC−α、Raf、H−Ras及び上皮増殖因子レセプター(EGF−R))の発現を阻害するもの;ワクチン(例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン(例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン));LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビター;ABARELIX(登録商標)rmRH;ラパチニブジトシラート(ErbB−2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子インヒビター(別名GW572016));及び製薬的に許容可能な塩、酸、又は上記のもののあらゆる誘導体が含まれる。
【0054】
「抗体」(Ab)及び、「免疫グロブリン」(Ig)は、類似した構造的特性を有するグリコプロテインを意味する。抗体が特定の抗原に結合特異性を示すのに対して、免疫グロブリンは一般に抗体及び抗原特異性を欠く抗体様分子を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によって低レベルで、及びミエローマによって増加したレベルで産生される。
【0055】
用語「抗体」及び「免疫グロブリン」は、最も広い意味において交換可能に用いられ、モノクローナル抗体(例えば完全長又は完全なモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体、所望の生物学的活性を示すものであればよい)を含み、特定の抗体断片(より詳細に本明細書に記載される)も含んでもよい。抗体は、キメラ、ヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟抗体であり得る。
用語「抗CD117抗体」又は「CD117に結合する抗体」は、抗体がCD117を標的とした診断薬及び/又は治療剤として有用であるように、充分な親和性でCD117に結合可能な抗体を意味する。ある種の実施態様では、CD117に結合する抗体は、≦1μM、100nM≦、10nM≦、1nM≦又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。特定の実施態様において、抗CD117抗体が異なる種のCD117間で保存されるCD117のエピトープに結合する。
【0056】
用語「抗CD44抗体」は、抗体がCD44を標的とした診断薬及び/又は治療剤として有用であるように、充分な親和性でCD44に結合可能な抗体を意味する。ある種の実施態様では、CD44に結合する抗体は、≦1μM、100nM≦、10nM≦、1nM≦又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。特定の実施態様において、抗CD44抗体が異なる種のCD44間で保存されるCD44のエピトープに結合する。
【0057】
用語「抗CD133抗体」は、抗体がCD133を標的とした診断薬及び/又は治療剤として有用であるように、充分な親和性でCD133に結合可能な抗体を意味する。ある種の実施態様では、CD133に結合する抗体は、≦1μM、100nM≦、10nM≦、1nM≦又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。特定の実施態様において、抗CD133抗体が異なる種のCD133間で保存されるCD133のエピトープに結合する。
【0058】
用語「抗Sca−1抗体」は、抗体がSca−1を標的とした診断薬及び/又は治療剤として有用であるように、充分な親和性でSca−1に結合可能な抗体を意味する。ある種の実施態様では、Sca−1に結合する抗体は、≦1μM、100nM≦、10nM≦、1nM≦又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。特定の実施態様において、抗Sca−1抗体が異なる種のSca−1間で保存されるSca−1のエピトープに結合する。
【0059】
用語「完全長抗体」、「完全抗体」及び「全抗体」は、その実質的に完全な形態(下記で定義されるように抗体断片でない)の抗体を意味するように、本明細書において交換可能に用いられる。その用語は、特にFc領域を含む重鎖を有する抗体を意味する。
【0060】
「抗体断片」は完全抗体の一部のみを含み、その一部は、完全抗体に存在している場合に通常その一部と関連する少なくとも一、及びその大部分又は全てと同程度の機能を保持する。一実施態様において、抗体フラグメントは、完全抗体の抗原結合部位を含み、したがって、抗原に結合する能力を保持する。もう一つの実施態様では、抗体フラグメント(例えばFc領域を含むもの)は、完全抗体中に存在する場合に通常Fc領域と関連している生物学的機能(例えばFcRn結合、抗体半減期変調、ADCC機能及び補体結合)のうちの少なくとも1つを保持する。一実施態様において、抗体フラグメントは、完全抗体に実質的に類似したインビボ半減期を有する一価抗体である。例えば、そのような抗体フラグメントは、断片からインビボ安定性を与えることが可能な結晶化可能フラグメント配列から連結される抗原結合アームから含んでもよい。
【0061】
抗体のパパイン消化により、それぞれの一つの抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合性フラグメント(「Fab」断片と呼ばれる)、及び残りの「Fc」断片(名前が容易に結晶化するその能力を反映する)が産生される。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、抗原を架橋させることが可能なF(ab’)断片を産生する。
【0062】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小限の抗体フラグメントである。一実施態様において、二重鎖Fvの種類は、堅固な非共有の結合による一つの重鎖可変ドメイン及び一つの軽鎖可変ドメインのダイマーからなっている。単鎖Fv(scFv)の種類において、一つの重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二重鎖Fvの種類中のそれに類似した「ダイマー」構造として結合できるように、フレキシブルなペプチドリンカーによって連結されてもよい。この構成において、それぞれの可変ドメインにおける3つのCDRはVH−VLダイマーの表面上の抗原結合部位を特定するために相互作用する。共同して、6つのCDRは、抗原結合特異性を抗体に与える。しかしながら、一つの可変ドメイン(又は、抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、完全な結合部位よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識及び結合する能力を有する。
【0063】
Fabフラグメントは、重鎖及び軽鎖の可変ドメインを含み、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)をも含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域の一以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における、少数の残基の付加により、Fabフラグメントと異なっている。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有しているFab’の呼称である。F(ab’)抗体断片は、本来、それら間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として製造された。抗体断片の他の化学的結合もまた公知である。
【0064】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは一つのポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするVH及びVLドメイン間のポリペプチドリンカーを更に含む。scFvの概要については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)におけるPluckthunを参照のこと。
【0065】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体断片を意味し、同じポリペプチド鎖(VH−VL)内に軽鎖可変ドメイン(VL)に接続される重鎖可変ドメイン(VH)を含んでいる。同じ鎖上の2つのドメイン間で対合するには短いリンカーを用いることにより、ドメインは、他の鎖の相補的なドメインと対になり、2つの抗原結合部位を形成することとなる。ダイアボディは、二価又は二重特異性であってもよい。ダイアボディは、例えばEP404,097;WO93/1161;Hudson et al. (2003) Nat. Med. 9: 129-134;及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)において完全に記載されている。トライアボディ及びテトラボディは、Hudson et al. (2003) Nat. Med. 9: 129-134にも記載されている。
【0066】
本明細書で用いられる用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体、すなわち可能な変異(例えば少量存在し得る自然発生的な変異体)を除いて、集団を構成する個々の抗体は同一である。したがって、修飾語「モノクローナル」は、別々の抗体の混合物でない抗体の特徴を示す。特定の実施態様では、そのようなモノクローナル抗体は一般的に、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的−結合ポリペプチド配列は複数のポリペプチド配列から一つの標的結合ポリペプチド配列の選別を含むプロセスによって得られた。例えば、選別プロセスは、複数のクローン(例えばハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプール)から固有のクローンの選別であり得る。選択された標的結合配列は、例えば、標的への親和性を改善する、標的結合配列をヒト化する、細胞培養における産生を改善する、インビボでその免疫原性を減少させる、多重特異性抗体を作成するなどのためにさらに変更することができ、変更された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体であることはよく理解されるべきである。一般的に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクロナール抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は抗原上の一つの決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、一般的に他の免疫グロブリンが混入していないという点で、モノクローナル抗体製剤は有利である。
【0067】
修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体の性質を示し、特定の方法による抗体の産生を必要とするとは解釈されない。例えば、本発明によって用いられるモノクローナル抗体は、例えばハイブリードーマ法(Kohler et al., Nature, 256: 495 (1975);Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988);Hammerling et al., in: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA方法(米国特許番号4,816,567を参照)、ファージ・ディスプレイ技術(Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992);Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004);Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004);Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34): 12467-12472 (2004);及びLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004)を参照)、及びヒト免疫グロブリン配列をコード化するヒト免疫グロブリン遺伝子座又は遺伝子の一部又は全体を有する動物におけるヒト又はヒト様抗体を製造する技術(WO98/24893参照; WO96/34096;WO96/33735;WO91/10741;Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 2551 (1993);Jakobovits et al., Nature 362: 255-258 (1993);Bruggemann et al., Year in Immunol. 7:33 (1993);米国特許番号5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,661,016;Marks et al., Bio.Technology 10: 779-783 (1992);Lonberg et al., Nature 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature 368: 812-813 (1994);Fishwild et al., Nature Biotechnol. 14: 845-851 (1996);Neuberger, Nature Biotechnol. 14: 826 (1996)及びLonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93 (1995))を含む種々の技術によって製作されてもよい。
【0068】
本明細書のモノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種から誘導されるか、特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応配列と同一又は相同であるが、鎖の残部が他の種から誘導されるか他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応配列、もしくはそのような抗体の断片とと同一又は相同であり、所望の生物学的活性を示す「キメラ」抗体を明確に含む(米国特許番号4,816,567;及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。
【0069】
ヒト以外(例えば、マウス)の抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンから誘導される最小の配列を含むキメラ抗体である。一実施態様において、ヒト化抗体は、所望の特異性、親和性及び/又は能力を有するレシピエントの超可変領域からの残基がマウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類などのヒト以外の種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基と置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応するヒト以外の残基と置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体において見いだされない残基を含んでもよい。これらの変更は、抗体の性能をさらに改良するために行われてもよい。一般に、ヒト化抗体は少なくとも一及び一般的に二の可変ドメインの実質的に全てを含み、全て又は実質的に全ての高頻度可変性ループはヒト以外の免疫グロブリンに対応し、全て又は実質的に全てのFRsはヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、場合によって少なくとも免疫グロブリン定常領域(Fc)(一般的にヒト免疫グロブリンのもの)の一部を含む。詳細はJones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。以下の総説及びそこで引用される文献も参照のこと:Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994)。
【0070】
「ヒト抗体」は、本明細書において開示されるように、ヒトで製造される抗体と対応するアミノ酸配列を含むもの、及び/又はヒト抗体を製作するための技術の何れかを用いて製造されるものである。そのような技術は、ファージ・ディスプレイ・ライブラリー(Marks et al., J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991)及びHoogenboom et al., Nucl. Acids Res., 19: 4133-4137 (1991)を参照)などのヒト由来の組み合わせライブラリーのスクリーニング;ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒトミエローマ及びマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株の使用(Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);及びBoerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991)参照);及び内因性の免疫グロブリン産生がない状態でヒト抗体の完全なレパートリーを産生することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)におけるモノクローナル抗体を作製(Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 90: 2551 (1993);Jakobovits et al., Nature, 362: 255 (1993);Bruggermann et al., Year in Immunol., 7: 33 (1993)参照)を含む。ヒト抗体のこの定義は、特に、ヒト以外の動物の抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。
【0071】
「親和性成熟」抗体は、変更を有さない親抗体と比較して、抗体の抗原に対する親和性の改善を生じさせる一つ以上のCDRにおける一つ以上の変更を有するものである。一実施態様において、親和性成熟抗体は、標的抗原に対するナノモル又はピコモル親和性を有する。親和性成熟抗体は、その分野で公知の手法によって製造される。Marks et al. Bio/Technology 10:779-783 (1992)は、VH及びVLドメインのシャフリングによる親和性成熟を記載する。HVR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は以下に記載される:Barbas et al. Proc Nat. Acad. Sci. USA 91:3809-3813 (1994);Schier et al. Gene 169:147-155 (1995);Yelton et al. J. Immunol. 155:1994-2004 (1995);Jackson et al., J. Immunol. 154(7): 3310-9 (1995);及びHawkins et al, J. Mol. Biol. 226:889-896 (1992)。
【0072】
「ブロッキング抗体」又は「アンタゴニスト抗体」は、結合する抗原の生物学的活性を阻害又は減少するものである。特定のブロッキング抗体又はアンタゴニスト抗体は、部分的又は完全に抗原の生物学的活性を阻害する。
【0073】
「小分子」又は「小有機分子」は、約500ダルトン以下の分子量を有する有機分子として、本明細書において定義される。
【0074】
「CD117−結合オリゴペプチド」又は「CD117に結合するオリゴペプチド」は、オリゴペプチドがCD117を標的とする診断及び/又は治療剤として有用であるように、充分な親和性でCD117に結合可能なオリゴペプチドである。特定の実施態様において、無関係なCD117以外のタンパク質へのCD117−結合オリゴペプチドの結合の結合の程度は、例えば表面プラスモン共鳴アッセイによって測定されるCD117へのCD117−結合オリゴペプチドの結合の約10%未満である。特定の実施態様において、CD117−結合オリゴペプチドは、≦1nM、≦100nM、≦10nM、≦1μM又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。
【0075】
「CD117−結合有機分子」又は「CD117に結合する有機分子」は、有機分子がCD117を標的とする診断及び/又は治療剤として有用であるように、充分な親和性でCD117に結合可能な、本明細書で定義されるようなオリゴペプチド又は抗体以外の有機分子である。特定の実施態様において、無関係なCD117以外のタンパク質へのCD117−結合有機分子の結合の結合の程度は、例えば表面プラスモン共鳴アッセイによって測定されるCD117へのCD117−結合有機分子の結合の約10%未満である。特定の実施態様において、CD117−結合有機分子は、≦1nM、≦100nM、≦10nM、≦1μM又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。
【0076】
標的ポリペプチドに結合するあらゆる分子の解離定数(Kd)は、表面プラスモン共鳴アッセイを用いて、便宜的に測定され得る。そのようなアッセイは、BIAcoreTM−2000又はBIAcoreTM−3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を、25℃において、固定された標的ポリペプチドCM5チップと共に、10以下の応答単位(RU)で用いてもよい。簡潔に、カルボキシメチル化されたデキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)は、供給元の説明書に従うと、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化される。標的ポリペプチドは、結合タンパク質のおよそ10応答単位(RU)を達成するために、5μl/分の流速での注射の前に、10mM酢酸ナトリウム(pH 4.8)で5μg/mlまで(〜0.2μM)希釈される。標的ポリペプチドの注入に続いて、1Mエタノールアミンは、未反応の基をブロッキングするために注入される。動態測定のために、結合分子の二倍階段希釈物(500nMから0.78nM)は、およそ25μl/分の流速、25℃で、0.05%Tween20を含むPBS(PBST)において注射される。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は、会合及び解離センサーグラムに同時に適合させることよって、単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one−to−one Langmuir binding model)(BIAcore Evaluation Software version3.2)を用いて算出される。koff/kon比のように、平衡解離定数(Kd)は算出される。Chen, Y., et al., (1999) J. Mol. Biol. 293:865-881を参照のこと。抗体の会合速度が表面プラスモン共鳴アッセイにおいて106M−1s−1を上回る場合、会合速度は、stop−flow equipped spectrophometer(Aviv Instruments)又は8000−系列SLM−Aminco spectrophometer(ThermoSpectronic)などの分光計において撹拌キュベットを用いて測定される抗原濃度の増加がある場合には、PBS中20nM抗体(Fab形態)、25℃、pH7.2における蛍光放出強度(295nm励起=;放出= 340nm、16nm帯域通過)の増減を測定する蛍光クエンチング技術を用いて決定することができる。
【0077】
「リポソーム」は、哺乳動物に剤(例えば薬剤)の送達に有用な様々な形の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤から構成される小さいベシクルである。リポソームの成分は、通常、生体膜の脂質配列に類似する二重層構造に配置される。
【0078】
本願明細書において用いられる単語「標識」は、検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識は、それ自身が検出可能でもよく(例えばラジオアイソトープ標識又は蛍光標識)、酵素標識の場合、検出可能な産物を生じる基質化合物又は組成物の化学的変更を触媒してもよい。検出可能な標識として作用し得る放射性核種は、例えばI−131、I−123、I−125、Y−90、Re−188、Re−186、At−211、Cu−67、Bi−212及びPd−109を含む。
【0079】
核酸、ポリペプチド又は抗体などの「単離された」生体分子は、その自然環境の少なくとも一つの成分から同定及び分離及び/又は回収されたものである。
【0080】
「単離された細胞」は、その自然環境の少なくとも一つの成分から同定及び分離及び/又は回収された細胞である。
【0081】
本発明の組成物及び方法
ここに規定されるように、CD117は多能性、自己複製能を有する前立腺幹細胞(PSC)の稀有なマーカーである。CD117発現は、主にマウス前立腺の近位から尿道の領域に局在し、去勢に誘導された前立腺退行に続いて上方制御され、2つの特徴はPSCマーカーの特徴と一致する。インビボで移植される場合、CD117PSCは機能的で、分泌物を生成する前立腺を産生することができる。さらに、インビボでの経時的な単離及び移植によって証明されたように、CD117PSCは長期の自己複製能力を示す。PSCの更なる精製は、いくつかの実施態様において所望されており、さらなるマーカーCD133及び/又はCD44及び/又はSca−1に基づく細胞の選別又は単離によって達成される。実施例に記載されているように、LinSca−1CD133CD44CD117表現型によって定義される成体マウス前立腺から単離された単一細胞は、インビボでの移植により前立腺を形成することができる。
【0082】
したがって、PSCを単離する方法は、本発明の一態様において提供される。一実施態様において、前立腺細胞の集団はドナーの前立腺から得られる。いくつかの実施態様において、ドナーは哺乳類のドナーである。いくつかの実施態様において、ドナーはヒトである。他の実施態様において、ドナーはマウス、ラット、ブタ又は他の適切な哺乳類のドナーである。いくつかの実施態様において、前立腺細胞集団は、系統枯渇(Lin−)細胞集団を生じる全ての系統細胞を取り除くために処理される。Lin−細胞集団を得るための方法は、その分野において公知であり、実施例に記載されている。前立腺細胞集団は、細胞表面マーカーCD117、CD133、CD44及びSca−1のうちの1、少なくとも2、少なくとも3又は少なくとも4を発現する細胞集団を得るためにソーティングされる。特定の実施例において、Lin−細胞集団は、CD117、CD133及びCD44(表現型Lin−/CD117+/CD133+/CD44+)又はCD117、CD133、CD44、Sca−1(表現型Lin−/CD117+/CD133+/CD44+/Sca−1+)を発現する細胞集団を得るためにソーティングされる。さらなる実施態様は、例えば、以下の表現型Lin−/CD117+、Lin−/CD117+/CD133+、Lin−/CD117+/CD44+、Lin−/CD117+/Sca−1+、Lin−/CD117+/CD133+/Sca−1+、Lin−/CD117+/CD44+/Sca−1+を伴う細胞を得るための細胞集団のソーティング方法を含む。
【0083】
細胞表面マーカーに基づく細胞をソーティングする方法はその分野で公知であり、例えば標準フローサイトメトリー、磁気素子ソーティング及び 蛍光標示式細胞分取器(FACS)を含む。
【0084】
本発明の別の態様は、細胞選別方法から得られた細胞集団及び/又は単一の細胞を提供する。細胞集団は、実質的に純粋であり、細胞を選別するために用いられるマーカーを発現しない細胞の有意な集団を含まない。いくつかの実施態様において、細胞集団は少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%純粋である。
【0085】
ソーティング方法を用いて得られたPSCは、前立腺組織の再生方法及び化合物のスクリーニング方法を含む多くの方法において用いることができる。
【0086】
ヒト男性の機能的な前立腺の喪失は、性機能の喪失、尿失禁、腸管機能不全及び低下を含む多くの望ましくない身体的及び感情的な状態を引き起こす。Kirby, R.S. et al., Prost Can Prost Disease 1:179-184 (1998)、Weber, B. et al, Am J Men's Health, 2 (2): 165-171 (2008)。したがって、本発明の一態様は、患者における機能的な前立腺の再生方法を提供する。一実施態様において、PSCが機能的な前立腺を再生させるために、本発明のPSCは患者に移植される。一実施態様において、患者は前立腺を有しおらず、PSCは患者の尿道の近くに移植され、前立腺の形成を生じる。もう一つの実施態様では、患者は部分的な前立腺を有しており、PSCは部分的な前立腺の中又は近くに移植され、前立腺組織及び機能的な前立腺の再生を引き起こす。一実施態様において、患者はヒト患者である。もう一つの実施態様では、患者はヒト男性患者である。
【0087】
さらなる別の実施態様では、宿主生物は、患者への移植のための前立腺を形成するために用いられる。一実施態様において、患者はヒト患者である。もう一つの実施態様では、患者はヒト男性患者である。一実施態様において、患者又は患者と同じ種から得られたPSCは、宿主生物に移植され、前立腺の形成を引き起こす。PSCは、前立腺を形成するために充分な血管系を提供する方法で、宿主生物に移植される。一実施態様において、PSCは宿主の腎被膜下に移植される。前立腺は、宿主からの取り除かれ、機能的な前立腺を必要とする患者に移植される。一実施態様において、宿主及び患者は同一又は同じ種である。一実施態様において、宿主及び患者はヒトである。もう一つの実施態様では、宿主及び患者は同じ種ではない。一実施態様において、宿主はブタ又は他の適切なヒト以外の哺乳動物である。もう一つの実施態様では、患者はヒトである。
【0088】
さらなる別の実施態様では、前立腺はエキソビボ系で形成される。エキソビボで組織及び器官を形成するシステムは公知であり、例えば米国特許番号6,121,042、6,210,957、6,171,812、7,410,792、6,432,713、6,599,734、6,607,917及び6,921,662に記載されている。
【0089】
正常なPSCを単離するために用いられるマーカーは、前立腺癌幹細胞(PCSC)を単離する際にも有用である。本発明のPCSCは、正常なPSCを単離するために用いられるのと同じマーカーを発現する。正常なPSC及びPCSCは、細胞が前立腺(正常なPSCs)に分化するか、増殖して前立腺癌(PCSC)を生じるかを決定するアッセイを用いて、一方から他方を区別することができる。そのようなアッセイは、その分野において公知であり、本明細書に記載されている。
【0090】
PSC及びPCSCは、組織産生を増加させるか細胞増殖を減少させるかの何れか、及び前立腺癌を治療するために用いられる化合物をスクリーニングする方法において有用である。したがって、本発明の一態様は、前立腺癌の治療のための化合物を同定する方法を提供する。一実施態様において、本発明の方法は、試験化合物とPSC又はPCSC(又はPSCs又はPCSCsの実質的に純粋な集団)とを接触させ、PSC又はPCSCの増殖又は生存率に与える試験化合物の効果を評価することを含む。特定の実施態様では、PSC又はPCSCは、CD117を発現する。もう一つの実施態様では、PSC又はPCSCは、CD117及びCD44を発現する。もう一つの実施態様では、PSC又はPCSCは、CD117及びCD133を発現する。もう一つの実施態様では、PSC又はPCSCは、CD117、CD44及びCD133を発現する。もう一つの実施態様では、PSC又はPCSCは、CD117、CD44、CD133及びSca−1を発現する。一実施態様において、本発明の方法は、試験化合物がPSC又はPCSCの増殖を阻害するかどうかを決定する。増殖の阻害は、インビトロでの細胞増殖アッセイを含む、その分野で公知のあらゆる方法を用いて決定することができる。いくつかの実施態様において、本発明の方法は、試験化合物の効果の比較を提供するために、試験化合物の非存在下におけるPSC又はPCSCの増殖を決定することを含む。もう一つの実施態様では、本発明の方法は、試験化合物がPSC又はPCSCを死滅させるかどうかを決定する。
【0091】
細胞の成長又は増殖の阻害のためのアッセイは、その分野において周知である。細胞増殖(本明細書に記載される「細胞死滅」アッセイにより例示される)のための特定のアッセイは、細胞生存率を測定する。そのようなアッセイはCellTiter−GloTM Luminescent Cell Viability Assayであり、Promega(Madison, WI)から入手可能である。そのアッセイは存在するATPの定量化に基づいて培養における生存細胞数を決定し、それは代謝的に活性な細胞の指標である。Crouch et al (1993) J. Immunol. Meth. 160:81-88、米国特許第6602677号を参照のこと。アッセイは96−又は384−ウェルフォーマットで行われてもよく、オートメーション化されたハイスループットスクリーニング(HTS)に適用可能となる。Cree et al (1995) AntiCancer Drugs 6:398-404を参照のこと。アッセイ手法は、培養細胞への一つの試薬(CellTiter−Glo(登録商標)Reagent)の直接的な添加に関与する。これにより、細胞の溶解と、ルシフェラーゼ反応によって産生される発光シグナルの発生が生じる。発光シグナルは存在するATPの量に比例し、培養に存在する生存細胞数に比例する。データは、ルミノメーター又はCCDカメラ撮像デバイスによって記録することができる。発光の出力は、相対発光量(RLU)として表される。
【0092】
他の細胞増殖アッセイは、「MTT」アッセイであり、ミトコンドリア還元酵素による3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物のホルマザンへの酸化を測定する比色アッセイである。CellTiter−GloTMアッセイの様に、このアッセイは細胞培養中に存在する代謝的に活性な細胞数を示す。例えばMosmann (1983) J. Immunol. Meth. 65:55-63及びZhang et al. (2005) Cancer Res. 65: 3877-3882を参照のこと。
【0093】
細胞死誘導アッセイは、その分野において周知である。いくつかの実施態様において、そのようなアッセイは、例えば、よう化プロピジウム(PI)、トリパンブルー(Moore et al. (1995) Cytotechnology, 17:1-11を参照)又は7AADの取り込みによって示される膜統合性の損失を測定する。例示的なPI取り込みアッセイにおいて、細胞は、ダルベッコ改変イーグル培地(D−MEM):10%の熱不活性FBS(Hyclone)及び2mML−グルタミンが補充されたHam’s F−12(50:50)において培養される。したがって、アッセイは、補体及び免疫エフェクター細胞の非存在下で行われる。細胞は、100×20mmのディッシュにおいてディッシュにつき3×10の密度で播種され、オーバーナイトで付着することができる。培地は取り除かれ、培地のみ、又は様々な濃度の抗体又は免疫複合体を含む培地で交換される。細胞は、3日間インキューベートされる。処理に続いて、単層はPBSで洗浄され、トリプシン処理によって分離される。細胞は4℃で、5分間1200rpmで遠心分離され、ペレットが3mlの低温Ca2+結合緩衝液(10mMHepes、pH7.4、140mMNaCl、2.5mMCaCl)中に再懸濁され、細胞凝集塊の除去のために35mmの濾過器キャップの(strainer-capped)12×75mmのチューブ(1ml/チューブ、処理群につき3つのチューブ)に等分される。そして、チューブにPI(10μg/mL)を加える。試料はFACSCANフローサイトメーター及びFACSCONVERT CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて解析される。PI取り込みによって測定される統計的に有意な水準の細胞死を誘導するそれらの抗体は、細胞死誘導抗体として選択され得る。
【0094】
例示的なアポトーシスを誘導する化合物のアッセイは、ゲノムDNAのヌクレオソーム間の分解を検出するための、アネキシン結合アッセイ及びヒストンDNA ELISA比色アッセイである。そのようなアッセイは、例えばCell Death Detection ELISAキット(Roche, Palo Alto, CA)を用いて行うことができる。
【0095】
本発明の別の態様は、組織再生を促進するための化合物を同定する方法を提供する。一実施態様において、本発明の方法は、PSC(又はPSCの実質的に純粋な集団)と試験化合物とを接触させること、及び前立腺組織、前立腺コロニー又は機能的な前立腺へのPSCの増殖及び分化に対する試験化合物の効果を評価することを含む。特定の実施態様では、PSCはCD117を発現する。もう一つの実施態様では、PSCはCD117及びCD44を発現する。もう一つの実施態様では、PSCはCD117及びCD133を発現する。もう一つの実施態様では、PSCはCD117、CD44及びCD133を発現する。もう一つの実施態様では、PSCはCD117、CD44、CD133及びSca−1を発現する。いくつかの実施態様において、本発明の方法は、試験化合物の効果の比較を提供するために、試験化合物の非存在下においてPSCの増殖及び分化に対する試験化合物の効果を決定することを含む。化合物の増殖促進効果を決定するためのアッセイは、実施例において見られる。
【0096】
別の態様においては、PSC又はPCSCの増殖を阻害する方法が提供され、その方法はCD117のアンタゴニストにPSC又はPCSCを暴露又は接触させることを含む。特定の実施態様では、PSC又はPCSCはCD117を発現する。もう一つの実施態様では、PSC又はPCSCはCD117及びCD44を発現する。もう一つの実施態様では、PSC又はPCSCはCD117及びCD133を発現する。もう一つの実施態様では、PSC又はPCSCはCD117、CD44及びCD133を発現する。もう一つの実施態様では、PSC又はPCSCはCD117、CD44、CD133及びSca−1を発現する。
【0097】
本発明の別の態様は、患者の前立腺癌におけるPSC又はPCSCの有無に基づいて前立腺癌を治療する方法を提供する。前立腺癌がPSC又はPCSCを含む患者は、PSC又はPCSCの増殖を阻害する化合物での治療に応答すると予測される。したがって、PSCs又はPCSCsの有無は、PSC又はPSCSの増殖を阻害する化合物が患者の治療計画に含まれるべきかを決定するのに用いられる。治療計画は、一次治療計画であってもよい。PSC又はPSCSの存在は、特に一次治療計画が見かけ上成功した患者において前立腺癌が再発する可能性が高いかどうかを予測する際に有用である。PSC又はPSCSの存在が前立腺癌において検出される場合、患者は前立腺癌の再発を経験するか、PSCSの増殖を阻害するかPCSCが前立腺癌を産生することを防止する化合物でのアジュバント療法の候補であることが予測される。
【0098】
特定の実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、及び患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含む場合にCD117アンタゴニストの治療的有効量を患者に投与することを含む、患者の前立腺癌を治療する方法を提供する。他の実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、及び患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含む場合にCD133アンタゴニストの治療的有効量を患者に投与することを含む、患者の前立腺癌を治療する方法を提供する。他の実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、及び患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含む場合にCD44アンタゴニストの治療的有効量を患者に投与することを含む、患者の前立腺癌を治療する方法を提供する。さらなる別の実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、及び患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含む場合にSca−1アンタゴニストの治療的有効量を患者に投与することを含む、患者の前立腺癌を治療する方法を提供する。他の実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、及び患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含む場合にCD117アンタゴニストと、CD133アンタゴニスト、CD44アンタゴニスト及び/又はSca−1アンタゴニストとの組み合わせの治療的有効量を患者に投与することを含む、患者の前立腺癌を治療する方法を提供する。
【0099】
本発明の別の態様は、前立腺癌を治療するために用いられる一次治療の完了後の前立腺癌の再発を経験する可能性がある前立腺癌患者であるかの予測に関連する。一実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、及び患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含む場合に患者が前立腺癌の再発を経験する可能性があると予測することを含む、前立腺癌患者が前立腺癌の再発を経験する可能性があるかどうかを予測する方法を提供する。この予測は、患者のさらなる治療を導くために用いることができ、アジュバント療法の使用をもたらし得る。一実施態様において、患者が前立腺癌の再発を経験する可能性があるという予測に続いて、患者へのCD117アンタゴニストの投与を含むアジュバント療法が行われる。もう一つの実施態様では、患者が前立腺癌の再発を経験する可能性があるという予測に続いて、患者へのCD133アンタゴニストの投与を含むアジュバント療法が行われる。もう一つの実施態様では、患者が前立腺癌の再発を経験する可能性があるという予測に続いて、患者へのCD44アンタゴニストの投与を含むアジュバント療法が行われる。もう一つの実施態様では、患者が前立腺癌の再発を経験する可能性があるという予測に続いて、患者へのSca−1アンタゴニストの投与を含むアジュバント療法が行われる。もう一つの実施態様では、患者が前立腺癌の再発を経験する可能性があるという予測に続いて、患者に治療的有効量のCD117アンタゴニストと、CD133アンタゴニスト、CD44アンタゴニスト及び/又はSca−1アンタゴニストとの組み合わせを投与することを含むアジュバント療法が行われる。
【0100】
他の実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、及び患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含む場合に患者に治療的有効量のCD117アンタゴニストを投与することを含む、患者における前立腺癌の再発を防止する方法を提供する。更なる実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、及び患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含む場合に患者に治療的有効量のCD117アンタゴニストを投与することを含む、前立腺癌の治療を受ける患者にアジュバント療法を提供する方法を提供する。他の実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、及び患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含む場合に患者に治療的有効量のCD133アンタゴニストを投与することを含む、前立腺癌の治療を受ける患者にアジュバント療法を提供する方法を提供する。他の実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、及び患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含む場合に患者に治療的有効量のCD44アンタゴニストを投与することを含む、前立腺癌の治療を受ける患者にアジュバント療法を提供する方法を提供する。他の実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、及び患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含む場合に患者に治療的有効量のSca−1アンタゴニストを投与することを含む、前立腺癌の治療を受ける患者にアジュバント療法を提供する方法を提供する。他の実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、治療的有効量のCD117アンタゴニストと、CD133アンタゴニスト、CD44アンタゴニスト及び/又はSca−1アンタゴニストとの組み合わせを患者に投与することを含む、前立腺癌の治療を受ける患者にアジュバント療法を提供する方法を提供する。
【0101】
他の実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、及び患者がPSC又はPCSCを含む前立腺癌を有する場合にCD117アンタゴニストでの治療のための患者を選択することを含む、CD117アンタゴニストでの治療のための前立腺癌患者を選択する方法を提供する。
【0102】
さらにもう一つの実施態様は、患者の前立腺癌がPSC又はPCSCを含むかどうかを決定すること、及び患者がPSC又はPCSCを含む前立腺癌を有する場合にCD117アンタゴニストでのアジュバント療法のための患者を選択することを含む、CD117アンタゴニストでの治療のための前立腺癌患者を選択する方法を提供する。
【0103】
上記の態様の特定の実施態様において、PSC又はPCSCはCD117を発現する。もう一つの実施態様では、PSC又はPCSCはCD117及びCD44を発現する。もう一つの実施態様では、PSC又はPCSCはCD117及びCD133を発現する。もう一つの実施態様では、PSC又はPCSCはCD117、CD44及びCD133を発現する。もう一つの実施態様では、PSC又はPCSCはCD117、CD133、CD44及びSca−1を発現する。
【0104】
マーカーCD117、CD133、CD44及びSca−1の発現の検出は、その分野で公知の任意の方法によって行うことができる。一実施態様において、マーカーの過剰発現は、マーカー遺伝子のmRNA転写レベルを測定することによって検出される。mRNA転写レベルは、当業者に既知の様々な方法によって、量的又は質的に決定され得る。mRNA転写レベルは、mRNAから作製されるcDNAのレベルを検出することによって、直接的又は間接的に決定されてもよい。mRNA転写のレベルを決定するための例示的な方法は、これに限定されるものではないが、PCR、リアルタイム定量的RT−PCR、及びマイクロアレイに基づくアッセイ及びフィルターに基づくアッセイ(例えばノーザンブロット)を含むハイブリダイゼーションに基づくアッセイを含む。
【0105】
他の実施態様において、マーカーの発現は、マーカーポリペプチドの発現レベルを測定することによって検出される。マーカーポリペプチドのレベルは、抗体に基づく検出方法を含む当業者に既知の特定の方法によって、量的又は質的に決定され得る。一実施態様において、試験試料におけるマーカー遺伝子の発現を検出することは、試験試料をマーカーポリペプチドに特異的な抗体に接触させること、及びマーカーポリペプチドへの抗体の結合を検出することによって試験試料におけるマーカーポリペプチドの発現レベルを(量的又は質的に)決定することを含む。ある種の実施形態では、マーカーポリペプチドへの抗体の結合は、これに限定されるものではないが、免疫組織化学、蛍光性活性化細胞選別、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISAなどの当業者に公知の様々な方法によって検出され得る。
【0106】
癌細胞の試料又は試験試料は好ましくは前立腺癌腫瘍から直接採取された細胞を含むが、試験試料は転移性癌細胞、循環腫瘍細胞又は癌におけるマーカー遺伝子又はポリペプチドの増幅又は発現状態を同定する細胞の任意の適した試料も含まれ得る。
【0107】
いくつかの実施態様において、コントロールは、マーカーの発現を測定するために用いられたものと同じ試験試料又はマーカーの発現を試験された同じ癌におけるハウスキーピング遺伝子(例えばアクチンファミリーメンバー)の発現を決定することによって作製することができる。ハウスキーピング遺伝子は、マーカー遺伝子の発現を決定するための比較コントロールとしての役割を果たす。
【0108】
上記の態様の特定の実施態様において、CD117のアンタゴニストは小分子アンタゴニストである。もう一つの実施態様では、CD117のアンタゴニストはアンタゴニスト抗体である。もう一つの実施態様では、CD117のアンタゴニストは、可溶性CD117レセプター又はその変異体である。
【0109】
種々のCD117キナーゼアンタゴニストがその分野において既知である。そのようなキナーゼアンタゴニストは、これに限定されるものではないが、アンタゴニスト抗体及び小分子アンタゴニスト、例えば3−[2,4−ジメチルピロル−5−イル)メチリデン]−インドリン−2−オン(「SU5416」); 5−[1,2−ジヒドロ−2−オキソ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−プロパン酸(「SU6668」);イマチニブメシル酸塩(「STI571」、Gleevec(登録商標)、Novartis)、スニチニブリンゴ酸塩(Sutent(登録商標)、Pfizer)、3−フェニル−1H−ベンゾフロ[3,2−c]ピラゾール(「GTP−14564)、5−[(Z)−(5−クロロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]−N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド(「SU11652)、6,7−ジメトキシ−3−フェニルキノキサリン(「AG1296」)、1,2−ジメチル−6−(2−チエニル)−イミダゾロ[5,4−g]キノキサリン(「AGL 2043」)及びインドリノン(例えば3−[3−(2−カルボキシエチル)−4−メチルピロール−2−メチルイデニル]−2−インドリノン(「SU5402」))(Bernard-Pierrot (2004) Oncogene 23:9201-9211を参照)を含む。
【0110】
上記の態様の特定の実施態様において、CD133、CD44又はSca−1のアンタゴニストは小分子アンタゴニストである。もう一つの実施態様では、CD133、CD44又はSca−1のアンタゴニストはアンタゴニスト抗体である。もう一つの実施態様では、CD133、CD44又はSca−1のアンタゴニストは、それぞれCD133、CD44又はSca−1の変異体である。
【0111】
医薬組成物
アンタゴニストを含む治療製剤が含まれ、選択的な生理学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤と、所望の程度の純度を有する活性成分を混合することによって、その分野において公知の標準法を用いて調製される(Remington's Pharmaceutical Sciences (20.sup.th edition), ed. A. Gennaro, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa.)。許容可能な担体には、食塩水又は緩衝液(例えばリン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸);アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10未満の残基)のポリペプチド;タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン、アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又は、リジン));グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖、二糖及び他の糖;キレート剤(例えばEDTA);糖アルコール(例えばマンニトール又はソルビトール);塩形成対イオン(例えばナトリウム);及び/又は非イオン性界面活性剤(例えばTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)又はPEG)が含まれる。
【0112】
場合により、製剤は、製薬的に許容可能な塩(好ましくは塩化ナトリウム)を、好ましくはほぼ生理的濃度で含む。場合により、本発明の製剤は、製薬的に許容可能な防腐剤を含むことができる。いくつかの実施態様において、防腐剤の濃度は、0.1から2.0%(一般的にv/v)にわたる。適切な防腐剤には、製薬技術分野において公知のものが含まれる。ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、メチルパラベン及びプロピルパラベンが好ましい防腐剤である。選択的に、本発明の製剤は、0.005〜0.02%の濃度で、製薬的に許容可能な界面活性剤を含むことができる。
【0113】
本願明細書における製剤は、治療される特定の適応に必要な複数の活性化合物を含んでもよく、好ましくはそれらはお互いに悪影響を与えない相補的な活性を有する。そのような分子は、意図される目的に有効な量の組合せで最適に存在する。
【0114】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術又は界面重合法によって、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル)、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフィア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロ・エマルジョンなどの調製されたマイクロカプセルに封入されてもよい。そのような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences(上掲)において開示される。
【0115】
徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の適切な例は、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、マトリックスは造形品(例えばフィルム又はマイクロカプセル)の形態である。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル類、ヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許番号3,773,919)、L−グルタミン酸及びγエチル−L−グルタミン酸塩のコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解可能な乳酸グリコール酸コポリマー(例えばLUPRON DEPOT)(登録商標)(乳酸グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドで構成される注射可能なミクロスフィア)、及びポリD−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン−酢酸ビニル及び乳酸グリコール酸のようなポリマーは100日間以上の分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルはより短い時間タンパク質を放出する。カプセル化された抗体が長い間体内に残る場合、それらは37℃の湿気への暴露の結果として変性又は凝集する可能性があり、生物学的活性の損失及び免疫原性の変化の可能性が生じる。合理的なストラテジーは、関与するメカニズムに応じて、安定化のために考案され得る。例えば、凝集メカニズムがチオ・ジスルフィド相互交換による分子間S−S結合形成によるものであることが見出されたら、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液で凍結乾燥すること、水分含量を制御すること、適切な添加物を用いること、及び特定のポリマーマトリックス組成物を開発することによって達成し得る。
【0116】
CD117アンタゴニストのような本願明細書に記載されるアンタゴニストは、ボーラス投与としての静脈内投与などの既知の方法に従って、又は筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節腔内、滑液包内、クモ膜下、経口、局所又は吸入経路によりヒト対象に投与される。広範囲な副作用又は毒性が特定の拮抗作用と関連している場合、局所投与が特に望ましい。エキソビボストラテジーも、医療適用のために用いることができる。エキソビボストラテジーは、対象から得られた細胞を抗体又は抗体断片をコード化するポリヌクレオチドで形質移入又は形質導入することに関与する。形質移入又は形質導入された細胞は、対象に戻される。細胞は、これに限定されるものではないが、造血細胞(例えば骨髄細胞、マクロファージ、単核細胞、樹状細胞、T細胞、又は、B細胞)、繊維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト又は筋細胞を含む広範囲にわたる型の細胞の何れかであり得る。
【0117】
一例において、疾患又は腫瘍の位置が可能とし、注射は周期的に繰り返すことができる場合、治療化合物は局所的に、例えば直接投与により投与される。アンタゴニストは、局所的な再発又は転移を予防又は減少するために、腫瘍の外科的切除に続いて、対象に全身的又は直接腫瘍細胞(例えば腫瘍又は腫瘍床)に送達することができる。
【0118】
疾患の防止又は治療において、本発明のアンタゴニストの適切な用量(単独又は一つ以上の他のさらなる治療剤と組み合わせて用いられる場合)は、治療される疾患の型、抗体の型、疾患の重症度又は経過、抗体が予防又は治療目的で投与されるかどうか、治療歴、患者の病歴及び抗体への反応及び担当医の裁量に依存する。抗体は、一度に、又は一連の治療によって患者に適切に投与される。疾患の型及び重症度によって、約1μg/kgから20mg/kg(例えば0.1mg/kg−15mg/kg)の抗体は、例えば一以上の別々の投与又は持続性投与であれ、患者への投与の初期候補用量となり得る。前述の因子によって、典型的な1日の用量は約1μg/kgから100mg/kg以上に及び得る。数日間又はそれ以上にわたる反復投与において、状態に依存して、治療は、望ましい病徴の抑制が生じるまで一般的に維持される。抗体の例示的な用量は、約0.05mg/kgから約20mg/kgまで及び得る。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、10mg/kg、15mg/kg又は20mg/kg(又はその任意の組合せ)の一以上の用量が患者に投与されてもよい。そのような用量は、例えば毎週、二週間ごと又は3週間ごとに間欠的に投与されてもよい(例えば患者が約2から約20(又は例えば約6)用量の抗体を受けるように)。初期のより高い負荷投与量に続いて、複数の低用量が投与されてもよい。例示的な投薬計画は、約4mg/kgの初期の負荷投与量を投与することを含み、約2mg/kgの抗体の毎週の維持量が続く。しかしながら、他の投与計画が有用であり得る。この治療の経過は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0119】
併用療法
本発明のアンタゴニストは、製薬的組合せ製剤又は併用療法としての投薬計画において、抗癌特性を有する第二の化合物と組み合わせてもよい。製薬的組合せ製剤又は併用療法としての投薬計画の第二の化合物は、それらが互いに悪影響を与えないように、組合せの抗体に対して相補的な活性を有してもよい。
【0120】
第二の化合物は、抗体、化学療法剤、細胞障害性剤、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン剤及び/又は心臓保護薬(cardioprotectant)であってもよい。そのような分子は、意図される目的のために有効である量の組合せで適切に存在する。本発明の化合物を含む医薬組成物は、化学療法剤(例えばチュービュリン形成インヒビター、トポイソメラーゼインヒビター、DNA挿入剤又はDNA結合剤)の治療的有効量をも有してもよい。
【0121】
他の治療計画は、本発明によって同定されるアンタゴニストの投与と組み合わせてもよい。併用療法は、同時投与計画又は経時的投薬計画として投与されてもよい。経時的に投与される場合、組合せは二個以上の投与として投与されてもよい。組み合わせられた投与は、別々の製剤又は単一の製薬製剤を用いた併用投与及び連続投与を含み、両方(又は全て)の活性剤が同時にそれらの生物学的活性を発揮する期間がある。
【0122】
上記のように、本発明の特定の実施態様は、CD117アンタゴニストと、CD133アンタゴニスト、CD44アンタゴニスト又はSca−1アンタゴニストの組合せを提供する。更なる実施態様は、CD117アンタゴニストと、CD133アンタゴニスト、CD44アンタゴニスト及び/又はSca−1アンタゴニストの一以上との組み合わせを提供する。
【0123】
併用療法のさらなる例は、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millenium Pharm.)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、スーテント(SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、PTK787/ZK 222584(Novartis)、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標)、Sanofi)、5−FU(5−フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(Sirolimus、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、GlaxoSmithKline)、ロナファーニブ(SCH 66336)、ソラフェニブ(BAY43−9006、Bayer Labs.)及びゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、AG1571(SU 5271;Sugen)、アルキル化剤(例えばチオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド(cyclophosphamide))のような化学療法剤;アルキルスルホネート(例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン);アジリジン(例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ及びウレドーパ);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロメラミンを含むエチレンイミン及びメチルメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン(bullatacinone));デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ−ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトセシン(合成類似体カンポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトセシン、スコポレクチン(scopolectin)及び9−アミノカンプトセシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC−1065(そのアドレゼシン、カルゼルシン(carzelesin)及びビセレシン合成類似体を含む);ポドフィリン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体であるKW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチン(sarcodictyin);スポンギスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード(例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミン酸化物塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニマスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード);ニトロソ尿素(例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチン(ranimnustine));エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えばカリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ1及びカリケアマイシンオメガI1(Agnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)を参照);ダイネミシン(dynemicin)Aを含むダイネミシン(dynemicin);エスペラミシン;及びネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルチノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソL−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ−ドキソルビシン(cyanomorpholino-doxorubicin)、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;アンチメタボライト(例えばメトトレキセート及び5‐フルオロウラシル(5−FU));葉酸類似体(例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキサート);プリン類似体(例えばフルダラビン、6‐メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン);ピリミジン類似体(例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリディン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン);アンドロゲン(例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン);抗副腎剤(例えばアミノグルテチミド、ミトーテン、トリロスタン);葉酸補充薬(例えばフロリン酸);アセグラトン;アルドホスファミド・グリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン;エダトレキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エルフォルニチン(elfornithine);エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド(例えばメイタンシン及びアンサミトシン);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);2−エチルヒドラジド(2-ethylhydrazide);プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2−トリクロロ・トリエチルアミン;トリコテセン系(特にT−2トキシン、ベラクリンA(verracurin A)、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミト・ラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド(例えばTAXOL(登録商標))パクリタキセル)(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、クレモフォール(Cremophor)フリーABRAXANETM、パクリタキセルのアルブミン改変ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)及びTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル(chloranbucil);ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6‐チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナ類似体(例えばシスプラチン及びカルボプラチン);ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));プラチナ;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド(例えばレチノイン酸);カペシタビン(XELODA(登録商標))などの化学療法剤、及び上記の何れかの化学療法剤の製薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体との組み合わせを含む。
【0124】
そのような併用療法は:(i)例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)及びFARESTON(登録商標)トレミフェンを含む、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)などの腫瘍に対するホルモン作用を制御又は阻害するように作用する抗ホルモン剤;(ii)例えば4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)メゲストロールアセテート、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタニー、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールなどの、酵素アロマターゼ(副腎におけるエストロゲン産生を制御する)を阻害するアロマターゼ阻害剤;(iii)抗アンドロゲン物質(例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン);及びトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体));(iv)アロマターゼ阻害薬;(v)プロテインキナーゼ阻害剤;(vi)脂質キナーゼ阻害剤;(vii)アンチセンスオリゴヌクレオチド(特に異常な(abherant)細胞増殖に関与するシグナル経路の遺伝子(例えばPKC−α、Raf、H−Ras及び上皮増殖因子レセプター(EGF−R))の発現を阻害するもの);(viii)リボザイム(例えばVEGF発現阻害剤(例えばANGIOZYME(登録商標)リボザイム)及びHER2発現阻害剤);(ix)遺伝子治療ワクチン(例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン)などのワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;(x)ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)など血管新生阻害剤;及び(xi)製薬的に許容可能な塩、酸、又は上記のもののあらゆる誘導体を含む。
【0125】
そのような化学療法剤の調製及び投薬スケジュールは、製造業者の説明書に従って用いられてもよく、熟練した専門家によって経験的に決定されるように用いられてもよい。そのような化学療法の調製及び投薬スケジュールは、Chemotherapy Service, (1992) Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, Md.にも記載される
【0126】
併用療法は「相乗効果」をもたらし、相乗的であることが証明されてもよく、すなわち活性成分が同時に用いられた場合に達成される効果は、化合物を別々に用いて生じる効果の合計よりも大きい。活性成分が:組み合わされた単位用量製剤において、共製剤化及び投与されるか、同時送達される;(2)別々の製剤として、交互に、又は並行して送達される;又は、(3)他の投薬計画により送達される場合に、相乗効果は達成される。交互療法で送達される場合、経時的に(例えば別々のシリンジの異なる注射によって)化合物が投与又は送達されると相乗効果が達成され得る。一般に、交互療法の間、それぞれの活性成分の有効用量は経時的、つまり連続的に投与されるが、併用療法では、二以上の活性成分の有効用量は同時に投与される。
【0127】
製品及びキット
本発明の他の実施態様は、癌の治療に有用な物質を含む製品である。製品は、容器、及び容器上の又は容器に付随するラベル又は添付文書を含む。適切な容器は、例えばボトル、バイアル、シリンジなどを含む。
【0128】
容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料で形成することができる。容器は、病状の治療に有効な組成物を収容しており、滅菌した出入口を有している(例えば、容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを具備する静脈溶液バック又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも一つの活性剤は、本発明の多重特異性抗体又は抗体断片である。ラベル又は添付文書は、組成物が特定の病状を治療するために用いられることを示す。ラベル又は添付文書は、患者に組成物を投与するための説明書をさらに含む。本明細書に記載される組み合わせ治療を含む製品及びキットも意図される。
【0129】
添付文書は、そのような治療的製品の使用に関しする指示、使用、用量、投与、禁忌及び/又は警告に関する情報を含む治療的製品の商業的パッケージに通常含まれる説明書を意味する。一実施態様において、添付文書は、組成物が前立腺癌を治療するために用いられることを示す。もう一つの実施態様では、添付文書は、本明細書に記載されているように、組成物がPSC又はPCSCを含む前立腺癌を治療するために用いられることを示す。
さらに、製品は、製薬的に許容可能なバッファー(例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸塩緩衝食塩水、リンゲル液及びブドウ糖溶液)を含む第二の容器をさらに含んでもよい。他のバッファー、希釈液、フィルター、針及びシリンジを含む商業的及び使用者見地から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0130】
ラベル又は添付文書は、組成物の説明、及び意図されたインビトロ又は診断用途のための指示を提供してもよい。
【0131】
上に記載される説明は、当業者が本発明を実施するのに十分であると考えられる。以下の実施例は、例示のみを目的とするものであり、いかなる意味でも本発明の範囲を制限するものではない。実際、当業者には、上記の説明から、ここに示して説明するものに加えて、本発明の様々な修正が可能であることが明らかであり、それらは請求の範囲に含まれる。
【0132】
実施例において言及される市販の試薬は、特に明記されない限り、製造業者の説明書に従って用いられた。以下の実施例及び明細書にわたってATCC寄託番号で同定される細胞の供給源は、American Type Culture Collection(Manassas, VA)である。特に明記しない限り、本発明は、上記及び以下の教科書に記載される組み換えDNA技術の標準的方法を用いる:Sambrook et al.(前掲);Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y., 1989);Innis et al., PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Academic Press, Inc.: N.Y., 1990);Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press: Cold Spring Harbor, 1988);Gait, Oligonucleotide Synthesis (IRL Press: Oxford, 1984);Freshney, Animal Cell Culture, 1987; Coligan et al., Current Protocols in Immunology, 1991。
【実施例】
【0133】
実施例1−方法
動物
妊娠したSD系ラット及びC57BL/6雄マウス(生後の4日及び8−10週齢)はCharles River Laboratoriesから購入し、胸腺欠損nu/nu雄マウス(6−8週齢)はHarlan Sprague Dawleyから購入し、WBB6F1/J雄マウス(野生型又はW/W;4−8週齢)はThe Jackson Laboratoryから購入した。Wアレルは膜貫通領域及びキナーゼドメインのアミノ末端の欠失を有するCD117遺伝子をコード化するが、Wアレルは単一点突然変異を有するCD117遺伝子をコード化する。
【0134】
抗体
抗体は、以下の供給源から購入された−
BD Biosciences:APC接合CD117(抗−マウス:クローン2B8;抗−ヒト:クローンYB5.B8)、PE−Cy7接合Sca−1(クローンD7)、Ki67(クローンB56)、Eカドヘリン(クローン36)、活性カスパーゼ3(ポリクローナル557035);eBioscience:PE接合CD133(抗−マウス:クローン13A4)、APC−Alexa Fluor(登録商標)750接合CD44(抗−マウス/ヒト:クローンIM7)、機能阻害CD117(クローンACK2);Miltenyi Biotec:PE接合CD133(抗−ヒト:クローンAC133);Abcam:CK18(クローンC−04)、H−2k(クローンER−HR52)、CD117(ポリクローナルab956);Chemicon:マウス特異的1インテグリン(クローンMB1.2)、シナプトフィジン(クローンSY38);R&D Systems:CD117(クローン180627);Covance:CK14(ポリクローナルAF64);AbD Serotec:CD31(クローン2H8);Sigma:SMA(クローン1A4);Santa Cruz Biotechnology:プロバシン(ポリクローナルM−18)、p63(クローン4A4);Invitrogen:シナプトフィジン(ポリクローナルZ66)、Alexa Fluor(登録商標)488又は594に接合した二次抗体。Nkx3.1ポリクローナル抗体は、C. Abate-Shen(UMDNJ-Robert Wood Johnson Medical School, New Jersey)からの寄贈であった。
【0135】
UGM間質細胞の調製
泌尿生殖洞間質(UGM)
単離手法は、上述されている18。簡潔には、妊娠したSD系ラットからのE18胚は犠牲となり、泌尿生殖洞が採取された。泌尿生殖洞上皮からのUGMの分離に続いて、UGMは、37℃で60分間、10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、100U/mlペニシリン及び100mg/mlストレプトマイシンが添加されたDMEM中の1mg/mlコラゲナーゼ/ディスパーゼ(Roche)で消化され、前立腺培養培地(10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、10μg/mLインスリン、5.5μg/mLトランスフェリン、6.7ng/mLセレニウム、1nMテストステロン(Innovative Research of America)、100U/mlペニシリン及び100mg/mlストレプトマイシンが添加されたDMEM)で2度洗浄され、10g/mlI型コラーゲンで被覆された24ウェルプレートにおいて同じ培地中で培養された。UGM細胞は、コンフルエントな状態においてトリプシン消化により継代され、インビトロで最長1週間培養された。
【0136】
前立腺細胞の調製
新たに切除されたヒト前立腺検体(良性前立腺肥大症(BPH)及び良性非BPH検体(病理学者によって肉眼的検査を経て区別された);生重量1−3g)は、連邦及び州のガイドラインに従って、Bio-options Inc.及びカリフォルニア大学(San Francisco)の同意した患者から得られた。ヒト及びマウス前立腺は、細かく刻まれ、10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、100のU/mlペニシリン及び100mg/mlストレプトマイシンが添加されたDMEM中に入れられ、37℃で90分間、撹拌すると共に1mg/mlコラゲナーゼ/ディパーゼで消化され、70μmフィルターを通過させた。
【0137】
インビボでの連続的単離/移植
CD117細胞の二次移植のために、一次移植片は磁気的に選別され(49,000以下の解離細胞が一次移植片につき得られ、CD117細胞は磁気的に選別された細胞の19%を構成した)、選別された細胞(移植片につき10,000の細胞)はUGM間質細胞(移植片につき250,000の細胞)と混合された。CD117細胞の三次移植のために、二次移植片は磁気的に選別され(40,000以下の解離細胞が二次移植片につき得られ、CD117細胞は磁気的に選別された細胞の11%を構成した)、選別された細胞(移植片につき2,200の細胞)はUGM間質細胞(移植片につき250,000の細胞)と混合された。LinSca−1CD133CD44CD117細胞の二次移植のために、一次移植片はFACSにより選別された(31,000以下の解離細胞が二次移植片につき得られ、LinSca−1CD133CD44CD117細胞は生存しているFACS−選別細胞の0.02%を構成している。選別された細胞(移植片につき15の細胞)は、UGM間質細胞(移植片につき250,000の細胞)と混合された。全ての連続移植された移植片は、移植後12週間で採取された。移植片の全体像は、Coolpix(登録商標)4300デジタルカメラ(Nikon)とSMZ 800解剖顕微鏡(Nikon)で得られた。
【0138】
RNA単離及びQ−RT−PCR
8−10週齢のC57BL/6マウスの前立腺は採取され、尿細管を広げるために裂かれた。前立腺領域の比較のために、それぞれの前立腺葉は、遠位/中間/近位の領域に分けられた。前立腺葉の比較のために、それぞれの前立腺は、背葉/側葉/腹葉/前葉に分けられた。トータルRNAはRNeasy(登録商標)Mini kit(Qiagen)を用いて単離され、Q−RT−PCRはPower SYBR(登録商標)Green(Applied Biosystems)で以下のプライマーセットを用いて行われた:Sca−1、5’−ATGGACACTTCTCACACTACAAAG−3’(配列番号:1)及び5’−TCAGAGCAAGGTCTGCAGGAGGACTG−3’(配列番号:2);CD44、5’−AATTCCGAGGATTCATCCCA−3’(配列番号:3)及び5’−CGCTGCTGACATCGTCATC−3’(配列番号:4);CD49b、5’−CCGGCATACGAAAGAATTGG−3’(配列番号:5)及び5’−GAAGAGCTGAGGGTTATGT−3’(配列番号:6);CD49f、5’−GTGGCCCAAGGAGATTAGC−3’(配列番号:7)及び5’−GTTGACGCTGCAGTTGAGA−3’(配列番号:8);CD133、5’−ACCAACACCAAGAACAAGGC−3’(配列番号:9)及び5’−GGAGCTGACTTGAATTGAGG−3’(配列番号:10);Bcl2、5’−ATGTGTGTGGAGAGCGTCAAC−3’(配列番号:11)及び5’−AGACAGCCAGGAGAAATCAAAC−3’(配列番号:12);TERT、5’−ATGGCGTTCCTGAGTATG−3’(配列番号:13)及び5’−TTCAACCGCAAGACCGACAG−3’(配列番号:14);p63、5’−TTGTACCTGGAAAACAATG−3’(配列番号:15)及び5’−TCGAAGCTGTGTGGGCCCGGG−3’(配列番号:16);CK14、5’−GACTTCCGGACCAAGTTTGA−3’(配列番号:17)及び5’−CTTGAGGCTCTCAATCTGC−3’(配列番号:18);CK18、5’−ACTCCGCAAGGTGGTAGATG−3’(配列番号:19)及び5’−GCCTCGATTTCTGTCTCCAG−3’(配列番号:20);CD24、5’−TAAAGGACGCGTGAAAGGTTTGA−3’(配列番号:21)及び5’−GACAAAATGGGTCTCCATTCCGCAC−3’(配列番号:22);CD34、5’−ATGCAGGTCCACAGGGACACG−3’(配列番号:23)及び5’−CTGTCCTGATAGATCAAGTAG−3’(配列番号:24);CD117、5’−GACGCAACTTCCTTATGATC−3’(配列番号:25)及び5’−TGGTTTGAGCATCTTCACGG−3’(配列番号:26);Slug、5’−TTTCTCCAGACCCTGGCTGCT−3’(配列番号:27)及び5’−TTTTCCCCAGTGTGAGTTCTA−3’(配列番号:28);GAPDH、5’−ACTGGCATGGCCTTCCG−3’(配列番号:29)及び5’−CAGGCGGCACGTCAGATC−3’(配列番号:30)。遺伝子発現は、ΔCt方法を用いてGAPDHで標準化された。
【0139】
フローサイトメトリー
前立腺細胞(非系統枯渇)は、0.1%Triton(登録商標)X−100で透過処理され、一次抗体(CK14、CK18、APC接合CD117)及び二次抗体(Alexa Fluor(登録商標)488又は594)で染色され、LSR−IIフローサイトメーター(Becton Dickinson)で解析された。
【0140】
インビトロでのコロニー形成
8−10週齢のC57BL/6マウスの前立腺細胞は、CD117+/−分画へ磁気的に選別され、3mg/mlのI型コラーゲンを含むDMEM中に8,000細胞/100μlで再懸濁され、平底96ウェルプレートに37℃で1時間入れられて、15ng/ml上皮細胞増殖因子(Roche)が添加された前立腺培養培地で表面を覆われた。培地は48時間ごとに交換され、コロニー形成は7日後に評価された。
【0141】
エキソビボの前立腺培養
生後4日のC57BL/6マウス前立腺は、採取され、8μm細孔径細胞培養インサート(BD Falcon(登録商標))に入れられ、インサートは0.5%グルコース、2mMグルタミン、10μg/mLインスリン、5.5μg/mLトランスフェリン、6.7ng/mLセレニウム、100U/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン及び25ng/mlファンギゾンが添加された300μlのDMEM/F−12を含む24ウェルプレートに入れられた。機能阻害抗CD117抗体(25g/ml)が添加された培地も用いられた。培地は交換され、像は48時間ごとに得られ、前立腺は10日後に採取された。像はMZ16FA解剖顕微鏡(Leica)とRetiga EXiデジタルカメラ(QImaging)で得られた。前立腺領域の正味の増殖は、MetaMorph(登録商標)ソフトウェア(Molecular Devices)を用いて定量化された。分岐点の定量は、8日目の前立腺の全体像に対して行われた。
【0142】
去勢及びアンドロゲン補充
マイクロアレイ及びQ−RT−PCR解析のために:8−10週齢のC57BL/6マウスが用いられた。0日目にマウスは去勢された。去勢後3日及び14日目に、一部のマウスの前立腺が採取された。去勢後14日目に、テストステロンペレット(15mg/ペレット/マウス)が移植された。17日目(ホルモン補充3日目)に、前立腺は採取された。トータルRNAはRNeasy(登録商標)ミニキットを用いて単離され、MOE430v2 Affymetrix(登録商標)チップはマイクロアレイ解析のために用いられた。インビボでの前立腺再生におけるCD117機能を評価するために:8週齢のC57BL/6マウスが用いられた。0日目にマウスは去勢された。去勢後12日目に、抗ブタクサコントロール抗体(10mg/kg、PBS)又は機能阻害性抗CD117抗体(10mg/kg、PBS)が腹腔内注射で投与された。去勢後14日目に、テストステロンペレット(15mg/ペレット/マウス)が移植された。去勢後15日目(ホルモン補充1日目)に、抗体処理が投与された。去勢後19日目(ホルモン補充5日目)に、前立腺は採取され、秤量され、組織学のために処理された。前立腺の重量は、コントロールの去勢後14日目の前立腺よりも正味の増加を示した。
【0143】
免疫組織化学
OCT−凍結組織は、8μmに切片化され、4%パラホルムアルデヒド(CK14、CK18、CD117、シナプトフィジン、プロバシン、1インテグリン、H−2k、CD31、SMA)又はメタノール:アセトン(1:1vol/vol;Eカドヘリン、活性化カスパーゼ3、Ki67、Nkx3.1に対して)で固定され、一次抗体で45分間、二次抗体で30分間インキューベートされた。ヒト前立腺検体はホルマリンで固定され、6μmに切片化され、抗原回復はBD Retrievagen A(BD Biosciences)で行われた。特異性の制御のために、種を合わせた一次抗体が用いられた。像は、AxioplanTM2結像型顕微鏡(imaging microscope)(Zeiss)とORCA−ERデジタルカメラ(Hamamatsu)で得られた。エキソビボ前立腺のために、CK14/CK18、Ki67及びEカドヘリンに対して陽性の細胞の割合は、それぞれ少なくとも600、400及び1,200の細胞を評価することによって定量された。インビボで再生された前立腺のために、CK14/CK18及びKi67に対して陽性の細胞の割合は、それぞれ少なくとも800及び2,500の細胞を評価することによって定量された。
【0144】
レーザーキャプチャーマイクロディセクション及びPCRを基とした遺伝子型解析
単一細胞由来の移植片は8μmに切片化され、金属フレーム膜スライド(Molecular Machines & Industries)上にマウントされ、マウス特異的な1インテグリン及びCD31で染色された。移植片の中に、1インテグリン/CD31細胞は、Nikon E2000 CellCut laser capture microdissector (Molecular Machines & Industries)で単離された。Foxn1+/+細胞コントロールのために、移植片内のラット間質細胞(1インテグリン/CD31)は単離された。Foxn1+/−細胞コントロールのために、移植片に隣接した胸腺欠損nu/nu腎臓細胞(1インテグリン+)は単離された。捕獲された細胞は、PicoPure(登録商標)DNA Extraction kit(Molecular Devices)で溶解され、PCRを基とする遺伝子型解析が行われた(http://jaxmice.jax.org/pub−cgi/protocols/protocols.sh)。ゲノムDNAは、Foxn1に対するプライマー(5’−GGCCCAGCAGGCAGCCCAAG−3’(配列番号:31)及び5’−AGGGATCTCCTCAAAGGCTTC−3’(配列番号:32))でPCRによって増幅され、BsaJIを用いて消化され、4%アガロースゲル上を移動させた。消化されていないPCR産物は168塩基対である;消化されたFoxn1+/+PCR産物は、90塩基対、58塩基対及び20塩基対の断片を生じる;消化されたFoxn1+/−PCR産物は、110塩基対、90塩基対、58塩基対及び20塩基対断片を生じる。110塩基対の産物の欠如は、ゲノムDNAがFoxn1+/+(野生型)細胞から誘導されたことを示す。PCRコントロール反応は、水(ネガティブコントロール)及び野生型マウスゲノムDNA(ポジティブコントロール)を含んだ。
【0145】
共焦点及び単一細胞顕微鏡検査
共焦点像はスキャンされ、LSM 510 META共焦点顕微鏡で得られた(Zeiss)。単一細胞像は、Eclipse TE300倒立顕微鏡(Nikon)とCascade Photometricsデジタルカメラ(Roper Scientific)で得られた。
【0146】
限界希釈法
限界希釈法は、『statmod』ソフトウェア・パッケージ(http://bioinf.wehi.edu.au/software/limdil/index.html)の『limdil』機能を用いて行われた。95%の信頼区間が用いられた。
【0147】
統計解析
群間差は、両側スチューデントt検定によって評価された。0.05未満のp値は有意であるとみなされた。
【0148】
インビボでの前立腺の産生
前立腺産生アッセイは、以前に記載した17、18。CD117細胞の一次移植のために、8−10週齢のC57BL/6マウスの前立腺は、分離及び抗マウスCD117ミクロビーズ(Miltenyi Biotec)でCD117+/−画分に選別された500,000以下の解離細胞が前立腺につき得られ、CD117細胞は磁気的に選別された細胞の7%を構成しており、その17.5±2.4%(n=10)がフローサイトメトリーによって生存しているとされた。選別された細胞(移植片につき100,000の細胞)は、3mg/mlI型コラーゲン(移植片につき20μl)中で、UGM間質細胞(移植片につき250,000の細胞)と混合され、コラーゲンがゲル化するように37℃で1時間インキューベートされ、前立腺培養培地で表面を覆われた。37℃、オーバーナイトでのインキュベーションに続いて、コラーゲンゲルは6−8週齢の胸腺欠損nu/nuマウスの腎被膜下に、90日間持続徐放性テストステロンペレット(12.5mg/ペレット/マウス;Innovative Research of America)は皮下に移植された。移植片は、移植後8週間で採取された。LinSca−1CD133CD44CD117細胞の一次移植のために、前立腺はFACSにより選別され、選別された細胞(移植片につき1,300の細胞)はUGM間質細胞(移植片につき250,000の細胞)と混合された。移植片は、移植後12週間で採取された。
【0149】
単一細胞FACS及びインビボでの前立腺産生
手法の詳細は、実施例8に記載されている。8−10−週齢のC57BL/6マウスの前立腺は、分離され、Mouse Lineage Cell Depletion Kit(Miltenyi Biotec)とビオチン接合抗マウスCD31モノクローナル抗体(BD Biosciences;clone 390)を用いて系統枯渇された。FACSは、FACSAriaフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて行われた。蛍光補正の調整は、シングルカラーポジティブコントロールを用いて行われた。単一細胞は、3mg/mlで20mlのI型コラーゲンを含むMicrotest社製U−底96ウェルプレート(BD Falcon)へ選別された 21。6つの独立した実験において単一生存細胞を含むことが確認された106のウェルを用いて、単一細胞FACSからの合計127の個別のウェルが調べられた。
【0150】
実施例2−前立腺幹細胞マーカーの同定
マウス前立腺は、尿道に対して3つの領域(遠位/中間/近位;図1)に分けられる、それぞれ4対の葉(背葉/側葉/腹葉/前葉)からなる分岐した腺管網である11。野生型前立腺は遠位/中間/近位の領域に解体され、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(Q−RT−PCR)は幹細胞マーカーを同定するために行われた12−14。4つ細胞表面マーカー(Sca−1、CD44、CD49b及びCD133、全てPSCのマーカーとして既知2−6、8)及び3つの細胞内幹細胞マーカー(Bcl2、テロメラーゼリバーストランスクリプターゼ(TERT)及びp63)は、近位領域において優先的な発現を示しており(図2及び図3a/3b)、このアッセイ系の有効性を裏付けている。CD44、CD49b、CD133、Bcl2、TERT及びp63が全ての前立腺基礎的なマーカーである3−5、8、15、16という事実は、基礎マーカーが、管腔のマーカーと比較して、近位領域においてより大きなレベルで発現していることを示唆する。これと一致して、管腔のマーカーCK18で観察される逆のパターンで、基礎マーカーであるサイトケラチン14(CK14)は近位領域における優先的な発現を示した。これらのデータは、以前提唱されたように8、9、PSCが基底細胞の亜集団を構成していることを裏付けている。
【0151】
正常なPSCを同定することは報告されていなかった幹細胞表面マーカー(CD24、CD34及びCD117)の発現レベルが評価された。CD24ではなくCD34及びCD117は、主に近位領域において発現している。CD34と比較して、CD117は近位領域と遠位領域との間に大きな発現差異を示したので、CD117は潜在的PSCマーカーとして注目された。免疫染色は、優位な近位の発現パターンを有する基底CD117CK14集団を確認した。CD117CK14集団は、しかしながら、管腔のCD117CK18集団を同定する後の解析において、近位領域においても観察された。フローサイトメトリーは、CK14、CK18及びCD117の3重標識で行われた。CD117+細胞が基底区画において豊富であったにもかかわらず、これらの所見はCD117細胞が基底又は管腔の区画のどちらかのみに局所するのではないことを示した。さらに、CD117発現は、特定の前立腺葉に限られなかった。それよりも、CD117はCD44、CD49b及びCD133と共に、背側の前立腺において検出された顕著な発現で、4対の葉の全てにおいて発現していた(図3a及び3b)。したがって、CD117は、既知のPSCマーカーに類似した発現プロファイルを示す。
【0152】
正常なPSCはアンドロゲンに非依存的であり、去勢プロセスを生き残るのに対して、それらはアンドロゲン応答性のままであり、ホルモン補充に続く前立腺再生に影響する。正常なPSCがCD117を発現する場合、CD117発現は去勢後(幹細胞の富化により)増加し、ホルモン補充後(分化細胞の増殖により)減少することが予想される。実際、CD24ではなく、CD117、CK14及びCD44は、このパターン(図4)を示した。これらの所見は、CD117が正常なPSCマーカーと一致した発現パターンを示すことをさらに示している。
【0153】
実施例3−CD117集団はPSCに富んでいる
CD117+集団はPSCに富んでいるという機能的証拠を提供するために、分離された成体C57BL/6前立腺のCD117+/−画分は、磁気ビーズソーティングによって調製され、富化はQ−RT−PCRによって確認された(図5)。標準前立腺コロニー形成アッセイがインビトロで行われた13。CD117細胞ではなくCD117細胞は、多数の内腔を含むコロニーを生じさせた。このインビトロでのアッセイがCD117集団がPSCsを含むことを示唆するにもかかわらず、CD117細胞のインビボにおいて前立腺を形成する能力は幹細胞表現型の必須の評価である。インビボ前立腺形成システム17、18を用いて、C57BL/6マウスドナーのCD117+/−画分は、ラット胚性泌尿生殖洞間質(UGM)間質細胞と組み合わせ、胸腺欠損nu/nuマウス宿主の腎被膜下に移植された。CD117細胞が腎被膜下で生存可能であったにもかかわらず、CD117移植片は小さく、不透明であり、前立腺を形成できない点でUGM細胞のみの移植片と類似していた(前立腺産生頻度、n=1/10)。対照的に、CD117移植片は、大きく、血管新生化されており、半透明であった(前立腺の産生頻度、n=10/12)。CD117移植片の組織学的試験は、基底(CK14)及び管腔(CK18)細胞系統から構成される上皮尿細管を有する分岐形態学を明らかにした。希少な神経内分泌細胞(野生型マウス前立腺の基底区画において単独のシナプトフィジン細胞として同定される19)は、同じ移植及び複数の移植を通して、いくつかの前立腺管及び腺房において観察された。CD117+移植片は、前立腺特異的なタンパク質であるプロバシン20及びNkx3.121も発現しており、機能的な前立腺の形成を示している。マウス1インテグリンに特異的な抗体を用いて、CD117移植片はマウス起源であり、UGM間質胞調製物由来のラット上皮細胞の混入のためではないことが確かめられた。さらに、宿主(胸腺欠損nu/nu)マウス細胞ではなくドナー(C57BL/6)を特異的に認識するMHCクラスIハプロタイプH−2k抗体を用いて、形成された前立腺が移植されたCD117ドナー細胞から誘導されたことが確認された。これらの所見は、CD117集団が機能的前立腺形成能力を有する正常なPSCに富んでいることを証明する。
【0154】
実施例4−CD117+ PSCsは、自己複製能力を有する
幹細胞を明確にする特徴は、自己複製能力である22。CD117細胞の自己複製能力を評価し、CD117細胞数の減少が前立腺生成能力を保持するかどうかを決定するために、連続して減少したCD117細胞数を用いて、CD117細胞の連続的移植が行われた(図6)。CD117細胞でなく、CD117細胞の二次及び三次移植は、機能的前立腺から生じたドナーC57BL/6マウス細胞に由来する複数の細胞型で構成される機能的な前立腺を生じさせた。これらの所見は、CD117集団が自己複製能力を有する正常なPSCを含むという直接的な証拠を提供する。
【0155】
実施例5−CD117シグナリングは、正常な前立腺の発達及び前立腺の再生のために重要である
正常な前立腺の発達のための機能的CD117シグナリングの重要性が判定された。生後の発達の最初の3週間に起こる広範囲な管成長及び分岐を伴って、マウス前立腺の発達は、妊娠17.5日に泌尿生殖洞の上皮の発芽から始まる11。ドミナントホワイトスポッティング遺伝子座(W/W)にホモ接合性のマウスは、CD117シグナリングを欠いており、周産期致死性であるので23、正常な前立腺の発達の評価を妨げる。部分的に障害のあるCD117シグナリングを示し、生存可能である異型接合のW/Wマウス23は解析された。4週齢の同等な身体サイズにもかかわらず、変異体前立腺は、成人期に類似した縮小を伴って、縮小した大きさを示した。CD117シグナリングが様々な幹細胞型においてこれらのプロセスを制御することから、変異体前立腺細胞の増殖、分化及び生存状態が調べられた24。変異体前立腺は阻害された増殖を示したが、基底/管腔の分化、細胞生存及び脈管/平滑筋細胞の動員は野生型と変わらなかった。同様に、生後4日目に採取され、機能阻害性抗CD117抗体(ACK2)の存在下でエキソビボで培養された野生型C57BL/6前立腺は、阻害された増殖及び減少した分岐を示した(図7a及び7b)。CD117シグナリングのACK2阻害は、CD117経路の下流の標的である転写因子Slug(図8a−c)の発現を評価することによって確認された25。特に、細胞の生存に影響することなく、処理された前立腺は、減弱した増殖及び増加した基底対管腔の細胞比率を示した。
【0156】
インビボでのPSC機能におけるCD117の潜在的な役割を評価するために、去勢された成体C57BL/6マウスにACK2がインビボ抑制量26で投与され、ホルモン補充に続く前立腺の再生が評価された。エキソビボで処理された前立腺に類似して、細胞生存又は脈管/平滑筋細胞の動員に影響することなく、減弱した増殖及び増加した基底対管腔の細胞比率に一致して、インビボで減弱したCD117の機能は前立腺再生を阻害した。これらの所見は、アンタゴニスト遮断剤でのCD117シグナリングの障害が、W/Wマウスで示されるCD117シグナリングの部分的な障害とは対照的に、前立腺管腔細胞の分化を阻害し、正常な前立腺の発達におけるCD117シグナリングの潜在的役割を強調する。CD117シグナリングが骨髄由来細胞(造血幹細胞及び内皮前駆細胞の動員を含む27)の機能にとって重要であり、脈管系及びそれを支持する間質がPSCの微小環境の確立において重要な役割を果たす場合14、抑制されたCD117機能が前立腺における非上皮細胞の動員/保持に悪影響を与え、同様に前立腺の発達を危うくするかもしれない。
【0157】
実施例6−幹細胞マーカー頻度
前立腺におけるCD117細胞の割合を他のPSC集団と比較するために、系統枯渇(Lin)集団が得られ、フローサイトメトリーが行われた。CD117細胞が生存細胞集団の中で最も低い頻度(およそ1%)を示したのに対して、Sca−1及びCD133細胞は生存細胞集団の中でより高い頻度で検出された(図9)。これは、間質及び分化した上皮細胞を含む幹細胞及び非幹細胞型の両方におけるSca−1及びCD133発現について報告された他の研究と一致していた6,28。これらのより高い頻度は、Sca−1及びCD133が前立腺細胞の非常に不均一な亜集団を標識していることを示唆する。単一染色された細胞集団の不均一性をを前提として、単独で用いられるそれぞれのマーカーは、完全に幹細胞から構成される亜集団をもたらすことは期待できない。したがって、組み合わせられた複数のマーカーがPSC表現型をさらに区別するために用いられた。LinSca−1CD133CD44CD117細胞がマウス前立腺内の生存細胞集団の0.12%を構成したことが測定された(図9)。
【0158】
実施例7−表現型LinSca−1CD133CD44CD117を有するPSCは、分泌物を産生する前立腺を形成することが可能である
蛍光標示式細胞分取器(FACS)は、複数の表面マーカー(図10)の組合せを発現している細胞集団を得るために行われ、続いて腎皮膜への移植が行われた。この実験では、分離された前立腺細胞は、Lin細胞を得るために、磁気ビーズにより選別され、その後FACSにより選別された。Lin−ヨウ化プロピジウム−(Lin−、生存)集団は、Lin−Sca−1+及びLin−Sca−1−集団を得るためにSca−1発現でゲーティングされた。CD133−、CD44−及びCD117−画分についてのLin−Sca−1−集団の連続的なゲーティングは、Lin−Sca−1−CD133−CD44−CD117−細胞を産生した。CD133+及びCD44+画分についてのLin−Sca−1+集団の連続的なゲーティングはLin−Sca−1+CD133+CD44+集団を産生し、Lin−Sca−1+CD133+CD44+CD117+細胞及びLin−Sca−1+CD133+CD44+CD117−細胞を得るためにCD117発現でゲーティングされた。
【0159】
移植の3ヵ月後の移植片重量の定量は、LinSca−1CD133CD44CD117集団だけが前立腺を形成可能なことを示した(図11及び12)。様々な選別された細胞集団についての前立腺産生の頻度は、以下の通りだった:LinSca−1CD133CD44CD117、n=0/8;LinSca−1CD133CD44CD117、n=6/9;LinSca−1CD133CD44CD117、n=0/6。
【0160】
組織学的試験は上記の実施例3で説明したように行われ、再生した前立腺は基底(CK14)及び管腔(CK18)細胞系統から構成され、前立腺は前立腺に特異的なタンパク質であるプロビシン20及びNkx3.121を発現したことを示し、機能的前立腺の産生を示した。マウス1インテグリン−特異性抗体を用いて、前立腺はマウス起源であり、UGM間質細胞の調製物からのラット上皮細胞の混入のせいではないく、宿主(胸腺欠損nu/nu)マウス細胞ではなくドナー(C57BL/6)を認識するMHCクラスIハプロタイプH−2k抗体を用いて形成された前立腺は移植されたCD117+ドナー細胞に由来することが確認された。
【0161】
連続的移植は、選別された様々な細胞集団の前立腺産生頻度について類似した結果を示した:LinSca−1CD133CD44CD117、n=0/3;LinSca−1CD133CD44CD117、n=1/3;LinSca−1CD133CD44CD117、n=0/3。これによりLinSca−1CD133CD44CD117集団が自己複製能力を有する正常なPSCを含むことが確認された。
【0162】
実施例8−単一LinSca−1CD133CD44CD117細胞からの前立腺形成
前立腺の形成が単一のLinSca−1CD133CD44CD117細胞から達成されたことを明確に証明するために、単一の生存細胞はFACSにより別々のウェルへと選別された。それぞれのウェルは単一の細胞の存在を確認するために撮像され、単一のドナーC57BL/6マウス細胞は宿主胸腺欠損nu/nuマウスの腎皮膜下にラットUGM間質細胞と共に移植された(図13)。より詳しくは、成体C57BL/6前立腺は採取され、単一の細胞へ分離され、Lin集団を得るために磁気ビーズソーティングにより系統枯渇され、ヨウ化プロピジウム及び細胞表面マーカーSca−1、CD133、CD44及びCD117に対する抗体で染色された。FACSによって、単一の生存する(ヨウ化プロピジウム−)LinSca−1CD133CD44CD117細胞は、4℃でコラーゲン溶液を含む96ウェルプレートの別々のウェルに選別された。プレートはそれから、ウェルにつき単一の細胞の存在を確認するために37℃に制御されたチャンバーにおいて顕微鏡下で試験され、それぞれのウェルのそれぞれの単一細胞のデジタル画像は記録された。コラーゲンゲル化に続いて、ラットUGM間質細胞はそれぞれのウェル(ウェルにつき250,000の細胞)に添加され、プレートはオーバーナイトで37℃でインキューベートされ、コラーゲンゲルの収縮が生じた。皮下の徐放性テストステロンペレットと共に、ゲルは宿主胸腺欠損nu/nuマウスの腎皮膜下に移植された。移植3ヵ月後、単一細胞移植組織は採取され、組織学的試験に用いられた。
【0163】
注目すべきことに、14の前立腺が97の単一細胞移植から形成された。組織学的解析は、UGM細胞のみの移植片が前立腺を形成できなかったのに対して、成功した14の単一細胞移植の移植片が後の前立腺の発達を示したことを確認した。上皮の尿細管の存在は複数の細胞系統を含み、プロバシン及びNkx3.1の発現が確認された。重要なことに、単一の細胞から誘導された前立腺は、マウス特異的な1インテグリン及びC57BL/6ドナー特異的なH−2kを発現した。レーザーキャプチャーマイクロディセクションにより取り出された細胞のPCRに基づく遺伝子型判定によって、形成された前立腺が単一の移植されたドナー細胞に由来することがさらに確認された(図14a)。単一の細胞に由来する前立腺は、間質細胞及び結合組織の厚い層に囲まれた相互に連結する分岐した腺の形態を示した。限界希釈法によって、LinSca−1CD133CD44CD117集団内のPSCの頻度は、10分の1であることが測定された(図14b)。
【0164】
実施例9−ヒトPSC
CD117がヒト前立腺の潜在的PSC集団もマークするかどうか判定するために、ヒト良性前立腺肥大症(BPH;n=5)及び良性非BPH(n=4)前立腺検体のフローサイトメトリー解析が行われた。CD117+細胞は、良性の非BPH及びBPH検体の生存細胞集団において、低い頻度で観察された(それぞれ約0.2%及び0.4%;図15a及び15b)。Sca−1ヒトオルソログはまだ明確に同定されていないが、マーカーCD133及びCD44とCD117とを組み合わせることによって、良性の非BPH及びBPH検体におけるCD133CD44CD117細胞の生存細胞頻度は、それぞれ0.004%及び0.01%であることが測定された(図15a及び15b)。良性の非BPH及びBPH検体において、CD117細胞は、基底細胞マーカーp63を共発現する前立腺上皮の免疫染色によって検出された。組織学的解析に用いられた良性の非BPH及びBPH検体は、同じ患者から採取された対の検体であった。これらの所見は、CD117発現がマウス前立腺内でPSC集団を標識することに加えて、ヒト前立腺内の潜在的なPSC集団を標識することが期待されることを示している。
【0165】
この明細書において引用又は言及される全ての特許、特許出願、特許出願公報及び他の刊行物は、それぞれの独立した特許、特許出願、特許出願公報又は刊行物が明確かつ個々に援用されていると示されるのと同程度で本明細書に援用される。
【0166】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD117を発現する、単離された前立腺幹細胞。
【請求項2】
幹細胞がさらにCD133及びCD44を発現する、請求項1に記載の幹細胞。
【請求項3】
幹細胞がさらにSca−1を発現する、請求項1又は2に記載の幹細胞。
【請求項4】
幹細胞がインビトロで管腔を含む前立腺を形成する能力を有する、請求項1ないし3の何れか一項に記載の幹細胞。
【請求項5】
幹細胞がインビボで機能的な前立腺を形成する能力を有する、請求項1ないし3の何れか一項に記載の幹細胞。
【請求項6】
CD117を発現する、単離された前立腺癌幹細胞。
【請求項7】
幹細胞がさらにCD133及びCD44を発現する、請求項6に記載の幹細胞。
【請求項8】
幹細胞がさらにSca−1を発現する、請求項6又は7に記載の幹細胞。
【請求項9】
幹細胞がインビボモデルにおいて前立腺癌を形成する能力を有する、請求項6ないし8の何れか一項に記載の幹細胞。
【請求項10】
以下の工程を含む前立腺幹細胞を単離する方法:
a.系統枯渇(Lin−)前立腺細胞集団を得る工程、
b.CD117、CD133及びCD44を発現する細胞の集団を得るために、Lin−細胞集団を選別する工程。
【請求項11】
Sca−1を発現する細胞の集団を得るために、Lin−前立腺細胞集団を選別する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞が蛍光標示式細胞分取器(FACS)を用いて選別される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前立腺幹細胞又は前立腺癌幹細胞と治療的有効量のCD117アンタゴニストとを接触させることを含む、CD117、CD133及びCD44を発現する前立腺幹細胞又は前立腺癌幹細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項14】
a.患者の前立腺癌がCD117、CD133及びCD44を発現する細胞を含むかどうかを決定すること、及び
b.患者の前立腺癌がCD117、CD133及びCD44を発現する細胞を含む場合に、患者に治療的有効量のCD117アンタゴニストを投与すること
を含む、患者における前立腺癌の再発を防止する方法。
【請求項15】
患者に有効量のCD133アンタゴニスト又はCD44アンタゴニストを投与することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
a.患者がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含む前立腺癌を有するかどうかを決定すること、及び
b.患者がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含む前立腺癌を有する場合に、CD117アンタゴニストでの治療のための患者を選択すること
を含む、CD117アンタゴニストでの治療のための前立腺癌患者を選択する方法。
【請求項17】
a.患者がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含む前立腺癌を有するかどうかを決定すること、及び
b.患者がCD117、CD133及びCD44を発現する前立腺細胞を含む前立腺癌を有する場合に、患者に治療的有効量のCD117アンタゴニストを投与すること
を含む、患者における前立腺癌を治療する方法。
【請求項18】
患者に有効量のCD133アンタゴニスト又はCD44アンタゴニストを投与することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
患者が前立腺癌の再発を経験したことがある、請求項16、17又は18に記載の方法。
【請求項20】
a.患者の前立腺癌がCD117、CD133及びCD44を発現する細胞を含むかどうかを決定すること、及び
b.患者の前立腺癌がCD117、CD133及びCD44を発現する細胞を含む場合に、CD117アンタゴニストでのアジュバント療法のための患者を選択すること
を含む、CD117アンタゴニストでのアジュバント療法のための前立腺癌患者を選択する方法。
【請求項21】
a.患者の前立腺癌がCD117、CD133及びCD44を発現する細胞を含むかどうかを決定すること、及び
b.患者の前立腺癌がCD117、CD133及びCD44を発現する細胞を含む場合に、患者に治療的有効量のCD117アンタゴニストを投与すること
を含む、前立腺癌の治療を受ける患者にアジュバント療法を提供する方法。
【請求項22】
患者に有効量のCD133アンタゴニスト又はCD44アンタゴニストを投与することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
CD117アンタゴニストが抗CD117抗体である、請求項13ないし22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
CD117アンタゴニストが小分子である、請求項13ないし22の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
CD117アンタゴニストがイマチニブメシル酸塩又はスニチニブリンゴ酸塩である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
CD117、CD133及びCD44を発現する前立腺幹細胞を、前立腺組織の成長又は修復を必要とする患者に移植することを含む、前立腺組織の成長又は修復を促進する方法。
【請求項27】
患者が部分的な前立腺を有し、幹細胞がその部分的な前立腺に移植される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
CD117、CD133及びCD44を発現する前立腺幹細胞を、哺乳動物宿主に、機能的な前立腺を形成する条件下で移植することを含む、前立腺の成長を促進する方法。
【請求項29】
幹細胞が宿主の腎皮膜下に移植される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
宿主がブタである、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
a.CD117、CD133及びCD44を発現する前立腺幹細胞を、哺乳動物宿主に、機能的な前立腺を形成する条件下で移植すること、及び
b.前立腺を採取すること
を含む、必要とする患者に機能的な前立腺を提供する方法。
【請求項32】
採取された前立腺が機能的な前立腺を必要とするヒト患者に移植される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
a.CD117、CD133及びCD44を発現する前立腺幹細胞と試験化合物とを接触させること、及び
b.試験化合物が細胞の増殖を阻害するかどうかを検出すること
を含む、前立腺癌幹細胞の増殖を阻害する化合物をスクリーニングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【公表番号】特表2012−506255(P2012−506255A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533294(P2011−533294)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/061473
【国際公開番号】WO2010/048278
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】